JP2018038341A - 標的核酸の高感度検出方法 - Google Patents

標的核酸の高感度検出方法 Download PDF

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成彰 高津
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Abstract

【課題】 非標的核酸に対して微量な、かつ断片化した標的核酸の高感度検出方法を提供すること。
【解決手段】 ヒトK−ras遺伝子のコドン12の変異の存在を検出する方法、当該方法のためのフォワードプライマー、リバースプライマー、抑制オリゴヌクレオチド、耐熱性DNAポリメラーゼ、およびミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、を含む組成物およびキット。該組成物およびキットは、さらにプローブ、耐熱性DNAポリメラーゼ及びミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドを含むことができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ヒトK−ras遺伝子におけるホットスポット、特にエキソン2のG12D変異の存在を検出する方法に関する。
遺伝性および後天性の疾患は、塩基置換、欠失および挿入などの遺伝子変異と関連したものがあることが知られている。これらの変異の中には、疾患があることと直接関連するものもあれば、疾患の危険性および/または予後と相関するものもある。その中で、疾患の進行に伴って、野生型遺伝子が変異型遺伝子に変化していく疾患や、変異型遺伝子を有する細胞の増加がみられる疾患においては、当該変異遺伝子の存在を調べることが重要になってくる。当該遺伝子変異を伴う後天的な疾患と関連遺伝子変異の例としては、大腸がんとK−ras遺伝子変異、肺がんとEGFR遺伝子変異又はK−ras遺伝子変異、肺扁平上皮がんとDDR2遺伝子変異、PIK3CA遺伝子変異又はB−raf遺伝子変異、胃がんとKit遺伝子変異又はPDGFRA遺伝子変異が挙げられる。
また、上記事例の逆の場合もありうる。例えば、遺伝子変異を伴う後天的な疾患を治療している過程において、今度は変異型遺伝子が減少し、野生型遺伝子が増加してくる状況をモニターリングする場合などである。微小残存病変検出などが例示される。
K−ras(カーステン・ラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ; v−Ki−ras2 Kirsten rat sarcoma viral oncogene homolog)は、グアノシン三リン酸(GTP)結合タンパク質である。上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor; EGFR)など上流からの刺激により、グアノシン二リン酸(GDP)がK−ras分子から離れ、代わりに細胞質からGTPが結合することで活性型K−rasとなる。活性型K−rasは、RAF、PI3K、RALGDSなどのエフェクタータンパク質と結合し、下流のシグナルカスケードを活性化する。一方、活性型K−rasは自身のもつGTP加水分解活性(GTPase)により不活性型となる。K−ras遺伝子が変異することによってK−rasタンパク質にアミノ酸置換が生じるとK−rasのGTPaseとしての機能が低下し、K−rasは恒常的な活性化状態となり、下流にシグナルを送り続ける。この過剰なシグナルが、発がんやがんの増殖に関与しているとされる。
上記抗体医薬を投与される患者の遺伝子型が変異型K−rasだった場合、野生型K−rasと比較して、無増悪生存期間中央値および生存期間中央値がいずれも有意に短縮されることが報告されている(非特許文献1)。また、患者の遺伝子型が変異型K−rasだった場合、化学療法の一種であるFOLFOX療法[フォリン酸(folinic acid)、フルオロウラシル(fluorouracil)、オキサリプラチン(oxaliplatin)の3剤併用療法]と抗EGFR抗体医薬を併用することにより、FOLFOXの治療効果が減弱することが報告されている(非特許文献2)。学会の定める大腸がんの治療ガイドラインにおいて、K−ras遺伝子変異の認められる患者には、これらの抗がん剤の投与は推奨されない(非特許文献3)。欧米のガイドラインでも同様である。このように、K−ras遺伝子の変異の有無は、適切な抗がん剤の選択において重要な情報である。
K−ras遺伝子変異のホットスポットは公知であり、エキソン2のコドン12とコドン13、エキソン3のコドン59とコドン61、およびエキソン4のコドン117とコドン146である。これら変異がK−rasタンパク質の恒常的活性化、腫瘍細胞増殖速度の増加、下流の増殖シグナルの活性化誘導などを生じている(非特許文献1)。大腸がんでのK−ras遺伝子変異の頻度は、COSMIC(catalogue of somatic mutations in cancer)データベースによれば、K−ras遺伝子34.6%、N−ras遺伝子3.7%、H−ras遺伝子0.2%と報告され、K−rasエキソン2(コドン12,コドン13)の変異が多くを占めている。
K−ras遺伝子変異の有無を測定する方法として、ダイレクトシーケンス法、アレル特異的増幅法、SURVEYOR法、次世代シーケンス法、BEAMing法(beads, emulsions, amplification, and magnetics)などが知られている(非特許文献1)。
ダイレクトシーケンス法は簡便な方法であり、未知の変異も検出できる利点がある一方、検出感度が低い欠点がある。
アレル特異的増幅法は、一方のプライマーの3’末端を変異塩基に相補的になるよう設計する必要があり、プライマー設計の自由度が低く、変異箇所の周辺配列によってはプライマー設計が困難な場合がある。また、PCR条件について、変異アレルは効率よく増幅するが、正常アレルの増幅効率は非常に悪いように厳密に設定する必要がある。
SURVEYOR法はセロリ由来ミスマッチ二重鎖切断酵素(Cel−1ヌクレアーゼ)を用いて変異を検出する方法である。PCR増幅後、一本鎖核酸へ解離させ、再度アニーリングさせる際に生じた野生型と変異型のヘテロ二本鎖を両鎖とも切断し、生じた核酸断片長によって変異の有無を検出する。工数が多い欠点がある。
次世代シーケンス法は、がん細胞数が少ない初期病変組織でも検出可能な感度の高い方法であるが、コストと時間がかかること、初期病変では変異か測定エラーかの判別が難しい点がある。
BEAMing法はDigital PCR法の一種であり、油中水滴エマルジョン中に磁気ビーズとDNAフラグメントコピーを1:1に封入し、PCRを行う方法である。末梢血液中を循環するがん細胞由来DNA(cfDNA)を高感度に検出することが可能である。工数が多い欠点がある。
また最近になって、耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼを用いた変異検出方法(特許文献1)が報告された。しかしながら、これらの方法でも野生型遺伝子の核酸増幅を抑制し、変異型遺伝子を選択的に増幅し、変異遺伝子の存在のみを正確に検出するにはまだまだ問題があった。
腫瘍組織における腫瘍細胞の遺伝子変異を検査する場合、これまでは生検(biopsy)を行うしか方法がなかった。しかしながら、生検操作は侵襲性が高く、連続的に生検を行うことが患者にとって負担であった。また、腫瘍組織は不均一であり、同一腫瘍中に正常細胞と複数種の腫瘍細胞が混在しているという問題点があった。転移がある場合には転移巣ごとに生検することが望ましいが、患者負担の観点からそれは実施困難であった。
患者への侵襲度が低い方法として、腫瘍細胞が血中へ放出する血中循環腫瘍細胞(circulating tumor cell; CTC)および/または無細胞の血中循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA; ctDNA)を分析する方法がある。当該ctDNAは、血中循環無細胞DNA(circulating cell−free DNA; cfDNA)の一種である。
ctDNAから腫瘍ゲノムを再構築できる可能性があるため、これまでの生検に代わる方法としてリキッドバイオプシー(liquid biopsy)とも呼ばれている(非特許文献4)。
