JP2018038968A - 分離装置、石炭灰の製造方法、および石炭灰の洗浄システム - Google Patents

分離装置、石炭灰の製造方法、および石炭灰の洗浄システム Download PDF

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Einosuke Fujimoto
栄之助 藤本
誠 神門
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誠 神門
知之 櫛谷
Tomoyuki Kushitani
知之 櫛谷
俊雄 江木
Toshio Egi
俊雄 江木
中島 剛
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中島  剛
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Abstract

【課題】本発明は、分離槽の底に石炭灰を堆積しにくくさせて、石炭灰の滞留時間を長くさせるとともに、石炭灰に付着した未燃炭素を気泡と接触し易くさせることにより、未燃炭素の残留量をより低減できる分離装置を提供することを目的とする。また、本発明は、従来よりも簡易な設備と低い洗浄コストで石炭灰の未燃炭素を低減できる石炭灰の製造方法および洗浄システムを提供することも目的とする。【解決手段】本発明は、混合液中の石炭灰と未燃炭素とを分離可能である分離槽と、堆積した石炭灰を含む混合液を循環可能である石炭灰循環路とを備え、石炭灰循環路が、分離槽の下部に設けられた石炭灰吸入口と、分離槽の上部に設けられた石炭灰吐出口とを繋ぐ流路として形成されており、気泡を分離槽の下部から供給する気泡供給機構が設けられている、分離装置に関する。【選択図】 図1

Description

本発明は、石炭灰と未燃炭素の分離装置、上記石炭灰の製造方法、および石炭灰の洗浄システムに関する。
石炭灰は、火力発電所において毎年1000万トン近く発生する産業廃棄物であり、このような石炭灰を廃棄することは、多大な国家的損失であることから、その再利用方法が検討されている。
一方、コンクリートの製造においては、その強度を高めるために、微粒子材料を生コンクリートに混和させるという手法が用いられていた。生コンクリートの混和材として、従来は川砂が用いられていたが、近年、採取可能な川砂の量が減少してきたため、生コンクリートの混和材として海砂が用いられるようになっている。しかし、海砂を大量に採取すると、海岸の景観が損なわれるだけでなく、周辺海域の生態系に深刻な悪影響を及ぼすという問題が生じていた。そのため、近年では、川砂や海砂の代わりに、生コンクリートの混和材に用いることのできる微粒子材料が望まれていた。
上記のような背景から、生コンクリートの混和材に有用な微粒子材料として、石炭灰が考えられるようになっている。毎年大量に発生する石炭灰を生コンクリートの混和材に用いることができれば、川砂や海砂を大量に浪費することなく、コンクリートの強度を高めることができるとともに、火力発電所において発生する大量の石炭灰を有効に再利用することが可能となる。
しかし、火力発電所で燃料として燃やされた石炭から生じる石炭灰の表面には未燃炭素が付着して残留しており、この未燃炭素が原因となって、石炭灰を生コンクリートの混和材として用いることが困難になっているという問題があった。
顕微鏡写真等で石炭灰の表面を観察すると、ケイ素やアルミニウムから構成される微小な球状のガラス質や結晶質などを包み込んだ固形状の未燃炭素が多数存在し、未燃炭素の表面には微細な凹凸や細孔が形成されていることが分かった。そのため、生コンクリートに石炭灰を混和すると、未燃炭素が混和剤を吸着して混和剤の働きを阻害することから、フレッシュコンクリートの流動性や空気量の制御が困難になるという問題があった。また、所定の流動性や空気量を得るためには混和剤の配合量を増加する必要があるため、コンクリートの製造コストが上昇するという問題点もあった。
したがって、未燃炭素の残留量を低減させた石炭灰を製造するための方法が必要とされている。そのような方法として、浮遊選鉱法によって石炭灰を洗浄して未燃炭素を低減させることが行われている(例えば、特許文献1および2参照)。
特許文献1には、被処理液を処理槽本体上部の循環液出口から取り出して処理槽本体下部の循環液入口より帰還させ、かつ処理槽本体下部へ気泡を注入し、被処理液を処理槽本体の内周面に沿って流入させることで、処理槽本体内の被処理液に渦流を生じさせ、かつ気泡を被処理液に分散させて不純物に付着させ、気泡付着不純物を浮遊させる方法が記載されている。
また、特許文献2には、洗浄後の未燃炭素の量を更に低減するために、未燃炭素を含む石炭灰と灯油を含む水溶液を練り混ぜる工程を追加し、更に超音波を印加することにより、洗浄後の石炭灰に含まれる未燃炭素の量を1質量%以下に低減する方法が記載されている。
特開2011−20070号公報 特開2010−23018号公報
しかし、特許文献1に記載された方法では、洗浄後の石炭灰に残存する未燃炭素の量は1質量%強程度であり、未燃炭素の量が1質量%以下の石炭灰を製造することは困難であった。
また、特許文献1に記載された分離装置では、循環液の流量が少ないと旋回流が生じにくくなり、分離槽の底に石炭灰が堆積して、未燃炭素の残留量を低減させにくくなるという問題があった。一方、石炭灰を堆積させないように、循環液出口から供給する循環液の流量を大きくすると、分離されて浮上していた未燃炭素が循環液入口から吸いこまれて撹拌され、未燃炭素の分離がうまくいかなくなったり、大きな粒子のフライアッシュも分離槽の上部へ浮上して、未燃炭素と一緒に除去されてしまったりする問題があった。
特許文献2に記載された方法では、装置の規模が特許文献1に記載された方法の2倍程度増加してしまうという問題があった。また、特許文献2に記載された方法では、大型の超音波振動素子を練り混ぜ装置に付属する必要があるため、設備が複雑になってしまうという問題もあった。
加えて、特許文献2に記載された装置では、小さな実験室規模であれば、設置場所や超音波発振器の作動は問題にならないが、工業的な規模までスケールアップすると、設置場所や超音波の利用の可否が問題となってしまう。また、装置の価格およびメンテナンスコストやランニングコストが、特許文献1に記載された装置を用いる場合よりも2倍程度増加してしまうという問題もあった。
すなわち、従来技術では、複雑な設備を用いたり、高コストとなる洗浄方法を用いたりすれば、石炭灰の未燃炭素を除去することはできたものの、簡易な設備や低い洗浄コストで石炭灰の未燃炭素を低減させることができないという問題があった。
本発明は上記課題を解決するものである。すなわち、本発明は、分離槽の底に石炭灰を堆積しにくくさせて、石炭灰の滞留時間を長くさせるとともに、石炭灰に付着した未燃炭素に気泡を接触し易くさせることにより、未燃炭素の残留量をより低減できる分離装置を提供することを目的とする。また、本発明は、従来よりも簡易な設備と低い洗浄コストで石炭灰の未燃炭素を低減できる石炭灰の製造方法および洗浄システムを提供することも目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[13]の態様に関する。
[1]混合液中の石炭灰と未燃炭素とを分離可能である分離槽と、
堆積した石炭灰を含む混合液を循環可能である石炭灰循環路とを備え、
石炭灰循環路が、分離槽の下部に設けられた石炭灰吸入口と、分離槽の上部に設けられた石炭灰吐出口とを繋ぐ流路として形成されており、
気泡を分離槽の下部から供給する気泡供給機構が設けられている、分離装置。
[2]水を含む混合液を循環可能である水循環路を備え、
水循環路が、分離槽の上部に設けられた水吸入口と、分離槽の下部に設けられた水吐出口とを繋ぐ流路として形成されており、
分離槽の下部が、下方に向けて窄んだ側部を有する円錐台形となる部分を備え、
水吐出口が上記側部に設けられ、
水循環路の水吐出口近傍が上記側部の周に対して接線方向に設けられている、[1]に記載の分離装置。
[3]気泡供給機構が、水循環路内から気泡を供給可能である、[2]に記載の分離装置。
[4]石炭灰吸入口の高さが、水吐出口の高さ以下である、[2]または[3]に記載の分離装置。
