JP2018062692A - 熱延鋼板 - Google Patents

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JP2018062692A JP2016202009A JP2016202009A JP2018062692A JP 2018062692 A JP2018062692 A JP 2018062692A JP 2016202009 A JP2016202009 A JP 2016202009A JP 2016202009 A JP2016202009 A JP 2016202009A JP 2018062692 A JP2018062692 A JP 2018062692A
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Abstract

【課題】加工中は良好な冷間加工性を示し、加工後は耐疲労性に優れた部分と当該部分よりも硬度が高く耐摩耗性に優れた部分とを得ることができる熱延鋼板の提供。
【解決手段】質量%で、C>0.30〜0.50%、Si≦0.5%、Mn:0.2〜1%、P≦0.05%、S≦0.05%、Al<0.01%、N:0.008〜0.025%を含有し、残部は鉄及び不可避的不純物からなり、板厚3〜20mmで、下記(1)式を満足し、固溶N≧0.007%で、フェライト母相中に球状セメンタイトが分散した組織を含み、フェライトの平均結晶粒径が3〜35μmであり、フェライト及びパーライト以外の金属組織の面積率≦7.0%である熱延鋼板。[%Al]/[%N]≦0.4(1);但し、[%Al]、[%N]は質量%で示したAl、N含有量
【選択図】図1

Description

本発明は、冷間加工中は良好な冷間加工性を有し、加工後は所定の表面硬さを有するように加工硬化特性および焼入硬化性に優れる熱延鋼板に関する。
近年、環境保護の観点から、自動車の燃費向上を目的として、例えばギアなどのトランスミッション部品およびケース等の自動車用の各種部品に用いられる鋼材の軽量化、すなわち高強度化に対する要求が益々高まっている。このような軽量化・高強度化の要請に応えるために、一般には、棒鋼を熱間鍛造した鋼材(熱間鍛造材)が用いられてきた。また、部品製造工程におけるCOの排出量削減のため、これまで熱間鍛造によって加工されていたギアなどの部品の冷間鍛造化に関する要求も高まっている。
ところで、冷間加工(冷間鍛造)は、熱間加工および温間加工と比較して生産性が高く、しかも寸法精度および鋼材の歩留まりがともに良好であるという利点を有する。しかし、このような冷間加工によって部品を製造する場合に問題となるのは、冷間加工された部品の強度を所定値以上にするためには、必然的に加工前の強度が高い、すなわち変形抵抗の高い鋼材を用いる必要があることである。ところが、使用する鋼材の変形抵抗が高くなるほど冷間加工用金型の寿命が短くなるだけでなく、冷間加工時に割れが発生しやすいという問題がある。
このため、従来は、鋼材を所定形状に冷間鍛造した後、焼入れ焼戻し等の熱処理を行うことで、加工前の鋼材の強度をそれほど高くしなくても加工後に所定の強度(硬さ)が確保できる高強度部品を製造する方法が実施されることもあった。しかしながら、冷間鍛造後の熱処理は、部品寸法が不可避的に変化するため、熱処理後に切削などの二次的な機械加工により修正する必要があり、熱処理およびその後の加工が省略できるような解決策が望まれていた。
上記課題を解決すべく、たとえば、低炭素鋼で固溶Cを利用して常温時効の進行を抑制し、歪時効による所定の時効硬化量を確保することで、歪時効特性に優れた冷間鍛造用線材・棒鋼が得られることが知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、この技術は、固溶C量のみによって歪時効を制御するものであり、十分な冷間加工性と、加工後の所要の硬さ・強度を両立する鋼材を得ることは困難な場合があった。
そこで、本出願人は、鋼材に含まれる固溶Cと固溶Nが変形抵抗と静的ひずみ時効に及ぼす影響の違いに着目し、種々検討した結果、これらの固溶元素の量を適正に制御することで、加工中は良好な冷間加工性を発揮しつつ、冷間加工(冷間鍛造)後は所定の表面硬さ(強度)を示す機械構造用鋼材が得られることを知見し、すでに特許出願を行っている(特許文献2参照)。
この鋼材は、冷間加工性と加工後の高硬度化(高強度化)の両立を実現したものであるが、上記特許文献1に記載された線材・棒鋼と同様、熱間鍛造材であり、製造コストが高いことが難点であった。そこで、製造コストのさらなる低コスト化のために、従来の熱間鍛造材に替えて、熱延鋼板で自動車用部品を冷間加工により作製することも検討されている。
たとえば、窒化処理後に高い表面硬度および十分な硬化深さが得られる窒化処理用の熱延鋼板が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、この技術は、冷間加工後にさらに窒化処理を必要とするものであり、十分な低コスト化が実現できない問題がある。
また、C:0.10質量%以下、Si:0.01質量%未満、Mn:1.5質量%以下およびAl:0.20質量%以下を含有すると共に、(Ti+Nb)/2:0.05〜0.50質量%の範囲で含有し、S:0.005質量%以下、N:0.005質量%以下、O:0.004質量%以下でS、NおよびOの合計が0.0100質量%以下を含む組成とし、かつミクロ組織を95%以上の実質的フェライト単相組織とする熱延鋼板が提案されており、この熱延鋼板は、精密打ち抜き加工面の寸法精度に優れ、かつ加工後の打ち抜き面の表面硬度が極めて高く、さらには耐赤スケール疵性にも優れるとしている(特許文献4参照)。
特開平10−306345号公報 特開2009−228125号公報 特開2007−162138号公報 特開2004−137607号公報
しかし、部品によっては、1つの部品で例えば、440HV以上の高い硬度(とりわけ表面硬度)を有することにより高い耐摩耗性を確保することが必要な部分と、この部分とは別の部分で、280HV以上の中硬度(例えばHV280〜400)を有することで高い疲労強度(引張強さ780MPa級の疲労強度)を有する部分との両方が必要な場合がある。
