JP2018027073A - 土中センサおよび土中センサシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】センサを適切な湿度に保つことで、特に湿気を好む有害生物も確実に誘引し、かつ簡単な構成で、有害生物を精度良く検知できる新規な構造の土中センサとそれを用いた土中センサシステムを提供する。
【解決手段】土中センサ10は、有害生物を誘引する誘引手段54と、誘引手段54の振動を検知する振動検知手段68と、誘引手段54の水分を検知する水分検知手段74と、振動検出値に基づいて有害生物が誘引手段54に居るか否かを判定するための基準値を設定する基準値設定手段16と、水分検出値の変化に応じて、基準値を適宜に補正する基準値補正手段16と、振動検出値が、基準値設定手段16によって設定され且つ基準値補正手段16によって適宜に補正された基準値を超えた場合に、有害生物が誘引手段54に居ると判定する判定手段16とを備えている。
【選択図】図3
【解決手段】土中センサ10は、有害生物を誘引する誘引手段54と、誘引手段54の振動を検知する振動検知手段68と、誘引手段54の水分を検知する水分検知手段74と、振動検出値に基づいて有害生物が誘引手段54に居るか否かを判定するための基準値を設定する基準値設定手段16と、水分検出値の変化に応じて、基準値を適宜に補正する基準値補正手段16と、振動検出値が、基準値設定手段16によって設定され且つ基準値補正手段16によって適宜に補正された基準値を超えた場合に、有害生物が誘引手段54に居ると判定する判定手段16とを備えている。
【選択図】図3
Description
本発明は、少なくとも一部が土中に埋設されて、保護対象物に悪影響を及ぼすおそれのある有害生物を検知する土中センサおよびそれを用いた土中センサシステムに関する。
有害生物の一種とされるシロアリは、保護対象物である建物の木材、コンクリート材、樹脂材その他の建材に加え、農作物や樹木等を食害する。このシロアリの食害を防止する方策の一つとして、例えば、保護対象物の周囲等にシロアリの誘引手段として餌木を設置して、人がシロアリが餌木に喰い付いたことを知見すると、シロアリを直接に駆除したり、或いはシロアリを保護対象物に侵入させないための薬剤を保護対象物や周囲の土中に散布したりすることが知られている。
ところで、シロアリ駆除の専門家等が現場まで出向いてシロアリが餌木に喰い付いたか一一確認を行うと、費用と手間がかかる。そこで、従来、シロアリが餌木に誘引されたことを自動で検知できる土中センサが開発されている。具体的に例えば、特許文献1(特表2001−502914号公報)や特許文献2(特開平7−115887号公報)、特許文献3(特開2005−168362号公報)に示されるものが、それである。
特許文献1に記載の土中センサでは、餌木に導電性回路を固定し、シロアリが餌木を食害する際に導電性回路を破壊することで、導電性回路の電気的特性が変化することにより、シロアリを検知するようになっている。
また、特許文献2に記載の土中センサにおいては、永久磁石やリードスイッチを含んでなる磁気回路装置と餌木との間にバネ材を挟んで支持させており、シロアリが餌木を食害して破壊するとバネ材の支持状態のバランスが崩れて、磁気回路装置の一部が変位することに伴いリードスイッチが作動することによって、シロアリを検知するようになっている。
さらに、特許文献3に記載の土中センサにおいては、餌木に高周波水分計を宛がって、水分計から高周波振動を発生させて餌木の含水率を測定し、この測定値と予め餌木にシロアリが居ない時に測った含水率の測定値とを比較して、両測定値に大きな差が出た場合に、シロアリが餌木内を通った蟻道があると判定するようになっている。
ところが、特許文献1に記載の土中センサでは、シロアリが餌木に誘引されても導電性回路以外の部分を食害した際にはシロアリを検知することができず、しかも導電性回路の腐食等によりシロアリを誤検知し易くて、検知精度が十分でない問題があった。また、特許文献2に記載の土中センサにおいても、経年劣化による餌木やバネ材の腐食等によって、磁気回路装置が誤作動を起こし、シロアリを誤検知し易い問題があった。更に、特許文献3に記載の土中センサでは、餌木の含水率の測定箇所に応じて含水率にバラつきがあり、しかも経年劣化による餌木の腐食等によって生じた単なる空洞と蟻道との区別が付き難いことから、シロアリを精度良く検知し難かったのである。
そこで、このような問題に対処するために、例えば、特許文献4(特開2013−55919号公報)には、振動体の音波を検出する圧電基板を餌木に取り付けて、シロアリが餌木を食害したり、走行したりする際に生じる振動(換言すれば、食害音や走行音等を含む活動音)を音響的にとらえることで、シロアリを検知するセンサが提案されている。このような構造によれば、シロアリが今まさに餌木に居ることの証となる振動に基づいて、シロアリを効率良く検知することが図られる。
しかしながら、特許文献4に記載のセンサでは、シロアリを振動で検知する構造であるがゆえに外乱の影響を受けやすく、特に雨天、降雪その他高温多湿の天候等により、餌木が水没したり結露水が餌木に付着したりして、餌木の含水率が大きく変化すると、餌木における振動の伝わり方が変わってしまい、シロアリを正確に検知できない可能性があった。その結果、特許文献4に示されるようなセンサは、高い精度をもつ振動検出機器を要するため、必然的に高価な製品となり、市場に広く普及され難い問題があった。
ちなみに、センサの水没や結露水等を抑制する手段の一つとして吸湿材を用いることが考えられるが、一般にシロアリには湿気を好む習性があり、吸湿材によってセンサ内がシロアリの好まない湿度環境下におかれると、シロアリの誘引力に欠ける問題を内在していたのである。
本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、センサを適切な湿度に保つことで、特に湿気を好む有害生物も確実に誘引し、かつ簡単な構成で、有害生物を精度良く検知できる新規な構造の土中センサとそれを用いた土中センサシステムを提供することにある。