このような理由から、ctDNAを検出する技術について需要が高まっている。しかしながら、血中には正常細胞由来DNAが大量に存在し、相対的にも絶対的にも微量しか存在しないctDNAを検出することは困難であった。
ctDNAは循環血液中では濃度が低く、さらに高度に断片化されており、多くは160mer以下となっている。
そのため、患者へ抗体医薬を投与する前に、K−ras遺伝子型を迅速に、簡便に、感度高く判別すること、および患者への侵襲度が低い方法で検体採取種して判別する方法が求められてきた。
国際公開第2014/142261号パンフレット
キャンサー トリートメント レビューズ(Cancer Treatment Reviews)、第41巻、第8号、653〜659ページ(2015年) ザ ニュー イングランド ジャーナル オブ メディシン(The New England journal of medicine)、第369巻、第11号、1023〜1034ページ(2013年) インターナショナル ジャーナル オブ クリニカル オンコロジー(International Journal of Clinical Oncology)、第20巻、第2号、207〜239ページ(2015年) サイエンス トランスレーショナル メディシン(Science Translational Medicine)、第6巻、第224号、224ra24ページ(2014年)
本発明の目的は、非標的核酸に対して微量な、かつ断片化した標的核酸の高感度検出方法を提供することにある。
本発明者らは、ミスマッチ部位を認識・切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドの特性、特にミスマッチの種類や位置と切断活性との相関を解析した。その結果、配列中の少なくとも1塩基が相違する2種の核酸について、相違する塩基の種類に制限されることなく、そのうちの任意の一方を切断できる方法を見出した。また、当該方法で大量の非標的核酸と希少な標的核酸の混在した試料を処理することで、非標的核酸を選択的に切断することが可能となり、希少な標的核酸を選択的に核酸増幅できる方法、さらに当該核酸増幅方法を用いた標的核酸の高感度検出方法を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第一の発明は、K−ras遺伝子のエキソン2のコドン12の変異の存在を検出する方法であって、
(1)下記a)〜d)を含有する反応液を調製する工程;
a)被験試料、
b)配列番号8で示される、ヒトK−ras遺伝子のエキソン2を含む領域の塩基配列の50位から290位の範囲で、それぞれ重複することなく設計されたフォワードプライマー、リバースプライマー及び抑制オリゴヌクレオチド、
c)耐熱性DNAポリメラーゼ、及び
d)ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド;
(2)反応液を温度サイクル反応に供する工程、及び
(3)反応後の反応液についてK−ras遺伝子の配列の一部を有する増幅DNA断片を検出する工程、を包含し、
ここで、前記抑制オリゴヌクレオチドは、野生型ヒトK−ras遺伝子由来の核酸のコドン12に対応する塩基配列を含む領域とハイブリダイズさせた際にミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドで切断されるミスマッチを生じ、かつコドン12に対応する塩基配列に変異が生じた前記領域とハイブリダイズさせた際に前記非標的核酸とハイブリダイズさせた際には前記ポリペプチドで切断されるミスマッチを生じないオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、方法に関する。
本発明の第一の発明において、反応液が、さらにプローブを含有してもよい。
本発明の第一の発明において、反応液が、
配列番号8の塩基配列の50位から190位の範囲で設計されたフォワードプライマー、
配列番号8の塩基配列の210位から290位の範囲で設計されたリバースプライマー、及び
配列番号8の塩基配列の180位から230位の範囲、かつ配列番号8の塩基配列の204位の変異を含む範囲で設計された抑制オリゴヌクレオチド、
を含有することを特徴とする方法であってもよい。
反応液が、さらに配列番号8の塩基配列の190位から220位の範囲で設計されたプローブを含有することを特徴とする方法であってもよい。
ここで、フォワードプライマー及びリバースプライマーは20〜30塩基のオリゴヌクレオチド、抑制オリゴヌクレオチドは10〜20塩基のオリゴヌクレオチド、およびプローブは7〜14塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
さらには、配列番号1〜4いずれか1つで示されるフォワードプライマー、配列番号5で示されるリバースプライマー、配列番号6で示される抑制オリゴヌクレオチド、および配列番号7、10、または11で示されるプローブが好適に使用できる。
また、本発明の第一の発明は、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド存在下で行うことができる。配列番号12〜16から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが好適に使用できる。
また、本発明の第一の発明において、標的核酸の検出はサイクリング・プローブ法又はTaqMan(登録商標)法で行うことができる。
本発明の第二の発明は、本発明の第一の発明のためのキットであって、配列番号8で示される、ヒトK−ras遺伝子のエキソン2を含む領域の塩基配列の50位から290位の範囲で、それぞれ重複することなく設計されたフォワードプライマー、リバースプライマー及び抑制オリゴヌクレオチドを含有する、ヒトK−ras遺伝子のエキソン2のコドン12の変異の存在を検出するためのキットに関する。
本発明の第二の発明において、さらにプローブ、耐熱性DNAポリメラーゼ及びミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドを含有してもよい。
本発明により、非標的核酸に対して微量な、かつ断片化した標的核酸の高感度検出方法が提供される。また、当該核酸増幅方法と標的核酸の特異的リアルタイム検出方法を組み合わせることにより、希少な変異型遺伝子の高感度での検出を可能とする方法が提供される。
ヒトK−ras遺伝子コドン12のグリシン野生型からアスパラギン酸変異型へ変異を検出した結果である。
本発明において、ミスマッチとは、二本鎖核酸中に存在するワトソン−クリック塩基対とは異なる塩基の対合、すなわちG(グアニン塩基)−C(シトシン塩基)、A(アデニン塩基)−T(チミン塩基)またはU(ウラシル塩基)の塩基対結合以外の組み合わせの塩基結合を示す。
本発明において、標的核酸とは、変異が生じたヒトK−ras遺伝子に由来する核酸を言う。本発明は、当該標的核酸を野生型のヒトK−ras遺伝子の塩基配列を有する核酸(以下、非標的核酸と称する)と区別することに有用である。特に本発明を限定するものではないが、本発明における標的核酸、非標的核酸にはDNAが好適である。
特に限定はされないが、本発明における標的核酸としては、野生型ヒトK−ras遺伝子の塩基配列に置換、欠失及び/又は挿入が生じた核酸が例示される。特に、ヒトK−ras遺伝子のコドン12または13をコードする領域に1塩基置換が生じた核酸が好適である。
以下、さらに詳細に説明する。
1.本発明の構成要素
(1)ヒトK−ras遺伝子変異
本発明の方法における標的核酸は、ヒトK−ras遺伝子変異のホットスポットの1つであるエキソン2のコドン12に変異を有するに核酸である。配列表8に示される野生型ヒトK−ras遺伝子のエキソン2を含む領域の塩基配列において、塩基番号202〜205はコドン12(グリシン)に対応している。このグリシンについて、セリン、システイン、アルギニン(配列表8の塩基配列の塩基番号203のグアニンがそれぞれアデニン、チミン、シトシンに置換)、アスパラギン酸、バリン、アラニン(配列表8の塩基配列の塩基番号204のGがそれぞれアデニン、チミン、シトシンに置換)に変異したヒトK−ras変異遺伝子が知られている。本発明の方法は、コドン12がアスパラギン酸のコドンに変異したG12D変異をコードする核酸の検出に有用である。当該変異の詳細は、下記の通りである。
refSNP; rs121913529
GRCh38.p2において、NC_000012.12のChr. Pos. 25245350
