JP2018046760A - 有用なイムノバイオティクスのスクリーニング方法 - Google Patents

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久 麻生
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聖也 牧野
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Hiroshi Kano
宏 狩野
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Abstract

【課題】細胞レベルにおいて、より正確なプロバイオティクスの被貪食能の評価方法であり、同時に、負担の大きい外科的手術などによらない方法で簡易に生体内に近い状態での、均一なプロバイオティクスの被貪食能の評価方法を提供する。【解決手段】細菌と接触したことがない貪食作用を有する細胞にプロバイオティクスを接触させる工程を含む、プロバイオティクスの被貪食能の評価方法。【選択図】なし

Description

本発明は、プロバイオティクスの評価方法に関し、更に詳細には、細胞レベルでの定量的なプロバイオティクスの被貪食能の評価方法およびこれを利用したスクリーニング方法に関する。
昨今、薬による治療ではなく、消化管内のフローラ(細菌叢)を改善し、宿主に有益な作用をもたらしうる有用な微生物と、それらの増殖促進物質、いわゆるプロバイオティクスを利用して、治療する方法に注目が集まっている。例えば、特定のLactobacillus gasseri菌由来のオリゴヌクレオチドがトール様受容体(TLR)9を介して認識されることにより、リンパ球幼若化活性やNF−κB転写活性を増強することが知られている(特許文献1)。また、Lactobacillus jensenii菌TL2937株(受託番号:FERM BP−11272)が、IFN−βの発現増加やMCP−1の発現抑制を誘導し、抗ウィルス性炎症作用を発揮することが記載されている(特許文献2)。
こうしたプロバイオティクスを投与した際に有用な効果を発揮するメカニズムを解明する上で、サイトカインや核内転写因子等の遺伝子レベル、蛋白質レベルでの解析は進められているが、細胞レベルにおいて、作用させたプロバイオティクスの挙動の解析は、十分とは言い難い。抗原に対する免疫の賦活化において、外来抗原に対する樹状細胞などの貪食細胞が抗原提示などの役割を果たしていることが知られており(非特許文献1および2)、また腸管免疫細胞群にも樹状細胞が存在していることが知られているが、プロバイオティクスがどのように免疫賦活化および免疫寛容に関係しているのかについては、現在のところほとんど未解明である。
これに関し、プロバイオティクスによる免疫賦活化を検証する場合、実際に腸管から樹状細胞を採取するには、樹状細胞の調製の際に採取元の動物を殺処分しなければならず、非常に非効率的である。一方、末梢血の単球から形質細胞様の樹状細胞を分化誘導できることが知られており、このようにして誘導された樹状細胞(pDC)が、Lactococcus lactis JCM5805株を貪食して活性化し、IFN産生が誘導されたとの報告がある(非特許文献3)。
特開2006−232790号公報 国際公開第2011/118060号
Shen et al., The Journal of Immunology, (1997) 158, 2723-2730 Rodriguez et al., Nature Cell Biology, (1999) 1, 362-368 Sugimura et al., Clinical Immunology, (2013) 149, 509-518
本発明は、細胞レベルにおいて、より正確なプロバイオティクスの有用性を簡便に評価する方法および、それを利用した有用なプロバイオティクスのスクリーニング方法を提供することである。
本発明者らは、プロバイオティクスの中でも特に免疫系に作用するプロバイオティクスについて研究する中で、プロバイオティクスと称される細菌の中でも、腸管の樹状細胞の貪食を受けやすいものと受けにくいものが存在するという新たな知見を得た。そしてこれらの差異について鋭意研究を続ける中で、樹状細胞に貪食されやすい細菌ほど、プロバイオティクスとして有用な効果を発揮するものであること、および貪食されやすい細菌の貪食においては、樹状細胞表面に発現するTLR2が関与していることを見出し、さらに研究を続けた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下に関する。
<1>有用なプロバイオティクスをスクリーニングする方法であって、
(1)TLR2を発現する貪食細胞と、候補プロバイオティクスとを接触させる工程
(2)前記貪食細胞による候補プロバイオティクスの貪食量を定量する工程
(3)得られた貪食量と基準値とを比較する工程
を含み、貪食量が基準値よりも有意に大きい場合、プロバイオティクスとして有用であると判断する、前記方法。
<2>プロバイオティクスが、イムノバイオティクスである、<1>のスクリーニング方法。
<3>TLR2を発現する貪食細胞が、未分化細胞から誘導されたものである、<1>または<2>のスクリーニング方法。
<4>未分化細胞が、末梢血から単離した単球である、<3>のスクリーニング方法。
<5>貪食細胞が、未成熟単球由来樹状細胞である、<1>〜<4>のスクリーニング方法。
<6>基準値が、TLR2をブロッキングした貪食細胞と候補プロバイオティクスとを接触させた際に得られる貪食量である、<1>〜<5>のスクリーニング方法。
<7>貪食細胞表面のTLR2と結合し、貪食される、Lactobacillus属菌。
<8>Lactobacillus jenseniiである、<7>のLactobacillus属菌。
本発明によれば、有用なプロバイオティクス、特に免疫機能に有用に作用するイムノバイオティクスを、簡便な手法でスクリーニングすることが可能となる。近年医薬の有効成分としてプロバイオティクスが注目されており、本発明によりスクリーニングされるプロバイオティクスは、特に自己免疫疾患や炎症性疾患に対する医薬の有効成分として用いることができる。
