JP2018030057A - 微粒子分離デバイスおよび微粒子の分離方法 - Google Patents

微粒子分離デバイスおよび微粒子の分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】粒子軌道の変化の境界となる粒子直径である分離直径を調節可能な微粒子分離デバイスおよびそれを用いる微粒子の分離方法を提供する。【解決手段】流入された微粒子をその特性(大きさ,形状,硬さなど)にしたがって分離するための微粒子分離デバイスであり、微粒子の流入口および流出口、ならびにマイクロ流路および配列された支柱からなり;マイクロ流路は、配列された支柱間の隙間で形成され;支柱は刺激応答性高分子材料からなり、刺激に対する収縮または膨潤による該支柱形状の変化の度合いにより、マイクロ流路を流れる微粒子の軌道を制御して微粒子の特性にしたがって微粒子を分離するように構成されてなる微粒子分離デバイス。【選択図】図1

Description

本発明は、微粒子分離デバイスおよび微粒子の分離方法に関する。
微粒子分離は、医療・生化学分野、生産分野などで幅広く必要とされている。例えば、生物学研究や診断医療、再生医療では、ある細胞集団から特定の細胞(癌細胞、血球、生細胞など)のみを分離、回収することが求められる。現在、こうした生体粒子の分離には遠心分離法、濾過法、蛍光活性化細胞分離法(FACS)、磁気細胞分離法(MACS)などが用いられている。しかしながら、遠心分離法は精度が低く、濾過法では目詰りが生じる難点がある。また、FACS、MACSでは蛍光や磁気ビーズによる標識が必要であり、複雑な前処理が求められ、装置も大型かつ高価である。
これらの課題の解決手段として近年、マイクロ流路デバイスによる微粒子分離手法(非特許文献1)が報告されており、分離手法は以下の2種類に大別される。
(1)能動的粒子分離手法:分離の際に、電場・音場・磁場などの外部エネルギーを必要とする手法
(2)受動的粒子分離手法:分離の際に、水力学的作用のみを用いる手法
能動的粒子分離手法の場合、外部エネルギーを用いることでシステムが複雑化するため、受動的分離手法にて高い分離性能を実現することが望まれる。近年,受動的分離手法の一つとして、deterministic lateral displacement (DLD)法による微粒子分離事例が報告されている(非特許文献2〜4)。DLDは流路に配列する支柱によって流体に生じる流れを利用した粒子分離法であり、DLD流路内において粒子の大きさ、形状、硬さなどの粒子特性に従って異なる軌道を取るため(図6)、粒子径に基づき簡便に粒子を分離できる。本手法を用いて、高分離分解能かつ高処理量の粒子分離を実現した事例(非特許文献3)も報告されているが、DLDは流路の幾何形状によって粒子軌道の変化の境界となる粒子直径(分離直径)が固定されており、汎用性の低下を招いている。
D. R. Gossett et al., Anal. Bioanal. Chem., 397, 3249-3267, 2010 L. R. Hung et al., Science, 304, 987-990, 2004. J. McGrath et al., Lab Chip, 14, 4139-4158, 2014. N. Tottori et al., Biomicrofluidics, 10, 0414125, 2016
本発明は、このような課題を解決し、刺激応答性高分子で支柱を作製し、刺激制御によって流路幾何形状を変化させることにより、粒子軌道の変化の境界となる粒子直径である分離直径を調節し得る微粒子分離デバイスおよびそれを用いる微粒子の分離方法を提供するものである。
本発明は上記の問題を解決するために、以下の発明を提供するものである。
(1)流入された微粒子をその特性にしたがって分離するための微粒子分離デバイスであり、
微粒子の流入口および流出口、ならびにマイクロ流路および配列された支柱からなり;
該マイクロ流路は、該配列された支柱間の隙間で形成され;
該支柱は刺激応答性高分子材料からなり、刺激に対する収縮または膨潤による該支柱形状の変化の度合いにより、該マイクロ流路を流れる微粒子の軌道を制御して微粒子の特性にしたがって微粒子を分離するように構成されてなることを特徴とする微粒子分離デバイス。
