JP2018031603A - 界面分析用試料の作製方法および界面の分析方法 - Google Patents

界面分析用試料の作製方法および界面の分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】互いに接触して積層された金属層と樹脂層とを備え、硬X線光電子分光分析による金属層と樹脂層との界面の近傍の分析に適した試料を安定的に作製できる方法を提供する。【解決手段】界面分析用試料の作製方法は、表面粗さRaが10nm以下である主面40Aを有するガリウム砒素基板40を準備する工程と、主面40A上に接触するように二酸化珪素層30を形成する工程と、二酸化珪素層30の、ガリウム砒素基板40側とは反対側の主面30A上に接触するように厚み2nm以上50nm以下の金属層10を形成する工程と、金属層10の、二酸化珪素層30側とは反対側の主面10A上に接触するように樹脂層20を形成して第1の積層体2を形成する工程と、第1の積層体2からガリウム砒素基板40を除去して第2の積層体を得る工程と、第2の積層体から二酸化珪素層30を除去する工程と、を含む。【選択図】図3

Description

本発明は、界面分析用試料の作製方法および界面の分析方法に関するものである。
試料表面近傍の元素や化学状態の情報を得る手順としてX線光電子分光分析法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)が広く利用されている。この方法は、試料にX線を照射したときに放出される電子の運動エネルギーから試料表面近傍の元素組成や化学状態を調べる手順である。また軟X線を励起光とする通常のX線光電子分光分析法に対し、よりエネルギーの高い硬X線を励起光とし、軟X線を用いる場合よりも固体試料に対する測定可能深さを大きくした硬X線光電子分光分析法(HAXPES:Hard X−ray Photoemission Spectroscopy)も開発されている(非特許文献1)。
高田恭孝、「実験技術−硬X線光電子分光]、放射光、日本放射光学会、平成16年3月、第17巻、第2号、p.66−71
固体試料の情報として、互いに接触して積層された2つの層を備えた積層体の、その2つの層の界面の近傍の状態を知りたいというニーズが広く存在する。例えば、接着剤を介さずに積層された、互いに接触する金属層と樹脂層とを備えた積層体は広く知られている。しかしながら、その金属層と樹脂層との界面の近傍の状態は未だ不明な点が多い。その界面の近傍の状態を調べるために硬X線光電子分光分析法を適用することが検討されている。硬X線光電子分光分析法における測定可能深さは数十nm程度である。したがって、これらの手順により互いに接触して積層された2つの層の界面の近傍の状態を調べるには、界面の近傍の化学状態の分析に適した試料の準備が必要である。具体的には、界面が測定可能領域となるように、界面を形成する2つの層のうちX線が照射される側の層の厚みがこの測定可能深さ以下である積層体の分析用試料を準備する必要がある。
このような積層体の分析試料は、例えばプラスチックフィルムなどの樹脂基材上に、スパッタリングや蒸着などの手順により薄い金属膜を積層することで形成することが可能である。しかしながら、実際の製造工程との対応から、樹脂基材上に金属をスパッタリングまたは蒸着して金属層が形成された積層体ではなく、先に形成された金属層の上に樹脂層が形成された積層体の、金属層と樹脂層との界面の近傍の状態を分析したいというニーズが有る。これは樹脂基材上に金属をスパッタリングまたは蒸着して金属層が形成された積層体と、先に形成された金属層の上に樹脂層が形成された積層体とでは、金属層と樹脂層との界面の近傍の状態が異なる可能性があるからである。一方、例えば数十nm以下の厚みを有する金属薄膜上に直接樹脂を塗布することにより、先に形成された金属層の上に樹脂層を形成する方法では、金属薄膜が十分な強度を有していないことから界面の近傍の分析に適した積層体を安定的に形成するのは難しい。そのことから、先に金属層を形成し、その金属層上に樹脂層を形成する手順により作製された、互いに接触して積層された金属層と樹脂層とを備え、硬X線光電子分光分析による金属層と樹脂層との界面の近傍の分析に適した試料を安定的に作製できる方法が求められていた。
本願の界面分析用試料の作製方法は、表面粗さがRa(算術平均粗さ)で10nm以下である主面を有するガリウム砒素(GaAs)基板を準備する工程と、蒸着またはスパッタリングにより、ガリウム砒素基板の上記主面上に接触するように二酸化珪素(SiO)層を形成する工程と、蒸着またはスパッタリングにより、二酸化珪素層の、ガリウム砒素基板側とは反対側の主面上に接触するように厚み2nm以上50nm以下の金属層を形成する工程と、金属層の、二酸化珪素層側とは反対側の主面上に接触するように樹脂層を形成することにより、ガリウム砒素基板と、二酸化珪素層と、金属層と、樹脂層とを含む第1の積層体を得る工程と、第1の積層体からガリウム砒素基板を除去することにより、二酸化珪素層と、金属層と、樹脂層とを含む第2の積層体を得る工程と、第2の積層体から二酸化珪素層を除去することにより、金属層と樹脂層とが互いに接触して積層された界面分析用試料を得る工程と、を含む。
上記界面分析用試料の作製方法によれば、先に金属層を形成し、その金属層上に樹脂層を形成する手順により作製された、互いに接触して積層された金属層と樹脂層とを備え、硬X線光電子分光分析による金属層と樹脂層との界面の近傍の分析に適した試料を安定的に作製できる。
界面分析用試料の一例を示す概略断面図である。 界面分析用試料の作製方法の手順を示すフローチャートである。 界面分析用試料の作製方法の手順を説明するための模式図である。 界面分析用試料の作製方法の手順を説明するための模式図である。 界面分析用試料の作製方法の手順を説明するための模式図である。 取り出し角度80°で界面分析用試料の硬X線光電子分光分析法を実施する状態を説明する模式図である。 取り出し角度30°で界面分析用試料の硬X線光電子分光分析法を実施する状態を説明する模式図である。 実施例1で作製されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体の走査透過電子顕微鏡による断面写真である。 アルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC(炭素)1sスペクトルの一例である。 アルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 フッ素樹脂のみを軟X線光電子分光分析法で測定して得られたスペクトルである。 アルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 アルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度80°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度30°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度80°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度30°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度80°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度30°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度80°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のF(フッ素)1sスペクトルの一例である。 