JP2018028472A - 熱中性子炉制御棒用の制御材及び熱中性子炉制御棒 - Google Patents

熱中性子炉制御棒用の制御材及び熱中性子炉制御棒 Download PDF

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宏一 太田
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孝成 尾形
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Kinya Nakamura
勤也 中村
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Abstract

【課題】従来制御材を用いた場合と同程度の反応度を確保しながらも、燃料破損に先んじて溶融したり一部蒸発したりすることなく、炉心溶融時に燃料物質と共存することができ、溶融燃料が再固化した際にも析出・分離することのない制御材を得る。【解決手段】本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材は、希土類元素酸化物成分A及び4族元素酸化物成分Bを含む混合物の焼結体からなるものとした。希土類元素酸化物Aは、ユーロピウム酸化物、又は、サマリウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上とユーロピウム酸化物との組み合わせとした。4族元素酸化物成分Bは、ジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物からなる群から選択される一種以上とした。【選択図】図1

Description

本発明は、熱中性子炉制御棒用の制御材及び熱中性子炉制御棒に関する。さらに詳述すると、本発明は、沸騰水型軽水炉(BWR)や加圧水型軽水炉(PWR)等の熱中性子炉の制御棒に装填される制御材に関する。また、本発明は、この制御材が装填された熱中性子炉制御棒に関する。
従来、沸騰水型軽水炉の出力調整や炉停止に用いられる制御棒には、制御材として炭化ホウ素(BC)が利用されている。また、加圧水型軽水炉の出力調整や炉停止に用いられる制御棒には、銀−インジウム−カドミウム(Ag−In−Cd)合金が利用されている。これらの制御材は、例えばステンレス鋼製のスリーブ内に装填されて用いられる。
安成弘、他1名、「電気学会大学講座 基礎原子力工学」第5版、電気学会、p.176―177
Cとステンレス鋼材の主成分である鉄(Fe)との間で液相が生じる共晶温度(約1150℃)やAg−In−Cd合金の融点(約800℃)は、軽水炉燃料の被覆管材であるジルカロイ(Zry)と水蒸気との酸化反応が急激に進行しはじめる温度(約1200℃)よりも低い。したがって、何らかの異常事象によって制御棒が全挿入され、原子炉が緊急停止した後においても、長期に亘って冷却不全の状態が継続し、炉心温度の上昇が続く事態となった場合には、大規模な燃料破損に先んじて、制御材であるBCやAg−In−Cd合金が液相となる可能性がある。液相となった制御材は、これを被覆しているステンレス鋼が破損すると漏れ出して脱落してしまう可能性がある。また、脱落した制御材及びステンレス鋼の破損により露出した制御材は、その一部が蒸発して分離すると考えられる。詳細には、Ag−In−Cd合金を構成するインジウム(In)やカドミウム(Cd)が蒸発して分離すると考えられる。また、BCは高温水蒸気等と接触して酸化ホウ素(B)等に変化し、これが蒸発することでホウ素(B)が分離すると考えられる。したがって、脱落した制御材及びステンレス鋼の破損により露出した制御材の中性子吸収能力は、大幅に低減するものと考えられる。
実際に1979年に米国のスリーマイル島原子力発電所2号機(TMI−2:加圧水型軽水炉)で起こった炉心損傷事故後の調査結果によれば、炉内堆積物のうち、鉄などの構造材を主成分とする金属相に制御材の一部(Ag、In)が存在していたものの、Cdは炉内堆積物中にほとんど存在していなかった。TMI−2事故では、ホウ酸水の注入が機能したことにより、事象収束後、炉内の燃料物質による再臨界の発生は確認されていない。しかしながら、燃料物質が制御材と分離された状態で真水または海水が注入され、それらが再冠水した場合には再臨界に至る虞がある。
そこで、燃料破損に先んじて溶融したり一部蒸発したりすることなく、炉心溶融時に溶融燃料と共存することができ、溶融燃料が再固化した際にも析出・分離することなく燃料物質と互いに固溶する制御材を用いることによって、未臨界を確保することが考えられる。しかしながら、制御材を変更すると、制御棒の炉心への挿入量に対する反応度が変化するため、熱中性子炉の運転条件や炉心制御にも多大な影響が生じてしまう懸念がある。
本発明は、従来制御材を用いた場合と同程度の反応度を確保しながらも、燃料破損に先んじて溶融したり一部蒸発したりすることなく、炉心溶融時に溶融燃料と共存することができ、溶融燃料が再固化した際にも析出・分離することのない制御材を提供することを目的とする。さらには、この制御材が装填された熱中性子炉制御棒を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材は、希土類元素酸化物成分A及び4族元素酸化物成分Bを含む混合物の焼結体からなる。
希土類元素酸化物Aは、ユーロピウム酸化物、又は、サマリウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上とユーロピウム酸化物との組み合わせである。
4族元素酸化物成分Bは、ジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物からなる群から選択される一種以上である。
ここで、本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材において、希土類元素酸化物成分Aは、ユーロピウム酸化物であることが好ましい。
