JP2018074950A - 乳酸菌数低下抑制剤およびこれを含有する発酵乳製品 - Google Patents

乳酸菌数低下抑制剤およびこれを含有する発酵乳製品 Download PDF

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Abstract

【課題】食品添加物ではなく、かつ、天然物由来のものを利用することによって、光にさらされる環境下において、乳酸菌数の低下を抑制する技術を提供する。【解決手段】以下の成分(A)〜(D):(A)バナナ抽出物(B)バナナ果汁(C)バナナ抽出物の処理物(D)バナナ果汁の処理物から選ばれる1種以上を有効成分とすることを特徴とする光照射時の乳酸菌数低下抑制剤及びこれを含有する発酵乳製品。【選択図】なし

Description

本発明は、光照射時の乳酸菌数低下抑制剤およびこれを含有する発酵乳製品に関する。
近年、乳酸菌等の有用微生物がもつ様々な生理活性作用に関する研究がなされており、これらの微生物が腸内フローラを改善し、便通改善や免疫力の強化等の効果を有することが報告されている。そして、消費者の健康志向の高まりとともに、これらの有用微生物を利用した食品への関心も高まっており、発酵乳飲料やヨーグルトといった発酵乳製品は、これらの有用微生物を手軽に摂取することができるため、数多くの商品が販売されている。
ところで、発酵乳製品の生理作用は、製品中の乳酸菌数に依存するところが多いため、乳酸菌の培養時において、増殖促進物質としてお茶のエキス、クロレラエキス、鉄塩等を添加しておくことが知られている。
しかしながら、製品を運搬したり販売を行う際、日光に照らされてしまったり、ショーケース内で連続して照明が当たったりするなど、長時間製品が光にさらされることがあり、このような場合、製品中に存在する菌の数が減少してしまうため、光照射下の環境においても、菌数の減少を抑制することが望まれていた。
そして、これまで、本出願人は、光照射時であっても、菌数の低下を抑制するために、L−システイン塩酸塩やビタミンCなどの食品添加物を発酵乳製品中に添加することを報告している(特許文献1および特許文献2)。
しかしながら、発酵乳製品中にL−システイン塩酸塩やビタミンCを添加することによって、光照射下における乳酸菌数の低下を抑制することはできたものの、近年の自然志向、健康志向により、食品添加物の摂取をなるべく回避したいという要望が消費者から求められていた。
特開2002−17254号公報 特開2001−157547号公報 特表2009−514519号公報
従って、本発明は、食品添加物ではなく、かつ、天然物由来のものを利用することによって、光にさらされる環境下において、乳酸菌数の低下を抑制する技術を提供することをその課題とするものである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、バナナから得られたバナナ抽出物、バナナ果汁、バナナ抽出物の処理物およびバナナ果汁の処理物から選ばれる1種以上を有効成分として発酵乳中に添加することにより、光照射時における乳酸菌数の低下を抑制することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の成分(A)〜(D):
(A)バナナ抽出物
(B)バナナ果汁
(C)バナナ抽出物の処理物
(D)バナナ果汁の処理物
から選ばれる1種以上を有効成分とすることを特徴とする光照射時の乳酸菌数低下抑制剤である。
また、本発明は上記乳酸菌数低下抑制剤と、乳酸菌とを含有する発酵乳製品である。
更に、本発明は乳を主原料とする培地で乳酸菌を培養して乳酸菌培養物を調製し、次いで、この乳酸菌培養物に、以下の成分(A)〜(D):
(A)バナナ抽出物
(B)バナナ果汁
(C)バナナ抽出物の処理物
(D)バナナ果汁の処理物
から選ばれる1種以上を配合することを特徴とする発酵乳製品の製造方法である。
また更に、本発明はバナナ抽出物またはバナナ果汁の透析処理液であって、バナナ抽出物またはバナナ果汁の分子量300Da以下の画分を含有する透析処理液である。
また、本発明は上記透析処理液と、乳酸菌とを含有する発酵乳製品である。
本発明の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤は、光照射下において、乳酸菌の菌数の減少を抑制することができるものである。特に、本発明の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤としてバナナ抽出物の処理物やバナナ果汁の処理物を用いた場合、これらを添加した発酵乳製品はバナナの風味があまり感じられないため、例えば、バナナ以外の果汁等を添加することによって、好みの風味に調整することが可能である。従って、本発明の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤は、様々な発酵乳製品に利用することができるものである。
