JP2018062440A - ジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法 - Google Patents

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慎之介 有光
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Yoichi Kayano
洋一 萱野
浩嘉 宮原
Hiroyoshi Miyahara
浩嘉 宮原
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Abstract

【課題】耐アルカリ性が高いジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法を提供する。【解決手段】無機オキソ酸及び/またはその塩と、ジルコニウム酸化物前駆体とを任意の順で、または同時に多孔質シリカに付着させ、次いで焼成する、ジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法である。無機オキソ酸及び/またはその塩は、硫酸、炭酸、ホウ酸、及びこれらの塩からなる群から選択される1種以上を用いることができる。【選択図】なし

Description

本発明は、ジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法に関する。
多孔質シリカは、液体クロマトグラフィ用充填材、固定化酵素用担体、形状選択性触媒、各種イオンの吸着・分離用材料、塗料用艶消材、化粧品原料等に用いることができる。
多孔質シリカの用途に応じて、多孔質シリカがアルカリ環境下で用いられる場合には、多孔質シリカに耐アルカリ性を付与したものを用いることが望まれる。
近年、アフィニティクロマトグラフィを用いて、特定のタンパク質を高精度に精製又は除去することが、医薬分野および医療分野において重要視されている。例えば、特定の機能を有する薬品を精製する場合には、特定のタンパク質を高精度に精製することが必要とされる。
アフィニティクロマトグラフィでは、リガンドとして特異的な結合性を有するプロテインAが広く利用されている。プロテインAは、グラム陽性球菌である真正細菌のブドウ球菌(Staphylococcus)に由来するタンパク質であり、様々な動物由来のIgGのFc領域と特異的に結合する性質を有し、IgG精製に広く利用されている。プロテインAを不溶性担体に固定化させ、この不溶性担体を用いたアフィニティクロマトグラフィによりIgGを特異的に分離精製する手法が広く知られている。
アフィニティクロマトグラフィに用いられるアフィニティ担体においては、一般に、リンカーと称される構造を不溶性担体とリガンドの間に介在させ、リンカーの一端を担体に結合させ、且つリンカーの他端をリガンドに結合させることにより、リガンドを不溶性担体に固定化している(特許文献1)。
アフィニティクロマトグラフィでは、担体をアルカリ洗浄することがあるため、担体の耐アルカリ性が重要になる。
多孔質シリカに耐アルカリ性を付与する一方法としては、特許文献2および特許文献3に開示される。
特許文献2には、シリカゲルにジルコニウム成分を担持させる耐アルカリ性に優れたシリカゲルの製造方法が提案されている。特許文献2の実施例では、ジルコニウム塩として硝酸ジルコニルをシリカゲルに担持させている。
特許文献3には、ジルコニアがコートされたコントロールドポアガラスにプロテインAが固定された分離剤が開示されている。特許文献3の実施例では、コントロールドポアガラス(CPG)をZrOの薄層でコートすることが記載されるが、ZrO源等の詳細については開示されていない。
国際公開第2013/062105号 特許第2740810号公報 国際公開第2014/067605号
特許文献2および3では、多孔質シリカをジルコニウムで処理して耐アルカリ性を付与しているが、処理後の多孔質シリカの細孔形状については検討されていない。また、多孔質シリカの耐アルカリ性をさらに高めることが望まれる。
一方、多孔質シリカをクロマトグラフィ担体として用いる場合、ジルコニアの処理前後で多孔質シリカの細孔形状を維持して、処理後の多孔質シリカの理論段数を高めることが望まれる。
特許文献2では、硝酸ジルコニル水溶液にシリカゲルを接触させて硝酸ジルコニルをシリカゲルに担持させるのみであり、耐アルカリ性が十分に得られない。
特許文献3では、ZrOをコントロールドポアガラスにコートすることについて、ZrO源等が不明であり、ZrOのコート方法についてさらなる検討を要する。
本発明の一目的は、耐アルカリ性が高いジルコニア被覆多孔質シリカを製造することである。
本発明は、以下を要旨とする。
(1)無機オキソ酸及び/またはその塩と、ジルコニウム酸化物前駆体とを任意の順で、または同時に多孔質シリカに付着させ、次いで焼成する、ジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
(2)無機オキソ酸及び/またはその塩は、硫酸、炭酸、ホウ酸、及びこれらの塩からなる群から選択される1種以上である、(1)に記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
(3)前記無機オキソ酸及び/またはその塩を多孔質シリカに付着させ、次いで前記ジルコニウム酸化物前駆体を多孔質シリカに付着させる、(1)または(2)に記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
(4)前記無機オキソ酸及び/またはその塩は、硫酸水素カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上である、(1)から(3)のいずれかに記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