NM_004985.4において、Pos. 227 (gGt→gAt)
NP_004976.2において、Pos. Gly12Asp (G12D)
dbSNP; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/snp_ref.cgi?rs=121913529
本明細書において、上記標的核酸およびその周辺塩基配列は配列番号8に示した。G12D変異においてアデニン(A)に置換したグアニン(G)は、配列番号8の204位に相当する。
(2)プライマーセット
本発明の方法に使用するプライマーセットは、PCR法によりヒトK−ras遺伝子の部分塩基配列を有するDNAを増幅するためのプライマーセット(以下、「K−ras増幅用プライマーセット」と記載する)を含む。当該プライマーセットは、一般的な核酸増幅反応条件下でヒトK−ras遺伝子のエキソン2のコドン12、13に対応する塩基配列を含む領域のDNAを増幅可能な1対のプライマーセットである。前記プライマーセットは、ヒトK−ras遺伝子の塩基配列と相同な塩基配列を有するフォワードプライマーと、ヒトK−ras遺伝子の塩基配列と相補的な塩基配列を有するリバースプライマーとで構成される。両プライマーはヒトK−ras遺伝子の塩基配列に基づいて任意に設計することができる。なお、当該プライマーセットは標的核酸、非標的核酸のどちらも鋳型とすることができ、増幅DNA断片を生じる。
前記のプライマーセットを構成するプライマーは、鋳型となるヒトK−ras遺伝子の塩基配列と実質的に相同もしくは相補的な塩基配列を有し、DNAポリメラーゼによる相補鎖合成反応の起点として機能するオリゴヌクレオチドである。プライマーの鎖長は、好ましくは10〜50塩基、より好ましくは15〜40塩基、さらに好ましくは20〜30塩基である。
本発明の方法では、断片化されているctDNAを鋳型としてヒトK−ras遺伝子の変異を検出することを可能とするため、短鎖長のDNAが増幅されるようにプライマーセットが設計される。当該プライマーセットは、好ましくは配列番号8で示される塩基配列の50位から290位の範囲、より好ましくは111位から242位の範囲、さらに好ましくは141位から242位の範囲内で設計されたフォワードプライマーとリバースプライマーのセットが例示される。特に限定するものではないが、配列番号8の塩基配列の50位から190位の範囲で設計されている、配列番号1〜4から選択される少なくとも1つのオリゴヌクレオチド(以下、フォワードプライマーと称することがある)、および配列番号8の塩基配列の210位から290位の範囲で設計されている、配列番号5記載のオリゴヌクレオチド(以下、リバースプライマーと称することがある)の組み合わせが例示される。好適には、配列番号3記載のオリゴヌクレオチドと配列番号5記載のオリゴヌクレオチドの組み合わせ、および配列番号4記載のオリゴヌクレオチドと配列番号5記載のオリゴヌクレオチドの組み合わせが例示される。
本発明において、プライマーセットは得られる増幅産物の塩基長が100bp〜180bpの範囲となるよう設計される。
本発明の方法では、K−ras増幅用プライマーセットに加えて、さらに後述の抑制オリゴヌクレオチドならびにミスマッチエンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応が実施される。さらに、プローブを含めることができる。抑制オリゴヌクレオチドおよびプローブは、上記K−ras増幅用プライマーセットを用いたPCR反応により増幅されたDNA中の標的配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であればよく、特に限定はされないが、例えば抑制オリゴヌクレオチドは配列番号6、プローブは配列番号7、10、または11に示す塩基配列である。
なお、フォワードプライマー、リバースプライマー、抑制オリゴヌクレオチド、およびプローブは、互いにハイブリダイズしない配列になるよう設計することが望ましい。特に、ミスマッチエンドヌクレアーゼまたはリボヌクレアーゼHによって認識され切断される塩基およびその周辺配列は特異的な配列になるよう設計することが望ましい。
(3)抑制オリゴヌクレオチド
本発明の方法は、標的核酸と、非標的核酸とを含有する試料中において、非標的核酸のみを選択的に切断することにより、標的核酸のみを効率的に増幅し、検出する方法である。すなわち、本発明では野生型のヒトK−ras遺伝子に由来する核酸の選択的な切断が実施される。
本発明では、非標的核酸とハイブリダイズさせた際にミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドによって切断されるミスマッチを生じ、かつ標的核酸とハイブリダイズさせた際には前記のミスマッチを生じないオリゴヌクレオチド(以下、抑制オリゴヌクレオチドと称することがある)と、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドとを用いる。ここで、「ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドによって切断されるミスマッチを生じない」とは、抑制オリゴヌクレオチドを標的核酸とハイブリダイズさせた際にミスマッチを生じないこと、前記ポリペプチドで切断できないミスマッチを生じること、又は前記ポリペプチドで切断されるミスマッチならびに当該ミスマッチの切断を妨害する別の(1又は数個の)ミスマッチを生じること、を包含する。
以上のような性質を備えた抑制オリゴヌクレオチドを設計して使用することにより、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドによる非標的核酸の選択的な切断が可能となる。抑制オリゴヌクレオチドは、標的核酸と非標的核酸の塩基配列の違い、使用するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドの性質に基づいて任意に設計することができる。また、抑制オリゴヌクレオチドは、ヒトK−ras遺伝子のセンス鎖、アンチセンス鎖のどちらの配列を参照して設計してもよい。抑制オリゴヌクレオチドは、前記のプライマーセットが設計された位置の間で、かつ両プライマーの設計位置とは重複しないように設計される。
本発明の方法で使用する抑制オリゴヌクレオチドは、DNAで構成されるが、その一部をヌクレオチドアナログやRNAとしてもよい。すなわち、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドにより非標的核酸を特異的に切断せしめるという機能を示す限りにおいて特に限定はされない。
ヒトK−ras遺伝子上の特定の変異の存在を検出が望まれる場合、野生型ヒトK−ras遺伝子の当該変異部位とハイブリダイズした場合にミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドで切断されるミスマッチを生じ、かつ変異を有するヒトK−ras遺伝子とハイブリダイズさせた際には前記のミスマッチを生じるが前記ポリペプチドで切断できない抑制オリゴヌクレオチドを作製して使用される。前記のとおり、「ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドで切断されるミスマッチを生じない抑制オリゴヌクレオチド」は、(1)変異を有するヒトK−ras遺伝子と完全に相補的な配列、(2)変異を有するヒトK−ras遺伝子との間で、使用されるミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドによって切断されないミスマッチを生じる配列、並びに(3)変異を有するヒトK−ras遺伝子との間で、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドで切断されるミスマッチと、それに加えて当該切断を阻害しうる1以上のミスマッチを生じる配列、から選択される塩基配列に基づいて設計することができる。
本発明の方法に使用される抑制オリゴヌクレオチドの鎖長には特に限定はないが、通常は7塩基以上のものが使用され、好ましくは7〜40塩基、より好ましくは10〜30塩基、特に好ましくは11〜25塩基の範囲である。さらに、本発明を特に限定するものではないが、このオリゴデオキシヌクレオチドの3’末端は、このオリゴデオキシヌクレオチドからのDNAポリメラーゼによる伸長反応を抑制するための修飾を施されていてもよい。例えば、アミノ化などの修飾が例示される。
