以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、水中移動型検査システムの概要の説明図である。
水中移動型検査システムは、水中移動装置1で原子炉圧力容器101内を航行し原子炉圧力容器101の壁面101Aを走査して探傷する。
原子炉圧力容器101は、キャビティピット102の底壁の下方に位置し、コンクリート製壁体103により回りを囲まれている。また、原子炉圧力容器101、キャビティピット102などは、コンクリート製の原子炉格納容器104で覆われ、この原子炉格納容器104が放射線を遮蔽している。原子炉圧力容器101は、蓋体(図示せず)をボルトで接合するための上部フランジ101Bがキャビティピット102の底壁に対して水密を維持して設けられている。また、原子炉圧力容器101は、上部フランジ101Bの上面に、蓋体を取り付ける際に使用する3本のアライメントピン101Cが上方に延在して立設されている。そして、探傷を行なう前、原子炉圧力容器101から蓋体が除去され、この原子炉圧力容器101内およびキャビティピット102内に水(液体)を充満させて放射線を遮蔽する。
水中移動装置1は、探傷信号や制御信号などの信号を伝達するためのラインおよび動力ラインを含むケーブル105が接続されている。このケーブル105に関わり、キャビティピット102の上方部位に、水中移動装置1の位置に応じて水中に沈めるケーブル105の長さを調節しながら該ケーブル105を案内するケーブル調節・案内装置106が設置されている。ケーブル105は、水中移動装置1より送信されてくる探傷データの処理を行なうための制御装置2に連絡している。制御装置2は、放射線遮蔽のため原子炉格納容器104の外部に設置されている。
また、水中移動装置1は、位置標定装置3により位置が標定される。位置標定装置3は、各アライメントピン101Cを介して上部フランジ101Bに取り付けられる。位置標定装置3は、水中移動装置1の位置標定を行なった距離データの信号を伝達するためのラインおよび水中移動装置1への方向に位置標定装置3を位置決めするための駆動データの信号を伝達するためのラインを含むケーブル107が接続されている。ケーブル107は、位置標定装置3より送信されてくる距離データの処理や位置標定装置3を位置決めするための駆動データの処理を行なうための制御装置2に連絡している。
以下、水中移動装置1、位置標定装置3、および制御装置2についての詳細を説明する。
最初に、水中移動装置1について説明する。図2は、水中移動装置の側面図である。図3は、水中移動装置の底面図である。図4は、水中移動装置における固定台の側断面図である。図5は、水中移動装置における走行装置の側断面図である。図6は、水中移動装置における吸着装置の側断面図である。図7は、水中移動装置における推進器の側断面図である。図8は、水中移動装置における浮力調整装置の側断面図である。図9は、水中移動装置における標定マーカの斜視図である。図10は、水中移動装置における標定マーカの説明図である。図11は、水中移動装置における旋回台の側断面図である。
水中移動装置1は、図2および図3に示すように、固定台5、旋回台6、走行装置7、吸着装置8、推進器9、多関節型マニピュレータ10、浮力調整装置11、標定マーカ12を含み大略構成されている。
固定台5は、シェル型構造をなしている。
旋回台6は、固定台5に対して旋回可能に回転移動するように設けられている。
走行装置7は、固定台5に複数(本実施形態では4つ)設けられており、ステアリング機構7Aにより首振り可能に旋回すると共に転動自在に設けられた車輪7Bを有している。水中移動装置1は、この走行装置7によって原子炉圧力容器101の壁面101Aを自在に走行することができる。
吸着装置8は、固定台5に複数(本実施形態では4つ)設けられており、シリンダ8Aによって吸着側と非吸着側とにスライド移動が可能に設けられた吸着盤8Bを有している。水中移動装置1は、この吸着装置8によって原子炉圧力容器101の壁面101Aに吸着されて固定することができる。
推進器9は、旋回台6に設けられ、水中移動装置1を原子炉圧力容器101内の水中に対して潜水浮上可能とするスラスタ9A,9B、および原子炉圧力容器101の壁面101Aに対して接近離脱可能とするスラスタ9C,9Dを有している。水中移動装置1は、この推進器9によって水中を三次元に自在に航行することができる。
多関節型マニピュレータ10は、旋回台6に設けられ、本実施形態では6自由度(M1〜M6)の多関節型に構成されたマニピュレータである。多関節型マニピュレータ10は、その先端に、探触子板15が取り付けられる。この探触子板15により、原子炉圧力容器101の溶接部を探傷することができる。探触子板15は、多関節型マニピュレータ10の先端に着脱可能に設けられており、交換が可能である。なお、多関節型マニピュレータ10は、公知のマニピュレータであるため詳細な説明を省略する。
浮力調整装置11は、旋回台6の両側の2箇所に設けられ、水中移動装置1の水中での浮力を調整するものである。水中移動装置1は、図には明示しないが、主浮力調整装置として、浮力タンクを有すると共に浮力調整ウエイトが着脱可能に設けられ、浮力調整ウエイトによる重量調整により原子炉圧力容器101の水中において浮力を0[N]とされている。つまり、水中移動装置1は、水中において浮きも沈みもしないように構成され、上述した推進器9による移動を容易にしている。しかしながら、探触子板15は重量が異なる数種類があるために探触子板15を交換することで浮力が0[N]から増減するため、浮力調整装置11は、副浮力調整装置として、増減した浮力を0[N]に調整する。
標定マーカ12は、位置標定装置3の目標として用いられるもので、二軸の駆動装置12Aを介して旋回台6の上部に装着される。
