(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る電力管理システム1(図2参照)は、需要家施設100(図2参照)における使用電力量の管理を行うためのシステムである。ここでいう「需要家施設」は、電力の需要家が管理し、使用する施設を意味する。本実施形態では、オフィスビル、商業施設、病院、福祉施設、ホテル又は工場等の非住宅の施設を需要家施設100の例として説明するが、需要家施設100は、例えば集合住宅、又は戸建住宅等であってもよい。
電力管理システム1は、主な機能として、需要家施設100の最大需要電力の増加を抑制するためのデマンド制御機能を有している。ここでいう「最大需要電力」は、受電点デマンド電力、又はデマンド値とも呼ばれており、所定(例えば、30分毎)のデマンド時限T1(図1参照)における平均使用電力(使用電力の平均値)のうち、各月(1ヶ月間)において最大となる値である。そして、過去1年間の最大需要電力のうちで最大となる値は「契約電力」と呼ばれ、この契約電力に基づいて需要家(需要家施設100の管理者、又は使用者)が電力会社等の電気事業者に支払う電気料金が決まる制度がある。このような制度のもとでは、電力管理システム1が需要家施設100の最大需要電力を抑制することは、電気料金の抑制につながる。要するに、電力管理システム1は、デマンド制御機能により、需要家施設100でのデマンド時限T1における平均使用電力の増加を抑制し、「最大需要電力」を現在の契約電力以下に抑えて、電気料金の上昇を抑制可能である。平均使用電力の増加の抑制は、基本的には、需要家施設100の機器5(図2参照)を制御することで実現される。
ここにおいて、最大需要電力はデマンド時限T1における平均使用電力の1ヵ月間の最大値であるが、デマンド時限T1における平均使用電力は、デマンド時限T1における使用電力量(使用電力の時間積分値)に定数(所定の係数)を掛けることにより表される。例えば、デマンド時限T1が30分間である場合には、デマンド時限T1の使用電力量がx〔kWh〕を2倍することで1時間の使用電力量である2x〔kWh〕が得られる。このときのデマンド時限T1における平均使用電力は、デマンド時限T1における使用電力量に定数(ここでは「2」)を掛けた値、つまり2x〔W〕となる。したがって、デマンド制御において、デマンド時限T1における使用電力量を、ある目標値(デマンド目標値)以下に抑制することは、デマンド時限T1における平均使用電力を、ある電力目標値(デマンド目標値の2倍)以下に抑制することと等価である。そこで、本実施形態に係る電力管理システム1は、デマンド制御として、デマンド時限T1の使用電力量がデマンド目標値Vp(図1参照)を超えないように需要家施設100の機器5を制御することにより、デマンド時限T1の平均使用電力の増加を抑制する。
さらに、本実施形態に係る電力管理システム1は、指定期間Td1(図1参照)における使用電力の削減を要請する節電要請に応じて、指定期間Td1における需要家施設100の使用電力を削減するデマンドレスポンス(Demand Response)機能を有している。ここでいう「節電要請」は、DR(Demand Response)要請とも呼ばれており、例えば、電力需給がひっ迫、又は卸電力価格が高騰した際に、電力会社等の電気事業者が発信元となり、需要家に対して使用電力の削減を要請するための指示である。需要家施設100の使用電力の削減は、基本的には、需要家施設100の機器5(図2参照)を制御することで実現される。すなわち、電力管理システム1では、デマンドレスポンス機能により、一時的な使用電力の削減を急に求められた場合であっても、使用電力の削減を実現可能である。
上述したように、電力管理システム1は、需要家施設100の最大需要電力の増加を抑制するためのデマンド制御機能と、節電要請に応じて指定期間Td1における需要家施設100の使用電力を削減するためのデマンドレスポンス機能とを有している。本実施形態に係る電力管理システム1は、これら2種類の機能(デマンド制御機能、及びデマンドレスポンス機能)を個別に有するのではなく、1つのルーチン(Routine)の中で一まとめにして行う。具体的には、電力管理システム1は、節電要請に基づいて、指定期間Td1にデマンド目標値Vpを変更することによって、デマンド制御機能に関する処理の中でデマンドレスポンス機能を実現する。言い換えれば、電力管理システム1は、使用電力量がデマンド目標値Vpを超えないように機器5を制御するデマンド制御機能で用いられるパラメータ(デマンド目標値Vp)を変更することで、指定期間Td1における使用電力の削減を実現できる。したがって、電力管理システム1では、需要家施設100の最大需要電力の増加を抑制するためのデマンド制御機能を利用することで、効率的かつ簡単に、指定期間Td1における需要家施設100の使用電力を削減するためのデマンドレスポンス機能を実現できる。
本実施形態では、一例として、電力会社等の電気事業者と需要家(需要家施設100の管理者、又は使用者)との間に電力アグリゲータが介在して、電力の取引が行われるモデルを想定する。電力アグリゲータは、複数の需要家を管理する事業者であって、電気事業者との間でネガワット(Negawatt Power)取引を行うことで対価(Incentive)を得る。さらに詳しくは、電力アグリゲータは、使用電力の削減の要請である節電要請を電気事業者から受けると、自身の管理する複数の需要家の各々に対して、需要家施設100での使用電力を削減させるための指示を出す。この指示に従い複数の需要家施設100にて使用電力の削減が実施されると、電力アグリゲータは、これら複数の需要家施設100での使用電力の削減の実績に応じて、電気事業者から対価を得る。なお、本実施形態では、需要家施設100は電力系統のみから電力の供給を受けており、太陽光発電設備等の分散電源が需要家施設100に設けられていない場合を例示する。