取り出し角度30°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のF 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度80°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のF 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度30°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のF 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度80°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 取り出し角度80°にて測定されたアルミニウム−フッ素樹脂積層体試料のC 1sスペクトルの一例である。 実施例3で作製された銅−ポリイミド積層体の走査透過電子顕微鏡による断面写真である。 取り出し角度80°にて測定された銅−ポリイミド積層体のN(窒素)1sスペクトルの一例である。 取り出し角度30°にて測定された銅−ポリイミド積層体のN 1sスペクトルの一例である。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施の形態を列記して説明する。本願の界面分析用試料の作製方法は、表面粗さがRaで10nm以下である主面を有するガリウム砒素(GaAs)基板を準備する工程と、蒸着またはスパッタリングにより、ガリウム砒素基板の上記主面上に接触するように二酸化珪素(SiO)層を形成する工程と、蒸着またはスパッタリングにより、二酸化珪素層の、ガリウム砒素基板側とは反対側の主面上に接触するように厚み2nm以上50nm以下の金属層を形成する工程と、金属層の、二酸化珪素層側とは反対側の主面上に接触するように樹脂層を形成することにより、ガリウム砒素基板と、二酸化珪素層と、金属層と、樹脂層とを含む第1の積層体を得る工程と、第1の積層体からガリウム砒素基板を除去することにより、二酸化珪素層と、金属層と、樹脂層とを含む第2の積層体を得る工程と、第2の積層体から二酸化珪素層を除去することにより、金属層と樹脂層とが互いに接触して積層された界面分析用試料を得る工程と、を含む。
上記界面分析用試料の作製方法により作製される界面分析用試料は、金属層と、その金属層上に形成された樹脂層とを含む試料である。この試料は、金属層と樹脂層との間の界面の平滑性が高いという特徴を有する。さらにこの試料における金属層の厚みは硬X線光電子分光分析法における測定可能深さ以下であるという特徴を有する。また上記試料は、先に形成された金属層上に、その金属層と接触するように形成された樹脂層を備えるという特徴を有する。これらの特徴は上記界面分析用試料の作製方法により達成される。
界面の高い平滑性は、表面粗さがRaで10nm以下である主面を有するガリウム砒素基板を準備し、その上に二酸化珪素層と金属層とを蒸着またはスパッタリングにより形成することにより達成される。高い表面平滑性を有するガリウム砒素基板上に蒸着またはスパッタリングを行い二酸化珪素層および金属層を形成すると、表面平滑性の高い金属層が得られる。その金属層の上に樹脂層が形成されることで、金属層と樹脂層との間に平滑性の高い界面が形成される。このようにして平滑性が高い界面を有する金属層と樹脂層との積層体を形成することができる。また蒸着およびスパッタリングは薄膜を形成するのに適している。そのため、蒸着またはスパッタリングにより、硬X線光電子分光分析法における測定可能深さ以下の厚みを有する金属層を形成することができる。
さらに上記界面分析用試料の作製方法においては、厚み2nm以上50nm以下の金属層が二酸化珪素層とガリウム砒素基板とにより支持されている。したがって、その金属層の上に樹脂層を形成しても金属層が変形しない。そのため、硬X線光電子分光分析法における測定可能深さ以下の厚みを有する金属層上に樹脂層を形成する手順により作製された、互いに接触して積層された金属層と樹脂層とを備える界面分析用試料を安定的に形成することが可能となる。
このように、本願の界面分析用試料の作製方法によれば、先に金属層を形成し、その金属層上に樹脂層を形成する手順により作製された、互いに接触して積層された金属層と樹脂層とを備え、硬X線光電子分光分析による金属層と樹脂層との界面の近傍の分析に適した試料を安定的に作製できる。
本願の界面分析用試料の作製方法において、第2の積層体を得る工程では、上記第1の積層体からガリウム砒素基板を剥離することによってガリウム砒素基板を除去してもよい。上記第1の積層体からのガリウム砒素基板の除去を剥離により行うことで、ガリウム砒素基板を除去する工程を簡略化し、界面分析用試料の作製に要する時間を短縮することができる。
第2の積層体を得る工程では、ガリウム砒素基板が作業者の手によって剥離されてもよい。ガリウム砒素基板が第1の積層体から作業者の手によって剥離されることで、ガリウム砒素基板を除去する工程がより簡略化され、界面分析用試料の作製に要する時間をより短縮することができる。
本願の界面分析用試料の作製方法において、二酸化珪素層の厚みは2nm以上100nm以下であってもよい。二酸化珪素層の厚みが2nm未満であるとピンホールが発生しやすい。一方、100nm以下を超える場合、その除去に時間を要する。
本願の界面分析用試料の作製方法において、金属層はアルミニウム層であり、樹脂層はフッ素樹脂層であってもよい。アルミニウム基板にフッ素樹脂をコーティングした材料は、建築材料や調理器具などにおいて広く利用されている。金属層をアルミニウム層とし、樹脂層をフッ素樹脂層とすることで、フッ素樹脂でコーティングされたアルミニウム材料を想定した積層体の界面近傍の化学状態を調べることができる。
本願の界面分析用試料の作製方法において、金属層は銅層であり、樹脂層はポリイミド樹脂層であってもよい。銅とポリイミド樹脂とを貼り合わせた材料は、フレキシブル基板などの電子材料として広く利用されている。金属層を銅層とし、樹脂層をポリイミド樹脂層とすることで、フレキシブル基板等を想定した積層体の界面近傍の化学状態を調べることができる。
本願の界面の分析方法は、上記界面分析用試料の作製方法によって作製された界面分析用試料を準備する工程と、界面分析用試料の、互いに接触して積層された金属層と樹脂層との界面の近傍の状態を、硬X線光電子分光分析法により分析する工程と、を含む。上記界面分析用試料の作製方法によって作製された界面分析用試料は金属層が充分に薄く、金属層の厚みは硬X線光電子分光分析法における測定可能深さ以下である。また樹脂層は、その金属層上に形成された層である。したがって、この分析方法により先に金属層を形成し、その金属層上に樹脂層を形成する手順により作製された、互いに接触して積層された金属層と樹脂層との界面の近傍の化学状態を調べることができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
次に、本願の界面分析用試料の作製方法の一実施の形態を、図1〜図5を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