後述の実施例1記載の、配列番号6で示される抑制オリゴヌクレオチドは、コドン12がGGT(グリシンに対応)である野生型のヒトK−ras遺伝子とハイブリダイズした場合にはG−Gミスマッチを含む二本鎖DNAを形成する。一方、コドン12がGAT(アスパラギン酸に対応)に変異したヒトK−ras遺伝子とはG−Aミスマッチを含む二本鎖DNAを形成する。この抑制オリゴヌクレオチドと、G−Gミスマッチを切断しかつG−Aミスマッチを切断しないミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドとを組み合わせることにより、野生型ヒトK−ras遺伝子を選択に切断することが可能となる。
(4)耐熱性DNAポリメラーゼ
本明細書において、耐熱性DNAポリメラーゼとは、75℃以上の温度で30分間処理した後であっても活性を保持するDNA依存性DNAポリメラーゼの事を言う。当該耐熱性DNAポリメラーゼは、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性、及び/又はRNA依存性DNAポリメラーゼ活性をさらに有していてもよい。
本発明に使用される耐熱性DNAポリメラーゼは、PCRに使用可能なものであればよく、すでに多くの種類の耐熱性DNAポリメラーゼが市販されている。本発明を特に限定するものではないが、本発明に使用される耐熱性DNAポリメラーゼとしては、高度好熱菌由来のDNAポリメラーゼが例示される。高度好熱菌とは75℃以上の環境下でも生育できる菌の事を指す。高度好熱菌としては、例えば、真正細菌ではThermus aquaticus、Thermus thermophilus、Thermus flavus、及びThermus filiformisのようなThermus属の真正細菌、古細菌ではPyrococcus furiosus、Pyrococcus woseii、Pyrococcus horikoshiiのようなPyrococcus属の古細菌、並びにThermococcus litoralis、Thermococcus celler、Thermococcus siculi、Thermococcus sp. KS−1、及びThermococcus kodakaraensisのようなThermococcus属の古細菌が挙げられる。なお、本発明における耐熱性DNAポリメラーゼとしては、2種以上の耐熱性DNAポリメラーゼの混合物を用いても良い。
(5)ミスマッチエンドヌクレアーゼ
本明細書において、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド(以下、ミスマッチエンドヌクレアーゼと称することがある)とは、二本鎖核酸中のミスマッチ部位を切断する活性を有するヌクレアーゼのことをいう。前記のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性は、ミスマッチ塩基対を形成するヌクレオチドに隣接するリン酸ジエステル結合を切断する活性の他、ミスマッチ塩基対から1〜5塩基対、好ましくは1〜3塩基対離れたヌクレオチドに隣接するリン酸ジエステル結合を切断する活性を包含する。本発明においてミスマッチエンドヌクレアーゼは、特定のミスマッチ塩基対を特異的に認識して二本鎖核酸を切断する活性を有するもの(例えばGTミスマッチを特異的に認識するものや、GTミスマッチ及びGGミスマッチを特異的に認識するもの等)であってもよい。また、本発明において耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼは、二本鎖核酸中のミスマッチ部位を切断する活性の他に、一本鎖DNA、一本鎖核酸と二本鎖核酸のジャンクション部分、ダブルフラップ構造、レプリケーションフォーク構造、D−ループ構造、及び/又はニックが入ったホリデイジャンクション構造を認識して核酸を切断する活性を有していても良い。また、本明細書において耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼとは、50℃以上の温度において二本鎖核酸中のミスマッチ部位を切断する活性を示すヌクレアーゼのことをいい、本発明においては耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼの使用が好ましい。
本発明を特に限定するものではないが、本発明に使用される耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼとしては、Pyrococcus furiosus由来のポリペプチドPF0012(国際公開第2014/142261号パンフレット、RefSeq ID:NP_577741、本発明の配列表の配列番号12)、当該ポリペプチドPF0012の77番目のトリプトファン残基がフェニルアラニンに置換されてなるアミノ酸配列を有するポリペプチドW77F変異体(国際公開第2014/142261号パンフレット、本発明の配列表の配列番号13)、Thermococcus kodakarensis由来のミスマッチエンドヌクレアーゼNucS(配列番号14)、PF0012のホモログであるMethanocaldococcus jannaschii由来のポリペプチドMJ_0225(国際公開第2014/142261号パンフレット、RefSeq ID:NP_247194、本発明の配列表の配列番号15)、及びPF0012のホモログであるThermococcus barophilus由来のポリペプチドTERMP_01877(国際公開第2014/142261号パンフレット、RefSeq ID:YP_004072075、配列表の配列番号16)が例示される。
本発明を特に限定するものではないが、前記ポリペプチドやそのホモログ、それらの変異体が本発明に使用できる。前記ポリペプチドのアミノ酸配列において1〜10個、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有するポリペプチド(ただし、ポリペプチドW77F変異体において77番目のアミノ酸残基を除く)、及び前記ポリペプチドのアミノ酸配列に対して50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、または75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、またさらに好ましくは95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドは、本発明における耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼとして好適である。なお、該置換、欠失、挿入、及び/又は付加は、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性が保持される変異であることを条件とする。
このようなミスマッチエンドヌクレアーゼは、後述する種々の用途、例えば特異的DNA配列を含有するDNAを排除しその他のDNAを増幅、検出する方法に好適である。
ここで、ミスマッチエンドヌクレアーゼの活性は、ミスマッチ塩基対を含有する二本鎖核酸を基質として測定することができる。具体的には、ミスマッチ塩基対を含有する二本鎖核酸を調製した後、ミスマッチエンドヌクレアーゼに対して過剰量の当該二本鎖核酸をミスマッチエンドヌクレアーゼと反応させ、単位時間当たりの切断核酸量を測定することで活性測定が実施される。切断された二本鎖核酸は、電気泳動などにより切断を受けなかった核酸と分離して定量することが可能である。切断を受けた場合にのみ蛍光強度の増加が検出できるように蛍光物質と消光物質とで二重に標識した二本鎖核酸を使用すれば、反応溶液中の蛍光強度を適当な時間ごとに測定することにより活性を簡便に測定することができる。また、基質となる二本鎖核酸の中のミスマッチ塩基対の塩基を変えることで、特定のミスマッチ塩基対に対する切断活性を調べることも可能である。
本発明の方法において、上記抑制オリゴヌクレオチドは、ミスマッチ塩基の認識・切断に最適なミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドと組み合わせて使用される。特に限定はされないが例えば、前記耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼが好適に使用できる。
