JP2018069285A - レーザ溶接方法及びレーザ溶接装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】入熱の増大を抑制し、溶加材を使用せずに、ギャップによる影響を低減させたレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置を提供する。【解決手段】ギャップ判定工程により、一対の板材100,200の間のギャップgの大きさが判定される。レーザ照射工程により、一方の板材100における他方の板材200と重ね合わされた面102とは反対側の面101に対して、レーザ50を照射する領域51の中心52の側から外縁53の側に向かう渦巻等を描くように、レーザ50が照射される。レーザ照射工程では、ギャップ判定工程により判定されたギャップgの大きさが大きいほど、渦巻の巻き数が多くされる。これにより、一定の時間に特定の領域51に対してギャップgの大きさに対応した適切な入熱が与えられる。そのため、レーザ溶接において、入熱の増大を抑制し、溶加材を使用せずに、ギャップgによる影響を低減させることができる。【選択図】図1
Description
本発明は、レーザ溶接方法及びレーザ溶接装置に関する。
鋼及びステンレス鋼等の鉄系材料により形成された鉄道車両構体の製造では、アーク溶接に比べて歪みの少ないレーザ溶接の適用が望まれている。ステンレス鋼のレーザ溶接は、熱エネルギーを高密度に集中でき、かつステンレス鋼の持つ熱伝導の悪さが溶接にとって有利に働き、結果として低入熱な溶接を達成している。しかしながら、これら性質は特に薄板の溶接では、被溶接材料間の隙間(ギャップ)によって,溶け落ちや溶け込み不良が発生する欠点となる。経験的には被溶接材料の板厚の10%程度のギャップがレーザ溶接の限界であることが判っている。そのため、鉄道車両構体における屋根構体、側構体、妻構体、床構体及び台枠等の間の接合のようなギャップが大きい場合には、レーザ溶接は適用し難い欠点がある。そのため、特許文献1には、先行するレーザ溶接により高速で細く深い溶け込みを図りながら、その直後をMIG溶接により追随するレーザ・MIGハイブリッド溶接により鉄道車両構体を製造することが開示されている。
ところで、上記のような技術では、ギャップによる影響を低減できるものの、被接合物への入熱が増大し、熱歪みが発生し易くなる欠点がある。また、溶加材が必要となり、コストが増大する欠点もある。そのため、上記のような技術では、レーザ溶接の長所を十分に発揮させることができず、改善が望まれている。
そこで本発明は、入熱の増大を抑制し、溶加材を使用せずに、ギャップによる影響を低減させたレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置を提供することを目的とする。
本発明は、鉄系材料により形成された一対の板材を重ね合せ、一方の板材における他方の板材と重ね合わされた面とは反対側の面にレーザを照射して、一対の板材を互いに溶接するレーザ溶接方法であって、一対の板材の間のギャップの大きさを判定するギャップ判定工程と、ギャップ判定工程により判定されたギャップの大きさに応じて、一方の板材における他方の板材と重ね合わされた面とは反対側の面の領域にレーザを照射するレーザ照射工程とを備え、レーザ照射工程では、一方の板材における他方の板材と重ね合わされた面とは反対側の面に対して、レーザを照射する領域の中心の側から外縁の側に向かう渦巻及びレーザを照射する領域の外縁の側から中心の側に向かう渦巻のいずれかを描くように、レーザを照射し、ギャップ判定工程により判定されたギャップの大きさが大きいほど、渦巻の巻き数を多くするレーザ溶接方法である。
この構成によれば、ギャップ判定工程により、一対の板材の間のギャップの大きさが判定される。また、レーザ照射工程により、一方の板材における他方の板材と重ね合わされた面とは反対側の面に対して、レーザを照射する領域の中心の側から外縁の側に向かう渦巻及びレーザを照射する領域の外縁の側から中心の側に向かう渦巻のいずれかを描くように、レーザが照射される。さらに、レーザ照射工程では、ギャップ判定工程により判定されたギャップの大きさが大きいほど、渦巻の巻き数が多くされる。これにより、一定の時間に特定の領域に対してギャップの大きさに対応した適切な入熱が与えられる。そのため、レーザ溶接において、入熱の増大を抑制し、溶加材を使用せずに、ギャップによる影響を低減させることができる。