従来は、高い表面硬度を得ることができる鋼材を用いて、硬さ440HV以上の高硬度を有する部材を形成し、一方で中硬度を得るのに適した鋼材を用いて、硬さ280HV程度以上の中硬度を有する部材を形成し、これら2つの部材を接合して高硬度部分と中硬度部分を有する部品を製造していた。
しかし、このような方法は製造コストが高く、低コスト化が求められていた。
本発明の実施形態は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、加工中は良好な冷間加工性を示し、加工後は耐疲労性に優れた部分と、当該部分よりも硬度が高く耐摩耗性に優れた部分とを得ることができる熱延鋼板を提供することにある。
本発明の実施形態に熱延鋼板は、C:0.30質量%超、0.50質量%以下、Si:0.5質量%以下(0質量%を含まない)、Mn:0.2質量以上、1質量%以下、P:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、S:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、Al:0.01質量%未満(0質量%を含まない)、N:0.008質量%以上、0.025質量%以下、を含有し、残部は鉄および不可避的不純物からなり、板厚が3〜20mmであり、下記の(1)式を満足し、且つ固溶N:0.007質量%以上であり、フェライト母相中に球状セメンタイトが分散した組織を含み、フェライトの平均結晶粒径が3〜35μmの範囲であり、フェライトおよびパーライト以外の金属組織の面積率が7.0%以下である熱延鋼板である。
[%Al] / [%N] ≦ 0.4 (1)
但し、[%Al]は質量%で示したAl含有量であり、[%N]は質量%で示したN含有量。
本発明の実施形態に係る熱延鋼板は、Nb:0.2質量%以下(0%を含まない)およびV:0.2質量%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含んでよい。
本発明の実施形態に係る熱延鋼板は、TiおよびZrの少なくとも一方を更に含み、TiとZrの合計含有量が0.06質量%以下(0質量%を含まない)であってよい。
本発明の実施形態に係る熱延鋼板は、Cr:2.0質量%以下(0質量%を含まない)およびMo:2.0%質量以下(0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含んでよい。
本発明の実施形態に係る熱延鋼板は、Cu:5.0質量%以下(0質量%を含まない)、Ni:5.0質量%以下(0質量%を含まない)およびCo:5.0質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含んでもよい。
本発明の実施形態に係る熱延鋼板は、Ca:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、REM:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、Mg:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Li:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Pb:0.5質量%以下(0質量%を含まない)およびBi:0.5質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含んでよい。
本発明の実施形態により、加工中は良好な冷間加工性を示し、加工後は耐疲労性に優れた部分と、当該部分よりも硬度が高く耐摩耗性に優れた部分とを得ることができる熱延鋼板を提供することができる。
図1は、くさび型圧縮試験の概要を示す模式断面図である。
本発明者らは鋭意検討した結果、詳細を後述するように、所定の成分を有し、板厚を3〜20mmとし、固溶N量を0.007質量%以上とし、Al含有量とN含有量の比率を(1)式を満足するようにし、金属組織をフェライト母相中に球状セメンタイトが分散した組織とし、フェライトの平均結晶粒径が3〜35μmの範囲とし、フェライトおよびパーライト以外の金属組織の面積率を7.0%以下とすることで、加工中は良好な冷間加工性を示し、加工後は耐疲労性に優れた部分と、当該部分よりも硬度が高く耐摩耗性に優れた部分とを得ることができる熱延鋼板を得ることができることを見出した。

[%Al] / [%N] ≦ 0.4 (1)
但し、[%Al]は質量%で示したAl含有量であり、[%N]は質量%で示したN含有量。
すなわち、本発明の実施形態に係る熱延鋼板は、加工性に優れる冷間加工が容易であり、冷間加工による加工硬化によって例えば、硬さ280HV程度以上の中硬度(例えばHV280〜400)をまで強度上昇させることができる。そして、本発明の実施形態に係る鋼板は、焼入れ性に優れることから、一部分だけ局部的に焼入れを行うことでこの部分の硬さを例えば440HV以上とし局部的に耐摩耗性に優れた部分を形成できる。なお、このように一部分だけを焼入れするためには、例えば高周波誘導加熱のような急速加熱を行い、焼入れを行う(例えば、高周波焼入れ)ことが好ましい。
これにより、単一の熱延鋼板により、耐疲労性に優れた部分と耐摩耗性に優れた部分とを有する部品を一体で製造することが可能となる。
以下に本発明の実施形態に係る熱延鋼板の詳細を説明する。
1.板厚
本発明の実施形態に係る鋼板は、板厚が3〜20mmである。板厚が3mm未満では、構造体としての剛性の確保が困難である。一方、板厚が20mmを超えると、所望の組織形態を得ることが難しく、所望の効果が得られなくなる。好ましい板厚は4〜18mmである。
2.組成
本発明の実施形態に係る鋼板の成分組成について説明する。
(1)C:0.30質量%以下(0質量%を含まない)
