JP2018039797A - 脳機能改善剤 - Google Patents

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Katsuyoshi Saito
勝義 齋藤
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龍史 落合
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広隆 佐藤
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和哉 高妻
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Abstract

【課題】認知柔軟性、実行機能、注意制御等の高次脳機能の改善に有効な素材の提供。【解決手段】クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種を有効成分ととし、1日当り10〜10000mgを摂取する脳機能改善剤。特に認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間又は認知機能速度の低下抑制または改善剤である、該脳機能改善剤。【効果】認知柔軟性、実行機能、注意制御機能等の高次脳機能、および加齢によるそれらの低下を改善することができ、特に認知機能の低下やその恐れがある年配者における、日常生活における認知行動の性能の改善、およびそれに伴う生活の質の向上に有効である。【選択図】なし

Description

本発明は、脳機能改善剤に関する。
クロロゲン酸は、コーヒー豆、ジャガイモ、米糠等に見出されるポリフェノール類であり、これまでに抗酸化作用、血圧降下作用、血糖値上昇抑制、脂質代謝促進等の生理活性を有することが報告されている。
クロロゲン酸は、神経・精神状態にも影響を与えることが報告されている。特許文献1〜3には、自律神経機能向上、抗ストレス、大脳疲労回復に対してクロロゲン酸が有効であることが開示されている。特許文献4には、クロロゲン酸がβアミロイドによる細胞傷害の抑制作用を有し、アルツハイマー病の予防または治療に有効であること、および老化促進モデルマウスの記憶学習障害に対する改善効果を有することが開示されている。さらに、クロロゲン酸がヒトの脳機能に対して作用することも報告されている。特許文献5および非特許文献1には、50〜70代の年配者において、カフェイン含有コーヒーおよびクロロゲン酸類高含有脱カフェインコーヒーの摂取により、急性的に、持続的な注意力、覚醒レベルおよび気分(mood)が向上したことが記載されている。
特開2002−145765号公報 特開2006−265231号公報 特開2006−160721号公報 再表2007/091613号公報 特表2013−543856号公報
Psychopharmacology, 2012, 219:737-749
認知柔軟性、実行機能、注意制御機能等の高次脳機能や、加齢によるそれらの低下に対するクロロゲン酸類の作用については、未だ明らかでない。本発明は、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能等の高次脳機能の改善に有効性を発揮する脳機能改善剤を提供することに関する。
本発明者らは、認知症を有していないが認知機能の低下を示す年配者に対するクロロゲン酸類の作用を調べた結果、クロロゲン酸類の摂取が、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能等の高次脳機能の改善に有効であることを見出した。
したがって、本発明は、クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、脳機能改善剤を提供する。
また本発明は、クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善剤を提供する。
本発明によれば、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能等の高次脳機能、および加齢によるそれらの低下を改善することができる。本発明は、特に認知機能の低下やその恐れがある年配者における、日常生活における認知行動の性能の改善、およびそれに伴う生活の質の向上に有効である。
本発明において使用される脳機能改善のための有効成分は、クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明で用いられるクロロゲン酸類の例としては、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸および5−カフェオイルキナ酸を含むモノカフェオイルキナ酸;3−フェルロイルキナ酸、4−フェルロイルキナ酸および5−フェルロイルキナ酸を含むモノフェルロイルキナ酸;3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸および4,5−ジカフェオイルキナ酸を含むジカフェオイルキナ酸、が挙げられる。本発明で用いるクロロゲン酸類は、上記に挙げた化合物のいずれか1種または2種以上の組み合わせであり得る。上記に挙げたクロロゲン酸類中のモノカフェオイルキナ酸およびモノフェルロイルキナ酸の割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上である。