[5]石炭灰吐出口の高さが、水吸入口の高さ以下である、[2]〜[4]のいずれかに記載の分離装置。
[6]石炭灰吐出口の高さが、水吸入口の高さより高い、[2]〜[4]のいずれかに記載の分離装置。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の分離装置を用いて、分離装置を用いる前より未燃炭素の残留量が低減された石炭灰を製造する、石炭灰の製造方法。
[8]水循環路における1分間の流量が、分離槽内の混合液の量の0.05〜0.5倍である、[7]に記載の石炭灰の製造方法。
[9]石炭灰循環路における1分間の流量が、分離槽内の混合液の量の0.05〜0.5倍である、[7]または[8]に記載の石炭灰の製造方法。
[10]未燃炭素が付着した石炭灰と、水と、油0.15〜10質量%とを含み、固形分の濃度を65〜90質量%とした混合物を撹拌する工程(A)を有し、
工程(A)で得られた混合物に、さらに水を加えて、水と石炭灰とを含む重層と、油を吸着した未燃炭素を含む軽層とに分離する工程(B)を有し、
工程(B)において分離装置を用いる、[7]〜[9]のいずれかに記載の石炭灰の製造方法。
[11]混合物が、水5〜25質量%を含有する、請求項[7]〜[10]のいずれかに記載の石炭灰の製造方法。
[12]混合物が、油0.5〜10質量%を含有する、[11]に記載の石炭灰の製造方法。
[13]混合物に用いる水と油を、未燃炭素が付着した石炭灰と混合する前に、あらかじめ撹拌して乳化させる乳化工程を有する、[7]〜[12]のいずれかに記載の石炭灰の製造方法。
[14]未燃炭素が付着した石炭灰と、水と油とを含み、固形分の濃度を65〜90質量%とした混合物を撹拌する石炭灰撹拌装置と、撹拌された混合物にさらに水を加えて、水と石炭灰とを含む重層と、油を吸着した未燃炭素を含む軽層とに分離する[1]〜[7]のいずれかに記載の分離装置とを有する、石炭灰の洗浄システム。
本発明の分離装置によれば、分離槽の底に石炭灰が堆積しにくくなり、石炭灰の滞留時間が長くなるとともに、石炭灰に付着した未燃炭素に気泡が接触し易くなるため、未燃炭素の残留量をより低減できる。また、本発明の石炭灰の製造方法または洗浄システムによれば、従来よりも簡易な設備と低い洗浄コストで石炭灰の未燃炭素を低減させることができる。
本発明の実施形態にかかる分離装置の概念図である。 本発明の実施形態にかかる石炭灰洗浄システムの概念図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
未燃炭素の残留量を低減させた石炭灰(フライアッシュを含む)の製造方法の工程は、未燃炭素が付着した石炭灰に水と油とを含ませて、固形分の濃度を好適に調整した上で、得られた混合物を撹拌する工程(A)と、前記混合物にさらに水を加えて混合液とし、水と石炭灰とを含む重層と、油を吸着した未燃炭素を含む軽層とに分離する工程(B)に大きく分けることができる。
石炭灰の洗浄工程を、石炭灰と油分(灯油や食用油など)を撹拌する工程(A)と、石炭灰と未燃炭素を分離する工程(B)とに分けることにより、それぞれの工程で撹拌機能と分離機能とが高い効率で発揮されるため、未燃炭素の除去効率が大きく改善され、大量かつ高精度に、より純度の高い石炭灰を製造することが可能となる。
なお、石炭灰の洗浄工程を2つに分けても、洗浄設備の建設費が嵩むことはなく、むしろ洗浄設備の建設費の低減に貢献することができる。従来のように大型の浮遊選鉱装置などは必要とせずに実現できる洗浄工程であるからである。すなわち、工程(A)と工程(B)を用いる手法により、洗浄設備の簡易化と洗浄コストの低価格化を実現しやすくなる。
本発明の分離装置は、工程(B)において用いることができるものである。
(分離装置の構成)
図1に記載の分離装置30は、混合液中の石炭灰と未燃炭素とを分離可能である分離槽31と、堆積した石炭灰を含む混合液を循環可能である石炭灰循環路41とを備え、石炭灰循環路41が、分離槽31の下部に設けられた石炭灰吸入口42と、分離槽31の上部に設けられた石炭灰吐出口43とを繋ぐ流路として形成されており、気泡を分離槽31の下部から供給するマイクロバブルジェネレーター55が設けられているものである。
上記構成の分離装置30において、水、油、未燃炭素、および石炭灰を含む混合液を緩やかに撹拌する場合、分離槽31の上部に設けられた石炭灰吐出口43から石炭灰が下降してくるとともに、分離槽31の下部から気泡が供給されることになる。すなわち、下降してくる石炭灰に対して、上昇してくる気泡が接触する構成となるため、油を吸着した未燃炭素が気泡によって上昇され易くなる。そのため、より確実に、混合液を、水と石炭灰とを含む重層と、油を吸着した未燃炭素を含む軽層とに分離することができるようになり、従来よりも未燃炭素の残留量を低減させやすくなる。また、未燃炭素と石炭灰の分離に要する時間や電力も低減させることが可能になる。
石炭灰循環路41は、主に堆積した石炭灰を含む混合液を循環させるものである。循環させる混合液は水も含有するものであり、堆積されていない石炭灰も含有する場合がある。すなわち、石炭灰循環路41は、堆積した石炭灰を循環させるものであれば、堆積した石炭灰以外のものを同時に循環させるものであってもよい。
石炭灰循環路41が石炭灰を循環させる方法は、特に限定されないが、例えば、図1に記載のように、石炭灰循環路41に石炭灰循環ポンプ44を設け、石炭灰循環ポンプ44によって混合液を循環させる態様とすることが好ましい。
石炭灰吸入口42は、分離槽31から石炭灰循環路41に、石炭灰を吸い込ませるためのものである。堆積した石炭灰を循環させるために、石炭灰吸入口42は、分離槽31の下部に設けられている。石炭灰吸入口42の具体的な設置位置は、分離槽31の下部の形状や、処理する石炭灰の量を考慮した上で、適宜設定することができる。
石炭灰吐出口43は、石炭灰循環路41から分離槽31に、石炭灰を吐き出させるためのものである。石炭灰に対して気泡を効率的に接触させるために、石炭灰吐出口43は、分離槽31の上部に設けられている。石炭灰吐出口43の設置位置は、特に限定されないが、混合液の液面よりも低くなるような位置に設置することが好ましい。石炭灰吐出口43の設置位置が混合液の液面以上の高さになると、石炭灰吐出口43から分離槽31内に吐き出された混合液によって、液面に浮上していた未燃炭素が沈んでしまい、未燃炭素を混合液から分離しにくくなる傾向にある。
石炭灰循環路41の石炭灰吐出口43近傍は、分離槽31の側面に対して垂直な向きとなるように設けられていることが好ましい。一方、石炭灰循環路41の石炭灰吐出口43近傍が、分離槽31の周に対して接線方向となる向きであって、石炭灰吐出口43から混合液を吐き出す力によって旋回流を強めることができる向きになっていると、旋回流が強くなりすぎて、未燃炭素の残留量を低減させにくくなる可能性がある。
石炭灰循環路41は複数設けられていてもよい。石炭灰循環路41を複数設ける場合、複数の石炭灰吸入口42の高さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。同様に、複数の石炭灰吐出口43の高さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
マイクロバブルジェネレーター55は、気泡を分離槽31の下部から供給可能なものである。気泡を分離槽31の下部から供給することにより、微粒の石炭灰に吸着した未燃炭素に気泡を接触させることができるため、未燃炭素が浮上・分離され易くなって、未燃炭素の残留量をより低減できるようになる。マイクロバブルジェネレーター55の設置位置は、気泡を分離槽31の下部から供給できる位置であれば、特に限定されない。
分離槽31に移した混合物に対して気泡を供給する気泡供給機構の種類は、特に限定されないが、例えば、マイクロバブルジェネレーター55の他、バブル発生装置、またはオリフィス型発生装置などを用いることができる。
分離装置30は、水を含む混合液を循環させる水循環路51を備えることが好ましい。水循環路51は、分離槽31の上部に設けられた水吸入口52と、分離槽31の下部に設けられた水吐出口53とを繋ぐ流路として形成されている。
