JP2018054340A - ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を検出する方法、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体の製造方法、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及び出生前遺伝学的検査方法 - Google Patents
ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を検出する方法、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体の製造方法、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及び出生前遺伝学的検査方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を高感度に検出する方法を提供する。
【解決手段】配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体を血液細胞集団に接触させて抗体で細胞をマーキングする工程と、血液細胞集団から、抗体でマーキングされた細胞を検出する工程とを有する検出方法;配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体;配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、アミノ酸残基数が20個以下であるペプチドを免疫原とする、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体の製造方法;配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ;及びその応用。
【選択図】なし
【解決手段】配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体を血液細胞集団に接触させて抗体で細胞をマーキングする工程と、血液細胞集団から、抗体でマーキングされた細胞を検出する工程とを有する検出方法;配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体;配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、アミノ酸残基数が20個以下であるペプチドを免疫原とする、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体の製造方法;配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ;及びその応用。
【選択図】なし
Description
本発明は、ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を検出する方法、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体の製造方法、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及び出生前遺伝学的検査方法に関する。
ヘモグロビンは2種類のサブユニット2個ずつからなる4量体のタンパク質である。胎児の赤血球に発現しているヘモグロビンのほとんどは、2個のαサブユニットと2個のγサブユニットとからなるヘモグロビンF(fetal hemoglobin)であるが、生後はγサブユニットよりもβサブユニットの発現が優位になり、成人の赤血球に発現しているヘモグロビンのほとんどは、2個のαサブユニットと2個のβサブユニットとからなるヘモグロビンA(adult hemoglobin)である。正常成人においては、ヘモグロビンFの発現割合は全ヘモグロビンの2%以下であるが、ヘモグロビンFを高発現する先天性貧血症及び後天性貧血症が知られている。
ところで、細胞又はタンパク質を抗体を用いて免疫学的に検出する方法が、臨床に普及している。例えば特許文献1には、βサブユニットのN末端領域を認識する抗体を用いたヘモグロビンA1cの測定方法が開示されている。例えば特許文献2には、γサブユニットに対する抗体を用いて、妊娠母体の血漿における胎児ヘモグロビン濃度を測定する子癇前症の診断方法が開示されている。例えば特許文献3には、妊娠母体の血清に存在する分泌型ポリペプチドをELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)によって検出する方法が開示されている。例えば非特許文献1には、ヘモグロビンFに対する抗体を用いたヘモグロビンF及びヘモグロビンF含有赤血球の定量方法が開示されている。
Yun-Ling Zheng, et al.; Flow sorting of fetal erythroblasts using intracytoplasmic anti-fetal haemoglobin: Preliminary observations on maternal samples; Prenatal Diagnosis; 1995; vol.15; pp.897-905.
ヒト血液に含まれるヘモグロビンF又はγサブユニットを、抗体を用いて免疫学的に高感度に検出するには、γサブユニットを特異的に認識する感度の高い抗体が必要である。
本開示の実施形態は、上記状況のもとになされた。
本開示の課題は、ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を高感度に検出する方法を提供することである。
また、本開示の課題は、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに特異的に結合する新規な抗体、その製造方法、及びその製造のためのハイブリドーマを提供することである。
また、本開示の課題は、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに特異的に結合する新規な抗体を利用して胎児細胞を検出して行う、胎児の出生前遺伝学的検査方法を提供することである。
本開示の課題は、ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を高感度に検出する方法を提供することである。
また、本開示の課題は、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに特異的に結合する新規な抗体、その製造方法、及びその製造のためのハイブリドーマを提供することである。
また、本開示の課題は、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに特異的に結合する新規な抗体を利用して胎児細胞を検出して行う、胎児の出生前遺伝学的検査方法を提供することである。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
[1] ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を検出する方法であって、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体を血液細胞集団に接触させて抗体で細胞をマーキングする工程と、血液細胞集団から、抗体でマーキングされた細胞を検出する工程と、を有する、ヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞の検出方法。
[2] さらに、抗CD45抗体を血液細胞集団に接触させて抗CD45抗体で細胞をマーキングする工程と、血液細胞集団から、抗CD45抗体でマーキングされていない細胞を検出する工程と、を有する、[1]に記載の検出方法。
[3] さらに、核染色色素を血液細胞集団に接触させて細胞核を染色する工程と、血液細胞集団から、核染色色素によって核が染色された有核細胞を検出する工程と、を有する、[1]又は[2]に記載の検出方法。
[4] 血液細胞集団から細胞を検出することがフローサイトメトリーによって行われる、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の検出方法。
[5] 血液細胞集団が、妊娠母体から採取された末梢血に由来する血液細胞集団である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の検出方法。
[6] 配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体。
[7] モノクローナル抗体である、[6]に記載の抗体。
[8] 蛍光色素、蛍光タンパク質、酵素、ビオチン、及び磁気ビーズから選ばれる少なくとも1種で標識された抗体である、[6]又は[7]に記載の抗体。
[9] 配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、アミノ酸残基数が20個以下であるペプチドを免疫原として非ヒト動物に投与する工程を有する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体の製造方法。
