JP2018035025A - 多孔質ガラス材料 - Google Patents

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溝黒 登志子
Toshiko Mizokuro
登志子 溝黒
賢司 鎌田
Kenji Kamata
賢司 鎌田
哲郎 神
Tetsuo Jin
哲郎 神
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Abstract

【課題】500nm以下の多孔を備えており、板状や管状などとすることができ、さらに機能性色素が強固に結合してなる、多孔質ガラス材料を提供する。【解決手段】平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材と、機能性色素とが、化学結合を介して結合されてなる、多孔質ガラス材料。【選択図】なし

Description

本発明は、多孔質ガラス材料及びその製造方法に関する。
従来、グラム当たりの表面積が数十から数百メートルという大きな表面積を有し、耐久性が高い機能性材料を形成する方法として、多孔質ガラスの細孔表面に機能性材料を吸着させる方法が知られている(例えば、特許文献1)しかしながら、機能性材料を単に細孔表面に吸着させる方法では、細孔表面の機能性材料が脱離しやすいという問題がある。
他方、多孔質かつメソ孔を有するメソポーラスシリカや、ゾルゲル法で創製された多孔質シリカが、担持用基材として近年注目されている。このような担持用基材は、表面へのシランカップリング剤の導入と機能性材料の固定化が可能である。
しかしながら、例えばメソポーラスシリカは、粉末でしか提供できないことと、メソ孔(2nm〜20nm程度)という限定的な細孔径でしか提供できず、導入する機能性材料の大きさにも制限があるという問題を有する。また、例えば、ゾルゲル法で創製された多孔質シリカは、板状や管状などへの成形加工性に劣る。さらに、当該多孔質シリカは、化学的、物理的耐久性に劣り、実用に即さないという欠点を有している。
特開2010−13693号公報
このような状況下、本発明は、500nm以下の多孔を備えており、板状や管状などの所望の形状とすることができ、さらに機能性色素が強固に結合してなる、多孔質ガラス材料を提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該多孔質ガラス材料を用いた波長変換材料、光アップコンバージョン材料、及び当該多孔質ガラス材料の製造方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、化学結合可能な表面を備え、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材と、機能性色素とを混合することにより、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材と、機能性色素とが、化学結合を介して結合されてなる多孔質ガラス材料が好適に得られ、当該多孔質ガラス材料は、板状や管状などの所望の形状とすることができ、さらに機能性色素が強固に結合することを見出した。
また、本発明者らは、当該多孔質ガラス材料は、波長変換材料として好適に使用できることを見出した。さらに、本発明者らは、当該多孔質ガラス材料の細孔中に、発光体を含む溶液が存在していることにより、波長変換材料、さらには、光アップコンバージョン材料として好適に使用できることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材と、機能性色素とが、化学結合を介して結合されてなる、多孔質ガラス材料。
項2. 前記化学結合が、イオン結合である、項1に記載の多孔質ガラス材料。
項3. 前記化学結合を介した結合が、前記機能性色素と化学結合可能な官能基を有するシランカップリング剤処理表面を備える前記多孔質ガラス基材の前記官能基と、前記機能性色素との化学結合である、項1または2に記載の多孔質ガラス材料。
項4. 前記官能基が、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基及びメルカプト基の少なくとも1種である、項3に記載の多孔質ガラス材料。
項5. 前記多孔質ガラス基材Gと、前記機能性色素Mとの結合が、下記一般式(1):
G−O−Si(R12)−Q−N+(R34)M - (1)
[一般式(1)中、Gは、多孔質ガラス基材を示し、Mは、機能性色素を示し、R1及びR2は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアルコキシ基を示し、Qは、置換基を有していてもよい脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を示す。]
で表されるイオン結合である、項1〜4のいずれかに記載の多孔質ガラス材料。
項6. 項1〜5のいずれかに記載の多孔質ガラス材料を含む、波長変換材料。
項7. 項1〜5のいずれかに記載の多孔質ガラス材料の細孔中に、発光体を含む液体が存在しており、
前記発光体が、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、ペリレン、ピレン、ルブレン、ペンタセンまたは下記一般式(2)で表される化合物である、光アップコンバージョン材料。
1−A−B2 (2)
[一般式(2)中、基Aは、置換基を有することがある縮合環数が3〜5の多環芳香族化合物の2価の残基を示す。
基B1及び基B2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10個のアルキル基もしくはアルコキシ基、フェニル基、水酸基、アミノ基、または下記一般式(2a)または(2b)で表される1価の基を示す。
[一般式(2a)及び(2b)中、基Zが基Aと結合しており、基Zは、単結合、または飽和もしくは不飽和であり、直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示す。一般式(2a)中のRn 2は、0〜5個の置換基であって、ベンゼン環上の水素原子と置換しており、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基、またはアミノ基を示す。一般式(2b)中の2つのR2は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基である。]
項8. 項1〜5のいずれかに記載の多孔質ガラス材料の製造方法であって、
化学結合可能な表面を備え、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材と、機能性色素とを混合して、前記多孔質ガラス基材と前記機能性色素とを化学結合により結合させる工程を備える、多孔質ガラス材料の製造方法。
項9. 前記化学結合可能な表面を備える多孔質ガラス基材は、前記機能性色素と化学結合可能な官能基を有するシランカップリング剤を用いて、多孔質ガラス基材を表面処理することによって調製する、項8に記載の多孔質ガラス材料の製造方法。
項10. 前記官能基が、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基及びメルカプト基の少なくとも1種である、項9に記載の多孔質ガラス材料の製造方法。
項11. 前記シランカップリング剤として、下記一般式(1'):
X−O−Si(R12)−Q−N(R34) (1')
[一般式(1')中、Xは、ハロゲン原子またはアルコキシ基を示し、Q、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ、前記一般式(1)と同じである。]
で表されるものを用いる、項9または10に記載の多孔質ガラス材料の製造方法。
本発明によれば、500nm以下の多孔を備えており、板状や管状などの所望の形状とすることができ、さらに機能性色素が強固に結合してなる、多孔質ガラス材料を提供することができる。本発明の多孔質ガラス材料は、多孔質ガラス材料の形状を所望の形状としつつ、大面積化することができ、さらに、機能性色素が強固に結合しているため、耐久性にも優れている。さらに、本発明によれば、当該多孔質ガラス材料を用いた波長変換材料、光アップコンバージョン材料、及び当該多孔質ガラス材料の製造方法を提供することもできる。
