以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
[燃料電池システムの構成]
図1は、本実施形態の燃料電池システム100の主要構成を示すブロック図である。本実施形態の燃料電池システム100は、燃料電池スタック1に燃料ガス(アノードガス)を供給する燃料ガス供給系2(給排機構)と、燃料電池スタック1に酸化剤ガス(アノードガス、空気)を酸化剤ガス供給系3(給排機構)と、燃料電池スタック1から排出された燃料オフガス(アノードオフガス)及び酸化剤オフガス(カソードオフガス)を排気するシステム排気系(給排機構)と、燃料電池スタック1から電力を取り出して動力を得るシステム駆動系5から構成される。
燃料ガス供給系2は、燃料タンク20に接続され、フィルタ21、ポンプ22、蒸発器24、熱交換器25、改質器26等からなりこれらを直列に接続する経路23(経路23A)が燃料電池スタック1に接続されている。燃料ガス供給系2のうち、蒸発器24、熱交換器25、改質器26は、燃料改質系を構成する。
酸化剤ガス供給系3は、上流にフィルタ30を備えたコンプレッサ31(酸化剤ガス供給部)に接続され、熱交換器33、起動燃焼器34、触媒燃焼器35等からなり、これらを直列に接続する経路32(経路32A)が燃料電池スタック1に接続されている。酸化剤ガス供給系3のうち、起動燃焼器34、触媒燃焼器35は、起動燃焼系を構成する。
システム排気系は、排気燃焼器4等からなる。システム駆動系5は、DC/DCコンバータ50、バッテリ51、駆動モータ52等からなる。また、燃料電池システム100は、システム全体の動作を制御するコントローラ8を備えている。
上記構成要素のうち、燃料電池スタック1、給排機構(蒸発器24、熱交換器25、改質器26、熱交換器33、起動燃焼器34、触媒燃焼器35、排気燃焼器4)は、断熱ケース7に収容され、外部への熱の放出を低減して、燃料電池スタック1の発電制御時におけるそれぞれの温度低下を抑制している。
燃料電池スタック1は、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)であり、セラミック等の固体酸化物で形成された電解質層を、アノード電極(燃料極)と、カソード電極(空気極)により挟み込んで得られるセルを積層したものである。そして、アノード電極には、液体燃料を改質器26により改質した燃料ガスが供給され、カソード電極には酸化剤ガスが供給される。
ここで、アノードとは、燃料電池スタック1を構成するアノード電極のみならず、アノード電極に燃料ガスを供給する燃料電池スタック1内の通路、及びアノード電極で反応後の燃料オフガスを排出させる燃料電池スタック1内の通路も含むものとする。同様に、カソードとは、燃料電池スタック1を構成するカソード電極のみならず、カソード電極に酸化剤ガスを供給する燃料電池スタック1内の通路、及びカソード電極で反応後の酸化剤オフガスを排出させる燃料電池スタック1内の通路も含むものとする。
燃料電池スタック1では、燃料ガス中に含まれる水素と酸化剤ガス中の酸素とを反応させて発電を行うとともに、反応後に生成される燃料オフガスと酸化剤オフガスを排出する。また、燃料電池スタック1には、燃料電池スタック1内の温度を測定する温度センサ10が取り付けられている。
燃料電池スタック1(マニホールド)には、燃料電池スタック1のアノードに燃料ガスを供給する経路23A、燃料電池スタック1の起動制御時に燃焼ガスを燃料電池スタック1のカソードに供給し発電制御時に酸化剤ガスを燃料電池スタック1のカソードに供給する経路32A、燃料電池スタック1のアノードから排出された燃料オフガスを排気燃焼器4に導入する排気経路27、燃料電池スタック1のカソードから排出された酸化剤オフガスを排気燃焼器4に導入する排気経路36が接続されている。
燃料タンク20は、例えばエタノールと水を混合させた液体燃料を蓄えるものであり、ポンプ22は、液体燃料を吸引して所定の圧力で燃料供給系に液体燃料を供給するものである。フィルタ21は、燃料タンク20とポンプ22の間に配置され、ポンプ22に吸引される液体燃料内のごみを除去するものである。
燃料タンク20から液体燃料を供給する経路23は、蒸発器24に液体燃料(改質用燃料)を供給する経路23A、起動燃焼器34に液体燃料(燃焼用燃料)を供給する経路23B、触媒燃焼器35に液体燃料(燃焼用燃料)を供給する経路23C、排気燃焼器4に液体燃料(燃焼用燃料)を供給する経路23Dに分岐する。経路26Aの蒸発器24よりも液体燃料の上流側となる位置には、経路26Aの流路を開放・閉止可能な開閉弁61Aが取り付けられ、その後段に液体燃料を蒸発器24に噴射する燃料噴射弁60A(燃料噴射弁60)が取り付けられている。
同様に、経路23Bには、開閉弁61Bが取り付けられ、その後段には起動燃焼器34に液体燃料を噴射する燃料噴射弁60B(燃料噴射弁60)が取り付けられている。経路23Cには、開閉弁61Cが取り付けられ、その後段には触媒燃焼器35に液体燃料を噴射する燃料噴射弁60C(燃料噴射弁60)が取り付けられている。経路23Dには、開閉弁61Dが取り付けられ、その後段には排気燃焼器4に液体燃料を噴射する燃料噴射弁60D(燃料噴射弁60)が取り付けられている。
開閉弁61Bは、燃料電池システム100の起動制御時に経路23Bを開放して液体燃料を流通させ、起動制御終了後に経路26Bを閉止する。同様に、開閉弁61Cは、燃料電池システム100の起動制御時に経路23Cを開放して液体燃料を流通させ、起動制御終了後に経路26Cを閉止する。また、開閉弁61Aは、起動制御時は経路23Aを閉止しているが、起動制御終了後に経路23Aを開放して液体燃料を流通させる。開閉弁61Dは、燃料電池システム100の起動制御時に経路23Dを所定の開度で開放して液体燃料を流通させるが、排気燃焼器4が触媒燃焼可能な所定温度に到達すると経路23Dを閉止する。
蒸発器24は、排気燃焼器4から排気される排気ガスの熱を利用して液体燃料を気化させるものである。熱交換器25は、排気燃焼器4から熱が供給され、気化した液体燃料を改質器26において改質するためにさらに加熱するものである。
改質器26は、触媒反応により液体燃料(改質用燃料)を、水素を包含する燃料ガスに改質して燃料電池スタック1のアノードに供給するものである。
コンプレッサ31は、フィルタ30を通じて外気を取り入れて空気を燃料電池スタック1に供給するものである。コンプレッサ31が排出された空気を供給する経路32には、リリーフバルブ64が取り付けられ、経路32内の圧力が所定値を超えると経路32を開放し、コンプレッサ31に対する所定以上の負荷を回避している。また、経路32は、空気(酸化剤ガス)を熱交換器33に供給する経路32A、空気を起動燃焼器34に供給する経路32B、空気を熱交換器25(改質器26)に供給する経路32C、空気を排気燃焼器4に供給する経路32Dに分岐する。
経路32Aには、スロットル62Aが取り付けられ、経路32Bには、スロットル62Bが取り付けられ、経路32Cには、スロットル62Cが取り付けられ、経路32Dには、スロットル62Dが取り付けられ、それぞれコントローラ8の制御により空気(酸化剤ガス)の流量が調整できるようになっている。さらに各経路の各スロットルよりも空気の下流となる位置には、火炎をせき止める逆火防止装置63が取り付けられている。
スロットル62Aは、燃料電池スタック1の起動制御時及び発電制御時に経路32Aを開放して所定量の空気を流通させる。スロットル62Bは、燃料電池スタック1の起動制御時に経路32Bを開放して所定量の空気を流通させるが、起動制御終了後は経路32Bを閉止する。スロットル62Cは、燃料電池スタック1の起動制御時は開放せず、燃料電池スタック1の発電制御時に、必要に応じて経路32Cを開放して所定量の空気(改質調整用の酸素)を流通させる。スロットル62Dは、燃料電池スタック1の起動制御時に経路32Dを開放して所定量の空気を流通させるが、排気燃焼器4が触媒燃焼可能な温度に到達したときに経路32Dを閉止する。
熱交換器33は、排気燃焼器4から排出された排気ガスの熱を利用して、燃焼ガス用の空気または酸化剤ガス用の空気を加熱するものである。
起動燃焼器34は、燃料電池システム100の起動制御時において、熱交換器33により加熱された空気と、燃料噴射弁60Bから供給された液体燃料と、が供給され両者を混合する。そして、起動燃焼器34に付属する着火装置により空気と液体燃料の混合物に着火させて高温の燃焼ガスを生成する。また起動燃焼器34には、経路32Bから空気が導入され、燃焼ガスと空気との混合ガスを触媒燃焼器35に供給する。