末梢血由来CD172aCD11R1および末梢血由来CD172aCD11R1細胞と、腸管由来CD172aCD11R1および腸管由来CD172aCD11R1細胞のフローサイトメトリーのデータを用いた二重染色によるドットプロットである。 末梢血由来CD172aCD11R1細胞(AおよびB)および末梢血由来CD172aCD11R1細胞(CおよびD)と、腸管由来CD172aCD11R1細胞(EおよびF)および腸管由来CD172aCD11R1細胞(GおよびH)に、TL2766株およびTL2937株を接触させた後のフローサイトメトリーのデータによるヒストグラムである。 腸管由来CD172aCD11R1の細胞に、TL2766株およびTL2937株、それぞれの株との接触時間における平均蛍光強度を示したグラフである。
TL2766株およびTL2937株を接触させた後の末梢血由来CD172a陽性細胞(AおよびB)および腸管由来CD172a陽性細胞(CおよびD)、および上記いずれの株とも接触させていない細胞(E)の走査型電子顕微鏡の写真である。 末梢血由来CD172a陽性および腸管由来CD172a陽性における細胞に、TL2937株を接触させて、青色で核、赤色でエンドソーム、緑色で細菌を染色した後のレーザー顕微鏡の写真である。
末梢血由来CD172a陽性細胞(A、BおよびC)および腸管由来CD172a陽性細胞(D、EおよびF)に、TL2766株およびTL2937株を接触させた後の透過型電子顕微鏡の写真である。 末梢血由来CD172a陽性細胞に、TL2766株およびTL2937株を接触させた後、それぞれの細胞内部に取り込まれた細菌数を計測したグラフである。
TL2937株を用いたTLR2ブロッキング試験の結果を表すグラフである。抗TLR2抗体を用いた場合に、コントロールおよびアイソタイプ抗体を用いた場合と比較して有意に蛍光強度が低減した。これはTLR2との結合により、TL2937の貪食細胞への付着および貪食が生じることを示唆する。 末梢血単球由来の各種免疫担当細胞におけるサイトカイン発現量をRT−PCRで解析した結果を示す。未成熟末梢血単球由来樹状細胞において最も顕著にTL2937株とTL2766株の相違が観察された。
本明細書において「プロバイオティクス」とは、消化管内のフローラ(細菌叢)に作用して宿主に有益な作用をもたらしうる微生物および該微生物の増殖促進物質のみならず、これらの微生物が産生した物質(微生物の培養物を含む)も包含する。したがって、本発明のプロバイオティクスには、細菌叢を形成する、乳酸菌、ビフィズス菌、プロピオン酸菌、大腸菌などの細菌のみならず、かかる細菌の増殖を促進する物質や宿主に有益な作用をもたらしうる酵母、芽胞産生菌、真菌などの有用な微生物およびこれらの微生物が産生した物質(微生物の培養物を含む)を包含する。本発明において、「イムノバイオティクス」とは、プロバイオティクスの中でも特に腸管免疫系に作用し、これを調節する作用を有するプロバイオティクスを意味する。
本発明において、「貪食」、「食作用」または「貪食作用」とは、体内に存在するある程度の大きさの異物や異常代謝物を細胞内へと取り込み、分解する作用のことを言い、自然免疫に分類される細胞のメカニズムである。本発明において、「貪食細胞」とは、上記貪食作用を有する細胞を意味し、これに限定するものではないが、例えば単球、好中球、マクロファージ、白血球、樹状細胞などが挙げられる。
<1>本発明のスクリーニング方法
本発明の一側面において、有用なプロバイオティクスをスクリーニングするためのスクリーニング方法が提供される。
本発明のスクリーニング方法は、以下の工程(a)〜(c)を含む:
(a)トール様受容体(TLR)2を発現する貪食細胞と、候補プロバイオティクスとを接触させる工程、
(b)前記貪食細胞による候補プロバイオティクスの貪食量を定量する工程、
(c)得られた貪食量と基準値とを比較する工程。
工程(a)において、TLR2を発現する貪食細胞と、候補プロバイオティクスとを接触させる。これにより候補プロバイオティクスが貪食細胞に貪食される。用いる貪食細胞は、TLR2を発現する貪食細胞であればいかなる細胞であってもよく、天然にTLR2を発現する貪食細胞であっても、TLR2を強制発現させた貪食細胞であってもよいが、好ましくは天然にTLR2を発現する貪食細胞である。天然にTLR2を発現する貪食細胞の例としては、これに限定するものではないが、例えばパイエル板由来の樹状細胞(PPMP)、単球から分化誘導された樹状細胞(MoDC)などが挙げられる。
接触させる候補プロバイオティクスは、貪食細胞の貪食作用に影響しない限り、任意に標識されていてよい。標識としては、例えば蛍光標識、放射線標識などが挙げられるがこれに限定されない。
工程(b)において、貪食細胞に貪食された候補プロバイオティクスの貪食量を定量する。本発明において「貪食量」とは、貪食細胞が対象をどの程度貪食したかを表す定量的数値を意味する。本工程において定量される貪食量は、貪食細胞に貪食された候補プロバイオティクスの量を表す数値であればいかなるものであってもよく、これに限定するものではないが、例えば貪食された候補プロバイオティクス数、蛍光標識された候補プロバイオティクスの貪食細胞中の相対蛍光強度などが挙げられる。蛍光標識を用いる場合では、計測操作自体は簡便であるものの各プロバイオティクスによって菌体1個当たりの蛍光強度が異なるため、基準値として測定値と相対的比較が可能な基準値を用いるときには(例えば基準値としても同一のプロバイオティクスの蛍光強度を用いる場合など)好適に用いられる。貪食されたプロバイオティクス数を計数する場合は、貪食量として絶対的な基準となるため、汎用的により好適に用いることができる。
貪食量の定量は、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば貪食量を貪食された候補プロバイオティクス数とする場合、工程(a)において候補プロバイオティクスと接触させた貪食細胞を切片化し、顕微鏡で観察することで計数することができる。顕微鏡は計数するプロバイオティクスを観察することができればいかなる顕微鏡を用いてもよく、これに限定するものではないが、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡、走査型レーザー顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡などが挙げられる。計数の簡便さに鑑みると、TEMが好ましい。貪食量を候補プロバイオティクスの貪食細胞内の相対蛍光強度とする場合、蛍光強度を計測する方法は当該技術分野において知られており、当業者であれば適宜方法を選択することができ、例えば蛍光高度計による計測などが挙げられる。