(2)微粒子をその大きさに基づき分離する上記(1)に記載の微粒子分離デバイス。
(3)微粒子をその形状に基づき分離する上記(1)に記載の微粒子分離デバイス。
(4)微粒子をその硬さに基づき分離する上記(1)に記載の微粒子分離デバイス。
(5)刺激応答性高分子材料が物理的刺激または化学的刺激に応答するハイドロゲルである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の微粒子分離デバイス。
(6)微粒子が、ポリマー微粒子、生物系微粒子、液滴、金属微粒子、および非金属粒子から選ばれる上記(1)から(5)のいずれかに記載の微粒子分離デバイス。
(7)流入された微粒子が水性懸濁液である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の微粒子分離デバイス。
(8)単一の分離直径を有する支柱配列から構成される上記(1)〜(7)のいずれかに記載の微粒子分離デバイス。
(9)複数の分離直径を有する支柱配列から構成される上記(1)〜(7)のいずれかに記載の微粒子分離デバイス。
(10)分離する微粒子を、配列された支柱間の隙間で形成されたマイクロ流路に流入させ、ついでマイクロ流路を通過させた後にマイクロ流路から流出させる微粒子の分離方法であり、
該支柱は刺激応答性高分子材料からなり、刺激に対する収縮または膨潤による該支柱形状の変化の度合いにより、該マイクロ流路を流れる微粒子の軌道を制御して微粒子の特性にしたがって微粒子を分離するように構成されてなることを特徴とする微粒子の分離方法。
(11)微粒子をその大きさに基づき分離する上記(10)に記載の微粒子の分離方法。
(12)微粒子をその形状に基づき分離する上記(10)に記載の微粒子の分離方法。
(13)微粒子をその硬さに基づき分離する上記(10)に記載の微粒子の分離方法。
(14)刺激応答性高分子材料が物理的刺激または化学的刺激に応答するハイドロゲルである上記(10)〜(13)のいずれかに記載の微粒子の分離方法。
(15)微粒子が、ポリマー微粒子、生物系微粒子、液滴、金属微粒子および非金属粒子から選ばれる(10)〜(14)のいずれかに記載の微粒子の分離方法。
(16)流入された微粒子が水性懸濁液である上記(10)〜(15)のいずれかに記載の微粒子の分離方法。
(17)単一の分離直径を有する支柱配列から構成される上記(10)〜(16)のいずれかに記載の微粒子の分離方法。
(18)複数の分離直径を有する支柱配列から構成される上記(10)〜(16)のいずれかに記載の微粒子の分離方法。
本発明によれば、刺激応答性高分子で支柱を作製し、刺激制御によって流路幾何形状を変化させることにより、粒子軌道の変化の境界となる粒子直径である分離直径を調節し得る微粒子分離デバイスおよびそれを用いる微粒子の分離方法を提供し得る。
温度応答性高分子を用いたDLDマイクロ流路デバイスの概要図。 高温時(35℃)と低温時(24℃)のポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)の支柱を示す図。 温度変化に伴う支柱直径と分離直径Dcの変化を示す図。 微粒子のDLD流路への流入位置を示す図。 高温時(35℃)と低温時(24℃)における6μmと3μmのポリスチレンビーズの流入位置と流出位置の関係を示す図 DLDマイクロ流路内での粒子軌道を示す図。
本発明の微粒子分離デバイスは、流入された微粒子をその特性にしたがって分離するための微粒子分離デバイスである。微粒子分離デバイスは、微粒子の流入口および流出口、ならびにマイクロ流路および配列された支柱からなり、マイクロ流路は、配列された支柱間の隙間で形成される。本発明において、支柱は刺激応答性高分子材料からなり、刺激に対する収縮または膨潤による支柱形状の変化の度合いにより、マイクロ流路を流れる微粒子の軌道を制御して微粒子の特性により微粒子を分離するように構成されてなる。微粒子の特性としては、好適には大きさ,形状,または硬さが挙げられる。