このように大略構成される水中移動装置1において、図4に示すように、固定台5は、箱状の固定台本体5Aの中心部に旋回駆動機構5Bが設けられている。旋回駆動機構5Bは、駆動源であるモータ5Ba、位置を検出するエンコーダ5Bb、およびモータ5Baの駆動力を増す減速機5Bcが同芯一軸上に配置されている。そして、減速機5Bcが固定台本体5Aに取り付けられ、減速機5Bcの出力側である減速機出力軸5Bdが固定台本体5Aに設けられた軸受5Aaによって回転自在に支持されている。減速機出力軸5Bdと固定台本体5Aとの間には、固定台5内部を水密とするOリングなどのシール材5Abが設けられている。
図5に示すように、走行装置7は、固定台5の外周に沿って取り付けられている。走行装置7は、ステアリング機構7Aおよび車輪7Bを支持する走行装置本体7Cが固定台5に対しリニア軸受7Daを介して上下方向に移動可能に取り付けられている。この走行装置本体7Cは、リニア軸受7Daの両側に設けられたバネ7Dbによって移動が下方に付勢されている。
ステアリング機構7Aは、走行装置本体7Cの内部に設けられ、車輪7Bを旋回駆動する。ステアリング機構7Aは、駆動源となるモータ7Aaが走行装置本体7Cに固定され、モータ7Aaの出力軸にギヤ7Abが結合され、このギヤ7Abに噛み合うように減速機7Acの入力軸7Adが結合されている。減速機7Ac(公知の内回転減速機であるため構造は省略する)の出力軸7Aeは、走行装置本体7Cに設けられた軸受7Afによって回転自在に支持されている。減速機7Acの出力軸7Aeには、走行装置本体7C内部を水密とするOリングなどのシール材7Agが設けられていると共に、車輪7Bを駆動する車輪駆動モータ7Baが取り付けられている。また、減速機7Acの出力軸7Aeには、ポテンショ7Ahが取り付けられて、該ポテンショ7Ahにより車輪7Bの旋回位置が検出される。
車輪駆動モータ7Baは、ステアリング機構7Aにおける減速機7Acの出力軸7Aeに取り付けられている。車輪駆動モータ7Baは、減速機7Bcに結合されている。減速機7Bcは、円筒形状の出力軸7Bdの外周に車輪7Bが結合されている。車輪7Bは、出力軸7Bdが軸受7Beを介してステアリング機構7Aにおける出力軸7Aeに回転自在に設けられている。従って、車輪7Bは、車輪駆動モータ7Baの駆動により減速機7Bcを介して回転し、これにより走行が可能となる。また、減速機7Bcの出力軸7Bdは、円筒形状の内部に車輪駆動モータ7Baおよび減速機7Bcが収納され、ステアリング機構7Aにおける出力軸7Aeがなすケーシングに収容されつつ、円筒形状とケーシングとの間にそれぞれの内部を水密とするOリングなどのシール材7Bfが設けられている。また、減速機7Bcの出力軸7Bdには、エンコーダ7Bgが設けられて、該エンコーダ7Bgにより車輪7Bの回転数であって走行距離が検出される。
図6に示すように、吸着装置8は、固定台5の外周に沿って取り付けられている。吸着装置8は、シリンダ8Aのシリンダチューブ8Aaが固定台5に固定されている。シリンダ8Aは、シリンダチューブ8Aaの内側にピストンロッド8Abが軸受8Acおよびシール材8Adを介して設けられている。そして、シリンダ8Aは、シリンダチューブ8Aaの閉塞された上端と中央に、空圧導入孔8Aaa,8Aabが設けられており、空圧導入孔8Aaaまたは空圧導入孔8Aabに選択的に空圧を与えることによりピストンロッド8Abが上下動する。ピストンロッド8Abは、その下端に、球面軸受8Baを介して吸着盤8Bが取り付けられている。吸着盤8Bは、円形状で上側が閉塞されて下側が開放された形状であり、その内部がピストンロッド8Abの下端および球面軸受8Baを貫通された真空圧導入孔8Abaとつながっている。そして、真空圧導入孔8Abaに真空圧を与えることにより、吸着盤8B内が真空となり、原子炉圧力容器101の壁面101Aに吸着することができる。
図7に示すように、推進器9は、スラスタ9A,9B,9C,9Dを構成するもので、旋回台6に取り付けられるスラスタカバー9aの内部に、流線形をしたモータカバー9bを介してモータ9cが取り付けられている。モータ9cは、モータカバー9bに設けられた軸受9dおよびシール9eを介して出力軸9fが回転自在に支持されている。出力軸9fの先端にスクリュー9gが装着されている。従って、スラスタ9A,9B,9C,9Dを構成する推進器9は、モータ9cによりスクリュー9gを駆動する。この推進器9は、スクリュー9gを正逆回転することにより、旋回台6と平行に設置したスラスタ9A,9Bで潜水、浮上を行う一方で、旋回台6と垂直に設置したスラスタ9C,9Dで原子炉圧力容器101の壁面101Aへの接近離脱を行なうことができる。
図8に示すように、浮力調整装置11は、固定ケーシング11Aと、移動ケーシング11Bと、モータケーシング11Cと、を有している。固定ケーシング11Aは、旋回台6に取り付けられて固定されている。固定ケーシング11Aは、円筒形状に形成されて一端が開放し他端が閉塞されている。移動ケーシング11Bは、円筒形状に形成されて固定ケーシング11Aの開放側から円筒形状の内部に挿通されている。固定ケーシング11Aの開放端内側には、Oリングなどのシール材11Aaが設けられており、移動ケーシング11Bの外周面との間で水密が確保されている。
移動ケーシング11Bは、固定ケーシング11Aの外部に飛び出た一端が閉塞し、固定ケーシング11Aの内部に配置された他端が開放されている。従って、固定ケーシング11Aおよび移動ケーシング11Bは、相互の内部が連通して水密を確保された空気室Sを形成している。そして、移動ケーシング11Bは、固定ケーシング11Aに対し、円筒形状の延在方向(軸方向)にシール材11Aaを介して移動可能に設けられている。