(2)構成
以下、本実施形態に係る電力管理システム1の構成について、図2を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る電力管理システム1は、図2に示すように、コントローラ2、及びサーバ装置3にて構成されている。コントローラ2は、需要家施設100に設けられている。コントローラ2には、計測システム4、及び複数の機器51,52,53,…5nが接続されている。
複数の機器5の各々は、需要家施設100に設けられた、例えば、照明機器、空調機器等の電気機器(設備を含む)であって、コントローラ2の制御対象となる電気機器である。以下、複数の機器51,52,53,…5nをとくに区別しない場合には、複数の機器51,52,53,…5nの各々を単に「機器5」と呼ぶ。
計測システム4は、少なくとも需要家施設100の使用電力量を計測可能に構成されている。ここでいう「需要家施設100の使用電力量」は、需要家施設100で使用(消費)された総使用電力量であって、電力系統から需要家施設100に供給される総電力量である。つまり、計測システム4は、需要家施設100の全ての電気機器で使用された電力量の合計値を、使用電力量として計測する。ここで、計測システム4での使用電力量の計測対象となる電気機器は、コントローラ2の制御対象となる機器5以外の電気機器を含んでいてもよい。
計測システム4は、例えば、需要家施設100のキュービクル61に付設された電力量計、及び需要家施設100の分電盤62に付設された計測ユニットを有している。これにより、計測システム4は、少なくともキュービクル61に付設された電力量計にて、需要家施設100の使用電力量を計測することができる。また、計測システム4は、分電盤62に付設された計測ユニットにて、分岐回路毎に使用電力量を計測することもできる。計測システム4は、需要家施設100の使用電力量、及び分岐回路毎の使用電力量を表す情報を、使用電力情報としてコントローラ2に出力する。さらに、計測システム4には警報器7が接続されており、例えば、使用電力量がデマンド目標値Vpを超えそうになると、計測システム4は警報器7に警報を音声出力させる。
コントローラ2は、例えば、計測システム4、及び複数の機器51,52,53,…5nと通信可能に構成されている。コントローラ2は、計測システム4から、使用電力情報を取得する機能を有している。さらに、コントローラ2は、複数の機器51,52,53,…5nを制御対象とし、これら複数の機器51,52,53,…5nを制御する機能を有している。コントローラ2は、例えば、機器5に対して制御コマンドを送信することによって、機器5のオン/オフ、及び機器5の動作状態を制御する。コントローラ2は、例えば、照明機器からなる機器51については、明るさを調節する調光制御等が可能であって、空調機器からなる機器52については、温度設定値、風量等の制御が可能である。
コントローラ2と、計測システム4及び機器5の各々との間の通信方式は、例えば、RS232C、RS485等の有線通信、又はWi−Fi(登録商標)あるいは免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の無線通信である。この種の小電力無線については、用途等に応じて使用する周波数帯域や空中線電力などの仕様が各国で規定されている。日本国においては、920MHz帯又は420MHz帯の電波を使用する小電力無線が規定されている。
また、コントローラ2は、例えばインターネット等のネットワーク81に対し、ルータ82を介して接続されている。ネットワーク81には、サーバ装置3が接続されている。コントローラ2は、ネットワーク81経由でサーバ装置3と双方向に通信可能に構成されている。コントローラ2について詳しくは「(3)詳細」の欄で説明する。
サーバ装置3は、コントローラ2と共に電力管理システム1を構成する。サーバ装置3は、本実施形態では一例として、電力アグリゲータによって管理、運営されるコンピュータである。つまり、図2では、サーバ装置3及びコントローラ2は1つずつしか図示していないが、実際には、1つのサーバ装置3に対して、電力アグリゲータが管理する複数の需要家の施設(需要家施設100)に設けられた複数のコントローラ2が通信可能に接続される。さらに、ネットワーク81には、需要家施設100外に設けられた外部装置9が接続されている。サーバ装置3は、ネットワーク81経由で外部装置9と双方向に通信可能に構成されている。
外部装置9は、電力会社等の電気事業者によって管理、運営されるコンピュータである。詳しくは後述するが、外部装置9は、指定期間Td1における使用電力の削減を要請する節電要請を、サーバ装置3に対して送信する。例えば、電力需給がひっ迫した際には、外部装置9が発信元となり、サーバ装置3に節電要請が送信される。
なお、ネットワーク81には、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の情報端末が接続されていてもよい。この場合、コントローラ2は、例えば、計測システム4から取得した使用電力情報、及び機器5の制御状況を表す情報等を、サーバ装置3経由で、情報端末に送信することが好ましい。これにより、需要家施設100の内外を問わず、情報端末にて、需要家施設100に関する情報(使用電力情報等)を表示し、見える化を図ることができる。
(3)詳細
次に、本実施形態に係る電力管理システム1の詳細について、図3を参照して説明する。
