JP2018070493A - 疾患部位特異的リポソーム製剤 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、ONO-1301を含む、プロスタグランジン(PG)I2受容体(IP)作動薬、同 EP2作動薬、及び同 EP4作動薬は、例えば、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、ストローマー細胞由来因子(SDF-1)、及び high mobility group box protein1(HMGB1)等の多くの体内再生因子を誘導することにより、低用量にて多くの疾患に対して、内因性修復因子産生促進剤として使用でき、再生療法として有用であること(特許文献2)が知られている。
これらは、疾患部位投与においては、投与部位近傍での薬物の高濃度維持、及び点滴静注様の血中動態を示す投与製剤であり、疾患部位への薬剤集積性あるDDS(ドラッグデリバリーシステム)効果は示さない。即ち、DDSとは、医薬品類を必要な場所に、必要な時間、必要な量を送達する技術である。
例えば、 カルシトニンの乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)ナノスフェア経口投与製剤(非特許文献1)、 カルシトニンのキトサンナノスフェア経肺投与製剤(非特許文献2)、ステロイドの局所投与型PLGA ナノスフェア製剤(非特許文献3)、及び抗炎症剤やミトコンドリア傷害阻害剤等を乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)に封入されたナノスフェアーを作製し、虚血性再灌流障害の治療に有効であることが知られている(特許文献5)。また、プロスタグランジンE1及びその誘導体を乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)に内包したナノスフェアー製剤も知られている(特許文献6、非特許文献4)。また、ベラプロストの乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)に封入されたナノスフェアーが肺高血圧症に有効であることが知られている(特許文献7)。
[項1]
プロスタグランジンI2受容体作動薬を封入するステルス型リポソームを含有する疾患部位特異的治療用医薬組成物。
[項2]
前記プロスタグランジンI2受容体作動薬として、下記一般式(I)の化合物またはその塩を少なくとも含む、項1に記載の医薬組成物
R1は、水素原子またはC1〜4アルキル基を表わし、
R2は、(i)水素原子、(ii)C1〜8アルキル基、(iii)フェニル基またはC4〜7シクロアルキル基、(iv)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(v)ベンゼン環またはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(vi)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基を表わし、
R3は、(i)C1〜8アルキル基、(ii)フェニル基またはC4〜7シクロアルキル基、(iii)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(iv)ベンゼン環またはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(v)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基を表わし、
eは、3〜5の整数を表わし、
fは、1〜3の整数を表わし、
pは、1〜4の整数を表わし、
qは、1または2を表わし、
rは、1〜3の整数を表わす
(ただし、
−(CH2)p−および=CH−(CH2)s−は、環上のaまたはbの位置に結合し、かつ
R2およびR3中の環構造は、1〜3個のC1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基またはトリハロメチル基で置換されていてもよい)。
[項3]
前記プロスタグランジンI2受容体作動薬として、以下の化合物(A)またはその塩を少なくとも含む、項1記載の医薬組成物:
(A)下記式(II)
[項4]
プロスタグランジンI2受容体作動薬として、以下の化合物(B)〜化合物(E)のいずれか一種またはその塩を少なくとも含む、項1記載の医薬組成物:
(B)(±)−(1R,2R,3aS,8bS)−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−1−[(E)−(3S,4RS)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテン−6−イニル]−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩(ベラプロスト)、又はその誘導体であるカルバサイクリン系PGI2誘導体、
(C)MRE−269、
(D)(2E)‐7‐{(1R,2R,3R)‐3‐ハイドロキシ‐2‐[(1E ,3S ,5S)‐3‐ハイドロキシ‐5‐メチルノン‐1‐エン‐1‐イル]‐5‐オキシシクロペンチル}ヘプト‐2‐エノイック酸(リマプロスト)、オルノプロスチル、エンプロスチル若しくはミソプロストール、又はそれらの誘導体であるPGE誘導体、及び
(E)NS−304(セレキシパグ)。
[項5]
プロスタグランジンI2受容体作動薬として、ONO−1301、ベラプロスト、リマプロスト及びNS−304からなる群より選択される少なくとも一種を少なくとも含む、項1記載の医薬組成物。
[項6]
前記ステルス型リポソームが、プロスタグランジンI2受容体作動薬とリン脂質とを少なくも用いて、バンガム法、水和分散法、逆相蒸発法、エタノール注入法若しくはエタノール希釈法、ホモジナイゼイション法若しくはメカノケミカル法、直接分散法、エクストルーダー法若しくはフレンチプレス法、リモートローディング法、脱水―再水和法、凍結融解法、超音波法、脂質―化合物フィルム法、又はこれらの改良法により得られうる、項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項7]
前記ステルス型リポソームが、
平均粒子径50〜200nmであり、かつ
プロスタグランジンI2受容体作動薬1重量部に対して、5〜50重量部のリン脂質及び0.05〜5重量部のPEG修飾ホスホエタノールアミンを含有する、
項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項8]
前記ステルス型リポソームが、
プロスタグランジンI2受容体作動薬1重量部に対して、MPEG2000−DSPEを0.05〜5重量部含有し、かつ
プロスタグランジンI2受容体作動薬としてONO−1301、ベラプロスト、リマプロスト及びNS−304からなる群より選択される少なくとも一種を含有し、かつ
3時間〜4週間にわたって前記プロスタグランジンI2受容体作動薬を放出する、
項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項9]
前記ステルス型リポソームが、
プロスタグランジンI2受容体作動薬と、
リン脂質と、
PEG修飾ホスホエタノールアミンと、
水混和性有機溶媒と
を含み、かつ
ステロール類を含まず、下記工程(1)〜(8)を含む製造方法により得られうるものであり、
(1)プロスタグランジンI2受容体作動薬1mg当たり、リン脂質が5mg以上、かつPEG修飾ホスホエタノールアミンが0.05mg以上となるようにこれらを溶媒に混合する工程、
(2)工程(1)で得られた混合物を加熱し、溶解物を調製する工程、
(3)工程(2)で得られた溶解物を瞬時に凍結する工程、
(4)工程(3)で得られた凍結物を凍結乾燥し溶媒を除去する工程、
(5)工程(4)で得られた凍結乾燥物を加温してリン酸緩衝水溶液に分散する工程、
(6)工程(5)で得られた分散物をエクストルーダーによりサイジングする工程、
(7)工程(6)で得られた分散物を限外濾過することにより未封入物を除去する工程、
(8)工程(7)で得られた分散物に糖類を加えて凍結乾燥する工程、かつ
リポソーム内にリン脂質1.0mgあたり0.001mg以上のプロスタグランジンI2受容体作動薬を含み、
平均粒子径が50〜200nmである、
項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項10]
静脈内投与用、冠動脈内投与用、吸入用、筋注投与用、皮下投与用、経口投与用、経粘膜投与用及び経皮投与用または臓器用の注射用製剤、経口剤、吸入剤、ネブライザー、軟膏剤、貼付剤またはスプレー剤である、項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項11]
1回あたりの静脈内投与量がプロスタグランジンI2受容体作動薬として、0.001〜100mgである、項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項12]
治療対象疾患が、リポソームを含有してなる循環器系疾患、呼吸器系疾患、泌尿器系疾患、消化器系疾患、骨疾患、神経変性疾患、血管系疾患、歯科疾患、眼疾患、皮膚疾患等の炎症性疾患、虚血性臓器障害、糖尿病性合併症、組織線維性疾患、組織変性疾患又は脱毛である、項11に記載の医薬組成物。
[項13]
治療対象疾患が、リポソームを含有してなる虚血性及び拡張型心筋症、閉塞性動脈硬化症、血管炎症候群、弁膜症、大動脈弁狭窄症、慢性心不全、拡張不全等の循環器系疾患、肺高血圧症、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器系肺疾患、慢性腎臓病、慢性肝炎、慢性膵炎等の消化器系・泌尿器系疾患、及び脳梗塞慢性期、アルツハイマー病、糖尿病性神経障害、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症等の神経変性疾患である、項11に記載の医薬組成物。
DMPE(1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、
DPPE(1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、