また、本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材において、4族元素酸化物成分Bは、ジルコニウム酸化物、又は、ジルコニウム酸化物とハフニウム酸化物との組み合わせであることが好ましい。
次に、本発明の熱中性子炉制御棒は、本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材が装填されている。
また、本発明の熱中性子炉制御棒は、熱中性子炉の通常運転時に炉心内に挿入される又は炉心近傍の高中性束場に晒される出力調整領域に装填された運転時出力調整用制御材と、出力調整領域の外側に位置し且つ運転停止時に炉心に挿入される外側領域に装填された炉停止用制御材とを備える。
そして、運転時出力調整用制御材として、本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材が装填されている。
また、炉停止用制御材として、希土類元素酸化物成分Cを含む焼結体、又は、希土類元素酸化物成分C及び4族元素酸化物成分Dを含む混合物の焼結体が装填されている。
希土類元素酸化物成分Cは、サマリウム酸化物、ユーロピウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上である。
4族元素酸化物成分Dは、ジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物からなる群から選択される一種以上である。
ここで、運転時出力調整用制御材と炉停止用制御材とを備える本発明の熱中性子炉制御棒において、炉停止用制御材として、希土類元素酸化物成分C及び4族元素酸化物成分Dを含む混合物の焼結体が装填されていることが好ましい。
また、運転時出力調整用制御材と炉停止用制御材とを備える本発明の熱中性子炉制御棒において、炉停止用制御材の熱中性子吸収効果が、運転時出力調整用制御材の熱中性子吸収効果よりも高いことが好ましい。
本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材によれば、従来制御材(例えばBC、Ag−In−Cd合金)を用いた場合と同程度の反応度を確保しながらも、燃料破損に先んじて溶融したり一部蒸発したりすることなく、炉心溶融時に溶融燃料と共存することができ、溶融燃料が再固化した際にも析出・分離することがない。
したがって、本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材が装填された本発明の熱中性子炉制御棒によれば、従来制御材(例えばBC、Ag−In−Cd合金)を用いた場合と同程度の反応度を確保して、制御材の変更に伴う熱中性子炉の運転条件や制御性への影響を十分に抑えながらも、未臨界を確保して、熱中性子炉の安全性をより一層向上させることが可能となる。
また、運転時出力調整用制御材と炉停止用制御材とを備える本発明の熱中性子炉制御棒によれば、運転時出力調整用制御材として本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材が装填されていることから、従来制御材(例えばBC、Ag−In−Cd合金)を用いた場合と同程度の反応度を確保して、制御材の変更に伴う熱中性子炉の運転条件や制御性への影響を十分に抑えることができる。しかも、運転時出力調整用制御材として装填されている本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材及び炉停止用制御材のいずれも、燃料破損に先んじて溶融したり一部蒸発したりすることなく、炉心溶融時に溶融燃料と共存することができ、溶融燃料が再固化した際にも析出・分離することがないことから、未臨界を確保して、熱中性子炉の安全性をより一層向上させることが可能となる。
そして、運転時出力調整用制御材と炉停止用制御材とを備える本発明の熱中性子炉制御棒において、炉停止用制御材の熱中性子吸収効果が、運転時出力調整用制御材の熱中性子吸収効果よりも高いものとした場合には、より大きな炉停止余裕を確保することが可能となる。
本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材と従来制御材BCについて、解析コードを用いて炉心への挿入深度に対する反応度を計算し、比較検討した結果を示す図である。 図1の結果を一部抜粋した図である。 本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材と従来制御材Ag−In−Cd合金について、解析コードを用いて炉心への挿入深度に対する反応度を計算し、比較検討した結果を示す図である。 本発明の熱中性子炉制御棒の第一の実施形態として、沸騰水型原子炉(BWR)用の制御棒の構成を示す図であり、(A)または(A’)は制御棒領域を区画することなく本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材を装填した制御棒であり、(B)または(B’)は制御棒領域を区画して本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材を装填した制御棒である。 本発明の熱中性子炉制御棒の第二の実施形態として、加圧水型原子炉(PWR)用の制御棒の構成を示す図であり、(A)は制御棒領域を区画することなく本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材を装填した制御棒であり、(B)は制御棒領域を区画して本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材を装填した制御棒である。 本発明の熱中性子炉制御棒(上段:BWR用、下段:PWR用)の制御材の配置の概念を示し、(A)は制御棒領域を区画することなく本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材を装填した制御棒の通常運転時の状態を示す概念図であり、(B)〜(D)は制御棒領域を区画して本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材を装填した制御棒の概念図である。(B)は通常運転時の状態を示す概念図、(C)は運転停止時の状態を示す概念図、(D)は炉心溶融時の状態を示す概念図である。