[10] 配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
[11] [1]〜[5]のいずれか1項に記載の細胞の検出方法により、妊娠母体から採取された末梢血からヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を検出し、検出された細胞から染色体DNAを入手して行う、胎児の出生前遺伝学的検査方法。
[1] ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を検出する方法であって、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体を血液細胞集団に接触させて抗体で細胞をマーキングする工程と、血液細胞集団から、抗体でマーキングされた細胞を検出する工程と、を有する、ヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞の検出方法。
[2] さらに、抗CD45抗体を血液細胞集団に接触させて抗CD45抗体で細胞をマーキングする工程と、血液細胞集団から、抗CD45抗体でマーキングされていない細胞を検出する工程と、を有する、[1]に記載の検出方法。
[3] さらに、核染色色素を血液細胞集団に接触させて細胞核を染色する工程と、血液細胞集団から、核染色色素によって核が染色された有核細胞を検出する工程と、を有する、[1]又は[2]に記載の検出方法。
[4] 血液細胞集団から細胞を検出することがフローサイトメトリーによって行われる、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の検出方法。
[5] 血液細胞集団が、妊娠母体から採取された末梢血に由来する血液細胞集団である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の検出方法。
[6] 配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体。
[7] モノクローナル抗体である、[6]に記載の抗体。
[8] 蛍光色素、蛍光タンパク質、酵素、ビオチン、及び磁気ビーズから選ばれる少なくとも1種で標識された抗体である、[6]又は[7]に記載の抗体。
[9] 配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、アミノ酸残基数が20個以下であるペプチドを免疫原として非ヒト動物に投与する工程を有する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体の製造方法。
[10] 配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
[11] [1]〜[5]のいずれか1項に記載の細胞の検出方法により、妊娠母体から採取された末梢血からヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を検出し、検出された細胞から染色体DNAを入手して行う、胎児の出生前遺伝学的検査方法。
本開示によれば、ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を高感度に検出する方法が提供される。
また、本開示によれば、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに特異的に結合する新規な抗体、その製造方法、及びその製造のためのハイブリドーマが提供される。
また、本開示によれば、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに特異的に結合する新規な抗体を利用して胎児細胞を検出して行う、胎児の出生前遺伝学的検査方法が提供される。
また、本開示によれば、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに特異的に結合する新規な抗体、その製造方法、及びその製造のためのハイブリドーマが提供される。
また、本開示によれば、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに特異的に結合する新規な抗体を利用して胎児細胞を検出して行う、胎児の出生前遺伝学的検査方法が提供される。
以下に、実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
<細胞の検出方法>
本開示の検出方法は、ヒト血液に含まれる、ヘモグロビンサブユニットγ(hemoglobin subunit gamma;HBG)を含有する細胞(「HBG含有細胞」という。)を検出する方法である。ヒトのHBGの遺伝子は2つあり、それぞれHBG1(hemoglobin subunit gamma 1)とHBG2(hemoglobin subunit gamma 2)とを発現する。本開示において、HBGは、HBG1とHBG2とを含む用語である。
本開示の検出方法は、ヒト血液に含まれる、ヘモグロビンサブユニットγ(hemoglobin subunit gamma;HBG)を含有する細胞(「HBG含有細胞」という。)を検出する方法である。ヒトのHBGの遺伝子は2つあり、それぞれHBG1(hemoglobin subunit gamma 1)とHBG2(hemoglobin subunit gamma 2)とを発現する。本開示において、HBGは、HBG1とHBG2とを含む用語である。
本開示において血液には、血液そのもの、及び、生理食塩水で希釈した血液;血液にグルコース、抗血液凝固剤等の添加剤を加えた保存血液;これらの分画物;などの血液試料が含まれる。本開示において血液細胞集団とは、血液を構成する細胞の集団を指す。
本開示の検出方法の一実施形態は、成人から採取された末梢血を検体とし、HBG含有細胞を検出する。HBG含有細胞を検出することによって、先天性貧血症(例えば、遺伝性高胎児ヘモグロビン血症(hereditary persistence of fetal hemoglobin)、サラセミア症候群)又は後天性貧血症(例えば、異常ヘモグロビン症)の診断又は病態把握が可能である。
本開示の検出方法の一実施形態は、妊娠母体から採取された末梢血を検体とし、HBG含有細胞を検出する。妊娠母体から採取された末梢血に含まれるHBG含有細胞は、胎児の赤血球と推定される。胎児の赤血球が有核赤血球である場合、この細胞から胎児染色体および胎児遺伝子を入手し、出生前遺伝学的検査を行うことができる。
胎児の有核赤血球は、胎盤を通過して母体の血液中に移行する。胎児の有核赤血球は、妊娠後6週程度から母体血中に存在するといわれている。したがって、出生前遺伝学的検査を行うことを目的とした場合、本開示の検出方法に供する血液は、妊娠後6週程度以降の妊娠母体から採取した末梢血、又は、妊娠後6週程度以降の妊娠母体から採取した末梢血から調製した血液試料であることが好ましい。
母体が妊娠中には、胎児の赤血球は有核であり得る。胎児の有核赤血球は、妊娠母体血中の細胞の約106個に1個の割合で存在しているといわれており、妊娠母体の抹消血中においては、非常に存在確率が低い。妊娠母体の末梢血には、胎児の有核赤血球のほかに、母親の白血球(好酸球、好中球、好塩基球、単球、リンパ球);母親の、核のない成熟した赤血球;母親の有核赤血球;等の血液細胞が含まれる。
様々な細胞を含む血液細胞集団から、HBG含有細胞を感度高く検出するために、本開示の検出方法は、配列番号1のアミノ酸配列(Gly-His-Phe-Thr-Glu-Glu-Asp-Lys-Ala-Thr-Ile-Thr-Ser-Leu)に存在するエピトープを認識する抗体であって、ヒトのヘモグロビンサブユニットα(hemoglobin subunit alpha;HBA)及びヒトのヘモグロビンサブユニットβ(hemoglobin subunit beta;HBB)には結合しない抗体を用いる。
ヒトのHBG1及びHBG2はどちらもN末端に、配列番号1のアミノ酸配列を有する。一方、ヒトHBA及びヒトHBBには、配列番号1のアミノ酸配列に同一性の高いアミノ酸配列が存在しない。したがって、本開示の検出方法は、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体を用いることによって、血液細胞集団に含まれるHBG含有細胞を感度高く検出することができる。即ち、本開示の検出方法によれば、ヘモグロビンFを発現している細胞を感度高く検出することができる。
本開示において、抗体は、免疫グロブリン分子そのもの(intact immunoglobulin)のみならず、その断片であって抗原への結合能を有する断片(例えば、Fab、F(ab')2、Fab')をも包含する用語である。
配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫された非ヒト動物の血液から精製する方法;配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫された非ヒト動物のB細胞とミエローマ細胞との融合細胞であるハイブリドーマを作製し、ハイブリドーマからモノクローナル抗体を得る方法;等の方法で製造可能である。抗体の製造方法は、後で詳細に説明する。
