JP2018086265A - 光音響装置、情報取得方法、プログラム - Google Patents

光音響装置、情報取得方法、プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、複数回の光照射により発生する光音響波を利用する光音響装置において、単位時間当たりに得られる光音響波の受信信号のS/Nを向上させることを目的とする。【解決手段】 本発明に係る光音響装置は、光照射手段、受信手段、及び処理手段を有し、光照射手段は、第1の符号系列に対応する第1の波長の第1の強度変調光と、第1の符号系列とは異なる第2の符号系列に対応する第2の波長の第2の強度変調光とを被検体に照射し、受信手段は、第1及び第2の強度変調光が被検体に照射されることにより発生する光音響波を受信することにより第1の信号を出力し、処理手段は、第1及び第2の符号系列に関する情報に基づいて、第1の信号に対して復号処理を行うことにより、第1の波長に対応する第1の復号信号及び第2の波長に対応する第2の復号信号の少なくとも一方を取得する。【選択図】 図7

Description

本発明は、光音響効果を利用した光音響装置に関する。
被検体に光を照射し、照射光に基づいて得られる被検体内の情報を画像化する光イメージング装置の研究が医療分野で積極的に進められている。この光イメージング技術の一つとして、Photo Acoustic Tomography(PAT)がある。PATでは、光源から発生した光を被検体に照射し、被検体内で伝搬、拡散した光のエネルギーを吸収した組織から発生した音響波を検出する。この音響波発生の現象を光音響効果と呼び、発生した音響波を光音響波と呼ぶ。音響波は一般には超音波である。
特許文献1は、パルス光が複数並んだパルス列を被検体に照射することを開示する。また、特許文献1は、光照射により被検体内で発生した光音響波に基づいて、画像データを再構成することを開示する。
特開2014−39801号公報
複数回の光照射を利用した光音響トモグラフィの場合、典型的には光照射により発生した光音響波の受信が完了した後に、次の光照射を行い、次に発生する光音響波の受信を開始する。しかしながら、この方法では、単位時間当たりの光照射回数が制限されてしまうため、単位時間当たりに得られる光音響波の受信信号のS/Nの向上が困難である。
そこで、本発明は、複数回の光照射により発生する光音響波を利用する光音響装置において、単位時間当たりに得られる光音響波の受信信号のS/Nを向上させることを目的とする。
本発明に係る光音響装置は、光照射手段、受信手段、及び処理手段を有し、光照射手段は、第1の符号系列に対応する第1の波長の第1の強度変調光と、第1の符号系列とは異なる第2の符号系列に対応する第2の波長の第2の強度変調光とを被検体に照射し、受信手段は、第1及び第2の強度変調光が被検体に照射されることにより発生する光音響波を受信することにより第1の信号を出力し、処理手段は、第1及び第2の符号系列に関する情報に基づいて、第1の信号に対して復号処理を行うことにより、第1の波長に対応する第1の復号信号及び第2の波長に対応する第2の復号信号の少なくとも一方を取得する。
本発明に係る光音響装置によれば、単位時間当たりに得られる光音響波の受信信号のS/Nを向上させることを目的とする。
正負の符号要素に対応する光強度、及び、光音響波の受信信号を模式的に示す図 符号系列に対応する光強度、及び、光音響波の受信信号を模式的に示す図 本実施形態に係る光音響装置を示すブロック図 本実施形態に係るコンピュータとその周辺の構成を示すブロック図 半導体レーザの特性を示す図 正の符号要素に対応する受信信号を説明するための図 実施例1に係る符号化のシーケンスを示す図 実施例1に係る駆動電流、受信信号を示す図 実施例1に係る雑音を考慮した受信信号を示す図 実施例1に係る別の駆動電流、受信信号を示す図 実施例1に係る雑音を考慮した別の受信信号を示す図 実施例1に係る復号信号を示す図 実施例1に係る別の復号信号を示す図 実施例1に係る駆動部の構成を示す図 実施例2に係る光音響装置を示すブロック図 実施例2に係る符号化のシーケンスを示す図 実施例2に係る受信信号を示す図 実施例2に係る別の受信信号を示す図 実施例2に係る別の受信信号を示す図 実施例2に係る別の受信信号を示す図 実施例2に係る復号信号を示す図 実施例2に係る別の復号信号を示す図 実施例2に係る別の復号信号を示す図
物質に光を照射すると光音響効果により音響波(光音響波とも呼ぶ)が発生することが知られている。また、互いに異なる複数の波長の光をそれぞれ物質に照射することにより発生した光音響波に基づいて、分光情報として物質を構成する濃度を算出できることが知られている。特に、血液の光吸収係数スペクトルがヘモグロビン濃度に依存することを利用し、異なる複数の波長の光を血液に照射し、それにより発生した光音響波に基づいて血液のヘモグロビン濃度を計測できることが知られている。
ところで、複数の波長の光を用いる場合に、ある波長の光照射の期間と別の波長の光照射の期間とが重なった場合、いずれの波長の光によって得られた光音響波の受信信号かを判別することができない。そこで、ある波長の光による光音響波を受信完了した後に別の波長の光による光音響波を受信する、というように時間的に受信信号を分離する手法が知られている。しかしながら、このようにそれぞれの波長の光照射間で十分な時間を確保し、各波長の光に対応する受信信号を分離する手法では、単位時間当たりに得られる光音響波の受信信号のS/Nが低下してしまう。
そこで、本発明者は、ある波長の光をある符号系列に対応する強度変調光で物質に照射し、別の波長の光を別の符号系列に対応する強度変調光で物質に照射することにより符号化を行うことを見出した。このように符号化された光音響波の受信信号を、符号化に利用した符号系列に関する情報を用いて復号することにより、複数の波長のそれぞれに対応する復号信号を得ることができる。このような符号化・復号化により、各波長の照射期間が重なる場合でも、各波長に対応する受信信号を分離することができるため、単位時間当たりに得られる光音響波の受信信号のS/Nを向上させることができる。
光音響波の受信信号を処理する光音響装置において、照射光の制御により正負それぞれの符号要素を含む符号系列に基づいた符号化を行う方法を説明する。図1は、照射光の強度、及び、その照射光により発生する光音響波の受信信号のレベルの時間変化を模式的に示した図である。典型的に、図1(a)に示すように、照射光の強度の時間変化を正とすると、正のレベルの受信信号を得ることができる。一方、図1(b)に示すように照射光の強度の時間変化を負とすると、負のレベルの受信信号を得ることができる。さらに、単位時間当たりの照射光の強度変化が大きいほど、受信信号のレベルも大きくなる傾向がある。なお、図1においては、音源から受信手段までの光音響波の伝搬時間については無視している。
本発明者は、図1に示すように、照射光の強度の時間変化の正負を制御することにより、受信信号のレベルの正負を制御できることを着想とし、本発明を見出した。すなわち、本発明者は、照射光の強度の時間変化の正負を制御することにより、符号化における符号系列を構成する符号要素の正負を制御することを見出した。例えば、図1(a)に示す光照射のタイミングにおける符号要素を{1}とし、図1(b)に示す光照射のタイミングにおける符号要素を{−1}とし、これらの光照射を組み合わせることにより、正負それぞれの符号要素を含む符号系列を定義することができる。本明細書において、正の符号要素に対応する光音響波を発生させるための光を「正の強度変調光」とする。また、負の符号要素に対応する光音響波を発生させるための光を「負の強度変調光」とする。
以下、いくつかのパターンの符号系列に対応する光照射のシーケンスの例を、図2を用いて説明する。図2中の点線は、各符号要素の基準タイミングを示す。
図2(a)は、符号系列{1、1}に対応する照射光の強度、及び、光音響波の受信信号のレベルの時間変化を模式的に示した図である。図2(a)に示す照射光のシーケンスは、強度が短時間に急上昇した後に、時間と共になだらかに下がっていく光(正の強度変調光)を2つ連続させたものである。また、強度が短時間に急上昇するタイミングが、正の符号要素に対応する基準タイミングに対応するように調整されている。例えば、強度が短時間に急上昇する期間の中心のタイミングを基準タイミングと一致させることができる。この場合、基準タイミングに、正の大きな受信信号が得られる。この正の大きな受信信号が、正の符号要素{1}に対応する信号となる。
図2(b)は、符号系列{−1、−1}に対応する照射光の強度、及び、光音響波の受信信号のレベルの時間変化を模式的に示した図である。図2(b)に示す照射光のシーケンスは、強度が時間と共になだらかに上がっていた後に、短時間に急降下する光(負の強度変調光)を2つ連続させたものである。また、強度が短時間に急降下するタイミングが、負の符号要素に対応する基準タイミングに合うように調整されている。具体的には、強度が短時間に急降下する期間の中心のタイミングを基準タイミングと一致させている。この場合、基準タイミングに、負の大きな受信信号が得られる。この負の大きな受信信号が、負の符号要素{−1}に対応する信号となる。
図2(c)は、符号系列{1、−1}に対応する照射光の強度、及び、光音響波の受信信号のレベルの時間変化を模式的に示した図である。図2(c)に示す照射光のシーケンスは、図2(a)に示す正の強度変調光を照射した後に、図2(b)に示す負の強度変調光を照射するものである。正の強度変調光の強度が急上昇するタイミングが正の符号要素{1}の基準タイミングに対応し、負の強度変調光の強度が急降下するタイミングが負の符号要素{−1}の基準タイミングと対応するように照射タイミングは制御されている。この場合、各基準タイミングに、正の大きな受信信号、および、負の大きな受信信号が得られる。
なお、正の強度変調光の時間と共になだらかに下がっていく部分と、負の強度変調光の時間と共になだらかに上がっていく部分とが時間的に重なるので、重畳部分は結果的に矩形波となる。この場合、各基準タイミングに、正の大きな受信信号、および、負の大きな受信信号が得られる。このように、符号系列の正負の符号要素が隣り合う場合に、これらの基準タイミング間の光強度をほぼ一定にすることにより、その期間に不要な光音響波が発生しない。これにより、精度良く光照射による符号化を実現することができる。図2(c)では、符号系列{1、−1}の例を説明したが、符号系列{−1、1}の場合にも同様に基準タイミング間の光強度をほぼ一定としてもよい。なお、基準タイミング間の光強度の時間変化は、光音響波を受信するトランスデューサの受信帯域に基づいて、この受信帯域から外れる周波数を有する光音響波を発生させる程度の所定の範囲内であれば、ほぼ一定とみなしてもよい。図2においては、音源から受信手段までの光音響波の伝搬時間については無視している。
このようにして、正負それぞれの符号要素を含む符号系列に対応する光照射を行い、正負それぞれの符号要素を含む符号化を行うことにより、正負それぞれの符号要素を含む符号系列に基づいて復号化を行う際の復号精度を向上させることができる。特に、固体レーザ等の高出力光源と比較して出力される光強度が小さい半導体レーザやLED等の場合、単位時間当たりの照射回数を増やして、受信信号のS/Nを向上させたい。このような場合に、正負それぞれの符号要素を含む符号系列に基づいて、先に発生した光音響波の受信が完了する前に、次の光照射を実行して符号化を行うことにより、S/Nの高い復号信号を精度良く取得することができる。