(5)前記ジルコニウム酸化物前駆体が、塩化ジルコニウム (IV)、塩化ジルコニウム (III)、オキシ塩化ジルコニウム、テトラアルコキシジルコニウム、及びジアルコキシジルコニウムジクロリドからなる群から選択される1種以上である、(1)から(4)のいずれかに記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
(6)多孔質シリカの単位比表面積当たりの前記ジルコニウム原子の付着量が1μmol/m〜15μmol/mである、(1)から(5)のいずれかに記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
(7)多孔質シリカの単位比表面積当たりの前記無機オキソ酸及び/またはその塩の合計の付着量が1μmol/m〜25/μmol/mである、(1)から(6)のいずれかに記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
(8)前記無機オキソ酸及び/またはその塩と、前記ジルコニウム酸化物前駆体とのうち少なくとも一方を乾式法で多孔質シリカに付着させる、(1)から(7)のいずれかに記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
(9)前記焼成の温度が300℃〜500℃である、(1)から(8)のいずれかに記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
本発明によれば、耐アルカリ性の高いジルコニア被覆多孔質シリカを製造することができる。本発明によって製造されるジルコニア被覆多孔質シリカはクロマトグラフィ担体に適する。
以下、本発明について説明するが、以下の説明における例示によって本発明は限定されない。
本発明のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法としては、無機オキソ酸及び/またはその塩と、ジルコニウム酸化物前駆体とを任意の順で、または同時に多孔質シリカに付着させ、次いで焼成する、
ことを特徴とする。
好ましくは、無機オキソ酸及び/またはその塩は、硫酸、炭酸、ホウ酸、及びこれらの塩からなる群から選択される1種以上である。
本発明によれば、耐アルカリ性の高いジルコニア被覆多孔質シリカを製造することができる。また、このジルコニア被覆多孔質シリカを用いて、耐アルカリ性の高いクロマトグラフィ担体を提供することができる。
さらに、このジルコニア被覆多孔質シリカを用いることで、クロマトグラフィ担体の理論段数を高くすることができる。
耐アルカリ性が高いとともに、理論段数が高いクロマトグラフィ担体を用いることで、アルカリ性においても高分離能を有するクロマトグラフィ担体を提供することができる。また、クロマトグラフィ担体をアルカリ洗浄する場合に、繰り返し使用によって、理論段数が低下することを防止することができる。
以下、本発明によって製造されたジルコニア被覆多孔質シリカを「多孔質シリカ(A)」とも記す。多孔質シリカ(A)には、ジルコニウム酸化物前駆体由来のジルコニウム酸化物が含まれる。
多孔質シリカ(A)に含まれるジルコニウム酸化物の少なくとも一部は、Si−O−Zrで表される結合でシリカと結合していると考えられる。以下、多孔質シリカ(A)に含まれるジルコニウム酸化物成分を「Zr成分」とも記す。また、本発明において、ジルコニウム酸化物前駆体は、焼成等により酸化物となるジルコニウム化合物である。以下、「ジルコニウム酸化物前駆体」を「前駆体Zr」とも記す。以下、「無機オキソ酸及び/またはその塩」を「オキソ酸化合物」とも記す。
前駆体Zrで多孔質シリカを処理することで、耐アルカリ性を付与することができるが、一方で、細孔形状が変化するという知見を得た。おそらく、前駆体Zrで多孔質シリカを処理する際に、多孔質シリカ表面にZr成分の分布が不均一となり、細孔形状が変化すると考えられる。Zr成分が多孔質シリカ表面に不均一に分布すると、多孔質シリカ表面にZr成分が存在しない部分では、ジルコニウム処理工程を行わないシリカと比較して、耐アルカリ性が向上しにくいことがある。
本発明によれば、オキソ酸化合物と、ジルコニウム酸化物前駆体とを任意の順で、または同時に多孔質シリカに付着させ、次いで焼成することで、細孔形状を処理前後で維持することができる。細孔形状が維持されることから、Zr成分が多孔質シリカ表面に形成されることがわかる。
これは、多孔質シリカの表面上で、オキソ酸化合物由来の配位子がジルコニウムと錯体形態を形成することで、多孔質シリカ(A)表面にZr成分がより均一に分布するためと考えられる。
このように、本発明によれば、Zr成分が多孔質シリカ(A)上に均一に分布するため、耐アルカリ性を高めることができる。
また、本発明によれば、処理前後で細孔形状を維持することができるため、多孔質シリカ(A)をクロマトグラフィ担体に用いた場合に、理論段数の低下を防ぎ、理論段数の高い多孔質シリカ(A)を得ることができる。
以下、本発明による多孔質シリカ(A)の製造方法について説明する。
以下、無機オキソ酸及び/またはその塩(オキソ酸化合物)を多孔質シリカに付着させる処理を「オキソ酸処理」とも記し、ジルコニウム酸化物前駆体を多孔質シリカに付着させる処理を「Zr処理」とも記す。オキソ酸処理及びZr処理を行った後に多孔質シリカを焼成することにより、Zrによって被覆された多孔質シリカ(A)が製造される。
本発明では、(1)多孔質シリカにオキソ酸化合物を付着させ、次いで前駆体Zrを付着させてもよく、(2)多孔質シリカにオキソ酸化合物及び前駆体Zrを同時に付着させてもよく、(3)多孔質シリカに前駆体Zrを付着させ、次いでオキソ酸化合物を付着させてもよい。
多孔質シリカに前駆体Zrを付着させる前または同時に、オキソ酸化合物を付着させることで、多孔質シリカの表面にオキソ酸化合物由来の配位子を形成して、この配位子と前駆体ZrとによってZr錯体を形成することができる。この場合、多孔質シリカをより均一にZr被覆することができる。
無機オキソ酸としては、例えば、硫酸、炭酸、ホウ酸、ケイ酸、リン酸、硝酸、亜硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、亜硝酸、亜リン酸等を挙げることができる。