図1は、本実施の形態の界面分析用試料の作製方法によって作製された、界面分析用試料1の一例を示す概略断面図である。本実施の形態において、界面分析用試料1は、互いに接触して積層された金属層10と樹脂層20とを備える。金属層10の厚みは2nm以上50nm以下である。金属層10の厚みは、好ましくは2nm以上30nm以下であり、より好ましくは2nm以上20nm以下である。硬X線光電子分光分析法による測定時には、界面分析用試料1に対して金属層10の上方から矢印D1の方向に硬X線が照射される。樹脂層20の厚みは特に限定されず、概ね数μm〜数十μmである。金属層10を構成する金属の種類は特に限定されず、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)などである。また樹脂層20を構成する樹脂の種類は特に限定されず、例えばポリイミド(PI:Polyimide)樹脂や、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP:Fluorinated Ethylene Propylene)樹脂などのフッ素樹脂などが挙げられる。
界面分析用試料1としては、金属層10が銅層であり、樹脂層20がポリイミド樹脂層である界面分析用試料1が好ましい。銅とポリイミド樹脂とを貼りあわせた材料は、フレキシブル基板などの電子材料として広く利用されている。金属層10を銅層とし、樹脂層20をポリイミド樹脂層とすることで、フレキシブル基板等を想定した積層体の、互いに接触して積層された金属層10と樹脂層20との界面の近傍の状態を調べることができる。また金属層10がアルミニウム層であり、樹脂層20がフッ素樹脂層、特に四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)層である界面分析用試料1も好ましい。アルミニウム基板にフッ素樹脂をコーティングした材料は、建築材料や調理器具などにおいて広く利用されている。金属層10をアルミニウム層とし、樹脂層20をフッ素樹脂層とすることで、フッ素樹脂でコーティングされたアルミニウム材料を想定した積層体の、互いに接触して積層された金属層10と樹脂層20との界面の近傍の状態を調べることができる。
これらの界面分析用試料1は、先に金属層10を形成し、その金属層10上に樹脂層20を形成する手順により作製された、互いに接触して積層された金属層10と樹脂層20とを有する。そのため、実際に製品としても広く使用されている積層体を想定した金属−樹脂積層体の界面近傍の化学状態を分析するのに適している。
次に図2〜図5を参照して、本実施の形態の界面分析用試料1の作製方法の手順を説明する。図2は、界面分析用試料1の作製方法の手順を示すフローチャートである。図3〜図5は、界面分析用試料1の作製方法の手順を説明するための模式図である。
図2を参照して、本実施の形態の界面分析用試料1の作製方法においては、S10〜S60のステップが実施される。図3を参照して、まず表面粗さがRa(算術平均粗さ)で10nm以下である主面40Aを有するガリウム砒素基板40を準備する(S10)。ガリウム砒素基板40の表面粗さは、好ましくはRaで8nm以下、より好ましくは5nm以下である。硬X線光電子分光分析法により試料の界面近傍の状態を分析するためには、界面の平滑性の高い試料を準備する必要がある。具体的には試料の界面粗さが硬X線光電子分光分析法における測定可能深さ以下である必要がある。一般に硬X線光電子分光分析法においては、試料表面と検出器による取り出し方向とのなす角度(取り出し角度)が大きいと試料のより深い部分の情報が得られ、取り出し角度が小さいと試料のより浅い部分の情報が得られる。界面が粗い場合、取り出し角度にばらつきが生じるため、測定結果には表面近傍の情報と試料深部の情報とが混在し分析の精度が低下する。そのため、界面近傍の状態を正確に分析するには界面の平滑性の高い試料を準備する必要がある。
界面の平滑性の高い試料を作製するために、ステップS10において表面粗さがRaで10nm以下である主面40Aを有するガリウム砒素基板40を準備することが重要である。最初に準備される基板のRaが大きいと、その上に積層される各層の表面平滑性も必然的に低くなる。特に蒸着やスパッタリングなどの手順により積層体を形成する場合には、基板表面の形状が、その基板表面に蒸着やスパッタリングにより形成される層の形状にも影響する。その結果、最初に準備される基板の表面平滑性が低いと、最終的に得られる界面分析用試料1の、金属層10と樹脂層20との界面の平滑性も低くなる。したがってRaが小さく、表面平滑性の高い基板を準備する必要がある。ガリウム砒素基板40は半導体用材料としても広く用いられ、分子レベルで制御された高い表面平滑性を有する基板の作製方法が確立されている。そのため、表面平滑性の高いガリウム砒素基板40が入手可能な点でガリウム砒素基板40は有利である。さらにガリウム砒素基板40は、後に積層される二酸化珪素層30との間で容易に剥離できるという特有の特徴を有する。これらの理由から、ガリウム砒素基板40を好適な基板として用いることができる。
次に、蒸着またはスパッタリングにより、ガリウム砒素基板40の主面40A上に接触するように二酸化珪素層30を形成する(S20)。蒸着およびスパッタリングにおいては、基板の表面形状を反映した層を積層することができる。S10で準備したガリウム砒素基板40の主面40Aの表面平滑性が充分に高いため、蒸着およびスパッタリングによりその主面40A上に二酸化珪素層30を積層すると、表面平滑性の高い二酸化珪素層30を得ることができる。
次に蒸着またはスパッタリングにより、二酸化珪素層30の、ガリウム砒素基板40側とは反対側の主面30A上に接触するように厚み2nm以上50nm以下の金属層10を形成する(S30)。上述のように、S20で得られる二酸化珪素層30は高い表面平滑性を有する。その上に蒸着またはスパッタリングにより金属層10を形成することで、ガリウム砒素基板40および二酸化珪素層30の表面平滑性を反映した表面平滑性の高い金属層10を形成することができる。さらに蒸着またはスパッタリングは金属の薄層を形成するのに適している。したがって、蒸着またはスパッタリングにより、表面平滑性が高く、かつ硬X線光電子分光分析法における測定可能深さよりも厚みが小さい金属層10を形成することができる。
次に、金属層10の、二酸化珪素層30側とは反対側の主面10A上に接触するように樹脂層20を形成する(S40)。このようにして、ガリウム砒素基板40と、二酸化珪素層30と、金属層10と、樹脂層20とを含む第1の積層体2を得る。厚み2nm以上50nm以下の金属層10と接触する樹脂層20は、例えば厚み2nm以上50nm以下の金属基材上に樹脂を直接塗布することにより形成することも考えられる。しかしながら、厚み2nm以上50nm以下の金属基材は強度が低いため、その上に樹脂を塗布すると金属基材が変形する。そのため、界面分析用試料1として適した樹脂層20を安定的に形成することが難しい。本実施の形態の界面分析用試料1の作製方法においては、樹脂層20を形成する前の金属層10が二酸化珪素層30とガリウム砒素基板40とにより支持されているため、その金属層10の上に樹脂層20を形成しても金属層10が容易に変形しない。このようにして、厚み2nm以上50nm以下という薄い金属層10と接触する樹脂層20を備えた積層体を安定的に形成することができる。
金属層10の主面10A上に接触するように樹脂層20を形成する方法は特に限定されない。樹脂層20は、例えば金属層10の主面10A上に所定の厚みになるように目的の樹脂を直接塗布してもよい。また金属層10の主面10A上に目的の樹脂の前駆体物質を塗布し、その後、前駆体物質の反応を促進することにより樹脂層20を形成してもよい。また金属層上に塗布された樹脂または樹脂の前駆体は、適宜加熱による焼成や放射線の照射などを行うことにより、塗膜の硬化を促進したり、樹脂の重合度や架橋度を向上させたりしてもよい。