本発明に係る、光音響効果により発生する音響波とは、典型的には超音波であり、音波、音響波と呼ばれるものを含む。本発明は、光音響効果により発生した光音響波に基づいて画像データを取得する光音響装置に適用することができる。
本発明に係る光音響装置により得られる光音響画像は、光照射により発生した光音響波に由来するあらゆる画像を含む概念である。光音響画像は、光音響波の発生音圧(初期音圧)、光吸収エネルギー密度、及び光吸収係数、被検体を構成する物質の濃度(酸素飽和度など)などの少なくとも1つの被検体情報の空間分布を表す画像データである。なお、互いに異なる複数の波長の光照射により発生する光音響波に基づいて得られる被検体情報は、被検体を構成する物質の濃度などの分光情報である。
以下、図3を用いて本実施形態に係る光音響装置の構成を説明する。図3は、光音響装置全体の概略ブロック図である。本実施形態に係る光音響装置は、光照射部110、受信部120、信号収集部140、コンピュータ150、表示部160、及び入力部170を有する。
光照射部110が光を被検体100に照射し、被検体100から音響波が発生する。光に起因して光音響効果により発生する音響波を光音響波とも呼ぶ。受信部120は、光音響波を受信することによりアナログ信号としての電気信号(光音響信号)を出力する。
信号収集部140は、受信部120から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、コンピュータ150に出力する。コンピュータ150は、信号収集部140から出力されたデジタル信号を、光音響波に由来する信号データとして記憶する。
処理手段としてのコンピュータ150は、記憶されたデジタル信号に対して後述する処理を行うことにより、光音響画像を表す画像データを生成する。また、コンピュータ150は、得られた画像データに対して表示のための画像処理を施した後に、画像データを表示部160に出力する。表示部160は、光音響画像を表示する。ユーザーとしての医師や技師等は、表示部160に表示された光音響画像を確認することにより、診断を行うことができる。表示画像は、ユーザーやコンピュータ150からの保存指示に基づいて、コンピュータ150内のメモリや、モダリティとネットワークで接続されたデータ管理システムなどに保存される。
また、コンピュータ150は、光音響装置に含まれる構成の駆動制御も行う。また、表示部160は、コンピュータ150で生成された画像の他にGUIなどを表示してもよい。入力部170は、ユーザーが情報を入力できるように構成されている。ユーザーは、入力部170を用いて測定開始や終了、作成画像の保存指示などの操作を行うことができる。
以下、本実施形態に係る光音響装置の各構成の詳細を説明する。
(光照射部110)
光照射部110は、互いに波長の異なる2つの光源として第1の光源111aおよび第2の光源111bを含む。また、光照射部110は、第1の光源111aおよび第2の光源111bから射出された光を被検体100へ導く第1の光学系112aおよび第2の光学系112bを含む。また、光照射部110は、第1の光源111aおよび第2の光源111bの駆動を制御する第1の駆動部113aおよび第2の駆動部113bを含む。
第1、第2の光源111a、111bが発する光のパルス幅としては、1ns以上、100ns以下のパルス幅であってもよい。また、光の波長として400nmから1600nm程度の範囲の波長であってもよい。血管を高解像度でイメージングする場合は、血管での吸収が大きい波長(400nm以上、700nm以下)を用いてもよい。生体の深部をイメージングする場合には、生体の背景組織(水や脂肪など)において典型的に吸収が少ない波長(700nm以上、1100nm以下)の光を用いてもよい。なお、複数の波長の光をそれぞれ発することのできる波長可変の光源を用いてもよい。
第1、第2の光源111a、111bとしては、レーザや発光ダイオード(LED)を用いることができる。また、波長の変更が可能な光源であってもよい。
例えば、第1、第2の光源111a、111bは、周波数1MHz以上の鋸波状の駆動波形(駆動電流)に追随して光を発することのできる半導体レーザもしくはLEDを採用してもよい。
第1、第2の光学系112a、112bには、レンズ、ミラー、光ファイバ等の光学素子を用いることができる。乳房等を被検体100とする場合、パルス光のビーム径を広げて照射するために、光学系の光出射部は光を拡散させる拡散板等で構成されていてもよい。一方、光音響顕微鏡においては、解像度を上げるために、第1、第2の光学系112a、112bの光出射部はレンズ等で構成し、ビームをフォーカスして照射してもよい。なお、光照射部110が光学系112a、112bを備えずに、第1、第2の光源111a、111bから直接被検体100に光を照射してもよい。
第1、第2の駆動部113a、113bは、第1、第2の光源111a、111bを駆動する駆動電流(第1、第2の光源111a、111bに投入する電流)を生成するものである。第1、第2の駆動部113a、113bには、時間的に第1、第2の光源111a、111bへの投入電流を変化させることのできる電源を用いることができる。第1、第2の駆動部113a、113bが、第1、第2の光源111a、111bの出力を制御することにより、図1に示すような光を発生させて符号化を実現する。なお、第1、第2の駆動部113a、113bは、後述するコンピュータ150内の制御部153により制御されてもよい。また、第1、第2の駆動部113a、113bが電流値を制御する制御部を有し、この制御部が投入電流を制御してもよい。駆動電流と照射光の強度との関係については後述する。
(受信部120)
受信部120は、音響波を受信することにより電気信号を出力するトランスデューサと、トランスデューサを支持する支持体とを含む。
トランスデューサを構成する部材としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック材料や、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電膜材料などを用いることができる。また、圧電素子以外の素子を用いてもよい。例えば、静電容量型トランスデューサ(CMUT:Capacitive Micro−machined Ultrasonic Transducers)、ファブリペロー干渉計を用いたトランスデューサなどを用いることができる。なお、音響波を受信することにより電気信号を出力できる限り、いかなるトランスデューサを採用してもよい。また、トランスデューサにより得られる信号は時間分解信号である。つまり、トランスデューサにより得られる信号の振幅は、各時刻にトランスデューサで受信される音圧に基づく値(例えば、音圧に比例した値)を表したものである。
光音響波を構成する周波数成分は、典型的には100KHzから100MHzであり、トランスデューサとして、これらの周波数を検出することのできるものを採用することができる。
支持体は、1Dアレイ、1.5Dアレイ、1.75Dアレイ、2Dアレイと呼ばれるような平面又は曲面内に、複数のトランスデューサを並べて配置してもよい。曲面内に複数のトランスデューサが並べる場合、3次元に配置されたトランスデューサアレイともいえる。
また、受信部120が、トランスデューサから出力される時系列のアナログ信号を増幅する増幅器を備えてもよい。また、受信部120が、トランスデューサから出力される時系列のアナログ信号を時系列のデジタル信号に変換するA/D変換器を備えてもよい。すなわち、受信部120が後述する信号収集部140を備えてもよい。
なお、音響波を様々な角度で検出できるようにするために、理想的には被検体100を全周囲から囲むようにトランスデューサを配置してもよい。ただし、被検体100が大きく全周囲を囲むようにトランスデューサを配置できない場合は、半球状の支持体上にトランスデューサを配置して全周囲を囲む状態に近づけてもよい。なお、トランスデューサの配置や数及び支持体の形状は被検体に応じて最適化すればよく、本発明に関してはあらゆる受信部120を採用することができる。
受信部120と被検体100との間の空間は、光音響波が伝搬することができる媒質で満たしてもよい。この媒質には、音響波が伝搬でき、被検体100やトランスデューサとの界面において音響特性が整合し、できるだけ光音響波の透過率が高い材料を採用する。例えば、この媒質には、水、超音波ジェルなどを採用することができる。
また、本実施形態に係る装置が、光音響画像に加えて、音響波の送受信により超音波画像も生成する場合、トランスデューサは、音響波を送信する送信手段として機能してもよい。受信手段としてのトランスデューサと送信手段としてのトランスデューサとは、単一(共通)のトランスデューサでもよいし、別々の構成であってもよい。
(信号収集部140)
信号収集部140は、受信部120から出力されたアナログ信号である電気信号を増幅するアンプと、アンプから出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを含む。信号収集部140は、FPGA(Field Programmable Gate Array)チップなどで構成されてもよい。信号収集部140から出力されるデジタル信号は、コンピュータ150内の記憶部152に記憶される。信号収集部140は、Data Acquisition System(DAS)とも呼ばれる。本明細書において電気信号は、アナログ信号もデジタル信号も含む概念である。なお、信号収集部140は、光照射部110の光射出部に取り付けられた光検出センサと接続されており、光が光照射部110から射出されたことをトリガーに、同期して処理を開始してもよい。また、信号収集部140は、フリーズボタンなどを用いてなされる指示をトリガーとして同期して、当該処理を開始してもよい。
(コンピュータ150)
情報処理装置としてのコンピュータ150は、演算部151、記憶部152、制御部153を含む。各構成の機能については処理フローの説明の際に説明する。
演算部151としての演算機能を担うユニットは、CPUやGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)チップ等の演算回路で構成されることができる。これらのユニットは、単一のプロセッサや演算回路から構成されるだけでなく、複数のプロセッサや演算回路から構成されていてもよい。演算部151は、入力部170から、被検体音速や音響波が伝搬する媒質の音速の構成などの各種パラメータを受けて、受信信号を処理してもよい。
記憶部152は、ROM(Read only memory)、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの非一時記憶媒体で構成することができる。また、記憶部152は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の媒体であってもよい。なお、プログラムが格納される記憶媒体は、非一時記憶媒体である。なお、記憶部152は、1つの記憶媒体から構成されるだけでなく、複数の記憶媒体から構成されていてもよい。
記憶部152は、後述する方法で演算部151により生成される光音響画像を示す画像データを保存することができる。
制御部153は、CPUなどの演算素子で構成される。制御部153は、光音響装置の各構成の動作を制御する。制御部153は、入力部170からの測定開始などの各種操作による指示信号を受けて、光音響装置の各構成を制御してもよい。また、制御部153は、記憶部152に格納されたプログラムコードを読み出し、光音響装置の各構成の作動を制御する。