Cは、鋼板の組織の形成に大きな影響を及ぼす元素である。本発明の実施形態に係る熱延鋼板の主な組織はフェライト−パーライト複相組織ではあるが、できるだけパーライトの少ないフェライト主体の組織とするために、含有量を制限する必要がある元素である。Cを過剰に含有させると、鋼板組織中のパーライト分率が上昇し、パーライトの加工硬化によって変形抵抗が過大となるおそれがある。そこで、鋼板中のC含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.25質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下に制限する。ただし、Cの含有量が少なすぎると、鋼の溶製中における脱酸が困難になるので、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.0008質量%以上、さらに好ましくは0.001質量%以上とする。
(2)Si:0.5質量%以下(0質量%を含まない)
Siは、鋼中に固溶することによって鋼板の変形抵抗を増加させるため、低減する必要がある元素である。そのため、鋼板中のSi含有量は、変形抵抗の増加を抑制するため、0.5質量%以下、好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下に制限する。しかし、Siの含有量が極端に少ないと、溶製中の脱酸が困難になるので、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.008質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上とする。
(3)Mn:0.2〜1質量%
Mnは、製鋼過程において脱酸および脱硫の作用を有する元素である。さらに鋼材中のNの含有量を高めた場合、加工中の発熱による動的ひずみ時効によって割れが発生しやすくなるが、Mnは加工性を低下させるSと結合して加工性を向上させ、割れを抑制する効果がある。したがって本発明では、N含有量が多い場合でも加工性を確保するため、鋼材中のMn含有量は0.2質量%以上、好ましくは0.22質量%以上、より好ましくは0.25質量%以上とする。ただし、Mn含有量が過剰になると変形抵抗が過大となり、偏析による組織の不均一性が生じるので、1質量%以下、好ましくは0.98質量%以下、より好ましくは0.95質量%以下とする。
(4)P:0.05質量%以下(0質量%を含まない)
Pは鋼に不可避的に含有される不純物元素であるが、これがフェライトに含有されるとフェライト粒界に偏析して冷間加工性を劣化させ、また、フェライトを固溶強化して変形抵抗の増大の原因となる元素である。そこで、Pの含有量は冷間加工性の観点からは極力低減することが望ましいが、極端な低減は製鋼コストの増加を招くため、工程能力を考慮して、0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%以下とする。
(5)S:0.05質量%以下(0質量%を含まない)
SもPと同様に不可避的不純物であり、FeSとして結晶粒界に膜状に析出し、加工性を劣化させる元素である。また、熱間脆性を引き起こす作用もある。そこで、変形能を向上させる観点から、S含有量を0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%以下とする。ただし、S含有量を0にすることは工業上困難である。なお、Sは被削性を向上させる効果を有するため、被削性向上の観点からは、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.006質量%以上含有させる。
(6)Al:0.01質量%未満
Alは、製鋼過程において脱酸に有効な元素であるが、加熱、圧延、冷却工程において、条件によってはAlNを形成し、加工硬化特性を発揮させるために必要な固溶N量を低減させる。このようなことが起きる場合、脱酸をSiまたはCaなど他の脱酸元素で代替することによって、鋼材中のAl含有量を低くすることが好ましい。上述のように製造条件が好ましくない場合においても、Al濃度を0.01質量%未満にすることによって、必要な固溶N量が確保でき、安定した加工硬化特性が得られるようになる。Al含有量は、好ましくは0.008質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以下とする。
(7)N:0.008〜0.025質量%
Nは加工後の静的ひずみ時効によって所定の強度を得るために重要な元素である。そこで、鋼材中のN含有量は、0.008質量%以上、好ましくは0.0085質量%以上、さらに好ましくは0.009質量%以上とする。ただし、Nの含有量が過剰になると溶解鋳造時にブローホールが生成するとともに、静的ひずみ時効のほか、加工中の動的ひずみ時効の影響が顕著となり、変形抵抗が増加することから、0.025質量%以下、好ましくは0.023質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以下とする。
(8)Al含有量とN含有量の関係
Al含有量とN含有量が以下の(1)式を満足する。

[%Al] / [%N] ≦ 0.4 (1)
但し、[%Al]は質量%で示したAl含有量であり、[%N]は質量%で示したN含有量。

[%Al] / [%N] は固溶N濃度に影響する。具体的には、この値が小さいほどより高い固溶N量を実現できる。これに加え、[%Al] / [%N]の値が小さいほどNの活量が増加し、有効にNが歪時効に寄与する。従って(1)式に示される[%Al] / [%N]の値の上限を0.4とし、好ましくは0.3、さらに好ましくは0.2とする。後述する固溶N量も重要であるが、この比を満たした上での後述の固溶N量を満足することにより、有効にひずみ時効を作用させることができる。
(9)残部
本発明の1つの実施形態に係る熱延鋼板は上記成分を含み、残部は、鉄および不可避不純物である。不可避不純物は、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素である。