支柱を形成する刺激応答性高分子材料は、温度、光、電場もしくは磁場等の物理的刺激、またはpH、溶液組成、イオン強度等の化学的刺激に応答するハイドロゲルである。たとえば、温度応答性高分子材料は、ハイドロゲルであり、水分を大量に含むことにより膨潤する性質を有するポリマーであり、温度変化による可逆的な水和・脱水和に伴う膨潤・収縮を生じる機能を有する。温度応答性高分子材料としては、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)、ポリ−N-ビニルアルキルアミド、ポリビニルアルキルエーテル、等が挙げられるが、相転移温度が30℃付近であり生物系微粒子への適用が可能である点や,緩やかな温度応答性を示すため支柱形状を細く制御可能である点からポリ-N-イソプロピルアクリルアミドが好適である。光応答性高分子材料としては、アゾベンゼン含有架橋構造を有するポリアクリルアミドハイドロゲル、等が挙げられる。pH応答性高分子材料としては、側鎖に嵩高い疎水性基を有するカルボキシ基含有ポリマー、等が挙げられる。電場応答性高分子材料としては、ポリアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(PAMPS)、等が挙げられる。
分離される微粒子は、ラテックス等のポリマー微粒子、赤血球、生細胞等の生物系微粒子、液滴、金属微粒子、および金属酸化物等の非金属粒子、から選ばれる。
微粒子の粒径は、通常、1nm〜10mm、好適には10nm〜1mmである。
微粒子は水性懸濁液の形態で微粒子分離デバイスの流入口から導入される。水性懸濁液は、たとえば微粒子を界面活性剤水溶液に粒子濃度10〜1010/mL程度で懸濁した溶液とするのが好適である。
マイクロ流路は、配列された支柱間の隙間で形成される。たとえば、マイクロ流路デバイスは、温度応答性高分子であるポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)で作製した支柱配列間で形成されるDLD流路およびその流路を密封するためのポリジメチルシロキサン (polydimethylsiloxane:PDMS)流路から構成される。PNIPAMによるDLD支柱は、たとえば支柱直径(Dp) 20μm,支柱間隙間(d) 30μm、支柱配列の傾き(θ) 0.05 radのフィルムマスクを用いて、フォトリソグラフィによりガラス基板上に作製される。ここで、支柱配列の傾き(θ)は、平面図における支柱の配列方向の傾きである。DLD流路を密封するためのPDMS流路は、Si基板にエポキシ樹脂「EPON SU-8」をベースにしたネガ型フォトレジスト「SU-8」を用いて作製した鋳型からPDMSにパターンを転写することにより作製される。ガラス基板上に作製したDLD支柱とPDMS流路の位置合わせを行った後、貼り合わせてデバイスを形成する。
支柱の形状は、円柱に限るものではなく、いかなる柱状体であってもよい。支柱の配列は、分離する微粒子の大きさ、形状,硬さ等の粒子の特性に応じて、支柱形状,支柱直径、支柱間隙間(d)、支柱配列の傾き(θ)を好適に設定することによりなされ得る。
たとえば、微粒子の大きさによる分離の場合、支柱直径10nm〜10mm、支柱間隙間1nm〜10mmでかつ分離する微粒子直径より大、支柱配列の傾き0.01〜0.5rad.程度から設定される。支柱の配列は、単一の分離直径(すなわち流路の幾何形状によって粒子軌道の変化の境界となる粒子直径)を有するように構成されていても、または複数の分離直径を有するように構成されていてもよい。
本発明の微粒子の分離方法は、分離する微粒子を、配列された支柱間の隙間で形成されたマイクロ流路に流入させ、ついでマイクロ流路を通過させた後にマイクロ流路から流出させる微粒子の分離方法である。
ここで、支柱は刺激応答性高分子材料からなり、刺激に対する収縮または膨潤による支柱形状の変化の度合いにより、マイクロ流路を流れる微粒子の軌道を制御して微粒子の特性にしたがって微粒子を分離するように構成されてなる。
微粒子の特性としては、その大きさ、形状または硬さが挙げられ、微粒子は、その大きさに基づき、その形状に基づき、またはその硬さに基づき分離されることになる。
