以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。断面図における点模様部分はその表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としての接着剤を示しており、ホットメルト接着剤のベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)などにより、あるいは弾性部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性部材の外周面への塗布により形成されるものである。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
図1〜図13は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。本パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する前側外装体12F及び後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する後側外装体12Bと、前側外装体12Fから股間部を経て後側外装体12Bまで延在するように外装体12F,12Bの内側に設けられた内装体200とを備えており、前側外装体12Fの両側部と後側外装体12Bの両側部とが接合されてサイドシール部12Aが形成されることにより、外装体12F,12Bの前後端部により形成される開口が装着者の胴を通すウエスト開口WOとなり、内装体200の幅方向両側において外装体12F,12Bの下縁及び内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口LOとなる。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは着用者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。また、符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口WOの縁から後身頃Bのウエスト開口WOの縁までの前後方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
本形態のパンツタイプ使い捨ておむつは、サイドシール部12Aを有する前後方向範囲(ウエスト開口WOから脚開口LOの上端に至る前後方向範囲)として定まる胴周り領域Tと、脚開口LOを形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール部12Aを有する前後方向領域と後身頃Bのサイドシール部12Aを有する前後方向領域との間)として定まる中間領域Lとを有する。胴周り領域Tは、概念的にウエスト開口の縁部を形成する「ウエスト部」Wと、これよりも下側の部分である「ウエスト下方部」Uとに分けることができる。通常、胴周り領域T内に幅方向WDの伸縮応力が変化する境界(例えば弾性部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口WO側の境界よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなる。これらの前後方向長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト部Wは15〜40mm、ウエスト下方部Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間領域Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うようにコ字状又は曲線状に括れており、ここが装着者の脚を入れる部位となる。この結果、展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつは、全体として略砂時計形状をなしている。
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3〜図5に示されるように、身体側となるトップシート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものであり、吸収機能を担う本体部である。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側部から装着者の脚周りに接するように延び出た側部ギャザー60を示している。
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
トップシート30の両側部は、吸収要素50の側縁で裏側に折り返しても良く、また折り返さずに吸収要素50の側縁より側方にはみ出させても良い。
トップシート30は、裏側部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示形態では、トップシート30はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により中間シート40の表面及び包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高め、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止するためのものである。中間シート40は省略することもできる。
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
中間シート40は、裏側部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示形態では、中間シート40はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不液透過性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができるが、後述するカバー不織布13とのホットメルト接着剤を介した接着時に十分な接着強度を得るため、樹脂フィルムを用いるのが望ましい。
液不透過性シート11は、図示のように吸収要素50の裏側に収まる幅とする他、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回り込ませて吸収要素50のトップシート30側面の両側部まで延在させることもできる。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
また、液不透過性シート11の内側、特に吸収体56側面に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータを設けることができる。
(側部ギャザー)
側部ギャザー60は、内装体200の両側部に沿って前後方向LDの全体にわたり延在し、装着者の脚周りに接して横漏れを防止するために設けられているものであり、一般に立体ギャザーと呼ばれるものや、平面ギャザーと呼ばれるものがこれに含まれる。
図1、図3及び図4に示される第1の形態の側部ギャザー60はいわゆる立体ギャザーであり、内装体200の側部から表側に起立するものである。この側部ギャザー60は、付け根側部分60Bが幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側部分60Aが幅方向外側に向かって斜めに起立するものであるが、これに限定されるものではなく、後述する第2の形態のように、全体として幅方向中央側に起立する形態等、適宜の変更が可能である。