実施例1で得られた多孔質ガラス基材の平均細孔径の測定結果を示すグラフである。 実施例1で得られた多孔質ガラス基材表面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像である(5万倍)。 実施例1で得られた多孔質ガラス基材表面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像である(10万倍)。 実施例1で得られた多孔質ガラス材料の紫外可視吸収測定結果を示すグラフである。 実施例1で得られた多孔質ガラス材料について、波長532nmの励起光でのリン光測定を行って得られたグラフである。 実施例3で得られた多孔質ガラス基材の平均細孔径の測定結果を示すグラフである。 実施例2で得られた多孔質ガラス材料について、波長532nmの励起光を照射したときに観測された光アップコンバージョン発光スペクトルである。
1.多孔質ガラス材料
本発明の多孔質ガラス材料は、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材と、機能性色素とが、化学結合を介して結合されてなることを特徴とする。本発明の多孔質ガラス材料は、当該構成を備えていることにより、板状や管状などの所望の形状とすることができ、さらに機能性色素が強固に結合している。
また、本発明の多孔質ガラス材料においては、多孔質ガラス基材と機能性色素とが、化学結合を介して結合されているため、例えば、多孔質ガラス基材表面に機能性色素が単に吸着している場合に比して、長期間に亘って安定的に機能性色素の機能を発揮することができる。
多孔質ガラス基材と機能性色素との化学結合は、イオン結合であることが好ましい。例えば、多孔質ガラス基材と機能性色素とが共有結合を介して結合した多孔質ガラスを得る場合、反応条件が100℃前後でかつ強酸性下で反応させる必要がある等、イオン結合と介して結合されてなる多孔質ガラス材料を得る場合に比べて、反応条件が過酷であり、適応可能な機能性色素の種類が限られる。また、共有結合の場合には、反応を進行させるために高価な機能性色素を大過剰に用いるか、副生成物である水を反応系から除去する工程が必要となることがある。より緩和な条件で多孔質ガラス基材と機能性色素とが共有結合を介して結合した多孔質ガラスを得る場合には、縮合剤を添加して反応を進行させる方法があるが、反応後に縮合剤や副生成物の除去が必要になる。イオン結合を形成する場合は、縮合剤や副生成物の除去の手間が省け工程がより簡便である。さらに、多孔質ガラス基材と機能性色素とが共有結合を介して結合しているものに比べて、機能性色素が、多孔質ガラス基材に結合していない場合に近い電子状態となるため、多孔質ガラス基材に結合することに起因する機能性色素の機能の変化が抑制されている。
本発明において、多孔質ガラス基材は、平均細孔径が500nm以下の表面構造(細孔)を有している。また、多孔質ガラス基材の表面に存在している細孔は、少なくとも一部が多孔質ガラス基材を貫通している貫通孔である。すなわち、貫通孔は、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している。本発明の多孔質ガラス材料を調製する際には、機能性色素が、多孔質ガラス基材の細孔内に浸透し、細孔表面に固定される。このような表面構造を有する多孔質ガラス基材としては、公知のもの(例えば、特開2003−53165号公報、国際公開03/088273などに記載された多孔質ガラス)が挙げられる。また、所望の平均細孔径を有する多孔質ガラス基材の市販品を購入してもよい。多孔質ガラス基材の市販品としては、例えば、赤川硬質工業株式会社製の有償板状サンプル提供品(種類としては、細孔径4nmまたは50nm、鏡面研磨の有無がある)などが挙げられる。
なお、多孔質ガラス基材が、貫通孔を備えていることは、多孔質ガラス基材を気体透過試験に供することによって確認することができる。気体透過試験の詳細については、実施例に記載の通りとすることができる。
上記多孔質ガラス基材の材質としては、特に限定されず、例えばSiO2を主体(50質量%以上)とするものが挙げられる。多孔質ガラス基材に含まれる他の成分としては、例えば、B23、Na2O、Al23、CaO、P25、TiO2、MgO、CeO2,ThO2,HfO2,La23、CaやMgなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの金属などが挙げられる。多孔質ガラス基材に含まれる他の成分は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。このような多孔質ガラス基材は、例えば、シリカ系多孔質ガラスA(母体ガラスのガラス組成:SiO2(55〜80重量%)−B23−Na2O−(Al23))、シリカ系多孔質ガラスB(母体ガラスのガラス組成:SiO2(35〜55重量%)−B23−Na2O)、シリカ系多孔質ガラスC(母体ガラスのガラス組成:SiO2−B23−CaO−Al23)、シリカ系多孔質ガラスD(母体ガラスのガラス組成:SiO2−P25−Na2O)、シリカ系多孔質ガラスE(SiO2−B23−Na2O−RO(R=アルカリ土類金属,Zn))、TiO2系多孔質ガラス(母体ガラスのガラス組成:SiO2−B23−CaO−MgO−Al23−TiO2(TiO2は49.5モル%まで添加可能))、希土類系多孔質ガラス(母体ガラスのガラス組成:B23−Na2O−(CeO2,ThO2,HfO2,La23))などが挙げられる。これらの多孔質ガラス基材は、母体ガラスを多孔化処理することにより得られる。
多孔化処理においては、例えば、母体ガラスを熱処理することにより、組成の異なる2種類のガラス相に分相させて、一方の相を溶解・除去することにより、その部分が空隙となり、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材が得られる。例えば、50nmの細孔径を有する多孔質ガラスを得るには、SiO2、B23、Na2Oなどを含む母体ガラスを加熱(例えば、空気中で、550℃〜650℃程度、特には600℃程度で、55時間〜80時間程度、特には72時間程度加熱)することによって、SiO2相とB23相とを分相させ、次に、90℃〜100℃程度の硫酸などでB23相を除去することにより、表面に微細な細孔を備えるガラス基材を製造することができる。多孔質ガラス基材の平均細孔径は、例えば母体ガラスの組成、熱処理の温度、時間などを調整することによって、所望の大きさとすることができる。溶融法の具体的な手法は、例えば、田中博ら、ジャーナル オブ ノン-クリスタライン ソリッズ、65巻、301−309頁(1984年)(H. Tanaka, T. Yazawa, K. Eguchi, H. Nagasawa, N. Matsuda, and T. Einishi, Journal of Non-Crystalline Solids, 65, 301-309 (1984))に記載された方法が採用できる。
上記のような多孔質ガラス基材においては、その表面にOH基(すなわち、シラノール基:Si−OH)が多数存在する。後述の通り、例えば、機能性色素と化学結合(好ましくは、イオン結合)できる官能基を有するシランカップリング剤を、当該OH基を利用して結合させ、さらに、多孔質ガラス基材に導入された当該官能基と機能性色素とを化学結合させることで、本発明の多孔質ガラス材料が得られる。
また、本発明においては、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質無機基材の表面に、シリカやジルコニアなどの無機酸化物(無機金属酸化物)を、1種類または2種類以上コーティングしたものを、多孔質ガラス基材とすることもできる。これは、当該多孔質ガラス基材においても、平均細孔径が500nm以下の表面構造を有しており、かつ、機能性色素と化学結合(好ましくは、イオン結合)できる結合基を導入(例えば、後述のように、シランカップリング剤を用いて導入)し得る、OH基が表面に存在するためである。
多孔質無機基材の表面に、シリカやジルコニアなどの無機酸化物(無機金属酸化物)をコーティングする方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、シリカやジルコニアなどの無機酸化物のゾルゲル法によるコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティングなどの公知の方法が挙げられる。