触媒燃焼器35は、燃料電池システム100の起動制御時において、起動燃焼器34から供給された前記混合ガスと燃料噴射弁60Cから供給された液体燃料とを混合し触媒反応を利用して大量の燃焼ガスを生成して燃料電池スタック1に供給するものである。
なお、起動制御終了後は、燃焼ガスの生成は終了し、熱交換器33、起動燃焼器34、触媒燃焼器35を通過した空気が酸化剤ガスとして引き続き用いられ燃料電池スタック1に供給されて発電制御に移行する。
排気燃焼器4は、発電制御時において、排気経路27から供給された燃料オフガスと排気経路36から供給された酸化剤オフガスを混合してその混合ガスを触媒燃焼させ、二酸化炭素や水を主成分とする排気ガスを生成するとともに、触媒燃焼による熱を熱交換器25等に伝達するものである。また、排気燃焼器4は、起動制御時において燃料噴射弁60Dから供給された液体燃料と、経路32Dから供給された空気とを混合し、これを付属の着火装置を用いて燃焼し、前述同様の排気ガスを生成する。さらに、排気燃焼器4は、燃焼後の排気ガスを排気する排出経路41に接続され、排出経路41が蒸発器24、熱交換器33を通過し、マフラー(不図示)に接続している。よって、蒸発器24、熱交換器33は排気ガスにより加熱される。なお、排気燃焼器4には、排気燃焼器4の温度を測定する温度センサ40が取り付けられている。
DC/DCコンバータ50は、燃料電池スタック1に接続され、燃料電池スタック1の出力電圧を昇圧してバッテリ51または駆動モータ52に電力を供給するものである。バッテリ51は、DC/DCコンバータ50から供給された電力を充電するとともに、駆動モータ52に電力を供給するものである。駆動モータ52は、インバータ(不図示)を介してバッテリ51及びDC/DCコンバータ50に接続され、車両の動力源となっている。また、車両のブレーキ時において、駆動モータ52は回生電力を発生させるが、これをバッテリ51に充電させることができる。
バッテリ51及び駆動モータ52は、DC/DCコンバータ50を介して、燃料電池スタック1に接続された負荷となる。一方、ポンプ22やコンプレッサ31等の燃料電池スタック1を発電させるための補機も負荷として燃料電池スタック1に接続し燃料電池スタック1からの電力供給により駆動することができるが、バッテリ51からの電力供給により駆動することもできる。
コントローラ8は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路と周辺機器から構成され、特定のプログラムを実行することにより燃料電池システム100を制御するための処理を実行する。また、コントローラ8は、燃料電池システム100を構成する構成要素の駆動・停止制御(ON・OFF制御)を行うことができる。後述のようにコントローラ8が行う燃料電池システム100の制御としては、燃料電池スタック1が発電できるように加熱する起動制御、通常の発電を行う発電制御、システムを停止させる停止制御がある。なお、燃料電池スタック1の停止制御においては、アノード(アノード電極)の劣化を抑制するため、燃料電池スタック1の開放電圧程度の電圧を保護電圧として印加する必要がある。このため、当該保護電圧を印加する保護回路(不図示)を燃料電池スタック1に接続しておき、燃料電池スタック1の停止制御中にコントローラ8が保護回路(不図示)を駆動させる。
さらに、コントローラ8は、ポンプ22が駆動している間に、燃料タンク20から供給される改質用燃料が適正なものか不適正なものかを判断する燃料状態検出部83(図6)を備えている。また、コントローラ8は、負荷(DC/DCコンバータ50)の要求に応じて、燃料噴射弁60の開弁動作時間及び閉弁動作時間を制御することで液体燃料の噴射量を制御する噴射制御部81(図6)を備えている。
図2、図3は、燃料噴射弁60(非噴射時、噴射時)の断面図である。図2、図3に示すように、燃料噴射弁60は、先端に燃料噴射孔601を備えた円筒状のノズルボディ602と、このノズルボディ602の基端側に接続されたヨーク603と、ノズルボディ602の内部に移動可能に挿通されたプランジャロッド604(可動部)と、プランジャロッド604の基端側に位置してヨーク603内に固着された円筒状のコア605と、を備える。コア605の外周側には、コイルボビン609に保持された状態でソレノイド610が巻装されている。また、コア605の内周側にはスプリング612(可動部)が配設されており、このスプリング612がプランジャロッド604の基端のアンカに当接してプランジャロッド604をノズルボディ602の先端側へと付勢している。このスプリング612による付勢力は、スプリングアジャスタ613によって調整されている。
ノズルボディ602とヨーク603の外周を覆うようにペルチエ素子等で形成された温度調整部606が取り付けられている。温度調整部606は、燃料導入口611から導入された液体燃料を冷却するものである。燃料噴射弁60には、温度センサ614(温度検出手段)が取り付けられている。また、図示は省略するが、燃料噴射弁60には、ソレノイド610を流れる電流を測定する電流センサとソレノイド610に印加された電圧を測定する電圧センサが取り付けられている。
燃料噴射弁60に圧送された液体燃料は、コア605内部の空間やこれに連通するノズルボディ602内部の空間を経由して、ノズルボディ602先端の燃料噴射孔601へと導かれる。つまり、燃料噴射弁60内は、コア605内部やノズルボディ602内部の空間が加圧された液体燃料が流れる燃料流路となっている。この燃料噴射弁60の燃料流路は、前述の経路23A、経路23B、経路23C,経路23Dのいずれかに連通している。
燃料噴射弁60は、非噴射時において、プランジャロッド604がスプリング612によりノズルボディ602の先端側に付勢され、図2に示すように、プランジャロッド604の先端部がノズルボディ602の先端内周面に当接することで、ノズルボディ602の先端に設けられた燃料噴射孔601を閉塞している。よって、燃料噴射弁60内の液体燃料は、プランジャロッド604とノズルボディ602に接触部分で遮断され、燃料噴射孔601から外部に液体燃料が噴射されることはない。
ここで、ソレノイド610に駆動電圧(駆動電流)を印加すると、電磁力の作用によりプランジャロッド604がスプリング612の付勢力に抗してコア605側へと移動し、フランジ607がストッパ608に当接するまでプランジャロッド604が引き上げられる。これにより、図3に示すように、プランジャロッド604の先端部がノズルボディ602の先端内周面から離間して燃料噴射孔601が開放された状態となり、燃料流路内の加圧された液体燃料が燃料噴射孔601を通って燃料噴射弁60の外部に噴射される。
ソレノイド610への通電を停止する、または、ソレノイド610に前述の駆動電圧とは極性が反対の駆動電圧を印加すると、プランジャロッド604はスプリング612の付勢力、またはソレノイド610の逆方向の電磁力によりノズルボディ602の先端側へ押し戻される。そして、プランジャロッド604の先端部がノズルボディ602の先端内周面に当接して燃料噴射孔601を閉塞することで、燃料の噴射が停止する。
図4は、燃料噴射弁60のプランジャロッド604の変位と、燃料噴射弁60のソレノイド610に印加される電流及び電圧の時間変化を示す図である。本実施形態では、燃料噴射弁60が周期(T)により開弁状態と閉弁状態を繰り返している。なお、噴射量は、燃料噴射弁60が開弁状態を維持する時間に比例して増加する。
噴射制御部81(図6)は、燃料噴射弁60に対して開弁動作指令信号となる駆動電圧(+)を印加し、閉弁動作指令信号となる駆動電圧(−)を印加している。駆動電圧(+)及び駆動電圧(−)は、それぞれ周期(T)で印加されるが印加継続時間はΔTとなっている。駆動電圧(+)が印加される時刻(T0)において、ソレノイド610に印加される電圧(駆動電圧)は、駆動電圧(+)とほぼ同じである。駆動電圧(−)が印加される時刻(T1+Td)において、ソレノイド610に印加される電圧(駆動電圧)は、駆動電圧(−)とほぼ同じである。駆動電圧(+)印加後から駆動電圧(−)を印加するまでの間(時間Td)は、駆動電圧(+)よりも電圧の低い維持電圧(+)を出力してプランジャロッド604が燃料噴射孔601を開放した状態を維持している。よって、この間もソレノイド610に印加される電圧は維持電圧(+)とほぼ同じとなる。そして、駆動電圧(−)を印加したのちは外部から印加される電圧はなくなるが、ソレノイド610における誘導起電力が残留し、次第にゼロに収束する。