本発明の好適な態様においては、並行して行われる核酸増幅や検出のために耐熱性菌由来のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドを用いることが好ましい。特に限定はされないが、例えばPCRのような熱サイクル中でも安定に活性を保持するものが好ましく、50℃以上、さらに好ましくは、70℃以上、より好ましくは90℃以上でも失活しないポリペプチドが使用できる。
(6)その他
前述のとおり、本発明の方法は一般的なPCRの反応条件で実施することができる。反応用緩衝液、2価陽イオン、1価陽イオン、界面活性剤等は、使用する耐熱性DNAポリメラーゼ及び/又はミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドの特性に基づいて設定することができる。
本発明の方法は、酸性高分子物質存在下で実施することができる。当該酸性高分子物質は、それが共存することによって、当該ポリペプチドのミスマッチ認識・切断活性を制御する効果が確認されている。当該効果は、試料中の核酸量が少ない場合において、より効果を発揮する。当該酸性高分子物質としては、ポリアニオンであるものが好ましい。また糖骨格を有する酸性多糖あるいは直鎖炭素鎖を有する酸性多糖が好ましい。酸性高分子物質としては、フコース硫酸含有多糖、デキストラン硫酸、カラギーナン、ヘパリン、ラムナン硫酸、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、ペクチン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレン硫酸、およびそれらの塩、あるいは標的核酸及び非標的核酸とは異なる核酸からなる群より選択された1種以上を使用することができる。
本発明の方法は、さらに、増殖細胞核抗原(proliferating cell nuclear antigen; PCNA)を組み合わせて実施してもよい。核酸増幅反応に有効なPCNAが知られており(例えば国際公開第2007/004654号パンフレット等)、反応液に添加して使用することができる。
2.本発明の標的核酸の選択的検出方法
以上に示したプライマーセット、抑制オリゴヌクレオチド、耐熱性DNAポリメラーゼ、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド(好ましくは耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド)、並びに被験試料を含む反応液を調製し、核酸増幅反応が起こる条件下、すなわちポリメラーゼ連鎖反応が進行する条件下で保温する。この際に生成した非標的核酸由来のDNA断片は抑制オリゴヌクレオチドとミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドの作用により切断されることから、反応液中には標的核酸由来のDNA断片のみが蓄積される。こうして、反応液中のDNA断片の生成を確認することにより、被験試料中の変異ヒトK−ras遺伝子の存在/非存在を知ることができる。反応液中のDNA断片は、例えば電気泳動法をはじめとする公知の方法で検出することができるが、適切な標識プローブを利用して、反応液中のDNA断片の増加を経時的に調べることができる。
本発明の方法における増幅DNA断片を検出する工程としては、ダイレクトシーケンス法やインターカーレーターによる高解像度融解曲線解析(HRM:High Resolution Melting Curve Analysis)法などのエンドポイント検出、および配列特異的プローブを使用するサイクリング・プローブ法(例えば国際公開第2003/074696号)やTaqMan(登録商標)アッセイ法(例えば国際公開第92/02638号)などのリアルタイム検出が例示される。好ましくは、PCR法と組み合わせることができるサイクリング・プローブ法やTaqMan(登録商標)アッセイ法による検出である。特に好ましくは、サイクリング・プローブ法による検出である。
上記サイクリング・ブローブ法で検出する場合には、当該検出系にリボヌクレアーゼH活性を有するポリペプチドを共存させる。PCRと並行して検出を行う観点から、当該リボヌクレアーゼH活性を有するポリペプチドは、耐熱性のものが好ましい。特に限定はされないが、Bacillus caldotenax由来、Pyrococcus furiosus由来、Pyrococcus horikoshii由来、Archaeoglobus fulgidus由来、Thermococcus litoralis由来、Thermococcus celer由来、Thermotoga maritima由来、又はArchaeoglobus profundus由来のリボヌクレアーゼHが好適に使用できる。
また、耐熱性DNAポリメラーゼおよびリボヌクレアーゼHを含む市販の製品、例えばCycleavePCR Reaction Mix(タカラバイオ社製)を使用することもできる。
サイクリング・プローブ法では標的核酸を非標的核酸と区別して検出することが可能である。このような検出に使用可能なプローブ(キメラオリゴヌクレオチドプローブ)は公知の方法、例えば国際公開第2012/014988号パンフレットに開示された方法により設計することができる。当該キメラオリゴヌクレオチドプローブは、RNA部分を挟んで一方が蛍光物質で、もう一方がその蛍光物質の発する蛍光を消光する物質(クエンチャー)で標識されているものが好適である。当該物質の組合せとしては、6−FAM(6−carboxyfluorescein)とDABCYL(4−dimethylaminoazobenzene−4’−sulfone)、ROX(6−carboxy−X−rhodamine)とDABCYL、6−FAMとEclipse(Epoch Biosciences社製)、ROXとEclipse、TET(tetrachlorofluorescein)とDABCYL、TETとEclipse、6−FAMとBHQ(登録商標、black hole quencher)、ROXとBHQ、TETとBHQ等が好適に使用できる。
該プローブの修飾は、プローブの5’末端を蛍光物質で、3’末端をクエンチャーで標識してもよいし、あるいはプローブの5’末端をクエンチャーで、3’末端を蛍光物質で標識してもよい。当該プローブの修飾は、プローブの塩基長、キメラプローブ中のRNAの位置、ミスマッチ塩基の位置、およびバックグラウンドノイズの低さなどに応じて適宜選択することができる。
これらのプローブは、抑制オリゴヌクレオチドと同様に、ヒトK−ras遺伝子の塩基配列を参照しながら、前記のプライマーセットが設計された位置の間で、かつ両プライマーの設計位置とは重複しないように設計される。プローブを抑制オリゴヌクレオチドと重複する位置で設計することは差し支えない。本発明を特に限定するものではないが、配列番号7、10、または11に示されるサイクリング・プローブが本発明に好適である。
PCRを利用する本発明の検出方法においては、さらに陽性対照核酸の増幅と検出を組み合わせてもよい。前記陽性対照核酸は、試料中に最初から存在する検出の対象となる遺伝子と異なる遺伝子の核酸(例えば、ハウスキーピング遺伝子など)が好ましい。試料中に最初から存在する遺伝子を陽性対照核酸とする場合は、当該遺伝子の任意の領域を増幅させるためのプライマーセットと検出用プローブを組み合わせて使用する。また、人工核酸を調製して試料にあらかじめ添加してもよく、例えば、標的核酸及び非標的核酸の増幅領域と同じ領域あるいは標的核酸及び非標的核酸の増幅領域とは異なる領域の核酸であってもよい。あらかじめ試料に既知量を添加した人工核酸を陽性対照核酸とする場合は、標的核酸及び非標的核酸の増幅領域と同じプライマーで増幅可能であれば共通のプライマー対を使用し、標的核酸及び非標的核酸の増幅領域とは異なる領域であれば当該領域増幅用のプライマーセットを使用する。当該陽性対照核酸を検出するためのプローブは、これらの陽性対照核酸を選択的に検出できるものを使用する。本発明の標的核酸の検出と同時にこれらの陽性対照核酸の検出を行うことにより、本発明の検出系での増幅に異常かないかどうかの確認、並びに増幅曲線の比較による標的核酸の初期量の半定量的な解析が可能となる。
本発明の検出方法は、酸性高分子物質存在下で実施することができる。当該酸性高分子物質の効果は、サンプルの核酸量が少ない場合において、より効果を発揮する。当該酸性高分子物質としては、前述の本発明の非標的核酸の選択的切断方法の説明で例示されたものが好適に使用できる。本発明の方法は、さらにPCNAを組み合わせて実施してもよい。