無機オキソ酸塩としては、例えば、上記した無機オキソ酸の塩であって、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アニリニウム塩等を挙げることができる。
オキソ酸化合物としては、硫酸、炭酸、ホウ酸、これらの塩を好ましく用いることができる。中でも、オキソ酸化合物としては、硫酸水素カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムを好ましく用いることができる。
これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前駆体Zrとしては、例えば、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ジルコニウム(III)、オキシ塩化ジルコニウム、テトラアルコキシジルコニウム、ジアルコキシジルコニウムジクロリド等を挙げることができる。
テトラアルコキシジルコニウムの例としては、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−iso−プロポキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド等を挙げることができる。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
この前駆体Zrが付着した多孔質シリカを焼成することで、Zr成分を多孔質シリカの表面に形成することができる。
また、前駆体Zrとしては、ジルコニウムキレートを用いることができる。
ジルコニウムキレートとしては、例えば、
テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(ジエチルマロネート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセテート)ジルコニウム等を挙げることができる。
これらのジルコニウムキレートは単独で、2種以上を組み合わせて、または上記した各種前駆体Zrと組み合わせて用いることができる。
(1)多孔質シリカにオキソ酸化合物を付着させ、次いで前駆体Zrを付着させるZr処理は、例えば、多孔質シリカに、オキソ酸化合物を含む組成物を付着させ、次いで前駆体Zrを含む組成物を付着させて行うことができる。これによって、多孔質シリカにオキソ酸化合物を均一に付着させ、その上から前駆体Zrを付着させ、前駆体Zrを多孔質シリカにより均一に付着させることができる
オキソ酸化合物を含む組成物は、オキソ酸化合物を溶解ないし分散可能な水等の溶媒を含んでもよい。
(2)多孔質シリカにオキソ酸化合物及び前駆体Zrを同時に付着させるZr処理は、例えば、前駆体Zr及びオキソ酸化合物を含む組成物を多孔質シリカに付着させて行うことができる。
前駆体Zr及びオキソ酸化合物を含む組成物は、両成分を溶解ないし分散可能な溶媒を含んでもよい。
(3)多孔質シリカに前駆体Zrを付着させ、次いでオキソ酸化合物を付着させるZr処理は、例えば、多孔質シリカに、前駆体Zrを含む組成物を付着させ、次いでオキソ酸化合物を含む組成物を付着させて行うことができる。各組成物は、上記した(1)のZr処理と同様のものを用いることができる。
上記Zr処理では、多孔質シリカの単位比表面積当たり、1〜15μmol/mのジルコニウム原子を含むように、前駆体Zrを多孔質シリカに付着させることが好ましい。なお、以下、「ジルコニウム原子」を「Zr原子」とも記す。
後述するスラリー濃縮乾固法、スラリー濾過法、乾式法、気相法等を用いて多孔質シリカに各成分を付着させる場合、投入した成分全量が多孔質シリカに付着するようになる。この場合、各成分の投入量を、多孔質シリカへの付着量とすることができる。
また、多孔質シリカの焼成前後では、焼成によって除去される成分を除いて、固形分量のほぼ全量が多孔質シリカに付着して残るようになる。そのため、Zr処理工程における多孔質シリカの単位比表面積当たりのZr原子量は、焼成後の多孔質シリカ(A)の単位比表面積当たりのZr原子量と共通する。
Zr原子の含有量が、多孔質シリカ(A)の単位比表面積当たり1μmol/m以上であることで、耐アルカリ性の作用を高めることができる。この値は、好ましくは2μmol/m以上であり、より好ましくは2.5μmol/m以上である。
一方、Zr原子の含有量が、多孔質シリカ(A)の単位比表面積当たり15μmol/m以下であることで、多孔質シリカ(A)の細孔形状を維持することができる。一方、Zr原子が過剰に配合されると、理論段数が低下することがある。Zr原子含有量の値は、好ましくは13.5μmol/m以下であり、より好ましくは10μmol/m以下である。
なお、焼成後の多孔質シリカ(A)において、Zr原子の単位比表面積当たりのモル数は、ICP分析法によって多孔質シリカ(A)全体に対するZr原子含有量(質量%)を求め、このZr原子含有量(質量%)と多孔質シリカ(A)の比表面積とからより正確に求めることができる。
焼成後の多孔質シリカ(A)において、Zr原子を有するZr成分は、多孔質シリカ(A)の表面に存在していることが好ましい。ここで、「表面に存在する」とは、Zr成分がシリカの表面から内部方向に濃度傾斜を有して存在していることも意味する。
前駆体ZrまたはZr錯体を多孔質シリカに付着させ焼成することで、多孔質シリカ(A)の表面にZr成分を存在させることができる。
上記オキソ酸処理では、多孔質シリカの単位比表面積当たり、1〜25μmol/mのオキソ酸化合物を含むように、オキソ酸化合物を多孔質シリカに付着させることが好ましい。オキソ酸化合物を2種類以上含む場合は、合計の付着量がこの範囲を満たすことが好ましい。
後述するスラリー濃縮乾固法、スラリー濾過法、乾式法、気相法等を用いて多孔質シリカにオキソ酸化合物を付着させる場合、投入した成分全量が多孔質シリカに付着するようになる。この場合、オキソ酸化合物の投入量を、多孔質シリカへの付着量とすることができる。
オキソ酸化合物が焼成によってほぼ除去される場合、焼成後の多孔質シリカ(A)において、オキソ酸化合物由来の成分はほとんど残らない。
