JP2018050536A - 芳香族アシル基転移酵素遺伝子及びその使用 - Google Patents

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奈央子 興津
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Mikako Shiromizu
美香子 白水
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和隆 村山
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【課題】アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドの提供。【解決手段】(a)特定の塩基配列からなるポリヌクレオチド;(b)特定の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;(c)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;(d)特定のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び(e)特定のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;からなる群から選ばれるポリヌクレオチド。【選択図】なし

Description

本発明は、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びその使用に関する。
花産業は新規かつ種々の品種を開発することに努力している。新規品種育成のための有効な方法の一つとして花の色を変えることがあり、古典的な育種方法を用いて、ほとんどの商業的品種について様々な花色を呈する品種が作出されている。しかしながら、従来の育種による方法では種ごとに遺伝子プールが制限されていることから、単一の種が広範囲にわたる花色品種を有することは稀である。
花の色は主として2つのタイプの色素、すなわちフラボノイド及びカロチノイドに由来する。フラボノイドは黄色から赤ないしは青色の広範囲の花色に主に寄与し、一方カロチノイドはオレンジ又は黄色の色調に主に寄与する。フラボノイドの中でも花色に主たる寄与をするのは、アントシアニンと総称される一群の化合物である。アントシアニンの発色団は、アントシアニジンであり、主要なアントシアニジンとしてペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジンが知られている。植物には多様なアントシアニンが存在することが知られており、その多様性が花の色の多様性の一因となっている。数百種のアントシアニンの構造がすでに決定されており、ほとんどのアントシアニンの3位の水酸基は糖により修飾されている(特許文献1−4)。
アントシアニンの生合成経路は3位の配糖化物の生合成までは、ほとんどの顕花植物で共通であり、その後、種及び品種特異的に配糖化、アシル化、メチル化など様々な修飾を受ける。このような品種における修飾形態の違いがアントシアニンの多様性すなわち多彩な花色の一因となっている。一般的にアントシアニンを修飾する芳香族アシル基が多いほどアントシアニンは安定化し、青色化する(特許文献1)。
アントシアニジンを含むフラボノイドの生合成は詳細に研究されている。アントシアニンの合成に関与する酵素の遺伝子はすべてクローニングされ、これらの転写因子の遺伝子も得られている。したがってこれらの遺伝子の発現を人為的に改変することにより花で蓄積するフラボノイドの構造と量を改変し、花色を変えることができる。分子生物学的手法と植物への遺伝子導入により、アントシアニンの構造を改変し、花の色を変えた例が報告されている(特許文献3,4)。
花の色を青くする方法の1つとしてアントシアニンのβ環の水酸基数を増加させることが考えられる。アントシアニンの3′位を水酸化する反応を触媒する酵素(フラボノイド3′−水酸化酵素:F3′H)とアントシアニンの3′位と5′位を水酸化する反応を触媒する酵素(フラボノイド3′,5′−水酸化酵素:F3′5′H)は、花色を変える上で重要である。概してペラルゴニジン(β環の水酸基が1個)はオレンジから赤、シアニジン(β環の水酸基が2個)は赤から紅色、デルフィニジン(β環の水酸基が3個)は紫から青の花に含まれることが多い。紫から青の品種のない植物種はデルフィニジンを作る能力を欠く場合が多く、その代表例として、バラ、キク、カーネーションが挙げられる。
これらの植物について、紫から青の品種をバイオテクノロジーにより作出することは以前から注目されている。実際にデルフィニジンを生産するために必須のF3′5′H遺伝子を発現させることにより、花色を青紫色にしたカーネーションが作製され、花弁でデルフィニジンを生産することは可能となったが、未だ花の色は十分な青色とはなっていない。すなわち、花の色を真に青くするためには、F3′5′H遺伝子を導入するだけでは不十分であり、さらに工夫をする必要があると考えられる。
実際に青い花に含まれるアントシアニンは糖を介して芳香族アシル基で修飾されていることが多い(特許文献1)。そこで、花の色をより青くする方法のひとつとして、カフェオイル基、クマロイル基、シナポイル基などの芳香族アシル基によりアントシアニンを修飾することが考えられる(特許文献1、2)。
一般に、アントシアニンは配糖化によってやや赤くなり、糖を介した芳香族アシル基の付加によってアントシアニンの色は青くなる(特許文献1)。また、アントシアニンは中性溶液中では不安定な化合物であるが、糖やアシル基によって修飾されることで安定性が向上する(特許文献1)。アサガオ(Pharbitis nil)由来のアントシアンを用いた実験により、アシル化されたアントシアニンのうち、グルコースを介して芳香族アシル基、例えばクマル酸やカフェ酸が結合したアントシアニンはその吸収極大が長波長側に移動することが観察された(特許文献1)。