次に、第1の積層体2からガリウム砒素基板40を除去する(S50)。このようにして、二酸化珪素層30と、金属層10と、樹脂層20とを含む第2の積層体3を得る。S50においては、図3に示す第1の積層体2の上下を入れ替えて図4の状態にする。図4においては、下から樹脂層20、金属層10、二酸化珪素層30、ガリウム砒素基板40の順に積層された第1の積層体2が示されている。この状態において、図5に示すように、ガリウム砒素基板40を第1の積層体2から除去する。本実施の形態においては、作業者の手によって、二酸化珪素層30の主面30Aからガリウム砒素基板40を剥離することによりガリウム砒素基板40を除去することができる。これはガリウム砒素基板40と二酸化珪素層30とが、作業者の手の力で容易に剥離できる程度の結合状態を有することを利用する方法である。作業者の手の力でガリウム砒素基板40を容易に剥離できることから、工程を簡略化できる点で有利である。二酸化珪素層30の主面30Aからガリウム砒素基板40を剥離する際、作業者の手の力に代えて、剥離用の治具を使用してもよい。また上記手順に代えて、ガリウム砒素基板40をエッチングすることにより、第1の積層体2からガリウム砒素基板40を除去してもよい。または剥離とエッチングとを組み合わせて、第1の積層体2からガリウム砒素基板40を除去してもよい。例えば、作業者の手の力による剥離だけではガリウム砒素基板40が第1の積層体2から完全に除去できない場合、硫酸過水(HSO/H)を用いてガリウム砒素を選択的にエッチングし、二酸化珪素層30の主面30A上に残存するガリウム砒素を除去することができる。二酸化珪素は硫酸過水には溶解しないため、二酸化珪素層30は金属層10を保護するエッチングストッパ層として機能する。
最後に、第2の積層体3から二酸化珪素層30を除去することにより、金属層10と樹脂層20とが互いに接触して積層された界面分析用試料1を得る(S60)。金属層10を除去することなく二酸化珪素層30を選択的に除去する方法は公知である。二酸化珪素層30を選択的に除去する方法としては、例えばアルゴン(Ar)スパッタにより二酸化珪素を除去する方法や、フルオロホルム(CHF)または四フッ化炭素(CF)を用いたドライエッチング法、フッ酸により二酸化珪素を溶解させるフッ酸処理法などが挙げられる。このようにして、第2の積層体3から二酸化珪素層30を選択的に除去する。二酸化珪素層30を選択的に除去することにより、図1に示す金属層10と樹脂層20とが互いに接触して積層された界面分析用試料1を得る。
このようにして作製された界面分析用試料1は、金属層10と樹脂層20との間の界面の平滑性が高いという特徴を有する。さらにこの界面分析用試料1における金属層10の厚みは硬X線光電子分光分析法における測定可能深さ以下であるという特徴を有する。また上記界面分析用試料1の樹脂層20が、先に形成された金属層10上に形成された層であるという特徴を有する。
[界面の分析方法]
次に、上述の手順にて作製された界面分析用試料1の、互いに接触して積層された金属層10と樹脂層20との界面の近傍を分析する方法について説明する。まず、上述の界面分析用試料1の作製方法によって作製された界面分析用試料1を準備する。次に、界面分析用試料1の化学状態を、硬X線光電子分光分析法(HAXPES)により分析する。
X線光電子分光分析法(XPS)とは、X線を試料に照射することによって固体内の準位に対応したエネルギーの電子を励起し、試料から真空中に放出された光電子の運動エネルギーを測定することにより試料の化学状態を分析する方法である。超高真空下で試料表面にX線を照射すると、光電効果により試料から光電子が真空中に放出される。その光電子の運動エネルギーを観測することにより、その試料の化学状態に関する情報を得ることができる。
従来の軟X線を用いたX線光電子分光分析法では光電子が物質中を非弾性散乱することなく進む距離(平均自由行程)は数nm程度である。この平均自由行程がX線光電子分光分析法における測定可能深さとなる。軟X線を用いたX線光電子分光分析法における測定可能深さは、一般的には2〜3nmである。そのため、従来の軟X線を用いたX線光電子分光分析法で得られる情報は固体表面近傍の情報に限られていた。そこで本実施の形態においては軟X線よりも励起エネルギーの大きいX線を用い、測定可能深さを数十nm程度まで大きくした硬X線光電子分光分析法(HAXPES)を利用する。硬X線光電子分光分析法における測定可能深さは、代表的には50nmである。硬X線光電子分光分析は、大型放射光施設などで実施することができる。硬X線光電子分光分析が実施可能な大型放射光施設の例としては、SPring−8などが挙げられる。
本実施の形態において、分析は試料表面と検出器による取り出し方向とのなす角度(取り出し角度)を変更して行う。図6および図7は、取り出し角度について説明するための模式図である。図6は、取り出し角度80°で界面分析用試料の硬X線光電子分光分析法を実施する状態を説明する模式図である。図7は、取り出し角度30°で界面分析用試料の硬X線光電子分光分析法を実施する状態を説明する模式図である。
本実施の形態の界面の分析方法の手順について説明する。まず、互いに接触して積層された金属層10と樹脂層20とを備える界面分析用試料1の、金属層10側にX線が照射されるように界面分析用試料1を所定の位置にセットする。測定の際にはX線源52と検出器50に対して取り出し角度θが80°または30°となるように界面分析用試料1を傾斜させ、X線源52から界面分析用試料1に対し硬X線を照射する。界面分析用試料1に向けてX線を照射すると、光電効果により試料から真空中に光電子が放出される。放出された光電子を検出器50で捕捉する。このとき、試料内を移動できる光電子の平均自由行程λは取り出し角度に関わらず一定である。一方、取り出し角度θにより測定可能深さ(d1またはd2)は変わる。図6及び図7において、測定可能深さd1またはd2はλsinθで表される。取り出し角度θが30°の場合の測定可能深さd2は、取り出し角度θが80°の場合の測定可能深さd1の約半分である。
本実施の形態における界面の分析方法においては、互いに接触して積層された金属層10と樹脂層20とを備えた界面分析用試料1の、樹脂層20側の化学状態を調べる。硬X線は厚み2nm以上50nm以下の金属層10側に照射する。取り出し角度θが80°の場合には、金属層10の厚みよりも測定可能深さd1の方が大きい。そのため、界面よりもさらに深い箇所の、樹脂層20深部の化学状態の情報が得られる。一方、取り出し角度θが30°の場合には、測定可能深さd2が金属層10の厚みに近い。そのため、界面よりも樹脂層20側の、界面近傍の化学状態に関する情報が得られる。このように、取り出し角度を変更することで、試料内部の所望の位置における化学状態に関する情報を得ることができる。
(実施例1)互いに接触して積層されたアルミニウム層とフッ素樹脂層とを有する界面分析用試料1の作製(1)
以下の手順により、互いに接触して積層されたアルミニウム層とフッ素樹脂層とを有する界面分析用試料1Aを作製した。作製された界面分析用試料のうち、代表として界面分析用試料1Aの走査透過電子顕微鏡による断面写真を図8に示す。図8を参照して、界面分析用試料1Aは、平均厚みが15nmのアルミニウム層10aと、そのアルミニウム層10a上に接触して積層されたフッ素樹脂層20aとを備えている。なおフッ素樹脂層20aを形成するフッ素樹脂として、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP:Fluorinated Ethylene Propylene)を用いた。
(ステップA)ガリウム砒素(GaAs)基板の準備と二酸化珪素(SiO)層の形成