電力管理システム1は、第1取得部11と、第2取得部12と、制御部13と、記憶部14と、を備えている。本実施形態では、図3に示す電力管理システム1の構成要素のうち、第2取得部12のみがサーバ装置3に設けられ、第2取得部12以外の構成要素は全てコントローラ2に設けられている。そのため、第2取得部12と制御部13との間の情報のやり取りは、サーバ装置3とコントローラ2との間の通信によって実現される。
第1取得部11は、需要家施設100の使用電力量を表す使用電力情報を取得する。具体的には、第1取得部11は、計測システム4と通信することにより、計測システム4から使用電力情報を取得する。
第2取得部12は、指定期間Td1における使用電力の削減を要請する節電要請を、需要家施設100外に設けられた外部装置9から通信により取得する。つまり、第2取得部12は、外部装置9と通信することにより、外部装置9から節電要請を取得する。
制御部13は、デマンド制御部131と、省エネ制御部132と、変更部133と、復帰部134と、を有している。制御部13は、マイクロコンピュータを主構成とし、マイクロコンピュータが、デマンド制御部131、省エネ制御部132、変更部133、及び復帰部134として機能する。
デマンド制御部131は、所定のデマンド時限T1(図1参照)における使用電力量がデマンド目標値Vp(図1参照)を超えないように、第1取得部11で取得された使用電力情報に基づいて需要家施設100の機器5を制御するデマンド制御を行う。すなわち、デマンド制御部131は、「(1)概要」の欄で説明したように、需要家施設100の最大需要電力の増加を抑制するためのデマンド制御機能を実現する。ここで、所定期間(例えば1日)を、各々が所定の時間幅(例えば30分)となる複数の時間帯に分割した場合における、分割後の複数の時間帯の各々が、デマンド時限T1である。具体的には、デマンド制御部131は、デマンド時限T1毎に、デマンド時限T1の終了時点での需要家施設100の使用電力量がデマンド目標値Vp以下に収まるように、機器5を制御する。需要家施設100の使用電力量がデマンド目標値Vp以下に収まるか否かの判断は、デマンド時限T1毎に行われるので、この判断に用いられる需要家施設100の使用電力量は、デマンド時限T1の開始時点でゼロにリセットされる。
デマンド制御の一例として、照明機器からなる機器51について、調光レベル(明るさ)を下げたり、状況に応じて消灯させたりする制御がある。また、デマンド制御の他の例として、空調機器からなる機器52について、冷房運転時の温度設定値を上げたり、状況に応じて停止させたりする制御がある。この種のデマンド制御は、複数段階(例えば8段階)に分けて実行され、段階を追うごとに機器5の消費電力を抑えることができる。
省エネ制御部132は、機器5の消費電力を抑えるための省エネ制御を行う。ここで、省エネ制御部132は、省エネ制御を行う省エネモードと、省エネ制御を行わない解除モードと、を含む複数の動作モードを有している。本実施形態では、省エネ制御部132の動作モードは、省エネモード及び解除モードの2つのみである。つまり、省エネ制御部132の動作モードが解除モードであれば、コントローラ2が機器5の省エネ制御を行わないため、機器5はユーザの操作に従って自由に動作する。一方、省エネ制御部132の動作モードが省エネモードであれば、コントローラ2が機器5の省エネ制御を実行するため、機器5の消費電力を抑えることができる。省エネ制御部132の動作モードは、例えば、ユーザの操作によって切替可能である。
省エネ制御の一例として、照明機器からなる機器51について、照度センサの検知結果に基づいて調光レベル(明るさ)を自動的に調節する制御がある。また、省エネ制御の他の例として、空調機器からなる機器52について、温度センサの検知結果に基づいて温度設定値、風量等を自動的に調節する制御がある。この種の省エネ制御は、ユーザの快適性を損なわない範囲で、機器5の消費電力を抑えることができる。
変更部133は、第2取得部12で取得された節電要請に基づいて、指定期間Td1(図1参照)にデマンド目標値Vpを低下させるようにデマンド目標値Vpを変更する。ここでは、変更部133は、第2取得部12で取得された節電要請に基づいて、指定期間Td1にデマンド目標値Vpを第1値V1(図1参照)から第2値V2(図1参照)に変更する。つまり、変更部133は、指定期間Td1が開始すると、デマンド制御部131でのデマンド制御に用いられるデマンド目標値Vpを、第1値V1から、第1値V1よりも低い第2値V2(<V1)へと変更する。具体的には、変更部133は、現時点(現在時刻)が指定期間Td1の開始時点になると、記憶部14に記憶されている「デマンド目標値」を、第1値V1から第2値V2へと更新する。
復帰部134は、変更部133にて変更されたデマンド目標値Vpを、指定期間Td1の終了後に、変更前の値に復帰させる。ここでは、復帰部134は、第2取得部12で取得された節電要請に基づいて、指定期間Td1の終了後にデマンド目標値Vpを第2値V2から第1値V1(図1参照)に変更する。つまり、復帰部134は、指定期間Td1が終了すると、デマンド制御部131でのデマンド制御に用いられるデマンド目標値Vpを、第2値V2から、第2値V2よりも高い第1値V1(>V2)へと変更する。具体的には、復帰部134は、現時点(現在時刻)が指定期間Td1の終了時点になると、記憶部14に記憶されている「デマンド目標値」を、第2値V2から第1値V1へと更新する。
ここにおいて、第1値V1、及び第2値V2は、例えば、第2取得部12を備えるサーバ装置3にて生成される。具体的には、サーバ装置3は、需要家施設100の契約電力(過去1年間の最大需要電力のうちで最大となる値)を基準にして、例えば、契約電力の95%が第1値V1となるように、第1値V1を算出する。また、サーバ装置3は、第2取得部12で取得した節電要請を解析し、節電要請の解析結果を用いて第1値V1から第2値V2を算出する。例えば、節電要請にて使用電力を15%削減することが要請された場合、サーバ装置3は、第1値V1の85%が第2値V2となるように、第2値V2を算出する。コントローラ2は、サーバ装置3で算出された第1値V1、及び第2値V2を受信し、デマンド目標値Vpの設定(変更、復帰)を行う。また、この構成に限らず、第1値V1、及び第2値V2は、例えば、コントローラ2で生成されてもよいし、記憶部14に予め記憶されていてもよい。
