以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る圧力センサの構成を例示する模式的斜視図である。
図1では、図を見やすくするために、絶縁部分を省略し、導電部分が主に描かれている。
図2は、第1の実施形態に係る圧力センサの一部の構成を例示する模式的平面図である。
図1に表したように、本実施形態に係る圧力センサ310は、基体71aと、センサ部72(第1センサ部72A)と、を備える。センサ部72は、基体71aの上に設けられる。センサ部72(第1センサ部72A)は、第1トランスデュース薄膜64Aと、第1歪検知素子50Aと、を含む。第1トランスデュース薄膜64Aは、膜面64a(第1膜面)を有する。第1トランスデュース薄膜64Aは、可撓性である。第1トランスデュース薄膜64Aは、外部から圧力が印加されたときに撓み、その上に形成された歪検知素子50に歪としてトランスデュースする機能を有する。外部圧力は、圧力そのものもあれば、音波または超音波などによる圧力も含む。音波または超音波などの場合は、圧力センサは、マイクロフォンとして機能することになる。
トランスデュース薄膜64となる薄膜は、外部圧力によって撓む部分よりも外側に連続して形成されている場合もある。本願明細書においては、固定端によって囲まれ、膜厚がある一定の厚さで固定端よりも薄く、外部圧力によって撓むようになっている部位を、トランスデュース薄膜と呼ぶ。
第1トランスデュース薄膜64Aは、縁部64egにおいて基体71aに固定される。第1歪検知素子50Aは、第1膜面上に設けられる。第1歪検知素子50Aの構成については、後述する。
基体71aには、空洞部70が形成されている。基体71aにおける空洞部70以外の部分が非空洞部71に対応する。非空洞部71は、空洞部70と並置される。
空洞部70は、非空洞部71を形成する材料が設けられていない部分である。空洞部70内は、真空(1気圧よりも低い低圧状態)でも良く、空洞部70内に、空気や不活性ガスなどの気体が充填されていても良い。また、空洞部70内に、液体が充填されていても良い。空洞部70内には、第1トランスデュース薄膜64Aが撓むことができるように、変形可能な物質が配置されていても良い。
第1トランスデュース薄膜64Aに外部から圧力(音、超音波等を含む)が印加されたときに、第1トランスデュース薄膜64Aが撓む。これに伴い、第1トランスデュース薄膜64Aの上に配置された歪センサ(センサ部72)に歪が発生する。このように、第1トランスデュース薄膜64Aは、圧力の信号をセンサ部72に伝達(トランスデュース)し、センサ部72において、圧力の信号が歪の信号に変換される。
第1トランスデュース薄膜64Aは、空洞部70の上方に配置され、縁部64egにおいて基体71aに固定される。
ここで、膜面64a(第1膜面)に対して平行な面をX−Y平面とする。膜面64aが平面でない場合は、膜面64aの縁部64egを含む平面をX−Y平面とする。X−Y平面に対して垂直な方向をZ軸方向とする。
図1及び図2に表したように、圧力センサ310において、基体71a、トランスデュース薄膜64(第1トランスデュース薄膜64A)、第1歪検知素子50A、第1配線57(配線57a〜57d)及び第2配線58(配線58a〜58d)が設けられている。この例では、複数の歪検知素子50(歪検知素子50a〜50d)が設けられている。第1歪検知素子50Aは、複数の歪検知素子50のうちのいずれかである。例えば、第1歪検知素子50Aとして、歪検知素子50aが用いられる。
すなわち、センサ部72(第1センサ部72A)は、第2歪検知素子50Bをさらに含む。第2歪検知素子50Bは、膜面64a上に設けられる。第2歪検知素子50Bとして、例えば歪検知素子50bが用いられる。この例では、第1歪検知素子50Aと第2歪検知素子50Bとを通る直線は、膜面64aの重心64bを通る。具体的には、第1歪検知素子50Aの重心と、第2歪検知素子50Bの重心と、を通る直線は、重心64bを通る。第1歪検知素子50Aと膜面64aの重心64bとの間の距離は、第2歪検知素子50Bと膜面64aの重心64bとの間の距離とは異なる。
センサ部72は、第3歪検知素子50Cをさらに含む。第3歪検知素子50Cは、膜面64a上に設けられる。第3歪検知素子50Cとして、例えば歪検知素子50cが用いられる。この例では、第1歪検知素子50Aと第2歪検知素子50Bと第3歪検知素子50Cを通る直線は、膜面64aの重心64bを通る。具体的には、第1歪検知素子50Aの重心と、第2歪検知素子50Bの重心と、第3歪検知素子50Cの重心と、を通る直線は、重心64bを通る。第3歪検知素子50Cと膜面64aの重心64bとの間の距離は、第1歪検知素子50Aと膜面64aの重心64bとの間の距離及び第2歪検知素子50Bと膜面64aの重心64bとの間の距離とは異なる。
センサ部72は、第4歪検知素子50Dをさらに含む。第4歪検知素子50Dは、膜面64a上に設けられる。第4歪検知素子50Dとして、例えば歪検知素子50dが用いられる。この例では、第1歪検知素子50Aと第2歪検知素子50Bと第3歪検知素子50Cと第4歪検知素子50Dを通る直線は、膜面64aの重心64bを通る。具体的には、第1歪検知素子50Aの重心と、第2歪検知素子50Bの重心と、第3歪検知素子50Cの重心と、第4歪検知素子50Dの重心と、を通る直線は、重心64bを通る。第4歪検知素子50Dと膜面64aの重心64bとの間の距離は、第1歪検知素子50Aと膜面64aの重心64bとの間の距離、第2歪検知素子50Bと膜面64aの重心64bとの間の距離、及び第3歪検知素子50Cと膜面64aの重心64bとの間の距離とは異なる。
この例では、4つの歪検知素子50(歪検知素子50a〜50d)が設けられている。歪検知素子50a〜50dは、膜面64a上において、直線64dにおける中心(重心64bに相当する)から−X軸方向側の部分に沿って配置されている。また、歪検知素子50は、トランスデュース薄膜64の膜面64aの重心64bの位置とは異なる位置に配置されている。なお、歪検知素子50の設置数は、4つには限定されない。歪検知素子50の設置数は、複数であればよく、2つ、3つ、あるいは5つ以上であってもよい。
図3(a)〜図3(d)は、第1の実施形態に係る圧力センサの一部の構成を例示する模式的平面図である。
これらの図は、トランスデュース薄膜64の膜面64aの形状を例示している。
図3(a)〜図3(d)に表したように、トランスデュース薄膜64の膜面64a(撓む部分)の形状は、円形、扁平円(楕円も含む)、正方形または長方形などである。このような場合には、膜面64aの重心は、それぞれ、円の中心、楕円の中心、正方形の対角線の中心、または、長方形の対角線の中心となる。
トランスデュース薄膜64は、例えば、絶縁層で形成される。または、トランスデュース薄膜64は、例えば、金属材料で形成される。トランスデュース薄膜64は、例えば、酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを含む。トランスデュース薄膜64の厚さは、例えば、200nm以上3μm以下である。好ましくは、300nm以上1.5μm以下である。トランスデュース薄膜64の直径は、例えば、1μm以上600μm以下である。より好ましくは、60μm以上、600μm以下である。トランスデュース薄膜64は、例えば、膜面64aに対して垂直なZ軸方向に可撓である。
図2に表したように、この例では、直線64cは、トランスデュース薄膜64の膜面64aの重心64bを通り、Y軸方向に対して平行である。直線64dは、トランスデュース薄膜64の膜面64aの重心64bを通り、X軸方向に対して平行である。
トランスデュース薄膜64と基体71aとに同じ材料が用いられ、これらが一体的である場合は、厚さが薄い部分の縁部が、トランスデュース薄膜64の縁部64egとなる。トランスデュース薄膜64が、基体71aを厚さ方向に貫通する空洞部70を有しており、空洞部70を覆うようにトランスデュース薄膜64が設けられている場合には、トランスデュース薄膜64となる材料の膜のうちで、空洞部70と重なる部分の縁部がトランスデュース薄膜64の縁部64egとなる。