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
<熱中性子炉制御棒用の制御材>
本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材は、希土類元素酸化物成分A及び4族元素酸化物成分Bを含む混合物の焼結体からなる。
(1)希土類元素酸化物成分A
希土類元素酸化物成分Aは、ユーロピウム酸化物である。ユーロピウム酸化物は、従来制御材(BC、Ag−In−Cd合金)よりも中性子照射による反応度の低下が少ない。したがって、ユーロピウム酸化物を制御材として用いることによって、制御材の反応度を長期に渡り維持することができる。また、ユーロピウム酸化物を制御材として用いることによって、制御材の反応度を、従来制御材(BC、Ag−In−Cd合金)と同等に調整し易い。
本発明では、希土類元素酸化物成分Aの全部をユーロピウム酸化物とすることが好ましいが、このような形態には限定されず、希土類元素酸化物成分Aの一部をユーロピウム酸化物とし、残部をサマリウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上としてもよい。つまり、希土類元素酸化物成分Aは、サマリウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上とユーロピウム酸化物との組み合わせとしてもよい。ここで、サマリウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上による希土類元素酸化物成分Aの残部の置換率を小さくするほど、制御材の反応度を長期に渡り維持する効果が発揮されると共に制御材の反応度を調整し易くなる。逆に、大きくするほど、制御材にかかる原料コストを低減することができる。したがって、希土類元素酸化物成分Aの残部の置換率(つまり、希土類元素酸化物Aにおけるサマリウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上の混合率、単位:モル%)は、これらの点を考慮して、例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、及び1から選択される二種の数値の範囲内に設定される。
なお、サマリウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上とユーロピウム酸化物との組み合わせには、サマリウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上をユーロピウム酸化物に意図的に混合する場合だけでなく、不純物として混合されている場合も含まれる。
(2)4族元素酸化物成分B
4族元素酸化物成分Bは、ジルコニウム酸化物である。希土類元素酸化物にジルコニウム酸化物を混合して焼結することで、希土類元素酸化物単独で焼結する場合よりも、焼結体の安定性を向上させることができる。したがって、水や空気との接触による水酸化や炭酸塩化が起こりにくく、粉体化しにくい。よって、過酷事故時に制御材を覆うステンレス鋼が一部破損して制御材が露出したとしても、制御材の水酸化や炭酸塩化を抑えて制御材の粉体化等を防止し、安定に維持することができる。また、ジルコニウム酸化物は資源量が豊富で安定且つ安価に入手可能である。
本発明では、4族元素酸化物成分Bの全部をジルコニウム酸化物とすることが好ましいが、このような形態には限定されず、4族元素酸化物成分Bの一部をジルコニウム酸化物とし、残部をハフニウム酸化物としてもよい。あるいは、4族元素酸化物成分Bの全部をハフニウム酸化物としてもよい。つまり、ジルコニウム酸化物の一部又は全部をハフニウム酸化物で置換してもよい。ジルコニウムとハフニウムは周期律表で4族元素に属し、性質が極めて似ていることから、ジルコニウム酸化物の一部又は全部をハフニウム酸化物で置換しても、上記と同様、焼結体は安定化し、過酷事故時に制御材を安定に維持する効果が奏される。なお、上記の通り、ハフニウムとジルコニウムは性質が極めて似ていることから、両者を完全に分離することは容易ではなく、市販されているジルコニウム酸化物には不純物としてハフニウム酸化物を含むことが多い。このようなジルコニウム酸化物は、不純物としてハフニウム酸化物を含まないジルコニウム酸化物よりも安価に入手可能である。したがって、不純物としてハフニウム酸化物を含むジルコニウム酸化物を用いることで、原料コストのさらなる低減が可能となる。
(3)希土類元素酸化物成分A及び4族元素酸化物成分Bの融点
希土類元素酸化物成分A及び4族元素酸化物成分Bの融点は以下の通りである。
・ユーロピウム酸化物 :Eu、約2350℃
・サマリウム酸化物 :Sm、約2300℃
・ガドリニウム酸化物 :Gd、約2350℃
・ジスプロシウム酸化物:Dy、約2340℃
・ジルコニウム酸化物 :ZrO、約2700℃
・ハフニウム酸化物 :HfO、約2800℃
なお、上記各融点は文献値(文献:T.B.Massalski, etal.,'Binary Alloy Phase Diagrams second edition', ASM international)であり、いずれの値も±50℃程度の誤差は見込まれる。また、これらを混合すると〜100℃程度、溶融温度が下がると予想される。しかしながら、これらの融点はいずれも、軽水炉燃料の被覆管材であるジルカロイ(Zry)と水蒸気との酸化反応が急激に進行しはじめる温度(約1200℃)よりも高温である。したがって、希土類元素酸化物成分A及び4族元素酸化物成分Bは、燃料破損に先んじて溶融することはない。また、従来制御材(BC、Ag−In−Cd合金)のように一部蒸発するようなこともない。
(4)希土類元素酸化物成分A及び4族元素酸化物成分Bと鉄(Fe)との共晶温度
