JP2018083945A - フォトンアップコンバージョン組成物、化合物、発光体、発光素子および発光方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】増感剤を用いなくても、励起光よりも波長が短い光を発光できるフォトンアップコンバージョン系を提供すること。【解決手段】芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物からなる発光体を含む、フォトンアップコンバージョン組成物。重原子としては、例えばハロゲン原子を用いることができる。【選択図】なし
Description
本発明は、励起光よりも波長が短い光を発光するフォトンアップコンバージョン組成物、そのフォトンアップコンバージョン組成物に用いられる化合物、そのフォトンアップコンバージョン組成物を用いた発光体、発光素子および発光方法に関する。
物質の励起状態には、基底一重項状態S0のスピン対から1つの電子がスピンの向きを変えないで遷移した励起一重項状態S1と、基底一重項状態S0のスピン対から1つの電子がスピンの向きを反転させて遷移した励起三重項状態T1がある。このうち、励起三重項状態T1は、基底一重項状態S0と励起三重項状態T1の間の遷移がスピン禁制遷移であるために長寿命であり、その励起状態にある間に、三重項−三重項消滅(TTA)が起こって励起一重項状態へ転換する現象が見られる。これにより生じた励起一重項状態が基底一重項状態S0へ戻る際に放射される光は、物質に照射した初期の励起光よりも短波長であるため、この現象を、光をより波長が短い光に変換するフォトンアップコンバージョンに利用する研究が進められている。
ここで、上記のように、基底一重項状態S0から励起三重項状態T1への遷移はスピン禁制遷移であるため、通常の有機発光体では起こる確率が極めて低い。そのため、白金やパラジウム等の貴金属を含む錯体を増感剤として発光体と組み合わせ、これにより、発光体に三重項励起子が生成されるようにしたフォトンアップコンバージョン系が提案されている(例えば、非特許文献1〜3参照)。この増感剤を用いるフォトンアップコンバージョン系では、増感剤が光を吸収して基底一重項状態S0から励起一重項状態S1へ遷移した後、その励起一重項状態S1から励起三重項状態T1への系間交差が比較的高い確率で起こる。その励起三重項エネルギーが発光体分子へ移動して、発光体分子が励起三重項状態になり、それが他の励起三重項状態になった発光分子体と衝突して三重項−三重項消滅することにより、フォトンアップコンバージョンが生じることになる。
ここで、上記のように、基底一重項状態S0から励起三重項状態T1への遷移はスピン禁制遷移であるため、通常の有機発光体では起こる確率が極めて低い。そのため、白金やパラジウム等の貴金属を含む錯体を増感剤として発光体と組み合わせ、これにより、発光体に三重項励起子が生成されるようにしたフォトンアップコンバージョン系が提案されている(例えば、非特許文献1〜3参照)。この増感剤を用いるフォトンアップコンバージョン系では、増感剤が光を吸収して基底一重項状態S0から励起一重項状態S1へ遷移した後、その励起一重項状態S1から励起三重項状態T1への系間交差が比較的高い確率で起こる。その励起三重項エネルギーが発光体分子へ移動して、発光体分子が励起三重項状態になり、それが他の励起三重項状態になった発光分子体と衝突して三重項−三重項消滅することにより、フォトンアップコンバージョンが生じることになる。
Phys. Chem. Chem. Phys. 2012, 14, 4322.
Phys. Chem. Chem. Phys. 2015, 17, 4020.
Chem. Eur. J. 2008, 14, 9846.
上記のように、非特許文献1〜3には増感剤を用いたフォトンアップコンバージョン系が提案されている。しかしながら、増感剤を用いたフォトンアップコンバージョン系では、励起光のエネルギーを効率よくフォトンアップコンバージョンに利用できないという問題がある。例えば、増感剤を用いたフォトンアップコンバージョン系では、増感剤における励起三重項エネルギー準位が励起一重項エネルギー準位よりも低く、発光体の励起三重項エネルギー準位が増感剤の励起三重項エネルギー準位よりも低いために、増感剤における励起一重項状態S1から励起三重項状態T1への系間交差、および、増感剤から発光体への励起三重項エネルギーの受け渡しの過程で、数百meVのエネルギーが失われることがある。このような場合、励起光のエネルギーを高効率にフォトンアップコンバージョンに利用することができなかったり、励起光波長に対して、発光波長を十分に短波長側へシフトさせることができなかったりすることがある。また、ここで用いる増感剤は、入手が困難な白金やパラジウム等の希少元素を含むため、どうしても材料コストが高くなり、実用性に欠けるという問題もある。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、増感剤を用いなくても、励起光よりも波長が短い光を発光できるフォトンアップコンバージョン系を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物を発光体として用いることにより、増感剤を使用しなくても、フォトンアップコンバージョンによる発光を実現できることを見出した。具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物からなる発光体を含む、フォトンアップコンバージョン組成物。
[2]前記化合物が少なくとも1つの重原子で置換された芳香環を含む、[1]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[3]前記芳香環が多環縮合構造を有する、[2]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[4] 前記芳香環が芳香族炭化水素環である、[2]または[3]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[5] 前記芳香族炭化水素環が2つ以上のベンゼン環が縮合した構造を有する多環縮合構造を有する、[4]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[6] 前記芳香環の縮合環数が2〜10である、[3]〜[5]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[7] 前記芳香環がアントラセン環、ペリレン環、またはアントラセン環もしくはペリレン環に複素環が縮合した構造を有する芳香族複素環である、[2]〜[6]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[8] 前記芳香環が、多環縮合構造を有する芳香環に単環の芳香環が連結した構造を有する、[2]〜[7]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[9] 前記化合物が少なくとも1つの重原子で置換された複素環を含む、[1]〜[8]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[10] 前記複素環を構成するヘテロ原子が窒素原子、酸素原子、および硫黄原子の少なくとも1つである、[9]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[11] 前記ヘテロ原子が窒素原子である、[10]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[12] 前記重原子が、原子番号が20以上の原子である、[1]〜[11]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[13] 前記重原子がハロゲン原子、亜鉛原子、白金原子、または希土類原子である[1]〜[12]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[14] 前記重原子がハロゲン原子である、[13]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[15] 前記ハロゲン原子が臭素原子である、[14]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[16] 前記化合物における前記重原子の置換数が1〜10である、[1]〜[15]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[17] 前記化合物が、さらに、芳香環または複素環に少なくとも1つのアルキル基が置換した構造を有する、[1]〜[16]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[18] 前記化合物が、少なくとも1つの重原子および少なくとも1つのアルキル基の両方で置換された芳香環を有する、[17]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[19] 前記アルキル基の炭素数が1〜10の整数である、[17]または[18]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[20] 前記アルキル基が分枝状のアルキル基である、[17]〜[19]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[21] 前記分枝状のアルキル基がtert−ブチル基である、[20]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[22] 前記化合物における前記アルキル基の置換数が1〜10である、[17]〜[21]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[23] 前記化合物が、アントラセン環に重原子が置換した構造を有するアントラセン誘導体、またはペリレン環に重原子が置換した構造を有するペリレン誘導体である、[1]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[24] 前記アントラセン誘導体が9-ブロモアントラセン(BA)、9,10-ジブロモアントラセン(DBA)または9-ブロモ-10-フェニル-アントラセン(BPA)である、[23]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[25] 前記ペリレン誘導体が3−ブロモ−2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(BTBP)である、[23]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[26] 前記化合物が下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物である、[1]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[一般式(1)〜(4)において、R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44は各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。X11、X21は各々独立にハロゲン原子を表し、X31〜X44は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X31〜X34の少なくとも1つとX41〜X44の少なくとも1つはハロゲン原子である。]
[27] 前記一般式(1)のR11、前記一般式(2)のR21〜R24、前記一般式(3)のR31、R32、前記一般式(4)のR41〜R44における置換アルキル基の置換基が、第4級アンモニウム基(−N+R3:ただし、Rはアルキル基であり、3つのRは互いに同一であっても異なっていてもよい)である、[26]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[28] 前記一般式(1)のR11、前記一般式(2)のR21〜R24、前記一般式(3)のR31、R32、前記一般式(4)のR41〜R44における置換アリール基の置換基が、アルキル基、アルコキシ基、またはスルホ基(−SO3H)である、[26]または[27]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[29] 前記一般式(1)のR11、前記一般式(2)のR21〜R24、前記一般式(3)のR31、R32、前記一般式(4)のR41〜R44におけるヘテロアリール基が窒素原子を環員として含むヘテロアリール基である、[26]〜[28]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[30] 前記化合物が下記一般式(5)で表される化合物である、フォトンアップコンバージョン組成物。
[一般式(5)において、R51は水素原子または置換もしくは無置換のアリール基を表す。X51〜X53は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X51〜X53の少なくとも1つはハロゲン原子である。]
[31] 前記一般式(5)のR51における置換アリール基の置換基がアルキル基、アルコキシ基、アルキル基およびアリール基の両方で置換されたシリル基、またはアルキル基およびハロゲン化アリール基の両方で置換されたシリル基である、[30]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[32] 前記化合物が下記一般式(6)で表される化合物である、フォトンアップコンバージョン組成物。
[一般式(6)において、R61はアルカリ金属イオンあるいはアルキル基を表す。X61〜X64は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X61〜X64の少なくとも1つはハロゲン原子を表す。]