オキソ酸化合物が硫酸、ケイ酸、リン酸、亜硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、亜硝酸、亜リン酸等である場合は、焼成後の多孔質シリカ(A)において、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子等が残るようになる。この場合、オキソ酸処理工程における多孔質シリカの単位比表面積当たりのオキソ酸化合物量(μmol/m)は、焼成後の多孔質シリカ(A)の単位比表面積当たりの各原子量(μmol/m)と共通する。
オキソ酸化合物の付着量が、多孔質シリカの単位比表面積当たり1μmol/m以上であることで、Zr化合物の安定性が向上し、均一な被覆を形成することで、耐アルカリ性が向上しやすい。この値は、好ましくは3μmol/m以上であり、より好ましくは8μmol/m以上である。
一方、オキソ酸化合物の付着量が、多孔質シリカの単位比表面積当たり25μmol/m以下であることで、焼成時の燃焼負荷を低減させることができる。この値は、好ましくは20μmol/m以下であり、より好ましくは17.5μmol/m以下である。
原料の多孔質シリカとしては、特に限定されないが、クロマトグラフィ担体に適する形状および細孔物性を有するシリカであることが好ましい。
Zr処理、オキソ酸処理および焼成の前後において、これらの物性に変化は少ないためである。
例えば、原料の多孔質シリカにおいて、平均粒子径は2〜1000μmであることが好ましく、D90/D10は3.5以下であることが好ましく、比表面積は40〜100m/gであることが好ましく、平均細孔径は30〜1000nmであることが好ましく、細孔容積は0.5〜2.5mL/gであることが好ましい。
具体的には、目的物である多孔質シリカ(A)は次の特性を有することが好ましい。
多孔質シリカ(A)の形状としては、球状粒子であることが好ましく、真球体および楕円体を含めた球状とすることができる。クロマトグラフィ担体の用途では、カラムへの充填性、使用時の圧力損失の抑制の観点から、真球体に近い形状であることが好ましい。
アフィニティクロマトグラフィ担体で用いられる多孔質シリカ(A)の平均粒子径としては、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは7μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。
一方、多孔質シリカ(A)の平均粒子径としては、500μm以下であることが好ましく、より好ましくは200μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。
ここで、多孔質シリカ(A)の平均粒子径はコールターカウンター法による測定方法によって測定される。
アフィニティクロマトグラフィ担体で用いられる多孔質シリカ(A)の粒子径分布の体積換算の積算量が小さいほうから10%の粒子径(D10)と90%の粒子径(D90)の比(D90/D10)としては、レーザー式光散乱法において、3以下であり、好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.6以下である。D90/D10が1.6以下であることで、平均粒子径が小さな多孔質シリカ(A)であっても圧力損失の増大を防ぐことができる。また、D90/D10は、1に近いほど粒子径分布が均等であり好ましい。
ここで、多孔質シリカ(A)のD90/D10はコールターカウンター法による測定方法によって測定される。D10は、コールターカウンター法による粒子径分布において、粒子径の体積を粒子径の小さな側から積算していった場合に合計体積の10%となるときの粒子径であり、D90は同様に積算体積が90%となる粒子径である。D90/D10はこれらの粒子径の比であることから、多孔質シリカ(A)をベックマン・コールター社製「Multisizer III」等にて測定して得られたD10およびD90から求めることができる。
アフィニティクロマトグラフィ担体で用いられる多孔質シリカ(A)の比表面積としては、水銀圧入法において、好ましくは40m/g〜75m/gであり、より好ましくは45m/g〜75m/gである。比表面積としては、上記した平均細孔径および細孔容積とともに目的に合わせて適正化することができる。比表面積が大きいことで抗体分子を吸着する能力が向上するため好ましいが、大きくなると多孔質シリカ(A)の強度が低下するため、上記範囲内で設定するとよい。
アフィニティクロマトグラフィ担体で用いられる多孔質シリカ(A)の平均細孔径としては、水銀圧入法において、30nm〜500nmであり、好ましくは70nm〜300nmであり、より好ましくは85nm〜115nmである。平均細孔径が30nm以上であることで、抗体分子を吸着する能力が向上し大容量の担体を提供することができる。また、平均細孔径が500nm以下であることで、抗体分子の吸着量を大きく保ちながら多孔質シリカ(A)の強度の低下を防ぐことができる。
アフィニティクロマトグラフィ担体で用いられる多孔質シリカ(A)の細孔容積としては、水銀圧入法において、0.5mL/g以上であり、好ましくは1.0mL/g以上であり、より好ましくは1.5mL/g以上である。細孔容積が0.5mL/g以上であることで、抗体分子を吸着する能力が向上し大容量の担体を提供することができる。また、細孔容積は、多孔質シリカ(A)の強度の観点から、2.0mL/g以下であることが好ましい。
これらの水銀圧入法による細孔物性は、島津製作所社製「水銀ポロシメーター オートポアIV9510」等を用いて測定することができる。
また、陽イオン交換クロマトグラフィ担体、陰イオン交換クロマトグラフィ担体、逆相クロマトグラフィ担体、サイズ排除クロマトグラフィ担体で用いられる多孔質シリカ(A)は、特に限定するものではないが、通常、平均粒子径0.5〜10,000μm、好ましくは1〜500μm、平均細孔径0.5〜600nm、比表面積50〜10,000m/g、好ましくは100〜1,000m/g程度のものが望ましい。
