JP2018058762A - 光ファイバの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光ファイバの伝送損失を低減させることが容易な光ファイバの製造方法の提供。【解決手段】線引工程において光ファイバを複数の徐冷炉121で徐冷する徐冷工程において、下記式(8)を用いて、光ファイバのコアを構成するガラスの仮想温度を最も効率良く低下させることができるときのガラスの温度Tを求めた後、当該温度Tを用いて、ガラスの仮想温度が最も効率良く低下させられたときの光ファイバの伝送損失に対して増加量が0.001db/km未満となるときの光ファイバの温度とガラスの仮想温度との温度差の範囲を算出し、徐冷工程において前記温度差が前記範囲に収まるように徐冷炉の温度を設定する。(ただし、式(8)において、Eactはガラスの活性化エネルギー、kBはBoltzmann定数、Tfはガラスの仮想温度。)【選択図】図2

Description

本発明は、光ファイバの製造方法に関する。
光ファイバ通信システムにおいて光伝送距離の長距離化や光伝送速度の高速化を図るためには、光信号ノイズ比が高められなければない。そのため、光ファイバの伝送損失の低減が求められている。光ファイバの製造方法が高度に洗練されている現在では、光ファイバに含まれる不純物による伝送損失はほぼ限界まで低下していると考えられている。残る伝送損失の主な原因は、光ファイバを構成するガラスの構造や組成の揺らぎに伴う散乱損失である。これは光ファイバがガラスで構成されているが故に不可避なものである。
ガラスの構造の揺らぎを低減する方法としては、溶融したガラスを冷却する際に緩やかに冷却することが知られている。このように溶融したガラスを緩やかに冷却する方法として、線引炉から線引きされた直後の光ファイバを徐冷することが試みられている。具体的には、線引炉から線引きした光ファイバを徐冷炉で加熱したり、線引きした直後の光ファイバを断熱材で囲んだりして、光ファイバの冷却速度を低下させることが検討されている。
下記特許文献1には、シリカガラスを主成分とするコアとクラッドを有する光ファイバの外径が最終外径の500%より小さくなる位置から光ファイバの温度が1400℃になる位置までのうちの70%以上の領域において、漸化式で求められる目標温度に対して±100℃以下となるように加熱炉(徐冷炉)の温度を設定することが開示されている。このように光ファイバの温度履歴が制御されることによって、光ファイバを構成するガラスの仮想温度が低下して伝送損失が低減されるとしている。
特開2014−62021号公報
しかし、上記特許文献1に開示されている技術では、漸化式で求められる理想的な温度変化に光ファイバの温度を合わせるために複雑な計算を繰り返すことが求められる。また、特許文献1に開示されている技術では、光ファイバの温度が漸化式で求められる目標温度に対して±50℃〜100℃もずれることを許容している。このような広い範囲で光ファイバの温度のずれが許容されると、温度履歴が十分に適正化されているとは言い難い。例えば、徐冷される光ファイバの温度が±100℃の範囲で変化し、光ファイバを構成するガラスの仮想温度も同様の範囲で変化したとすると、得られる光ファイバの光散乱による伝送損失は±0.007dB/km程度も上下することになる。このような光ファイバの温度履歴が十分に適正化されていない従来の製造方法では、徐冷炉を必要以上に長くする過剰な設備投資が行われたり、線引速度を必要以上に低下させて生産性が損なわれたりする。
本発明者らは、徐冷炉の温度を適切に設定し、光ファイバを構成するガラスの仮想温度と光ファイバの温度との温度差が適切に制御されることによって、光ファイバを構成するガラスの構造緩和が促進され、光ファイバの伝送損失が低減され易くなることを見出した。
そこで、本発明は、光ファイバの伝送損失を低減させることが容易な光ファイバの製造方法を提供しようとするものである。
上記課題を解決するため、本発明の光ファイバの製造方法は、光ファイバ用母材を線引炉において線引きする線引工程と、前記線引工程において引き出された光ファイバを徐冷する徐冷工程と、を備え、前記徐冷工程において、前記光ファイバは複数の徐冷炉に通され、前記光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの構造緩和の時定数をτ(T)、前記徐冷工程におけるある時点での前記光ファイバの温度をT、前記ある時点での前記コアを構成するガラスの仮想温度をT 、前記ある時点から時間Δt経過後の前記コアを構成するガラスの仮想温度をTとしたとき、前記徐冷工程の任意の期間において下記式(1)が成り立つことを特徴とする。
20℃<T−T=(T −T)exp(−Δt/τ(T))<100℃・・・(1)
本発明者らは、光ファイバの温度と光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度との温度差が上記所定の範囲に制御された状態で光ファイバが徐冷されることによって、コアを構成するガラスの構造緩和が促進されることを見出した。コアを構成するガラスの構造緩和が促進されることによって、コアに光が伝送される際にコアを構成するガラスの構造の揺らぎに起因する散乱損失が低減されるので、光ファイバの伝送損失が低減される。また、上記のように徐冷工程において複数の徐冷炉が用いられ、各徐冷炉の設定温度が適切に制御されることによって、光ファイバの温度と光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度との温度差が上記所定の範囲に制御され易くなる。その結果、コアを構成するガラスの構造緩和が促進され、光ファイバの伝送損失が低減され易くなる。
また、本発明の光ファイバの製造方法は、前記徐冷工程の任意の期間において下記式(2)が成り立つことが好ましい。
40℃<T−T=(T −T)exp(−Δt/τ(T))<60℃・・・(2)
