JP2018050897A - 歯科補綴用セラミックス体 - Google Patents
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Abstract
【課題】CAD/CAM加工装置の保持具に対して歯科補綴用セラミックス体の周縁方向の確認と位置決めが容易となり、切削加工時に保持具に対して正確に位置決めする事が可能となる歯科補綴用セラミックス体を提供する。【解決手段】歯科補綴用セラミックス体はセラミック材料から成り、円形の平面形状で円盤状の外形形状に成形され、50mm以上の直径を有し、その直径を有する円形部の周縁の少なくとも一部に凸部品が取り付けられている。更に、凸部品を周縁方向で途切れさせる凹部が形成されていると共に、凹部が少なくとも一箇所以上形成されており、形成された凹部が、外形形状の方向を示す印である。【選択図】図1
Description
本発明は、歯科補綴用セラミックス体に関する。
虫歯等により部分的に欠損した歯の修復に使用される材料として、無機物と有機物とから成るコンポジットレジンと呼ばれる複合材料や、金属或いはセラミックスが用いられている。特にセラミックスは、耐摩耗性に優れるだけで無く、天然歯に近い色調を再現できるので審美性にも優れており、クラウンやブリッジ等の歯科用補綴物の材料として用いられている。
従来、口腔内に装着される歯科用補綴物としては、金属製フレームの表面に天然歯の色調に調整したセラミックスを被覆することにより構成されていたが、補綴物全体をセラミックスで形成した、オールセラミックス補綴物も用いられるようになってきている。オールセラミックス補綴物は、例えば従来の金属製フレームに代えてセラミックス焼結体から成るフレームを用いて、その表面にガラス陶材で外装部(即ちセラミックス層)が形成された物である。
オールセラミックス補綴物は、補綴物全体がセラミックスで形成されているので、生体に金属が接触することで発症する金属アレルギーや、金属色を隠すために設けられる不透明な下地層に起因する天然歯本来の色調が得られないと云った前記審美性等の種々の問題が、抑制或いは解消出来る。
噛み合わせ等の点から、歯科用補綴物には極めて高い寸法精度が要求される為、歯科用補綴物は歯科用のCAD/CAM加工装置により作製される。歯科用のCAD/CAM加工装置を用いる事で、コンピュータを利用して画面上で歯科用補綴物の形状設計を行う事が出来ると共に、セラミックスのブロック体を自動切削加工によって設計済みの歯科用補綴物の形状に切削加工して、所望の歯科用補綴物を作製する事が可能となる。依って、短時間で高品質のセラミックス製歯科用補綴物を、数多く作製する事が出来る。
この歯科用のCAD/CAM加工装置を用いた製造方法を大別すると、以下の3つの方法が挙げられる。第1の方法は、セラミックス焼結体を切削加工する方法である。第2の方法は未焼結のセラミックス成形体を切削加工して、その後切削加工を施したセラミックス成形体を焼結する方法である。第3の方法は仮焼結したセラミックス体を切削加工し、その後焼結する方法である。
前記第1の方法は、1300〜1600℃程度で焼結又は熱間静水圧加圧(HIP:Hot Isostatic Pressing)処理したセラミックス焼結体を切削加工する方法で、切削加工後のセラミックス体の寸法変化が無い。従って、CAD/CAM加工装置の計測機や加工機の精度に応じた、寸法精度の高い歯科用補綴物を製造出来る。その反面、セラミックス焼結体の硬度が高いので切削加工時間が長くなると共に、ドリル等の工具寿命が短くなって製造コストが高騰化すると云う問題がある。
前記第2の方法は、焼結時の収縮率を考慮してセラミックス成形体を切削加工し、その後1300〜1600℃で焼結を行う方法である。セラミックス成形体の成形条件及び密度管理によって一定の収縮率が得られる事から、前記第1の方法と同様に寸法精度の高い歯科用補綴物を製造する事が出来る。その反面、脱脂工程を含む事から、焼結に例えば10時間もの長時間を要するとの問題がある。