水循環路51は、主に水を含む混合液を循環させるものである。循環させる混合液は浮遊した石炭灰も含有する場合がある。すなわち、水循環路51は、水を循環させるものであれば、水以外のものを同時に循環させるものであってもよい。
水循環路51が水を循環させる方法は、特に限定されないが、例えば、図1に記載のように、水循環路51に水循環ポンプ54を設け、水循環ポンプ54によって混合液を循環させる態様とすることが好ましい。
水吸入口52は、分離槽31から水循環路51に、水を吸い込ませるためのものである。水吸入口52は、水を循環させるために、分離槽31の上部に設けられている。水吸入口52の具体的な設置位置は、特に限定されないが、混合液の液面よりも低くなるような位置に設置する。なお、水循環路51の水吸入口52近傍は、分離槽31の周に対して接線方向となる向きであって、水吸入口52に混合液を吸い込む力によって旋回流を強めることができる向きに設けられていることが好ましい。
石炭灰吐出口43から分離槽31内に吐き出された石炭灰を水吸入口52に吸い込みにくくさせ、石炭灰に付着した未燃炭素と気泡との接触を妨げにくくして、未燃炭素の残留量を低減しやすくする観点からは、水吸入口52の高さは、石炭灰吐出口43の高さ以下であることが好ましい。
一方、液面に浮上した未燃炭素を水吸入口52に吸い込ませにくくするとともに、石炭灰に付着した未燃炭素と気泡とが接触する領域を大きくして、未燃炭素の残留量を低減しやすくする観点からは、水吸入口52の高さは、石炭灰吐出口43の高さより高いことが好ましい。
水吐出口53は、水循環路51から分離槽31に、水を吐き出させるためのものである。分離槽31の下部において旋回流を発生させるために、水吐出口53は、分離槽31の下部に設けられていることが好ましい。
水吐出口53の高さは、石炭灰吸入口42の高さ以上であることが好ましい。上記構成により、水吐出口53からの水流によって形成される旋回流が、堆積した石炭灰によって妨げられることを防ぎやすくなる傾向にある。
水循環路51は複数設けられていてもよい。水循環路51を複数設ける場合、複数の水吸入口52の高さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。同様に、複数の水吐出口53の高さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、水吐出口53は旋回流を妨げない位置、すなわち、水循環ポンプ54が混合液を分離槽31に吐き出す力によって旋回流を強めることができる位置に設けることが望ましい。
分離槽31の上部は円筒形状であることが好ましい。分離槽31の下部は、分離槽31の下部において旋回流を発生させやすくする観点から、円筒形状である円筒部から下方に向けて窄んだ側部を有する円錐台形となる部分を備え、水吐出口53が上記側部に設けられ、水循環路51の水吐出口53近傍が上記側部の周に対して接線方向に設けられていることが好ましい。
上記構成により、分離槽31の下部において旋回流が発生しやすくなり、混合液がより撹拌されやすくなるとともに、未燃炭素が上方に浮きやすくなる傾向にある。
分離装置30が水循環路51を備える場合、マイクロバブルジェネレーター55は、水循環路51内から気泡を供給することが好ましい。上記構成により、旋回流とともに気泡が供給されるようになるため、石炭灰に付着した未燃炭素と気泡との接触頻度が向上され、未燃炭素の残留量を低減しやすくなる傾向にある。
分離槽31の円錐台形となる部分のさらに下方は、円筒形状とすることができる。円錐台形となる部分より下方の円筒部の直径は、円錐台形となる部分より上方の円筒部の直径よりも小さくすることができる。石炭灰吸入口42は、円錐台形となる部分より下方の円筒部に接続することができる。
石炭灰循環路41における石炭灰吸入口42の近傍は、分離槽31の側面に対して垂直な向きとなるように設けられていることが好ましい。上記構成により、石炭灰循環路41における石炭灰吸入口42の近傍の向きが旋回流の向きとは異なるようになるため、未燃炭素やマイクロバブルが石炭灰循環路41の中に吸い込まれにくくなったり、水吐出口53が位置する高さから石炭灰吸入口42が位置する高さまで穏やかな下向きの流れが形成されて未燃炭素が石炭灰吸入口42から吸い込まれ難くなったりする傾向にある。一方、混合液が石炭灰循環路41内に吸い込まれる向きが旋回流の向きに沿うように石炭灰循環路41が設けられていると、未燃炭素やマイクロバブルが石炭灰循環路41の中に吸い込まれて、未燃炭素の分離効率が低下する可能性がある。
分離槽31の円錐台形となる部分より上方の円筒部の直径と、水吐出口53の中心を含む分離槽31の水平断面から石炭灰吸入口42の中心を含む分離槽31の水平断面までの距離との比率は、12/44以上であることが好ましく、18/44以上であることがより好ましい。前記距離が、12/44未満であると、水吐出口53から水流とともに吐き出された気泡が、石炭灰吸入口42に吸い込まれて、未燃炭素の残存量を低減させにくくなる傾向にある。
分離槽31の円錐台形となる部分より上方の円筒部の直径と、水吐出口53の中心を含む分離槽31の水平断面から石炭灰吸入口42の中心を含む分離槽31の水平断面までの距離との比率は、38/44以下であることが好ましく、36/44以下であることがより好ましい。前記距離が、38/44を超えると、分離槽31の下部に気泡を供給しにくくなり、未燃炭素の残存量を低減させにくくなる傾向にある。
分離槽31の寸法は、特に限定されないが、例えば、分離槽31の円錐台形となる部分より上方の円筒部において、前記円筒部の高さと前記円筒部の直径の比率を好適化することが好ましい。
分離槽31の円錐台形となる部分より上方の円筒部において、前記円筒部の高さと前記円筒部の直径の比率は、35/60以上であることが好ましく、50/50以上であることがより好ましい。前記円筒部の高さと前記円筒部の直径の比率が35/60未満であると(例えば、前記円筒部の直径が大きくなると)、旋回流の中心付近の流速が低下して、未燃炭素を浮上させるのが難しくなったり、石炭灰を撹拌することが難しくなったりする傾向にある。
前記円筒部の高さと前記円筒部の直径の比率は、80/20以下であることが好ましく、70/30以下であることがより好ましい。前記円筒部の高さと前記円筒部の直径の比率が80/20を超えると(例えば、前記円筒部の高さが大きくなると)、石炭灰循環ポンプ44を用いて石炭灰を循環させるためのエネルギーが増大してしまい、分離に要する電力が増大してしまう傾向にある。
また、分離槽31の寸法について、例えば、円錐台形の窄まった側を延伸して形成される円錐形状を想定した場合に、該円錐の底面の直径と、該円錐の高さとの比率を好適化することが望ましい。
前記円錐の底面の直径と高さの比率は、12/44以上であることが好ましく、16/44以上であることがより好ましい。上記比率が12/44未満であると(例えば、前記円錐の底面の直径が大きくなると)、堆積した石炭灰が水吸入口52から出た水の流れを弱め、旋回流が分離槽31の上部付近まで発生しにくくなるため、未燃炭素を浮上させるのが難しくなったり、石炭灰を撹拌することが難しくなったりする傾向にある。
前記円錐の底面の直径と高さの比率は、38/44以下であることが好ましい。上記比率が38/44を超えると(例えば、前記円錐の高さが高くなると)、旋回流が上向き螺旋状に生じにくくなるため、未燃炭素を浮上させるのが難しくなったり、石炭灰を撹拌することが難しくなったりする傾向にある。
(分離装置の使用方法)
まず、分離装置30の分離槽31に90〜120Lの水を溜める。水循環路51の水循環ポンプ54を稼働させ、水循環ポンプ54の圧力を調節することにより、水循環路51における1分間の流量を調節すると同時にマイクロバブルを供給する。
水循環路51における1分間の流量は、分離槽31内の混合液の量の0.05倍以上であることが好ましく、0.1倍以上であることがより好ましい。水循環路51における1分間の流量が分離槽31内の混合液の量の0.05倍未満であると、旋回流の勢いが弱くなって、未燃炭素の残留量を低減しにくくなる傾向にある。
