JP2018070774A - 難燃剤、難燃性樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体及びその製造方法 - Google Patents

難燃剤、難燃性樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体及びその製造方法 Download PDF

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泰宏 松本
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Abstract

【課題】本発明は、成形体の強度を維持しつつ優れた難燃性を付与できる難燃剤の提供を目的とする。【解決手段】本発明の難燃剤は、フェノール性水酸基を有する第1有機化合物及びグリシジル基を有する第2有機化合物の反応生成物である重量平均分子量10,000以下の芳香族化合物(A)と、芳香族化合物(A)以外の化合物であって、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、スズ又はこれらの組み合わせを含む有機無機複合化合物(B)と、芳香族化合物(A)及び有機無機複合化合物(B)以外の化合物であって、窒素、炭素、水素、酸素、硫黄又はこれらの組み合わせを含むリン含有化合物(C)とを含有する。当該難燃剤は、フッ素化ポリマー(D)をさらに含有するとよい。リン含有化合物(C)が、少なくともホスファゼン誘導体を含む混合物であるとよい。【選択図】なし

Description

本発明は、難燃剤、難燃性樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体及びその製造方法に関する。
近年、難燃性樹脂組成物の分野において、非ハロゲン系難燃剤、金属水酸化物、リン酸エステル系難燃剤等に代わる難燃剤として、特定のリン酸塩を主成分とするイントメッセント系難燃剤が提案されている(特許文献1参照)。このイントメッセント系難燃剤は、燃焼時に表面膨張層を形成して分解生成物の拡散と伝熱とを抑制することで優れた難燃性を発揮する。
一方、イントメッセント系難燃剤は、樹脂組成物中で二次凝集に起因する分散不良を生じ、その結果、成形体に十分な難燃性を付与できないおそれや、耐衝撃性等の強度を低下させるおそれなどがある。そこで、イントメッセント系難燃剤を難燃性樹脂組成物に用いる場合、特定の分子構造を有するリン酸エステル、シリコーンオイル、ポリカルボジイミド等の化合物を共添加することが提案されている(特許文献2〜4参照)。また、イントメッセント系難燃剤を用いた難燃性樹脂組成物においては、形成される成形体の難燃性を向上させるための難燃助剤として、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム等を共添加すること(特許文献5参照)、トリアジン環含有化合物を共添加すること(特許文献6参照)、燃焼時の高温度下で炭化物を多量に生成する高分子化合物を共添加すること(非特許文献1参照)なども提案されている。
しかしながら、上述の方法によってもイントメッセント系難燃剤の分散不良を効果的に抑制することは困難であり、また上述の難燃助剤も樹脂に相溶し難く分散不良を生じ易い。これらの結果、上記従来の難燃剤や難燃助剤を用いた成形体は、耐衝撃性等の強度や難燃性の観点から十分に満足のいくものではない。
また、電線、電子機器外装材等の分野に用いられる成形体は、軽量化やコストダウンのために小型化及び薄肉化が進行している。そのため、これらに用いられる難燃剤には、小型成形体及び薄肉成形体に対しても優れた難燃性を付与できることが要求されている。しかし、上述の特許文献及び非特許文献には、厚さ1.6mm以上の比較的厚い試験片に難燃剤を配合した場合のUL94V燃焼試験の評価結果は記載されているが、比較的薄い試験片に難燃剤を配合した場合の難燃性については評価されていない。
特開2003−26935号公報 特開2004−238568号公報 特開2009−120717号公報 特開2009−292965号公報 特開2016−69479号公報 特開2016−3248号公報
武田邦彦監修「電子電気材料の難燃化への科学的アプローチ」技術情報協会(2004)
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、成形体の強度を維持しつつ優れた難燃性を付与できる難燃剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定の重合体と、特定の有機無機複合化合物と、リン含有化合物とを組み合わせることにより上述の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、フェノール性水酸基を有する第1有機化合物及びグリシジル基を有する第2有機化合物の反応生成物である重量平均分子量10,000以下の芳香族化合物(A)と、上記芳香族化合物(A)以外の化合物であって、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、スズ又はこれらの組み合わせを含む有機無機複合化合物(B)と、上記芳香族化合物(A)及び有機無機複合化合物(B)以外の化合物であって、窒素、炭素、水素、酸素、硫黄又はこれらの組み合わせを含むリン含有化合物(C)とを含有する難燃剤である。
当該難燃剤は、成形体の強度を維持しつつ優れた難燃性を付与できる。当該難燃剤が上記構成を備えることで上記効果を奏する理由は必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、当該難燃剤の含有する芳香族化合物(A)は、フェノール構造に由来する高い熱安定性を有し、高温度下でも完全に分解せずに一定量の炭化物を供給することができると考えられる。そのため、当該難燃剤を用いた成形体を燃焼させようとした場合、上記炭化物、有機無機複合化合物(B)及びリン含有化合物(C)が表面膨張層を安定的に形成することで優れた難燃性が発揮されると考えられる。また、当該難燃剤は、芳香族化合物(A)が芳香環に由来する比較的極性の低い部分と、エーテル構造及び水酸基に由来する比較的極性の高い部分とを有し、かつ重量平均分子量が上記上限以下であるため、各種樹脂との相溶性に優れると考えられる。その結果、当該難燃剤は、成形体中で良好に分散することができ、これにより成形体の強度を維持しつつ優れた難燃性を付与できると考えられる。
上記グリシジル基が、グリシジルエーテル基であるとよい。このように、上記グリシジル基がグリシジルエーテル基であることで、成形体の強度の維持と優れた難燃性の付与とをより確実に達成できる。
上記芳香族化合物(A)の含有割合としては2.5質量%以上30質量%以下が好ましく、上記有機無機複合化合物(B)の含有割合としては2.5質量%以上30質量%以下が好ましく、かつ上記リン含有化合物(C)の含有割合としては45質量%以上95質量%以下が好ましい。このように、上記芳香族化合物(A)、有機無機複合化合物(B)及びリン含有化合物(C)の含有割合をそれぞれ上記範囲とすることで、成形体の強度の維持と、優れた難燃性の付与とをより確実に達成できる。
当該難燃剤は、フッ素化ポリマー(D)をさらに含有するとよい。このように、当該難燃剤が難燃性に優れるフッ素化ポリマー(D)をさらに含有することで、成形体に付与できる難燃性がより向上する。
上記リン含有化合物(C)が、少なくともホスファゼン誘導体を含む混合物であるとよい。このように、上記リン含有化合物(C)が少なくともホスファゼン誘導体を含む混合物であることで、成形体に付与できる難燃性がより向上する。
上記ホスファゼン誘導体が、下記式(1)で示される融点70℃以上の環状ホスファゼン化合物であるとよい。このように、上記ホスファゼン誘導体が下記式(1)で示される融点70℃以上の環状ホスファゼン化合物であることで、成形体に付与できる難燃性がより向上する。
Figure 2018070774
(式(1)中、mは、3以上8以下の整数である。R及びRは、それぞれ独立して、芳香環を含みかつハロゲン原子を含まない1価の有機基である。)