記憶部14は、「デマンド目標値」、及び「予約情報」を記憶する。図3では、記憶部14に記憶されている「デマンド目標値」、及び「予約情報」を、破線で囲まれたブロックとして表記している。記憶部14に記憶されている「デマンド目標値」は、現在のデマンド目標値Vp、つまり、デマンド制御部131でのデマンド制御に使用中のデマンド目標値Vpである。記憶部14に記憶されている「予約情報」は、第2取得部12が取得した節電要請に基づく将来の指定期間Td1からなる予約期間、及び予約期間における変更後のデマンド目標値Vpを表す情報である。そのため、記憶部14に予約情報が予め記憶されていれば、変更部133及び復帰部134は、予約情報に従って、デマンド目標値Vpを変更又は復帰させることができる。
なお、電力管理システム1に含まれるコントローラ2及びサーバ装置3は、いずれもコンピュータ(マイクロコンピュータを含む)を主構成としている。そのため、コンピュータのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータのプロセッサで実行することにより、コンピュータを上述した構成の電力管理システム1として機能させることができる。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネットなどの電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカードなどの記録媒体に記録されて提供されてもよい。
(4)動作
次に、本実施形態に係る電力管理システム1の動作について、図1を参照して説明する。以下では、基本動作、指定期間Td1の開始時の動作、及び指定期間Td1の終了時の動作、予約動作の各々について説明する。図1は、横軸を時間軸として、需要家施設100の使用電力量〔kWh〕を表すグラフである。図1の例では、11:30〜13:30の2時間についての、需要家施設100の使用電力量〔kWh〕を表している。なお、「(1)概要」の欄で説明したように、デマンド時限T1における平均使用電力はデマンド時限T1における使用電力量に定数を掛けた値であるから、図1の縦軸を平均使用電力に読み替えても図1と同様のグラフになる。
ここでは、一例として、節電要請にて、12:00〜13:00の1時間が指定期間Td1として指定され、この指定期間Td1における使用電力を15%削減することが要請された場合を想定する。
(4.1)基本動作
まず、電力管理システム1の基本動作について説明する。
本実施形態では、デマンド時限T1は、11:30〜12:00、12:00〜12:30、12:30〜13:00、13:00〜13:30、…というように30分単位で設定されている。そのため、図1において、例えば、11:30〜12:00のデマンド時限T1に着目すると、需要家施設100の使用電力量は、デマンド時限T1の開始時点である11:30から、時間経過に伴って徐々に増加している。ここで、電力管理システム1は、デマンド制御機能を有するので、デマンド時限T1毎に、デマンド時限T1の終了時点での需要家施設100の使用電力量がデマンド目標値Vp以下に収まるように、デマンド制御部131にて機器5を制御している。図1では、デマンド目標値Vpを1点鎖線で示している。
具体的には、デマンド制御部131は、第1取得部11で取得された使用電力情報に基づいて、デマンド時限T1の終了時点での需要家施設100の使用電力量を予測電力量として求めている。そして、デマンド制御部131は、求めた予測電力量が記憶部14に記憶されているデマンド目標値Vpを超えないように、機器5を制御(デマンド制御)する。より詳しくは、デマンド制御部131は、デマンド時限T1内において所定の判定周期(例えば1分周期)で予測電力量を求め、予測電力量とデマンド目標値Vpとを比較することにより、予測電力量がデマンド目標値Vp以下か否かを判断する。ここで、予測電力量の算出方法は様々であり、一例として、デマンド時限T1の開始時点から現時点までの使用電力量、及び使用電力量の変化率(増加率)を用いて、予測電力量を算出する方法がある。ただし、この方法に限らず、デマンド制御部131は、例えば、各種センサ(照度センサ、温度センサ等)の検知結果、及び過去(例えば、前年同月等)の使用電力量の実績値等を用いて、予測電力量を算出してもよい。
そして、デマンド制御部131は、予測電力量がデマンド目標値Vpを超えていれば、機器5の消費電力を抑えるように機器5の制御を実行し、予測電力量がデマンド目標値Vp以下であれば、機器5の制御を実行しない。図1中において、「C1」、「C2」、「C3」は、それぞれ1段階目の制御、2段階目の制御、3段階目の制御が行われたタイミングを表している。つまり、11:30〜12:00のデマンド時限T1においては、デマンド制御部131は、11:45頃、及び11:52頃の2度にわたって予測電力量がデマンド目標値Vpを超えると判断しており、その都度、機器5のデマンド制御を実行している。なお、デマンド制御部131は、予測電力量がデマンド目標値Vpを超えると判断した場合、警報器7に警報を音声出力させてもよい。