これらに対し第3の方法は、仮焼結時の収縮率から本焼結の収縮率を算出し、これを考慮してセラミックス体を切削加工し、その後1300〜1600℃で焼結を行う方法である。仮焼結のセラミックス体は、本焼結を行ったセラミックス焼結体よりも低硬度なので切削加工時間を短縮する事が可能となり、工具の寿命が長くなるとの利点が有る。また仮焼結により脱脂が完了していることから、切削後の本焼結時間が短くなるとの利点も有る。その為セラミックスから成る歯科用補綴物の殆どが、第3の方法で作製されている。
更に、仮焼結したセラミックス体の平面形状を円形に成形すると共に、全周囲に凸部を設け、その凸部をCAD/CAM加工装置の保持具によって上下方向から係合し、セラミックス体を保持する方法及びセラミックス体が開示されている(例えば特許文献1参照)。
しかし特許文献1の仮焼結体の外観形状は、平面形状が円形であると共に、全周囲に凸部を設けているので、周縁方向並びに上下方向(裏表方向)に亘って同一の外観形状が現れる事となる。
セラミックス体の一部にCAD/CAM加工装置で切削加工を施し、その後再度CAD/CAM加工装置で切削加工を行う際は、前の切削加工時の歯科用補綴物が一部セラミックス体に形成されている事から、周縁方向の確認と位置決めの正確性がより重要となる。しかし、前記特許文献1のセラミックス体ではその周縁方向に亘って同一の外観形状が現れる為、正確に保持具に対してセラミックス体を位置決めすることは困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、CAD/CAM加工装置の保持具に対して歯科補綴用セラミックス体の周縁方向の確認と位置決めが容易となり、切削加工時に保持具に対して正確に位置決めする事が可能となる歯科補綴用セラミックス体を提供する。
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち本発明の歯科補綴用セラミックス体は、セラミック材料から成り、円形の平面形状で円盤状の外形形状に成形され、50mm以上の直径を有し、その直径を有する円形部の周縁の少なくとも一部に凸部品が取り付けられ、凸部品を周縁方向で途切れさせる凹部が形成されていると共に、凹部が少なくとも一箇所以上形成されており、形成された凹部が、外形形状の方向を示す印であることを特徴とする。
更に本発明の歯科補綴用セラミックス体の一実施形態は、平面方向から見た時に、周縁方向に亘って180°の箇所に、少なくとも1つの別の凹部が形成されていることが好ましい。
更に本発明の歯科補綴用セラミックス体の他の実施形態は、平面方向から見た時に、周縁方向に亘って180°未満の箇所に、少なくとも2つの別の凹部が形成されていると共に、凹部の中心と50mm以上の直径の中心を通る仮想線に対し、少なくとも2つの別の凹部が線対称の箇所を除いて形成されていることが好ましい。
更に本発明の歯科補綴用セラミックス体の他の実施形態は、凸部品が樹脂から成ることが好ましい。
更に本発明の歯科補綴用セラミックス体の他の実施形態は、凸部品が磁気を帯びていることが好ましい。
更に本発明の歯科補綴用セラミックス体の他の実施形態は、凸部品の少なくとも表面上に、膜状磁石を備えていることが好ましい。
本発明に係る歯科補綴用セラミックス体に依れば、CAD/CAM加工装置の保持具に対して歯科補綴用セラミックス体の周縁方向の確認と位置決めが容易となり、切削加工時に保持具に対して正確に歯科補綴用セラミックス体を位置決めする事が可能となる。