多孔質ガラス基材の形状としては、特に制限されず、板状、管状、円柱状、球状、円盤状など、切断加工などにより、所望の形状とすることができる。なお、本発明の多孔質ガラス材料は、多孔質ガラス基材と機能性色素とが、化学結合を介して結合されてなるものであるため、多孔質ガラス材料についても、実質的に多孔質ガラス基材の形状に対応させることができる。
多孔質ガラス基材の平均細孔径としては、500nm以下であれば、特に制限されない。細孔径が小さくなるほど、多孔質ガラス基材の比表面積が増加するために機能性色素の固定量が増加できるが、機能性色素が入りにくくなる。本発明の多孔質ガラス材料を、機能性色素として好適に使用する観点からは、多孔質ガラス基材の平均細孔径としては、好ましくは4nm〜100nm程度、より好ましくは20nm〜80nm程度が挙げられる。なお、多孔質ガラス材料の平均細孔径は、機能性色素を化学結合させた本発明の多孔質ガラス材料の平均細孔径に実質的に対応している。
本発明において、多孔質ガラス基材の平均細孔径は、水銀ポロシメータ(Thermo Fisher Scientific社製 Pascal 240)を用いた水銀圧入法、または比表面積測定装置(マイクロトラック・ベル(株)(旧社名:日本ベル(株))製BELSORP18)を用いた窒素ガスによるBET法によって測定された値である。水銀圧入法による平均細孔径の測定は、多孔質基材の平均細孔径が、例えば20nm以上である場合に採用することが望ましい。また、BET法による平均細孔径の測定は、多孔質基材の平均細孔径が、20nm未満である場合に採用することが望ましい。
また、多孔質ガラス基材の比表面積としては、特に制限されないが、比表面積が大きくなればなるほど細孔径は小さくなる。例えば細孔径4nmの場合、この多孔質ガラス機材の比表面積は、通常180〜200m2/g程度となる。なお、細孔径があまりに小さすぎると、例えば水を溶媒とする反応系に本発明の多孔質ガラス材料を適用する場合、水の表面張力により細孔表面への拡散速度が非常に遅くなる。このため、機能性色素の物質転換反応の速度を確保する観点と、本発明の多孔質ガラス材料を、機能性色素として好適に使用する観点からは、好ましくは20〜200m2/g程度、より好ましくは20〜150m2/g程度、さらに好ましくは50〜100m2/g程度が挙げられる。なお、多孔質ガラス基材の比表面積は、前述の水銀圧入法による細孔分布測定結果によって算出された値である。
本発明の多孔質ガラス材料において、例えば、多孔質ガラス基材と機能性色素とのイオン結合の種類としては、特に制限されず、多孔質ガラス基材に結合したアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、メルカプト基などの官能基と、機能性色素とのイオン結合が挙げられる。例えば、多孔質ガラス基材に結合した官能基がアミノ基である場合、機能性色素が有する水酸基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホン基、エポキシ基、メルカプト基がイオン結合することができる。また、多孔質ガラス基材に結合した官能基がカルボキシル基やエポキシ基である場合、機能性色素が有するアミノ基やピリジル基などと、当該カルボキシル基やエポキシ基がイオン結合することができる。また、多孔質ガラス基材に結合した官能基がメルカプト基である場合、機能性色素が有するアミノ基やピリジル基などと、当該メルカプト基がイオン結合することができる。
多孔質ガラス基材と機能性色素との共有結合(好ましくは、イオン結合)は、例えば、機能性色素と共有結合することができる官能基を有するシランカップリング剤で、多孔質ガラス基材を表面処理することによって、当該官能基を多孔質ガラス基材に導入し、当該官能基と機能性色素とを化学結合させることができる。すなわち、本発明において、多孔質ガラス基材と機能性色素との化学結合を介した結合は、機能性色素と化学結合可能な官能基を有するシランカップリング剤処理表面を備える多孔質ガラス基材の前記官能基と、機能性色素との化学結合が挙げられる。シランカップリング剤を用いることにより、機能性色素と化学結合可能な官能基を多孔質ガラス基材に好適に導入することができる。
さらに、本発明の多孔質ガラス材料において、多孔質ガラス基材と機能性色素との結合は、下記一般式(1)で表されるイオン結合であることが好ましい。なお、当該一般式(1)で表される結合は、後述の通り、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることにより、好適に形成することができる。
G−O−Si(R12)−Q−N+(R34)M - (1)
一般式(1)中、Gは、多孔質ガラス基材を示し、Mは、機能性色素を示す。また、R1及びR2は、それぞれ独立に、Siに結合したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアルコキシ基を示し、好ましくは炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が1〜10のアルコキシ基を示す。
Qは、SiとNとを結合している2価の基であり、置換基を有していてもよい脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基を示す。脂肪族基としては、炭素数が1〜10のアルキニル基が挙げられる。また芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。また、脂肪族基の置換基としては、特に制限されず、例えば炭素数1〜18のアルキル基などが挙げられる。また、芳香族基の置換基としては、特に制限されず、例えば炭素数1〜18のアルキル基などが挙げられる。
3及びR4は、それぞれ独立に、Nに結合した水素原子またはアルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素数が1〜10のアルキル基が挙げられる。
機能性色素としては、化学結合可能な官能基(例えば、水酸基、アミノ基、ピリジル基、ハロゲン基、スルホン基、カルボキシ基、メルカプト基)などを有するものであれば、特に制限されない。機能性色素としては、例えば、これらの官能基を有する金属錯体などが挙げられる。金属錯体を構成している金属としては、白金、パラジウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケルなどが挙げられる。また、配位子としては、化学結合可能な上記の官能基を有する、ポルフィリン型配位子、フタロシアニン型配位子などが挙げられる。これらの中でも、上記の官能基を有する、ポルフィリンまたはその置換体の金属錯体、フタロシアニンまたはその置換体の金属錯体が挙げられる。例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ピリジル基、ハロゲン基、メルカプト基、及びスルホン基からなる群より択される少なくとも1種の官能基を有する金属ポルフィリン型錯体や、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ピリジル基、ハロゲン基、メルカプト基及びスルホン基からなる群より択される少なくとも1種の官能基を有する金属フタロシアニン型錯体が挙げられる。
これらの中でも、上記の官能基を有する、ポルフィリンまたはその置換体の白金錯体、ポルフィリンまたはその置換体のパラジウム錯体、ポルフィリンまたはその置換体の銅錯体、ポルフィリンまたはその置換体の亜鉛錯体、ポルフィリンまたはその置換体の鉄錯体、ポルフィリンまたはその置換体のニッケル錯体、フタロシアニンまたはその置換体の白金錯体、フタロシアニンまたはその置換体のパラジウム錯体、フタロシアニンまたはその置換体の銅錯体、フタロシアニンまたはその置換体の亜鉛錯体、フタロシアニンまたはその置換体の鉄錯体、フタロシアニンまたはその置換体のニッケル錯体などが挙げられる。
