以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<冷間圧接装置>
図1は、本実施形態に係る冷間圧接装置10を説明する図であり、図1(a)は、冷間圧接装置10の構成を一部模式的に示した外観図(正面図)であり、図(b)は、平導体Cの上面図であり、図1(c)は図1(b)のA−A線断面図である。
同図(a)に示すように、冷間圧接装置10は、二つの平導体C(C1,C2)を冷間圧接する装置であって、第1保持部11と第2保持部12と、駆動部13と、制御部14とを有する。なお、以下の説明において平導体Cとは、同図(b)(c)に示すように、丸線導体に対して平面で構成された帯状(テープ状)の導体をいう。すなわち、平導体とは、同図(b)(c)に示すように、対向する2つの幅広面WSと、対向する2つの幅狭面WTを有し、所定方向に長い帯状部材であって、帯長手方向BLに直交する断面(同図(b)のA−A線断面)が同図(c)に示すように矩形状または角丸矩形状の導体をいう。以下の説明では平導体の一例として帯長手方向に直交する断面が矩形状の平角導体(同図(b)および(c)の上図)を例に説明する。
第1保持部11は、第一の方向(平角導体の帯長手方向;同図(a)のX方向)に沿って移動可能であり、第1上保持体111と第1下保持体112により構成される。第1上保持体111と第1下保持体112は第一の方向(以下、X方向という)に沿った対向面OS1を有するように対向して配置される。なお、本実施形態では説明の便宜上、図示の上方の保持体を第1上保持体111と称し、図示の下方の保持体を第2下保持体122と称するが、これらの上下は必ずしも鉛直方向の上下に限らない。すなわち、図1(a)が冷間圧接装置10の上面図であってもよく、その場合は、第1上保持体111は例えば奥側の保持体となり、第1下保持体112は例えば手前側の保持体となる。また、第1上保持体111は例えば左側の保持体となり、第1下保持体112は例えば右側の保持体となるものであってもよい。
第1上保持体111と第1下保持体112とは、X方向に沿って移動可能であるとともに、X方向に沿った対向面OS1が、第二の方向(平角導体の板厚方向;同図(a)のY方向)に沿って互いに当接または離間するように移動可能である。Y方向はX方向とは異なる方向であり、例えばX方向に直交する方向である。
第2保持部12は、第1保持部11との間で、第二の方向(以下、Y方向という)沿った対向面OS2を有するように第1保持部11と対向して配置され、第1保持部11と同様の構成を備える。従って、詳細な説明は省略するが、第2保持部12は、X方向に沿って移動可能であり、第2上保持体121と第2下保持体122により構成される。第2上保持体121と第2下保持体122の「上下」の記載についても、第1保持部11と同様である。
第2上保持体121と第2下保持体122とは、X方向に沿って移動可能であるとともに、対向面OS1がY方向に沿って互いに当接または離間するように移動可能である。
また、第1保持部11と第2保持部12は、X方向に沿って互いに離間する方向に、付勢部材(例えば、コイルばね)15によって付勢されている。なお、図示は省略するが、第1上保持体111と第1下保持体112は、Y方向に沿って互いに離間する方向に、付勢部材(例えば、コイルばね)によって付勢され、第2上保持体121と第2下保持体122は、Y方向に沿って互いに離間する方向に、付勢部材(例えば、コイルばね)によって付勢されている。
駆動部13は、制御部14からの指示により駆動伝達部(不図示)を介してX方向、およびY方向に沿って、第1保持部11と第2保持部12を移動させる。
第1保持部11と第2保持部12のX方向における外側には、第1平角導体C1と第2平角導体C2の主にY方向への移動を抑制する移動規制部17が設けられている。移動規制部17は第1平角導体C1(第2平角導体C2)の両面にそれぞれ当接してY方向への移動を規制する。またX方向に沿う一方(第1平角導体C1と第2平角導体C2が近接する方向)の移動は許容するとともに、X方向に沿う他方(第1平角導体C1と第2平角導体C2が離間する方向)への移動を規制する。より具体的には、移動規制部17は、付勢部材(コイルばね、板ばねなど)171で第1保持部11および第2保持部12の中心方向に向かって付勢されたローラー体である。移動規制部17は、回転中心軸方向の両端側に周方向に沿って不図示の凹凸形状(例えば、ノコ刃状の凹凸形状)が形成されており、ローラー体の部分で平角導体を保持している。例えば、第1保持部11の移動規制部17A,17Bについて説明すると、第1平角導体C1がX方向に沿って図の左方向へ移動する場合には、移動規制部17Aは時計回りに回転し、移動規制部17Bは反時計回りに回転して第1平角導体C1の移動を可能にする。一方、第1平角導体C1がX方向に沿って図の右方向へ移動する場合には、移動規制部17Aは反時計回りに回転し、移動規制部17Bは時計回りに回転しようとするが、中心軸両端部の周方向に沿って設けられた凹凸形状が互いにかみ合い、回転を阻止するため第1平角導体C1の右方向への移動が規制される。第2保持部12においても同様である。
また、第1保持部11と第2保持部12のY方向における外側には、押圧部18が設けられる。押圧部18は、第1上保持体111と第1下保持体112とが当接するようにこれらを押圧し、また、第2上保持体121と第2下保持体122とが当接するようにこれらを押圧する。
図2および図3は、第1保持部11および第2保持部12を抽出した正面図であり、これらの移動の状態を示す図である。
図2は主に第1保持部11(第1上保持体111と第1下保持体112)と第2保持部12(第2上保持体121と第2下保持体122)の主にY方向に沿う移動を説明する図である。
同図(a)に示す状態は、第1上保持体111と第1下保持体112(第2上保持体121と第2下保持体122も同様)の対向面OS1が互いにY方向において最も離間する位置である。この位置を、以下、Y方向離間位置という。またこの状態は、第1保持部11と第2保持部12の対向面OS2が互いにX方向において最も離間する位置である、この位置を、以下、X方向離間位置という。
同図(b)は、同図(a)に示す状態から、第1上保持体111と第1下保持体112の対向面OS1が当接する位置まで移動した状態である。この状態では、第1保持部11は第1上保持体111と第1下保持体112によって第1平角導体(の幅広面WS)を挟持し、第2保持部12は第2上保持体121と第2下保持体122によって第2平角導体(の幅広面WS)を挟持する。
第1保持部11は、Y方向に沿う対向面OS2から第1平角導体C1を、第2保持部12方向に突出させて挟持する。同様に、第2保持部12は、Y方向に沿う対向面OS2から第2平角導体C2を、第1保持部11方向に突出させて挟持する。第1平角導体C1の第1保持部11からの突出量A1、第2平角導体C2の第2保持部12からの突出量A2については後述する。
このように第1上保持体111と第1下保持体112(第2上保持体121と第2下保持体122)の対向面OS1が当接する位置を、以下の説明において、挟持位置という。つまり、第1上保持体111と第1下保持体112(第2上保持体121と第2下保持体122)は、挟持位置とY方向離間位置の間を移動可能である。
また、同図(c)に示すように、挟持位置とY方向離間位置の間には挟持の(Y方向における)解除位置が含まれている。Y方向における解除位置(以下、Y方向解除位置)は、Y方向離間位置よりは小さい距離で、第1上保持体111と第1下保持体112(第2上保持体121と第2下保持体122)とが離間した位置である。