本実施の形態の第一の特徴は、セラミック材料から成り、円形の平面形状で円盤状の外形形状に成形され、50mm以上の直径を有し、その直径を有する円形部の周縁の少なくとも一部に凸部品が取り付けられ、凸部品を周縁方向で途切れさせる凹部が形成されていると共に、凹部が少なくとも一箇所以上形成されており、形成された凹部が、外形形状の方向を示す印である歯科補綴用セラミックス体とした事である。
この構成に依れば、CAD/CAM加工装置の保持具に対して歯科補綴用セラミックス体の周縁方向の確認と位置決めが容易となり、切削加工時に保持具に対して正確に歯科補綴用セラミックス体を位置決めする事が可能となる。
なお本発明に於いて円形の平面形状とは、真円の平面形状だけで無く、真円度が1mm以下の平面形状も含むものとする。
また本発明に於いて円盤状の外形形状とは、片面及び他面が共に平面で、且つ所望の厚みを有する外形形状を指す。
また本発明に於いて歯科補綴用セラミックス体とは、円盤状の外形形状を有すると共に、仮焼結によって作製されるセラミックスから成る固結体を指す。更に仮焼結とは、セラミック材料から固結体(セラミックスから成る固結体)を作製する工程を指すものであり、慣用的に用いられる半焼結や、仮焼成または半焼成も含むものとする。
また本発明に於いて凸部品とは、別部品として歯科補綴用セラミックス体に取り付けられると共に、取り付け後に歯科補綴用セラミックス体を側面方向から見た時に、歯科補綴用セラミックス体の周縁方向に亘って凸状に突出している箇所である。且つ、歯科補綴用セラミックス体の周縁の少なくとも一部に取り付けられているものを指す。
また本発明に於いて凹部とは、歯科補綴用セラミックス体を平面方向から見た時に、凹状に窪んで形成され、凸部品を歯科補綴用セラミックス体の周縁方向で途切れさせている箇所を指す。
また第二の特徴は、平面方向から見た時に、周縁方向に亘って180°の箇所に、少なくとも1つの別の凹部が形成されているとした事である。
この構成に依れば、CAD/CAM加工装置の保持具に対して歯科補綴用セラミックス体の周縁方向の確認と位置決めが容易となり、切削加工時に保持具に対して正確に歯科補綴用セラミックス体を位置決めする事が可能となる。更に、各々の凸部品を180°の円弧形状に形成することが可能となる。従って、各々の凸部品を歯科補綴用セラミックス体の円形部の側面方向から、円形部の周縁に取り付けることが出来るため、凸部品の取り付け作業がより簡易化される。
また第三の特徴は、平面方向から見た時に、周縁方向に亘って180°未満の箇所に、少なくとも2つの別の凹部が形成されていると共に、凹部の中心と50mm以上の直径の中心を通る仮想線に対し、少なくとも2つの別の凹部が線対称の箇所を除いて形成されているとした事である。
この構成に依れば、CAD/CAM加工装置の保持具に対して歯科補綴用セラミックス体の周縁方向の確認と位置決めが容易となり、切削加工時に保持具に対して正確に歯科補綴用セラミックス体を位置決めする事が可能となる。更に、保持具に対する歯科補綴用セラミックス体の上下方向の確認並びに位置決めも容易になる。
更に、各々の凸部品を180°未満の円弧形状に形成することが可能となる。従って、各々の凸部品を歯科補綴用セラミックス体の円形部の側面方向から、円形部の周縁に取り付けることが出来るため、凸部品の取り付け作業がより簡易化される。
また第四の特徴は、凸部品が非セラミック材料から成るとした事である。
また第五の特徴は、凸部品が樹脂から成るとした事である。
これらの構成に依れば、歯科補綴用セラミックス体を保持具に装着する際に、接触による凸部品の欠けが防止可能となる。更に凸部品を樹脂で形成することにより、凸部品の軽量化も図ることが出来る。
また第六の特徴は、凸部品が磁気を帯びているとした事である。
また第七の特徴は、凸部品の少なくとも歯科補綴用セラミックス体の外形形状に接していない表面上に、膜状磁石を備えているとした事である。