より詳細に説明すると、第1の形態の側部ギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザー不織布62を、先端となる部分で幅方向WDに折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状のギャザー弾性部材63を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向WDに間隔を空けて複数本固定してなるものである。側部ギャザー60のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向WDにおいてシート折り返し部分と反対側の端部)は、内装体200における液不透過性シート11より裏側の側部に固定された付根部分65とされ、この付根部分65以外の部分は付根部分65から延び出る本体部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、本体部分66は、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され、幅方向外側に延びる先端側部分60Aとを有している。この形態は面接触タイプの側部ギャザー60であるが、幅方向外側に折り返されない線接触タイプの側部ギャザー60も採用することができる。そして、本体部分66のうち前後方向両端部が倒伏状態でトップシート30の側部表面に対して固定された倒伏部分67とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の自由部分68とされ、この自由部分68の少なくとも先端部に前後方向LDに沿うギャザー弾性部材63が伸長状態で固定されている。なお、ギャザー弾性部材63は、側部ギャザー60の前後端部ではギャザー不織布62に対して非固定とされるが、少なくとも先端部においては倒伏部分67の股間側縁と同じ位置又はそれよりもウエスト寄りの位置まで固定されていると、立体的な起立が安定するため、好ましい。
以上のように構成された第1の形態の側部ギャザー60では、細長状弾性部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、本体部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分68とされているため、自由部分68のみが図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、付根部分65が内装体200の裏側に位置していると、股間部及びその近傍において自由部分68が幅方向外側に開くように起立するため、側部ギャザー60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
本第1の形態の側部ギャザー60のように、本体部分66が、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され幅方向外側に延びる先端側部分60Aとからなる屈曲形態では、倒伏部分67で、先端側部分60Aと付け根側部分60Bとが倒伏状態で接合されるとともに、付け根側部分60Bが倒伏状態でトップシート30に接合される。倒伏部分67における対向面の接合には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。この場合において、付け根側部分60B及びトップシート30の接合と、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合とを同じ手段により行っても、また異なる手段により行っても良い。例えば、付け根側部分60B及びトップシート30の接合をホットメルト接着剤により行い、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合を素材溶着により行うのは一つの好ましい形態である。
特に、前側外装体12Fと後側外装体12Bとが前後方向LDに離間する外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、図10に示すように、前側の倒伏部分67の後側に連続又は隣接して、付け根側部分60Bが倒伏状態でトップシート30に接合され、かつ先端側部分60Aと付け根側部分60Bとが接合されない前側半倒伏部分68Fが設けられているのが好ましい。前側半倒伏部分68Fでは、先端側部分60Aのみが自由であり、高さは低いものの細長状弾性部材63の収縮によってトップシート30に対して先端部が確実に立ち上がるため、隙間のできやすい鼠径部に対しても側部ギャザー60のフィット性が良好となるとともに、高さが低いことによりフィット位置が安定するため、内装体200が左右に動いても側部ギャザー60のフィット位置が大きくぶれることがない。また、この場合、前側半倒伏部分68Fは前側外装体12Fの後縁と同じか、又はそれより前後方向中央側に延びていると(すなわち、前側半倒伏部分68Fが前側外装体12Fと内装体200の交差位置を含むようになっていると)、内装体200の左右の動きに対する安定性と、鼠径部に対する側部ギャザー60のフィット性とがともに良好となるため好ましい。通常の場合、前側の倒伏部分67の前後方向長さは内装体200の前後方向長さの0.10〜0.25倍程度で、これに前側半倒伏部分68Fの前後方向長さを足した寸法は、内装体200の前後方向長さの0.15〜0.30倍程度とすることが好ましい。なお、図10中の符号AFは、先端側部分60A及び付け根側部分60Bを接合するホットメルト接着剤を示し、符号BFは、付け根側部分60B及びトップシート30を接合するホットメルト接着剤を示している。
また、図11に示すように、後側の倒伏部分67の前側に連続又は隣接して、先端側部分60Aが倒伏状態で付け根側部分60Bに接合され、かつ付け根側部分60Bとトップシート30とが接合されない後側半倒伏部分68Bが設けられていると、付け根側部分60Bのみが自由で先端側部分60Aは固定されていること、並びに側部ギャザー60の高さが段階的に高くなり、後側半倒伏部分68Bのフィット位置が安定しやすくなるため、内装体200が左右に動いても側部ギャザー60のフィット位置が大きくぶれないことによって、立体ギャザーの先端側部分60Aが臀裂に向かう傾斜によって反対向きに倒れにくくなるため好ましい。後側半倒伏部分68Bはお尻の膨らんでいる部分に当接するため、先端側部分60Aが固定されていても、体との間に隙間が生じる心配もない。また、この場合、後側半倒伏部分68Bは後側外装体12Bの前縁と同じか、又はより前後方向中央側に延びていると(すなわち、後側半倒伏部分68Bが後側外装体12Bと内装体200の交差位置を含むようになっていると)、内装体200の左右の動きに対しても安定的に内装体200の臀裂への食い込みを防止できるため好ましい。さらに、この場合、後側半倒伏部分68Bの前後方向長さは、後側の倒伏部分67の前後方向長さよりも長いことが好ましく、通常の場合、後側の倒伏部分67の前後方向長さは内装体200の前後方向長さの0.15〜0.30倍程度で、これに後側半倒伏部分68Bの前後方向長さを足した寸法は、内装体200の前後方向長さの0.20〜0.35倍程度とすることが好ましい。なお、図11中の符号AFは、先端側部分60A及び付け根側部分60Bを接合するホットメルト接着剤を示し、符号BFは、付け根側部分60B及びトップシート30を接合するホットメルト接着剤を示している。
ギャザー不織布62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。なお、用語「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。また、図示のように、二つに折り重ねたギャザー不織布62の間に防水フィルム64を介在させることもでき、この場合には防水フィルム64の存在部分においてギャザー不織布62を部分的に省略することもできるが、製品の外観及び肌触りを布のようにするためには、図示形態のように、少なくとも側部ギャザー60の基端から先端までの外面がギャザー不織布62で形成されていることが必要である。
側部ギャザー60の自由部分に設けられる細長状弾性部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性部材63を配置しても良い。