DSPE(1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、及び
DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)等が市販(日本精化)されている。
R1は、水素原子またはC1〜4アルキル基を表わし、
R2は、(i)水素原子、(ii)C1〜8アルキル基、(iii)フェニル基またはC4〜7シクロアルキル基、(iv)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(v)ベンゼン環またはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(vi)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基を表わし、
R3は、(i)C1〜8アルキル基、(ii)フェニル基またはC4〜7シクロアルキル基、(iii)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(iv)ベンゼン環またはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(v)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基を表わし、
eは、3〜5の整数を表わし、
fは、1〜3の整数を表わし、
pは、1〜4の整数を表わし、
qは、1または2を表わし、
rは、1〜3の整数を表わす
(ただし、
−(CH2)p−および=CH−(CH2)s−は、環上のaまたはbの位置に結合し、かつ
R2およびR3中の環構造は、1〜3個のC1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基またはトリハロメチル基で置換されていてもよい)
で示される化合物またはその塩である医薬組成物、PGI2誘導体及びPGE誘導体が挙げられる。
好ましくは、PGI2受容体作動薬が、
(A)下記式(II)
(B)(±)−(1R,2R,3aS,8bS)−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−1−[(E)−(3S,4RS)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテン−6−イニル]−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩(CAS: 88475-69-8;ベラプロスト)等を含むカルバサイクリン系PGI2誘導体(化合物(B));
(C)[4−(5,6−ジフェニルピラジニル)(1−メチレチル)アミノ]ブトキシ]−酢酸(CAS:475085-57-5;MRE−269;化合物(C));
(D)(2E)−7{−(1R,2R,3R)−3−ハイドロキシ−2[−(1E,3S,5S)−3−ハイドロキシ-5−メチルノン−1−エン−1−イル]−5−オキソシクロペンチル}−へプト−2−エノイック酸(CAS:74397-12-9;リマプロスチル)、オルノプロスチル;17S,20-ジメチル-6-オキソ-PGE1メチルエステル、エンプロスチル、ミソプロストール等を含むPGE誘導体(化合物(D));又は
(E)2−{4−[(5,6−ジフェニルピラジン−2−)イル)(プロパン−2−イル)アミノ] ブトキシ}−N-(メタンスルフォニル)アセトアミド(CAS:475086-01-2;セレキシパグ;NS−304(化合物(E))であるPGI2受容体作動薬が好ましい。
[医薬品への適用]
化合物(A)等のPGI2受容体作動薬は、体内再生因子産生促進作用、幹細胞分化誘導作用、抗アポトーシス作用、リバースリモデリング作用、抗線維化作用および血管新生促進作用等を有しているため、PGI2受容体作動薬を含有するステルス性リポソーム製剤は、各種臓器障害、炎症性疾患(例えば、血管疾患(例えば、閉塞性動脈硬化症(ASO)、バージャー病、レイノー病、動脈硬化、血管炎症候群等)、循環器系疾患(例えば、心筋梗塞、心筋炎、狭心症、上室性頻脈性不整脈、うっ血性心不全、冠動脈疾患、特発性心筋症、拡張型心筋症、虚血性心筋症、心房細動、慢性心不全、拡張不全、収縮不全、弁膜症、大動脈弁狭窄症等)、神経変性疾患(例えば、虚血性脳障害、脳血管障害、脳卒中、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病性神経障害、脊柱管狭窄症、認知症、モヤモヤ病、脊髄損傷、筋委縮性側索硬化症(ALS)等)、呼吸器系疾患(例えば、急性肺炎、肺線維症、肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性肺障害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、サルコイドーシス、間質性肺炎、過敏性肺炎、喘息、難治性喘息等)、骨疾患(例えば、脊椎または膝等変形性関節炎(OA)、関節リウマチ(RA)、骨粗鬆症、骨折、脊髄損傷、骨膜損傷等)、消化器系肝疾患(例えば、劇症肝炎、急性肝炎、肝硬変、慢性肝炎、脂肪肝、脂肪性肝炎、胃潰瘍、胃炎、腸潰瘍等)、泌尿器系疾患(例えば、急性腎不全、慢性腎不全、糸球体疾患、尿細管間質性疾患、腎血管系障害症、嚢胞性腎疾患、中毒性腎症、尿細管輸送異常症、透析患者腎障害、腎症、ネフローゼ症候群、IgA腎症、非典型溶血性尿毒素症症候群、急性進行性腎炎症候群、腎線維症等)、消化器系膵疾患(例えば、糖尿病、慢性膵炎、急性膵炎等)、消化器疾患(例えば、食道炎、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病等)、糖尿病性合併症(例えば、糖尿病性神経障害、皮膚潰瘍、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、血管内皮細胞障害(例えば、PTCA(percutaneous transluminal coronary angioplasty:経皮経管冠動脈形成術)後の再狭窄予防等)、歯科疾患(例えば、歯周病、抜歯創、口腔創傷、歯周組織障害等)、皮膚疾患(例えば褥瘡、脱毛等)、眼科疾患(例えば、緑内障等)、臓器・細胞移植(心臓、肝臓、腎臓、肺臓、膵、膵島細胞、骨髄等)、移植慢性拒絶等の予防および/または治療剤として有用である。特に、心疾患、肺疾患、腎疾患、骨疾患、神経変性疾患、肝疾患、膵疾患、自己免疫疾患、アレルギー症候群および血管性疾患への予防および/または治療剤として有望である。
PGI2受容体作動薬単独に比し、本発明のリポソーム製剤の毒性は低く、医薬として使用するために十分に安全である。 また、PGI2受容体作動薬は、発がんに対するイニシエーション作用、及びプロモーション作用を有していないことは、これらのマウス及びラットを用いた長期癌原性試験、及び中期肝発がん性試験等で確認されている。
尚、使用した試薬類例を以下に示す。尚、実施例記載においては、これらの略語にて記載する。
(1)HSPC(水添添加大豆リン脂質, hydrogenated lecithin)
品名:COATSOME NC-21、(NOF corporation) CAS:921228-87-5, 92128-87-5
(2)DSPE (1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine) CAS: 1069-79-0(日本精化)
(3)DEPC:1,2-Dierucoyl-sn-glycerol-3- phosphorylcholine CAS No. 51779-95-4(日本精化)
(4)MPEG2000-DSPE:N-(carbonyl-methoxypolyethyleneglycol 5000)-1,2 distearoyl- sn- glycero-3-phosphoethanolamine, sodium salt CAS:147867-65-0 (日本精化)
(5)DOPC:1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(CAS:4235-95-4)(日本精化)
(6)Cholesterol:Cholesterol HP(NOF corporation)
(7)PBS(-);ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Ca, Mg不含)
濾過滅菌済 マイコプラズマ, エンドトキシン検査済(商品コード14249-95)(ナカライテスク)
リポソームに内包されるPGI2受容体作動薬類は以下記載会社から市販されており一般に購入することが出来る。
(i)化合物(A)(ONO-1301) Sigma-Aldrich CAS 176391-41-6
(ii)化合物(B)(ベラプロスト)Cayman社 CAS: 88475-69-8
(iii)化合物(C)(MRE-269) Cayman社 CAS:475085-57-5
(iv)化合物(D)(リマプロスト)Cayman社 CAS:74397-12-9
(v)化合物(E)(NS-304)Cayman社 CAS: 475086-01-2
以下、PGI2受容体作動薬類のリポソーム製造例を具体的に詳述する。
1)HSPC;107.4mg、DSPE;9.0mg、コレステロール;35.3mgを秤量し、ナスフラスコに採取し、クロロホルム/メタノール溶液(1/1, v/v)を脂質濃度20mg/mLになるように添加し、溶解した。
リポソーム外液は、10mM リン酸緩衝液 (pH8.0)とした。(リポソーム溶液)限外濾過は、攪拌式セル8000シリーズ50mLセル:Model8050 5122 メルク社製、バイオマックスPBMK04310 メルク社製を使用し、空リポソーム作成後、脂質定量を実施した。
6)リポソーム溶液に化合物(A)溶液(3濃度条件)を添加し、60℃、1時間撹拌した。
その結果、以下表2に示す4種の特性を有するリポソーム製剤を得た。図1にこれらの平均粒子径分布図を示す。
1)HSPC;102.0mg、DSPE;8.5mg、コレステロール;33.5mgを秤量し、ナスフラスコに採取し、クロロホルム/メタノール溶液(1:1, v/v)を脂質濃度20mg/mLになるように添加し、溶解した。
2)ロータリーエバポレーターでクロロホルム/メタノールを蒸発させ、真空乾燥を行った。