なお、同図(c)のY方向解除位置から、第1上保持体111と第1下保持体112(第2上保持体121と第2下保持体122)の対向面OS1が当接する位置まで移動し、同図(b)に示す状態に遷移することもできる。
なお、図2において第1保持部11と第2保持部12のX方向に沿う位置はいずれもX方向離間位置が維持されている。
図3は、第1保持部11と第2保持部12の主にX方向に沿う移動を説明する図である。
図3(a)は、図2(b)の状態から、第1保持部11と第2保持部12とが、対向面OS2が最も近接するようにX方向に沿って移動した位置であり、以下、この位置を近接位置という。すなわち、第1保持部11と第2保持部12は、図2に示すX方向離間位置と、図3(a)に示す近接位置の間を移動可能である。近接位置であっても第1保持部11と第2保持部12は当接しない。
第1保持部11は、第1平角導体C1を突出量Aで突出させて挟持し、第2保持部12は、第2平角導体C2を、突出量A2で突出させて挟持しているため(図2(b))、第1保持部11と第2保持部12が近接位置にある場合、第1保持部11と第2保持部12は当接しないが、第1平角導体C1と第2平角導体C2は当接(接合)し、さらに違いに押圧する状態となる。つまり、第1平角導体C1の第1保持部11からの突出量A1、第2平角導体C2の第2保持部12からの突出量A2は、それぞれ、第1保持部11と第2保持部12が近接位置にある場合に、互いに当接する長さよりわずかに長い量(当接した後互いに押圧できる量)とする。
また、同図(b)に示すように、近接位置とX方向離間位置(図2(a))の間には押圧の(X方向における)解除位置が含まれている。X方向における解除位置(以下、X方向解除位置)は、X方向離間位置よりは小さい距離で、第1保持部11と第2保持部12とが離間した位置である。第1保持部11と第2保持部12がX方向解除位置にある場合、第1上保持体111と第1下保持体112も離間してY方向解除位置に移動し、第2上保持体121と第1下保持体112も離間してY方向解除位置に移動する。
なお、同図(b)のX方向解除位置から、同図(a)に示す状態に遷移することもできる。
図4は、第2保持部12側から第1保持部11の対向面OS2を見た第1保持部11の側面図(図1のV方向の矢視図)である。同図(a)が第1上保持体111と第1下保持体112とがY方向離間位置にある状態(図2(a)の状態)を示しており、同図(b)が挟持位置にある状態(図2(b))の状態を示している。
第1上保持体111には、第三の方向(平角導体の帯短手方向;同図のZ方向)において一方の端面(図では右端面)111Sに近接した位置に、平角導体保持溝111Aが設けられ、第1下保持体112には、第三の方向(以下、Z方向という)において一方の端面(図では右端面)112Sに近接した位置に、平角導体保持溝112Aが設けられる。第三の方向(Z方向)は、X方向およびY方向とそれぞれ異なる方向であり、ここではいずれにも直交する方向とする。
第1上保持体111の一方の端面111Sと第1下保持体112の一方の端面112Sは、同一平面上に位置するものとし、第三の方向(Z方向)における一方の端面とは、図1では第1上保持体111および第1下保持体112の正面をいい、作業者に近い端面をいう。
平角導体保持溝111A、112Aは、第1上保持体111および第1下保持体112の端面111S、112Sから第三の方向(Z方向)において距離d1離間した内側で、且つ、第1上保持体111および第1下保持体112の対向面OS1に設けられた矩形状の溝である。
また、後に詳述するが、平角導体保持溝111A、112Aは、平角導体を確実に保持(挟持)する必要がある。そのため、その形状は平角導体の外形状に沿ったものであり、また溝の深さd2はそれぞれ、挟持する平角導体(ここでは第1平角導体C1)の厚みd3の半分以下の深さである。具体的には、平角導体保持溝111A、112Aの深さは、平角導体の厚みd2の1/2よりも5/100mm程度小さくなっている。
同図(b)に示すように、第1上保持体111および第1下保持体112の対向面OS1が当接した場合(挟持位置にある場合(図2(b))には、平角導体保持溝111A、112Aは、第1保持部11をX方向に貫通する角柱状の1つの穴部となり、当該穴部に、平角導体(第1平角導体C1)が板厚d2方向に圧縮された状態(板厚が薄くなった状態)で平角導体保持溝111A、112Aと密着し、第1保持部11(第1上保持体111および第1下保持体112)に挟持される。
さらに、平角導体の挟持(保持)を確実にするために、平角導体保持溝111A、112Aは、滑り防止加工面NSを有している。滑り防止加工面NSは例えば、高摩擦抵抗の面あるいは高吸着性の面である。具体的には例えば、サンドブラストなどによる微細凹凸加工で摩擦抵抗を大きくする面であってもよいし、一方向への摩擦抵抗が他方向への摩擦抵抗より高くなるように形成されたいわゆるノコ刃状の凹凸が形成された加工面であってもよい。また、真空状態とすることで吸着力を高めた面であってもよく、鏡面加工による真空の圧力や原子間力で吸着力を高めた面であってもよい。なお、凹凸加工の程度が大きいと、不均一な電界が生じ(コロナ放電)、コイルを製造する場合などにおいては被膜の破壊等を起こす恐れがある。従って、サンドブラストで形成できる程度の微細な凹凸加工が望ましい。滑り防止加工面は、板厚の10%の厚み(深さ)に形成する。
なお、ここでの図示は省略するが、第2保持部12においても同様であり、第2上保持体121には、第三の方向(Z方向)において一方の端面(作業者に近い正面)に近接した位置に、平角導体保持溝121Aが設けられ、第2上保持体121には、第三の方向において一方の端面に近接した位置に、平角導体保持溝122Aが設けられる。平角導体保持溝121A、122Aの構成は、第1保持部11の平角導体保持溝111A、112Aの構成と同様である。
駆動部13は、制御部14からの指示により駆動伝達部(不図示)を介してX方向に沿って、第1保持部11と第2保持部12をX方向離間位置と近接位置の間で移動させる。駆動伝達部は例えば、直動ガイド(リニアガイド)、カム機構、或いは、ラックとピニオンなど適宜の構成で構成することができる。また駆動部13は、制御部14からの指示により駆動伝達部(不図示)を介して、Y方向に沿って、第1上保持体111と第1下保持体112とを挟持位置とY方向離間位置の間で移動させるとともに、第2上保持体121と第2下保持体122とを挟持位置とY方向離間位置の間で移動させる。
これにより、駆動部13は、第1保持部11と第2保持部12とを、挟持状態、圧接状態および圧接解除状態、待避状態またこれらのうち2つの状態の間の遷移状態、のいずれかの状態となるように制御することができる。
再び図2および図3を参照して説明すると、挟持状態では、第1保持部11の第1上保持体111および第1下保持体112をY方向に沿ってY方向離間位置(図2(a))から挟持位置(図2(b))に移動して、第1上保持体111および第1下保持体112に第1平角導体C1を挟持させるとともに、第2保持部12の第2上保持体121および第2下保持体122をY方向に沿ってY方向離間位置(図2(a))から挟持位置(図2(b))に移動して、第2上保持体121および第2下保持体122に第2平角導体C2を挟持させる。
既述のごとく、第1保持部11は、Y方向に沿う対向面OS2から第1平角導体C1を第2保持部12方向に突出量A1で突出させて挟持し、第2保持部12は、Y方向に沿う対向面OS2から第2平角導体C2を、第1保持部11方向に突出量A2で突出させて挟持する。