側部ギャザー60の自由部分68では、ギャザー不織布62の内側層及び外側層の貼り合わせや、その間に挟まれるギャザー弾性部材63の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。ギャザー不織布62の内側層及び外側層の全面を貼り合わせると柔軟性を損ねるため、ギャザー弾性部材63の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示形態では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりギャザー弾性部材63の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布してギャザー不織布62の内側層及び外側層間に挟むことにより、当該ギャザー弾性部材63の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、ギャザー不織布62の内側層及び外側層への細長状弾性部材の固定と、ギャザー不織布62の内側層及び外側層間の固定とを行う構造となっている。
同様に、側部ギャザー60に組み込まれる防水フィルム64とギャザー不織布62との固定や、倒伏部分67の固定についても、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。
第1の形態の側部ギャザー60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用途の場合は、例えば図3に示すように、側部ギャザー60の起立高さ(展開状態における本体部分66の幅方向長さ)W2は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、側部ギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W1は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。大人用途の場合、側部ギャザー60の起立高さ(展開状態における本体部分66の幅方向長さ)W2は20〜60mm、特に30〜55mmであるのが好ましい。また、側部ギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W1は110〜190mm、特に120〜150mmであるのが好ましい。
第1の形態の側部ギャザー60は、立体ギャザーのみを含むものとなっているが、立体ギャザー及び平面ギャザーの両方を含むものとしたり、平面ギャザーのみを含むものとしたりすることもできる。図12及び図13は、立体ギャザー及び平面ギャザーの両方を含む、第2の形態の側部ギャザー60を示している。各側部ギャザー60は、内装体200における液不透過性シート11より裏側の側部に固定された付根部分65から、内装体200の側方に突出する第1の部分61(平面ギャザー部分)と、内装体200におけるトップシート30の両側部に固定された付根部分65から、内装体200の表側に突出する第2の部分69(立体ギャザー部分)と有するものである。より詳細には、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザー不織布62が、付根部分65から側方に延び出て第1の部分61の先端で表側に折り返され、この表側に折り返された部分が第1の部分61を経て第2の部分69に至り、第2の部分69の先端で折り返されている。ギャザー不織布62における折り重なる部分は、対向部分がホットメルト接着剤等により接合される。また、第2の部分69の前後方向両端部は、倒伏状態でトップシート30の側部表面に対して固定された倒伏部分67とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の自由部分68とされる。第1の部分61の少なくとも前後方向中間部、及び第2の部分69の自由部分68には、前後方向LDに沿うギャザー弾性部材63が一本又は幅方向WDに間隔を空けて複数本伸長状態で固定されており、その収縮力により第2の部分69の自由部分68が前後方向LDに収縮して脚周りに接する立体ギャザーとなり、また第1の部分61が前後方向LDに収縮して脚周りに接する平面ギャザーとなる。
第2の形態の側部ギャザー60における立体ギャザーは、全体として幅方向中央側に起立する形態となっているが、これに限定されるものではなく、第1の形態の側部ギャザー60のように屈曲形態とするものとする等、適宜の変更が可能である。第2の形態に関する他の点、例えばギャザー不織布62の素材や、ギャザー弾性部材63の素材等は、第1の形態と同様であるため説明を省略する。
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
吸収体56は長方形形状でも良いが、図1及び図7等にも示すように、前後方向中間に、その前後両側よりも幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状をなしていると、吸収体56自体と側部ギャザー60の、脚周りへのフィット性が向上するため好ましい。
また、吸収体56の寸法は排尿口位置の前後左右にわたる限り適宜定めることができるが、前後方向LD及び幅方向WDにおいて、内装体200の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の全幅を示している。
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の使い捨ておむつに使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。例えば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合する形態が好ましい。
(外装体)
外装体12F,12Bは、図23及び図24に示すような、前身頃Fから後身頃Bにかけて股間を通り連続する一体的な外装体12ではなく、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する部分である前側外装体12Fと、後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する部分である後側外装体12Bとからなり、前側外装体12F及び後側外装体12Bは股間側で連続しておらず、前後方向LDに離間されたものである。この離間距離12dは例えば150〜250mm程度とすることができる。
外装体12F,12Bは、胴周り領域Tと対応する前後方向範囲である胴周り部を有する。また、本形態では、前側外装体12Fよりも後側外装体12Bの方が前後方向寸法が長くなっており、前側外装体12Fには中間領域Lと対応する部分を有していないが、後側外装体12Bは胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た臀部カバー部Cを有している。図示しないが、前側外装体12Fにも胴周り領域Tから中間領域L側に延び出る鼠蹊カバー部を設けたり、鼠径カバー部は設けるものの臀部カバー部は設けない形態としたり、前側外装体12F及び後側外装体12Bの両方に中間領域Lと対応する部分を設けなくても良い。また、図示形態では、臀部カバー部Cの下縁は、前側外装体12Fの下縁と同様、幅方向WDに沿う直線状に形成しているが、幅方向外側に向かうにつれてウエスト開口側に位置するようになる曲線とすることもできる。
臀部カバー部Cの側縁の前後方向寸法は適宜定めればよいが、長すぎると、側縁の脚開口LO側の角がひらひらして外観及び装着感が悪化するおそれがあるため20mm以下であると好ましい。
外装体12F,12Bは、図4及び図5に示されるように、後述する弾性部材15〜19の外側及び内側にそれぞれ位置する外側シート層12S及び内側シート層12Hがホットメルト接着剤や溶着等の接合手段により接合されたものである。外側シート層12Sを形成するシート材及び内側シート層12Hを形成するシート材は、共通の一枚のシート材とする他、個別のシート材とすることもできる。すなわち、前者の場合、外装体の一部又は全部において、ウエスト開口WOの縁(股間側の縁としても良い)で折り返された一枚のシート材の内側の部分及び外側の部分により内側シート層12H及び外側シート層12Sがそれぞれ形成される。なお、前者の形態では、シート材の資材数が少ないという利点があり、後者の形態では内側シート層12H及び外側シート層12Sを貼り合わせる際に位置ずれしにくいという利点がある。図示形態は後者に相当するものであり、内側シート層12Hを形成するシート材はウエスト開口WOの縁までしか延在していないが、外側シート層12Sを形成するシート材は、内側シート層12Hのシート材のウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在されている。