歪検知素子50a〜50dのそれぞれの一端は、第1配線57のそれぞれ(例えば配線57a〜57d)に接続されている。歪検知素子50a〜50dのそれぞれの他端は、第2配線58のそれぞれ(例えば58a〜58d)に接続されている。
第1配線57及び第2配線58は、縁部64egを通って、歪検知素子50から基体71aに向けて延在する。
図4は、第1の実施形態に係る圧力センサの一部の構成を例示する模式的斜視図である。
図4は、歪検知素子50の構成の例を示している。図3に示したように、歪抵抗変化部50s(歪検知素子50であり、第1歪検知素子50A)は、例えば、第1磁性層10と、第2磁性層20と、第1磁性層10と第2磁性層20との間に設けられた中間層30(第1中間層)と、を含む。中間層30は、非磁性層である。複数の歪検知素子50のそれぞれの構成も、上記と同様である。
この例では、第1磁性層10は、磁化自由層である。第2磁性層20は、例えば、磁化固定層または磁化自由層である。
以下では、歪検知素子50の動作の例について、第2磁性層20が磁化固定層であり、第1磁性層10が磁化自由層である場合について説明する。歪検知素子50においては、強磁性体が有する「逆磁歪効果」と、歪抵抗変化部50sで発現する「MR効果」と、が利用される。
「MR効果」は、磁性体を有する積層膜において、外部磁界が印加されたときに、磁性体の磁化の変化によって積層膜の電気抵抗の値が変化する現象である。MR効果は、例えば、GMR(Giant magnetoresistance)効果、または、TMR(Tunneling magnetoresistance)効果などを含む。歪抵抗変化部50sに電流を流すことで、磁化の向きの相対角度の変化を電気抵抗変化として読み取ることで、MR効果は発現する。例えば、歪検知素子50に加わる応力に基づいて、歪抵抗変化部50sに引っ張り応力が加わる。第1磁性層10(磁化自由層)の磁化の向きと、第2磁性層20に加わる引っ張り応力の方向と、が異なるときに、逆磁歪効果によりMR効果が発現する。低抵抗状態の抵抗をRとし、MR効果によって変化する電気抵抗の変化量をΔRとしたときに、ΔR/Rを「MR変化率」という。
図5(a)〜図5(c)は、第1の実施形態に係る圧力センサの動作を例示する模式的斜視図である。
これらの図は、歪検知素子50の状態を例示している。これらの図は、歪検知素子50における磁化方向と、引っ張り応力の方向と、の関係を例示している。
図5(a)は、引っ張り応力が印加されていない状態を示す。このとき、この例では、第2磁性層20(磁化固定層)の磁化の向きは、第1磁性層10(磁化自由層)の磁化の向きと、同じである。
図5(b)は、引っ張り応力が印加された状態を示している。この例では、X軸方向に沿って引っ張り応力が印加されている。例えば、トランスデュース薄膜64の変形により、例えば、X軸方向に沿った引っ張り応力が印加される。すなわち、引っ張り応力は、第2磁性層20(磁化固定層)及び第1磁性層10(磁化自由層)の磁化の向き(この例では、Y軸方向)に対して直交方向に印加される。このとき、引っ張り応力の方向と同じ方向になるように、第1磁性層10(磁化自由層)の磁化が回転する。これを「逆磁歪効果」という。このとき、第2磁性層20(磁化固定層)の磁化は固定されている。よって、第1磁性層10(磁化自由層)の磁化が回転することで、第2磁性層20(磁化固定層)の磁化の向きと、第1磁性層10(磁化自由層)の磁化の向きと、の相対角度が変化する。
この図には、第2磁性層20(磁化固定層)の磁化方向が一例として図示されており、磁化方向は、この図に示した方向でなくても良い。
逆磁歪効果においては、強磁性体の磁歪定数の符号によって磁化の容易軸が変化する。大きな逆磁歪効果を示す多くの材料は、磁歪定数が正の符号を持つ。磁歪定数が正の符号である場合には、上述のように引っ張り応力が加わる方向が磁化容易軸となる。このときには、上記のように、第1磁性層10(磁化自由層)の磁化は、磁化容易軸の方向に回転する。
例えば、第1磁性層10(磁化自由層)の磁歪定数が正である場合には、第1磁性層10(磁化自由層)の磁化方向は、引っ張り応力が加わる方向とは異なる方向に設定する。一方、磁歪定数が負である場合には、引っ張り応力が加わる方向に垂直な方向が磁化容易軸となる。
図5(c)は、磁歪定数が負である場合の状態を例示している。この場合には、第1磁性層10(磁化自由層)の磁化方向は、引っ張り応力が加わる方向(この例ではX軸方向)に対して垂直な方向とは異なる方向に設定する。
この図には、第2磁性層20(磁化固定層)の磁化方向が一例として図示されており、磁化方向は、この図に示した方向でなくても良い。
第1磁性層10の磁化と第2磁性層20の磁化との間の角度に応じて、歪検知素子50(歪抵抗変化部50s)の電気抵抗が、例えば、MR効果によって変化する。
磁歪定数(λs)は、外部磁界を印加して強磁性層をある方向に飽和磁化させたときの形状変化の大きさを示す。外部磁界がない状態で長さLであるときに、外部磁界が印加されたときにΔLだけ変化したとすると、磁歪定数λsは、ΔL/Lで表される。この変化量は磁界の大きさによって変わるが、磁歪定数λsは十分な磁界が印加され、磁化が飽和された状態のΔL/Lとしてあらわす。
例えば、第2磁性層20が磁化固定層である場合、第2磁性層20には、Fe、Co,Niやそれらの合金材料が用いられる。また、第2磁性層20には、上記の材料に添加元素を加えた材料などが用いられる。第2磁性層20には、例えば、CoFe合金、CoFeB合金及びNiFe合金等を用いることができる。第2磁性層20の厚さは、例えば2ナノメートル(nm)以上6nm以下である。
中間層30には、金属または絶縁体を用いることができる。金属としては、例えば、Cu、Au及びAg等を用いることができる。金属の場合、中間層30の厚さは、例えば1nm以上7nm以下である。絶縁体としては、例えば、マグネシウム酸化物(MgO等)、アルミ酸化物(Al2O3等)、チタン酸化物(TiO等)、及び、亜鉛酸化物(ZnO等)を用いることができる。絶縁体の場合、中間層30の厚さは、例えば1nm以上3nm以下である。
第1磁性層10が磁化自由層である場合、第1磁性層10には、例えば、Fe、Co及びNiの少なくともいずれか、または、それらの少なくとも含む合金材料が用いられる。上記の材料に添加元素を加えた材料が用いられる。
第1磁性層10には、磁歪が大きい材料が用いられる。具体的には、磁歪の絶対値が、10−5よりも大きい材料が用いられる。これにより、歪に対して、磁化が敏感に変化する。第1磁性層10には、正の磁歪を有する材料を用いても良く、負の磁歪を有する材料を用いても良い。
第1磁性層10には、例えば、FeCo合金、及び、NiFe合金等を用いることができる。この他、第1磁性層10には、Fe−Co−Si−B合金、λs>100ppmを示すTb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Feやフェライト(Fe3O4、(FeCo)3O4)など)等を用いることができる。第1磁性層10の厚さは、例えば2nm以上である。
第1磁性層10は、2層構造を有することができる。この場合、第1磁性層10は、FeCo合金の層と、FeCo合金の層と積層された以下の層と、を含むことができる。FeCo合金の層と積層されるのは、Fe−Co−Si−B合金、λs>100ppmを示すTb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Feやフェライト(Fe3O4、(FeCo)3O4)など)等から選択される材料の層である。
例えば、中間層30が金属の場合は、GMR効果が発現する。中間層30が絶縁体の場合は、TMR効果が発現する。例えば、歪検知素子50においては、例えば、歪抵抗変化部50sの積層方向に沿って電流を流すCPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR効果が用いられる。