配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体は、蛍光色素、蛍光タンパク質、酵素、ビオチン、及び磁気ビーズから選ばれる少なくとも1種で標識された標識化抗体でもよい。
抗体を標識する蛍光色素としては、例えば、FITC(fluorescein isothiocyanate)、テキサスレッド、Cy3、Cy5、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 647等が挙げられる。抗体を標識する蛍光タンパク質としては、例えば、フィコシアニン、アロフィコシアニン、フィコエリスリン、フィコエリスロシアニン等が挙げられる。抗体を標識する酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等が挙げられる。
以下、本開示の検出方法を、工程を説明することによって、詳細に説明する。
[HBG含有細胞マーキング工程、HBG含有細胞検出工程]
本開示の検出方法は、
配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体を血液細胞集団に接触させて抗体で細胞をマーキングする工程(「HBG含有細胞マーキング工程」という。)と、
血液細胞集団から、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体でマーキングされた細胞を検出する工程(「HBG含有細胞検出工程」という。)と、を有する。
本開示の検出方法は、
配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体を血液細胞集団に接触させて抗体で細胞をマーキングする工程(「HBG含有細胞マーキング工程」という。)と、
血液細胞集団から、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体でマーキングされた細胞を検出する工程(「HBG含有細胞検出工程」という。)と、を有する。
HBG含有細胞マーキング工程は、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体を血液細胞集団に接触させて抗体で細胞をマーキングする工程であり、抗体を血液細胞集団に接触させる方法は制限されない。抗体と血液細胞集団との接触は、例えば、血液細胞集団の細胞懸濁液に抗体を添加し、又は、抗体を含有するリン酸緩衝液若しくは生理食塩水に血液細胞集団を添加し、4℃〜室温で30分間〜120分間インキュベートすることによって行われる。配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体が、蛍光色素、蛍光タンパク質、酵素、ビオチン、磁気ビーズ等で標識されていない場合には、この抗体に対する標識化二次抗体を、血液細胞集団にさらに接触させてもよい。二次抗体の標識としては、蛍光色素、蛍光タンパク質、酵素、ビオチン、磁気ビーズ等が挙げられる。
HBG含有細胞マーキング工程において抗体を接触させる血液細胞集団は、抗体が細胞膜を通過して細胞質に至ることを可能にする目的で、細胞膜透過処理を施された血液細胞集団であることが好ましい。細胞膜透過処理は、例えば、TritonX100等の界面活性剤を含有するリン酸緩衝液又は生理食塩水と、血液細胞集団とを混合し、4℃〜室温で1分間〜30分間インキュベートすることによって行われる。血液細胞集団に細胞膜透過処理を施す場合、血液細胞集団は、細胞内からタンパク質が失われることを抑制する目的で、細胞膜透過処理の前に固定化処理を施された血液細胞集団であることが好ましい。細胞の固定化処理は、例えば、グルタルアルデヒドを含有するリン酸緩衝液又は生理食塩水と、血液細胞集団とを混合し、4℃〜室温で1分間〜30分間インキュベートすることによって行われる。
出生前遺伝学的検査を行うことを目的として、妊娠母体から採取された末梢血を検体とし本開示の検出方法を実施する場合、HBG含有細胞マーキング工程において抗体を接触させる血液細胞集団は、有核赤血球を多く含む集団に濃縮された細胞集団であることが好ましい。したがって、妊娠母体から採取された末梢血を密度勾配遠心分離に供して有核赤血球を含む画分を得て、この有核赤血球を含む画分をHBG含有細胞マーキング工程に供する血液細胞集団とすることが好ましい。有核赤血球を濃縮するための密度勾配遠心分離は、例えば、密度の異なる2種類の媒体を遠沈管に重層した不連続密度勾配の上に、生理食塩水で希釈した血液を重層して遠心を行う遠心分離である。詳細な方法としては、例えば、国際公開第2016/038929号に記載の方法が適用できる。
HBG含有細胞検出工程は、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体でマーキングされた細胞を検出する工程であり、検出する方法は制限されない。
HBG含有細胞マーキング工程に用いる抗体(配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体、又は、この抗体に対する二次抗体)が、蛍光色素、蛍光タンパク質、酵素、ビオチン、磁気ビーズ等で標識された標識化抗体である場合には、その標識に応じた光学的方法、化学的方法、電気的方法、又は磁気的方法によってHBG含有細胞検出工程が行われる。HBG含有細胞検出工程は、HBG含有細胞の単離を目的とした場合は、フローサイトメトリーによって行うことが好ましく、この場合、HBG含有細胞マーキング工程に用いる抗体(配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体、又は、この抗体に対する二次抗体)は、蛍光色素、蛍光タンパク質、又はビオチンで標識された抗体であることが好ましい。
HBG含有細胞マーキング工程に用いる抗体(配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体、又は、この抗体に対する二次抗体)が、蛍光色素、蛍光タンパク質、酵素、ビオチン、磁気ビーズ等で標識された標識化抗体である場合には、その標識に応じた光学的方法、化学的方法、電気的方法、又は磁気的方法によってHBG含有細胞検出工程が行われる。HBG含有細胞検出工程は、HBG含有細胞の単離を目的とした場合は、フローサイトメトリーによって行うことが好ましく、この場合、HBG含有細胞マーキング工程に用いる抗体(配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体、又は、この抗体に対する二次抗体)は、蛍光色素、蛍光タンパク質、又はビオチンで標識された抗体であることが好ましい。
[白血球マーキング工程、白血球除外工程]
本開示の検出方法は、HBG含有細胞の検出効率を上げる観点から、さらに、
抗CD45抗体を血液細胞集団に接触させて抗CD45抗体で細胞をマーキングする工程(「白血球マーキング工程」という。)と、
血液細胞集団から、抗CD45抗体でマーキングされていない細胞を検出する工程(「白血球除外工程」という。)と、を有することが好ましい。
本開示の検出方法は、HBG含有細胞の検出効率を上げる観点から、さらに、
抗CD45抗体を血液細胞集団に接触させて抗CD45抗体で細胞をマーキングする工程(「白血球マーキング工程」という。)と、
血液細胞集団から、抗CD45抗体でマーキングされていない細胞を検出する工程(「白血球除外工程」という。)と、を有することが好ましい。
白血球共通抗原であるCD45は、白血球全般、即ち、好酸球、好中球、好塩基球、単球、及びリンパ球に発現していることから、血液細胞集団に含まれるCD45陰性細胞は、赤血球である確率が高い。したがって、白血球マーキング工程及び白血球除外工程によって、血液細胞集団から感度高く赤血球が検出される。
白血球マーキング工程は、抗CD45抗体を血液細胞集団に接触させて抗CD45抗体で細胞をマーキングする工程であり、抗CD45抗体を血液細胞集団に接触させる方法は制限されない。抗CD45抗体と血液細胞集団との接触は、例えば、血液細胞集団の細胞懸濁液に抗CD45抗体を添加し、又は、抗CD45抗体を含有するリン酸緩衝液若しくは生理食塩水に血液細胞集団を添加し、4℃〜室温で30分間〜120分間インキュベートすることによって行われる。白血球マーキング工程は、HBG含有細胞マーキング工程と同時に行ってもよく、HBG含有細胞マーキング工程の前又は後に行ってもよい。HBG含有細胞マーキング工程と白血球マーキング工程との同時実施は、例えば、血液細胞集団の細胞懸濁液に、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体及び抗CD45抗体を添加する、又は、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体及び抗CD45抗体を含有するリン酸緩衝液若しくは生理食塩水に、血液細胞集団を添加することによって行われる。
抗CD45抗体は、白血球除外工程を光学的方法、化学的方法、電気的方法、又は磁気的方法によって行う観点から、蛍光色素、蛍光タンパク質、酵素、ビオチン、又は磁気ビーズ等で標識された標識化抗体であることが好ましく、白血球除外工程をフローサイトメトリーによって行う観点から、蛍光色素、蛍光タンパク質、又はビオチンで標識された抗体であることが好ましい。