上述の課題を解決するために為された本発明に関する請求項1に記載の土中センサでは、少なくとも一部が土中に埋設される土中センサであって、(イ)保護対象物に侵入して害を為すおそれのある有害生物を誘引する誘引手段と、(ロ)前記誘引手段の振動を検知する振動検知手段と、(ハ)前記誘引手段の水分を検知する水分検知手段と、(ニ)前記振動検知手段により得られた前記振動検出値に基づいて前記有害生物が前記誘引手段に居るか否かを判定するための基準値を設定する基準値設定手段と、(ホ)前記水分検知手段で得られた前記水分検出値の変化に応じて、前記基準値を適宜に補正する基準値補正手段と、(ヘ)前記振動検出値が、前記基準値設定手段によって設定され且つ前記基準値補正手段によって適宜に補正された前記基準値を超えた場合に、前記有害生物が前記誘引手段に居ると判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
本発明の土中センサでは、振動検出値に基づいて誘引手段における有害生物の有無を判定する構成において、周囲の環境変化に伴い振動の検出対象である誘引手段の水分の状態(含水率)が変わってしまっても、基準値補正手段が当該水分の変化に応じて基準値を補正することから、水分変化による誘引手段の振動の変化に起因する有害生物の誤検知が確実に防止される。
従って、有害生物の誤検知の原因となる誘引手段の水分変化を抑えるために、センサ内の湿度を特別に抑制する必要がないことから、一般に土中において湿気を好む有害生物を好適に誘引することができる。しかも、誘引手段の水分変化に起因する振動の検出能力を補うために、振動検知手段に極めて高精度な振動検出機器を採用する必要もないのであり、その結果、簡単な構成に基づき低コストで、検知精度の高いセンサを実現できる。
なお、本発明において、土中センサが埋設される土中は、文言通りの土の中であることに加え、有害生物の移動経路となる木材やコンクリート材、樹脂材その他の各種材料の内部も定義に含まれる。具体的に、例えば、保護対象物が建物である場合に、土中センサは、好ましくは、有害生物が建物に到達する手前の建物の周囲や床下等の土中に埋設されるが、条件に応じて、建物の内部に設置された草花の育成設備等の土中に埋設されても良いし、或いは、建物を構成する木材やコンクリート材、樹脂材等の建材に穴を開けて、土中センサを穴に挿し入れることで建材に埋設されても良い。
また、本発明の土中センサでは、例えば請求項2に記載されているように、前記土中に埋設される筒状の周壁部を有し、その周壁部に前記有害生物が該土中から該周壁部の内側に入るための通用孔が設けられていると共に、前記誘引手段を該周壁部の内側に収容する収容手段を備えている構成が採用されても良い。
このような土中センサでは、収容手段の強度を利用して、誘引手段を土中の目的とする場所に安定して設置することができる。また、例えば、土中における誘引手段の設置位置を変えずに誘引手段を交換する必要が生じた場合に、収容手段を土中に設置したまま、使用済みの誘引手段を収容手段から取り出して、新たな誘引手段を収容手段に入れることも可能であり、それによって、誘引手段の交換作業が容易になる。
また、本発明の土中センサでは、例えば請求項3に記載されているように、前記水分検知手段が、所定の距離を隔てて対向配置された一対の電極を含んで構成されて、前記収容手段の前記周壁部と前記誘引手段との間に配置されており、これら一対の電極に電圧を印加して一対の該電極の静電容量の変化に基づいて該周壁部と該誘引手段との間の水分ひいては該誘引手段の前記水分を検知する構成が採用されても良い。
このような土中センサでは、収容手段の周壁部と誘引手段との間の水分を検知することで、土中における誘引手段の周囲の水没状態を把握することができ、ひいては誘引手段における水分の状態(含水率)を検知することができる。しかも、本発明では、水分検知手段として静電容量(キャパシタンス)の変化を水分値に置き換える公知の静電容量式水分計が採用可能であり、それによって、簡単な構造による低コスト化や小型化が図られる。
また、本発明の土中センサでは、例えば請求項4に記載されているように、前記水分検知手段は、一対の前記電極が固着される絶縁材料を含んで構成されており、これら一対の電極および絶縁材料における少なくとも一部が可撓性を有している構成が採用されても良い。
このような土中センサでは、一対の電極が絶縁材料に固着されることで、両電極の対向面間距離が保持されてなる静電容量式の水分検知手段が簡単に実現される。特に本発明では、電極および絶縁材料における少なくとも一部が可撓性を有していることから、有害生物が、収容手段の周壁部の通用孔から周壁部内の誘引手段に向かって誘い入れられる際に電極および絶縁材料に接触しても、可撓性に基づいて、有害生物に大きな負荷がかからない(換言すれば、有害生物の移動を大きく阻害しない)ようになっている。それ故、本発明によれば、有害生物の誘引力が好適に保持される。
なお、上述のような可撓性を有する電極および絶縁材料からなる静電容量式の水分検知手段としては、特に限定されるものでないが、例えば、絶縁材料に可撓性を有する樹脂フィルムを用いると共に、電極に導電性インクを用いて、導電性インクを樹脂フィルムに印刷してなる高分子フィルムが好適に採用される。
また、本発明の土中センサでは、例えば請求項5に記載されているように、前記収容手段は、前記土中に埋設される前記周壁部を備え且つ該土中に埋設された状態で地表に開口する開口部分を備えた筒状本体と、該筒状本体の該開口部分を覆蓋する蓋体とを含んで構成されているものが採用されても良い。
このような土中センサでは、筒状本体の開口部分が蓋体で覆蓋される構造とされていることによって、地表の異物が開口部分から周壁部内に入ることが防止されて、誘引手段の更なる保護が図られ、ひいては有害生物の高い検知精度が長期間維持され得る。
また、本発明の土中センサでは、例えば請求項6に記載されているように、前記筒状本体の前記開口部分の前記周壁部と前記蓋体との何れか一方には、係合溝が形成されていると共に、該筒状本体の該開口部分の該周壁部と該蓋体との他方には、係合突起が形成されていて、該筒状本体の該開口部分を該蓋体で覆蓋する際に、該係合突起が該係合溝に嵌め込まれて、該係合突起および該係合溝が該筒状本体の軸方向で互いに引っ掛かり合うことで、該蓋体が該筒状本体に固定される構成が採用されても良い。
このような土中センサでは、筒状本体と蓋体が、係合突起および係合溝からなる軸方向の係合構造で確実に固定されていることから、例えば、人や動物、乗り物等が蓋体に引っ掛かった場合にも、蓋体が筒状本体から取り外れることが抑制されることとなり、それによって、筒状本体の周壁部内に収容される誘引手段のより一層の保護が図られる。
また、本発明の土中センサでは、例えば請求項7に記載されているように、前記水分検知手段が前記収容手段の前記蓋体に固定されて該蓋体から吊り下げられた状態で、該収容手段の前記筒状本体の内側に収容配置されている構成が採用されても良い。
