JP2018087312A - 炭素材料前駆体、その製造方法、及びそれを用いた炭素材料の製造方法 - Google Patents

炭素材料前駆体、その製造方法、及びそれを用いた炭素材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い炭化収率を有し、炭素材料を効率的に製造することが可能な炭素材料前駆体の提供。【解決手段】式(15)〜(18)で表される構造単位の少なくとも1種を含むジエン系重合体を分子内環化させて得られる環構造単位を含む重合体、例えば、3,4−ポリイソプレンをルイス酸あるいはブレンステッド酸等の環化触媒によって分子内環化させて縮合6員環重合体を得、さらに該重合体を含む炭素材料前駆体溶液を得る。該炭素材料前駆体を炭化処理する炭素材料の製造方法を提供する。(R41〜R44は夫々独立にH又はC1〜20の有機基)【選択図】なし

Description

本発明は、炭素材料前駆体、その製造方法、及びそれを用いた炭素材料の製造方法関する。
炭素材料の1種である炭素繊維の製造方法としては、従来から、ポリアクリロニトリル(PAN)を紡糸して得られる炭素繊維前駆体に耐炎化処理を施した後、炭化処理を施す方法が主として採用されている。しかしながら、この方法に用いられるPANは、原料のアクリロニトリルが比較的高価であることに加えて、炭素繊維の製造過程の耐炎化処理や炭化処理において質量が大きく減少するため、その炭化収率は約50%と低く、炭素繊維の製造コストが高くなるという問題があった。
そこで、炭素繊維の炭化収率を向上させる技術として、PANをヨウ素ガスと酸素ガスとを含むガスと接触せしめて不炎化体とした後、不活性ガス雰囲気下で焼成する方法が提案されている(特開2002−160912号公報(特許文献1))。しかしながら、この方法では、PANよりも高価なヨウ素ガスを多量に使用するため、結果的には炭素繊維の製造コストが十分に低減しないという問題があった。また、PANは、その化学構造に窒素原子が含まれているため、炭素含有率が約68%と低く、このことも炭化収率が低くなる要因の1つであった。
一方、PAN系炭素繊維前駆体の耐炎化処理におけるPANの環化反応は大きな発熱を伴うものであるが、従来のPAN系炭素繊維前駆体の耐炎化処理は酸化性ガス雰囲気下で行われており、容易に除熱できないため、PAN系炭素繊維前駆体の処理量を極めて少なく抑え、かつ200℃から300℃まで徐々に温度を上げながら長時間かけて処理する必要があった。このため、従来のPAN系炭素繊維前駆体の耐炎化処理方法は十分に効率的な方法とは言えなかった。
そこで、PAN系炭素繊維前駆体の耐炎化処理を効率的に行う技術として、有機溶媒中でPANとアミン及びニトロ化合物とを反応せしめる方法が提案されている(特開2015−17204号公報(特許文献2))。しかしながら、この方法においても長時間の加熱処理(150℃、6時間)が必要であり、十分に効率的な方法とは言えなかった。
特開2002−160912号公報 特開2015−17204号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高い炭化収率を有し、炭素材料を効率的に製造することが可能な炭素材料前駆体、その製造方法、及びそれを用いた炭素材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ジエン系モノマーを用いて重合したジエン系重合体を分子内環化させることによって、高い炭化収率を有する炭素材料前駆体が得られることを見出し、さらに、この炭素材料前駆体を用いることによって、炭素材料を効率的に製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の炭素材料前駆体は、下記式(1)〜(10):
〔式中、R〜R13はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
で表される環構造単位のうちの少なくとも1種を含む重合体からなることを特徴とするものである。
また、本発明の炭素材料前駆体においては、前記重合体中に、下記式(11)〜(14):
〔式中、R21〜R32はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表し、a、b、c及びdはそれぞれ独立に0以上の整数である。〕
で表される環構造単位のうちの少なくとも1種が形成されていることが好ましい。
本発明の炭素材料前駆体の製造方法は、下記式(15)〜(18):
〔式中、R41〜R44はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むジエン系重合体を分子内環化させることを特徴とするものである。前記ジエン系重合体としては、前記式(15)で表される構造単位を40mol%以上含有するものが好ましい。
本発明の炭素材料前駆体溶液は、前記本発明の炭素材料前駆体と溶媒とを含有することを特徴とするものである。
本発明の炭素材料の製造方法は、前記本発明の炭素材料前駆体に炭化処理を施すこと、或いは、前記本発明の炭素材料前駆体の製造方法により炭素材料前駆体を得る工程と、該炭素材料前駆体に炭化処理を施す工程とを含むこと、を特徴とするものである。