プランジャロッド604(可動部)は、ソレノイド610に駆動電圧(+)が印加されるとプランジャロッド604の先端部が燃料噴射孔601から離間してコア605側に変位し、駆動電圧(+)が印加されてから時間(T1)後にフランジ607がストッパ608に当接し、その後時間(Td)の間、ソレノイド610に維持電圧(+)が印加され、フランジ607がストッパ608に当接した状態を維持する。そして、ソレノイド610に駆動電圧(−)が印加されると、フランジ607がストッパ608から離間し、プランジャロッド604がコア605から離間する方向に変位し、時間T2後にプランジャロッド604の先端部がノズルボディ602の先端内周面に当接する。そして、ソレノイド610に次の駆動電圧(+)が印加されるまでプランジャロッド604の先端部は燃料噴射孔601を閉塞する。
ソレノイド610に駆動電圧(+)、維持電圧(+)を印加することにより、ソレノイド610には電流(駆動電流)が流れる。このとき、時刻T1において、フランジ607がストッパ608に当接すると同時にソレノイド610に流れる電流に変曲点が表れることを本願発明者は見出している。ここで、ソレノイド610を中心として、コア605、ヨーク603、プランジャロッド604よる磁気回路が形成されている。そして、プランジャロッド604のフランジ607がストッパ608に当接することにより、磁気回路を構成する磁束成分と抵抗成分が不連続に変化する、若しくは急激に変化することで前記念曲点が表れると考えられる。よって、ソレノイド610を流れる電流の変曲点を検出することにより、燃料噴射弁60の開弁動作が終了した時刻(T1)を検出することができる。この変曲点は電流を時間方向で2回微分することにより極値として容易に抽出することができる。したがって、開弁動作時間(T1)は当該変曲点が表れた時刻(T1)と駆動電圧(+)を出力した時刻(T0)との差分により容易に算出することができる。
また、時刻(T1+Td)において、ソレノイド610に駆動電圧(−)を印加し、時刻(T1+Td+T2)において、プランジャロッド604の先端部がノズルボディ602の先端内周面に当接すると同時に、ソレノイド610に印加される電圧に変曲点が現れることを本願発明者は見出した。これは、前述同様に磁気回路の磁束成分と抵抗成分が不連続に変化する、若しくは急激に変化することにより表れるものと考えられる。よって、このソレノイド610に印加される電圧の変曲点を検出することにより、燃料噴射弁60の閉弁動作が終了した時刻(T2)を検出することができる。ここで、変曲点は、電圧を時間方向で2回微分することにより極値として容易に抽出することができる。したがって、閉弁動作時間(T2)は当該変曲点が表れた時刻(T1+Td+T2)と駆動電圧(−)を出力した時刻(T1+Td)との差分により容易に算出することができる。
また、上記変曲点の特定が困難なときは、開弁動作時間及び閉弁動作時間を次のように算出することができる。ソレノイド610に駆動電圧(+)が印加されたときにソレノイド610に流れる電流値(最大値)は、毎周期ごとほぼ一定となる。そして、図4に示すように、電流値(最大値)を通る一点鎖線の直線が横軸と交差する時間方向の位置は、電流の変曲点が現れる時刻(T1)とほぼ一致する。よって、一点鎖線の直線と横軸が交差する時刻(T1)と駆動電圧(+)を印加する時刻(T0)との差分を開弁動作時間(T1)とすることができる。ここで、電流の変化量、すなわち一点鎖線の直線の傾きは、電流を一回微分し、所定の時間範囲でその平均値をとることにより得られる。
同様に、ソレノイド610に駆動電圧(−)が印加されたときにソレノイド610に印加される電圧値(負の最大値)は毎周期ごとほぼ一定となる。そして、図4に示すように、電圧値(負の最大値)を通る二点鎖線の直線が横軸と交差する時間方向の位置は、電圧の変曲点が現れる時刻(T1+Td+T2)とほぼ一致する。したがって、二点鎖線の直線と横軸が交差する時刻(T1+Td+T2)と駆動電圧(−)を印加する時刻(T1+Td)との差分を閉弁動作時間(T2)とすることができる。ここで、電圧の変化量、すなわち二点鎖線の直線の傾きは、電圧を一回微分し、所定の時間範囲でその平均値をとることにより得られる。
ところで、開弁動作時間(T1)と閉弁動作時間(T2)は、液体燃料の動粘度によって変化する。動粘度は、液体燃料の種類によって異なり、また温度によっても変化する。したがって、この動粘度の相違を検出することにより、燃料噴射弁60に供給された液体燃料が適正なものか不適正なものかを判断することができる。
図5は、改質用燃料として例えばエタノール45%、水55%からなる燃料、軽油、ガソリンの動粘度と、燃料噴射弁60の開弁動作時間との関係を示す図である。図5は、燃料噴射弁60に供給される液体燃料の動粘度と、当該液体燃料を噴射する際に開弁動作時間との関係を表したものである。図5において、右肩上がりの実線の曲線は、動粘度と開弁動作時間との関係を表す標準値であり、当該実線の曲線を挟み込む破線の曲線は、燃料噴射弁60において発生する開弁動作時間のばらつきの上限と下限を表している。
いずれの種類の液体燃料であっても温度を上昇させることにより動粘度は減少する傾向にあるが、動粘度の絶対値が異なっている。
温度が20℃の場合において、改質用燃料の動粘度は、3.1[mm2/s]であるが、軽油は2.8[mm2/s]、ガソリンは0.6[mm2/s]となっている。そして、20℃における改質用燃料の動粘度の測定誤差範囲は帯201により表現できる。しかし、この帯201をその長手方向に延長しても、20℃における軽油の動粘度の測定誤差範囲、及び20℃におけるガソリンの動粘度の測定誤差範囲のいずれにも重ならないことがわかる。
温度が30℃の場合において、改質用燃料の動粘度は、2.6[mm2/s]であるが、軽油は2.4[mm2/s]、ガソリンは0.5[mm2/s]となっている。そして、30℃における改質用燃料の動粘度の測定誤差範囲は帯202により表現できる。しかし、この帯202をその長手方向に延長しても、30℃における軽油の動粘度の測定誤差範囲、及び30℃におけるガソリンの動粘度の測定誤差範囲のいずれにも重ならないことがわかる。
温度が45℃の場合において、改質用燃料の動粘度は、1.5[mm2/s]であるが、軽油は2.2[mm2/s]、ガソリンは0.5[mm2/s]となっている。そして、45℃における改質用燃料の動粘度の測定誤差範囲は帯203により表現できる。しかし、この帯203のその長手方向に延長しても、45℃における軽油の動粘度の測定誤差範囲、及び45℃におけるガソリンの動粘度の測定誤差範囲のいずれにも重ならないことがわかる。
温度が60℃の場合において、改質用燃料の動粘度は、1.0[mm2/s]であるが、軽油は1.9[mm2/s]、ガソリンは0.5[mm2/s]となっている。そして、60℃における改質用燃料の動粘度の測定誤差範囲は帯204により表現できる。しかし、この帯204をその長手方向に延長しても、60℃における軽油の動粘度の測定誤差範囲、及び60℃におけるガソリンの動粘度の測定誤差範囲のいずれにも重ならないことがわかる。
また、図5に示す動粘度と開弁動作時間の関係は、動粘度と閉弁動作時間との関係にも適用できる。したがって、いずれの温度においても、開弁動作時間、及び/若しくは、閉弁動作時間を可動部の可動特性として測定することにより、液体燃料が適正な改質用燃料であるか、誤燃料であるかを容易に判断することができる。さらに、改質用燃料については、混合比が変わると効率的な改質反応が困難になるが、混合比が変わることで動粘度にも変化が生じることを本願発明者は見出している。
そこで、本実施形態では、適正な燃料として許容される開弁動作時間の開弁上限値の温度特性及び開弁下限値の温度特性、閉弁動作時間の閉弁上限値の温度特性及び閉弁下限値の温度特性と、を予め用意し、測定された開弁動作時間が開弁下限値以上で開弁上限値以下であるが否か、及び/若しくは、測定された閉弁動作時間が閉弁下限値以上で閉弁上限値以下であるか否かにより、燃料噴射弁60に供給された液体燃料が、誤燃料であるか否かも含め適正か否かを判断することができる。
特に、改質用燃料の動粘度と、軽油及びガソリンの動粘度は、液体燃料の温度を低下させるほど差が表れるため、液体燃料を識別しやすい。このため、燃料噴射弁60には温度調整部606(燃料状態検出部83を構成する)が取り付けられ、これにより液体燃料を冷却して燃料の識別を容易にすることができる。
本実施形態において、液体燃料の種類の検出は、燃料電池スタック1の起動制御の際に行うが、起動制御の際は燃料電池スタック1等から伝達される熱により液体燃料の温度が上昇する。また、温度変化に伴う動粘度の変化は液体燃料の種類によっても異なる。よって、燃料噴射弁60の開弁動作時間、閉弁動作時間の温度特性も液体燃料の種類によって異なることになる。