また、中間層30として、絶縁層の一部に1nm以上5nm程度の幅(例えば径)の金属電流パスが膜厚方向に貫通して複数形成された、CCP(Current-Confined-Path)スペーサー層を用いることができる。この場合も、CCP−GMR効果が用いられる。
このように、本実施形態においては、歪検知素子50における逆磁歪現象が用いられる。これにより、高感度な検知が可能になる。逆磁歪効果を用いる場合、例えば、外部から加えられる歪に対して、第1磁性層10及び第2磁性層20の少なくともいずれかの磁性層の磁化方向が変化する。外部から加えられる歪(有無及びその程度など)によって、2つの磁性層の磁化の相対的な角度が変わる。外部から加えられる歪によって電気抵抗が変わるため、歪検知素子50は、圧力センサとして機能する。
図6(a)及び図6(b)は、第1の実施形態に係る圧力センサの一部の構成を例示する模式的斜視図である。
図6(a)に示したように、歪検知素子50は、例えば、第1電極51と、第2電極52と、を含む。第1電極51と第2電極52との間に歪抵抗変化部50sが設けられている。この例では、歪抵抗変化部50sにおいては、第1電極51の側から第2電極52に向けて、バッファ層41(シード層を兼ねる場合もある。厚さは、例えば厚さ1nm以上10nm以下である。具体的には、TaまたはTiなどを含むアモルファス層を用いるまた、結晶配向促進のためのシード層となるRuまたはNiFeなどの層を用いる。これらの積層膜を用いても良い)、反強磁性層42(例えば厚さ5nm以上10nm以下)、磁性層43(例えば厚さ2nm以上6nm以下)、Ru層44、第2磁性層20(例えば厚さ2nm以上5nm以下)、中間層30(例えば厚さ1nm以上3nm以下)、第1磁性層10(例えば厚さ2nm以上5nm以下)及びキャップ層45(例えば厚さ1nm以上5nm以下)が、この順で設けられている。
第2磁性層20には、例えば、磁性積層膜が用いられる。第1磁性層10は、MR変化率を大きくするための磁性積層膜10a(例えば厚さ1nm以上3nm以下。例えばCoFeを含む合金やCoFeなどが用いられる)と、磁性積層膜10aとキャップ層45との間に設けられた高磁歪磁性膜10b(例えば1nm以上5nm以下)と、を含む。
第1電極51及び第2電極52には、例えば、非磁性体であるAu、Cu、Ta、Al等を用いることができる。第1電極51及び第2電極52として、軟磁性体の材料を用いることで、歪抵抗変化部50sに影響を及ぼす外部からの磁気ノイズを低減することができる。軟磁性体の材料としては、例えば、パーマロイ(NiFe合金)や珪素鋼(FeSi合金)を用いることができる。歪検知素子50は、アルミ酸化物(例えばAl2O3)やシリコン酸化物(例えばSiO2)等の絶縁体で覆われ、周囲にリーク電流が流れないようにされている。
第1磁性層10及び第2磁性層20の少なくともいずれかの磁性層の磁化方向は、応力に応じて変化する。少なくともいずれかの磁性層(応力に応じて磁化方向が変化する磁性層)の磁歪定数の絶対値は、例えば、10−5以上に設定することが好ましい。これにより、逆磁歪効果によって、外部から加えられる歪みに応じて磁化方向が変化する。例えば、第1磁性層10及び第2磁性層20の少なくともいずれかには、Fe、Co及びNiなどのような金属または、それらを含む合金などが用いられる。用いる元素や添加元素などによって、磁歪定数は大きく設定される。磁歪定数の絶対値は、大きいことが好ましい。現実的なデバイスとして使用できる材料を考慮すると、磁歪定数の絶対値は、10−2程度以下が実用的である。
例えば、中間層30としてMgOのような酸化物が用いられる。MgO層上の磁性層は、一般的にプラスの磁歪定数を有する。例えば、中間層30の上に第1磁性層10を形成する場合、第1磁性層10として、CoFeB/CoFe/NiFeの積層構成の磁化自由層を用いる。最上層のNiFe層をNiリッチにすると、NiFe層の磁歪定数はマイナスでその絶対値が大きくなる。酸化物層上のプラスの磁歪が打ち消されることを抑制するために、最上層のNiFe層のNi組成は、一般的に用いられるNi81Fe19のパーマロイ組成と比較して、Niリッチにしない。具体的には、最上層のNiFe層におけるNiの比率は、80原子パーセント(atomic%)未満とすることが好ましい。第1磁性層10を磁化自由層とする場合には、第1磁性層10の厚さは、例えば、1nm以上20nm以下が好ましい。
第1磁性層10が磁化自由層である場合において、第2磁性層20は、磁化固定層でも磁化自由層でも良い。第2磁性層20が磁化固定層である場合、外部から歪が加えられても第2磁性層20の磁化方向は実質的に変化しない。そして、第1磁性層10と第2磁性層20との間での相対的な磁化の角度によって電気抵抗が変化する。電気抵抗の違いによって歪の有無が検知される。
第1磁性層10及び第2磁性層20の両方が磁化自由層である場合には、例えば、第1磁性層10の磁歪定数は、第2磁性層20の磁歪定数とは異なるように設定される。
第2磁性層20が磁化固定層である場合も磁化自由層である場合も、第2磁性層20の厚さは、例えば1nm以上20nm以下が好ましい。
例えば、第2磁性層20が磁化固定層である場合、例えば、第2磁性層20には、反磁性層/磁性層/Ru層/磁性層の積層構造を用いたシンセティックAF構造などを用いることができる。反磁性層には、例えばIrMnなどが用いられる。また、後述するように、ハードバイアス層を設けても良い。
歪検知素子50では、磁性層のスピンが用いられる。歪検知素子50に必要な面積は、極めて小さいサイズで十分である。歪検知素子50は、例えば、正方形のサイズで考えると、一辺の長さが10nm×10nm〜20nm×20nm以上のサイズを有していれば良い。
歪検知素子50の面積は、圧力によって撓むトランスデュース薄膜64の面積よりも十分に小さくする。ここで、トランスデュース薄膜とは、前述したように固定端によって囲まれ、膜厚がある一定の厚さで固定端よりも薄くなって外部圧力によって撓むようになっている部位である。具体的には、歪検知素子50の面積は、トランスデュース薄膜64の基板面内の面積の1/5以下である。一般的には、トランスデュース薄膜64のサイズは、上述のように60μm以上、600μm以下程度である。トランスデュース薄膜64の直径が60μm程度と小さい場合には、歪検知素子50の一辺の長さは、例えば、12μm以下である。トランスデュース薄膜の直径が600μmのときには、歪検知素子50の一辺の長さは、120μm以下である。この値が、例えば、歪検知素子50のサイズの上限となる。
この上限の値と比べると、上記の、一辺の長さが10nm以上20nm以下というサイズは、極端に小さい。このため、素子の加工精度等も考慮すると、歪検知素子50を過度に小さくする必然性が生じない。そのため、歪検知素子50の一辺のサイズは、例えば、0.5μm以上20μm以下程度とすることが現実的に好ましい。極端に素子サイズが小さくなると、歪検知素子50に生じる反磁界の大きさが大きくなるため、歪検知素子50のバイアス制御が困難になるなどの問題が生じる。素子サイズが大きくなると、反磁界の問題が生じなくなるため、工学的観点で扱いやすくなる。その観点で、上述のように、0.5μm以上20μm以下が、好ましいサイズである。
例えば、歪検知素子50のX軸方向に沿った長さは、20nm以上10μm以下である。歪検知素子50のX軸方向に沿った長さは、200nm以上5μm以下であることが好ましい。
例えば、歪検知素子50のY軸方向(X軸方向に対して垂直で、X−Y平面に対して平行な方向)に沿った長さは、20nm以上10μm以下である。歪検知素子50のY軸方向に沿った長さは、200nm以上5μm以下であることが好ましい。
例えば、歪検知素子50のZ軸方向(X−Y平面に対して垂直な方向)に沿った長さは、20nm以上100nm以下である。
歪検知素子50のX軸方向に沿った長さは、歪検知素子50のY軸方向に沿った長さと同じでも良く、異なっても良い。歪検知素子50のX軸方向に沿った長さが、歪検知素子50のY軸方向に沿った長さと異なるときに、形状磁気異方性が生じる。これにより、ハードバイアス層で得られる作用と同様の作用を得ることもできる。