この場合、レーザ照射工程では、一方の板材の板厚及びレーザの出力に対して設定されたギャップの大きさの閾値に対して、ギャップ判定工程により判定されたギャップの大きさが閾値以上であるときは、ギャップ判定工程により判定されたギャップの大きさが閾値未満であるときよりも渦巻の前記巻き数を多くすることが好適である。
この構成によれば、レーザ照射工程では、一方の板材の板厚及びレーザの出力に対して設定されたギャップの大きさの閾値に対して、ギャップ判定工程により判定されたギャップの大きさが閾値以上であるときは、ギャップ判定工程により判定されたギャップの大きさが閾値未満であるときよりも渦巻の巻き数が多くされる。これにより、レーザが照射される側の板材の板厚、レーザの出力及びギャップの大きさに対応したより適切な入熱を与えることができる。
また、ギャップ判定工程では、一方の板材に印加され他方の板材で検出された振動の波形及び他方の板材に印加され一方の板材で検出された振動の波形のいずれかの振幅の二乗の積分値に基づいてギャップの大きさを判定することが好適である。
この構成によれば、ギャップ判定工程では、一方の板材に印加され他方の板材で検出された振動の波形及び他方の板材に印加され一方の板材で検出された振動の波形のいずれかの振幅の二乗の積分値に基づいてギャップの大きさが判定される。これにより、製造現場において簡易な方法で短時間にギャップの大きさを判定することができる。
また、本発明は、鉄系材料により形成された一対の板材を重ね合せ、一方の板材における他方の板材と重ね合わされた面とは反対側の面にレーザを照射して、一対の板材を互いに溶接するレーザ溶接装置であって、一対の板材の間のギャップの大きさを判定するギャップ判定部と、ギャップ判定部により判定されたギャップの大きさに応じて、一方の板材における他方の板材と重ね合わされた面とは反対側の面の領域にレーザを照射するレーザ照射部とを備え、レーザ照射部は、一方の板材における他方の板材と重ね合わされた面とは反対側の面に対して、レーザを照射する領域の中心の側から外縁の側に向かう渦巻及びレーザを照射する領域の外縁の側から中心の側に向かう渦巻のいずれかを描くように、レーザを照射し、ギャップ判定部により判定されたギャップの大きさが大きいほど、渦巻の巻き数を多くするレーザ溶接装置である。
この場合、レーザ照射部は、一方の板材の板厚及びレーザの出力に対して設定されたギャップの大きさの閾値に対して、ギャップ判定部により判定されたギャップの大きさが閾値以上であるときは、ギャップ判定部により判定されたギャップの大きさが閾値未満であるときよりも渦巻の巻き数を多くすることが好適である。
また、ギャップ判定部は、板材に振動を印加する振動印加部と、板材の振動を検出する振動検出部とを有し、振動印加部により一方の板材に印加され振動検出部により他方の板材で検出された振動の波形及び振動印加部により他方の板材に印加され振動検出部により一方の板材で検出された振動の波形のいずれかの振幅の二乗の積分値に基づいてギャップの大きさを判定することが好適である。
本発明のレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置によれば、レーザ溶接において、入熱の増大を抑制し、溶加材を使用せずに、ギャップによる影響を低減させることができる。
以下、本発明の実施形態に係るレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置について、図面を用いて詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態のレーザ溶接方法では、鉄道車両構体に用いられる鋼及びステンレス鋼等の鉄系材料により形成された板材100,200をレーザ溶接により接合する。板材100は面101及び面102を有し、板材200は面201及び面202を有する。本実施形態のレーザ溶接装置1は、鉄系材料により形成された一対の板材100,200を重ね合せ、一方の板材100における他方の板材200と重ね合わされた面102とは反対側の面101にレーザ50を照射して、一対の板材100,200を互いに溶接する。レーザ溶接装置1は、ギャップ判定部10とレーザ照射部20とを備える。