このとき押圧部18(図1(a)参照)は、第1上保持体111と第1下保持体112とが当接するようにこれらを押圧し、第2上保持体121と第2下保持体122とが当接するようにこれらを押圧する。これにより、第1平角導体C1、第2平角導体C2が板厚方向に圧縮された状態(板厚が薄くなった状態)で平角導体保持溝111A、112Aと密着し、第1保持部11、第2保持部12に挟持される(図4参照)。
また、挟持状態では、Y方向解除位置(図2(c))にある第1保持部11の第1上保持体111と第1下保持体112とを挟持位置(図2(b))に移動して、第1上保持体111および第1下保持体112に第1平角導体C1を挟持させるとともに、Y方向解除位置(図2(c))にある第2保持部12の第2上保持体121と第2下保持体122とを挟持位(図2(b))置に移動して、第2上保持体121および第2下保持体122に第2平角導体C2を挟持させる場合もある。
このときも押圧部18は、第1上保持体111と第1下保持体112とが当接するようにこれらを押圧し、第2上保持体121と第2下保持体122とが当接するようにこれらを押圧する。これにより、当該穴部に、第1平角導体C1、第2平角導体C2が板厚方向に圧縮された状態(板厚が薄くなった状態)で平角導体保持溝111A、112Aと密着し、第1保持部11、第2保持部12に挟持される(図4)。
圧接状態では、挟持状態にある第1保持部11と第2保持部12を、付勢部材15の付勢力に抗って、X方向に沿ってX方向離間位置(図2(a))から近接位置(図3(a))に移動する。このとき、第1保持部11から第1平角導体C1が突出し、第2保持部12から第2平角導体C2が突出している。これらの突出量A1、A2は、それぞれ、第1保持部11と第2保持部12が近接位置(図3(a)にある場合に、帯長手方向の対向する端面同士が当接する長さよりわずかに長い量となっている。つまり、近接位置に移動する以前(直前)に、第1平角導体C1と第2平角導体C2の対向する端面同士がまず接触(当接)する。その後、駆動部13によって第1保持部11と第2保持部12とが近接位置(図3(a))に移動することで、第1平角導体C1と第2平角導体C2の当接した端面同士が互いに突き合わされて押圧され、接合される。より詳細には、第1平角導体C1と第2平角導体C2の端面同士を押圧することによって、端面に形成されている安定した酸化膜が除去されるとともに、これらを塑性変形させて活性状態の面を露出させる。その活性状態の面同士が10オングストローム以下に近づけることにより相互の金属間の原子結合を起こさせて、冷間圧接を行う。つまり冷間圧接により、第1平角導体C1と第2平角導体C2は、帯長手方向の長さが圧接前と比較して圧接後には圧縮(短縮)される。そしてその短縮量は第1平角導体C1と第2平角導体C2において同等である。つまり、第1平角導体C1との圧接前の長さがL01,第2平角導体C2の圧接前の長さがL02であった場合、圧接によって第1平角導体C1は長さがL01',第2平角導体C2は長さがL02'に短縮されており、その短縮量Sはいずれも同等である(S=L01−L01'=L02−L02')。
なお、近接位置に移動した以降は、第1保持部11と第2保持部12がそれ以上に近接することはないため、第1平角導体C1と第2平角導体C2の端面同士のそれ以上の押圧は停止する。
また、圧接状態では、Y方向解除位置(図2(c))、またはY方向解除位置およびX方向解除位置(図3(b))にある第1上保持体111および第1下保持体112第2上保持体121および第2下保持体122を挟持位置(図2(b))に移動し、第1保持部11と第2保持部12を、付勢部材15の付勢力に抗って近接位置に移動して、第1平角導体C1の端面と第2平角導体C2の端面とを突き合わせ押圧して、冷間圧接を行う(図3(a)。
圧接解除状態では、圧接状態にある第1保持部11と第2保持部12をそれぞれX方向に沿って離間する方向に移動するように制御し、第1保持部11および第2保持部12をX方向解除位置に移動する。また、第1上保持体111および第1下保持体112をY方向に沿って離間する方向に移動するように制御し、第1上保持体111と第1下保持体112とを第1Y方向解除位置に移動する。また、第2上保持体121および第2下保持体122をY方向に沿って離間する方向に移動するように制御し、第2上保持体121と第2下保持体122とを第2Y方向解除位置に移動する(図3(b)。
圧接状態では最終的に第1保持部11と第2保持部12が近接位置に到達し、第1平角導体C1と第2平角導体C2のそれ以上の押圧が停止するため、押圧を繰り返すために圧接状態の後に圧接解除状態を経由して挟持状態に遷移し、第1保持部11と第2保持部12により第1平角導体C1と第2平角導体C2を挟持し直す。
ここで、圧接状態から圧接解除状態に変化する場合(圧接が解除された場合)、付勢部材15によって第1上保持体111および第1下保持体112(第2上保持体121および第2下保持体122も同様)とが離間する方向に付勢力が働く。しかし、図4に示すように、平角導体保持溝111A、112A、121A、122Aと第1平角導体C1、第2平角導体C2の間にはクリアランスがほとんどない状態である上、押圧による金属の塑性変形によって流動した金属の一部(拡張した接合面)が平角導体保持溝111A、112A、121A、122Aのわずかなクリアランス(例えば溝の角部など)に入り込んで密着性が高まり、付勢部材15の付勢力のみでは、第1上保持体111および第1下保持体112(第2上保持体121および第2下保持体122も同様)を離間させることができない場合がある。
そこで、本実施形態では、圧接解除状態において(図3(b))、付勢部材15の付勢力に加えて、第1保持部(第1上保持体111および第1下保持体112)をX方向に沿って、第2保持部12から離れる方向に、駆動伝達部を介して移動して第1X方向解除位置に戻すとともに、第2保持部(第2上保持体121および第2下保持体122)をX方向に沿って第1保持部11から離れる方向に、駆動伝達部を介して移動して第2X方向解除位置に戻すこととした。
なお、付勢部材15に加えて強制的に、第1保持部11と第2保持部12を離間させる方向に移動させる場合であっても、移動規制部17によって第1平角導体C1と第2平角導体C2は、X方向に沿って互いに離間する方向への移動が規制されている。
待避状態では、圧接状態、圧接解除状態または挟持状態にある第1保持部11と第2保持部12をそれX方向に沿ってX方向離間位置に移動するように制御し、また、第1上保持体111および第1下保持体112をY方向に沿って移動してY方向離間位置に移動するとともに、第2上保持体121および第2下保持体122をY方向に沿って移動してY方向離間位置に移動する(図2(a))。
冷間圧接装置10は、平角導体同士の1度の押圧で冷間圧接することが可能であるが、接合面を安定させるには一の接合部分について、複数回の押圧を繰り返すことが望ましい。一例として、冷間圧接装置10の1回の押し込み量(圧縮量)は第1平角導体C1、第2平角導体C2ともに約0.5mm程度である。そして、一の接合部分について、3回から4回の押圧(冷間圧接)を繰り返し行い、約1mm以上(好ましくは1.5mm以上、具体的には約2mm程度)圧縮させると、安定した接合面が得られる。
このため、本実施形態の冷間圧接装置10は、挟持状態、圧接状態および圧接解除状態を繰り返し、第1平角導体C1と第2平角導体C2とを冷間圧接する。