機能性色素の具体例としては、例えば、Pt(II)Coproporphyrin I (Frontier Scientific社製), Pt(II)Coproporphyrin III (Frontier Scientific社製), Pt(II)Mesoporphyrin IX (Frontier Scientific社製), Pt(II) Protoporphyrin IX(Frontier Scientific社製), Pt(II) meso-Tetra (N-Methyl-4-Pyridyl) Porphine Tetrachloride, Pt(II) meso-Tetra (4-carboxyphenyl) porphine, Pt(II) meso-Tetra (4-chlorophenyl) porphine, Pt(II) meso-Tetra (p-bromophenyl) porphine, Pt(II) 5,15-Di[4-(s-acetylthio)phenyl] porphine, Pt(II) meso-Tetra (4-aminophenyl) Porphine, Pt(II) 5-(4-aminophenyl)-10,15,20-triphenyl porphine, Pt(II) Deuteroporphyrin IX(Frontier Scientific社製), Pt(II) Isohematoporphyrin IX(Frontier Scientific社製), Pt(II) Hematoporphyrin IX(Frontier Scientific社製), Pt(II) Heptacarboxylporphyrin I(Frontier Scientific社製), Pt(II) Pentacarboxylporphyrin I(Frontier Scientific社製), Pt(II) Chlorin e6(Frontier Scientific社製), Pt(II) Pheophorbide a(Frontier Scientific社製), Pt(II) Coproporphyrin I tetramethyl ester(Frontier Scientific社製), Pt(II) Deuteroporphyrin IX 2,4 bis ethylene glycol(Frontier Scientific社製), Pt(II) Uroporphyrin III(Frontier Scientific社製), Pt(II) meso-Tetra (4-sulfonatophenyl) porphine, Pt(II) meso-Tetra (4-aminophenyl) Porphine, Pt(II) meso-Tetra(m-hydroxyphenyl)porphine, Pt(II) meso-Tetra (o-dichlorophenyl) Porphine, Pd(II)Coproporphyrin I (Frontier Scientific社製), Pd(II)Mesoporphyrin IX (Frontier Scientific社製), Pd(II) Protoporphyrin IX(Frontier Scientific社製), Pd(II) meso-Tetra(N-Methyl-4-Pyridyl) Porphine Tetrachloride, Pd(II) meso-Tetra(4-carboxyphenyl)porphine, Pd(II) meso-Tetra (4-chlorophenyl) porphine, Pt(II) meso-Tetra (p-bromophenyl) porphine, Pd(II) 5,15-Di[4-(s-acetylthio)phenyl] porphine, Pd(II) meso-Tetra (4-aminophenyl) Porphine, Pd(II) 5-(4-aminophenyl)-10,15,20-triphenyl porphine, Pd(II)Coproporphyrin III (Frontier Scientific社製), Pd(II) Deuteroporphyrin IX(Frontier Scientific社製), Pd(II) Isohematoporphyrin IX(Frontier Scientific社製), Pd(II) Hematoporphyrin IX(Frontier Scientific社製), Pd(II) Heptacarboxylporphyrin I(Frontier Scientific社製), Pd(II) Pentacarboxylporphyrin I(Frontier Scientific社製), Pd(II) Chlorin e6(Frontier Scientific社製), Pd(II) Pheophorbide a(Frontier Scientific社製), Pd(II) Coproporphyrin I tetramethyl ester(Frontier Scientific社製), Pd(II) Deuteroporphyrin IX 2,4 bis ethylene glycol(Frontier Scientific社製), Pd(II) Uroporphyrin III(Frontier Scientific社製), Pd(II) meso-Tetra (4-sulfonatophenyl) porphine, Pd(II) meso-Tetra (4-aminophenyl) Porphine, Pd(II) meso-Tetra(m-hydroxyphenyl)porphine, Pd(II) meso-Tetra (o-dichlorophenyl) Porphine, Pt(II) Phthalocyanine Tetrasulfonic Acid,Pt(II) tetra-aminophthalocyanine, Pt(II) Tetracarboxyl Phthalocyanine, Pt(II) Tetrachloro Phtharocyanine, Pt(II) Tetrabromo Phtharocyanine, Pt(II) Tetrapyridyl Phtharocyanine, Pd(II) Phthalocyanine Tetrasulfonic Acid, Pd(II) tetra-aminophthalocyanine, Pd(II) Tetracarboxyl Phthalocyanine, Pd(II) Tetrachloro Phtharocyanine, Pd(II) Tetrabromo Phtharocyanine, Pd(II) Tetrapyridyl Phtharocyanineなどが挙げられる。機能性色素は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
本発明の多孔質ガラス材料の製造方法としては、特に制限されないが、例えば後述の「3.多孔質ガラス材料の製造方法」の欄に記載の方法により、好適に製造することができる。
本発明の多孔質ガラス材料は、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材に、化学結合を介して機能性色素が結合している。このため、本発明の多孔質ガラス材料は、後述の波長変換材料、光アップコンバージョン材料などとして好適に使用することができる。
2.波長変換材料
本発明の波長変換材料は、前述した本発明の多孔質ガラス材料を含むことを特徴とする。すなわち、本発明の波長変換材料は、本発明の多孔質ガラス材料を含んでおり、当該多孔質ガラス材料に励起光が照射されると、多孔質ガラス基材に化学結合した機能性色素が励起光を吸収し、励起光とは異なる波長の光を発する。励起光及び発光の波長は、それぞれ、機能性色素の種類に依存している。
本発明の波長変換材料は、気体中で使用してもよいし、液体中で使用してもよい。
本発明の波長変換材料の機能性色素として、例えば、Pt(II)Coproporphyrin IやPt(II)Mesoporphyrin IXなどを用いた場合には、アルゴンガス雰囲気中において、532nmの励起光を吸収して、640nm付近にリン光を発する特性を備えており、リン光発光材料して好適に用いることができる。