支柱を形成する刺激応答性高分子材料は、温度、光、電場もしくは磁場等の物理的刺激、またはpH、溶液組成、イオン強度等の化学的刺激に応答するハイドロゲルである。たとえば、温度応答性高分子材料は、ハイドロゲルであり、水分を大量に含むことにより膨潤する性質を有するポリマーであり、温度変化による可逆的な水和・脱水和に伴う膨潤・収縮を生じる機能を有する。温度応答性高分子材料としては、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)、ポリ−N-ビニルアルキルアミド、ポリビニルアルキルエーテル、等が挙げられるが、相転移温度が30℃付近であり生物系微粒子への適用が可能である点や,緩やかな温度応答性を示すため支柱形状を細く制御可能である点からポリ-N-イソプロピルアクリルアミドが好適である。光応答性高分子材料としては、アゾベンゼン含有架橋構造を有するポリアクリルアミドハイドロゲル、等が挙げられる。pH応答性高分子材料としては、側鎖に嵩高い疎水性基を有するカルボキシ基含有ポリマー、等が挙げられる。電場応答性高分子材料としては、ポリアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(PAMPS)、等が挙げられる。
分離される微粒子は、ラテックス等のポリマー微粒子、赤血球、生細胞等の生物系微粒子、金属微粒子、および金属酸化物等の非金属粒子、から選ばれる。
微粒子の粒径は、通常、1nm〜10mm、好適には10nm〜1mmである。
微粒子は水性懸濁液の形態で微粒子分離デバイスの流入口から導入される。水性懸濁液は、たとえば微粒子を界面活性剤水溶液に粒子濃度10〜1010/mL程度で懸濁した溶液とするのが好適である。
マイクロ流路は、配列された支柱間の隙間で形成される。たとえば、マイクロ流路デバイスは、温度応答性高分子であるポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)で作製した支柱配列間で形成されるDLD流路およびその流路を密封するためのポリジメチルシロキサン (polydimethylsiloxane:PDMS)流路から構成される。たとえば、PNIPAMによるDLD支柱は、支柱直径(Dp) 20μm,支柱間隙間(d) 30μm、支柱配列の傾き(θ) 0.05 radのフィルムマスクを用いて、フォトリソグラフィによりガラス基板上に作製される。DLD流路を密封するためのPDMS流路は,Si基板にエポキシ樹脂「EPON SU-8」をベースにしたネガ型フォトレジスト「SU-8」を用いて作製した鋳型からPDMSにパターンを転写することにより作製される。ガラス基板上に作製したDLD支柱とPDMS流路の位置合わせを行った後、貼り合わせてデバイスを形成する。
支柱の形状は、円柱に限るものではなく、いかなる柱状体であってもよい。支柱の配列は、分離する微粒子の大きさ、形状,硬さ等の粒子の特性に応じて、支柱形状,支柱直径、支柱間隙間(d)、支柱配列の傾き(θ)を好適に設定することによりなされ得る。
たとえば、微粒子の大きさによる分離の場合、支柱直径10nm〜10mm、支柱間隙間1nm〜10mmでかつ分離する微粒子直径より大、支柱配列の傾き0.01〜0.5rad.程度から設定される。支柱の配列は、単一の分離直径を有するように構成されていても、または複数の分離直径を有するように構成されていてもよい。
後述するように、流入口からデバイスに導入された粒子は、DLD流路へと流入し、DLD流路の温度が24℃(室温)の場合は,大きい微粒子のみ支柱配列の傾きに沿う軌道(置換モード:displacement mode)を取り、小さい微粒子は流れと同一方向に進む軌道(ジグザグモード:zigzag mode)を取る。一方、DLD流路の温度を35℃に変化させた場合は、両方の微粒子は流れと同一方向に進む軌道であるジグザグモードを取る。このようにDLD流路の温度制御を行うことで微粒子分離のオン・オフ(ON・OFF)制御が可能である。
支柱を形成する刺激応答性高分子材料として、光、電場もしくは磁場、またはpH、溶液組成もしくはイオン強度に応答するハイドロゲルを用いる場合も、温度応答性ハイドロゲルの場合の温度と同様にして光、電場もしくは磁場、またはpH、溶液組成もしくはイオン強度の制御を行うことにより微粒子分離のオン・オフ(ON・OFF)制御が可能である。