上記リン含有化合物(C)が、17.5(MPa)1/2以上25(MPa)1/2以下のSP値を有する化合物を含むとよい。このように、上記リン含有化合物(C)が、上記範囲のSP値を有する化合物を含むことで、当該難燃剤の成形体中での分散性をより向上でき、その結果、成形体の強度の維持と、優れた難燃性の付与とをより確実に達成できる。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、上述の難燃剤と、熱可塑性樹脂とを含有する難燃性樹脂組成物である。
当該難燃性樹脂組成物は、上述の難燃剤を含有するため、強度及び難燃性に優れる成形体を形成することができる。
上記熱可塑性樹脂100質量部に対する上記難燃剤の含有量としては、1質量部以上50質量部以下が好ましい。このように、上記熱可塑性樹脂100質量部に対する上記難燃剤の含有量を上記範囲とすることで、形成される成形体の強度及び難燃性をバランスよく向上できる。
当該難燃性樹脂組成物は、外接球の直径が15mm以下のペレットであるとよい。このように、当該難燃性樹脂組成物が外接球の直径が上記上限以下のペレットであることで、成形時のハンドリング性を向上しつつ、形成される成形体の難燃性のバラつきを抑制できる。
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、上述の難燃剤及び熱可塑性樹脂を混練する工程を備え、上記混練工程でカオス混合を行う難燃性樹脂組成物の製造方法である。
当該難燃性樹脂組成物の製造方法によれば、カオス混合により上述の難燃剤を熱可塑性樹脂に確実に分散させることができ、これにより当該難燃性樹脂組成物を容易かつ確実に製造できる。ここで、一般に、水などの粘性の低い流体は流れを乱流化させることで効率良く混合できるが、溶融した樹脂組成物のような粘性の高い流体の流れを乱流化させることは必要とするエネルギーが多大なものとなるため難しい。そこで、粘性の高い流体を効率よく一様に混練するためには、流れを乱流化させるのではなく、層流状態で混合させるカオス混合が好適である。
カオス混合の概念を以下に述べる。ある2つの流体の混合を考えた場合、初期の2流体の境界面上のすべての点に対して、その位置を初期値として流体粒子の運動を支配する方程式を解くと、境界面の時間発展を求めることができる。2流体がすみやかに混合するためには、この境界面は小さい間隔で折りたたまれていく必要があることから、境界面の面積は急激に増加しなければならず、混合初期にごく近くにいた境界面上の2点間の距離は、急激に増大する必要がある。このように、カオス混合とは流体の運動を支配する方程式の解で、2点間の距離が時間と共に指数関数的に増大するカオス解をもつ混合のことである。カオス混合の詳細は、例えばChaos,Solitons&Fractals Vol.6 p425−438に記載されている。
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、上述の難燃性樹脂組成物により形成される成形体である。当該成形体は、上述の難燃性樹脂組成物により形成されるため、強度及び耐熱性に優れる。
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、上述の難燃性樹脂組成物を成形する工程を備える成形体の製造方法である。当該成形体の製造方法は、上述の成形体を容易かつ確実に製造できる。
ここで「融点」とは、10℃/minの昇温速度で示差走査熱量分析(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を行った際に測定されるピークトップの温度を意味する。「有機基」とは、1以上の炭素原子を含む基をいう。「外接球」とは、外接可能な球のうち最小のものをいう。
本発明の難燃剤、難燃性樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体及びその製造方法は、強度及び難燃性に優れる成形体を提供することができる。
本発明の難燃性樹脂組成物の製造に用いる間隙処理装置の一例を示す模式的平面図である。 図1のA−A線における模式的端面図である。 図1の間隙処理装置を備える製造装置を示す模式的側面図である。
以下、本発明の難燃剤、難燃性樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体及びその製造方法の実施形態について詳細に例示説明する。
<難燃剤>
当該難燃剤は、フェノール性水酸基を有する第1有機化合物及びグリシジル基を有する第2有機化合物の反応生成物である重量平均分子量10,000以下の芳香族化合物(A)と、芳香族化合物(A)以外の化合物であって、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、スズ又はこれらの組み合わせを含む有機無機複合化合物(B)と、芳香族化合物(A)及び有機無機複合化合物(B)以外の化合物であって、窒素、炭素、水素、酸素、硫黄又はこれらの組み合わせを含むリン含有化合物(C)とを含有する。当該難燃剤は、任意成分としてフッ素化ポリマー(D)をさらに含有することが好ましい。また、当該難燃剤は、上述した成分以外の他の任意成分をさらに含有してもよい。
当該難燃剤は、成形体の製造に用いる難燃性樹脂組成物の原料として好適に用いることができる。当該難燃剤を用いた成形体は、燃焼時の加熱によって芳香族化合物(A)から炭化物を効率的に生じ、この炭化物と他の成分とによって表面膨張層が形成されることで優れた難燃性が発揮される。なお、当該難燃剤を難燃性樹脂組成物の原料として用いる場合、芳香族化合物(A)、有機無機複合化合物(B)及びリン含有化合物(C)と任意成分とを予め混合してマスターバッチ化したものを後述する熱可塑性樹脂等の他の原料に添加してもよく、各成分を別々に他の原料に添加してもよい。以下、各成分について説明する。
[芳香族化合物(A)]
芳香族化合物(A)は、フェノール性水酸基を有する第1有機化合物及びグリシジル基を有する第2有機化合物の反応生成物である重量平均分子量10,000以下の化合物である。また、芳香族化合物(A)は、当該難燃剤を用いた難燃性樹脂組成物の溶融時の流動性を向上させ、これにより成形性を向上させる効果もある。
芳香族化合物(A)の重量平均分子量の上限としては、10,000であり、8,000が好ましく、5,000がより好ましく、3,000がさらに好ましい。一方、上記重量平均分子量の下限としては、300が好ましい。芳香族化合物(A)の重量平均分子量を上記上限より小さくすること、特に5,000以下とすることで、難燃性樹脂組成物への添加時に混練によってすみやかに溶融させることができ、その結果、分散性をより向上することができる。上記重量平均分子量が上記上限を超える場合、難燃性樹脂組成物への添加時の混練温度では十分に溶融せず、その結果、分散性が低下することで成形体の強度及び難燃性が不十分となるおそれがある。逆に、上記重量平均分子量が上記下限より小さい場合、後述する炭化物の生成量が低減し、その結果、成形体に十分な難燃性を付与できないおそれがある。
ここで「重量平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される値をいう。なお、芳香族化合物(A)の分子量は、単分散でも多分散でもよい。すなわち、芳香族化合物(A)は、特定分子量の化合物のみにより構成されていてもよく、分子量の異なる複数の化合物の混合物でもよい。
芳香族化合物(A)は、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で30℃から600℃まで加熱したときの600℃における残渣率(以下、「W600℃」ともいう)が5質量%以上であるとよい。
この残渣率W600℃の測定は、雰囲気を制御可能な公知の熱重量分析法(Thermogravimetric Analysis:TGA)で行うことができる。具体的には、10℃/minの昇温速度で600℃を超える温度まで計測して得られた重量減少曲線に基づき、下記式(A)から算出することができる。
600℃(質量%)=(600℃における試料質量×100)/(測定開始時の試料質量)・・・(A)