ギャップ判定部10は、一対の板材100,200の間のギャップ(隙間)の大きさを判定する。ギャップ判定部10は、板材100に振動を印加する振動印加部11と、板材200の振動を検出する振動検出部12とを有する。振動印加部11は、パルス信号を発生するパルス信号発生器13と、パルス信号発生器13から送出されたパルス信号による振動を板材100の面101に印加するプローブ14とを含む。振動検出部12は、板材100から板材200を伝搬したAE(AcousticEmission)波等の振動を検出するAEセンサ15と、AEセンサ15により送出された信号を増幅するアンプ16とを含む。
AE波は、材料が変形あるいは破壊する際に内部に蓄えていた弾性エネルギーが放出されることによる振動である。AEセンサ15は、材料の状態を検査するためにAE波を検出するセンサであり、本実施形態のレーザ溶接装置1に適用することができる。AEセンサ15は、振動センサでもよい。
図2に示すように、プローブ14はレーザ50が照射される板材100の面101に振動を印加し、AEセンサ15はレーザ50が照射される板材100が重ね合わされた板材200の面201に伝搬した振動を検出する。なお、プローブ14はレーザ50が照射される板材100が重ね合わされた板材200に振動を印加してもよく、AEセンサ15はレーザ50が照射される板材100に伝搬した振動を検出してもよい。また、プローブ14は面101及び面102のいずれに振動を印加してもよく、AEセンサ15は面201及び面202のいずれに伝搬した振動を検出してもよい。また、プローブ14は面201及び面202のいずれに振動を印加してもよく、AEセンサ15は面101及び面102のいずれに伝搬した振動を検出してもよい。
図1に戻り、ギャップ判定部10は、アンプ16により増幅されたアナログ信号をデジタル信号の数値データに変換するA/D変換器17と、A/D変換器17からのデジタル信号による数値データに基づいて、ギャップの大きさを判定する演算部18とを有する。ギャップ判定部10の演算部18は、振動印加部11により一方の板材100に印加され振動検出部12により他方の板材200で検出された振動の波形及び振動印加部11により他方の板材200に印加され振動検出部12により一方の板材100で検出された振動の波形のいずれかの振幅の二乗の積分値(累積二乗和)に基づいてギャップの大きさを判定する。演算部18は、1波形分のデータを切り取り、収束値である累積二乗和を算出する。累積二乗和は、ギャップの大きさを反映した値であり、ギャップの大きさが大きいほど減少する。
つまり、ギャップの大きさは、0.2[mm]等の長さや、板材100,200の板厚に対して10%[%]等の割合だけではなく、1.523等の振動の波形の累積二乗和の数値データとして判定されてもよい。振動の波形の累積二乗和の数値データがどの程度のギャップの大きさに相当するかは、予め測定試験等を行うことにより決定することができる。
レーザ照射部20は、ギャップ判定部10により判定されたギャップの大きさに応じて、一方の板材100における他方の板材200と重ね合わされた面102とは反対側の面101の領域51にレーザ50を照射する。レーザ照射部20は、レーザ50の照射を制御する制御部21と、制御部21からの制御信号に従ってレーザ50によるリモートレーザ溶接を行うレーザ溶接ヘッド22とを有する。なお、ギャップ判定部10の演算部18とレーザ照射部20の制御部21とは、パーソナルコンピュータ(Personal Computer、PC)やプログラマブルロジックコントローラ(Programmable LogicController、PLC)により構成されていてもよい。
後述するように、レーザ照射部20は、一方の板材100における他方の板材200と重ね合わされた面102とは反対側の面101に対して、レーザ50を照射する領域51の中心の側から外縁の側に向かう渦巻及びレーザ50を照射する領域51の外縁の側から中心の側に向かう渦巻のいずれかを描くように、レーザ50を照射する。また、レーザ照射部20は、ギャップ判定部10により判定されたギャップの大きさが大きいほど、渦巻の巻き数を多くする。