白血球除外工程は、抗CD45抗体の標識に応じた光学的方法、化学的方法、電気的方法、又は磁気的方法によって行われる。白血球除外工程は、HBG含有細胞検出工程の前に行ってもよく、HBG含有細胞検出工程の後に行ってもよい。
[細胞核染色工程、有核細胞検出工程]
本開示の検出方法は、有核細胞を検出する目的で、さらに、
核染色色素を血液細胞集団に接触させて細胞核を染色する工程(「細胞核染色工程」という。)と、
血液細胞集団から、核染色色素によって核が染色された有核細胞を検出する工程(「有核細胞検出工程」という。)と、を有することが好ましい。
本開示の検出方法は、有核細胞を検出する目的で、さらに、
核染色色素を血液細胞集団に接触させて細胞核を染色する工程(「細胞核染色工程」という。)と、
血液細胞集団から、核染色色素によって核が染色された有核細胞を検出する工程(「有核細胞検出工程」という。)と、を有することが好ましい。
細胞核染色工程は、核染色色素を血液細胞集団に接触させて細胞核を染色する工程であり、核染色色素を血液細胞集団に接触させる方法は制限されない。核染色色素と血液細胞集団との接触は、例えば、血液細胞集団の細胞懸濁液に核染色色素を添加し、又は、核染色色素を含有するリン酸緩衝液若しくは生理食塩水に血液細胞集団を添加し、4℃〜室温で30分間〜120分間インキュベートすることによって行われる。細胞核染色工程は、HBG含有細胞マーキング工程の前に行ってもよく、HBG含有細胞マーキング工程の後かつHBG含有細胞検出工程の前に行ってもよく、HBG含有細胞検出工程の後に行ってもよい。本開示の検出方法が白血球マーキング工程及び白血球除外工程を有する場合、細胞核染色工程は、白血球マーキング工程の前に行ってもよく、白血球マーキング工程の後かつ白血球除外工程の前に行ってもよく、白血球除外工程の後に行ってもよい。
核染色色素としては、クロマチン、核タンパク質、DNA等を染色する色素のいずれでもよく、具体的には、DAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)、ヨウ化プロピジウム、7−AAD(7-Amino-Actinomycin D)、ヘキスト33342、DRAQ5、メチレンブルー、ヘマトキシリン、チオニン等が挙げられる。
核染色色素が非蛍光色素の場合、有核細胞検出工程は、例えば、細胞集団を光学顕微鏡で観察し、核が染色された細胞を検出することにより行われる。
核染色色素が蛍光色素の場合、有核細胞検出工程は、例えば、フローサイトメトリーにより行われる。
核染色色素が蛍光色素の場合、有核細胞検出工程は、例えば、フローサイトメトリーにより行われる。
有核細胞検出工程は、HBG含有細胞検出工程の前に行ってもよく、HBG含有細胞検出工程の後に行ってもよい。本開示の検出方法が白血球マーキング工程及び白血球除外工程を有する場合、有核細胞検出工程は、白血球除外工程の前に行ってもよく、白血球除外工程の後に行ってもよい。
本開示の検出方法の一例としては、妊娠母体から採取された末梢血を検体とし、HBG含有細胞マーキング工程、白血球マーキング工程、細胞核染色工程、HBG含有細胞検出工程、白血球除外工程、及び有核細胞検出工程を有し、HBG含有細胞マーキング工程及び白血球マーキング工程を行い(その順番は制限されない)、次いで細胞核染色工程を行い、次いで3つの検出工程をフローサイトメトリーによって順次行う(その順番は制限されない)実施形態が挙げられる。本実施形態例によれば、胎児の有核赤血球を感度高く検出することができる。
<抗体の製造方法>
本開示の製造方法は、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗ヒトHBG抗体を製造する方法であり、配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、アミノ酸残基数が20個以下であるペプチドを免疫原として非ヒト動物に投与する工程を有する。
本開示の製造方法は、配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗ヒトHBG抗体を製造する方法であり、配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、アミノ酸残基数が20個以下であるペプチドを免疫原として非ヒト動物に投与する工程を有する。
本開示の製造方法は、配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、アミノ酸残基数が20個以下であるペプチドを免疫原とする故、ヒトHBGを大量に入手することなく抗ヒトHBG抗体を製造することができる。また、本開示の製造方法は、ヒトHBGの部分アミノ酸配列であって、ヒトHBA及びヒトHBBには同一性の高い配列が存在しない配列番号1のアミノ酸配列を選択し、このアミノ酸配列を有するペプチドを免疫原とする故、ヒトヘモグロビンサブユニットの中でもヒトHBGを特異的に認識する抗体を製造することができる。
本開示の製造方法における免疫原は、配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、アミノ酸残基数が20個以下であるペプチド(以下「ペプチド抗原」ともいう。)であり、アミノ酸残基数は18個以下が好ましく、16個以下がより好ましく、14個が更に好ましい。ペプチド抗原における配列番号1のアミノ酸配列以外のアミノ酸配列(つまり、C末端側のアミノ酸配列)は、特に制限されないが、例えば、ヒトHBGにおける配列番号1のアミノ酸配列に続く数残基のアミノ酸配列が挙げられる。
本開示の製造方法においては、ペプチド抗原と、KLH(keyhole limpet hemocyanin)、BSA(bovine serum albumin)等のキャリアタンパク質とを結合させたコンジュゲートを感作用抗原とすることが好ましい。
本開示の製造方法によって製造される抗体は、ポリクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体でもよい。
ポリクローナル抗体を製造する一実施形態例を説明する。
感作用抗原を、ホスト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)に、数日〜数週間間隔(好ましくは2週間〜5週間間隔)で、1回〜10回(好ましくは2回〜5回)投与する。投与は、例えば、静脈、皮下、又は腹腔に注入することにより行われる。感作用抗原は、アジュバントと混合したエマルジョンの形態で投与されることが好ましい。アジュバントとしては、例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。1回当たりの抗原投与量は、アジュバントを用いない場合は0.1mg〜100mgが好ましく、アジュバントを用いる場合は1μg〜100μgが好ましい。最終の免疫日から6日〜60日後に採血し、採血した血液から血清を分画し、抗血清を得る。抗血清からの抗体の精製は、硫安塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等により行う。この実施形態例によって、抗血清又は精製抗体として、ポリクローナル抗体を取得することができる。
感作用抗原を、ホスト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)に、数日〜数週間間隔(好ましくは2週間〜5週間間隔)で、1回〜10回(好ましくは2回〜5回)投与する。投与は、例えば、静脈、皮下、又は腹腔に注入することにより行われる。感作用抗原は、アジュバントと混合したエマルジョンの形態で投与されることが好ましい。アジュバントとしては、例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。1回当たりの抗原投与量は、アジュバントを用いない場合は0.1mg〜100mgが好ましく、アジュバントを用いる場合は1μg〜100μgが好ましい。最終の免疫日から6日〜60日後に採血し、採血した血液から血清を分画し、抗血清を得る。抗血清からの抗体の精製は、硫安塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等により行う。この実施形態例によって、抗血清又は精製抗体として、ポリクローナル抗体を取得することができる。
モノクローナル抗体を製造する一実施形態例を説明する