外側シート層12S及び内側シート層12Hに用いるシート材としては、特に限定無く使用できるが不織布が好ましく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などからなる不織布を使用することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。
また、外装体12F,12Bの総目付けは20〜60g/m2程度であるのが好ましい。
(伸縮領域・非伸縮領域)
外装体12F,12Bには、装着者の胴周りに対するフィット性を高めるために、外側シート層12S及び内側シート層12H間に弾性部材15〜19が設けられ、弾性部材の伸縮を伴って幅方向WDに弾性伸縮する伸縮領域A2が形成されている。この伸縮領域A2では、自然長の状態では外側シート層12S及び内側シート層12Hが弾性部材の収縮に伴って収縮し、皺又は襞が形成されており、弾性部材の長手方向に伸長すると、外側シート層12S及び内側シート層12Hが皺なく伸び切る所定の伸長率まで伸長が可能である。弾性部材15〜19としては、糸ゴム等の細長状弾性部材(図示例)のほか、帯状、網状、フィルム状等、公知の弾性部材を特に限定なく用いることができる。弾性部材15〜19としては合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
外装体12F,12Bにおける外側シート層12S及び内側シート層12Hの貼り合わせや、その間に挟まれる弾性部材15〜19の固定には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。外装体12F,12B全面を強固に固定すると柔軟性を損ねるため、弾性部材15〜19の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示形態では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段により細長状弾性部材15〜19の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布して両シート層12S,12H間に挟むことにより、当該細長状弾性部材15〜19の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、両シート層12S,12Hへの細長状弾性部材15〜19の固定と、両シート層12S,12H間の固定とを行う構造となっている。弾性部材15〜19は伸縮領域における伸縮方向の両端部のみ、外側シート層12S及び内側シート層12Hに固定することができる。
図示形態の弾性部材15〜19についてより詳細に説明すると、外装体12F,12Bのウエスト部Wにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、幅方向WDの全体にわたり連続するように、複数のウエスト部弾性部材17が前後方向に間隔を空けて取り付けられている。また、ウエスト部弾性部材17のうち、ウエスト下方部Uに隣接する領域に配設される1本又は複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト部弾性部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト部Wの幅方向WDの伸長率は150〜400%、特に220〜320%程度であるのが好ましい。また、ウエスト部Wは、その前後方向LDの全てに同じ太さのウエスト部弾性部材17を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、例えばウエスト部Wの上部と下部で弾性部材17の太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
また、外装体12F,12Bのウエスト下方部Uにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、細長状弾性部材からなるウエスト下方部弾性部材15,19が複数本、前後方向に間隔を空けて取り付けられている。
ウエスト下方部弾性部材15,19としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト下方部Uの幅方向WDの伸長率は200〜350%、特に240〜300%程度であるのが好ましい。
また、後側外装体12Bの臀部カバー部Cにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、細長状弾性部材からなるカバー部弾性部材16が取り付けられている。
カバー部弾性部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1本、又は前後方向に間隔を空けて複数本設けるのが好ましく、これによる臀部カバー部Cの幅方向WDの伸長率は150〜300%、特に180〜260%であるのが好ましい。
カバー部弾性部材16を設ける場合には、臀部カバー部Cの側縁Csにおける、最も脚開口LO側に位置するカバー部弾性部材16と臀部カバー部Cの脚開口側の縁Ceとの前後方向間隔は、後側外装体12Bの側縁からサイドシール部12Aの幅方向中央側の側縁までの幅方向寸法W3の0.9〜1.1倍であると、臀部カバー部Cの側縁Csの脚開口LO側の角がほとんど目立たないため好ましい。特に、この場合、カバー部弾性部材16は、1本、又は前後方向LDに5mm以下の間隔で2本設けるのが好適である。また、最もウエスト側に位置するカバー部弾性部材16から、そのウエスト側に隣接するウエスト下方部弾性部材15までの前後方向間隔は15mm以上であり、かつ後側外装体12Bにおけるすべての弾性部材の間隔の中で最も広くなっていると、後側外装体12Bにおいてカバー部弾性部材16よりもウエスト側の部分がカバー部弾性部材16よりも脚開口側の部分よりも大きく広がって見えることにより、臀部カバー部Cの側縁Csの脚開口LO側の角の突出が目立ちにくいものとなるため好ましい。
ここで、臀部カバー部C内の脚開口LO側にのみカバー部弾性部材16が配置されていると、図22(a)に示すように、臀部カバー部Cがカバー部弾性部材16とともに収縮する際、臀部カバー部Cの脚開口LO側が幅方向WD中央側に引き寄せられるため、臀部カバー部Cの脚開口LO側の縁Ceが幅方向WDに沿う直線状であっても、臀部カバー部Cの脚開口LO側の縁Ceが幅方向WD中央側に向かって斜め下向きに傾斜し、臀溝に対するフィット性が向上する。この際、臀部カバー部Cの側縁Csも幅方向WD中央側に向かって斜め下向きに傾斜するため、臀部カバー部Cの側縁Csの脚開口LO側の角は目立たず、外観が悪化することもない。
一方、臀部カバー部C内のウエスト側にのみカバー部弾性部材16が配置されている場合には、図22(b)に示すように、臀部カバー部Cがカバー部弾性部材16とともに収縮する際、臀部カバー部Cのウエスト側が幅方向中央側に引き寄せられるため、臀部カバー部Cの脚開口LO側の縁Ceが幅方向WDに沿う直線状であっても、臀部カバー部Cの側縁Csが側方に反り返るとともに、臀部カバー部Cの脚開口LO側の縁Ceが幅方向中央側に向かって斜め下向きに傾斜し、臀溝に対するフィット性が向上する。この際、臀部カバー部Cの側縁Csは側方に反り返るが、臀部カバー部Cの側縁Csの脚開口LO側の角はサイドシール部12Aの側方に大きく突出しないため、臀部カバー部Cの側縁Csの脚開口LO側の角は目立たず、外観が悪化することがない。
また、臀部カバー部Cの側縁Csにおける前後方向寸法が、後側外装体12Bの側縁からサイドシール部12Aの幅方向WD中央側の側縁までの幅方向寸法W3の0.9〜1.1倍である場合、臀部カバー部Cのカバー部弾性部材16を設けなくてもよい。この場合、ウエスト下方部がウエスト下方部弾性部材15により収縮する影響により、臀部カバー部Cの側縁Csは側方に反り返りやすくなるが、臀部カバー部Cの側縁Csの脚開口LO側の角は、おむつの側縁からほとんど突出しないため、この角は目立たず、外観が悪化することがない。