本発明の検出方法は、例えば血中循環腫瘍DNAの検出や母親の血液中に含有されている少量の胎児DNA配列の検出にも有用である。
本発明を特に限定するものではないが、前記の特定の塩基配列を有する核酸としては、腫瘍マーカーとして利用される一塩基多型変異、癌治療用薬剤による治療効果と相関する一塩基多型変異、及び細胞の癌化との相関が知られている一塩基多型変異からなる群より選択された少なくとも1つの一塩基多型変異を含む核酸が好ましい。SNPsには、腫瘍細胞に高頻度で認められるものや、癌治療用薬剤による治療効果や発癌との相関が知られているものがある。このような後天的遺伝子変異としては、ヒトK−ras遺伝子、PIK3CA遺伝子、B−raf遺伝子、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の変異が例示される。ヒトK−ras遺伝子の体細胞変異は、結腸直腸癌、肺腺癌、甲状腺癌等において高頻度で認められる。EGFR遺伝子の体細胞変異は、様々な固形腫瘍において高頻度で認められる。ゲフィチニブやエルロチニブ等のEGFR阻害剤による癌の治療は、癌組織のEGFR遺伝子が特定の一塩基多型変異を有する場合に有効である可能性が高いことが知られている。一方、癌組織のヒトK−ras遺伝子が一塩基多型変異を有する場合には、EGFR阻害剤への抵抗性を示す可能性が高いことが知られている。また、PIK3CA遺伝子やB−raf遺伝子の体細胞変異は、結腸直腸癌、悪性黒色腫、甲状腺乳頭癌、非小細胞肺癌、肺腺癌等において高頻度で認められる。
3.本発明の組成物
本発明の検出方法のための組成物としては、
b)配列番号8で示される塩基配列の50位から290位の範囲で、それぞれ重複することなく設計されたフォワードプライマー、リバースプライマー及び抑制オリゴヌクレオチド;
ここで、前記抑制オリゴヌクレオチドは、野生型ヒトK−ras遺伝子由来の核酸のコドン12に対応する塩基配列を含む領域とハイブリダイズさせた際にミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドで切断されるミスマッチを生じ、かつコドン12に対応する塩基配列に変異が生じた前記領域とハイブリダイズさせた際に前記非標的核酸とハイブリダイズさせた際には前記ポリペプチドで切断されるミスマッチを生じないオリゴヌクレオチドである、
c)耐熱性DNAポリメラーゼ又はその変異体、及び
d)ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド又はその変異体、
を含有する組成物が例示される。
本発明の組成物においては、特に限定はされないが、実施例記載のKRAS_G12D_F3とR1のプライマー対、又はKRAS_G12D_F4とR1のプライマー対とS_KRAS_G12 抑制オリゴヌクレオチドの組み合わせが好ましく、当該組み合わせにさらにD_KRAS_G12D検出プローブを組み合わせてもよい。
当該組成物は、耐熱性DNAポリメラーゼ及びミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドが作用を示し得る反応液を調製するための各種成分(緩衝成分、二価陽イオン、4種のdNTP、界面活性剤等)を含有することができる。さらに酸性高分子物質を含んでいてもよい。当該酸性高分子物質としては、前述の本発明の非標的核酸の選択的切断方法の説明で例示されたものが好適に使用できる。
本発明の組成物は、さらに増殖細胞核抗原(PCNA)を含んでいてもよい。
また、PCRにより標的核酸の検出を実施する本発明の標的核酸の選択的検出方法に使用される組成物は、リボヌクレアーゼH活性を有するポリペプチド又はその変異体、キメラオリゴヌクレオチドであるサイクリング・プローブ、あるいはTaqManプローブを含んでいてもよい。特にミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド、リボヌクレアーゼH活性を有するポリペプチドは、野生型ポリペプチドあるいは変異型ポリペプチドのいずれから選択してもよい。特に限定はされないが、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドとしてPfu由来NucSタンパク質の変異体が好適である。さらに陽性対照核酸検出用のプライマー対とキメラオリゴヌクレオチドプローブあるいはTaqManプローブを組み合わせてもよい。
4.本発明のキット
本発明の標的核酸の選択的増幅方法及び/又は標的核酸の選択的検出方法のためのキットとしては、
b)配列番号8で示される塩基配列の50位から290位の範囲で、それぞれ重複することなく設計されたフォワードプライマー、リバースプライマー及び抑制オリゴヌクレオチド;
ここで、前記抑制オリゴヌクレオチドは、野生型ヒトK−ras遺伝子由来の核酸のコドン12に対応する塩基配列を含む領域とハイブリダイズさせた際にミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドで切断されるミスマッチを生じ、かつコドン12に対応する塩基配列に変異が生じた前記領域とハイブリダイズさせた際に前記非標的核酸とハイブリダイズさせた際には前記ポリペプチドで切断されるミスマッチを生じないオリゴヌクレオチドである、
c)耐熱性DNAポリメラーゼポリペプチド又はその変異体、及び
d)ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド又はその変異体、
を含有するキットが例示される。
本発明のキットにおいては、特に限定はされないが、実施例記載のKRAS_G12D_F3とR1のプライマー対、又はKRAS_G12D_F4とR1のプライマー対とS_KRAS_G12 抑制オリゴヌクレオチドの組み合わせが好ましく、当該組み合わせにさらにD_KRAS_G12D検出プローブを組み合わせてもよい。
本発明のキットは、反応液を調製するための各種の成分を含むことができる。さらに酸性高分子物質を含んでいてもよく、適当な濃度に調製された水溶液が好適に使用できる。当該酸性高分子物質としては、前述の本発明の非標的核酸の選択的切断方法の説明で例示されたものが好適に使用できる。
本発明のキットは、さらに増殖細胞核抗原(PCNA)を含んでいてもよい。
また、PCRにより標的核酸の検出を実施する本発明の標的核酸の選択的検出方法に使用されるキットは、リボヌクレアーゼH活性を有するポリペプチド又はその変異体、キメラオリゴヌクレオチドであるサイクリング・プローブ、あるいはTaqManプローブを含んでいてもよい。特にミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド、リボヌクレアーゼH活性を有するポリペプチドは、野生型ポリペプチドあるいは変異型ポリペプチドのいずれから選択してもよい。特に限定はされないが、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドとしては、Pyrococcus furiosus由来のポリペプチドPF0012(国際公開第2014/142261号パンフレット、RefSeq ID:NP_577741、本発明の配列表の配列番号10)または当該ポリペプチドPF0012の77番目のトリプトファン残基がフェニルアラニンに置換されてなるアミノ酸配列を有するポリペプチドW77F変異体(国際公開第2014/142261号パンフレット、本発明の配列表の配列番号11)が好適に使用される。さらに陽性対照核酸検出用のプライマー対とキメラオリゴヌクレオチドプローブあるいはTaqManプローブを組み合わせてもよい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 ヒトK−ras遺伝子コドン12の変異解析1
本発明の方法を用いたヒトK−ras遺伝子コドン12の点突然変異検出について検討した。本実施例では、標的核酸にはヒトK−ras遺伝子コドン12の点突然変異体のうちアスパラギン酸変異体を選択した。以下、この変異型遺伝子をG12D変異ヒトK−ras遺伝子と記載する。非標的核酸には、当該遺伝子の野生型(コドン12がグリシンに対応)を含むHuman genomic DNA(タカラバイオUSA社製)を用いた。
(1)プライマー、プローブ、鋳型核酸の準備