感作用抗原を、ホスト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)に、数日〜数週間間隔(好ましくは2週間〜5週間間隔)で、1回〜10回(好ましくは2回〜5回)投与する。投与は、例えば、静脈、皮下、又は腹腔に注入することにより行われる。感作用抗原は、アジュバントと混合したエマルジョンの形態で投与されることが好ましい。アジュバントとしては、例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。1回当たりの抗原投与量は、アジュバントを用いない場合は0.1mg〜100mgが好ましく、アジュバントを用いる場合は1μg〜2000μgが好ましい。最終の免疫日から6日〜60日後(好ましくは1日〜14日後)に抗体産生組織を摘出し、抗体産生細胞(例えば、脾臓細胞、リンパ節細胞)を入手し、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させハイブリドーマを作出する。ミエローマ細胞としては、薬剤選択性を有し、未融合細胞の状態では選択培地において生存できない性質を有する細胞が好ましい。ミエローマ細胞株としては、例えば、P3−X63−Ag8−U1、P3U1、NS−I等のマウスミエローマ細胞株が挙げられる。細胞融合の方法としては、PEG法(ポリエチレングリコールを細胞融合促進剤に用いる方法)、電気的融合法が挙げられる。細胞融合は、例えば、血清を含まない動物細胞用培地(例えば、DMEM(Dulbecco's modified Eagle medium)、RPMI1640(Roswell Park Memorial Institute medium 1640))中で、1×106個/mL〜1×107個/mLの抗体産生細胞と2×105個/mL〜2×106個/mLのミエローマ細胞とを混合し(抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞数比は5:1が好ましい。)、細胞融合促進剤の存在下で融合反応を行う。細胞融合促進剤としては、平均分子量1000〜6000のポリエチレングリコールが挙げられる。細胞融合処理後の細胞を、血清を含む動物細胞用培地に懸濁し、マイクロタイタープレートに1×105個/well程度播種し、各ウェルに選択培地を加え、選択培地を交換しながら培養を行う。選択培地で増殖し得た細胞の培養上清中に目的とする抗体が存在するか否かを、抗原としてヒトHBGを用いたELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)等によって確認する。目的とする抗体が存在するウェルの細胞を回収し、限界希釈法によりモノクローナル抗体産生細胞を樹立する。樹立したモノクローナル抗体産生細胞を、7日〜14日間培養し、その培養上清を採取する。または、ハイブリドーマの作出に用いたミエローマ細胞と同種動物の腹腔内に、モノクローナル抗体産生細胞を約1×107個投与し、モノクローナル抗体産生細胞を大量に増殖させ、1週間〜2週間後に腹水を採取する。培養上清又は腹水からの抗体の精製は、硫安塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等により行う。この実施形態例によって、培養上清、腹水又は精製抗体として、モノクローナル抗体を取得することができる。
感作用抗原を、ホスト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)に、数日〜数週間間隔(好ましくは2週間〜5週間間隔)で、1回〜10回(好ましくは2回〜5回)投与する。投与は、例えば、静脈、皮下、又は腹腔に注入することにより行われる。感作用抗原は、アジュバントと混合したエマルジョンの形態で投与されることが好ましい。アジュバントとしては、例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。1回当たりの抗原投与量は、アジュバントを用いない場合は0.1mg〜100mgが好ましく、アジュバントを用いる場合は1μg〜2000μgが好ましい。最終の免疫日から6日〜60日後(好ましくは1日〜14日後)に抗体産生組織を摘出し、抗体産生細胞(例えば、脾臓細胞、リンパ節細胞)を入手し、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させハイブリドーマを作出する。ミエローマ細胞としては、薬剤選択性を有し、未融合細胞の状態では選択培地において生存できない性質を有する細胞が好ましい。ミエローマ細胞株としては、例えば、P3−X63−Ag8−U1、P3U1、NS−I等のマウスミエローマ細胞株が挙げられる。細胞融合の方法としては、PEG法(ポリエチレングリコールを細胞融合促進剤に用いる方法)、電気的融合法が挙げられる。細胞融合は、例えば、血清を含まない動物細胞用培地(例えば、DMEM(Dulbecco's modified Eagle medium)、RPMI1640(Roswell Park Memorial Institute medium 1640))中で、1×106個/mL〜1×107個/mLの抗体産生細胞と2×105個/mL〜2×106個/mLのミエローマ細胞とを混合し(抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞数比は5:1が好ましい。)、細胞融合促進剤の存在下で融合反応を行う。細胞融合促進剤としては、平均分子量1000〜6000のポリエチレングリコールが挙げられる。細胞融合処理後の細胞を、血清を含む動物細胞用培地に懸濁し、マイクロタイタープレートに1×105個/well程度播種し、各ウェルに選択培地を加え、選択培地を交換しながら培養を行う。選択培地で増殖し得た細胞の培養上清中に目的とする抗体が存在するか否かを、抗原としてヒトHBGを用いたELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)等によって確認する。目的とする抗体が存在するウェルの細胞を回収し、限界希釈法によりモノクローナル抗体産生細胞を樹立する。樹立したモノクローナル抗体産生細胞を、7日〜14日間培養し、その培養上清を採取する。または、ハイブリドーマの作出に用いたミエローマ細胞と同種動物の腹腔内に、モノクローナル抗体産生細胞を約1×107個投与し、モノクローナル抗体産生細胞を大量に増殖させ、1週間〜2週間後に腹水を採取する。培養上清又は腹水からの抗体の精製は、硫安塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等により行う。この実施形態例によって、培養上清、腹水又は精製抗体として、モノクローナル抗体を取得することができる。
本開示の製造方法によって製造される抗体のサブクラスは、特に制限されない。本開示の製造方法においては、精製した免疫グロブリン分子にプロテアーゼを反応させて、Fab又はF(ab')2にしてもよく、F(ab')2を還元してFab'にしてもよい。本開示の製造方法においては、精製した免疫グロブリン分子又はその断片に、蛍光色素、蛍光タンパク質、酵素、ビオチン、磁気ビーズ等を結合させて標識化抗体としてもよい。
<胎児の出生前遺伝学的検査方法>
本開示の検査方法は、妊娠母体から採取された末梢血からHBG含有細胞を検出し、検出されたHBG含有細胞から染色体DNAを入手して行う、胎児の出生前遺伝学的検査の方法である。本開示の検査方法は、ヒト個体が生来的に保有する遺伝情報を明らかにする検査であり、例えば、染色体の異数性の有無の検出、遺伝子多型の検出、及び、遺伝子変異の検出の少なくともいずれかを行う検査である。本開示の検査方法は、例えば、13番染色体、18番染色体、及び21番染色体のトリソミー;性染色体の過剰;等の染色体の異数性の有無の検出に適用される。
本開示の検査方法は、妊娠母体から採取された末梢血からHBG含有細胞を検出し、検出されたHBG含有細胞から染色体DNAを入手して行う、胎児の出生前遺伝学的検査の方法である。本開示の検査方法は、ヒト個体が生来的に保有する遺伝情報を明らかにする検査であり、例えば、染色体の異数性の有無の検出、遺伝子多型の検出、及び、遺伝子変異の検出の少なくともいずれかを行う検査である。本開示の検査方法は、例えば、13番染色体、18番染色体、及び21番染色体のトリソミー;性染色体の過剰;等の染色体の異数性の有無の検出に適用される。
本開示の検査方法は、公知の遺伝子検査の方法、及び公知の遺伝子解析技術を適用して実施してよい。本開示の検査方法は、染色体DNAの解析を容易にする目的で、胎児細胞から全ゲノム増幅(whole genome amplification;WGA)を行う工程を有することが好ましい。さらに、本開示の検査方法は、例えば、全ゲノム増幅の増幅産物を鋳型にして、染色体上の目的領域をポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction;PCR)により増幅する増幅工程と、増幅した目的領域の塩基配列及び量を決定する配列解析工程と、を有することが好ましい。以下、上記の工程を説明することによって、本開示の検査方法の実施形態例を詳細に説明する。
[全ゲノム増幅]
全ゲノム増幅の方法は、特に制限されず、公知の方法で行ってよい。全ゲノム増幅は、例えば、界面活性剤とタンパク質分解酵素とを用いて細胞を溶解させる工程と、細胞から溶出したゲノムDNAを鋳型にしてDNAポリメラーゼによってDNAを増幅する工程と、を有する。
全ゲノム増幅の方法は、特に制限されず、公知の方法で行ってよい。全ゲノム増幅は、例えば、界面活性剤とタンパク質分解酵素とを用いて細胞を溶解させる工程と、細胞から溶出したゲノムDNAを鋳型にしてDNAポリメラーゼによってDNAを増幅する工程と、を有する。