工程(c)において、上記得られた貪食量と基準値とを比較する。基準値としては、例えばプロバイオティクスとして有用でないことが判明している同種の細菌の同じ貪食細胞への貪食量、貪食細胞表面のTLR2をブロッキングした際の候補プロバイオティクスの貪食量など、TLR2が関与しないと推測される貪食量であればいかなるものであってもよい。かかる基準値と比較した際に、得られた貪食量が基準値よりも有意に大きければ、候補プロバイオティクスが有用なプロバイオティクスであると判断することができる。
本発明のスクリーニング方法によりスクリーニングされるプロバイオティクスは、TLR2と高い結合性を有するプロバイオティクスであると考えられる。TLRは自然免疫の作動に関与するパターン認識受容体であり、したがってTLR2と高い結合性を有するプロバイオティクスは、自然免疫を作動させる性質を有するプロバイオティクスであることが期待される。したがって本発明によりスクリーニングされるプロバイオティクスは、好ましくはイムノバイオティクスである。本発明において「イムノバイオティクス」は、プロバイオティクスの中でも特に腸管免疫系に働きかけることで免疫賦活の作用に優れたプロバイオティクスを意味する。
本発明においては、上述のとおり貪食細胞による候補プロバイオティクスの貪食量を定量することにより、有用なプロバイオティクスをスクリーニングするものであるが、プロバイオティクスである以上当然貪食細胞としても腸管由来の貪食細胞(例えばPPMPなど)を用いるのが好適であると考えられる。しかしながら、腸管由来の細胞は(1)調製のために給源である動物を殺処理する必要がある、(2)調製時点において、既に細胞内に1以上のプロバイオティクスを貪食している可能性がある、などの点において不利な点を有する。前記不利な点を有しない好適な細胞として、本発明者らが、未分化細胞から誘導された貪食細胞を用い得ることを見出した。
未分化な細胞としては、これに限定するものではないが、例えばiPS細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、間葉系幹細胞、造血幹細胞、腸管幹細胞などの体性幹細胞、および単芽球、単球などの前駆細胞などが挙げられる。本発明者らにより、腸管樹状細胞と末梢血単球から分化誘導した樹状細胞が類似の表現型を有していること、プロバイオティクスのスクリーニングにおいて同等の性質を有していることが見出された。したがって本発明の未分化細胞としては、好ましくは末梢血から単離した単球を用いる。
上記未分化細胞は、ブタ、ウシ、サル、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラットなどの哺乳動物、ニワトリ、アヒル、カモなどの鳥類などから採取することができる。また、未分化細胞として確立された細胞株を用いてもよい。
本発明の好ましい一態様において、貪食細胞として末梢血単球由来の樹状細胞を用いる。末梢血から単離した単球を樹状細胞に分化させる方法は、当該技術分野において知られている(例えばSilva-Campa et al, Virology., 2010;396:264-71参照)。一態様において、末梢血から単離した単球をGM−CSFおよびIL−4で刺激すると、未成熟な樹状細胞に分化する。未成熟な樹状細胞を更にリポ多糖(LPS)で刺激することにより、成熟した樹状細胞とすることができるが、本発明者らにより、成熟した樹状細胞と未成熟な樹状細胞では、プロバイオティクスの貪食に差異があることが見出された。すなわち、未成熟な樹状細胞は、成熟した樹状細胞と比較して、貪食するプロバイオティクスによってサイトカイン発現の差異が顕著になることが見出された。したがって本発明のより好ましい一態様において、末梢血単球由来の樹状細胞の中でも未成熟な樹状細胞が用いられる。
本発明は、プロバイオティクス、特にイムノバイオティクスとして有用な細菌が、貪食細胞表面のTLR2と結合することにより、より多く貪食細胞に貪食されるという事実を見出したことに端を発する。すなわち、プロバイオティクスが貪食細胞に貪食される際にTLR2と結合するか否かを調べることにより、プロバイオティクスの有用性を評価することが可能になる。したがって本発明の一態様において、TLR2をブロッキングした貪食細胞と候補プロバイオティクスとを接触させる工程を含む。
かかる態様において、(b)の工程は必ずしも必要ではない。すなわち、貪食細胞表面のTLR2のブロッキングの有無による貪食量を比較し、その変化を定性的に評価することができれば、必ずしも貪食量を定量する必要はない。しかしながら、より精度の高い評価を行うことができるという観点から、好ましくは(b)の工程を含む。かかる態様においては、(c)の工程における基準値を、TLR2をブロッキングした貪食細胞と候補プロバイオティクスとを接触させた際に得られる貪食量とすることができる。
本明細書において貪食細胞表面の「TLR2のブロッキング」は、TLR2としての機能を低減、好ましくは無効化することを意味し、当該技術分野において公知の方法で行うことができる。また、「TLR2のブロッキングの有無による貪食量」を比較する場合には、貪食細胞表面のTLR2が機能している細胞と、同貪食細胞において細胞表面のTLR2が機能していないかまたは細胞表面にTLR2が発現していない細胞を用いることで達成することができる。したがって、細胞表面のTLR2としての機能を低減または無効化する方法としては、細胞表面のタンパク質の機能を阻害する物質を用いる方法、タンパク質の発現そのものをコントロールする方法などが挙げられ、具体的には、これに限定するものではないが、例えばTLR2に結合する抗体やアンタゴニストを用いて候補プロバイオティクスとの結合を阻害する方法、TLR2を発現する貪食細胞とTLR2のsiRNAなどによって同細胞においてTLR2遺伝子の発現を阻害した細胞株とを用いる方法、TLR2を発現しない貪食細胞と同細胞においてTLR2を形質転換などにより強制発現させた細胞株とを用いる方法などが挙げられる。
<2>本発明のLactobacillus属菌