このように徐冷工程において光ファイバの温度Tと当該光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度Tとの温度差(T−T)がより適した範囲に制御されることによって、当該光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの構造緩和がより促進され易くなり、光ファイバの伝送損失がより低減され易くなる。
また、本発明の光ファイバの製造方法は、上流側からn番目の前記徐冷炉の設定温度をTsn、上流側からn番目の前記徐冷炉の出口における前記光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度をTenとするとき、下記式(3)の関係が成り立つことが好ましい。
20℃<Ten−Tsn<100℃・・・(3)
上記のように徐冷工程において複数の徐冷炉が用いられ、各徐冷炉の設定温度が各徐冷炉の出口におけるコアを構成するガラスの仮想温度に対して所定の範囲に制御されることによって、光ファイバの温度と光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度との温度差が所定の範囲に制御され易くなる。その結果、コアを構成するガラスの構造緩和が促進され、光ファイバの伝送損失が低減され易くなる。
また、本発明の光ファイバの製造方法は、下記式(4)が成り立つことが好ましい。
40℃<Ten−Tsn<60℃・・・(4)
このように複数の徐冷炉の設定温度がそれぞれより適切な範囲に制御されることによって、光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの構造緩和の促進効果がより増大され易くなり、光ファイバの伝送損失がより低減され易くなる。
また、本発明の光ファイバの製造方法は、上流側に備えられる前記徐冷炉よりも下流側に備えられる前記徐冷炉の方が、設定温度と出口における前記コアを構成するガラスの仮想温度との温度差が小さいことが好ましい。
本発明者らは、ガラスの温度が低くなるとガラスの仮想温度とガラスの温度との温度差を小さくした方がガラスの構造緩和が促進されやすいことを見出した。従って、上流側に備えられる徐冷炉よりも下流側に備えられる徐冷炉の方が設定温度と出口におけるコアを構成するガラスの仮想温度との温度差が小さくなるように徐冷炉の温度を設定することによって、効率良くコアを構成するガラスの構造緩和を促進させることができる。その結果、光ファイバの伝送損失がより低減され易くなる。
また、前記光ファイバの温度が1300℃以上1500℃以下の範囲にあるときの少なくとも一時期に前記光ファイバが前記複数の徐冷炉のいずれかに滞在することが好ましい。光ファイバの温度がこの範囲にあるときに光ファイバが徐冷されることによって、光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度が短時間で低下され易くなり、光ファイバの伝送損失が低減され易くなる。
以上のように、本発明によれば、光ファイバの伝送損失を低減させることが容易な光ファイバの製造方法が提供される。
本発明の光ファイバの製造方法の工程を示すフローチャートである。 本発明の光ファイバの製造方法に用いる装置の構成を概略的に示す図である。 ガラスの温度及び当該ガラスの仮想温度と徐冷時間との関係を示すグラフである。 ガラスの仮想温度とガラスの温度との温度差(T −T)と、ガラスの仮想温度の単位時間当たりの低下速度((T−T )/Δt)と、の関係を示すグラフである。 ガラスの仮想温度とガラスの温度との温度差の時間変化を示すグラフである。 図5に実線で示す適正化された温度差(T−T)と、散乱による伝送損失が0.001dB/km以上損失増加しない温度差(T−T)の経時変化の上限及び下限とを示すグラフである。 各徐冷炉の設定温度、各徐冷炉の出口における適正化されたガラスの仮想温度、及び、仮想的な温度履歴を経るガラスの各徐冷炉の出口における仮想温度を示すグラフである。
以下、本発明に係る光ファイバの製造方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、一つの実施形態に係る本発明の光ファイバの製造方法の工程を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の光ファイバの製造方法は、線引工程P1と、予冷工程P2と、徐冷工程P3と、急冷工程P4と、を備える。以下、これらの各工程について説明する。なお、図2は本実施形態の光ファイバの製造方法に用いる装置の構成を概略的に示す図である。
<線引工程P1>
線引工程P1は、線引炉110において光ファイバ用母材1Pの一端を線引きする工程である。まず、所望の光ファイバ1を構成するコア及びクラッドと同じ屈折率分布を持つガラスで構成される光ファイバ用母材1Pを準備する。光ファイバ1は、1つ又は複数のコア及びコアの外周面を隙間なく囲むクラッドを有する。また、コア及びクラッドはそれぞれシリカガラスからなり、コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも高くされる。例えば、コアが屈折率を高くするゲルマニウム等のドーパントが添加されたシリカガラスから成る場合、クラッドは純粋なシリカガラスで構成される。また、例えば、コアが純粋なシリカガラスから成る場合、クラッドは屈折率を低くするフッ素等のドーパントが添加されたシリカガラスで構成される。
次に、光ファイバ用母材1Pを長手方向が垂直となるように懸架する。そして、光ファイバ用母材1Pを線引炉110に配置し、加熱部111を発熱させて光ファイバ用母材1Pの下端部を加熱する。このとき光ファイバ用母材1Pの下端部は、例えば2000℃に加熱されて溶融状態となる。そして、加熱された光ファイバ用母材1Pの下端部から溶融したガラスを所定の線引速度で線引炉110から引き出す。