このような土中センサでは、水分検知手段が蓋体に固定されていることで、蓋体の筒状本体からの着脱動作と連動して、水分検知手段を筒状本体に容易に収容させ、かつ取り出すことができる。また、例えば、本発明と前述の請求項4に記載の少なくとも一部が可撓性を有する電極および絶縁材料を含んでなる水分検知手段とを組み合わせることによって、水分検知手段の蓋体からの吊り下げ状態と水分検知手段の可撓性とが相俟って、有害生物が水分検知手段に接触した際に有害生物にかかる負荷を一層軽減することができ、有害生物の誘引力の更なる向上が図られる。
また、本発明の土中センサでは、例えば請求項8に記載されているように、前記有害生物がシロアリであって、前記誘引手段が該シロアリの餌となる木質の餌木からなり、該餌木には該シロアリを駆除する薬剤が含まれている構成が採用されても良い。
このような土中センサでは、シロアリを検知するセンサに採用されることにより、従来にはない簡単な構成でシロアリを確実に検知することができる。特に餌木にはシロアリを駆除する薬剤が含まれていることから、薬剤を散布する手間が省けて、駆除が容易になることに加え、保護対象物等に薬剤を散布する必要がなくなって、保護対象物や環境の保護が有利に図られる。
なお、シロアリを駆除する薬剤としては、好ましくは、人体や環境への悪影響が少なく、かつ有効駆除成分を含んでなる各種薬剤が採用され、具体的には、例えば、シロアリに薬剤をセンサから巣に持ち帰らせて、巣で複数のシロアリに分配させて、各シロアリの脱皮を阻害すること等により巣ごとシロアリを全滅させる、いわゆるベイト工法に用いられる公知のベイト剤が採用され得る。
さらに、上述の課題を解決するために為された本発明に関する請求項9に記載の土中センサシステムでは、(イ)請求項1乃至8の何れか一項に記載の土中センサと、(ロ)前記土中センサにおける前記振動検知手段や前記水分検知手段、前記基準値設定手段、前記基準値補正手段、前記判定手段のうちの少なくとも一つの入出力を制御する制御手段と、(ハ)前記振動検知手段で得られた前記振動検出値や、前記水分検知手段で得られた前記水分検出値、前記基準値設定手段で設定され且つ前記基準値補正手段で適宜に補正された前記基準値、前記判定手段において前記有害生物が前記誘引手段に居ると判定された判定情報からなる各種データのうちの少なくとも一つのデータを前記制御手段から受信して記録する記録手段と、(ニ)前記記録手段で得られた前記データを人に報知する報知手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明の土中センサシステムによれば、記録手段や報知手段によって、人が有害生物の有無がわかる判定情報を得られるのは勿論の事、有害生物の活動を分析する上で役立つ振動検出値や水分検出値、基準値等の各種データを得ることもできることから、有害生物の優れた対策処理システムが実現される。また、本発明によれば、制御手段が、土中センサにおける振動検知手段や水分検知手段、基準値設定手段、基準値補正手段、判定手段のうちの少なくとも一つの入出力を制御することで、ノイズ等の外乱による影響を抑制し、所望のデータをより確実に得ることができる。特に本発明のセンサには、前述の請求項1乃至8の何れか一項に示される土中センサが採用されていることから、有害生物を好適に誘引して、土中の水分状態に影響されることなく、有害生物を高精度に検知することができる。
また、本発明の土中センサシステムでは、例えば請求項10に記載されているように、前記土中センサの複数が、前記保護対象物の周囲若しくは該保護対象物の下の前記土中にそれぞれ埋設されていると共に、これら複数の土中センサが電源に対してケーブルを用いて接続されている構成が採用されても良い。
このような土中センサシステムでは、複数の土中センサが設置されていることによって、有害生物の誘引エリアが広がるため、土中のあらゆる箇所から保護対象物に侵入するおそれのある有害生物を効果的に誘引させることができる。しかも、これら複数の土中センサが電源に対して有線で接続されていることから、土中センサを電池で電力供給した場合の電池寿命を心配する必要がなくなり、土中センサを長期に亘って安定して稼働させることができる。
また、本発明の土中センサシステムでは、例えば請求項11に記載されているように、前記制御手段は、前記振動検知手段による前記振動検出値が前記基準値に達するまで該振動検出値の出力レベルを増幅させて、該振動検出値が該基準値を超えたら、該出力レベルの増幅を止めて該出力レベルを維持させつつ該振動検出値を所定時間測定した後に、まだ該振動検出値が該基準値を超えていたら、前記判定手段によって前記有害生物が前記誘引手段に居ると判定させる構成が採用されても良い。
このような土中センサシステムでは、例えば、振動検知手段の本来の出力特性やノイズ等に起因して振動検出値の信号出力が弱い場合にも、振動検出値の出力レベルの増幅を利用して、有害生物を一層確実に検知することができる。また、有害生物が居ないにもかかわらずノイズ等に起因して出力レベルが一時的に大きくなった場合にも、振動検出値を所定時間測定した後に、再度振動検出値が基準値を超えているか判定するステップを設けてあることから、有害生物の誤検知がより確実に防止される。
また、本発明の土中センサシステムでは、例えば請求項12に記載されているように、前記制御手段は、前記判定手段が前記有害生物が前記誘引手段に居ると判定した後に、更に前記振動検知手段による前記振動検出値を所定時間測定し、その結果得られた該振動検出値の蓄積データを前記記録手段に記録させる構成が採用されても良い。
このような土中センサシステムでは、判定手段が有害生物が誘引手段に居ると判定した後の振動検出値の蓄積データを記録手段に記録させることによって、有害生物の誘引手段における活動を分析するのに有益なデータを収集することができる。それ故、有害生物の対策処理が一層有利に図られる。
また、本発明の土中センサシステムでは、例えば請求項13に記載されているように、前記制御手段は、前記水分検知手段における一対の前記電極に高周波電圧を印加して、これら一対の電極の静電容量を小さくすることで、水分の検知範囲を広げて、前記誘引手段の周囲の湿度も検知できるようにし、更に前記判定手段が前記有害生物が該誘引手段に居ると判定した際の前記振動検知手段による前記振動検出値と該湿度とを関連付けして得られた蓄積データを前記記録手段に記録させる構成が採用されても良い。