当該リン光の量子収率は、酸素ガスが存在する雰囲気下においては、著しく低下する。これは文献[Principles of Fluorescence Spectroscopy, 3rd Ed. Joseph R. Lakowicz著, Springer (2010), 317頁] に記載があるように、リン光発光は三重項状態を経由しており、三重項が酸素により選択的に消光されるためである。このため当該リン光発光材料は、酸素の存在を検知することができ、酸素センサーとして好適に使用することができる。その他、本発明の波長変換材料は、機能性色素の有する特性に応じて、ガスセンサーや圧力センサーなど、種々の用途に使用することができる。
さらに、本発明の多孔質ガラス材料の細孔中に、所定の発光体を含む液体を存在させることにより、波長変換材料、特に、光アップコンバージョン材料とすることができる。
本発明の光アップコンバージョン材料においては、多孔質ガラス基材に化学結合した機能性色素が、光増感剤として機能し、照射光が光増感剤によって吸収されることにより、当該励起光よりも波長の短い光が前記発光体から発せられる。すなわち、発光体は、本発明の光アップコンバージョン材料において、論文(A. Monguzzi,R. Tubino, S. Hoseinkhan, M. Campione, F. Meinardi, Physical Chemistry Chemical Physics, 2012, 14, 4322)に記載の「三重項−三重項消滅アップコンバージョン」による機構によって光アップコンバージョン発光体として機能する化合物である。また、本発明において、「光アップコンバージョン発光体」とは、光増感剤が吸収した光よりも短波長の光を発する化合物をいう。本発明の光アップコンバージョン材料においては、機能性色素(光増感剤)が吸収によって得られた励起エネルギーのドナーとして機能し、光アップコンバージョン発光体がアクセプターとして機能する。
発光体としては、特に限定されず、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、ペリレン、ピレン、ルブレン、ペンタセンおよびこれらの誘導体など公知のものが挙げられる。さらに、より優れた光アップコンバージョン収率(長波長光から短波長光への変換収率)を得る観点から、発光体としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
1−A−B2 (2)
一般式(2)において、基Aは、基B1及び基B2と結合している。
一般式(2)において、基Aは、置換基を有することがある縮合環数が3〜5の多環芳香族化合物の2価の残基を示す。基Aを構成する芳香環としては、例えば、ベンゼン環、シクロペンタジエニル環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、フラン環、チオフェン環、シロール環などが挙げられる。
基Aの具体例としては、例えば、下記一般式(A1)〜(A23)で表される多環芳香族化合物残基が挙げられる。
一般式(A1)〜(A23)において、2価の結合手の位置は、特に制限されず、それぞれ芳香環上の水素原子と置換可能な任意の位置に存在する。2価の結合手は、それぞれ、同一または互いに隣接する芳香環上に存在することが好ましい。これにより、環の大きさを小さくすることができ、発光体間の相互作用が起こりやすくなり、光アップコンバージョン収率をより高めることが可能となると考えられる。また、2価の結合手は、結合手が無い場合にラジカルが発生しやすい位置にあることが好ましい。このような位置に結合手が存在することにより、これらの位置でラジカルが発生することが阻止され、ラジカル反応によって発光体同士が反応して2量体となり、光アップコンバージョン収率が低下することを抑制することができる。
一般式(A1)〜(A23)において、Rn 1は、0個以上の置換基であって、それぞれ芳香環に結合した水素原子と置換している。Rn 1の数の上限値は、一般式(A1)〜(A23)の芳香環に結合した水素原子の数によって異なるが、通常0〜8個程度、好ましくは0〜4程度である。0個以上のRn 1は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基、またはアミノ基を示す。Rn 1が、アルキル基またはアルコキシ基である場合、炭素数としては特に制限されないが、基Aの立体障害を小さくし、発光体間の相互作用を起こりやすくする観点からは、好ましくは1〜4程度が挙げられる。
一般式(2)において、好ましい基Aとしては、下記一般式(A1−1)、(A1−2)、(A2−1)、(A3−1)、(A4−1)、(A5−1)、(A5−2)、(A6−1)、(A9−1)、(A9−2)、(A9−3)、(A9−4)、(A14−1)、(A14−2)、(A14−3)、及び(A14−4)で表される多環芳香族化合物残基が挙げられる。これらの構造を有する基Aの2つの結合手は、それぞれ、結合手が無い場合にはラジカルが発生しやすい炭素原子上に位置している。すなわち、これらの構造では、基Aの2つの結合手によって、これらの位置でラジカルが発生することが阻止されている。よって、ラジカル反応によって発光体同士が反応して2量体となり、光アップコンバージョン収率が低下することが、効果的に抑制されていると考えられる。
一般式(A1−1)、(A1−2)、(A2−1)、(A3−1)、(A4−1)、(A5−1)、(A5−2)、(A6−1)、(A9−1)、(A9−2)、(A9−3)、(A9−4)、(A14−1)、(A14−2)、(A14−3)、及び(A14−4)において、Rn 1は、上記の一般式(A1)〜(A23)と同様である。
一般式(2)において、基B1及び基B2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10個のアルキル基、炭素数1〜10個のアルコキシ基、フェニル基、水酸基、アミノ基、または下記一般式(2a)または(2b)で表される1価の基を示す。
一般式(2a)及び(2b)において、基Zが、基Aの2つの結合手とそれぞれ結合している。
一般式(2a)及び(2b)において、基Zは、単結合、または飽和もしくは不飽和であり、直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示す。また、一般式(2a)において、Rn 2は、0〜5個の置換基であって、ベンゼン環上の水素原子と置換しており、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基、またはアミノ基を示す。Rn 2がアルキル基またはアルコキシ基である場合、炭素数としては特に制限されないが、基B1及び基B2の立体障害を小さくし、発光体間の相互作用を起こりやすくすることと、増感剤との相溶性を増加させることを両立させる観点からは、好ましくは1〜10程度、より好ましくは5〜10程度が挙げられる。一般式(2b)において、2つのR2は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基(例えば、炭素数が1〜10のアルキル基)である。
基B1及び基B2の具体例としては、それぞれ独立に、下記一般式(3a−1)〜(3a−4)で表される1価の基が挙げられる。
一般式(3a−1)〜(3a−4)のRn 2は、それぞれ、上記の一般式(2a)のRn 2と同じである。
本発明の光アップコンバージョン材料において、光アップコンバージョン発光体は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の光アップコンバージョン材料には、上記一般式(2)で表される化合物(光アップコンバージョン発光体)に加えて、前述の機能性色素(光増感剤)が含まれる。本発明において、機能性色素は、多孔質ガラス基材の表面に化学結合により結合している。
機能性色素としては、多孔質ガラス基材の表面に化学結合することができ、かつ、光エネルギーを吸収して、光アップコンバージョン発光体に光エネルギーを移動させることができるものであれば、特に制限されず、前述の公知の機能性色素を用いることができる。
光アップコンバージョン発光体に光エネルギーを好適に移動させる観点からは、光増感剤として使用される機能性色素は、好ましくは、有機金属錯体が挙げられる。有機金属錯体を構成する金属としては、特に制限されないが、例えば、Li、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Pd、Ag、Re、Os、Ir、Pt、Pbなどが挙げられ、好ましくはPt、Pdが挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、化学結合可能な官能基(例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、ピリジル基、ハロゲン基、スルホン基)などを有する、ポルフィリンまたはその置換体の金属錯体、フタロシアニンまたはその置換体の金属錯体などが挙げられる。