なお、例えば、PおよびSのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」という場合は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
本発明の別の実施形態に係る熱延鋼板は、必要に応じて、以下の(i)〜(v)から選択される1つ以上を更に含有してよい。すなわち、(i)〜(v)は選択的に添加してよい元素である。
(i)Nb:0.2質量%以下(0%を含まない)およびV:0.2質量%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種
NbおよびVは、とりわけCとの親和力が強く、それぞれ、炭化物を形成し、フェライトを強化する。しかし、NbまたはVを0.2質量%を超えて添加すると、冷間加工時の塑性変形能が阻害される。このため、NbおよびV、それぞれの添加量を0.2質量%以下とする。
(ii)TiおよびZrの少なくとも一方を含み、TiとZrの合計含有量が0.06質量%以下(0質量%を含まない)
TiおよびZrはNとの親和力が強く、Nと共存してN化合物を形成し、鋼の結晶粒を微細化し、冷間加工後に得られる加工品の靱性を向上させる。また、耐割れ性を向上させる役割も有する元素である。この効果を発揮させるために、TiおよびZrの少なくとも一方を含んでよい。より確実にこの効果を得るために、TiおよびZrの少なくとも一方を含み、TiおよびZrの合計含有量が0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましい。しかし、TiおよびZrの含有量が多くなると必要な固溶N量を確保することが、製造工程を工夫しても困難となる。このため、TiとZrの合計含有量を0.06質量%以下、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.04質量%以下とする。
(iii)Cr:2.0質量%以下(0質量%を含まない)およびMo:2.0%質量以下(0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種
Crは結晶粒界の強度を高めることで鋼の変形能を向上させる作用を有する元素であり、このような作用を有効に発揮させるためにCrを含有してよい。この効果を確実に得るためにCrを0.2質量%含有させることが好ましい。しかし、Crを過剰に含有させると、変形抵抗が増大し、冷間加工性が低下するおそれがあるため、その含有量は2.0質量%以下とする。好ましくは、1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下とする。
また、Moは、加工後の鋼材の硬さおよび変形能を増加させる作用を有する元素である。この作用をより確実に発揮させるためには、Moは好ましくは0.04質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上含有させる。しかし、Moを過剰に含有させると、冷間加工性が劣化するおそれがあるため、その含有量は2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下とする。
(iv)Cu:5.0質量%以下(0質量%を含まない)、Ni:5.0質量%以下(0質量%を含まない)およびCo:5.0質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種
Cu、NiおよびCoは、いずれも鋼材を時効硬化させる作用があり、加工後強度を向上させるのに有効な元素である。このような作用をより確実に発揮させるために、これらの元素は、それぞれ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上含有させることが好ましい。しかし、これらの元素の含有量が過剰であると、鋼材を時効硬化させる効果、さらに、加工後強度を向上させる効果が飽和し、また、割れを促進させるおそれがあるためその含有量は、それぞれ、5.0質量%以下、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0%以下とする。
(v) Ca:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、REM:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、Mg:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Li:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Pb:0.5質量%以下(0質量%を含まない)およびBi:0.5質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種
Caは、MnSなどの硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めるとともに、被削性の向上に寄与する元素であり添加してよい。このような作用をより確実に発揮させるためにCaの含有量は、好ましくは0.0005質量%以上、さらには0.001%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰に含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため、Ca含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下とする。
REMは、Caと同様にMnSなどの硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めるとともに、被削性の向上に寄与する元素であり添加してよい。このような作用をより確実に発揮させるためには、REM含有量は、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましは0.001質量%以上含有させる。しかし、過剰に含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため、REM含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下とする。