以下、本実施形態のレーザ溶接方法について説明する。以下の説明では、一対の板材100,200の板厚が互いに等しい場合について説明する。図3に示すように、レーザ溶接装置1のギャップ判定部10により、一対の板材100,200の間のギャップの大きさを判定するギャップ判定工程が行われる(S1)。ギャップ判定工程では、振動印加部11により一方の板材100に印加され振動検出部12により他方の板材200で検出された振動の波形及び振動印加部11により他方の板材200に印加され振動検出部12により一方の板材100で検出された振動の波形のいずれかの振幅の二乗の積分値に基づいてギャップの大きさが判定される。
レーザ溶接装置1のレーザ照射部20により、ギャップ判定工程により判定されたギャップの大きさに応じて、一方の板材100における他方の板材200と重ね合わされた面102とは反対側の面101の領域51にレーザ50を照射するレーザ照射工程が行われる(S2)。図4(A)に示すように、レーザ照射部20により、レーザ照射工程では、一方の板材100における他方の板材200と重ね合わされた面102とは反対側の面101に対して、レーザ50を照射する領域51の中心52の側から外縁53の側に向かう渦巻の軌跡54を描くようにレーザ50が照射される。なお、レーザ照射工程では、レーザ50を照射する領域51の外縁53の側から中心52の側に向かう渦巻の軌跡54を描くようにレーザ50が照射されてもよい。
レーザ照射部20により、レーザ照射工程では、ギャップ判定工程により判定されたギャップの大きさが大きいほど、渦巻の巻き数が多くされる。図4(B)に示すように、板材100の面102と板材200の面201とのギャップgの大きさが大きい場合がある。この場合に、単に領域51の外縁53を一周するようにレーザ50を照射すると、レーザ50による板材100の面101からの入熱が板材200に十分に伝達される前に板材100の溶融金属が冷え固まり、板材100の外縁53のみが穴が開いたように板材200に溶け落ちる溶け落ちや、未接合部が生じることがある。一方、ギャップgの大きさに応じて渦巻の巻き数が多くされることにより、図4(B)に示すように溶融金属300が領域51のほぼ全体に亘って板材100と板材200との間に架橋するため、溶け落ちや未接合部を防ぐことができる。
図5に示すように、レーザ照射部20により、レーザ照射工程では、一方の板材100の板厚及びレーザの出力に対して設定されたギャップgの大きさの閾値に対して、ギャップ判定工程により判定されたギャップgの大きさが閾値以上であるときは、ギャップ判定工程により判定されたギャップgの大きさが閾値未満であるときよりも渦巻の巻き数が多くされる。同じ板材100の板厚に対して複数の段階の閾値が設定され、複数の段階で渦巻の巻き数が変更されてもよい。以下、板厚が2.0[mm]のSUS301L‐HT材(日本工業規格)の板材100,200に対して、3.7[kW]のレーザ50によりレーザ溶接が行われる場合の例について説明する。ギャップ判定工程により判定されたギャップgの大きさが互いに板厚が等しい一対の板材100,200の板厚の10%未満のときは(S21)、レーザ50を照射する領域51の外縁53を一周するようにレーザ50が照射される(S22)。ギャップgの大きさが板厚の10%未満であるか否かは、例えば、ギャップ判定工程により判定された累積二乗和が予め設定された閾値A以上である場合にギャップgの大きさが板厚の10%未満であると判定し、レーザ50を照射する領域51の外縁53を一周するようにレーザ50を照射することができる。領域51の外縁53を一周するようにレーザ50が照射された場合の領域51は、図6に示すようになる。
図5に示すように、レーザ照射部20により、ギャップ判定工程により判定されたギャップgの大きさが互いに板厚が等しい一対の板材100,200の板厚の10%以上25%未満のときは(S21,S23)、渦巻の巻き数が3にされる(S24)。ギャップgの大きさが板厚の25%未満であるか否かは、例えば、ギャップ判定工程により判定された累積二乗和が閾値Aよりも小さい予め設定された閾値B以上である場合にギャップgの大きさが板厚の25%未満であると判定し、渦巻の巻き数を3にすることができる。渦巻の巻き数が3の場合のレーザ50が照射された領域51は、図6に示すようになる。