ナスフラスコ4本にそれぞれ総脂質として30mgになるように準備した。
3)化合物(A)を170.6mg秤量し、0.1N 水酸化ナトリウム溶液を4.5mL添加し、ボルテックスを行い溶解したところに、10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を2.6ml添加し、24mg/mLの溶液を調製した。(化合物(A)溶液)
4)真空乾燥した脂質フィルムに化合物(A)溶液(3濃度条件)を添加し、37℃、1時間撹拌した。
各ナスフラスコに30mgの脂質が入っているので、1/10混合比:化合物(A)3.0mg・脂質30mg、2/10混合比:化合物(A)6mg・脂質30mg、及び4/10混合比:化合物(A)12mg・脂質30mg 各3mLになるようPBSにて溶液量を調整した。
5)アズワン製 VS-100IIIにて28KHz 60秒・45KHz 60秒・100KHz 3秒のサイクルの繰り返しでトータル60分処理を行った。
6)超音波処理を60分行った。
7)攪拌式セル8000シリーズ10mLセル:MMODEL8010 5121 メルク社製、 バイオマックスPBMK02510 メルク社製にて、撹拌式限外濾過(分画分子量:300,000Da)で、遊離の化合物(A)を除去した。
1)HSPC;255.0mg、DSPE;21.3mg、コレステロール;83.0mgを秤量し、ナスフラスコに採取し、クロロホルム/メタノール溶液(1/1, v/v)を脂質濃度20mg/mlになるように添加し、溶解した。
2)ロータリーエバポレーターでクロロホルム/メタノールを蒸発させ、真空乾燥した。
3)化合物(A)を143mg秤量し、0.1N 水酸化ナトリウム溶液を3.76mL添加し、ボルッテクスを行い溶解したところに、10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を2.2ml添加し、24mg/mLの溶液を調製した。(化合物(A)溶液)
4)脂質フィルムに化合物(A)溶液を添加し、10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を追加し、36mLにメスアップした(化合物(A);140mg、脂質;360mg)。
5)アズワン社製 VS-100III 28Khzにて超音波処理を1分行い、ナスフラスコ壁面の脂質を分散した。
6)60℃、加温撹拌を30分行った。
7)等量の10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を添加し、エクストルーダー処理を行った。(60℃、400nm、200nm)。エクストレーダーは、LIPEX 100mL Thermobarrel Extruder:Northern Lipid社製、Nunleporeメンブレン、GE社製 400nm:品番111107 200nm:品番111106にて実施した。
8)攪拌式セル8000シリーズ50mLセル:Model8050 5122 メルク社製、及びバイオマックスPBMK04310 メルク社製の撹拌式限外濾過(分画分子量:300,000Da)で、遊離の化合物(A)を除去した。
外液は10mM リン酸緩衝液(pH7.4)とした。
1)脂質(HSPC;21.2mg、DSPE;1.8mg、コレステロール;7.0mg)および化合物(A);6.0mgを秤量し、ナスフラスコに採取した。この時、脂質10mgに対し、化合物(A)が2mgになるように秤量した。
2)クロロホルム/メタノール溶液(1/1,v/v)を脂質と化合物(A)総重量20mg/mLになるように添加し、溶解した。
3)ロータリーエバポレーターでクロロホルム/メタノールを蒸発させ、真空乾燥した。
4)10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を脂質濃度10mg/mLになるように添加した。
5)アズワン製 VS-100III 28KHzでの超音波処理によりナスフラスコ壁面の脂質および化合物(A)を剥離し、60℃、30分撹拌した。
6)等量の10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を添加し、エクストルーダー処理を行った。(60℃、400nm、200nm)。即ち、エクストレーダーは、LIPEX 100mL Thermobarrel Extruder:Northern Lipid社製、Nunleporeメンブレン、GE社製 400nm:品番111107、200nm:品番111106にて実施した。
7)攪拌式セル8000シリーズ10mLセル:MMODEL8010 5121 メルク社製、 バイオマックスPBMK02510 メルク社製の)撹拌式限外濾過(分画分子量:300,000Da)で、遊離の化合物(A)を除去した。外液は、10mM リン酸緩衝液(pH7.4)とした。
(1)製剤例5(リモートローディング法)リポソームの調製
1)HSPC;107.5mg、MPEG2000-DSPE ;35.0mg、コレステロール(35.5mg)を秤量し、ナスフラスコに採取し、クロロホルム/メタノール溶液(1:1, v/v)を脂質濃度30mg/mLになるように添加し、溶解した。
2)ロータリーエバポレーターでクロロホルム/メタノールを蒸発させ、真空乾燥し、0.1N 水酸化ナトリウム溶液(>pH12.0)を脂質濃度10mg/mLになるように添加し、ボルテックスを行い、再分散させた。
4)リポソーム外液を交換するために、撹拌式限外濾過(分画分子量:300,000Da)を行った。リポソーム外液は、10mM リン酸緩衝液(pH8.0)とした(リポソーム溶液)。
限外濾過は、攪拌式セル8000シリーズ50mLセル:Model8050 5122 メルク社製、及びバイオマックスPBMK04310 メルク社製にて実施し、空リポソーム作成後、脂質定量実施した。
5)化合物(A)を56.5mg秤量し、0.1N 水酸化ナトリウム溶液を1.41mL添加し、ボルッテクスを行い溶解したところに、10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を5.65mL添加し、8mg/mLの溶液を調製した。(化合物(A)溶液)
6)リポソーム溶液に化合物(A)溶液(3濃度条件)を添加して、60℃、1時間撹拌した。
3濃度条件は、1/10混合比:化合物(A)4.0mg、脂質40.0mg、2/10混合比 化合物(A)8.0mg、脂質40.0mg、及び 4/10混合比:化合物(A)16.0mg 脂質40.0mg 溶液ボリューム4mLで実施した。
7)撹拌式限外濾過(分画分子量:300,000Da)で、遊離の化合物(A)を除去した。限外濾過は、攪拌式セル8000シリーズ10mLセル:MMODEL8010 5121 メルク社製、 及びバイオマックスPBMK02510 メルク社製にて実施した。外液は、10mM リン酸緩衝液(pH7.4)とした。
1)HSPC;87.0mg、MPEG2000-DSPE ;28.3mg、コレステロール;29.0mgを秤量し、ナスフラスコに採取し、クロロホルム/メタノール溶液(1:1, v/v)を脂質濃度30mg/mLになるように添加し、溶解した。
2)ロータリーエバポレーターでクロロホルム/メタノールを蒸発させ、真空乾燥した。ナスフラスコ4本にはそれぞれ総脂質として10mgになるよう準備した。
3)化合物(A)を164mg秤量し、0.1N 水酸化ナトリウム溶液を4.3mL添加し、ボルテックスを行い溶解したところに、10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を2.53ml添加し、24mg/mLの溶液を調製した。(化合物(A)溶液)
4)真空乾燥した脂質フィルムに化合物(A)溶液(3濃度条件)を添加し、37℃、1時間撹拌した。
5)3濃度条件とは、1/10混合比:化合物(A)1.0mg、脂質10.0mg 、2/10混合比 化合物(A)2.0mg、脂質10.0mg 、4/10混合比:化合物(A)4.0mg 脂質10.0mg 溶液ボリューム4mLとした。
6)アズワン製 VS-100IIIにて、出力28Khz60秒、45KHz60秒、100KHz3秒サイクルでトータル60分、超音波処理を行った。
7)攪拌式セル8000シリーズ10mLセル:MMODEL8010 5121 メルク社製、 及びバイオマックスPBMK02510 メルク社製にて、撹拌式限外濾過(分画分子量:300,000Da)で、遊離の化合物(A)を除去した。
外液は、10mM リン酸緩衝液(pH7.4)とした。
1)HSPC;215.0mg、MPEG2000-DSPE ;70.0mg、コレステロール;71.0mgを秤量し、ナスフラスコに採取し、クロロホルム/メタノール溶液(1/1, v/v)を脂質濃度30mg/mLになるように添加し、溶解した。
2)ロータリーエバポレーターでクロロホルム/メタノール溶液を蒸発させ、真空乾燥した。
3)化合物(A)を142.7mg秤量し、0.1N 水酸化ナトリウム溶液3.8mLを添加し、ボルッテクスを行い溶解したところに、10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を2.19mL添加、24mg/mLの溶液を調製した。(化合物(A)溶液)
4)脂質フィルムに化合物(A)溶液を添加し、10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を追加し、35.6mLにメスアップした(化合物:142.4mg 脂質:356.0mg)。
5)アズワン製 VS-100IIIにて、出力28Khz60秒、45KHz60秒、100KHz3秒サイクルでトータル30分、超音波処理を1分行い、ナスフラスコ壁面の脂質を剥離し、60℃、30分撹拌した。
6)等量の10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を添加し、エクストルーダー処理を行った。(60℃、400nm、200nm)。エクストレーダーは、LIPEX 100mL Thermobarrel Extruder:Northern Lipid社製、Nunleporeメンブレン、GE社製 400nm:品番111107 200nm:品番111106にて実施した。