これらの構成に依れば、保持具が金属製など磁力に対して吸引力を発生する材料から形成されている場合、その吸引力により歯科補綴用セラミックス体を保持具に対して仮止めすることが出来る。従って、より速やかに保持具に対して歯科補綴用セラミックス体を位置決めする事が可能となる。
特に、凸部品の表面上に膜状磁石を形成することにより、低コストで速やかに凸部品に磁気を帯びた歯科補綴用セラミックス体を実現する事が出来る。
以下、図1〜図2を適宜参照して、本発明の実施形態に係る歯科補綴用セラミックス体1とその製造方法を説明する。本実施形態に係る歯科補綴用セラミックス体1は、図1に示す様に円盤状の外形形状に成形されており、更に平面方向から見た平面形状は、図2(a)に示すように円形である。なお円盤状の外形形状とは、片面及び他面が共に平面で、且つ所望の厚みTを有する外形形状を指す。また円形の平面形状とは、真円の平面形状だけで無く、真円度が1mm以下の平面形状も含むものとする。
歯科補綴用セラミックス体1は、歯科用補綴物を切削加工により作製するための、被切削用ブロック体として用いられ、仮焼結によって作製されるセラミックスから成る固結体を指す。更に仮焼結とは、セラミック材料から固結体(セラミックスから成る固結体)を作製する工程を指すものであり、慣用的に用いられる半焼結や、仮焼成、又は半焼成も含むものとする。
歯科補綴用セラミックス体1を形成するセラミック材料は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ハイドロキシアパタイト、β−リン酸三カルシウム(β-TCP)の何れかとする。このセラミック材料は粉末等で用意すれば良い。
また片面2a上及び他面2b上の直径D1は50mm以上が好ましい。その理由として歯科補綴用セラミックス体1から人間の14本の歯列を形成する為には、50mm以上が必要となるからである。
なお、直径D1の上限値は特に限定されないが、歯科用のCAD/CAM加工装置に備えられる保持具の許容保持範囲の観点から、100mm以下が好ましい。
また、歯科補綴用セラミックス体1の厚みTは任意に設定可能であるが、CAD/CAM加工装置の保持具の許容保持範囲の観点から、10mm以上30mm以下が好ましい。
更に歯科補綴用セラミックス体1に於いて、直径D1を有する円形部の周縁の少なくとも一部に、凸部品4が取り付けられる。更に、その凸部品4を歯科補綴用セラミックス体1の周縁方向で途切れさせる凹部3aが形成されている。凹部3aは少なくとも一箇所以上形成され、図1〜図2の実施形態では、厚みT方向に対して平行に形成されている。なお不連続に取り付けられた凸部品4全体の外周を連続に結んだ時の、仮想線の真円度も1mm以下とする。
なお本発明に於いて凸部品4とは、別部品として歯科補綴用セラミックス体に取り付けられると共に、取り付け後に歯科補綴用セラミックス体1を側面方向から見た時に、歯科補綴用セラミックス体1の周縁方向に亘って凸状に突出している箇所である。且つ、歯科補綴用セラミックス体1の周縁の少なくとも一部に取り付けられているものを指す。更に凸部品4は、片面2a及び他面2bの周縁から、2.0〜2.25mmほど突出して取り付けられている。また、凸部品の厚みT4は任意に設定可能であるが、CAD/CAM加工装置の保持具の許容保持範囲の観点から、10mm程度が好ましい。
凸部品4を歯科補綴用セラミックス体1の周縁に取り付けることで、歯科補綴用セラミックス体1の周縁が凸部品4で保護される。従って、歯科補綴用セラミックス体1をCAD/CAM加工装置の保持具に取り付ける際に、歯科補綴用セラミックス体1と保持具との接触が防止される。よって、歯科補綴用セラミックス体1の欠けを防止することが可能となる。
凸部品4は非セラミック材料で形成する。特に樹脂(その中でも熱可塑性樹脂であるプラスチック)で凸部品4を形成することが好ましい。凸部品4を樹脂(特にプラスチック)と云った非セラミック材料で形成することにより、歯科補綴用セラミックス体1を保持具に装着する際に、接触による凸部品4の欠けが防止可能となると共に、凸部品4の軽量化も図ることが出来る。