<予冷工程P2>
予冷工程P2は、線引工程P1で線引炉110から引き出された光ファイバが後述する徐冷炉121へ送られるのに適した所定の温度になるように冷却する工程である。徐冷炉121へ送られるのに適した光ファイバの所定の温度については、後に詳述する。
本実施形態の光ファイバの製造方法において、予冷工程P2は線引炉110の直下に設けられた筒状体120の中空部に線引工程P1で線引きされた光ファイバが通されることによって行われる。線引炉110の直下に筒状体120を設けることによって、筒状体120の中空部内の雰囲気は線引炉110内の雰囲気とほぼ同じになる。そのため、線引きされた直後の光ファイバの周囲の雰囲気や温度が急激に変化することが抑制される。
徐冷炉121へ送られる光ファイバの温度は、主に線引速度と線引炉110内の雰囲気によって決められる。予冷工程P2を備えることによって、光ファイバの冷却速度を更に微調整し、徐冷炉121への光ファイバの入線温度を適切な範囲に調整し易くなる。線引炉110から引き出される光ファイバの温度と徐冷炉121へ送られるのに適した光ファイバの温度とに基づいて、徐冷炉121と線引炉110との距離や筒状体120の長さを適宜選択することができる。筒状体120は、例えば金属管等によって構成される。当該金属管を空冷したり、当該金属管の周囲に断熱材を配したりして、光ファイバの冷却速度を調整しても良い。
<徐冷工程P3>
徐冷工程P3は、線引工程P1において引き出された光ファイバを徐冷する工程である。本実施形態の光ファイバの製造方法では、光ファイバは予冷工程P2を経て温度調整され、徐冷工程P3において徐冷される。徐冷工程P3において、光ファイバは複数の徐冷炉121a,121b,121c,121dに通される。本実施形態の光ファイバの製造方法の説明では、これら全ての徐冷炉を包括する場合や各徐冷炉を区別する必要がない場合は単に「徐冷炉121」という場合がある。なお、図2には、4つの徐冷炉121a,121b,121c,121dを示しているが、本発明において徐冷炉の数は複数であれば特に限定されない。徐冷炉が複数あるというのは、互いに異なる温度に設定することできる発熱部が複数あるという意味である。例えば、1つの筐体内に収められているとしても、互いに異なる温度に設定することができる発熱部が複数備えられていれば、徐冷炉が複数あるといえる。
徐冷炉121内は入線する光ファイバの温度とは異なる所定の温度とされており、徐冷炉121に入線した光ファイバの周囲の温度により、光ファイバの冷却速度が低下させられる。徐冷炉121において光ファイバの冷却速度が低下させられることによって、以下に説明するように、光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの構造が緩和され、散乱損失が低減した光ファイバ1が得られる。
従来の徐冷工程を有する光ファイバの製造方法では、徐冷炉への入線時の光ファイバの温度が十分に適正化されていない。具体的には、光ファイバの温度が高すぎたり低すぎたりする状態で徐冷炉に入線される場合がある。徐冷炉に入線する光ファイバの温度が高過ぎると、光ファイバを構成するガラスの構造が緩和する速度が非常に速いため、光ファイバを徐冷することによる効果を得ることがほとんど期待できない。一方、徐冷炉に入線する光ファイバの温度が低すぎると光ファイバを構成するガラスの構造が緩和する速度が遅くなるため、徐冷炉にて光ファイバを再加熱する必要等が生じることがある。このように従来の徐冷工程では、光ファイバを構成するガラスの構造緩和が効率よく行われているとは言い難い。そのため、徐冷炉を必要以上に長くする過剰な設備投資が行われたり、線引速度を必要以上に遅くして生産性が損ねられたりする虞がある。
本実施形態の光ファイバの製造方法によれば、以下に説明するように徐冷工程P3において、徐冷炉121の温度を適切に設定し、光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度と光ファイバの温度との温度差が適切に制御されることによって、コアを構成するガラスの構造緩和が促進される。その結果、過剰な設備投資を必要とせず、且つ、生産性良く、伝送損失が低減された光ファイバ1を得ることができる。また、本実施形態の光ファイバの製造方法によれば、上述した引用文献1に開示された技術のような複雑な計算を製造時に必要としない。
いわゆるストロングガラスに分類されるシリカガラスでは、ガラスの粘性流動によると考えられる構造緩和の時定数τ(T)はArrheniusの式に従う。そのため、時定数τ(T)はガラスの組成によって決まる定数A及び活性化エネルギーEactを用いて、ガラスの温度Tの関数として下記式(5)のように表される。なお、kはBoltzmann定数である。
1/τ(T)=A・exp(−Eact/kT)・・・(5)
(ここでは、Tはガラスの絶対温度である。)
上記式(5)より、ガラスの温度が高いほど速くガラスの構造が緩和し、その温度における平衡状態に速く達することがわかる。すなわち、ガラスの温度が高いほどガラスの仮想温度がガラスの温度に近づくのが速くなる。
ガラスを徐冷するときのガラスの温度及び当該ガラスの仮想温度と時間との関係を図3に示す。図3に示すグラフにおいて、横軸は時間、縦軸は温度を示している。図3において、実線はある徐冷条件でのガラスの温度推移を示しており、破線はそのときのガラスの仮想温度の推移を示している。また、点線は実線で示す徐冷条件よりも冷却速度を緩やかにした場合のガラスの温度推移を示しており、一点鎖線はそのときのガラスの仮想温度の推移を示している。