本発明によれば、ジエン系重合体を用いて、高い炭化収率を有する炭素材料前駆体を得ることが可能となる。また、このような炭素材料前駆体を用いることによって、効率的に(例えば、ポリアクリロニトリルを用いた場合に比べて低温での炭化処理によって)炭素材料を製造することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<炭素材料前駆体及びその製造方法>
先ず、本発明の炭素材料前駆体及びその製造方法について説明する。本発明の炭素材料前駆体は、下記式(1)〜(10):
〔式中、R〜R13はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
で表される環構造単位のうちの少なくとも1種を含む重合体からなるものである。このような炭素と水素のみからなり、六員環構造を有する重合体からなる炭素材料前駆体は、耐炎性を有し、炭化収率が高く、かつ、比較的低温での加熱により効率的に炭素材料を形成することができる。
前記式(1)〜(10)で表される環構造単位のうち、炭素材料前駆体の耐熱性、防炎性及び炭化収率がより高くなるという観点から、前記式(1)〜(9)で表される環構造単位が好ましい。
前記式(1)〜(10)中のR〜R13は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表し、中でも、炭素材料前駆体の製造時の収率が向上し、また、炭素材料前駆体の耐熱性がより高くなるという観点から、水素原子及び炭素数1〜10の有機基のうちのいずれかであることが好ましく、水素原子及び炭素数1〜5の有機基のうちのいずれかであることがより好ましい。また、前記有機基としては、炭化収率が高くなるという観点から、炭化水素基が好ましい。
本発明の炭素材料前駆体においては、高い炭化収率が得られるという観点から、炭素材料前駆体中の全ての構造単位に対して、前記式(1)〜(10)で表される環構造単位が1mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることがより好ましく、20mol%以上であることが更に好ましく、50mol%以上であることが特に好ましく、70mol%以上であることが最も好ましい。
また、本発明の炭素材料前駆体においては、より高い炭化収率が得られるという観点から、前記重合体中に、下記式(11)〜(14):
〔式中、R21〜R32はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表し、a、b、c及びdはそれぞれ独立に0以上の整数である。〕
で表される環構造単位のうちの少なくとも1種が形成されていることが好ましい。
前記式(11)で表される環構造単位は、前記式(5)で表される環構造単位と前記式(1)で表される環構造単位と前記式(8)で表される環構造単位とが結合して形成されるものであり、前記式(12)で表される環構造単位は、前記式(6)で表される環構造単位と前記式(2)で表される環構造単位と前記式(9)で表される環構造単位とが結合して形成されるものであり、前記式(13)で表される環構造単位は、前記式(5)で表される環構造単位と前記式(7)で表される環構造単位と前記式(8)で表される環構造単位とが結合して形成されるものであり、前記式(14)で表される環構造単位は、前記式(1)で表される環構造単位と前記式(4)で表される環構造単位と前記式(9)で表される環構造単位とが結合して形成されるものである。
前記式(11)〜(14)で表される環構造単位のうち、炭素材料前駆体の炭化収率がより高くなり、また、紡糸性に優れた炭素材料前駆体が得られるという観点から、前記式(11)〜(13)で表される環構造単位が好ましい。
前記式(11)〜(14)中のR21〜R32は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表し、中でも、炭素材料前駆体の製造時の収率が向上し、また、炭素材料前駆体の耐熱性がより高くなるという観点から、水素原子及び炭素数1〜10の有機基のうちのいずれかであることが好ましく、水素原子及び炭素数1〜5の有機基のうちのいずれかであることがより好ましい。また、前記有機基としては、炭化収率が高くなるという観点から、炭化水素基が好ましい。
また、前記式(11)〜(14)中のa、b、c及びdはそれぞれ独立に0以上の整数であれば特に制限はなく、a、b、c、d=0及びa、b、c、d>0のいずれでもよいが、炭化収率がより高くなるという観点から、a、b、c、dは1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。また、その上限としては特に制限はないが、50以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。なお、a、b、c及びdの値は、13C−NMRスペクトルにおけるピークの積分値の比から求めることができる。例えば、前記式(11)において、R21〜R23がメチル基の場合、13C−NMRスペクトルのσ=約15ppm〜約25ppmの範囲に観察される前記メチル基の炭素原子に由来するピークの積分値の比からaの値を求めることができる。なお、4置換オレフィンの炭素原子に由来するピークは、13C−NMRスペクトルのσ=約120ppm〜約130ppmの範囲に観察される。
本発明の炭素材料前駆体においては、炭化収率がより高くなるという観点から、炭素材料前駆体中の全ての環構造単位に対して、前記式(11)〜(14)で表される環構造単位が、1mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることがより好ましく、20mol%以上であることが更に好ましく、50mol%以上であることが特に好ましく、70mol%以上であることが最も好ましい。