[33] 前記化合物が20℃、1気圧で固体である、[1]〜[32]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[34] 前記化合物からなる結晶を含む、[1]〜[33]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[35] 励起光の照射により、前記化合物が基底一重項状態S0から励起三重項状態T1へ直接遷移する、[1]〜[34]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[36] 前記化合物の励起三重項エネルギーが別の前記化合物へtriplet-triplet energy transfer(TTET)する、[35]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[37] 励起三重項状態T1になった前記化合物が励起三重項状態T1になった別の前記化合物とtriplet-triplet annihilation(TTA)して、その一方の前記化合物が励起一重項状態S1へ遷移する、[35]または[36]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[38] 励起一重項状態S1になった前記化合物が基底一重項状態S0へ緩和するとともに蛍光を放射する、[37]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[39] 励起光の照射により、前記励起光よりも波長が短い光を発光する、[1]〜[38]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[40] 波長が500〜1400nmの光の照射により、波長が300〜700nmの光を発光する、[1]〜[39]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[41] 励起光の波長が500〜1400nm、例えば700〜1400nmである、[1]〜[40]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[42] アンチストークスシフトが100nm以上、例えば300nm以上である、[39]〜[41]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[43] 発光する光が蛍光を含む、[1]〜[42]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[44] 発光する光が遅延蛍光を含む、[1]〜[43]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[45] 励起光の照射により発光させたとき、その励起光の照射強度の対数を横軸にとり、発光強度の対数を縦軸にとった両対数グラフが右上がりの傾斜状をなし、その傾きが2±0.3である、[1]〜[44]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[46] 励起光の照射により発光させたとき、その発光寿命τUC(マイクロ秒)と燐光寿命τT(マイクロ秒)が2τUC=τT±0.3τTを満たす、[1]〜[45]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[47] 前記フォトンアップコンバージョン組成物に含まれる前記化合物の含有量が5%以上である、[1]〜[46]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[48] 励起一重項状態S1から励起三重項状態T1への項間交差を生じる増感剤が添加されていない、[1]〜[47]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[49] 膜状をなす、[1]〜[48]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[50] 基板上に膜状に形成されている、[49]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物
[2]前記化合物が少なくとも1つの重原子で置換された芳香環を含む、[1]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[3]前記芳香環が多環縮合構造を有する、[2]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[4] 前記芳香環が芳香族炭化水素環である、[2]または[3]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[5] 前記芳香族炭化水素環が2つ以上のベンゼン環が縮合した構造を有する多環縮合構造を有する、[4]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[6] 前記芳香環の縮合環数が2〜10である、[3]〜[5]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[7] 前記芳香環がアントラセン環、ペリレン環、またはアントラセン環もしくはペリレン環に複素環が縮合した構造を有する芳香族複素環である、[2]〜[6]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[8] 前記芳香環が、多環縮合構造を有する芳香環に単環の芳香環が連結した構造を有する、[2]〜[7]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[9] 前記化合物が少なくとも1つの重原子で置換された複素環を含む、[1]〜[8]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[10] 前記複素環を構成するヘテロ原子が窒素原子、酸素原子、および硫黄原子の少なくとも1つである、[9]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[11] 前記ヘテロ原子が窒素原子である、[10]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[12] 前記重原子が、原子番号が20以上の原子である、[1]〜[11]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[13] 前記重原子がハロゲン原子、亜鉛原子、白金原子、または希土類原子である[1]〜[12]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[14] 前記重原子がハロゲン原子である、[13]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[15] 前記ハロゲン原子が臭素原子である、[14]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[16] 前記化合物における前記重原子の置換数が1〜10である、[1]〜[15]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[17] 前記化合物が、さらに、芳香環または複素環に少なくとも1つのアルキル基が置換した構造を有する、[1]〜[16]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[18] 前記化合物が、少なくとも1つの重原子および少なくとも1つのアルキル基の両方で置換された芳香環を有する、[17]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[19] 前記アルキル基の炭素数が1〜10の整数である、[17]または[18]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[20] 前記アルキル基が分枝状のアルキル基である、[17]〜[19]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[21] 前記分枝状のアルキル基がtert−ブチル基である、[20]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[22] 前記化合物における前記アルキル基の置換数が1〜10である、[17]〜[21]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[23] 前記化合物が、アントラセン環に重原子が置換した構造を有するアントラセン誘導体、またはペリレン環に重原子が置換した構造を有するペリレン誘導体である、[1]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[24] 前記アントラセン誘導体が9-ブロモアントラセン(BA)、9,10-ジブロモアントラセン(DBA)または9-ブロモ-10-フェニル-アントラセン(BPA)である、[23]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[25] 前記ペリレン誘導体が3−ブロモ−2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(BTBP)である、[23]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[26] 前記化合物が下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物である、[1]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[27] 前記一般式(1)のR11、前記一般式(2)のR21〜R24、前記一般式(3)のR31、R32、前記一般式(4)のR41〜R44における置換アルキル基の置換基が、第4級アンモニウム基(−N+R3:ただし、Rはアルキル基であり、3つのRは互いに同一であっても異なっていてもよい)である、[26]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[28] 前記一般式(1)のR11、前記一般式(2)のR21〜R24、前記一般式(3)のR31、R32、前記一般式(4)のR41〜R44における置換アリール基の置換基が、アルキル基、アルコキシ基、またはスルホ基(−SO3H)である、[26]または[27]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[29] 前記一般式(1)のR11、前記一般式(2)のR21〜R24、前記一般式(3)のR31、R32、前記一般式(4)のR41〜R44におけるヘテロアリール基が窒素原子を環員として含むヘテロアリール基である、[26]〜[28]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[30] 前記化合物が下記一般式(5)で表される化合物である、フォトンアップコンバージョン組成物。
[31] 前記一般式(5)のR51における置換アリール基の置換基がアルキル基、アルコキシ基、アルキル基およびアリール基の両方で置換されたシリル基、またはアルキル基およびハロゲン化アリール基の両方で置換されたシリル基である、[30]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[32] 前記化合物が下記一般式(6)で表される化合物である、フォトンアップコンバージョン組成物。
[33] 前記化合物が20℃、1気圧で固体である、[1]〜[32]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[34] 前記化合物からなる結晶を含む、[1]〜[33]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[35] 励起光の照射により、前記化合物が基底一重項状態S0から励起三重項状態T1へ直接遷移する、[1]〜[34]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[36] 前記化合物の励起三重項エネルギーが別の前記化合物へtriplet-triplet energy transfer(TTET)する、[35]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[37] 励起三重項状態T1になった前記化合物が励起三重項状態T1になった別の前記化合物とtriplet-triplet annihilation(TTA)して、その一方の前記化合物が励起一重項状態S1へ遷移する、[35]または[36]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[38] 励起一重項状態S1になった前記化合物が基底一重項状態S0へ緩和するとともに蛍光を放射する、[37]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[39] 励起光の照射により、前記励起光よりも波長が短い光を発光する、[1]〜[38]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[40] 波長が500〜1400nmの光の照射により、波長が300〜700nmの光を発光する、[1]〜[39]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[41] 励起光の波長が500〜1400nm、例えば700〜1400nmである、[1]〜[40]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[42] アンチストークスシフトが100nm以上、例えば300nm以上である、[39]〜[41]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[43] 発光する光が蛍光を含む、[1]〜[42]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[44] 発光する光が遅延蛍光を含む、[1]〜[43]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[45] 励起光の照射により発光させたとき、その励起光の照射強度の対数を横軸にとり、発光強度の対数を縦軸にとった両対数グラフが右上がりの傾斜状をなし、その傾きが2±0.3である、[1]〜[44]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[46] 励起光の照射により発光させたとき、その発光寿命τUC(マイクロ秒)と燐光寿命τT(マイクロ秒)が2τUC=τT±0.3τTを満たす、[1]〜[45]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[47] 前記フォトンアップコンバージョン組成物に含まれる前記化合物の含有量が5%以上である、[1]〜[46]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[48] 励起一重項状態S1から励起三重項状態T1への項間交差を生じる増感剤が添加されていない、[1]〜[47]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[49] 膜状をなす、[1]〜[48]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