また、本発明の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤を添加した発酵乳製品は、運搬や陳列等の光にさらされる環境下において、菌数の低下が抑制されるため、健康の増進に役立つものである。
本発明において、光とは、太陽光等の自然光や人工光源からの人工光を指し、光の波長は特に限定されない。人工光源の例としては、電球、ハロゲンランプ、アセチレンランプ、蛍光灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ナトリウム灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ネオン灯、LED、レーザー等が挙げられる。また、本発明において記載されている光照射の照度(単位:ルクス)も特に限定されるものではない。
本発明の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤は乳酸菌の生菌数が減少することを抑制するものである。
本発明の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤(以下、「本発明抑制剤」という)の有効成分としては、成分(A)バナナ抽出物、成分(B)バナナ果汁、成分(C)バナナ抽出物の処理物および成分(D)バナナ果汁の処理物から選ばれる1種以上が使用される。
本発明抑制剤を得る際に用いられるバナナ(バショウ科バショウ属に属する植物のうち、果実を食用とする植物)の品種としては、とくに制限されないが、例えばジャイアント・キャベンディッシュ、北蕉、グラネイン、モラード、島バナナ、セニョリータ、ラカタン、プランテイン等が挙げられ、これらを混合して使用することもできる。
本発明抑制剤の有効成分となる成分(A)バナナ抽出物としては、例えば、バナナの樹皮、葉、果皮、果肉等の抽出物を挙げることができ、これら中でも、特に果肉の抽出物が好ましい。成分(A)バナナ抽出物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特表2009−514519号公報に記載の方法により容易に得ることができる。具体的には、例えば、皮を剥いたバナナ果肉に0.4倍量の水を加え、フードブレンダーで滑らかなペースト状となったものを、8000rpm、20分間遠心分離して、上清を得る。この上清をオートクレーブにて121℃、15分間滅菌し、さらに8000rpm、20分間遠心分離を行い、得られた上清をバナナ抽出物とする。
また、本発明抑制剤の有効成分となる成分(B)バナナ果汁としては、例えば、果肉や果皮の果汁を挙げることができ、これらの中でも、特に、果肉の果汁が好ましい。成分(B)バナナ果汁の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、皮を剥いたバナナ果肉を粉砕し、これにペクチナーゼやアミラーゼ等の酵素を添加して酵素処理を行い、ペクチンの分解が完了してペースト状になったものを濾過し、得られた濾過液をバナナ果汁とする。また、必要に応じて、バナナ果汁を脱水等して濃縮を行ってもよい。なお、バナナ果汁がフルクタ社やチキータ社等から上市されているため、これを用いることもできる。
さらに、本発明抑制剤の有効成分となる成分(C)バナナ抽出物の処理物としては、上記成分(A)を用いて処理されたものであり、他方、成分(D)バナナ果汁の処理物としては、上記成分(B)を用いて処理されたものである。
上記成分(C)及び成分(D)の処理物としては、例えば、膜分離によって得られた透析処理液、加熱処理により得られた加熱物、蒸留により得られた蒸留物、沈殿物を除去して得られた上澄み液、ろ過によって得られたろ液等が挙げられ、これらの中でも、特に膜分離によって得られた透析処理液が好ましい。膜分離によって得られた透析処理液としては、例えば、セロファン膜等の半透膜で処理した半透膜透析処理液や、イオン交換膜で処理した電気透析処理液が挙げられ、これらの中でも、電気透析処理液が好ましい。この電気透析処理液としては、電気透析処理により得られる濃縮液(以下、「電気透析処理透過液」ともいう)および脱塩液が挙げられ、いずれも本発明抑制剤の有効成分として使用することができるが、この中でも、特に電気透析処理透過液が好ましい。電気透析処理透過液は下記電気透析装置に使用する分離膜によって、電気透析処理透過液中の分子量を調節することができるが、分子量300Da以下の画分を含むものが好ましい。