前側外装体12Fに鼠径カバー部を設ける場合には同様にカバー部弾性部材を設けることができる。
図示形態のウエスト下方部Uや臀部カバー部Cのように、吸収体56を有する前後方向範囲に弾性部材15,16,19を設ける場合には、その一部又は全部において吸収体56の幅方向WDの収縮を防止するために、吸収体56と幅方向WDに重なる部分の一部又は全部を含む幅方向中間(好ましくは内外接合部201,202の全体を含む)が非伸縮領域A1とされ、その幅方向両側が伸縮領域A2とされる。ウエスト部Wは幅方向WDの全体にわたり伸縮領域A2とされるのが好ましいが、ウエスト下方部Uと同様に、幅方向中間に非伸縮領域A1を設けても良い。
このような伸縮領域A2及び非伸縮領域A1は、内側シート層12Hと、外側シート層12Sとの間に、弾性部材15〜17,19を供給し、弾性部材15,16,19を伸縮領域A2における少なくとも伸縮方向の両端部でホットメルト接着剤を介して固定し、非伸縮領域A1となる領域では固定せず、非伸縮領域A1となる領域において、弾性部材15,16,19を幅方向中間の1か所で加圧及び加熱により切断するか、又は弾性部材15,16,19のほぼ全体を加圧及び加熱により細かく切断し、伸縮領域A2に伸縮性を残しつつ非伸縮領域A1では伸縮性を殺すことにより構築することができる。前者の場合、図4に示すように、非伸縮領域A1には、伸縮領域A2の弾性部材15,16,19から連続する切断残部が不要弾性部材18として単独で自然長まで収縮した状態で、外側シート層12S及び内側シート層12H間に残ることとなり、後者の場合、図示しないが、伸縮領域A2の弾性部材15,16,19から連続する切断残部、及び両方の伸縮領域A2の弾性部材15,16,19と連続しない弾性部材の切断片が不要弾性部材として単独で自然長まで収縮した状態で、外側シート層12S及び内側シート層12H間に残ることになる。
(表示シート)
図2、図5、図7及び図8に示すように、前側外装体12F及び後側外装体12Bの少なくとも一方と内装体200との間には、キャラクター等の表示27を有する表示シート25が介在されており、この表示シート25の表示が外装体12F,12Bを通して透けて見えるようになっていると好ましい。外装体12F,12Bと内装体200との間に表示シート25が介在する形態であると、製造に際して非伸縮領域A1を形成するための弾性部材15,16,19の切断加工を表示シート25のない状態で行うことができるため、表示シート25に切断痕跡を残さずに済み、見栄えの悪化を防止することができる。もちろん、表示シート25は、外側シート層12Sと弾性伸縮部材15,16,19との間や、内側シート層12Hと弾性伸縮部材15,16,19との間に介在させることもできる。表示シート25は省略することもできる。
表示シート25の素材としては、高精細印刷に適している点で樹脂フィルムを使用する。不透明性の高い樹脂フィルムを用いる場合には印刷部を表示シート25の外面に設ける必要があるが、例えば、透明性が高い樹脂フィルムを用いる場合には、表示シート25の内面に印刷部を設けることもできる。
表示シート25に付加される表示27は特に限定されず、装飾のための模様(絵やワンポイントのキャラクター含む)、使用方法や使用補助、サイズ等の機能表示、あるいは製造者や製品名、特徴的機能等の標章表示等の表示を、印刷等により付加することができる。
表示シート25の内面及び外面の少なくとも一方は、対向面に対してホットメルト接着剤25Hを介して接着される。
表示シート25の寸法は適宜定めれば良いが、通常の場合、表示シート25は内装体200と重なる幅方向範囲内に、内装体200の幅以下で設けられていることが好ましく、具体的には内装体200の幅の50〜100%であると、製造時に内装体200側に貼り付けやすいため好ましい。また、表示シート25の幅25xは後述するカバー不織布13の幅13xよりも広いことが好ましい。
表示シート25は、図示の後身頃Bに配置された表示シート25のように内装体200と重なる領域内に配置されていてもよいが、少なくとも一方の表示シート25は、液不透過性樹脂フィルムからなり、図示の前身頃Fに配置された表示シート25のように、内装体200と重なる領域から、内装体200のウエスト側の縁よりウエスト開口WO側に延び出たウエスト延出部分12E内まで延びていると、内装体200のウエスト側の端部からウエスト側に漏れ出た尿や軟便を表示シート25で遮断することにより、前側外装体12Fのウエスト延出部分12Eにおける尿や軟便の染み出しを防止することができる。図示形態と異なり、前身頃Fの表示シート25とともに、又はこれに代えて、後身頃Bに配置された表示シート25についても、内装体200と重なる領域からウエスト延出部分12E内まで延ばすことができる。液不透過性樹脂フィルムとしては、液不透過性シート11と同様の素材を選択することができ、液不透過性シート11と同様に、特に透湿性を有するプラスチックフィルムを用いることが好ましい。
表示シート25をウエスト延出部分12E内まで延ばす場合、ウエスト延出部分12Eにおける、内装体200のウエスト側の縁よりウエスト開口WO側に5mm以上離間した位置に、少なくとも表示シート25の幅方向中間部分と対応する幅方向範囲を収縮させる弾性部材が設けられているとさらに好ましい。図示形態では、ウエスト部弾性部材1717がこの配置の弾性部材に該当する。外装体12F,12Bと内装体200とが重なる領域は剛性が高く、曲がりにくいのに対して、ウエスト延出部分12Eは剛性が低く、曲がりやすいため、図21に示すように、ウエスト部弾性部材17により表示シート25がウエスト側ほど幅方向に収縮し、ウエスト延出部分12Eにおける弾性部材と内装体200との間の部分が、内装体200との境界で肌側に折れ曲ることにより、ウエスト延出部分12Eの表示シート25を有する部分が肌側に立ち上がり、尿や軟便の遮断壁が形成される。よって、外装体12F,12Bのウエスト延出部分12Eにおける尿や軟便の染み出し防止性を向上させることができる。この場合、ウエスト延出部分12Eは外側シート層12S及び内側シート層12Hをなす不織布のみから構成されると、外装体12F,12Bと内装体200が重なる領域とウエスト延出部分12Eとの剛性差が大きくなるため、好ましい。また、内装体200のウエスト側縁部のシートの重なり枚数が多いほど、前記の剛性差が大きくなるため好ましく、具体的には3枚以上の枚数差があるとよい。特に、内装体200のウエスト側縁部には少なくともプラスチックフィルムからなる液不透過性シート11が、さらに、クレープ紙からなる包装シート58が存在すると、その剛性が高くなるため好ましい。また、嵩高な中間シート40が内装体200のウエスト側縁部にまで延びているのも好ましい。外装体12F,12Bと内装体200が重なる領域が曲がらないよう、この領域と非伸縮領域A1が一致するように構成するのも好ましい。
表示シート25の、ウエスト延出部分12E内に位置する部分の前後方向長さ25yは、特に限定されるものではないが、通常の場合、5mm以上であることが好ましい。また、表示シート25は、少なくとも最も内装体200側に位置する弾性部材(図示形態ではウエスト部弾性部材17のうち最も股間側に位置するもの)まで延びていると、外装体12F,12Bのウエスト延出部分12Eにおける尿や軟便の染み出し防止性を向上させる上で特に好ましい。
(カバー不織布)
外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、前側外装体12F及び後側外装体12Bとの間に内装体200が露出するため、内装体200の裏面に液不透過性シート11が露出しないように、前側外装体12Fと内装体200との間から、後側外装体12Bと内装体200との間にかけて、内装体200の裏面を覆うカバー不織布13を備えている。