モータケーシング11Cは、浮力調整駆動機構11Dのモータ11Daが収容され、固定ケーシング11Aの他端である閉塞側に水密を確保しつつ結合されている。浮力調整駆動機構11Dは、モータ11Daに減速機11Dbが結合され、減速機11Dbの出力軸11Dcが、モータケーシング11Cに対して軸受11Ddにより回転自在に支持されている。また、浮力調整駆動機構11Dは、出力軸11Dcの先端に、ネジ軸11Deが同一軸心上で固定されている。ネジ軸11Deは、固定ケーシング11Aを貫通し、固定ケーシング11Aおよび移動ケーシング11Bの内部に延在して設けられている。このネジ軸11Deは、固定ケーシング11Aおよび移動ケーシング11Bの内部に設けられて固定ケーシング11Aに固定された円筒形状の支持ケーシング11Df内に配置され、当該支持ケーシング11Dfに対して両端が軸受11Dgにより回転自在に支持されている。また、浮力調整駆動機構11Dは、ネジ軸11Deにナット部材11Dhが取り付けられている。ナット部材11Dhは、移動ケーシング11Bの開放された他端側に対して棒状の連結部材11Diにより結合されている。連結部材11Diは、支持ケーシング11Dfの外周にてネジ軸11Deの延在方向に沿って形成されたスリット穴11Djに挿通されている。
そして、浮力調整駆動機構11Dは、モータ11Daにより減速機11Dbを介してネジ軸11Deが正逆回転することで、ナット部材11Dhがネジ軸11Deの延在方向に沿って移動する。このナット部材11Dhの移動に伴い移動ケーシング11Bが固定ケーシング11Aに対して円筒形状の延在方向(軸方向)に移動する。すると、固定ケーシング11Aおよび移動ケーシング11Bの相互の内部が連通して水密を確保された空気室Sは、固定ケーシング11Aおよび移動ケーシング11Bが相対的に近づくことで圧縮され、固定ケーシング11Aおよび移動ケーシング11Bが相対的に離れることで膨張される。これにより、空気室Sが圧縮されることで浮力が減少する一方、空気室Sが膨張されることで浮力が増加することで、浮力が調整される。また、モータ11Daには、ポテンショ11Dkが取り付けられて、該ポテンショ11Dkにより移動ケーシング11Bの位置(ストローク)が検出される。
図9に示すように、標定マーカ12は、旋回台6に対し、二軸の駆動装置12Aを介して取り付けられている。具体的に、駆動装置12Aは、第一軸をなす鉛直軸12Aaが旋回台6に取り付けられ、この鉛直軸12Aaに対して直交する第二軸をなす水平軸12Abが設けられている。標定マーカ12は、水平軸12Abに支持されている。すなわち、標定マーカ12は、駆動装置12Aの鉛直軸12Aaの廻りに水平方向に旋回し、水平軸12Abの廻りに上下方向に傾斜する。従って、水中移動装置1の水中での姿勢に応じて標定マーカ12を位置標定装置3に向けることができる。
そして、図10に示すように、標定マーカ12は、コーナーキューブ12aと球光源12bから構成されている。コーナーキューブ12aの中心に球光源12bが設けられ、コーナーキューブ12aへの入射信号が反射される。駆動装置12Aの鉛直軸12Aaおよび水平軸12Abは、コーナーキューブ12aの中心線上で入射信号が反射して通過するA点にて交差する。すなわち、標定マーカ12は、コーナーキューブ12aの中心線上のA点を中心に移動する。
図11に示すように、旋回台6は、固定台5における固定台本体5Aに設けられた旋回駆動機構5Bの減速機出力軸5Bdに固定されることにより、旋回することができる。旋回台6は、水密を確保された箱状の内部に、各駆動機構のモータを駆動するアンプ、および位置標定装置3からの指令値、また、位置標定装置3へのデータを変換するA/D,D/A,E/O,O/E変換器などで構成される電装ボックス6Aが設けられ、この電装ボックス6Aに上述したケーブル105が接続される。
次に、位置標定装置3について説明する。図12は、位置標定装置の側面図である。図13は、位置標定装置の正面図である。図14は、図12におけるA−A断面図である。
位置標定装置3は、測長装置21と、取付装置22と、取付台23と、を有する。
測長装置21は、測長器21Aと、支持機構21Bとを有する。測長器21Aは、水中移動装置1の標定マーカ12に対してレーザ光を発信して水中移動装置1の位置を検出するものである。測長器21Aは、レーザ光照射部21Aaと、カメラからなる視覚センサ21Abと、画像処理装置21Acと、位相差計21Adと、レーザ変調信号発生器21Aeと、を有する(図24参照)。支持機構21Bは、測長器21Aを支持するもので、取付装置22に設けられている。支持機構21Bは、取付装置22に対して測長器21Aを上下方向及び左右方向に揺動自在とし、水中移動装置1の水中での姿勢に応じて測長器21Aを標定マーカ12に向けることができる。
取付装置22は、位置標定装置3をアライメントピン101Cに対して位置決めして固定するものである。取付装置22は、アライメントピン101Cに所定のクリアランスをもって嵌脱自在とされた筒状のフレーム22Aと、フレーム22Aの上部および下部に設けられてフレーム22Aをアライメントピン101Cに固定する上部固定装置22Bおよび下部固定装置22Cと、を有している。
上部固定装置22Bは、アライメントピン101Cの外周面を押圧してこのアライメントピン101Cの軸中心とフレーム22Aの軸中心とを一致させるための3つの上部エアシリンダ22Baを有している。すなわち、上部固定装置22Bは、各上部エアシリンダ22Baによりフレーム22Aの上部の軸中心をアライメントピン101Cの軸中心に一致させて固定する。
下部固定装置22Cは、原子炉圧力容器101の上部フランジ101Bの上面に接触して測長装置21の方向を規定する方向規定機構22CAと、アライメントピン101Cの外周面を押圧してこのアライメントピン101Cの軸中心とフレーム22Aの軸中心とを一致させるための下部エアシリンダ22CBと、を有している。
方向規定機構22CAは、フレーム22Aの両側部にそれぞれブラケット22CAaが固定されており、各ブラケット22CAaに水平な枢軸22CAbによってそれぞれ操作アーム22CAcの中間部が上下に回転自在に取り付けられている。各操作アーム22CAcは、下端部に保持ローラ22CAdが取り付けられ、上端部に操作用エアシリンダ22CAeが取り付けられている。操作用エアシリンダ22CAeは、フレーム22Aに対して水平な枢軸によって揺動自在に支持されている。