[50] 基板上に膜状に形成されている、[49]に記載のフォトンアップコンバージョン組成物
[51] 少なくとも1つの重原子および少なくとも1つのアルキル基の両方で置換されたペリレン環を有する化合物。
[52] 前記重原子が、原子番号が20以上の原子である、[51]に記載の化合物。
[53] 前記重原子がハロゲン原子、亜鉛原子、白金原子、または希土類原子である[51]または[52]に記載の化合物。
[54] 前記重原子がハロゲン原子である、[53]に記載の化合物。
[55] 前記ハロゲン原子が臭素原子である、[54]に記載の化合物。
[56] 前記重原子の置換数が1〜10である、[51]〜[55]のいずれか1項に記載の化合物。
[57] 前記アルキル基の炭素数が1〜10の整数である、[51]〜[56]のいずれか1項に記載の化合物。
[58] 前記アルキル基が分枝状のアルキル基である、[51]〜[57]のいずれか1項に記載の化合物。
[59] 前記分枝状のアルキル基がtert−ブチル基である、[58]に記載の化合物。
[60] 前記アルキル基の置換数が1〜10である、[51]〜[59]のいずれか1項に記載の化合物。
[61] 下記一般式(2’)〜(4’)のいずれかで表される化合物。
[一般式(2’)〜(4’)において、R21’〜R24’、R31’、R32’ 、R41’〜R44’は各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表すが、R21’〜R24’の少なくとも1つ、R31’およびR32’の少なくとも1つ、並びにR41’〜R44’の少なくとも1つは置換もしくは無置換のアルキル基である。X21’はハロゲン原子を表し、X31’〜X44’は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X31’〜X34’の少なくとも1つとX41’〜X44’の少なくとも1つはハロゲン原子である。]
[62] 前記化合物が下記一般式(2)で表される、[61]に記載の化合物。
[63] 3−ブロモ−2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(BTBP)である、[62]に記載の化合物。
[52] 前記重原子が、原子番号が20以上の原子である、[51]に記載の化合物。
[53] 前記重原子がハロゲン原子、亜鉛原子、白金原子、または希土類原子である[51]または[52]に記載の化合物。
[54] 前記重原子がハロゲン原子である、[53]に記載の化合物。
[55] 前記ハロゲン原子が臭素原子である、[54]に記載の化合物。
[56] 前記重原子の置換数が1〜10である、[51]〜[55]のいずれか1項に記載の化合物。
[57] 前記アルキル基の炭素数が1〜10の整数である、[51]〜[56]のいずれか1項に記載の化合物。
[58] 前記アルキル基が分枝状のアルキル基である、[51]〜[57]のいずれか1項に記載の化合物。
[59] 前記分枝状のアルキル基がtert−ブチル基である、[58]に記載の化合物。
[60] 前記アルキル基の置換数が1〜10である、[51]〜[59]のいずれか1項に記載の化合物。
[61] 下記一般式(2’)〜(4’)のいずれかで表される化合物。
[62] 前記化合物が下記一般式(2)で表される、[61]に記載の化合物。
[63] 3−ブロモ−2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(BTBP)である、[62]に記載の化合物。
[64] 芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物からなる発光体。
[65] 前記化合物が、20℃、1気圧で固体である、[64]に記載の発光体。
[65] 前記化合物が、20℃、1気圧で固体である、[64]に記載の発光体。
[66] [1]〜[50]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物を発光材料として用いる方法。
[67] [1]〜[50]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物の発光材料としての使用。
[68] [1]〜[50]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物を含む発光素子。
[67] [1]〜[50]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物の発光材料としての使用。
[68] [1]〜[50]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物を含む発光素子。
[69] [1]〜[50]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物からなる、フォトンアップコンバーター。
[70] 1000W/cm2以下、例えば10W/cm2以下、0.1W/cm2以下の励起光で発光する、[69]に記載のフォトンアップコンバーター。
[70] 1000W/cm2以下、例えば10W/cm2以下、0.1W/cm2以下の励起光で発光する、[69]に記載のフォトンアップコンバーター。
[71] [1]〜[50]のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物に励起光を照射して前記フォトンアップコンバージョン組成物から前記励起光よりも波長が短い光を発光させる発光方法。
[72] 励起光の強度が1000W/cm2以下、例えば10W/cm2以下、0.1W/cm2以下である、[71]に記載の発光方法。
[73] 励起光の波長が500〜1400nm、例えば700〜1400nmである、[71]または[72]に記載の発光方法。
[74] 前記光照射により、前記化合物が基底一重項状態S0から励起三重項状態T1へ直接遷移する、[71]〜[73]のいずれか1項に記載の発光方法。
[75] 前記化合物の励起三重項エネルギーが別の前記化合物へtriplet-triplet energy transfer(TTET)する、[74]に記載の発光方法。
[76] 励起三重項状態T1になった前記化合物が励起三重項状態T1になった別の前記化合物とtriplet-triplet annihilation(TTA)して、その一方の前記化合物が励起一重項状態S1へ遷移する、[74]または[75]に記載の発光方法。
[77] 励起一重項状態S1になった前記化合物が基底一重項状態S0へ緩和するとともに蛍光を放射する、[76]に記載の発光方法。
[78] 蛍光を含む光を発光させる、[71]〜[77]のいずれか1項に記載の発光方法。
[79] 遅延蛍光を含む光を発光させる、[71]〜[78]のいずれか1項に記載の発光方法。
[80] 発光させる光の波長が300〜700nm、例えば300〜600nm、300〜500nmである、[71]〜[79]のいずれか1項に記載の発光方法。
[72] 励起光の強度が1000W/cm2以下、例えば10W/cm2以下、0.1W/cm2以下である、[71]に記載の発光方法。
[73] 励起光の波長が500〜1400nm、例えば700〜1400nmである、[71]または[72]に記載の発光方法。
[74] 前記光照射により、前記化合物が基底一重項状態S0から励起三重項状態T1へ直接遷移する、[71]〜[73]のいずれか1項に記載の発光方法。
[75] 前記化合物の励起三重項エネルギーが別の前記化合物へtriplet-triplet energy transfer(TTET)する、[74]に記載の発光方法。
[76] 励起三重項状態T1になった前記化合物が励起三重項状態T1になった別の前記化合物とtriplet-triplet annihilation(TTA)して、その一方の前記化合物が励起一重項状態S1へ遷移する、[74]または[75]に記載の発光方法。
[77] 励起一重項状態S1になった前記化合物が基底一重項状態S0へ緩和するとともに蛍光を放射する、[76]に記載の発光方法。
[78] 蛍光を含む光を発光させる、[71]〜[77]のいずれか1項に記載の発光方法。
[79] 遅延蛍光を含む光を発光させる、[71]〜[78]のいずれか1項に記載の発光方法。
[80] 発光させる光の波長が300〜700nm、例えば300〜600nm、300〜500nmである、[71]〜[79]のいずれか1項に記載の発光方法。
本発明によれば、増感剤を用いなくても、励起光よりも波長が短い光を発光できるフォトンアップコンバージョン系を実現することができる。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
<フォトンアップコンバージョン組成物>
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物からなる発光体を含むことを特徴とする。
本発明における「フォトンアップコンバージョン」とは、励起光よりも波長が短い光を発光する機能のことをいう。ここで「励起光」とは、フォトンアップコンバージョン組成物から観測された吸収スペクトルにおいて、光の吸収が認められる波長範囲の光のことを意味する。以下の説明では、このフォトンアップコンバージョンにより放射された光を「フォトンアップコンバージョン光」という。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物からなる発光体を含むことを特徴とする。
本発明における「フォトンアップコンバージョン」とは、励起光よりも波長が短い光を発光する機能のことをいう。ここで「励起光」とは、フォトンアップコンバージョン組成物から観測された吸収スペクトルにおいて、光の吸収が認められる波長範囲の光のことを意味する。以下の説明では、このフォトンアップコンバージョンにより放射された光を「フォトンアップコンバージョン光」という。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、上記のような芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物からなる発光体を含むことにより、増感剤を用いなくても、フォトンアップコンバージョン光を効率よく発光することができる。本発明のフォトンアップコンバージョン組成物でこうした効果が得られるのは、図1(a)、(b)に示す発光メカニズムによるものと推測される。図1(a)はフォトンアップコンバージョン組成物におけるエネルギー状態の遷移過程を示す模式図であり、図1(b)は発光体分子間の励起三重項エネルギー状態の移動過程を示す模式図である。ただし、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物の発光メカニズムは、以下で説明する発光メカニズムによって限定的に解釈されるべきものではない。
まず、フォトンアップコンバージョン組成物に励起光が照射されると、図1(a)に示すように、発光体が光を吸収して励起される。ここで、基底一重項状態S0から励起三重項状態T1への遷移はスピン禁制遷移であるため、重原子を含まない通常の有機発光体では、実用範囲を超えた非常に高い励起光強度を用いない限り、励起三重項状態T1を十分に生じさせることができない。一方、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物では、発光体を構成する化合物が重原子を含むため、その重原子効果によりスピン軌道相互作用が強くなってスピン反転が生じやすくなる。そのため、励起光強度が比較的弱い場合でも、各発光体分子において、基底一重項状態S0から励起三重項状態T1への直接遷移が重原子を含まない通常の有機発光体に比べて高い確率で起こる。そして、図1(b)に示すように、その発光体分子で生じた励起三重項エネルギーが、組成物内を移動して、別の発光体分子で生じた励起三重項エネルギーと衝突し、三重項−三重項消滅(TTA)が起こる。これにより、図1(a)に示すように、一方の発光体分子が基底一重項状態S0に戻り、他方の発光体分子が励起一重項状態S1へと遷移し、この励起一重項状態S1になった発光体分子が基底一重項状態S0へ戻る際に光を放射する。このとき、励起一重項状態S1のエネルギーは、基底一重項状態S0から励起三重項状態T1への励起に要するエネルギーよりも高いため、励起光よりも波長が短い光、すなわちフォトンアップコンバージョン光が放射されることになる。
このように、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物によれば、増感剤を用いることなくフォトンアップコンバージョンを実現することができる。そのため、増感剤を用いることで問題になる、増感剤における励起一重項状態S1から励起三重項状態T1への系間交差に際するエネルギー損失、エネルギーを受け取る発光体の励起三重項エネルギー準位が、エネルギーを供与する増感剤の励起三重項エネルギー準位よりも低いことによるエネルギー損失が回避される。これにより、励起光のエネルギーを、効率よくフォトンアップコンバージョンに利用することができ、励起光波長に対して、より波長が短いフォトンアップコンバージョン光を放射させることができる。
まず、フォトンアップコンバージョン組成物に励起光が照射されると、図1(a)に示すように、発光体が光を吸収して励起される。ここで、基底一重項状態S0から励起三重項状態T1への遷移はスピン禁制遷移であるため、重原子を含まない通常の有機発光体では、実用範囲を超えた非常に高い励起光強度を用いない限り、励起三重項状態T1を十分に生じさせることができない。一方、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物では、発光体を構成する化合物が重原子を含むため、その重原子効果によりスピン軌道相互作用が強くなってスピン反転が生じやすくなる。そのため、励起光強度が比較的弱い場合でも、各発光体分子において、基底一重項状態S0から励起三重項状態T1への直接遷移が重原子を含まない通常の有機発光体に比べて高い確率で起こる。そして、図1(b)に示すように、その発光体分子で生じた励起三重項エネルギーが、組成物内を移動して、別の発光体分子で生じた励起三重項エネルギーと衝突し、三重項−三重項消滅(TTA)が起こる。これにより、図1(a)に示すように、一方の発光体分子が基底一重項状態S0に戻り、他方の発光体分子が励起一重項状態S1へと遷移し、この励起一重項状態S1になった発光体分子が基底一重項状態S0へ戻る際に光を放射する。このとき、励起一重項状態S1のエネルギーは、基底一重項状態S0から励起三重項状態T1への励起に要するエネルギーよりも高いため、励起光よりも波長が短い光、すなわちフォトンアップコンバージョン光が放射されることになる。