また、本発明の炭素材料前駆体においては、紡糸性、製膜性等の成形性の観点から、ゲル量が炭素材料前駆体全体の50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の炭素材料前駆体の形状としては特に制限はなく、例えば、繊維状、フィルム状、粒子状等が挙げられ、目的とする炭素材料の形状に合わせて適宜所望の形状に成形することができる。炭素材料前駆体の成形方法としては特に制限はなく、従来公知の成形方法を採用することができ、例えば、繊維状に成形する場合には、溶液紡糸法、溶融紡糸法、ゲル紡糸法、液晶紡糸法等の従来公知の紡糸方法を適宜採用することができる。溶液紡糸法としては、湿式紡糸法、乾式紡糸法、エレクトロスピニング法等の従来公知の溶液紡糸法を適宜採用することができる。また、溶液紡糸条件としては特に制限はなく、使用する溶媒の種類等に応じて適宜設定することができる。さらに、得られた繊維状の炭素材料前駆体は、従来公知の繊維延伸法により所望の直径に延伸することができる。
本発明の炭素材料前駆体は、耐炎性及び高い炭化収率を有することから、ガラス状炭素、炭素繊維、炭素フィルム、カーボンナノファイバー、炭素繊維強化炭素材料等の各種炭素材料の前駆体として使用することができ、特に、炭素繊維、炭素フィルム、カーボンナノファイバーの前駆体として有用である。
また、本発明の炭素材料前駆体は、耐炎性に加え、難燃性、耐熱性、耐腐食性、耐摩耗性にも優れていることから、耐炎ポリマーとして耐炎繊維や耐炎フィルム等に使用することができる。このような耐炎繊維や耐炎フィルムは、例えば、航空機等の移動体の防炎断熱材やブレーキパッド、車両の内装材や各種部品、消火用防護衣、炉前作業衣、溶接用スパッタシート、電気機器の延焼防止材等に使用することができる。
本発明の炭素材料前駆体の製造方法は、下記式(15)〜(18):
〔式中、R41〜R44はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むジエン系重合体を分子内環化させる方法である。以下、前記式(15)で表される構造単位を「3,4−構造単位」、前記式(16)で表される構造単位を「シス−1,4−構造単位」、前記式(17)で表される構造単位を「トランス−1,4−構造単位」、前記式(18)で表される構造単位を「1,2−構造単位」と略す。
前記ジエン系重合体としては、炭素材料前駆体の環化率及び炭化収率が高くなり、耐炎化処理を施さなくても耐炎性を有する炭素材料前駆体が得られるという観点から、前記3,4−構造単位を、全構造単位に対して40mol%以上(より好ましくは60mol%以上、特に好ましくは80mol%以上)含有するものが好ましい。
また、前記ジエン系重合体としては、天然ゴム等の重合以外の方法で得られたものを用いることも可能であるが、高い炭化収率を有する炭素材料前駆体が確実に得られるという観点から、共役ジエン系単量体の単独重合体、共役ジエン系単量体とその他の重合性単量体との共重合体、及びこれらの混合物等の共役ジエン系単量体を用いて重合したものを用いることが好ましい。
前記共役ジエン系単量体としては特に制限はないが、下記式(19):
で表されるものが好ましい。
前記式(19)中のR51は、水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表し、中でも、炭素材料前駆体の環化率が向上し、耐熱性及び炭化収率がより高くなるという観点から、水素原子及び炭素数1〜10の有機基のうちのいずれかであることが好ましく、水素原子及び炭素数1〜5の有機基のうちのいずれかであることがより好ましい。また、前記有機基としては、炭化収率が高くなるという観点から、炭化水素基が好ましい。
前記式(19)で表される共役ジエン系単量体として具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−ペンチル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、ミルセン等が挙げられる。
また、本発明においては、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−ヘキシロキシ‐1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等の前記式(19)で表される共役ジエン系単量体以外のその他の共役ジエン系単量体も用いることができる。
前記その他の重合性単量体として、前記共役ジエン系単量体と共重合し得るものであれば特に制限はないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2−メチル−1,4−ジクロルスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン等の鎖状オレフィン系単量体;シクロペンテン、2−ノルボルネン等の環状オレフィン系単量体;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ジエチル等のα,β−不飽和カルボン酸エステル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の窒素含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸無水物;塩化ビニル;ビニルアルコール等が挙げられる。