歪検知素子50において流される電流の向きは、第1磁性層10から第2磁性層20に向かう方向でも良く、第2磁性層20から第1磁性層10に向かう方向でも良い。
図6(b)は、第1の実施形態に係る圧力センサの一部の別の構成を例示している。
図6(b)に示したように、歪検知素子50は、バイアス層55a及び55b(ハードバイアス層)を含んでもよい。バイアス層55a及び55bは、歪抵抗変化部50sに対向して設けられる。
この例では、第2磁性層20が磁化固定層である。バイアス層55a及び55bは、第2磁性層20に並置される。バイアス層55a及び55bの間に、歪抵抗変化部50sが配置される。バイアス層55aと歪抵抗変化部50sとの間に絶縁層54aが設けられる。バイアス層55bと歪抵抗変化部50sとの間に絶縁層54bが設けられる。
バイアス層55a及び55bは、第1磁性層10にバイアス磁界を印加する。これにより、第1磁性層10の磁化方向を適正な位置にバイアスすることが可能になるとともに、単一磁区化することが可能となる。
バイアス層55a及び55bのそれぞれの大きさ(この例ではY軸方向に沿った長さ)は、例えば、100nm以上10μm以下である。
絶縁層54a及び54bのそれぞれの大きさ(この例ではY軸方向に沿った長さ)は、例えば、1nm以上5nm以下である。
次に、本実施形態の動作の例について説明する。
図7(a)及び図7(b)は、第1の実施形態に係る圧力センサの動作を例示する模式図である。
図7(a)は、図2の直線64dで切断したときの模式的断面図である。図7(b)は、圧力センサの動作を例示する模式図である。
図8(a)及び図8(b)は、トランスデュース薄膜の膜面上の位置と、歪と、の関係を例示する模式図である。
図8(a)は、トランスデュース薄膜の膜面を例示する模式的平面図である。図8(b)は、トランスデュース薄膜の膜面上の位置と、歪と、の関係を例示するグラフ図である。図8(b)に表したグラフ図の横軸は、重心64bからの距離を表す。図8(b)に表したグラフ図の縦軸は、歪みを表す。
図9(a)及び図9(b)は、別のトランスデュース薄膜の膜面上の位置と、歪と、の関係を例示する模式図である。
図9(a)は、別のトランスデュース薄膜の膜面を例示する模式的平面図である。図9(b)は、別のトランスデュース薄膜の膜面上の位置と、歪と、の関係を例示するグラフ図である。図9(b)に表したグラフ図の横軸は、重心64bからの距離を表す。図9(b)に表したグラフ図の縦軸は、歪みを表す。
図10は、歪検知素子の最適歪範囲を例示するグラフ図である。
図10に表したグラフ図の横軸は、重心64bからの距離を表す。図10に表したグラフ図の縦軸は、歪みを表す。
図7(a)に表したように、本実施形態に係る圧力センサ310において、トランスデュース薄膜64は、空気等の媒体から応力80を受けて撓む。例えば、膜面64aが凸状になるようにトランスデュース薄膜64が撓むことによって、トランスデュース薄膜64に応力81(例えば引っ張り応力)が加わる。この際に、トランスデュース薄膜64の膜面64a上に設けられた歪検知素子50にも応力81が加わり歪みが生じる。これにより、歪検知素子50において、逆磁歪効果によって、歪みの変化に応じて、歪検知素子50の一端と他端との間の電気抵抗が変化する。膜面64aが凹状になるようにトランスデュース薄膜64が撓む場合には、トランスデュース薄膜64に圧縮応力が加わる。
図7(b)に表したように、複数の歪検知素子50のそれぞれから、上記の応力に応じた信号50sgを得ることができる。例えば、第1歪検知素子50Aから第1信号sg1が得られる。第2歪検知素子50Bから、第2信号sg2が得られる。第3歪検知素子50Cから、第3信号sg3が得られる。第4歪検知素子50Dから、第4信号sg4が得られる。複数の信号50sgは、処理回路113によって処理される。
ここで、図8(a)及び図8(b)に表したように、トランスデュース薄膜64の膜面64aの形状が円形である場合には、トランスデュース薄膜64の膜面64aの重心64bからの距離rが長くなると、膜面64aの歪みは大きくなる。そして、トランスデュース薄膜64の固定端(重心64bからの距離がr0の位置)よりも少し内側の位置(重心64bからの距離がr1の位置)において、膜面64aの歪みは最大となる。
あるいは、図9(a)及び図9(b)に表したように、トランスデュース薄膜64の膜面64aの形状が長方形(ここでは正方形を含む)である場合においても、トランスデュース薄膜64の膜面64aの重心64bからの距離yが長くなると、膜面64aの歪みは大きくなる。そして、トランスデュース薄膜64の固定端(重心64bからの距離がy0の位置)よりも少し内側の位置(重心64bからの距離がy1の位置)において、膜面64aの歪みは最大となる。
なお、トランスデュース薄膜64の固定端(重心64bからの距離がr0の位置)は、縁部64egにおいて非空洞部71(基体71a)に固定されている。そのため、トランスデュース薄膜64の固定端の歪みは、固定端よりも少し内側の位置(重心64bからの距離がy1の位置)の歪みよりも小さい。
図10に表したように、歪検知素子50には、最適歪範囲A1が存在する。歪検知素子50は、最適歪範囲A1よりも小さい膜面64aの歪みを検知することはできない。最適歪範囲A1よりも大きい膜面64aの歪みについては、歪検知素子50に加わる応力81が過大となり、歪検知素子50に生ずる歪みが過大となる。そのため、歪検知素子50は、最適歪範囲A1よりも大きい膜面64aの歪みを正確に検知することはできない。歪検知素子50のゲージファクター(GF:gauge factor)が相対的に高いと、最適歪範囲A1は、相対的に狭くなる。歪検知素子50のゲージファクターは、単位歪(dε)あたりの、電気抵抗の変化量(dR/R)である。
そのため、例えば圧力センサ310が大音量の音(音波)(例えば約140dBspl以上の音)による圧力を取得すると、複数の歪検知素子50のうちで重心64bから最も遠い位置に配置された第1歪検知素子50Aに加わる応力81が過大となり、第1歪検知素子50Aに生ずる歪みが過大となることがある。すると、第1歪検知素子50Aは、膜面64aの歪みを正確に検知することはできず、飽和した第1信号sg1を処理回路113に送信する。
これに対して、実施形態にかかる圧力センサ310では、処理回路113は、第1歪検知素子50Aの第1信号sg1が第1閾値(例えば最適歪範囲A1の上限値)よりも大きい場合には、第1歪検知素子50Aと第2歪検知素子50Bとの間において切替処理を実行し、第2歪検知素子50Bの第2信号sg2を出力する。
一方で、例えば圧力センサ310が小音量の音(音波)による圧力を取得すると、複数の歪検知素子50のうちで重心64bから最も遠い位置に配置された第1歪検知素子50Aには、第2歪検知素子50Bと比較して、大きい応力81が加わり、大きい歪みが生ずる。そのため、第1歪検知素子50Aは、膜面64aの歪みをより高い感度で検知し、第1信号sg1を処理回路113に送信する。処理回路113は、第1歪検知素子50Aの第1信号sg1が最適歪範囲A1内である場合には、第1歪検知素子50Aの第1信号sg1を出力する。
このように、処理回路113は、トランスデュース薄膜64の膜面64aに外部圧力が印加されたときに第1歪検知素子50Aから得られる第1信号sg1と、トランスデュース薄膜64の膜面64aに外部圧力が印加されたときに第2歪検知素子50Bから得られる第2信号sg2と、のうちのいずれか一方を出力信号として出力する。これにより、実施形態にかかる圧力センサ310は、例えば小音量から大音量にわたる広いレンジの圧力を高感度に検知することができる。そのため、広いダイナミックレンジの圧力センサ310を実現することができる。
トランスデュース薄膜64の膜面64aに外部圧力が印加されたときに、トランスデュース薄膜64の膜面64aが可動する。そのときのトランスデュース薄膜64の膜面64a上の歪は、前述のように膜面64a上の位置に応じて異なる。一方、単一の歪検知素子50ではなく複数(N個)の歪検知素子を用いることで、圧力センサ310の信号対ノイズ比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)は上昇する。そのSNR改善分は、以下のような式であらわされる。