つぎに、本発明において、粒子形状による分離を行う場合について説明する。たとえば、赤血球(厚み2μm、 直径6μm)などの円盤形状の粒子の場合、粒子の流れる姿勢によって、DLD流路内での粒子の見掛けの直径が変化し、分離挙動(Displacement mode, Zigzag mode)に影響を与えることが知られている。そのため,DLDの支柱に対して赤血球の姿勢(円盤の直径方向,厚み方向)を制御した分離手法(J. P. Beech et al., Lab Chip, 12, 1048-1051, 2012)や赤血球の回転を用いた分離手法(K. K. Zeming et al., Nat. Commun., 4, 1625, 2013)がこれまでに報告されているので、本発明の分離方法をこれらに適用することにより粒子形状による分離を行うことができる。
さらに、本発明において、粒子の硬さによる分離を行う場合について説明する。DLD流路内では,粒子にせん断応力が働くため、粒子の硬さの違いに従って、粒子が変形する度合いが異なる。たとえば、静止状態では同じ直径の粒子の場合であっても,より変形しやすい粒子は,変形しない粒子と比較して,DLD流路内での見かけの直径が小さくなる。すなわち,サイズが同じ粒子であっても,粒子の変形度合いの違いを利用した粒子分離が可能になる。たとえば,赤血球の場合において、通常の赤血球とマラリアに感染した赤血球とでは硬さが異なるため、硬さを指標とした赤血球の分離によって病気の検出などが期待される(T. Krueger et al., Biomicrofluidics, 8, 054114, 2014)。本発明の分離方法をこれらに適用することにより粒子の硬さによる分離を行うことができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
マイクロ流路デバイスは、温度応答性高分子の一種であるポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(poly-N-isopropylacrylamide:PNIPAM)のフォトレジストで作製したDLD支柱及び,それを密封するためのポリジメチルシロキサン (polydimethylsiloxane:PDMS)流路から構成される。PNIPAMによるDLD支柱は、支柱直径(Dp) 20μm,支柱間隙間(d) 30μm、支柱配列の傾き(θ) 0.05 rad)のフィルムマスクを用いて、フォトリソグラフィによりガラス基板上に作製した。DLD支柱を密封するためのPDMS流路は,Si基板にエポキシ樹脂「EPON SU-8」をベースにしたネガ型フォトレジスト「SU-8」を用いて作製した鋳型からPDMSにパターンを転写することにより作製した。ガラス基板上に作製したDLD支柱とPDMS流路の位置合わせを行った後、貼り合わせてDLDマイクロ流路デバイスを形成した(図1)。図1は、温度応答性高分子を用いたDLDマイクロ流路デバイスの概要図を示す。
導入試料には、直径6μmと3μmのポリスチレンビーズ(Polysciences社製)を0.1v/v%の界面活性剤Tween(登録商標)20(Sigma)水溶液に粒子濃度1.0×106/mLで懸濁した溶液と、粒子を懸濁していない0.1v/v%のTween(登録商標)20水溶液(バッファー)を用意した。導入試料を入口のリザーバに滴下した後、シリンジポンプ(KD Scientific社製, KDS200)にて出口を陰圧にすることで送液した。
PNIPAMで作製したDLD支柱の温度変化(10〜50℃)に伴う直径変化を測定すると、支柱の直径が16.3μm 〜39.9μmの範囲で変化する様子が観察された(図2、3)。これに伴い,DLDの分離直径が3.4μm 〜11.2μmの範囲で可変できることが確認された(図3)。図2は、高温時(35℃)と低温時(24℃)のPNIPAMの支柱を示す図であり、図3は温度変化に伴う支柱直径と分離直径Dcの変化を示す図である。支柱の加熱と冷却にはペルチェ素子(センサーコントロールズ社製,CHP−22HS)を用いた。
デバイスに導入された粒子は、配列した支柱の5〜10列目(gap number 5−10)の範囲からDLD流路へと流入した(図4:微粒子のDLD流路への流入位置を示す図)。図5は、高温時(35℃)と低温時(24℃)における6μmと3μmのポリスチレンビーズの流入位置と流出位置の関係を示す図である。