ここにおいて、11:30〜12:00のデマンド時限T1は、指定期間Td1(12:00〜13:00)には該当しないため、このデマンド時限T1においては、デマンド目標値Vpはデフォルト値である第1値V1(>V2)に設定されている。そのため、11:30〜12:00のデマンド時限T1においては、デマンド制御部131によって、需要家施設100の使用電力量は、デマンド時限T1の終了時点でもデマンド目標値Vpである第1値V1以下に抑えられる。デマンド目標値Vpのデフォルト値である第1値V1は、契約電力(過去1年間の最大需要電力のうちで最大となる値)を基準に設定されており、例えば、契約電力の95%が第1値V1とされる。
ところで、デマンド制御部131は、デマンド時限T1の開始時点から待機時間が経過するまでのマスク期間Tm1を除き、第1取得部11で取得された使用電力情報に基づいてデマンド時限T1の終了時点での使用電力量を予測電力量として求めている。ここで、待機時間はデマンド時限T1の時間幅よりも短く、本実施形態では、一例として、デマンド時限T1の時間幅が30分であるのに対し、待機時間は10分に設定されている。すなわち、予測電力量の算出に用いられる使用電力量は、デマンド時限T1の開始時点でゼロにリセットされるので、デマンド時限T1の開始直後においては、予測電力量の予測精度が不十分であり、予測電力量の揺らぎが大きくなる。そこで、デマンド制御部131は、デマンド時限T1の開始時点から待機時間が経過するまでのマスク期間Tm1には予測電力量を求めず、マスク期間Tm1の経過後に予測電力量の算出を開始する。そのため、11:30〜12:00のデマンド時限T1においては、デマンド制御部131は、11:40までのマスク期間Tm1には予測電力量とデマンド目標値Vpとの比較を行わず、11:40以降に予測電力量とデマンド目標値Vpとを比較する。
また、予測電力量の比較対象としては、例えば、遮断警報閾値、及び注意警報閾値等が設定されていてもよい。遮断警報閾値、及び注意警報閾値は、デマンド目標値Vpを基準に決定される値であって、例えば、遮断警報閾値がデマンド目標値Vpの80%の値からなり、注意警報閾値がデマンド目標値Vpの70%の値からなる。この場合において、デマンド制御部131は、予測電力量が遮断警報閾値、又は注意警報閾値を超えると判断した場合に、警報器7に警報を音声出力させることが好ましい。これら遮断警報閾値、及び注意警報閾値等は、デマンド目標値Vpを基準に決定されるので、デマンド目標値Vpが第1値V1であれば、第1値V1を基準とした値となる。
なお、本実施形態では、省エネ制御部132の動作モードは、省エネ制御を行う省エネモードと、省エネ制御を行わない解除モードとの間で、ユーザの操作によって切替可能である。そのため、デマンド時限T1、及び指定期間Td1にかかわらず、省エネ制御部132は省エネモードと解除モードとのいずれでも動作可能である。
(4.2)指定期間の開始時の動作
次に、指定期間Td1の開始時における電力管理システム1の動作について説明する。
図1に示すように、指定期間Td1には、変更部133によって、デマンド目標値Vpを低下させるようにデマンド目標値Vpが変更される。ここでは、12:00〜13:00が指定期間Td1として指定されているので、12:00が指定期間Td1の開始時点である。そのため、変更部133は、現時点が指定期間Td1の開始時点(つまり12:00)になると、記憶部14に記憶されている「デマンド目標値」を、第1値V1から第2値V2(<V1)へと変更する。これにより、指定期間Td1に該当する12:00〜12:30、及び12:30〜13:00の2つのデマンド時限T1においては、デマンド制御部131は、変更後のデマンド目標値Vp(=V2)を用いて、デマンド制御を行う。
デマンド目標値Vpの変更後の電力管理システム1の動作は、デマンド目標値Vpが第1値V1と第2値V2とで異なる点を除き、上述した基本動作と同じである。なお、デマンド目標値Vpが変更されると、デマンド目標値Vpを基準に決定される値(例えば、遮断警報閾値、及び注意警報閾値等)も変更されるので、指定期間Td1には、遮断警報閾値、及び注意警報閾値等も低下する。
ところで、本実施形態では、変更部133は、指定期間Td1中に第2取得部12が節電要請を取得した場合、デマンド目標値Vpを更に低下させるようにデマンド目標値Vpを変更する。つまり、変更部133は、指定期間Td1中か否かにかかわらず、第2取得部12が取得した節電要請に基づいてデマンド目標値Vpを変更するように構成されている。そのため、例えば、1回目の節電要請が出された後、1回目の節電要請で指定された指定期間Td1内において、更なる使用電力の削減が必要になり、2回目の節電要請が出されたような場合、デマンド目標値Vpを更に低下させることが可能である。この場合に、デマンド目標値Vpは、第2値V2より低い値に変更される。
(4.3)指定期間の終了時の動作
次に、指定期間Td1の終了時における電力管理システム1の動作について説明する。
図1に示すように、指定期間Td1の終了後には、復帰部134によって、デマンド目標値Vpは指定期間Td1が開始する前の値(第1値V1)に戻される。ここでは、12:00〜13:00が指定期間Td1として指定されているので、13:00が指定期間Td1の終了時点である。そのため、復帰部134は、現時点が指定期間Td1の終了時点(つまり13:00)になると、記憶部14に記憶されている「デマンド目標値」を、第2値V2から第1値V1(>V2)へと変更する。これにより、指定期間Td1の終了後である13:00〜13:30のデマンド時限T1においては、デマンド制御部131は、復帰後のデマンド目標値Vp(=V1)を用いて、デマンド制御を行う。
デマンド目標値Vpの復帰後の電力管理システム1の動作は、上述した基本動作と同じである。なお、デマンド目標値Vpが変更されると、デマンド目標値Vpを基準に決定される値(遮断警報閾値、及び注意警報閾値等)も変更されるので、指定期間Td1が終了すると、遮断警報閾値、及び注意警報閾値等も指定期間Td1が開始する前の値に戻る。