図3に実線及び破線で示すように、高温域でガラスの温度が時間の経過と共に低下するときはガラスの仮想温度も同様に低下する。このようにガラスの温度が十分に高い状態では、ガラスの構造緩和の速度が非常に速い。しかし、ガラスの温度が低下するにつれてガラスの構造緩和の速度は遅くなる。やがてガラスの仮想温度の低下はガラスの温度の低下に追従できなくなる。そして、ガラスの温度とガラスの仮想温度との温度差が大きくなる。ここで、ガラスの冷却速度を緩やかにすると、冷却速度が速い場合に比べてガラスは相対的に温度の高い状態に長時間保持されることになる。そのため、図3に点線及び一点鎖線で示すように、ガラスの温度とガラスの仮想温度との温度差は小さくなり、ガラスの仮想温度は先に説明した例よりも低くなる。すなわち、ガラスの冷却速度を緩やかにすると、ガラスの構造緩和が促進されやすくなる。
上記のように、ガラスの温度が高いときはガラスの構造が速く緩和する。ただし、ガラスの仮想温度はガラスの温度よりも低くなることはないので、ガラスの温度が高いときはそのガラスの仮想温度も高いままとなる。すなわち、ガラスの温度が高すぎると徐冷することによる効果が少ない。かかる観点から、徐冷炉121に滞在させる光ファイバの温度は1600℃以下であることが好ましく、1500℃以下であることがより好ましい。一方、ガラスの温度が低い場合は仮想温度がより低い温度まで低下するが、仮想温度の低下速度は遅くなる。すなわち、ガラスの温度が低すぎると仮想温度を十分に低下させるための徐冷に時間を要する。かかる観点から、徐冷炉121に滞在させる光ファイバの温度は1300℃以上であることが好ましく、1400℃以上であることがより好ましい。よって、光ファイバの温度が1300℃以上1500℃以下の範囲にあるときの少なくとも一時期に光ファイバが徐冷炉121に滞在することが好ましい。このように、徐冷工程P3において光ファイバの温度が所定の範囲にあるときに光ファイバが徐冷されることによって、光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度が短時間で低下され易くなり、光ファイバの伝送損失が低減され易くなる。
次に、ガラスの温度とガラスの仮想温度との関係から、光ファイバをどのように徐冷することによってコアを構成するガラスの構造緩和を効率良く促進し、光ファイバの伝送損失を低減できるのか説明する。
光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの構造緩和の時定数をτ(T)、徐冷工程P3におけるある時点での光ファイバの温度をT、当該ある時点でのコアを構成するガラスの仮想温度をT としたとき、当該ある時点から時間Δt経過後のコアを構成するガラスの仮想温度Tは、上記式(5)から下記式(6)のように表される。なお、Δtは微小時間であって、その間のTは一定であると仮定している。
−T=(T −T)exp(−Δt/τ(T))・・・(6)
上記式(6)によれば、コアを構成するガラスの仮想温度Tが構造緩和の時定数τ(T)に依存するだけではなく、コアを構成するガラスの仮想温度Tと光ファイバの温度Tとの温度差(T−T)が、ある時点におけるコアを構成するガラスの仮想温度T と光ファイバの温度Tとの温度差(T −T)に依存することがわかる。構造緩和の時定数τ(T)は、仮想温度がT であるガラスの温度がTであるときに、ガラスの仮想温度Tとガラスの温度Tとの温度差(T−T)が1/eになるまでの時間として定義されており、温度差(T −T)がある程度大きいほど単位時間当たりの仮想温度Tの変化が大きくなる。
仮想温度がT であるガラスで構成されるコアを含む光ファイバの温度をTにしたときの温度差(T −T)と、仮想温度Tの単位時間当たりの変化((T−T )/Δt)と、の関係を図4に模式的に示す。図4に示すように、コアを構成するガラスの仮想温度T と光ファイバの温度Tとが一致している条件(T =T)では、コアを構成するガラスの構造緩和は起こらず、仮想温度の単位時間当たりの変化は0である((T−T )/Δt=0)。ここから光ファイバの温度Tを低下させ、コアを構成するガラスの仮想温度T と光ファイバの温度Tとの温度差(T −T)が大きくなる条件を考えると、コアを構成するガラスの構造緩和の時定数τ(T)は大きくなるものの単位時間当たりの仮想温度Tの変化率((T−T )/Δt)は負に大きくなる。しかし、さらに光ファイバの温度Tを低下させてコアを構成するガラスの仮想温度T と光ファイバの温度Tとの温度差(T −T)がさらに大きくなる条件を考えると、今度は次第にコアを構成するガラスの構造緩和の時定数τ(T)が大きくなるとともに単位時間当たりの仮想温度Tの変化((T−T )/Δt)の絶対値が小さくなる。すなわち、図4のグラフに表れているピークのように、コアを構成するガラスの仮想温度T と光ファイバの温度Tとの温度差(T −T)がある値のときに仮想温度の単位時間当たりの変化((T−T )/Δt)が極小値をとることがわかる。
ここで上記式(6)を解くと、ガラスの仮想温度Tの低下速度が最大になるときのガラスの温度Tと仮想温度Tとの間に下記式(7)の関係が成り立つことがわかる。
+(Eact/k)×T−(Eact/k)×T=0・・・(7)
さらに上記式(7)を下記式(8)のようにTについて解くと、ガラスの仮想温度Tを最も効率良く低下させることができるときのガラスの温度Tを求めることができる。以下、ガラスの仮想温度Tを最も効率良く低下させることができるときのガラスの温度を「適正化されたガラスの温度」ということがあり、最も効率良く低下させられた仮想温度を「適正化された仮想温度」ということがある。
Figure 2018058762
これまでに説明したように、ある時点におけるガラスの仮想温度T とガラスの温度Tとの温度差(T −T)が所定の値のときにガラスの仮想温度Tの単位時間当たりの変化が最も大きくなる。すなわち、仮想温度T のガラスの一定時間Δt経過後の仮想温度Tを考えるとき、仮想温度Tを最低値にすることができるガラスの温度Tが存在することになる。