下部エアシリンダ22CBにおいて、ピストン軸22CBaは、その一端部が取付ブラケット22CBbによりフレーム22Aに固定されており、他端部にはピストン22CBcが固定されている。このピストン22CBcは、シリンダケース22CBd内に移動自在に設けられており、このシリンダケース22CBd内を2つの部屋22CBd1,22CBd2に区分している。そして、シリンダケース22CBdは、先端部が二又の保持アーム22CBeが固定され、この保持アーム22CBeの二又の先端部はフレーム22A内に進入し、それぞれアライメントピン101Cの外周面を押圧する押圧ローラ22CBfが取付けられている。
このように構成された取付装置22は、フレーム22Aをアライメントピン101Cに嵌入した後、上部固定装置22Bの各上部エアシリンダ22Baを作動してアライメントピン101Cの外周面を押圧することで、アライメントピン101Cの軸中心とフレーム22Aの軸中心とを一致させ、フレーム22Aの上部をアライメントピン101Cに固定する。
続いて、下部固定装置22Cの方向規定機構22CAにより一対の保持ローラ22CAdを下方に移動させて上部フランジ101Bの内面にそれぞれ接触させることで、上部フランジ101Bの内面の円弧の2点とアライメントピン101Cの軸中心との3点を基準として測長器21Aの方向を原子炉圧力容器101の中心側に規定する。さらに、下部固定装置22Cの下部エアシリンダ22CBによりアライメントピン101Cの外周面を押圧することでアライメントピン101Cの軸中心とフレーム22Aの軸中心とを一致させ、フレーム22Aの下部をアライメントピン101Cに固定する。
このようにしてフレーム22Aがそれぞれアライメントピン101Cに固定されると、位置標定装置3の取り付けは完了する。従って、この位置標定装置3を用い、測長装置21において支持機構21Bにより測長器21Aの向きを上下方向および左右方向に首振調整しながら、測長器21Aから水中移動装置1の標定マーカ12にレーザ光を発信することで水中移動装置1までの距離を測定して水中移動装置1の位置および距離を検出する。
取付台23は、後述する交換台25を位置決めして載置するものである。図13および図14に示すように、取付台23は、下部固定装置22Cと共にフレーム22Aの下部に取り付けられており、取付装置22によりフレーム22Aをアライメントピン101Cに固定した状態において、原子炉圧力容器101の上部フランジ101Bの上面に沿って配置される板状部材として構成されている。そして、取付台23は、板状部材の上面から上方に延在する位置決機構としての2本のガイドピン23A,23Bを有している。各ガイドピン23A,23Bは、互いに平行に配置され、いずれか一方が長尺に形成されて長さが異なって形成されている。
ここで、交換台25について説明する。図15は、交換台の平面図である。図16は、交換台の正面図である。図17は、位置標定装置に交換台を設置した平面図である。図18は、探触子板の平面図である。図19は、探触子板の正面図である。
交換台25は、水中移動装置1において探触子板15を交換するためのステーションとなるものである。交換台25は、交換台本体25Aと、保持部25Bと、収容部25Cと、を有する。
交換台本体25Aは、図15〜図17に示すように、原子炉圧力容器101の上部フランジ101Bの上面に沿って配置される板状部材として構成されている。この交換台本体25Aは、取付台23の各ガイドピン23A,23Bを挿入させる支持穴25Aa,25Abを有している。各支持穴25Aa,25Abに各ガイドピン23A,23Bを挿入させることで、交換台本体25Aは、その配置を規定され、交換台25が位置標定装置3と共にアライメントピン101Cに対して位置決めして固定される。従って、本実施形態において、位置標定装置3は、交換台25が載置された位置を認識する位置認識装置として機能する。また、取付台23の各ガイドピン23A,23Bは長さが異なるため、長いガイドピン23Bを支持穴25Abに先に挿入させつつ、短いガイドピン23Aに支持穴25Aaの位置を合わせるように調整して短いガイドピン23Aを支持穴25Aaに挿入させる。なお、ガイドピン23A,23Bを有する取付台23は、位置標定装置3に設けられていなくてもよく、この場合は、上部フランジ101Bの上面に設けられた蓋体固定用のボルト穴に対して取付台23を取り付けるようにし、当該取付台23の位置をボルト穴に位置決めするように構成する。この場合の取付台23および交換台25の位置は、ボルト穴により規定される。この場合は、取付台23に対し、交換台25が載置された位置を認識するように位置信号を発信する機能を有する位置認識装置を設ける。
保持部25Bは、交換において多関節型マニピュレータ10の先端に接合する探触子板15を保持するものである。保持部25Bは、クランプ機構25Baと、撮像装置としての2つのカメラ25Bb,25Bcと、を有している。クランプ機構25Baは、例えば、筒状体25Baaが半割に構成されて、一方が交換台本体25A側に固定され、他方が一方に対して筒状を閉塞または開放するように移動可能に設けられている。また、クランプ機構25Baは、筒状体25Baaの閉塞または開放を駆動する駆動部25Babを有している。従って、クランプ機構25Baは、筒状体25Baaを閉塞して探触子板15をクランプして探触子板15を保持する一方で、筒状体25Baaを開放してクランプを解いて探触子板15の保持を解除する。なお、クランプ機構25Baは、探触子板15を保持するものであるが、多関節型マニピュレータ10の先端側と探触子板15側との相互の位置の誤差を吸収するため、探触子板15が若干ミリ動けるように隙間を持って探触子板15を保持する構成とされている。2つのカメラ25Bb,25Bcは、筒状体25Baaの正面側において一方(25Bb)が側方から撮像して、他方(25Bc)が上方から撮像するように配置されている。探触子板15の構成は後述するが、探触子板15は、多関節型マニピュレータ10の先端に設けられた接続部10Aに接合される接続部15Aが設けられている。従って、当該接続部15Aの接合面15Aaを2つのカメラ25Bb,25Bcで各方向から撮像することにより多関節型マニピュレータ10と探触子板15との接合状態を確認することができる。なお、多関節型マニピュレータ10の接続部10Aは、探触子板15の接続部15Aとの接合または離間を行うクランプ機構(図示せず)が設けられている。