残渣率W600℃の分析は、例えばTA Instruments製の「TGA2950」に窒素ガスを導入することで行うことができる。
芳香族化合物(A)の残渣率W600℃の下限としては、10質量%がより好ましく、25質量%がさらに好ましい。上記残渣率W600℃が上記下限より小さい場合、当該難燃剤を添加した成形体の燃焼時、十分に炭化物を形成することができず、その結果、上述の表面膨張層による難燃性が不十分となるおそれがある。
一方、上記残渣率W600℃の上限としては、難燃性樹脂組成物に添加する際の混練プロセスでの分散性を向上する観点から70質量%が好ましく、上記分散性を向上する観点、及び当該難燃剤を用いた難燃性樹脂組成物からペレットを形成し易くする観点から60質量%がより好ましい。
(第1有機化合物)
フェノール性水酸基を有する第1有機化合物としては、例えばフェノール類や、フェノール性水酸基を有する樹脂等が挙げられる。このフェノール性水酸基を有する樹脂としては、例えばフェノール類とアルデヒド類とを原料とするノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。第1有機化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記フェノール類としては、例えばクレゾール、エチルフェノール、キシレノール、p−tブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等のアルキルフェノールや、p−フェニルフェノール、フェノールなどが挙げられる。これらの中で、フェノールが好ましい。上記フェノール類は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。これらの中で、パラホルムアルデヒドが好ましい。上記アルデヒド類は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記フェノール性水酸基を有する樹脂のMwの下限としては、400が好ましく、600がより好ましい。一方、上記Mwの上限としては、9,000が好ましく、6,000がより好ましく、4,000がさらに好ましい。上記Mwが上記下限より小さい場合、芳香族化合物(A)のMwが低下し、その結果、成形体に十分な難燃性を付与できないおそれがある。逆に、上記Mwが上記上限を超える場合、芳香族化合物(A)のMwが増大し、その結果、当該難燃剤の成形体中での分散性が低下することで強度及び難燃性が不十分となるおそれがある。
(第2有機化合物)
グリシジル基を有する第2有機化合物としては、例えばグリシジル基を含む低分子量化合物や、グリシジル基を有する樹脂等が挙げられる。第2有機化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記グリシジル基としては、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基等が挙げられ、これらの中でグリシジルエーテル基が好ましい。
上記グリシジル基を含む低分子量化合物としては、例えばメチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの中でフェニルグリシジルエーテルが好ましい。
上記グリシジル基を有する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂等が挙げられる。上記エポキシ樹脂としては、例えばグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、酸化型等が挙げられるが、グリシジルエーテル型が好ましい。また、上記エポキシ樹脂としては、ベース化合物の構造によってビスフェノール型、ノボラック型、臭素化型等に分類できるが、いずれも好適に用いることができる。
上記グリシジル基を有する樹脂のMwの下限としては、400が好ましく、600がより好ましい。一方、上記Mwの上限としては、9,000が好ましく、6,000がより好ましく、4,000がさらに好ましい。上記Mwが上記下限より小さい場合、芳香族化合物(A)のMwが低下し、その結果、成形体に十分な難燃性を付与できないおそれがある。逆に、上記Mwが上記上限を超える場合、芳香族化合物(A)のMwが増大し、その結果、当該難燃剤の成形体中での分散性が低下することで強度及び難燃性が不十分となるおそれがある。
芳香族化合物(A)としては、オリゴマーが好ましく、具体的には第1有機化合物としてフェノール樹脂を用い、かつ第2有機化合物としてグリシジル基を含む低分子量化合物を用いたオリゴマーが好ましい。また、芳香族化合物(A)としては、第1有機化合物としてフェノール類を用い、かつ第2有機化合物としてエポキシ樹脂を用いたオリゴマーも好ましい。このように、芳香族化合物(A)としてオリゴマーを用いることで、成形体の強度を維持しつつ優れた難燃性を付与できるという効果に加え、成形体の変色防止効果を発揮することもできる。
当該難燃剤における芳香族化合物(A)の含有割合の下限としては、2.5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましく、16質量%が特に好ましく、20質量%が最も好ましい。一方、芳香族化合物(A)の含有割合の上限としては、60質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。芳香族化合物(A)の含有割合が上記下限より小さい場合、成形体の燃焼時に安定して表面膨張層を形成させることができず、その結果、十分な難燃性を付与できないおそれがある。逆に、芳香族化合物(A)の含有割合が上記上限を超える場合、難燃性樹脂組成物や成形体の製造時に工程負荷が生じるおそれがある。
(芳香族化合物(A)の製造方法)
芳香族化合物(A)の製造方法としては、例えば上記第1有機化合物及び第2有機化合物を混合する工程(混合工程)と、得られた混合物を反応させる工程(反応工程)と、反応後の混合物を脱モノマー処理する工程(脱モノマー処理工程)とを備える方法等が挙げられる。
(混合工程)
混合工程における混合方法としては、上記第1有機化合物及び第2有機化合物の少なくとも一方を液状とし、ここに他方を溶解させる方法や、上記第1有機化合物及び第2有機化合物を適当な溶媒に溶解させる方法等が挙げられる。なお、混合工程では、トリフェニルホスフィン等の触媒などをさらに添加してもよい。
上記第1有機化合物の水酸基当量と第2有機化合物のエポキシ当量との当量比(水酸基当量/エポキシ当量)の下限としては、30/70が好ましく、40/60がより好ましい。一方、上記混合質量比の上限としては、70/30が好ましく、60/40がより好ましい。
(反応工程)
反応工程における反応条件としては、例えば反応温度を80℃以上150℃以下、反応時間を30分以上10時間以下とすることができる。得られた反応生成物は、必要に応じて加熱しながら減圧処理することで揮発成分を除去してもよい。この場合の減圧加熱条件としては、例えば減圧加熱温度を150℃以上200℃以下、減圧加熱時間を10分以上300分以下とすることができる。
(有機無機複合化合物(B))
有機無機複合化合物(B)は、芳香族化合物(A)以外の化合物であって、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、スズ又はこれらの組み合わせである無機元素を含む。有機無機複合化合物(B)としては、例えば有機物と、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、スズ等の無機元素との複合化合物などが挙げられる。