本発明に於いて凹部3aとは、歯科補綴用セラミックス体1を平面方向から見た時に、凹状に窪んで形成され、凸部品4を歯科補綴用セラミックス体1の周縁方向で途切れさせている箇所を指す。本実施形態では、この凹部3aが歯科補綴用セラミックス体1の外形形状の方向を示す印となる。
凹部3aを形成することにより、凹部3aが外形形状の方向を示す印となるので、歯科補綴用セラミックス体1の周縁方向に亘って同一の外観形状が現れる事を防止出来る。歯科補綴用セラミックス体1の一部にCAD/CAM加工装置で切削加工を施し、その後再度CAD/CAM加工装置で切削加工を行う際は、前の切削加工時の歯科用補綴物が一部、歯科補綴用セラミックス体1に形成されているので、周縁方向の確認と位置決めの正確性がより重要となる。
そのような使用状況でも本発明に係る歯科補綴用セラミックス体1では、凹部3aが外形形状の方向を示す印となるので、その周縁方向に亘って同一の外観形状が現れる事が防止される。従って、保持具に対して歯科補綴用セラミックス体1の周縁方向の確認と位置決めが容易となり、切削加工時に保持具に対して正確に歯科補綴用セラミックス体1を位置決めすることが出来る。
なお凹部3aを形成する事により上記効果が得られれば良いので、凹部3aの幅寸法は目視可能な程度まで形成されれば良い。
次に、歯科補綴用セラミックス体1の製造方法に付いて説明する。まず前記の様なセラミック材料を用意すると共にそのセラミック材料を成形して、歯科補綴用セラミックス体1の様な円盤状の外形形状を形成する。成形はプレス成型又は工作機械による成形とする。工作機械としては、フライス旋盤やマシニングセンター(machining center)等が挙げられる。
次に成形したセラミック材料を、理論密度が得られる焼結温度から、-700℃以上且つ-100℃以下で仮焼結して、複数の隙間を有する多孔体から成る歯科補綴用セラミックス体1を用意する。
なお理論密度が得られる焼結温度とは、所望のセラミック材料で作製されたセラミックス焼結体が理論密度を得られる際の焼結温度を指す。具体的には理論密度として、シリカ2.20g/cm3、アルミナ3.99g/cm3、ジルコニア6.07g/cm3、ハイドロキシアパタイト3.16g/cm3、β-TCP3.07g/cm3の各理論密度が得られるセラミックス焼結体が形成された際の焼結温度を指す。この焼結温度から、-700℃以上且つ-100℃以下で焼結する。
理論密度が得られる各セラミックス焼結体の焼結温度の一例は、次の通りである。シリカ1400℃、アルミナ1550℃、ジルコニア1450℃、ハイドロキシアパタイト1300℃、β-TCP1300℃。
多孔体の歯科補綴用セラミックス体1の仮焼結温度は、セラミック材料の種類や粒度に依るが、仮焼結が進んでも多孔体の気孔が塞がらない温度以下が望ましく、具体的な数値範囲としては850℃以上且つ1050℃以下で仮焼結する事が望ましい。仮焼結する雰囲気は、空気中でも良いし、窒素やアルゴン等の希ガスと云った非酸化雰囲気でも良い。
多孔体の作製方法としては、前記の様にセラミック材料の粉末を成形して仮焼結するか、セラミック材料の粉末に有機質バインダ又は無機質バインダを添加して成形し仮焼結しても良い。
一方、凸部品4を非セラミックス材料(特にプラスチック)で製造する場合、射出成型等を用いる。
次に、多孔体の歯科補綴用セラミックス体1の周縁に、凸部品4を取り付けることで、凹部3aを形成する。凸部品4が180°を超える円弧形状に形成される場合は、凸部品4を歯科補綴用セラミックス体1の円形部の周縁に嵌め込み、接着剤等により円形部の周縁の少なくとも一部に凸部品4を取り付ける。