そこで、改質用燃料、ガソリン、軽油等の液体燃料の温度と開弁動作時間(または閉弁動作時間)との関係を示す温度特性の標準情報を予め用意する(後述の記憶部84に記憶する)。そして、起動制御中に所定時間ごとに液体燃料の温度と開弁動作時間(または閉弁動作時間)との関係を示す温度特性を(後述の動作時間算出部82により)算出し、これを(後述の燃料状態検出部83が)標準情報と対比することで液体燃料の種類を検出するようにしてもよい。
燃料噴射弁60に供給される液体燃料が適正か不適正であるかは、燃料電池スタック1の起動制御において行うことが好適である。よって、起動制御時に用いられる燃料噴射弁60B、燃料噴射弁60C、燃料噴射弁60Dを用いて液体燃料の適正・不適正を判断することが好適である。
一方、燃料電池スタック1を発電制御する際は、燃料噴射弁60Aが使用される。発電制御においては、負荷(DC/DCコンバータ50)の要求に応じてコントローラ8(噴射制御部81)が燃料噴射弁60(燃料噴射弁60A)の開弁状態と閉弁状態のDuty比(Td/T、図4標準)を制御している。
しかし、発電制御時は、システム全体で温度勾配が発生しており、さらに燃料電池スタック1の発電状態によって当該温度勾配が変化する。このため、発電制御時に燃料噴射弁60に供給される液体燃料(改質用燃料)の温度を正確に測定することは困難になる場合があり、実際の開弁動作時間及び閉弁動作時間が、コントローラ8が想定している開弁動作時間及び閉弁動作時間と異なる場合がある。また、例えば、燃料噴射弁60のスプリング612の反発力が変化した場合等にも開弁動作時間及び閉弁動作時間が変化する。よって、これらの理由により、負荷の要求に応じた燃料噴射弁60の噴射量に誤差が生じる。
ただし、温度が上昇して液体燃料(改質用燃料)の動粘度が低下すれば、開弁動作時間(T1)及び閉弁動作時間(T2)はともに短くなる傾向があり、逆に動粘度が上昇すれば、開弁動作時間(T1)及び閉弁動作時間(T2)はともに長くなる傾向がある。動粘度が低下することは液体燃料が温度上昇して密度が低下したことを意味し、燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量(燃料電池スタック1への供給量)よりも実質的に少なくなる。逆に、動粘度が低下すると液体燃料が温度低下して密度が上昇したことを意味し、燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも実質的に多くなる。
また、燃料噴射弁60のスプリング612の反発力が減少した場合には開弁動作時間(T1)は短くなって閉弁動作時間(T2)は長くなる傾向があり、逆に反発力が上昇した場合には開弁動作時間(T1)は長くなって閉弁動作時間(T2)は短くなる傾向がある。スプリング612の反発力が減少した場合には、開弁状態を維持する時間が実質的に長くなるので、燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも実質的に多くなる。逆に、スプリング612の反発力が増加した場合には、開弁状態を維持した時間が実質的に短くなるので、燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも実質的に少なくなる。
そこで、本実施形態では、開弁動作時間の理想の値となる開弁標準値の温度特性と、閉弁動作時間の理想の値となる閉弁標準値の温度特性を予め用意する。ここで、開弁標準値は、前述の開弁下限値より大きくかつ開弁上限値よりも小さい値であり、閉弁標準値は、前述の閉弁下限値よりも大きくかつ閉弁上限値よりも小さい値である。そして、測定された開弁動作時間と開弁標準値との大小関係と、測定された閉弁動作時間と閉弁標準値との大小関係に基づいて、誤差の発生原因を特定して、燃料噴射弁60の噴射量が、負荷が要求する噴射量に一致するように制御する。
図6は、本実施形態の燃料電池システム100の燃料噴射制御の制御ブロック図である。本実施形態において、コントローラ8は、噴射制御部81(指令信号出力部、噴射量制御部)と、動作時間算出部82(可動特性検出部)と、燃料状態検出部83と、記憶部84とを備えている。本実施形態では、燃料噴射弁60、動作時間算出部82、燃料状態検出部83、記憶部84により燃料状態検出システムを構築しており、これに噴射制御部81を付加することにより燃料噴射制御システムを構築できる。
記憶部84は、噴射制御部81が噴射量を制御するための情報、及び燃料状態検出部83が液体燃料の適正・不適正を判断するための情報を記憶したものである。記憶部84には、液体燃料(改質用燃料)の開弁動作時間(許容開弁下限値(第1下限値)、適正開弁下限値(第2下限値)、開弁標準値、適正開弁上限値(第2上限値)、許容開弁上限値(第1上限値))及び閉弁動作時間(許容閉弁下限値(第1下限値)、適正閉弁下限値(第2下限値)、閉弁標準値、適正閉弁上限値(第2上限値)、許容閉弁上限値(第1上限値))の温度特性の情報が記憶されている。
ここで、開弁動作時間の大小関係は、許容開弁下限値<適正開弁下限値<開弁標準値<適正開弁上限値<許容開弁上限値となっており、閉弁動作時間の大小関係は、許容閉弁下限値<適正閉弁下限値<閉弁標準値<適正閉弁上限値<許容閉弁上限値となっている。
また、記憶部84には、ガソリンの開弁動作時間(開弁標準値)及び閉弁動作時間(閉弁標準値)の温度特性の情報が記憶され、軽油の開弁動作時間(開弁標準値)及び閉弁動作時間(閉弁標準値)の温度特性の情報が記憶されている。
さらに、記憶部84には、燃料噴射弁60に関する情報として、負荷要求−Duty比特性の情報、Duty比補正値の情報、開弁動作時間誤差(上限値、下限値)の情報、閉弁動作時間誤差(上限値、下限値)の情報が記憶されている。
負荷要求−Duty比特性の情報は、負荷から要求される発電量と、燃料噴射弁60に出力する指令信号のDuty比との関係を示す情報である。Duty比補正値の情報は、測定された開弁動作時間と開弁標準値との差分、及び/若しくは、閉弁動作時間と閉弁動作時間との差分と、指令信号のDuty比の補正量との関係を示す情報である。開弁動作時間誤差(上限値、下限値)、閉弁動作時間誤差(上限値、下限値)は、燃料噴射弁60の開弁動作時間、閉弁動作時間のばらつき誤差の上限値及び下限値をそれぞれ設定したものであり、使用する燃料噴射弁60の固有の特性に基づいて設定される。
噴射制御部81は、負荷(DC/DCコンバータ50)からの要求に対応して燃料噴射弁60に出力する指令信号(駆動信号(+)、維持信号(+)、駆動信号(−))のDuty比(Td/T)を制御するものである。ここで、噴射制御部81は、燃料噴射弁60に開弁動作を指令する開弁動作指令信号(駆動電圧(+))と、燃料噴射弁60に閉弁動作を指令する閉弁動作指令信号(駆動電圧(−))と、を出力する指令信号出力部を備える。また、噴射制御部81は、燃料電池スタック1の運転状態に基づいて開弁動作指令信号と閉弁動作指令信号の出力時期を制御して液体燃料の噴射量を制御する噴射量制御部を備える。しかし、本実施形態では指令信号出力部及び噴射量制御部を噴射制御部81として一体で扱っている。
可動特性検出部(動作時間算出部82)は、燃料噴射弁60の駆動電流の時間変化に表れる液体燃料に起因した特徴(変曲点の位置等)、及び/若しくは、燃料噴射弁60の駆動電圧の時間変化に表れる液体燃料に起因した特徴(変曲点の位置等)に基づいて可動特性を検出する。動作時間算出部82は、燃料噴射弁60の電圧センサ(不図示)と電流センサ(不図示)に接続されている。動作時間算出部82は、ソレノイド610に流れる電流に変曲点が表れる時刻と、駆動電圧(+)が印加された時刻との差分により開弁動作時間を算出する。また、動作時間算出部82は、ソレノイド610に印加される電圧に変曲点が表れる時刻と、駆動電圧(−)が印加された時刻との差分により閉弁動作時間を算出する。そして、当該変曲点の特定が困難な場合は、前述のように電流の変化量(傾き)を算出してこれに基づいて開弁動作時間を算出し、電圧の変化量(傾き)を算出してこれに基づいて閉弁動作時間を算出する。
燃料状態検出部83は、燃料噴射弁60の温度センサ614(燃料状態検出部)に接続されている。そして、燃料状態検出部83は、開弁動作時間の情報、閉弁動作時間の情報、温度センサ614から入力される温度の情報に基づいて燃料噴射弁60に供給された液体燃料が適正であるか否かを判断するものである。
具体的には、測定された開弁動作時間が、適正開弁下限値≦開弁動作時間≦適正開弁上限値の関係を満たせば、燃料噴射弁60に供給された液体燃料は適正燃料であると判断する。同様に、測定された閉弁動作時間が、適正閉弁下限値≦閉弁動作時間≦適正閉弁上限値の関係を満たせば、燃料噴射弁60に供給された液体燃料は適正燃料であると判断する。