具体的には、ホウ酸と、ジエタノールアミン、Nメチルジエタノールアミン等とのエステルや、アルミニウムとアルコールとの反応物であるアルミニウムアルコキシドや、脂肪酸(例えば炭素数5〜30の脂肪酸)と金属イオンとの塩や、金属イオンを含むアイオノマーや、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、アルミニウムアセチルアセトナート等の有機アルミニウム錯体などなどが挙げられる。上記アルミニウムアルコキシドとしては、例えばアルミニウムイソプロポキシド等が挙げられる。上記脂肪酸と金属イオンとの塩としては、例えばステアリン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物や、オクチルスズ、ナフテン酸スズ、ジアルキルスズラウレート、ジアルキルスズマレエート、ジアルキルスズメルカプタイト等の有機スズ化合物などが挙げられる。上記金属イオンを含むアイオノマーとしては、例えば亜鉛イオンを含むエチレン−不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー等が挙げられる。有機無機複合化合物(B)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機無機複合化合物(B)としては、ホウ素、アルミニウム及び亜鉛のうち少なくとも1種を含有する化合物が好ましく、ジエタノールアミン及びホウ酸のエステル、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、亜鉛イオンを含むエチレン−不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー、有機亜鉛錯体及び有機アルミニウム錯体がより好ましい。
当該難燃剤における有機無機複合化合物(B)の含有割合の下限としては、2.5質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。一方、有機無機複合化合物(B)の含有割合の上限としては、30質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。有機無機複合化合物(B)の含有割合が上記下限より小さい場合、成形体に十分な難燃性を付与できないおそれがある。逆に、有機無機複合化合物(B)の含有割合が上記上限を超える場合、当該難燃剤における芳香族化合物(A)及びリン含有化合物(C)の含有割合が低下し、成形体に十分な難燃性を付与できないおそれがある。
(リン含有化合物(C))
リン含有化合物(C)は、上記芳香族化合物(A)及び有機無機複合化合物(B)以外の化合物であって、窒素、炭素、水素、酸素、硫黄又はこれらの組み合わせを含む。リン含有化合物(C)としては、例えばポリ燐酸アンモニウム、ホスファゼン誘導体、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシド等が挙げられる。リン含有化合物(C)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔ホスファゼン誘導体〕
上記ホスファゼン誘導体としては、下記式(1)で示される融点70℃以上の環状ホスファゼン化合物が好ましい。
Figure 2018070774
上記式(1)中、mは、3以上8以下の整数である。R及びRは、それぞれ独立して、芳香環を含みかつハロゲン原子を含まない1価の有機基である。
上記1価の有機基としては、例えば炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、1又は複数のヘテロ原子含有基で置換された炭素数6〜20のアリール基、1又は複数のヘテロ原子含有基で置換された炭素数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。
上記アリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
上記アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
上記アリール基及びアラルキル基を置換するヘテロ原子含有基としては、ハロゲン原子を含まないヘテロ原子含有基であれば特に限定されないが、例えば水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。
及びRとしては、アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
mとしては、3以上5以下の整数が好ましく、3がより好ましい。
上記ホスファゼン誘導体としては、下記式(2)で表される化合物も好ましい。
Figure 2018070774
上記式(2)中、nは、3以上10,000以下の整数である。R及びRは、それぞれ独立して、アリール基又はアラルキル基である。複数のRは同一でも異なっていてもよい。複数のRは同一でも異なっていてもよい。Rは、−N=P(OR、−N=P(OR、−N=P(O)OR、又は−N=P(O)ORである。Rは、−P(OR、−P(OR、−P(O)(OR、又は−P(O)(ORである。
及びRで表されるアリール基又はアラルキル基としては、例えば炭素数20以下のアリール基又はアラルキル基を用いることができ、具体的には上記式(1)においてR及びRで表されるアリール基又はアラルキル基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
〔ホスフェート〕
上記ホスフェートとしては、縮合していないホスフェート及び縮合ホスフェートのいずれをも用いることができる。上記ホスフェートとしては、分子中に芳香環が含まれる芳香族ホスフェートや、トリメチルホスフェート等のアルキルホスフェートなどが挙げられる。上記ホスフェートとしては、芳香族ホスフェートが好ましく、具体的には下記式(3)で表される化合物が好ましい。
Figure 2018070774
上記式(3)中、xは、1以上の整数である。yは、0以上の整数である。Rは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。xが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。R10は、アリール基又はアラルキル基である。Yは、酸素原子又はアルキレン基である。yが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のYは同一でも異なっていてもよい。
x及びyの上限としては、100が好ましく、10がより好ましく、5がさらに好ましい。R〜R10で表されるアルキル基としては、例えば炭素数20以下のアルキル基等を用いることができ、具体的にはメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。R〜R10で表されるアリール基又はアラルキル基としては、例えば炭素数20以下のアリール基又はアラルキル基を用いることができ、具体的には上記式(1)においてR及びRで表されるアリール基又はアラルキル基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
上記芳香族ホスフェートとしては、下記式(4)で表される化合物も好ましい。
Figure 2018070774
上記式(4)中、lは、0以上の整数である。k及びpは、それぞれ独立して、0以上2以下の整数である。但し、k+pは、0以上2以下の整数である。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立して、アリール基、又はハロゲン原子を含まない有機基で置換されたアリール基である。Xは、下記式(X−1)〜(X−3)のいずれかで表される基である。Ar、Ar、Ar、Ar、X及びlが複数存在する場合、複数のAr、Ar、Ar、Ar、X及びlは、同一でも異なっていてもよい。
Figure 2018070774
上記式(X−1)〜(X−3)中、R11〜R18は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Yは、直接結合、−O−、−S−、−SO−、−C(CH−、−CH−、又は−CH(Ph)−である。Phは、フェニル基である。
lとしては、例えば0以上10以下の整数とすることができ、0以上5以下の整数が好ましい。
k及びmとしては、0及び1が好ましく、1がより好ましい。また、k及びmがいずれも1であることが最も好ましい。