本発明に用いられるジエン系重合体における前記共役ジエン系単量体に由来する構成単位(共役ジエン系単量体単位)の含有量としては本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、炭素材料前駆体の環化率及び炭化収率が高くなるという観点から、40mol%以上が好ましく、60mol%以上がより好ましく、80mol%以上が特に好ましい。
このようなジエン系重合体の調製方法としては特に制限はなく、例えば、チタン等の触媒成分を含有する遷移金属系重合触媒、有機リチウム系重合触媒、ラジカル重合触媒等を用いる従来公知の重合方法を採用することができるが、得られるジエン系重合体において前記式(15)で表される構造単位(3,4−構造単位)の含有量が多くなるという観点から、遷移金属系重合触媒を用いる重合方法が好ましく、さらに、3,4−構造単位の含有量が多くなり、かつ製造コストが低減されるという観点から、遷移金属系重合触媒とアルミノキサン等の有機アルミニウム化合物等の助触媒を併用した重合方法がより好ましい。
また、このようなジエン系重合体の調製方法においては、必要に応じて有機溶媒を用いることができる。前記有機溶媒としては特に制限はないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、クロロフェノール、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン等の含酸素系溶媒;アセトニトリル等の含窒素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ネオペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
ジエン系重合体の調製方法における重合温度としては、得られるジエン系重合体において前記3,4−構造単位の含有量が多くなるという観点から、−100〜150℃が好ましく、−50〜50℃がより好ましい。また、重合時間としては、1分間〜48時間が好ましく、10分間〜24時間がより好ましい。
本発明の炭素材料前駆体の製造方法においては、前記ジエン系重合体を分子内環化させてジエン系重合体環化物を形成する。下記の反応式はジエン系重合体の分子内環化反応の一例である。
ジエン系重合体の分子内環化反応は、共役ジエン系単量体単位同士又は共役ジエン系単量体単位とその他の重合性単量体単位との間で進行する。このような分子内環化反応としては重合反応やディールス・アルダー反応等が挙げられ、通常、環化触媒が用いられる。前記環化触媒としては、ルイス酸やブレンステッド酸等の酸触媒が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素等の水素酸;硫酸、酢酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のオキソ酸及びこれらの無水物又はアルキルエステル;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素等のハロゲン化ホウ素;燐モリブデン酸、燐タングステン酸等のヘテロポリ酸;四塩化スズ、塩化鉄、四塩化チタン、塩化アルミニウム、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムモノクロリド、五塩化アンチモン、六塩化タングステン、臭化アルミニウム等の金属ハロゲン化物;シリカ、アルミナ、ゼオライト、酸性白土、タングステン酸ジルコニア等の固体酸;トリフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等のボラン化合物;トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のボレート化合物が挙げられる。これらの環化触媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの環化触媒の中でも、炭素材料前駆体の環化率が高くなるという観点から、オキソ酸、金属ハロゲン化物が好ましく、また、炭素材料前駆体の溶媒への溶解性や溶融加工性が向上するという観点から、スルホン酸化合物が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸がより好ましい。
また、このような分子内環化反応は有機溶媒中で行うことが好ましい。前記有機溶媒としては特に制限はないが、前記ジエン系重合体の調製方法において例示したものが挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
ジエン系重合体の分子内環化反応を有機溶媒中で行う場合における反応温度としては、−100〜300℃が好ましく、−25〜150℃がより好ましい。また、反応時間としては、1分間〜48時間が好ましく、5分間〜24時間がより好ましい。
また、本発明の炭素材料前駆体の製造方法においては、ジエン系重合体の分子内環化反応を有機溶媒中で行うことが好ましいが、従来のPAN系炭素材料前駆体の場合と異なり、環化時の急激な発熱が起こらないため、有機溶媒中での液相反応ではなく、耐炎炉等の加熱装置を用いて空気中や不活性ガス中で加熱して分子内環化反応を行うことも可能である。この場合の反応温度の下限としては100℃以上が好ましく、上限としては300℃以下が好ましい。また、反応時間としては、1分間〜5時間が好ましく、1〜30分間がより好ましい。