水循環路51における1分間の流量は、分離槽31内の混合液の量の0.5倍以下であることが好ましく、0.35倍以下であることがより好ましい。水循環路51における1分間の流量が分離槽31内の混合液の量の0.5倍を超えると、水吸入口52から水循環路51に水が吸い込まれる勢いが強くなりすぎて、混合液の液面に浮上した未燃炭素が水循環路51に吸い込まれてしまい、未燃炭素を混合液から分離しにくくなる傾向にある。
水循環路51における1分間の流量は、4.5L/min以上であることが好ましく、9L/min以上であることがより好ましい。水循環路51における1分間の流量が4.5L/min未満であると、旋回流の勢いが弱くなって、未燃炭素の残留量を低減しにくくなる傾向にある。
水循環路51における1分間の流量は、60L/min以下であることが好ましく、42L/min以下であることがより好ましい。水循環路51における1分間の流量が60L/minを超えると、水吸入口52から水が吸い込まれる勢いが強くなりすぎて、混合液の液面に浮上した未燃炭素が水循環路51に吸い込まれてしまい、未燃炭素の残留量を低減しにくくなる傾向にある。
水循環路51における1分間の流量を調節した後に、マイクロバブルジェネレーター55から供給する気泡の気泡径を調節する。マイクロバブルジェネレーター55から供給する気泡の気泡径は、直径5〜50μmであることが好ましく、直径10〜40μmであることがより好ましい。供給する気泡の気泡径が、5μm未満であると、気泡径がナノバブル領域になり、油や剥離した未燃炭素を浮かせる力が低減する傾向にある。供給する気泡の気泡径が、50μmを超えると、気泡が未燃炭素に吸着し難くなるために、油や剥離した未燃炭素を浮かせる効果が低減する傾向にある。
石炭灰循環路41の石炭灰循環ポンプ44も稼働させ、石炭灰循環ポンプ44の圧力を調節することにより、石炭灰循環路41における1分間の流量を調節する。
石炭灰循環路41における1分間の流量は、分離槽31内の混合液の量の0.05倍以上であることが好ましく、0.1倍以上であることがより好ましい。石炭灰循環路41における1分間の流量が分離槽31内の混合液の量の0.05倍未満であると、石炭灰の循環量が少なくなって、未燃炭素の残留量を低減しにくくなる傾向にある。
石炭灰循環路41における1分間の流量は、分離槽31内の混合液の量の0.5倍以下であることが好ましく、0.35倍以下であることがより好ましい。石炭灰循環路41における1分間の流量が分離槽31内の混合液の量の0.5倍を超えると、石炭灰吐出口43から石炭灰が吐き出される勢いが強くなりすぎて、混合液の液面に浮上した未燃炭素が、石炭灰が吐き出される勢いに飲み込まれてしまい、未燃炭素と石炭灰の分離に要する時間が長くなる傾向にある。また、旋回流を乱したり、供給されたマイクロバブルを含む水を石炭灰吸入口42から吸い上げてしまったりして、未燃炭素の残留量を低減しにくくなる傾向もある。
石炭灰循環路41における1分間の流量は、4.5L/min以上であることが好ましく、9L/min以上であることがより好ましい。石炭灰循環路41における1分間の流量が4.5L/min未満であると、石炭灰の循環量が少なくなって、未燃炭素の残留量を低減しにくくなる傾向にある。
石炭灰循環路41における1分間の流量は、60L/min以下であることが好ましく、42L/min以下であることがより好ましい。石炭灰循環路41における1分間の流量が60L/minを超えると、石炭灰吐出口43から分離槽31内に石炭灰が吐き出される勢いが強くなりすぎて、混合液の液面に浮上した未燃炭素が撹拌されてしまい、未燃炭素と石炭灰の分離に要する時間が長くなる傾向にある。また、旋回流を乱したり、供給されたマイクロバブルを含む水を石炭灰吸入口42から吸い上げてしまったりして、未燃炭素の残留量を低減しにくくなる傾向もある。
なお、石炭灰循環路41を複数設ける場合は、1本当たりの流量を上記の流量よりも少なくすることが好ましい。
次に、工程(A)で得られた混合物を分離槽31に移して、石炭灰が10〜30%となるスラリー液を形成させることが好ましい。スラリー液の濃度が、30%を超えると、軽層と重層とが十分に分離しなくなる傾向にある。スラリー液の濃度が、10%未満になると、水の量が多くなりすぎて、作業効率や経済効率が低下する傾向にある。したがって、加える水の量は、石炭灰に対して、90〜70質量%となるようにすることが好ましい。
石炭灰循環路41の石炭灰循環ポンプ44によって石炭灰を循環させながらスラリー液を緩やかに撹拌する。緩やかに撹拌する時間は、5〜15分間であることが好ましい。上記撹拌の後、石炭灰循環ポンプ44を停止させる。
石炭灰循環ポンプ44を停止させてから5〜15分後に、水循環ポンプ54も停止させる。水循環ポンプ54を停止させてから静置して、油を吸着した未燃炭素を含む軽層と、水と石炭灰とを含む重層とにスラリー液を分離させる。なお、工程(A)で使用する油の大半は未燃炭素に吸着されるため、重層には、油はほぼ含有されていない。また、石炭灰循環路41の中に、石炭灰が残存している場合は、残存した石炭灰を回収した重層に加えてもよい。
スラリー液の静置時間は、5〜60分であることが好ましく、10〜40分であることがより好ましい。スラリー液の静置時間が5分未満であると、軽層と重層とが十分に分離しなくなる傾向にある。スラリー液の静置時間が60分を超えると、軽層と重層との分離が平衡状態となり、作業効率が低下する傾向にある。
スラリー液を軽層と重層とに分離させた後、分離槽31の下部に堆積した石炭灰は、分離槽31の下部に装着してあるボールバルブ32を開くことで回収できる。さらに、分離槽31の下部から水を除去した後、分離槽31の上部に溜まっている軽層を、分離槽31の下部から別の回収容器に回収することができる。
軽層に含まれる油を吸着した未燃炭素を、油と未燃炭素に分離して回収する方法は、特に限定されないが、例えば、フィルタープレス機や遠心分離機など公知の装置を用いることができる。回収した油は再び石炭灰の洗浄に用いることができるため、洗浄コストのさらなる低減化を実現できる。また、回収した未燃炭素は含水率が15%程度であり、重金属類の含有量も少ないことから、産業廃棄物として容易に処分することができる。
重層に含まれる水と石炭灰とをそれぞれ分離して回収する方法は、特に限定されないが、例えば、水切りコンベア、フィルタープレス機、または遠心分離機など公知の装置を用いることができる。回収された水は、再び石炭灰の洗浄に用いることができるため、洗浄コストのさらなる低減化を実現できる。また、回収した石炭灰は、振動コンベアに移して温風で乾燥させるなど、公知の方法で乾燥させた後、生コンクリートの混和材などに用いることができる。
低減された未燃炭素の残留量は、2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。低減された未燃炭素の残留量が、2.0質量%を超えていると、フレッシュコンクリートの流動性や空気量を調整するための混和剤の使用量が増加したり、混和剤の添加量に対する流動性や空気量が変動する等の問題が生じ易くなったりして、コンクリートの強度が変動しやすくなる傾向にある。また、コンクリートの強度の変動により、製造したコンクリートにひび割れが生じやすくなることがある。コンクリートのひび割れは、人的作業によって補修する必要があるため、建設業や土木業界においては、ひび割れが生じにくいコンクリートが望まれている。
未燃炭素の残留量の測定方法は、特に限定されないが、例えば、JIS A 6201:1999に規定の方法で、石炭灰の強熱減量を測定することによって算出できる。
[工程(A)]
上述の通り、水と石炭灰とを含む重層と、油を吸着した未燃炭素を含む軽層とに混合液を分離する工程(B)の前に、未燃炭素が付着した石炭灰に水と油とを含ませて、固形分の濃度を好適に調整した上で、得られた混合物を撹拌する工程(A)を行うことにより、未燃炭素の残留量を大きく低減させることができる。
工程(A)における固形分の濃度は、65〜90質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることがより好ましく、70〜85質量%であることがさらに好ましい。固形分の濃度を上記範囲とすることにより、水と油の使用量を抑えることができるため、石炭灰の洗浄コストを低減しやすくなる傾向にある。