SNR = SNR単一素子 + 20×log(√N) ・・・式(1)
ここで、複数の歪検知素子50は、電気的に直列接続、または並列接続されている。式(1)のように、トランスデュース薄膜64上に複数の歪検知素子50を配置可能な場合には、複数の歪検知素子50を用いると、SNR改善のためにはより有利となる。ただし、スピンMEMSセンサの場合には、MR素子を用いているため、歪の異方性が重要な要素の1つとなる。複数の歪検知素子50のそれぞれに加わる異方性歪の方向が同じになるような領域に歪検知素子50が配置されていないと、複数の歪検知素子50による上昇効果は得られない。
一方、本実施形態では、同じ圧力が印加されたときに歪の大きさが異なるような場所に歪検知素子50が配置されていることが必要条件の1つとなる。そこで、上述のような複数の歪検知素子50によるSNR改善と両立された歪検知素子50の配置として以下のようなより好ましい実施形態を有する。
図11(a)及び図11(b)は、本実施形態に係る圧力センサの例を示す模式的平面図である。
図12(a)〜図12(c)は、本実施形態のセンサラインの接続形態の例を示す模式図である。
図11(a)は、トランスデュース薄膜の膜面の形状が円形である例を示す模式的平面図である。図11(b)は、トランスデュース薄膜の膜面の形状が長方形である例を示す模式的平面図である。
図11(a)及び図11(b)に表した例では、歪の大きさが二水準で異なる。また、複数の歪検知素子50がトランスデュース薄膜64の膜面64a上に配置されている。図11(a)に表した例では、電気的に直列接続されたセンサラインとして、4つセンサラインが設けられる。第1のAラインLA1(第1ライン)には、15個の歪検知素子50が直列に接続されており、歪が最大になるように円周固定端近傍に配置されている。同様に、歪が最大となる配置として、第2のAラインLA2(第2ライン)においても、15個の歪検知素子50が配置されている。これらは、トランスデュース薄膜64が変形したときにx−y異方性歪のベクトルがほぼ同様になる対称位置である。時計で12時の位置を角度0度とし、6時の位置を180度としたときに、0度または180度近傍で歪検知素子50が反応するように歪検知素子50の磁化固着方向が設定されている場合を想定している。
図12(a)に表したように、第1のAラインLA1と第2のAラインLA2とは、SNR改善のために互いに直列に接続されてもよい。または、図12(b)に表したように、第1のAラインLA1と第2のAラインLA2とは、互いに並列に接続されてもよい。あるいは、図12(c)に表したように、第1のAラインLA1及び第2のAラインLA2は、ブリッジ回路を形成するためにそれぞれ用いられてもよい。
一方、第1のBラインLB1(第3ライン)と第2のBラインLB2(第4ライン)とは、ともに重心位置からより近いrの位置に配置されている。この場合、前述の場合と同じ圧力が印加されたときの歪は、Aライン(第1のAラインLA1及び第2のAラインLA2:第1歪検知素子群)のときよりも小さくなる。そのため、より大音量を検知する場合や、トランスデュース薄膜64のばらつきにより高感度になりほかの圧力センサと同等SNRの製品として出荷する場合に、あえて歪量が低下した位置に配置したBライン(第1のBラインBL1及び第2のBラインBL2:第2歪検知素子群)のセンサの信号を出力信号として用いる場合に、この例は有効となる。BラインにおいてもAラインのときと同様に、図12(a)に表したように、第1のBラインBL1と第2のBラインLB2とは、互いに電気的に直列されてもよい。または、図12(b)に表したように、第1のBラインBL1と第2のBラインBL2とは、互いに並列に接続されてもよい。あるいは、図12(c)に表したように、第1のBラインBL1及び第2のBラインBL2は、ブリッジ回路を形成してもかまわない。
図11(b)に表した例では、トランスデュース薄膜64の膜面64aの形状が長方形である。そのため、x−y異方性歪がとれる領域が、円形の膜面64aよりも広くとることができる。長方形の膜面64aの場合にも、固定端に近い領域では圧力印加時の歪が大きくなるので、出力が飽和しない小さい圧力印加時においてはAラインのセンサの出力がBラインのセンサの出力よりも大きく、Bラインのセンサの出力はAラインのセンサの出力よりも小さくなる。円形の膜面64aのときと同様に、BラインはAラインよりも重心から離れたところに配置されている。円形の膜面64aのときと同様に、第1のAラインLA1と第2のAラインLA2とは、SNR改善のために互いに直列に接続されてもよい(図12(a)参照)。または、第1のAラインLA1と第2のAラインLA2とは、互いに並列に接続されてもよい(図12(b)参照)。あるいは、第1のAラインLA1及び第2のAラインLA2は、ブリッジ回路を形成するためにそれぞれ用いられてもよい(図12(c)参照)。
一方、Bラインは、ともに重心位置からより近いrの位置に配置されている。この場合、前述の場合と同じ圧力が印加されたときの歪は、Aラインのときよりも小さくなる。そのため、より大音量を検知する場合や、トランスデュース薄膜64のばらつきにより高感度になりほかの圧力センサと同等SNRの製品として出荷する場合に、あえて歪量が低下した位置に配置したBラインのセンサの信号を出力信号として用いる場合に、この例は有効となる。BラインにおいてもAラインのときと同様に、第1のBラインBL1と第2のBラインLB2とは、互いに電気的に直列に接続されてもよい(図12(a)参照)。または、第1のBラインBL1と第2のBラインLB2とは、互いに並列に接続されてもよい(図12(b)参照)。あるいは、第1のBラインLB1及び第2のBラインLB2は、ブリッジ回路を形成してもかまわない(図12(c)参照)。
図13(a)及び図13(b)は、本実施形態にかかる圧力センサの例を示す模式的平面図である。
図13(a)は、トランスデュース薄膜の膜面の形状が円形である例を示す模式的平面図である。図13(b)は、トランスデュース薄膜の膜面の形状が長方形である例を示す模式的平面図である。
図13(a)及び図13(b)に表したそれぞれの例では、異なる位置に配置された歪検知素子50がAライン及びBラインの二つだけでなく、Aライン、Bライン、及びCラインの三つのラインある場合を示している。
使用方法は、図11(a)〜図12(c)に関して前述した例と同様である。
なお、図11(a)及び図11(b)は、重心からの距離が異なるところにそれぞれ直列接続された複数の歪検知素子50のラインが二ラインの例である。図13(a)及び図13(b)は、重心からの距離が異なるところにそれぞれ直列接続された複数の歪検知素子50のラインが三ラインの例である。ラインの数は、2、3に限られず、4、5などであってもよく、2ライン以上のセンサがあればよい。
図14(a)及び図14(b)は、ラインの出力後の回路を表す模式図である。
図15(a)及び図15(b)は、制御信号を生成する方法を例示するフローチャート図である。
図14(a)及び図15(a)は、二ラインの例を表す。図14(b)及び図15(b)は、三ラインの例を表す。
Aラインからの出力信号LASgのライン及びBラインからの出力信号LBSgのラインは、マルチプレクサ81に接続される。マルチプレクサ81は、複数ラインからの入力信号に対し、一つのラインを選択し出力する回路である。どのラインを出力するかを判断するための制御信号CSgのラインがマルチプレクサ81に接続される。図14(a)に表した例では、マルチプレクサ81は、その制御信号CSgに基づいて、測定時のリアルタイムにおいてAラインの出力信号LASg及びBラインの出力信号LBSgのいずれか一方を出力信号とする。図14(b)に表した例では、マルチプレクサ81は、制御信号CSgに基づいて、測定時のリアルタイムにおいてAラインの出力信号LASg、Bラインの出力信号LBSg、及びCラインの出力信号LCSgのいずれかひとつを出力信号とする。どのラインからの信号を出力信号とするかについては、Aラインからの出力信号LASg及びBラインからの出力信号LBSgに基づいて制御信号CSgを生成してもよいし、制御判断用の別のセンサをトランスデュース薄膜に配置し、その信号をもとに制御信号CSgを生成してもよい。