図3(a)に示すように、挟持状態の後に圧接状態となり第1保持部11と第2保持部12が近接位置に移動すると、第1平角導体C1と第2平角導体C2の端面同士の接触(当接)を経て、端面同士が押圧されて冷間圧接される。近接位置にある第1保持部11と第2保持部12は、それ以上近接することがないため、一旦、圧接解除状態に遷移して(図3(b))第1保持部11と第2保持部12をY方向解除位置に移動して平角導体の挟持を解除するとともに、第1保持部11と第2保持部をX方向解除位置に移動する。そして挟持状態に遷移して所定の突出量A1が突出するように、第1保持部11に第1平角導体C1を保持するとともに、突出量A2が突出するように、第2保持部12に第1平角導体C2を保持し、再び圧接状態に遷移することで、一の接合部分について複数の押圧を繰り返すことができる。
つまり、X方向解除位置は、第1保持部11が第1平角導体C1を突出量A1で突出させて教示させることが可能な位置であり、第2保持部12が第2平角導体C2を突出量A2で突出させて挟持させることが可能な位置である。
なお、X方向解除位置は、その後に(その位置のまま)挟持状態に遷移した場合に平角導体のそれぞれが突出量A1、A2で突出する位置でなくてもよい。その場合は、挟持状態において、平角導体のそれぞれが突出量A1,A2で突出するような位置に第1保持部11と第2保持部12を移動した後、挟持させるようにすればよい。
なお図3(a)に示すように、冷間圧接装置10は移動規制部17に加えてさらに、第1平角導体C1と第2平角導体C2とが、X方向に沿って離間する方向に移動することを規制するとともに、第1平角導体C1と第2平角導体C2とが、Y方向に沿って移動することを規制する、他の移動規制部(固定部材16)を備えるとよい。
固定部材16は、一例として同図に示すように第1平角導体C1と第2平角導体C2の塑性変形していない部分の板厚よりわずかに広く、接合部CPの板厚方向の長さよりは狭い間隔を有する2組の円柱状の突起部161、162と、接合部の板厚方向の両端の外側に設けられた1組の規制面163Aを有する(例えば角柱状の)突起部(又はプレート)163である。
これにより、圧縮解除状態(図3(b))または待避状態(図2(a))において、駆動部13によって、第1保持部11および第2保持部12がY方向解除位置およびX方向解除位置またはY方向離間位置およびX方向離間位置に移動される際に、第1平角導体C1、第2平角導体C2が、平角導体保持溝111A、112A、121A、122Aに密着していた場合であっても、第1平角導体C1、第2平角導体C2の移動が規制される。具体的には、円柱状の突起部161によって第1平角導体C1がX方向に沿って第2平角導体C2から離間する方向(図示の右方向)に移動することが規制され、突起部162によって第2平角導体C2がX方向に沿って第1平角導体C1から離間する方向(図示の左方向)に移動することが規制される。また、規制面163Aを有する突起部161によって、第1平角導体C1および第2平角導体C2がY方向に沿って図示の上方向または下方向に移動することが規制される。
このようにして、第1平角導体C1と第2平角導体C2は圧接直後の位置を維持でき、接合面CPの安定性を高めることができるため、圧接後に第1保持部11および第2保持部12に伴って接合部CPが離間してしまうことを防止できる。
なお、固定部材16は、突起部やプレートに限らず、ゴムの押圧部材などであってもよい。
また、上記の実施形態では、圧接解除状態で、第1保持部11および第2保持部12がX方向解除位置およびY方向解除位置に停止する構成を例に説明したが、X方向解除位置およびY方向解除位置は通過するものの、当該位置に停止しないものであってもよい。つまり、第1上保持体111と第1下保持体112(第2上保持体121と第2下保持体122も同様)は、挟持位置、Y方向解除位置およびY方向離間位置の間を不停止で移動するものであってもよく、第1保持部11および第2保持部12は、近接位置、X方向解除位置およびX方向離間位置の間を不停止で移動するものであってもよい。
従来では、冷間圧接は丸線同士を接合する場合に利用されていたが、上述の本実施形態の冷間圧接装置10によれば、平角導体同士の良好且つ安定した冷間圧接を行うことができる。
また、平角導体(第1平角導体C1、第2平角導体C2)としてコイル片を用いることで、冷間圧接装置10をコイル製造装置20として利用することができる。以下これについて説明する。
<コイル製造装置>
<コイル製造装置/平角導体(コイル片)>
まず、図5を参照して本実施形態のコイル製造装置20で用いる平角導体Cについて説明する。図5は、平角導体Cの幅広面WSの上面図である。平角導体Cは、直線状(同図(a))または少なくとも1つの曲折部を有し(同図(b)〜(e))、連続させると螺旋形状となり得る帯状の複数の平角導体であって、以下これらをコイル片という。曲折部を有するコイル片は、連続させた場合に螺旋形状となるように、帯長手方向において同一方向に曲折しているものとする。また曲折部を有するコイル片の場合、当該曲折部は好適には、少なくとも1つの非湾曲(例えば、略直角)形状であることが望ましい。
また、以下の説明において、複数のコイル片(平角導体)を連続(接続)させた螺旋構造体であって、コイル(完成予定の螺旋構造体)として完成前の螺旋構造体もコイル片に含まれるものとする。つまり、以下の説明において、コイル片(平角導体)には、直線状、または1〜4の帯長手方向において同一方向に曲折部を有する最小単位のコイル片と、該最小単位のコイル片を複数接続し、コイル(完成予定の螺旋構造体)の1周以上の螺旋構造が形成されたコイル片とが含まれる。また、説明の便宜上、これらの区別が必要な場合には、最小単位のコイル片を単位コイル片といい、単位コイル片を複数接続したものであってコイル(完成予定の螺旋構造体)として完成予定前のコイル片を接合コイル片といい、完成予定(完成状態)の螺旋構造体をコイル、という。また、複数のコイル片は、帯長手方向に垂直な断面の形状およびその面積は、いずれも略同一であるとする。
同図に示すように、単位コイル片C0は一例として銅板(例えば、厚さ1mm)の打ち抜き加工などによって、直線状あるいは、略直角の非湾曲の曲折部(角部)を有する形状に構成される。つまり単位コイル片C0は、幅広面WSの上面視において、曲折部がない直線上(I字状)(同図(a))、1つの曲折部を有するL字状(同図(b))、2つの曲折部を有するU字状(コ字状)(同図(c))、3つの曲折部を有する略C字状(同図(d))、4つの曲折部を有し、同じ方向に曲折するC字状(略O字状(略ロ字状))(同図(e)のものがある。なお、以下の説明においてU字状、(略)C字状、略O字状を用いるが、いずれも曲折部(角部)は略直角の形状であるとする。
そして、複数のコイル片(単位コイル片および/または接合コイル片)は、それらの帯長手方向の総距離となる準備長さL0が、完成予定の螺旋構造体(コイル)の螺旋長手方向の完成長さと比較して余裕分だけ長くなるように設定されている。そして余裕分は、複数のコイル片の全てを冷間圧接した場合に、押圧によって短縮する短縮総距離に設定されている。これらに準備長さL0、完成長さ、余裕分、短縮総距離については、後述のコイルの製造方法の説明において詳しく説明する。
<コイル製造装置/保持部>
本実施形態のコイル製造装置20は、上述の冷間圧接装置10の利用例であので、冷間圧接装置10と同様の構成は、同一符号で示し重複する説明は省略し、以下の説明では、コイル製造装置20に用いて好適な構成について、主に説明する。