ここで、電気透析に使用される電気透析処理装置としては、例えば、陰極と陽極の間が複数の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜により交互に仕切られ、陰極室、陽極室、複数の脱塩室および複数の濃縮室を備えるもの等が挙げられる。このような電気透析処理装置では、イオン性の物質が濃縮された液(濃縮液)と、イオン性の物質が除去された液(脱塩液)が得られる。すなわち、陽極側にある陽イオン交換膜と陰極側にある陰イオン交換膜で仕切られた部分が濃縮室であり、濃縮室に還流している液体が濃縮液である。そして陽極側にある陰イオン交換膜と陰極側にある陽イオン交換膜とで仕切られた部分が脱塩室であり、脱塩室に還流している液体が脱塩液である。電気透析処理装置は、マイクロアシライザーS3(株式会社アストム社製)等の名称で市販もされているため、これらを利用することもできる。
上記電気透析処理透過液及び上記脱塩液を得るための具体的な方法としては、電気透析処理装置の脱塩室に、例えば、上記成分(A)または上記成分(B)をそのまま又は、脱イオン水等で希釈したものを還流し、濃縮室に水等を還流して電気透析処理を行うことが挙げられる。
上記電気透析の条件は特に制限されるものではないが、例えば、濃縮室に成分(A)または成分(B)の5〜100質量%(以下、単に「%」という)相当量、好ましくは10〜60%相当量の水を還流して陰極と陽極の間に10〜200Vの電圧をかけ電流を通じて、脱塩室の電気伝導度が平衡(0ミリジーメンス毎センチメートル(mS/cm))となるまで電気透析処理を行い、濃縮液を回収することにより得る方法を挙げることができる。濃縮室に還流させる液体は、水以外にも例えば、食塩水、クエン酸水等の電解質溶液も使用することができる。
本発明抑制剤は、上記のようにして得られた成分(A)〜成分(D)から選ばれる1種以上をそのままの状態で使用しても、また、これらを更に噴霧乾燥や凍結乾燥等の手段により乾燥させた粉末状で使用してもよい。本発明抑制剤を、通常発酵乳製品に添加することが認められている他の副素材と併せて発酵乳中に配合することにより、発酵乳製品が得られる。
本発明抑制剤を発酵乳製品に添加するにあたっての添加量は、特に制限されないが、例えば、0.1〜10質量%(以下、単に「%」で示す)が好ましく、0.5〜2%がより好ましく、0.5〜1%が特に好ましい。具体的には、成分(A)を有効成分とする場合0.1〜10%が好ましく、0.5〜2%がより好ましく、0.5〜1%が特に好ましい。また、成分(B)を有効成分とする場合0.1〜10%が好ましく、0.5〜2%がより好ましく、0.5〜1%が特に好ましい。さらに、成分(C)を有効成分とする場合0.07〜7.3%が好ましく、0.37〜1.46%がより好ましく、0.37〜0.73%が特に好ましい。またさらに、成分(D)を有効成分とする場合0.07〜7.3%が好ましく0.37〜1.46%がより好ましく、0.37〜0.73%が特に好ましい。
なお、本発明抑制剤の発酵乳製品への添加時期は、乳酸菌の培養終了後であることが好ましいが、これに限らず、乳酸菌を培養する前でも、培養の途中で加えてもよい。また、複数回に分けて加えることも可能である。特に、本発明抑制剤を乳酸菌培養終了後に得られる乳酸菌培養物に添加すると、光照射時における乳酸菌数の低下を強く抑制することができる。
ここで、発酵乳製品とは、発酵豆乳若しくは乳等省令により定められている発酵乳、乳製品乳酸菌飲料等の飲料やハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、プレーンヨーグルト、更にはケフィア、チーズ等も包含するものである。また、本発明の発酵乳製品には、種々の乳酸菌を利用した飲食品、例えば、プレーンタイプ、フレーバードタイプ、フルーツタイプ、甘味タイプ、ソフトタイプ、ドリンクタイプ、固形(ハード)タイプ、フローズンタイプ等の発酵乳、乳酸菌飲料、ケフィア、チーズ等が含まれる。
これらの発酵乳製品は、上記した乳酸菌培養物に必要に応じて、シロップ等の甘味料のほか、それ以外の各種食品素材、例えば、各種糖質、増粘剤、乳化剤、各種ビタミン剤等の任意成分を配合することにより得られる。