カバー不織布13は、表裏に貫通する孔を有しない無孔不織布を用いてもよいが、本形態では、表裏に貫通する孔14が間隔を空けて多数設けられた有孔不織布となっており、表示シート25と液不透過性シート11との間に位置する部分を有するように前後方向LDに延びている。このように、カバー不織布13が表示シート25と液不透過性シート11との間まで延びていると、使い捨ておむつの外部から表示シート25と液不透過性シート11との間まで有孔14不織布内を通じて通気が可能となるため、表示シート25の素材に樹脂フィルムを用いた場合の通気性の低下を防止することができる。
図示しないが、少なくとも、表示シート25と重なる外装体12F,12Bの股間側の縁からウエスト開口側に表示シート25と液不透過性シート11との間まで延びる、通気性向上専用の有孔不織布を、カバー不織布13とは別に設けても良い。また、前後両方に表示シート25を有する場合、前側外装体12F及び後側外装体12Bのいずれか一方のみ、カバー不織布13が表示シート25と液不透過性シート11との間まで延びているだけでもよい。
有孔不織布の繊維の種類や、繊維の結合(交絡)の加工方法は特に限定されず、外装シート12F,12Bの素材と同様のものを適宜選択することができるが、エアスルー不織布を用いることが望ましく、その場合の目付けは20〜40g/m2、厚みは0.3〜1.0mmであると好ましい。
カバー不織布13の前後方向範囲は特に限定されず、図2、図5及び図7に示すように、内装体200の前端から後端までの全体にわたり前後方向LDに延在していてもよく、図8に示すように、前側外装体12Fと内装体200とが重なる領域の前後方向中間位置から後側外装体12Bと内装体200とが重なる領域の前後方向中間位置まで前後方向LDに延在していてもよい。表示シート25及びカバー不織布13の重なり部分の前後方向長さ25wは、表示シート25の前後方向長さ25yの25〜100%であることが好ましい。また、図8に示す形態の場合、カバー不織布13と前側外装体12Fとの重なり部分の前後方向長さ13y、及びカバー不織布13と後側外装体12Bとの重なり部分の前後方向長さ13yは適宜定めることができるが、通常の場合それぞれ20〜40mm程度とすることができる。
カバー不織布13の幅方向範囲は、液不透過性シート11の裏面露出部分を隠しうる範囲とされる。このため、図示形態では、左右の側部ギャザー60の基端の間に液不透過性シート11が露出するため、少なくとも一方の側部ギャザー60の基端部の裏側から他方の側部ギャザー60の基端部の裏側までの幅方向範囲を覆うようにカバー不織布13が設けられている。これにより、液不透過性シート11をカバー不織布13と側部ギャザー60のギャザー不織布62とで隠蔽することができ、外面から見て、カバー不織布13の幅方向WD両端部の孔14がギャザー不織布62で隠れることもないものとなる。また、カバー不織布13の側縁は、吸収体56の最も幅が狭い部分(括れ部56Nを有しない場合には全幅。括れ部56Nを有する場合には括れ部56Nにおける最も幅が狭い部分)の側縁と同じか又はそれより幅方向中央側に位置していると、カバー不織布13の全体が吸収体56と重なる部分、つまり剛性が高く、皺や折れが発生しにくい部分にのみカバー不織布13が位置することとなるため、カバー不織布13の両側部が前後方向LDに収縮しにくくなり、カバー不織布13の両側部に皺が形成されたり孔14の潰れが発生したりしにくいものとなる。また、カバー不織布13の幅方向両端部が側部ギャザー60の基端部の裏側を覆うのではなく、ギャザー不織布62がカバー不織布13の幅方向両端部の裏側を覆うようにしても、カバー不織布13とギャザー不織布62とで液不透過性シート11を隠蔽することは可能である。この場合、カバー不織布13の両側部がギャザー不織布62により覆われるため、カバー不織布13の両側部が液不透過性シート11から剥がれにくくなるという利点がある。
カバー不織布13は、前後方向LDの一部に孔14の無い領域を有していてもよいが、通気性向上効果を考慮すると前後方向全体にわたり設けられていることが望ましい。一方、カバー不織布13の幅方向WDの両端部に孔14の無い領域を有している形態では、カッターによる打ち抜き以外の方法で孔14を開けると、後述するように孔14の周囲部14eの繊維が外側又は垂直方向に退けられて孔14の周囲部14eが反り返り、有孔領域の厚みが無孔領域よりも厚くなるため、カバー不織布13の資材をロール状態で保管する際、無孔領域の部分が緩く巻かれた状態になり、両側部の無孔領域に皺や折れが形成されるおそれがある。よって、図示形態のように幅方向WDの全体にわたり孔14が形成されていることが望ましい。なお、カバー不織布13への孔形成をおむつの製造工程において行うことにより、孔のない資材を使用することができ、孔形成部位も任意にコントロールすることが可能となるが、孔形成設備を導入することにより製造全体が大きくなって費用やメンテナンスの負担が大きくなり、また、高速ラインにおいては孔形状や柔らかさの調整が難しくなるといった問題がある。よって、前後方向及び幅方向の全体にわたり孔が形成された資材を用いて製造するのが好ましい。
個々の孔14の平面形状(開口形状)は、適宜定めることができ、図17(a)(b)に示すような長孔形とするほか、図17(c)(e)に示すような真円形、図17(d)に示すような楕円形、三角形、長方形、ひし形等の多角形、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。個々の孔14の寸法は特に限定されないが、前後方向LDの最大寸法14Lは0.4〜1.8mm、特に0.8〜1.3mmとするのが好ましく、幅方向WDの最大寸法14Wは0.3〜1.5mm、特に0.5〜1.0mmとするのが好ましい。孔14の形状が、長孔形、楕円形、長方形、ひし形等のように一方向に長い形状の場合、長手方向の最大寸法はこれと直交する方向の最大寸法の2.5倍以下であることが好ましい。また、孔14の形状が一方向に長い形状の場合、孔14の長手方向が前後方向LDであることが望ましいが、幅方向WDや斜め方向であってもよい。
個々の孔14の面積及び面積率は適宜定めればよいが、面積は0.2〜2.5mm2(特に0.5〜1.5mm2)程度であることが好ましく、面積率は1.0〜15.0%(特に5.0〜10.0%)程度であることが好ましい。
孔14の平面配列は適宜定めることができるが、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、図17(a)に示すような斜方格子状や、図17(b)に示すような六角格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、図17(c)に示すような正方格子状、図17(d)に示すような矩形格子状、図17(e)に示すような平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが前後方向LDに対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、孔14の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。
孔14の前後方向間隔14y及び幅方向間隔14xは適宜定めることができるが、通気性を考慮すると、それぞれ0.5〜8mm、特に1〜5mmの範囲内とすることが望ましく、前後方向間隔14yと幅方向間隔14xを平均すると1〜5mmの範囲内とすることが好ましい。特に、図17(d)に示すように、孔14の形状を前後方向LDに細長い形状とするとともに、孔14の前後方向寸法14Lよりも狭い前後方向間隔14yで前後方向に並ぶ孔14の列が幅方向WDに所定の間隔で繰り返し、かつその幅方向間隔14xは孔14の前後方向寸法14Lよりも広い(さらに、孔14の幅方向寸法14Wの3倍以上であるとより好ましい)と、通気性の向上を顕著なものとしつつ、柔らかさや嵩高さも損なわず、また、製造時に重要な前後方向のシートの引っ張り強度の低下がないため好ましい。