本発明の炭素材料前駆体の製造方法においては、このようなジエン系重合体の分子内環化反応によって生成したジエン系重合体環化物の過度のゲル化を防止するために、フェノール系、アミン系、スルフィド系、ホスファイト系等の老化防止剤を添加することが好ましい。前記老化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールが挙げられる。
また、本発明の炭素材料前駆体の製造方法においては、生成したジエン系重合体環化物を加熱したり、酸化剤(脱水素化剤)で処理したりすることによって、ジエン系重合体環化物内の水素を脱離させることができ、例えば、前記式(1)〜(5)で表される環構造単位の水素を脱離させることによって、それぞれ前記(6)〜(10)で表される環構造単位が形成される。前記脱水素化剤としては、例えば、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノンやテトラクロロ−1,4−ベンゾキノン(別名:クロラニル)等のキノン系物質、ニトロベンゼン等のニトロ系物質、過酸化水素や過酸化カリウム等の過酸化物、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩類などが挙げられる。
このようにして得られる炭素材料前駆体の環化率(ジエン系重合体のオレフィン性二重結合が環化した割合)としては、炭素材料前駆体の耐熱性及び炭化収率が高くなるという観点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましく、80%以上がとりわけ好ましく、90%以上が最も好ましい。
このような本発明の製造方法によって得られる炭素材料前駆体としては特に制限はないが、前記式(1)〜(10)で表される環構造単位のうちの少なくとも1種を含む重合体からなるものが好ましく、前記式(11)〜(14)で表される環構造単位のうちの少なくとも1種を含む重合体からなるものがより好ましい。
本発明の炭素材料前駆体溶液は、前記本発明の炭素材料前駆体と溶媒とを含有するものであり、炭素材料前駆体の少なくとも一部、好ましくは全部が溶媒に溶解したものである。このような炭素材料前駆体溶液は、例えば、溶液紡糸法により炭素材料前駆体を繊維状に成形する場合等に好適に用いることができる。
このような本発明の炭素材料前駆体溶液は、炭素材料前駆体と溶媒とを混合することによって製造することができるが、炭素材料前駆体の製造工程で得られる炭素材料前駆体と有機溶媒とを含有する溶液や、炭素材料前駆体の後処理工程等で得られる炭素材料前駆体と溶媒とを含有する溶液等をそのまま、本発明の炭素材料前駆体溶液として使用することができる。
本発明の炭素材料前駆体溶液に含まれる溶媒としては特に制限はないが、例えば、有機溶媒及び水が挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。前記有機溶媒としては特に制限はないが、前記ジエン系重合体の調製方法において例示したものが挙げられる。これらの有機溶媒も1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
<炭素材料の製造方法>
次に、本発明の炭素材料の製造方法について説明する。本発明の炭素材料の製造方法は、前記本発明の炭素材料前駆体に炭化処理を施す方法(第一の製造方法)、或いは、前記本発明の炭素材料前駆体の製造方法により炭素材料前駆体を得る工程と、該炭素材料前駆体に炭化処理を施す工程とを含む方法(第二の製造方法)である。
前記第一の製造方法において用いられる炭素材料前駆体は、前記式(1)〜(10)で表される環構造単位のうちの少なくとも1種を含む重合体(好ましくは、前記(11)〜(14)表される環構造単位のうちの少なくとも1種が形成されている重合体)からなる本発明の炭素材料前駆体であれば、前記本発明の炭素材料前駆体の製造方法により得られるものに限定されない。また、前記第二の製造方法における炭素材料前駆体は、前記本発明の炭素材料前駆体の製造方法により得られるものであれば、前記式(1)〜(10)で表される環構造単位のうちの少なくとも1種を含む重合体からなる本発明の炭素材料前駆体に限定されない。
本発明の炭素材料の製造方法においては、これらの炭素材料前駆体に、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気下で加熱処理を施す(炭化処理)。これにより、炭素材料前駆体中の重合体が炭化し、所望の炭素材料が得られる。このような炭化処理における加熱温度としては、水素原子が除去される温度であれば特に制限はないが、300℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましく、500℃以上が更に好ましく、800℃以上が特に好ましい。また、前記加熱温度の上限としては特に制限はないが、2000℃以下が好ましく、1500℃以下がより好ましく、1000℃以下が更に好ましく、900℃以下が特に好ましい。このように、本発明の炭素材料の製造方法においては、比較的低温での加熱により炭素材料前駆体に炭化処理を施すことができる。また、炭化処理における加熱時間としては特に制限はないが、1〜60分間が好ましく、1〜10分間がより好ましい。