コアにGをドープした汎用的なシングルモード光ファイバについて、上記式(6)から求められるコアを構成するガラスの仮想温度Tが最低値になるときの値と、そのときの光ファイバの温度Tとの温度差(T−T)の経時変化を、図5に示す。図5のグラフにおいて、縦軸は、コアを構成するガラスの仮想温度Tが最低値になるときの値とそのときの光ファイバの温度Tとの温度差(T−T)、横軸は光ファイバの徐冷時間である。なお、実線で示すグラフは非特許文献1(K. Saito, et al., Journal of the American Ceramic Society, Vol.89, pp.65-69 (2006))に記載されている定数A及び活性化エネルギーEactを用いた結果であり、破線で示すグラフは非特許文献2(K. Saito, et al., Applied Physics Letters, Vol.83, pp.5175-5177 (2003))に記載されている定数A及び活性化エネルギーEactを用い、Δtを0.0005秒とした結果である。
ここで、線引工程P1において光ファイバ用母材1Pを加熱溶融した直後から徐冷工程P3を行う場合を仮定する。徐冷初期(徐冷時間が0秒のとき)における光ファイバの温度Tが1800℃であると仮定すると、この温度におけるコアを構成するガラスの構造緩和時間は0.001秒未満と非常に短い。従って、コアを構成するガラスの徐冷初期の仮想温度T も同じく1800℃であると考えてよい。すなわち、T −T=0℃と初期値が仮定される。
上記の仮定により求められる、コアを構成するガラスの仮想温度と光ファイバの温度との温度差(T−T)の経時変化を見ると、概ね0.01秒までの時間領域においては、温度差(T−T)を徐々に大きくすれば良く、概ね0.01秒以降の時間領域では温度差(T−T)を徐々に小さくすれば良いことがわかる。また、全ての時間領域において温度差(T−T)を概ね60℃未満となるようにすると良く、ほとんどの時間領域において温度差(T−T)を概ね40℃より高く概ね60℃未満に保つように光ファイバの温度Tを制御することによって、コアを構成するガラスの仮想温度Tが効率良く低下することがわかる。また、図5に示す温度差(T−T)が極大となる時間は、上記式(5)における定数A及び活性化エネルギーEact並びに徐冷初期(徐冷時間が0秒のとき)における光ファイバの温度T及びコアを構成するガラスの仮想温度T によって多少前後するが、概ね0.01秒となる。
上記仮定からわかることは、コアを構成するガラスの仮想温度と光ファイバの温度との温度差(T−T)がある程度生じるよう、線引工程P1に引き続いて予冷工程P2を設けたのちに徐冷工程P3を行えば、徐冷炉121の長さを有効に利用してコアを構成するガラスの構造緩和を効率良く行うことができるということである。例えば、図5において概ね0.01秒経過時点における、コアを構成するガラスの仮想温度と光ファイバの温度との温度差(T−T)が概ね40℃より高く60℃未満になる時点まで予冷工程P2を行い、その後徐冷工程P3を開始すれば、徐冷炉121の長さを有効に利用できることから好ましい。
また、図5に示す結果から以下のことがわかる。すなわち、組成に基づいて決定される定数A及び活性化エネルギーEactの値に多少の違いがあったとしても、徐冷工程P3においてガラスの仮想温度とガラスの温度との温度差(T−T)が40℃より高く60℃未満の範囲であれば、ガラスの仮想温度を効率良く低下させられることがわかる。よって、いわゆるドーパントの濃度が低く主成分がシリカガラスである一般的な光ファイバであれば、光ファイバを構成するガラスの仮想温度と光ファイバの温度との温度差(T−T)が40℃より高く60℃未満の条件で光ファイバが徐冷されることで、光ファイバを構成するガラスの仮想温度は効率良く低下させられる。例えば、G等のドーパントがドープされたシリカガラスから成るコアや、実質的に純粋なシリカガラスから成るクラッドのいずれにおいても、仮想温度を効率良く低下させられる。
また、徐冷工程P3を開始してから終了するまでの任意の期間において光ファイバの温度Tと当該光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度Tとの温度差(T−T)を上記所定の範囲に制御することによって、当該光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの構造緩和が促進され易くなり、光ファイバの伝送損失を低減させ易くなる。すなわち、コアを構成するガラスの構造緩和の時定数をτ(T)、徐冷工程P3におけるある時点での光ファイバの温度をT、当該ある時点でのコアを構成するガラスの仮想温度をT 、当該ある時点から時間Δt経過後のコアを構成するガラスの仮想温度をTとしたとき、下記式(2)が成り立つことが好ましい。
40℃<T−T=(T −T)exp(−Δt/τ(T))<60℃・・・(2)
このように徐冷工程P3において光ファイバの温度Tと当該光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度Tとの温度差(T−T)が所定の範囲に制御されることによって、当該光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの構造緩和がより促進され易くなる。従って、光ファイバの伝送損失が低減され易くなる。
このとき、本実施形態の光ファイバの製造方法によれば、徐冷工程P3において複数の徐冷炉121が用いられ、各徐冷炉121の設定温度が適切に制御されることによって、光ファイバの温度と光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度との温度差(T−T)が上記所定の範囲に制御され易くなる。その結果、コアを構成するガラスの構造緩和が促進され、光ファイバの伝送損失が低減され易くなる。