DLD流路の温度が24℃(室温)の場合は,直径6μmのビーズのみ支柱配列の傾きに沿う軌道(置換モード:displacement mode)を取り、直径3μmのビーズは流れと同一方向に進む軌道(ジグザグモード:zigzag mode)を取る様子が確認された(図5(a))。一方、顕微鏡用温度管理ステージ(東海ヒット社製)を用いてDLD流路の温度を35℃に変化させた場合は、直径6μmと3μmのビーズともに流体の流れと同一方向に進む軌道であるジグザグモードを取る様子が確認された(図5(b))。DLD流路の温度制御を行うことでビーズ分離のオン・オフ(ON・OFF)制御が可能であることを確認した。
本発明によれば、分離直径を調節可能な微粒子分離デバイスおよびそれを用いる微粒子の分離方法を提供し得る。

Claims (18)

  1. 流入された微粒子をその特性にしたがって分離するための微粒子分離デバイスであり、
    微粒子の流入口および流出口、ならびにマイクロ流路および配列された支柱からなり;
    該マイクロ流路は、該配列された支柱間の隙間で形成され;
    該支柱は刺激応答性高分子材料からなり、刺激に対する収縮または膨潤による該支柱形状の変化の度合いにより、該マイクロ流路を流れる微粒子の軌道を制御して微粒子の特性にしたがって微粒子を分離するように構成されてなることを特徴とする微粒子分離デバイス。
  2. 微粒子をその大きさに基づき分離する請求項1に記載の微粒子分離デバイス。
  3. 微粒子をその形状に基づき分離する請求項1に記載の微粒子分離デバイス。
  4. 微粒子をその硬さに基づき分離する請求項1に記載の微粒子分離デバイス。
  5. 刺激応答性高分子材料が物理的刺激または化学的刺激に応答するハイドロゲルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子分離デバイス。
  6. 微粒子が、ポリマー微粒子、生物系微粒子、液滴、金属微粒子、および非金属粒子から選ばれる請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粒子分離デバイス。
  7. 流入された微粒子が水性懸濁液である請求項1〜6のいずれか1項に記載の微粒子分離デバイス。
  8. 単一の分離直径を有する支柱配列から構成される請求項1〜7のいずれか1項に記載の微粒子分離デバイス。
  9. 複数の分離直径を有する支柱配列から構成される請求項1〜7のいずれか1項に記載の微粒子分離デバイス。
  10. 分離する微粒子を、配列された支柱間の隙間で形成されたマイクロ流路に流入させ、ついでマイクロ流路を通過させた後にマイクロ流路から流出させる微粒子の分離方法であり、
    該支柱は刺激応答性高分子材料からなり、刺激に対する収縮または膨潤による該支柱形状の変化の度合いにより、該マイクロ流路を流れる微粒子の軌道を制御して微粒子の特性にしたがって微粒子を分離するように構成されてなることを特徴とする微粒子の分離方法。
  11. 微粒子を大きさに基づき分離する請求項10に記載の微粒子の分離方法。
  12. 微粒子を形状に基づき分離する請求項10に記載の微粒子の分離方法。
  13. 微粒子をその硬さに基づき分離する請求項10に記載の微粒子の分離方法。
  14. 刺激応答性高分子材料が物理的刺激または化学的刺激に応答するハイドロゲルである請求項10〜13のいずれか1項に記載の微粒子の分離方法。
  15. 微粒子が、ポリマー微粒子、生物系微粒子、液滴、金属微粒子、および非金属粒子
    から選ばれる請求項10〜14のいずれか1項に記載の微粒子の分離方法。
  16. 流入された微粒子が水性懸濁液である請求項10〜15のいずれか1項に記載の微粒子分離方法。
  17. 単一の分離直径を有する支柱配列から構成される請求項10〜16のいずれか1項に記載の微粒子の分離方法。
  18. 複数の分離直径を有する支柱配列から構成される請求項10〜16のいずれか1項に記載の微粒子の分離方法。
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