原料の多孔質シリカの製造方法としては、特に限定されない。例えば、噴霧法、エマルション・ゲル化法等が挙げられる。エマルション・ゲル化法としては、例えば、シリカ前駆体を含む分散相と連続相とを乳化し、得られたエマルションをゲル化して多孔質シリカを得ることができる。必要であれば、多孔質シリカの平均細孔径および細孔容積を大きくするための処理を適宜行ってもよい。
乳化方法としては、シリカ前駆体を含む分散相を連続相に微小孔部または多孔質膜を介して供給しエマルションを作製する方法が好ましい。これによって、均一な液滴径のエマルションを作製して、結果として均一な粒子径の多孔質シリカを得ることができる。このような乳化方法としては、マイクロミキサー法や膜乳化法を用いることができる。
本発明の製造方法では、マイクロミキサー法によって作製された多孔質シリカを好ましく用いることができる。マイクロミキサー法については、例えば、国際公開第2013/062105号に開示されている。
多孔質シリカに、オキソ酸化合物及び前駆体Zrの各成分を付着させる方法としては、スラリー濃縮乾固法、スラリー濾過法、乾式法、気相法等を用いることができる。
スラリー濃縮乾固法としては、原料の多孔質シリカに、オキソ酸化合物溶液と前駆体Zr溶液とを任意の順でまたは同時に接触させ、濃縮(好ましくは減圧濃縮)して乾固し、乾燥し、焼成し、多孔質シリカ(A)を得る方法である。
例えば、多孔質シリカとオキソ酸化合物溶液とを混合して多孔質シリカにオキソ酸化合物を接触させた後、圧力常圧〜−0.1MPa、温度10〜100℃で濃縮して乾固し、温度10〜180℃、時間5分〜48時間で乾燥する。次いで、この乾燥体を、前駆体Zr溶液に添加、混合して、この乾燥体の多孔質シリカに前駆体Zrを接触させる。
オキソ酸化合物は水や極性有機溶媒と親和性が高いため、オキソ酸化合物溶液に用いる溶媒としては、蒸留水、食塩水等の水性溶媒、1−プロパノール、アセトニトリル等の有機溶媒等を好ましく用いることができる。
また、オキソ酸処理後にZr処理をする場合は、Zr処理で用いる溶媒によってオキソ酸化合物が再溶出しないように、前駆体Zr溶液に用いる溶媒としては、有機溶媒を用いることが好ましく、1−プロパノール、アセトニトリル、トルエン、酢酸エチル、ヘキサン等の有機溶媒等を好ましく用いることができる。
また、Zr処理後にオキソ酸処理をする場合は、多孔質シリカと前駆体Zr溶液とを混合して多孔質シリカに前駆体Zrを接触させた後、上記と同様の条件で濃縮して乾固し、乾燥し、次いで、得られた乾燥体とオキソ酸化合物溶液とを混合して、この乾燥体の多孔質シリカにオキソ酸化合物を接触させる。この場合は、前駆体Zr溶液に用いる溶媒としては、蒸留水、食塩水等の水性溶媒、1−プロパノール、アセトニトリル等の水溶性有機溶媒等を用いることが好ましい。
さらに、オキソ酸処理とZr処理を同時に行う場合は、多孔質シリカとオキソ酸化合物溶液と前駆体Zr溶液とを混合して、多孔質シリカにオキソ酸化合物と前駆体Zrを接触させる。この場合は、オキソ酸化合物に合わせて、蒸留水、食塩水等の水性溶媒、1−プロパノール、アセトニトリル等の水溶性有機溶媒等を用いることが好ましい。
オキソ酸処理とZr処理を行った後の多孔質シリカ分散液の最終段階の濃縮としては、圧力常圧〜−0.1MPaで、温度10〜100℃で行うことが好ましい。
最終段階の乾燥としては、温度10〜180℃、時間5分〜48時間の範囲内で、1段階または2段階以上で行うことが好ましい。
上記乾燥を行った後、焼成を行う。焼成温度としては、好ましくは300〜500℃、より好ましくは350〜450℃である。これによって、多孔質シリカの変質を防ぐとともに、前駆体ZrからZr成分を生成することができる。また、焼成時間は、30分〜24時間であることが好ましい。
好ましいスラリー濃縮乾固法は、原料の多孔質シリカに、水溶性のオキソ酸化合物の水性溶媒溶液を接触させ、濃縮乾固および乾燥後、この乾燥体に、前駆体Zrの有機溶媒溶液を接触させ、濃縮乾固、乾燥および焼成する方法である。
スラリー濾過法は、スラリー濃縮乾固法における濃縮乾固の代わりに濾過により溶媒を除き、溶媒を除いた以降は上記スラリー濃縮乾固法と同様の方法で多孔質シリカ(A)を得る方法である。
オキソ酸化合物溶液と前駆体Zr溶液との接触、用いる溶媒の選択、乾燥、焼成等は、上記したスラリー濃縮乾固法と同様に行うことができる。
好ましいスラリー濾過法は、原料の多孔質シリカに、水溶性のオキソ酸化合物の水性溶媒溶液を接触させ、濾過および乾燥後、この乾燥体に、前駆体Zrの有機溶媒溶液を接触させ、濾過、乾燥および焼成する方法である。
スラリー濾過法としては、原料の多孔質シリカにアミノプロピル修飾多孔質シリカを用いる方法も好ましい。原料の多孔質シリカにアミノプロピル修飾多孔質シリカを用いることで、オキソ酸化合物の再溶出を防ぐことができ、前駆体Zrを水性溶媒で処理することができる。この場合、各濾過の後に、水性溶媒や有機溶媒で洗浄することが好ましい。
乾式法は、原料の多孔質シリカに、前駆体Zr溶液とオキソ酸化合物溶液とを任意の順でまたは同時に接触させ、これら溶液の全量を吸収させて粉末とし、この粉末を乾燥して吸収されている溶媒を除去し、溶媒を除いた以降は上記スラリー濃縮乾固法と同様の方法で多孔質シリカ(A)を得る方法である。
前駆体Zr溶液とオキソ酸化合物溶液との接触、溶媒の選択、乾燥、焼成等は、上記したスラリー濃縮乾固法と同様に行うことができる。
好ましい乾式法は、原料の多孔質シリカに、水溶性のオキソ酸化合物の水性溶媒溶液を接触させてその全量を吸収させ、乾燥後、この乾燥体に、前駆体Zrの有機溶媒溶液を接触させてその全量を吸収させ、乾燥および焼成する方法である。
気相法としては、オキソ酸化合物や前駆体Zrを加熱することで気化または昇華させて、その気体を原料の多孔質シリカと接触させ、焼成し、多孔質シリカ(A)を得る方法である。