クロロゲン酸類は、これを含有する天然物、特に植物から抽出することもでき、化学合成により工業的に製造することもできる。クロロゲン酸類には、立体異性体が存在し、本発明では、それらの純粋な立体異性体またはそれらの立体異性体の混合物を用いることができる。
好ましくは、本発明で用いるクロロゲン酸類は、それらを含有する植物から抽出することができる。クロロゲン酸類を含有する植物の例としては、コーヒー、キャベツ、レタス、アーチチョーク、トマト、ナス、ジャガイモ、ニンジン、リンゴ、ナシ、プラム、モモ、アプリコット、チェリー、ヒマワリ、モロヘイヤ、カンショ、南天の葉、ブルーベリー、小麦などが挙げられる。
より好ましくは、クロロゲン酸類は、コーヒー生豆、浅焙煎コーヒー豆、南天の葉、リンゴ未熟果、ヒマワリ種等より抽出することができる。例えば、アカネ科コーヒー(Coffee arabica LINNE)の種子より、温時アスコルビン酸、クエン酸酸性水溶液または熱水で抽出した後、必要に応じてろ過、活性炭およびイオン交換樹脂処理することでクロロゲン酸類を含む生コーヒー豆抽出物を調製することができる。あるいは浅焙煎コーヒー豆からクロロゲン酸類を含む抽出物を調製しても良い。該浅焙煎コーヒー豆のL値は、クロロゲン酸類含量等の観点から、27以上が好ましく、35以上がより好ましく、40以上がさらに好ましく、また風味の観点から、62未満が好ましく、60以下がより好ましく、55以下がさらに好ましい。ここで、本明細書において「L値」とは、黒をL値0とし、また白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明度を色差計で測定したものである。または、本発明では、市販の生コーヒー豆抽出物、リンゴ抽出物、ヒマワリ種抽出物を、クロロゲン酸類として用いることができる。
クロロゲン酸類は、塩にすることにより水溶性を向上させ、生理学的有効性を増大させることができる。本発明で用いられるクロロゲン酸類の塩としては、薬学的に許容される塩であればよい。このような塩形成用の塩基物質としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;水酸化アンモニウム等の無機塩基;アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基が用いられるが、このうち、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物が好ましい。
本明細書において「脳機能」とは、主に「認知機能」のことを意味し、好ましくは認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間および認知機能速度から選択される高次脳機能をいう。
認知柔軟性とは、不適応な考えを入れ替えたり、バランスのある思考や適応した思考を取り入れる能力のことをいう(徳吉陽河・岩崎祥一(2012)認知の柔軟性尺度(CFI)日本語版の作成と妥当性 日本心理学会第76回大会論文集、672)。認知柔軟性が低下すると、周りの状況の変化に対処することが難しくなる。
実行機能とは、目標を設定しそれを達成するための計画を立て、その計画を実行する、さらには効率的にそれを行う能力のことである(医学書院、鈴木隆雄 著 基礎からわかる軽度認知症(MCI)、p69)。実行機能の低下は、段取りをつけて物事を行えない、整理できずに机に書類が溜まるなどの形で、日常生活に支障をもたらす(診断と治療社、田平武 著 かかりつけ医のための認知症診療テキスト−実践と基礎)。
注意制御機能とは、多くの情報の中から、ある重要な情報に意識的に注意を向ける機能をいう(株式会社サイエンス社、大山正・中島義明 編、実験心理学への招待[改訂版]、p99)。注意制御機能は主に「選択性注意」、「注意の転換」、「注意の分割」の3つの機能から構成される(早稲田大学臨床心理学研究、第13巻、第1号、p33)。選択性注意とは、多くの刺激や対象から、特定の刺激や対象に注意を向ける機能である。注意の転換とは、特定の刺激や対象に向けていた注意を必要に応じて中断し、他の刺激や対象に適切に切り替える機能である。注意の分割とは、複数の対象に同時に注意を配分させる機能である。注意制御は、注意の単純な持続(単純注意力)とは異なる機能として認識されている。例えば、単純な注意の持続力は加齢による変化がほとんどないのに対し(株式会社有斐閣、日本認知心理学会 編、認知心理学ハンドブック、p102)、注意制御機能は加齢によって低下する高次脳機能である(株式会社有斐閣、日本認知心理学会 編、認知心理学ハンドブック、p108−109およびTechnical Report on Attention and Cognition(2003)No.13)。
処理速度とは、脳内で情報を認識し、適切に処理する速さの指標である。処理速度が低下すると、問題の解決や判断、意思の決定に時間がかかるようになる。また、処理速度が低下すると、先に処理した情報が次の処理を実行している間に消失してしまうため、複数のプロセスを経る課題の遂行に支障をきたす(神戸大学大学院人間発達環境学研究科 研究紀要、第6巻第1号、2012年)。