芳香族アシル基の結合したアントシアニンにはツユクサ(Commelina communis)由来のアオバニンを始め、自然界からの数多くの分離例が報告されている(特許文献1)。例えば、青い花のアントシアニンはシネラリン(サイネリア由来)、ゲンチオデルフィン(リンドウ由来)、ヘブンリーブルーアントシアニン(アサガオ由来)、テルナチン(チョウマメ由来)、ロベリニン(ロベリア由来)等に代表されるように、複数の芳香族アシル基を有している。
シネラリア(Senecio cruentus)由来のシネラリンは1個の脂肪族アシル基と3個の芳香族アシル基を有するが、これら芳香族アシル基が中性水溶液中での色素の安定化に寄与していることが報告されている(特許文献1)。また、リンドウ花弁の主要色素であるゲンチオデルフィン(DEL 3G−5CafG−3′CafG)は、デルフィニジン3位配糖化物を基本骨格とし、5位と3′位の水酸基にグルコース1分子とカフェ酸1分子からなる側鎖を有する。これら5位ならびに3′位の糖−アシル基側鎖により、サンドイッチ型の分子内スタッキングが起こり、水溶液中で色素が安定化されることが報告されている(特許文献2)。さらに、2つの糖−芳香族アシル基側鎖のうち、5位よりも3′位の糖−芳香族アシル基が色素の安定化、青色化に大きく寄与していることが確かめられた(特許文献2)。
芳香族アシル基転移反応は1980年にナデシコ科のマンテマ属(Silene)植物(特許文献1)で初めて示され、アラセイトウ属(Matthiola)植物の可溶化酵素画分にも同様の芳香族アシル基転移酵素活性が見い出された(特許文献1)。その後、リンドウからアントシアニンの5位の糖にカフェ酸やクマル酸などの芳香族アシル基を転移するアントシアニン5位芳香族アシル基転移酵素(5AT)が単離され、精製された酵素の内部アミノ酸配列の情報をもとに、リンドウの5ATをコードするcDNAが単離された(特許文献1)。
3位、5位などのA環のアシル化だけでは充分な効果がなく、3′位のアシル化がアントシアニンの青色化、安定化のために必要であること、さらに望ましくは3′位を含む複数の位置のアシル化が必要であることが知られている。これについて、特許文献1及び2には、リンドウの5位芳香族アシル基転移酵素が、3′アシル基転移活性をもコードしており、単一の酵素でありながら、アントシアニンの5位と3′位の2箇所の糖にそれぞれ芳香族アシル基転移反応を触媒することが開示されている(特許文献2)。しかしながら、当該遺伝子は異種の植物では十分に発現しないため、異種の植物でも機能する芳香族アシル基転移酵素又はその遺伝子の取得が必要とされている。
特許第3950986号公報 特許第5598830号公報 特許第4690197号公報 特許第5697041号公報 特許第4982782号公報
J Struct Funct Genomics (2014) 15:153-164 Science Translational Medicine (2013) 5: pp. 181ra52
アントシアニンの安定化と青色化には、アントシアニンの芳香族アシル基が寄与し、特に5位の糖−アシル基側鎖よりも3′位の糖−アシル基側鎖の寄与が大きい。さらに3′位を含めた複数位置の糖−アシル基側鎖よってアントシアニンはより青く安定になると考えられる。したがって、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有する酵素あるいは当該酵素をコードする遺伝子を用いて、人為的にアントシアニンを修飾し、アントシアニンをより安定な化合物へと改変し、またそのアントシアニンに一層の青味を付加することにより、新たな花色を有する植物品種を開発できることが期待される。現在、青いバラとして知られるバラ品種(アプローズ)に存在する主要アントシアニンはデルフィニジン3,5−ジグルコシドであるため、リンドウの5,3′−アシル基転移酵素(G5,3′AT)遺伝子を導入することによって、花色をさらに青くする研究が行われていたが、G5,3′AT遺伝子を導入しても、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基が付加されたアントシアニンを検出することはできなかった。また、当該遺伝子をペチュニアに導入した場合でも5,3′−ジアシルアントシアニンは検出されなかった。したがって、本発明が解決すべき課題は、バラなどの異種植物へ導入した際に安定に発現するアントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びその使用を提供することである。
リンドウと同じくリンドウ科に属するトルコギキョウは、5,3′−アシル基転移酵素ではなく5−アシル基転移酵素を生産する。トルコギキョウの5−アシル基転移酵素(E5AT)とリンドウの5,3′−アシル基転移酵素(G5,3′AT)はアミノ酸配列の同一性が高く、また、E5AT遺伝子を導入したバラはアシル化アントシアニンを蓄積することから、本願発明者は、G5,3′ATとE5ATの立体構造に着目し、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、N41/Y41、M235/L234、K242/G241、R245/Q244、N389/K389、P392/L392、F396/L396、T400/S400、E429/G429の9個のアミノ酸残基(前段がG5,3′ATのアミノ酸残基、後段がE5ATのアミノ酸残基を意味する)がアントシアニンの認識に関与し、これらのアミノ酸残基をリンドウ(G)型に改変することにより、アントシアニンの5位と3′位の両方の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有意に増大させるという驚くべき知見を得て、本発明を完成するにいたった。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 以下の(a)〜(e):