このような土中センサシステムでは、一対の電極に高周波電圧を印加して静電容量を小さくすることで水分の検知範囲が広がるという静電容量式の水分検知の特性を利用して、湿度も検知することができるのであり、それによって、別途湿度センサを新たに用意する必要もないことから、システムの低コスト化や省スペース化が図られる。そこにおいて、本発明によれば、振動検出値と湿度とを関連付けして得られた蓄積データを記録手段に記録させることによって、特定の湿度における有害生物の活動データを収集できる。これにより、例えば、有害生物としてシロアリを検知する場合に、ヤマトシロアリがイエシロアリよりも比較的に高い湿度を好む習性があることを利用して、所定の湿度よりも高い時にヤマトシロアリと判別し、低い時にイエシロアリと判別することで、シロアリの種別を判定することも可能となる。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の内容を分かりやすく説明するため、本発明と関連性の低い部材および部位などについては、必要に応じて図示や説明を省略する。
図1,2には、本発明の一実施形態としてのシロアリセンサ10を備えた土中センサシステムとしてのシロアリセンサシステム12の全体構成が示されている。シロアリセンサシステム12は、電源14や複数のシロアリセンサ10、制御手段としてのコントロールユニット16、記録手段としてのサーバ18、ルータ20、通信回路22、ユーザやシロアリ駆除業者に報知する報知手段としてのパーソナルコンピュータ(以下、PCとも略す。)やスマートフォン(以下、スマホとも略す。)、タブレット端末(以下、タブレットとも略す。)24,26を含んで構成されている。
なお、図2では、本発明を簡潔に説明する目的上、保護対象物としての家屋28内に設置された1つの電源14に対して、複数のシロアリセンサ10やコントロールユニット16、ルータ20がまとめて接続されたように図示されているが、実際には、これらの機器は、それぞれ対応した電圧、電流を備え、かつ適切な位置に配置された電源に接続されている。
詳細には、シロアリセンサ10の複数は、家屋28の周囲の土中30に埋設されている。シロアリセンサ10は、図3にも示されているように、収容手段としてのステーション32を備えている。
ステーション32は、筒状本体34と蓋体36を含んで構成されており、例えばPETやFRP等の硬質の合成樹脂材料を用いて形成されている。筒状本体34は、上方に向かって開口する細長の略有底円筒形状を有しており、その周壁部38や下底部40には有害生物としてのシロアリが十分に通る大きさの通用孔42が複数貫設されている。下底部40は、上方から下方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパ形状を有している。また、筒状本体34の開口部分の縁部には、軸直角方向に広がる略円環板形状のフランジ状部44が一体形成されている。
ステーション32の蓋体36は、下方に向かって開口する略有底円筒形状を有しておりその周壁部46が筒状本体34の周壁部38よりも一回り小さな円筒形状とされている。また、蓋体36の上底部48は、上方に向かって膨らむ略円形ドーム状を呈している。
特に本実施形態では、筒状本体34の開口部分の周壁部38の内周面に係合溝としての雌ねじ50が形成されていると共に、蓋体36の周壁部46の外周面に係合突起としての雄ねじ52が形成されている。これら筒状本体34と蓋体36を互いに固定するには、例えば、蓋体36の周壁部46を筒状本体34の開口部分から周壁部38の内側に挿し込んで、筒状本体34を動かないように支持した状態で蓋体36を中心軸回りの一方向(例えば時計回り)に回転させて、蓋体36の雄ねじ52を筒状本体34の雌ねじ50に螺着させる。これにより、筒状本体34の開口部分が蓋体36で覆蓋されて、雌雄の両ねじ50,52が螺着により筒状本体34の軸方向で互いに引っ掛かり合うことによって、蓋体36が筒状本体34に固定される。
このようなステーション32は、筒状本体34のフランジ状部44が地表と略面一とされた状態で周壁部38が土中30に挿し込まれて埋設されている。なお、筒状本体34の土中30への埋設状態で、蓋体36の上底部48は、地表から盛り上がるようにして土中30から露呈されている。かかるステーション32内には、誘引手段としての餌木54が収容されている。
餌木54は、略円柱形状を有しており、シロアリが好むクロマツやアカマツ、エゾマツ、カラマツ、柳、モミなどの各種の木材を適宜に用いて形成されている。特に本実施形態の餌木54には、シロアリを駆除する薬剤としてのベイト剤が含まれている。ベイト剤の成分としては、例えば、シロアリに対して微量で高い脱皮阻害効果を有するビストリフルロン(bistrifluron)やヘキサフルムロン(hexaflumuron)、ノビフルムロン(noviflumuron)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、アザジラクチン(azadirachtin)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、ルフェヌロン(lufenuron)等の公知のキチン合成阻害剤が好適に採用される。このような餌木54は、ステーション32内において筒状本体34と略同心円状に配されて、筒状本体34の下底部40に載置されている。また、餌木54と筒状本体34の周壁部38との間には、全周に亘って隙間56が設けられている。
また、ステーション32内には、対象部品に信号を入出力したり電力を供給したりする信号処理装置58が収容されている。信号処理装置58は、略円柱形状のハウジング60を備え、ハウジング60内に図示しない回路基板を内蔵している。回路基板には、信号の入出力や電力供給を行うための回路に加え、信号を無線で送受信するための回路が形成されている。また、信号処理装置58には、信号を無線で送受信する回路と接続されたアンテナ62がハウジング60から蓋体36の上底部48内に向かって突設されて、アンテナ62の先端部分が地面よりも上方に位置している。また、ハウジング60の下端部には、ハウジング60よりも大径のフランジ状部64が一体形成されている。このような信号処理装置58は、ハウジング60の周壁部がリング状のゴムパッキン66を介して蓋体36の周壁部46内に嵌め込まれることで、蓋体36に固定されている。