本発明の一側面において、プロバイオティクス、特にイムノバイオティクスとして有用な細菌を提供するものである。本発明者らにより、プロバイオティクスの中に、貪食細胞に貪食される際に、貪食細胞表面のTLR2と結合し、それをトリガーとして貪食が開始されるものが存在すること、およびかかるプロバイオティクスは特に腸内免疫系にとって有用な性質を有することが見出された。したがって本発明は、貪食細胞表面のTLR2と結合し、貪食される特徴を有するプロバイオティクスに関する。
貪食細胞表面のTLR2と結合し、貪食されるプロバイオティクスであるか否かは、例えば貪食細胞表面のTLR2をブロッキングした場合に貪食量が低減するか否かを定性的または定量的に評価することにより確認することができる。したがって、一態様において本発明のプロバイオティクスは、貪食細胞表面のTLR2をブロッキングした際に貪食量が有意に低減するプロバイオティクスである。
かかるプロバイオティクスは、プロバイオティクスとなり得る菌として知られた菌であればいかなる種類のものであってもよく、これに限定するものではないが、例えばLactobacillus属菌、Bifidobacterium属菌、Lactococcus属菌、Streptococcus属菌などが挙げられる。本発明の一態様において、本発明のプロバイオティクスはLactobacillus属菌である。
Lactobacillus属菌としては、これに限定されるものではないが、例えばLactobacillus delbrueckii subsp. burgaricus、Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus amylovorus、Lactobacillus gallinarum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus oris、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus brevis、Lactobacillus plantarumなどが挙げられ、好ましくはLactobacillus casei、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriなどが挙げられる。本発明の一態様において、本発明のプロバイオティクスはLactobacillus jenseniiである。
本発明者らにより、本発明のプロバイオティクスは、腸内免疫系に有用に作用することが見出され、特に腸内免疫系において、過剰な免疫反応を抑制し、抗炎症効果などを発揮することができることがわかっている。したがって本発明のプロバイオティクスを有効成分として含む抗炎症剤、または本発明のプロバイオティクスを抗炎症剤として用いる方法もまた、本発明に包含される。
また、本発明のプロバイオティクスは、例えば経口的に摂取あるいは経管、経鼻などにより、腸管まで送達されて効果を発揮するものである。したがって本発明はまた、本発明のプロバイオティクスを含む腸管用組成物も包含する。本発明において「腸管用組成物」とは、腸管に送達され、腸管で効果を発揮する組成物を意味する。腸管用組成物は、腸管に送達され得る経路で対象に投与される。腸管に送達され得る経路としては、これに限定するものではないが、典型的には経口投与であり、他の経路としては例えば経鼻投与、経管投与、経腸投与、胃ろうなどが挙げられる。経口投与用組成物としては、ヒトを含む哺乳動物または鳥類が、通常経口により摂取するものであればいかなるものであってもよく、これに限定するものではないが、例えば食品組成物、飲料組成物、飼料組成物、医薬組成物などが挙げられ、これらには栄養補助食品(サプリメント)、食品添加剤、飼料添加剤なども含まれる。食品組成物としては、例えば発酵乳、チーズなどを含む発酵食品が好ましい。
本明細書中で言及する全ての特許、出願および他の出版物は、その全体を参照により本明細書に援用する。
以下、末梢血由来により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの末梢血由来に限定されない。
例1.細胞の調製
(1)末梢血由来の細胞の調製
感染症などに罹患していない、出荷の1カ月前の成熟ブタ(LandraceとLarge YorkshireのFにDurocを交配させた、LWDブタ(ヒルズ))の外頚静脈から採血し、真空採血管(TERUMO)に入れた。そして、Lympholyte-Mammal(CEDARLANE)の比重法を用いて、この血液からLympholyteを分注したチューブに、細胞懸濁液を静かに重層してから、遠心分離法(1800rpm、60分間、20℃)を用いて、単核球細胞を分画した。ここで、この単核球細胞を1×10個/ウェルで播種し、1時間で保持して付着させた。その後に、IL−4(R&D system)と、GM−CSF(R&D system)を20ng/mLずつで含むRPMI培地を添加してから培養(37℃、5%のCOの条件下)し、この培養の開始から72時間後に、新たな培地に交換した。さらに、この培養(37℃、5%のCOの条件下)を5日間で継続して、分化誘導した末梢血由来の樹状細胞を得た。
(2−1)フローサイトメトリーによる細胞の調製
上記の末梢血由来の細胞について、ブタ樹状細胞の表面マーカーであるCD172aとCD11R1を、それぞれフィエリスリン(PE)およびペリオジニン(PerCP)で共染色し、フローサイトメトリーに供した。その結果として、二重染色によるドットプロット解析を図1に示した。なお、縦軸はCD172a陽性細胞数、横軸はCD11R1陽性細胞数である。そして、図1Aの上の四角は、両表面マーカーの発現が高い細胞集団のCD172a CD11R1サブセットを示し、(図1A)、図1Aの下の四角は、CD172aの発現が低くて、CD11R1の発現が高い細胞集団のCD172alow CD11R1サブセットを示す(図1A)。
(2−2)磁気ビーズ分離(MACS)法による細胞の調製