図15(a)を参照しつつ、Aラインからの出力信号LASg及びBラインからの出力信号LBSgに基づいて、制御信号CSgを生成する場合の例について示す。Aラインからの出力信号LASgが、あらかじめ設定された飽和閾値(第1閾値)を超えているかどうか判断する(ステップS51)。Aラインの出力信号LASgが第1閾値を超えていない場合には(ステップS51:No)、Aラインを選択する制御信号CSgを生成する(ステップS52)。Aラインの出力信号LASgが第1閾値を超えている場合には(ステップS51:Yes)、Aラインでは検知不可能な大きな圧力が印加されているため、Bラインを選択する制御信号CSgを生成する(ステップS53)。
図15(b)を参照しつつ、Cラインがさらに設けられた場合について示す。Aラインの出力信号LASgを計測し、それがあらかじめ設定されたAラインの閾値(第1閾値)を超えているかどうか判断する(ステップS61)。Aラインの出力信号LASgが第1閾値を超えていなければ(ステップS61:No)、Aラインを選択する制御信号CSgを生成する(ステップS62)。Aラインの出力信号LASgが第1閾値を超えている場合には(ステップS61:Yes)、Bラインの出力信号LBSgを計測し、それがあらかじめ設定されたBラインの閾値(第2閾値)を超えているかどうか判断する(ステップS63)。Bラインの出力信号LBSgが第2閾値を超えていなければ(ステップS63:No)、Bラインを選択する制御信号CSgを生成する(ステップS64)。Bラインの出力信号LBSgが第2閾値を超えている場合には(ステップS63:Yes)、Aライン及びBラインともに検知不可能な大きな圧力が印加されているため、Cラインを選択する制御信号CSgを生成する(ステップS65)。
このような制御判断を測定時にリアルタイムで行うためには、制御信号CSgを生成するプロセッサーのクロック周波数は、測定対象の変動よりも十分高速である必要性がある。大気圧力などの高速に変動しない圧力計測に対しては、もともと十分であるし、音の場合にも可聴音域では高周波数でも20kHzまで、超音波計測を対象としたときも数十〜数百kHz程度を対象とする場合には十分対応可能である。制御信号CSgを生成するためのプロセッサーのクロック周波数は、上記のような測定対象の周波数よりも少なくとも100倍以上、望ましくは1000倍以上の周波数が必要となるが、20kHzまでの可聴音域の場合には、2メガヘルツ(MHz)〜20MHzのクロック周波数があればよく、100kHz程度の超音波であれば、10MHz〜100MHz程度のクロック周波数があればよく、数十から数百MHz以上であることが必要である。1MHzの超音波を測定対象とする場合には、100MHz〜1GHzのクロック周波数があればよい。いずれにしても、クロック周波数によってコストは変わるものの、プロセッサーのクロック周波数としては十分実現できる値であり、測定を行いながら、リアルタイムの選択制御判断は可能となる。
本実施形態の動作の例について、図面を参照しつつさらに説明する。
図16(a)及び図16(b)は、第1の実施形態に係る圧力センサの動作を例示するフローチャート図である。
図16(a)に表したように、圧力センサ310が、第1歪検知素子50Aと第2歪検知素子50Bとを含む場合には、処理回路113は、第1歪検知素子50Aから第1信号sg1を受信(取得)し、第2歪検知素子50Bから第2信号sg2を受信する(ステップS11)。
続いて、処理回路113は、第1歪検知素子50Aの第1信号sg1が第1閾値(例えば最適歪範囲A1の上限値)よりも大きいか否かを判断する(ステップS12)。第1歪検知素子50Aの第1信号sg1が第1閾値よりも大きくない場合には(ステップS12:No)、処理回路113は、第1歪検知素子50Aの第1信号sg1を選択(出力)する(ステップS14)。一方で、第1歪検知素子50Aの第1信号sg1が第1閾値よりも大きい場合には(ステップS12:Yes)、処理回路113は、第1歪検知素子50Aと第2歪検知素子50Bとの間において切替処理を実行し、第2歪検知素子50Bの第2信号sg2を選択(出力)する(ステップS13)。
続いて、処理回路113は、第1歪検知素子50Aから第1信号sg1を受信し、第2歪検知素子50Bから第2信号sg2を受信し、ステップS11〜ステップS14に関して前述した動作を繰り返す(ステップS11〜ステップS14)。
図16(b)に表したように、圧力センサ310が、第1歪検知素子50Aと第2歪検知素子50Bと第3歪検知素子50Cと第4歪検知素子50Dとを含む場合には、処理回路113は、第1歪検知素子50Aから第1信号sg1を受信し、第2歪検知素子50Bから第2信号sg2を受信し、第3歪検知素子50Cから第3信号sg3を受信し、第4歪検知素子50Dから第4信号sg4を受信する(ステップS21)。
続いて、処理回路113は、第1歪検知素子50Aの第1信号sg1が第1閾値(例えば最適歪範囲A1の上限値)よりも大きいか否かを判断する(ステップS22)。第1歪検知素子50Aの第1信号sg1が第1閾値よりも大きくない場合には(ステップS22:No)、処理回路113は、第1歪検知素子50Aの第1信号sg1を選択(出力)する(ステップS23)。一方で、第1歪検知素子50Aの第1信号sg1が第1閾値よりも大きい場合には(ステップS22:Yes)、処理回路113は、第1歪検知素子50Aと第2歪検知素子50Bとの間において切替処理を実行し、第2歪検知素子50Bの第2信号sg2が第2閾値(例えば最適歪範囲A1の上限値)よりも大きいか否かを判断する(ステップS24)。
第2歪検知素子50Aの第2信号sg2が第2閾値よりも大きくない場合には(ステップS24:No)、処理回路113は、第2歪検知素子50Bの第2信号sg2を選択(出力)する(ステップS25)。一方で、第2歪検知素子50Bの第2信号sg2が第2閾値よりも大きい場合には(ステップS24:Yes)、処理回路113は、第2歪検知素子50Bと第3歪検知素子50Cとの間において切替処理を実行し、第3歪検知素子50Cの第3信号sg3が第3閾値(例えば最適歪範囲A1の上限値)よりも大きいか否かを判断する(ステップS26)。
第3歪検知素子50Cの第3信号sg3が第3閾値よりも大きくない場合には(ステップS26:No)、処理回路113は、第3歪検知素子50Cの第3信号sg3を選択(出力)する(ステップS28)。一方で、第3歪検知素子50Cの第3信号sg3が第3閾値よりも大きい場合には(ステップS26:Yes)、処理回路113は、第3歪検知素子50Cと第4歪検知素子50Dとの間において切替処理を実行し、第4歪検知素子50Dの第4信号sg4を選択(出力)する(ステップS27)。
続いて、処理回路113は、第1歪検知素子50Aから第1信号sg1を受信し、第2歪検知素子50Bから第2信号sg2を受信し、第3歪検知素子50Cから第3信号sg3を受信し、第4歪検知素子50Dから第4信号sg4を受信し、ステップS21〜ステップS28に関して前述した動作を繰り返す(ステップS21〜ステップS28)。
これにより、実施形態にかかる圧力センサ310は、さらに広いレンジの圧力を高感度に検知することができる。そのため、さらに広いダイナミックレンジの圧力センサ310を実現することができる。また、処理回路113は、動作を繰り返すため、ダイナミックな切替処理を実行可能であり、例えば小音量から大音量にわたる広いレンジの圧力に対して比較的素早く対応することができる。
実施形態にかかる圧力センサ310では、処理回路113の切り替えのクロックが、検知圧力(例えば検知音による圧力)の周波数よりも十分に高いことが必要となる。これに対して、可聴音の周波数は、例えば約10キロヘルツ(kHz)以下である。処理回路113のクロック周波数は、例えば約ギガヘルツ(GHz)のオーダである。処理回路113のクロック周波数は、可聴音の周波数よりも約5桁程度高い。そのため、実施形態にかかる圧力センサ310は、広い周波数帯域の圧力を高感度に検知することができる。