Ar、Ar、Ar及びArで表される基の炭素数としては、例えば20以下とすることができる。Ar、Ar、Ar及びArで表される基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基等が挙げられる、これらの中で、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基及びナフチル基が好ましく、フェニル基、トリル基及びキシリル基がより好ましい。
11〜R18で表される炭素数1〜5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
11〜R18としては、水素原子、メチル基及びエチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
上記式(4)で表される化合物としては、例えばトリフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート等が挙げられる。
リン含有化合物(C)としては、ホスファゼン誘導体及びホスフェートが好ましく、ホスフェートがより好ましい。また、リン含有化合物(C)は、少なくともホスファゼン誘導体を含む混合物であることがさらに好ましい。
リン含有化合物(C)は、17.5(MPa)1/2以上25(MPa)1/2以下のSP値を有する化合物を含むことが好ましい。特に、リン含有化合物(C)が少なくともホスファゼン誘導体を含む混合物である場合、この混合物におけるホスファゼン誘導体以外の化合物として上記範囲のSP値を有する化合物を含むことがより好ましい。上記SP値を有する化合物は、難燃性樹脂組成物を形成する際にホスファゼン誘導体と共に混練することで、混練温度にける難燃性樹脂組成物中へのホスファゼン誘導体を万遍なく溶解させることができる。これにより、難燃性樹脂組成物中における各成分の分散性が向上し、形成される成形体の難燃性をより向上させることができる。
なお、「SP値」とは、Hildebrandの溶解性パラメーター概念から溶解度定数として説明される古典的な熱力学定数を意味し、例えば無償公開されている高分子シミュレーターである「OCTA ver.2(http://octa.jp/index_jp.htmlにて配布)」を用いて計算した値を採用することができる。
また、リン含有化合物(C)として2種類以上の成分を組み合わせてリン含有化合物(C)として用いる場合、リン含有化合物(C)が少なくともホスファゼン誘導体を含む混合物である場合、この混合物におけるホスファゼン誘導体以外の化合物のうち少なくとも1種は上記ホスファゼン誘導体を溶解できるリン含有化合物であることが好ましい。
当該難燃剤におけるリン含有化合物(C)の含有割合の下限としては、45質量%が好ましく、48質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。一方、リン含有化合物(C)の含有割合の上限としては、90質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。リン含有化合物(C)の含有割合が上記下限より小さい場合、成形体に十分な難燃性を付与できないおそれがある。逆に、リン含有化合物(C)の含有割合が上記上限を超える場合、当該難燃剤における芳香族化合物(A)や有機無機複合化合物(B)の含有割合が不十分となり、その結果、成形体に十分な難燃性を付与できないおそれがある。
(フッ素化ポリマー(D))
当該難燃剤は、任意成分であるフッ素化ポリマー(D)をさらに含有することが好ましい。ここでフッ素化ポリマーとは、フッ素樹脂、このフッ素樹脂を変性させたエラストマー等の化合物、又はこれらの混合物であり、改質剤等として用いられる。フッ素化ポリマー(D)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。
当該難燃性におけるフッ素化ポリマー(D)の含有割合の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。一方、フッ素化ポリマー(D)の含有割合の上限としては、15質量%が好ましく、7質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。
なお、フッ素化ポリマー(D)は、当該難燃剤を用いた成形体のドリップを抑制する効果がある。この効果を主な目的として添加する場合、フッ素化ポリマー(D)としては、ダイキン工業製の「PTFE」と、三菱レイヨン製の「メタブレンA−3000」、「A−3750」及び「A−3800」とを好適に用いることができる。
<難燃性樹脂組成物>
当該難燃性樹脂組成物は、上述の当該難燃剤と、熱可塑性樹脂とを含有する。当該難燃性樹脂組成物における当該難燃剤の含有量の下限としては、上記熱可塑性樹脂100質量部に対し、1質量部が好ましく、3質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。一方、当該難燃剤の含有量の上限としては、上記熱可塑性樹脂100質量部に対し、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、38質量部がさらに好ましい。当該難燃剤の含有量が上記下限より小さい場合、形成される成形体の難燃性が不十分となるおそれがある。逆に、当該難燃剤の含有量が上記上限を超える場合、熱可塑性樹脂がマトリックスとしての物性を十分発揮できなくなり、形成される成形体の各種物性が低下するおそれがある。また、当該難燃性樹脂組成物は、上述した成分以外の他の任意成分をさらに含有してもよい。
[熱可塑性樹脂]
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド等のエンジニアリングプラスチックや、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリロニトリルブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリールアミド、ABS樹脂等が挙げられる。これらの中で、強度の観点からはエンジニアリングプラスチックが好ましい。なお、上記熱可塑性樹脂は、強度等の観点から特に問題なければ、再生材料を使用することもできる。
上記熱可塑性樹脂の融点としては、200℃以上が好ましい。
当該難燃性樹脂組成物における熱可塑性樹脂組成物の含有割合の下限としては、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。一方、上記熱可塑性樹脂の含有割合の上限としては、99質量%が好ましく、97質量%がより好ましい。上記熱可塑性樹脂組成物の含有割合が上記下限より小さい場合、熱可塑性樹脂がマトリックスとしての物性を十分発揮できなくなり、形成される成形体の各種物性が低下するおそれがある。逆に、上記熱可塑性樹脂の含有割合が上記上限を超える場合、当該難燃剤の含有量が減少することで、形成される成形体の難燃性が不十分となるおそれがある。
当該難燃性樹脂組成物の形態としては、特に限定されないが、外接球の直径が15mm以下のペレットであることが好ましい。このように、当該難燃性樹脂組成物の形状をペレットとすることで、成形時のハンドリング性を向上させることができる。また、上記ペレットの外接球の直径を15mm以下とすることで、当該難燃性樹脂組成物により形成される成形体の難燃性のバラつきを抑制できる。上記ペレットの外接球の直径の上限としては、8mmがより好ましい。一方、上記ペレットの外接球の直径の下限としては、1mmが好ましい。上記ペレットの外接球の直径が上記下限より小さい場合、このような微細ペレットへの加工が困難となるおそれがある。
上記ペレットの形状としては、特に限定されず、真球状、楕円球状、円柱状、円錐状、直方体状(立方体状を含む)、無定形状等のいずれの形状であってもよい。上記ペレットの最長幅としては、12mm以下が好ましい。
<難燃性樹脂組成物の製造方法>
当該難燃性樹脂組成物の製造方法は、上述の当該難燃剤及び熱可塑性樹脂を混練する工程(混練工程)を備え、上記混練工程でカオス混合を行う。当該難燃性樹脂組成物の製造方法は、混練工程の前に当該難燃剤及び熱可塑性樹脂を予備混合する工程(予備混合工程)、並びに/又は上記混練工程後に得られた混練物をペレットに加工する工程(加工工程)をさらに備えるとよい。