7)攪拌式セル8000シリーズ50mLセル:Model8050 5122 メルク社製、及びバイオマックスPBMK04310 メルク社製にて、撹拌式限外濾過(分画分子量:300,000Da)で、遊離の化合物(A)を除去した。
外液は、10mM リン酸緩衝液(pH7.4)とした。
1.HSPC;18.0mg、MPEG2000-DSPE ;6.0mg、コレステロール;6.0mgおよび化合物(A);6.0mgを秤量し、ナスフラスコに採取した。この時、脂質10mgに対し、化合物(A)2mgになるように秤量し、クロロホルム/メタノール溶液(1/1, v/v)を脂質と化合物(A)総重量30mg/mLになるように添加し、溶解した。
2.ロータリーエバポレーターでクロロホルム/メタノールを蒸発させ、真空乾燥した。
3.10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を脂質濃度10mg/mLになるように添加した。
4.アズワン製 VS-100III 28KHzにて、超音波処理を行い、ナスフラスコ壁面の脂質および化合物(A)を剥離し、60℃、30分撹拌した。
5.等量の10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を添加し、エクストルーダー処理を行った。(60℃、400nm、200nm)。エクストルーダーは、LIPEX 100mL Thermobarrel Extruder:Northern Lipid社製、Nunleporeメンブレン、及びGE社製 400nm:品番111107 200nm:品番111106にて実施した。
6.攪拌式セル8000シリーズ10mLセル:MMODEL8010 5121 メルク社製、 バイオマックスPBMK02510 メルク社製にて、撹拌式限外濾過(分画分子量:300,000Da)で、遊離の化合物(A)を除去した。
外液は、10mM リン酸緩衝液(pH7.4)とした。
1)化合物(A)を5mg秤量し、試験管に入れ、0.1N 水酸化ナトリウム溶液を0.125mL添加し、ボルテックスを行い溶解した。
2)精製水4.875mLを添加して、1mg/mLの化合物(A)溶液を調製した。
3)化合物(A)濃度0.0mg/mL〜0.50mg/mLの6ポイントで、波長265nmの吸光度を測定して、検量線を作成した。
4)既知濃度の化合物(A)溶液(0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.4mg/mL)を調製し、検量線からサンプル濃度を求めた。
5)ブランクリポソーム(脂質濃度4.7mg/mL)に既知濃度の化合物(A)溶液(0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.4mg/mL)を添加して、化合物(A)濃度を測定した。
6)既知濃度溶液の測定結果とリポソーム添加既知濃度溶液の測定結果を求めて、回収率を算出した。
7.化合物(A)のステルス性リポソームナノスフェアのバンガム法での大量製造
(1)バンガム法によるPEG処理化化合物(A)内包リポソームの大量調製を行い、特性試験を行った。
(作製方法)
(i) HSPC;5.524g、Cholesterol;1.8419g、MPEG2000-DSPE ;1.7978gをナスフラスコに秤量し、クロロホルム/メタノール(1/1, v/v)溶液を脂質濃度30mg/mLになるように添加、37℃、撹拌溶解した。
(ii) 窒素封入下、エバポレーターで溶媒留去後、真空乾燥した。脂質600mgx15本、及び脂質300mgx1本の100mLナスフラスコを準備した。
(iii) 化合物(A)を秤量し、0.1N 水酸化ナトリウム溶液を添加、化合物(A)濃度40mg/mLの溶液を作製した。 そこに10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を化合物(A)濃度24mg/mLになるように添加した。
(iv) 脂質フィルムに(3)の溶液を添加、脂質濃度10mg/mLになるように10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を添加し、37℃、1時間撹拌した。各ナスフラスコに脂質600mgに対して化合物(A)22.2mgを添加、及び脂質300mgに対しては化合物(A)11.1mg添加した。
(v) アズワン製 VS-100III 出力28Khz60秒、45KHz60秒、100KHz3秒サイクルで、各々のナスフラスコで超音波処理をトータル60分行った。
(vi) 攪拌式セル8000シリーズ400mLセル:MMODEL8400 5124 メルク社製、 バイオマックスPBMK07610 メルク社製を使用した。溶液量がトータル930mLのため、セルを3つ使用して限外濾過(分画分子量:300,000Da)により外水相を10mM リン酸緩衝液(pH7.4)に置換、未内包化合物(A)を除去した。
(2)図11に製剤21の透過型電子顕微鏡撮像を示す。
撮影機種:HITACHI H-7600 at 100kV
試料作製方法
・分散:400mesh カーボン支持膜付グリッド
・染色:ネガティブ染色 (リンタングステン酸)
電顕写真を図11に示す。
(3)作製したPEG処理化合物(A)内包リポソームの一部のHPLC分析を行い、分解物の有無を確認した。
・HPLCによる化合物(A)の分析及び定量
機器名 :Agilent 1290 Infinity LCシリーズ
カラム :SHISEIDO CAPCELL PAK C18 UG120 5μm, 4.6×150mm
移動相 :1% 酢酸/H2O:1% 酢酸/アセトニトリル=60:40
流速 :1mL/min
検出波長 :265nm
カラム温度:25℃
(試料調製方法)
サンプル1:化合物(A)を1mg/mLになるように1M 水酸化ナトリウム溶液に溶解した。これを40℃、一晩静置した。(酸化物産生検体)
サンプル2:化合物(A)を0.5mg/mLになるように0.1N 水酸化ナトリウム溶液-10mM リン酸緩衝液(pH8.0)(内包時の緩衝液)で調製した。(コントロール検体)
サンプル3:サンプル2を生理食塩水で等倍希釈し、0.25mg/mLの溶液を調製した。これを、37℃、一晩静置した。(化合物コントロール検体)
サンプル4:PEG処理空リポソームを生理食塩水で10倍希釈を行った。これを37℃、一晩静置後、限外濾過を行った。(脂質コントロール検体)
サンプル5:PEG処理化合物(A)内包リポソームを生理食塩水で10倍希釈行った。これを37℃、一晩静置後、限外濾過を行った。(リポソーム検体)
上記、5サンプルのHPLC分析を行い、37℃環境下での化合物(A)酸化物の有無及びPEG処理化合物(A)内包リポソームの化合物(A)酸化物の有無を確認した。
8.バンガム法によるPEG処理化化合物(B)内包ステルス性リポソームの作製
(1)リポソーム作製
(i) HSPC;36.0mg、Cholesterol;12.0mg、MPEG2000-DSPE ;12.0mgをナスフラスコに秤量し、クロロホルム/メタノール(1/1, v/v)溶液を脂質濃度30mg/mLになるように添加し、37℃、撹拌溶解した。
(ii) 窒素封入下、エバポレーターで溶媒留去し、真空乾燥した。
(iii) 化合物(B)を20mg/mLになるように10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を添加し、溶解した。
(iv) 脂質フィルムに化合物(B)溶液を1/10(Drug/Lipid w/w%)になるように添加し、10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を脂質濃度10mg/mLになるように添加、メスアップした(化合物(B)6.0mg、脂質;60.0mg)。
(v) ボルッテクスを20秒程行い、37℃、1時間撹拌した。
(vi) アズワン製 VS-100III 出力28Khz60秒、45KHz60秒、100KHz3秒サイクルでトータル90分超音波処理を行った。
(vii) 攪拌式セル8000シリーズ10mLセル:MMODEL8010 5121 メルク社製、 バイオマックスPBMK02510 メルク社製 スタート時6mL 回収時4mLで、1.5倍濃縮した。薬剤内包量が低かった為限外濾過(分画分子量:300,000Da)により外水相10mM リン酸緩衝液(pH7.4)に置換し、未内包化合物(B)を除去した。
(2) 製剤22の透過型電子顕微鏡撮像を図14に示す。
(3) 化合物(B)の定量法確認
(吸収スペクトルの確認方法)
(i) 化合物(B)を20mg/mLになるように10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を添加し、溶解した。
(ii) (i)を精製水で等倍4段階希釈した。
(iii) 各濃度のサンプルをクロロホルム/メタノール(1/1, v/v)溶液で10倍希釈し、UV2700を用いて吸光度220〜700nmの吸収スペクトルを測定した。
9.バンガム法によるPEG処理化化合物(C)内包ステルス性リポソームの作製
(1)リポソーム作製方法
(i) HSPC;60.0mg、Cholesterol;12.0mg、MPEG2000-DSPE ;12.0mgをナスフラスコニ秤量し、クロロホルム/メタノール(1/1, v/v)溶液を脂質濃度30mg/mLになるように添加し、37℃、撹拌溶解した。
(ii) 窒素封入下、エバポレーターで溶媒留去し、真空乾燥した。
(iii) 化合物(C)を20mg/mLになるようにDMSOで溶解し、化合物(C)が10mg/mLになるように10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を添加した。
(iv) 脂質フィルムに化合物(C)溶液を1/10(Drug/Lipid w/w%)になるように添加し、37℃、1時間撹拌した(化合物(C):6.0mg、脂質:60.0mg)。
(v)アズワン製 VS-100III 出力28Khz60秒、45KHz60秒、100KHz3秒サイクルでトータル90分、超音波処理を行った。
(vi) 攪拌式セル8000シリーズ10mLセル:MMODEL8010 5121 メルク社製、及びバイオマックスPBMK02510 メルク社製にて、限外濾過(分画分子量:300,000Da)により外水相10mM リン酸緩衝液(pH7.4)に置換し、未内包化合物(C)を除去した。