Gd−Fe−O三元系として、GdFe12とGdFeOの化合物が知られている。GdFe12は包晶反応により約1500℃で、Fe−GdFe12擬二元系では共晶反応により約1460℃(文献:K. Oka, H. Unoki, and A. Negishi, J.Cryst. Growth, 284 [3-4] 440-445(2005))で、Fe−Fe−GdFe12擬三元系では共晶反応により1442℃(文献:H. J. Van Hook, J. Am. Ceram. Soc.,45 [8] 369-373 (1962))で、それぞれ液相を形成する。このように、Gd−Fe−O三元系では純FeやGdの融点(それぞれ1538℃、2330℃)よりも低い温度で液相が出現するものの、1442℃以下の温度領域ではFeとGdは共存すると考えられるので、軽水炉燃料の被覆管材であるジルカロイ(Zry)と水蒸気との酸化反応が急激に進行しはじめる温度(約1200℃)においては、液相は出現しないと考えられる。なお、他の希土類元素酸化物とGdの化学的性質の類似性を踏まえれば、他の希土類元素酸化物を用いた場合にもGd−Fe−O三元系と同様の挙動を示し、1200℃において液相は出現しないと考えられる。
また、Zr−Fe−O三元系の液相形成温度についても1332℃と高温であることから(ZrOとFeOの擬二元系の共晶温度(文献:S. V. Bechta, et al., J. Nucl. Mater., 348 [1-2] 114-121 (2006)))、ZrOを用いた場合にも、1200℃において液相は出現しないと考えられる。なお、HfOとZrOの化学的性質の類似性を踏まえれば、HfOを用いた場合にも、1200℃において液相は出現しないと考えられる。
(5)希土類元素酸化物成分A及び4族元素酸化物成分Bの燃料物質との共存性
ガドリニウム酸化物は、可燃性毒物として燃料に混ぜて利用されている実績がある。さらに、ガドリニウムなどの希土類元素は相互に化学的特性が似ていることから、ガドリニウム以外の希土類元素の酸化物も燃料物質との混和性は高いものと考えられる。
また、TMI−2事故後の炉内物質の調査結果からは、燃料物質とジルコニウム酸化物(ZrO)が混合して存在していたことが明らかとされている。ジルコニウムと化学的性質が非常に類似したハフニウムにおいても、その酸化物(HfO)と燃料物質との混和性は高いと類推できる。
さらに、ジルコニウム酸化物やハフニウム酸化物と希土類元素酸化物は、相互に溶解することが知られている。したがって、ユーロピウム酸化物、サマリウム酸化物、ガドリニウム酸化物、ジスプロシウム酸化物、ジルコニウム酸化物、及びハフニウム酸化物は、溶融した燃料中に溶存し得る(燃料デブリ内に混合する)と考えられる。したがって、炉心溶融時に溶融燃料と分離することなく共存すると考えられる。また、溶融燃料の再固化後に析出・分離することもないと考えられる。
(6)希土類元素酸化物成分Aと4族元素酸化物成分Bの混合比
希土類元素酸化物成分Aと4族元素酸化物成分Bの混合比は、制御材として要求される反応度に応じ、希土類元素酸化物成分Aとして選択される物質及び4族元素酸化物成分Bとして選択される物質を考慮して決定される。
具体的には、従来制御材の反応度を指標とし、例えば解析コード(原子炉等をモデル化し、計算機を用いて評価項目の挙動を解析する手段)等により、希土類元素酸化物成分Aとして選択される物質、4族元素酸化物成分Bとして選択される物質、及びこれらの混合比から、制御棒の炉心への挿入深度に対する反応度を計算し、この計算結果を従来制御材の反応度と比較検討することにより決定することができる。
より具体的な検討例を図1〜図3に示す。
まず、解析コードを用い、以下の(a)〜(c)の各種組成及び混合比により、制御棒の挿入深度に対する反応度を計算した結果を図1に示す。また、以下の(c)と(d)の計算結果のみを抜粋したものを図2に示す。なお、以下の(d)は、沸騰水型軽水炉の従来制御材BCである。
(a)Eu:HfO=1mol:1mol−86%
(b)Gd:HfO=1mol:1mol−86%
(c)Eu:ZrO=1mol:1mol−86%
(d)BC−70%(従来制御材)
なお、「1mol:1mol−86%」の「86%」は制御棒内部に占める混合物のスミア密度が理論密度比で86%であることを意味している。
また、「B4C−70%」の「70%」は制御棒内部に占めるBCの充填密度が理論密度比で70%であることを意味している。
解析コードには、連続エネルギーモンテカルロコードMVPを用い、代表的な沸騰水型軽水炉の炉心形状を模擬した体系における128万ヒストリー×240バッチの中性子輸送計算を行い、初めの40バッチ分を除いた2億5600万ヒストリー分を統計処理した。また、核データライブラリーにはJENDL‐4.0を用いた。
(c)Eu:ZrO=1mol:1molと(d)BCの反応度を比較すると、検討した全ての挿入深度において、反応度が一致していることがわかる。
つまり、希土類元素酸化物成分Aをユーロピウム酸化物(Eu)とし、4族元素酸化物成分Bをジルコニウム酸化物(ZrO)とし、これらの混合比をモル比で1:1とすることで、沸騰水型軽水炉(BWR)の従来制御材であるBCの反応度(詳細には、炉心への挿入深度に対する反応度)が完全に一致することがわかる。
次に、解析コードを用い、以下の(e)の組成及び混合比により、制御棒の挿入深度に対する反応度を計算した結果を図3に示す。なお、以下の(f)は、加圧水型軽水炉の従来制御材Ag−In−Cd合金である。
(e)Eu:ZrO=1mol:7mol−90%
(f)Ag−In−Cd合金−99.5%
なお、「1mol:7mol−90%」の「90%」は制御棒内部に占める混合物のスミア密度が理論密度比で90%であることを意味している。
また、「Ag−In−Cd合金−99.5%」の「99.5%」は制御棒内部に占めるAg−In−Cd合金のスミア密度が理論密度比で99.5%であることを意味している。
解析コードには、連続エネルギーモンテカルロコードMVPを用い、代表的な加圧水型軽水炉の炉心形状を模擬した体系における128万ヒストリー×240バッチの中性子輸送計算を行い、初めの40バッチ分を除いた2億5600万ヒストリー分を統計処理した。また、核データライブラリーにはJENDL‐4.0を用いた。