なお、本実施形態に係る歯科補綴用セラミックス体1は種々変更可能である。例えば第1の変更例として、図3に示すように予め一箇所の凹部3aが形成されることに加えて、歯科補綴用セラミックス体1を平面方向から見た時に、歯科補綴用セラミックス体1の周縁方向に亘って180°の箇所に、少なくとももう1つの別の凹部3bを形成しても良い。
図3より、凹部3aの中心と片面2a上の中心を通るように、一点鎖線CLが図示されている。従って凹部3aを基準とすると、片面2a上の中心を通って180°の箇所とは、一点鎖線CL上の箇所となる。第1の変更例では、一点鎖線CL上に2つの凹部3a及び3bが形成されている。
このように、一箇所の凹部3aを基準として180°の箇所に、少なくとも1つの別の凹部3bが形成されていることで、前記周縁方向の確認と位置決めに加えて、各々の凸部品4を180°の円弧形状に形成することが可能となる。従って、各々の凸部品4を歯科補綴用セラミックス体1の円形部の側面方向から、円形部の周縁に接着剤等で貼り付けて、円形部の周縁の少なくとも一部に凸部品4を取り付けることが出来る。よって、凸部品4を180°を超える円弧形状で形成した場合と比べて、凸部品4の取り付け作業がより簡易化される。
また、例えば第2の変更例として図4に示すように、予め一箇所の凹部3aが形成されることに加えて、歯科補綴用セラミックス体1を平面方向から見た時に、歯科補綴用セラミックス体1の周縁方向に亘って180°未満の箇所に、少なくとも2つの別の凹部3b及び3cが形成されている形態が挙げられる。更に、凹部3aの中心と直径D1の中心を通る仮想線(即ち、凹部3aの中心と片面2a上の中心を通る一点鎖線CL)に対し、少なくとも2つの別の凹部3b及び3cが線対称の箇所を除いて形成されている。
仮想線(一点鎖線CL)を中心軸として歯科補綴用セラミックス体1を上下反転すると、2つの凹部3b及び3cは線対称に現れないため、歯科補綴用セラミックス体1の全体形状は上下反転しても同一形状には現れない。
従って、歯科補綴用セラミックス体1の上下方向に亘る外観形状が同一に現れない。よって、前記周縁方向の確認と位置決めに加えて、CAD/CAM加工装置の保持具に対する歯科補綴用セラミックス体1の上下方向の確認並びに位置決めも容易になり、切削加工時に保持具に対して歯科補綴用セラミックス体1の上下方向も、正確に位置決めする事が可能となる。更に、各凹部3a〜3cに於ける平面方向から見た時の形状を異ならせる事により、より一層歯科補綴用セラミックス体1の上下方向の確認を、確実に行うことが可能となる。
また各々の凸部品4を、180°未満の円弧形状に形成することが可能となる。従って、第2の変更例でも各々の凸部品4を、歯科補綴用セラミックス体1の円形部の側面方向から、円形部の周縁に接着剤等で貼り付けて、円形部の周縁の少なくとも一部に凸部品4を取り付けることが出来る。よって、凸部品4を180°を超える円弧形状で形成した場合と比べて、凸部品4の取り付け作業がより簡易化される。
凹部の形成個数は任意に設定可能である。従って、図1〜図4のように3箇所以下に限定されず、4箇所以上設けても良い。但し、各凹部の中心位置を等間隔に設ける場合(例えば3つの凹部を120°等間隔に設ける場合など)、各凹部を平面方向から見た時の形状を異ならせていることが、歯科補綴用セラミックス体1の周縁方向と上下方向の確認の点から望ましい。
或いは、凹部3aを厚みT方向に対して斜めに形成しても良い。
或いは、凹部3aの幅を、片面2a側と他面2b側で異ならせても良い。このような構成とすることにより、歯科補綴用セラミックス体1の上下方向に亘る外観形状が、片面2a側と他面2b側での凹部3aの各々の幅寸法の相違により同一とならない。よって、前記周縁方向の確認と位置決めに加えて、CAD/CAM加工装置の保持具に対する歯科補綴用セラミックス体1の上下方向の確認並びに位置決めも容易になり、切削加工時に保持具に対して歯科補綴用セラミックス体1の上下方向も、正確に位置決めする事が可能となる。