孔14の断面形状としては、図14に示すように孔14の周囲から孔14の縁に近づくにつれて不織布の厚みが薄くなり、孔14の縁が不織布の厚み方向の中間に位置している第1形態、図15に示すように孔14の周囲部14eが表側に反り返っており、かつ反り返り高さ14hがほぼ均一である第2形態、及び図16に示すように孔14の周囲部14eが表側に反り返っているとともに、周囲部14eは反り返り高さ14iが最も高い対向部分と、これと直交する方向に対向する対向部分であって反り返り高さ14jが最も低い部分とを有する高い第3形態のいずれであってもよい。通気性の観点からは孔14を有する部分が周囲と比較して厚くなる第2形態及び第3形態が望ましく、特に第3形態は孔14の周囲部14eの反り返り高さ14i,14jの差により形成される隙間が通気性向上に寄与するため好ましい。第2及び第3の形態において、反り返り高さ14g,14h,14i(光学顕微鏡を用いて測定される圧力を加えない状態での見かけの高さ)は0.2〜1.2mm程度であることが好ましく、第3の形態において最も高い反り返り高さ14iは、最も低い反り返り高さ14jの1.1〜1.4倍程度であることが好ましい。
孔14は、縁部が繊維の切断端により形成されている打ち抜き孔14であっても、孔14の縁部に繊維の切断端がほとんど無く、ピンが繊維間に挿入されて押し広げられて形成された非打ち抜き孔14(周囲部の繊維密度が高い)であってもよい。前者は上記第1形態に適しており、後者は上記第2形態・第3形態に適している。例えば、一方向に長い形状の孔14をピンの挿入により形成すると、孔14の周囲部14eの繊維が外側又は垂直方向に退けられて孔14の周囲部14eが反り返るとともに、孔14の長手方向の対向部分の反り返り高さiが、長手方向と直交する方向の対向部分の反り返り高さjよりも高くなる。上記第2形態・第3形態においては、孔14の周囲部14eが表面に反り返っている部分の縁部は、繊維密度がその周囲の部分と比べて低い場合もあるが、同程度又は高くなっているのが好ましい。また、孔14の周囲部14eの繊維同士が融着していることが望ましいが、融着していなくてもよい。
カバー不織布13の内面及び外面は、それぞれ対向面にホットメルト接着剤を介して接着される。カバー不織布13の固定領域は、カバー不織布13の前後方向全体及び幅方向全体とするほか、一部を非固定とすることもできる。例えばカバー不織布13の幅方向両端部が非固定であると、側部ギャザー60の影響で吸収体56の側部がいくらか収縮した状態でもその影響を受けにくくなり、カバー不織布13に皺や折れが形成されにくいという利点がもたらされる。この場合におけるカバー不織布13の幅方向両端部の非固定部分の幅は適宜定めればよいが、例えば3〜10mm、好ましくは5〜8mmとすることができる。
孔14を有するカバー不織布13の場合、一つの好ましい接着構造は、図18に示すように、カバー不織布13の内面及び外面の少なくとも一方の接着領域のうち、孔14と重なる領域の周縁部14iより中央側にはホットメルト接着剤13Hがなく、孔14と重なる領域の周縁部14i以外ではホットメルト接着剤13Hが連続面状に存在しているものである。孔14と重なる領域の周縁部14iより中央側にはホットメルト接着剤13Hがないため、通気性に優れるものとなる。また、肌に触れる面と反対側の面のみ、このような接着構造を有する部分では、ホットメルト接着剤13Hによりべとべとした肌触りになりにくく、かつ孔14の周囲部14eは対向面に確実に固定される。
代表的な接着状態としては、図18(a)(b)に示すように、孔14と重なる領域にはホットメルト接着剤13Hがなく、孔14と重なる領域以外ではホットメルト接着剤13Hが連続面状に存在している状態、図18(c)(d)に示すように、孔14と重なる領域の周縁部14iにホットメルト接着剤13Hがはみ出しているが、孔14と重なる領域の周縁部14iより中央側にはホットメルト接着剤13Hがなく、孔14と重なる領域の周縁部14i以外ではホットメルト接着剤13Hが連続面状に存在している状態を例示することができる。前者の状態は、特に望ましい状態であるが、孔14と重なる領域の周縁部14iは孔14の周囲部14eに近接する部分であり、カバー不織布13は一定の厚みを有するため、後者のようにこの部分にホットメルト接着剤13Hがはみ出していても、肌に触れる面と反対側の面のみ接着した部分において、カバー不織布13における接着面と反対側の面に手で触れたときにホットメルト接着剤13Hに直接触れることはほとんどない。なお、孔14と重なる領域の周縁部14iにおけるホットメルト接着剤13Hのはみ出し幅はカバー不織布13の厚みの半分以下で、0.5mm以下程度であることが好ましい。また、孔14と重なる領域の面積の80%以上の部分にホットメルト接着剤13Hが存在しないことが望ましい。
カバー不織布13における孔14の断面形状は限定されるものではないが、前述のように孔14の周囲部14eが液不透過性シート11側に反り返った反り返り部となっていると、液不透過性シート11側と反対側の面から見た孔径の割には液不透過性シート11側から見た孔径が小さくなる。よって、肌に触れる面と反対側の面のみ接着した部分において、接着面と反対側の面に手で触れたときにホットメルト接着剤13Hに触れにくくなる。また、反り返り部は支柱のようにカバー不織布13を対向面に対して支持するため、同じ目付けの無孔不織布と比較して嵩高くなり、通気性にも優れたものとなる。さらに、孔14の周囲部14e以外の領域では、カバー不織布13と液不透過性シート11の接着が浮きやすくなる(図18ではホットメルト接着剤13Hがシート間の空間を隙間なく埋めているように描いているが実際の塗布量は少なく隙間ができやすい)ため、孔14の周囲部14eは確実に接着しつつ、それ以外の領域では不完全な接着となる(実質的な接着面積が小さくなる)ことにより、優れた柔らかさ・ふんわり感を得ることができる。
このような接着構造は、有孔不織布における接着面に、エアーを用いずに連続面状にホットメルト接着剤を塗布し、対向面に接着することにより製造することができる。この手法は、有孔不織布における接着面に、エアーを用いずに連続面状にホットメルト接着剤を連続面状に塗布すると、対向面と貼り合わせる前に、ホットメルト接着剤の表面張力により、ホットメルト接着剤における有孔不織布の孔と重なる部分の中央に口(孔)が開いてその開口が有孔不織布の孔の周囲部まで拡大する、との新規な知見に基づくものである。すなわち、このような接着方法を採用すると、図19に矢印で変化を示すように、有孔不織布にホットメルト接着剤13Hを連続面状に塗布した後、対象部材と貼り合わせる前に、ホットメルト接着剤13Hの表面張力により、ホットメルト接着剤13Hにおける有孔不織布の孔14と重なる部分の中央に口(孔)hが開いてその開口hが有孔不織布の孔14の周囲部14eまで拡大する。したがって、有孔不織布を対象部材に接着した後に、図18に示す例のように、孔14内の大部分にホットメルト接着剤13Hがないものとなり、エアーによる孔14からのホットメルト接着剤13Hの抜けや染み出しもないため、接着面と反対側の面に手で触れたときにべとべとした肌触りになりにくいものとなる。
エアーを用いずに連続面状にホットメルト接着剤を塗布するホットメルトアプリケータ170としては、有孔不織布の接着面に塗工ヘッド(ダイ)を接触させ、塗工ヘッドの先端に設けられたCD方向(MD方向(製造ラインの流れ方向)と直交する方向)に沿うスリットからホットメルト接着剤を押し出して塗布を行うスロットコート、あるいは有孔不織布の接着面から塗工ヘッド(ダイ)を浮かせた状態で、塗工ヘッドの先端に設けられたCD方向に沿うスリットからホットメルト接着剤を押し出し、有孔不織布の移送速度との差によりホットメルト接着剤を延伸して極薄フィルム状に塗付する非接触タイプのスロットコートを好適に用いることができる。
接着条件は適宜定めることができるが、孔14と重なるホットメルト接着剤13Hを速やかに孔14の周囲部14eに移動させ、孔14の周囲部14eを強固に接着するためには、以下の条件の少なくとも1つを満足することが望ましい。
ホットメルト接着剤の溶融粘度(温度140℃):3,000〜2,600mpas
ホットメルト接着剤の溶融粘度(温度160℃):1,150〜1,550mpas
有孔不織布に対するホットメルト接着剤の塗布時の温度:110〜150℃
有孔不織布に対するホットメルト接着剤の塗布量:1.0〜8.0g/m2
ホットメルト接着剤の塗布後のオープンタイム:0.1〜1.0秒