反応時間とは、刺激が呈示されてから、反応が生起するまでにかかる時間のことである。一般に反応時間は、1種類の刺激に対して所定の反応を行う場合の単純反応時間と、複数の刺激に対してそれぞれ異なる反応を行う選択反応時間とに分かれる(心理学辞典、有斐閣、1999年)。選択反応時間は、テニスや野球などのスポーツ競技において重要であるとともに、日常生活においても欠かせないものである。特に、自動車の運転においては重要であり、高齢者の自動車による交通事故が増加している原因の1つとして、選択反応時間の低下が考えられる(川崎医療福祉学会誌、Vol.24,No.2,2015,pp165−172)。好ましくは、本明細書における反応時間とは選択反応時間である。また好ましくは、本明細書における選択反応時間とは、抑制機能が必要な課題に対する選択反応時間である。抑制機能とは、当該の状況で優勢であるが、不適切な行動や思考を抑制する能力、あるいは、自分にとっては優勢であるが、その表象が文脈にとって不適切であると考えられる反応を抑制する機能である(平成25年度 広域科学教科教育学研究経費研究報告書、知的障害児のプランニングと抑制機能の支援に関する基礎的・実践的研究、2014年3月15日、[www.u-gakugei.ac.jp/~graduate/rengou/kyouin/news/data_kouiki_h25/05.pdf])。抑制機能が低下すると、衝動的な行為をコントロールすることが難しくなり、現在の状況を把握しつつ、先を予測しながら最適な行動を選ぶことができなくなる。抑制機能が必要な課題に対する選択反応時間は、後述するストループテストによって測定することができる。
認知機能速度とは、精神運動速度とも呼ばれ、刺激に対して、適切な反応を準備し、動作に移すスピードの指標である(Br.J.clin.Pharmac,1980,Vol.10,pp189−209)。精神運動速度が低下すると、日常生活における体の動きが緩慢となり、高齢者において転倒のリスクが増加することが知られている(J.Gerontol.B.Psychol.Sci.Soc.Sci,2012,Vol.67,pp720−8)。
上記の脳機能は、例えばCNS Vital Signsを用いた認知機能検査によって評価することができる。CNS Vital Signsは、米国のCNS Vital Signs社が開発したパソコン上で行う認知機能検査バッテリーである(Archives of Clinical Neuropsychology,2006,21(7):623−643参照)。好ましくは、CNS Vital Signsの言語記憶テスト、視覚記憶テスト、指叩きテスト、Symbol Digit Coding(SDC)テスト、ストループテスト、注意シフトテスト(Shifting Attention Test;SAT)、持続処理テスト(Continuous Performance Test:CPT)が評価に使用される。
言語記憶テストは、画面に表示された複数の単語を記憶した後、新たに表示される単語の中から記憶した単語を見つける課題であり、言語記憶力の評価に使用される。
視覚記憶テストは、画面に表示された複数の図形を記憶した後、新たに表示される図形の中から記憶した図形を見つける課題であり、視覚記憶力の評価に使用される。
さらに、言語記憶テストと視覚記憶テストの成績から総合記憶力が評価される。
指叩きテストは、決められた時間内にキーボードのスペースキーをできるだけ早く叩く課題であり、運動速度の評価に使用される。
SDCテストは、パソコン画面の上部に表示されたシンボルと数字の組み合わせの表を参照して、画面下部の空欄の表にシンボルに対応する数字を入れる課題であり、脳の情報処理速度の評価に使用される。
さらに、指叩きテストとSDCテストの成績から認知機能速度が評価される。認知機能速度とは、情報を反応および処理し動作に移す速さのことである。
ストループテストは、画面に表示された文字の色と意味との一致および不一致を答えるもので、文字の色と意味という異なる情報のうち一方を抑制し、他方に注意を配分する能力が要求される課題である。ストループテストは、CNS Vital Signsを用いた認知機能検査において反応時間の評価に使用される。ここで言うストループテストにより評価される反応時間とは、抑制機能が必要な課題に対する選択反応時間である(平成25年度 広域科学教科教育学研究経費研究報告書、知的障害児のプランニングと抑制機能の支援に関する基礎的・実践的研究、2014年3月15日、[www.u-gakugei.ac.jp/~graduate/rengou/kyouin/news/data_kouiki_h25/05.pdf])。
注意シフトテストは、指図されたルールに従って、画面上部の図と適合する図を画面下部から選択する課題である。適合のルールは2パターン(色または形)からランダムに決定される。このテストは、実行機能の評価に使用される。
持続処理テストは、画面にランダムに表示される文字の中に予め指示された文字が表示されたときのみ応答する課題であり、単純注意力の評価に使用される。
さらに、ストループテストと注意シフトテストの成績から認知柔軟性が評価される。
さらに、ストループテスト、注意シフトテスト、および持続処理テストの成績から総合注意力(単純注意力、注意制御能力を含めた総合的な注意力)が評価される。
さらに、総合記憶力、認知機能速度、反応時間、総合注意力、認知柔軟性の評価結果から、神経認知インデックスを求めることができる。これは認知機能全体の総合的な能力を表す指標となる。