また、本発明の炭素材料の製造方法においては、使用する炭素材料前駆体が耐炎性を有しているため、炭素材料前駆体に耐炎化処理を施す必要はないが、炭化処理の前に従来公知の耐炎化処理を施してもよい。
このようにして得られる炭素材料は、ガラス状炭素、炭素繊維、炭素フィルム、カーボンナノファイバー、炭素繊維強化炭素材料等として使用することができ、特に、炭素繊維、炭素フィルム、カーボンナノファイバーとして有用である。また、前記炭素材料は、樹脂、金属、セラミックス、セルロース(ナノセルロースを含む)、リグニン等と混合して複合材料を形成することもできる。さらに、前記複合材料が樹脂複合材料、セルロース複合材料、リグニン複合材料の場合には、さらに炭化処理を施して炭素複合材料を形成することも可能である。
前記樹脂複合材料に用いられる樹脂としては特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド、熱硬化性シリコーン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、及びウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリスチレン、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、MAS(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン)樹脂、MABS(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、及びSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)樹脂等の芳香族ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、これらの共重合体、及びアクリルゴム等のアクリル系樹脂;ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−アクリル酸メチル樹脂、及びアクリロニトリル−ブタジエン樹脂等のシアン化ビニル系樹脂;イミド基含有ビニル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、及びエチレンプロピレンゴム等のポリオレフィン系樹脂;酸又は酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、酸又は酸無水物変性アクリル系エラストマー、エポキシ変性アクリルエラストマー、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルアミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、前記樹脂複合材料には、必要に応じて各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、粘度調整剤、着色剤、シランカップリング剤等の表面処理剤、タルク、モンモリロナイト等の粘土鉱物、雲母鉱物及びカオリン鉱物等の層状ケイ酸塩、ガラス繊維、炭素繊維、シリカや熱伝導性フィラー等の充填剤、エラストマー類等が挙げられる。前記熱伝導性フィラーとしては特に制限はないが、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化亜鉛、グラファイト、炭素繊維や、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノプレートレット、グラフェン、数層グラフェン、ナノグラファイト(グラフェンナノリボン等)、ナノグラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノコイル、フラーレン、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化ホウ素ナノリボン、窒化ホウ素ナノドット、窒化ホウ素ナノシート等のナノフィラーが挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、重合体の組成分析方法、環化率の算出方法、イソプレン系重合体の重合に使用した触媒の合成方法、イソプレン系重合体の重合方法を以下に示す。
<重合体の組成分析方法>
重合体を重水素化クロロホルムに溶解し、H−NMR測定(30℃、400MHz)及び13C−NMR測定(30℃、100MHz)を行なった。得られたH−NMRスペクトルに基づいて、各構成単位の下記のプロトンのピークの積分値を求め、これらの比から重合体中の各構造単位のモル比を決定した。なお、H−NMRスペクトルにおいて、前記式(15)で表される構造単位(3,4−構造単位)のオレフィン性二重結合中の2個のプロトンのピークは約4.6ppmと約4.7ppmの位置に、前記式(16)で表される構造単位(シス−1,4−構造単位)と前記式(17)で表される構造単位(トランス−1,4−構造単位)のオレフィン二重結合中のプロトンのピークは共に約5.1ppmの位置に、前記式(18)で表される構造単位(1,2−構造単位)のα―メチル基のプロトンのピークは約0.93ppmの位置に観察される。また、前記シス−1,4−構造単位と前記トランス−1,4−構造単位の比率は、13C−NMRスペクトルにおいて、前記シス−1,4−構造単位のメチル基のカーボンのピークが約23.5ppmの位置に、前記トランス−1,4−構造単位のメチル基のカーボンのピークが約16ppmの位置に観察されることから、これらのピークの積分値から求めることができる。なお、13C−NMRスペクトルにおいて、前記3,4−構造単位のメチル基のカーボンのピークは約18ppmの位置に観察される。