磁気ビーズ分離法を用いて、上記の末梢血由来の細胞から、CD172a陽性細胞を分離するため、0.5%のBSA、2mMのEDTA、PBSを含むMACSバッファーで洗浄し、上記の末梢血由来の細胞の1×10個に対して、それぞれ、Mouse anti-porcine Monocyte/Granulocyte-Biotin(Southern Biotech、Catalog Number 4525-08)(anti−CD172a)を10μLで添加してから、インキュベート(4℃、10分間)した。その後に、MACSバッファーで洗浄し、それぞれ、Streptavidin標識マイクロビーズ(MiltenyiBiotec)を10μLで添加してから、インキュベート(4℃、15分間)した。さらに、MACSバッファーで洗浄し、MACSバッファーに懸濁させた。
次に、LSカラム(MiltenyiBiotec、Catalog Number 130-042-401)を、MACSバッファーで洗浄し、磁気ビーズで標識した末梢血由来の細胞の懸濁液をカラムへ流した。さらに、MACSバッファーで洗浄し、プランジャーを用いて、カラムに保持されているCD172a陽性細胞を押し出し、末梢血由来のCD172a陽性細胞を得た。
(3)腸管由来の細胞の調製
感染症などに罹患していない、健康な成熟ブタ(LWD)の腸管組織から、パイエル板を採取し、1重量%のStreptomycin/Penicilin(Invitrogen)を含むPBSで洗浄した。次に、ハサミを用いて、そのパイエル板の組織をホモジナイズした。そして、1mg/mLのコラゲナーゼおよび15μg/mLのDNaseを含むRPMI培地を添加してから、振とう培養(37℃、60分間)した。ここで、この組織液の上清をアスピレーターにて除去し、10%(v/v)のFetal calf serum(FCS)、0.02重量%のEDTAを含むPBSを添加してから、インキュベート(37℃、5分間)した。さらに、PETRI DISH(Corning)に、二枚重ねのガーゼを敷き、その上で培養したパイエル板の組織を押し潰して、細胞懸濁液を調製した。
さらに、上記の細胞懸濁液の上清をアスピレーターにて除去し、0.2重量%のNaCl溶液を添加してから軽く混ぜ合わせて、赤血球を破裂した。そして、直ちに等量の1.5重量%のNaCl溶液を添加してから、生理食塩水と同程度に戻した。次に、RPMI培地を適量で添加してから、上清をアスピレーターにて除去し、再びRPMI培地に懸濁した。そして、Cell Strainer(BD)を用いて、RPMI培地を濾過した後に、Lympholyte-Mammalの比重法を用いて、免疫担当細胞を分画し、腸管由来の樹状細胞を得た。
(4−1)フローサイトメトリーによる細胞の調製
フローサイトメトリーを用いて、上記(2−1)と同様に、上記の腸管由来の細胞を調製した。ここで、図1Bの上の四角は、CD172a CD11R1サブセットを示し(図1B)、図1Bの下の四角は、CD172alow CD11R1サブセットを示す(図1B)。
(4−2)磁気ビーズ分離(MACS)法による細胞の調製
磁気ビーズ分離法を用いて、(2−2)と同様に、上記の腸管由来の細胞から、CD172a陽性細胞を得た。
(5)細菌(菌株)の調製
上記の各細胞に接触させる菌株には、株式会社明治が保有するLactobacillus (L.) plantarum TL2766(以下、TL2766株と称することがある)およびLactobacillus (L.) jensenii TL2937(受託番号:FERM BP−11272)(以下、TL2937株と称することがある)を用いた。このとき、MRS培地を用いて、上記の2菌株を培養(37℃、24時間)することを1回の継代とし、3回で継代した。
そして、TL2937株では、1.0×1011個に対して、Carboxyfluorescein Diacetate(Sigma)(以下、単にCFDAと称することがある)を15mgの割合となるように、PBSで混和し、TL2766株では、1.0×1011個に対して、CFDAを0.15mgの割合となるように、PBSで混和した。さらに、ウォーターバスを用いて、これらPBSの混和液を遮光しながら加熱処理(37℃、60分間)して、CFDAを菌株内に取り込ませた。その後に、PBSを用いて、それぞれの菌株を3回で洗浄し、CFDA標識したTL2937株およびTL2766株を得た。次に、この標識したTL2937株およびTL2766株を殺菌処理(60℃、45分間)してから、プロバイオティクスの被貪食能を評価するために、これらの菌株を用いた。
なお、本発明に用いたTL2937株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(IPOD, AIST)(日本国 〒305−8566 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、2010年5月14日付、受託番号:FERM BP−11272として寄託されている。なお、Budapest Notification No. 282 (http://www.wipo.int/treaties/en/notifications/budapest/treaty_budapest_282.html)に記載されるとおり、独立行政法人製品評価技術基盤機構(IPOD, NITE)が独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(IPOD, AIST)より特許微生物寄託業務を承継したため、現在は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(IPOD, NITE)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室)に寄託されている(受託番号FERM BP−11272)。
例2.フローサイトメトリーを用いた観察
上記(2−1)および(4−1)で得られた細胞を、それぞれ5×10個/ウェルで播種し、一晩培養した。次に、これらの培地に対して、TLR2抗体(BioLegend.、Catalog Number 309710)とTLR4抗体(BioLegend.、Catalog Number 312808)を200ng/mLで添加してから、インキュベート(37℃、一晩)した。そして、TL2766株およびTL2937株を殺菌処理してから、前記の菌体を5×10個/ウェルで接触させた。