GenBank accession No.NC_000012.12で公開されているHuman K−ras遺伝子情報(Region: complement(25204789..25252093))から配列番号1〜4記載の塩基配列をそれぞれ有するKRAS_G12D_F1〜F4 プライマー、及び配列番号5記載のKRAS_G12D_R1プライマーを化学合成した。また、配列番号7記載の塩基配列を有し、5’末端がFAM、3’末端がBHQ1で標識されたキメラオリゴヌクレオチドプローブであるD_KRAS_G12Dを合成した。当該プローブはG12D変異ヒトK−ras遺伝子を特異的に検出することができる。さらに、ヒトK−ras遺伝子の前記KRAS_G12D_F1とR1プライマーの塩基配列に挟まれた領域の塩基配列を含むDNAであって、コドン12の点突然変異により当該コドンがGGT(グリシン)からGAT(アスパラギン酸)になった人工合成DNAも作製した。この人工合成DNAは、T−Vector pMD20(タカラバイオ社製)のT−cloning site部位に常法により挿入した。このようにして調製したプラスミドは、KRAS_G12D DNAと命名し、変異型遺伝子として用いた。
(2)抑制オリゴヌクレオチドの調製
ヒトK−ras遺伝子コドン12を含む領域にハイブリダイズ可能な、配列番号6記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを作製した。当該オリゴヌクレオチドは、その3’末端からポリメラーゼ伸長反応が起こらないように、3’末端のヒドロキシ基がアミノ基で修飾されている。このオリゴヌクレオチドを抑制オリゴヌクレオチド S_KRAS_G12と命名した。前記オリゴヌクレオチドは、配列表の配列番号8(上記Human K−ras遺伝子情報のうち、Region: complement(25245553..25245254)の部分に相当)記載の塩基配列を有する野生型ヒトK−ras遺伝子由来の核酸とハイブリダイズすると配列番号8の204番目のGの位置でG−Gのミスマッチを生じる。一方、配列番号9記載の塩基配列を有するG12D変異ヒトK−ras遺伝子由来の核酸とハイブリダイズした場合には、配列番号9の204番目のAの位置でA−Gのミスマッチが生じる。
(3)ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドの調製
国際公開第2014/142261号パンフレットに記載された、Pyrococcus furiosus由来のミスマッチ特異的二本鎖切断活性を有するPF0012ポリペプチドのW77F変異体(配列番号13)を、同文献の調製例1〜3及び実施例1記載の方法で調製した。以下、このポリペプチドをNucSタンパク質と称する。
(4)野生型遺伝子増幅抑制の確認
Human genomic DNAならびにK−rasG12D DNAを50,000コピー:500コピー(=100:1)、50,000コピー:50コピー(=1000:1)および50,000コピー:5コピー(=10,000:1)の割合で混合したDNAサンプルを調製した。また対照にはHuman genomic DNAのみを使用した。Human genomic DNA50,000コピーのDNA量としては、約185ngになる。
野生型遺伝子増幅抑制を伴う特異的変異検出は、以下のようにして行った。すなわち、CycleavePCR Reaction Mix(タカラバイオ社製)を用いて、上記の各DNAサンプル、250nMのNucSタンパク質、各0.2μMのKRAS_G12D_F1及びR1プライマー、0.2μMのS_KRAS_G12 抑制オリゴヌクレオチド、0.2μMのD_KRAS_G12D キメラオリゴヌクレオチドプローブ、並びに最終濃度56μg/mlのアルギン酸ナトリウム、を含む最終容量25μlの反応液を調製した。
また、KRAS_G12D_F1及びR1プライマーとは異なるプライマーセットの反応液:すなわち、KRAS_G12D_F1をそれぞれ0.2μMのKRAS_G12D_F2、KRAS_G12D_F3、又はKRAS_G12D_F4に置き換えた、上記組成と同じ反応液を調製した。なお、KRAS_G12D_F1、KRAS_G12D_F2、KRAS_G12D_F3、KRAS_G12D_F4のそれぞれとKRAS_G12D_R1の組合せによって増幅されるヒトK−ras遺伝子由来DNAの鎖長はそれぞれ100、128、150、178bpである。
リアルタイムPCRは、サーマルサイクラーTP800(タカラバイオ社製)で行った。PCRの反応条件は、95℃ 10秒の初期変性処理の後、95℃ 5秒、55℃ 10秒、72℃ 20秒を1サイクルとする45サイクル反応で行い、経時的に蛍光強度を観察した。この時、対照として、NucSタンパク質を添加しない反応液群を作製し、同様の測定を行った。その結果を図1に示す。
すなわち、図1はG12D変異ヒトK−ras遺伝子を検出した結果であり、縦軸は蛍光高度を示し、横軸はPCRサイクル数を示す。蛍光曲線は、それぞれ野生型遺伝子50,000コピーに対する変異型遺伝子のコピー数(0、5、50及び500コピー)を示す。NucSタンパク質を添加してPCRを実施した反応液では、50,000コピーの野生型遺伝子に対し5コピーの変異型遺伝子が混在するサンプルにおいても蛍光値の上昇、すなわちキメラオリゴヌクレオチドプローブの切断が確認された。一方、NucSタンパク質を含まない反応液では、D_KRAS_G12D キメラオリゴヌクレオチドプローブの切断による蛍光値の上昇は見られなかった。すなわち、野生型遺伝子の混在のために変異型遺伝子の増幅が抑制されていることが示された。
この結果より、本発明により提供される抑制オリゴヌクレオチドとミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド(NucSタンパク質)とを組み合わせることにより、大過剰の野生型遺伝子の混在化でも目的の点突然変異型遺伝子を高感度に検出できることが確認できた。また、増幅断片長が100bp〜180bpのいずれのサイズにおいても高感度で検出できることが確認できた。
実施例2 ヒトK−ras遺伝子コドン12の変異解析2
実施例1と同様にG12D変異ヒトK−ras遺伝子の検出について検討した。本実施例では、標的核酸と非標的核酸がともに断片化されたものについて検討した。
(1)標的核酸と非標的核酸を含む断片化混合物の調製
実施例1で調製した24ng/μl濃度のKRAS_G12D DNA 130μl及び100ng/μl濃度のHuman genomic DNA 130μlを、それぞれCovarisM220とMicroTUBE AFA Fiber Snap−Capを用いて断片化した。断片化条件は、Peak Incident Power 50W、Duty Factor 20%、Cycles per Burst 200、処理時間350秒、温度20℃である。当該処理により100bp〜400bpの範囲の断片が得られた。
(2)野生型遺伝子増幅抑制の確認
上記(1)で調製したHuman genomic DNA断片化物ならびにK−rasG12D DNA断片化物を50,000コピー:500コピー(=100:1)、50,000コピー:50コピー(=1000:1)および50,000コピー:5コピー(=10,000:1)の割合で混合したDNAサンプルを調製した。また対照にはHuman genomic DNAのみを使用した。
野生型遺伝子増幅抑制を伴う変異型遺伝子の特異的検出は、実施例1記載の方法と同様にして行った。その結果、いずれのプライマー対の組み合わせでも、G12D変異ヒトK−ras遺伝子を検出できることを確認した。特にKRAS_G12D_F3及びR1プライマー対の組み合わせ、ならびにKRAS_G12D_F4及びR1プライマー対の組み合わせは、断片化された鋳型DNAであっても、50,000コピー:5コピー(=10,000:1)まで検出することができた。
この結果より、本発明の抑制オリゴヌクレオチド、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド(NucSタンパク質)を組み合わせることにより、断片化された大過剰の野生型遺伝子と微量の変異型遺伝子の混合物からも目的の点突然変異型遺伝子を高感度に検出できることが確認できた。
実施例3 ヒトK−ras遺伝子コドン12の変異解析3