上記で評価される脳機能の低下は、生活の質(QOL)の低下につながる。例えば、認知柔軟性の低下は、複数の作業間の切り替えを効率的に行えないことにつながり、また実行機能の低下は、段取りよく行動することが難しくなることにつながり、また注意制御機能の低下は、多数の事項中から必要なことを選ぶことなどが難しくなったり、複数のことを同時に処理するのが難しくなることなどにつながる。これらはいずれも日常生活の不利益となる。
したがって、本発明による脳機能の改善は、QOLの改善をもたらす。QOLは、SF−36(MOS 36−Item Short−Form Health Survey)により測定される健康関連QOL(HRQOL:Health Related Quality of Life)のスコアに基づいて評価することができる。SF−36は、疾患罹患者や、疾患を有していない者を含む幅広い対象者におけるQOLを評価することができる尺度である。SF−36の健康関連QOLでは、8つの健康概念(身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、心の健康)がスコア化される。本発明による脳機能の改善に伴うQOL改善は、好ましくは、身体機能、日常役割機能(身体)または活力の改善である。なお、「身体機能」とは、歩いたり、走ったり、スポーツをしたりするための機能のことであり、「日常の役割機能(身体)」とは、仕事やふだんの活動など、日常生活をするための機能のことであり、「活力」とは、活動を生み出す力、元気よく動いたり働いたりする力のことである。
本発明において、クロロゲン酸類またはその塩は、ヒトおよび非ヒト動物のいずれに対しても使用することができるが、好ましくはヒトに使用される。より好ましくは、認知症と診断されていないが認知機能の低下があり、認知機能の改善を必要とするかまたは所望する者、加齢に伴う日常生活における認知機能の低下の抑制または改善を所望する者、認知機能の低下の抑制を所望する中高年者、などに使用される。認知症と診断されていないが認知機能が低下した者の例としては、認知機能の低下を自覚するが、Mini−Mental State Examination(MMSE)において24点以上の得点である者が挙げられ、より具体的には、軽度認知障害(MCI)の者が挙げられる。MMSEは国際的に最も広く用いられている認知症のスクリーニング検査であり、総得点30点中23点以下は認知症の疑いがあると判定される(医学書院、鈴木隆雄 著 基礎からわかる軽度認知症(MCI)、p116)。クロロゲン酸類またはその塩は、上記のヒトおよび非ヒト動物における認知柔軟性、実行機能、注意制御機能等の脳機能の低下抑制もしくは改善(但し、注意力の持続性の向上、気分または覚醒の改善を除く)のために有効である。また、クロロゲン酸類またはその塩は、該認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善とともに、身体機能、日常役割機能(身体)または活力の改善をもたらす。
本発明により低下抑制または改善される機能、および当該機能の改善や低下により生じる具体的な状態を表1〜2に示す。
Figure 2018039797
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本発明において、クロロゲン酸類またはその塩は、そのまま服用してもよいが、好ましくは、上述した薬学的に許容される塩を、賦形剤、担体等の薬品および食品分野で慣用の補助成分、例えば乳糖、ショ糖、液糖、蜂蜜、ステアリン酸マグネシウム、オキシプロピルセルロース、各種ビタミン類、クエン酸、リンゴ酸、香料、無機塩などとともに、医薬、医薬部外品、食品組成物等にすることができる。医薬、医薬部外品、食品組成物等の形態としては、カプセル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、ドリンク剤、注射剤、点滴剤、その他サプリメントの形態、または通常の任意の食品組成物の形態、等にすることができる。
上記医薬、医薬部外品、食品組成物等には、必要に応じて、他の生理活性成分、ミネラル、ビタミン、ホルモン、栄養成分、香味剤等を混合することも可能である。食品組成物は、固形もしくは半固形食品、液状食品(飲料等)、サプリメント等であり得る。また、食品組成物としては、緑茶系飲料、烏龍茶系飲料、紅茶系飲料、コーヒー系飲料、アイソトニック系飲料、エナジードリンクなどが好ましい例として挙げられる。食品組成物の具体例の1つとしては、クロロゲン酸類またはその塩に、クエン酸、ビタミン類、甘味料などを配合した飲料が挙げられる。該食品組成物におけるクロロゲン酸類またはその塩の含有量は、好ましくは0.01〜90質量%、より好ましくは0.05〜70質量%、さらに好ましくは0.1〜50質量%である。
したがって、本発明の好ましい一実施形態は、クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、脳機能改善剤、より詳細には、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善剤である。
本発明の別の好ましい一実施形態は、クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、脳機能改善用食品組成物、より詳細には、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善用の食品組成物である。