図5に示すように、レーザ照射部20により、ギャップ判定工程により判定されたギャップgの大きさが互いに板厚が等しい一対の板材100,200の板厚の25%以上50%未満のときは(S23,S25)、渦巻の巻き数が6にされる(S26)。ギャップgの大きさが板厚の50%未満であるか否かは、例えば、ギャップ判定工程により判定された累積二乗和が閾値Bよりも小さい予め設定された閾値C以上である場合にギャップgの大きさが板厚の50%未満であると判定し、渦巻の巻き数を6にすることができる。渦巻の巻き数が6の場合のレーザ50が照射された領域51は、図6に示すようになる。なお、渦巻の巻き数の多少に関わらず、レーザ50を照射する領域51の外縁53を一周するようにレーザ50が照射されてもよい。これにより、領域51の強度を向上させることができる。
図5に示すように、レーザ照射部20により、ギャップ判定工程により判定されたギャップgの大きさが互いに板厚が等しい一対の板材100,200の板厚の50%以上のときは(S25)、溶接施工不可とされ(S27)、レーザ溶接は中止される。ギャップgの大きさが板厚の50%以上であるか否かは、例えば、ギャップ判定工程により判定された累積二乗和が閾値C未満である場合にギャップgの大きさが板厚の50%以上であると判定し、レーザ溶接を中止することができる。レーザ溶接が中止された場合は、治具等により固定された板材100,200の固定の状態の変更や、板材100,200の形状の修正等が行われた後に、図3及び図5に示したギャップ判定工程及びレーザ溶接工程が行われる。
以下、本実施形態のレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置を鉄道車両構体の製造に適用した例について説明する。図7に示すように、従来の鉄道車両構体においては、客室内から視て、鉄道車両の上部を形成する屋根構体401と、鉄道車両の側面部を形成する側構体402に取付けられた側柱403とが、ガセット404を介して抵抗スポット溶接等により接合されている。
ガセット404は、その上端部に屋根構体401と接合される上部ベースプレート405を含み、その下端部に側柱403と接合される下部ベースプレート406を含む。上部ベースプレート405と屋根構体401との接合の際には、抵抗スポット溶接機のCタイプの溶接ガンが届かない。そのため、上部ベースプレート405には、予め栓溶接用孔407が削孔され、屋根構体401と当接させた上部ベースプレート405の栓溶接用孔407の内周を重ね隅肉溶接によって接合する栓溶接が行われている。側構体402の出入り口の下部も同様の栓溶接が行われる箇所が有る。
本実施形態では、これらの栓溶接をレーザ溶接に切り替えるため、ガセット404の形状を以下のように改変する。図8(A)に示すガセット404の上部ベースプレート405の栓溶接用孔407を図8(B)に示すように廃止する。図8(C)及び図9に示すように、上部ベースプレート405の両方の側端部を延長して折り曲げリブ408として上部ベースプレート405の剛性を高める。これにより、ギャップgの発生やレーザ溶接の際の熱歪みによる変形を防止することができる。図9に示すように、本実施形態では、上記のように改変したガセット404が、上部ベースプレート405及び下部ベースプレート406の領域51において、上記説明したようにレーザ溶接により屋根構体401及び側柱403に直接に接合される。
本実施形態では、側構体402の出入り口の下部で側構体402と台枠との接合が行われるが、従来は当該部位にも栓溶接が行われる箇所がある。上述した屋根構体401と側構体402との接合と同様に、栓溶接用孔が廃止され、直接にレーザ溶接が行われる。当該部位には、必ずギャップgが存在するため、ギャップgの大きさに応じて渦巻の巻き数が変更される。
本実施形態では、ギャップ判定工程により、一対の板材100,200の間のギャップgの大きさが判定される。また、レーザ照射工程により、一方の板材100における他方の板材200と重ね合わされた面102とは反対側の面101に対して、レーザ50を照射する領域51の中心52の側から外縁53の側に向かう渦巻及びレーザ50を照射する領域51の外縁53の側から中心52の側に向かう渦巻のいずれかを描くように、レーザ50が照射される。さらに、レーザ照射工程では、ギャップ判定工程により判定されたギャップgの大きさが大きいほど、渦巻の巻き数が多くされる。これにより、一定の時間に特定の領域51に対してギャップgの大きさに対応した適切な入熱が与えられる。そのため、レーザ溶接において、入熱の増大を抑制し、溶加材を使用せずに、ギャップgによる影響を低減させることができる。