なお、コアを構成するガラスの仮想温度Tを最も効率良く低下させるための、光ファイバの温度Tと当該光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度Tとの温度差(T−T)の条件は上述の通りであるが、以下に説明する条件でも光ファイバの伝送損失を十分に低減させることができる。
光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度Tと光ファイバの伝送損失とは、次のような関係式で結び付けられる。Rayleigh散乱係数Rはコアを構成するガラスの仮想温度Tに比例し、Rayleigh散乱による伝送損失αは伝送させる光の波長をλ[μm]とする下記式(9)で表される。
α=R/λ=BT/λ・・・(9)
ここで、非特許文献2(K. Saito, et al., Applied Physics Letters, Vol.83, pp.5175-5177 (2003))によると、B=4.0×10−4dB/km/μm/Kである。波長λ=1.55μmにおける伝送損失を考えると、コアを構成するガラスの仮想温度Tが14℃上昇すると、Rayleigh散乱による伝送損失αが凡そ0.001dB/km増加する。すなわち、最も効率良く低下させられるときのコアを構成するガラスの仮想温度Tからの誤差を14℃未満に抑制することができれば、Rayleigh散乱による伝送損失αの増加を0.001dB/km未満に抑えることができる。
上記のように、最も効率良く低下させられるときのコアを構成するガラスの仮想温度Tから許容し得る誤差を考慮する場合、以下に説明するように、コアを構成するガラスの仮想温度Tと光ファイバの温度との温度差(T−T)が20℃より高く100℃未満という温度条件で、光ファイバを徐冷炉121に入線させれば良い。
図5に実線で示す温度差(T−T)を徐冷時間0.5秒経たときのコアを構成するガラスの仮想温度Tから予想される散乱損失に対する増加を0.001dB/km未満に抑えられるときの温度差は、上記漸化式(6)から予測することができる。徐冷初期(徐冷時間が0秒のとき)における光ファイバのコアを構成するガラスの仮想温度T を1800℃、温度差(T−T)を徐冷工程P3中においてほぼ一定となるよう仮定して漸化式(6)を解くと、図6に示すグラフが得られる。図6には図5に実線で示す温度差(T−T)を実線で再掲している。さらに、図6には散乱による伝送損失が0.001dB/km以上損失増加しない温度差(T−T)の経時変化の上限を破線で、下限を一点鎖線で示す。ここで、定数A及び活性化エネルギーEactは非特許文献1(K. Saito, et al., Journal of the American Ceramic Society, Vol.89, pp.65-69 (2006))に示されている値を用いる。図6に示す結果から以下のことがわかる。徐冷工程P3中、概ね0.01秒以降の時間領域では上記温度差(T−T)が20℃より高く100℃未満の範囲になるように光ファイバの温度履歴を制御すべく徐冷炉121の温度が設定されれば、最も効率良く低下させられるときのコアを構成するガラスの仮想温度Tに対して、コアを構成するガラスの仮想温度は14℃程度以上上昇しない範囲に抑えられる。その結果、伝送損失は最も低下させられる適正化された条件のときの値に対して0.001dB/km以下の増加に抑えることができる。
よって、徐冷工程P3を開始してから終了するまでの任意の期間においても光ファイバの温度Tと当該光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度Tとの温度差(T−T)が20℃より高く100℃未満の範囲に維持されることによって、当該光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの構造緩和が促進され易くなり、光ファイバの伝送損失が低減され易くなる。すなわち、下記式(1)が成り立つことが好ましい。
20℃<T−T=(T −T)exp(−Δt/τ(T))<100℃・・・(1)
次に、上記式(2)や式(1)の条件を満たしやすくするための具体例について説明する。本実施形態の光ファイバの製造方法では、徐冷工程P3において4つの徐冷炉121a,121b,121c,121dを用いる。このように複数の徐冷炉121を用いることによって、光ファイバの温度とコアを構成するガラスの仮想温度との温度差を所定の範囲に制御し易くなる。すなわち、徐冷工程P3において光ファイバを複数の徐冷炉121に通し、上流側からn番目の徐冷炉121の設定温度をTsn、上流側からn番目の徐冷炉121の出口に到達するまでの徐冷時間におけるコアを構成するガラスの仮想温度をTenとしたとき、下記式(3)の関係が成り立つようにする。
20℃<Ten−Tsn<100℃・・・(3)
上述したように、光ファイバの温度と光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度との温度差が所定の範囲に制御された状態で光ファイバが徐冷されることによって、コアを構成するガラスの構造緩和が促進される。コアを構成するガラスの構造緩和が促進されることによって、コアに光が伝送される際にコアを構成するガラスの構造の揺らぎに起因する散乱損失が低減されるので、光ファイバの伝送損失が低減される。上記のように徐冷工程P3において複数の徐冷炉121が用いられ、各徐冷炉121の設定温度が各徐冷炉121の出口に到達するまでの徐冷時間におけるコアを構成するガラスの仮想温度に対して所定の範囲に制御されることによって、光ファイバの温度と光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度との温度差が所定の範囲に制御され易くなる。その結果、コアを構成するガラスの構造緩和が促進され、光ファイバの伝送損失が低減される。図7を参照しつつ以下に具体的に説明する。