表面粗さがRaで5nmである主面40Aを有するガリウム砒素基板40を準備した。その主面40A上に、プラズマ化学蒸着(プラズマCVD:Plasma Chemical Vapor Deposition)により厚み50nmの二酸化珪素層30を形成し、ガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30の積層体を作製した。プラズマ化学蒸着は、SiO厚膜形成用プラズマCVD装置(住友精密工業株式会社製、型名MPX−CVD)で行った。蒸着源としてはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS:Tetraethyl orthosilicate)を用いた。プラズマ化学蒸着時の上部電極温度と下部電極温度の温度はいずれも200℃であった。
(ステップB)アルミニウム(Al)層10aの形成
ステップAで得られたガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30の積層体において、二酸化珪素層30の、ガリウム砒素基板40側とは反対側の主面30A上に、抵抗加熱式の真空蒸着にて厚み15nmのアルミニウム(Al)層10aを形成した。真空蒸着は、抵抗加熱蒸着装置(株式会社サンバック製、型名L−045E)にて、Al Grains(株式会社高純度化学研究所製、純度:99.99%、粒形2〜5mm)を蒸着源として実施した。真空蒸着時の平均蒸着速度は0.5nm/min〜4nm/min、基板加熱条件は室温であった。
(ステップC)フッ素樹脂層20aの形成(焼成のみ、電子線の照射なし)
ステップBで得られたガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30−アルミニウム層10aを備える積層体を準備した。アルミニウム層10aの、二酸化珪素層30側とは反対側の主面10A上に、成膜後の厚みが40μmになる付着量の四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)粉体塗料(ダイキン工業株式会社製、品名「NC−1500」)を塗布した。四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体粉体塗料は酸化を防ぐためにシリカゲルで湿気除却するように袋で保管し、塗布直前に開封して塗布した。得られた積層体を、加熱照射炉(窒素下(酸素濃度5ppm以下))内で、表面温度340℃±5℃の状態で10分間加熱し粉体塗料を溶解した。その直後、上記積層体の表面温度を310℃±5に下げてその温度を10分間保持した。その後、上記表面温度を200℃以下まで徐冷し、積層体を加熱照射炉から取り出した。このようにしてガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30−アルミニウム層10a−フッ素樹脂層20aを備える第1の積層体2を作製した。
(ステップD)第1の積層体2からの剥離によるガリウム砒素基板40の除去
ステップCで得られたガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30−アルミニウム層10a−フッ素樹脂層20aを備える第1の積層体2を、ガリウム砒素基板40が上になるように配置した。その状態で、作業者の手の力でガリウム砒素基板40を、第1の積層体2から剥離させることにより除去した。二酸化珪素層30−アルミニウム層10a−フッ素樹脂層20aの積層構造は維持したまま、第1の積層体2からガリウム砒素基板40を容易に剥離することができた。
(ステップE)二酸化珪素層30の除去
ステップDで得られた、二酸化珪素層30−アルミニウム層10a−フッ素樹脂層20aからなる第2の積層体3を準備した。走査型X線光電子分光分析装置(ULVAC−PHI,INC.製、PHI Quantera SXM(TM))を用いて、加速電圧が3kVまたは4kV、エッチング領域が3×3mmの条件下でアルゴン(Ar)イオンビームスパッタを行うことにより二酸化珪素層30をエッチングし、第2の積層体3から二酸化珪素層30を除去した。二酸化珪素層30を除去することにより、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとを備える積層体を得た。このようにして、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとが互いに接触して積層された界面分析用試料1Aを作製した。
(実施例2)互いに接触して積層されたアルミニウム層とフッ素樹脂層とを有する界面分析用試料1Bの作製(2)
ステップCにおいて、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)粉体塗料の塗布層に電子線を照射した以外は実施例1と同様にして、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとが互いに接触して積層された界面分析用試料1Bを作製した。以下に実施例2において実施したステップCの内容を示す。
(ステップC)フッ素樹脂層20aの形成(焼成+電子線の照射)
ステップBで得られたガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30−アルミニウム層10aの積層体を準備した。アルミニウム層10aの、二酸化珪素層30側とは反対側の主面10A上に、成膜後の厚みが40μmになるように付着量の四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)粉体塗料(ダイキン工業株式会社製、品名「NC−1500」)を塗布した。四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体粉体塗料は、酸化を防ぐためにシリカゲルで湿気除却するように袋で保管し、塗布直前に開封して塗布した。得られた積層体を、加熱照射炉(窒素下(酸素濃度5ppm以下))内で、表面温度340±5℃の状態で10分間加熱し粉体塗料を溶解した。その直後、上記積層体の表面温度を310℃に下げて、310℃、酸素濃度5ppm以下の窒素雰囲気下、照射量300kGyの条件で塗膜に対し電子線を照射した。その後、上記表面温度を200℃以下まで徐冷し、積層体を加熱照射炉から取り出した。このようにしてガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30−アルミニウム層10a−フッ素樹脂層20aを備える第1の積層体2を作製した。
[分析例]
実施例1に記載の方法に従って、互いに接触して積層されたアルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとを備えた界面分析用試料1Aを作製した。また実施例2に記載の方法に従って、互いに接触して積層されたアルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとを備えた界面分析用試料1Bをそれぞれ作製した。界面分析用試料1Aはフッ素樹脂層20aの形成時に電子線を照射せずに作製した試料である。また界面分析用試料1Bはフッ素樹脂層20aの形成時に電子線を照射して作製した試料である。
作製した界面分析用試料1Aおよび1Bの化学状態を、大型放射光施設において硬X線光電子分光分析法により分析した。硬X線はアルミニウム層10a側から照射した。取り出し角度θは80°または30°とした。取り出し角度30°で分析することで、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍の化学状態を調べた。また取り出し角度80°とすることで、上記界面よりもフッ素樹脂層20a側の、フッ素樹脂層20aの深部の化学状態を調べた。
その他の分析条件は以下の通りであった(以下の分析例1〜6において共通)。
X線エネルギー:8keV