なお、上記したスラリー濃縮乾固法、スラリー濾過法、乾式法、気相法、またはこれらに準拠した方法を用いて多孔質シリカを製造する場合では、オキソ酸化合物及び前駆体Zrの使用量は、固形分量のほぼ全量が多孔質シリカに付着する。この場合、焼成によって除去される成分を除いて、固形分量のほぼ全量が焼成後の多孔質シリカ(A)に残るため、焼成後の多孔質シリカ(A)のZr原子含有量は、Zr処理での使用量とほぼ等しくなる。また、オキソ酸化合物が焼成によって除去されない成分を含む場合は、焼成後の多孔質シリカ(A)のオキソ酸化合物由来の原子の含有量は、オキソ酸処理での使用量とほぼ等しくなる。
本発明による製造方法によって製造される多孔質シリカ(A)は、クロマトグラフィ担体として用いることができる。クロマトグラフィ担体としては、上記した多孔質シリカ(A)を支持体として含み、この多孔質シリカ(A)にリガンドが固定されたものを用いることができる。
アフィニティクロマトグラフィ担体では、リガンドとして、プロテインA、プロテインG、コンカナバリンA、抗原、抗体等を用いることができる。
陽イオン交換クロマトグラフィ担体では、リガンドとして、スルホン酸、カルボキシル基等を用いることができる。
陰イオン交換クロマトグラフィ担体では、リガンドとして、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アミン等のアミンを用いることができる。
逆相クロマトグラフィ担体では、リガンドとして、アルキル基、フェニル基、フッ化アルキル基等を用いることができる。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基を用いることが好ましく、例えば、メチル基、ブチル基、オクチル基、オクタデシル基等を挙げることができる。
サイズ排除クロマトグラフィ担体では、リガンドとしてジオール基等を用いることができる。
リガンドとしてプロテインAを用いる場合、アフィニティクロマトグラフィ担体は、上記した多孔質シリカ(A)を基材として用いることで、プロテインAの固定化量が9.5mg/mL−bed以上とすることができ、より好ましくは10mg/mL−bed以上であり、さらに好ましくは10.5mg/mL−bed以上である。プロテインAの固定化量の上限は特に制限は無いが、30mg/mL−bed以下が好ましく、25mg/mL−bed以下がより好ましい。
また、動的結合容量は35mg/mL−bed以上であり、かつ、室温で500mMの水酸化ナトリウム水溶液に20時間浸漬し、浸漬前の動的結合容量に対する浸漬後の動的結合容量の割合は60%以上であることが好ましい。
ここで、プロテインAの固定化量の測定方法としては、プロテインAを固定化した担体を乾燥して、この担体を元素分析して求めることができる。
次に、多孔質シリカ(A)にプロテインAを固定化してアフィニティクロマトグラフィ担体を製造する方法の一例について説明する。
上記した多孔質シリカ(A)にプロテインAを固定させる方法としては、リンカーと称される構造を多孔質シリカ(A)とリガンドの間に介在させ、リンカーの一端を多孔質シリカ(A)に結合させ、かつリンカーの他端をリガンドに結合させることにより、リガンドを多孔質シリカ(A)に固定させる方法が挙げられる。
以下、一例として、多孔質シリカ(A)とエポキシ基含有化合物とを反応させ、さらにプロテインAを反応させる方法について説明する。
多孔質シリカ(A)とエポキシ基含有化合物とを反応させることで、多孔質シリカ(A)表面にエポキシ基含有化合物を固定化し、リンカーを形成することができる。リンカーは末端にエポキシ基を有する。
エポキシ基含有化合物としては、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。エポキシ基含有シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を用いることができる。
多孔質シリカ(A)とエポキシ基含有化合物とを反応させる方法としては、特に限定されないが、例えば、多孔質シリカ(A)とエポキシ基含有化合物とを溶媒中で加温する方法を用いることができる。反応温度は例えば30〜400℃程度であり、100〜300℃が好ましい。反応時間は例えば0.5〜40時間程度であり、3〜20時間が好ましい。
溶媒としては、エポキシ基含有化合物と反応せず、かつ、反応温度下で安定なものであれば、特に限定されない。エポキシ基含有化合物の溶解性、沸点、さらには他の溶媒との親和性(すなわち洗浄時における除去性)などの観点から、通常、ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、イソオクタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等を用いることができる。また、反応操作は溶媒の還流下で行ってもよい。
エポキシ基含有化合物の固定化量は、一般的には多いほど、つまり、多孔質シリカ(A)表面全体を緻密に覆う量であることが、多孔質シリカ(A)の耐アルカリ性を向上させる観点から好ましい。具体的には、多孔質シリカ(A)の1gあたりのエポキシ基含有化合物の量(エポキシ基含有化合物の固定化量を多孔質シリカ(A)の質量で除した値)が220μmol/g以上となるように反応させることが好ましい。エポキシ基含有化合物の固定化量は、220〜320μmol/gがより好ましく、240〜300μmol/gが特に好ましい。
なお、エポキシ基含有化合物の固定化量は公知の方法に基づいて求められる。例えば、エポキシ基含有化合物を固定化した後の多孔質シリカ(A)について元素分析法により測定した炭素含有率をもとに、エポキシ基含有化合物1分子に含まれる炭素量、および、多孔質シリカ(A)の質量とを用いて、エポキシ基含有化合物の固定化量を算出できる。
多孔質シリカ(A)とエポキシ基含有化合物との反応系には、さらに、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等のアミン化合物を存在させてもよい。これによって、アミンの触媒作用により、多孔質シリカ(A)とエポキシ基含有化合物との反応が促進される。
好ましくは、得られたエポキシ修飾した多孔質シリカ(A)を、さらにジオール化し、グリセロールポリグリシジルエーテルで処理する。
ジオール化の方法としては、例えば、希塩酸等の酸によりエポキシ基を開環させることにより、ジオール修飾多孔質シリカ(A)を得る方法を用いることができる。