特に好ましい機能性色素としては、化学結合可能な上記の官能基を有する、ポルフィリンまたはその置換体のパラジウム錯体、ポルフィリンまたはその置換体の白金錯体が挙げられる。ポルフィリンまたはその置換体のパラジウム錯体の具体例としては、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、ピリジル基、ハロゲン基、スルホン基などのうち少なくとも1種の官能基を有する白金テトラベンゾポルフィリン、前記少なくとも1種の置換基を有するパラジウムテトラフェニルテトラベンゾポルフィリン、前記少なくとも1種の置換基を有するパラジウムオクタエチルポルフィリン、前記少なくとも1種の置換基を有するパラジウムシクロヘキセノポルフィリンなどが挙げられる。また、ポルフィリンまたはその置換体の白金錯体の具体例としては、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、ピリジル基、ハロゲン基、スルホン基などのうち少なくとも1種の官能基を有する白金テトラベンゾポルフィリン、前記少なくとも1種の置換基を有する白金テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン、前記少なくとも1種の置換基を有する白金オクタエチルポルフィリン、前記少なくとも1種の置換基を有する白金シクロヘキセノポルフィリンなどが挙げられる。
本発明の光アップコンバージョン材料において、機能性色素は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の光アップコンバージョン材料において、発光体と、機能性色素との配合割合(モル比)としては、特に制限されないが、アップコンバージョン発光量子収率を効果的に高める観点から、機能性色素1モルに対して、発光体を10〜10000モル程度とすることが好ましく、200〜2000モル程度とすることがより好ましい。
本発明の光アップコンバージョン材料は三重項−三重項消滅の機構を経て機能するので、リン光の場合と同様、酸素により選択的に消光される。従って、当該液体中に酸素が含まれる場合、窒素ガス予備アルゴンガスなどの不活性気体を当該液体中にバブリングするか、もしくは凍結脱気法により、溶存酸素を除去しておく必要がある。
本発明において、リン光量子収率(Φem)は、絶対PL量子効率測定装置(浜松ホトニクス製、C9920-02)を用いて測定した。リン光量子収率(Φem)は、論文「Suzuki. K, Kobayashi. A, Kaneko. S, Takehira. K, Yoshihara. T, Ishida. H, Shiina, S. Oishi, S. Tobita, Physical Chemistry Chemical Physics 2009, 11, 9850.」に記載の方法に従い、下記数式(A)によって算出される。
上記式(A)において、PN(Em)は試料から発光した光子数、PN(Abs)は試料が吸収した光子数、λemは発光波長、λexは励起光波長、hはプランク定数、cは光速、ISex及びIRexはそれぞれ試料が存在するとき及び存在しないときの分光励起光強度、ISem及びIRemはそれぞれ試料が存在するとき及び存在しないときの分光発光強度である。532nmの励起光を照射した場合、積分励起光強度は522nm<λex<543nm、積分発光強度は600nm<λem<800nmの波長範囲で算出し、Φemを決定する。
本発明の光アップコンバージョン材料において、媒体となる液体としては、特に制限されず、本発明の光アップコンバージョン材料の用途に応じて適宜設定することができ、例えば、有機溶媒、水などを用いることができる。有機溶媒の具体例としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられ、これらの中でも、好ましくはジメチルスルホキシド、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼンが挙げられる。
本発明の光アップコンバージョン材料は、例えば、発光体を含む液体中に、光増感剤を細孔表面に固定化した多孔質ガラス材料を浸漬させることにより、好適に製造することができる。本発明の光アップコンバージョン材料は、液体中に浸漬後、封止してもよい。
本発明の光アップコンバージョン材料では、吸収する光の波長よりも短波長側に発光のピークがある。また、本発明の光アップコンバージョン材料に照射する光の光照射パワー(mW)は、光アップコンバージョン材料の用途に応じて適宜設定することができ、例えば、0.01〜10mW程度が挙げられる。
本発明の光アップコンバージョン材料は、光アップコンバージョン材料に入射した波長を効率よく短波長に変換することができるため、有機太陽電池などの太陽電池、自然光照明、LED、有機EL素子、バイオマーカー、ディスプレイ、印刷、セキュリティ認証、光データ記憶装置、センサーなどの用途に好適に使用することができる。本発明の光アップコンバージョン材料は、光を照射することにより、照射した光よりも短波長の光を発光させる、光波長の変換方法として好適に使用することができる。
3.多孔質ガラス材料の製造方法
本発明の多孔質ガラス材料の製造方法は、化学結合可能な表面を備える、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材と、機能性色素とを混合して、多孔質ガラス基材と前記機能性色素とを化学結合により結合させる工程を備えている。
化学結合可能な表面を備える、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材は、前述の「1.多孔質ガラス材料」の欄で説明した通りである。すなわち、平均細孔径が500nm以下の表面構造を有している前述の多孔質ガラス基材を用意し、これに機能性色素と化学結合可能な官能基を導入する。前述の通り、例えば、機能性色素と化学結合することができる官能基を有するシランカップリング剤で、多孔質ガラス基材を表面処理することによって、当該官能基を多孔質ガラス基材に導入し、さらに、当該官能基と機能性色素とを化学結合させることができる。
本発明の多孔質ガラス材料における、前述の一般式(1)で表される結合は、例えば、下記一般式(1')で表されるシランカップリング剤を用いることにより、形成することができる。
X−Si(R12)−Q−N(R34) (1')
一般式(1')中、Q、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ、前記一般式(1)と同じである。また、Xは、多孔質ガラス基材のシラノール基と置換できる基であれば、特に制限されず、例えば、塩素原子などのハロゲン原子、アルコキシ基などが挙げられ、塩素原子または炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましい。
シランカップリング剤を用いた多孔質ガラス基材の表面処理の方法としては、特に制限されず、例えば、シランカップリング剤を含む溶液中に、多孔質ガラス基材を浸漬する方法が挙げられる。使用する溶媒としては、特に制限されないが、例えばトルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、イソプロパノールなどが挙げられる。溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、表面処理時の温度としては、使用する溶媒の沸点等を考慮して、適宜設定すればよいが、好ましくは60〜100℃程度が挙げられる。また、表面処理に供する時間としては、特に制限されないが、好ましくは12〜96時間程度が挙げられる。溶液中のシランカップリング剤の濃度としては、10〜50μmol/ml程度が挙げられる。また、シランカップリング剤の使用量としては、多孔質ガラス基材1gあたり、0.05〜0.8g程度が挙げられる。