次に、ピペッティングにより、蛍光標識した菌株と接触させた細胞を回収し、これらの細胞を2×10個/ウェルで播種し、2%(v/v)のFCS、0.01重量%のNaN/PBSを含む洗浄バッファーを用いて、それぞれの細胞を2回で洗浄した。その後に、それぞれの細胞を、抗CD172a抗体(SouthernBiotech.、Catalog Number 4525-09)および抗CD11R1抗体(AbD.、Catalog Number MCA1220)と反応(4℃、40分間)させてから、洗浄バッファーを用いて、それぞれの細胞を2回で洗浄した。その後に、二次抗体(Santa Cruz Biotechnology.、Catalog Number sc-45103)を添加して、抗体反応(4℃、40分間)させてから、洗浄バッファーを用いて、それぞれの細胞を2回で洗浄した。その後に、各ウェルに、1重量%のパラホルムアルデヒドを含む洗浄バッファーを50μLで添加してから、固定処理(4℃、15分間)した。さらに、洗浄バッファーを用いて、それぞれの細胞を洗浄した後に、洗浄バッファーの150μLに懸濁させた。
FACSAccuri C6(BD)を用いて、細胞の1個あたりの細菌蛍光強度を測定し、上記の蛍光標識した菌体と接触させた細胞を計数して、各細胞の表面および内部に存在する菌体量を数値化した。そして、FlowJoソフトウェア(Tree star)を用いて、これらの数値を解析した。このとき、FSCおよびSSCにより、ゲートを設定し、CD172a陽性顆粒球を除いて、これらの数値を解析した。
ヒストグラムを用いて、菌株と無接触の細胞(対照の細胞)、TL2766株と接触させた細胞およびTL2937株と接触させた細胞について、FL1(CFDA)の蛍光値を示した(図2)。ここで、横軸は、細菌の蛍光強度を、縦軸は、細胞数を示しており、点線のヒストグラムは、対照の細胞の結果を、実線のヒストグラムは、TL2766株と接触させた細胞およびTL2937株と接触させた細胞の結果を示している。また、ヒストグラムの上側にあるバーは、ゲートを、バーの下にある数値は、ゲートに存在する細胞の平均蛍光強度(MFI)を、バーの上にある数値は、全体に占めるゲートの細胞の割合を示している。そして、対照の細胞で得られたピークを含むゲートおよび、それを含まないゲートの2つを作製し、それぞれにおいて細胞の集団に占める細胞の割合と平均蛍光強度を算出した。なお、菌株による蛍光強度の差異をなくすため、TL2766株およびTL2937株を殺菌処理してから、それらの蛍光値を測定して、蛍光値を補正した。
末梢血由来CD172aCD11R1細胞では、TL2766株と接触させて、高い蛍光量を示した細胞の割合は8.62%であったのに対して、TL2937株と接触させて、高い蛍光量を示した細胞の割合は68.0%であった(図2A、図2B)。また、末梢血由来CD172aCD11R1では、TL2766株と接触させて、高い蛍光量を示した細胞の割合は4.31%であったのに対して、TL2937株と接触させて、高い蛍光量を示した細胞の割合は9.46%であった(図2C、図2D)。つまり、何れの細胞においても、TL2766株の蛍光量に比べて、TL2937株の蛍光量が多くなる結果となった。
なお、腸管由来CD172aCD11R1および腸管由来CD172aCD11R1においても、TL2766株と接触させて、高い蛍光量を示した細胞の割合に比べて、TL2937株と接触させて、高い蛍光量を示した細胞の割合は多くなる結果となった(図2E〜図2H)。
また、腸管由来CD172aCD11R1の細胞に、TL2766株とTL2937株をそれぞれ接触させた。5分、30分、60分、120分間、それぞれの株に接触させた後、各細胞の平均蛍光強度を測定した。さらに、測定した細胞の各株(菌体)の接触時間と、その接触時間における平均蛍光強度との関係を示した(図3)。その結果、TL2937株と接触させた細胞の方が、測定開始から2時間後、高い蛍光量を示し、以降も高いレベルを維持した。また、5分程度、TL2937株と接触させると、120分間接触させたことと、同等の蛍光量を示すことから、TL2937株は、迅速に貪食されていることが示された。
これらの結果から、腸管由来の細胞と同様に、末梢血由来の細胞でも、細胞質の内部に、菌体が貪食されていることが示唆された。つまり、末梢血由来の細胞でも、腸管由来の細胞と同等の性質を示すことが示唆されており、末梢血由来の細胞を用いてもプロバイオティクスの性質を調べられること、すなわち、プロバイオティクスの腸管免疫系への効果を末梢血由来の細胞で評価できることが示唆された。
例3.走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察
塩酸で希釈したコラーゲン(新田ゼラチン)を用いて、トランズウェルインサート(0.4μmの小孔ポリエステルメンブレン(Corning))の膜表面をコートしてから、上記の磁気ビーズ分離法で得られた末梢血由来CD172a陽性および腸管由来CD172a陽性の細胞を5×10個/ウェルで播種し、細胞を定着(一晩)させた。ここで、TL2766株およびTL2937株を殺菌処理してから、これらの菌体を5×10個/ウェルで接触(37℃、2時間)させた。その後に、0.2MのHEPESバッファーで洗浄してから、2.5%のグルタルアルデヒド(日新EM)で固定処理(25℃、2時間)した。さらに、HEPESバッファーで洗浄してから、PBSを用いて、5回で洗浄した。そして、0.25%のタンニン酸で固定処理(25℃、15分間)してから、0.5%のタンニン酸で固定処理(25℃、15分間)した後に、1%のタンニン酸で固定処理(25℃、1時間)した。ここで、50%、70%、90%および100%のエタノールで脱水(10分間)してから、t−ブチルアルコールに2回で浸漬(30分間)し、t−ブチルアルコールに置換した。さらに、凍結乾燥(一晩)してから、細胞の表面を白金で処理し、これらの細胞を走査型電子顕微鏡で観察した。
走査型電子顕微鏡を用いて3000倍で観察した細胞を図4A〜図4Eに示す。末梢血由来CD172a陽性細胞および腸管由来CD172a陽性細胞では、いずれもTL2766株と接触させた細胞(図4A、図4C)に比べて、TL2937株と接触させた細胞(図4B、図4D)において、細胞の表面への菌体の付着量が多いことがわかった。
また上記いずれの株とも接触させていない無接触の細胞(図4E)と比較した場合も、TL2937株と接触させた細胞では、細胞表面への菌体の付着量が多いことが確認された。点線で囲んだ部分は、1つの無接触の細胞を示す。