(a)配列番号7、9又は11のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号7、9又は11のいずれかの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び
(e)配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
からなる群から選ばれるポリヌクレオチド。
[2] 配列番号7、9又は11のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドである、1に記載のポリヌクレオチド。
[3] 配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドである、1に記載のポリヌクレオチド。
[4] 配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである、1に記載のポリヌクレオチド。
[5] 1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチドによりコードされたタンパク質。
[6] 1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
[7] 6に記載のベクターが導入された非ヒト宿主。
[8] 1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチドを用いてアントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する方法。
[9] 1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は5に記載のタンパク質を含む植物若しくはその子孫又はそれらの部分若しくは組織。
[10] 前記植物がバラである、9に記載の植物若しくはその子孫又はそれらの部分若しくは組織。
[11] 切花である、9又は10に記載の植物の部分。
[12] 11に記載の切花の加工品。
[13] 以下の工程:
7に記載の非ヒト宿主を培養し又は生育させ、そして
該非ヒト宿主からアントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質を採取する、
を含む、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質の製造方法。
[14] 改変された花色を有する植物を作製するための方法であって、
宿主植物に1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチド、又は6に記載のベクターを導入する工程を含む、方法。
本発明のポリヌクレオチドを適切な宿主細胞内で発現させることにより、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質を製造することが可能となる。本発明により、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質を、植物内で、構成的又は組織特異的に安定して発現させることで、花色の改変に利用することができる。
GEAT又はEGATを基質と反応させた酵素反応液の高速液体クロマトグラムである。 E′AT又はE′GATを基質と反応させた酵素反応液の高速液体クロマトグラムである。 G5,3′AT、EGAT、E′AT又はE′GATを含むコンストラクト(pSPB5523、pSPB6107、pSPB6133、pSPB6134)を表す。 組換えバラにおける導入遺伝子の発現解析結果を示す表である。 組換えバラでのRT−PCR解析の結果を示す写真である。
本発明は、以下の(a)〜(e):
(a)配列番号7、9又は11のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号7、9又は11のいずれかの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び
(e)配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
からなる群から選ばれるポリヌクレオチドに関する。
本明細書中、用語「ポリヌクレオチド」はDNA又はRNAを意味する。
本明細書中、用語「ストリジェント条件」とは、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドと、ゲノムDNAとの選択的かつ検出可能な特異的結合を可能とする条件である。ストリンジェント条件は、塩濃度、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)、温度、及びその他公知の条件の適当な組み合わせによって定義される。すなわち、塩濃度を減じるか、有機溶媒濃度を増加させるか、又はハイブリダイゼーション温度を上昇させるかによってストリンジェンシー(stringency)は増加する。さらに、ハイブリダイゼーション後の洗浄の条件もストリンジェンシーに影響する。この洗浄条件もまた、塩濃度と温度によって定義され、塩濃度の減少と温度の上昇によって洗浄のストリンジェンシーは増加する。したがって、用語「ストリンジェント条件」とは、各塩基配列間の「同一性」の程度が、例えば、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上であるような、高い同一性を有する塩基配列間のみで、特異的にハイブリダイズするような条件を意味する。「ストリンジェント条件」としては、例えば、温度60℃〜68℃において、ナトリウム濃度150〜900mM、好ましくは600〜900mM、pH6〜8であるような条件を挙げることができ、具体例としては、5×SSC(750mMNaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、1%SDS、5×デンハルト溶液50%ホルムアルデヒド、及び42℃の条件でハイブリダイゼーションを行い、0.1×SSC(15mMNaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム)、0.1%SDS、及び55℃の条件で洗浄を行うものを挙げることができる。