収容部25Cは、交換において多関節型マニピュレータ10の先端から外される探触子板15を収容するものである。収容部25Cは、収容箱25Caと、撮像装置としての2つのカメラ25Cb,25Ccと、を有している。収容箱25Caは、上方が開放した箱体であって、探触子板15を開放部から投入できる大きさに形成されている。2つのカメラ25Cb,25Ccは、一方(25Cb)が収容箱25Caの正面側において側方から撮像して、他方(25Cb)が収容箱25Caの開放部の斜め上方から収容箱25Caの内部を撮像するように配置されている。従って、一方のカメラ25Cbで多関節型マニピュレータ10の先端から探触子板15が外される様子を撮像して確認することができ、他方のカメラ25Ccで外された探触子板15が収容箱25Caに投入される様子を撮像して確認することができる。
探触子板15は、図18および図19に示すように、接続部15Aと、探触子15Bと、を有している。接続部15Aは、正面側に平坦状の接合面15Aaが設けられている。接合面15Aaは、多関節型マニピュレータ10の先端側の接続部10Aの接合面に対して合わせて接合される。この接合面15Aaと、多関節型マニピュレータ10の先端側の接続部10Aの接合面とが接合された状態で、相互間で信号の送受信を行うことが可能となる。また、図には明示しないが、多関節型マニピュレータ10の先端側の接続部10Aは、探触子板15の接続部15Aとの接合を維持する一方で接合を解除するクランプ機構が設けられている。保持部25Bのクランプ機構25Baは、この探触子板15の接続部15Aをクランプして保持する。
次に、制御装置2について説明する。図20は、水中移動型検査システムおよび浮力調整システムを含む制御装置のブロック図である。
制御装置2は、水中移動型検査システムにおいて水中移動装置1および位置標定装置3を統括して制御するものである。また、制御装置2は、浮力調整システムにおいて浮力調整装置11を統括して制御するものである。制御装置2は、図20に示すように、位置測定装置51と、位置制御装置52と、記憶装置53と、超音波探傷装置54と、探触子板交換制御装置55と、浮力調整制御装置56と、水質検出手段57と、を含む。
位置測定装置51は、測長装置21の測長器21Aから送信されてくる距離データと、支持機構21Bの位置データとから水中移動装置1の絶対位置を計算する機能を有する。
位置制御装置52は、水中移動装置1の位置を制御すると共に、測長装置21の支持機構21Bの位置を制御する機能を有する。
記憶装置53は、水中移動装置1による壁面101Aの探傷順序や、水中移動装置1の壁面101A上の停止位置や、多関節型マニピュレータ10の動作手順や、交換台25にセットされている探触子板15の種類、など情報を予め格納する機能を有する。
超音波探傷装置54は、位置制御装置52からの探傷位置信号を受けて、探触子板15に探傷指令を出し、これにより探傷データを実時間で収集する機能を有する。超音波探傷装置54は、探傷位置が位置制御装置52から入力されているため、欠陥が発見された場合、その位置を判断し特定することができる。
探触子板交換制御装置55は、位置制御装置52からの交換位置信号、および交換台25におけるカメラ25Cb,25Ccからの画像データを受けて、多関節型マニピュレータ10の接続部10Aにおけるクランプ機構により探触子板15の接続部15Aとの接合を離間する機能を有する。また、探触子板交換制御装置55は、位置制御装置52からの交換位置信号、および交換台25におけるカメラ25Bb,25Bcからの画像データを受けて、多関節型マニピュレータ10の接続部10Aにおけるクランプ機構により探触子板15の接続部15Aとの接合を行う機能を有する。また、探触子板交換制御装置55は、交換台25におけるカメラ25Bb,25Bcからの画像データを受けて、保持部25Bのクランプ機構25Baによるクランプを解いて探触子板15の保持を解除する機能を有する。
浮力調整制御装置56は、記憶装置53からの交換台25にセットされている探触子板15の種類の情報(浮力調整データ)、および浮力調整装置11における移動ケーシング11Bの位置データを受けて、当該探触子板15の重量に基づく移動ストロークで移動ケーシング11Bを移動させる機能を有する。また、浮力調整制御装置56は、記憶装置53からの浮力調整データを受けず、探触子板15の種類に応じて経験則に基づいたオペレータによる操作指示に基づく移動ストロークで移動ケーシング11Bを移動させる機能を有する。オペレータによる操作指示は、図には明示しないが、例えば、浮力調整制御装置56に接続された入力装置(キーボードまたはマウスによる移動ケーシング11Bの移動数値入力など)により行われる。
また、浮力調整制御装置56は、水中移動装置1における旋回台6の両側の2箇所に設けられた各浮力調整装置11を独立して制御することができる。従って、浮力調整制御装置56は、例えば、水中において水中移動装置1が旋回台6の両側で傾いている場合、オペレータによる操作指示に基づく移動ストロークで各浮力調整装置11の移動ケーシング11Bを独立して移動させることで水中移動装置1の水中での姿勢を調整する。
水質検出手段57は、原子炉圧力容器101の液体の水質(本実施形態では例えば原子炉圧力容器101の水のホウ酸濃度)を検出するものである。この水質検出手段57は、水中移動装置1に設けられていても設けられていなくてもよい。水質検出手段57で検出された水質データは、浮力調整制御装置56で受ける。従って、浮力調整制御装置56は、水質検出手段57が検出した水質に応じた浮力調整データに基づき浮力調整装置11における移動ケーシング11Bを移動させる機能を有する。水質に応じた浮力調整データは、水質に基づく移動ケーシング11Bの移動ストロークのデータであり、記憶装置53に予め記憶されている。また、浮力調整制御装置56は、記憶装置53からの浮力調整データを受けず、水質検出手段57が検出した水質に応じた経験則に基づいたオペレータによる操作指示に基づく移動ストロークで移動ケーシング11Bを移動させる機能を有する。オペレータによる操作指示は、図には明示しないが、例えば、浮力調整制御装置56に接続された入力装置(キーボードまたはマウスによる移動ケーシング11Bの移動数値入力など)により行われる。