また、本実施形態によれば、レーザ照射工程では、一方の板材100の板厚及びレーザ50の出力に対して設定されたギャップgの大きさの閾値に対して、ギャップ判定工程により判定されたギャップgの大きさが閾値以上であるときは、ギャップ判定工程により判定されたギャップgの大きさが閾値未満であるときよりも渦巻の巻き数が多くされる。これにより、レーザ50が照射される側の板材100の板厚、レーザ50の出力及びギャップgの大きさに対応したより適切な入熱を与えることができる。
また、本実施形態によれば、ギャップ判定工程では、一方の板材100に印加され他方の板材200で検出された振動の波形及び他方の板材200に印加され一方の板材100で検出された振動の波形のいずれかの振幅の二乗の積分値に基づいてギャップgの大きさが判定される。これにより、製造現場において簡易な方法で短時間にギャップの大きさを判定することができる。特に、ギャップの部位が隠れており、直接の測定が不可能である場合に本実施形態は有効である。
また、本実施形態よれば、アーク溶接によって施工されていた鉄道車両構体の製造における接合がレーザ溶接に代わることで、全体の入熱を下げ、鉄道車両構体の組み立て後の歪みに対する修正工数の低減が見込める。また、アーク溶接は作業者の技量に依存しているが、レーザ溶接による自動化によって溶接品質の平準化が見込める。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、レーザ溶接装置1のギャップ判定部10によるギャップ判定工程では、レーザ変位計等によりギャップの大きさが判定されてもよい。
(実験例)
以下、本発明の実験例について説明する。図1に示したレーザ溶接装置により、板厚が2.0[mm]のSUS301L‐HT材(日本工業規格)の板材100,200のレーザ溶接を行った。レーザ50の出力は3.7[kW]とした。レーザ50を照射する領域51の外縁53を一周する溶接条件選択の閾値A=5.0、巻き数3とする溶接条件選択の閾値B=1.0及び巻き数6とする溶接条件選択の閾値C=0.1に設定した。AEセンサ15による生波形、演算部18により算出された累積二乗和、累積二乗和の判定値(収束値)、制御部21により決定された巻き数等は、図10に示すようになった。
以下、本発明の実験例について説明する。図1に示したレーザ溶接装置により、板厚が2.0[mm]のSUS301L‐HT材(日本工業規格)の板材100,200のレーザ溶接を行った。レーザ50の出力は3.7[kW]とした。レーザ50を照射する領域51の外縁53を一周する溶接条件選択の閾値A=5.0、巻き数3とする溶接条件選択の閾値B=1.0及び巻き数6とする溶接条件選択の閾値C=0.1に設定した。AEセンサ15による生波形、演算部18により算出された累積二乗和、累積二乗和の判定値(収束値)、制御部21により決定された巻き数等は、図10に示すようになった。
図11に示すように、板材100と板材200とが密着している場合と、板材100と板材200とのギャップgが板厚2.0[mm]の25[%]である場合とについて(ギャップgが0.5[mm])、渦巻の巻き数及び溶接径(領域51の外縁53の径)を変更しつつ、レーザ溶接された継手の破断荷重を測定した。図11に示すように、いずれの場合も、板材100と板材200とが密着している場合と、板材100と板材200とのギャップgが板厚2.0[mm]の25[%]である場合とで同等の破断荷重が得られた。
1…レーザ溶接装置、10…ギャップ判定部、11…振動印加部、12…振動検出部、13…パルス信号発生器、14…プローブ、15…AEセンサ、16…アンプ、17…A/D変換器、18…演算部、20…レーザ照射部、21…制御部、22…レーザ溶接ヘッド、50…レーザ、51…領域、52…中心、53…外縁、54…軌跡、100…板材、101,102…面、200…板材、201,202…面、300…溶融金属、401…屋根構体、402…側構体、403…側柱、404…ガセット、405…上部ベースプレート、406…下部ベースプレート、407…栓溶接用孔、408…リブ、g…ギャップ。
Claims (6)
- 鉄系材料により形成された一対の板材を重ね合せ、一方の前記板材における他方の前記板材と重ね合わされた面とは反対側の面にレーザを照射して、一対の前記板材を互いに溶接するレーザ溶接方法であって、