これらの結果から、腸管由来の細胞と同様に、末梢血由来の細胞でも、その表面に菌体が付着していることが観察された。つまり、末梢血由来の細胞でも、腸管由来の細胞と同等の性質を示すことが示唆されており、プロバイオティクスを用いた実験系において、末梢血由来の末梢血由来の細胞を用いることで、腸管由来の腸管由来の細胞の性質を調べられること、すなわち、腸管免疫系への効果を末梢血由来の細胞で評価できることが確認された。
例4.レーザー顕微鏡を用いた観察
顕微鏡観察用のディスク(カバーガラス、φ12mm、ブタ腱由来のペプシン可溶性のコラーゲンタイプIコート(IWAKI))に、上記の磁気ビーズ分離法で得られた末梢血由来CD172aCD11R1および腸管由来CD172aCD11R1の細胞を播種した。そして、培地の1mLに対して50μLの割合で、CellLight Early Endosomes-RFP(Life technologies)をウェルに添加してから、細胞のエンドソームを染色(37℃、一晩)した。ここで、TL2937株を殺菌処理してから、これらの菌体をウェルで接触させた。その後に、PBSで洗浄してから、4%のパラホルムアルデヒドを含むPBSで固定処理(25℃、20分間)した。さらに、PBSで洗浄してから、Fluoroshield with DAPI(ImmunoBioScience)で封入した後に、細胞の内部への菌体(TL2937株)の被貪食能を共焦点レーザスキャン顕微鏡(Carl Zeiss Microscopy、LSM-700)で観察した。
レーザー顕微鏡を用いて観察した結果を図5に示す。ここで、青色は、核を、赤色は、エンドソームを、緑色は、菌体(細菌)を示し、白いバーは、100μmを表す。このとき、腸管由来CD172a陽性および末梢血由来CD172a陽性では、細胞質の内部のエンドソームに、蛍光標識された菌体が取り込まれていることが観察された(図5)。なお、図5Bと図5Dは、図5Aと図5Cの垂直断面による観察の結果である。このとき、末梢血由来CD172a陽性および腸管由来CD172a陽性では、TL2766株と接触させた細胞において、その細胞質の内部に、ほとんど菌体は観察されなかった(データは示していない)。
これらの結果から、腸管由来の細胞と同様に、末梢血由来の細胞でも、その表面に菌体が付着していることと、細胞質の内部に、菌体が貪食されていることが観察された。つまり、末梢血由来の細胞でも、腸管由来の細胞と同等の性質を示すことが定性的に目視で確認されており、プロバイオティクスを用いた実験系において、末梢血由来の細胞を用いることで、腸管由来の腸管由来の細胞の性質を調べられること、すなわち、腸管免疫系への効果を末梢血由来の細胞で確認できることが確認された。さらに、実際に計数する細菌毎に検量線を作製することで、細胞を定量的に観察できることが確認された。
例5.透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察
(1)顕微鏡による観察
塩酸で希釈したコラーゲン(新田ゼラチン)を用いて、トランズウェルインサート(0.4μmの小孔ポリエステルメンブレン(Corning))の膜表面をコートしてから、上記の磁気ビーズ分離法で得られた末梢血由来CD172a陽性および腸管由来CD172a陽性の細胞を5×10個/ウェルで播種し、細胞を定着(1時間)させた。ここで、TL2766株およびTL2937株を殺菌処理してから、これらの菌体を5×10個/ウェルで接触(37℃、2時間)させた。その後に、0.2MのHEPESバッファーで洗浄してから、2.5%(v/v)のグルタルアルデヒド(日新EM)で固定処理(4℃、一晩)した。さらに、0.2MのPBSで洗浄してから、4重量%の四酸化オスミウムで固定処理(4℃、4時間)した。ここで、50%(v/v)、70%(v/v)、80%(v/v)、90%(v/v)、95%(v/v)および100%(v/v)のエタノールで脱水(10分間)してから、QY1(n−ブチルグリシジルエーテル)で置換した。さらに、エポン樹脂に置換して、チャンバーから膜を切除し、エポン樹脂に膜を包埋した。そして、熱風乾燥(60℃、3日間)してから、標本をトリミングした後に、ウルトラミクロトーム(ウルトラカットS、Leichert)に、ガラスナイフを装着して、厚さが0.2μmの超薄切片を作製した。さらに、これらの切片をグリッドの上に載せて、白金ブルーと鉛染色液で電子染色して乾燥させ、これらの細胞を透過型電子顕微鏡(ZeroA H-7650)で観察した。
透過型電子顕微鏡を用いて所定の倍率で観察した結果を図6に示す。このとき、腸管由来CD172a陽性では、TL2766株と接触させた細胞に比べて、TL2937株と接触させた細胞において、細胞質の内部に菌体が多く観察された。しかし、無接触の細胞(対照の細胞)においても、細胞質の内部に菌体が多く観察され、細胞に接触させた菌体と、腸管から取り込まれる前から既に内在していた細菌を区別しにくかった。一方、末梢血由来CD172a陽性では、対照の細胞において、細胞質の内部に菌体は観察されず、TL2937株で接触させた細胞において、細胞質の内部にTL2937株らしき菌体が観察された。
これらの結果から、細胞質の内部に貪食された菌体(細菌)を定量的に計数できることを確認できた。
(2)細胞内部に取り込まれた細菌(菌体)の計測(カウント)
末梢血由来CD172a陽性における細胞の透過型電子顕微鏡の写真から以下の基準により、細胞の内部に貪食された菌体数を定量的に計数した。すなわち、(1)細胞内のエンドソーム(空隙)に有る黒い物体を、細胞の内部に貪食された菌体とした。(2)菌体を1つ以上で取り込んだ細胞を、計数の対象とした。(3)細胞膜が破壊された細胞を、計数の対象から除外した。(4)計数の対象の細胞を、ランダムに選定した。
末梢血由来CD172a陽性におけるTL2766株と接触させた細胞およびTL2937株と接触させた細胞の27個ずつについて、それぞれ細胞の内部に貪食された菌体数を定量的に計数(評価)した。そして、これらの菌体数から計算した算術平均を表1に示す。
ここで、TL2766株と接触させた細胞の菌体数の平均は、6.3個であるのに対して、TL2937株と接触させた細胞の菌体数の平均は、17.4個であることを確認できた。つまり、TL2766株およびTL2937株の被貪食能を定量的に計数(評価)できることが示された。なお、TL2766株では、20個以上の菌体を取り込んだ細胞を認められなかったのに対して、TL2937株では、全体に占める20個以上の菌体を取り込んだ細胞の割合が37%に上った。