コンピュータ150は専用に設計されたワークステーションであってもよい。また、コンピュータ150の各構成は異なるハードウェアによって構成されてもよい。また、コンピュータ150の少なくとも一部の構成は単一のハードウェアで構成されてもよい。
図4は、本実施形態に係るコンピュータ150の具体的な構成例を示す。本実施形態に係るコンピュータ150は、CPU154、GPU155、RAM156、ROM157、外部記憶装置158から構成される。また、コンピュータ150には、表示部160としての液晶ディスプレイ161、入力部170としてのマウス171、キーボード172が接続されている。
また、コンピュータ150および受信部120は、共通の筺体に収められた構成で提供されてもよい。また、筺体に収められたコンピュータで一部の信号処理を行い、残りの信号処理を筺体の外部に設けられたコンピュータで行ってもよい。この場合、筺体の内部および外部に設けられたコンピュータを総称して、本実施形態に係るコンピュータとすることができる。すなわち、コンピュータを構成するハードウェアが一つの筺体に収められていなくてもよい。
(表示部160)
表示部160は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)などのディスプレイである。コンピュータ150により得られた被検体情報等に基づく画像や特定位置の数値等を表示する装置である。表示部160は、画像や装置を操作するためのGUIを表示してもよい。なお、被検体情報の表示にあたっては、表示部160またはコンピュータ150において画像処理(輝度値の調整等)を行った上で表示することもできる。
(入力部170)
入力部170としては、ユーザーが操作可能な、マウスやキーボードなどで構成される操作コンソールを採用することができる。また、表示部160をタッチパネルで構成し、表示部160を入力部170として利用してもよい。
なお、光音響装置の各構成はそれぞれ別の装置として構成されてもよいし、一体となった1つの装置として構成されてもよい。また、光音響装置の少なくとも一部の構成が一体となった1つの装置として構成されてもよい。
(被検体100)
被検体100は光音響装置を構成するものではないが、以下に説明する。本実施形態に係る光音響装置は、人や動物の悪性腫瘍や血管疾患などの診断や化学治療の経過観察などを目的として使用できる。よって、被検体100としては、生体、具体的には人体や動物の乳房や各臓器、血管網、頭部、頸部、腹部、手指および足指を含む四肢などの診断の対象部位が想定される。例えば、人体が測定対象であれば、オキシヘモグロビンあるいはデオキシヘモグロビンやそれらを含む多く含む血管あるいは腫瘍の近傍に形成される新生血管などを光吸収体の対象としてもよい。また、頸動脈壁のプラークなどを光吸収体の対象としてもよい。また、メチレンブルー(MB)、インドシニアングリーン(ICG)などの色素、金微粒子、またはそれらを集積あるいは化学的に修飾した外部から導入した物質を光吸収体としてもよい。また、穿刺針や穿刺針に付された光吸収体を観察対象としてもよい。
<符号要素{1}に相当する光音響波の受信信号>
本実施形態に係る光音響装置を用いたときの各符号要素に相当する照射光、及び、光音響波の受信信号について考察する。まず、図5または図6を用いて、符号要素{1}に相当する照射光、及び、光音響波の受信信号について説明する。図5及び6に示すデータは、シミュレーションにより得られたデータである。
図5(a)は、第1の光源111aあるいは第2の光源111bとして半導体レーザを用いた場合の、半導体レーザの電流−光出力特性を示す図である。当該半導体レーザのしきい値電流は0.5A、投入電流が2Aのときの光出力は1Wとなる。半導体レーザの場合、典型的に閾値電流以上の電流の領域では、電流−光出力特性は略線形の関係となる。すなわち、半導体レーザの場合、投入電流の時間波形が光出力(照射光の強度)の時間波形となる。
図5(b)は、正の符号要素に対応する光を発生させるための駆動電流(第1の駆動電流)を示しており、50nsの時間で電流値を0から2Aまで上昇させ、950nsの時間で電流値を2Aから0Aまで低下させている。すなわち、第1の駆動電流の中で、正の符号要素に対応するタイミングでの電流の時間変化に比べて、その他のタイミングの方が電流の時間変化が小さい。この結果、正の符号要素に対応する正の強度変調光は、正の符号要素に対応する基準タイミングでの光強度の時間変化が、その他のタイミングの光強度の時間変化よりも大きい。
図5(c)は、図5(b)の駆動電流で半導体レーザを駆動した場合の光出力を示している。前述したように、駆動電流に対して光が略線形に出力されていることが理解される。
図6(a)は、点状の光吸収体に光を照射した場合に発生する光音響波を受信帯域が無限大のトランスデューサで受信した場合の受信信号を示している。これは、図5(c)の光出力曲線を時間微分したものに等しい。このように、短時間に光出力が急上昇するときに対応じて正の大きな受信信号が得られる。
なお、実際には、トランスデューサの受信帯域が無限大であることはあり得なく、何らかの周波数特性を有している。図6(b)は、中心周波数4MHz,6dB帯域2−6MHzの周波数特性を持つトランスデューサの受信特性を示したものである。図6(c)は、図6(b)に示す受信特性を有するトランスデューサで、図5(c)の光照射により発生した光音響波を受信した場合の受信信号を示している。このように、トランスデューサの受信特性を考慮しても、短時間に光出力が急上昇するときに対応じて正の大きな受信信号が得られることになる。この正の大きな受信信号が、正の符号要素(例えば、符号要素{1})に対応する受信信号となる。
図6においては、音源から受信手段までの光音響波の伝搬時間については無視している。
<符号要素{−1}に相当する光音響波>
詳細の説明は割愛するが、図5(b)の駆動電流を時間軸で反転させた駆動電流(第2の駆動電流)で半導体レーザを駆動した場合に得られる光音響波の受信信号は、図6(c)を時間軸で反転させ、かつ、信号レベルの正負を反転させた波形となる。すなわち、第2の駆動電流の中で、負の符号要素に対応するタイミングでの電流の時間変化に比べて、その他のタイミングの方が電流の時間変化が小さい。この結果、負の符号要素に対応する負の強度変調光は、負の符号要素に対応する基準タイミングでの光強度の時間変化が、その他のタイミングの光強度の時間変化よりも大きい。なお、このようにして得られる負の大きな受信信号が、負の符号要素(例えば、符号要素{−1})に対応する受信信号となる。
<光音響画像の生成フロー>
次に、本実施形態に係る光音響装置を用いた符号化・復号化により光音響画像を生成する方法(情報取得方法)を説明する。
S1.光照射部110が第1の符号系列で符号化された第1の波長の光および第2の符号系列で符号化された第2の波長の光を照射する。
S2.符号化された光によって発生する光音響波を、受信部120に含まれる複数のトランスデューサが受信し、第1の受信信号を出力する。
S3.光照射部110が第3の符号系列で符号化された第1の波長の光および第4の符号系列で符号化された第2の波長の光およびを照射する。
S4.符号化された光によって発生する光音響波を、受信部120に含まれる複数のトランスデューサが受信し、第1の受信信号を出力する。
S5.演算部151は、複数のトランスデューサから出力された第1、第2の受信信号に対して復号処理を行い、トランスデューサ毎に復号された受信信号(復号信号)を生成する。
S6.演算部151は、複数のトランスデューサに対応する複数の復号信号を用いて、光音響画像を生成する。
具体的な符号化・復号化の方法に関しては、実施例で後述する。
<再構成手法>
演算部151は、複数の復号信号を計算空間に逆投影(単純逆投影)して、画像データを生成することができる。すなわち、演算部151は、時間信号である復号信号を空間分布データに変換してもよい。例えば、演算部151は、複数の復号信号を整相加算して深さ方向に直線状の画像データ(1ライン分の画像データ)を取得してもよい。また、演算部151は、この処理を複数のラインに対して実行することにより、二次元または3次元の画像データを生成してもよい。なお、整相加算により得られた空間分布データに対して包絡線処理を行って、画像データを生成してもよい。
ところで、PATの画像再構成手法として、Universal Back Projection(UBP)法が知られている。これは、受信部で得られた受信信号を時間微分し、かつ正負を反転したデータを逆投影することで光音響画像を得る手法である。これは、インパルス状のパルス光を照射したときに発生する光音響波がN−shapeと呼ばれるアルファベットのN字のような形状を持つ場合に採用できる手法である。
一方、本実施形態で発生する光音響波は、N−shapeの前半部と後半部を分離し、前半部を符号要素{1}に相当する光音響波、後半部を符号要素{−1}に相当する光音響波としたものと便宜上理解できる。そのため、本実施形態のように符号化し、復号された受信信号では、UBP法を適用しても正しい結果は得られない。そのため、本実施形態においては、演算部151は、復号された受信信号に対してUBP法で行われる前処理を行うことなく、位相を整合した後に加算する整相加算処理を行い、逆投影することが好ましい。本明細書では、復号された受信信号に対してUBP法で行われる前処理を実行することなく逆投影する再構成手法を、単純逆投影と称している。その他、信号データを3次元のボリュームデータに変換する再構成アルゴリズムとしては、タイムドメインでの逆投影法、フーリエドメインでの逆投影法、モデルベース法(繰り返し演算法)などのあらゆる手法を採用してもよい。
<相補符号を適用した符号化・復号化>
相補符号を適用した2波長の光照射による符号化・復号化について説明する。
符号長Nの2つの符号系列{a}、{c}、(i=1からN、Nは符号長、各符号要素は1もしくは−1)において、それぞれの自己相関関数の和が、ピークにおいて2Nとなり、ピーク以外のすべての点でOとなる符号系列の組を相補符号と呼ぶ。
ここで、自己相関関数を、
Figure 2018086265
のように表す。
例えば、{a}={1,1}、{c}={1,−1}の組は相補符号である。
すなわち、(a*a)={1,2,1}、(c*c)={−1,2,−1}、(a*a)+(c*c)={0,4,0}となる。
符号長が2のn乗、あるいは5×2のn乗の場合、相補符号が存在することが知られている(nは自然数)。
相補符号である、ある符号系列の組に対し、それぞれの相互相関関数の和が0となる相補符号が存在する。このように、2組の相補符号において、それぞれの相互相関関数の和が0となる関係のことを便宜上「完全直交の関係」と呼ぶ。
ここで、相互相関関数を、
Figure 2018086265
のように表す。
例えば、相補符号である第1の符号系列{a}={1,1}、第3の符号系列{c}={1,−1}の組に対し、第2の符号系列{b}={1,−1}、第4の符号系列{d}={1,1}の組は「完全直交の関係」を満たす。すなわち、(a*b)={−1,0,1}、(c*d)={1,0,−1}、(a*b)+(c*d)=0となる。このとき、(b*a)+(d*c)=0も成立する。
符号長8の場合、
第1の符号系列{a}={1,1,−1,1,−1,−1,−1,1}