さらに、餌木54の上端部には、振動検知手段としての圧電装置68が取り付けられている。圧電装置68は、圧電セラミックスを一対の電極で挟んだ公知の構造とされており、シロアリが餌木54を食害したり歩行したり等した際に生じる振動に基づき、圧電セラミックスが変位乃至は変形することで生じる電圧変化を利用して、シロアリの活動に伴う餌木54の振動を検知できるようになっている。圧電装置68の一対の電極が配線70を介して信号処理装置58の回路基板と接続されていることによって、圧電装置68で得られた振動検出値が信号処理装置58に入力される。
更にまた、本実施形態では、信号処理装置58のフランジ状部64と圧電装置68との軸方向対向面間にコイルスプリング72が介装され、餌木54および圧電装置68がコイルスプリング72を介して信号処理装置58ひいてはステーション32の蓋体36によって上方から下方に押圧されている。即ち、餌木54および圧電装置68は、コイルスプリング72の付勢力に基づいて、筒状本体34の下底部40に押え付けられている。これにより、餌木54および圧電装置68が、蓋体36の上底部48と筒状本体34の下底部40との間で軸方向に支持されて、軸直角方向の位置ずれが抑制されるようになっている。しかも、餌木54および圧電装置68がコイルスプリング72を介して信号処理装置58ひいては蓋体36側に支持されていることによって、例えば、人や乗り物等が蓋体36の上に載って蓋体36が軸方向に大きく振動したとしても、その振動がコイルスプリング72の弾性変形で減衰されることにより、圧電装置68へのノイズが抑制されるようになっている。
信号処理装置58の回路基板には、水分検知手段としての静電容量式水分計74が接続されている。静電容量式水分計74は、一対の電極76,76が互いに所定距離を隔てて配された形態で、絶縁材料としての樹脂フィルム78に対して導電性インクを用いて印刷されてなる高分子フィルム構造とされている。また、静電容量式水分計74は、樹脂フィルム78が全体として細長の略矩形状を有していると共に、その厚さ寸法が100分の数ミリから10分の数ミリ程度の非常に薄いものとされており、一対の電極76,76および樹脂フィルム78の全体に亘って可撓性を有している。
静電容量式水分計74は、信号処理装置58の回路基板からハウジング60を突出してステーション32の筒状本体34の下底部40に向かって垂れ下がった状態で信号処理装置58、ひいてはステーション32の蓋体36に固定されており、筒状本体34の周壁部38と餌木54の間の隙間56に配置されている。特にステーション32が筒状本体34の軸方向が鉛直方向と略平行になるように土中30に埋設されることに伴い、静電容量式水分計74における隙間56に配された部分が、鉛直方向と略平行に延びるようにして、かつ餌木54や筒状本体34の周壁部38と大きく干渉しないようにして配されている。
ところで、本実施形態の静電容量式水分計74は、一対の電極76,76に電流を流して、その電気容量の変化を水分値に置き換えて表示する水分計である。具体的には、水分の検出回路として電極76,76の静電容量が発振条件の一要素となる発振回路が信号処理装置58の回路基板に形成されており、この電極76,76の容量の変化により発振周波数(例えば100kHz〜20MHz)が変化して、その周波数や周期から水分を検出する方式を採用している。かかる検出方式によれば、水分以外の固体も検出され得るが、比誘電率(物質の誘電率と真空の誘電率との比)に関して固体の多くは10以下であるのに対して水は80もあるため、比誘電率の大きな差異を利用して、水分を検出することができる。前述したように、静電容量式水分計74は、ステーション32内で筒状本体34の周壁部38と餌木54との間の隙間56に収容されていることにより、かかる隙間56の水分を検知できる。ここで、隙間56を区画形成する餌木54の水分の変化が隙間56の水分の変化と比例することから、隙間56の水分検出値に基づいて餌木54の水分を検知できる。
このような構造とされたシロアリセンサ10の複数(本実施形態では20個)は、図1(a),(b)にも示されるように、家屋28の周りを囲うようにして互いに所定距離を隔てて土中30に埋設されている。また、各シロアリセンサ10は、ケーブル80を用いて家屋28の電源14(具体的に本実施形態では、屋外用電源)に対して接続されている。ケーブル80は、電源14から家屋28の周囲の土中30に埋設されて、各シロアリセンサ10に分配され、各信号処理装置58の回路基板に接続されている。特に本実施形態では、図3にも示されるように、ケーブル80をステーション32内の信号処理装置58と接続するために、ステーション32を通す孔として、シロアリを土中30からステーション32内の餌木54に案内するために形成された通用孔42が利用されている。各シロアリセンサ10の圧電装置68や静電容量式水分計74は、信号処理装置58やケーブル80を通じて電源14から電力が供給されるようになっている。
また、シロアリセンサシステム12において、コントロールユニット16が家屋28内に設置されている。コントロールユニット16は、CPUやROM、RAM、無線LANの通信部等を含むマイクロコンピュータ(以下、マイコンとも略す。)を備えており、電源14と接続されている。コントロールユニット16は、無線LANの通信部や各シロアリセンサ10のアンテナ62、信号処理装置58の回路基板を通じて、圧電装置68や静電容量式水分計74の入出力を制御するようになっている。
また、特に図示されていないが、コントロールユニット16内のマイコンのROMには、基準値設定手段としての基準値設定プログラムが書き込まれている。この基準値設定プログラムは、シロアリセンサ10の圧電装置68により得られた振動検出値に基づいてシロアリが餌木54に居るか否かを判定するための基準値を設定するものである。更に、マイコンのROMには、基準値補正手段としての基準値補正プログラムが書き込まれている。この基準値補正プログラムは、シロアリセンサ10の静電容量式水分計74で得られた水分検出値の変化に応じて、前述の基準値を適宜に補正するものである。更にまた、マイコンのROMには、判定手段としての判定プログラムが書き込まれている。この判定プログラムは、圧電装置68により得られた振動検出値が、基準値設定プログラムによって設定され且つ基準値補正プログラムによって適宜に補正された基準値を超えた場合に、シロアリが餌木54に居ると判定するものである。