再び図1を参照して、コイル製造装置20は、平角導体と他の平角導体とをそれぞれに挟持可能であって互いに対向して配置された第1保持部11および第2保持部12と、これらを移動させる駆動部13とを備え、連続させると螺旋形状となり得る帯状の複数の平角導体(コイル片)を継ぎ合せてコイルとなる螺旋構造体を形成するものであり、複数の平角導体(コイル片)の帯長手方向の総距離となる準備長さが、完成予定の螺旋構造体の螺旋長手方向の完成長さと比較して余裕分だけ長くなるように設定されており、複数の平角導体(コイル片)の端面同士を帯長手方向に沿って押圧して、帯長手方向の距離を短縮させながら冷間圧接し、複数の平角導体(コイル片)の全てを冷間圧接によって短縮する短縮総距離を余裕分に設定することで、螺旋構造体を形成するものである。
つまり、本実施形態のコイル製造装置では、コイル片の継ぎ足し(接合回数)が増えるに従い、第1保持部11または第2保持部12で保持するコイル片(接合コイル片)の長さが長くなっていくものであり、そのために、第1保持部11、第2保持部12の構成がコイルの製造に用いて好適な構成となっている。
まず図6は、コイル製造装置20による製造途中のコイル片の概要図である。同図(a)は準備された単位コイル片の概要図(上面図)であり、同図(b)〜(d)は製造途中の単位コイル片、および接合コイル片の展開図であり、同図(e)は同図(d)のV方向の矢視図である。
ここでは一例として、2つの曲折部を有するU字状(コ字状)の単位コイル片C0を複数(ここでは4個)準備し、これらを接続して(連続させて)2周の螺旋形状からなるコイル(螺旋構造体)50を製造する場合を例に示している。同図(b)〜(d)のコイル片の両端の二点鎖線は、完成形のコイルの仕上がり端部を示すものとし、この例では、仕上がり端部が変化しない(図示の左右方向に仕上がり端部の位置が移動しない)ものとして説明する。
まず最初の冷間圧接では、同図(b)に示すように2つの単位コイル片C01とC02のそれぞれの一方の端面(丸印で示す)同士を接続し、接合コイル片CC1を形成する。そして、次の冷間圧接では、接合コイル片CC1の一方の端面(単位コイル片C01とC02の接合されていない端面のいずれか)と、単位コイル片C03とを冷間圧接し、接合コイル片CC2を形成し(同図(c))、さらに次の冷間圧接では、接合コイル片CC2の一方の端面(単位コイル片C01、C02、C03の接合されていない端面のいずれか)と、単位コイル片C04とを冷間圧接し、コイル50を完成させる(同図(d))。
つまり第1保持部11または第2保持部12は、曲折した(ここではU字状(コ字状)の)コイル片を保持するとともに、順次長くなる螺旋構造の接合コイル片CC1,CC2・・・が第1保持部11または第2保持部12の近辺に存在するため、第1保持部11と第2保持部12は、これらコイル片との干渉を避ける構成とする必要がある。
図7は、第1保持部11の構成について説明する図であり、同図(a)は、1つの単位コイル片C0を第1保持部11(第1上保持体111および第1下保持体112)で保持している状態を示す図であり、第2保持部12との対向面OS2を正面視した図である。また同図(b)は、完成状態のコイル50を螺旋構造の軸中心方向からみた正面図であり、同図(a)のコイル片は、同図(b)のB−B線断面矢視図に対応している。なお、ここでは第1保持部11について説明するが、第2保持部12においても同様である。また同図(c)は、第1保持部11の正面図(同図(a)のA−A線断面矢視図)である。
同図(a)(b)に示すように、コイル片が2以上の曲折部を有する場合(例えば、U字状(コ字状)のコイル片の場合)、第1保持部11と、接合しているコイル片以外の領域(同図(a)では、第1保持部11で保持されるコイル片C0からUターンして手前側に伸びるコイル片C0')とが干渉する恐れがある。本実施形態では、これを回避するために、第1保持部11とコイル片(完成予定のコイル50)の寸法は、以下の関係を満たす構成としている。
すなわち、U字状(コ字状)のコイル片を接続する場合、第1保持部11の一つ、具体的には、第1上保持体111の一の端面111Sと、これと同一面となる第1下保持体112の一の端面112Sとで構成される保持体端面であって、対向面OS2に直交する端面は、螺旋構造の内部空間(螺旋構造の内部空間となる予定の空間も含む)に位置する(以下、この端面を、螺旋内部端面ISという)。なお、螺旋部端面ISは、例えば、作業者に近い第1保持部11の正面である。
従って、第1保持部11とコイル片との干渉を避けるためには、第1保持部11の平角導体保持溝111A、112Aを適切な位置に設ける必要があり、螺旋内部端面ISから、直近の平角導体保持溝111A、112Aの端部(同図では上側端部)までの距離d1は、第三の方向(図示のZ方向:冷間圧接を行うコイル片の帯短手方向)に沿う螺旋構造体(コイル50)の内部空間の距離D1よりも小さいものとする。
また、第1保持部11のX方向の長さd4(同図(c))は、X方向に沿う螺旋構造体(コイル50)の内部空間の距離D2(同図(b)よりも小さいものとする。
なお、2つのコイル片を冷間圧接した後は、接続部に押し出しによるバリ55が生じる。従って、冷間圧接完了後に、第1保持部11および第2保持部12からコイル片(接合コイル片)を取り出してバリ取りを行い、当該コイル片(接合コイル片)と他の(新たな)コイル片との間で冷間圧接を行う。
図8は、図7(a)に対応する(同じ方向から見た)図であり、接合コイル片CCが形成された状態を示している。本実施形態のコイル製造装置20では、第1保持部11(第2保持部12も同様)の一方側、ここでは第1下保持体112側に接合コイル片CCが形成されていく。
一方、第1保持部11の平角導体保持溝111A,112Aは、X方向に沿った直線状の溝であるため、冷間圧接時には、接合コイル片CCの一方の端面を含む直線状の一部分のみが第1保持部11に保持される。従って、接合コイル片CCと第1保持部11(第1下保持体112)との干渉を避けるため、コイル片(ここでは接合コイル片CC)を、冷間圧接する端面近傍を残して、螺旋構造の螺旋進行方向(Y方向に沿う方向)に広げるように、弾性変形および/または塑性変形させつつ、第2保持部12で保持されるコイル片との間で冷間圧接を行う。
コイル片(ここでは接合コイル片CC)の螺旋進行方向の弾性変形および/または塑性変形の変形量D3は、第1保持部11と、コイル片との干渉を回避する量に設定される。換言すると、第1保持部11の接合コイル片が形成されていく側の保持体(ここでは第1下保持体112)のY方向に沿う長さ(厚み)d5は、コイル片(ここでは接合コイル片CC)の螺旋進行方向の弾性変形および/または塑性変形に許容される変形量D3よりも小さいものとする。
ここで、第1下保持体112には、螺旋構造体の螺旋の進行方向の先方(ここでは、接合されているコイル片の厚み方向の下方;Z方向の前面側(作業者側))に、干渉回避空間ES(図4も参照)が設けられている。干渉回避空間ESは、接合コイル片CCの一部を収容可能な空間であり、これを設けることにより、つなぎ合わされていく接合コイル片CCの一部と保持部(ここでは第1下保持体112)との干渉を回避することができる。なお、図8、図4(a)においては、側面視L字状としているが、第1下保持体112が厚みd5の平板状(図8参照)であってもよく、その場合、その下部が干渉回避空間ESとなる。
このように本実施形態のコイル製造装置20はコイル片を螺旋進行方向(Y方向に沿う方向)に弾性変形および/または塑性変形させながら、冷間圧接によりつなぎ合わせて螺旋構造を形成するものである。なお、これにより製造途中では、螺旋の進行方向に広がった状態でコイル片が接続(継ぎ足し)されていくが、完成状態の螺旋構造体となった後に、螺旋構造体を一体的に成型(例えば、プレスなど)し、螺旋の進行方向に圧縮する弾性変形および/または塑性変形を行って螺旋の各周が密接したコイル50を形成する。