第2の符号系列{b}={1,1,−1,1,1,1,1,−1}
第3の符号系列{c}={1,−1,−1,−1,−1,1,−1,−1}
第4の符号系列{d}={1,−1,−1,−1,1,−1,1,1}
とする。このとき、
(a*a)={1,0,−3,0,−1,0,−1,8,−1,0,−1,0,−3,0,1}
(c*c)={−1,0,3,0,1,0,1,8,1,0,1,0,3,0,−1}
(a*a)+(c*c)={0,0,0,0,0,0,0,16,0,0,0,0,0,0,0}
となり、第1の符号系列{a}と第3の符号系列{c}の組は相補符号である。同様に、
(b*b)={−1,0,3,0,1,0,1,8,1,0,1,0,3,0,−1}
(d*d)={1,0,−3,0,−1,0,−1,8,−1,0,−1,0,−3,0,1}
(b*b)+(d*d)={0,0,0,0,0,0,0,16,0,0,0,0,0,0,0}
となり、第2の符号系列{b}と第4の符号系列{d}の組も相補符号である。また、
(a*b)={−1,0,3,0,3,0,−1,0,−3,0,1,0,−3,0,1}
(c*d)={1,0,−3,0,−3,0,1,0,3,0,−1,0,3,0,−1}
(a*b)+(c*d)=0
(b*a)={1,0,−3,0,1,0,−3,0,−1,0,3,0,3,0,−1}
(d*c)={−1,0,3,0,−1,0,3,0,1,0,−3,0,−3,0,1}
(b*a)+(d*c)=0
となり、第1の相補符号である符号系列{a}及び{c}の組と、第2の相補符号である符号系列{b}及び{d}の組は「完全直交の関係」を満たす。
このように「完全直交の関係」を満たす符号系列の組を用いると、以下のようなことが実現できる。すなわち、
・第1の符号系列{a}で符号化した信号Aと第3の符号系列{c}で符号化した信号Cがあるとき、信号Aを第1の符号系列{a}で復号化した信号と信号Cを第3の符号系列{c}で復号化した信号との和はデルタ関数となる。
・信号Aを第2の符号系列{b}で復号化した信号と信号Cを第4の符号系列{d}で復号化した信号との和は0となる。
・第2の符号系列{b}で符号化した信号Bと第4の符号系列{d}で符号化した信号Dがあるとき、信号Bを第2の符号系列{b}で復号化した信号と信号Dを第4の符号系列{d}で復号化した信号との和はデルタ関数となる。
・信号Bを第1の符号系列{a}で復号化した信号と信号Dを第3の符号系列{c}で復号化した信号との和は0となる。
このような符号系列を2波長の光を用いた光音響装置に適用し、第1の波長の光を第1の符号系列{a}および第3の符号系列{c}で符号化し、第2の波長の光を第2の符号系列{b}および第4の符号系列{d}で符号化する。この場合、光の照射時間が重複していても、復号処理により、第1の波長の光に起因する信号と、第2の波長の光に起因する信号とを分離して取得することができる。
図3に示す光音響装置を用いて、照射光として、異なる2つの波長の光を用いた場合を説明する。本実施例では、第1の光源111aには、波長755nm(第1の波長λ1)、光出力最大1Wの半導体レーザを用いる。また、第2の光源111bには、波長795nm(第2の波長λ2)、光出力最大1Wの半導体レーザを用いる。受信部120には、中心周波数4MHz,6dB帯域2−6MHzの周波数特性を持つ圧電素子からなるリニアアレイを用いる。受信部120と被検体100との間は音響マッチングのために超音波ジェルで埋められている。
本実施例では、符号長8の相補符号を用いる。具体的には、
第1の符号系列{a}={1,1,−1,1,−1,−1,−1,1}
第2の符号系列{b}={1,1,−1,1,1,1,1,−1}
第3の符号系列{c}={1,−1,−1,−1,−1,1,−1,−1}
第4の符号系列{d}={1,−1,−1,−1,1,−1,1,1}
である。
本実施例では、図7に示すシーケンスで、第1の波長の強度変調光の照射、第2の波長の強度変調光の照射、強度変調光の照射により発生する光音響波の受信信号の取得を行い、符号化が行われる。
まず、光照射部110が、第1の符号系列{a}に対応する第1の波長の強度変調光と、第2の符号系列{b}に対応する第2の波長の強度変調光とを同期して被検体100に照射する。そして、受信部120は、その光照射により発生した光音響波を受信し、受信信号Sを出力する。
次に、光照射部110が、第3の符号系列{c}に対応する第1の波長の強度変調光と、第4の符号系列{d}に対応する第2の波長の強度変調光とを同期して被検体100に照射する。そして、受信部120は、その光照射により発生した光音響波を受信し、受信信号Sを出力する。このようにして得られた受信信号S及びSが、本実施例に係る符号化された信号(符号信号)である。
以下、本実施例に係る符号化及び復号化について詳述する。
制御部153は、第1の符号系列{a}に関する情報を第1の駆動部113aに送信し、第2の符号系列{b}に関する情報を第2の駆動部113bに送信する。
図8(a)は、第1の符号系列{a}に関する情報に基づいて、第1の駆動部113aが生成した駆動電流によって駆動された第1の光源111aの光出力波形(第1の波長の第1の強度変調光)である。ここで、基準タイミングの時間間隔(符号要素の周期に相当する)は1000nsである。正の符号要素に対応する第1の駆動電流の立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ50ns、950nsである。負の符号要素に対応する第2の駆動電流の立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ950ns、50nsである。
被検体100中の深さ3mmの位置に点状の光吸収体が存在すると仮定する。
光吸収体の波長755nmの光および波長795nmの光に対する吸収係数の比を1:0.5とする。
その点状の光吸収体(音源)に図8(a)に示す光を照射した際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図8(b)のような波形となる。実際には、点状の光吸収体から受信部120まで光音響波が伝搬する時間(約2μs)の分だけ時間がずれるが、その時間は無視して表記している。
また、図8(c)は、第2の符号系列{b}に関する情報に基づいて、第2の駆動部113bが生成した駆動電流によって駆動された第2の光源111bの光出力波形(第2の波長の第2の強度変調光)である。ここで、図8(a)と同様、基準タイミングの時間間隔(符号要素の周期に相当する)は1000nsである。正の符号要素に対応する第1の駆動電流の立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ50ns、950nsである。負の符号要素に対応する第2の駆動電流の立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ950ns、50nsである。
上記した点状の光吸収体(音源)に図8(c)に示す光を照射した際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図8(d)のような波形となる。実際には、点状の光吸収体から受信部120まで光音響波が伝搬する時間(約2μs)の分だけ時間がずれるが、その時間は無視して表記している。
第1の光源111aの光出力と第2の光源111bの光出力とを同期させた場合(略同じタイミング光照射した場合)、受信部120が受信して得られる受信信号は、図8(b)と図8(d)との和となる。すなわち、第1の波長の第1の強度変調光の照射と第2の波長の第2の強度変調光の照射を略同じタイミングに行うことにより得られる受信信号をS(t)とし、図9に示す。ここで、雑音の抑圧効果を説明するため、平均値0、標準偏差0.2の雑音を付加している。
続いて、制御部153は、第3の符号系列{c}に関する情報を第1の駆動部113aに送信し、第4の符号系列{d}に関する情報を第2の駆動部113bに送信する。
図10(a)は、第3の符号系列{c}に関する情報に基づいて、第1の駆動部113aが生成した駆動電流によって駆動された第1の光源111aの光出力波形(第1の波長の第3の強度変調光)である。ここで、図8(a)と同様、基準タイミングの時間間隔(符号要素の周期に相当する)は1000nsである。正の符号要素に対応する第1の駆動電流の立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ50ns、950nsである。負の符号要素に対応する第2の駆動電流の立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ950ns、50nsである。
上記した点状の光吸収体(音源)に図10(a)に示す光を照射した際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図10(b)のような波形となる。実際には、点状の光吸収体から受信部120まで光音響波が伝搬する時間(約2μs)の分だけ時間がずれるが、その時間は無視して表記している。
また、図10(c)は、第4の符号系列{d}に関する情報に基づいて、第2の駆動部113bが生成した駆動電流によって駆動された第2の光源111bの光出力波形(第2の波長の第4の強度変調光)である。ここで、図8(a)と同様、基準タイミングの時間間隔(符号要素の周期に相当する)は1000nsである。正の符号要素に対応する第1の駆動電流の立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ50ns、950nsである。負の符号要素に対応する第2の駆動電流の立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ950ns、50nsである。
上記した点状の光吸収体(音源)に図10(c)に示す光を照射した際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図10(d)のような波形となる。実際には、点状の光吸収体から受信部120まで光音響波が伝搬する時間(約2μs)の分だけ時間がずれるが、その時間は無視して表記している。
第1の光源111aの光出力と第2の光源111bの光出力とを同期させた場合、受信部120が受信して得られる受信信号は、図10(b)と図10(d)との和となる。すなわち、第1の波長の第3の強度変調光の照射と第2の波長の第4の強度変調光の照射を略同じタイミングに行うことにより得られる受信信号をS(t)とし、図11に示す。ここで、雑音の抑圧効果を説明するため、平均値0、標準偏差0.2の雑音を付加している。
コンピュータ150内の演算部151が行う、符号化された受信信号の復号方法について説明する。
基準タイミングの時間間隔をΔtとしたとき、演算部151は、受信信号S1及びS2に対して(式3)にしたがった復号処理を行うことにより、第1の波長に対応する復号信号DS(t)を得る。また、演算部151は、受信信号S1及びS2に対して(式4)にしたがった復号処理を行うことにより、第2の波長に対応する復号信号DS(t)を得る。
Figure 2018086265
Figure 2018086265