(第2の実施形態)
図17は、第2の実施形態に係る別の圧力センサの構成を例示する模式的平面図である。
図17に表したように、圧力センサ330においては、複数の歪検知素子50は、直線64c及び直線64dに沿って、実質的に等間隔に配置されている。例えば、直線64cにおける中心(重心64bに対応する)の両側に、4個ずつ歪検知素子50が配置されている。直線64dにおける中心(重心64bに対応する)の両側に、4個ずつ歪検知素子50が配置されている。この例では、歪検知素子50は、重心64bに対して実質的に対称な位置に配置されている。
すなわち、本実施形態に係る圧力センサ330においても、複数の歪検知素子50が設けられている。例えば、センサ部72(第1センサ部72A)は、第1歪検知素子50Aと、第2歪検知素子50Bと、第3歪検知素子50Cと、第4歪検知素子50と、を含む。
例えば、第1歪検知素子50Aを歪検知素子50aとし、第2歪検知素子50Bを歪検知素子50bとし、第3歪検知素子50Cを歪検知素子50cとし、第4歪検知素子50Dを歪検知素子50dとする。第1歪検知素子50A(歪検知素子50a)と、第2歪検知素子50B(歪検知素子50c)と、第3歪検知素子50C(歪検知素子50c)と、第4歪検知素子50D(歪検知素子50d)と、を結ぶ直線(直線64d及び直線64c)は、重心64bを通る。
圧力センサ330においては、固定部67a及び67cは、直線64cと、トランスデュース薄膜64の縁部64egと、の交点に配置されている。固定部67b及び固定部67dは、直線64dと、トランスデュース薄膜64の縁部64egと、の交点に配置されている。
第4歪検知素子50Dと、第3歪検知素子50Cと、第2歪検知素子50Bと、第1歪検知素子50Aと、は、重心64bから固定部67dへ向かって直線64dに沿ってこの順に並ぶ。
第4歪検知素子50Dと、第3歪検知素子50Cと、第2歪検知素子50Bと、第1歪検知素子50Aと、は、重心64bから固定部67bへ向かって直線64dに沿ってこの順に並ぶ。
第4歪検知素子50Dと、第3歪検知素子50Cと、第2歪検知素子50Bと、第1歪検知素子50Aと、は、重心64bから固定部67aへ向かって直線64cに沿ってこの順に並ぶ。
第4歪検知素子50Dと、第3歪検知素子50Cと、第2歪検知素子50Bと、第1歪検知素子50Aと、は、重心64bから固定部67cへ向かって直線64cに沿ってこの順に並ぶ。
例えば、第1歪検知素子50Aを歪検知素子50aとし、第2歪検知素子50Bを歪検知素子50cとする。第1歪検知素子50A(歪検知素子50a)と第2歪検知素子50B(歪検知素子50c)とを結ぶ直線(直線64d及び直線64c)は、重心64bを通る。
実施形態にかかる圧力センサ330は、図7(a)〜図16(b)に関して前述した動作を行うことにより、例えば小音量から大音量にわたる広いレンジの圧力を高感度に検知することができる。そのため、広いダイナミックレンジの圧力センサ310を実現することができる。実施形態にかかる圧力センサ330は、広い周波数帯域の圧力を高感度に検知することができる。
図18は、第2の実施形態に係る別の圧力センサの構成を例示する模式的平面図である。
図18に表したように、本実施形態に係る圧力センサ331においては、固定部67の形状は、リング状である。固定部67は、トランスデュース薄膜64の縁部64egに沿う。固定部67は、トランスデュース薄膜64の縁部64egを連続的に固定している。トランスデュース薄膜64の縁部64egを連続的に固定しているので、トランスデュース薄膜64の撓み量は、重心64bからの距離に依存するようにすることができる。
図19は、第2の実施形態に係る別の圧力センサの構成を例示する模式的平面図である。
図19に表したように、本実施形態に係る別の圧力センサ332においては、複数の歪検知素子50は、直線64c及び直線64dに沿って実質的に等間隔に配置されている。直線64cにおける重心64bの両側に4個ずつの歪検知素子50が配置され、直線64dにおける重心64bの両側に4個ずつの歪検知素子50が配置されている。
圧力センサ331及び圧力センサ332のそれぞれは、図7(a)〜図16(b)に関して前述した動作を行うことにより、例えば小音量から大音量にわたる広いレンジの圧力を高感度に検知することができる。そのため、広いダイナミックレンジの圧力センサ310を実現することができる。圧力センサ331及び圧力センサ332のそれぞれは、広い周波数帯域の圧力を高感度に検知することができる。
(第3の実施形態)
本実施形態は、圧力センサ(例えば第1に係る圧力センサ)の製造方法に係る。
図20は、第3の実施形態に係る圧力センサの製造方法を例示するフローチャート図である。
図21(a)〜図21(d)は、第3の実施形態に係る圧力センサの製造方法を例示する工程順模式的斜視図である。
図22は、第3の実施形態に係る圧力センサの製造方法における確認工程を説明する模式図である。
図22(a)に表したグラフ図の横軸は、重心64bからの距離を表す。図22(a)に表したグラフ図の縦軸は、歪みを表す。
これらの図は、圧力センサ310の製造方法の例である。図21(a)〜図21(d)においては、図を見やすくするために、各要素の形状やサイズを、図1から適宜変更して示している。
図22(a)は、歪検知素子の最適歪範囲を例示するグラフ図である。図22(b)は、確認工程における圧力センサの動作を例示する模式図である。
図20に表したように、トランスデュース膜を形成する(ステップS101)。
例えば、図21(a)に表したように、基板70sの上にトランスデュース薄膜64となるトランスデュース膜64fmを形成する。基板70sには、例えばシリコン基板が用いられる。トランスデュース膜64fmには、例えばシリコン酸化膜が用いられる。例えば、第2の実施形態に係る圧力センサ330(図17参照)のようにトランスデュース薄膜64の縁部64egを断続的に保持する固定部67(例えば固定部67a〜67dなど)を形成する場合は、この工程で、トランスデュース膜64fmを加工して、固定部67となる部分を形成しても良い。
図20に表したように、第1導電層を形成する(ステップS102)。
例えば、図21(b)に表したように、トランスデュース膜64fm(または、トランスデュース薄膜64)の上に、導電膜を形成し、この導電膜を所定の形状に加工して第1導電層(導電層61f)を形成する。この導電層は、例えば、第1配線57の少なくとも一部となることができる。
図20に表したように、歪検知素子50を形成する(ステップS103)。
例えば、図21(c)に表したように、導電層61fの上の一部に、歪検知素子50となる積層膜を形成する。この積層膜は、例えば、この順で積層された、バッファ層、シード層、反強磁性層、磁性層、磁気結合層、磁性層、中間層、磁性層、高磁歪膜、及び、キャップ膜などを含む。この積層膜を所定の形状に加工して、歪検知素子50(例えば、歪検知素子50a〜50dなど)を形成する。
図20に表したように、第2導電層を形成する(ステップS104)。
例えば、図21(d)に表したように、歪検知素子50を覆うように、図示しない絶縁膜を形成し、この絶縁膜の一部を除去して歪検知素子50の上面を露出させる。この上に導電膜を形成し、所定の形状に加工して第2導電層(導電層62f)が得られる。
図20に表したように、第1導電層に接続された配線(例えば第1配線57)、及び、第2導電層に接続された配線(例えば第2配線58)を形成する(ステップS105)。上記の第1導電層の形成及び第2導電層の形成の少なくともいずれかにより、配線が形成されても良い。すなわち、また、配線の加工のための少なくとも一部の工程は、第1導電層の形成、第2導電層の形成及び歪検知素子の形成の少なくとも一部と同時に行われても良い。すなわち、ステップS102〜S105の少なくとも一部は、技術的に可能な範囲で、同時に実施されても良く、また、順序が入れ替わっても良い。