また、測定された開弁動作時間が、許容開弁下限値≦開弁動作時間<適正開弁下限値、または、適正開弁上限値<開弁動作時間≦許容開弁上限値の関係を満たせば、燃料噴射弁60に供給された液体燃料は、使用可能な液体燃料であるがドライバーに警告すべき液体燃料であると判断し、警告情報を出力する。
同様に、測定された閉弁動作時間が、許容閉弁下限値≦閉弁動作時間<適正閉弁下限値、または、適正閉弁上限値<閉弁動作時間≦許容閉弁上限値の関係を満たせば、燃料噴射弁60に供給された液体燃料は、使用可能な液体燃料であるがドライバーに警告すべき液体燃料であると判断し、警告情報を出力する。
さらに、測定された開弁動作時間が、開弁動作時間<許容開弁下限値、または、許容開弁上限値<開弁動作時間の関係を満たせば、燃料噴射弁60に供給された液体燃料は不適性燃料であると判断する。同様に、測定された閉弁動作時間が、閉弁動作時間<許容閉弁下限値、または、許容閉弁上限値<閉弁動作時間の関係を満たせば、燃料噴射弁60に供給された液体燃料は不適性燃料であると判断する。
このとき、燃料状態検出部83は、開弁動作時間を他の液体燃料(軽油、ガソリン)の開弁動作時間の標準値と比較し、及び/若しくは、閉弁動作時間を他の液体燃料(軽油、ガソリン)の閉弁動作時間と比較する。そして、算出された開弁動作時間に最も近い標準値を抽出し、当該標準値に対応する液体燃料が誤燃料として燃料タンク20に注入されたと判断する。また、このとき噴射制御部81は、指令信号の出力を停止する。
燃料状態検出部83は、測定された開弁動作時間が、許容開弁上限値≦開弁動作時間≦許容開弁下限値の関係を満たし、及び/若しくは、測定された閉弁動作時間が、許容閉弁上限値≦閉弁動作時間≦許容閉弁下限値の関係を満たすと判断した場合は、開弁動作時間と開弁標準値とを比較し、及び/若しくは、閉弁動作時間と閉弁標準値とを比較する。
そして、燃料状態検出部83(または噴射制御部81)が、開弁動作時間が開弁標準値よりも短くなり、かつ閉弁動作時間が閉弁標準値よりも短くなると判断すると、噴射制御部81は、噴射量を増加させる制御を行う。また、燃料状態検出部83(または噴射制御部81)が、開弁動作時間が開弁標準値よりも長くなり、かつ閉弁動作時間が閉弁標準値よりも長くなると判断すると、噴射制御部81は噴射量を減少させる制御を行う。これらは、燃料状態検出部83(または噴射制御部81)が液体燃料(改質用燃料)の動粘度が変化したと判断しておこなう制御である。
一方、燃料状態検出部83(または噴射制御部81)が、開弁動作時間が開弁標準値よりも長くなり、かつ閉弁動作時間が閉弁標準値よりも短くなると判断すると、噴射制御部81は噴射量を増加させる制御を行う。また、燃料状態検出部83(または噴射制御部81)が、開弁動作時間が開弁標準値よりも短くなり、かつ閉弁動作時間が閉弁標準値よりも長くなると判断する場合は、噴射制御部81は噴射量を減少させる制御を行う。これらは、燃料状態検出部83(または噴射制御部81)が燃料噴射弁60の特性(応答特性)が変化したと判断して行う制御である。
ここで、燃料噴射弁60の噴射量を増加させるには、指令信号のDuty比を増加させることにより行い、逆に減少させるには指令信号Duty比を減少させることにより行う。そして、その増減量は、開弁動作時間と開弁標準値との差分を算出し、これに対応するDuty比補正量をDuty比補正値の情報から抽出すればよい。または、閉弁動作時間と閉弁標準値との差分を算出し、これに対応するDuty比補正量をDuty比補正値の情報から抽出すればよい。このDuty比補正量は燃料状態検出部83または噴射制御部81が抽出することができる。また、Duty比を補正する制御は、燃料電池スタック1の発電制御において行うことが好適である。
燃料状態検出部83は、システムの起動制御の開始時から、開弁動作時間と開弁標準値との間に差が生じている場合、または閉弁動作時間と閉弁標準値との間に差が生じている場合は、燃料噴射弁60の応答特性に変化があったと判断することができる。また、システムの動作途中で開弁動作時間と開弁標準値との間に差が生じた場合、または閉弁動作時間と閉弁標準値との間に差が生じた場合は、液体燃料の動粘度に変化があったと判断することができる。
燃料状態検出部83は、開弁動作時間及び閉弁動作時間の増減の方向が互いに一致する場合は液体燃料の動粘度に変化があったと判断し、互いに異なる場合には燃料噴射弁60の応答特性に変化があったと判断することもできる。
燃料状態検出部83は、燃料状態検出部83が判断した内容を検出結果情報として出力する。
表示部101は、例えば車両内部に取り付けられたカーナビゲーションシステム等に付属するディスプレイであり、燃料状態検出部83の検出結果を示す検出結果情報が表示される。
警告灯102(報知部)は、例えば車両内部に取り付けられたものであり、燃料状態検出部83が警告情報を出力すると点灯するものである。なお、報知部は、表示部101の画面表示で警告を発するものでもよいし、音声等で警告を発するものでもよい。
[燃料電池システムの起動制御の手順]
次に、燃料電池システム100の起動制御の手順を図7のフローチャートにしたがって説明する。初期状態において、開閉弁61A〜61D、スロットル62A〜62DはOFFになっている。図7に示すように、システムが起動制御を開始すると、ステップS101において、コントローラ8は、コンプレッサ31、スロットル62A、スロットル62B、スロットル62Dを一定の開度でONにする。これにより、経路32、経路32A、経路32Bに空気が供給される。
ステップS102において、コントローラ8は、ポンプ22、起動燃焼器34をONにし、開閉弁61B、開閉弁61CをONにする。これにより、起動燃焼器34は、熱交換器33を通過した空気と、燃料噴射弁60Bから噴射された液体燃料(燃焼用燃料)を用いて燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスと空気とを混合した混合ガスを触媒燃焼器35に供給する。また、触媒燃焼器35は、起動燃焼器34から供給された混合ガスと、燃料噴射弁60Cから供給された液体燃料(燃焼用燃料)を触媒燃焼させて大量の燃焼ガスを生成し、これを燃料電池スタック1に供給する。燃焼ガスが供給された燃料電池スタック1は加熱される。そして、燃料電池スタック1を通過した燃焼ガス(排気ガス)は排気経路36を通って排気燃焼器4に到達する。
ここで、コントローラ8は、燃料噴射弁60B、燃料噴射弁60C、燃料噴射弁60Dのいずれかを用いて、燃料タンク20に貯蔵された液体燃料の適正・不適正を判断できる。起動制御は、後述のように、ステップS108まであり、起動制御の後は発電制御に移行するが、いずれかの段階で液体燃料が不適正なものと判断した場合は、コントローラ8(噴射制御部81)は指令信号の出力を停止する。
ステップS103において、コントローラ8は、排気燃焼器4、開閉弁61D、スロットル62DをONにする。これにより、経路32Dから供給された空気(酸化剤ガス)と経路23Dから供給された液体燃料(燃焼用燃料)とを混合して燃焼させて排気ガスを発生させる。排気燃焼器4で生成された排気ガスは、排気燃焼器4自身を加熱する。また、排気燃焼器4は、燃料電池スタック1から排出された燃焼ガス(排気ガス)によっても加熱される。排気燃焼器4で生成された熱は熱交換器25、及び改質器26に伝達される。そして、排気燃焼器4から排出された排気ガスは蒸発器24、熱交換器33を通過して外部に排出される。よって、蒸発器24及び熱交換器33は、排気ガスにより加熱される。なお、ステップS102とステップS103は同時に行ってもよい。
ステップS104において、コントローラ8は、温度センサ40が測定した温度に基づいて、排気燃焼器4の温度が触媒燃焼可能な所定温度に到達したか否か判断し、YES(是)であれば次のステップS105に移行し、NO(否)であれば、ステップS103後の状態を維持する。
ステップS105において、コントローラ8は、排気燃焼器4の着火装置をOFFにし、開閉弁61D、スロットル62DをOFFにする。一方、排気燃焼器4は、燃料電池スタック1から供給される燃焼ガス(排気ガス)により引き続き加熱される。
ステップS106において、コントローラ8は、温度センサ10が測定した温度に基づいて、燃料電池スタック1が発電可能な所定温度に到達したか否かを判断し、YES(是)であれば、次のステップS107に移行し、NO(否)の場合は、ステップS105後の状態を維持する。