以上の表面処理によって、化学結合可能な表面を備える、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材が得られる。表面処理後は、多孔質ガラス基材を有機溶媒等で洗浄し、さらに乾燥させてもよい。
次に、当該多孔質ガラス基材と機能性色素とを混合することにより、本願発明の多孔質ガラス材料が得られる。機能性色素としては、前述のものが挙げられる。
多孔質ガラス基材と機能性色素との混合条件としては、特に制限されず、例えば、機能性色素を含む溶液中に、多孔質ガラス基材を浸漬させる方法が挙げられる。このとき、多孔質ガラス基材に導入された官能基と、機能性色素が有する官能基とが、化学結合しやすいように、溶液中のpHを酸性またはアルカリ性に調整してもよい。使用する溶媒としては、特に制限されないが、例えば水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどが挙げられる。溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、混合時の温度としては、使用する溶媒の沸点等を考慮して、適宜設定すればよいが、好ましくは5℃〜100℃程度が挙げられる。また、混合時間としては、特に制限されないが、好ましくは0.1時間〜96時間程度が挙げられる。混合溶液中の機能性色素の濃度としては、0.1μmol/ml〜200μmol/ml程度が挙げられる。また、機能性色素の使用量としては、多孔質ガラス基材1gあたり、0.005g〜0.15g程度が挙げられる。
混合後は、水などで洗浄し、乾燥させることにより、本願発明の多孔質ガラス材料が得られる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
[実施例1]
ガラス組成62.5SiO2−28.3B23−9.2Na2Oのガラス板を、厚さ0.5mm、1辺の長さ20mmのサイズに切り出し、両面を鏡面研磨した。次に、これをアルミナ粉の中に入れ、上下をアルミナ板で挟み、電気炉で600℃、72時間、空気中で加熱して、SiO2相とB23相に分相させた。この分相ガラスを0.5mol/lの濃硫酸(98%)中に入れ、加熱して99℃とし、B23相を酸で96時間リーチングして、多孔質ガラス基材を得た。得られた多孔質ガラス基材の平均細孔径を前述の水銀圧入法で測定したところ、平均細孔径(直径)は55.6nmであった(図1)。
次に、得られた多孔質ガラス基材を、140℃で3時間、真空乾燥に供した。次に、多孔質ガラス基材1gあたり、0.2gとなる量の3−アミノプロピルジメチルエトキシシランをトルエン50g中に添加し、ここに、乾燥した多孔質ガラス基材を浸漬して、99℃下で72時間保持し、表面処理を行った。次に、多孔質ガラス基材を取りだし、トルエン中に浸漬して、99℃下で3時間保持して洗浄を行い、その後、風乾させた。得られた多孔質ガラス基材表面のSEM画像を図2(5万倍)及び図3(10万倍)に示す。
次に、分子内にカルボキシ基(−COOH)4個を有するPt(II)Coproporphyrin I(Frontier Scientific製、型番:C40425)の75μM・THF溶液を調製し、上記多孔質ガラス基材を30分間浸漬した。次に、60℃に加熱したTHF溶液中に多孔質ガラス基材を投入し、3時間保持して引き上げたところ、多孔質ガラス基材は、淡いピンク色に着色していた。得られた多孔質ガラス材料の紫外可視吸収測定を行ったところ、530nm近傍にPt(II)Coproporphyrin I由来の吸収ピークが観測された(図4)。これはPt(II)Coproporphyrin Iのカルボキシ基と多孔質ガラス基材のアミノ基がイオン結合することに起因している。また、Pt(II)Coproporphyrin Iの吸光度より、上記多孔質ガラス材料中に存在する、Pt(II)Coproporphyrin Iの分子数は、2.1×1015個と見積もられた。上記多孔質ガラス材料の比表面積は、水銀圧入法による測定により、1.6m2であると算出されることから、Pt(II)Coproporphyrin Iの1分子が占有する面積は、773nm2と見積もられ、Pt(II)Coproporphyrin I分子は、多孔質ガラス材料の細孔表面に、分散してイオン結合していると考えられる。
次に、得られた多孔質ガラス材料について、アルゴンガス(Arガス99.9995%)雰囲気中の波長532nmの励起光でのリン光測定を行ったところ、640nm近傍にPt(II)Coproporphyrin I由来のリン光ピークが観測された(図5)。
また、大気(O2ガス20.8%)雰囲気下において、多孔質ガラス材料のリン光量子収率を積分球(浜松ホトニクス製 絶対PL量子収率測定装置、C9920-02)を用いて測定したところ、リン光量子収率は0.3%であった。一方、積分球内をアルゴンガスで置換して酸素分子を除去した後に同じ多孔質ガラス材料のリン光量子収率を測定したところ、リン光量子収率は27%であった。大気雰囲気下をアルゴンガス雰囲気下とすることで、リン光量子収率が90倍も増加するため、多孔質ガラス材料は、酸素検出センサー材料として好適に機能することが確認された。なお、THF中に75μMのPt(II)Coproporphyrin Iを溶解した溶液に、アルゴンガスをバブリングして、溶存酸素を除去した後、リン光量子収率を測定したところ、16%であった。このことから、多孔質ガラス基材に機能性色素をイオン結合させた方が、機能性色素単体よりも、量子収率が高められることが確認された。
<気体透過試験>
実施例1と同様にして製造した多孔質ガラス基材(平均細孔径は約50nm)について、気体透過試験を行った。具体的には、実施例1と同様にして、まず、外径5mm、内径4mm、長さ150mmの管状多孔質ガラス基材を合成した。次に、管状多孔質ガラス基材の一端をエポキシ樹脂で封止し、別の一端を250mmのパイレックスガラス管(支持管)にエポキシ樹脂で固定した(これをモジュールと称する)。これをステンレス製の気体透過装置に固定した。
気体透過装置は、ステンレス製管(外径50mm、内径47mm、長さ800mm)であり、外部より各種気体を管内部に導入することができる。管の一端は、ステンレスの板で封止されており、別の一端は上記多孔質材料モジュールを差し込むことができるネジ蓋となっている。この蓋を締めると、モジュールとステンレス製管との間に位置しているゴム製オーリングがつぶれて、ステンレス製管とモジュールの密着性が高まり、外部より導入した試験ガスがこの接点から漏れるのを防ぐ構造になっている。さらに、多孔質ガラス基材を透過してきた気体は、モジュール内部に到達してパイレックス管内部を通って外部に流れる。この気流を流量計によって計測するという仕組みで気体透過試験を行った。仕様ならびに形状の詳細については、蔵岡ら、ジャーナル オブ ゾルゲル サイエンス アンド テクノロジー、19巻、515−518(2000)に掲載されている。純度99.999%の窒素ガスを外部より507hPaで導入した場合、多孔質ガラス基材(細孔径は約50nm)から得られる流量は、毎分約4リッターであった。なお、後述の実施例3と同様にして製造した多孔質ガラス基材(平均細孔径は約75nm)についても、同様に気体透過試験を行ったところ、多孔質ガラス基材から得られる流量は、毎分約5リッターであった。これらの結果から、実施例1〜3で使用した多孔質ガラス基材は、貫通孔を有していることが分かる。なお、平均細孔径が約4nmの多孔質ガラス基材である場合、当該流量は毎分約1リッターであった。
[実施例2]
実施例1と同様にして、Pt(II)Coproporphyrin Iが多孔質ガラス基材にイオン結合した多孔質ガラス材料を調製した(細孔径は55.6nm)。次に、発光体である9,10−ジフェニルアントラセンを溶解したトルエン溶液に多孔質ガラス材料を浸漬し、波長変換材料とした。得られた波長変換材料の表面に、波長532nmの半導体レーザー光(3.6mW)を照射すると、入射光より短波長である410〜520nmの光を発し(図7)、波長変換材料(光アップコンバージョン材料)として機能することを確認した。なお、Pt(II)Coproporphyrin Iが、光増感剤として機能している。
[実施例3]