固形分の濃度が65質量%未満であると、水および油の量が相対的に多くなり、撹拌によるシェアがかかりにくくなって、未燃炭素の除去効率が低下する傾向にある。固形分の濃度が90質量%を超えると、水および油の量が相対的に少なくなり、石炭灰の表面に水および油が行き渡りにくくなって、未燃炭素の除去効率が低下する傾向にある。
工程(A)においては、主としてSiやAlからなる酸化物やガラスの表面にこびりついている油状の未燃炭素が、混合物中の油との高い親和力と撹拌装置の強力な撹拌力とによって引き剥がされ、石炭灰の表面から除去される。
工程(A)において、混合物中の油の量は、0.15質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%以上であることがとりわけ好ましく、0.8質量%以上であることが特に好ましく、1.3質量%以上であることが最も好ましい。また、工程(A)において、混合物中の油の量は、10質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以下であることがより好ましく、6.0質量%以下であることがさらに好ましく、4.0質量%以下であることがとりわけ好ましく、3.8質量%以下であることが特に好ましく、2.0質量%以下であることが最も好ましい。油の量を上記範囲とすることにより、油の使用量を抑えることができるため、石炭灰の洗浄コストを低減しやすくなる傾向にある。
混合物中の油の量が、0.15質量%未満であると、未燃炭素に付着できる油の量が減少するため、未燃炭素の除去効率が低下する傾向にある。混合物中の油の量が、10質量%を超えると、油の量が未燃炭素の除去に必要な量を超え、経済的にも無駄が生じる傾向にある。
工程(A)に用いることのできる油の種類は、特に限定されないが、例えば、灯油、ケロシン油、灯油やケロシン油のリサイクル油、パーム油、ヤシ油、パイン油、食用油、または食用油のリサイクル油である廃食油などを用いることができる。また、これらの油は単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
二種以上の油を組み合わせて用いる場合は、灯油やケロシン油などの炭化水素系の油とカルボキシル基を有するパーム油、パイン油、または食用油などの脂肪油との組み合わせが好ましい。そのような油の組み合わせの中でも、灯油、パーム油、パイン油、食用油からなる群より選ばれる2〜4種類の油の組み合わせ、特に、灯油と食用油の組み合わせが好ましい。
また、上記の組み合わせによって得られる混合油と水とをあらかじめミキサー等で撹拌して乳化させる乳化工程を経てから、石炭灰と混和することがより好ましい。混合油と水とを乳化工程を経てから石炭灰と混和することにより、工程(A)において短時間で均一に油を分散させることができるようになる。
食用油の種類は、特に限定されないが、例えば、サラダ油、菜種油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、ごま油、大豆油、クルミ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、シソ油、ブドウ種油、ボラージ油、カボチャ種子油、椿油、紅花油、綿実油、茶実油、米糠油、亜麻仁油、落花生油、および小麦胚芽油などが挙げられる。
工程(A)に用いる油は、その疎水性基が、石炭灰表面の未燃炭素と分子間力で相互作用し得る程度の疎水性を有していればよいため、用いる油の酸価や純度などは、未燃炭素の除去効率に大きな影響を与えることはないものと考えられる。そのため、工程(A)に用いる油には、リサイクル油を用いることもできる。リサイクル油とは、食用または工業用などの用途で少なくとも一度使用された油のことを意味する。リサイクル油を用いることにより、石炭灰の洗浄コストをさらに低減することができる。
リサイクル油の種類は、特に限定されないが、例えば、灯油、ケロシン油、パーム油、ヤシ油、パイン油、または食用油などをリサイクルして用いることができる。リサイクル油を使用することで、工程(A)にかかるコストを削減できるとともに、環境への負荷を低減することも可能となる。
工程(A)において、混合物中の水の量は、5〜30質量%であることが好ましく、10〜27質量%であることがより好ましく、12〜25質量%であることがさらに好ましい。混合物中の水の量が、5質量%未満であると、石炭灰の表面に水が行き渡りにくくなり、未燃炭素の除去効率が低下する傾向にある。混合物中の水の量が、30質量%を超えると、未燃炭素と油が接触する頻度が低下したり、撹拌によるシェアがかかりにくくなったりして、未燃炭素の除去効率が低下する傾向にある。
工程(A)で用いる石炭灰撹拌装置の機能は、固形分と油分を含む水とが十分に撹拌でき、さらに石炭灰の表面に強力なシェアをかけることができるものであれば、特に限定されない。上記のような機能を有する石炭灰撹拌装置としては、公知の撹拌機を用いることができ、例えば、アイリッヒ・ミキサー、インラインミキサー、単軸混錬押出機、二軸混錬押出機、櫂型撹拌機、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモディスパー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンミキサー、コンクリートミキサー、水平一軸もしくは二軸強制練り機、または自動計量式ミキシングユニットなどが挙げられる。
上記の石炭灰撹拌装置を用いることにより、単位体積あたりの撹拌力を高め、かつ短時間で石炭灰の撹拌洗浄を行うことが可能となる。また、洗浄設備の簡易化と洗浄コストの低価格化も実現しやすくなる。特に、石炭灰撹拌装置の中でも、二軸混錬押出機は、強力なシェアをかけることができるため、未燃炭素をより効果的に除去できる傾向にある。
[石炭灰洗浄システム]
本発明の石炭灰洗浄システムについて、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施形態に係る石炭灰の洗浄システムについての概念図である。
石炭灰に対して所定量の水を、水投入装置11から乳化撹拌装置14に投入し、石炭灰に対して所定量の油を、油投入装置12および13から乳化撹拌装置14に投入する。投入された水と油を乳化撹拌装置14によって撹拌して乳化する。なお、この乳化工程は省略することもできる。
図2においては、油投入装置12から所定量の油を投入し、油投入装置13から所定量のリサイクル油を投入する態様を図示しているが、油とリサイクル油とを同じ油投入装置から投入する態様としてもよい。また、二種以上の油を用いる場合は、油の種類の数に応じた油投入装置を設けてもよいし、複数の油を一つの油投入装置から投入してもよい。
未燃炭素が付着した石炭灰を、石炭灰投入装置15から石炭灰撹拌装置16に投入し、乳化撹拌された水と油を乳化撹拌装置14から石炭灰撹拌装置16に投入する。
石炭灰撹拌装置16に投入された水と油と石炭灰は、石炭灰撹拌装置16によって強力なシェアをかけられて撹拌される。なお、混合物は、石炭灰撹拌装置16内において形成される必要はなく、任意の容器内で、石炭灰と水と油とを混合してから、得られた混合物を石炭灰撹拌装置16で撹拌する態様としても良い。
洗浄水供給装置22から分離装置21に水を加えた後、石炭灰撹拌装置16によって撹拌された混合物を分離装置21に移し、緩やかに撹拌した後に、撹拌された混合液を静置する。分離装置21としては、図1に示す分離装置30などを用いることが好ましい。
水と石炭灰とを含む重層と、油を吸着した未燃炭素を含む軽層とに混合液が分離した後に、重層と軽層とをそれぞれ除去する。軽層と重層とを分離して軽層を除去する工程は、複数回繰り返して行ってもよい。なお、洗浄水供給装置22から分離装置21に水を供給する態様とせずに、水投入装置11から水を分岐させて分離装置21に水を供給する態様としてもよい。
また、分離装置21に移した混合物に対しては、マイクロバブルジェネレーター17からの気泡を供給することにより、油と未燃炭素との分離を促進する。
分離装置21から軽層を除去して軽層用フィルタープレス機24Lに移し、重層は重層用フィルタープレス機24Hに移す。重層用フィルタープレス機24Hにおいて、重層の水を除去して石炭灰を単離し、乾燥コンベア23に移す。乾燥コンベア23で石炭灰を乾燥させると、未燃炭素の残留量が低減された石炭灰が得られる。