図9の受信波形(第1の波長の第1の強度変調光、及び、第2の波長の第2の強度変調光による受信信号S)に対して(式3)の右辺第一項の復号処理を行った結果、図12(a)のような復号された受信信号を得ることができる。また、図11の受信波形(第1の波長の第3の強度変調光、及び、第2の波長の第4の強度変調光による受信信号S)に対して(式3)の右辺第二項の復号処理を行った結果、図12(b)のような復号された受信信号を得ることができる。そして、図12(a)と図12(b)の和は、図12(c)の波形(復号信号DS)となる。すなわち、(式3)により復号された信号DSでは、1回の光照射により得られる受信信号と比べてピーク値は16倍になり、サイドローブは雑音以下に抑えられていることがわかる。
また、図9の受信波形(第1の波長の第1の強度変調光、及び、第2の波長の第2の強度変調光による受信信号S)に対して(式4)の右辺第一項の復号処理を行った結果、図13(a)のような復号された受信信号を得ることができる。また、図11の受信波形(第1の波長の第3の強度変調光、及び、第2の波長の第4の強度変調光による受信信号S)に対して(式4)の右辺第二項の復号処理を行った結果、図13(b)のような復号された受信信号を得ることができる。そして、図13(a)と図13(b)の和は、図13(c)の波形(復号信号DS)となる。すなわち、(式4)により復号された信号DSでは、1回の光照射により得られる受信信号と比べてピーク値は16倍になり、サイドローブは雑音以下に抑えられていることがわかる。
また、図12(c)、図13(c)を比較すると、吸収体の吸収係数の比が保存されていることがわかる。これは、受信信号に含まれる、被検体が有する光吸収に関する情報が、符号化・復号化を行っても保存されることを意味する。よって、各波長に対応する復号信号DS及びDSを解析することにより、血液のヘモグロビン濃度などの分光情報を得ることが可能となる。
さらに、図12(c)または図13(c)の信号は、図9または図11の信号と比べ、雑音レベルが抑圧されていることがわかる。本実施例のように符号長8の符号系列の組を用いた場合、信号レベルは16倍、雑音レベルは4倍となり、S/N比は4倍向上する。
演算部151は、このようにして得られた復号信号を用いて光音響画像を生成することでS/N比を向上させた光音響画像を得ることが可能となる。受信部120が複数のトランスデューサを備える場合、各トランスデューサから出力された受信信号に対して復号処理を行い、トランスデューサ毎に復号信号が生成される。演算部151は、複数のトランスデューサに対応する複数の復号信号を用いて、前述した再構成手法等により光音響画像を生成することができる。
本実施例では、光照射による符号化の際に、負の符号要素に対応する光照射(負の強度変調光)を行っているため、負の符号要素を含む符号系列に基づいて精度良く符号化することができる。そのため、本実施例によれば、このように符号化された信号を、負の符号要素を含む符号系列に基づいた復号化(例えば、(式3)、(式4)に示す復号処理)によって精度良く復号することができる。このように、負の符号要素に対応する光照射を行うことにより、負の符号要素を0として光照射しない場合と比べて、精度良く復号することができる。
また、本実施例では、第1の光源111aからの照射光と第2の光源111bからの照射光とを略同じタイミングに被検体に照射することで、受信時間を共通化している。その結果、2つの波長の光による光音響波を時間的に分離して受信する場合と比べ、より少ない時間でS/N比を向上させることが可能となる。
本実施例において、2つの波長の光を同期して被検体に照射する場合を示したが、同じタイミングに光照射することは必須ではない。ただし、測定時間を短くするためには、波長間で光を照射する期間の少なくとも一部を重なるように光照射する(すなわち、波長間で受信期間の少なくとも一部を重ねる)ことが好ましい。
また、2つの波長の光による光音響波を時間的に分離して受信する場合、その時間の間に被検体が動いたりすると信号に時間的なずれが発生する。一方、本実施例の手法によれば、波長間で光を照射する期間を重ねることで、被検体が動いた場合の信号の時間的なずれを小さくできる。
本実施例に係る符号要素の基準タイミングの時間間隔の上限について説明する。
本実施例では、ひとつの波長において、符号長8の符号系列を2つ用いており、復号された受信信号においては、信号レベルは16倍、雑音レベルは4倍となっている。そのため、S/N比は4倍向上することになる。
一般的に知られるインパルス状のパルス光を照射して光音響波を発生させる手法で同じS/N比の向上を得るには、単純に受信信号を16回取得しそれを平均する必要がある。被検体中の光の伝搬の時間は短いので無視すると、一般的な手法において、受信信号を16回取得するのに要する時間は16Ttofとなる。さらに、2波長分の受信信号を得る必要があるので、測定に要する時間は32Ttofとなる。
第1の符号系列{a}に相当する受信信号の取得に要する時間は、第1の符号系列{a}に相当する光を照射する時間に、最後の符号要素に対応する光によって発生した光音響波が受信部に到達するまでの時間を加えたものとなる。すなわち、その時間は7Δt+Ttofとなる。第2〜第4の符号系列{b}、{c}、及び{d}に相当する受信信号の取得に要する時間も同一である。そのため、第1〜第4の符号系列{a}、{b}、{c}、及び{d}に対応する受信信号の取得を順番に(直列に)実行する場合、第1の波長及び第2の波長に起因する受信信号の取得に要する時間は28Δt+4Ttofとなる。
本実施例では、第1の波長の光と第2の波長の光とを同時に照射し、受信信号の取得の同時に行っている。これにより、本実施例による受信信号の取得に要する時間は14Δt+2Ttofとなり、各波長の信号を時間的に分離する手法と比べて、受信信号の取得に要する時間は削減される。
本実施例による手法のほうが受信信号の取得に要する時間が短ければ、一般的な手法と比較してS/N比の向上の効果が高いといえる。この条件は、14Δt<30Ttofである。符号長Nを用いて一般化すると、この条件は、
Figure 2018086265
Nがある程度大きいとき、Δt<2Ttofであることが望ましい。すなわち、基準タイミングの時間間隔は、被検体の観察領域の最深部で発生した光音響波が受信部に到達するのに要する時間の2倍よりも小さいことが好ましい。例えば、被検体の観察領域の最深部が5cm、被検体内の音速が1500m/sの場合、最深部で発生した光音響波が受信部に到達するまでの時間は33μsとなる。この場合、基準タイミングの時間間隔は66μsよりも短くすることが好ましい。符号長8の場合は、(式5)より、71μsよりも短くすることが好ましい。なお、制御部153は、ユーザーが入力部170を用いて指示した関心領域に応じて、最深部で発生した光音響波が受信部に到達するまでの時間よりも短い基準タイミングの時間間隔となるように変更してもよい。また、制御部153は、ユーザーの指示や計算により決定された被検体の音速に応じて、最深部で発生した光音響波が受信部に到達するまでの時間よりも短い基準タイミングの時間間隔となるように変更してもよい。最深部とは、受信部から最も離れている観察領域(関心領域)の位置のことを指す。
<駆動部の構成>
第1の駆動部113aあるいは第2の駆動部113bは、第1の駆動電流と第2の駆動電流の双方を発生可能な1つの電源から構成されてもよい。また、第1の駆動部113aあるいは第2の駆動部113bは、は、第1の駆動電流を発生可能な第1の電源と、第2の駆動電流を発生可能な第2の電源とで構成されてもよい。ここでは、各駆動電流を別々の電源で生成する例を、図14を用いて説明する。
図14に示す第1の駆動部113aは、第1の駆動電流を発生可能な第1の電源210a、及び、第2の駆動電流を発生可能な第2の電源220aを含む。制御部153は、1と0からなる第1の制御信号230と−1と0からなる第2の制御信号240を第1の駆動部113aに送信する機能を有する。
例えば、上記した第1の符号系列{a}={1,1,−1,1,−1,−1,−1,1}に対応する光照射を行う場合、第1の制御信号{1,1,0,1,0,0,0,1}と、第2の制御信号{0,0,−1,0,−1,−1,−1,0}に分離し、それぞれを第1の駆動部113aに送信する。すなわち、制御部153は、第1の制御信号230を第1の電源210aに送信し、第2の制御信号240を第2の電源220aに送信する。
第1の電源210aは、第1の制御信号の符号要素{1}のタイミングに合わせて第1の駆動電流を生成し、第1の制御信号の符号要素{0}のタイミングでは電流を0とする、もしくは光音響波の発生が抑制された電流を生成する。第2の電源220aは、第2の制御信号の符号要素{−1}のタイミングに合わせて第2の駆動電流を生成し、第2の制御信号の符号要素{0}のタイミングでは電流を0とする、もしくは光音響波の発生が抑制された電流を生成する。その結果、第1の光源111aには、第1の符号系列{a}に対応する駆動電流(図8(a))と同様の電流が投入される。
図14に示す第2の駆動部113bは、第1の駆動電流を発生可能な第3の電源210b、及び、第2の駆動電流を発生可能な第4の電源220bを含む。制御部153は、1と0からなる第3の制御信号250と−1と0からなる第4の制御信号260を第2の駆動部113bに送信する機能を有する。
例えば、上記した第2の符号系列{b}={1,1,−1,1,1,1,1,−1}に対応する光照射を行う場合、第3の制御信号{1,1,0,1,1,1,1,0}と、第4の制御信号{0,0,−1,0,0,0,0,−1}に分離し、それぞれを第2の駆動部113bに送信する。すなわち、制御部153は、第3の制御信号250を第3の電源210bに送信し、第4の制御信号260を第4の電源220bに送信する。
第3の電源210bは、第3の制御信号の符号要素{1}のタイミングに合わせて第1の駆動電流を生成し、第3の制御信号の符号要素{0}のタイミングでは電流を0とする、もしくは光音響波の発生が抑制された電流を生成する。第4の電源220は、第4の制御信号の符号要素{−1}のタイミングに合わせて第2の駆動電流を生成し、第4の制御信号の符号要素{0}のタイミングでは電流を0とする、もしくは光音響波の発生が抑制された電流を生成する。その結果、第2の光源111bには、第3の符号系列{b}に対応する駆動電流(図8(c))と同様の電流が投入される。
異なる駆動電流をひとつの電源で発生することに比べ、駆動電流毎に別々の電源を用いる装置の方が、第1の駆動部113aあるいは第2の駆動部113bの設計を簡略化できる。また、駆動電流毎に別々の電源を用いる場合、異なる駆動電流を高速に切り替えるときの応答性が高い。その結果、異なる符号要素の光を時間的に重複して被検体に照射することができる。これにより、光の照射効率を高めることができ、短時間で高いS/Nの復号信号を取得することができる。
本実施例において、第1の光源111aと第2の光源111bのピーク光出力の最大強度を同一としたがそれに限ったものではなくい。本実施例において、第1の波長における{1}のレベルと{−1}のレベルはある程度揃っている必要があり、第2の波長における{1}のレベルと{−1}のレベルもある程度揃っている必要がある。ここで、ある程度、とは、平均化することでそのばらつきは無視できる程度に揃っている、という意味である。しかし、第1の波長における{1}のレベルと第2の波長における{1}のレベルは一致している必要はない。例えば、光源の個体差により、同じ投入電流でもその時の光出力が異なる場合がある。その場合、光出力の最大強度が一致するように投入電流を波長ごとにかえてもよい。また、ピーク光出力の最大強度が異なる場合でも、複数の復号信号をそれぞれの光出力の最大ピーク強度で規格化することで補正できる。 あるいは、受信信号をそれぞれの光出力の最大強度で規格化したのちに復号処理を施してもよい。