ガラス組成62.5SiO2−28.3B23−9.2Na2Oのガラス板を、厚さ0.5mm、1辺の長さ20mmのサイズに切り出し、両面を鏡面研磨した。次に、これをアルミナ粉の中に入れ、上下をアルミナ板で挟み、電気炉で615℃、50時間、空気中で加熱して、SiO2相とB23相に分相させた。この分相ガラスを0.5mol/lの濃硫酸(98%)中に入れ、加熱して98℃とし、B23相を酸で96時間リーチングして、多孔質ガラス基材を得た。得られた多孔質ガラス基材の平均細孔径を前述の水銀圧入法で測定したところ、平均細孔径(直径)は78.1nmであった(図6)。
次に、得られた多孔質ガラス基材を、140℃で3時間、真空乾燥に供した。次に、多孔質ガラス基材1gあたり、0.2gとなる量の3−アミノプロピルジメチルエトキシシランをトルエン50g中に添加し、ここに、乾燥した多孔質ガラス基材を浸漬して、99℃下で72時間保持し、表面処理を行った。次に、多孔質ガラス基材を取りだし、トルエン中に浸漬して、99℃下で3時間保持して洗浄を行い、その後、風乾させた。
次に、分子内にカルボキシ基(−COOH)を2個有するPt(II)Mesoporphyrin IX(Frontier Scientific製、型番:M40137)の150μM・THF溶液を調製し、上記多孔質ガラス基材を60分間浸漬した。次に、60℃に加熱したTHF溶液中に多孔質ガラス基材を投入し、8時間保持して引き上げたところ、多孔質ガラス基材は、淡いピンク色に着色していた。得られた多孔質ガラス材料の紫外可視吸収測定及びリン光測定を行ったところ、530nm近傍にPt(II)Mesoporphyrin IX由来の吸収が観測された。また、640nm近傍にPt(II)Mesoporphyrin IX由来の燐光が観測された。Pt(II)Mesoporphyrin IXのカルボキシ基と多孔質ガラス基材のアミノ基がイオン結合し、多孔質ガラス基材の細孔表面にPt(II)Mesoporphyrin IXが分散していると理解できる。
次に、発光体である9,10−ジフェニルアントラセンを溶解したジメチルホルムアミド溶液に多孔質ガラス材料を浸漬し、波長変換材料とした。得られた波長変換材料の表面に、波長532nmの半導体レーザー光(3.6mW)を照射すると、入射光より短波長である400〜450nmの光を発し、波長変換材料(光アップコンバージョン材料)として機能することを確認した。なお、Pt(II)Mesoporphyrin IXが、光増感剤として機能している。
[比較例1]
実施例1と同様にして、平均細孔径(直径)が55.6nmの多孔質ガラス基材を作製した。次に、カルボキシ基(−COOH)を有するPt(II)Coproporphyrin I(Frontier Scientific製、型番:C40425)の75μM・THF溶液を調製し、上記多孔質ガラス基材を30分間浸漬した。次に、60℃に加熱したTHF溶液中に多孔質ガラス基材を投入し、3時間保持して引き上げたところ、多孔質ガラス基材は全く着色していなかった。
[比較例2]
実施例1と同様にして、平均細孔径(直径)が55.6nmの多孔質ガラス基材を作製した。次に、実施例1と同様にして、3−アミノプロピルジメチルエトキシシランで表面処理を行った。次に、カルボキシ基(−COOH)を有しないPt(II)Octaethylporphine(PtOEP)(Aldrich製、型番:673625)の75μM・THF溶液を調製し、上記多孔質ガラス基材を30分間浸漬した。次に、60℃に加熱したTHF溶液中に多孔質ガラス基材を投入し、3時間保持して引き上げたところ、多孔質ガラス基材は全く着色していなかった。

Claims (11)

  1. 平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材と、機能性色素とが、化学結合を介して結合されてなる、多孔質ガラス材料。
  2. 前記化学結合が、イオン結合である、請求項1に記載の多孔質ガラス材料。
  3. 前記化学結合を介した結合が、前記機能性色素と化学結合可能な官能基を有するシランカップリング剤処理表面を備える前記多孔質ガラス基材の前記官能基と、前記機能性色素との化学結合である、請求項1または2に記載の多孔質ガラス材料。
  4. 前記官能基が、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基及びメルカプト基の少なくとも1種である、請求項3に記載の多孔質ガラス材料。
  5. 前記多孔質ガラス基材Gと、前記機能性色素Mとの結合が、下記一般式(1):
    G−O−Si(R12)−Q−N+(R34)M - (1)
    [一般式(1)中、Gは、多孔質ガラス基材を示し、Mは、機能性色素を示し、R1及びR2は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアルコキシ基を示し、Qは、置換基を有していてもよい脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を示す。]
    で表されるイオン結合である、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質ガラス材料。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質ガラス材料を含む、波長変換材料。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質ガラス材料の細孔中に、発光体を含む液体が存在しており、
    前記発光体が、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、ペリレン、ピレン、ルブレン、ペンタセンまたは下記一般式(2)で表される化合物である、光アップコンバージョン材料。
    1−A−B2 (2)
    [一般式(2)中、基Aは、置換基を有することがある縮合環数が3〜5の多環芳香族化合物の2価の残基を示す。
    基B1及び基B2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10個のアルキル基もしくはアルコキシ基、フェニル基、水酸基、アミノ基、または下記一般式(2a)または(2b)で表される1価の基を示す。
    [一般式(2a)及び(2b)中、基Zが基Aと結合しており、基Zは、単結合、または飽和もしくは不飽和であり、直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基を示す。一般式(2a)中のRn 2は、0〜5個の置換基であって、ベンゼン環上の水素原子と置換しており、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基、またはアミノ基を示す。一般式(2b)中の2つのR2は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基である。]
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質ガラス材料の製造方法であって、
    化学結合可能な表面を備え、平均細孔径が500nm以下の表面構造を形成している貫通孔を有する多孔質ガラス基材と、機能性色素とを混合して、前記多孔質ガラス基材と前記機能性色素とを化学結合により結合させる工程を備える、多孔質ガラス材料の製造方法。
  9. 前記化学結合可能な表面を備える多孔質ガラス基材は、前記機能性色素と化学結合可能な官能基を有するシランカップリング剤を用いて、多孔質ガラス基材を表面処理することによって調製する、請求項8に記載の多孔質ガラス材料の製造方法。
  10. 前記官能基が、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基及びメルカプト基の少なくとも1種である、請求項9に記載の多孔質ガラス材料の製造方法。
  11. 前記シランカップリング剤として、下記一般式(1'):
    X−O−Si(R12)−Q−N(R34) (1')
    [一般式(1')中、Xは、ハロゲン原子またはアルコキシ基を示し、Q、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ、前記一般式(1)と同じである。]
    で表されるものを用いる、請求項9または10に記載の多孔質ガラス材料の製造方法。
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