本実施形態のコイル製造装置20は、コイルの完成後の長さに基づき、冷間圧縮による圧縮量(収縮量)分長め(余裕分長め)のコイル片を用いて、冷間圧縮による圧縮(収縮)を繰り返しつつコイル片を継ぎ足して、所望の長さLのコイルを製造するものである。
従って、冷間圧接に際しては、コイル片の帯長手方向の距離を測定しながら冷間圧接を行う。帯長手方向の距離の測定は、例えば第1保持部11,第2保持部12(またはその近辺)に滑り検出機構(不図示)を設けることにより、第1保持部11で保持されるコイル片(第1コイル片)と第2保持部12で保持されるコイル片(第2コイル片)の押圧時の滑り検出を行うことで、帯長手方向の距離の測定を行うことができる。なお、帯長手方向の距離の測定は、冷間圧接と同時に(リアルタイムで)測定してもよいし、冷間圧接の前後(あるいは冷間圧接の前または後)に測定してもよい。これにより、完成後のコイル寸法の高精度化を実現することができる。
なお図7(b)に示したように、コイル片の略直角の曲折部は、コイル50の角部となる。つまり、本実施形態のコイル製造装置20によれば、打ち抜き加工等によって略直角の曲折部を有するように構成されたコイル片をつなぎ合わせることで、内周側および外周側の角部が略直角のコイル50を製造することができる。従来では、長尺の平角導体を巻回して平角導体によるコイルを製造していたが、巻回では少なくともコイルの内周側の角部は湾曲した形状となることは不可避であり、占積率の向上や放熱性の向上などに限界があった。
しかし本実施形態のコイル製造装置によれば、打ち抜き加工によって形成した形状のままつなぎ合わせることができるので、コイル内周側においても直角(略直角)の角部を実現でき、占積率を向上させることができ、また余分な空間を廃することで放熱性を向上させることができるコイルを製造することができる。
特に、接合部CPは、曲折部(角部)を避けて直線部分に設けられる。すなわち、コイル片の直線部分を利用して、圧接を行っている。この結果、曲折部の形状精度を向上させることができ、例えば、打ち抜き加工において直角(略直角)に形成したままの角部を維持できる。
<コイル製造方法>
次に、本実施形態のコイル製造方法について説明する。本実施形態のコイル製造方法は、例えば、上述のコイル製造装置20において実施可能である。
すなわち、本実施形態のコイル製造方法は、連続させると螺旋構造体となり得る帯状の平角導体(コイル片)を複数用意し、複数の平角導体(コイル片)の帯長手方向の総距離となる準備長さL0が、完成予定の螺旋構造体(コイル)の螺旋長手方向の完成長さLと比較して余裕分Mだけ長くなるように設定し、複数の平角導体(コイル片)の端面同士を帯長手方向に沿って押圧して、帯長手方向の距離を短縮させながら冷間圧接し、複数の平角導体(コイル片)の全てを冷間圧接によって短縮する短縮総距離Sを余裕分Mに設定することで、複数の平角導体(コイル片)を継ぎ合せて螺旋構造体(コイル)を形成する、ものである。
具体的に、図9を参照して2つの曲折部を有するU字状(コ字状)の単位コイル片C0を4個(C01〜C04)準備し、これらを接続して(連続させて)2周の螺旋形状からなるコイル(螺旋構造体)50を製造する場合を例に説明する。図6と同様、同図(a)はコイル片C01〜C04の上面図であり、同図(b)〜(d)は接続コイル片の展開図であり、図中の破線は、完成予定のコイル50の螺旋構造の軸中心(接合部CPの中心)を示している。また同図(b)〜(d)のコイル片の両端の二点鎖線は、完成形のコイルの仕上がり端部を示すものとし、この例では、仕上がり端部が変化しない(図示の左右方向に仕上がり端部の位置が移動しない)ものとして説明する。
単位コイル片C01〜C04の帯長手方向の長さをそれぞれL01〜L04とすると、帯長手方向の総距離となる準備長さL0は、L01+L02+L03+L04である。そして、この準備長さL0は、コイル50の螺旋長手方向の完成長さLよりも余裕分Mだけ長く(L0=L+M)設定されている。この単位コイル片C01と単位コイル片C02を帯長手方向に沿って押圧して冷間圧接すると、これらの押圧によって単位コイル片C01は帯長手方向の長さL01がL01'に圧縮され(短縮(圧縮)量は接合部CP中心から距離S1の長さ)、単位コイル片C02は帯長手方向の長さL02がL2'に圧縮され((短縮(圧縮)量は接合部CP中心から距離S2の長さ)されて接合コイル片CC1(長さLC1)が形成される(同図(b))。そして、接合コイル片CC1の端面(単位コイル片C01またはC02の接合されていない側の端面)と、単位コイル片C03を冷間圧接すると、これらの押圧によって単位コイル片C03はL03'に圧縮され(短縮(圧縮)量は接合部CP中心から距離S3の長さ)、接合コイル片CC1は、LC1'に圧縮され((短縮(圧縮)量は接合部CP中心から距離S4の長さ)、接合コイル片CC2が形成される(同図(c))。さらに、接合コイル片CC2の端面(単位コイル片C01、C02、C03の接合されていない側の端面)と、単位コイル片C04を冷間圧接すると、これらの押圧によって単位コイル片C04はL04'に圧縮され(短縮(圧縮)量は接合部CP中心から距離S5の長さ)、接合コイル片CC2は、LC2'に圧縮され((短縮(圧縮)量は接合部CP中心から距離S6の長さ)、螺旋長手方向の完成長さ(始点STから終点ETまでの長さ)Lのコイル50(螺旋構造体)が完成する(同図(d))。コイル片(単位コイル片および/または接合コイル片)を継ぎ合わせてコイル50が完成するまでの、コイル片の短縮量の合計(短縮総距離S=S1+S2+S3+S4+S5+S6)が、余裕分Mに相当する。
改めて時系列に沿って本実施形態のコイルの製造方法を説明する。まず、完成状態のコイル50の長さLに基づき、短縮総距離S=余裕分Mとなるように、単位コイル片の長さL01〜L04が設定されるとともに、冷間圧接による圧縮量S1〜S6が設定される。
そしてこのように設定されたコイル片を用いて、単位コイル片C01と単位コイル片C02の端面同士を設定された圧縮量S1、S2分押圧して冷間圧接により継ぎ足し、接合コイル片CC1を形成する。このときの圧縮量S1、S2は、単位コイル片C01と単位コイル片C02の押圧時の滑り検出を行うことで、両コイル片の帯長手方向の距離を測定して把握する。圧縮量を把握する方法は以下の冷間圧接において同様である。
1つの接合領域(例えば、単位コイル片C01と単位コイル片C02の接合する端面付近)を冷間圧接した後は、接合部に押し込みによるバリが生じるため、冷間圧接後に、バリを切除する処理を行う。
次に、コイル片(接合コイル片CC1)を、冷間圧接する端面(単位コイル片C01または単位コイル片C02の接合されていない端面)近傍を残して、完成予定の螺旋構造体の螺旋進行方向に弾性変形および/または塑性変形させつつ、他のコイル片(単位コイル片C03)との間で冷間圧接を行う。このとき、接合コイル片CC1の螺旋進行方向の弾性変形および/または塑性変形の変形量は、冷間圧接時にコイル片が保持される第1保持部11および第2保持部12と、接合コイル片CC1との干渉を回避する量に設定される。また、変形量は以下の冷間圧接において同様である。