ハイブリダイゼーションは、例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。このようなハイブリダイゼーションによって選択される遺伝子としては、天然由来のもの、例えば、植物由来のもの、植物由来以外のものであってもよい。また、ハイブリダイゼーションによって選択される遺伝子はcDNAであってもよく、ゲノムDNAであっても化学合成したDNAでもよい。
上記「1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個の任意の数のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を意味する。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989等に記載の方法に準じて行うことができる。この変異DNAを適切な発現系を用いて発現させることにより、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質を得ることができる。
また、本発明に係るDNAは、当業者に公知の方法、例えば、ホスホアミダイド法等により化学的に合成する方法、植物の核酸試料を鋳型とし、目的とする遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて設計したプライマーを用いる核酸増幅法などによって得ることができる。
本明細書中、用語「同一性」とは、ポリペプチド配列(又はアミノ酸配列)あるいはポリヌクレオチド配列(又は塩基配列)における2本の鎖の間で該鎖を構成している各アミノ酸残基同志又は各塩基同志の互いの適合関係において同一であると決定できるようなものの量(数)を意味し、二つのポリペプチド配列又は二つのポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味するものであり、「同一性」は容易に算出できる。二つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列間の同一性を測定する方法は数多く知られており、用語「同一性」は、当業者には周知である(例えば、Lesk, A. M. (Ed.), Computational Molecular Biology, Oxford University Press, New York, (1988); Smith, D. W. (Ed.), Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Academic Press, New York, (1993); Grifin, A. M. & Grifin, H. G. (Ed.), Computer Analysis of Sequence Data: Part I, Human Press, New Jersey, (1994); von Heinje, G., Sequence Analysis in Molecular Biology, Academic Press, New York, (1987); Gribskov, M. & Devereux, J. (Ed.), Sequence Analysis Primer, M-Stockton Press, New York, (1991)等参照)。
また、本明細書に記載される「同一性」の数値は、特に明示した場合を除き、当業者に公知の同一性検索プログラムを用いて算出される数値であってよいが、好ましくは、MacVectorアプリケーション(バージョン9.5、Oxford Molecular Ltd., Oxford, England)のClustalWプログラムを用いて算出される数値である。
本発明のポリヌクレオチド(核酸、遺伝子)は、着目のタンパク質を「コードする」ものである。ここで、「コードする」とは、着目のタンパク質をその活性を備えた状態で発現させるということを意味している。また、「コードする」とは、着目のタンパク質を連続する構造配列(エクソン)としてコードすること、又は介在配列(イントロン)を介してコードすることの両者の意味を含んでいる。
生来の塩基配列を有する遺伝子は、例えば、DNAシークエンサーによる解析によって得られる。また、修飾されたアミノ酸配列を有する酵素をコードするDNAは生来の塩基配列を有するDNAを基礎として、常用の部位特定変異誘発やPCR法を用いて合成することができる。例えば、修飾したいDNA断片を生来のcDNA又はゲノムDNAの制限酵素処理によって得て、これを鋳型にして、所望の変異を導入したプライマーを用いて部位特定変異誘発やPCR法を実施し、所望の修飾したDNA断片を得る。その後、この変異を導入したDNA断片を目的とする酵素の他の部分をコードするDNA断片と連結すればよい。
あるいは短縮されたアミノ酸配列からなる酵素をコードするDNAを得るには、例えば、目的とするアミノ酸配列より長いアミノ酸配列、例えば、全長アミノ酸配列をコードするDNAを所望の制限酵素により切断し、その結果得られたDNA断片が目的とするアミノ酸配列の全体をコードしていない場合は、不足部分の配列からなるDNA断片を合成し、連結すればよい。