全ゲノム増幅は、市販の試薬を適用して行ってよい。PCRに基づく試薬としては、例えば、PicoPLEX WGA Kit(New England Biolabs社)、GenomePlex Single Cell Whole Genome Amplification Kit(Sigma-Aldrich社)、国際公開第2012/166425号に開示のMALBAC法(Multiple Annealing and Looping-Based Amplification Cycles)に係る試薬が挙げられる。鎖置換型DNA合成反応に基づく試薬としては、例えば、GenomiPhi DNA Amplification Kit(GEヘルスケア社、GenomiPhiは登録商標)、REPLI-g Single Cell Kit(QIAGEN社、REPLI-gは登録商標)が挙げられる。
全ゲノム増幅は、その終了後にアガロースゲル電気泳動を行って、増幅の有無を確認することが好ましい。全ゲノム増幅の増幅産物は、精製することが好ましい。精製は、例えば、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社、QIAquickは登録商標)を用いて行う。増幅産物の量は、例えば、NanoDrop(登録商標、Thermo Fisher Scientific社)、BioAnalyzer(Agilent社)、Quantus Fluorometer(Promega社)を用いて濃度を測定することで確認し得る。
[PCRによる目的領域の増幅工程]
本増幅工程は、全ゲノム増幅で得た増幅産物を鋳型にして、目的領域をPCRにより増幅する工程である。目的領域(増幅される領域)は、遺伝学的検査の目的に応じて選択される、染色体上の領域である。PCRに使用するプライマー対の塩基配列は、目的領域の塩基配列とシークエンサーの解析原理とに従って設計される。増幅工程は、染色体上の複数の領域を解析する目的で、複数のプライマー対を用いて複数の目的領域の多重増幅を行う多重PCR(マルチプレックスPCR)としてもよい。増幅工程は、シークエンサーの解析原理に従って、PCRを1回行ってもよく2回以上行ってもよい。
本増幅工程は、全ゲノム増幅で得た増幅産物を鋳型にして、目的領域をPCRにより増幅する工程である。目的領域(増幅される領域)は、遺伝学的検査の目的に応じて選択される、染色体上の領域である。PCRに使用するプライマー対の塩基配列は、目的領域の塩基配列とシークエンサーの解析原理とに従って設計される。増幅工程は、染色体上の複数の領域を解析する目的で、複数のプライマー対を用いて複数の目的領域の多重増幅を行う多重PCR(マルチプレックスPCR)としてもよい。増幅工程は、シークエンサーの解析原理に従って、PCRを1回行ってもよく2回以上行ってもよい。
PCR試薬としては、例えば、Multiplex PCR Assay Kit(タカラバイオ社)、Multiplex PCR Assay Kit ver2(タカラバイオ社)、KAPA Library Amplification Kit(日本ジェネティクス社)、Platinum Multiplex PCR Master Mix Kit(ライフテクノロジーズ社、Platinumは登録商標)が挙げられる。マルチプレックスPCRを行う場合には、プライマー対ごとにアニーリングの至適温度が異なることがあるため、反応条件の検討をすることが好ましい。PCRのサイクル数は、リアルタイムPCRによる検討を予め行って、その結果に基づき設定してよい。PCRは、その途中で、反応温度及び/又は反応時間を変更してもよい。
増幅工程で得た増幅産物は、精製することが好ましく、精製は、例えば、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社)、AMPure XP Kit(BECKMAN COULTER社)を用いて行う。増幅産物の量は、例えば、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific社)、BioAnalyzer(Agilent社)、Quantus Fluorometer(Promega社)、KAPA Library Quantification Kits(日本ジェネティクス社)を用いて濃度を測定することで確認し得る。
[配列解析工程]
配列解析工程は、増幅された目的領域の塩基配列と量とを決定する工程である。配列解析工程は、各種のシークエンサーによって行われる。PCRによる増幅工程で得た増幅産物の全部又は一部が、配列解析工程でシークエンサーにかけられる物質であり、PCRによる増幅工程で得た増幅産物が、いわばシークエンス用ライブラリーである。
配列解析工程は、増幅された目的領域の塩基配列と量とを決定する工程である。配列解析工程は、各種のシークエンサーによって行われる。PCRによる増幅工程で得た増幅産物の全部又は一部が、配列解析工程でシークエンサーにかけられる物質であり、PCRによる増幅工程で得た増幅産物が、いわばシークエンス用ライブラリーである。
配列解析工程は、解析の精度及び速さ、1度に処理可能な試料数の多さ等の点で、次世代シークエンサーによって行われることが好ましい。次世代シークエンサー(Next Generation Sequencer;NGS)とは、サンガー法を利用したキャピラリーシークエンサー(第一世代シークエンサーと呼ばれる)に対比して分類されるシークエンサーを意味する。次世代シークエンサーは、第二世代、第三世代、第四世代、及び今後開発されるシークエンサーを含む。現時点で最も普及している次世代シークエンサーは、DNAポリメラーゼによる相補鎖合成又はDNAリガーゼによる相補鎖結合に連動した蛍光又は発光をとらえ塩基配列を決定する原理のシークエンサーである。具体的には、MiSeq(Illumina社)、HiSeq2000(Illumina社、HiSeqは登録商標)、Roche454(Roche社)等が挙げられる。
シークエンサーで得られた配列データをアライメントする手段としては、Burrows-Wheeler Aligner(BWA)が挙げられ、BWAによって既知のヒトゲノム配列へ配列データをマッピングすることが好ましい。遺伝子を解析する手段としては、SAMtools及びBEDtoolsが挙げられ、これらの解析手段により遺伝子多型、遺伝子変異、及び/又は染色体数を解析することが好ましい。
配列解析工程で解析した、増幅された目的領域の塩基配列と量とから、染色体の異数性の有無、遺伝子多型、及び/又は遺伝子変異が検出される。染色体の異数性の検出方法の一例を、以下に説明する。
胎児の有核赤血球から得た染色体について、増幅産物の量をシークエンサーで解析する。基準(あるいは参照)として、母親の細胞から得た染色体について、増幅産物の量をシークエンサーで解析する。胎児が染色体の異数性を有しなければ、母親由来の増幅産物の量と胎児由来の増幅産物の量とは、ほぼ1:1の量比になると予想される。増幅領域が位置する染色体が胎児においてトリソミーである場合には、母親由来の増幅産物の量と胎児由来の増幅産物の量とは、ほぼ1.0:1.5(あるいは2:3)の量比になると予想される。
以下に、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例により限定されるものではない。
下記において、物質濃度に関し「M」はモル濃度を表し、1M=1mol/Lである。また、物質濃度に関し、特に断りのない限り「%」は「v/v%」である。
下記において、「PBS」とは、リン酸緩衝液(phosphate buffered saline)を意味し、「HAT」とは、ヒポキサンチンとアミノプテリンとチミジンとの混合物を意味し、「FBS」とは、ウシ胎児血清(fetal bovine serum)を意味し、「BSA」とは、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)を意味し、「HRP」とは、Horseradish Peroxidaseを意味する。PBSは、特に断りのない限り、pH7.4である。
<実施例1>
ヒトHBGに結合するモノクローナル抗体を作製した。
ヒトHBGに結合するモノクローナル抗体を作製した。
[免疫原の調製]
ヒトHBGのアミノ酸配列において、ヒトHBA及びヒトHBBとの間の同一性の低い配列として、配列番号1のアミノ酸配列(Gly-His-Phe-Thr-Glu-Glu-Asp-Lys-Ala-Thr-Ile-Thr-Ser-Leu)を選択し、このアミノ酸配列のペプチドを免疫原とした。
ヒトHBGのアミノ酸配列において、ヒトHBA及びヒトHBBとの間の同一性の低い配列として、配列番号1のアミノ酸配列(Gly-His-Phe-Thr-Glu-Glu-Asp-Lys-Ala-Thr-Ile-Thr-Ser-Leu)を選択し、このアミノ酸配列のペプチドを免疫原とした。
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドは、通常のペプチド免疫で使用するペプチドに比べて短いので、配列番号1のアミノ酸配列のC末端に「H2N−(CH2)2O−(CH2)2O−CH2−COOH」を1個付加した配列を設計した。以下、この配列を「GHFTEEDKATITSL−PEG」という。
配列GHFTEEDKATITSL−PEGのペプチドを、Fmoc固相合成法により合成し、HPLC(high-performance liquid chromatography)で精製した。精製したペプチドとKLH(keyhole limpet hemocyanin)とのコンジュゲートを、以下のとおり作製した。