以下、同様にコイル片を継ぎ足す。すなわち、接合コイル片CC1の端面(単位コイル片C01またはC02の接合されていない側の端面)と、単位コイル片C03を設定された圧縮量S3,S4分押圧して冷間圧接により継ぎ足し、接合コイル片CC2を形成する。その後、接合領域のバリ取りを行い、接合コイル片CC2を、冷間圧接する端面近傍を残して、完成予定の螺旋構造体の螺旋進行方向に弾性変形および/または塑性変形させつつ、接合コイル片CC2の端面と、単位コイル片C04を設定された圧縮量S5,S6分押圧して冷間圧接により継ぎ足し、完成状態の螺旋構造体を得る。
図10は、完成した螺旋構造体50'の一例を示す図である(コイルの巻数は上述の実施形態と異なっている)。同図(a)は螺旋軸方向から見た正面図であり、図10(b)は成形前のV方向の矢視図(側面図)であり、同図(c)(d)は成形後の側面図である。
完成した螺旋構造体50'はプレス加工などによって成形する。すなわち、冷間圧接時に、第1保持部11および第2保持部12との緩衝を避けるため、螺旋構造体の螺旋進行方向に弾性変形および/または塑性変形することで、螺旋の各周の間に不必要かつ不均一な広がり(空間)が形成されているため、これを圧縮するように螺旋構造体の螺旋進行方向に弾性変形および/または塑性変形し、螺旋の各周を違いに可能な限り近接(密接)させる(同図(c))。
さらに、必要に応じて、ステータコアの形状に合わせて、螺旋構造体の軸中心方向(ステータコアの径方向)に凹状または凸状となるように、すなわち、同図(d)に示すように、内周端部が外周端部と非同一面となる湾曲状に成形する。
その後、成形後の螺旋構造体を、液状の絶縁樹脂に浸して一体的に絶縁樹脂で被覆する。なお成形後の螺旋構造体に液状の絶縁樹脂を吹き付けることによって一体的に絶縁樹脂で被覆してもよい。従来では、コイルの完成長さ分の長尺の導線を絶縁樹脂で被覆した後、これを巻回して螺旋構造を形成していた。しかしこの場合、巻回の湾曲部分の外周付近では絶縁樹脂が伸張されて被覆厚が薄くなり、耐圧劣化の要因となっていた。また、例えば、上記の成形以前に絶縁樹脂で被覆する場合も、プレスによって絶縁樹脂の被覆厚がばらつくため同様の問題が生じる。本実施形態では、ステータコアに取り付ける形状に成形した螺旋構造体を、成形後に一体的に絶縁樹脂で被覆するため、絶縁樹脂の膜厚の均一性を高めることができる。また、成形後に一体的に絶縁樹脂で被覆するため、螺旋構造同士を絶縁樹脂により接着させることができ、膜厚を均一な膜厚で被覆することができる。
<コイル片の変形例>
図11は、コイル片の形状が異なる場合の接続例を示す図である。
同図(a)は、L字状のコイル片による接続例を示す上面図であり、ここでは4つのL字状のコイル片C0を用いて、1周分の接続コイル片を構成する場合を示している。説明の便宜上、図示は省略しているが、この場合も、各コイル片は帯長手方向の総距離となる準備長さL0が、完成予定の螺旋構造体(コイル)の螺旋長手方向の完成長さLと比較して余裕分Mだけ長くなるように設定されている。そして余裕分Mは、複数のコイル片の全てを冷間圧接した場合に、押圧によって短縮する短縮総距離Sに設定されている。
なお、1周分のコイル接続片を全て同じ形状(L字状)で構成しなくてもよい。つまり、L字状にI字状(直線状)やU字状(コ字状)のコイル片を組み合わせて1周分のコイル接続片としてもよい。
同図(b)は、C字状のコイル片C0とI字状のコイル片C1を組み合わせた接続例を示す上面図である。説明の便宜上、図示は省略しているが、この場合も、各コイル片は帯長手方向の総距離となる準備長さL0が、完成予定の螺旋構造体(コイル)の螺旋長手方向の完成長さLと比較して余裕分Mだけ長くなるように設定されている。そして余裕分Mは、複数のコイル片の全てを冷間圧接した場合に、押圧によって短縮する短縮総距離Sに設定されている。
また、角部が3つの略C字状のコイル片と、L字状のコイル片を組み合わせて1周分のコイル接続片としてもよい。さらに、螺旋構造体の1周目と2周目を構成するコイル片がそれぞれに異なる組合せであってもよい。
同図(c)は、角部が2つのU字状(コ字状)のコイル片C0と、完成予定の螺旋構造体の1周分のコイル片(O字状(ロ字状)のコイル片)C1とを組み合わせて接合コイル片を形成する場合の展開図である。同図のコイル片の両端の二点鎖線は、完成形のコイルの仕上がり端部を示すものとし、この例では、仕上がり端部が変化しない(図示の左右方向に仕上がり端部の位置が移動しない)ものとして説明する。
O字状のコイル片C1は接合部分が切断されている。U字状のコイル片C0の一端とO字状のコイル片C1の一端を冷間圧接すると、U字状のコイル片C0は圧縮量S0、O字状のコイル片C1は圧縮量S1でそれぞれ圧縮され、これを繰り返して螺旋構造体を形成できる。なお、図9では、(同じ長さのU字状のコイル片C0を用いた場合)、図示のように接合部CPは、螺旋構造の各周において螺旋構造の軸中心に沿ってほぼ同じ位置(重畳する位置)に形成されるが、図11(c)の場合には、接続部CPは螺旋構造の各周において螺旋構造の軸中心(破線)に沿って所定量ずれた位置に形成される。
<コイルの変形例>
図12は、コイル製造装置およびコイル製造方法の変形例を示す図である。同図(a)は、コイル製造装置20'の概要図であり、同図(b)は、これにより製造されるコイル50の、図10(c)に対応する側面図であり、同図(c)はコイル50の斜視図である。
コイル製造装置20'は、同図(a)に示すように、上述の第1保持部11と第2保持部12からなる保持ユニット22を複数備え、複数の保持ユニット22(22A〜22E)はそれぞれ第1保持部11と第2保持部12の、平角導体保持溝111A,112A,121A、122Aの幅W(Z方向に沿う幅、平角導体の帯短手方向の幅)が異なる(順次大きく(または小さく)なる)ものであってもよい。
このように、平角導体保持溝111A,112A,121A、122Aの幅Wが異なる複数の保持ユニット22を用いることで、異なる幅(図では幅WA〜WE)の平角導体を接合することができる。すなわち、複数の保持ユニット22の間を順次移動させながら、螺旋構造の各周毎に、異なる保持ユニット22で冷間圧接することにより、コイルの各周毎の長さが異なる螺旋構造体を形成できる。すなわち、帯長手方向に同じ長さのU字状(コ字状)の単位コイル片を用いて、複数の保持ユニット22の間を順次移動させながら、冷間圧接してコイル片をつなぎ合わせることで、四角錐台の外形を有するコイル50(同図(b)(c))を形成することができる。
なお、平角導体保持溝111A,112A,121A、122Aの深さd3が異なる複数の保持ユニット22を用いてもよい。その場合、コイル50を構成する螺旋構造の各周の板厚を異ならせることができる。
<コイル>
次に、図13を参照して、本実施形態のコイルについて説明する。図13(a)は螺旋構造の軸中心方向からみた正面図であり、同図(b)は同図(a)のA−A線断面である。また、同図(c)は同図(a)をV方向からみた側面図である。
本実施形態のコイル50は、帯状の平角導体(コイル片)を螺旋形状に連続させた螺旋構造体からなり、同図(a)に示すように、螺旋構造体の内周側および外周側に非湾曲の角部(略直角の角部)50Cを有する。ここでは一例として、上記のコイル製造装置およびコイル製造方法を用いて製造されたものである。
従来の、完成形のコイルの螺旋構造の1周分よりも長い長尺の平角導体を巻回して構成したコイルでは、曲折部が湾曲構造になることが避けられず、ステータコアに取り付けた場合に大きな空間部を生じる。当該空白部は保温効果が高まるため、コイルの放熱性の向上に限界がある。また、長尺の平角導体を絶縁樹脂で被覆した後に巻回する場合、曲折部において絶縁樹脂の被覆厚が薄くなり、耐圧性が劣化する問題がある。