なお、本明細書において、REMとは、ランタノイド元素(LaからLnまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味である。これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、より好ましくはLaおよび/またはCeを含有するのがよい。
Mgは、Caと同様にMnSなどの硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めるとともに、被削性の向上に寄与する元素であり添加してよい。このような作用をより確実に発揮させるためには、Mg含有量は、好ましくは0.0002質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上含有させる。しかし、過剰に含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため、Mg含有量は、0.02質量%以下、好ましくは0.015質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
Liは、Caと同様にMnSなどの硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めることができ、また、Al系酸化物を低融点化して無害化して被削性の向上に寄与する元素であり添加してよい。このような作用をより確実に発揮させるためには、Liは、好ましくは0.0002質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上含有させる。しかし、過剰に含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため、Li含有量は、0.02質量%以下、好ましくは0.015質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下とする。
Pbは、被削性を向上させるために有効な元素であり添加してよい。このような作用をより確実に発揮させるためには、Pbは好ましくは0.005質量%以上、より好ましくはさらに好ましくは0.01質量%以上含有させる。しかし、過剰に含有させると、圧延疵の発生等の製造上の問題を生じるため、Pb含有量は、0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下とする。
Biは、Pbと同様に、被削性を向上させるために有効な元素であり添加してよい。このような作用をより確実に発揮させるためには、Biは好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上含有させる。しかし、過剰に含有させても被削性向上の効果が飽和するため、Bi含有量は、0.5質量%以下、好ましく0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下とする。
3.固溶N:0.007質量%以上
鋼板中に固溶Nを所定量(以下、「固溶N量」という。)確保することで、変形抵抗をあまり上げず、静的ひずみ時効を促進させることができる。すなわち、容易に加工でき且つ加工硬化により加工後に十分な耐疲労性を実現できる高い強度を得ることができる。
このような効果を得るためには、固溶N量は0.007質量%以上必要である。ただし、固溶N量が過剰になると、冷間加工性が劣化するため、固溶N量は好ましくは0.03質量%以下とする。なお、鋼材中のNの含有量が0.025質量%以下であるので、実質的に固溶N量が0.025質量%以上になることはない。
・固溶N量の測定方法
ここで、本明細書において固溶N量は、JIS G 1228に準拠して、鋼材中の全N量から全N化合物の量を差し引いて求められる量である。この固溶N量の実用的な測定法を以下に例示する。
(a)不活性ガス融解法−熱伝導度法(全N量の測定)
供試材から切り出したサンプルをルツボに入れ、不活性ガス気流中で融解してNを抽出し、抽出物を熱伝導度セルに搬送して熱伝導度の変化を測定して全N量を求める。
(b)アンモニア蒸留分離インドフェノール青吸光光度法(全N化合物量の測定)
供試材から切り出したサンプルを、10%AA系電解液に溶解し、定電流電解を行って、鋼中の全N化合物量を測定する。用いる10%AA系電解液は、質量比で10%アセトン、10%塩化テトラメチルアンモニウム、残部メタノールからなる非水溶媒系の電解液であり、鋼表面に不働態皮膜を生成させない溶液である。
供試材のサンプル約0.5gを、この10%AA系電解液に溶解させ、生成する不溶解残渣(N化合物)を、穴サイズが0.1μmのポリカーボネート製のフィルタでろ過する。得られた不溶解残渣を、硫酸、硫酸カリウムおよび純銅製チップ中で加熱して分解し、分解物をろ液に合わせる。この溶液を、水酸化ナトリウムでアルカリ性にした後、水蒸気蒸留を行い、留出したアンモニアを希硫酸に吸収させる。さらに、フェノール、次亜塩素酸ナトリウムおよびペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウムを加えて青色錯体を生成させ、吸光光度計を用いて吸光度を測定して全N化合物量を求める。
そして、上記(a)の方法によって求められた全N量から、上記(b)の方法によって求められた全N化合物量を差し引いて固溶N量を求めることができる。
4.金属組織
〔本発明鋼板の組織〕
本発明の実施形態に係る熱延鋼板は、フェライト−パーライト複相組織鋼をベースとするものである。その金属組織は、詳細を後述するように、フェライト−パーライト複相組織のフェライト(フェライト母相)中に球状セメンタイトを含むこと、フェライトの平均結晶粒径が特定範囲内であること、およびフェライトおよびパーライト以外の金属組織が所定の比率以下であるという特徴を有する。