そして、水中移動型検査システムは、以下の手順で超音波探傷検査が行なわれる。図21〜図26は、水中移動型検査システムによる超音波探傷検査の動作図である。
最初に、3つの測長装置21を各アライメントピン101Cにそれぞれ位置決めして固定する(図1参照)。
次に、図21に示すように、水中移動装置1を原子炉格納容器104内に設置されているポーラクレーン(図示せず)によりキャビティピット102の水面上へ吊り下げて、水面上にただよわせる。上述したように、水中移動装置1は浮力(水中重量)が0[N]となっている。また、水中移動装置1の重心と浮心との位置関係が図21に示す関係のため、多関節型マニピュレータ10を下方に向けた姿勢を水中で安定してとることができる。
次に、推進器9のスラスタ9A,9Bのスクリュー9gを回転させることにより水中移動装置1が潜水または浮上する。また、推進器9のスラスタ9C,9Dのスクリュー9gを回転させることにより水中移動装置1が壁面101Aへ接近または離脱する。なお、図22に示すように、スラスタ9C,9Dのスクリュー9gの回転数または回転方向をそれぞれ調整することにより、水中移動装置1の壁面101Aに対する姿勢を変えることができる。具体的には、図22(a)に示すように、スラスタ9C,9Dのスクリュー9gの回転数が等しければ壁面101Aに対して直進する。また、図22(b)に示すように、スラスタ9C,9Dのスクリュー9gの回転数が異なれば向きを変える。また、図22(c)に示すように、スラスタ9C,9Dのスクリュー9gの回転数が等しく回転方向が異なればその場で旋回する。このようにして、目的とする壁面101Aの位置へ水中移動装置1を誘導することができる。
次に、水中移動装置1が壁面101Aに接触した後、図23および図24に示すように、測長装置21で原子炉圧力容器101に対する水中移動装置1の絶対位置を出す。
図24に示すように、測長器21Aは、視覚センサ21Abによって撮像した水中移動装置1の球光源12bの位置を測定するための画像処理装置21Acに結合されている。画像処理装置21Acは、予め基準位置が設定されており、測定した位置とこの基準位置との偏差をトラッキング信号として位置制御装置52に入力する。位置制御装置52は、トラッキング信号に基づいて、支持機構21Bにおける回転方向の角度θおよび首振り方向の角度δに目標位置を表わす位置指令信号を送出し、水中移動装置1の標定マーカ12に指向するように支持機構21Bを制御すると共に、同時に標定マーカ12が測長器21Aに指向するように駆動装置12Aを制御する。また、このときの支持機構21Bの前記角度θ,δは位置測定装置51にも入力される。
一方、測長装置21と水中移動装置1との間の距離は、測長器21Aによって測定される。本実施形態では、測長器21Aは、距離測定用の非接触媒体としてアルゴンレーザを使用している(他に、音波、光なども使用可能である。)。レーザ変調信号発生器21Aeから送信されたレーザ変調信号が、レーザ光照射部21Aaを介して水中移動装置1に装着された標定マーカ12のレーザ反射用のコーナーキューブ12aに入射され、該コーナーキューブ12aによって反射される。送信された信号と上述の反射信号とは位相差計21Adに入力され、そこで両信号の位相差が測定され、レーザ光照射部21Aaから標定マーカ12までの距離Disが算出され、この距離データが同様に位置測定装置51に入力される。
そして、図23に示すように、位置測定装置51では、支持機構21Bの回転軸線から原子炉圧力容器101の壁面101Aまでの水平距離をRとすると、水中移動装置1の絶対位置の標定が次の計算によって行なわれる。
円周方向…角度θをそのまま使用
深さ方向…深さL=Dis・sin(cos−1R/Dis)
上述の計算により水中移動装置1の絶対位置を出すことができる。また、測長器21Aの取り付け位置を水中移動装置1の走査範囲の上部としているため、水中移動装置1の位置を死角なく出すことができる。また、記憶装置53から探傷位置を引き出して位置制御装置52に送り、位置制御装置52において、現在の水中移動装置1の位置と偏差から目標位置指令を計算し、走行装置7に駆動指令を与え目標位置まで走行する。なお、走行時には、スラスタ9C,9Dを接近方向へ動作させ、水中移動装置1を壁面101Aへ押し付けることにより走行が可能となる。
水中移動装置1が目標位置まで走行した後、走行装置7を停止し、吸着装置8のシリンダ8Aを動作させ、吸着盤8Bを壁面101Aへ押し付け、かつ、吸着盤8B内を真空圧にすることにより、水中移動装置1が壁面101Aに対して吸着固定される。このとき、再度、測長器21Aで水中移動装置1の絶対位置を出す。
次に、記憶装置53から多関節型マニピュレータ10の動作情報を引き出して位置制御装置52に送り、この動作情報に基づいて多関節型マニピュレータ10に内蔵された駆動装置(図示せず)を作動して、多関節型マニピュレータ10の先端に設けられた探触子板15の位置を制御する。探触子板15が探傷すべき位置にきたら、超音波探傷装置54は、位置制御装置52からの探傷位置信号を受けて、探触子板15に探傷指令を出し、これにより探傷データを実時間で収集する。超音波探傷装置54へは探傷位置が位置制御装置52から入力されているため、欠陥が発見された場合、その位置を判断し特定することができる。
このとき、水中移動装置1が壁面101Aに対して固定され、探傷動作が多関節型マニピュレータ10で行なわれるため、探触子板15への押付け力、および探触子板15の高い軌跡精度により、一定速度でのトラバースが可能となる。また、探傷後は、吸着盤8Bを壁面101Aから離す動作をシリンダ8Aの作用で行ない、水中移動装置1の固定解除を行なう。