(e)Eu:ZrO=1mol:7molと(f)Ag−In−Cd合金の反応度を比較すると、検討した全挿入深度において、反応度が一致していることがわかる。
つまり、希土類元素酸化物成分Aをユーロピウム酸化物(Eu)とし、4族元素酸化物成分Bをジルコニウム酸化物(ZrO)とし、これらの混合比をモル比で1:7とすることで、加圧水型軽水炉(PWR)の従来制御材であるAg−In−Cd合金の反応度(詳細には、炉心への挿入深度に対する反応度)が完全に一致することがわかる。
また、図1に示す(a)Eu:HfO=1mol:1molと(c)Eu:ZrO=1mol:1molの計算結果を踏まえると、ジルコニウム酸化物(ZrO)に代えてハフニウム酸化物(HfO)を用いた場合、挿入深度が350cmを越えると従来制御材より反応度が負側に若干大きくなる傾向は見られたものの、挿入深度0〜350cmまでは従来制御材と反応度がほぼ一致する傾向が見られたことから、4族元素酸化物成分Bとしてジルコニウム酸化物に代えてハフニウム酸化物を用いた場合、あるいはジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物を併用した場合にも、従来制御材に近似する反応度あるいは同等の反応度に調整することが可能と考えられる。
さらに、図1に示す(a)Eu:HfO=1mol:1molと(b)Gd:HfO=1mol:1molの計算結果を踏まえると、ユーロピウム酸化物(Eu)に代えてガドリニウム酸化物(Gd)を用いた場合、挿入深度が300cmを越えると従来制御材より反応度が負側に若干大きくなる傾向は見られたものの、挿入深度0〜300cmまでは従来制御材と反応度がほぼ一致する傾向が見られたことから、希土類元素酸化物成分Aとしてユーロピウム酸化物(Eu)及びガドリニウム酸化物(Gd)を併用した場合にも、従来制御材に近似する反応度あるいは同等の反応度に調整することが可能と考えられる。特に、希土類元素酸化物成分Aにおけるガドリニウム酸化物(Gd)の含有率(占有率)がモル比で50%以下である場合には、従来制御材に近似する反応度あるいは同等の反応度に調整することが容易になると考えられる。そして、同様のことが、サマリウム酸化物及びジスプロシウム酸化物についても当て嵌まると推定される。
なお、本発明者の実験によれば、上記(a)〜(c)及び(e)の混合物の焼結体について、水や空気との接触による水酸化や炭酸塩化は起こらないことが確認されている。したがって、希土類元素酸化物成分Aと4族元素酸化物成分Bとの混合物中における4族元素酸化物成分Bの混合率を50モル%以上とすれば、水や空気との接触による水酸化や炭酸塩化は起こらない。但し、希土類元素酸化物成分Aと4族元素酸化物成分Bとの混合物中における4族元素酸化物成分Bの混合率を50モル%より低下させても焼結体の安定化は起こると考えられることから、希土類元素酸化物成分Aと4族元素酸化物成分Bとの混合物中における4族元素酸化物成分Bの混合率は50モル%以上には限定されず、制御材として要求される反応度に応じて、焼結体の安定化が起こる範囲(水や空気との接触による水酸化や炭酸塩化は起こらない範囲)で4族元素酸化物成分Bの混合率を減少させることもできる。
(7)焼結体の製法
希土類元素酸化物成分Aの粉末と4族元素酸化物成分Bの粉末を混合し、熱中性子炉制御棒に装填可能に成型した後、融点よりも低温で一定時間加熱することで焼結体が得られる。
<熱中性子炉制御棒>
本発明の熱中性子炉制御棒は、例えば二酸化ウラン等のウラン燃料、MOX燃料等を使用する熱中性子炉、例えば沸騰水型軽水炉や加圧水型軽水炉等の軽水炉、重水炉、黒鉛炉等で使用される熱中性子炉制御棒の従来制御材に代えて、上述した本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材(以下、単に「本発明の制御材」と呼ぶこともある)が装填されている。
本発明の熱中性子炉制御棒(以下、単に「制御棒」)と呼ぶこともある)の第一の実施形態の一例を図4(A)または図4(A’)及び図6(A)上段に示す。第一の実施形態に係る制御棒1は、炉心に下から挿入するタイプの制御棒である。このような制御棒としては、例えば沸騰水型軽水炉(BWR)用の制御棒が知られている。本実施形態に係る制御棒1は、従来制御材(BC)に代えて、本発明の制御材4が装填されている。
なお、図4(A)および図4(B)中、符号10はエンドプラグ、符号11はステンレス鋼球、符号12はステンレス被覆管、符号13はディンプルである。ここで、本発明の制御棒においては、制御材を焼結体としていることから、従来制御材であるBC粉末を用いる場合に問題となる局部稠密化が発生しない。したがって、図4(A’)および図4(B’)に示すようにステンレス鋼球11やそれを支えるディンプル13を省略することができ、制御棒全長に渡って制御材を装荷することもできる。
図4(A)または図4(A’)に示す制御棒1に装填されている本発明の制御材4は、例えば希土類元素酸化物成分Aをユーロピウム酸化物(Eu)とし、4族元素酸化物成分Bをジルコニウム酸化物(ZrO)とし、これらの混合比をモル比で1:1とした本発明の制御材である。この制御材4は、従来制御材(BC)と同等の反応度を有している。但し、制御材4の組成は、これに限定されるものではない。
なお、制御棒1は複数組み合わせて制御棒集合体の形態で使用されるものでも良いし、単独で使用されるものでも良い。また、その形状は必ずしも棒状のものに限られず、例えば細長い板状のもの等も含まれる。本実施形態では、図4に示す棒状の制御棒1を複数十字形に組み合わせて制御棒集合体として使用される。
本発明の制御棒1によれば、従来制御材(BC)を用いた場合と同程度の反応度を確保しながらも、燃料破損に先んじて溶融したり一部蒸発したりすることなく、炉心溶融時に溶融燃料と共存することができ、溶融燃料が再固化した際にも析出・分離することがない。したがって、制御材の変更に伴う熱中性子炉の運転条件や制御性への影響を十分に抑えながらも、未臨界を確保して、熱中性子炉の安全性をより一層向上させることが可能となる。
しかも、図4(A)または図4(A’)に示す制御棒1では、制御材4全体を同一組成としていることから、制御材4全体を一体成型することができ、製造が容易である。