これに対し本実施形態のコイル50は、コイルの螺旋構造の1周分の形状を打ち抜き加工で形成できるため、正面視において所望の形状のコイルを形成できる。つまり、ステータコイルの形状に沿って、これに限りなく近接した形状の(少なくとも内周の角部50Cが直角または略直角の)コイル50が得られる。これにより、巻回方式のコイルと異なり、ステータコア60(同図(a)に破線で示す)との間の空間部を最小限にすることができる。例えば、コイル50の一辺あたり、空間部の長さ(コイル50内周側からステータコア60までの距離)を0.5mm〜1.0mmに低減でき、これにより、放熱性を向上させることができる。また絶縁樹脂は、コイル50の全体に亘り均一性を高めて被膜できるので、絶縁樹脂の膜厚のばらつきによる耐圧の劣化も抑えることができる。
また、本実施形態のコイル50は、螺旋構造の螺旋進行方向に直交する幅(コイル片の帯短手方向の幅W1)が角部において広がり幅W2になるため、これによってもコイル抵抗を低減することができる。
さらに、冷間圧接は、金属の原子結合であるため、その接続部は視認不可となる程度に確実に接合されている。これにより、1周分(あるいはそれ未満)のコイルを接着材(固着材、ロウ付けなど)で平面接続するような構成と比較して、接続部の安定性を圧倒的に高めることができる。
また、同図(b)に示すように、螺旋構造体の螺旋の第一の周(例えば、接合コイル片CC1による第一の周)は一部分に、他の部分の平角導体(コイル片)の板厚D7よりも板厚D8が薄い第1薄肉部T1が設けられる。また、第一の周に連続する第二の周(例えば、接合コイル片CC2による第二の周)は一部分に、他の部分よりも平角導体(コイル片)の板厚D7よりも板厚D8が薄い第2薄肉部T2が設けられる。
既述のごとく、冷間圧接時にはコイル製造装置20の第1保持部11および第2保持部12によって、コイル片が挟持されるが、その際、平角導体保持溝111A,112Aの合計深さ(平角導体保持溝121A,122Aの合計深さも同様)は、コイル片の板厚D7よりも小さいものとなっている。そして押圧部18で押圧されてコイル片が第1保持部11、第2保持部12に挟持されることにより、挟持部分は、平角導体保持溝121A,122Aの合計深さと同程度の厚み(D8)に板厚方向に圧縮される。この、第1保持部11および第2保持部12による挟持部分が第1薄肉部T1、第2薄肉部T2である。つまり、第1薄肉部T1および第2薄肉部T2は、冷間圧接の接合部CPに対応して形成されるものであり、例えば、U字状(コ字状)のコイル片を接続してなるコイルの場合、第1薄肉部T1は、第一の周において2箇所に設けられ、第2薄肉部T2も第二の周において2箇所に設けられる。またU字状の単位コイル片の長さが全て同じ場合には、第1薄肉部T1と第2薄肉部T2は、破線の四角で示すように、螺旋構造体の軸中心方向において重畳する位置に設けられる。
また、冷間圧接の接合部CPに対応して形成される第1薄肉部T1および第2薄肉部T2は、図11に示すようにコイル片がU字状(コ字状)とO字状(ロ字状)の組合せで構成される場合は、接続部CPに対応して第一の周と第二の周で交互にずれた位置に形成される(O字状のコイル片の場合は、1周において1箇所のみに薄肉部が形成される)。
そしてコイル50は螺旋構造を構成する全ての周が一体的に、絶縁樹脂により被覆されている。これにより螺旋構造の各周の密着性を高めることができる。また、第1薄肉部T1と第2薄肉部T2の間には、コイル片の隙間部SPが形成されるが、当該隙間部SPにも絶縁樹脂の一部が埋め込まれている。つまり上述の製造方法で説明したように、螺旋構造体の完成後に(必要に応じて成型を行い)液状の絶縁樹脂に螺旋構造体を浸すため、隙間部SPに絶縁樹脂が入り込む。これにより、さらに螺旋構造の各周の密着性を高めることができる。
また、コイル50は、ステータコア60の形状に合わせて、螺旋構造体の軸中心方向(ステータコアの径方向)に凹状または凸状となるように、すなわち、同図(c)に示すように、内周端部が外周端部と非同一面となる湾曲状に成形されていてもよい。
図14は、本実施形態のコイル50と、丸線を巻回して構成したコイル(丸線コイル)の発熱量を測定し、比較した図である。丸線コイルと本実施形態のコイル50について、5V、20Aで時間経過に伴う発熱量(温度)を測定した。
丸線コイルは、開始10秒で28.5℃、30秒で42℃と温度が急上昇し、開始から90秒で73度まで上昇したため、実験を中止した。一方、本実施形態のコイル50(20A)は、開始10秒で21.1℃、30秒で21.5℃と緩やかに温度上昇し、開始から1530秒経過後に32.4℃で飽和状態となった。
この結果からも明らかなように、本実施形態のコイル(内周側が略直角のコイル(内周直角コイル))50は、動作時においても常温に近い温度(例えば、40℃〜50℃)以上の温度上昇がほとんどないと言え、非常に放熱性が高いといえる。そしてこのような高い放熱性によって、従来と比較してコイル抵抗を大幅に低減することができる。
また、同図(b)に示すように、コイル50の螺旋構造の始端部分と終端部分の幅W3を、帯短手方向の幅W1より広げてもよい。これにより角部と同様に、始端部分と終端部分でのコイル抵抗を低減することができる。
なお、本実施形態では、冷間圧接によりコイル片の端面同士を繰り返し接合で形成した、内周直角のコイル50について説明した。しかしこれに限らず、コイル片の端面同士は他の接合方法によって接合するものであってもよい。具体的には、超音波溶接(高周波溶接)、電気溶接、ロウ付けなどの各種接続方法が採用できる。
<ステータコアへの取り付け方法>
図15を参照して、本実施形態のコイル50のステータコアへの取り付け例を説明する。図15(a)はコイル50およびカセット51A,51Bの側面図である。また図15(b)は、図15(a)の上面図である。図15(c)は、ステータコア60への取り付けの一例を示す側面図上面図である。
螺旋軸本実施形態のコイル50は、図13(c)のごとくステータコアの外形に沿って成型し、成型後に一体的に絶縁樹脂で被覆してなり、これをいわゆる後付けでステータコアに装着する。
このため例えば、同図(a)に示すようにコイル50の螺旋構造の軸中心方向の一方の面側に鍔部52A,52Bを有する2つのカセット51A,51Bを用意し、一方のカセット51Aの鍔部52Aが形成されていない面側からコイル50を挿入し、他方のカセット51Bを重ねて両者を係合する。そしてこのカセット付きコイル50をステータコア60に挿入する。カセット51A、51Bは、同図(b)に示す上面視において嵌合するように切欠きあるいは係合部53が設けられている。
なお、同図(c)に示すように、コイル50は、螺旋構造の軸中心方向の一方の面側のみ鍔部52Cを有する1つのカセット51Cに取り付け、ステータコア60に装着してもよい。その場合、動作時の遠心力によってステータコア60からコイル50が抜ける(あるいは不必要な移動(振動)が生じる)ことを防止するために、ステータコア60に切欠き61を設け、カセット付きコイル50をステータコア60に取りつけた後、カセット付きコイル50の上方を覆う抜け止めリング62とステータコア60の切欠き61と嵌合するとよい。
以上、本発明は、上述した実施形態に限定せず、様々な実施形態で構成することができ、例えば、コイル片の曲折部は、湾曲状であってもよい。
また、1つのコイル片は、一枚の銅板を打ち抜き加工により構成したものに限らず、複数の細平角導体(例えば帯長手方向の断面形状が正方形の平角導体)をコイルの帯短手方向に並列配置してなるものであってもよい。また、コイルは一部が一枚の銅板打ち抜き加工によるコイル片により形成され、一部が細平角導体の並列配置によるコイル片により形成されてもよい。