また、得られたポリヌクレオチドを大腸菌及び酵母での遺伝子発現系を用いて発現させ、酵素活性を測定することにより、得られたポリヌクレオチドがアントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードすることを確認することができる。
実施例においては、アントシアンのアシル基転移反応において、アシル基の供与体としてカフェオイル−CoA、p−クマロイル−CoA、フェルロイル−CoA等のCoAエステルが用いられているが、カフェオイル、p−クマロイル、フェルロイル又はシナポイル−1−O−グルコースといったハイドロキシシンナモイル−1−O−グルコースも芳香族アシル基の供与体として利用できる(Glassgen and Seitz, Planta 186: 582, 1992)。
本発明は、前記ポリヌクレオチドを含む(組換え)ベクター、特に発現ベクター、さらに該ベクターによって形質転換された非ヒト宿主にも関する。
非ヒト宿主としては、原核生物又は真核生物を用いることがきる。原核生物としては細菌、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属に属する細菌、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、バシルス(Bacillus)属微生物、例えば、バシルス・スブシルス(Bacillus subtilis)など常用の宿主を用いることができる。真核生物としては、下等真核生物、例えば、真核微生物、例えば、真菌である酵母又は糸状菌が使用できる。
酵母としては、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属微生物、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などが挙げられ、また糸状菌としては、アスペルギルス(Aspergillus)属微生物、例えば、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム(Penicillium)属微生物が挙げられる。宿主としては、さらに動物細胞又は植物細胞が使用でき、動物細胞としては、マウス、ハムスター、サル、ヒトなどの細胞系が使用され、さらに、昆虫細胞、例えば、カイコ細胞、カイコの成虫それ自体も宿主として使用される。
また、本発明の発現ベクターは、それらを導入する宿主の種類に依存して発現制御領域、例えば、プロモーター、ターミネーター、複製起点などを含有する。細菌用発現ベクターのプロモーターとしては、常用のプロモーター、例えば、trcプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーターなどが使用され、酵母用プロモーターとしては、例えば、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、PH05プロモーターなどが使用され、そして糸状菌用プロモーターとしては、例えば、アミラーゼプロモーター、trpCプロモーターなどが使用される。また、動物細胞宿主用のプロモーターとしては、ウイルス性プロモーター、例えば、SV40アーリープロモーター、SV40レートプロモーターなどが使用される。
植物細胞内でポリヌクレオチドを構成的に発現させるプロモーターの例としては、カリフラワーモザイクウィルスの35S RNAプロモーター、rd29A遺伝子プロモーター、rbcSプロモーター、mac−1プロモーター等が挙げられる。また、組織特異的な遺伝子発現のためには、その組織で特異的に発現する遺伝子のプロモーターを用いることができる。
発現ベクターの作製は、制限酵素、リガーゼなどを用いて常法に従って行うことができる。また、発現ベクターによる宿主の形質転換も常法に従って行うことができる。
前記発現ベクターによって形質転換された非ヒト宿主を培養、栽培又は生育させ、培養物又は培地から常法に従って、例えば、濾過、遠心分離、細胞の破砕、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどにより回収・精製して、目的とするタンパク質を得ることができる。
また、本発明は、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを植物に導入し、これを該植物内で発現させることにより得られる、植物若しくはその子孫又はこれらの部分若しくは組織にも関する。当該部分若しくは組織の形態としては切花であることができる。本発明に係るアントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを使用して、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を付加したり、そのようなアシル化を抑制することができ、その結果として植物における花色を変更することができる。
現在の技術水準の下では、植物にポリヌクレオチドを導入し、そのポリヌクレオチドを構成的又は組織特異的に発現させる技術を利用することができる。植物へのDNAの導入は、当業者に公知の方法、例えば、アグロバクテリウム法、バイナリーベクター法、エレクトロポレーション法、PEG法、パーティクルガン法等によって行なうことができる。
形質転換可能な植物の例としては、バラ、カーネーション、キク、キンギョソウ、シクラメン、ラン、トルコキキョウ、フリージア、ガーベラ、グラジオラス、カスミソウ、カランコエ、ユリ、ペラルゴニウム、ゼラニウム、ペチュニア、トレニア、チューリプ、アンセリウム、コチョウラン、イネ、オオムギ、コムギ、ナタネ、ポテト、トマト、ポプラ、バナナ、ユーカリ、サツマイモ、ダイズ、アルファルサ、ルービン、トウモロコシ、カリフラワー、ダリアなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明は、上記切花を用いた加工品(切花加工品)にも関する。ここで、切花加工品としては、当該切花を用いた押し花、プリザードフラワー、ドライフラワー、樹脂密封品などを含むが、これに限定されるものではない。