また、家屋28には、無線/有線LAN接続が可能なルータ20や光ファイバ等の通信回線22を含んでなるインターネット環境が配備されている。更に、家屋28には、ユーザのPCやスマホ、タブレット24が置かれている。これらPCやスマホ、タブレット24のうち常設型でない、いわゆるノートPCやスマホ、タブレットは、家屋28のインターネット環境が届かない範囲にある場合には、自身の通信機能によってサーバ18と通信接続することができる。
さらに、家屋28から離れた場所には、シロアリ駆除業者がシロアリの検知データを管理するためのデータ管理センタ82が設けられている。このデータ管理センタ82には、サーバ18が設けられている。サーバ18は、CPUやROM、RAM、無線LANの通信部等を含むマイコンを備えており、各シロアリセンサ10の圧電装置68で得られた振動検出値や、静電容量式水分計74で得られた水分検出値、上述の基準値設定プログラムで設定され且つ上述の基準値補正プログラムで適宜に補正された基準値、上述の判定プログラムにおいてシロアリが餌木54に居ると判定された判定情報からなる各種データを、家屋28のルータ20や通信回線22を通じて、コントロールユニット16から受信してRAMに記録するようになっている。また、データ管理センタ82には、シロアリ駆除業者のPCやスマホ、タブレット26が置かれている。これらPCやスマホ、タブレット26は、前述のユーザのPCやスマホ、タブレット24と同様に、データ管理センタ82のインターネット環境が届かない範囲にある場合には、自身の通信機能によってサーバ18と通信接続することができる。
このようなサーバ18は、通信回線22や自身の無線通信機能を通じて、上述の各種データをユーザやシロアリ駆除業者のPCやスマートフォン、タブレット24,26に提供することによって、各種データをユーザやシロアリ駆除業者に報知するようになっている。なお、各種データの報知方法としては、サーバ18がユーザやシロアリ駆除業者のPCやスマートフォン、タブレット24,26に対して電子メール等で自動配信したり、或いは、別途作成したWebサイトに各種データを表示して、ユーザやシロアリ駆除業者の要求に応じて、ユーザやシロアリ駆除業者がPCやスマートフォン、タブレット24,26を操作してWebサイトにアクセスできるようにしたりすることが適宜に選択され得る。
特に本実施形態では、コントロールユニット16は、圧電装置68による振動検出値が基準値に達するまで振動検出値の出力レベルを増幅させて、振動検出値が基準値を超えた場合に、出力レベルの増幅を止める。そして、コントロールユニット16は、当該出力レベルを維持させつつ振動検出値を所定時間測定した後に、まだ振動検出値が基準値を超えていた場合に、判定プログラムによってシロアリが餌木54に居ると判定させている。
また、本実施形態では、コントロールユニット16は、判定プログラムがシロアリが餌木54に居ると判定した後に、更に圧電装置68による振動検出値を所定時間測定し、その結果得られた振動検出値の蓄積データをサーバ18に記録させている。
さらに、本実施形態では、コントロールユニット16は、静電容量式水分計74における一対の電極76,76に高周波電圧を印加して、これら一対の電極76,76の静電容量を小さくすることで、水分の検知範囲を広げて、餌木54の周囲である隙間56の湿度も検知できるようにしている。更に、コントロールユニット16は、判定プログラムがシロアリが餌木54に居ると判定した際の圧電装置68による振動検出値と湿度とを関連付けてして得られた蓄積データをサーバ18に記録させている。
以下に、シロアリセンサ10を備えたシロアリセンサシステム12における一使用例について説明するが、本発明はかかる使用例に限定されるものでない。
先ず、シロアリセンサシステム12を現場に設置する前の準備段階として、コントロールユニット16では、予め、圧電装置68によってシロアリが餌木54に居ない場合の振動検出値や、シロアリを人為的に餌木54にくっ付けて、シロアリが餌木54を歩行したり食害したりして生じた振動検出値の複数を蓄積する。また、コントロールユニット16では、上述の振動検出値の複数を蓄積するのと並行して、シロアリセンサ10が置かれた環境の湿度を人為的に変化させたり、シロアリセンサ10を水没させたりした状態で、静電容量式水分計74によって隙間56の水分検出値の複数を蓄積する。そして、コントロールユニット16では、これら振動検出値や水分検出値の複数の蓄積データから、各特定の水分検出値においてシロアリが餌木54に居る場合の振動検出値と居ない場合の振動検出値との境界を定めて、かかる境界を基に各水分検出値におけるシロアリ判定の基準値を設定することで基準値設定プログラムを作成する。
次に、複数のシロアリセンサ10をケーブル80と接続して家屋28の周囲の土中30に埋設すると共に、コントロールユニット16やケーブル80、サーバ18等を家屋28に設置し、更にサーバ18をデータ管理センタ82に設置して、通信や電力供給環境を整える。これにより、シロアリセンサシステム12を現場に設置する。
そして、コントロールユニット16は、静電容量式水分計74を用いて隙間56の水分検出値から餌木54の水分検出値を計算する。この餌木54の水分検出値と前述の現場設置前に作成した基準値設定プログラムに基づいて、基準値を設定する。また、コントロールユニット16は、圧電装置68による振動検出値が基準値に達するまで振動検出値の出力レベルを増幅させて、各シロアリセンサ10の圧電装置68による振動検出値を常時測定する。そこで、コントロールユニット16は、振動検出値が基準値を超えた場合に、出力レベルの増幅を止めて、当該出力レベルを維持させつつ振動検出値を所定時間測定した後に、まだ振動検出値が基準値を超えていた場合に、基準値補正プログラムに移行する。基準値補正プログラムでは、前述の基準値設定プログラムで基準値を設定した際に計算した餌木54の水分検出値と、静電容量式水分計74で測定した最新の水分検出値とを比較し、水分検出値が誤差範囲内であれば、判定プログラムに移行する一方、水分検出値が誤差範囲外であれば、基準値を前述の基準値設定プログラムにおける餌木54の水分検出値に応じた基準値に合わせるように補正して、判定プログラムに移行する。更に、コントロールユニット16は、判定プログラムにおいて、改めて振動検出値が基準値を超えているか否かを判定し、超えている場合には、シロアリが餌木54に居ると判定する一方、超えていない場合には、シロアリが餌木54に居ないと判定する。コントロールユニット16は、シロアリが居るか否かの判定情報や前述の振動検出値と湿度とを関連付けして得られたデータ等をサーバ18やルータ20、通信回線22を通じて、ユーザやシロアリ駆除業者のPCやスマホ、タブレット24,26に電子メールで定期的に報知する。