[予備混合工程]
本工程では、混練工程の前に当該難燃剤及び熱可塑性樹脂を予備混合する。この予備混合には、例えばミキサー型混合機、V型ブレンダー、タンブラー型混合機、ヘンシェルミキサー、バンバリーやロールなどのバッチ式混錬機や、一軸混練機、二軸混練機等の連続式混練機などの公知の混合装置を使用できる。このように、予め当該難燃剤及び熱可塑性樹脂を予備混合することにより、特性の均一な難燃性樹脂組成物を得ることができ、その結果、より難燃性等に優れる成形体を形成することができる。
[混練工程]
本工程では、当該難燃剤及び熱可塑性樹脂を混練する。各成分を混練機に投入する供給装置のプロセス設計においては、公知の混練プロセスのいかなる方法をも採用できる。具体的には、例えば各成分をそれぞれ独立した供給装置を用いて混練機に投入する方法、2成分以上の混合物を複数の供給装置を用いて混練機に投入する方法、当該難燃剤のマスターバッチを一台の供給装置を用いて混練機に投入しつつ、熱可塑性樹脂を1又は複数の供給装置を用いて混練機に投入する方法などが挙げられる。また、上記予備混合工程を行った場合、得られた当該難燃剤及び熱可塑性樹脂の予備混合物を一台の供給装置を用いて混練機に投入してもよい。
本工程に用いる混練機としては、例えばバンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー等の当該技術分野において公知の混練機を用いることができ、当該難燃性樹脂組成物を安定して大量に製造する観点、すなわち製造効率の観点から、二軸押出機が好適に用いられる。混練機の混練速度、混練温度、混練時間等の各条件は、適宜調節すればよい。具体的な混練温度としては、例えば200℃以上350℃以下とすることができる。また、混練機の回転数の下限としては、50rpmが好ましく、200rpmがより好ましい。一方、上記回転数の上限としては、1,000rpmが好ましく、400rpmがより好ましい。
本工程では、上記混練物に連続した層状の剪断流動を発生させることでカオス混合を行い、熱可塑性樹脂の分子量低下等のダメージを回避しながら効率的に分散混合する。カオス混合する方法としては、例えば本工程において、溶融した混練物を2つの面で挟まれた間隙に通過させて処理する工程(間隙通過処理工程)を行う方法等が挙げられる。
(間隙通過処理工程)
間隙通過処理工程では、例えば上記混練機として二軸混練押出機を用いる場合、二軸混練押出機の吐出口に、2つの面で挟まれた間隙を内部に有するダイを間隙処理装置として取り付けることで実施できる。間隙処理装置の設定温度としては、特に限定されないが、例えば200℃以上300℃以下とすることができる。
図1及び図2に、この間隙処理装置の具体的構造の一例を示す。この間隙処理装置Xは、直方体状の部材であり、その一つの面から反対側の面にかけて貫通している略板状の孔である間隙Gを有する。以下、この間隙Gにおいて、貫通軸方向を「混練物流動方向」、貫通軸方向及び厚さ方向にそれぞれ直交する方向を「幅方向」、厚さ方向の一端から他端までの長さを「面間距離」とする。間隙Gにおいて、上記混練機の吐出口と接する側を入口、その反対側を出口とする。
間隙Gの入口は、混練機から押し出された溶融状態の混練物を受け入れるため、混練機の吐出口にあわせた形状となっている。この入口の形状としては、特に限定されず、混練機の吐出口の形状にあわせて適宜変更することができる。間隙Gは、入口から混練物流動方向において一定距離までは、幅が漸増すると共に面間距離が漸減し、これにより平面視台形状、側面視略半円状の空間である入口部g1を形成している。入口部g1の出口(間隙Gの幅の漸増及び面間距離の漸減が終了する部位)における平均幅wの下限としては、5mmが好ましく、10mmがより好ましい。一方、平均幅wの上限としては、5,000mmが好ましく、2,000mmがより好ましい。また、入口部g1の出口における平均面間距離dの下限としては、0.1mmが好ましく、0.2mmがより好ましい。一方、平均面間距離dの上限としては、5mmが好ましく、3mmがより好ましい。平均面間距離dを上記範囲とすることで、間隙Gにおける目詰まりを抑制しつつ確実にカオス混合を実施できる。
間隙Gにおいて入口部g1よりも出口側は、面間距離が入口部g1の出口における面間距離dのまま一定である通路部g2と、この通路部g2よりも面間距離が大きい拡張部g3とに分かれている。具体的には、入口部g1の出口から順番に、第1の通路部g2、第1の拡張部g3、第2の通路部g2、第2の拡張部g3及び第3の通路部g2の順番に繋がっていて、この第3の通路部g2の出口が間隙Gの出口となっている。
通路部g2は、板状の空間である。混練物流動方向における通路部g2の平均長さmの下限としては、5mmが好ましく、10mmがより好ましい。一方、通路部g2の平均長さmの上限としては、100mmが好ましく、50mmがより好ましい。通路部g2の平均長さmmを上記範囲とすることで、確実にカオス混合を実施できる。
拡張部g3は、側面視で略楕円形、平面視で矩形の略楕円柱状の空間であり、この楕円の仮想長軸の両端付近がそれぞれ入口及び出口となっている。拡張部g3の入口及び出口における平均面間距離は、通路部2の平均面間距離dと同一である。一方、拡張部g3は、入口から混練物流動方向中央にかけては混練物流動方向に沿って平均面間距離が漸増し、一方で混練物流動方向中央から出口にかけては混練物流動方向に沿って平均面間距離が漸減している。拡張部g3がこのような形状をしていることで、ここを通過する溶融状態の混練物は、その一部が入口から出口に最短距離で流動しようとし、また別の一部が拡張部g3の外面(間隙処理装置Xの内壁)に沿って入口から出口に流動しようとする。これにより、拡張部g3を通過する溶融状態の混練物に混練物流動方向における速度差が生じ、その結果、カオス混合が行われる。
拡張部g3における最大面間距離Dの下限としては、1mmが好ましく、3mmがより好ましい。一方、上記最大面間距離Dの上限としては、100mmが好ましく、50mmがより好ましい。また、混練物流動方向における拡張部g3の平均長さlの下限としては、5mmが好ましく、10mmがより好ましい。一方、拡張部g3の平均長さlの上限としては、300mmが好ましく、100mmがより好ましい。拡張部g3の寸法を上記範囲とすることで、より効率的にカオス混合を行うことができる。
なお、図1及び図2に示すのは間隙処理装置の一例に過ぎず、この形状に限定されるわけではない。すなわち、拡張部は、図1及び図2では側面視が略楕円形であるが、別の形状であってもよく、具体的には、厚さ方向における一方側及び他方側の2つの面が、平面、曲面、これらを組み合わせた面であってもよい。但し、難燃性樹脂組成物に対するダメージを回避する観点から、上記2つの面は曲面であることが好ましい。具体的には、拡張部の面間距離は、入口から混練物流動方向中央にかけては混練物流動方向に沿って漸増し、一方で混練物流動方向中央から出口にかけては混練物流動方向に沿って漸減するような曲面であることが好ましい。
また、間隙処理装置の間隙における拡張部の数は、図1及び図2では2個であるが、これには限定されず、1個でも3個以上であってもよい。間隙処理装置の間隙における拡張部の数としては、例えば2個以上10個以下とすることができる。
間隙通過処理装置としては、特開2011−26364号や特開2013−028795号に記載されるものを用いることもできる。
[加工工程]
本工程では、上記混練工程後、得られた混練物をペレットに加工する。混練物をペレット状に加工する方法としては、特に限定されないが、例えば型を使用して混練物を成型する方法、上述の混練工程において混練物を押出機でストランド状に押し出し、このストランド状の混練物を裁断する方法、混練物をローラーで固めながら粉砕する方法等が挙げられる。
[製造装置]
図3に、当該難燃性樹脂組成物の製造方法に好適に用いることのできる製造装置の一例を示す。この製造装置は、混練機Mと、この混練機Mに配設されるフィーダーFと、混練機Mの吐出口に配設されるダイである間隙処理装置Xと、この間隙処理装置Xの吐出口に配設される第1ベルトB1と、この第1ベルトB1の搬送途中に配設される水槽Wと、この第1ベルトB1の搬送先に配設されるペレタイザーPと、このペレタイザーPの吐出口に配設される第2ベルトB2と、この第2ベルトB2の搬送先に配設される回収容器Vとを備える。