上述した手順を繰り返すことにより、目的とする探傷範囲の探傷を実施する。なお、探傷位置が水中移動装置1の上部の場合は、図25に示すように、旋回台6を旋回することにより、多関節型マニピュレータ10の上下位置が反転して探傷を実施することができる。また、図26に示すように、探傷作業によって生じる多関節型マニピュレータ10からの反力Fについて、吸着盤8Bを配置してWを長くして受けることにより、反力Fを少なくすることができ、水中移動装置1を安定して固定することができる。
次に、探触子板15を交換する手順について説明する。図27〜図33は、水中移動型検査システムによる探触子板交換の動作図である。
上述した探傷検査の最中、または測長装置21をアライメントピン101Cに位置決めして固定した後、図27に示すように、交換台25を吊り込み、位置標定装置3のガイドピン23A,23Bを介して取り付ける。従って、交換台25は、位置標定装置3によりその位置が規定される。
次に、図28に示すように、水中移動装置1を交換台25の位置に移動させて、その位置の壁面101Aに対して吸着固定させる。
次に、図29に示すように、水中移動装置1において、旋回台6を旋回させて多関節型マニピュレータ10を上方位置に移動させる。さらに、水中移動装置1において、多関節型マニピュレータ10の接続部10Aが交換台25における収容部25Cのカメラ25Cbの画像に写る範囲に多関節型マニピュレータ10を移動させる。
次に、図30に示すように、交換台25における収容部25Cのカメラ25Cb,25Ccの画像をオペレータが確認しつつ、多関節型マニピュレータ10の接続部10Aのクランプ機構において多関節型マニピュレータ10の接続部10Aに現在接合されている探触子板15の接合を離間し、当該探触子板15を収容部25Cに投入させる。
次に、図31に示すように、交換台25における保持部25Bのカメラ25Bb,25Bcの画像をオペレータが確認しつつ、保持部25Bに保持されている探触子板15を多関節型マニピュレータ10の接続部10Aに接合させる。さらに、探触子板15を多関節型マニピュレータ10の接続部10Aに接合させたことを保持部25Bのカメラ25Bb,25Bcの画像で確認した後、クランプ機構25Baにより保持部25Bによる探触子板15の保持を解除する。
次に、図32に示すように、多関節型マニピュレータ10の接続部10Aに接合させた探触子板15の種類(重量)に基づく移動ストロークにて、浮力調整装置11の移動ケーシング11Bを移動させて浮力を調整する。
ここで、上述した超音波探傷検査を行う。
次に、図33に示すように、交換台25を吊り上げて回収する。
その後、新たに交換する探触子板15が保持部25Bに保持され、収容部25Cが空の交換台25を、図27に示すように設置し、上述した探触子板15の交換手順を同様に行う。
また、上述した水中移送装置1を他の原子炉圧力容器101の検査に用いる場合、浮力調整システムでは、水質検出手段57が検出した水質に応じた浮力調整データに基づき浮力調整制御装置56が浮力調整装置11における移動ケーシング11Bを移動させて浮力を調整する制御を行う。
このように説明した本実施形態における水中移動装置1は、先端に探触子板15が着脱可能に取り付けられる多関節型マニピュレータ10と、浮力調整ウエイトにより浮力を調整可能な主浮力調整装置と、探触子板15の重量を含む浮力を空気室の圧縮または膨張により調整する副浮力調整装置(浮力調整装置11)と、を含む。
この水中移動装置によれば、探触子板15を交換した場合、空気室Sの圧縮または膨張により調整する副浮力調整装置(浮力調整装置11)により交換した探触子板15の重量を含む水中移動装置1の浮力を水中で調整することができる。このため、この浮力調整において、水中から気中への水中移動装置1の移動、および気中から水中への水中移動装置1の移動を繰り返すことを防止でき、作業時間を短縮できる。また、水中・気中間の水中移動装置1の移動を防止したことで、浮力調整でのポーラクレーンの占有を防止でき、ポーラクレーンを他の作業に用いることができ他の作業の遅延を防ぐことができる。また、水中・気中間の水中移動装置1の移動を防止したことで、浮力調整での水中移動装置1の除染を防止でき、この除染作業の時間を省くことができ、作業者の被曝拡大を阻止することができる。さらに、気中・水中間の水中移動装置の移動を防止したことで、浮力調整での水中移動装置1の動作確認をなくし、この動作確認の時間を省くことができる。この結果、水中移動装置1の浮力を調整する際に係る作業時間を低減すると共に作業者の安全を確保することができる。
また、本実施形態の水中移動装置1では、浮力調整装置11は、水中移動装置1における両側にそれぞれ設けられていることが好ましい。
この水中移動装置1によれば、水中での姿勢に応じて各浮力調整装置11による浮力調整を行うことができ。姿勢を水中で調整することができる。
また、本実施形態の水中移動装置1では、浮力調整装置11は、水中移動装置1に固定される固定ケーシング11Aと、固定ケーシング11Aに対して移動可能な移動ケーシング11Bと、が相互の内部を連通して水密を確保された空気室Sを形成し、浮力調整駆動機構11Dによる移動ケーシング11Bの移動により空気室Sが圧縮または膨張されることが好ましい。
この水中移動装置1によれば、固定ケーシング11Aと移動ケーシング11Bとがなす水密の空気室Sを浮力調整駆動機構11Dによる移動ケーシング11Bの移動により圧縮または膨張させる浮力調整装置11としたことにより、水中において浮力を調整することができる。
このように説明した本実施形態における浮力調整システムは、先端に探触子板15が着脱可能に取り付けられる多関節型マニピュレータ10と浮力調整ウエイトにより浮力を調整可能な主浮力調整装置とを備えて原子炉圧力容器101内に満たされた液体中を移動可能に構成された水中移動装置1と、水中移動装置1に設けられて探触子板15の重量を含む水中移動装置1の浮力を空気室Sの圧縮または膨張により調整する副浮力調整装置(浮力調整装置11)と、を含み、探触子板15の交換に伴って浮力調整装置11による浮力調整を行う。