20mg KLHを2mLの超純水(メルク社のMilli−Q装置で精製した水。Milli−Qは登録商標)に溶解した。別途、MBS(マレイミドベンゾイルオキシコハク酸イミド、架橋剤)2.0mgを500μLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した。KLH溶液を攪拌しながら、MBS溶液を400μL滴下し、25℃で60分間ゆっくりと攪拌した。この混合液を、50mMリン酸バッファー(pH7.4)で平衡化したゲル濾過カラム(Sephadex G-25、GEヘルスケア・ジャパン社)にアプライし、吸光度280nmを追跡してKLH−MBSを回収した。回収したKLH−MBSに、PBSを添加し、濃度を5mg/mLに調整した。別途、配列GHFTEEDKATITSL−PEGのペプチドを、PBSに溶解し、10mg/mLのペプチド溶液を調製した。KLH−MBS溶液とペプチド溶液を等量混合し、スターラーで攪拌しながら25℃で2時間反応させ、ペプチドとKLHをコンジュゲートさせた。反応後の溶液にPBSを加え、濃度を1mg/mLに調整した。
[マウスの免疫感作]
配列GHFTEEDKATITSL−PEGのペプチドとKLHとのコンジュゲートを、感作用抗原とした。
ホスト動物として、BALB/cマウス(メス、初回免疫時7週齢〜9週齢)を3匹用意した。感作用抗原を、2週間間隔で、1回あたり100μg〜200μg、マウス背部皮下に投与した。初回は、感作用抗原とフロイント完全アジュバントとを混合したエマルジョンを投与し、2回目〜4回目は、感作用抗原とフロイント不完全アジュバントとを混合したエマルジョンを投与した。3回目及び4回目の翌週に採血し、採血した血液から血清を分画し、血清の一部(100μL〜200μL)をELISAに供して抗体価を測定した。抗体価の上昇が認められた場合、5回目の投与として、感作用抗原をPBS(−)で希釈し、腹腔内に投与した。5回目の3日後に、マウスから脾臓を摘出した。
配列GHFTEEDKATITSL−PEGのペプチドとKLHとのコンジュゲートを、感作用抗原とした。
ホスト動物として、BALB/cマウス(メス、初回免疫時7週齢〜9週齢)を3匹用意した。感作用抗原を、2週間間隔で、1回あたり100μg〜200μg、マウス背部皮下に投与した。初回は、感作用抗原とフロイント完全アジュバントとを混合したエマルジョンを投与し、2回目〜4回目は、感作用抗原とフロイント不完全アジュバントとを混合したエマルジョンを投与した。3回目及び4回目の翌週に採血し、採血した血液から血清を分画し、血清の一部(100μL〜200μL)をELISAに供して抗体価を測定した。抗体価の上昇が認められた場合、5回目の投与として、感作用抗原をPBS(−)で希釈し、腹腔内に投与した。5回目の3日後に、マウスから脾臓を摘出した。
[ハイブリドーマの作製]
マウスから摘出した脾臓細胞とミエローマ(P3−X63−Ag8−U1)とを、PEG法により細胞融合させた。脾臓細胞とミエローマの混合比(細胞数の比)を5〜10:1とし、播種密度が、脾臓細胞の密度として0.5×105個/well〜1.0×105個/wellになるように、両者を96ウェルプレートに播種し細胞融合させた。培地としては、10%FBS,1.0%HAT−RPMI1640を用いた。培地を交換しながら14日培養し、細胞が増殖したウェルの培養上清を、以下の一次スクリーニングに供した。
マウスから摘出した脾臓細胞とミエローマ(P3−X63−Ag8−U1)とを、PEG法により細胞融合させた。脾臓細胞とミエローマの混合比(細胞数の比)を5〜10:1とし、播種密度が、脾臓細胞の密度として0.5×105個/well〜1.0×105個/wellになるように、両者を96ウェルプレートに播種し細胞融合させた。培地としては、10%FBS,1.0%HAT−RPMI1640を用いた。培地を交換しながら14日培養し、細胞が増殖したウェルの培養上清を、以下の一次スクリーニングに供した。
[ハイブリドーマの一次スクリーニング]
ELISAにより、以下の手順で、ハイブリドーマの一次スクリーニングを行った。
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをPBS(−)で希釈し、濃度1μg/mLのペプチド溶液を調製し、マイクロプレートに注入して、ターゲットペプチドを固相化した。ターゲットペプチドを固相化したマイクロプレートに、各ウェルの培養上清1mLを添加し、25℃で30分間インキュベートし、次いで、二次抗体としてHRP標識抗マウスIgG抗体を0.1μg/well添加し、25℃で30分間インキュベートした。マイクロプレートをPBSで洗浄後、HRP活性を測定した。
ELISAにより、以下の手順で、ハイブリドーマの一次スクリーニングを行った。
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをPBS(−)で希釈し、濃度1μg/mLのペプチド溶液を調製し、マイクロプレートに注入して、ターゲットペプチドを固相化した。ターゲットペプチドを固相化したマイクロプレートに、各ウェルの培養上清1mLを添加し、25℃で30分間インキュベートし、次いで、二次抗体としてHRP標識抗マウスIgG抗体を0.1μg/well添加し、25℃で30分間インキュベートした。マイクロプレートをPBSで洗浄後、HRP活性を測定した。
高HRP活性を示したウェルの細胞を回収し、1ウェルあたりの播種細胞数が1個以下になる細胞懸濁液を調製し、24ウェルプレートに播種した。培地(10%FBS,1.0%HAT−RPMI1640)を交換しながら14日培養し、細胞が増殖したウェルの培養上清を、以下の二次スクリーニングに供した。
[ハイブリドーマの二次スクリーニング]
一次スクリーニングと同様にして、HRP活性を測定した。HRP活性と、ハイブリドーマの生育状態と、抗体のサブクラスとに基づき、ハイブリドーマを選択した。抗体のサブクラスの決定は、Isotyping Test Kit(Bio-Rad Laboratories社)を用いて行った。選択したハイブリドーマは、下記の2つである。
・ハイブリドーマ5D5B1(サブクラスは、IgG1)
・ハイブリドーマ5D5D1(サブクラスは、IgG1)
一次スクリーニングと同様にして、HRP活性を測定した。HRP活性と、ハイブリドーマの生育状態と、抗体のサブクラスとに基づき、ハイブリドーマを選択した。抗体のサブクラスの決定は、Isotyping Test Kit(Bio-Rad Laboratories社)を用いて行った。選択したハイブリドーマは、下記の2つである。
・ハイブリドーマ5D5B1(サブクラスは、IgG1)
・ハイブリドーマ5D5D1(サブクラスは、IgG1)
<実施例2>
実施例1で作製したハイブリドーマが産出するモノクローナル抗体について、血液中のHBG含有細胞を検出する性能の評価を行った。
実施例1で作製したハイブリドーマが産出するモノクローナル抗体について、血液中のHBG含有細胞を検出する性能の評価を行った。
[抗HBG抗体]
抗HBG抗体として、以下の抗体を用意した。
・抗体5D5B1:ハイブリドーマ5D5B1が産出する抗体。ハイブリドーマ5D5B1の培養上清をアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、濃度0.041mg/mLのPBS溶液を調製した。
・抗体5D5D1:ハイブリドーマ5D5D1が産出する抗体。ハイブリドーマ5D5D1の培養上清をアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、濃度0.085mg/mLのPBS溶液を調製した。
抗HBG抗体として、以下の抗体を用意した。
・抗体5D5B1:ハイブリドーマ5D5B1が産出する抗体。ハイブリドーマ5D5B1の培養上清をアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、濃度0.041mg/mLのPBS溶液を調製した。
・抗体5D5D1:ハイブリドーマ5D5D1が産出する抗体。ハイブリドーマ5D5D1の培養上清をアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、濃度0.085mg/mLのPBS溶液を調製した。
性能の対照用の抗体として、表1に示す抗HBG抗体を購入した。
[血液試料]
VERITAS社から、ヒト臍帯血(商品番号CB08)とヒト成人骨髄血(商品番号BM02)を購入した。
VERITAS社から、ヒト臍帯血(商品番号CB08)とヒト成人骨髄血(商品番号BM02)を購入した。
[免疫染色]
血液の細胞数をセルカウンター(Bio-Rad Laboratories社、TC20全自動セルカウンター)で計測し、細胞濃度が5×107個/mLになるように0.1%BSA−PBSで希釈した。血液に含まれる白血球を染色する目的で、希釈血液2mLにBV421標識抗CD45抗体(BD biosciences社)を10μL添加し、25℃で30分間インキュベートした。次いで、遠心処理して上清を除いて0.1%BSA−PBSで1回洗浄し、0.05%グルタルアルデヒド−PBSに置換して、25℃下で10分間転倒混和することで細胞を固定化した。次いで、遠心処理して上清を除いた後、0.05%TritonX100,0.1%BSA−PBSを500μL添加し、25℃下で5分間静置することで細胞膜透過処理を行った。次いで、0.1%BSA−PBSを1mL添加し、遠心処理して上清を除き、0.1%BSA−PBSを2mL添加し、100μLずつ1.5mLチューブに分注した。各チューブに、各抗体を終濃度100μg/mLになるように添加し、25℃で30分間インキュベートした。一次抗体処理後の細胞を0.1%BSA−PBSで1回洗浄し、100μLの0.1%BSA−PBSで懸濁し、一次抗体が標識されていない場合には、二次抗体としてAlexa Fluor 488標識抗マウスIgG(Thermo Fisher Scientific)を1μL添加し、25℃で30分間インキュベートした。