軽層用フィルタープレス機24Lに移された軽層は、油と未燃炭素とに分離する。軽層用フィルタープレス機24Lにおいて分離された油は、さらに水/油分離槽25に移して、水と油とに分離してもよい。
軽層用フィルタープレス機24Lまたは水/油分離槽25から回収した油は、油投入装置13に投入して、再び石炭灰の洗浄に用いることができる。
重層用フィルタープレス機24H、乾燥コンベア23および水/油分離槽25からは、石炭灰の洗浄に用いた水を回収することができる。回収した水は、水投入装置11に投入して、再び石炭灰の洗浄に用いることができる。
以上のような、未燃炭素が付着した石炭灰と、水と油とを含み、固形分の濃度を好適に調整した混合物を撹拌する石炭灰撹拌装置と、撹拌された混合物にさらに水を加えて、水と石炭灰とを含む重層と、油を吸着した未燃炭素を含む軽層とに分離する分離装置とを有する石炭灰の洗浄システムを用いることにより、従来よりも小さい規模の装置や価格の安い装置を用いたり、ランニングコストの低い方法を用いたりしても、従来と同等以上に石炭灰に付着した未燃炭素を低減することができる。すなわち、本発明の石炭灰の洗浄システムによって、より簡易な設備と低い洗浄コストで、石炭灰に付着した未燃炭素を低減することができる。
また、本発明における石炭灰の洗浄システムは、工程(A)において少量の水と少量の油しか用いず、非常に安価な洗浄システムとなるため、従来と同程度のコストをかけて石炭灰を洗浄処理しようとする場合は、その分、設備の増設が可能となるため、従来よりも大量の石炭灰を洗浄処理することが可能となる。
[油の再利用工程]
本発明の石炭灰の製造方法において、未燃炭素の分離に用いた油を回収し、回収された油を、工程(A)に再利用する工程を経ることにより、使用する油の量を最小限に抑えることができ、更なるコスト削減をすることができる。
油を回収する方法は、特に限定されないが、例えば、油を含む軽層をフィルタープレスにかけて、油を回収する方法などが挙げられる。回収した油は、さらに、油と水に分離した後、精製して再利用してもよい。
[水の再利用工程]
本発明の石炭灰の製造方法において、未燃炭素の分離に用いた水を回収し、回収された水を、工程(A)に再利用する工程を経ることにより、使用する水の量を最小限に抑えることができ、更なるコスト削減をすることができる。
水を回収する方法は、特に限定されないが、例えば、水を含む重層から、水切りコンベアや振動コンベアによって除去した水を回収する方法などが挙げられる。また、油と水に分離した後に、さらに油を精製した場合は、その工程で分離された水を回収してもよい。
[石炭灰およびコンクリート]
本発明の製造方法によって製造された石炭灰は、減水剤やAE剤が吸着されにくいため、セメントに配合した場合の空気連行性の著しい低下を抑制したり、減水剤やAE剤の吸着に由来する品質の変動を抑制したりすることができる。また、本発明の製造方法によって製造された石炭灰をセメントに配合してフレッシュモルタルやフレッシュコンクリートを作製した場合は、フレッシュモルタルやフレッシュコンクリートのコンシステンシーが低下し、作業性が向上される。さらに、上記のフレッシュモルタルやフレッシュコンクリートを硬化させたモルタルやコンクリートは、石炭灰の配合によるポゾラン効果等により、圧縮強度の高いものとなる。さらに、未燃炭素が低減された石炭灰の色は、未洗浄の石炭灰よりも白いため、セメントに相当量を配合しても黒く変色しないというメリットもある。
生コンクリートに対する石炭灰の混和量は、内割方式では5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。生コンクリートに対する石炭灰の混和量が、5質量%未満であると、石炭灰を添加する効果が少なくなり、コンクリートの圧縮強度が低下したり、コンクリートがひび割れたりしやすくなる傾向にある。生コンクリートに対する石炭灰の混和量が、30質量%を超えると、生コンクリートの流動性は増すものの、コンクリートの中性化の進行が速くなるため、長期的な強度が低下する傾向にある。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
[未燃炭素量の測定方法]
石炭灰に付着ないし残留した未燃炭素の量は、石炭灰の強熱減量を測定することによって算出できる。石炭灰の強熱減量は、JIS A 6201:1999に規定の方法により測定することができる。
強熱減量の試験では、試料となる石炭灰約1gをJIS R 1301に規定するるつぼ(容量15ml)に0.1mgまで正しく量り採り、950〜1000℃に調節した電気炉で15分強熱し、デシケータ中で放冷した後、質量を量り、さらに15分ずつ強熱を繰り返す。恒量になったときの減量を試料の質量で除したものの百分率から湿分を差し引いたものが強熱減量となる。
湿分の試験では、試料となるフィルタープレス後の石炭灰約50gをビーカー(100ml)に0.1mgまで正しく量り採り、110℃に調整した電気炉で24時間以上乾燥し、デシケータ中で放冷した後、質量を量り採った。乾燥前後の質量の差分を乾燥前の質量で除したものの百分率が湿分となる。
[分離装置]
下記の実施例で用いた分離装置は、混合液中の石炭灰と未燃炭素とを分離可能である分離槽と、堆積した石炭灰を含む混合液を循環可能である石炭灰循環路とを備え、石炭灰循環路が、分離槽の下部に設けられた石炭灰吸入口と、分離槽の上部に設けられた石炭灰吐出口とを繋ぐ流路として形成されており、気泡を分離槽の下部から供給するマイクロバブルジェネレーターが設けられている。さらに、水を含む混合液を循環可能である水循環路を備え、水循環路が、分離槽の上部に設けられた水吸入口と、分離槽の下部に設けられた水吐出口とを繋ぐ流路として形成されており、分離槽の下部が、下方に向けて窄んだ側部を有する円錐台形となる部分を備え、水吐出口が上記側部に設けられ、水循環路の水吐出口近傍が上記側部の周に対して接線方向に設けられており、マイクロバブルジェネレーターが水循環路内から気泡を供給する。加えて、石炭灰吸入口の高さは、水吐出口の高さ以下である。
また、下記の実施例で用いた分離装置では、分離槽の円錐台形となる部分より上方の円筒部において、前記円筒部の高さと前記円筒部の直径の比率が60/44であり、円錐台形の窄まった側を延伸して形成される円錐形状を想定した場合に、該円錐の底面の直径と、該円錐の高さとの比率が38/44なっている。加えて、分離槽31の円錐台形となる部分より上方の円筒部の直径と、水吐出口の中心を含む分離槽の水平断面から石炭灰吸入口の中心を含む分離槽の水平断面までの距離との比率は32/44である。
なお、下記の実施例1〜11および14で用いた分離装置では、石炭灰吐出口の高さが、水吸入口の高さよりも高い位置に設けられている。また、石炭灰循環路における石炭灰吐出口の近傍が、分離槽の側面に対して垂直な向きとなるように設けられている。
(実施例1)
火力発電所から採取された石炭灰(未燃炭素付着量6.0質量%)5kg(1バッチ)と、予め水750mlと灯油(コスモ石油株式会社製、比重0.8g/ml)250mlおよび食用油(菜種油および大豆油)(理研農産化工株式会社製、食用調合油、比重0.8g/ml)12mlをミキサー(松下電器産業株式会社製、National MX−V350)で乳化撹拌した混合液をアイリッヒミキサー(日本アイリッヒ株式会社製RV−02)の容器(パン)に充填し、パン駆動モーターの出力を0.88kw、回転数を66rpmとし、撹拌駆動モーターの出力を1.8kw、回転数を3470rpmとして、上記混合物を4分間強力に撹拌した。同様の処理を更に3バッチに対して行い、石炭灰、水、灯油、および食用油を含む混合物を合計で約20kg得た。
分離装置の分離槽に約100Lの水を溜め、水循環ポンプを稼働させた。水循環路における1分間の流量が18.3L/min(分離槽内の混合液の0.18倍)となるように水循環ポンプの圧力を調節した。さらに、マイクロバブルジェネレーター(株式会社ニクニ製、MBG20N07CE−1BH)によって発生させた気泡径約20μmの気泡を、2L/minの速度で水循環路から分離槽内に吹き込んだ。