但し、本発明の制御棒は、制御材4全体を同一組成としたものには限定されない。例えば、図4(B)または図4(B’)に示すように、制御棒を出力調整領域3と外側領域5の二つの領域に区画し、二つの領域のそれぞれに組成の異なる制御材を配置するようにしてもよい。
例えば、図4(B)または図4(B’)に示す制御棒1’のように、図4(A)または図4(A’)に示す制御棒1を出力調整領域3と外側領域5の二つの領域に区画し、二つの領域のそれぞれに組成の異なる制御材を配置するようにしてもよい。詳細には、熱中性子炉の通常運転時に使用する出力調整領域3(運転時の反応度の調整を行う領域および炉心外部の近傍領域)に運転時出力調整用制御材として本発明の制御材4を装填し、熱中性子炉の停止に使用する外側領域5(運転停止時に負の反応度を加える領域)に運転時出力調整用制御材とは組成の異なる炉停止用制御材6を装填するようにしてもよい。
つまり、図4(B)または図4(B’)に示す制御棒1’では、運転中に炉心2内に挿入される出力制御部分や炉心2の下端近傍の漏洩中性子束が高い位置に配置される制御棒領域である出力調整領域3には、運転時出力調整用制御材として本発明の制御材4を装填する。一方、炉心2から離れ、漏洩中性子束が十分に低減する制御棒領域である外側領域5には運転時出力調整用制御材と組成の異なる炉停止用制御材6を装填する(図6(B)上段)。
なお、BWRでは、図6(B)上段に示すように、制御棒1’として、通常運転時においてその上部が炉心2内部まで挿入されている出力制御用のもの(記載されている3本の制御棒1’のうち、左右両側の制御棒1’)と、通常運転時において炉心2に挿入されておらずその上端を炉心2下端のごく近傍に位置させている炉停止用のもの(記載されている3本の制御棒1’のうち、中央の制御棒1’)とがある。通常運転時にその一部が炉心2内に挿入される出力制御用の制御棒1’は、挿入されていない炉停止用の制御棒1’よりも、出力調整領域3が長く、外側領域5が短い。
炉停止用制御材6は、希土類元素酸化物成分Cを含む焼結体、又は、希土類元素酸化物C及び4族元素酸化物成分Dを含む混合物の焼結体からなる。
希土類元素酸化物成分Cは、サマリウム酸化物、ユーロピウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上である。なお、上述した希土類元素酸化物成分Aと希土類元素酸化物成分Cは、互いに独立しており、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
4族元素酸化物成分Dは、ジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物からなる群から選択される一種以上である。なお、上述した4族元素酸化物成分Bと4族元素酸化物成分Dは、互いに独立しており、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
希土類元素酸化物成分Cを構成するサマリウム酸化物、ユーロピウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物、並びに、4族元素酸化物成分Dを構成するジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物の融点は、いずれも、軽水炉燃料の被覆管材であるジルカロイ(Zry)と水蒸気との酸化反応が急激に進行しはじめる温度(約1200℃)よりも高温である。したがって、希土類元素酸化物成分A及び4族元素酸化物成分Bは、燃料破損に先んじて溶融することはない。また、従来制御材(BC、Ag−In−Cd合金)のように一部蒸発することもない。
また、希土類元素酸化物成分Cを構成するサマリウム酸化物、ユーロピウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物、並びに、4族元素酸化物成分Dを構成するジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物を用いても、1200℃において液相は出現しないと考えられる。
さらに、希土類元素酸化物成分Cを構成するサマリウム酸化物、ユーロピウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物、並びに、4族元素酸化物成分Dを構成するジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物は、燃料物質との混和性が高く、炉心溶融時に溶融燃料と分離することなく共存し、溶融燃料の再固化後に析出・分離することもないと考えられる。
よって、炉停止用制御材6は、運転時出力調整用制御材として装填されている本発明の制御材4と同様、燃料破損に先んじて溶融したり一部蒸発したりすることなく、炉心溶融時に溶融燃料と分離することなく共存し、溶融燃料の再固化後に析出・分離することもないと考えられる。したがって、未臨界を確保して、熱中性子炉の安全性をより一層向上させることが可能となる。しかも、運転時出力調整用制御材として出力調整領域3に装填される本発明の制御材4は、従来制御材と同程度の反応度が確保されていることから、熱中性子炉の運転条件や制御条件の大幅な変更の必要はなく、これまで通りの運用が可能である(図6(B)上段)。そして、運転時出力調整用制御材として装填されている本発明の制御材4及び炉停止用制御材6は、燃料の主成分であるUOの液相及び固相中に溶存するので、過酷事故後も燃料成分と分離せずに燃料デブリ7中に存在すると考えられる(図6(D)上段)。