<環化率の算出方法>
前記重合体の組成分析方法において得られたジエン系重合体のH−NMRスペクトルから、前記式(15)で表される構造単位(3,4−構造単位)、前記式(16)で表される構造単位(シス−1,4−構造単位)、前記式(17)で表される構造単位(トランス−1,4−構造単位)及び前記式(18)で表される構造単位(1,2−構造単位)のオレフィン性二重結合中のプロトンのピークの積分値の合計(A)を求め、ジエン系重合体の全プロトンのピークの積分値(B)に対する割合(A/B)を算出した。
また、前記重合体の組成分析方法において得られた炭素材料前駆体を構成する重合体(ジエン系重合体環化物)のH−NMRスペクトルから、オレフィン性二重結合中のプロトンのピークの積分値(a)を求め、ジエン系重合体環化物の全プロトンのピークの積分値(b)に対する割合(a/b)を算出した。なお、ジエン系重合体環化物の環構造単位中に二重結合が存在する場合には、この二重結合中のプロトンのピークは約5.25ppmの位置に観察され、また、これら二重結合が共役系となる場合には、約5.8ppm〜約7.2ppmの範囲においてピークが観察され、前記オレフィン性二重結合中のプロトンのピークと区別することができ、環構造単位の二重結合中のプロトンのピークの積分値はオレフィン性二重結合中のプロトンのピークの積分値(a)に含まれない。
これらのプロトンのピークの積分値の割合A/B及びa/bから、オレフィン性二重結合中のプロトンのピークの積分値の減少率を、下記式:
減少率[%]=[(A/B)−(a/b)]/(A/B)×100
に従って求め、これを環化率とした。
<炭化収率の測定方法>
炭素材料前駆体又は重合体について、熱重量分析装置(理学電機株式会社製「Thermo plus TG8120」)を用いて、窒素気流下(500ml/分)、昇温速度5℃/分で室温から1000℃まで加熱して熱重量分析(TGA)を行なった。炭素材料前駆体中に残存するトルエン等の残存溶媒の影響を除外するため、150℃における炭素材料前駆体の質量を基準として、500℃又は1000℃における炭素材料前駆体の炭化収率を下記式:
炭化収率[%]=M/M150×100
〔M:温度T(500℃又は1000℃)における炭素材料前駆体の質量、M150:150℃における炭素材料前駆体の質量〕
により求めた。
(合成例1)
イソプレンの選択的3,4−付加重合を可能とする重合触媒として、下記反応式:
に従って、FeClにトリ−tert−ブチル−テルピリジン(TBTP)を配位させたFeCl(TBTP)を合成した。すなわち、先ず、0.2gのFeClを50mlの無水テトラヒドロフラン(THF)に分散させた。次に、得られた分散液に0.5gのTBTPを添加し、室温で10時間撹拌した。得られた溶液を15時間静置して沈殿物を生成させ、THFで洗浄しながら吸引ろ過を行なった。その後、得られた粉体を30℃で3日間真空乾燥させ、FeCl(TBTP)を得た(収率:93%)。
(調製例1)
下記反応式:
に従って、イソプレン系重合体(a−1)を重合した。すなわち、フラスコに、合成例1で得られた225.5mg(0.4mmol)のFeCl(TBTP)を入れ、さらに、窒素雰囲気下で2.75mlの無水トルエンを加えた。次に、2.516g(40mmol)の修飾メチルアルミノキサン(MMAO、[(CH0.95(C170.05AlO]を含む無水トルエン溶液(MMAO濃度:16.3質量%)17.25mlを滴下した。その後、8.0ml(80mmol)のイソプレンを滴下し、25℃で3時間重合を行なった。重合後の溶液に20mlのトルエンを添加して希釈した。この溶液を395.9mgの2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含むメタノール500mlに滴下して沈殿物を生成させた。この沈殿物を395.9mgのBHTを含むメタノール500mlを用いて洗浄した。この洗浄操作を3回行なって白色の固体を得た。得られた固体を室温で3日間真空乾燥させ、イソプレン系重合体(a−1)を得た(収率:99%)。
得られたイソプレン系重合体(a−1)の組成を前記方法に従って分析した。その結果、3,4−構造単位は74.4%、シス−1,4−構造単位は20.0%、トランス−1,4−構造単位は5.6%、1,2−構造単位は0.0%であった。
(調製例2)
重合温度を0℃に変更した以外は調製例1と同様にしてイソプレン系重合体(a−2)を調製した(収率:98%)。得られたイソプレン系重合体(a−2)の組成を前記方法に従って分析した。その結果、3,4−構造単位は85.0%、シス−1,4−構造単位は15.0%、トランス−1,4−構造単位は0.0%、1,2−構造単位は0.0%であった。
(実施例1)