図7は、初期値としてコアを構成するガラスの温度と仮想温度が1800℃のときに式(5)より計算した、コアを構成するガラスの適正化された仮想温度の変化(実線)と、徐冷炉121a,121b,121c,121dの設定温度(一点鎖線)と、徐冷炉121a,121b,121c,121dの出口に到達するまでの徐冷時間におけるコアを構成するガラスの期待される仮想温度を示している。図7に示す例において、各徐冷炉121の夫々の長さは0.5mであり、線引速度は20m/秒と仮定している。図7に三角形(▲)で示した通り、各徐冷炉121を光ファイバが出るとき、すなわち、徐冷時間が0.025秒、0.050秒、0.075秒、0.100秒のときのコアを構成するガラスの適正化された仮想温度Tは、それぞれ1556℃、1515℃、1492℃、1476℃と計算される。そして、徐冷炉121a,121b,121c,121dの設定温度は図7に一点鎖線で示すように設定される。すなわち、各徐冷炉121の出口に到達したときの徐冷時間におけるコアを構成するガラスの適正化された仮想温度Tより50℃低い温度に各徐冷炉121の温度を設定する。その結果、各徐冷炉121の出口付近では光ファイバの温度が各徐冷炉121の設定温度に近づくので、各徐冷炉121の出口付近では上記式(2)や式(1)の条件を満たしやすくなる。そして各徐冷炉121に突入したガラスの温度が直ちに各徐冷炉121の設定温度に一致するという急激な変化を伴い一時的には式(1)の条件を外れてしまう仮想的な温度履歴を経たガラスは、図7に円形(●)で示す仮想温度を有することが期待される。実際のガラスの温度はより緩やかに低下して徐冷炉の設定温度に近づくので、実際の仮想温度は三角形(▲)で示す理想的な仮想温度よりはやや高く、円形(●)で示す仮想温度よりはやや低くなるが、許容できる範囲の誤差となる。図7に示す例では、0.100秒徐冷した後の仮想的な温度履歴を経たガラスの仮想温度と適正化された仮想温度との差は12℃であり、散乱損失は0.001dB/km未満の差しかない。
上述した観点から、光ファイバの温度とコアを構成するガラスの仮想温度との温度差をより適正な範囲、すなわち、上記式(2)を満たしやすくするという観点からは、下記式(4)が成り立つことが好ましい。
40℃<Ten−Tsn<60℃・・・(4)
このように徐冷炉121の設定温度がより適切な範囲に制御されることによって、光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの構造緩和の促進効果が増大され易くなり、光ファイバの伝送損失が低減され易くなる。
また、図5に示すように、ガラスの温度が低くなるとガラスの仮想温度とガラスの温度との温度差を小さくした方がガラスの構造緩和が促進されやすい。従って、上流側に備えられた徐冷炉121よりも下流側に備えられた徐冷炉121の方が、設定温度と出口におけるコアを構成するガラスの仮想温度との差が小さいことが好ましい。例えば図5に実線で示したように、徐冷時間が0.025秒、0.050秒、0.075秒、0.100秒における適正化されたガラスの温度とコアを構成するガラスの適正化された仮想温度との差は、それぞれ59℃、56℃、55℃、54℃であり、温度の差は下流になるほど小さいことが好ましい。このように、上流側に備えられる徐冷炉よりも下流側に備えられる徐冷炉の方が設定温度と出口におけるコアを構成するガラスの仮想温度との温度差が小さくなるように徐冷炉の温度を設定することによって、効率良くコアを構成するガラスの構造緩和を促進させることができる。その結果、光ファイバの伝送損失がより低減され易くなる。
なお、最も効率良く低下させられるときのコアを構成するガラスの仮想温度Tと光ファイバの温度Tとの関係は、徐冷時間tのみに依存し、徐冷時間t、徐冷炉の長さL及び線引速度vは、下記式(10)の関係で結び付けることができる。
t=L/v・・・(10)
従って、製造される光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの目標とする仮想温度Tを設定し、生産性を考慮した線引速度vを決定すれば必要な徐冷炉の長さLが求められる。例えば、仮想温度Tを1500℃とするために徐冷時間tが0.1秒程度必要なので、線引速度vを20m/秒に設定する場合、徐冷炉の長さLは2m必要であることがわかる。また、例えば、仮想温度Tを1400℃とするために徐冷時間tが0.4秒程度必要なので、線引速度vを10m/秒に設定する場合、徐冷炉の長さLは4m必要であることがわかる。一方、徐冷炉の長さLが2mしかなければ、線引速度vを5m/秒とする必要があることがわかる。ただし、生産性等の観点から、線引速度vは10m/秒〜50m/秒程度、徐冷炉長Lは1m〜10m程度の範囲で選択されることが好ましく、徐冷時間tは1秒以下とすることが好ましい。
<急冷工程P4>
徐冷工程P3後、光ファイバは耐外傷性などを高めるために被覆層で覆われる。この被覆層は通常、紫外線硬化性樹脂で構成される。このような被覆層を形成するためには、被覆層の焼損などが起こらないようにするため、光ファイバが十分に低い温度に冷却されている必要がある。光ファイバの温度は塗布される樹脂の粘度に影響を与え、結果として被覆層の厚さに影響を与える。被覆層を形成する際の適切な光ファイバの温度は、被覆層を構成する樹脂の性質に応じて適宜決定される。
本実施形態の光ファイバの製造方法では、線引炉110とコーティング装置131の間に徐冷炉121が設けられることによって、光ファイバを十分に冷却させるための区間が短くなる。特に本実施形態の光ファイバの製造方法では予冷工程P2も備えるため、光ファイバを十分に冷却させるための区間が更に短くなる。従って、本実施形態の光ファイバの製造方法では、徐冷炉121を出た光ファイバを冷却装置122によって急冷させる急冷工程P4を備える。急冷工程P4では、徐冷工程P3よりも急速に光ファイバが冷却される。このような急冷工程P4を備えることによって、短い区間で光ファイバの温度を十分に低下させることができるので、被覆層を形成し易くなる。冷却装置122を出るときの光ファイバの温度は、例えば40℃〜50℃となる。