ここで、炉停止用制御材6は、希土類元素酸化物C及び4族元素酸化物成分Dを含む混合物の焼結体からなることが好ましい。希土類元素酸化物Cに4族元素酸化物成分Dを混合して焼結することで、希土類元素酸化物Cを単独で焼結する場合よりも、焼結体の安定性を向上させることができる。したがって、水や空気との接触による水酸化や炭酸塩化が起こりにくく、粉体化しにくい。よって、過酷事故時に炉停止用制御材6を覆うステンレス鋼が一部破損して炉停止用制御材6が露出したとしても、制御材の水酸化や炭酸塩化を抑えて炉停止用制御材6の粉体化等を防止し、安定に維持することができる。なお、希土類元素酸化物成分Cと4族元素酸化物成分Dとの混合物中における4族元素酸化物成分Dの混合率は50モル%以上とすることが好ましいが、4族元素酸化物成分Dの混合率を50モル%より低下させても焼結体の安定化は起こると考えられることから、希土類元素酸化物成分Cと4族元素酸化物成分Dとの混合物中における4族元素酸化物成分Dの混合率は50モル%以上には限定されず、焼結体の安定化が起こる範囲(水や空気との接触による水酸化や炭酸塩化は起こらない範囲)で4族元素酸化物成分Dの混合率を減少させることもできる。
また、炉停止用制御材6は、運転用出力調整用制御材として装填した本発明の制御材4よりも熱中性子吸収効果の高い材料で構成されることが好ましい。この場合、炉停止時には熱中性子吸収効果の高い炉停止用制御材6が炉心2内に挿入されることになり、高い炉停止余裕が確保される(図6(C)上段)。
また、制御棒1あたりの反応度価値が増大するため、炉停止時に制御棒1’が誤って引き抜かれた場合に投入される反応度は増大するが、その他の炉心・燃料仕様はこれまで通りであるため、炉心2全体として従来以上の反応度体系となることはない。さらに、炉停止状態から制御棒1を1本誤って引き抜いた場合を想定しても、従来を上回る炉停止余裕が確保できる。
しかも、本発明では、熱中性子吸収効果の高い炉停止用制御材6の装填領域(外側領域5)を中性子束の高い位置から遠ざけているので、炉停止用制御材6の減損はほとんどなく、長期に渡り繰り返し再利用することが可能となる。例えば、熱中性子吸収効果が非常に高い材料であるガドリニウム酸化物(Gd)を使用する場合、Gd同位体(例:天然ガドリニウム(Gd)元素中のGd155やGd157など))は、運転中に中性子が照射されると、中性子吸収反応によって比較的短期間で減損し、十分な制御棒価値が保たれる期間(制御棒寿命)が限定されるが、本発明では、炉停止用制御材6の装填領域(外側領域5)を中性子束の高い位置から遠ざけているので、熱中性子吸収効果が非常に高いものの減損が起こり易い材料についても、減損を抑えて、長期に渡り繰り返し再利用することが可能となる。
また、炉停止用制御材6として、熱中性子吸収効果が高く、減損の起こりにくい材料を使用するようにしてもよい。これにより、炉停止用制御材6のさらなる長期利用が可能になる。例えば、上述したように、ユーロピウム酸化物は中性子照射による反応度の低下が少ないことから、ユーロピウム酸化物又はユーロピウム酸化物を含む材料を炉停止用制御材6として用いることによって、炉停止用制御材6のさらなる長期利用を図るようにしてもよい。
ここで、炉停止用制御材6の熱中性子吸収効果を高める場合には、希土類元素酸化物Cと比較して熱中性子吸収効果が低い4族元素酸化物成分Dの混合量を減少させることが好ましい。例えば、運転時出力調整用制御材として希土類元素酸化物成分Aをユーロピウム酸化物(Eu)とし、4族元素酸化物成分Bをジルコニウム酸化物(ZrO)とし、これらの混合比をモル比で1:1とした本発明の制御材4が装填されている場合、炉停止用制御材6として装填する制御材を構成する希土類元素酸化物Cをユーロピウム酸化物(Eu)とし、4族元素酸化物成分Dをジルコニウム酸化物(ZrO)とし、ユーロピウム酸化物(Eu)に対してジルコニウム酸化物(ZrO)を運転時出力調整用制御材よりも減らすことで(換言すれば、ユーロピウム酸化物(Eu)とジルコニウム酸化物(ZrO)の混合物におけるジルコニウム酸化物(ZrO)の混合率を50モル%未満とすることで、好ましくは50モル%未満で且つ水や空気との接触による水酸化や炭酸塩化が起こらない混合率以上とすることで)、炉停止用制御材6の熱中性子吸収効果を高めることができ、従来を上回る炉停止余裕が確保できることになる。
次に、本発明の制御棒の第二の実施形態を図5(A)及び図6(A)下段に示す。第二の実施形態に係る制御棒1は、炉心に下から挿入するタイプの制御棒である。このような制御棒としては、例えば加圧水型軽水炉(PWR)用の制御棒が知られている。本実施形態に係る制御棒1は、従来制御材(Ag−In−Cd合金)に代えて、本発明の制御材4が装填されている。なお、上述の部材と同一の部材については同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
なお、図5中、符号15はエンドプラグ、符号16は上部端栓、符号17は押さえばね、符号18はステンレス被覆管、符号19は従来の制御材、符号20は下部端栓である。
図5(A)に示す制御棒1に装填されている本発明の制御材4は、例えば、希土類元素酸化物成分Aをユーロピウム酸化物(Eu)とし、4族元素酸化物成分Bをジルコニウム酸化物(ZrO)とし、これらの混合比をモル比で1:7とした本発明の制御材である。この制御材4は、従来制御材(Ag−In−Cd合金)と同等の反応度を有している。但し、制御材4の組成は、これに限定されるものではない。
なお、制御棒1は複数組み合わせて制御棒集合体の形態で使用されるものでも良いし、単独で使用されるものでも良い。また、その形状は必ずしも棒状のものに限られず、例えば細長い板状のもの等も含まれる。本実施形態では、図5に示す棒状の制御棒1を複数十字形に組み合わせて制御棒集合体として使用される。
本発明の制御棒1によれば、従来制御材(Ag−In−Cd合金)を用いた場合と同程度の反応度を確保しながらも、燃料破損に先んじて溶融したり一部蒸発したりすることなく、炉心溶融時に溶融燃料と分離することなく共存し、溶融燃料の再固化後に析出・分離することもない。したがって、制御材の変更に伴う熱中性子炉の運転条件や制御性への影響を十分に抑えながらも、未臨界を確保して、熱中性子炉の安全性をより一層向上させることが可能となる。また、過酷事故を収束させるため緊急に真水や海水を注入し、炉水中の液体ポイズン(ホウ酸)濃度が低下した場合にも、従来以上の未臨界余裕が確保できる。
しかも、図5(A)に示す制御棒1では、制御材4全体を同一組成としていることから、制御材4全体を一体成型することができ、製造が容易である。