或いは、凸部品4が磁気を帯びている実施形態に変更しても良い。そのような実施形態として、凸部品4全体或いは一部分を磁石で形成しても良い。この場合、凸部品4の外形形状の磁石をプレス成型等で形成すれば良い。或いは、磁石の表面を樹脂で覆って凸部品4としても良い。
或いは、樹脂で凸部品4を形成し、その凸部品4の少なくとも歯科補綴用セラミックス体1の外形形状に接していない表面に、ブロック状の磁石を複数貼り付けても良い。
或いは、凸部品4の少なくとも歯科補綴用セラミックス体1の外形形状に接していない表面上に、膜状磁石を備えても良い。
以上のように凸部品4が磁気を帯びている構成とすることにより、CAD/CAM加工装置の保持具が金属製など磁力に対して吸引力を発生する材料から形成されている場合、その吸引力により歯科補綴用セラミックス体1を保持具に対して仮止めすることが出来る。従って、より速やかに保持具に対して歯科補綴用セラミックス体1を位置決めする事が可能となる。
特に、凸部品4の表面上に前記膜状磁石を形成することにより、低コストで速やかに凸部品4に磁気を帯びた実施形態を実現する事が出来る。
膜状磁石としては、膜厚0.2μm〜400μm程のR-Fe-B系合金を成膜すれば良い。Rは希土類元素で、Niを主とする。また成膜方法としては、液中から析出させるメッキ、微細な合金粉末粒子を塗布あるいは吹きつけるコーティングやCVD、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、レーザーデポジション、レーザーアブレーションなど各種の物理的成膜法により成膜する方法が挙げられる。更に、成膜後に加熱処理する。
なお、膜状磁石を凸部品4の表面上に成膜させる場合、加熱処理を行う必要上、凸部品4の構成材料としては、Fe,Mo,Tiなどの高融点金属を選択することが望ましく、プレス成型や金属粉末射出成型など、既存の成型法により作製すれば良い。
1 歯科補綴用セラミックス体
2a 片面
2b 他面
3a、3b、3c 凹部
4 凸部品
D1 直径
T 歯科補綴用セラミックス体の厚み
T4 凸部品の厚み
CL 一点鎖線
2a 片面
2b 他面
3a、3b、3c 凹部
4 凸部品
D1 直径
T 歯科補綴用セラミックス体の厚み
T4 凸部品の厚み
CL 一点鎖線
Claims (7)
- セラミック材料から成り、円形の平面形状で円盤状の外形形状に成形され、50mm以上の直径を有し、
その直径を有する円形部の周縁の少なくとも一部に凸部品が取り付けられ、
凸部品を周縁方向で途切れさせる凹部が形成されていると共に、凹部が少なくとも一箇所以上形成されており、
形成された凹部が、外形形状の方向を示す印である歯科補綴用セラミックス体。 - 平面方向から見た時に、前記周縁方向に亘って180°の箇所に、少なくとも1つの別の凹部が形成されている請求項1記載の歯科補綴用セラミックス体。
- 平面方向から見た時に、前記周縁方向に亘って180°未満の箇所に、少なくとも2つの別の凹部が形成されていると共に、前記凹部の中心と前記直径の中心を通る仮想線に対し、少なくとも2つの別の凹部が線対称の箇所を除いて形成されている請求項1記載の歯科補綴用セラミックス体。
- 前記凸部品が非セラミック材料から成る請求項1〜3の何れかに記載の歯科補綴用セラミックス体。
- 前記凸部品が樹脂から成る請求項4記載の歯科補綴用セラミックス体。
- 前記凸部品が磁気を帯びている請求項4記載の歯科補綴用セラミックス体。
- 前記凸部品の少なくとも前記歯科補綴用セラミックス体の外形形状に接していない表面上に、膜状磁石を備えている請求項6記載の歯科補綴用セラミックス体。
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