ステップS107において、コントローラ8は、開閉弁61B、開閉弁61CをOFFにして起動燃焼器34及び触媒燃焼器35への液体燃料(燃焼用燃料)の供給を停止し、スロットル62BをOFFにして起動燃焼器34への空気の供給を停止し、燃焼ガスの生成を停止する。一方、コントローラ8は、スロットル62AのON状態を維持する。これにより、熱交換器33により加熱された空気(酸化剤ガス)が燃料電池スタック1に供給される。
ステップS108において、コントローラ8は、開閉弁61AをONにして液体燃料(改質用燃料)を蒸発器24に供給する。これにより、改質用燃料は、蒸発器24で加熱・気化され、熱交換器25でさらに加熱され、改質器26で燃料ガスに改質され燃料電池スタック1に供給される。以上より、燃料電池スタック1はアノードに供給された燃料ガスとカソードに供給された酸化剤ガスにより発電することができる状態となり、起動制御が終了する。
[燃料電池システムの発電制御時における動作]
次に、燃料電池システム100の発電制御時における動作について説明する。システムの発電制御時には、まず、燃料タンク20から供給された液体燃料(改質用燃料)が改質器26により燃料ガスに改質されて燃料電池スタック1のアノードに供給される。一方、酸化剤ガスとしての空気が熱交換器33により加熱されて燃料電池スタック1のカソードに供給される。
燃料ガスと酸化剤ガスが供給された燃料電池スタック1は、電気化学反応により発電し、バッテリ51及び駆動モータ52(DC/DCコンバータ50)の要求電力、さらにはポンプ22やコンプレッサ31等の補機の要求電力に応じて電力を供給する。そして、電気化学反応に使用された燃料オフガスと酸化剤オフガスは排気燃焼器4に導入される。
排気燃焼器4は、燃料オフガス、酸化剤オフガスを混合した状態で燃焼して排気ガスを生成し、これが蒸発器24及び熱交換器33を加熱しながら通過して外部に排出される。
[燃料電池システムの燃料噴射制御の手順]
図8は、本実施形態の燃料電池システム100の燃料噴射制御の手順を示すフローチャートである。次に本実施形態において燃料噴射弁60に供給された液体燃料(改質用燃料)が適正であるか否かを判断する手順と、燃料噴射弁60から噴射する液体燃料の噴射量の制御の手順を説明する。
前述のステップS102またはステップS103ののち、ステップS201として、噴射制御部81は、燃料噴射弁60(燃料噴射弁60B,60C,60D)を作動させることができる。この状態で、噴射制御部81は、周期(T)、及びDuty比(Td/T)により、駆動電圧(+)、維持電圧(+)、駆動電圧(−)を周期的に出力している。
ステップS202において、動作時間算出部82は、開弁動作時間、及び/若しくは、閉弁動作時間を算出して燃料状態検出部83に出力する。ここで、開弁動作時間、閉弁動作時間の算出は、毎周期ごとに算出して燃料状態検出部83に出力する。または、複数周期に亘って積算し、その平均値を燃料状態検出部83に出力する。
ステップS203において、燃料状態検出部83は、開弁動作時間、及び/若しくは、閉弁動作時間が適正範囲内にいるか否か判断する。すなわち、燃料状態検出部83は、開弁動作時間が適正開弁下限値以上で適正開弁上限値以下であるか否か判断し、及び/若しくは、閉弁動作時間が適正閉弁下限値以上で適正閉弁上限値以下であるか否か判断する。そして、YES(是)の場合は、次のステップS204に以降し、NO(否)の場合は、後述のステップS214に移行する。
ステップS204において、燃料状態検出部83は、すでに警告情報を出力している場合は、その出力を停止して警告灯102を消灯する。
ステップS205において、燃料状態検出部83は、測定した開弁動作時間と開弁標準値とを比較して変化があった否か判断する、及び/若しくは、測定した閉弁動作時間と閉弁標準値とを比較して変化があった否か判断する。そして、YES(是)の場合は、次のステップS206に移行し、NO(否)であればステップS202に戻る。
ステップS206において、燃料状態検出部83は、開弁動作時間が開弁動作時間誤差(上限値、下限値)の範囲内に位置するか否かを判断する、及び/若しくは、閉弁動作時間が閉弁動作時間誤差(上限値、下限値)の範囲内に位置するか否かを判断する。そして、YES(是)であれば、次のステップS207に移行し、NO(否)であれば、後述のステップS211に移行する。
ステップS207において、燃料状態検出部83は、開弁動作時間、及び/若しくは、閉弁動作時間がシステム開始時から変化したか否かを判断する。ここで、開弁動作時間がシステム開始から開弁標準値と異なっている、及び/若しくは、閉弁動作時間がシステム開始から閉弁標準値と異なっている場合は、燃料噴射弁60の応答特性が変化したと判断することができる。また、開弁動作時間が所定時間経過後に開弁標準値と異なった値となる場合、及び/若しくは、閉弁動作時間が所定時間経過後に閉弁標準値と異なった値となる場合には、液体燃料の温度変化により液体燃料の動粘度が変化したと判断することができる。
特に、ステップS207において、燃料状態検出部83は、開弁動作時間と開弁標準値との大小関係と、閉弁動作時間と閉弁標準値の大小関係と、が互いに一致するか否かを判断してもよい。ここで、大小関係が一致する場合は、液体燃料の温度変化により液体燃料の動粘度が変化したと判断することができる。また、大小関係が互いに異なる場合は、燃料噴射弁60の応答特性が変化したと判断することができる。いずれの場合においても、YES(是)の場合は、次のステップS208に移行し、NO(否)であれば次のステップS211に移行する。
ステップS208において、燃料状態検出部83は、開弁動作時間が開弁標準値よりも長いか、及び/若しくは、閉弁動作時間が閉弁標準値よりも短いかを判断する。そして、YES(是)の場合は、次のステップS209に移行し、NO(否)であればステップS210に移行する。
ステップS209において、燃料状態検出部83(噴射制御部81)は、燃料噴射弁60の応答特性の変化により開弁時間が実質的に減少したと判断している。よって、燃料状態検出部83(噴射制御部81)は、燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも減少したと判断している。そこで、噴射制御部81は、開弁動作時間と開弁標準値との差分、または閉弁動作時間と閉弁標準値との差分に基づいて噴射量を増加させるためのDuty比補正量を抽出する。
ステップS210にいて、燃料状態検出部83(噴射制御部81)は、燃料噴射弁60の応答特性の変化により開弁時間が実質的に増加したと判断している。よって、燃料状態検出部83(噴射制御部81)は、燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも増加したと判断している。そこで、噴射制御部81は、開弁動作時間と開弁標準値との差分、または閉弁動作時間と閉弁標準値との差分に基づいて噴射量を減少させるためのDuty比補正量を抽出する。
ステップS211において、燃料状態検出部83は、開弁動作時間が開弁標準値よりも短いか、及び/若しくは、閉弁動作時間が閉弁標準値よりも短いかを判断する。そして、YES(是)の場合は、次のステップS212に移行し、NO(否)であればステップS213に移行する。
ステップS212において、燃料状態検出部83(噴射制御部81)は、液体燃料の動粘度が上昇しており、これにより液体燃料の温度が低下したと判断している。よって、燃料状態検出部83(噴射制御部81)は、液体燃料の温度低下により液体燃料の密度が上昇して燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも増加したと判断している。そこで、噴射制御部81は、開弁動作時間と開弁標準値との差分、または閉弁動作時間と閉弁標準値との差分に基づいて噴射量を減少させるためのDuty比補正量を抽出する。
ステップS213において、燃料状態検出部83(噴射制御部81)は、液体燃料の動粘度が低下しており、これにより液体燃料の温度が上昇したと判断している。よって、燃料状態検出部83(噴射制御部81)は、液体燃料の温度上昇により液体燃料の密度が低下して燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも低下したと判断している。そこで、噴射制御部81は、開弁動作時間と開弁標準値との差分、または閉弁動作時間と閉弁標準値との差分に基づいて噴射量を増加させるためのDuty比補正量を抽出する。