また、本実施例において、符号長、基準タイミングの時間間隔はここに示したものに限らず、被検体中の観察領域の深さや光源駆動部の性能などに合わせて、S/N比の向上が図れるよう適切なものを用いればよい。
なお、本実施例では、2つの波長のそれぞれに対応する復号信号を取得する例を説明したが、2つの波長の少なくとも一方に対応する復号信号を取得すればよい。すなわち、本実施例では、複数の波長の少なくとも一つに対応する復号信号を取得すればよい。この場合も、所望の波長に対応する復号信号を取得することができる。
<直交符号を適用した符号化・復号化>
「完全直交の関係」を満たす2組の相補符号は存在するが、互いに「完全直交の関係」を満たす3組以上の相補符号は存在しない。よって、実施例1で述べた手法を3波長以上の光に適用することはできない。
3波長以上の光を用いる場合の符号化・復号化の手法について以下に説明する。
以下に示す、符号長4の互いに直交する4つの符号系列{a }(k=1から4、i=1から4)を考える。
第1の符号系列{a }={1,−1,−1,1}
第2の符号系列{a }={1,−1,1,−1}
第3の符号系列{a }={1,1,−1,−1}
第4の符号系列{a }={1,1,1,1}
さらに、以下に示す、この4つの符号系列を重複なく順次並べるための順番を表す互いに異なる4つの順列{g}(m=1から4、各要素は1から4のいずれか)を考える。
第1の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
第2の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
第3の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
第4の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
ここで、順列gおよびgに従って4つの符号系列を並べた場合の、それぞれの相互相関関数の総和を考える。式で表すと以下のように表現できる。
Figure 2018086265
(p,qは1から4の整数)
ここで、p=qのとき、(式6)は自己相関関数の総和となり、ピークにおいて16となり、ピーク以外のすべての点でOとなる。すなわち、
(a* a)={1,−2,−1,4,−1,−2,1}
(a* a)={−1,2,−3,4,−3,2,−1}
(a* a)={−1,−2,1,4,1,−2,−1}
(a* a)={1,2,3,4,3,2,1}
であり、任意のpにおいて、
Figure 2018086265
が成立する。
また、p≠qのとき、(式6)は相互相関関数の総和となり、p≠qであるすべての組み合わせにおいて、すべての点でOとなる。例えば、p=1、q=2の場合、
(a* a)={−1,2,−1,0,1,−2,1}
(a* a)={1,−2,1,0,−1,2,−1}
(a* a)={1,2,1,0,−1,−2,−1}
(a* a)={−1,−2,−1,0,1,2,1}
であり、
Figure 2018086265
が成立する。
このような特性を有する符号系列の組を用いると、以下のようなことが実現できる。すなわち、
・ある順列gで決まる順番の4つの符号系列に従って、符号化した信号を順次取得し、取得した信号を同じ順列gで決まる順番の4つの符号系列に従って順次復号化した場合、復号化した信号の総和はデルタ関数となる。
・ある順列gで決まる順番の4つの符号系列に従って、符号化した信号を順次取得し、取得した信号をそれと異なる順列gで決まる順番の4つの符号系列に従って順次復号化した場合、復号化した信号の総和は0となる。
このような符号系列とその順番を示す順列を互いに異なる複数の波長の光を用いた光音響装置に適用した場合、光の照射時間が重複していても、ある波長の光に起因する信号と、その他の波長の光に起因する信号とを分離して取得することができる。
波長の数、符号長、及び互いに直交する符号系列の数の好適な関係について説明する。波長数が2から4の場合、符号長は4、直交する符号の数は4とするのが好ましい。波長数が5から8の場合、符号長は8、直交する符号の数は8とするのが好ましい。直交する符号系列の数は波長の数以上の2のべき乗数とするのが好ましい。
本実施例では、図15に示す光音響装置を用いて、照射光として異なる3つの波長の光を用いた場合を説明する。図3と共通する部材には同じ番号を付し、説明は省略する。本実施例では、第1の光源311aには、波長755nm(第1の波長λ1)、光出力最大1Wの半導体レーザを用いる。また、第2の光源311bには、波長795nm(第2の波長λ2)、光出力最大1Wの半導体レーザを用いる。また、第3の光源311cには、波長825nm(第3の波長λ3)、光出力最大1Wの半導体レーザを用いる。受信部120には、中心周波数4MHz,6dB帯域2−6MHzの周波数特性を持つ圧電素子からなるリニアアレイを用いる。受信部120と被検体100との間は音響マッチングのために超音波ジェルで埋められている。
本実施例では、符号長4の互いに直交する4つの符号系列を用いる。具体的には、
第1の符号系列{a }={1,−1,−1,1}
第2の符号系列{a }={1,−1,1,−1}
第3の符号系列{a }={1,1,−1,−1}
第4の符号系列{a }={1,1,1,1}
である。また、第1、第2、第3の波長の光それぞれに割り当てた順列を
第1の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
第2の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
第3の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
とする。
すなわち、第1の順列で決まる順番で4つの符号系列を第1の波長の光に割り当てる。また、第2の順列で決まる順番で4つの符号系列を第2の波長の光に割り当てる。また、第3の順列で決まる順番で4つの符号系列を第3の波長の光を割り当てる。
本実施例に係る光音響装置の符号化・復号化のフローを説明する。ここで、被検体100中の深さ3mmの位置に点状の光吸収体が存在すると仮定する。光吸収体の波長755nmの光、波長795nm、波長825nmの光に対する吸収係数の比を1:0.5:0.75とする。
本実施例では、図16に示すシーケンスで、各順列の同じ番号の要素の強度変調光を同期して被検体100に照射し、符号化が行われる。
まず、1番目の順列要素については、光照射部110が、第1の符号系列{a }に対応する第1の波長の強度変調光、第2の符号系列{a }に対応する第2の波長の強度変調光、及び第3の符号系列{a }に対応する第3の波長の強度変調光を同期して照射する。そして、受信部120は、その光照射により発生した光音響波を受信し、受信信号Sを出力する。
次に、2番目の順列要素については、光照射部110が、第2の符号系列{a }に対応する第1の波長の強度変調光、第1の符号系列{a }に対応する第2の波長の強度変調光、及び第4の符号系列{a }に対応する第3の波長の強度変調光を同期して照射する。そして、受信部120は、その光照射により発生した光音響波を受信し、受信信号Sを出力する。
次に、3番目の順列要素については、光照射部110が、第3の符号系列{a }に対応する第1の波長の強度変調光、第4の符号系列{a }に対応する第2の波長の強度変調光、及び第1の符号系列{a }に対応する第3の波長の強度変調光を同期して照射する。そして、受信部120は、その光照射により発生した光音響波を受信し、受信信号Sを出力する。
次に、4番目の順列要素については、光照射部110が、第4の符号系列{a }に対応する第1の波長の強度変調光、第3の符号系列{a }に対応する第2の波長の強度変調光、及び第2の符号系列{a }に対応する第3の波長の強度変調光を同期して照射する。そして、受信部120は、その光照射により発生した光音響波を受信し、受信信号Sを出力する。
なお、各順列要素の各波長の光照射を完全に同期させずに行ってもよい。ただし、単位時間当たりの取得信号のS/N向上のために、複数の波長の強度変調光の照射期間が互いに少なくとも一部重なっていることが好ましい。
<S1.1番目の順列要素に対応する強度変調光照射>
制御部153は、割り当てられた順列に従い、第1の符号系列{a }に関する情報を第1の駆動部313aに送信する。また、制御部153は、割り当てられた順列に従い、第2の符号系列{a }に関する情報を第2の駆動部313bに送信する。また、制御部153は、割り当てられた順列に従い、第3の符号系列{a }に関する情報を第3の駆動部313cに送信する。
第1の光源311aは、第1の符号系列{a }に関する情報に基づいて第1の駆動部313aが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第1の光学系312aを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図17(a)のような波形となる。
第2の光源311bは、第2の符号系列{a }に関する情報に基づいて第2の駆動部313bが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第2の光学系312bを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図17(b)のような波形となる。
第3の光源311cは、第3の符号系列{a }に関する情報に基づいて第3の駆動部313cが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第3の光学系312cを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図17(c)のような波形となる。
<S2.1番目の順列要素に対応する受信信号の取得>
第1の光源311a、第2の光源311b、第3の光源311cの光出力を同期させた場合(略同じタイミングに照射した場合)、受信部120が受信して得られる受信信号は、図17(a)、図17(b)、図17(c)の和となる。このとき得られる受信信号をS(t)とし、図17(d)に示す。すなわち、第1の符号系列{a }に対応する第1の波長の強度変調光、第2の符号系列{a }に対応する第2の波長の強度変調光、及び第3の符号系列{a }に対応する第3の波長の強度変調光を略同じタイミングに照射することによりS(t)が得られる。ここで、雑音の抑圧効果を説明するため、平均値0、標準偏差0.2の雑音を付加している。
<S3.2番目の順列要素に対応する強度変調光照射>
制御部153は、割り当てられた順列に従い、第2の符号系列{a }に関する情報を第1の駆動部313aに送信する。また、制御部153は、割り当てられた順列に従い、第1の符号系列{a }に関する情報を第2の駆動部313bに送信する。また、制御部153は、割り当てられた順列に従い、第4の符号系列{a }に関する情報を第3の駆動部313cに送信する。
第1の光源311aは、第2の符号系列{a }に関する情報に基づいて第1の駆動部313aが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第1の光学系312aを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図18(a)のような波形となる。