このように、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物によれば、増感剤を用いることなくフォトンアップコンバージョンを実現することができる。そのため、増感剤を用いることで問題になる、増感剤における励起一重項状態S1から励起三重項状態T1への系間交差に際するエネルギー損失、エネルギーを受け取る発光体の励起三重項エネルギー準位が、エネルギーを供与する増感剤の励起三重項エネルギー準位よりも低いことによるエネルギー損失が回避される。これにより、励起光のエネルギーを、効率よくフォトンアップコンバージョンに利用することができ、励起光波長に対して、より波長が短いフォトンアップコンバージョン光を放射させることができる。
ここで、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、アンチストークスシフトが100nm以上とすることができ、また300nm以上とすることもできる。「アンチストークスシフト」とは、フォトンアップコンバージョン組成物で観測される吸収スペクトルおよび発光スペクトルにおいて吸収極大波長から発光極大波長を差し引いた値のことをいう。この値が大きいものほど、フォトンアップコンバージョン効果が高いことを意味する。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、波長が500〜1400nmである励起光の照射により、波長が300〜700nmである光を放射することができる。また、励起光の波長は、700〜1400nmであってもよく、励起光の照射により、フォトンアップコンバージョン組成物は、300〜600nmの光を放射することもでき、300〜500nmの光を放射することもできる。例えば、励起光の波長範囲が700〜1400nmであるものは、太陽光の近赤外光を、波長が短い高エネルギー光へと変換できるため、太陽電池や人工光合成などの太陽光を利用する分野において、効果的に利用することができる。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、波長が500〜1400nmである励起光の照射により、波長が300〜700nmである光を放射することができる。また、励起光の波長は、700〜1400nmであってもよく、励起光の照射により、フォトンアップコンバージョン組成物は、300〜600nmの光を放射することもでき、300〜500nmの光を放射することもできる。例えば、励起光の波長範囲が700〜1400nmであるものは、太陽光の近赤外光を、波長が短い高エネルギー光へと変換できるため、太陽電池や人工光合成などの太陽光を利用する分野において、効果的に利用することができる。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物が放射する光は、少なくともフォトンアップコンバージョン光を含み、さらに、燐光を含んでいてもよい。フォトンアップコンバージョン光は、励起光の照射強度を横軸とし、フォトンアップコンバージョン光の発光強度を縦軸としてプロットした両対数グラフの傾きが約2.0であることから確認することができる。なお、フォトンアップコンバージョン光は、励起一重項状態S1からの発光である点で蛍光と共通するが、三重項−三重項消滅を介して放射されるものであるため、基底一重項状態S0からの直接遷移により生じた励起一重項状態S1からの蛍光(即時蛍光)よりも発光寿命が長い傾向がある。この点において、フォトンアップコンバージョン光は遅延蛍光ということもできる。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物が三重項−三重項消滅を介してフォトンアップコンバージョン光を放射するものであることは、励起光の照射強度の対数を横軸にとり、該励起光による発光強度の対数を縦軸にとった両対数グラフが右上がりの傾斜状をなし、その傾きが2±0.3であることをもって確認することができる。
また、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物で起こる三重項−三重項消滅が、基底一重項状態S0から直接遷移した励起三重項状態T1同士の三重項−三重項消滅であることは、そのフォトンアップコンバージョン光の発光寿命をτUC(マイクロ秒)、燐光寿命をτT(マイクロ秒)としたとき、2τUC=τT±0.3τTを満たすことをもって確認することができる。すなわち、上記の関係式を満たすということは、フォトンアップコンバージョン光の発光プロセスにおける励起三重項状態T1の寿命と、燐光の発光プロセスにおける励起三重項状態T1の寿命がほぼ等しいことを意味しており、フォトンアップコンバージョン光が、燐光と同様に、基底一重項状態S0から直接遷移した励起三重項状態T1に由来する発光であることの根拠となる。フォトンアップコンバージョン光の発光寿命τUCと燐光寿命τTは、それぞれの発光の過渡減衰曲線からOxford University Press, New York, 1999に記載の方法に準じて求めることができる。
また、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物で起こる三重項−三重項消滅が、基底一重項状態S0から直接遷移した励起三重項状態T1同士の三重項−三重項消滅であることは、そのフォトンアップコンバージョン光の発光寿命をτUC(マイクロ秒)、燐光寿命をτT(マイクロ秒)としたとき、2τUC=τT±0.3τTを満たすことをもって確認することができる。すなわち、上記の関係式を満たすということは、フォトンアップコンバージョン光の発光プロセスにおける励起三重項状態T1の寿命と、燐光の発光プロセスにおける励起三重項状態T1の寿命がほぼ等しいことを意味しており、フォトンアップコンバージョン光が、燐光と同様に、基底一重項状態S0から直接遷移した励起三重項状態T1に由来する発光であることの根拠となる。フォトンアップコンバージョン光の発光寿命τUCと燐光寿命τTは、それぞれの発光の過渡減衰曲線からOxford University Press, New York, 1999に記載の方法に準じて求めることができる。
以下において、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物が含む発光体を構成する化合物とその性状、その他の成分およびフォトンアップコンバージョン組成物の形態について説明する。
[発光体を構成する化合物]
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物に用いる発光体は、芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物からなる。
本発明における「芳香環」は、炭化水素のみからなる芳香環(芳香族炭化水素環)であってもよいし、環員としてヘテロ原子を含む芳香環(芳香族複素環)であってもよい。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物に用いる発光体は、芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物からなる。
本発明における「芳香環」は、炭化水素のみからなる芳香環(芳香族炭化水素環)であってもよいし、環員としてヘテロ原子を含む芳香環(芳香族複素環)であってもよい。
芳香族炭化水素環は、単環であっても、2以上の芳香族炭化水素環が縮合した多環縮合環(多環縮合構造を有する芳香環)であっても、2以上の芳香族炭化水素環が連結した連結環であってもよい。2以上の芳香族炭化水素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分枝状に連結したものであってもよい。これらのうち、芳香族炭化水素環は多環縮合環であってもよく、その多環縮合環に単環の芳香族炭化水素環が連結した構造を有していてもよい。多環縮合環に単環の芳香族炭化水素環が連結した構造では、その多環縮合環に対して単環がねじれて結合した状態になっている。これにより、芳香環の積重(π−π相互作用)が抑えられ、芳香環の積重に起因する発光色の赤色シフトを抑制することができる。芳香族炭化水素環の炭素数は、例えば10〜40とすることができ、10〜35とすることもでき、10〜30とすることもできる。また、芳香族炭化水素環が多環縮合環を含む場合、その多環縮合環は例えば2以上のベンゼン環が縮合した構造であってもよく、2〜10のベンゼン環が縮合した構造であってもよく、2〜6のベンゼン環が縮合した構造であってもよく、具体的にはアントラセン環、ペリレン環を挙げることができる。
芳香族複素環は、単環であっても、1以上の複素環と1以上の環式炭化水素または複素環が縮合した多環縮合環(多環縮合構造を有する芳香族複素環)であっても、1以上の複素環と1以上の環式炭化水素または複素環が連結した連結環であってもよい。1以上の複素環と1以上の環式炭化水素または複素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分枝状に連結したものであってもよい。多環縮合環および連結環を構成する「複素環」は、組み合わせる環とともに芳香族複素環を構成しうるものであればよく、脂肪族複素環であってもよいし、芳香族複素環であってもよい。また、多環縮合環および連結環を構成する「環式炭化水素」は、組み合わせる環とともに芳香族複素環を構成しうるものであればよく、脂肪族環式炭化水素(脂肪族炭化水素環)であってもよいし、芳香族環式炭化水素(芳香族炭化水素環)であってもよい。芳香族複素環の炭素数は例えば10〜40とすることができ、10〜35とすることもでき、10〜30とすることもできる。芳香族複素環を構成するヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を挙げることができ、例えば窒素原子を選択することができる。芳香族複素環が有するヘテロ原子の数は、1つであっても2つ以上であってもよい。芳香族複素環が2つ以上のヘテロ原子を有する場合、複数のヘテロ原子は互いに同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環は多環縮合環であってもよく、例えばアントラセン環もしくはペリレン環に複素環が縮合した構造を有する芳香族複素環、カルバゾール環、キサンテン環であってもよく、アントラセン環もしくはペリレン環に複素環が縮合した構造を有する芳香族複素環であってもよい。芳香族複素環としてペリレンジイミド環も挙げることができる。
本発明における「複素環」は、脂肪族複素環であってもよいし、芳香族複素環であってもよい。芳香族複素環の説明と範囲、具体例については、上記の芳香族複素環の説明と範囲、具体例を参照することができる。脂肪族複素環は、単環であっても、1以上の脂肪族複素環と1以上の脂肪族炭化水素環または脂肪族複素環が縮合した多環縮合環であっても、1以上の脂肪族炭化水素環と1以上の脂肪族炭化水素環または脂肪族複素環が連結した連結環であってもよい。1以上の脂肪族複素環と1以上の脂肪族炭化水素環または脂肪族複素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分枝状に連結したものであってもよい。脂肪族複素環の炭素数は例えば10〜40とすることができ、10〜35であってもよく、10〜30であってもよい。脂肪族複素環を構成するヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を挙げることができ、例えば窒素原子を選択することができる。脂肪族複素環が有するヘテロ原子の数は、1つであっても2つ以上であってもよい。脂肪族素環が2つ以上のヘテロ原子を有する場合、複数のヘテロ原子は互いに同一であっても異なっていてもよい。脂肪族複素環の具体例として、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環を挙げることができる。
以下において、化合物の芳香環または複素環として採用しうるものの具体例を挙げる。ただし、本発明において用いることができる化合物の芳香環または複素環はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
以下において、化合物の芳香環または複素環として採用しうるものの具体例を挙げる。ただし、本発明において用いることができる化合物の芳香環または複素環はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
本発明における「重原子」は、原子番号が20以上の原子のことをいう。重原子は、陽子と中性子の数が等しくても、陽子と中性子の数が異なっていてもよい。重原子の具体例として、ハロゲン原子、亜鉛原子、白金原子、希土類原子を挙げることができ、例えば臭素原子またはヨウ素原子を採用することができる。化合物における重原子の置換数は、例えば1〜10とすることができ、1〜8であってもよく、1〜4であってもよい。化合物における重原子の置換数が2以上であるとき、複数の重原子は互いに同一であっても異なっていてもよい。
本発明における「芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物」は、芳香環および複素環の少なくとも一方を有する化合物であって、その芳香環および複素環の水素原子の少なくとも1つが重原子で置換された構造を有するものである。化合物は、芳香環および複素環のうち、芳香環のみを有していてもよいし、複素環のみを有していてもよいし、芳香環と複素環の両方を有していてもよい。化合物が芳香環と複素環の両方を有する場合、芳香環のみが1つ以上の重原子で置換されていてもよいし、複素環のみが1つ以上の重原子で置換されていてもよいし、芳香環と複素環の両方が、それぞれ1つ以上の重原子で置換されていてもよい。例えば、芳香環または複素環の具体例として挙げた上記の環構造のいずれの位置に重原子が置換した化合物も、本発明でいう「芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物」に含まれる。また、芳香環または複素環の具体例として挙げた上記の環構造に複数の重原子が置換した化合物も、本発明でいう「芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物」に含まれる。
以上のような構造を有する化合物のうち、発光体を構成する化合物は、少なくとも1つの重原子で置換された芳香環を含むことができ、この重原子で置換された芳香環は、多環縮合構造を有していてもよく、縮合環数が2〜10の多環縮合構造を有していてもよく、多環縮合構造を有する芳香環に単環の芳香環が連結した構造を有していてもよい。また、化合物が含む重原子で置換された芳香環は芳香族炭化水素環であってもよく、2つ以上のベンゼン環が縮合した構造を有する多環縮合構造を有していてもよく、例えばアントラセン環、ペリレン環を挙げることができる。すなわち、発光体を構成する化合物は、アントラセン環に重原子が置換した構造を有するアントラセン誘導体、またはペリレン環に重原子が置換した構造を有するペリレン誘導体であってもよい。