(4.3)予約動作
次に、予約情報を用いた電力管理システム1の予約動作について説明する。
本実施形態に係る電力管理システム1は、記憶部14に「予約情報」を記憶できるので、この「予約情報」を用いることで、将来の指定期間Td1である予約期間にデマンド目標値Vpを変更することが可能である。すなわち、将来の指定期間Td1からなる予約期間についての節電要請を、第2取得部12が取得した場合、記憶部14には予約期間、及び予約期間における変更後のデマンド目標値Vpを表す情報が、予約情報として記憶される。
図1の例において、例えば、10:00の時点で、将来の指定期間Td1(12:00〜13:00)を指定する節電要請を第2取得部12が取得した場合、記憶部14には、予約情報が記憶される。この予約情報は、12:00〜13:00の指定期間Td1に、デマンド目標値Vpを第2値V2に変更することを表す情報である。この場合、変更部133は、記憶部14に記憶されている予約情報に従って、予約期間(12:00〜13:00)にデマンド目標値Vpを変更する。同様に、復帰部134は、記憶部14に記憶されている予約情報に従って、予約期間(12:00〜13:00)の終了後に、デマンド目標値Vpを復帰させる。
このような予約動作により、例えば、サーバ装置3の通信エラー等によって、第2取得部12がリアルタイムに節電要請を受信できない状況であっても、変更部133では、指定期間Td1におけるデマンド目標値Vpを変更することが可能である。
(5)利点
以上説明したように、本実施形態に係る電力管理システム1は、第1取得部11と、第2取得部12と、デマンド制御部131と、変更部133と、復帰部134と、を備える。第1取得部11は、需要家施設100の使用電力量を表す使用電力情報を取得する。第2取得部12は、指定期間Td1における使用電力の削減を要請する節電要請を、需要家施設100外に設けられた外部装置9から通信により取得する。デマンド制御部131は、所定のデマンド時限T1における使用電力量がデマンド目標値Vpを超えないように、第1取得部11で取得された使用電力情報に基づいて需要家施設100の機器5を制御するデマンド制御を行う。変更部133は、第2取得部12で取得された節電要請に基づいて、指定期間Td1にデマンド目標値Vpを第1値V1から第2値V2に変更する。復帰部134は、指定期間Td1の終了後に、デマンド目標値Vpを、第2値V2から第1値V1に復帰させる。
この構成によれば、第2取得部12で取得された節電要請に基づいて、デマンド制御部131でのデマンド制御に用いられるデマンド目標値Vpが、変更部133にて第1値V1から第2値V2に変更される。そのため、電力管理システム1では、一時的な使用電力の削減を急に求められた場合でも使用電力の削減を実現可能である。さらに、指定期間Td1の終了後には、復帰部134により、デマンド目標値Vpが第2値V2から第1値V1に復帰する。そのため、指定期間Td1の終了後に、ユーザが気付かずにデマンド目標値Vpが第2値V2のまま電力管理システム1が運用されることを防止できる。しかも、電力管理システム1は、節電要請に基づいて、指定期間Td1にデマンド目標値Vpを変更することによって、デマンド制御機能に関する処理の中でデマンドレスポンス機能を実現する。よって、電力管理システム1では、需要家施設100の最大需要電力の増加を抑制するためのデマンド制御機能を利用することで、効率的かつ簡単に、指定期間Td1における需要家施設100の使用電力を削減するためのデマンドレスポンス機能を実現できる。
(6)変形例
電力管理システム1は、マイクロコンピュータを主構成とするコントローラ2と、コンピュータからなるサーバ装置3とを備えることは必須ではなく、1台の装置で構成されていてもよい。反対に、電力管理システム1は、3台以上の装置に分散して設けられていてもよい。さらに、電力管理システム1の少なくとも一部の機能は、例えば、クラウド(クラウドコンピューティング)によって実現されてもよい。
また、指定期間Td1を決定する情報は、節電要請に含まれていてもよいし、節電要請に含まれていなくてもよい。指定期間Td1を決定する情報が節電要請に含まれていない場合、例えば、電力アグリゲータが、電気事業者から節電要請を受けて、複数の需要家施設100に対する指令の内容を、指定期間Td1を含めて決定する。一例として、電力アグリゲータは、地区Aの需要家施設100に指定期間Td1を12:00〜13:00として20%の使用電力の削減を指示し、地区Bの需要家施設100に指定期間Td1を13:00〜14:00として20%の使用電力の削減を指示する。
また、指定期間Td1の開始時点、及び指定期間Td1の終了時点は、デマンド時限T1の区切(開始時点又は終了時点)と一致していなくてもよい。さらに、指定期間Td1は、デマンド時限T1よりも長くても、又は短くてもよいし、デマンド時限T1と同じ時間長さであってもよい。つまり、例えば、デマンド時限T1が12:00〜12:30、12:30〜13:00、…というように30分単位で設定されている場合に、指定期間Td1が12:15〜12:45、又は12:10〜12:30のように設定されていてもよい。この場合、デマンド時限T1の途中であっても、指定期間Td1が開始又は終了することにより、デマンド目標値Vpが変更されることがある。
また、電力管理システム1は、サーバ装置3を構成要素に含んでいなくてもよい。この場合、節電要請を取得する第2取得部12は、サーバ装置3ではなくコントローラ2に設けられることになる。この場合における第2取得部12は、節電要請を基にサーバ装置3にて生成(変更)されたデマンド目標値Vpを、サーバ装置3から取得する。言い換えれば、第2取得部12は、節電要請を直接的に取得するのではなく、サーバ装置3を介して間接的に取得することになる。そして、変更部133は、第2取得部12が取得した節電要請(デマンド目標値Vp)に従って、デマンド制御で用いられるデマンド目標値Vpを変更する。この構成においても、電力管理システム1は、第2取得部12にて節電要請を取得し、変更部133にて節電要請に基づいてデマンド目標値Vpを変更することになる。