ステップS214において、噴射制御部81は、負荷要求―Duty比特性をDuty比補正量により補正して、補正後の指令信号を燃料噴射弁60に出力する。ステップS209またはステップS213の後にステップS214を実行することで、駆動電圧(+)と駆動電圧(−)の時間間隔は長くなり、燃料噴射弁60は負荷が要求する噴射量で液体燃料を噴射することができる。また、ステップS210またはステップS212の後にステップS214を実行することで、駆動電圧(+)と駆動電圧(−)の時間間隔は短くなり、燃料噴射弁60は負荷が要求する噴射量で液体燃料を噴射することができる。ステップS214の後はステップS202に戻る。
ステップS215において、燃料状態検出部83は警告信号を出力して警告灯102を点灯させる。ステップS216において、燃料状態検出部83は、開弁動作時間、及び/若しくは、閉弁動作時間が使用可能な液体燃料の範囲を示す許容範囲に含まれるか否かを判断する。すなわち、燃料状態検出部は、開弁動作時間が許容開弁下限値以上で許容開弁上限値以下であるか否か、及び/若しくは、閉弁動作時間が許容閉弁下限値以上で許容閉弁下限値以下であるか否かを判断する。YES(是)と判断した場合は、前述のステップS205に移行し、NO(否)の場合は、次のステップS217に移行する。
ステップS217において、燃料状態検出部83は、測定された開弁動作時間と、記憶部84に記憶された他の液体燃料の開弁動作時間の標準値とを比較して、及び若しくは、測定された閉弁動作時間と、記憶部84に記憶された他の液体燃料の閉弁動作時間の標準値とを比較して、燃料噴射弁60に供給された液体燃料、すなわち燃料タンク20に注入された液体燃料の種類を判断する。
また、ステップS217において、燃料状態検出部83(噴射制御部81)は、指令信号(駆動信号(+)、維持信号(−)、駆動信号(−))の出力を停止し、ポンプ22の動作を停止する。上記ステップにおいて、燃料状態検出部83が判断した内容、検出した内容は検出結果情報として表示部101に表示される。なお、上記手順において、ステップS206は省略してもよい。
燃料噴射弁60の開弁動作が速く、フランジ607がストッパ608に比較的強い強度で衝突する場合には、ソレノイド610に印加される電圧にも変曲点が表れる。よって、開弁動作時間を、ソレノイド610に印加される電圧(駆動電圧)に現れる変曲点により算出することも可能である。また、ソレノイド610に外部から電流を追加的に流した場合、プランジャロッド604がノズルボディ602の先端内周面に当接するときにソレノイド610に流れる電流にも変曲点が表れる。よって、閉弁動作時間を、ソレノイド610に流れる電流(駆動電流)に表れる変曲点により算出することも可能である。
[燃料電池システムの停止制御の手順]
次に、燃料電池システム100の停止制御の手順を説明する。システムが停止制御を開始すると、コントローラ8は、ポンプ22をOFFにし、開閉弁61AをOFFにして燃料ガスの供給を停止する。これにより、燃料電池スタック1の発電が停止する。また、コントローラ8は、スロットル62AのON状態を維持する。これにより、燃料電池スタック1には酸化剤ガスが冷却ガスとして引き続き導入され、燃料電池スタック1の温度が低下する。さらに、コントローラ8は、燃料電池スタック1に保護電圧を印加する保護回路(不図示)を駆動させる。これにより、アノード電極の劣化を回避する。
次に、コントローラ8は、温度センサ10が測定する温度に基づいて燃料電池スタック1の温度がアノードの劣化を回避できる上限温度に低下するまで待機する。その後、コントローラ8は、保護回路(不図示)をOFFにして保護電圧の印加を停止する。またコントローラ8は、コンプレッサ31、スロットル62AをOFFにする。以上により、燃料電池スタック1の停止制御が終了する。
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る燃料状態検出方法は、燃料電池スタック1に供給される液体燃料を噴射する燃料噴射弁60の可動特性を検出するステップS202と、可動特性と、液体燃料の種類ごとの可動特性を示す標準情報と、に基づいて、液体燃料の状態を検出するステップS203及びS215と、を含むことを特徴とする。
これを具現化する本実施形態に係る燃料電池システム100は、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を受けて発電する燃料電池スタック1と、燃料ガスとなる液体燃料を蓄える燃料タンク20と、酸化剤ガスを供給するコンプレッサ31と、燃料タンク20及びコンプレッサ31に接続され、燃料電池スタック1に対して燃料ガス及び酸化剤ガスを給排する給排機構(蒸発器24、熱交換器25、改質器26、熱交換器33、起動燃焼器34、触媒燃焼器35、排気燃焼器4)と、を備える燃料電池システム100である。この燃料電池システム100は、燃料タンク20と給排機構との間に介装され、可動部(プランジャロッド604)を開閉することで給排機構に液体燃料を供給する燃料噴射弁60と、可動部の可動状態に基づき可動特性を検出する可動特性検出部(動作時間算出部82)と、液体燃料の種類ごとの可動特性を示す標準情報が記憶された記憶部84と、可動特性と標準情報に基づいて、液体燃料の状態を検出する燃料状態検出部83と、を備えることを特徴とする。
可動特性は、燃料噴射弁60に供給される液体燃料の状態により変化する。したがって、燃料噴射弁60の可動特性を検出することにより液体燃料の状態、例えば燃料噴射弁60に注入された液体燃料が適正か不適正かを判別することができる。また、標準情報に基づいて不適性燃料の種類を特定することも可能となる。
可動特性検出部(動作時間算出部82)は、燃料噴射弁60の開弁動作及び閉弁動作の少なくとも一方の動作の開始から終了までの動作時間を可動特性として算出することを特徴とする。これにより、動作時間は、液体燃料の動粘度に依存するため、適正な液体燃料の動作時間と算出された動作時間を比較することで、燃料噴射弁60に注入された液体燃料が適正か不適正かを判別することができる。
動作時間算出部82は、動作時間を燃料噴射弁60の開弁動作時の駆動電流または駆動電圧に基づいて算出することを特徴とする。これにより、簡易な方法で液体燃料の状態に依存した動作時間を算出することができる。
動作時間算出部82は、動作時間を燃料噴射弁60の閉弁動作時の駆動電流または駆動電圧に基づいて算出することを特徴とする。これにより、簡易な方法で液体燃料の状態に依存した動作時間を算出することができる。
可動特性検出部(動作時間算出部82)は、燃料噴射弁60の開弁動作時の駆動電流の変化量、及び/若しくは、燃料噴射弁60の閉弁動作時の駆動電圧の変化量に基づいて可動特性を検出することを特徴とする。これにより、前述の動作時間の算出が困難な場合であっても可動特性を検出することができる。
記憶部84には、動作時間の上限として許容される第1上限値と、動作時間の下限として許容される第1下限値と、が記憶されている。そして、燃料状態検出部83は、動作時間が、第1下限値以上、且つ第1上限値以下であるときは、液体燃料は適正燃料であると判断する。また、燃料状態検出部83は、動作時間が、第1下限値よりも短い、または第1上限値よりも長いときは、液体燃料は不適正燃料であると判断する。液体燃料の動粘度はその種類により大きく異なる。よって、不適正燃料の動粘度を含まないように第1上限値、第1下限値を適宜設定することで不適正燃料を容易に検出することができる。
記憶部84には、標準情報として、液体燃料の種類ごとの温度に対応した動作時間の標準値が記憶されている。そして、燃料状態検出部83は、液体燃料の温度を検出する温度センサ614を備え、動作時間と標準値に基づいて液体燃料の種類を検出する。これにより、燃料噴射弁60に供給された液体燃料が適正燃料と同種であったとしても、当該液体燃料が適正か不適性かを判断することができる。
動作時間算出部82は、液体燃料の温度が時間経過とともに変化する場合において所定時間ごとに動作時間を算出する。そして、燃料状態検出部83は、複数の動作時間と、各動作時間の算出時の温度に対応する標準値と、を対比させて液体燃料の種類を検出することを特徴とする。これにより、燃料の種類の検出の信頼性を高めることができる。
燃料状態検出部83は、液体燃料の温度を調整する温度調整部606を備え、液体燃料を所定温度に調整した状態で動作時間を算出する。そして、燃料状態検出部83は、動作時間と、当該所定温度に対応する標準値と、を対比させて液体燃料の種類を検出することを特徴とする。これにより、検査対象の液体燃料を他の種類の液体燃料との区別を動粘度の相違により識別が容易となる温度に設定することができ、燃料の種類の検出の精度を高めることができる。