本発明により、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする新規なポリヌクレオチドが提供される。本発明のポリヌクレオチドを適切な非ヒト宿主細胞内で発現させることにより、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質を製造することが可能となる。本発明により、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質を、植物内で、構成的又は組織特異的に発現させることで、花色の改変に利用することができる。本発明によって改変された花色は、典型的には、青系花色である(好ましくは、Violet-Blueグループ/Blueグループ、及び/又は色相角:230°〜290°)。
[実施例1:GEAT遺伝子及びEGAT遺伝子の作製と評価]
(1)GEAT遺伝子の作成
トルコギキョウ5AT(E5AT)cDNA(配列番号3)を含むプラスミドpSFL667をXbaI−XhoIで消化し、E5ATのC末端側を含むDNA断片を得た。このDNA断片を、リンドウ5,3′−AT(G5,3′AT)cDNA(配列番号1)を含むプラスミドpSPB5520をXbaI−XhoIで消化して得られるDNA断片と連結しpSPB5955を得た。これをEcoRI−SalIで消化し、プラスミドpET32c(Novagen社)のEcoRI−XhoI部位に導入し、pSPB5961を得た。このプラスミドには、N末端側がG5,3′AT(配列番号2)由来の配列、及びC末端側がE5AT(配列番号4)由来の配列を有する融合タンパク質(配列番号6)をコードする遺伝子(配列番号5)が含まれる。このタンパク質をGEATとする。
(2)EGAT遺伝子の作成
G5,3′ATcDNA(配列番号1)を含むプラスミドpSPB5520をXbaI−XhoIで消化し、G5,3′ATのC末端側を含むDNA断片を得た。このDNA断片と、pSFL667をEcoRI−XbaIで消化して得られるDNA断片と、pBluescriptSK−をEcoRI−XhoIで消化したDNA断片とを連結し、pSPB5957を得た。これをEcoRIで消化し、プラスミドpET32cのEcoRI部位に導入し、pSPB5964を得た。このプラスミドには、N末端側がE5AT、C末端側がG5,3′AT由来の配列を持つタンパク質(配列番号8)をコードする遺伝子(配列番号7)が含まれる。このタンパク質をEGATとする。
(3)GEATとEGATの酵素活性の測定
上記で作製した発現ベクターを用いて、大腸菌でATタンパク質を発現させた。発現のプロトコールは、製造者の提供するプロトコールに依った。具体的には以下のように行った。
発現プラスミドを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、得られたコロニー1個を3mlのアンピシリンを含むL培地で37℃一晩培養した。このうち0.1mlを、10mlのアンピシリンを含むL培地で37℃3時間培養した。最終濃度1mMのIPTGを添加した後、27℃で一晩培養した。8000回転10分間の遠心分離で集菌し、1mlの懸濁液(2−メルカプトエタノール、APMSFを含む)中で超音波破砕を行った。これを15000回転10分4℃の遠心分離に供した。上清をさらに55000回転30分4℃で遠心分離し、上清をAT反応のための粗酵素液とした。
酵素反応液は、50μlの粗酵素液、10μlのデルフィニジン3,5,3′−トリグルコシド溶液(1mg/l)、10μlのカフェオイルCoA溶液(1mg/l)、10μlの1M リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、20μlの水を含む。30℃で30分反応後、90μlの0.1%TFAを含むアセトニトリルと10μlのTFAを加え、酵素反応を停止した。15000回転で10分間遠心分離後、上清をMillex−LH(ポアサイズ0.45μm)で濾過した。この濾過液に含まれるアントシアニンを特許文献1に記載の方法で分析した。
図1に示されるとおり、GEATを用いた場合には、基質の他には、デルフィニジン3−グルコシド5−(カフェオイル)グルコシド3′−グルコシド(保持時間13.459分)のみが生じたのに対し、EGATを用いた場合には、当該化合物のピーク(保持時間13.431分)の他にデルフィニジン3−グルコシド5−カフェオイルグルコシド3′−カフェオイルグルコシドのピークが観察された(保持時間15.141分)。すなわち、GEATは5AT活性のみを有するのに対し、EGATは5,3′AT活性を有することが判明した。
[実施例2:E′AT遺伝子及びE′GAT遺伝子の作製と評価]
(1)G5,3′ATの立体構造解析
バラにおいて機能する5,3′−AT活性を持つタンパク質をデザインするために、G5,3′ATの立体構造を解析した。立体構造の解析は、例えば、非特許文献1、非特許文献2に記載してある方法でおこなった。G5,3′AT(配列番号2)のタンパク質は、昆虫細胞/バキュロウイルス発現系を用いて発現した。またC末側を4残基短くし、基質との安定な複合体を形成させるために、活性中心と考えられる174番目のヒスチジン残基をアラニンへ変異させたタンパク質(G5,3′AT−H174A)は、N末端にSUMOタグを融合し、大腸菌抽出液を用いた無細胞合成系により発現した。いずれのタンパク質もN末端にHisタグを付けたものとした。精製はHisタグを利用したアフィニティー精製(Niキレートカラム使用)後、それぞれTEVプロテアーゼまたはSUMOプロテアーゼでHisタグ/SUMOタグを切断した。その後、陰イオン交換カラムで精製し、さらにゲルろ過を行った。結晶化はスクリーニングキットを用いて条件を探索したところ、0.1M Hepes pH7.5,1.1〜1.4M クエン酸ナトリウムの条件において結晶が得られた。その後、Dm3MaT3(Protein Data Bank ID: 2E1V)をモデル分子として分子置換法で構造を決定した(全長タンパク質)。