血液の細胞数をセルカウンター(Bio-Rad Laboratories社、TC20全自動セルカウンター)で計測し、細胞濃度が5×107個/mLになるように0.1%BSA−PBSで希釈した。血液に含まれる白血球を染色する目的で、希釈血液2mLにBV421標識抗CD45抗体(BD biosciences社)を10μL添加し、25℃で30分間インキュベートした。次いで、遠心処理して上清を除いて0.1%BSA−PBSで1回洗浄し、0.05%グルタルアルデヒド−PBSに置換して、25℃下で10分間転倒混和することで細胞を固定化した。次いで、遠心処理して上清を除いた後、0.05%TritonX100,0.1%BSA−PBSを500μL添加し、25℃下で5分間静置することで細胞膜透過処理を行った。次いで、0.1%BSA−PBSを1mL添加し、遠心処理して上清を除き、0.1%BSA−PBSを2mL添加し、100μLずつ1.5mLチューブに分注した。各チューブに、各抗体を終濃度100μg/mLになるように添加し、25℃で30分間インキュベートした。一次抗体処理後の細胞を0.1%BSA−PBSで1回洗浄し、100μLの0.1%BSA−PBSで懸濁し、一次抗体が標識されていない場合には、二次抗体としてAlexa Fluor 488標識抗マウスIgG(Thermo Fisher Scientific)を1μL添加し、25℃で30分間インキュベートした。
[核染色]
抗体処理後の細胞を0.1%BSA−PBSで1回洗浄し、核染色剤としてDRAQ5(Cell Signaling Technology社)を5μM含む0.1%BSA−PBS 1mLに置換して10分間静置し、細胞核を染色した。核染色処理後の細胞を0.1%BSA−PBSで1回洗浄し、0.1mLの0.1%BSA−PBSで懸濁した。
抗体処理後の細胞を0.1%BSA−PBSで1回洗浄し、核染色剤としてDRAQ5(Cell Signaling Technology社)を5μM含む0.1%BSA−PBS 1mLに置換して10分間静置し、細胞核を染色した。核染色処理後の細胞を0.1%BSA−PBSで1回洗浄し、0.1mLの0.1%BSA−PBSで懸濁した。
[細胞の検出]
フローサイトメータ(SONY製SH800ZP)を用いて、CD45陰性細胞をゲーティングし、次いで、CD45陰性細胞から抗HBG抗体陽性細胞をゲーティングし(「ゲーティング(A)」という。)、次いで、抗HBG抗体陽性細胞からDRAQ5陽性細胞をゲーティングした(「ゲーティング(B)」という。)。ゲーティング(A)とゲーティング(B)において、ゲーティングされた細胞の割合(個数%)を表2に示す。一部の実験例(一次抗体がB−4等の例)は、ゲーティング(A)までを行った。
フローサイトメータ(SONY製SH800ZP)を用いて、CD45陰性細胞をゲーティングし、次いで、CD45陰性細胞から抗HBG抗体陽性細胞をゲーティングし(「ゲーティング(A)」という。)、次いで、抗HBG抗体陽性細胞からDRAQ5陽性細胞をゲーティングした(「ゲーティング(B)」という。)。ゲーティング(A)とゲーティング(B)において、ゲーティングされた細胞の割合(個数%)を表2に示す。一部の実験例(一次抗体がB−4等の例)は、ゲーティング(A)までを行った。
臍帯血に含まれる赤血球のほとんどが、胎児の有核赤血球(つまり、HBG含有細胞)であり、成人骨髄血に含まれる赤血球のほとんどが、成熟した無核の赤血球(つまり、HBGを含有していない細胞)であるところ、
ゲーティング(A)の結果から、抗体5D5B1と抗体5D5D1は、フローサイトメトリーによって、臍帯血に含まれるHBG含有細胞を高感度で検出できており、しかも、偽陽性が少ないことが分かる。抗体5D5B1と抗体5D5D1は、対照抗体に比べても、感度が高く且つ偽陽性が少ない抗体であり、フローサイトメトリーによる血液分析に非常に有用な抗体である。
また、ゲーティング(B)の結果から、抗体5D5B1又は抗体5D5D1によって臍帯血から検出されるHBG含有細胞のほとんどが有核細胞であり、抗体5D5B1及び抗体5D5D1は、胎児の有核赤血球を単離する抗体として高感度であることが分かる。
ゲーティング(A)の結果から、抗体5D5B1と抗体5D5D1は、フローサイトメトリーによって、臍帯血に含まれるHBG含有細胞を高感度で検出できており、しかも、偽陽性が少ないことが分かる。抗体5D5B1と抗体5D5D1は、対照抗体に比べても、感度が高く且つ偽陽性が少ない抗体であり、フローサイトメトリーによる血液分析に非常に有用な抗体である。
また、ゲーティング(B)の結果から、抗体5D5B1又は抗体5D5D1によって臍帯血から検出されるHBG含有細胞のほとんどが有核細胞であり、抗体5D5B1及び抗体5D5D1は、胎児の有核赤血球を単離する抗体として高感度であることが分かる。
Claims (11)
- ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を検出する方法であって、
配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する抗体を血液細胞集団に接触させて前記抗体で細胞をマーキングする工程と、
前記血液細胞集団から、前記抗体でマーキングされた細胞を検出する工程と、
を有する、ヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞の検出方法。 - さらに、
抗CD45抗体を前記血液細胞集団に接触させて前記抗CD45抗体で細胞をマーキングする工程と、
前記血液細胞集団から、前記抗CD45抗体でマーキングされていない細胞を検出する工程と、
を有する、請求項1に記載の検出方法。 - さらに、
核染色色素を前記血液細胞集団に接触させて細胞核を染色する工程と、
前記血液細胞集団から、前記核染色色素によって核が染色された有核細胞を検出する工程と、
を有する、請求項1又は請求項2に記載の検出方法。 - 前記血液細胞集団から細胞を検出することがフローサイトメトリーによって行われる、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の検出方法。
- 前記血液細胞集団が、妊娠母体から採取された末梢血に由来する血液細胞集団である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の検出方法。
- 配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体。
- モノクローナル抗体である、請求項6に記載の抗体。
- 蛍光色素、蛍光タンパク質、酵素、ビオチン、及び磁気ビーズから選ばれる少なくとも1種で標識された抗体である、請求項6又は請求項7に記載の抗体。
- 配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、アミノ酸残基数が20個以下であるペプチドを免疫原として非ヒト動物に投与する工程を有する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体の製造方法。
- 配列番号1のアミノ酸配列に存在するエピトープを認識する、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の細胞の検出方法により、妊娠母体から採取された末梢血からヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を検出し、検出された前記細胞から染色体DNAを入手して行う、胎児の出生前遺伝学的検査方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016187519A JP2018054340A (ja) | 2016-09-26 | 2016-09-26 | ヒト血液に含まれるヘモグロビンサブユニットγを含有する細胞を検出する方法、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対する抗体の製造方法、ヒトのヘモグロビンサブユニットγに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及び出生前遺伝学的検査方法 |
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-
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- 2016-09-26 JP JP2016187519A patent/JP2018054340A/ja active Pending
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