第2の光源311bは、第1の符号系列{a }に関する情報に基づいて第2の駆動部313bが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第2の光学系312bを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図18(b)のような波形となる。
第3の光源311cは、第4の符号系列{a }に関する情報に基づいて第3の駆動部313cが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第3の光学系312cを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図18(c)のような波形となる。
<S4.2番目の順列要素に対応する受信信号の取得>
第1の光源311a、第2の光源311b、第3の光源311cの光出力を同期させた場合(略同じタイミングに照射する場合)、受信部120が受信して得られる受信信号は、図18(a)、図18(b)、図18(c)の和となる。このとき得られる受信信号をS(t)とし、図18(d)に示す。すなわち、第2の符号系列{a }に対応する第1の波長の強度変調光、第1の符号系列{a }に対応する第2の波長の強度変調光、及び第4の符号系列{a }に対応する第3の波長の強度変調光を略同じタイミングに照射することによりS(t)が得られる。ここで、雑音の抑圧効果を説明するため、平均値0、標準偏差0.2の雑音を付加している。
<S5.3番目の順列要素に対応する強度変調光照射>
制御部153は、割り当てられた順列に従い、第3の符号系列{a }に関する情報を第1の駆動部313aに送信する。また、制御部153は、割り当てられた順列に従い、第4の符号系列{a }に関する情報を第2の駆動部313bに送信する。また、制御部153は、割り当てられた順列に従い、第1の符号系列{a }に関する情報を第3の駆動部313cに送信する。
第1の光源311aは、第3の符号系列{a }に関する情報に基づいて第1の駆動部313aが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第1の光学系312aを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図19(a)のような波形となる。
第2の光源311bは、第4の符号系列{a }に関する情報に基づいて第2の駆動部313bが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第2の光学系312bを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図19(b)のような波形となる。
第3の光源311cは、第1の符号系列{a }に関する情報に基づいて第3の駆動部313cが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第3の光学系312cを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図19(c)のような波形となる。
<S6.3番目の順列要素に対応する受信信号の取得>
第1の光源311a、第2の光源311b、第3の光源311cの光出力を同期させた場合(略同じタイミングに照射する場合)、受信部120が受信して得られる受信信号は、図19(a)、図19(b)、図19(c)の和となる。このとき得られる受信信号をS(t)とし、図19(d)に示す。すなわち、第3の符号系列{a }に対応する第1の波長の強度変調光、第4の符号系列{a }に対応する第2の波長の強度変調光、及び第1の符号系列{a }に対応する第3の波長の強度変調光を略同じタイミングに照射することによりS(t)が得られる。ここで、雑音の抑圧効果を説明するため、平均値0、標準偏差0.2の雑音を付加している。
<S7.4番目の順列要素に対応する強度変調光照射>
制御部153は、割り当てられた順列に従い、第4の符号系列{a }に関する情報を第1の駆動部313aに送信する。また、制御部153は、割り当てられた順列に従い、第3の符号系列{a }に関する情報を第2の駆動部313bに送信する。また、制御部153は、割り当てられた順列に従い、第2の符号系列{a }に関する情報を第3の駆動部313cに送信する。
第1の光源311aは、第4の符号系列{a }に関する情報に基づいて第1の駆動部313aが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第1の光学系312aを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図20(a)のような波形となる。
第2の光源311bは、第3の符号系列{a }に関する情報に基づいて第2の駆動部313bが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第2の光学系312bを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図20(b)のような波形となる。
第3の光源311cは、第2の符号系列{a }に関する情報に基づいて第3の駆動部313cが生成した駆動電流によって駆動される。発生した光は、第3の光学系312cを通して、点状の光吸収体(音源)に照射される。その際に発生する光音響波を受信部120で受信して得られる受信信号は、図20(c)のような波形となる。
<S8.4番目の順列要素に対応する受信信号の取得>
第1の光源311a、第2の光源311b、第3の光源311cの光出力を同期させた場合(略同じタイミングに照射する場合)、受信部120が受信して得られる受信信号は、図20(a)、図20(b)、図20(c)の和となる。すなわち、第4の符号系列{a }に対応する第1の波長の強度変調光、第3の符号系列{a }に対応する第2の波長の強度変調光、及び第2の符号系列{a }に対応する第3の波長の強度変調光を略同じタイミングに照射することによりS(t)が得られる。このとき得られる受信信号をS(t)とし、図20(d)に示す。ここで、雑音の抑圧効果を説明するため、平均値0、標準偏差0.2の雑音を付加している。
図17から20において、実際には、点状の光吸収体から受信部120まで光音響波が伝搬する時間(約2μs)の分だけ時間がずれるが、その時間は無視して表記している。
<S9.復号化>
コンピュータ150内の演算部151が行う、符号化された受信信号の復号方法について説明する。
基準タイミングの時間間隔をΔtとしたとき、演算部151は、(式7)から(式9)にしたがった復号処理を行うことにより、それぞれの波長に対する復号信号DS(t)、DS(t)、DS(t)を得る。ここで、第1、第2、第3の波長の光それぞれに割り当てたのと同じ順列で決まる順番で、4つの符号系列を復号処理に用いている。
Figure 2018086265
Figure 2018086265
Figure 2018086265
符号長をN、互いに直交する符号系列の数(すなわち順列の要素数)をKとして(式7)から(式9)を一般化すると、(式10)のようになる。
Figure 2018086265
ここで、iは1以上の自然数、{g(j)}は複数の波長のそれぞれに割り当てられた順列、Sは順列要素に対応する受信信号、jは1以上の自然数、KはK≧Mを満たす2のべき乗数である。また、mは1以上M以下の自然数、Mは複数の波長の数、tは時間、Δtは符号系列の符号要素の基準タイミングの時間間隔、である。
第1の波長に対応する復号の様子を、図21を用いて説明する。
図17(d)の受信波形(S)に対して(式7)の右辺第一項の復号処理を行った結果、図21(a)のような復号された受信信号を得ることができる。また、図18(d)の受信波形(S)に対して(式7)の右辺第二項の復号処理を行った結果、図21(b)のような復号された受信信号を得ることができる。また、図19(d)の受信波形(S)に対して(式7)の右辺第三項の復号処理を行った結果、図21(c)のような復号された受信信号を得ることができる。また、図20(d)の受信波形(S)に対して(式7)の右辺第四項の復号処理を行った結果、図21(d)のような復号された受信信号を得ることができる。そして、図21(a)〜(d)の和は、第1の波長に対応する復号信号DSを示す図21(e)となる。すなわち、(式7)により復号された信号DSでは、1回の光照射により得られる受信信号と比べてピーク値は16倍になり、サイドローブは雑音以下に抑えられていることがわかる。
同様に、第2の波長の光照射に対応する復号の様子を図22(a)〜(e)に、第3の波長の光照射に対応する復号の様子を図23(a)〜(e)に示す。これらより、(式8)、(式9)により復号された信号DSまたはDSでは、1回の光照射により得られる受信信号と比べてピーク値は16倍になり、サイドローブは雑音以下に抑えられていることがわかる。
また、図21(e)、図22(e)、図23(e)を比較すると、吸収体の吸収係数の比が保存されていることがわかる。これは、受信信号に含まれる、被検体が有する光吸収に関する情報が、符号化・復号化を行っても保存されることを意味する。よって、複数の波長に対応する復号信号DS、DS、及びDSを解析することにより、血液のヘモグロビン濃度などの分光情報を得ることが可能である。
なお、実施例1と同様に、制御部153は、観察領域(関心領域)や被検体の音速などに応じて、短時間で高S/Nの信号を取得することができるように、基準タイミングの時間間隔を設定してもよい。また、再構成手法に関しても、実施例1と同様の手法を採用してもよい。また、本実施例においても、実施例1で説明した駆動部の構成を採用してもよい。
なお、本実施例では、3つ以上の波長のそれぞれに対応する復号信号を取得する例を説明したが、3つ以上の波長の少なくとも一方に対応する復号信号を取得すればよい。すなわち、本実施例では、複数の波長の少なくとも一つに対応する復号信号を取得すればよい。この場合も、所望の波長に対応する復号信号を取得することができる。
<少ない符号系列数での符号化・復号化>
実施例2で説明した手法において、例えば、符号長を4ではなく8にすることで、よりS/N比を向上させることが可能である。しかしながら、その場合、互いに直交する符号系列の数も8となり、符号化するための光照射と光音響波の受信についても8回繰り返す必要があり、測定時間が増加する。
本実施例では、符号系列の数を少なくすることにより、測定時間の増大を抑えつつ、S/N比を向上させる例を説明する。
以下に示す、符号長8の互いに直交する4つの符号系列{a }(k=1から4、i=1から8)を考える。
第1の符号系列{a }={1,1,−1,−1,−1,−1,1,1}
第2の符号系列{a }={1,1,−1−1,1,1,−1,−1}
第3の符号系列{a }={1,1,1,1,−1,−1,−1,−1}
第4の符号系列{a }={1,1,1,1,1,1,1,1}
これは、実施例2で説明した各符号系列の{1}に{1,1}を割り当て、{−1}に{−1,−1}を割り当てたものである。すなわち、互いに直交する4つの符号系列の各符号要素を2回ずつ繰り返すことにより、符号要素の数を2倍としている。なお、各符号要素の繰り返し回数は、2以上の自然数であればいかなる値を採用してもよい。
さらに、以下に示す、この4つの符号系列を重複なく順次並べるための順列を表す互いに異なる4つの順列を考える。