ここで、「誘導体」は、化合物の一部を他の原子や原子団に置換してなる化合物のことをいう。他の原子や原子団に置換される化合物の一部としては、炭素原子やヘテロ原子に結合している水素原子を挙げることができる。誘導体は、化合物の一部と置換した原子または原子団が、該化合物の他の一部と置換した原子または原子団が結合して環を形成した構造を有していてもよい。
ここで、「誘導体」は、化合物の一部を他の原子や原子団に置換してなる化合物のことをいう。他の原子や原子団に置換される化合物の一部としては、炭素原子やヘテロ原子に結合している水素原子を挙げることができる。誘導体は、化合物の一部と置換した原子または原子団が、該化合物の他の一部と置換した原子または原子団が結合して環を形成した構造を有していてもよい。
また、化合物における芳香環および複素環において、重原子で置換されている位置以外にある水素原子は置換基で置換されていても無置換であってもよい。置換基として、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を挙げることができる。また、ーCOーN(R)ーCOーで表されるイミノ構造が結合して、そのイミノ構造を含む環をさらに形成していてもよい。ここでRは置換基を表し、例えば置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を挙げることができる。これらの説明と範囲、具体例については、下記のR11等におけるこれらの説明と範囲、具体例を参照することができる。また、化合物における芳香環および複素環は、少なくとも1つのアルキル基で置換されていてもよく、特に、化合物が、少なくとも1つの重原子で置換された芳香環を有するときは、この重原子で置換された芳香環が、さらに少なくとも1つのアルキル基で置換されていてもよい。芳香環または複素環がアルキル基で置換されていることにより、その化合物の分子間で、芳香環同士の積重(π−π相互作用)が抑えられ、芳香環同士の積重に起因する発光色の赤色シフトを抑制することができる。そして、アルキル基の中でも特に、tert−ブチル基は、嵩高いことによって芳香環同士の積重を抑える効果が高い。
発光体を構成する化合物として、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
一般式(1)〜(4)において、R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44は各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、例えば分枝状とすることができる。炭素数は例えば1〜20であり、1〜10であってもよく、1〜6であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などを例示することができ、その中からイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基を選択したり、tert−ブチル基を特に選択したりすることができる。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるアルコキシ基は、オキシ基にアルキル基が結合した構造を有する。オキシ基に結合するアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。炭素数は例えば1〜20であり、1〜10であってもよく、1〜6であってもよい。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基は、−(OR)nLO−*(Rはアルキレン基を表し、Lは単結合またはアルキレン基等の連結基を表し、*はアントラセン環またはペリレン環への結合位置を表す。nは2以上の整数を表す)で表される構造を有する。RおよびLが表すアルキレン基の炭素数は例えば1〜20であり、1〜6であってもよく、2または3であってもよい。nは例えば1〜20であり、1〜6であってもよく、1〜3であってもよい。*と反対側の末端基として、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基等を挙げることができる。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるアリール基を構成する芳香族炭化水素環の説明については、上記の本発明における「芳香環」としての芳香族炭化水素環の説明を参照することができる。R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるアリール基を構成する芳香族炭化水素環は、単環であってもよく、例えばベンゼン環を選択することができる。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるヘテロアリール基を構成する芳香族複素環の説明については、上記の本発明における「芳香環」としての芳香族複素環の説明を参照することができる。R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるヘテロアリール基を構成する芳香族複素環は、窒素原子を環員として芳香族複素環であってもよく、例えばピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環を選択することができる。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるアルキル基、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基は置換基で置換されていてもよい。アルキル基の置換基は、第4級アンモニウム基(−N+R3:ただし、Rはアルキル基であり、3つのRは互いに同一であっても異なっていてもよい)であってもよく、アリール基の置換基は、アルキル基、アルコキシ基、スルホ基(−SO3H)であってもよい。アルキル基、アルコキシ基の説明と範囲、具体例については、上記のR11等におけるアルキル基、アルコキシ基の説明と範囲、具体例を参照することができる。
一般式(2)で表される化合物において、R21〜R24は同一であっても異なっていてもよく、一般式(3)で表される化合物において、R31およびR32は同一であっても異なっていてもよく、一般式(4)で表される化合物において、R41〜R44は同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)〜(4)において、X11、X21は各々独立にハロゲン原子を表し、X31〜X44は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X31〜X34の少なくとも1つとX41〜X44の少なくとも1つはハロゲン原子である。ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、例えば臭素原子、ヨウ素原子を選択することができる。一般式(3)におけるX31〜X34のうちハロゲン原子であるものは、1つであっても、2つ以上であってもよく、例えば2つまたは4つとすることができる。X31〜X34の2つ以上がハロゲン原子であるとき、それらのハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。X31〜X34のうちハロゲン原子であるものは、X31とX34、または、X31〜X34の全てであってもよい。一般式(4)におけるX41〜X44のうちハロゲン原子であるものは、1つであっても、2つ以上であってもよく、例えば2つまたは4つとすることができる。X41〜X44の2つ以上がハロゲン原子であるとき、それらのハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。X41〜X44のうちハロゲン原子であるものは、X41とX44、または、X41〜X44の全てとすることができる。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、例えば分枝状とすることができる。炭素数は例えば1〜20であり、1〜10であってもよく、1〜6であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などを例示することができ、その中からイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基を選択したり、tert−ブチル基を特に選択したりすることができる。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるアルコキシ基は、オキシ基にアルキル基が結合した構造を有する。オキシ基に結合するアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。炭素数は例えば1〜20であり、1〜10であってもよく、1〜6であってもよい。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基は、−(OR)nLO−*(Rはアルキレン基を表し、Lは単結合またはアルキレン基等の連結基を表し、*はアントラセン環またはペリレン環への結合位置を表す。nは2以上の整数を表す)で表される構造を有する。RおよびLが表すアルキレン基の炭素数は例えば1〜20であり、1〜6であってもよく、2または3であってもよい。nは例えば1〜20であり、1〜6であってもよく、1〜3であってもよい。*と反対側の末端基として、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基等を挙げることができる。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるアリール基を構成する芳香族炭化水素環の説明については、上記の本発明における「芳香環」としての芳香族炭化水素環の説明を参照することができる。R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるアリール基を構成する芳香族炭化水素環は、単環であってもよく、例えばベンゼン環を選択することができる。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるヘテロアリール基を構成する芳香族複素環の説明については、上記の本発明における「芳香環」としての芳香族複素環の説明を参照することができる。R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるヘテロアリール基を構成する芳香族複素環は、窒素原子を環員として芳香族複素環であってもよく、例えばピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環を選択することができる。
R11、R21〜R24、R31、R32、R41〜R44におけるアルキル基、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基は置換基で置換されていてもよい。アルキル基の置換基は、第4級アンモニウム基(−N+R3:ただし、Rはアルキル基であり、3つのRは互いに同一であっても異なっていてもよい)であってもよく、アリール基の置換基は、アルキル基、アルコキシ基、スルホ基(−SO3H)であってもよい。アルキル基、アルコキシ基の説明と範囲、具体例については、上記のR11等におけるアルキル基、アルコキシ基の説明と範囲、具体例を参照することができる。
一般式(2)で表される化合物において、R21〜R24は同一であっても異なっていてもよく、一般式(3)で表される化合物において、R31およびR32は同一であっても異なっていてもよく、一般式(4)で表される化合物において、R41〜R44は同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)〜(4)において、X11、X21は各々独立にハロゲン原子を表し、X31〜X44は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X31〜X34の少なくとも1つとX41〜X44の少なくとも1つはハロゲン原子である。ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、例えば臭素原子、ヨウ素原子を選択することができる。一般式(3)におけるX31〜X34のうちハロゲン原子であるものは、1つであっても、2つ以上であってもよく、例えば2つまたは4つとすることができる。X31〜X34の2つ以上がハロゲン原子であるとき、それらのハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。X31〜X34のうちハロゲン原子であるものは、X31とX34、または、X31〜X34の全てであってもよい。一般式(4)におけるX41〜X44のうちハロゲン原子であるものは、1つであっても、2つ以上であってもよく、例えば2つまたは4つとすることができる。X41〜X44の2つ以上がハロゲン原子であるとき、それらのハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。X41〜X44のうちハロゲン原子であるものは、X41とX44、または、X41〜X44の全てとすることができる。
発光体を構成する化合物は、下記一般式(5)で表される化合物であってもよい。
一般式(5)において、R51は水素原子または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R51におけるアリール基を構成する芳香族炭化水素環の説明と範囲、具体例については、上記の一般式(1)のR11等におけるアリール基の説明と範囲、具体例を参照することができる。R51におけるアリール基の置換基として、アルキル基、アルコキシ基、アルキル基とアリール基の両方で置換されたシリル基、またはアルキル基とハロゲン化アリール基の両方で置換されたシリル基を挙げることができる。アルキル基、アルコキシ基の説明と範囲、具体例については、上記の一般式(1)のR11等におけるアルキル基、アルコキシ基の説明と範囲、具体例を参照することができる。