この浮力調整システムによれば、探触子板15を交換した場合、空気室Sの圧縮または膨張により調整する副浮力調整装置(浮力調整装置11)により交換した探触子板15の重量を含む水中移動装置1の浮力を水中で調整することができる。このため、この浮力調整において、水中から気中への水中移動装置1の移動、および気中から水中への水中移動装置1の移動を繰り返すことを防止でき、作業時間を短縮できる。また、水中・気中間の水中移動装置1の移動を防止したことで、浮力調整でのポーラクレーンの占有を防止でき、ポーラクレーンを他の作業に用いることができ他の作業の遅延を防ぐことができる。また、水中・気中間の水中移動装置1の移動を防止したことで、浮力調整での水中移動装置1の除染を防止でき、この除染作業の時間を省くことができ、作業者の被曝拡大を阻止することができる。さらに、気中・水中間の水中移動装置の移動を防止したことで、浮力調整での水中移動装置1の動作確認をなくし、この動作確認の時間を省くことができる。この結果、水中移動装置1の浮力を調整する際に係る作業時間を低減すると共に作業者の安全を確保することができる。
また、本実施形態における浮力調整システムでは、探触子板15の種類に応じた浮力調整データが予め格納された記憶装置53と、探触子板15の交換に伴って交換された探触子板15に応じた浮力調整データを記憶装置53から取得し、浮力調整装置11による浮力調整を制御する制御装置2と、を含むことが好ましい。
この浮力調整システムによれば、探触子板15を交換した場合、当該探触子板15の種類に応じた浮力調整データに応じて浮力調整装置11により自動的に浮力調整を行うことができる。
また、本実施形態の浮力調整システムでは、探触子板15を液体中で交換する態様で液体中に設置される交換台25を有することが好ましい。
この浮力調整システムによれば、探触子板15を液体中で交換可能とすることで、探触子板15の交換において、水中から気中への水中移動装置1の移動、および気中から水中への水中移動装置1の移動を伴わず、ポーラクレーンを占有することを防止できる。また、探触子板15の交換作業に際して、水中から気中へ移動した水中移動装置1を除染する作業を省くことができ、作業者の被曝拡大を阻止することができる。さらに、気中・水中間の水中移動装置の移動を防止したことで、探触子板15の交換での水中移動装置1の動作確認をなくし、この動作確認の時間を省くことができる。この結果、水中移動装置1に対して探触子板15を交換する作業時間をも低減すると共に作業者の安全を確保することができる。
また、本実施形態の浮力調整システムでは、液体の水質を検出する水質検出手段57を含み、水質検出手段57が検出した水質に応じて浮力調整装置11による浮力調整を行うことが好ましい。
この浮力調整システムによれば、異なる容器の液体中にて水中移動装置1を用いる場合に、液体の水質(例えば、原子炉圧力容器101の場合はホウ酸濃度が異なる)による浮力の異なりに応じて浮力調整装置11により水中で浮力調整を水中で行うことができる。
また、本実施形態の浮力調整システムでは、浮力調整装置11は、水中移動装置1の両側にそれぞれ設けられ、液体中での水中移動装置1の姿勢に応じて各浮力調整装置11による浮力調整を行うことが好ましい。
この浮力調整システムによれば、液体中での水中移動装置1の姿勢に応じて各浮力調整装置11による浮力調整を行うことで、水中移動装置1の姿勢を水中で調整することができる。
また、本実施形態の浮力調整システムでは、浮力調整装置11は、水中移動装置1に固定される固定ケーシング11Aと、固定ケーシング11Aに対して移動可能な移動ケーシング11Bと、が相互の内部を連通して水密を確保された空気室Sを形成し、浮力調整駆動機構11Dによる移動ケーシング11Bの移動により空気室Sが圧縮または膨張されることが好ましい。
この浮力調整システムによれば、固定ケーシング11Aと移動ケーシング11Bとがなす水密の空気室Sを浮力調整駆動機構11Dによる移動ケーシング11Bの移動により圧縮または膨張させる浮力調整装置11としたことにより、水中において浮力を調整することができる。
また、本実施形態の浮力調整方法は、先端に探触子板15が着脱可能に取り付けられる多関節型マニピュレータ10を備えて原子炉圧力容器101内に満たされた液体中を移動可能に構成された水中移動装置1の探触子板15を交換する工程と、探触子板15の交換後、探触子板15の重量に応じた浮力調整を液体中で行う工程と、を含む。
この浮力調整方法によれば、水中移動装置1の探触子板15を交換した後、探触子板15の重量に応じた浮力調整を液体中で行うことで、この浮力調整において、水中から気中への水中移動装置1の移動、および気中から水中への水中移動装置1の移動を繰り返すことを防止でき、作業時間を短縮できる。また、水中・気中間の水中移動装置1の移動を防止したことで、浮力調整でのポーラクレーンの占有を防止でき、ポーラクレーンを他の作業に用いることができ他の作業の遅延を防ぐことができる。また、水中・気中間の水中移動装置1の移動を防止したことで、浮力調整での水中移動装置1の除染を防止でき、この除染作業の時間を省くことができ、作業者の被曝拡大を阻止することができる。さらに、気中・水中間の水中移動装置1の移動を防止したことで、浮力調整での水中移動装置1の動作確認をなくし、この動作確認の時間を省くことができる。この結果、水中移動装置1の浮力を調整する際に係る作業時間を低減すると共に作業者の安全を確保することができる。
ところで、上述した実施形態では、水中移動装置1は、原子炉圧力容器101内の検査を行うものとして説明したが、この限りではない。例えば、原子力設備において使用済燃料を保管する燃料プール内の検査を行うものであってもよい。
また、上述した実施形態では、探触子板15により検査を行うものとして説明したが、この限りではない。例えば、探触子板15に換えて加工や溶接する冶具を多関節型マニピュレータ10の先端に取り付け、これを水中環境や気中環境にて交換するシステムとしてもよい。