本発明において、クロロゲン酸類またはその塩の服用量は、成人1日あたり10〜10000mg、より好ましくは50〜5000mg、さらに好ましくは100〜1000mgである。服用の頻度は、好ましくは1週間に数回、2日に1回、1日1回、またはそれ以上であり、より好ましくは1日1回以上であり、さらに好ましくは1日1回であり、これを、好ましくは就寝前に服用する。服用の期間は、長期的または持続的に服用することが望ましく、例えば2週間以上、好ましくは4週間以上、より好ましくは8週間以上、さらに好ましくは16週間以上、さらに好ましくは24週間以上である。本発明の好ましい実施形態においては、クロロゲン酸類またはその塩は、毎日、2週間以上、好ましくは8週間以上、より好ましくは16週間以上、さらに好ましくは24週間以上服用される。
本発明はまた、例示的実施形態として以下の物質、製造方法、用途、方法等を包含する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〔1〕クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、脳機能改善剤。
〔2〕好ましくは、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善剤である、〔1〕記載の脳機能改善剤。
〔3〕好ましくは、注意制御機能が、選択性注意機能、注意の転換機能および注意の分割機能からなる群より選択される少なくとも1種である、〔2〕記載の脳機能改善剤。
〔4〕好ましくは、認知症と診断されていないが認知機能の低下がある者、加齢に伴う日常生活における認知機能の低下の抑制もしくは改善を所望する者、または認知機能の低下の抑制を所望する中高年者の脳機能を改善する、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の脳機能改善剤。
〔5〕認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善とともに、身体機能、日常役割機能(身体)または活力の改善をもたらす〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の脳機能改善剤。
〔6〕クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善、および身体機能の改善剤。
〔7〕クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善、および日常役割機能(身体)の改善剤。
〔8〕クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善、および活力の改善剤。
〔9〕好ましくは、毎日2週間以上、より好ましくは4週間以上、さらに好ましくは8週間以上、さらに好ましくは16週間以上、さらに好ましくは24週間以上服用され、
なお好ましくは、毎日2週間以上、より好ましくは4週間以上、さらに好ましくは8週間以上、さらに好ましくは16週間以上、さらに好ましくは24週間以上、就寝前に服用される、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載の剤。
〔10〕好ましくは、クロロゲン酸類またはその薬学的に許容される塩として、1日あたり10〜10000mg摂取される、〔1〕〜〔9〕のいずれか1項記載の剤。
〔11〕クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、脳機能改善用食品組成物。
〔12〕好ましくは、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善用である、〔11〕記載の食品組成物。
〔13〕クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善、および身体機能の改善用食品組成物。
〔14〕クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善、および日常役割機能(身体)の改善用食品組成物。
〔15〕クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善、および活力の改善用食品組成物。
〔16〕好ましくは、注意制御機能が、選択性注意機能、注意の転換機能および注意の分割機能からなる群より選択される少なくとも1種である、〔12〕〜〔15〕のいずれか1項記載の食品組成物。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
製造例 クロロゲン酸類含有組成物の製造
生コーヒー豆の粉砕物を熱水で抽出後、スプレードライ乾燥し、得られたパウダーをエタノール水溶液に溶解させてろ過し、ろ過液を活性炭およびイオン交換樹脂を用いたカラムで処理することで生コーヒー豆抽出物を得た。
生コーヒー豆抽出物を酸味料、甘味料およびその他材料と配合して、クロロゲン酸類を含む飲料(実施例1:クロロゲン酸類330mg/100mL含有)を調製した。また、生コーヒー豆抽出物を含まないこと以外は実施例1と同じ組成を有する飲料(比較例1:クロロゲン酸類不含有)を調製した。