変異タンパク質G5,3′−H174Aについてはさらにデルフィニジングルコシドとカフェオイル−CoAをソーキングすることで複合体として構造解析を試みたところ、カフェオイル−CoAの電子密度の確認ができた。ホモロジーモデリングと配列比較の結果を用いてトE5AT(配列番号4)の構造を予測し、G5,3′ATの立体構造と比較した。
先の変異タンパク質と基質との複合体構造解析の結果から5ATの基質認識ポケットは推定できる。そこで、この基質認識ポケット周辺でG5,3′ATとE5ATの構造を比較し両者の間で異なるアミノ酸を探索した。
リンドウ5,3′−AT(G5,3′AT)(配列番号2)とE5AT(配列番号4)の立体構造に基づき、アントシアニンの認識に関与すると考えられた、N41/Y41、M235/L234、K242/G241、R245/Q244、N389/K389、P392/L392、F396/L396、T400/S400及びE429/G429の9個のアミノ酸残基(前段がG5,3′ATのアミノ酸残基、後段がE5ATのアミノ酸残基を意味する)に注目し、E5ATの上記9個のアミノ酸残基をリンドウ型に改変したタンパク質(配列番号10)をコードする遺伝子(配列番号9)、ならびに、EGATのリンドウ部分にN41/Y41及びM235/L234の2個の変異を導入したタンパク質(配列番号12)をコードする遺伝子(E′GAT)(配列番号11)を作製した。具体的には以下のように行った。
(2)E′AT遺伝子の作製
オペロン社(現ユーロフィン社)に委託し、E5AT′−N(5′端からXbaIまでのトルコギキョウDNA配列で、Y41N、L234Mの変異を入れたもの)とE5AT′−C(XbaIから3′端までで、トルコギキョウDNA配列にG241K、Q244R、K389N、L392P、L396F、S400T、G429Eの変異を入れたもの)の2種類の合成DNAを作成した。
上記E5AT′−Nを含むベクターpEXAをpSPB6118とし、E5AT′−Cを含むベクターpEXAをpSPB6119とした。pSPB6118をEcoRI−XbaIで消化して得られる断片と、pSPB6119を消化してXbaI−XhoIで消化して得られる断片と、EcoRI−XhoIで消化したpBluescriptSKII−とを連結してpSPB6120を得た。これをEcoRI−XhoIで消化することで、発現ベクターPSPB6122に移し、pSPB6122を得た。このプラスミドには、9個のアミノ酸残基が改変されたトルコギキョウのAT(E′AT:配列番号10)をコードする配列(配列番号9)が含まれる。
(3)E′GAT遺伝子の作製
上記pSPB6118をEcoRI−XbaIで消化して得られる断片と、上記pSPB5520をXbaI−HindIIIで消化して得られる断片と、EcoRI−HindIIIIで消化したpBluescriptSKII−とを連結してpSPB6121を得た。これをEcoRIで消化することで、発現ベクターPSPB6122に移し、pSPB6123を得た。このプラスミドには、2個のアミノ酸残基が改変されたトルコギキョウのAT配列をN末端側に、リンドウのAT配列をC末端側に持つ合成AT(E′GAT:配列番号12)をコードする配列(配列番号11)が含まれる。
(4)E′ATとE′GATの酵素活性の測定
実施例1に記載の方法にしたがい、E′ATとE′GATを大腸菌で発現させ、活性を測定した。図2に示されるとおり、E′ATを基質と反応させた場合、デルフィニジン3−グルコシド5−カフェオイルグルコシド3′−カフェオイルグルコシド(保持時間15.580分)に相当するピークが観察された。また、E′GATを基質と反応させた場合も当該化合物のピークが観察された(保持時間15.588分)。
これらの結果から、人工的なアミノ酸配列を有するEGAT、E′AT及びE′GATの3種類のタンパク質が5,3′−AT活性を有することが確認された。
これらの3種類の酵素活性を比較したところ、E′GAT>E′AT>EGATであることがわかった。
[実施例3:バラへの遺伝子導入と組換えバラにおける導入遺伝子の発現解析]
バラにG5,3′ATおよびその変異遺伝子を導入するために、これらを含むバイナリーベクターを構築した。構築は、公知の方法(特許文献3)に記載の方法で、バイナリーベクターpBinPlus上に導入する遺伝子の発現カセットを挿入した。バイナリーベクターpSPB5523は、pBinPlus上のネオマイシンリン酸基転移酵素遺伝子に近い方から、パンジー由来フラボノイド3′,5′−水酸化酵素(F3′5′H)cDNA(特許文献3)、リンドウのアントシアニン3′−糖転移酵素(特許文献5)のホモログであるヤクシマリンドウ(Gentiana yakushimense)のアントシアニン3′−糖転移酵素(Gy3′GT、あるいは3′GT)cDNA(配列番号13)、G5,3′ATcDNAを含む。これら3つの遺伝子は、エンハンサーが付加されたカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーター(E35SPro.)(特許文献3)とアラビドプシス由来の熱ショックタンパク質ターミネーター(HSPter,タカラバイオ株式会社から販売されている植物発現ベクターpRI201−AN由来)により制御されている。同様に、pSBP6107、pSPB6133、pSBP6134を構築した。これらは、G5,3′ATの代わりに、それぞれEGAT、E′AT、E′GATcDNAが含まれている(図3)。
これらのバイナリーベクターを特許文献3に記載の方法で、クールウォーター(CW)、オーシャンソング(OS)、ノブレス(NOB)、リタパヒューメラ(LP)のバラ4品種に導入した。
[実施例4:組換えバラでのRT−PCR解析]