以下にこれらについて詳述する。
(1)フェライト母相に球状セメンタイトが分散した組織
本発明の実施形態に係る熱延鋼板の組織は、母相のフェライトにパーライトまたはベイナイト中のセメンタイトが分断、球状化した球状セメンタイトが分散した、いわゆる球状化焼鈍組織である。このような組織は、鋼板を圧延後に球状化焼鈍することによって得ることができる。球状化セメンタイトはなるべく粗大かつ球形に近いものが望ましい。さらに球状化焼鈍前の組織にベイナイトを多く含む場合は、加工度10%以上の冷間圧延を行ってから球状化焼鈍を行うことがフェライトを軟らかくする上で重要である。球状化セメンタイトの好ましいサイズは、平均円相当直径が0.3〜1.0μmである。
(2)前記フェライトの平均結晶粒径:3〜35μm
フェライト組織を構成するフェライトの平均結晶粒径を3〜35μmの範囲するとこで、鋼板の加工性を向上させるとともに、優れた加工後の表面性状を得ることができる。フェライトの平均結晶粒径が小さすぎると、変形抵抗が高くなりすぎる。このため、平均結晶粒径は3μm以上、好ましくは4μm以上、より好ましくは5μm以上とする。一方、フェライトが粗大化し過ぎると、加工後の表面性状が劣化し、また靱性、疲労特性などが劣化するため、その平均結晶粒径は35μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下とする。
・フェライトの平均結晶粒径の測定方法
フェライトの平均結晶粒径については、以下のようにして測定することができる。最表層部、板厚1/4部、板厚中心部の3箇所、それぞれでフェライトの結晶粒径を測定する。フェライト粒子1個の粒径については、各測定箇所の圧延方向の側面部、すなわち圧延方向に平行でかつ板面に垂直な面をナイタール腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM;倍率1000倍)により該当部位を1視野13000μm(100μm×130μm)で5視野撮影し、フェライトの結晶粒を画像解析による重心直径により、平均結晶粒径としてよい。
(3)フェライトおよびパーライト以外の金属組織の面積率が7.0%以下
金属組織は、フェライトおよびパーライトを主とする組織であって、フェライトおよびパーライト以外の金属組織の面積率が7.0%以下である。換言すればフェライトとパーライトの合計の面積率が93%以上である。フェライトおよびパーライト以外の組織として例えば、ベイナイト、マルテンサイトおよび残留オーステナイトがある。フェライトおよびパーライト以外の組織が面積率で7%を超えて含まれていると冷間加工性を劣化させる。
フェライトの面積率は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上である。
以上に説明した本発明の実施形態に係る熱延鋼板は、加工性に優れるため冷間加工が容易である。また、冷間加工による加工効果特性に優れ、例えば、硬さ280HV程度以上の中硬度(例えばHV280〜400)をまで強度上昇させることができる。このような硬度(強度)を有する部分は耐疲労性に優れる。さらに焼入れ性に優れることから、一部分だけ局部的に焼入れを行うことでこの部分の硬さを例えば440HV以上のような高い硬度とすることができる。この結果、局部的に耐摩耗性に優れた部分を形成できる。このように一部分だけを焼入れするためには、例えば高周波誘導加熱のような急速加熱を行い焼入れ(所謂、高周波焼入れ)を行うことが好ましい。
すなわち本発明の実施形態に係る熱延鋼板を用いることで、単一の熱延鋼板により、耐疲労性に優れた部分と耐摩耗性に優れた部分とを有する部品を一体で製造することが可能となる。
5.製造方法
本発明の実施形態に係る熱延鋼板は以下に示す条件にて、転炉で上記成分組成を有する溶鋼を調製し、これを造塊または連続鋳造によりスラブしてから所望の板厚の熱延鋼板に圧延することによって行うことができる。
こうして製造された熱延鋼板はフェライトパーライト、フェライトベイナイトまたはベイナイト組織を種とする。このような組織を有する鋼板に球状化焼鈍を行うことで、上述の所望のフェライトおよび球状化セメンタイトを含む鋼板となる。
以下に本発明の実施形態に係る熱延鋼板の製造方法を詳述する。
(1)溶鋼の調製
溶鋼中のNの含有量については、例えば、転炉での溶製の際に、溶鋼にN化合物を含む原料を添加すること、および/または、転炉の雰囲気をN雰囲気に制御することにより調整してよい。また、Oを低減するために、真空脱酸するか、適宜、CaまたはREMなどの強い脱酸元素を添加してもよい。
(2)熱間圧延
・加熱
熱間圧延前の加熱温度は1100〜1300℃とする。N化合物の生成を抑制し、なるべく多くのNを固溶させるために、高温の加熱条件が必要だからである。加熱温度の下限は1100℃、好ましい下限は1150℃である。特にNbを含む場合、Nbの炭窒化物を固溶させるために1150℃以上の加熱が必要である。一方、1300℃を超える温度は操業上困難である。
・熱間圧延
熱間圧延は、仕上げ圧延出側温度(仕上げ圧延温度)を800℃以上、好ましくは820℃以上で行う。仕上げ圧延温度が低すぎるとAlN、ならびにNbおよびVが添加されている場合はNbNおよびVNが生成してNの固溶量を十分に確保できなくなる。なお、仕上げ圧延温度の上限は操業上の実用的な温度範囲を考慮し、1000℃とする。なお、高温すぎると結晶粒径が粗大化しやすいというデメリットが生じる場合がある。
・熱間圧延パススケジュール
本発明の実施形態に係る熱延鋼板の板厚は3〜20mmであり、フェライト結晶粒を微細化して、その平均結晶粒径を所定の粒径範囲に制御するために、上記の圧延温度の制御だけでなく、仕上げ圧延の最終圧下率を15%以上とする。通常、仕上げ圧延の最終圧下率は、12〜13%程度までであるが、本発明の実施形態では上述のように、仕上げ圧延温度を高くするので、結晶粒径を微細化するために仕上げ圧延の最終圧下率を通常よりも高く設定する必要がある。仕上げ圧延の最終圧下率は、15%以上、好ましくは18%以上、より好ましくは20%以上とする。