パスエネルギー:200eV
測定時間:200ms/1点あたり
測定間隔:50meV
測定スペクトル:C(炭素)1s、F(フッ素)1sまたはN(窒素)1s(1sは1s軌道の電子のスペクトルを意味する)
(分析例1)互いに接触して積層されたアルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとを備えた界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bの分析(1)
上記界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bを準備した。硬X線光電子分光分析法により、界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bのフッ素樹脂層20aに含まれる炭素成分の化学状態をそれぞれ分析した。界面分析用試料1A(電子線の照射なし)のC(炭素)1sスペクトルを図9に示す。界面分析用試料1B(電子線の照射あり)のC 1sスペクトルを図10に示す。参照として、フッ素樹脂のみを単独で軟X線光電子分光分析により分析して得られたスペクトルを図11に示す。図9〜図11において、破線60の位置(約291eV)に出現するピークは、フッ素樹脂(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)の−CFCF−基に対応するピークである。
図9および図10に示すように、界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bの硬X線光電子分光分析により、炭素(C)に相当するスペクトルが得られた。このことは、図9および図10に示すスペクトルの情報がアルミニウム層10a由来の情報ではなく、有機物であるフッ素樹脂層20a由来の情報であることを意味する。すなわち図9および図10に示すスペクトルは、アルミニウム層10a側に照射され、アルミニウム層10aを貫通してフッ素樹脂層20a内に到達した硬X線により放出された、フッ素樹脂層20a内の炭素の光電子の運動エネルギーを反映するスペクトルである。
図11のスペクトルにおいて見られた破線60の位置に出現するピークは、図9および図10のスペクトルにおいては不明確である。また図10において287ev付近に見られるピーク100は、Al−O−C結合に相当するピークである。これは、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの間で相互作用が生じ、一部で架橋構造が形成された結果であると考えられる。硬X線はアルミニウム層10a側から照射されていることから、図10に示すスペクトルからアルミニウム層10a越しにAl−O−C結合が検出されていることが確認できる。また図9および図10のスペクトルは、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍の炭素の化学状態を示すものと推測される。このように、本実施の形態における界面分析用試料の作製方法で作製された界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bは、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍の化学状態を分析するのに適した試料である。また本実施の形態にかかる界面の分析方法により、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍の化学状態を分析することができる。
(分析例2)互いに接触して積層されたアルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとを備えた界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bの分析(2)
分析例1とは別のロットの上記界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bを準備した。硬X線光電子分光分析法により、その界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bのフッ素樹脂層20aに含まれる炭素成分の化学状態をそれぞれ分析した。結果を図12および図13に示す。図10のスペクトルにおいて287ev付近に見られたピーク100は、図13のスペクトルにおいては見られなかった。これは、電離線を照射したにも関わらず、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面近傍においてAl−O−C結合が充分に形成されなかったためと考えられる。このように、本実施の形態の界面の分析方法は、ロットが異なる界面分析用試料1をそれぞれ分析し、ロット間ばらつきの度合いや架橋の進行度などを調べるのに利用することもできる。
(分析例3)取り出し角度の違いによるスペクトルの比較
上記界面分析用試料1A(電子線の照射なし)を準備した。取り出し角度80°または取り出し角度30°の条件で、硬X線光電子分光分析法によりその界面分析用試料1Aのフッ素樹脂層20aに含まれる炭素成分の化学状態を分析した。取り出し角度80°にて測定されたC 1sスペクトルの一例を図14に示す。図14に示すC 1sスペクトルは、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面よりもフッ素樹脂層20a側の、フッ素樹脂層20aの深部の情報を表している。また取り出し角度30°にて測定されたC 1sスペクトルの一例を図15に示す。図15に示すスペクトルは、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍の情報を表している。
図14のスペクトルと図15のスペクトルとを比較すると、破線62の位置(約287eV)に出現するピークと、破線64の位置(約285eV)に出現するピークとの比が取り出し角度の違いによって大きく異なっていることがわかる。また図15においては、破線62の位置(約287eV)に大きなピークが確認できる。このピークはアルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面近傍に特徴的に見られるピークである。
このように、本実施の形態における界面分析用試料の作製方法で作製された界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bは、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍の化学状態を分析するのに適した試料である。また界面分析用試料1は、上記界面の近傍の化学状態だけでなく、上記界面よりフッ素樹脂層20a側の、フッ素樹脂層20aの深部の化学状態を分析するのにも適している。また本実施の形態にかかる界面の分析方法により、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍の化学状態を分析することができる。それに加え、本実施の形態にかかる界面の分析方法により、上記界面よりフッ素樹脂層20a側の、フッ素樹脂層20aの深部の化学状態をも分析することができる。
(分析例4)電子線の照射の有無および取り出し角度の違いによるスペクトルの比較
上記界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bを準備した。取り出し角度80°または取り出し角度30°の条件で、硬X線光電子分光分析法により、それらの試料のフッ素樹脂層20aに含まれる炭素(C)成分およびフッ素(F)成分の化学状態をそれぞれ分析した。分析の結果、得られたスペクトルを図16〜図23に示す。