上記製造装置によれば、混練機Mで混練された原料を間隙処理装置Xに通過させることでカオス混合し、カオス混合したストランド状の混練物を第1ベルトB1で搬送しながら途中の水槽Wで冷却し、冷却した混練物をペレタイザーPでペレット状に加工した後に第2ベルトB2でさらに搬送することで回収容器Vに回収できる。また、フィーダーFにより原料の配合を調整できる。
<成形体>
本発明の成形体は、上述の当該難燃性樹脂組成物により形成される。当該成形体の用途としては、特に限定されないが、例えばパソコン、携帯端末等の情報機器の部品や筺体、OA機器の部品等として用いることができる。
<成形体の製造方法>
本発明の成形体の製造方法は、上述の当該難燃性樹脂組成物を成形する工程(成形工程)を備える。当該成形体の製造方法によれば、当該成形体を容易かつ確実に製造できる。
[成形工程]
本工程では、上述の当該難燃性樹脂組成物を成形する。具体的な成形方法としては、特に限定されないが、例えば押出成形、射出成形、トランスファー成形等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
まず、本実施例で使用した各原料を以下に説明する。
[合成例1]
1Lフラスコに、第1有機化合物としてのノボラック型フェノール樹脂「SP1010」(旭有機材製)104g(水酸基当量104g/eq)と、第2有機化合物としてのフェニルグリシジエーテル(東京化成工業製)150g(エポキシ当量150g/eq)とを投入し、80℃で加熱することで上記ノボラック型フェノール樹脂を溶融させた。得られた混合物にトリフェニルホスフィン(東京化成工業製)を1.5g添加し、110℃まで昇温させた後、3時間反応させた。その後、反応生成物であるオリゴマーを170℃まで昇温させた後、減圧し、30分間揮発成分を取り除いた。その後、復圧して150℃まで冷却した後、オリゴマーを排出した。得られたオリゴマーについてゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー製の「SC−8020」、カラム:「G2000Hxl」及び「G4000Hxl」、検出器:UV254nm、キャリアー:テトラヒドロフラン(1ml/min)、カラム温度40℃)を用いて標準ポリスチレン換算のMwを求めた。測定されたMwは3,500であった。これをオリゴマー(A−1)とした。オリゴマー(A−1)は、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で30℃から600℃まで加熱したときの600℃における残渣率が20質量%であった。
[合成例2]
第1有機化合物をフェノール(三菱化学製)83g(水酸基当量94g/eq)に変更し、かつ第2有機化合物をノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学の「YDCN704」)175g(エポキシ当量220g/eq)に変更した以外は合成例1と同様に操作し、これをオリゴマー(A−2)とした。オリゴマー(A−2)は、Mwが5,200であり、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で30℃から600℃まで加熱したときの600℃における残渣率が15質量%であった。
[合成例3]
ホウ酸及びジエタノールアミンをモル比2:3の割合で5Lセパラブルフラスコ中に仕込み、100℃で3時間反応させた。生成物のホウ酸エステルを脱水せず、そのまま有機無機複合化合物(B)として用いた。
(芳香族化合物(A))
オリゴマー(A−1):合成例1で得られたオリゴマー
オリゴマー(A−2):合成例2で得られたオリゴマー
(有機無機複合化合物(B))
ステアリン酸亜鉛:日油製の「ジンクステアレートG」
ホウ酸エステル:合成例3で得られたホウ酸エステル
(リン含有化合物(C))
SPS:大塚化学製の「SPS100」(上記式(1)で表され、mが3、R及びRが全てフェニル基である環状ホスファゼン化合物を主成分とする化合物)、SP値:19.5(MPa)1/2
TPP:大八化学工業製の「TPP(トリフェニルホスフェート)」、SP値:22(MPa)1/2
BDP:ポリメートアディティブ製の「FyrolflexBDP(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))」、SP値:21.8(MPa)1/2
TCP:大八化学製の「TCP(トリクレジルホスフェート)」、SP値:21.4(MPa)1/2
TMP:大八化学製の「TMP(トリメチルホスフェート)」、SP値:16.5(MPa)1/2
上記SP値は、ソフトウェアーとして「OCTA ver.2」を用いて計算した値である。
一部の比較例においては、リン含有化合物(C)の替わりに以下の化合物を用いた。
赤燐:日本化学工業製の「高純度赤燐」
(フッ素化ポリマー(D))
フッ素化ポリマー(D):三菱レイヨン製の「メタブレンA−3000」、ポリテトラフルオロエチレン
(熱可塑性樹脂)
ポリカーボネート(PC):出光興産製の「タフロンA2200」
再生ポリカーボネート(R−PC):明文産業製(パチンコ台から取り出したPCに由来する再生材)
ABS樹脂:テクノポリマー製の「テクノABS300」
6ナイロン(PA6):東レアミラン製の「CM1017」
ポリブチレンテレフタレート(PBT):東レ製の「トレコン141x06」
<樹脂組成物の製造>
上述した図3の製造装置によって樹脂組成物の製造を行った。混練機Mとしては、神戸製鋼所製の二軸混練押出機「HYPERKTX46」(以下、「KTX46」ともいう)を用いた。このKTX46の吐出口の先に、カオス混合を行うための間隙処理装置Xとして小平製作所製のダイを取り付けた。二軸混練押出機の樹脂吐出量が100kg/時となるように、KTX46に付属するフィーダーFとペレタイザーPとを同期させた。ペレタイザーPの手前にはストランドを冷却するための3mの長さの水槽Wを設置した。
間隙処理装置Xは、上述した図1及び図2に記載のものを用いた。この間隙処理装置Xは、平均面間距離d:1mm、平均幅w:400mm、平均長さm:20mmとなるように設計された通路部g2を3箇所有する。間隙処理装置Xの設定温度は250℃とした。
KTX46は、スクリューセグメントとして2ケ所にローターセグメントがついており、運転条件は回転数300rpm、混練温度290℃とした。
[実施例1]
熱可塑性樹脂としてのPC20kgと、芳香族化合物(A)としてのオリゴマー(A−1)0.3kgと、有機無機複合化合物(B)としてのステアリン酸亜鉛0.3kgと、リン含有化合物(C)としてのSPS0.6kgとをヘンシェルミキサーで撹拌することで予備混合し、0.5cmから1cm程度の造粒物を得た。この造粒物を二軸混練押出機である混練機MのフィーダーFに投入し、混練した後に間隙処理装置Xを通過させてその吐出口から押し出した。その後、水槽Wによる水冷とペレタイザーPによる加工とを行い、80℃で5時間乾燥させることで実施例1の難燃性樹脂組成物のペレットを作製した。
[実施例2〜14]
各成分の種類及び配合量を下記表1の通りとした以外は、実施例1と同様に操作し、実施例2〜14の難燃性樹脂組成物のペレットを作成した。なお、下記表1において「−」は、該当する成分を使用しなかったことを示す。
[比較例1]
リン含有化合物(C)を配合しなかった以外は、実施例1と同様に操作し、比較例1の難燃性樹脂組成物のペレットを作成した。
[比較例2]
有機無機複合化合物(B)を配合しなかった以外は、実施例2と同様に操作し、比較例2の難燃性樹脂組成物のペレットを作成した。
[比較例3]
芳香族化合物(A)を配合しなかった以外は、実施例2と同様に操作し、比較例3の難燃性樹脂組成物のペレットを作成した。
[比較例4]