(2)その結果、表13の特性を有するリポソームを得た。図16に平均粒子径分布図を示す。
(3)図17に、製剤23の透過型電子顕微鏡撮像を示す。
(4) 化合物(C)の定量法確認
(吸収スペクトルの確認方法)
(i) 化合物(C)を20mg/mLになるようにDMSOを添加し、溶解した。
(ii) 等量の10mM リン酸緩衝液(pH8.0)を(i)に添加し、化合物(C)濃度10mg/mLの50% DMSO溶液を作製した。
(iii) (ii)を精製水で等倍3段階希釈した。
(vi) 各濃度のサンプルをクロロホルム/メタノール(1/1, v/v)溶液で10倍希釈し、UV2700を用いて吸光度220〜700nmの吸収スペクトルを測定した。
図18に化合物(C)のUV吸収スペクトル変化を示した。
10.直接分散改良法による、化合物(A)(ONO-1301)のステルス性リポソーム製剤の作製。
1)作製法
(i)下記表14に2種の脂質および化合物(A)を採り、20gのt-ブタノールに70℃で溶解した。
(iii)凍結後、凍結乾燥機にて約17hr凍結乾燥。
(iv) 得られた粉体にPBS(-)440mLを加え、50℃の温浴およびソニケーターにより塊がなくなるまで分散。(この時点でONO-1301濃度2.5mg/mL)
(v)400nm孔径のポリカーボネートフィルターおよびドレンディスクを装着し、ジャケットに50℃温水を通水したエクストルーダーにより、約50kg/cm2にてサイジング。
(vi)(v)と同様に200nmフィルターでも3Passしてサイジングし、半透明なリポソーム液を得た。
PBS(-) (SIGMA D1408を10倍希釈)を用いて限外濾過(限外濾過膜:メルクミリポアPBMK04310、分画分子量:300,000Da)を行い、未内包化合物を除去した。
限外濾過は、メルク社、攪拌セル8000シリーズ Model8050 品番5122 を使用し、膜はメルク社 バイオマックス PBMK04310 300KDaを使用した。
3)特性確認
リポソーム液をPBS(-);ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Ca, Mg不含)で限外濾過(分画分子量:300,000Da)を行い、限外濾過後サンプルとした。また、HPLCによりONO-1301の酸化物有無の確認を行った。
その結果、限外濾過前後において表15に示す通り、各種物性結果に大きな変化は確認されなかった。また、図19、図20に示す通り、粒度分布及びHPLC分析結果よりONO-1301分解物のピークは確認されなかった。化合物(A)の収率は、88%であった。
4)安定性試験
限外濾過後(製剤25)、PBS(-);ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Ca, Mg不含)にて、4℃で9ヶ月間保存後、安定性を確認したところ、粒度分布、含有率、その他物性には変化がなく、安定であることが確認された。
HLPC測定の結果、本製造条件下で、化合物(A)の分解物は存在しないことが確認された。
[リポソーム作製方法]
(i) DEPC (日本精化) 0.188gとMPEG2000-DSPE (日本精化) 0.012g及び化合物(B、D、又はE)0.01gをガラスバイアルに秤量した。
(ii) t-ブタノール 2.0gを(i)に添加、37℃加温下で撹拌溶解した。
(iii) エタノールドライアイスで瞬時に凍結した。
(iv) 凍結乾燥を17時間行った。
(v) 凍結乾燥後の脂質・化合物粉末にPBS(-)20mL(ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水(Ca, Mg不含)を添加した。
(vi)軽くボルテックスを行った後、37℃加温下で超音波処理30分行った。
(vii) 37℃加温下、エクストルーダー処理を行った。装置はLIPEX Extruder 100mLを使用した。400nm孔径ポリカーボネートフィルターを1回処理後、200nm孔径ポリカーボネートフィルターを3回処理した。(処理圧力:約5MPa)
エクストルーダーは、Northern Lipid社製 LIPEX 100mL ThermoBarrel Extruder、
膜は GE社製 Nuclepore;400nmの品番111107 200nmの品番 111106を使用した。
(viii) PBS(-) (SIGMA D1408を10倍希釈)で限外濾過(限外濾過膜:メルクミリポアPBMK04310、分画分子量:300,000Da)を行い、未内包化合物を除去した。限外濾過廃液はリポソーム容量20mLの7倍の140mLまで行い最終20mLで回収した。
攪拌セルにリポソーム溶液を入れ、装置をセットし、廃液が140mL出るところまで 窒素ガスのガス加圧(0.4MPa)によって送液した。
(ix) クリーンベンチ内で0.22μm フィルター滅菌濾過を行った。
(x) 物性試験を行った。物性試験として平均粒子径およびゼータ電位測定、脂質定量(和光純薬、リン脂質C-テストワコー)、吸光度(Abs 680nm)を測定した。
[試験結果]
(1)化合物(B)(製剤26)内包リポソーム 製造
化合物(B)内包リポソームは表16及び図21に示す通りの物性となった。図22に示す通り、化合物(B)内包リポソームのUV吸収スペクトルを確認したところ、化合物(B)由来のUV吸収が確認された。粒子径、PdI値及びゼータ電位は以下表16に示す特性を有するリポソームを得た。図21には、製剤26のリポソーム粒度分布を示す。
化合物(D)内包量は、UV定量にて0.249mg/mLとなった。また、粒子径、PdI値及びゼータ電位は以下表17に示す特性を有するリポソームを得た。図23には、製剤27のリポソーム粒度分布を示す。
化合物(E)内包リポソームは表18及び図25に示す通りの物性となった。化合物(E)内包量は、UV定量にて0.305mg/mLとなった。また、粒子径、PdI値及びゼータ電位についても表に示す結果となった。図26に示す通り吸収スペクトルを確認したところ、300nmのUV吸収値にて定量性があることを確認した。
1)ラットモノクロタリン誘発肺高血圧症モデルに対する製剤21(ONO-1301Lipo)間歇静注投与での効果の検討
作製した製剤21(ONO-1301Lipo製剤)をラットモノクロタリン(MCT)誘発重症心不全(肺高血圧症)モデルに、MCT投与7日目から被験物質を週1回間歇で静脈内投与し、化合物(A)(ONO-1301)反復経口投与、化合物(A) の週1回間歇静注投与、及び陽性対照として、ET-1拮抗剤(ボセンタン)を経口投与した群と生存率を比較した。また、対照群は、静脈内投与にて週1回生理食塩水(媒体)を投与した。
2群:MCT投与後7〜41日後まで、投与の間隔を8時間以上空けて、化合物(A) の3 mg/kgを2回/日、経口投与した。
3群:MCT投与7〜41日後まで、投与の間隔を8時間以上空けて、ボセンタンの50 mg/kgを2回/日、経口投与した。
4群:MCT投与7、14、21、28および35日後(計5回)に1週間間隔で製剤21(ONO-1301Lipo)の1 mg/kgを静脈内投与した。
5群:MCT投与7、14、21、28および35日後(計5回)に1週間間隔で化合物(A) の1 mg/kgを静脈内投与した。
化合物(A)の1 mg/kgの1回/週、間歇静脈内投与群(6群)は、重症心不全モデル作製28日後の投与約30分後に2例の死亡が観察された。その後、42日までに6例の死亡が観察され、最終生存率は20 %(生存数:2/10例)であり、対照群(1群)と比較して有意な延命効果は認められなかった。
1.方法;
マウス(C57BL/6NCr)、雌性(7週齢)にペントバルビタールナトリウム麻酔後、ブレオマイシン塩酸塩水溶液(BLM)20 μLを2回、計40 μL/animalを気管内(肺内)投与した。なお、正常群(Normal)として同様に媒体(生理食塩液)を気管内投与した。
2.試験群構成を表21に示した。
1)経口投与:媒体(0.5% CMC-Na水溶液)及び化合物(A)の投与(1、2群)
肺障害モデル作製6日後より媒体及び化合物(A)(3 mg/kg)を1日2回(午前と午後の投与間隔は8時間以上空けた)、23日間反復経口投与を行った。
投与方法:ポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒及びマウス用胃ゾンデを用いて強制経口投与した。
2)静脈内投与:化合物(A)及び製剤25の投与(3、4、5群)
肺障害モデル作製6日後に投与し、その後は週1回の割合で尾静脈内投与を行った(モデル作製6、13、20、27又は28日後の計4回)。
投与容量:1.5 mL/kg
投与方法:ガラス製注射筒及びディスポーザブル注射針30Gを用いて静脈内投与した。
3)気管内投与 :化合物(A)及び製剤25の投与(6、7、8、9群)
肺障害モデル作製6日後に投与し、その後は週1回の割合で気管内投与を行った(モデル作製6、13、20、27又は28日後の計4回)。なお、正常の9群(Normal)は生理食塩液を同様に投与した。
投与方法:ペントバルビタール(30〜35 mg/kg、i.p.)麻酔後、気管内(肺内)投与した。
4.結果
1)生存率の結果を図28〜30に示した。
2)生存率の比較
(1)図29;製剤25(ONO-1301Lipo)の間歇静脈内投与との比較
2群の化合物(A)(ONO-1301)(3 mg/kg×2回×22日)の総投与量は132 mg/kgであった。
また、化合物(A)(ONO-1301)の3 mg/kg週1回静脈内投与(3群)での総投与量は12 mg/kgであり、製剤25の1 mg/kg週1回静脈内投与(4群)での総投与量は4 mg/kgであった。また、製剤25の3 mg/kg週1回静脈内投与(5群)での総投与量は12 mg/kgであった。
2群の化合物(A)(ONO-1301)(3 mg/kg×2回×22日)の総投与量は132 mg/kgであった。
3)自然発症拡張型心筋症(J2N-k)ハムスターにおける製剤25(ONO-1301Lipo)効果の検討
(1)試験系
製剤25、及び化合物(A)(ONO-1301)の2週間に1回間歇静注投与における自然発症拡張型心筋症(J2N-k)ハムスターモデルのDDS心機能の改善を心エコー検査による左室駆出率(以後,EF%),左室内径短縮率(以後,%FS)および組織学的評価を指標に比較検討した.