また、電力管理システム1は、計測システム4、及び制御対象となる複数の機器5を構成要素に含んでいてもよい。電力管理システム1は、外部装置9を構成要素に含んでいてもよい。
また、変更部133による変更前のデマンド目標値Vpである第1値V1の方が、変更部133による変更後のデマンド目標値Vpである第2値V2よりも低くてもよい。この場合、指定期間Td1の開始に合わせてデマンド目標値Vpが上昇し、指定期間Td1の終了に合わせてデマンド目標値Vpが低下することになる。
また、デマンド制御部131は、デマンド制御において、デマンド時限T1における平均使用電力を、電力目標値(デマンド目標値Vpの定数倍)以下に抑制していてもよい。すなわち、「(1)概要」の欄で説明したように、デマンド時限T1における平均使用電力は、デマンド時限T1における使用電力量に定数を掛けた値である。よって、例えば、デマンド時限T1が30分間の場合、デマンド目標値Vpの2倍を電力目標値とすれば、デマンド時限T1の平均使用電力を電力目標値以下に制御することは、デマンド時限T1の使用電力量をデマンド目標値Vp以下に抑制することと等価である。平均使用電力を電力目標値以下にするか使用電力量をデマンド目標値Vp以下にするかは、デマンド目標値Vp又は電力目標値の設定次第で任意に変更できる。そのため、平均使用電力を電力目標値以下にするか使用電力量をデマンド目標値Vp以下にするかに技術上の差異はない。よって、デマンド時限T1における使用電力量がデマンド目標値Vpを超えないように機器5を制御するデマンド制御には、デマンド時限T1における平均使用電力が電力目標値を超えないように機器5を制御する制御も含まれる。
また、実施形態1において、使用電力量、及びデマンド目標値Vp等の2値間の比較にて、「以下」としているところは、2値が等しい場合と、2値の一方が他方を下回っている場合との両方を含むことを意味している。ただし、これに限らず、「以下」は、2値の一方が他方を下回っている場合のみを含む「未満」と同義であってもよい。つまり、2値が等しい場合を含むか否かは、閾値等の設定次第で任意に変更できるので、「以下」か「未満」かに技術上の差異はない。同様に、「以上」においても「超える」と同義であってもよい。
(実施形態2)
本実施形態に係る電力管理システム1は、指定期間Td1の終了後における動作が実施形態1に係る電力管理システム1とは相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る電力管理システム1の動作を示すグラフである。図4は、横軸を時間軸として、需要家施設100の使用電力量〔kWh〕を表すグラフである。また、図4では、グラフの上方に省エネ制御部132の動作モードを表記している。
本実施形態では、省エネ制御部132は、指定期間Td1が終了してデマンド目標値Vpが第2値V2から第1値V1に復帰した時点から、少なくとも回復時間が経過するまでの回復期間Tr1においては、解除モードで動作するように構成されている。本実施形態では、一例として、回復時間は10分に設定されている。つまり、図4の例では、指定期間Td1の終了時点である13:00から、回復時間(ここでは10分)が経過する13:10までの期間が回復期間Tr1である。
すなわち、省エネ制御部132の動作モードは、回復期間Tr1以外においては、ユーザの操作によって省エネモードと解除モードとの間で任意に切り替えられるが、回復期間Tr1には強制的に解除モードになる。具体的には、省エネ制御部132は、現時点(現在時刻)が回復期間Tr1の開始時点、つまり指定期間Td1の終了時点(図4の例では13:00)になると、強制的に解除モードで動作する。図4の例では、13:00までは省エネ制御部132は省エネモードで動作しているため、回復期間Tr1の開始時点にて、省エネ制御部132の動作モードが省エネモードから解除モードに切り替わることになる。回復期間Tr1が終了すると、つまり現時点(現在時刻)が回復期間Tr1の終了時点になると、省エネ制御部132の動作モードは、回復期間Tr1の開始前の動作モード(図4の例では省エネモード)に復帰する。
また、本実施形態では、デマンド制御部131は、回復期間Tr1には、待機時間を短くするように構成されている。すなわち、回復期間Tr1においては、図4に示すように、マスク期間Tm2は短くなる。本実施形態では、一例として、回復期間Tr1以外における待機時間は10分であるのに対し、回復期間Tr1における待機時間は7分に設定されている。すなわち、デマンド制御部131は、省エネ制御部132が解除モードで動作する回復期間Tr1においては、予測電力量とデマンド目標値Vpとの比較を行わないマスク期間Tm2を短くすることで、早期にデマンド制御を開始することが可能となる。
図4は、13:20の時点でのグラフを表しており、デマンド制御部131で予測される将来の使用電力量を2点鎖線で示している。つまり、図4の例では、マスク期間Tm2の終了後の「C1」のタイミングで、1段階目の制御(デマンド制御)が実行されることにより、予想電力量がデマンド目標値Vp以下となるように下方修正されている。
なお、本実施形態において、待機時間を極限(ゼロ)まで短くすると、マスク期間Tm2が無いことと等価になる。この場合、回復期間Tr1、つまり指定期間Td1の終了直後においては、デマンド時限T1が開始すると、すぐに予測電力量とデマンド目標値Vpとの比較が行われる。