孔14を有するカバー不織布13の場合における、他の好ましい接着構造は、図20に示すように、カバー不織布13における孔14の周囲部14eが反り返った反り返り部となっているとともに、反り返り部の少なくとも先端部が、ホットメルト接着剤13Hを介して対向面(この場合反り返り部の少なくとも先端部が、ホットメルト接着剤13Hを介して対向面(この場合、液不透過性シート11)に貼り付けられた接着部となっており、かつこの接着部以外の部分は非接着となっているものである。このような接着構造を有していると、接着面積が小さくなるため柔軟性が損なわれず、かつ孔14の周囲部14eを対向面に確実に固定できる。特に、反り返り部は支柱のようにカバー不織布13を対向面に対して支持するため、同じ目付けの無孔不織布と比較して嵩高くなり、通気性にも優れたものとなる。
代表的な接着状態としては、図20(a)(b)に示すように、反り返り部の先端部のみがホットメルト接着剤13Hを介して対向面に接着されている状態、図20(c)(d)に示すように、反り返り部の全体が、ホットメルト接着剤13Hを介して対向面に接着されている状態、及び図20(e)(f)に示すように、反り返り部のうち、先端部の内側部分より外側全体がホットメルト接着剤13Hを介して対向面に接着され、先端部の内側部分が非接着とされている状態を例示することができる。反り返り部の孔14の内周面、及び対向面における孔14と重なる部位には接着剤が存在しないことが望ましいが、多少はみ出していてもよい。
反り返り部の接着状態は、少なくとも先端部がホットメルト接着剤13Hを介して対向面に貼り付けられる限り、図示形態に限定されず、孔14の周方向の少なくとも一部が、上記いずれかの接着状態であればよい。例えば、図15及び図16に示される形態のように、反り返り部が孔14の周方向に連続して筒状になっている場合には、筒状の先端部の周方向全体が上記接着状態にあることが好ましいが、一部は他の接着状態又は非接着となっていても良い。また、反り返り部が孔14の周方向の一部にのみ形成されている場合には、その部分の先端部が上記接着状態となっていればよい。さらに、多数の反り返り部の中に異なる接着状態が混在していてもよい。
(内外接合部)
内装体200の外装体12F,12Bに対する固定は、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により行うことができる。図示形態では、内装体200の裏面、つまりこの場合は液不透過性シート11の裏面及び立体ギャザー60の付根部分65に塗布されたホットメルト接着剤を介して外装体12F,12Bの内面に対して固定されている。特に、内外接合部201,202は、カバー不織布13と重なる領域及びこの領域よりも幅方向両側の領域にわたり設けられていると、カバー不織布13の両側部をしっかりと固定することができ、カバー不織布13の両側部が内装体200から剥がれにくくなるため好ましい。
図9及び図10に示すように、前側外装体12Fの内外接合部201は、ウエスト側では幅方向両端部にわたるように設けられ、前側外装体12Fの股間側の縁に向かうにつれて幅が段階的又は連続的に減少し、前側外装体12Fの股間側の幅方向両端部に非接合部分203が形成されている。これにより、前側外装体12Fの股間側の縁が幅方向に沿って直線状又はそれに近い形状で、内装体200の側縁と直角又はそれに近い角度で交差する外装二分割タイプであっても、座位や歩行時における鼠径部のフィット性が向上する。
非接合部分203の寸法は適宜定めればよいが、乳幼児用途の場合、非接合部分203の前後方向寸法は10〜30mm程度、非接合部分203の幅方向寸法は10〜25mm程度とすることができる。また、大人用途の場合、非接合部分203の前後方向寸法は10〜30mm程度、非接合部分203の幅方向寸法は10〜25mm程度とすることができる。非接合部分203の前縁(曲線の場合は最も前側に位置する部位)は、前側半倒伏部分68Fと重なる位置にあることが好ましく、その中でも特に前側半倒伏部分68Fの後側の部分に位置していることが好ましい。
特に、前側外装体12Fのウエスト下方部の伸縮領域A2の弾性部材が、前側外装体12Fの股間側の幅方向両端部に形成された非接合部分203内まで延びており、非接合部分203も幅方向に弾性伸縮するようになっていると、鼠径部のフィット性はより一層好ましいものとなる。また、前述の第1の形態の側部ギャザー60のように屈曲形態を採用し、前側半倒伏部分68Fを設けると、鼠径部のフィット性がさらに良いものとなる。さらに、前述のように、前側半倒伏部分68Fは前側外装体12Fの股間側の縁と同じか、又はより前後方向中央側に延びているとより好ましい。さらに、吸収体56が砂時計形状を成す場合、前側半倒伏部分68Fは、括れ部56Nとは重ならずに前記吸収体上に位置していると、立体ギャザーの根元が安定し、前側半倒伏部分68Fが起立しやすいため好ましい。
一方、後側外装体12Bの内外接合部202は、その前後方向の全体にわたり幅方向両端部にわたるように設けられていると、内装体200が臀裂に食い込みにくくなるため好ましい。この場合、前述の第1の形態の側部ギャザー60のように屈曲形態を採用し、後側半倒伏部分68Bを設けると、立体ギャザーの先端側部分60Aが臀裂に向かう傾斜によって反対向きに倒れにくくなるため好ましい。さらに、前述のように、後側半倒伏部分68Bは後側外装体12Bの前縁と同じか、又はより前後方向LD中央側に延びていると、内装体200の臀裂への食い込み防止性がより一層向上し、臀部カバー部Cを有する場合には臀部カバー部Cがずれにくくなり、臀部被覆の維持性に優れるようになる。後側半倒伏部分68Bの前後方向長さは、後側の倒伏部分67の前後方向長さよりも長いとより好ましい。さらに、吸収体56が砂時計形状をなす場合、後側半倒伏部分68Bは、括れ部56Nとは重ならずに前記吸収体上に位置していると、特に、内装体200が臀裂に食い込みにくくなるため好ましい。
第1の形態の側部ギャザー60のような屈曲形態を採用する場合、前側半倒伏部分68Fと、後側半倒伏部分68Bの両方を設け、前側半倒伏部分68Fの長さに対する後側半倒伏部分68Bの長さが0.9〜1.5の範囲となるようにすると、立体ギャザーは前後方向に長い範囲にわたり高く起立することができ、かつ先端側部分60Aと付け根側部分60Bのそれぞれが過度に自由となることがないため、脚周り全体のフィット性が良好なものとなる。
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後(縦)方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
・「表側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
・「表面」とは部材の、パンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
・「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えばカバー不織布)における対象部分(例えば孔)の総和面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものである。対象部分が間隔を空けて多数設けられる形態では、対象部分が10個以上含まれるような大きさに対象領域を設定して、面積率を求めることが望ましい。例えば、孔の面積率は、例えばKEYENCE社の商品名VHX−1000を使用し、測定条件を20倍として、以下の手順で測定することができる。
(1)20倍のレンズにセットし、ピントを調節する。穴が4×6入るように不織布の位置を調整する。
(2)孔の領域の明るさを指定し、孔の面積を計測する。
(3)「計測・コメント」の「面積計測」の色抽出をクリックする。孔の部分をクリックする。
(4)「一括計測」をクリックし、「計測結果ウィンドを表示」にチェックを入れ、CSVデータで保存をする。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter−MAX ME−500)でゲル強度を測定する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:10gf/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
・吸水量は、JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内で行うものとする。