ヘンシェルミキサーによる予備混合を行わず、一成分ごとに一台のフィーダーを用いて混練機に供給できるようにプロセスを組んだ点、並びに各成分の種類及び配合量を下記表1の通りとした点以外は、実施例1と同様に操作して比較例4の難燃性樹脂組成物のペレットを作成した。但し、BDP以外の成分は、二軸押出機の特定のシリンダーに複数の粉体フィーダーを取り付けることで供給した。一方、液体であるBDPは、上記シリンダーから押し出し方向の下流側に数えて4番目のシリンダーに液体フィーダーを取り付けることで供給した。
[比較例5]
ヘンシェルミキサーによる予備混合を行わず、一成分ごとに一台のフィーダーを用いて混練機に供給できるようにプロセスを組んだ点、及び重合体Aを添加せず、ステアリン酸亜鉛0.3kgを添加した点以外は比較例4と同様条件で混練を行った。但し、BDP以外の成分は、二軸押出機の特定のシリンダーに複数の粉体フィーダーを取り付けることで供給した。一方、液体であるBDPは、上記シリンダーから押し出し方向の下流側に数えて4番目のシリンダーに液体フィーダーを取り付けることで供給した。
[比較例6]
ヘンシェルミキサーによる予備混合を行わず、一成分ごとに一台のフィーダーを用いて混練機に供給できるようにプロセスを組んだ点、及びリン含有化合物(C)の替わりに赤燐2.8kgを添加した点以外は実施例2と同様条件で混練を行った。
<評価>
[試験片の作成]
射出成形機(東芝機械製の「EC50SX」)を用い、上記実施例及び比較例の難燃性樹脂組成物を成形温度280℃、射出速度50mm/s、射出圧力85MPaの条件で射出成型し、JIS−K7139:2009に準拠した3mm厚又は1.2mm厚のISO多目的試験片を作製した。
[難燃試験(UL94)]
上述のISO多目的試験片(3mm厚及び1.2mm厚の2種)を温度23℃、湿度50%の恒温室中で48時間調湿した。調湿後の試験片について、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めるUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して難燃試験を行なった。本試験では、V−0の判定基準を満たすものを「A(合格)」、満たさないものを「B(不合格)」とした。
[難燃試験(極限酸素指数法(LOI))]
上述のISO多目的試験片(1.2mm厚)を用い、酸素濃度を指数とする公知の試験法を行った。試験は、5回繰り返し行い、各試験の平均値(LOI物性値)と、各試験の標準偏差(LOI標準偏差)とを求めた。本試験では、LOI標準偏差の値が小さいほど安定して難燃効果を発揮できるため難燃性に優れると評価でき、具体的にはLOI標準偏差が0.50以下のものを「A(合格)」、LOI標準偏差が0.50超のものを「B(不合格)」とした。
[衝撃試験]
上述のISO多目的試験片(3mm厚)を用い、アイゾット衝撃試験器で衝撃試験を行うことで衝撃強度を測定した。なお、上記試験片にはノッチ(切れ目)を付けた。本試験では、衝撃強度(J/m)の値が大きいほど耐衝撃性に優れていると評価でき、衝撃強度が100J/m以上を「A(合格)」、100J/m未満を「B(不合格)」とした。
Figure 2018070774
Figure 2018070774
表1から明らかなように、芳香族化合物(A)、有機無機複合化合物(B)及びリン含有化合物(C)を含有する実施例1〜14の難燃性樹脂組成物により形成された成形体は、難燃試験であるUL94及びLOIと、衝撃試験との全てに合格した。一方、芳香族化合物(A)、有機無機複合化合物(B)及びリン含有化合物(C)のうちいずれかを含有しない比較例1〜6の難燃性樹脂組成物により形成された成形体は、難燃試験であるUL94及びLOI、並びに衝撃試験のうち少なくとも1つに合格できなかった。
<芳香族化合物(A)のオリゴマーによる変色防止効果>
上述のオリゴマー(A−1)0.5質量%をホモポリプロピレン(プライムポリマー製の「J−700GP」)に添加した樹脂組成物を混練した後にペレットに加工した。このペレットを成形条件210℃に設定された射出成型機のシリンダーに30分滞留させてから射出成型を行ったところ、形成された成形体には目視で変色が確認されなかった。一方、オリゴマー(A−1)を添加せずに無添加のホモポリプロピレンを用いて同様の操作を行なったところ、形成された成形体には目視で変色が確認された。この結果から、当該難燃剤の芳香族化合物(A)としてオリゴマー(A−1)のようなオリゴマーを用いること、特にフェノール樹脂類似構造が含まれるオリゴマーを用いることで、公知の酸化防止剤と同様の酸化防止効果を発揮でき、これにより成形体の変色防止効果も発揮できると判断される。
本発明の難燃剤、難燃性樹脂組成物、成形体及びその製造方法は、強度及び難燃性に優れる成形体を提供することができる。

Claims (13)

  1. フェノール性水酸基を有する第1有機化合物及びグリシジル基を有する第2有機化合物の反応生成物である重量平均分子量10,000以下の芳香族化合物(A)と、
    上記芳香族化合物(A)以外の化合物であって、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、スズ又はこれらの組み合わせを含む有機無機複合化合物(B)と、
    上記芳香族化合物(A)及び有機無機複合化合物(B)以外の化合物であって、窒素、炭素、水素、酸素、硫黄又はこれらの組み合わせを含むリン含有化合物(C)と
    を含有する難燃剤。
  2. 上記グリシジル基が、グリシジルエーテル基である請求項1に記載の難燃剤。
  3. 上記芳香族化合物(A)の含有割合が2.5質量%以上60質量%以下、
    上記有機無機複合化合物(B)の含有割合が2.5質量%以上30質量%以下、かつ
    上記リン含有化合物(C)の含有割合が35質量%以上95質量%以下
    である請求項1又は請求項2に記載の難燃剤。
  4. フッ素化ポリマー(D)をさらに含有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の難燃剤。
  5. 上記リン含有化合物(C)が、少なくともホスファゼン誘導体を含む混合物である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の難燃剤。
  6. 上記ホスファゼン誘導体が、下記式(1)で示される融点70℃以上の環状ホスファゼン化合物である請求項5に記載の難燃剤。
    Figure 2018070774
    (式(1)中、mは、3以上8以下の整数である。R及びRは、それぞれ独立して、芳香環を含みかつハロゲン原子を含まない1価の有機基である。)
  7. 上記リン含有化合物(C)が、17.5(MPa)1/2以上25(MPa)1/2以下のSP値を有する化合物を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の難燃剤。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の難燃剤と、
    熱可塑性樹脂と
    を含有する難燃性樹脂組成物。
  9. 上記熱可塑性樹脂100質量部に対する上記難燃剤の含有量が、1質量部以上50質量部以下である請求項8に記載の難燃性樹脂組成物。
  10. 外接球の直径が15mm以下のペレットである請求項9に記載の難燃性樹脂組成物。
  11. 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の難燃剤及び熱可塑性樹脂を混練する工程
    を備え、
    上記混練工程でカオス混合を行う難燃性樹脂組成物の製造方法。
  12. 請求項8、請求項9又は請求項10に記載の難燃性樹脂組成物により形成される成形体。
  13. 請求項8、請求項9又は請求項10に記載の難燃性樹脂組成物を成形する工程
    を備える成形体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114605460A (zh) * 2022-03-07 2022-06-10 煤炭科学技术研究院有限公司 脂肪酸酰胺硼酸酯的制备方法、硼酸酯及其应用

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