これらの食品素材として具体的なものは、ショ糖、グルコース、フルクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、麦芽糖等の糖質、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール、アスパルテーム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムK、ステビア等の高甘味度甘味料、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類、アルギン酸プロピレングリコール等の各種増粘(安定)剤、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、クリーム、バター、サワークリームなどの乳脂肪、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の酸味料、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE類等の各種ビタミン類、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン等のミネラル分、ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シソ系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、アプリコット系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル系、ハーブ系、紅茶、コーヒー系等のフレーバー類を挙げることができる。
また、上記発酵乳製品を得るために、培養される乳酸菌としては、通常、食品製造に使用される乳酸菌であれば特に限定されず、例えば、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・クレモリス(Lactobacillus cremoris)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ユーグルティ(Lactobacillus yoghurti)、ラクトバチルス・デルブルッキィー サブスピーシーズ.ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキィー サブスピーシーズ.デルブルッキィー(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ラフィノラクチス(Lactococcus raffinolactis)等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等のエンテロコッカス属細菌、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・アングラータム(Bifidobacterium angulatum)等のビフィドバクテリウム属細菌を挙げることができる。これらの乳酸菌の中でもラクトバチルス属細菌が好ましく、これらの中でもラクトバチルス・カゼイまたはラクトバチルス・ガセリがより好ましく、特にラクトバチルス・カゼイYIT9029(FERM BP−1366、受託日:昭和56年1月12日、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6))が好ましい。
また、上記発酵乳製品を得るために、乳酸菌を培養する培養条件は特に限定されないが、例えば、乳を主原料とする培地に乳酸菌を、培地中の菌数が1.0×10〜1.0×10cfu/ml程度となるように接種し、これを30〜40℃程度の温度で1〜7日間程度培養する条件が挙げられる。また、このときの培養条件としては、静置、攪拌、振盪、通気等から用いる乳酸菌の培養に適した方法を適宜選択して行えばよい。
斯くして得られる本発明抑制剤を含有する発酵乳製品は、光照射下で保存された場合に、乳酸菌数の低下を抑制することができるものである。
なお、従来から、乳酸菌の増殖を促進させるために、バナナ抽出物を培地に添加して培養することが知られている(特許文献3)。しかしながら、本発明抑制剤は、このような乳酸菌の増殖を高めるといった発想では全くなく、光照射が原因となる乳酸菌数の低下を抑制するというものであるため、バナナ抽出物による乳酸菌の増殖促進作用とは異なった技術思想に基づくものである。なお、本発明抑制剤は、遮光時における乳酸菌数の低下を抑制するという効果を奏するものではなく、光照射時に限り有効なものである。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
製 造 例 1
バナナ果汁の電気透析処理透過液及び脱塩液の製造(1):
濃縮バナナ果汁(Brix68.2)を脱イオン水で5倍希釈し、これを電気透析処理装置(膜カートリッジ:AC−220−550、分画分子量300Da、製品名:マイクロアシライザーS3、装置メーカー:株式会社アストム社製)の脱塩室に500g入れた。なお、濃縮バナナ果汁の5倍希釈液のBrixは13.9であった。濃縮室には、300gの脱イオン水を入れた。電極液には5%硫酸ナトリウム水溶液を用いて、脱塩室の電気伝導度が平衡となるまで8時間程度、電気透析処理を行い、脱塩液(Brix13.9)と濃縮液(Brix1.9)に分離した。この濃縮液を、バナナ果汁の電気透析処理透過液とした。