・熱間圧延後の冷却および巻取り
上記仕上げ圧延終了後、5秒以内に20℃/秒以上の冷却速度(第1冷却速度)で750℃まで急冷し、その後は750℃から500℃までを2℃/秒以上15℃/秒以下の冷却速度(第2冷却速度)で冷却する。仕上げ圧延温度から750℃までの急冷は、オーステナイト粒径の粗大化を防止して最終的なフェライト粒径の粗大化を防ぐためである。また、750℃から500℃までの冷却は、冷却中にAlN(NbおよびVを含む場合はNbNおよびVNも)が析出してN固溶量が減少するのを防ぎ、適切なフェライト+パーライト組織を得るために重要である。
ここで、第2冷却速度が15℃/を超えると最終的に固溶C量が増える、またはベイナイトが生成して冷間加工性が劣化する。一方、2℃/秒を下回ると、AlN(NbおよびVを含む場合はNbNおよびVNも)が析出して固溶C量が減少し、加工後硬さが十分でない場合がある。
上記500℃までの冷却後は、20℃/秒以上の冷却速度(第3冷却速度)で急冷し、300℃超450℃以下の温度で巻き取る。巻取り中あるいは巻き取ったあとでAlN(NbおよびVを含む場合はNbNおよびVNも)が析出してN固溶量が減少するのを防ぐとともに、不要なマルテンサイトおよび残留オーステナイトの生成を防ぐためである。第3急冷速度が20℃/秒未満、または、巻取り温度が450℃超では、AlN(NbおよびVを含む場合はNbNおよびVNも)が析出してN固溶量が減少してしまい、一方300℃未満では、マルテンサイトおよび残留オーステナイトが形成され冷間加工性が劣化する虞がある。
・球状化焼鈍
次に巻取り後の鋼板を球状化焼鈍する。球状化焼鈍の条件は、フェライト母相に球状セメンタイトが分散する条件で行う。球状化焼鈍条件は組成等に依存する変態点によって、多少温度条件が上下するが、代表的な例として以下のような条件を挙げる事ができる。
室温から、例えば、720〜780℃のような750℃前後の球状化焼鈍温度まで50〜400℃/時間で昇温する。そして、球状化焼鈍温度で4〜6時間保持後、冷却速度8〜15℃/時間で例えば、620〜680℃のような650℃前後の温度まで炉令し、その後炉外抽出し、空冷により冷却する。
以上により、本発明の実施形態に係る熱延鋼板を得ることができる。
なお、以上に説明した本発明の実施形態に係る熱延鋼板の製造方法に接した当業者であれば、試行錯誤により、上述した製造方法と異なる製造方法により本発明の実施形態に係る熱延鋼板を得ることができる可能性がある。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
1.サンプル作製
下記表1に示す成分組成の鋼を真空溶解法により溶製し、厚さ120mmのインゴットに鋳造し、これを下記表2に示す条件にて熱間圧延を施し熱延鋼板を作製した。なお、表中において本発明の実施形態の範囲から外れる条件については下線を付した。
Figure 2018062692
Figure 2018062692
2.評価結果
(1)固溶N量、各相の面積率およびフェライトの平均結晶粒径
このようにして得られた熱延鋼板について、固溶N量、パーライト、フェライトおよびその他の相(残部)の面積率、ならびフェライトの平均結晶粒径を求めた。得られた結果を表3に示す。
固溶N量は上述の「・固溶N量の測定方法」に記載の方法で測定した。
パーライト、フェライトおよびその他の相(残部)の面積率については、各サンプルをナイタール腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM;倍率1000倍)により5視野(1視野は100μm×130μm)撮影し、フェライト、パーライトおよびその他の相の各比率を点算法で求めた。なお、表3には「パーライト面積率」および「残部(フェライトおよびパーライト以外)面積率」を記載したが、100%からこの両者を引いた値がフェライトの面積率となる。
フェライトの平均結晶粒径は、上述の「・フェライトの平均結晶粒径の測定方法」に記載の方法で測定した。
(2)冷間加工性の評価
図1は、くさび型圧縮試験の概要を示す模式断面図である。
局部的に極めて高い変形ひずみを生じるような冷間加工における加工性(強冷間加工性)を評価するために、試験片の表面部に導入される加工ひずみ量が真ひずみ換算で4以上となるような試験として、80トンプレス試験機にて、くさび型圧縮試験(圧縮速度1mm/秒で、試験片直径の80%圧下)を行った。より詳細には、図1に示すように、円柱状の試験片1を固定治具3により固定し、図1に示す寸法のくさび型の圧縮治具2Aおよびくさび型の固定治具2B(固定治具2Bの先端部の寸法は圧縮治具2Aと同じ。)を用いて、上述のプレス試験機にて圧縮治具Aを押圧した。
なお、試験片1としては、板厚が10mm以上の場合は直径10mmに、板厚が10mm未満の場合は板厚を直径とするように、円柱状に切り出したものを用いた。
本圧縮試験に先立ち、鍛造解析ソフトウェア:FORGE(TRANSVALOR社製)を用いて、上記圧縮試験の80%圧下時における、試験片中の真ひずみ量の分布を計算することにより、試験片の表面部のうち、圧縮治具のR部で圧縮される部位の表面から深さ100μmの位置で真ひずみεが4以上となることを確認している。そして、上記くさび型圧縮試験後の試験片を目視観察することにより、以下の評価基準で強冷間加工性を評価し、○の場合を合格とした。評価結果を表3に示す。
○:試験片に割れ発生せず
△:試験片の表面に微小割れ発生
×:試験片に割れ発生
さらに冷間加工性の別の指標として、試験片の目視で試験片の表面観察を行い加工後の表面性状を以下の基準で評価した。
×:試験片の側面に肌荒れが発生したもの
○:肌荒れが発生しなかったもの
(3)加工後の硬さの評価
また、冷間加工後の硬さの評価として、上記くさび型圧縮試験後の試験片の、圧縮治具により圧縮された部位の表面中央部を、ビッカース硬さ試験機を用いて荷重:500g、測定回数:5回の条件でビッカース硬さ(Hv)を測定し、その平均を加工後硬さ(冷間加工後硬さ)とし、280Hv以上のものを合格とした。測定結果を表3に示す。