但し、本発明の制御棒は、制御材4全体を同一組成としたものには限定されず、上述した実施形態と同様、図5(B)に示すように、制御棒を出力調整領域3と外側領域5の二つの領域に区画し、二つの領域のそれぞれに組成の異なる制御材を配置するようにしてもよい。
図5(B)に示す制御棒1’では、炉心2内に挿入される出力制御部分や炉心2の上端近傍の漏洩中性子束が高い位置に配置される制御棒領域である出力調整領域3には、運転時出力調整用制御材として本発明の制御材4を装填する。一方、炉心2から離れ、漏洩中性子束が十分に低減する制御棒領域である外側領域5には炉停止用制御材6を装填する(図6(B)下段)。
なお、PWRでは、図6(B)下段に示すように、制御棒1’は通常運転時において炉心2に挿入されておらず、その下端を炉心2上端のごく近傍に位置させている。
炉停止用制御材6は、上述の実施形態と同様、希土類元素酸化物成分Cを含む焼結体、又は、希土類元素酸化物C及び4族元素酸化物成分Dを含む混合物の焼結体からなる。そして、希土類元素酸化物C及び4族元素酸化物成分Dを含む混合物の焼結体を用いることが好ましい。これらにより、上述の実施形態と同様の効果が奏される(図6(D)下段)。また、炉停止用制御材6は、運転用出力調整用制御材として装填した本発明の制御材4よりも熱中性子吸収効果の高い材料で構成されることが好ましい。この場合、炉停止時には熱中性子吸収効果の高い炉停止用制御材6が炉心2内に挿入されることになり、高い炉停止余裕が確保される(図6(C)下段)。
なお、本実施形態において、運転時出力調整用制御材として希土類元素酸化物成分Aをユーロピウム酸化物(Eu)とし、4族元素酸化物成分Bをジルコニウム酸化物(ZrO)とし、これらの混合比をモル比で1:7とした本発明の制御材4が装填されている場合、炉停止用制御材6として装填する制御材を構成する希土類元素酸化物Cをユーロピウム酸化物(Eu)とし、4族元素酸化物成分Dをジルコニウム酸化物(ZrO)とし、ユーロピウム酸化物(Eu)に対してジルコニウム酸化物(ZrO)を運転時出力調整用制御材よりも減らすことで(換言すれば、ユーロピウム酸化物(Eu)とジルコニウム酸化物(ZrO)の混合物におけるジルコニウム酸化物(ZrO)の混合率を87.5モル%未満とすることで、好ましくは87.5モル%未満で且つ水や空気との接触による水酸化や炭酸塩化が起こらない混合率以上とすることで)、炉停止用制御材6の熱中性子吸収効果を高めることができ、従来を上回る炉停止余裕が確保できることになる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、本発明の熱中性子炉制御棒用の制御材として用いられる焼結体には、本発明の効果を大きく阻害することのない範囲で、意図的に他の物質が混合されていてもよい。また、本発明の効果を大きく阻害することのない範囲で、意図しない不純物として他の物質が混合されていてもよい。
また、本発明の制御棒は、発電目的の熱中性子炉の他、例えば実験・研究目的、船舶などの動力目的等の熱中性子炉で使用する制御棒についても適用可能である。
さらに、本発明では、従来制御材としてBCとAg−In−Cd合金を挙げ、これらの従来制御材の代替として、本発明の制御材を用いることについて説明したが、他の従来制御材の代替として、本発明の制御材を用いるようにしてもよい。
1、1’ 制御棒
2 炉心
3 出力調整領域
4 制御材(運転時出力調整用制御材)
5 外側領域
6 炉停止用制御材

Claims (7)

  1. 希土類元素酸化物成分A及び4族元素酸化物成分Bを含む混合物の焼結体からなり、
    前記希土類元素酸化物成分Aは、ユーロピウム酸化物、又は、サマリウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上とユーロピウム酸化物との組み合わせであり、
    前記4族元素酸化物成分Bは、ジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物からなる群から選択される一種以上である
    ことを特徴とする熱中性子炉制御棒用の制御材。
  2. 前記希土類元素酸化物成分Aは、ユーロピウム酸化物である、請求項1に記載の熱中性子炉制御棒用の制御材。
  3. 前記4族元素酸化物成分Bは、ジルコニウム酸化物、又は、ジルコニウム酸化物とハフニウム酸化物との組み合わせである、請求項1又は2に記載の熱中性子炉制御棒用の制御材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱中性子炉制御棒用の制御材が装填されていることを特徴とする熱中性子炉制御棒。
  5. 熱中性子炉の通常運転時に炉心内に挿入される又は前記炉心近傍の高中性束場に晒される出力調整領域に装填された運転時出力調整用制御材と、前記出力調整領域の外側に位置し且つ運転停止時に前記炉心に挿入される外側領域に装填された炉停止用制御材とを備え、
    前記運転時出力調整用制御材として、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱中性子炉制御棒用の制御材が装填され、
    前記炉停止用制御材として、希土類元素酸化物成分Cを含む焼結体、又は、前記希土類元素酸化物成分C及び4族元素酸化物成分Dを含む混合物の焼結体が装填され、
    前記希土類元素酸化物成分Cは、サマリウム酸化物、ユーロピウム酸化物、ガドリニウム酸化物、及びジスプロシウム酸化物からなる群から選択される一種以上であり、
    前記4族元素酸化物成分Dは、ジルコニウム酸化物及びハフニウム酸化物からなる群から選択される一種以上である
    ことを特徴とする熱中性子炉制御棒。
  6. 前記炉停止用制御材として、前記希土類元素酸化物成分C及び前記4族元素酸化物成分Dを含む混合物の焼結体が装填されている、請求項5に記載の熱中性子炉制御棒。
  7. 前記炉停止用制御材の熱中性子吸収効果が、前記運転時出力調整用制御材の熱中性子吸収効果よりも高い、請求項5又は6に記載の熱中性子炉制御棒。
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