カナマイシンを含む選択培地でシュートを形成し、発根が見られた個体を馴化して得られた組換えバラの葉を用いて、G5,3′AT、EGAT、E′AT、E′GAT遺伝子の発現解析を行った。全RNAは、Plant RNAeasy Kit(QIAGEN社)を用い、製造者に推奨されているプロトコールに従い単離し、cDNAは、SuperScriptII逆転写酵素(Invitrogen社)を用いて、全RNAを鋳型にして、製造者に推奨されているプロトコールに従って合成した。逆転写PCR反応は、cDNAを鋳型として、(タカラバイオ社)を用いて、製造者に推奨されているプロトコールに従い、反応体積30μlで行った(94℃で2分間保持し、94℃で1分、55℃で1分、72℃で2分間保持のサイクルを30サイクル繰り返した後、4℃で保持した)。G5,3′ATの完全長cDNAが特異的に増幅するようなプライマー(フォワードプライマー:ATGGAGCAAATCCAAATGGTG、リバースプライマー:CTATGACAAAGAGCAAAAGCC)、EGATの完全長cDNAが特異的に増幅するプライマー(フォワードプライマー:ATGGATCCAATTCAAAAGGTG、リバースプライマー:CTATGACAAAGAGCAAAAGCC)、E′ATの完全長cDNAが特異的に増幅するプライマー(フォワードプライマー:ATGGATCCAATTCAAAAGGTG、リバースプライマー:CTATAAGCCCTCTTCAAAAATTC)、E′GATの完全長cDNAが特異的に増幅するプライマー(フォワードプライマー:ATGGATCCAATTCAAAAGGTG、リバースプライマー:CTATGACAAAGAGCAAAAGCC)を設計して利用した。反応産物をアガロースゲル電気泳動で解析したところ、それぞれの完全長cDNAに相当する大きさのバンドが検出されたことから、バラにおいてG5,3′AT遺伝子(1,410bp)、EGAT遺伝子(1,407bp)、E′AT遺伝子(1,398bp)、E′GAT遺伝子(1,407bp)が転写されていることが確認された(図4)。さらにG5,3′AT遺伝子が転写されていることを確認したCW11個体、EGAT遺伝子が転写されていることを確認したCW7個体、E′AT遺伝子が転写されていることを確認したCW19個体、E′GAT遺伝子が転写されていることを確認したCW16個体の発現解析結果から、G5,3′AT遺伝子よりも人工的なアミノ酸配列を有するEGAT、E′AT、E′GAT遺伝子のバラにおける転写産物量が多いことを確認した(図4)。また、CW以外の品種OS、NOB、LPに導入したEGAT、E′AT、E′GAT遺伝子が、バラで十分な酵素活性を示すGy3′GT遺伝子と同等の転写物量を合成していることを確認した(図5)。
以上から、本発明によってバラの植物体で転写物が安定に高発現するアントシアニン5,3′−AT活性を示す配列を得られることがわかる。

Claims (14)

  1. 以下の(a)〜(e):
    (a)配列番号7、9又は11のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (b)配列番号7、9又は11のいずれかの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (c)配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (d)配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び
    (e)配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    からなる群から選ばれるポリヌクレオチド。
  2. 配列番号7、9又は11のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  3. 配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  4. 配列番号8、10又は12のいずれかのアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドによりコードされたタンパク質。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
  7. 請求項6に記載のベクターが導入された非ヒト宿主。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを用いてアントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する方法。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド又は請求項5に記載のタンパク質を含む植物若しくはその子孫又はそれらの部分若しくは組織。
  10. 前記植物がバラである、請求項9に記載の植物若しくはその子孫又はそれらの部分若しくは組織。
  11. 切花である、請求項9又は10に記載の植物の部分。
  12. 請求項11に記載の切花の加工品。
  13. 以下の工程:
    請求項7に記載の非ヒト宿主を培養し又は生育させる工程、及び
    該非ヒト宿主からアントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質を採取する工程、
    を含む、アントシアニンの5及び3′位の糖に芳香族アシル基を転移する活性を有するタンパク質の製造方法。
  14. 改変された花色を有する植物を製造するための方法であって、
    宿主植物に請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、又は請求項6に記載のベクターを導入する工程を含む、方法。
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