一対の前記板材の間のギャップの大きさを判定するギャップ判定工程と、
前記ギャップ判定工程により判定された前記ギャップの大きさに応じて、一方の前記板材における他方の前記板材と重ね合わされた面とは反対側の面の領域に前記レーザを照射するレーザ照射工程と、
を備え、
前記レーザ照射工程では、
一方の前記板材における他方の前記板材と重ね合わされた面とは反対側の面に対して、前記レーザを照射する前記領域の中心の側から外縁の側に向かう渦巻及び前記レーザを照射する前記領域の外縁の側から中心の側に向かう渦巻のいずれかを描くように、前記レーザを照射し、
前記ギャップ判定工程により判定された前記ギャップの大きさが大きいほど、前記渦巻の巻き数を多くする、レーザ溶接方法。 - 前記レーザ照射工程では、
一方の前記板材の板厚及び前記レーザの出力に対して設定された前記ギャップの大きさの閾値に対して、前記ギャップ判定工程により判定された前記ギャップの大きさが前記閾値以上であるときは、前記ギャップ判定工程により判定された前記ギャップの大きさが前記閾値未満であるときよりも前記渦巻の前記巻き数を多くする、請求項1に記載のレーザ溶接方法。 - 前記ギャップ判定工程では、一方の前記板材に印加され他方の前記板材で検出された振動の波形及び他方の前記板材に印加され一方の前記板材で検出された振動の波形のいずれかの振幅の二乗の積分値に基づいて前記ギャップの大きさを判定する、請求項1又は2に記載のレーザ溶接方法。
- 鉄系材料により形成された一対の板材を重ね合せ、一方の前記板材における他方の前記板材と重ね合わされた面とは反対側の面にレーザを照射して、一対の前記板材を互いに溶接するレーザ溶接装置であって、
一対の前記板材の間のギャップの大きさを判定するギャップ判定部と、
前記ギャップ判定部により判定された前記ギャップの大きさに応じて、一方の前記板材における他方の前記板材と重ね合わされた面とは反対側の面の領域に前記レーザを照射するレーザ照射部と、
を備え、
前記レーザ照射部は、
一方の前記板材における他方の前記板材と重ね合わされた面とは反対側の面に対して、前記レーザを照射する前記領域の中心の側から外縁の側に向かう渦巻及び前記レーザを照射する前記領域の外縁の側から中心の側に向かう渦巻のいずれかを描くように、前記レーザを照射し、
前記ギャップ判定部により判定された前記ギャップの大きさが大きいほど、前記渦巻の巻き数を多くする、レーザ溶接装置。 - 前記レーザ照射部は、
一方の前記板材の板厚及び前記レーザの出力に対して設定された前記ギャップの大きさの閾値に対して、前記ギャップ判定部により判定された前記ギャップの大きさが前記閾値以上であるときは、前記ギャップ判定部により判定された前記ギャップの大きさが前記閾値未満であるときよりも前記渦巻の前記巻き数を多くする、請求項4に記載のレーザ溶接装置。 - 前記ギャップ判定部は、
前記板材に振動を印加する振動印加部と、
前記板材の振動を検出する振動検出部と、
を有し、
前記振動印加部により一方の前記板材に印加され前記振動検出部により他方の前記板材で検出された振動の波形及び前記振動印加部により他方の前記板材に印加され前記振動検出部により一方の前記板材で検出された振動の波形のいずれかの振幅の二乗の積分値に基づいて前記ギャップの大きさを判定する、請求項4又は5に記載のレーザ溶接装置。
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KR20210146536A (ko) * | 2020-05-27 | 2021-12-06 | 최지훈 | 칩 리워크 장치 |
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JP2009148781A (ja) * | 2007-12-19 | 2009-07-09 | Mazda Motor Corp | レーザ溶接方法 |
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- 2016-10-28 JP JP2016211502A patent/JP2018069285A/ja active Pending
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