グリセロールポリグリシジルエーテルの処理方法としては、例えば、グリセロールポリグリシジルエーテル(商品名「デナコールEX−314」、ナガセケムテック社製)と、メタノール等の有機溶媒とを混合し、乾燥させる。この乾燥体に、デカン等の有機溶媒と三フッ化水素ジエチルエーテルとを加えて混合し、洗浄および乾燥して、グリセロールポリグリシジルエーテル修飾多孔質シリカ(A)を得ることができる。
得られたグリセロールポリグリシジルエーテル修飾多孔質シリカ(A)をホルミル化することで、この多孔質シリカ(A)にプロテインAを還元的アミノ化反応によって担持させることができる。ホルミル化は、例えば、多孔質シリカ(A)を過ヨウ素酸ナトリウムを用いて処理することで行うことができる。
次に、リンカーが導入された多孔質シリカ(A)にプロテインAを固定させる。プロテインAとしては、アミノ基(特にリジンアミノ基)を有するものを用いることができる。中でも、リコンビナントプロテインAを好ましく用いることができる。
上記した多孔質シリカ(A)のリンカー構造にリガンドを結合させる方法としては、これに限定されないが、多孔質シリカ(A)とプロテインAを含む溶液とを混合し、適宜触媒や反応試薬などを用いて適当な溶媒下で行うことができる。リンカー構造とリガンドとの反応においては、例えば、反応温度を20〜30℃とすることができ、反応時間を1〜24時間とすることができる。反応系のpHは8〜9.5であることが好ましく、緩衝液によって調整することができる。
プロテインAの配合量としては、充填容積あたり10.0mg/mL−bed以上に相当する量であることが好ましく、より好ましくは11.5mg/mL−bed以上である。
また、リンカー構造に残存するホルミル基を失活させるために、多孔質シリカ(A)にリガンドを結合した後に、エタノールアミンやトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いて反応させることが好ましい。
また、次いでトリメチルアミンボランやシアノ水素化ホウ素ナトリウム等によって処理することが好ましい。これによって、生成したイミン結合がより安定なアミン結合に還元される。
反応後の後処理としては、特に制限されることなく、ろ過および洗浄等の通常採用される方法で行うことができる。
洗浄としては、リン酸緩衝整理食塩水(PBS、PH7.4)、クエン酸緩衝液(pH2.2)、水酸化ナトリウム水溶液、蒸留水等を用いて複数回行うことができる。
また、リガンドが固定化された担体は、pH5〜6で4〜8℃で冷蔵保存することが好ましく、さらに防腐剤としてベンジルアルコール等を添加してもよい。
プロテインAの固定化量としては、充填容量あたりのプロテインAの量(プロテインAの固定化量を充填容量で除した値)が9.5mg/mL−bed以上となるように反応させることが好ましい。より好ましくは、プロテインAの固定化量は、10mg/mL−bed以上である。
プロテインAの固定化量は公知の方法に基づいて求められる。例えば、配合したプロテインA溶液の濃度と、この溶液と多孔質シリカ(A)を混合してプロテインAを結合させた後、多孔質シリカ(A)を分離して得られるプロテインA溶液の濃度との差分から、多孔質シリカ(A)に固定化された量を計算できる。溶液濃度は光学的に測定できる。
本発明による多孔質シリカ(A)を用いたサイズ排除クロマトグラフィ担体は、高い理論段数を有する。理論段数は下記により求めることができる。すなわち、多孔質シリカ(A)を充填したカラムを用いた分子量495の標準ポリスチレンの測定により検出されたピークから以下の計算式で求められる。
N=5.54×[t/W0.5
ここで、Nは理論段数、tは成分の保持時間、W0.5はピーク高さの50%位置におけるピーク幅である。分子量495の標準ポリスチレンを用いる場合、この理論段数は1800段以上が好ましく、2000段以上がより好ましい。また、この理論段数は500,000段以下が好ましく、100,000段以下がより好ましい。
また、本発明による多孔質シリカ(A)を用いた、プロテインAを固定化したアフィニティクロマトグラフィ担体は、耐アルカリ性が高く、かつ、高流速での分離性能に優れる。分離性能は動的結合容量(DBC)で示される。DBCは、濃度既知の標準タンパク質溶液をカラムに添加し、溶出液の吸光度をモニターし、添加したサンプルの吸光度の10%の漏出が見られた時点の添加タンパク質量から求める。DBCは35mg/mL−bed以上が好ましく、40mg/mL−bed以上がより好ましい。DBCの上限値は特に制限されないが、110mg/mL−bed以下が好ましく、100mg/mL−bed以下がより好ましい。
また、耐アルカリ性は、アルカリに浸漬する前後でのDBCの保持率で求めることができる。すなわち室温で500mMの水酸化ナトリウム水溶液に20時間浸漬する前後でのDBCを比較し、浸漬前のDBCに対する浸漬後のDBCの割合を算出する。当該割合は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。理想的な上限値は100%である。
上記したクロマトグラフィ担体を用いてクロマトグラフィを行う場合は、クロマトグラフィ担体をカラムに充填して使用する。カラムとしては、ガラス製、ステンレス製、樹脂製等のカラムを適宜用いることができる。
本発明はまた、上記各クロマトグラフィ担体を用いてクロマトグラフィを行う方法である。本発明はさらに上記クロマトグラフィ担体を用いてタンパク質を精製するタンパク質の製造方法である。特に前記タンパク質がIgGであることが好ましい。
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の説明において、共通する成分は同じものを用いている。また、特に記述のない成分については、関東化学社製のものを用いている。
<ジルコニア被覆多孔質シリカの作製>
表1に、例1〜例6のジルコニア被覆多孔質シリカの処方を示す。例1、2は比較例であり、例3〜6は実施例である。