また、陽性対照として、化合物(A)(ONO-1301)の1日2回反復経口投与群を設けた。
(2)群構成を表22に示す。
18週齢にて入荷した動物を2週間の検疫・馴化飼育期間を設け,20週齢目に群分け時の検査(試験開始日)を実施した.その後,試験開始日より4週目および8週目に検査を行い、8週目にて解剖を行った.
(4)解剖 および摘出組織の処理
投与開始日より8週目に最終の心エコー検査実施後,解剖を行った.
解剖は,イソフルラン麻酔下に腹部大動脈より全採血し,安楽死させた後,心臓および肺を摘出し,重量を測定した.重量測定後,左室および右室を含めて,短軸方向で約2mm間隔でApical部,Midole部およびBasal部に3分割した.
3分割した組織は,Midle部の右室と左室を含む短軸切片を4%パラホルムアルデヒド(一般病理検査用)に浸漬し保存した.
(5)摘出心臓の短軸切片における左室壁厚および面積の測定
心臓摘出時に左室および右室を含めて,短軸方向で約2mm間隔でApical部,Midole部およびBasal部に3分割した.その内,Midle部の1切片に対し,写真撮像し,画像編集ソフトを用いAnterior,Lateral,Posterior,Septum部の壁厚および左室面積を求めた.左室の壁厚は,画像編集ソフトを用い,写真上のスケール1mm2のピクセル数を求め,左室壁全体を外径および内径をトレースし,それぞれのピクセル数を出し,左室面積((外形ピクセル数−内径ピクセル数)/1mm2)を求めた後,各部位の壁厚を測定した.
図31に測定法を記す。切片は、Apical, Middle, Basal領域を約2mm間隔で3分割した後、Middle側の1切片に対し、Anterior, Lateral, Posterior, Septum部の壁厚および左室面積を求めた。左室の壁厚は、画像編集ソフトを用い、写真上のスケール1mm2のピクセル数を求め、左室壁全体を外径および内径をトレースし、それぞれのピクセル数を出し、左室壁面積((外形ピクセル数−内径ピクセル数)/1mm2)を求めた後、各部位の壁厚を測定した。
(6) 試験結果
心エコー検査によるEF%値および%FS値の測定結果を、表23に示す.
Control群(1群)は,群分け時,4週目および8週目のEF%値は,それぞれ42.5±3.2%,33.6±12.3%および31.5±3.5%であった.8週目のEF%値において,群わけ時のEF%値と比較して,p<0.05の有意な低下が認められた.また,%FS値では,群分け時,4週目および8週目の値は,それぞれ17.8±1.4%,13.3±6.1%および12.6±1.6%であり,EF%値と同様,8週目のEF%値において,群わけ時の%FS値と比較して,有意な低下(p<0.01)が認められた.
化合物(A)(ONO-1301): 3.0mg/kgx2回/日の反復経口投与群(4群)は,群分け時,4週目および8週目のEF%値は,それぞれ43.0±7.8%,40.4±14.9%および40.3±9.2%であり,群分け時に比較して,4週目,8週目の数値において,有意な心機能の低下は認められなかった.8週目のEF%値はControl群のそれと比較して,高値を示し,有意差(p<0.05)な効果が認められた.また,%FS値では,群分け時,4週目および8週目の値は,それぞれ18.2±3.9%,17.2±7.2%および17.1±4.5%を示し,EF%値と同様の結果を示した.
化合物(A)(ONO-1301): 3.0mg/kgの静脈内投与群(3群)は,群分け時,4週目および8週目のEF%値は,それぞれ38.8±4.3%,35.7±7.4%および30.8±2.9%であった.この結果は,Control群と比較し,4週目の低下は緩徐であったが,8週目の結果では,Control群と同程度の低下を認めた.この8週目のEF%値は,群分け時の値に比較し,有意な低下(p<0.01)であった.また,%FS値では,群分け時,4週目および8週目の値は,それぞれ16.0±2.1%,16.1±3.1%および12.3±1.3%であった.この結果は,EF%値とほぼ同様の結果を示したことから,有効性は確認できなかった.
一方,製剤25(ONO-1301Lipo):3.0mg/kgの静脈内投与群(2群)では,群分け時,4週目および8週目のEF%値は,それぞれ40.5±5.1%,44.5±9.9%および39.6±4.1%であった.4週目において有意差は認められなかったが,軽度の増加を示し,8週目においては,化合物(A)(ONO-1301): 3.0mg/kgの経口投与群のそれと比較して,同程度の低下抑制が認められ,Control群と比較して有意(p<0.05)な高値を示した.また,%FS値では,群分け時,4週目および8週目の値は,それぞれ16.9±2.6%,18.5±4.9%および16.5±2.1%を示し,EF%値の変動とほぼ同様の結果を示し,8週目の結果においてContol群(1群)のそれと比較し,有意(p<0.01)な効果が認められ,その効果は,化合物(A)(ONO-1301)反復経口投与群(4群)とほぼ同等であった.
2.摘出心臓の壁厚測定結果(Midle部短軸切片での評価)
壁厚測定結果を表24に示す.
表24に示すごとく,Control群(1群)のMidle部切片のApical,Lateral,PosteriorおよびSeptumの壁厚は,それぞれ0.8±0.1mm,1.1±0.2mm,1.1±0.2mmおよび1.0±0.2mmであった.
化合物(A)(ONO-1301): 3.0mg/kgの経口投与群(4群)では,Midle部切片のApical,Lateral,
PosteriorおよびSeptumの壁厚は,それぞれ1.4±0.5mm,1.5±0.2mm,1.2±0.4mmおよび1.5±0.3mmであった.Apical,LateralおよびSeptumにおいては,Control群のそれと比較し,有意(p<0.05)な高値を示した.
化合物(A)(ONO-1301): 3.0mg/kgの静脈内投与群(3群)では,1.1±0.6mm,1.2±0.3mm,1.2±0.2mmおよび1.0±0.3mmであった.この結果は,Control群とほぼ同様の測定結果であった.
一方,製剤25(ONO-1301Lipo):3.0mg/kgの静脈内投与群(2群)では,1.7±0.4mm** 1.5±0.1mm* 1.5±0.6mm†1.2±0.3mmであった. この結果はControl群のそれと比較して,Apical(p<0.01),Lateral(p<0.05)およびPosterior(0.05<p<0.1)において有意な高値および高値を示す傾向が認められた.
左室面積測定結果を表25に示す.