図16は、取り出し角度80°にて測定された界面分析用試料1AのC 1sスペクトルの一例である。図17は、取り出し角度30°にて測定された界面分析用試料1AのC 1sスペクトルの一例である。図18は、取り出し角度80°にて測定された界面分析用試料1BのC 1sスペクトルの一例である。図19は、取り出し角度30°にて測定された界面分析用試料1BのC 1sスペクトルの一例である。破線66の位置(約292eV)に出現するピークは、フッ素樹脂(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP))に特有のピークである。また図17の破線68の位置(約287eV)および図19の領域70(約285〜287eV)に相当するピークは、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍を分析した際に観測されるピークである。この結果から、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍と、フッ素樹脂層20a内の、上記界面よりフッ素樹脂層20a側の、フッ素樹脂層20aの深部とでは化学状態が異なることがわかる。
図20は取り出し角度80°にて測定された界面分析用試料1AのF 1sスペクトルの一例である。図21は取り出し角度30°にて測定された界面分析用試料1AのF 1sスペクトルの一例である。図22は取り出し角度80°にて測定された界面分析用試料1BのF 1sスペクトルの一例である。図23は取り出し角度30°にて測定された界面分析用試料1BのF 1sスペクトルの一例である。図20〜図23に示すスペクトルにおいては、いずれも破線74(約689eV)近傍に大きなピークを有し、スペクトル全体としても大きな差は見られない。この結果から、電子線を照射してもフッ素樹脂層20aに含まれるフッ素の化学状態はほとんど変化しないことがわかる。また、フッ素樹脂層20aの深部と界面近傍でフッ素の化学状態に大きな変化はないことがわかる。
このように、本実施の形態における界面分析用試料の作製方法で作製された界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bは、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍の化学状態を分析するのに適した試料である。また界面分析用試料1は、上記界面の近傍の化学状態だけでなく、上記界面よりフッ素樹脂層20a側の、フッ素樹脂層20aの深部の化学状態を分析するのにも適している。また本実施の形態にかかる界面の分析方法により、フッ素樹脂層20a内の、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面の近傍の化学状態を分析することができる。それに加え、本実施の形態にかかる界面の分析方法により、上記界面よりフッ素樹脂層20a側の、フッ素樹脂層20aの深部の化学状態をも分析することができる。
(分析例5)フッ素樹脂層20aの深部の分析
上記界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bを準備した。取り出し角度80°の条件で、硬X線光電子分光分析法によりそれらの試料のフッ素樹脂層20aに含まれる炭素成分の化学状態をそれぞれ分析した。分析の結果、得られたスペクトルを図24および図25に示す。参照として、フッ素樹脂のみを単独で軟X線光電子分光分析により分析して得られた、図11に示すスペクトルと比較した。
図24、図25および図11を参照して、図11の破線60の位置(約291eV)に出現するピークは、フッ素樹脂(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)の−CFCF−基に対応するピークである。この−CFCF−基に対応するピークは、図24および図25においても破線78の位置に確認できる。しかしながら、図24および図25においては、破線76の位置(約287eV)にもピークが見られる。このピークは図11のスペクトル中には見られない。このことから、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとから形成される積層体の、フッ素樹脂層20aの深部の化学状態は、フッ素樹脂単独の化学状態と異なることがわかる。このように、本実施の形態における界面分析用試料の作製方法で作製された界面分析用試料1Aおよび界面分析用試料1Bは、アルミニウム層10aとフッ素樹脂層20aとの界面よりフッ素樹脂層20a側の、フッ素樹脂層20aの深部の化学状態を分析するのにも適している。また本実施の形態にかかる界面の分析方法により、上記界面よりフッ素樹脂層20a側の、フッ素樹脂層20aの深部の化学状態を分析することもできる。
(実施例3)互いに接触して積層された銅層とポリイミド樹脂層とを有する界面分析用試料1Cの作製
以下の手順により、互いに接触して積層された銅層とポリイミド樹脂層とを有する界面分析用試料1Cを作製した。作製された銅層10b−ポリイミド樹脂層20bの積層体20aの走査透過電子顕微鏡による断面写真を図26に示す。図26を参照して、界面分析用試料1Cは、平均厚みが15nmの銅層10bと、その銅層10b上に接触して積層されたポリイミド樹脂層20bとを備えている。
(ステップA)ガリウム砒素(GaAs)基板40の準備と二酸化珪素(SiO)層30の形成
表面粗さがRaで5nmである主面を有するガリウム砒素基板40を準備した。その主面40A上に、高周波(RF:Radio Frequency)スパッタ(条件:300W、0.1Pa、Ar:20sccm)により厚み20nmの二酸化珪素層30を形成した。高周波スパッタは、全自動スパッタ装置(株式会社アルバック製、型名J−sputter)にて実施した。
(ステップB)銅(Cu)層10bの形成
ステップAで得られたガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30の積層体において、二酸化珪素層30の、ガリウム砒素基板40側とは反対側の主面30A上に、直流(DC:Direct Current)スパッタ(条件:100W、0.1Pa、Ar:20sccm)により厚み15nmの銅層10bを形成した。直流スパッタは、全自動スパッタ装置(株式会社アルバック製、型名J−sputter)にて実施した。
(ステップC)ポリイミド樹脂層20bの形成
(C−1)ポリイミド前駆体塗工液の調製
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル94.3gをN−メチル−2−ピロリドン803gに溶解させた後、ピロメリット酸二無水物102.7gを加えることにより溶液を調製した。次いで、窒素雰囲気下、25℃で上記溶液を1時間撹拌した。その後60℃に昇温し、上記溶液20時間撹拌した。上記溶液を冷却後、密着添加剤2gを加え、さらに1時間撹拌して、ポリイミド前駆体塗工液を得た。
(C−2)ポリイミド樹脂層20bの形成
ステップBで得られたガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30−銅層10bを備える積層体において、銅層10bの、二酸化珪素層30側とは反対側の主面10Aにドクターブレードを用いて上記ポリイミド前駆体塗工液を塗布し塗膜を形成した。その後、窒素雰囲気下において120℃で60分間塗膜を予備乾燥した。次いで、300℃で60分間塗膜を熱処理することによりポリイミド酸をイミド化し、平均厚み10μmのポリイミド樹脂層20bを形成した。このようにして、ガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30−銅層10b−ポリイミド樹脂層20bを備える第1の積層体2を作製した。