(4)冷間加工後焼入れ硬さ
冷間加工後サンプルを高周波加熱にて900℃以上の温度でオーステナイトに完全に変態させた後水焼入れして得られたサンプルの硬さを測定した。硬さはビッカース硬さ試験機を用いて荷重:500g、測定回数:5回の条件でビッカース硬さ(Hv)を測定し、その平均を加工後硬さとし、445HV以上のものを合格とした。測定結果を表3の「加工後IHQ硬さ」の欄に示す。
Figure 2018062692
本発明の実施形態に係る実施例である鋼No.1〜15は、何れも優れた冷間加工性、表面性状、加工後の表面硬さおよび加工後の焼入れ硬さの全てが優れている。
これに対して、比較例サンプルである孔No.16〜34については、以下に示す不具合がある。
鋼No.16は、C量が過多であり、その結果、冷間加工性に劣る。
鋼No.17は、Si量が過多であり、その結果、冷間加工性に劣る。
鋼No.18は、Mn量が過少で、冷間加工後の硬さが不足している。
鋼No.19は、Mn量が過多であり、その結果、冷間加工性に劣る。
鋼No.20は、P量が過多であり、その結果、冷間加工性に劣る。
鋼No.21は、S量が過多であり、その結果、冷間加工性に劣る。
鋼No.22は、Al量が過多であり、[%Al] / [%N]比が過大であり、その結果、固溶N量が過少となり、冷間加工後の硬さが不足している。
鋼No.23は、N量が過少であり、その結果、固溶N量が過少で、冷間加工性に劣り、冷間加工後の硬さが即している。
鋼No.24は、N量が過大であり、その結果、冷間加工性に劣る。
鋼No.25は、 [%Al] / [%N]比が過大であり、固溶N量が過少であり、その結果、冷間加工性に劣り、冷間加工後の硬さが不足している。
鋼No.26は、熱間圧延時の加熱温度が低過ぎ、その結果、固溶N量が過少であり、冷間加工後の硬さが不足している。
鋼No.27は、熱間圧延時の最終圧下率が低過ぎ、その結果、フェライトの平均結晶粒径が過大となり、冷間加工性および表面性状に劣る。
鋼No.28は、仕上げ圧延出側温度(仕上げ圧延温度)が低過ぎ、その結果、固溶N量が過少となり、冷間加工後の硬さが不足している。
鋼No.29は、熱間圧延時の第1冷却速度が過小で、その結果、フェライトの平均結晶粒径が過大となり、冷間加工性および表面性状に劣る。
鋼No.30は、熱間圧延時の第2冷却速度が過小で、その結果、固溶N量が過少となり、冷間加工後の硬さが不足している。
鋼No.31は、熱間圧延時の第3冷却速度が過小で、その結果、固溶N量が過少となり、冷間加工後の硬さが不足している。
鋼No.32は、熱間圧延時の巻取り温度が高過ぎ、その結果、固溶N量が過少となり、冷間加工後の硬さが不足している。
鋼No.33は、熱間圧延時の巻取り温度が低過ぎ、その結果、フェライトおよびパーライト以外の組織の面積率が高過ぎ、冷間加工性に劣る。
鋼No.34は、板厚が厚過ぎ、その結果、フェライトの平均結晶粒径が過大で、冷間加工性に劣る。

Claims (6)

  1. C :0.30質量%超、0.50質量%以下、
    Si:0.5質量%以下(0質量%を含まない)、
    Mn:0.2質量以上、1質量%以下、
    P :0.05質量%以下(0質量%を含まない)、
    S :0.05質量%以下(0質量%を含まない)、
    Al:0.01質量%未満(0質量%を含まない)、
    N :0.008質量%以上、0.025質量%以下、
    を含有し、残部は鉄および不可避的不純物からなり、
    板厚が3〜20mmであり、
    下記の(1)式を満足し、且つ固溶N:0.007質量%以上であり、
    フェライト母相中に球状セメンタイトが分散した金属組織を含み、フェライトの平均結晶粒径が3〜35μmの範囲であり、
    フェライトおよびパーライト以外の金属組織の面積率が7.0%以下である熱延鋼板。

    [%Al] / [%N] ≦ 0.4 (1)
    但し、[%Al]は質量%で示したAl含有量であり、[%N]は質量%で示したN含有量。
  2. Nb:0.2質量%以下(0%を含まない)およびV:0.2質量%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含む請求項1に記載の熱延鋼板。
  3. TiおよびZrの少なくとも一方を更に含み、TiとZrの合計含有量が0.06質量%以下(0質量%を含まない)である請求項1または2に記載の熱延鋼板。
  4. Cr:2.0質量%以下(0質量%を含まない)およびMo:2.0%質量以下(0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱延鋼板。
  5. Cu:5.0質量%以下(0質量%を含まない)、Ni:5.0質量%以下(0質量%を含まない)およびCo:5.0質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱延鋼板。
  6. Ca:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、REM:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、Mg:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Li:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Pb:0.5質量%以下(0質量%を含まない)およびBi:0.5質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱延鋼板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR102458518B1 (ko) * 2022-04-05 2022-10-25 신승호 내마모성 유압 브레이커용 프론트 커버

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