表25に示すごとく,Control群(1群),化合物(A)(ONO-1301): 3.0mg/kg経口投与群(4群),化合物(A)(ONO-1301): 3.0mg/kg静脈内投与群(3群)および製剤25(ONO-1301Lipo):3.0mg/kg静脈内投与群(2群)の左室壁面積の測定結果は,それぞれ23.4±5.4mm2,26.4±4.3mm2,23.9±4.5mm2および29.5±6.4mm2であった.この測定結果は,有意差は認められなかったが,壁厚測定結果を反映して,Control群(1群)および化合物(A)(ONO-1301): 3.0mg/kg静脈内投与群(3群)で低値を,化合物(A)(ONO-1301): 3.0mg/kg経口投与群(4群)および製剤25(ONO-1301Lipo):3.0mg/kg静脈内投与群(4群)で高値を示す傾向が認められた.
以上のことから,化合物(A)(ONO-1301): 3.0mg/kgの1日2回、反復経口投与群(4群)および製剤25(ONO-1301LipoNS):3.0mg/kgの2週に1回、間歇静注投与群(2群)において,自然発症拡張型心筋症(J2N-k)ハムスターにおける心機能の低下を抑制することが示唆された.
尚,化合物(A)(ONO-1301)反復経口投与は,3mg/kgx2回x56日で総投与量は計336mg/kgであった.また,製剤25(ONO-1301Lipo)静注投与は,3mg/kgx4回で総投与量は計12mg/kgで同等の有効性を示した.また、化合物(A)(ONO-1301)の2週間に1回、3mg/kg間歇静注投与では効果を示さなかった。よって,製剤25(ONO-1301Lipo)の2週間に1回、間歇静注投与は,化合物(A)(ONO-1301)反復経口投与に比し,1/28投与にて同等の効果を認めたことから,製剤25(ONO-1301Lipo)静注投与のDDS効果が確認された.
表26、および表27には、群分け時及び解剖時の体重変化、及び解剖時の心臓重量および肺重量を示した。これらはいずれも変化は認められなかった。
製剤25(ONO-1301Lipo)、及び化合物(A)(ONO-1301)の間歇静脈内投与における虚血性心疾患に対する心機能の改善および心不全に伴う致死防御効果を心エコー検査による左室駆出率(以後,EF%),左室内径短縮率(以後,%FS)および病理学的評価を指標に検討した.
(1)心筋虚血モデルの作製
雄性Sprague-Dawley 系ラット(日本クレア;入手時6週齢)をミダゾラム(ドルミカム注射液10mg;astellas)0.5mg/kgとキシラジン(セラクタール2%注射液;バイエル薬品(株))2mg/kgの混液にて麻酔を施した後,尾静脈動物を確保し,フ゜ロホ゜フォール(1%テ゛ィフ゜リハ゛ン注;アストラゼネカ(株))6〜10mg/kg/hrをシリンシ゛ホ゜ンフ゜(テルフューシ゛ョンTE-3310N;テルモ)を用いて持続注入し、深麻酔維持する.次いで、気管カニューレ(外径2.0mmカットダウンカテーテル;JMS製)を挿管・留置し,人工呼吸器(小動物用;シナノ製作所)を連結させ、Stroke volume 1mL/100g/Stroke(±1mL), Stroke数70回/min(±10回)で呼吸を維持させた。その後,左胸部を上方に向くように背位固定から横臥位に固定し、第3〜4もしくは第4〜5肋間の表皮ならびに筋肉層を外科用尖刀で切開した. そして、胸腔内に達したことを確認し、開胸器を用いて肋間を広げ左心耳から前下行枝部(以後,LAD)が正面に直視できる状態を確保した.
その後、半透明の薄い心膜をピンセットで除去し,心筋を露出させた。その後、マイクロ持針器にて左心耳辺縁に位置するLADを6-0もしくは7-0針付きナイロン糸で2〜3mmの深さで刺入・確保し,LADを完全結紮した。 その後,筋肉層および表皮を4−0もしくは5−0ナイロン糸にて縫合・閉胸する.閉胸後,処置部にセファメジン50mgを皮下投与し,処置を終了した.
(2) 群構成を表28に示す。
心エコー検査は,左室駆出率(以後,EF%)を指標に被験物質における心機能の改善効果を確認する目的で実施した.
検査は,モデル作製後23時間後(群わけのための検査)に行い,EF%値が正常動物の25%以上低下した動物を選択し,群分けを行い、被験物質投与溶液は,モデル作製後24時間後に尾静脈内投与を行った。以後,被験物質投与後7日および14日後に心エコー検査を行った.
(4) 解剖 および摘出組織の処理
被験物質投与後14日目の心エコー検査終了後に解剖を行った。解剖は,イソフルラン麻酔下に腹部大動脈より全採血し,安楽死させた後,心臓を摘出し,心重量を測定した。心重量測定後,梗塞領域を左室および右室を含めて,短軸に3分割した。
(1)心エコー検査によるEF%値の測定結果
心エコー検査結果を表29および表30に示す.
表29に示すごとく,正常動物におけるEF%値は,85.0±1.9%(n=4)であった.各群のLAD完全結紮23時間後の被験物質投与前EF%値は,Control群で52.8±6.8%(n=5)で,製剤25(ONO-1301Lipo)の0.3mg/kg,1.0 mg/kgおよび3.0mg/kg投与群では,それぞれ55.1±2.4%(n=5),55.0±4.1%(n=5)および54.7±5.2%(n=5)であった.また,化合物(A)(ONO-1301)の3mg/kg投与群は,56.7±5.5%(n=5)であった.
正常動物のEF%値に対する各群の被験物質投与前EF%値は,全ての群で有意(p<0.01)な低下を示し,各群間差において,有意差は認められなかった.
表29に示すごとく,各群の投与後7日目および14日目のEF%値の変化は,Control群では,投与前EF%値52.8±6.8%(n=5)に対し,それぞれ48.9±4.0%および39.0±5.2%と経日的に低下を示し,2週間後のEF%値では,投与前値と比較して有意(p< 0.05)低下を示した.
一方,製剤25(ONO-1301LipoNS)では,0.3mg/kg投与群で投与前EF%値55.1± 2.4%(n=5)に対し,それぞれ50.7±6.2%および42.0±6.2%と,Control群と同程度の変化を示し,14日目のEF%値においてもControl群と同様,投与前値と比較して有意(p< 0.05)低下を示した.
1.0mg/kg投与群では,投与前EF%値55.0±4.1%(n=5)に対し,それぞれ53.6±7.5%および54.7±8.2%と,投与前EF%値と同程度であった.14日目の EF%値はControl群のそれと比較して,p<0.05)の有意な増加を示した.
3.0mg/kg投与群では,投与前EF%値54.7±5.2%(n=5)に対し,それぞれ62.4±8.7%および58.2±13.2%と,投与前EF%値と比較して投与後7日目をピークとして増加を示し,心機能の改善効果が認められた.その被験物質投与後7日目および14日目のEF%値はControl群のそれと比較して,それぞれp<0.05)およびp<0.01の有意な低下抑制を示した.
また,化合物(A)(ONO-1301)の3.0mg/kg投与群では,投与前EF%値56.7±5.5% (n=5)に対し,それぞれ54.6±8.8%および53.2±7.1%と,投与前EF%値と比較して,低下傾向を示したが,有意な差は認められなかった.しかしながら,Control群の7日目および14日目と比較した結果,ともに有意差は認められなかった.
4.心エコー検査による %FS値の測定結果
表29に示すごとく,正常動物における%FS値は,49.4±2.4%(n=4)であった.各群のLAD完全結紮後約23時間の被験物質投与前%FS値は,Control群で23.9±3.7%(n=5)で,製剤25(ONO-1301Lipo)の0.3mg/kg,1.0 mg/kgおよび3.0mg/kg投与群では,それぞれ25.0±1.7%(n=5),25.8±2.4%(n=5)および25.0±3.0%(n=5)であった.また,化合物(A)(ONO-1301)の3mg/kg投与群は,26.5±3.7%(n=5)であった.通常,%FS値は臨床上では28%以上が正常と言われており,全群で軽度ではあるものの,それを下回っていた.
正常動物のEF%値に対する各群の被験物質投与前%FS値は,全ての群で有意(p<0.01)な低下を示し,各群間差において,有意差は認められなかった.
表30に示すごとく,各群の投与後7日目および14日目の%FS値の変化は,Control群では,投与前 %FS値23.9±3.7%(n=5)に対し,それぞれ21.8± 2.2%および16.7±2.7%と経日的に低下を示し,2週間後の%FS値では,EF%値と同様に投与前値と比較してp< 0.05の有意な低下を示した.
一方,製剤25(ONO-1301Lipo)では,0.3mg/kg投与群で投与前 %FS値25.0±1.7%(n=5)に対し,それぞれ22.9±3.4%および18.4±3.2%と,Control群と同程度の変化を示し,14日目の%FS値においてもControl群と同様,投与前値と比較して有意(p< 0.05)低下を示した.