本実施例では、実施例1、2で使用されたキメラオリゴヌクレオチドプローブについて蛍光物質と消光物質の位置を入れ替えた場合について検討した。すなわち、5’末端に消光物質、3’末端に蛍光物質を配置したキメラオリゴヌクレオチドプローブでの検出を試みた。消光物質はBHQ1あるいはEclips(エポック社製)の2通りを使用した(それぞれ配列番号10、11)。
また、キメラオリゴヌクレオチドプローブ以外のコンポーネント(プライマーセット、抑制オリゴヌクレオチド)、DNAサンプルを含む反応液組成、PCR条件は実施例1と同様にして反応を行った。
その結果、蛍光物質と消光物質の位置を入れ替えた場合であっても、消光物質やプライマーセットの種類に関わらず、実施例1同様にG12D変異ヒトK−ras遺伝子を効率よく検出できることを確認した。この結果より、本発明の方法がプローブの構造に関わらず、再現性の高い検出結果を与えることが示された。
本発明の高感度変異検出方法により、増幅断片長のサイズに影響されない、大量に存在する野生型遺伝子の増幅を排除し、希少な変異型遺伝子を特異的に増幅し、検出することができる。当該方法は、遺伝子工学、生物学、医学等幅広い分野において有用である。
SEQ ID NO: 1: KRAS G12D_F_1 primer
SEQ ID NO: 2: KRAS G12D_F_2 primer
SEQ ID NO: 3: KRAS G12D_F_3 primer
SEQ ID NO: 4: KRAS G12D_F_4 primer
SEQ ID NO: 5: KRAS G12D_R_1 primer
SEQ ID NO: 6: S_KRAS_G12 suppression oligonucleotide. 3'-end is modified by amino linker (NH2).
SEQ ID NO: 7: D-KRAS_G12D probe. 5'-end is added FAM and 3'-end is added BHQ1. nucleotide position 4 is RNA.
SEQ ID NO: 8: DNA fragment containing K-ras codon 12 wild type. nucleotide position 159-280 is exon 2. nucleotide position 203-205 is codon 12.
SEQ ID NO: 9: DNA fragment containing K-ras codon 12 mutant type. nucleotide position 159-280 is exon 2. nucleotide position 203-205 is codon 12.
SEQ ID NO: 10: D-KRAS_G12D probe. 5'-end is added BHQ1 and 3'-end is added FAM nucleotide position 4 is RNA.
SEQ ID NO: 11: D-KRAS_G12D probe. 5'-end is added Eclips and 3'-end is added FAM nucleotide position 4 is RNA.
SEQ ID NO: 12: The amino acid sequence of PF0012 from Pyrococcus furiosus
SEQ ID NO: 13: The amino acid sequence of PF0012 W77F mutant
SEQ ID NO: 14: The amino acid sequence of NucS from Thermococcus kodakarensis
SEQ ID NO: 15: The amino acid sequence of TERMP_01877 from Thermococcus barophilus
SEQ ID NO: 16: The amino acid sequence of MJ_0225 from Methanocaldococcus jannaschii

Claims (10)

  1. ヒトK−ras遺伝子のコドン12の変異の存在を検出する方法であって、
    (1)下記a)〜d)を含有する反応液を調製する工程;
    a)被験試料、
    b)配列番号8で示される、ヒトK−ras遺伝子のエキソン2を含む領域の塩基配列の50位から290位の範囲で、それぞれ重複することなく設計されたフォワードプライマー、リバースプライマー及び抑制オリゴヌクレオチド、
    c)耐熱性DNAポリメラーゼ、及び
    d)ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド;
    (2)反応液を温度サイクル反応に供する工程、及び
    (3)反応後の反応液についてヒトK−ras遺伝子の配列の一部を有する増幅DNA断片を検出する工程、を包含し、
    ここで、前記抑制オリゴヌクレオチドは、野生型ヒトK−ras遺伝子のコドン12に対応する塩基配列を含む領域とハイブリダイズさせた際にミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドで切断されるミスマッチを生じ、かつコドン12に対応する塩基配列に変異が生じた前記領域とハイブリダイズさせた際に前記非標的核酸とハイブリダイズさせた際には前記ポリペプチドで切断されるミスマッチを生じないオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、方法。
  2. 反応液が、
    配列番号8の塩基配列の50位から190位の範囲で設計されたフォワードプライマー、
    配列番号8の塩基配列の210位から290位の範囲で設計されたリバースプライマー、及び
    配列番号8の塩基配列の180位から230位の範囲、かつ配列番号8の塩基配列の204位の変異を含む範囲で設計された抑制オリゴヌクレオチド、
    を含有することを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. フォワードプライマー、及びリバースプライマーが20〜30塩基のオリゴヌクレオチドである請求項2記載の方法。
  4. 抑制オリゴヌクレオチドが10〜30塩基のオリゴヌクレオチドである請求項2記載の方法。
  5. 反応液が、
    配列番号1〜4いずれか1つで示されるフォワードプライマー、
    配列番号5で示されるリバースプライマー、及び
    配列番号6で示される抑制オリゴヌクレオチド、
    を含有することを特徴とする請求項2記載の方法。
  6. ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドが、耐熱性菌由来のポリペプチドもしくはその変異体である請求項1〜5いずれか記載の方法。
  7. ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号12〜16から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項6記載の方法。
  8. 増幅DNA断片の検出がサイクリング・プローブ法又はTaqMan法で行われることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の方法。
  9. 配列番号8で示される、ヒトK−ras遺伝子のエキソン2を含む領域の塩基配列の50位から290位の範囲で、それぞれ重複することなく設計されたフォワードプライマー、リバースプライマー及び抑制オリゴヌクレオチドを含有する、ヒトK−ras遺伝子のコドン12の変異の存在を検出するためのキット;
    ここで、前記抑制オリゴヌクレオチドは、野生型ヒトK−ras遺伝子由来の核酸のコドン12に対応する塩基配列を含む領域とハイブリダイズさせた際にミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドで切断されるミスマッチを生じ、かつコドン12に対応する塩基配列に変異が生じた前記領域とハイブリダイズさせた際に前記非標的核酸とハイブリダイズさせた際には前記ポリペプチドで切断されるミスマッチを生じないオリゴヌクレオチドである。
  10. さらに耐熱性DNAポリメラーゼ及びミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドを含有する請求項9記載のキット。
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