X51〜X53は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X51〜X53の少なくとも1つはハロゲン原子である。ハロゲン原子の具体例については、上記のX11等が表すハロゲン原子の具体例を参照することができる。X51〜X53のうちハロゲン原子であるものは、1つであっても、2つ以上であってもよく、例えば1つまたは2つとすることができる。X51〜X53の2つ以上がハロゲン原子であるとき、それらのハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。X51〜X53のうちハロゲン原子であるものは、X51またはX53であるか、X51とX52であってもよい。
X51〜X53は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X51〜X53の少なくとも1つはハロゲン原子である。ハロゲン原子の具体例については、上記のX11等が表すハロゲン原子の具体例を参照することができる。X51〜X53のうちハロゲン原子であるものは、1つであっても、2つ以上であってもよく、例えば1つまたは2つとすることができる。X51〜X53の2つ以上がハロゲン原子であるとき、それらのハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。X51〜X53のうちハロゲン原子であるものは、X51またはX53であるか、X51とX52であってもよい。
一般式(6)において、R61はアルカリ金属イオンを表す。アルカリ金属イオンとして、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Fr+を挙げることができ、例えばNa+、K+のいずれかを選択したり、Na+を洗濯したりすることができる。
X61〜X64は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X61〜X64の少なくとも1つはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子の具体例については、上記のX11等が表すハロゲン原子の具体例を参照することができる。X61〜X64のうちハロゲン原子であるものは、1つであっても、2つ以上であってもよい。X61〜X64の2つ以上がハロゲン原子であるとき、それらのハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。
X61〜X64は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X61〜X64の少なくとも1つはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子の具体例については、上記のX11等が表すハロゲン原子の具体例を参照することができる。X61〜X64のうちハロゲン原子であるものは、1つであっても、2つ以上であってもよい。X61〜X64の2つ以上がハロゲン原子であるとき、それらのハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物の中では、例えば一般式(1)または(2)で表される化合物を選択することができ、一般式(1)で表され、R11が置換もしくは無置換のアリール基である化合物、一般式(2)で表され、R21〜R24が全て置換もしくは無置換のアルキル基である化合物を選択することもできる。
以下において、一般式(1)〜(6)で表される化合物の具体例を挙げる。ただし、本発明において発光体に用いることができる化合物は、これらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
以下において、一般式(1)〜(6)で表される化合物の具体例を挙げる。ただし、本発明において発光体に用いることができる化合物は、これらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
(一般式(1)、(2)で表される化合物の具体例)
下記式において、R1における点線はペリレン環またはアントラセン環への結合位置を表し、R2における点線はフェニル基への結合位置を表す。nは1以上の整数を表す。
下記式において、R1における点線はペリレン環またはアントラセン環への結合位置を表し、R2における点線はフェニル基への結合位置を表す。nは1以上の整数を表す。
(一般式(3)で表される化合物の具体例)
下記式において、R1における点線は環への結合位置を表し、R2における点線はフェニル基への結合位置を表す。nは1以上の整数を表す。
下記式において、R1における点線は環への結合位置を表し、R2における点線はフェニル基への結合位置を表す。nは1以上の整数を表す。
(一般式(4)で表される化合物の具体例)
下記式において、R1における点線は環への結合位置を表し、R2における点線はフェニル基への結合位置を表す。nは1以上の整数を表す。
下記式において、R1における点線は環への結合位置を表し、R2における点線はフェニル基への結合位置を表す。nは1以上の整数を表す。
(一般式(5)で表される化合物の具体例)
下記式において、R1における点線はカルバゾール環の窒素原子への結合位置を表し、R2における点線はフェニル基への結合位置を表す。nは1以上の整数を表す。
下記式において、R1における点線はカルバゾール環の窒素原子への結合位置を表し、R2における点線はフェニル基への結合位置を表す。nは1以上の整数を表す。
(一般式(6)で表される化合物の具体例)
下記式において、R1は、Na+等のアルカリ金属イオンまたはアルキル基を表す。
下記式において、R1は、Na+等のアルカリ金属イオンまたはアルキル基を表す。
(発光体を構成する化合物の状態)
本発明で発光体に用いる化合物は、20℃、1気圧で固体であってもよく、例えば結晶性固体であってもよい。ここで、結晶性固体とは、少なくとも一部が結晶構造をなしている固体のことをいい、全体が結晶構造をなしているものであってもよい。結晶性固体であることは、X線回折スペクトルにより確認することができる。フォトンアップコンバージョン組成物が、上記のような通常の環境条件で固体であることにより、多くの用途で固体として取り扱うことが可能になり、高い利便性が得られる。さらに、フォトンアップコンバージョン組成物が結晶性固体であることにより、化合物分子で生じた励起三重項エネルギーが固体内を移動し易くなり、フォトンアップコンバージョン光の発光効率を向上させることができる。
結晶を構成する分子としては、その分子を構成する縮合芳香環(多環縮合構造を有する芳香環)の重心間距離(1つの分子の縮合芳香環の重心と、隣の分子の縮合芳香環の重心との間の距離)が0.4〜1nmであるものを選択したり、0.5〜0.9nmであるものを選択したりすることができる。重心間距離が上記の範囲であるということは、結晶構造中の縮合芳香環が縦に重なりあって積重せずに、縮合芳香環がななめにずれて重なっていることを意味している。これにより、重原子が隣の分子の縮合芳香環の近くに存在することになり、アップコンバージョン効果が得られやすくなる。縮合芳香環の重心間距離は、縮合芳香環に置換させる置換基の種類や炭素数により制御することができる。縮合芳香環の重心間距離を効果的に制御できる置換基として、tert-ブチル基等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基を挙げることができる。例えば、アントラセン環ではフェニル基を導入することにより、その重心間距離を適切に調整することができ、ペリレン環では、tert-ブチル基を導入することにより、その重心間距離を適切に制御することができる。
ここで、縮合芳香環の重心間距離は、単結晶X線構造解析により測定することができる。
本発明で発光体に用いる化合物は、20℃、1気圧で固体であってもよく、例えば結晶性固体であってもよい。ここで、結晶性固体とは、少なくとも一部が結晶構造をなしている固体のことをいい、全体が結晶構造をなしているものであってもよい。結晶性固体であることは、X線回折スペクトルにより確認することができる。フォトンアップコンバージョン組成物が、上記のような通常の環境条件で固体であることにより、多くの用途で固体として取り扱うことが可能になり、高い利便性が得られる。さらに、フォトンアップコンバージョン組成物が結晶性固体であることにより、化合物分子で生じた励起三重項エネルギーが固体内を移動し易くなり、フォトンアップコンバージョン光の発光効率を向上させることができる。
結晶を構成する分子としては、その分子を構成する縮合芳香環(多環縮合構造を有する芳香環)の重心間距離(1つの分子の縮合芳香環の重心と、隣の分子の縮合芳香環の重心との間の距離)が0.4〜1nmであるものを選択したり、0.5〜0.9nmであるものを選択したりすることができる。重心間距離が上記の範囲であるということは、結晶構造中の縮合芳香環が縦に重なりあって積重せずに、縮合芳香環がななめにずれて重なっていることを意味している。これにより、重原子が隣の分子の縮合芳香環の近くに存在することになり、アップコンバージョン効果が得られやすくなる。縮合芳香環の重心間距離は、縮合芳香環に置換させる置換基の種類や炭素数により制御することができる。縮合芳香環の重心間距離を効果的に制御できる置換基として、tert-ブチル基等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基を挙げることができる。例えば、アントラセン環ではフェニル基を導入することにより、その重心間距離を適切に調整することができ、ペリレン環では、tert-ブチル基を導入することにより、その重心間距離を適切に制御することができる。
ここで、縮合芳香環の重心間距離は、単結晶X線構造解析により測定することができる。
(その他の成分)
フォトンアップコンバージョン組成物は、所定の構造を有する化合物からなる発光体のみから構成されていてもよいし、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、上記以外の発光体、無機化合物、ポリマー等を挙げることができる。
フォトンアップコンバージョン組成物がその他の成分を含む場合、フォトンアップコンバージョン組成物における発光体の含有量は、フォトンアップコンバージョン組成物の全量に対して例えば5重量%以上であり、20重量%以上であってもよく、50重量%以上であってもよい。
フォトンアップコンバージョン組成物は、所定の構造を有する化合物からなる発光体のみから構成されていてもよいし、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、上記以外の発光体、無機化合物、ポリマー等を挙げることができる。
フォトンアップコンバージョン組成物がその他の成分を含む場合、フォトンアップコンバージョン組成物における発光体の含有量は、フォトンアップコンバージョン組成物の全量に対して例えば5重量%以上であり、20重量%以上であってもよく、50重量%以上であってもよい。
(フォトンアップコンバージョン組成物の形態)
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、発光体を含んでいればよく、その形状は特に限定されないが、利用しやすい形状として膜状を挙げることができる。膜状のフォトンアップコンバージョン組成物は、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで成膜されたものであってもよい。また、膜の平面形状は用途に応じて適宜選択することができ、例えば、正方形状、長方形状等の多角形状、真円状、楕円状、長円状、半円状のような連続形状であってもよいし、幾何学模様や文字、図形等に対応する特定のパターンであってもよい。
また、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、ナノ粒子にして水などの流動性のある媒体に分散させてもよいし、ナノ粒子にしてポリマーやシリカなどのマトリクス中に分散させて固体状にしてもよい。あるいは、フォトンアップコンバージョン組成物をシリカ粒子や金粒子等の無機粒子の表面にコーティングして、コアシェル型にしても構わない。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、発光体を含んでいればよく、その形状は特に限定されないが、利用しやすい形状として膜状を挙げることができる。膜状のフォトンアップコンバージョン組成物は、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで成膜されたものであってもよい。また、膜の平面形状は用途に応じて適宜選択することができ、例えば、正方形状、長方形状等の多角形状、真円状、楕円状、長円状、半円状のような連続形状であってもよいし、幾何学模様や文字、図形等に対応する特定のパターンであってもよい。
また、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、ナノ粒子にして水などの流動性のある媒体に分散させてもよいし、ナノ粒子にしてポリマーやシリカなどのマトリクス中に分散させて固体状にしてもよい。あるいは、フォトンアップコンバージョン組成物をシリカ粒子や金粒子等の無機粒子の表面にコーティングして、コアシェル型にしても構わない。
<化合物>
芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物のうち、少なくとも1つの重原子および少なくとも1つのアルキル基の両方で置換されたペリレン環を有する化合物および下記一般式(3’)で表される化合物は新規化合物である。
ペリレン環に置換する重原子およびアルキル基、その他のペリレン環に置換してもよい置換基、該化合物の構造の説明と範囲、具体例については、上記のフォトンアップコンバージョン組成物の[発光体を構成する化合物]の項の対応する記載を参照することができる。本発明の化合物は、下記の一般式(2’)〜(4’)で表される化合物であってもよく、例えば一般式(2’)で表される化合物を選択したり、3−ブロモ−2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレンを選択したりすることができる。
芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物のうち、少なくとも1つの重原子および少なくとも1つのアルキル基の両方で置換されたペリレン環を有する化合物および下記一般式(3’)で表される化合物は新規化合物である。
ペリレン環に置換する重原子およびアルキル基、その他のペリレン環に置換してもよい置換基、該化合物の構造の説明と範囲、具体例については、上記のフォトンアップコンバージョン組成物の[発光体を構成する化合物]の項の対応する記載を参照することができる。本発明の化合物は、下記の一般式(2’)〜(4’)で表される化合物であってもよく、例えば一般式(2’)で表される化合物を選択したり、3−ブロモ−2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレンを選択したりすることができる。