上記のようにして冷却装置122を経て所定の温度まで冷却された光ファイバは、光ファイバを覆う被覆層となる紫外線硬化性樹脂が入ったコーティング装置131を通過し、この紫外線硬化性樹脂で被覆される。更に紫外線照射装置132を通過し、紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化して被覆層が形成され、光ファイバ1となる。なお、被覆層は通常は2層からなる。2層の被覆層を形成する場合、各層を構成する紫外線硬化性樹脂で光ファイバを被覆した後にそれらの紫外線硬化性樹脂を一度に硬化させて2層の被覆層を形成することができる。また、1層目の被覆層を形成した後に2層目の被覆層を形成しても良い。そして、光ファイバ1は、ターンプーリ141により方向が変換され、リール142により巻取られる。
以上、本発明について好適な実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。つまり、本発明の光ファイバの製造方法は、上述した線引工程及び徐冷工程を備えていれば良く、予冷工程や急冷工程は必須の構成要素ではない。また、本発明の光ファイバの製造方法はあらゆる種類の光ファイバの製造に適用可能である。例えば、本発明の光ファイバの製造方法は、シリカガラスを主成分とする光ファイバだけではなく、カルコゲナイドガラス、フッ素系ガラスなど、他の材料を主成分とする光ファイバの製造方法にも、上記式(5)における定数A、および活性化エネルギーEactが求められれば適用可能である。
本発明によれば、伝送損失が低減された光ファイバを製造可能な光ファイバの製造方法が提供され、光ファイバ通信の分野に利用することができる。また、ファイバレーザ装置やその他光ファイバを利用したデバイスにも利用することができる。
1・・・光ファイバ
1P・・・光ファイバ用母材
110・・・線引炉
111・・・加熱部
120・・・筒状体
121・・・徐冷炉
122・・・冷却装置
131・・・コーティング装置
132・・・紫外線照射装置
141・・・ターンプーリ
142・・・リール
P1・・・線引工程
P2・・・予冷工程
P3・・・徐冷工程
P4・・・急冷工程

Claims (7)

  1. 光ファイバ用母材を線引炉において線引きする線引工程と、
    前記線引工程において引き出された光ファイバを徐冷する徐冷工程と、
    を備え、
    前記徐冷工程において、前記光ファイバは複数の徐冷炉に通され、
    下記式(8)を用いて、前記光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度を最も効率良く低下させることができるときの前記ガラスの温度Tを求めた後、当該温度Tを用いて、前記ガラスの仮想温度が最も効率良く低下させられたときの前記光ファイバの伝送損失に対して増加量が0.001db/km未満となるときの前記光ファイバの温度と前記ガラスの仮想温度との温度差の上限値および下限値を算出し、
    前記徐冷工程において、前記温度差が前記上限値から前記下限値までの範囲内に収まるように前記徐冷炉の温度を設定する
    ことを特徴とする光ファイバの製造方法。
    Figure 2018058762
    (ただし、前記式(8)において、Eactは前記ガラスの活性化エネルギー、kはBoltzmann定数、Tは前記ガラスの仮想温度である。)
  2. 前記光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの構造緩和の時定数をτ(T)、前記徐冷工程におけるある時点での前記光ファイバの温度をT、前記ある時点での前記コアを構成するガラスの仮想温度をT 、前記ある時点から時間Δt経過後の前記コアを構成するガラスの仮想温度をTとしたとき、前記徐冷工程の任意の期間において下記式(1)が成り立つ
    ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの製造方法。
    20℃<T−T=(T −T)exp(−Δt/τ(T))<100℃・・・(1)
  3. 前記徐冷工程の任意の期間において下記式(2)が成り立つ
    ことを特徴とする請求項2に記載の光ファイバの製造方法。
    40℃<T−T=(T −T)exp(−Δt/τ(T))<60℃・・・(2)
  4. 上流側からn番目の前記徐冷炉の設定温度をTsn、上流側からn番目の前記徐冷炉の出口における前記光ファイバに含まれるコアを構成するガラスの仮想温度をTenとするとき、下記式(3)の関係が成り立つ
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバの製造方法。
    20℃<Ten−Tsn<100℃・・・(3)
  5. 下記式(4)が成り立つ
    ことを特徴とする請求項4に記載の光ファイバの製造方法。
    40℃<Ten−Tsn<60℃・・・(4)
  6. 上流側に備えられる前記徐冷炉よりも下流側に備えられる前記徐冷炉の方が、設定温度と出口における前記コアを構成するガラスの仮想温度との温度差が小さい
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光ファイバの製造方法。
  7. 前記光ファイバの温度が1300℃以上1500℃以下の範囲にあるときの少なくとも一時期に前記光ファイバが前記複数の徐冷炉のいずれかに滞在する
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光ファイバの製造方法。
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