以上説明したように、本実施形態に係る電力管理システム1は、機器5の消費電力を抑えるための省エネ制御を行う省エネモードと、省エネ制御を行わない解除モードと、を含む複数の動作モードを有する省エネ制御部132を更に備えている。省エネ制御部132は、指定期間Td1が終了してデマンド目標値Vpが第2値V2から第1値V1に復帰した時点から、少なくとも回復時間が経過するまでの回復期間Tr1においては、解除モードで動作するように構成されている。この構成によれば、使用電力の削減が要請される指定期間Td1の終了後には、省エネ制御部132が、自動的に解除モードで動作することになる。そのため、例えば、指定期間Td1中にデマンド目標値Vpが低下した影響で機器5の動作が制限された場合に、指定期間Td1の終了後には、省エネ制御の制限を受けることなく機器5を動作させることができる。一例として、空調機器からなる機器52について、指定期間Td1中に冷房運転時の温度設定値を上げるようなデマンド制御が実行された場合、指定期間Td1の終了後に、機器52を最大出力で動作させて室内を急速に冷やすこと等が可能になる。よって、指定期間Td1中に一時的に快適性が損なわれたとしても、指定期間Td1の終了後には快適性を早急に回復可能となる。
また、本実施形態のように、デマンド制御部131は、マスク期間Tm2を除き、第1取得部11で取得された使用電力情報に基づいてデマンド時限T1の終了時点での使用電力量を予測電力量として求めることが好ましい。マスク期間Tm2は、デマンド時限T1の開始時点から待機時間が経過するまでの期間である。この場合、デマンド制御部131は、予測電力量がデマンド目標値Vpを超えないようにデマンド制御を行うことが好ましい。この場合、デマンド制御部131は、回復期間Tr1には、待機時間を短くするように構成されていることが好ましい。この構成によれば、省エネ制御部132が解除モードで動作する回復期間Tr1には、マスク期間Tm2が短くなり、早期にデマンド制御を開始することが可能となるので、回復期間Tr1での使用電力量の急激な増加に対処しやすくなる。ただし、この構成は電力管理システム1に必須の構成ではなく、デマンド制御部131は回復期間Tr1に待機時間を短くしなくてもよい。
実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
(実施形態3)
本実施形態に係る電力管理システム1は、復帰部134が、指定期間Td1の終了後、所定の判定条件を満たした場合に、デマンド目標値Vpを第2値V2から第1値V1に復帰させるように構成されている点で実施形態1に係る電力管理システム1とは相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
そもそも復帰部134は、指定期間Td1の終了後に、デマンド目標値Vpを復帰させればよく、指定期間Td1が終了して直ちにデマンド目標値Vpを復帰させなくてもよい。本実施形態では、復帰部134は、指定期間Td1の終了後、直ちにデマンド目標値Vpを復帰させるのではなく、所定の判定条件を満たして初めて、デマンド目標値Vpを復帰させる。本実施形態では、ネットワーク81(図2参照)に接続された情報端末がユーザの特定の操作を受け付けることをもって、判定条件を満たしたこととする。具体的には、電力管理システム1は、指定期間Td1が終了すると、情報端末に対して確認画面を表示(確認表示)させ、この確認画面上で「復帰」が選択される操作がされると、判定条件を満たしたと判断する。
図5は、本実施形態に係る電力管理システム1の復帰部134の動作を示すフローチャートである。
すなわち、復帰部134は、指定期間Td1が終了したか否かを判断する(S1)。指定期間Td1が終了していなければ(S1:No)、復帰部134は処理S1に移行する。指定期間Td1が終了すると(S1:Yes)、復帰部134は、情報端末に確認画面を表示させる確認表示を実行する(S2)。確認画面は一例として、「節電要請期間が終了しました。デマンド目標値を元に戻しますか?」という内容のメッセージと、「はい」、又は「いいえ」の選択ボタン(アイコン)を含む画面である。この確認画面上で復帰が選択される(つまり、「はい」の選択ボタンが選択される)と(S3:Yes)、復帰部134は、判定条件を満たしたと判断し、デマンド目標値Vpを第2値V2から第1値V1に復帰させる(S4)。一方、確認画面上で復帰が選択されなければ(つまり、「いいえ」の選択ボタンが選択される)と(S3:No)、復帰部134は、判定条件を満たしていないと判断し、指定期間Td1を所定の延長時間(例えば、1分)だけ延長し(S5)、処理S1に移行する。
以上説明したように、本実施形態に係る電力管理システム1では、復帰部134は、指定期間Td1の終了後、所定の判定条件を満たした場合に、デマンド目標値Vpを第2値V2から第1値V1に復帰させるように構成されている。この構成によれば、例えば、指定期間Td1において特に快適性を損なうことなく使用電力の削減を達成できたような場合に、デマンド目標値Vpを低下させたままで電力管理システム1を運用し、継続して使用電力の削減を図ることができる。
ただし、判定条件は、情報端末がユーザの特定の操作を受け付けることに限らず、例えば、各種センサ(照度センサ、温度センサ等)の検知結果、又は過去(例えば、前年同月等)の使用電力量の実績値等に関して、判定条件が定められてもよい。一例として、復帰部134は、温度センサの検知結果(室温)が所定の最適範囲から外れたことをもって、判定条件を満たすと判断してもよい。
実施形態3で説明した構成は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)、又は実施形態2で説明した構成と適宜組み合わせて適用可能である。