上述の如き構造とされたシロアリセンサ10を備えたシロアリセンサシステム12においては、家屋28に侵入するおそれのあるシロアリをシロアリセンサ10の餌木54に誘引して、シロアリが餌木54を食害することにより、ベイト剤による脱皮阻害効果でシロアリを防除することができる。しかも、当該システム12を通じて、シロアリが餌木54に居ることをユーザやシロアリ駆除業者に報知することによって、餌木54を新たなものと交換したり、家屋28にシロアリの更なる防除対策を施したりすることができる。
そこにおいて、本実施形態では、周囲の環境変化に伴い振動の検出対象である餌木54の水分の状態(含水率)が変わってしまっても、基準値補正プログラムが当該水分の変化に応じて基準値を補正することから、水分変化による餌木54の振動の変化に起因するシロアリの誤検知が確実に防止される。
それ故、本実施形態のシロアリセンサ10によれば、シロアリの誤検知の原因となる餌木54の水分変化を抑えるために、センサ内の湿度を特別に抑制する必要がないことから、一般に土中30において湿気を好むシロアリを好適に誘引することができる。しかも、餌木54の水分変化に起因する振動の検出能力を補うために、極めて高精度な振動検出機器を採用する必要もなく、本実施形態のような公知の圧電装置68の採用で十分なのであり、その結果、簡単な構成に基づき低コストで、検知精度の高いセンサを実現できる。
また、本実施形態では、餌木54の水分を検知する水分検知手段として厚さ寸法が薄くかつ可撓性の静電容量式水分計74が採用されていることから、シロアリの誘引スペース(隙間56)を著しく阻害することなく、センサ10の小型化、軽量化が図られるのであり、しかも、シロアリが静電容量式水分計74に触れても、可撓性に基づいて、シロアリに大きな負荷がかからないようになっていることから、シロアリの誘引力が一層好適に保持される。
さらに、本実施形態では、シロアリセンサ10が電源14に対してケーブル80を用いて接続されていることによって、電池で電力供給した場合の電池寿命を心配することなく、振動検出値を常時測定することも可能となり、シロアリの優れた検出データが得られる。
更にまた、本実施形態では、振動検出値と湿度とを関連付けして得られた蓄積データをサーバ18に記録させることによって、特定の湿度におけるシロアリの活動データを収集できる。これにより、ヤマトシロアリがイエシロアリよりも比較的に高い湿度を好む習性があることを利用して、所定の湿度よりも高い時にヤマトシロアリと判別し、低い時にイエシロアリと判別することで、シロアリの種別を判定することも可能となる。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものでなく、実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能である。
例えば、前記実施形態では、シロアリセンサ10のステーション32の筒状本体34が、土中30に全体的に埋まっていたが、一部だけ埋まっていても良く、或いは、家屋28のコンクリート材等に穴を開けて埋設することも可能である。それによって、前記実施形態のシロアリセンサ10は、土中30から蟻道を伸ばして水を運び木材等を加害するヤマトシロアリやイエシロアリなどの土壌性シロアリを検知することに限らず、家具の中に紛れて屋内に侵入したり、空中を飛来して家屋の屋根裏などから屋内に侵入したりするアメリカカンザイシロアリやダイコクシロアリなどの乾材シロアリを検知することも可能である。
また、前記実施形態では、圧電装置68や静電容量式水分計74の入出力を制御するコントロールユニット16が家屋28内に設けられていたが、例えば、コントロールユニット16をシロアリセンサ10内に収容配置しても良い。
さらに、前記実施形態では、餌木54の水分を検知するにあたって、餌木54の周囲にある隙間56の水分を検知することで、餌木54の水分を間接的に検知するようになっていたが、例えば、超音波式水分計を餌木54に設置することで、餌木54の水分を直椄に検知することも可能である。
更にまた、本実施形態のような公知の構造の静電容量式水分計74では、一般に、一対の電極76,76に交流電流を流す場合が多いが、直流電流を流しても良い。直流電流を流すと、一瞬だけ電流が電極76,76に流れた後に流れなくなるが、例えば、コントロールユニット16のマイコン制御により直流電流の極性を交互に変えて流すことで、交流電流と同じように一対の電極76,76に電流を流すことができる。このように直流電流を流した場合には、直流用の部品が採用されて、部品コストを安く抑える利点がある。
また、前記実施形態では、圧電装置68に餌木54の振動以外の振動を抑制する弾性部材として、コイルスプリング72が用いられていたが、板バネやゴムなどのその他の弾性体が採用可能である。
さらに、前記実施形態では、筒状本体34と蓋体36において係合突起および係合溝からなる係合構造が、雌雄のねじ50,52の螺着構造によるものだったが、これに限定されるものでなく、例えば、筒状本体34の内周面と蓋体36の外周面に、それぞれ周方向に離隔して複数の突起を設けて、蓋体36を筒状本体34に挿し込む際に、蓋体36側の突起と筒状本体34側の突起を、周方向の突起間の隙間を利用して互いに干渉しないように軸方向に行き交わせた後に、筒状本体34と蓋体36を中心軸回りに相対的に回転させて、突起を互いに軸方向で係止することで係合構造を実現しても良い。この場合に、筒状本体34と蓋体36の何れか一方の突起が係合突起となり、係合突起と重なる他方の突起の面が係合溝となる。
更にまた、前記実施形態では、シロアリセンサ10への電力の供給が、ケーブル80を用いた電源14によるものであったが、例えば、将来的に、コストが安くて、小型であり、寿命の長い電池が開発されれば、電池を採用しても良い。
また、前記実施形態では、ケーブル80が、ステーション32の筒状本体34の周壁部42に貫設されたシロアリの通用孔42を利用してステーション32内に通されるようになっていたが、ケーブル80を通す孔として筒状本体34の下底部40の通用孔42が利用されても良く、或いは、ステーション32の蓋体36等に別途設けた孔を用いても良い。