石炭灰循環ポンプを稼働させ、石炭灰循環路に1分間の流量が30L/min(分離槽内の混合液の0.3倍)となるように水を循環させた。次いで、分離槽の上部からアイリッヒミキサーで撹拌した灯油・水・食用油を含む石炭灰の混合物を投入して、石炭灰が20%となるスラリー液とした。石炭灰循環ポンプによって水とともに石炭灰を上記の流量で循環させ、上記スラリー液を緩やかに15分間撹拌した。上記撹拌の後、石炭灰循環ポンプの稼働を停止させ、さらに、その10分後に、水循環ポンプの稼働も停止させた。
水循環ポンプの稼働を停止させてから10分間静置して、油を吸着した未燃炭素を含む軽層と、水と石炭灰とを含む重層とにスラリー液を分離させた。分離槽の下部に堆積した石炭灰は、分離槽の下部に装着してあるボールバルブを開いて、分離槽の下部から回収した。さらに、分離槽の下部から水を除去した後、分離槽の上部に溜まっていた軽層を、分離槽の下部から別の回収容器に落とし込んで回収した。
回収した軽層を、PP布(旭化成株式会社製、スパンボンド)に挟み、0.5MPaの圧搾圧力を10分間かけることにより、油と未燃炭素とをそれぞれ分離して回収した。石炭灰の洗浄に用いた油分は、未燃炭素に吸着してほとんど回収できなかった。また、回収した未燃炭素の含水率は15%であり、産業廃棄物として容易に処分できた。
重層から、ろ布を敷いたヌッチェ式フィルター(株式会社マキノ製、M14)によって、水と洗浄された石炭灰とをそれぞれ分離して回収した。回収した石炭灰を振動機(フリッチュ・ジャパン株式会社製)に移して、80℃の温風で20分間乾燥させた。乾燥した石炭灰における未燃炭素の残留量は、0.65質量%であった。また、石炭灰の洗浄に用いた水のうち、約80%の水が回収できた。
(実施例2)
食用油12mlの代わりに、リサイクル油として廃食油(学校給食の集積廃油、比重0.8g/ml)12mlを用いた以外は、実施例1と同様の方法で石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。洗浄後の石炭灰における未燃炭素の残留量は0.76質量%であった。
(実施例3)
火力発電所から採取された石炭灰(未燃炭素付着量6.0質量%)20kgを生コン用ミキサー(株式会社ナカトミ製、MIX−300)に投入し、次に水3,000ml、灯油500ml、食用油25mlを加え、30分間撹拌した混合物として用いた以外は、実施例1と同様の方法で石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。洗浄後の石炭灰における未燃炭素の残留量は0.48質量%であった。
(実施例4)
火力発電所から採取された石炭灰(未燃炭素付着量3.0質量%)5kgと、予め水1,131mlと灯油125mlおよび食用油6.25mlをミキサーで乳化撹拌した混合物をアイリッヒミキサーの容器(パン)に充填して撹拌した混合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、石炭灰を処理させて、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は0.38質量%であった。
(実施例5)
図1に記載の分離装置の分離槽に100Lの水を溜めた後、灯油1000mLと食用油50mlの混合物をシックナー上部より供給した後、火力発電所から採取された石炭灰(未燃炭素付着量6.0質量%)20kgを分離槽に投入した。この後、緩やかに20分間撹拌した後、撹拌を停止して10分間静置し、油を吸着した未燃炭素を含む軽層と、水と石炭灰とを含む重層とに分離させた。その後は、実施例1と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は2.08質量%であった。
実施例1〜5における混合物の組成と実験条件を表1にまとめて示す。なお、表中の分離工程の時間とは、水循環ポンプおよび石炭灰循環ポンプを稼働させて石炭灰を分離槽に投入した時点から、石炭灰循環ポンプおよび水循環ポンプの稼働を停止した時点までの時間を意味する。
Figure 2018038968
(実施例6)
火力発電所から採取された石炭灰(未燃炭素付着量4.6質量%)5kg(1バッチ分)と、予め水1,119mlと灯油125mlおよび食用油6.25mlをミキサーで乳化撹拌した混合物とを、アイリッヒミキサーの容器(パン)に充填して撹拌した混合物を用い、石炭灰循環ポンプの稼働時間を10分間とした以外は、実施例4と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は0.44質量%であった。
(実施例7)
灯油の量を50ml、撹拌工程に用いる水の量を1,194mlとした以外は、実施例6と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は0.52質量%であった。
(実施例8)
灯油の量を25ml、撹拌工程に用いる水の量を1,219mlとした以外は、実施例6と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は0.35質量%であった。
(実施例9)
灯油の量を12.5ml、撹拌工程に用いる水の量を1,231mlとした以外は、実施例6と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は0.71質量%であった。
(実施例10)
灯油は用いず、撹拌工程に用いる水の量を1,244mlとした以外は、実施例6と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は3.19質量%であった。
実施例6〜10における混合物の組成と実験条件を表2にまとめて示す。
Figure 2018038968
(実施例11)
火力発電所から採取された石炭灰(未燃炭素付着量3.4質量%)5kg(1バッチ分)と、予め水1,119mlと灯油25mlおよび食用油6.25mlをミキサーで乳化撹拌した混合物とを、アイリッヒミキサーの容器(パン)に充填して撹拌した混合物を用い、石炭灰循環ポンプの稼働時間を7.5分間、水循環ポンプの稼働時間を7.5分間、水循環ポンプを停止させてからの静置時間を5分間とし、回収した重層に石炭灰循環路の中に残存した重層を加えた以外は、実施例4と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は0.63質量%であった。
(実施例12)
分離装置として、石炭灰吐出口の高さを水吸入口の高さ以下とした分離装置を用いた以外は、実施例11と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は0.56質量%であった。
(実施例13)
分離装置として、石炭灰循環路の石炭灰吐出口近傍が、分離槽の周に対して接線方向となる向きであって、石炭灰吐出口から混合液を吐き出す力によって旋回流を強めることができる向きに設けられた分離装置を用いた以外は実施例12と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は0.57質量%であった。
(実施例14)
気泡供給機構の圧力を調整しない状態(気泡径が50μmを超えるバブルを含む水が循環している状態)で分離装置を用いた以外は、実施例8と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は0.96質量%であった。
(比較例1)
石炭灰循環路を有しない分離装置を用いた以外は、実施例11と同様の方法で、石炭灰を処理して、未燃炭素の残留量を測定した。石炭灰における未燃炭素の残留量は2.49質量%であった。
実施例11〜14および比較例1における混合物の組成と実験条件を表3にまとめて示す。
Figure 2018038968
実施例8で用いた処理前の石炭灰と処理後の石炭灰について、セメント協会標準試験方法 JCAS I−61に準拠してメチレンブルー吸着量の測定を行った。メチレンブルー吸着量の測定結果を表4に示す。