生コーヒー豆抽出物をスプレードライ乾燥し、得られたパウダーを甘味料およびその他材料と配合して、クロロゲン酸類を含む顆粒食品(実施例2:クロロゲン酸類360mg/3.8g)を調製した。また、生コーヒー豆抽出物を含まないこと以外は実施例2と同じ組成を有する顆粒食品(比較例2:クロロゲン酸類不含有)を調製した。
調製した飲料および顆粒食品中のクロロゲン酸類定量にはHPLC(日立製作所(株)製)を使用した。HPLCでは、試料1gを精秤後、溶離液にて10mLにメスアップし、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm、ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。5−カフェオイルキナ酸を標準物質として、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸、3−フェルロイルキナ酸、4−フェルロイルキナ酸、5−フェルロイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸および4,5−ジカフェオイルキナ酸の合計量を求めることで、クロロゲン酸類を定量した。実施例1(100mL)におけるクロロゲン酸類の合計量は330mg、うち3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸、3−フェルロイルキナ酸、4−フェルロイルキナ酸、5−フェルロイルキナ酸の合計量は270mgであった。実施例2(3.8g)におけるクロロゲン酸類の合計量は360mg、うち3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸、3−フェルロイルキナ酸、4−フェルロイルキナ酸、5−フェルロイルキナ酸の合計量は300mgであった。比較例1および比較例2におけるクロロゲン酸類の合計量は0mgであった。
試験例1
1.試験手順
厚生労働省作成の「基本チェックリスト」にて認知機能の項目(「周りの人から『いつも同じことを聞く』などの物忘れがあると言われますか」、「自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか」、「今日が何月何日かわからない時がありますか」)に該当のあった60歳以上の男女8名を被験者とし、試験を実施した。被験者には、試験実施前にMini−Mental State Examination(MMSE)を行った。結果は8名の平均で28.4点、最低は26点、最高は30点であり、被験者が認知症である可能性は低いと判断された。試験では、被験者に試験飲料(実施例1)を1日1本(100mL)、24週間、就寝前に摂取させた。試験飲料摂取前と摂取24週間後に、下記認知機能テストによる認知機能の評価と、健康関連QOLの評価を行った。
(認知機能テスト)
認知機能テストにはCNS Vital Signs(CNS Vital Signs社、日本語版)を用いた(Archives of Clinical Neuropsychology,2006,21(7):623−643参照)。本試験例では、以下7つのテストを実施した。
(1)言語記憶テスト
最初にパソコン画面に15個の単語が2秒に1つずつ表示され、被験者はそれを記憶する。続いて被験者は新たな15個の単語に混ざって表示される記憶した単語を見つける。
(2)視覚記憶テスト
最初にパソコン画面に15個の幾何学図形が2秒に1つずつ表示され、被験者はそれを記憶する。続いて被験者は新たな15個の図形に混ざって表示される記憶した図形を見つける。
(3)指たたきテスト
被験者は右手の人差し指でスペースキーを10秒間出来るだけ早く叩く。同じことを左手でも行う。
(4)Symbol Digit Coding (SDC) テスト
パソコン画面の上部にシンボルと数字の組み合わせの表が表示され、被験者は画面下部の空欄の表にシンボルに対応する数字を入れる。
(5)ストループテスト
ストループテストは3つのパートから成る。第1パートでは、黒文字で赤、黄、青および緑の文字がランダムに画面に現れる。被験者は、文字が現れたらできるだけ早くスペースキーを押す(単純反応)。第2パートでは、赤、黄、青および緑の文字が色文字で表示される。被験者は文字の色と文字の意味が一致したらスペースキーを押す(複合反応)。第3パートでは、赤、黄、青および緑の文字が色文字で表示される。被験者は文字の色が文字の意味と一致しない時だけスペースキーを押す(ストループ反応)。
(6)注意シフトテスト(Shifting Attention Test;SAT) 画面に3つの図形が、上部に1つ、下部に2つ表示される。被験者は「形」か「色」の適合のルールを指示され、上部の図と適合する図を下部の2つの図から選ぶ。指示される適合のルール(形が合っている・色が合っている)、および3つの図形の色(赤・青)と形(丸、四角)はランダムに変わる。
(7)持続処理テスト(Continuous Performance Test:CPT)
被験者は、画面にランダムに表示される文字の中で、「B」が表示された場合だけ応答し、その他の文字には応答しない。テストは5分間継続される。
(認知機能評価)
各テストの結果は、CNS Vital Signsの計算方法に基づき、標準化スコアとして算出した。標準化スコアとは、各テストにおける被験者の年齢(5歳刻み)の平均値を100、標準偏差値を15として、正規化したものである。さらに各テストの結果から、CNS Vital Signsの計算方法に基づき、表3に示す認知機能領域のスコアを評価した。認知機能領域スコアは各テストの結果と同様に、標準化スコアとして算出した。