また、TL2766株とTL2937株(菌体)をそれぞれ、細胞に接触させた後、細胞当たりの貪食された菌体数をカウントし、カウントした数をグラフにした(図7)。なお、細菌の計測(カウント)方法は、上記した(1)〜(4)の方法による。その結果、TL2937株と接触させた細胞の方が、貪食する菌体数が多くなる傾向が確認された。細胞内に小胞が認められ、その中に菌体(黒色に見える)を計測した(図7)。なお、図7中のバー(**)は2群間に有意差(p<0.01)があることを示す。
例6.TLR2の貪食への関与の確認
本発明者らの研究により、TL2937株は、腸管上皮細胞に発現するTLR2やTLR4と結合することにより、サイトカイン発現を抗炎症的に調節していることがわかっている。そこで、上記貪食量の差にTLR2が関与しているか否かを確認するためのブロッキング試験を行った。
上記(4−1)で得られた細胞を、I型コラーゲンでコートされた12ウェルプレートに、それぞれ1.5×10個/ウェルで播種した。一部のウェルには、さらに抗ヒトTLR2ウサギIgG抗体(Santa Cruz, CA)またはアイソタイプ抗体を加え、12時間インキュベートした。これに5×10個/mlの蛍光標識したTL2937株およびTL2766株を加え、12時間刺激し、平均蛍光強度を観察した。
結果を図8に示す。TL2937株においては、TLR2のブロッキングにより、平均蛍光強度が有意に低下したことがわかる。一方、TL2766株においては、平均蛍光強度に変化が見られなかった(データ示さず)。したがってこの結果は、TL2937株がTLR2と結合することにより、貪食細胞表面への付着および貪食が生じていることを示唆している。
例7.RT−PCRによるサイトカイン発現の解析
細胞の内部に取り込まれた菌体数の計数から、TL2766株に比べて、TL2937株では、細胞への被貪食能が高いことが示された。そこで、末梢血由来の各種免疫担当細胞における、各プロバイオティクスによるサイトカインの発現の変化について、RT−PCRを用いて解析した。
具体的には、例1(1)の比重法で得られた細胞を末梢血単球、例1(1)で得られた細胞を未成熟末梢血単球由来樹状細胞、さらに未成熟末梢血単球由来樹状細胞をLPS(1μg/ml、Sigma)で刺激した細胞を成熟末梢血単球由来樹状細胞とし、Shimazu et al., Infect Immun. 2012 Jan;80(1):276-88に記載されたリアルタイムPCRによる定量的発現解析と同様の方法で行った。簡潔には、上記例6と同様に各細胞をプロバイオティクスで刺激し、TRIzol(Sigma)を用いて全RNAを採取し、Quantitect Reverse Transcription kit(Qiagen)を用いてcDNAを合成し、7300 Real-time PCR System(Applied Biosystems, Warrington, UK)およびPlatinum SYBR Green qPCR SuperMix UDG with ROX(Invitrogen)を用いて行った。分析に用いたプライマーは、Villena et al., Immunol. 2012;19:1038-53およびMoue et al., Biochim Biophys Acta. 2008;1780:134-44に記載のIL−1β、IL−12p40およびIL−10プライマーを用い、50℃で2分間、95℃で2分間、その後95℃で15秒間、60℃で30秒間および72℃で30秒間のサイクルを40サイクルというPCR条件で行った。内部標準としてはβ−アクチンを用いた。
結果を図9に示す。図中の「*」、「**」、「***」は、それぞれの対照に比べた有意差として、p<0.05、p<0.01、p<0.001を表す。
まず、末梢血由来単球においては、TL2937株とTL2766株においては差異が認められなかった。IL−1βの発現に関しては、成熟および未成熟の樹状細胞で、いずれも両株に差異が認められたが、IL−12p40の発現では未成熟の樹状細胞でのみ両株の差異が認められ、IL−10の発現では未成熟の樹状細胞では対照、TL2937株およびTL2766株にそれぞれ差異が認められたものの、成熟樹状細胞ではそれらに差異が認められなかった。
本発明により、簡便な方法を用いて、腸管免疫系に有用に作用するプロバイオティクスをスクリーニングすることが可能となる。有用なプロバイオティクスは現在医薬の有効成分としても注目されており、これらプロバイオティクスを経口摂取用組成物に配合することにより、ヒトや家畜において効果的に炎症性消化管障害などを抑制することが可能となる。

Claims (8)

  1. 有用なプロバイオティクスをスクリーニングする方法であって、
    (a)TLR2を発現する貪食細胞と、候補プロバイオティクスとを接触させる工程、
    (b)前記貪食細胞による候補プロバイオティクスの貪食量を定量する工程、
    (c)得られた貪食量と基準値とを比較する工程、
    を含み、貪食量が基準値よりも有意に大きい場合、プロバイオティクスとして有用であると判断する、前記方法。
  2. プロバイオティクスが、イムノバイオティクスである、請求項1に記載のスクリーニング方法。
  3. TLR2を発現する貪食細胞が、未分化細胞から誘導されたものである、請求項1または2に記載のスクリーニング方法。
  4. 未分化細胞が、末梢血から単離した単球である、請求項3に記載のスクリーニング方法。
  5. 貪食細胞が、未成熟単球由来樹状細胞である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  6. 基準値が、TLR2をブロッキングした貪食細胞と候補プロバイオティクスとを接触させた際に得られる貪食量である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
  7. 貪食細胞表面のTLR2と結合し、貪食される、Lactobacillus属菌。
  8. Lactobacillus jenseniiである、請求項7に記載のLactobacillus属菌。
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