調製例1で得られたイソプレン系重合体(a−1)2gを、窒素雰囲気下、90mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液に0.02gのトリフルオロメタンスルホン酸を添加した後、窒素雰囲気下、室温で60分間撹拌した。得られた溶液に200mlの炭酸ナトリウム5%水溶液を添加して反応を停止させた。得られた溶液を、老化防止剤として1質量%の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のメタノールに滴下して生成物を沈殿させた。この沈殿物を1質量%のBHTを含むメタノールで3回洗浄し、さらに、イオン交換水で3回洗浄した後、室温で2日間真空乾燥して炭素材料前駆体(b−1)を得た。
得られた炭素材料前駆体(b−1)の組成を前記方法に従って分析した。その結果、H−NMRスペクトルの約4.6ppmと約4.7ppmの位置に観察される、3,4−構造単位のオレフィン性二重結合中の2個プロトンのピークが減少しており、イソプレン系重合体の分子内環化が進行したことが確認された。前記方法に従って環化率を求めたところ、85%であった。また、前記方法に従って、炭素材料前駆体(b−1)の炭化収率を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例2)
イソプレン系重合体(a−1)の代わりに調製例2で得られたイソプレン系重合体(a−2)を2g用いた以外は実施例1と同様にして炭素材料前駆体(b−2)を得た。得られた炭素材料前駆体(b−2)の組成を前記方法に従って分析した。その結果、H−NMRスペクトルにおいて、3,4−構造単位のオレフィン性二重結合中の2個プロトンのピークがほぼ消失しており、炭素材料前駆体(b−2)は炭素材料前駆体(b−1)に比べて分子内環化が更に進行したことが確認された。前記方法に従って環化率を求めたところ、97%であった。また、前記方法に従って、炭素材料前駆体(b−2)の炭化収率を測定した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
前記方法に従って、ポリアクリロニトリル(PAN、アルドリッチ社製)の炭化収率を測定した。その結果を表1に示す。
表1に示した結果から明らかなように、本発明の炭素材料前駆体(実施例1〜2)は、500℃及び1000℃のいずれの温度においても高い炭化収率を示した。このことから、ジエン系重合体を分子内環化した炭素材料前駆体は高い炭化収率を有するものであることが確認された。
また、本発明の炭素材料前駆体(実施例1〜2)は、窒素原子を含まないため、500℃から1000℃に加熱しても炭化収率は殆ど減少しなかった。一方、ポリアクリロニトリル(比較例1)においては、500℃から1000℃にかけて主として窒素原子が離脱し、炭化収率が大きく減少した。このことから、ポリアクリロニトリルを用いて炭素材料を製造する場合、約1000℃以上での炭化処理が必要であったが、本発明の炭素材料前駆体を用いることによって、より低温で効率的に炭素材料を製造できることが確認された。
(製造例1)
実施例1で得られた炭素材料前駆体(b−1)に、窒素雰囲気下、900℃で10分間の加熱処理(炭化処理)を施して炭素材料を得た。
以上説明したように、本発明によれば、ジエン系重合体を用いて、高い炭化収率を有する炭素材料前駆体を得ることができる。また、この炭素材料前駆体は、ポリアクリロニトリルを用いた場合に比べて低温での炭化処理によって炭素材料を製造することが可能となる。
したがって、本発明の炭素材料の製造方法は、低コストで効率的に炭素材料を製造することができる方法として有用である。

Claims (7)

  1. 下記式(1)〜(10):
    〔式中、R〜R13はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
    で表される環構造単位のうちの少なくとも1種を含む重合体からなることを特徴とする炭素材料前駆体。
  2. 前記重合体中に、下記式(11)〜(14):
    〔式中、R21〜R32はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表し、a、b、c及びdはそれぞれ独立に0以上の整数である。〕
    で表される環構造単位のうちの少なくとも1種が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の炭素材料前駆体。
  3. 下記式(15)〜(18):
    〔式中、R41〜R44はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
    で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むジエン系重合体を分子内環化させることを特徴とする炭素材料前駆体の製造方法。
  4. 前記ジエン系重合体が前記式(15)で表される構造単位を40mol%以上含有するものであることを特徴とする請求項3に記載の炭素材料前駆体の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の炭素材料前駆体と溶媒とを含有することを特徴とする炭素材料前駆体溶液。
  6. 請求項1又は2に記載の炭素材料前駆体に炭化処理を施すことを特徴とする炭素材料の製造方法。
  7. 請求項3又は4に記載の炭素材料前駆体の製造方法により炭素材料前駆体を得る工程と、該炭素材料前駆体に炭化処理を施す工程とを含むことを特徴とする炭素材料の製造方法。
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