処理前の石炭灰におけるメチレンブルー吸着量は0.32mg/gであり、処理後の石炭灰におけるメチレンブルー吸着量は0.01mg/g未満であった。すなわち、本発明の方法で石炭灰を洗浄することにより、メチレンブルー吸着量は激減した。この結果から、処理後の石炭灰は、フレッシュコンクリートの練り混ぜ時に使用される減水剤やAE剤の吸着量を低減できるものとなったことが推察された。つまり、処理後の石炭灰は、処理前の石炭灰を混和材として用いる際の問題点、すなわち、減水剤やAE剤を吸着してしまうという問題点が解消されたものとなっていた。
実施例8で用いた処理前の石炭灰と処理後の石炭灰とについて、JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に規定の「6.密度試験」および「7.1比表面積試験」に準拠して、密度および比表面積を測定した。密度および比表面積の測定結果を表4に示す。
処理前の石炭灰と処理後の石炭灰の比表面積の測定結果から、処理後の石炭灰では、洗浄処理により比表面積が低下していることが判明した。これは、石炭灰の表面に付着していた微粒分が、洗浄によって未燃炭素と一緒に除去されたためである。
Figure 2018038968
実施例8で用いた処理前の石炭灰または処理後の石炭灰を基準セメントに配合したフレッシュモルタルについて、JIS A 1128(モルタル用エアメータ)に準拠して空気量を測定した。基準セメントと石炭灰は、質量比が3:1となるように配合した。さらに比較のために、石炭灰を配合していないフレッシュモルタルの空気量も測定した。空気量の測定結果を表5に示す。なお、基準セメントには、比表面積試験用標準物質(102N)普通ポルトランドセメント(比表面積3300cm2/g)を用いた。
処理前の石炭灰を配合したフレッシュモルタルでは、練り混ぜ時に生じる空気連行が著しく低下しているのに対し、処理後の石炭灰を配合したフレッシュモルタルでは、空気連行の著しい低下は抑制されていることが確認された。
実施例8で用いた処理前の石炭灰または処理後の石炭灰を基準セメントに配合したフレッシュモルタルについて、JIS A 6201:2015に準拠して、フロー値およびフロー値比を測定した。基準セメントと石炭灰は、質量比が3:1となるように配合した。さらに比較のために、石炭灰を配合していないフレッシュモルタルのフロー値およびフロー値比も測定した。フロー値およびフロー値比の測定結果を表5に示す。
石炭灰を配合していないフレッシュモルタルのフロー値比と処理前の石炭灰を配合したフレッシュモルタルのフロー値比の測定結果から、処理前の石炭灰を配合したフレッシュモルタルは、石炭灰を配合していないフレッシュモルタルよりも流動性が低下していることが示された。他方、石炭灰を配合していないフレッシュモルタルのフロー値比と処理後の石炭灰を配合したフレッシュモルタルのフロー値比の測定結果から、処理後の石炭灰を配合したフレッシュモルタルは、石炭灰を配合していないフレッシュモルタルよりも流動性が高まっていることが示された。これら結果から、処理後の石炭灰は、セメントに配合してフレッシュモルタルやフレッシュコンクリートを作製した場合に、それらのコンシステンシーを低下させ、作業性を向上することができるものであることが示された。
実施例8で用いた処理前の石炭灰または処理後の石炭灰を基準セメントに配合して作製したモルタルについて、JIS A 6201:2015に準拠して、圧縮強度および活性度指数を測定した。基準セメントと石炭灰は、質量比が3:1となるように配合した。さらに比較のために、石炭灰を配合していないモルタルの圧縮強度および活性度指数も測定した。圧縮強度および活性度指数の測定結果を表5に示す。
石炭灰を配合していないモルタルの圧縮強度と処理前または処理後の石炭灰を配合したモルタルの圧縮強度の測定結果から、処理前または処理後の石炭灰を配合したモルタルは、石炭灰を配合していないモルタルよりも圧縮強度が低いことが確認された。さらに、処理前の石炭灰を配合した場合と処理後の石炭灰を配合した場合とを比較すると、処理後の石炭灰を配合したモルタルの方が、処理前の石炭灰を配合したモルタルよりも圧縮強度が高くなることが確認された。これらの事から、処理後の石炭灰の方が、処理前の石炭灰よりも混和材として適していることが判明した。
以上のように、洗浄処理を施した石炭灰は、減水剤とAE剤が吸着しにくくなる、空気連行性を改善させる、コンシステンシーの低下によって作業性を向上させる、圧縮強度を向上させる、さらに、未燃炭素によるコンクリートの変色を無くせる等の優れた性質を発揮するものであり、洗浄処理を施していない石炭灰よりも優れた混和材となっていることが示された。
Figure 2018038968
11 水投入装置
12 油投入装置
13 油投入装置
14 乳化撹拌装置
15 石炭灰投入装置
16 石炭灰撹拌装置
17 マイクロバブルジェネレーター
21 分離装置
22 洗浄水供給装置
23 乾燥コンベア
24L 軽層用フィルタープレス機
24H 重層用フィルタープレス機
25 水/油分離槽
30 分離装置
31 分離槽
32 ボールバルブ
41 石炭灰循環路
42 石炭灰吸入口
43 石炭灰吐出口
44 石炭灰循環ポンプ
51 水循環路
52 水吸入口
53 水吐出口
54 水循環ポンプ
55 マイクロバブルジェネレーター

Claims (14)

  1. 混合液中の石炭灰と未燃炭素とを分離可能である分離槽と、
    堆積した石炭灰を含む混合液を循環可能である石炭灰循環路とを備え、
    石炭灰循環路が、分離槽の下部に設けられた石炭灰吸入口と、分離槽の上部に設けられた石炭灰吐出口とを繋ぐ流路として形成されており、
    気泡を分離槽の下部から供給する気泡供給機構が設けられている、分離装置。
  2. 水を含む混合液を循環可能である水循環路を備え、
    水循環路が、分離槽の上部に設けられた水吸入口と、分離槽の下部に設けられた水吐出口とを繋ぐ流路として形成されており、
    分離槽の下部が、下方に向けて窄んだ側部を有する円錐台形となる部分を備え、
    水吐出口が上記側部に設けられ、
    水循環路の水吐出口近傍が上記側部の周に対して接線方向に設けられている、請求項1に記載の分離装置。
  3. 気泡供給機構が、水循環路内から気泡を供給可能である、請求項2に記載の分離装置。
  4. 石炭灰吸入口の高さが、水吐出口の高さ以下である、請求項2または3に記載の分離装置。
  5. 石炭灰吐出口の高さが、水吸入口の高さ以下である、請求項2〜4のいずれかに記載の分離装置。
  6. 石炭灰吐出口の高さが、水吸入口の高さより高い、請求項2〜4のいずれかに記載の分離装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の分離装置を用いて、分離装置を用いる前より未燃炭素の残留量が低減された石炭灰を製造する、石炭灰の製造方法。
  8. 水循環路における1分間の流量が、分離槽内の混合液の量の0.05〜0.5倍である、請求項7に記載の石炭灰の製造方法。
  9. 石炭灰循環路における1分間の流量が、分離槽内の混合液の量の0.05〜0.5倍である、請求項7または8に記載の石炭灰の製造方法。
  10. 未燃炭素が付着した石炭灰と、水と、油0.15〜10質量%とを含み、固形分の濃度を65〜90質量%とした混合物を撹拌する工程(A)を有し、
    工程(A)で得られた混合物に、さらに水を加えて、水と石炭灰とを含む重層と、油を吸着した未燃炭素を含む軽層とに分離する工程(B)を有し、
    工程(B)において分離装置を用いる、請求項7〜9のいずれかに記載の石炭灰の製造方法。
  11. 混合物が、水5〜25質量%を含有する、請求項7〜10のいずれかに記載の石炭灰の製造方法。
  12. 混合物が、油0.5〜10質量%を含有する、請求項11に記載の石炭灰の製造方法。
  13. 混合物に用いる水と油を、未燃炭素が付着した石炭灰と混合する前に、あらかじめ撹拌して乳化させる乳化工程を有する、請求項7〜12のいずれかに記載の石炭灰の製造方法。
  14. 未燃炭素が付着した石炭灰と、水と油とを含み、固形分の濃度を65〜90質量%とした混合物を撹拌する石炭灰撹拌装置と、撹拌された混合物にさらに水を加えて、水と石炭灰とを含む重層と、油を吸着した未燃炭素を含む軽層とに分離する請求項1〜6のいずれかに記載の分離装置とを有する、石炭灰の洗浄システム。
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