ここでBrix値は、20℃のショ糖溶液の質量百分率に相当する値であり、Brix屈折計で測定される糖度であって、固形分濃度の目安となる値である。
製 造 例 2
バナナ抽出物の製造:
皮を剥いたバナナ果肉250gと水100mLをフードブレンダーに入れ、滑らかなペースト状にした。このペーストを8000rpm、20分間遠心分離を行い、上清を得た。上清をオートクレーブにて121℃、15分間滅菌し、さらに8000rpm、20分間遠心分離を行った。得られた上清をバナナ抽出物(Brix17)とした。
試 験 例 1
光照射保存における乳酸菌数低下抑制試験:
10%脱脂粉乳培地を基本培地とし、100℃、15分間加熱殺菌して培養培地を調整した。この培地にラクトバチルス・カゼイ(YIT9029)のスターターを0.1%接種して(初発菌数:1.5×10cfu/ml)、37℃で24時間培養を行い、乳酸菌培養物を得た。この乳酸菌培養物にシロップおよび水を加え、さらに、製造例1で得られた電気透析処理透過液(Brix1.9)を乳酸菌飲料に対して0.73%となるよう添加して乳酸菌飲料を調製した。この乳酸菌飲料を実施例1とした。
また、濃縮バナナ果汁の水希釈液(Brix17)を乳酸菌飲料に対して1%となるよう添加することに変更する以外は、実施例1と同様の方法により乳酸菌飲料を調製し、これを実施例2とした。
さらに、バナナ抽出物(Brix17)を乳酸菌飲料に対して1%となるよう添加することに変更する以外は、実施例1と同様の方法により乳酸菌飲料を調製し、これを実施例3とした。
また、製造例1で得られた脱塩液(Brix13.9)を乳酸菌飲料に対して1.22%となるよう添加することに変更する以外は、実施例1と同様の方法により乳酸菌飲料を調製し、これを実施例4とした。
一方、バナナの成分を含まないことに変更する以外は、実施例1と同様の方法により乳酸菌飲料を調製し、これを比較例1とした。
実施例1〜4および比較例1の乳酸菌飲料を光安定性試験機(1200ルクス、10℃の環境条件、製品名:プログラム光安定性試験機LST−2000、装置メーカー:東京理化器械株式会社)内に保存し、保存開始直後と、保存後7日後の生菌数を希釈平板法により測定した。また、この乳酸菌飲料中の菌の生残率((a))を以下の式[数1]により求めた。さらに、乳酸菌飲料への各バナナ成分の添加量とそのBrixから、乳酸菌飲料中のバナナの成分由来のBrix((b))と乳酸菌飲料中の単位固形分濃度(Brix1)あたりの生残率(理論値)((c))を求めた。
Figure 2018074950
また、さらに、乳酸菌飲料の保存開始直後の風味を下記評価基準により評価した。結果を表1に示す。
<風味評価基準>
評点:内容
5:バナナの風味はしない。
4:バナナの風味がほとんどない。
3:バナナの風味がやや感じられる。
2:バナナの風味が感じられる。
1:バナナの風味が強く感じられる。
Figure 2018074950
表1から明らかなように、電気透析処理透過液を添加した実施例1、バナナ果汁を添加した実施例2、バナナ抽出物を添加した実施例3及び脱塩液を添加した実施例4は、無添加の乳酸菌飲料である比較例1と比べて生残率が高く、光照射下の保存において、乳酸菌数の減少が抑制される効果が確認された。特に、電気透析処理透過液を添加した実施例1は、Brix1あたりの生残率改善効果が最も高く、光照射時の乳酸菌数低下抑制効果が極めて優れていた。
さらに、電気透析処理透過液を添加した実施例1は、乳酸菌飲料中のバナナの成分由来のBrixが低いにも関わらず、光照射時の乳酸菌数低下抑制効果が高く、バナナの風味はほとんど感じられなかった。このため、電気透析処理透過液は、バナナ以外の果汁等を添加して好みの風味に調製が可能であるため、使用性が良いことが確認された。
製 造 例 3
バナナ果汁の電気透析処理透過液及び脱塩液の製造(2):
濃縮バナナ果汁(Brix68.2)を脱イオン水で5倍希釈し、これを電気透析処理装置(膜カートリッジ:AC−220−550、分画分子量300Da、製品名:マイクロアシライザーS3、装置メーカー:株式会社アストム社製)の脱塩室に500g入れた。なお、濃縮バナナ果汁の5倍希釈液のBrixは12.3であった。濃縮室には、300gの脱イオン水を入れた。電極液には5%硫酸ナトリウム水溶液を用いて、脱塩室の電気伝導度が平衡となるまで8時間程度、電気透析処理を行い、脱塩液(Brix12.3)と濃縮液(Brix0.87)に分離した。この濃縮液を、バナナ果汁の電気透析処理透過液とした。
参 考 試 験1:
遮光保存における乳酸菌数低下抑制試験:
10%脱脂粉乳培地を基本培地とし、これに製造例3で得られた電気透析透過液(Brix0.87)を1.82%となるように添加し、100℃、15分間加熱殺菌して培養培地を調整した。この培養培地にラクトバチルス・カゼイ(YIT9029)のスターターを0.1%接種して(初発菌数:1.5×10cfu/ml)、37℃で24時間培養を行い、乳酸菌培養物を得た。この乳酸菌培養物にシロップおよび水を加えて、電気透析処理透過液を0.41%含有する乳酸菌飲料(試験品1)を調製した。
さらに、濃縮バナナ果汁の水希釈液(Brix17)を培地に2.2%となるよう添加することに変更する以外は、試験品1と同様の方法により、乳酸菌飲料を調製した。得られた乳酸菌飲料は、バナナ果汁を0.5%含有するものであり、これを試験品2とした。
また、さらに、製造例2で得られたバナナ抽出物(Brix17)を培地に2.2%となるよう添加することに変更する以外は、試験品1と同様の方法により、乳酸菌飲料を調製した。得られた乳酸菌飲料は、バナナ抽出物を0.5%含有するものであり、これを試験品3とした。
また、製造例3で得られた脱塩液(Brix12.3)を培地に6.1%となるよう添加することに変更する以外は、試験品1と同様の方法により、乳酸菌飲料を調製した。得られた乳酸菌飲料は、脱塩液を1.38%含有するものであり、これを試験品4とした。
一方、バナナの成分を含まないことに変更する以外は、試験品1と同様の方法により、乳酸菌飲料を調製し、これを試験品5とした。
試験品1〜5の乳酸菌飲料を10℃、遮光環境下で保存し、保存開始直後と、保存後14日後の菌数より菌の生残率((d))を算出した。また、乳酸菌飲料中の各バナナ成分の含有量とそのBrixから、乳酸菌飲料中のバナナの成分由来のBrix((e))を求めた。結果を表2に示す。
Figure 2018074950
試験品1〜4と試験品5の遮光保存14日後の菌の生残率を比較すると、試験品1〜4では、試験品5と同等か、それよりもさらに悪い生残率となっていた。このため、バナナ果汁の電気透析処理透過液、バナナ果汁、バナナ抽出物および脱塩液は、遮光保存中の菌数の低下を抑制する効果は奏さないことが明らかとなった。
本発明の光照射時の乳酸菌抑制剤は、光照射下において、乳酸菌数の低下を抑制することができるものであるため、光にさらされる環境下での保存時に有用性が高いものである。特に、本発明の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤としてバナナ抽出物の処理物やバナナ果汁の処理物を用いると、これらを添加した発酵乳製品はバナナの風味があまり感じられず、他の果汁等を添加することによって、好みの風味に調整することが可能である。従って、本発明の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤は、様々な発酵乳製品に利用することができるものである。
以 上

Claims (9)

  1. 以下の成分(A)〜(D):
    (A)バナナ抽出物
    (B)バナナ果汁
    (C)バナナ抽出物の処理物
    (D)バナナ果汁の処理物
    から選ばれる1種以上を有効成分とすることを特徴とする光照射時の乳酸菌数低下抑制剤。
  2. 前記成分(C)および前記成分(D)が、分子量300Da以下の画分である請求項1記載の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤。
  3. 前記成分(C)および前記成分(D)が、透析処理液である請求項1または2記載の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤。
  4. 前記成分(C)および前記成分(D)が、電気透析処理液である請求項1〜3の何れかの項記載の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤。
  5. 請求項1〜4の何れかの項記載の光照射時の乳酸菌数低下抑制剤と、乳酸菌とを含有する発酵乳製品。
  6. 乳を主原料とする培地で乳酸菌を培養して乳酸菌培養物を調製し、次いで、この乳酸菌培養物に、以下の成分(A)〜(D):
    (A)バナナ抽出物
    (B)バナナ果汁
    (C)バナナ抽出物の処理物
    (D)バナナ果汁の処理物
    から選ばれる1種以上を配合することを特徴とする発酵乳製品の製造方法。
  7. バナナ抽出物またはバナナ果汁の透析処理液であって、バナナ抽出物またはバナナ果汁の分子量300Da以下の画分を含有する透析処理液。
  8. 前記透析処理液が電気透析処理液である請求項7記載の透析処理液。
  9. 請求項7または8記載の透析処理液と、乳酸菌とを含有する発酵乳製品。
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