第1の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
第2の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
第3の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
第4の順列{g}={{a },{a },{a },{a }}
ここで、(式6)で示したように、順列gおよびg従って4つの符号系列を並べた場合の、それぞれの相互相関関数の総和を考える。
p=qのとき、(式6)は自己相関関数の総和となり、ピーク近傍において16、32、16、それ以外のすべての点でOとなる。すなわち、
(a* a)={1,−2,−1,−4,−3,−2,3,8,3,−2,−3,−4,−1,2,1}
(a* a)={−1,−2,1,4,−1,−6,1,8,1,−6,−1,4,1,−2,−1}
(a* a)={−1,−2,−3,−4,−1,2,5,8,5,2,−1,−4,−3,−2,−1}
(a* a)={1,2,3,4,5,6,7,8,7,6,5,4,3,2,1}
であり、任意のpにおいて、
Figure 2018086265
が成立する。
また、p≠qのとき、(式6)は相互相関関数の総和となり、p≠qであるすべての組み合わせにおいて、すべての点でOとなる。例えば、p=1、q=2の場合、
(a* a)={−1,−2,1,4,1,−2,−1,0,1,2,−1,−4,−1,2,1}
(a* a)={1,2,−1,−4,−1,2,1,0,−1,−2,1,4,1,−2,−1}
(a* a)={1,2,3,4,3,2,1,0,−1,−2,−3,−4,−3,−2,−1}
(a* a)={−1,−2,−3,−4,−3,−2,−1,0,1,2,3,4,3,2,1}
であり、
Figure 2018086265
が成立する。
このような符号系列とその順番を示す順列を互いに異なる複数の波長の光を用いた光音響装置に適用した場合、光の照射時間が重複していても、ある波長の光に起因する信号と、その他の波長の光に起因する信号とを分離して取得することができる。このようにして、分離された複数の波長に対応する復号信号を解析することにより、血管のヘモグロビン濃度などの分光情報を取得してもよい。
実施例2と比べると、Δt<Ttofの場合、測定時間をほとんど増加させずに、より各波長に対応する復号信号のピーク強度を増加させることが可能となる。その際、サイドローブも増大するが、そのパターンは既知であるので必要に応じ、復号した受信信号に所望の補正をかければよい。例えば、復号した受信信号のうち、あるしきい値以上の信号のみを有効としたりしてもよい。また、復号した受信信号はΔtの間隔で1:2:1の信号比を有することがわかっているので、これを0:1:0の信号に補正するデコンボリューションフィルタを重畳してもよい。
なお、本実施例では、複数の波長のそれぞれに対応する復号信号を取得する例を説明したが、複数の波長の少なくとも1つに対応する復号信号を取得すればよい。この場合も、所望の波長に対応する復号信号を取得することができる。
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
110 光照射部
120 受信部
150 コンピュータ

Claims (19)

  1. 光照射手段、受信手段、及び処理手段を有し、
    前記光照射手段は、
    第1の符号系列に対応する第1の波長の第1の強度変調光と、前記第1の符号系列とは異なる第2の符号系列に対応する第2の波長の第2の強度変調光とを被検体に照射し、
    前記受信手段は、
    前記第1及び第2の強度変調光が前記被検体に照射されることにより発生する光音響波を受信することにより第1の信号を出力し、
    前記処理手段は、
    前記第1及び第2の符号系列に関する情報に基づいて、前記第1の信号に対して復号処理を行うことにより、前記第1の波長に対応する第1の復号信号及び前記第2の波長に対応する第2の復号信号の少なくとも一方を取得する
    ことを特徴とする光音響装置。
  2. 前記第1の強度変調光の照射期間と前記第2の強度変調光の照射期間とが少なくとも一部重なる
    ことを特徴とする請求項1に記載の光音響装置。
  3. 前記処理手段は、前記第1及び第2の復号信号を取得し、前記第1及び第2の復号信号に基づいて、分光情報を取得する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の光音響装置。
  4. 前記分光情報は、酸素飽和度である
    ことを特徴とする請求項3に記載の光音響装置。
  5. 前記第1及び第2の符号系列のそれぞれは、正の符号要素及び負の符号要素を含む
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光音響装置。
  6. 前記光照射手段は、
    半導体レーザまたは発光ダイオードで構成された光源と、
    前記光源へ駆動電流を投入する駆動手段と、
    を有し、
    前記駆動手段は、前記正の符号要素に対応する基準タイミングに合わせて、前記正の符号要素に対応する正の強度変調光を発生させるための第1の駆動電流を前記光源に投入し、
    前記駆動手段は、前記正の符号要素に対応する基準タイミングに合わせて、前記負の符号要素に対応する負の強度変調光を発生させるための第2の駆動電流を前記光源に投入する
    ことを特徴とする請求項5に記載の光音響装置。
  7. 前記駆動手段は、前記第1の駆動電流を前記光源に投入する第1の駆動手段と、前記第2の駆動電流を前記光源に投入する第2の駆動手段とを含む
    ことを特徴とする請求項6に記載の光音響装置。
  8. 前記光照射手段は、前記第1の波長の光を発する半導体レーザまたは発光ダイオードで構成された第1の光源と、前記第2の波長の光を発する半導体レーザまたは発光ダイオードで構成された第2の光源とを含む
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光音響装置。
  9. 前記光照射手段は、
    第3の符号系列に対応する前記第1の波長の第3の強度変調光と、前記第3の符号系列とは異なる第4の符号系列に対応する前記第2の波長の第4の強度変調光とを前記被検体に照射し、
    前記受信手段は、
    前記第3及び第4の強度変調光が前記被検体に照射されることにより発生する光音響波を受信することにより第2の信号を出力し
    前記処理手段は、
    前記第1及び第3の符号系列に関する情報に基づいて、前記第1の信号及び前記第2の信号に対して復号処理を行うことにより、前記第1の波長に対応する前記第1の復号信号を取得し、
    前記第2及び第4の符号系列に関する情報に基づいて、前記第1及び第2の信号に対して復号処理を行うことにより、前記第2の波長に対応する前記第2の復号信号を取得する
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光音響装置。
  10. 前記第1及び第3の符号系列は相補の関係を有する第1の相補符号であり、
    前記第2及び第4の符号系列は相補の関係を有する第2の相補符号であり、
    前記第1の符号系列と前記第2の符号系列の相互相関関数と前記第3の符号系列と前記第4の符号系列の相互相関関数との和が0となる関係である
    ことを特徴とする請求項9に記載の光音響装置。
  11. 前記第1の強度変調光の照射期間と前記第2の強度変調光の照射期間とが少なくとも一部重なり、
    前記第3の強度変調光の照射期間と前記第4の強度変調光の照射期間とが少なくとも一部重なり、
    前記第1及び第2の強度変調光の照射期間と、前記第3及び第4の強度変調光の照射期間とは重ならない
    ことを特徴とする請求項9または10に記載の光音響装置。
  12. 前記処理手段は、
    符号要素に対応する基準タイミングの時間間隔をΔt、前記第1、第2、第3、及び第4の符号系列を{a}、{b}、{c}、{d}(i=1からNの整数、Nは符号長、符号要素は1もしくは−1)、前記第1の信号をS(t)、前記第2の信号をS(t)としたとき、以下の式にしたがった前記復号処理を行うことにより、前記第1の復号信号DS(t)、および、前記第2の復号信号DS(t)を取得する
    ことを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の光音響装置。
    Figure 2018086265
  13. 光照射手段、受信手段、及び処理手段を有し、
    前記光照射手段は、複数の符号系列に対応する複数の波長の強度変調光を照射し、
    前記受信手段は、前記複数の波長の強度変調光が照射されることにより発生する光音響波を受信することにより信号を出力し、
    前記処理手段は、前記複数の符号系列に関する情報に基づいて、前記信号に対して復号処理を行うことにより、前記複数の波長の少なくとも1つに対応する復号信号を取得する
    ことを特徴とする光音響装置。
  14. 前記処理手段は、前記信号に対して、以下の式にしたがった前記復号処理を行うことにより、前記復号信号DS(t)(mは1以上M以下の自然数、Mは前記複数の波長の数、tは時間)を取得する
    ことを特徴とする請求項13の光音響装置。
    Figure 2018086265

    ({a }は符号系列、iは1以上の自然数、Nは符号長、Δtは符号系列の符号要素の基準タイミングの時間間隔、{g(j)}は前記複数の波長のそれぞれに割り当てられた符号系列の順番を決める要素数Kの順列、jは1以上の自然数、Kは順列の要素数、KはK≧Mを満たす2のべき乗数、Sは順列要素に対応する前記信号)
  15. 前記複数の符号系列は、互いに直交する関係である
    ことを特徴とする請求項13または14に記載の光音響装置。
  16. 前記複数の波長は3つ以上の波長である
    ことを特徴とする請求項13から15のいずれか1項に記載の光音響装置。
  17. 第1の符号系列に対応する第1の波長の第1の強度変調光と、前記第1の符号系列とは異なる第2の符号系列に対応する第2の波長の第2の強度変調光とが被検体に照射されることにより発生する光音響波の受信信号に対して、復号処理を行うことにより復号信号を取得する情報取得方法であって、
    前記第1及び第2の符号系列に関する情報に基づいて、前記受信信号に対して復号処理を行うことにより、前記第1の波長に対応する第1の復号信号及び前記第2の波長に対応する第2の復号信号の少なくとも一方を取得する
    ことを特徴とする情報取得方法。
  18. 複数の符号系列に対応する複数の波長の強度変調光が被検体に照射されることにより発生する光音響波の受信信号に対して、復号処理を行うことにより復号信号を取得する情報取得方法であって、
    前記複数の符号系列に関する情報に基づいて、前記受信信号に対して復号処理を行うことにより、前記複数の波長の少なくとも1つに対応する前記復号信号を取得する
    ことを特徴とする情報取得方法。
  19. 請求項17または18に記載の情報取得方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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