Figure 2018039797
(健康関連QOL評価)
健康関連QOL評価には、SF−36v2(iHope International株式会社)を用いた。SF−36v2は、複数の質問項目から8つの健康概念(身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、心の健康)を測定するものである。
2.結果
(認知機能テスト)
試験飲料の摂取前後で結果に差があったテストについて、標準化スコアの平均値を表4に示す。試験飲料摂取前後の差の検定は、paired t−testにて行った。
Figure 2018039797
試験飲料の摂取前後で差があった項目は以下のとおりである:
(1)言語記憶テスト
試験飲料の継続摂取により、言語記憶テストの正答数が増加する傾向が認められた。試験飲料の継続摂取により、言語性記憶が改善することが示された。
(2)指たたきテスト
試験飲料の継続摂取により、指たたきテストの回数が増加した。試験飲料の継続摂取により微細な運動のコントロール機能が改善することが示された。
(3)注意シフトテスト
試験飲料の継続摂取により、注意シフトテストの正答数が増加し、誤答数が減少した。注意シフトテストは、次々と変わるルールに対応するための注意の転換機能、認知の柔軟性、および複数の対象に同時に注意を配分させる注意の分割機能など高次の情報処理機能を要求するテストである。試験飲料の継続摂取により、これら機能が改善することが示された。一方で、注意の持続や集中力を評価する持続処理テストでは、試験飲料摂取前後の差はなかった(表5)。
Figure 2018039797
(認知機能領域スコア)
試験飲料摂取前と摂取24週間後における認知機能領域スコアの平均値を表6に示す。試験飲料摂取前後の差の検定は、paired t−testにて行った。
Figure 2018039797
表6のとおり、クロロゲン酸類を含む試験飲料の継続摂取によって、総合記憶力、言語記憶力、総合注意力、認知柔軟性、実行機能、運動速度の認知機能領域で改善が認められ、また神経認知インデックスも改善された。
試験飲料の継続摂取により、総合注意力の改善が認められた一方で、単純注意力には差がみられなかった。したがって、試験飲料の継続摂取により、単純注意力(注意の単なる持続)とは異なる注意制御機能が改善されたことが示された。すなわち、多くの刺激や対象から、特定の刺激や対象に注意を向ける機能(選択性注意)、特定の刺激や対象に向けていた注意を必要に応じて中断し、他の刺激や対象に適切に切り替える機能(注意の転換)、複数の対象に同時に注意を配分させる機能(注意の分割)の改善が示唆された。
また、試験飲料の継続摂取により、認知柔軟性および実行機能が改善した。したがって、不適応な考えを入れ替えたり、バランスのある思考や適応した思考を取り入れる能力、および目標を設定しそれを達成するための計画を立て、その計画を実行する、さらには効率的にそれを行う能力の改善が示された。
(健康関連QOL評価)
試験飲料摂取前と摂取24週間後における健康関連QOL評価(SF36スコア)の平均値を表7に示す。試験飲料摂取前後の差の検定は、paired t−testにて行った。
Figure 2018039797
表7のとおり、クロロゲン酸類を含む試験飲料の継続摂取によって、身体機能、日常役割機能(身体)および活力が改善された。
試験例2
物忘れの自覚症状を有するが、医師による診断では認知症と診断されていない50〜69歳の男女38名(MMSEが23点以上)を被験者として試験を実施した。試験では、被験者に実施例1(20名)または比較例1(18名)の飲料を1日1本(100mL)、16週間、就寝前に摂取させた。飲料摂取前、摂取8週間後および摂取16週間後に認知機能の評価を行った。
認知機能の評価では、試験例1と同様の手順により、表8に示す認知機能領域スコアを評価した。すなわち、試験例1に記載した手順で、認知機能テストを行い、次いで表8に示す認知機能領域についての標準化スコアを算出した。線形混合モデルによる交互作用(Time×Treatment)について、実施例1摂取群と比較例1摂取群との間で有意差検定を行った。
結果を表8に示す。実施例1の継続摂取によって、認知機能速度および運動速度のスコアが改善した。認知機能速度とは脳内で情報を処理し、反応を準備し、動作に移すスピードのことで、SDCテストと指たたきテストの結果から算出される(表3)。SDCテストはSymbol Digit Modalities Testとも呼ばれ、注意制御機能、特に注意の分割機能や、情報処理速度の指標として使われるテストである(医学書院、鈴木隆雄 著 基礎からわかる軽度認知症(MCI)、Arch Clin Neuropsychol. 2006 21(7):623−43)。したがって、クロロゲン酸類の摂取により、注意の制御機能を包含する高次脳機能の1つである認知機能速度も改善されることが示された。
Figure 2018039797
試験例3
健常な41〜55歳の男女9名を被験者として試験を実施した。試験では、被験者に実施例1の飲料を1日1本(100mL)、2週間、就寝前に摂取させた。実施例1の摂取前および摂取2週間後に認知機能の評価を行った。