さらに、前記実施形態のシロアリセンサ10ないしはシロアリセンサシステム12には、外気、土中30又は家屋28内の温度を測定する温度センサを設けることも可能であり、それによって、温度や湿度、振動検出値を関連付けして得られた蓄積データをサーバ18に記録させて、特定の温度におけるシロアリの活動データを収集することもできる。
加えて、前記実施形態では、本発明の土中センサがシロアリを検知するシロアリセンサ10に適用される具体例が示されていたが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、ネズミなどの小動物その他の有害生物を検知するセンサに適用可能であるのは勿論のこと、有害生物の検知に加えて、振動検知手段による振動検出機能を利用して地震を検知する地震センサに本発明の土中センサを適用することも可能である。
10…シロアリセンサ、16…コントロールユニット、28…家屋、30…土中、54…餌木、68…圧電装置、74…静電容量式水分計
Claims (13)
- 少なくとも一部が土中に埋設される土中センサであって、
保護対象物に侵入して害を為すおそれのある有害生物を誘引する誘引手段と、
前記誘引手段の振動を検知する振動検知手段と、
前記誘引手段の水分を検知する水分検知手段と、
前記振動検知手段により得られた振動検出値に基づいて前記有害生物が前記誘引手段に居るか否かを判定するための基準値を設定する基準値設定手段と、
前記水分検知手段で得られた水分検出値の変化に応じて、前記基準値を適宜に補正する基準値補正手段と、
前記振動検出値が、前記基準値設定手段によって設定され且つ前記基準値補正手段によって適宜に補正された前記基準値を超えた場合に、前記有害生物が前記誘引手段に居ると判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする土中センサ。 - 前記土中に埋設される筒状の周壁部を有し、その周壁部に前記有害生物が該土中から該周壁部の内側に入るための通用孔が設けられていると共に、前記誘引手段を該周壁部の内側に収容する収容手段を備えている請求項1に記載の土中センサ。
- 前記水分検知手段が、所定の距離を隔てて対向配置された一対の電極を含んで構成されて、前記収容手段の前記周壁部と前記誘引手段との間に配置されており、これら一対の電極に電圧を印加して一対の該電極の静電容量の変化に基づいて該周壁部と該誘引手段との間の水分ひいては該誘引手段の前記水分を検知する請求項2に記載の土中センサ。
- 前記水分検知手段は、一対の前記電極が固着される絶縁材料を含んで構成されており、これら一対の電極および絶縁材料における少なくとも一部が可撓性を有している請求項3に記載の土中センサ。
- 前記収容手段は、前記土中に埋設される前記周壁部を備え且つ該土中に埋設された状態で地表に開口する開口部分を備えた筒状本体と、該筒状本体の該開口部分を覆蓋する蓋体とを含んで構成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の土中センサ。
- 前記筒状本体の前記開口部分の前記周壁部と前記蓋体との何れか一方には、係合溝が形成されていると共に、該筒状本体の該開口部分の該周壁部と該蓋体との他方には、係合突起が形成されていて、該筒状本体の該開口部分を該蓋体で覆蓋する際に、該係合突起が該係合溝に嵌め込まれて、該係合突起および該係合溝が該筒状本体の軸方向で互いに引っ掛かり合うことで、該蓋体が該筒状本体に固定される請求項5に記載の土中センサ。
- 前記水分検知手段が前記収容手段の前記蓋体に固定されて該蓋体から吊り下げられた状態で、該収容手段の前記筒状本体の内側に収容配置されている請求項5又は6に記載の土中センサ。
- 前記有害生物がシロアリであって、前記誘引手段が該シロアリの餌となる木質の餌木からなり、該餌木には該シロアリを駆除する薬剤が含まれている請求項1乃至7の何れか一項に記載の土中センサ。
- 請求項1乃至8の何れか一項に記載の土中センサと、
前記土中センサにおける前記振動検知手段や前記水分検知手段、前記基準値設定手段、前記基準値補正手段、前記判定手段のうちの少なくとも一つの入出力を制御する制御手段と、
前記振動検知手段で得られた前記振動検出値や、前記水分検知手段で得られた前記水分検出値、前記基準値設定手段で設定され且つ前記基準値補正手段で適宜に補正された前記基準値、前記判定手段において前記有害生物が前記誘引手段に居ると判定された判定情報からなる各種データのうちの少なくとも一つのデータを前記制御手段から受信して記録する記録手段と、
前記記録手段で得られた前記データを人に報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする土中センサシステム。 - 前記土中センサの複数が、前記保護対象物の周囲若しくは該保護対象物の下の前記土中にそれぞれ埋設されていると共に、これら複数の土中センサが電源に対してケーブルを用いて接続されている請求項9に記載の土中センサシステム。
- 前記制御手段は、前記振動検知手段による前記振動検出値が前記基準値に達するまで該振動検出値の出力レベルを増幅させて、該振動検出値が該基準値を超えたら、該出力レベルの増幅を止めて該出力レベルを維持させつつ該振動検出値を所定時間測定した後に、まだ該振動検出値が該基準値を超えていたら、前記判定手段によって前記有害生物が前記誘引手段に居ると判定させる請求項9又は10に記載の土中センサシステム。
- 前記制御手段は、前記判定手段が前記有害生物が前記誘引手段に居ると判定した後に、更に前記振動検知手段による前記振動検出値を所定時間測定し、その結果得られた該振動検出値の蓄積データを前記記録手段に記録させる請求項11に記載の土中センサシステム。
- 前記制御手段は、前記水分検知手段における一対の前記電極に高周波電圧を印加して、これら一対の電極の静電容量を小さくすることで、水分の検知範囲を広げて、前記誘引手段の周囲の湿度も検知できるようにし、更に前記判定手段が前記有害生物が該誘引手段に居ると判定した際の前記振動検知手段による前記振動検出値と該湿度とを関連付けして得られた蓄積データを前記記録手段に記録させる請求項9乃至12の何れか一項に記載の土中センサシステム。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A80 | Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80 Effective date: 20160820 |