1.0mg/kg投与群では,投与前%FS値25.8±2.4%(n=5)に対し,それぞれ24.8±4.2%および25.4±5.0%と,投与前FS%値と同程度であった.
3.0mg/kg投与群では,投与前%FS値25.0±3.0%(n=5)に対し,それぞれ30.1±5.4%および27.9±8.5%と,投与前 %FS値と比較して投与後7日目をピークとして増加を示した.その被験物質投与後7日目および14日目の %FS値はControl群のそれと比較して,ともにp<0.05)の有意な増加を示した.
また,化合物(A)(ONO-1301)の3.0mg/kg投与群では,投与前 %FS値26.5±3.7% (n=5)に対し,それぞれ25.4±5.6%および24.5±4.4%と,投与前 %FS値と比較して,低下傾向を示したが,有意な差は認められなかった.しかしながら,Control群の7日目および14日目と比較した結果,ともに有意差は認められなかった.
以上のごとく,心機能評価の指標である,EF%値および %FS値は各群で相関した測定結果が認められ,製剤25(ONO-1301LipoNS)の1.0mg/kgおよび3.0mg/kgの単回静脈内投与により,心機能の改善効果のある事が認められた.
切片は,Apical部を除き,Midle領域を約 2mm間隔で 2 分割した後,Apical側とBasals側の2切片に対し,梗塞面積を求めた.梗塞面積評価は,左室面積全体に対する梗塞領域の割合および左室外径に対する正常領域と梗塞領域の長さの比率で評価した.
梗塞面積評価法を図32に示す。切片は、Apical部を除き、Middle領域を約2mm間隔で2分割した後、Apical側とBasal側の2切片に対し、梗塞面積を求めた。梗塞面積評価は、左室壁面積全体に対する梗塞壁領域の割合および左室外径に対する正常領域と梗塞領域の長さの比率で評価した。
Claims (13)
- プロスタグランジンI2受容体作動薬を封入するステルス型リポソームを含有する疾患部位特異的治療用医薬組成物。
- 前記プロスタグランジンI2受容体作動薬として、下記一般式(I)の化合物またはその塩を少なくとも含む、請求項1に記載の医薬組成物
R1は、水素原子またはC1〜4アルキル基を表わし、
R2は、(i)水素原子、(ii)C1〜8アルキル基、(iii)フェニル基またはC4〜7シクロアルキル基、(iv)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(v)ベンゼン環またはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(vi)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基を表わし、
R3は、(i)C1〜8アルキル基、(ii)フェニル基またはC4〜7シクロアルキル基、(iii)窒素原子1個を含む4〜7員単環、(iv)ベンゼン環またはC4〜7シクロアルキル基で置換されているC1〜4アルキル基、または(v)窒素原子1個を含む4〜7員単環で置換されているC1〜4アルキル基を表わし、
eは、3〜5の整数を表わし、
fは、1〜3の整数を表わし、
pは、1〜4の整数を表わし、
qは、1または2を表わし、
rは、1〜3の整数を表わす
(ただし、
−(CH2)p−および=CH−(CH2)s−は、環上のaまたはbの位置に結合し、かつ
R2およびR3中の環構造は、1〜3個のC1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基またはトリハロメチル基で置換されていてもよい)。 - 前記プロスタグランジンI2受容体作動薬として、以下の化合物(A)またはその塩を少なくとも含む、請求項1記載の医薬組成物:
(A)下記式(II)
- プロスタグランジンI2受容体作動薬として、以下の化合物(B)〜化合物(E)のいずれか一種またはその塩を少なくとも含む、請求項1記載の医薬組成物:
(B)(±)−(1R,2R,3aS,8bS)−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−1−[(E)−(3S,4RS)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテン−6−イニル]−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩(ベラプロスト)、又はその誘導体であるカルバサイクリン系PGI2誘導体、
(C)[4−[(5,6−ジフェニルピラジニル)(1−メチレチル)アミノ]ブトキシ]−酢酸(MRE−269)、
(D)(2E)‐7‐{(1R,2R,3R)‐3‐ハイドロキシ‐2‐[(1E ,3S ,5S )‐3‐ハイドロキシ‐5‐メチルノン‐1‐エン‐1‐イル]‐5‐オキシシクロペンチル}ヘプト‐2‐エノイック酸(リマプロスト)、オルノプロスチル、エンプロスチル若しくはミソプロストール、又はそれらの誘導体であるPGE誘導体、及び
(E)2−{4−[(5,6−ジフェニルピラジン−2−イル)(プロパン−2−イル)アミノ] ブトキシ}−N-(メタンスルフォニル)アセトアミド(NS−304;セレキシパグ)。 - プロスタグランジンI2受容体作動薬として、ONO−1301、ベラプロスト、リマプロスト及びNS−304からなる群より選択される少なくとも一種を少なくとも含む、請求項1記載の医薬組成物。
- 前記ステルス型リポソームが、プロスタグランジンI2受容体作動薬とリン脂質とを少なくも用いて、バンガム法、水和分散法、逆相蒸発法、エタノール注入法若しくはエタノール希釈法、ホモジナイゼイション法若しくはメカノケミカル法、直接分散法、エクストルーダー法若しくはフレンチプレス法、リモートローディング法、脱水―再水和法、凍結融解法、超音波法、脂質―化合物フィルム法、又はこれらの改良法により得られうる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 前記ステルス型リポソームが、
平均粒子径50〜200nmであり、かつ
プロスタグランジンI2受容体作動薬1重量部に対して、5〜50重量部のリン脂質及び0.05〜5重量部のPEG修飾ホスホエタノールアミンを含有する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。 - 前記ステルス型リポソームが、
プロスタグランジンI2受容体作動薬1重量部に対して、MPEG2000−DSPEを0.05〜5重量部含有し、かつ
プロスタグランジンI2受容体作動薬としてONO−1301、ベラプロスト、リマプロスト及びNS−304からなる群より選択される少なくとも一種を含有し、かつ
3時間〜4週間にわたって前記プロスタグランジンI2受容体作動薬を放出する、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。 - 前記ステルス型リポソームが、
プロスタグランジンI2受容体作動薬と、
リン脂質と、
PEG修飾ホスホエタノールアミンと、
水混和性有機溶媒と
を含み、かつ
ステロール類を含まず、下記工程(1)〜(8)を含む製造方法により得られうるものであり、
(1)プロスタグランジンI2受容体作動薬1mg当たり、リン脂質が5mg以上、かつPEG修飾ホスホエタノールアミンが0.05mg以上となるようにこれらを溶媒に混合する工程、
(2)工程(1)で得られた混合物を加熱し、溶解物を調製する工程、
(3)工程(2)で得られた溶解物を瞬時に凍結する工程、
(4)工程(3)で得られた凍結物を凍結乾燥し溶媒を除去する工程、
(5)工程(4)で得られた凍結乾燥物を加温してリン酸緩衝水溶液に分散する工程、
(6)工程(5)で得られた分散物をエクストルーダーによりサイジングする工程、
(7)工程(6)で得られた分散物を限外濾過することにより未封入物を除去する工程、
(8)工程(7)で得られた分散物に糖類を加えて凍結乾燥する工程、かつ
リポソーム内にリン脂質1.0mgあたり0.001mg以上のプロスタグランジンI2受容体作動薬を含み、
平均粒子径が50〜200nmである、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。 - 静脈内投与用、冠動脈内投与用、吸入用、筋注投与用、皮下投与用、経口投与用、経粘膜投与用及び経皮投与用または臓器用の注射用製剤、経口剤、吸入剤、ネブライザー、軟膏剤、貼付剤またはスプレー剤である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 1回あたりの静脈内投与量がプロスタグランジンI2受容体作動薬として、0.001〜100mgである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 治療対象疾患が、リポソームを含有してなる循環器系疾患、呼吸器系疾患、泌尿器系疾患、消化器系疾患、骨疾患、神経変性疾患、血管系疾患、歯科疾患、眼疾患、皮膚疾患等の炎症性疾患、虚血性臓器障害、糖尿病性合併症、組織線維性疾患、組織変性疾患又は脱毛である、請求項11に記載の医薬組成物。
- 治療対象疾患が、リポソームを含有してなる虚血性及び拡張型心筋症、閉塞性動脈硬化症、血管炎症候群、弁膜症、大動脈弁狭窄症、慢性心不全、拡張不全等の循環器系疾患、肺高血圧症、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器系肺疾患、慢性腎臓病、慢性肝炎、慢性膵炎等の消化器系・泌尿器系疾患、及び脳梗塞慢性期、アルツハイマー病、糖尿病性神経障害、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症等の神経変性疾患である、請求項11に記載の医薬組成物。
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