認知機能の評価では、試験例1と同様の手順により、表9に示す認知機能領域スコアを評価した。すなわち、試験例1に記載した手順で、認知機能テストを行い、次いで表9に示す認知機能領域についての標準化スコアを算出した。摂取前後の差の有意差検定は、paired t−testにて行った。
結果を表9に示す。実施例1の2週間の継続摂取によって、言語記憶力、認知機能速度、認知柔軟性、処理速度、実行機能のスコアが改善し、神経認知インデックスも改善された。個別のテストでは、言語記憶テストの正答数、SDCテストの正答数、および注意シフトテスト(SAT)の正答数が向上した(表10)。
これらの結果から、クロロゲン酸類の継続摂取は、2週間という比較的短期間であっても、認知機能の改善に有効であることが示された。また、実施例1の摂取で処理速度およびSDCテスト結果が改善したことから、クロロゲン酸類の継続摂取で、脳内で情報を認識し、適切に処理する速さも改善するということが示された。
さらに本試験例では、一般的な認知機能障害の発症年齢よりも若年の、認知機能が正常な群を被験者としたにもかかわらず、被験者の認知機能向上に対するクロロゲン酸類の効果を確認することができた。これは、本発明の脳機能改善剤が、低下した脳機能を回復させるだけでなく、正常な脳機能をさらに向上させる効果を有することを示唆している。
Figure 2018039797
Figure 2018039797
試験例4
健常な46〜61歳の男女8名を被験者として試験を実施した。試験は2回行い、1回目と2回目の試験の間に2週間のウォッシュアウト期間をおいた。1回目の試験では、各被験者に実施例2または比較例2の試験食を1日1包(3.8g)、2週間、就寝前に水とともに摂取させた。2回目の試験では、各被験者に、1回目に摂取しなかった方の試験食を1日1包(3.8g)、2週間、就寝前に水とともに摂取させた。各試験における試験食摂取期間の前後に、試験例1と同様の方法にて認知機能の評価を行った。
認知機能の評価では、1回目および2回目の試験それぞれについて、試験例1と同様の手順により表11に示す認知機能領域スコアを評価した。すなわち、試験例1に記載した手順で認知機能テストを行い、次いで表11に示す認知機能領域についての標準化スコアを算出した。2元配置分散分析による交互作用(Time×Treatment)について、実施例2摂取群と比較例2摂取群との間で有意差検定を行った。
結果を表11に示す。実施例2の継続摂取によって、反応時間、総合注意力、認知柔軟性、処理速度および実行機能のスコアが改善し、神経認知インデックスも改善された。個別のテストでは、SDCテストの誤答の少なさ、ストループテストのストループ反応における反応時間、および注意シフトテスト(SAT)の誤答の少なさが向上した(表12)。ストループテストは、注意の制御機能、特に注意の選択機能の評価に使われるとともに、抑制機能の評価にも使用される代表的な神経心理テストである(平成25年度 広域科学教科教育学研究経費研究報告書知的障害児のプランニングと抑制機能の支援に関する基礎的・実践的研究)。また、このストループテストによって算出される反応時間のスコアが改善したことは、抑制機能が必要な課題に対する選択反応時間が改善したことを示す。したがって、これらの結果より、クロロゲン酸類の継続摂取は、2週間という比較的短期間であっても、注意の制御機能をはじめとする認知機能の改善に有効であることがさらに確認されるとともに、クロロゲン酸類が、食品形態として飲料のみならず顆粒状の形態であっても効果を発現することが示された。
Figure 2018039797
Figure 2018039797

Claims (9)

  1. クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、脳機能改善剤。
  2. 認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善剤である、請求項1記載の脳機能改善剤。
  3. 注意制御機能が、選択性注意機能、注意の転換機能および注意の分割機能からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2記載の脳機能改善剤。
  4. 認知症と診断されていないが認知機能の低下がある者、加齢に伴う日常生活における認知機能の低下の抑制もしくは改善を所望する者、または認知機能の低下の抑制を所望する中高年者の脳機能を改善する、請求項1〜3のいずれか1項記載の脳機能改善剤。
  5. 毎日2週間以上、就寝前に服用される、請求項1〜4のいずれか1項記載の脳機能改善剤。
  6. クロロゲン酸類またはその薬学的に許容される塩として、1日あたり10〜10000mg摂取される、請求項1〜5のいずれか1項記載の脳機能改善剤。
  7. クロロゲン酸類およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、脳機能改善用食品組成物。
  8. 好ましくは、認知柔軟性、実行機能、注意制御機能、処理速度、反応時間または認知機能速度の低下抑制または改善用である、請求項7記載の食品組成物。
  9. 注意制御機能が、選択性注意機能、注意の転換機能および注意の分割機能からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項8記載の食品組成物。
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