一般式(2’)〜(4’)において、R21’〜R24’、R31’、R32’ 、R41’〜R44’は各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表すが、R21’〜R24’の少なくとも1つ、R31’およびR32’の少なくとも1つ、並びにR41’〜R44’の少なくとも1つは置換もしくは無置換のアルキル基である。X21’はハロゲン原子を表し、X31’〜X34’は各々独立に水素原子またはハロゲン原子を表すが、X31’〜X34’の少なくとも1つとX41’〜X44’の少なくとも1つはハロゲン原子である。
R21’〜R24’、R31’、R32’ 、R41’〜R44’におけるアルキル基、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基およびこれらの置換基についての説明と範囲、具体例については、一般式(2)または(4)におけるR21〜R24、R31、R32、R21〜R24についての対応する記載を参照することができる。X21’は一般式(2)のX21と同義であり、X31’〜X34’は一般式(3)のX31〜X34と同義であり、X41’〜X44’は一般式(4)のX41〜X44と同義である。
少なくとも1つの重原子および少なくとも1つのアルキル基の両方で置換されたペリレン環を有する化合物および一般式(3’)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、重原子がハロゲン原子であるものは、ペリレン環がアルキル基で置換されたペリレン誘導体またはペリレンジイミド環がアルキル基で置換されたペリレンジイミド誘導体をハロゲン化することにより合成することができる。ハロゲン化の反応条件については、後述の合成例を参考にすることができる。
R21’〜R24’、R31’、R32’ 、R41’〜R44’におけるアルキル基、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン鎖が連結したオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基およびこれらの置換基についての説明と範囲、具体例については、一般式(2)または(4)におけるR21〜R24、R31、R32、R21〜R24についての対応する記載を参照することができる。X21’は一般式(2)のX21と同義であり、X31’〜X34’は一般式(3)のX31〜X34と同義であり、X41’〜X44’は一般式(4)のX41〜X44と同義である。
少なくとも1つの重原子および少なくとも1つのアルキル基の両方で置換されたペリレン環を有する化合物および一般式(3’)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、重原子がハロゲン原子であるものは、ペリレン環がアルキル基で置換されたペリレン誘導体またはペリレンジイミド環がアルキル基で置換されたペリレンジイミド誘導体をハロゲン化することにより合成することができる。ハロゲン化の反応条件については、後述の合成例を参考にすることができる。
<発光素子>
次に、本発明の発光素子について説明する。
本発明の発光素子は、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物を含むことを特徴とする。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物については、上記の<フォトンアップコンバージョン組成物>の項の記載を参照することができる。本発明の発光素子は、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物を含むことにより、励起光よりも波長が短い光を発光することができる。また、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、増感剤を用いる必要がないため、発光素子を、安価で実用性が高いものとして構成することができる。
本発明の発光素子は、例えば膜状のフォトンアップコンバージョン組成物と、その膜を支持する支持体により構成することができる。膜状のフォトンアップコンバージョン組成物の成膜方法および平面形状については、上記の<フォトンアップコンバージョン組成物の形状>の項の記載を参照することができる。
発光素子が有する膜状のフォトンアップコンバージョン組成物は、単一膜であってもよいし、複数の膜からなる多層積層膜であってもよい。また、支持体上には、膜状のフォトンアップコンバージョン組成物と支持体の間や、膜状のフォトンアップコンバージョン組成物の支持体と反対側に、膜状のフォトンアップコンバージョン組成物以外の膜を有していてもよいし、フォトンアップコンバージョン組成物が多層積層膜である場合には、各膜の間に、膜状のフォトンアップコンバージョン組成物以外の膜を有していてもよい。
支持体については、特に制限はなく、発光素子に慣用されているものであればよい。支持体の材料として、例えば紙、金属、プラスチック、ガラス、石英、シリコン等を挙げることができる。可撓性がある支持体に形成することもできるため、用途に応じて様々な形状にすることも可能である。
また、発光体が有する膜状のフォトンアップコンバージョン組成物は、全体が封止材により覆われていてもよい。封止材には、ガラス、エポキシ樹脂等の水や酸素の透過率が低い透明材料を用いることができる。
次に、本発明の発光素子について説明する。
本発明の発光素子は、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物を含むことを特徴とする。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物については、上記の<フォトンアップコンバージョン組成物>の項の記載を参照することができる。本発明の発光素子は、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物を含むことにより、励起光よりも波長が短い光を発光することができる。また、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、増感剤を用いる必要がないため、発光素子を、安価で実用性が高いものとして構成することができる。
本発明の発光素子は、例えば膜状のフォトンアップコンバージョン組成物と、その膜を支持する支持体により構成することができる。膜状のフォトンアップコンバージョン組成物の成膜方法および平面形状については、上記の<フォトンアップコンバージョン組成物の形状>の項の記載を参照することができる。
発光素子が有する膜状のフォトンアップコンバージョン組成物は、単一膜であってもよいし、複数の膜からなる多層積層膜であってもよい。また、支持体上には、膜状のフォトンアップコンバージョン組成物と支持体の間や、膜状のフォトンアップコンバージョン組成物の支持体と反対側に、膜状のフォトンアップコンバージョン組成物以外の膜を有していてもよいし、フォトンアップコンバージョン組成物が多層積層膜である場合には、各膜の間に、膜状のフォトンアップコンバージョン組成物以外の膜を有していてもよい。
支持体については、特に制限はなく、発光素子に慣用されているものであればよい。支持体の材料として、例えば紙、金属、プラスチック、ガラス、石英、シリコン等を挙げることができる。可撓性がある支持体に形成することもできるため、用途に応じて様々な形状にすることも可能である。
また、発光体が有する膜状のフォトンアップコンバージョン組成物は、全体が封止材により覆われていてもよい。封止材には、ガラス、エポキシ樹脂等の水や酸素の透過率が低い透明材料を用いることができる。
<発光方法>
次に、本発明の発光方法について説明する。
本発明の発光方法は、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物に励起光を照射してフォトンアップコンバージョン組成物から励起光よりも波長が短い光を発光させる発光方法である。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物およびその発光メカニズムについては、上記の<フォトンアップコンバージョン組成物>の項の記載を参照することができる。
フォトンアップコンバージョン組成物に照射する励起光の強度は、例えば1000W/cm2以下であり、10W/cm2以下であってもよく、0.1W/cm2以下であってもよい。また、励起光の強度の下限は例えば0.001W/cm2以上である。励起光の波長は例えば500〜1400nmであり、700〜1400nmであってもよい。また、フォトンアップコンバージョン組成物に発光させる光の波長は例えば300〜700nmであり、300〜600nmであってもよく、300〜500nmであってもよい。本発明の発光方法によれば、上記のような比較的弱い励起光強度でも、励起光波長に対して十分に短波長化した光を発光させることができる。
次に、本発明の発光方法について説明する。
本発明の発光方法は、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物に励起光を照射してフォトンアップコンバージョン組成物から励起光よりも波長が短い光を発光させる発光方法である。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物およびその発光メカニズムについては、上記の<フォトンアップコンバージョン組成物>の項の記載を参照することができる。
フォトンアップコンバージョン組成物に照射する励起光の強度は、例えば1000W/cm2以下であり、10W/cm2以下であってもよく、0.1W/cm2以下であってもよい。また、励起光の強度の下限は例えば0.001W/cm2以上である。励起光の波長は例えば500〜1400nmであり、700〜1400nmであってもよい。また、フォトンアップコンバージョン組成物に発光させる光の波長は例えば300〜700nmであり、300〜600nmであってもよく、300〜500nmであってもよい。本発明の発光方法によれば、上記のような比較的弱い励起光強度でも、励起光波長に対して十分に短波長化した光を発光させることができる。
<フォトンアップコンバージョン組成物の用途>
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、上記のように、励起光よりも波長が短い光を発光することができるため、光をより波長が短い光に変換するフォトンアップコンバーターとして有用であり、特に、近赤外光をより波長が短い光に変換するコンバーターとして効果的に用いることができる。例えば、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物をフォトンアップコンバーターとして太陽電池や人工光合成システムに組み込むことにより、エネルギーとして利用しにくい近赤外光等の長波長光を短波長光に変換して有効利用することが可能になり、太陽電池の光電変換効率や光合成の効率を顕著に向上させることができる。また、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物をバイオイメージングプローブとして応用することにより、生体透過性が高い近赤外光を励起光に用いて生体物質の挙動をイメージングすることが可能になる。これにより、励起光として短波長光を用いることに起因する生体へのダメージ、自家蛍光、光散乱による損失が抑えられるという効果が得られる。さらに、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、生体透過性が高い近赤外光を高エネルギー光に変換して薬物放出の刺激に用いる刺激応答型の薬物放出システムにも応用することが可能である。
本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、上記のように、励起光よりも波長が短い光を発光することができるため、光をより波長が短い光に変換するフォトンアップコンバーターとして有用であり、特に、近赤外光をより波長が短い光に変換するコンバーターとして効果的に用いることができる。例えば、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物をフォトンアップコンバーターとして太陽電池や人工光合成システムに組み込むことにより、エネルギーとして利用しにくい近赤外光等の長波長光を短波長光に変換して有効利用することが可能になり、太陽電池の光電変換効率や光合成の効率を顕著に向上させることができる。また、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物をバイオイメージングプローブとして応用することにより、生体透過性が高い近赤外光を励起光に用いて生体物質の挙動をイメージングすることが可能になる。これにより、励起光として短波長光を用いることに起因する生体へのダメージ、自家蛍光、光散乱による損失が抑えられるという効果が得られる。さらに、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物は、生体透過性が高い近赤外光を高エネルギー光に変換して薬物放出の刺激に用いる刺激応答型の薬物放出システムにも応用することが可能である。
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、光吸収スペクトルの測定は分光光度計(日本分光社製:V−670)を用いて行い、発光スペクトルの測定は分光光度計(パーキンエルマー社製:LS55、大塚電子社製:MCPD−7000)を用いて行い、発光の過渡減衰曲線は、発光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製:Quantaurus-Tau-C11367-02、C11567-01)を用いて行った。
(合成例1) 化合物4の合成
2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(255mg、0.53mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(40mL)に、N−ブロモスクシンイミド(105mg、0.59mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(10mL)を加え、室温で24時間攪拌した。この反応液に、水300mLを加え、析出した沈殿物を吸引濾過にて回収した。この沈殿物を、n−ヘキサンを溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物4の黄色粉末を、収量180mg、収率60%で得た。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):8.44−8.25(m,5H,Ar−H),7.68(s,2H,Ar−H),1.77(s,9H,CH3),1.55−1.5 (m,27H,CH3).