記憶部84には、標準値よりも大きくかつ第1上限値よりも小さな第2上限値と、第1下限値よりも大きくかつ標準値よりも小さな第2下限値と、が記憶されている。そして、燃料状態検出部83は、報知部(警告灯102)を備えるとともに、動作時間が、第2下限値よりも短い、または第2上限値よりも長いと判断した場合に報知部(警告灯)を作動させることを特徴とする。これにより、不適正な液体燃料を使用している可能性についてドライバーに警告することができる。
また、本実施形態に係る燃料噴射制御システムは、前述の燃料状態検出システムを用いた燃料噴射制御システムである。この燃料噴射制御システムは、燃料噴射弁60の開弁動作と閉弁動作を制御して燃料噴射弁60の液体燃料の噴射量を制御する噴射制御部81を備える。そして、噴射制御部81は、動作時間が、第1下限値よりも短い、または第1上限値よりも長いと燃料状態検出部83が検出した場合には、燃料噴射弁60の制御を停止することを特徴とする。これにより、不適正な液体燃料の使用を中止して、システム全体へのダメージを未然に防ぐことができる。
記憶部84には、燃料噴射弁60の標準値からの誤差の上限を表す誤差上限値と、燃料噴射弁60の標準値からの誤差の下限を表す誤差下限値と、が記憶されている。そして、燃料状態検出部83は、動作時間が、誤差下限値よりも短い、または誤差上限値よりも長いときは、液体燃料の動粘度に変化があったと判断する。また、噴射制御部81は、液体燃料の動粘度に変化があった場合において、動作時間が標準値よりも長い場合は、噴射量を増加させる制御を行い、動作時間が標準値よりも短い場合は、噴射量を減少させることを特徴とする。これにより、噴射制御部81は、燃料状態検出部83が検出した液体燃料の状態と、測定された動作時間に基づいて、噴射量を適正な量に調整することができる。
噴射制御部81は、燃料噴射弁60に開弁動作を指令する開弁動作指令信号(駆動電圧(+))と、燃料噴射弁60に閉弁動作を指令する閉弁動作指令信号(駆動電圧(−))と、を出力する指令信号出力部(噴射制御部81)と、燃料電池スタック1の運転状態に基づいて開弁動作指令信号と閉弁動作指令信号の出力時期を制御して液体燃料の噴射量を制御する噴射量制御部(噴射制御部81)と、を備える。動作時間算出部82は、動作時間として、燃料噴射弁60に開弁動作指令信号が入力されてから開弁動作が終了するまでの開弁動作時間と、燃料噴射弁60に閉弁動作指令信号が入力されてから閉弁動作が終了するまでの閉弁動作時間と、を算出する。記憶部84には、適正燃料の標準値として、適正燃料の開弁動作時間を表す開弁標準値と、適正燃料の閉弁動作時間を表す閉弁標準値と、が記憶されている。そして、噴射量制御部(噴射制御部81)は、開弁動作時間と開弁標準値との差分、及び/若しくは、閉弁動作時間と閉弁標準値との差分に基づいて噴射量を増減させることを特徴とする。これにより、液体燃料の状態及び燃料噴射弁60の応答特性に変化があったとしても、燃料噴射弁60から噴射する改質用燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量となるように燃料噴射弁60を制御することができる。
噴射制御部81(噴射量制御部)は、開弁動作時間が開弁標準値よりも短く、かつ閉弁動作時間が閉弁標準値よりも短い場合は、噴射量を減少させる制御を行うことを特徴とする。このとき、噴射制御部81(または燃料状態検出部83)は、液体燃料の動粘度が上昇しており、これにより液体燃料の温度が低下したと判断している。よって、噴射制御部81は、液体燃料の温度低下により液体燃料の密度が上昇して燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも増加したと判断している。したがって、噴射制御部81は、噴射量を減少させる制御を行うことで、燃料噴射弁60から噴射する改質用燃料の噴射量を、負荷が要求する噴射量と一致するように調整することができる。
噴射制御部81(噴射量制御部)は、開弁動作時間が開弁標準値よりも長く、かつ閉弁動作時間が閉弁標準値よりも長い場合は、噴射量を増加させる制御を行うことを特徴とする。このとき、噴射制御部81(または燃料状態検出部83)は、液体燃料の動粘度が低下しており、これにより液体燃料の温度が上昇したと判断している。よって、噴射制御部81は、液体燃料の温度上昇により液体燃料の密度が低下して燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも低下したと判断している。したがって、噴射制御部81は噴射量を増加させる制御を行うことで、燃料噴射弁60から噴射する改質用燃料の噴射量を、負荷が要求する噴射量と一致するように調整することができる。
噴射制御部81(噴射量制御部)は、開弁動作時間が開弁標準値よりも長く、かつ閉弁動作時間が閉弁標準値よりも短い場合は、噴射量を増加させる制御を行うことを特徴とする。このとき、噴射制御部81(または燃料状態検出部83)は、燃料噴射弁60の応答特性の変化により開弁時間が実質的に減少したと判断している。よって、噴射制御部81は、燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも減少したと判断している。したがって、噴射制御部81は噴射量を増加させる制御を行うことで、燃料噴射弁60から噴射する改質用燃料の噴射量を、負荷が要求する噴射量と一致するように調整することができる。
噴射制御部81(噴射量制御部)は、開弁動作時間が開弁標準値よりも短く、かつ閉弁動作時間が閉弁標準値よりも長い場合は、噴射量を減少させる制御を行うことを特徴とする。このとき、噴射制御部81(または燃料状態検出部83)は、燃料噴射弁60の応答特性の変化により開弁時間が実質的に増加したと判断している。よって、噴射制御部81は、燃料噴射弁60から噴射される液体燃料の噴射量が、負荷が要求する噴射量よりも増加したと判断している。したがって、噴射制御部81は、噴射量を減少させる制御を行うことで、燃料噴射弁60から噴射する改質用燃料の噴射量を、負荷が要求する噴射量と一致するように調整することができる。
燃料状態検出部83は、開弁動作時間と開弁標準値との大小関係と、閉弁動作時間と閉弁標準値の大小関係と、が互いに一致する場合には改質用燃料の動粘度に変化があったと判断する。そして、噴射制御部81(噴射量制御部)は、燃料状態検出部83が液体燃料の動粘度に変化があったと判断した場合において、開弁動作時間が開弁標準値よりも長く、または閉弁動作時間が閉弁標準値よりも長い場合は、噴射量を増加させ、開弁動作時間が開弁標準値よりも短く、または閉弁動作時間が閉弁標準値よりも短い場合は、噴射量を減少させることを特徴とする。これにより、噴射制御部81(噴射量制御部)は、開弁動作時間、閉弁動作時間のいずれか一方を用いて噴射量を増減する制御を行うことができるので、制御の応答を早めることができる。
燃料状態検出部83は、開弁動作時間と開弁標準値との大小関係と、閉弁動作時間と閉弁標準値の大小関係と、が互いに異なる場合には燃料噴射弁60の応答特性に変化があったと判断する。そして、噴射制御部81(噴射量制御部)は、燃料状態検出部83が燃料噴射弁60の応答特性に変化があったと判断した場合において、開弁動作時間が開弁標準値よりも長く、または閉弁動作時間が閉弁標準値よりも短い場合は、噴射量を増加させ、開弁動作時間が開弁標準値よりも短く、または閉弁動作時間が閉弁標準値よりも長い場合は、噴射量を減少させることを特徴とする。これにより、噴射制御部81(噴射量制御部)は、開弁動作時間、閉弁動作時間のいずれか一方を用いて噴射量を増減する制御を行うことができるので、制御の応答を早めることができる。
本実施形態において、燃料噴射弁60の可動特性を開弁動作時間及び閉弁動作時間とし、これを他の燃料の標準値として比較して液体燃料の種類を検出し、また噴射量の制御を行う旨説明した。しかし、当該可動特性として前述の電流の変化量、電圧の変化量を用い、これらを他の燃料を燃料噴射弁60に供給したときの電流の変化量、電圧の変化量と比較して液体燃料の適正・不適性、液体燃料の種類を検出してもよく、また液体燃料の電流の変化量の標準値、電圧の変化量の標準値と比較することで噴射量の制御を行ってもよい。
開弁動作時間、及び閉弁動作時間の算出時において、液体燃料の温度に変化がない場合には、許容開弁下限値、適正開弁下限値、開弁標準値、適正開弁上限値、許容開弁上限値、許容閉弁下限値、適正閉弁下限値、閉弁標準値、適正閉弁上限値、許容閉弁上限値は、それぞれ一定値としてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。