各例を通して、原料の多孔質シリカとしてAGCエスアイテック社製「M.S.GELSIL EP−DM−35−1000AW」を用いた。以下、この原料の多孔質シリカをシリカゲルと記す。
このシリカゲルの物性は、以下の通りである。
比表面積:61m/g、細孔容積:1.73mL/g、平均粒子径:31.5μm、均等係数(D90/D10):1.29、平均細孔径:110.7nm。
ここで、平均粒子径はMultisizerIII(ベックマン・コールター社製)を用いてコールターカウンター法によって測定した。均等係数は同法によってD10粒子径およびD90粒子径を測定し、その比(D90/D10)から求めた。平均細孔径、細孔容積および比表面積は、オートポアIV9510(株式会社島津製作所製)を用いて、水銀圧入法によって測定した。
以下、例1、例2は、下地処理を行わない例である。
(例1)
例1では、未処理のシリカゲルを比較例として用いた。
(例2)
例2では、3gのシリカゲルに、0.80gの75質量%ジルコニウムテトラ−n−プロポキシドの1−プロパノール溶液(マツモトファインケミカル製、オルガチックスZA−45)、及び4.4mLの1−プロパノールの混合溶液を加えた後、室温で30分混合し、一昼夜乾燥させた。最後に、400℃で7時間焼成してジルコニア被覆多孔質シリカを得た。
以下、例3〜例6は、オキソ酸化合物を用いて下地処理をした例である。
(例3)
3gのシリカゲルに、5.0mLの蒸留水および0.20gの硫酸水素カリウムの混合溶液を加えた後、室温で30分間混合し、一昼夜乾燥させた。次いで、得られた硫酸塩担持シリカゲルに、0.80gの75質量%ジルコニウムテトラ−n−プロポキシドの1−プロパノール溶液(マツモトファインケミカル製、オルガチックスZA−45)、4.4mLの1−プロパノールの混合溶液を加えた後、室温で30分混合し、一昼夜乾燥させた。最後に、400℃で7時間焼成してジルコニア被覆多孔質シリカを得た。
(例4〜例6)
例1において、硫酸水素カリウムを他のオキソ酸塩に変えて、表中の添加量にした他は同様にして、例2〜例6のジルコニア被覆多孔質シリカを得た。
各例において、オキソ酸塩、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシドの投入量から、オキソ酸塩の担持量、Zr源の担持量を求め、表中に示す。
<評価>
得られた多孔質シリカ及びジルコニア被覆多孔質シリカを用いて、以下の評価を行った。結果を表にあわせて示す。
(Si溶出量の測定)
得られた多孔質シリカ及びジルコニア被覆多孔質シリカ0.5gに、500mM水酸化ナトリウム水溶液13mLを加え、23℃、3時間ロータリーミキサーにて撹拌した。遠心分離後、上澄み液を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、この濾液中のシリカ濃度を公知の方法であるモリブデン黄吸光光度法を用いて求めた。
例1の未処理のシリカゲル(多孔質シリカ)のSi溶出量を100%として、各例の相対Si溶出量を、以下の計算によって求めた。
各例の相対Si溶出量(%)=(各例のSi溶出量)/(例1のSi溶出量)×100(%)。
Figure 2018062440
表1に示す通り、オキソ酸化合物塩と、ジルコニウム酸化物前駆体とによってシリカゲルを処理することで、アルカリに対してSi溶出量を低減することができた。
例2に示すように、シリカゲルをジルコニウム酸化物前駆体によって処理するが、オキソ酸化合物塩で処理しない例では、Si溶出量を十分に低減できなかった。

Claims (9)

  1. 無機オキソ酸及び/またはその塩と、ジルコニウム酸化物前駆体とを任意の順で、または同時に多孔質シリカに付着させ、次いで焼成する、ジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
  2. 無機オキソ酸及び/またはその塩は、硫酸、炭酸、ホウ酸、及びこれらの塩からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
  3. 前記無機オキソ酸及び/またはその塩を多孔質シリカに付着させ、次いで前記ジルコニウム酸化物前駆体を多孔質シリカに付着させる、請求項1または2に記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
  4. 前記無機オキソ酸及び/またはその塩は、硫酸水素カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
  5. 前記ジルコニウム酸化物前駆体が、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ジルコニウム(III)、オキシ塩化ジルコニウム、テトラアルコキシジルコニウム、及びジアルコキシジルコニウムジクロリドからなる群から選択される1種以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
  6. 多孔質シリカの単位比表面積当たりの前記ジルコニウム原子の付着量が1μmol/m〜15μmol/mである、請求項1から5のいずれか1項に記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
  7. 多孔質シリカの単位比表面積当たりの前記無機オキソ酸及び/またはその塩の合計の付着量が1μmol/m〜25/μmol/mである、請求項1から6のいずれか1項に記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
  8. 前記無機オキソ酸及び/またはその塩と、前記ジルコニウム酸化物前駆体とのうち少なくとも一方を乾式法で多孔質シリカに付着させる、請求項1から7のいずれか1項に記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
  9. 前記焼成の温度が300℃〜500℃である、請求項1から8のいずれか1項に記載のジルコニア被覆多孔質シリカの製造方法。
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