元素分析:(計算値)C36H43Br:C,77.82;H,7.80.(実測値)C,77.81;H,7.81.
2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(255mg、0.53mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(40mL)に、N−ブロモスクシンイミド(105mg、0.59mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(10mL)を加え、室温で24時間攪拌した。この反応液に、水300mLを加え、析出した沈殿物を吸引濾過にて回収した。この沈殿物を、n−ヘキサンを溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物4の黄色粉末を、収量180mg、収率60%で得た。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):8.44−8.25(m,5H,Ar−H),7.68(s,2H,Ar−H),1.77(s,9H,CH3),1.55−1.5 (m,27H,CH3).
元素分析:(計算値)C36H43Br:C,77.82;H,7.80.(実測値)C,77.81;H,7.81.
(実施例1) 化合物1〜3の結晶性固体のフォトンアップコンバージョンの評価
化合物1〜3をそれぞれトルエンにて再結晶化して結晶性固体とし、Ar雰囲気のグローブボックス中でガラスセル内に入れて密閉することにより、評価用サンプルとした。
また、比較化合物1として、無置換のアントラセンの結晶性固体を用意し、これをガラスセル内に入れて密閉することにより、比較サンプルとした。
化合物1〜3をそれぞれトルエンにて再結晶化して結晶性固体とし、Ar雰囲気のグローブボックス中でガラスセル内に入れて密閉することにより、評価用サンプルとした。
また、比較化合物1として、無置換のアントラセンの結晶性固体を用意し、これをガラスセル内に入れて密閉することにより、比較サンプルとした。
化合物1〜3の各結晶性固体に、724nm励起光(連続発振レーザー光)を様々な強度(14.5Wcm-2〜383.2Wcm-2)で照射して発光スペクトルを測定し、化合物1および比較化合物1の各結晶性固体に、724nm励起光(連続発振レーザー光)を145Wcm-2で照射して発光スペクトルを測定した。化合物1の発光スペクトルを図2に示し、化合物2の発光スペクトルを図3に示し、化合物3の発光スペクトルを図4に示し、化合物1および比較化合物1の発光スペクトルを図5に示す。また、化合物1〜3の各結晶性固体について、724nm励起光の照射強度を横軸とし、フォトンアップコンバージョン光の発光強度を縦軸としてプロットした両対数グラフを図6に示す。化合物1について、720nm励起光(パルス発振レーザー光)によるフォトンアップコンバージョン光(470nm放射光)の過渡減衰曲線を測定した結果を図7に示し、燐光(790nmの放射光)の過渡減衰曲線を測定した結果を図8に示す。
図2〜4に示されているように、化合物1〜3の各結晶性固体に724nm励起光を照射することによって、そのレーザー光よりも波長が短い発光が観測された。それらの発光ピークの発光極大波長は、化合物1で472nm、化合物2で501nm、化合物3で464nmであり、それぞれ、予め測定しておいた即時蛍光の発光ピークと一致していた。また、アンチストークスシフトは、化合物1で252nm(0.92eV)、化合物2で223nm(0.76eV)、化合物3で260nm(0.96eV)であり、いずれも大きな値であった。これに対して、比較化合物1では、こうした短波長域に発光ピークが観測されなかった(図5参照)。このことから、重原子である臭素原子で芳香環を置換することにより、優れたフォトンアップコンバージョン効果が発現するようになることがわかった。
また、図6に示されているように、化合物1〜3で観測されたフォトンアップコンバージョン光の励起光強度依存性の両対数グラフは、いずれも傾きが約2.0であった。また、図7、8から、化合物1〜3のフォトンアップコンバージョン光の発光寿命τUCは61.3μs、燐光の発光寿命τTは119μsであり、2τUC=τT±0.3τTを満たしていた。このことから、化合物1〜3で観測されたフォトンアップコンバージョン光は、基底一重項状態S0から励起三重項状態T1への遷移により生じた三重項励起子の三重項−三重項消滅に由来する発光であることが確認された。
図2〜4に示されているように、化合物1〜3の各結晶性固体に724nm励起光を照射することによって、そのレーザー光よりも波長が短い発光が観測された。それらの発光ピークの発光極大波長は、化合物1で472nm、化合物2で501nm、化合物3で464nmであり、それぞれ、予め測定しておいた即時蛍光の発光ピークと一致していた。また、アンチストークスシフトは、化合物1で252nm(0.92eV)、化合物2で223nm(0.76eV)、化合物3で260nm(0.96eV)であり、いずれも大きな値であった。これに対して、比較化合物1では、こうした短波長域に発光ピークが観測されなかった(図5参照)。このことから、重原子である臭素原子で芳香環を置換することにより、優れたフォトンアップコンバージョン効果が発現するようになることがわかった。
また、図6に示されているように、化合物1〜3で観測されたフォトンアップコンバージョン光の励起光強度依存性の両対数グラフは、いずれも傾きが約2.0であった。また、図7、8から、化合物1〜3のフォトンアップコンバージョン光の発光寿命τUCは61.3μs、燐光の発光寿命τTは119μsであり、2τUC=τT±0.3τTを満たしていた。このことから、化合物1〜3で観測されたフォトンアップコンバージョン光は、基底一重項状態S0から励起三重項状態T1への遷移により生じた三重項励起子の三重項−三重項消滅に由来する発光であることが確認された。
(実施例2) 化合物4の結晶性固体のフォトンアップコンバージョンの評価
Ar雰囲気のグローブボックス中で、化合物4の結晶性固体をスライドガラスの間に挟んで密閉することにより、評価用サンプルとした。
また、比較化合物2として2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレンの結晶性固体を用意し、同様の条件でスライドガラスの間に挟んで密閉することにより、比較サンプルとした。
化合物4および比較化合物2の各結晶性固体について、856nm励起光(連続発振レーザー光:135Wcm-2)を照射して測定した発光スペクトルを図9に示す。また、化合物4の結晶性固体について、856nm励起光の照射強度を横軸とし、フォトンアップコンバージョン光の発光強度を縦軸としてプロットした両対数グラフを図10に示す。
図9に示されているように、化合物4の結晶性固体に856nm励起光を照射することにより、そのレーザー光よりも波長が短い緑色発光が観測された。その発光ピークの発光極大波長は520nmであり、予め測定しておいた即時蛍光の発光ピークと一致していた。また、アンチストークスシフトは336nm(0.94eV)で非常に大きいものであった。これに対して、比較化合物2では、こうした短波長域に発光ピークが観測されなかった。また、図10から、化合物4のフォトンアップコンバージョン光の励起光強度依存性の両対数グラフの傾きは約2.0であった。このことから、ペリレン環が重原子で置換された化合物についても、三重項−三重項消滅に由来するフォトンアップコンバージョン効果の発現を確認することができた。
Ar雰囲気のグローブボックス中で、化合物4の結晶性固体をスライドガラスの間に挟んで密閉することにより、評価用サンプルとした。
また、比較化合物2として2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレンの結晶性固体を用意し、同様の条件でスライドガラスの間に挟んで密閉することにより、比較サンプルとした。
化合物4および比較化合物2の各結晶性固体について、856nm励起光(連続発振レーザー光:135Wcm-2)を照射して測定した発光スペクトルを図9に示す。また、化合物4の結晶性固体について、856nm励起光の照射強度を横軸とし、フォトンアップコンバージョン光の発光強度を縦軸としてプロットした両対数グラフを図10に示す。
図9に示されているように、化合物4の結晶性固体に856nm励起光を照射することにより、そのレーザー光よりも波長が短い緑色発光が観測された。その発光ピークの発光極大波長は520nmであり、予め測定しておいた即時蛍光の発光ピークと一致していた。また、アンチストークスシフトは336nm(0.94eV)で非常に大きいものであった。これに対して、比較化合物2では、こうした短波長域に発光ピークが観測されなかった。また、図10から、化合物4のフォトンアップコンバージョン光の励起光強度依存性の両対数グラフの傾きは約2.0であった。このことから、ペリレン環が重原子で置換された化合物についても、三重項−三重項消滅に由来するフォトンアップコンバージョン効果の発現を確認することができた。
本発明によれば、増感剤を用いることなく、励起光よりも波長が短い光を発光できるフォトンアップコンバージョン系を提供することができる。このため、本発明のフォトンアップコンバージョン組成物を用いれば、例えば近赤外光のような長波長光を可視光に変換できる安価な発光素子を提供することが可能になる。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
Claims (15)
- 芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物からなる発光体を含む、フォトンアップコンバージョン組成物。
- 前記化合物が少なくとも1つの重原子で置換された芳香環を含む、請求項1に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
- 前記芳香環が多環縮合構造を有する、請求項2に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
- 前記芳香環がアントラセン環、ペリレン環、またはアントラセン環もしくはペリレン環に複素環が縮合した構造を有する芳香族複素環である、請求項2または3に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
- 前記重原子がハロゲン原子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
- 前記化合物が下記一般式(2)〜(4)のいずれかで表される化合物である、請求項1に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
- 前記化合物からなる結晶を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
- 発光する光が遅延蛍光を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
- 励起一重項状態S1から励起三重項状態T1への項間交差を生じる増感剤が添加されていない、請求項1〜9のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物。
- 少なくとも1つの重原子および少なくとも1つのアルキル基の両方で置換されたペリレン環を有する化合物。
- 下記一般式(2’)〜(4’)のいずれかで表される化合物。
- 芳香環または複素環が少なくとも1つの重原子で置換された構造を有する化合物からなる発光体。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物を含む発光素子。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョン組成物に励起光を照射して前記フォトンアップコンバージョン組成物から前記励起光よりも波長が短い光を発光させる発光方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US201662425183P | 2016-11-22 | 2016-11-22 | |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2017224480A Pending JP2018083945A (ja) | 2016-11-22 | 2017-11-22 | フォトンアップコンバージョン組成物、化合物、発光体、発光素子および発光方法 |
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---|---|
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2024122604A1 (ja) * | 2022-12-09 | 2024-06-13 | 出光興産株式会社 | 光アップコンバージョン有機膜の製造方法、光アップコンバージョン有機膜製造装置、及び光アップコンバージョン有機膜 |
-
2017
- 2017-11-22 JP JP2017224480A patent/JP2018083945A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2024122604A1 (ja) * | 2022-12-09 | 2024-06-13 | 出光興産株式会社 | 光アップコンバージョン有機膜の製造方法、光アップコンバージョン有機膜製造装置、及び光アップコンバージョン有機膜 |
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