(ステップD)第1の積層体2からの剥離によるガリウム砒素基板40の除去
ステップC−2で得られたガリウム砒素基板40−二酸化珪素層30−銅層10b−ポリイミド樹脂層20bを備える第1の積層体2を、ガリウム砒素基板40が上になるように配置した。その状態で、作業者の手の力でガリウム砒素基板40を、第1の積層体2から剥離させることにより除去した。二酸化珪素層30−銅層10b−ポリイミド樹脂層20bの積層構造は維持したまま、第1の積層体2からガリウム砒素基板40を容易に剥離することができた。
(ステップE)二酸化珪素層30の除去
ステップDで得られた、二酸化珪素層30−銅層10b−ポリイミド樹脂層20bからなる第2の積層体3を準備した。多目的ドライエッチング装置(サムコ株式会社製、型番RIE−200NL)を用いてフルオロホルム(CHF)ドライエッチング法により二酸化珪素をエッチングし、第2の積層体3から二酸化珪素層30を除去した。このようにして銅層10bとポリイミド樹脂層20bが互いに接触して積層された界面分析用試料1Cを作製した。
[分析例]
(分析例6)互いに接触して積層された銅層10bとポリイミド樹脂層20bとを備えた界面分析用試料1Cの分析
実施例3に記載の方法に従って、銅層10bとポリイミド樹脂層20bとを備えた界面分析用試料1Cを作製した。大型放射光施設において、硬X線光電子分光分析法によりその界面分析用試料1Cのポリイミド樹脂層20bに含まれる窒素成分を分析した。硬X線は銅層10b側から照射した。取り出し角度θは80°または30°とした。図27および図28に分析により得られたN(窒素)1sスペクトルを示す。図27は取り出し角度80°での分析結果を示すN 1sスペクトルである。図28は取り出し角度30°での分析結果を示すN 1sスペクトルである。窒素はポリイミド層20bのみに含まれる元素である。したがって、図27および図28に示すスペクトルから、ポリイミド層20bの化学状態に関する情報が得られていることがわかる。図27に示すスペクトルは、銅層10bとポリイミド樹脂層20bとの界面よりポリイミド樹脂層20b側の、ポリイミド樹脂層20bの深部の化学状態を示すスペクトルである。また図28は、ポリイミド樹脂層20b内の、上記界面の近傍の化学状態を示すスペクトルである。
このように、本実施の形態における界面分析用試料の作製方法で作製された界面分析用試料1は、ポリイミド樹脂層20b内の、銅層10bとポリイミド樹脂層20bとの界面の近傍の化学状態を分析するのに適した試料である。また界面分析用試料1は、上記界面の近傍の化学状態だけでなく、上記界面よりポリイミド樹脂層20b側の、ポリイミド樹脂層20bの深部の化学状態を分析するのにも適している。また本実施の形態にかかる界面の分析方法により、ポリイミド樹脂層20b内の、銅層10bとポリイミド樹脂層20bとの界面の近傍の化学状態を分析することができる。それに加え、本実施の形態にかかる界面の分析方法により、上記界面よりポリイミド樹脂層20b側の、ポリイミド樹脂層20bの深部の化学状態をも分析することができる。
以上の実施例の結果からわかるように、本実施の形態にかかる界面分析用試料1の作製方法によれば、先に金属層10を形成し、その金属層上に樹脂層20を形成する手順により作製された、互いに接触して積層された金属層10と樹脂層20とを備え、硬X線光電子分光分析による金属層と樹脂層との界面の近傍の分析に適した試料を安定的に作製することができる。また上記分析例1〜分析例6からわかるように、本実施の形態における界面分析用試料の作製方法で作製された界面分析用試料1は、金属層10と樹脂層20との界面の近傍の化学状態を分析するのに適した試料である。また界面分析用試料1は、上記界面の近傍の化学状態だけでなく、上記界面より樹脂層20側の、樹脂層20の深部の化学状態を分析するのにも適している。また本実施の形態にかかる界面の分析方法により、互いに接触して積層された金属層10と樹脂層20との界面の近傍の化学状態を分析することができる。それに加え、本実施の形態にかかる界面の分析方法により、上記界面より樹脂層20側の、樹脂層20の深部の化学状態をも分析することができる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本願の界面分析用試料の作製方法は、互いに接触して積層された金属層と樹脂層とを備えた試料の、硬X線光電子分光分析による金属層と樹脂層との界面の近傍の分析が求められる分野において特に有利に適用され得る。
1 界面分析用試料
1A,1C 界面分析用試料
2 第1の積層体
3 第2の積層体
10 金属層
10A 主面
10a アルミニウム層
10b 銅層
20 樹脂層
20a フッ素樹脂層
20b ポリイミド樹脂層
30 二酸化珪素層
30A 主面
40 ガリウム砒素基板
40A 主面
50 検出器
52 X線源
60,62,64,66,68,74,76,78 破線
70 領域
100 ピーク

Claims (7)

  1. 表面粗さがRaで10nm以下である主面を有するガリウム砒素基板を準備する工程と、
    蒸着またはスパッタリングにより、前記ガリウム砒素基板の前記主面上に接触するように二酸化珪素層を形成する工程と、
    蒸着またはスパッタリングにより、前記二酸化珪素層の、前記ガリウム砒素基板側とは反対側の主面上に接触するように厚み2nm以上50nm以下の金属層を形成する工程と、
    前記金属層の、前記二酸化珪素層側とは反対側の主面上に接触するように樹脂層を形成することにより、前記ガリウム砒素基板と、前記二酸化珪素層と、前記金属層と、前記樹脂層とを含む第1の積層体を得る工程と、
    前記第1の積層体から前記ガリウム砒素基板を除去することにより、前記二酸化珪素層と、前記金属層と、前記樹脂層とを含む第2の積層体を得る工程と、
    前記第2の積層体から前記二酸化珪素層を除去することにより、前記金属層と前記樹脂層とが互いに接触して積層された界面分析用試料を得る工程と、
    を含む界面分析用試料の作製方法。
  2. 前記第2の積層体を得る工程では、前記第1の積層体から前記ガリウム砒素基板を剥離することによって前記ガリウム砒素基板を除去する、請求項1に記載の界面分析用試料の作製方法。
  3. 前記第2の積層体を得る工程では、前記ガリウム砒素基板が作業者の手によって剥離される、請求項2に記載の界面分析用試料の作製方法。
  4. 前記二酸化珪素層の厚みは2nm以上100nm以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の界面分析用試料の作製方法。
  5. 前記金属層はアルミニウム層であり、前記樹脂層はフッ素樹脂層である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の界面分析用試料の作製方法。
  6. 前記金属層は銅層であり、前記樹脂層はポリイミド樹脂層である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の界面分析用試料の作製方法。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の界面分析用試料の作製方法によって作製された前記界面分析用試料を準備する工程と、
    前記界面分析用試料の、互いに接触して積層された前記金属層と前記樹脂層との界面の近傍の状態を、硬X線光電子分光分析法により分析する工程と、
    を含む、界面の分析方法。
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