図20に表したように、基板70sの裏面(下面)からのエッチングを行う(ステップS106)。この加工には、例えば、Deep−RIEなどが用いられる。このとき、ボッシュプロセスを実施しても良い。
これにより、図21(d)に表したように、基板70sに、空洞部70が形成される。空洞部70が形成されていない部分が非空洞部71となる。これにより、トランスデュース薄膜64が形成される。
なお、トランスデュース薄膜64の縁部64egを連続的に保持する固定部67(例えば圧力センサ331など)を形成する場合は、基板70sの裏面からのエッチングを行うことで、トランスデュース薄膜64と同時に固定部67が形成される。
このように、この製造方法では、半導体基板上にトランスデュース薄膜64となる膜(トランスデュース膜64fm)を成膜し、その上に歪検知素子50(歪抵抗変化部)となる膜を成膜し、素子の形状にパターニングする。素子が形成され、通電可能とした後に、基板裏面からトランスデュース膜64fmまでエッチングして、トランスデュース薄膜64を形成する本実施形態によれば、高感度の圧力センサが製造できる。
ここで、ステップS101〜ステップS106に関して前述した製造方法により製造するトランスデュース薄膜64の構造に、ばらつきが生ずることがある。これにより、トランスデュース薄膜64の性能(例えばSNR(signal-noise ratio)など)に、ばらつきが生ずることがある。この例での「ばらつき」としては、例えば製造ロット間のばらつきなどが挙げられる。
これに対して、実施形態に係る圧力センサの製造方法では、第1歪検知素子50A及び第2歪検知素子50Bの確認テストを実施する(ステップS107)。より具体的には、図22(a)及び図22(b)に表したように、第1歪検知素子50Aから処理回路113へ送信される第1信号sg1が、第1閾値(例えば最適歪範囲A1の上限値)よりも大きいか否かを確認する。第1歪検知素子50Aの第1信号sg1が第1閾値よりも大きくない場合には、第1歪検知素子50Aを選択し固定する(ステップS108)。このとき、第2歪検知素子50Bから処理回路113へ送信される第2信号sg2を遮断する工程を実行する。例えば、第2歪検知素子50Bと処理回路113とを接続する配線を切断する(ステップS108)。
一方で、第1歪検知素子50Aの第1信号sg1が第1閾値よりも大きい場合には、第2歪検知素子50Bを選択し固定する(ステップS108)。このとき、第1歪検知素子50Aから処理回路113へ送信される第1信号sg1を遮断する工程を実行する。例えば、第1歪検知素子50Aと処理回路113とを接続する配線を切断する(ステップS108)。
なお、図22(a)及び図22(b)では、2つの歪検知素子50について説明したが、3つ以上の歪検知素子50の確認テストを実施してもよい。
実施形態に係る圧力センサの製造方法によれば、トランスデュース薄膜64の性能にばらつきが生じた場合でも、適用可能な歪検知素子50を採用することでより柔軟に対応することができ、圧力センサの製造効率を向上させることができる。
トランスデュース薄膜64の製造のばらつきを吸収する例について、図面を参照しつつさらに説明する。
図23(a)及び図23(b)は、複数のラインのうちの一ラインを固定出力する例を示す模式図である。
図23(a)は、二ラインの例を表す。図23(b)は、三ラインの例を表す。
図23(a)及び図23(b)の例では、Aラインからの出力信号LASg及びBラインからの出力信号LBSgをリアルタイムで切り替えて出力するのではなく、いずれかひとつのラインを固定出力するように電気回路が形成されている。トランスデュース薄膜64の感度がよかったりわるかったりと製造ばらつきがある場合に、その製造ばらつきのままSNRが異なる圧力センサ、音響マイクとして出荷するのではなく、Aライン及びBラインのいずれを最終出力とするかについて出荷前検査で判断する。そして、一方のラインのみを出力信号となるように設定することで、製品出荷時のSNRのばらつきを抑制する。
図示はしていないが、センサデバイスが完成した後、Aラインからの出力信号LASgの測定、及びBラインからの出力信号LBSgの測定を行う。その測定結果から、どちらのラインの信号を最終出力として選択して製品出荷するかの判断を行う。その判断結果に基づき、Aラインの出力信号LASg及びBラインの出力信号LBSgのいずれかの信号を電気的に遮断し、最終出力しないようにしたのち、製品として出荷する。この電気的な遮断手段は、選択スイッチ(電気スイッチ)を用いて、Aライン及びBラインのいずれかを選択する手法もあれば、物理的に配線を切断する(高抵抗状態にする、もしくは傷をつけて絶縁する)などの、いずれの手法でも構わない。
図23(a)は、Aライン及びBラインの二つラインの場合の例である。図23(b)のように、Aライン、Bライン、及びCラインと三つのライン、もしくは図示していないが四つ以上のラインの場合であっても同様である。
このようにすることで、図14に関して前述した例と同様には広ダイナミックレンジで圧力、音を取得することはできない一方で、トランスデュース薄膜64の製造ばらつきがあったとしてもそのばらつきをひきずることなく、製品としての最終出力としては感度及びSNRが揃った製品として出荷することが可能となる。
これは、音響センサ(マイク)の用途の場合に、単一マイクとして用いるときには各センサのばらつきは、さほど問題にならない。一方で、複数のマイクを用いてノイズキャンセルを行う、音声認識を行う、機械の故障や異常判断を行うなどの用途(音響処理システム)の場合には重要となることがある。この場合、単一マイクで高性能なものと、標準的な性能のマイクと、が混ざって複数あるよりも、性能が揃ったマイクとして複数あることが重要となることがある。
(第4の実施形態)
図24は、第4の実施形態に係る圧力センサを例示する模式的斜視図である。
図24に表したように、本実施形態に係る圧力センサ360には、基体71a及びセンサ部72(第1センサ部72A)に加え、半導体回路部110が設けられる。半導体回路部110の上に、基体71aが設けられ、基体71aの上にセンサ部72が設けられる。
半導体回路部110は、例えば、半導体基板111と、トランジスタ112と、を含む。
半導体基板111は、半導体基板111の主面111aを含む。半導体基板111は、主面111aに設けられた素子領域111bを含む。トランジスタ112は、素子領域111bに設けられる。
半導体回路部110は、処理回路113を含んでも良い。処理回路113は、素子領域111bに設けられても良く、それ以外の領域に設けられても良い。処理回路113は半導体回路部110の任意の場所に設けられる。処理回路113は、素子領域111bに設けられるトランジスタ112を含んでも良い。
基体71aは、例えば、半導体回路部110の上方に設けられる。基体71aには、空洞部70が形成されている。空洞部70は、トランジスタ112の上方に形成されている。空洞部70は、少なくとも、素子領域111bの上方に形成される。基体71aにおける空洞部70以外の部分が非空洞部71である。非空洞部71は、主面111aに対して平行な平面内で空洞部70と並置される。
この例では、トランジスタ112が形成された基板の上方に、歪検知素子50が形成されている。トランジスタ112と、歪検知素子50とは、実装工程で用いられるようなワイヤではなく、ウェーハ製造工程で一貫して形成される配線層で接続されている。これにより、圧力センサの小型化が可能になり、微小領域で歪を高感度に検知することができる。
トランジスタ112と歪検知素子50とを共通の基板上に形成することで、例えば、演算回路、増幅回路及び通信回路などの、センサで得られた情報を処理する回路(処理回路113など)を歪検知素子50と同じ基板上に形成することができる。高感度なセンサを演算回路と一体として形成することで、システム全体としてみたときに、小型化が実現できる。また、低消費電力化を実現することができる。
本実施形態においては、例えば、高感度のセンサを用い、さらに、そのセンサで得られた信号を演算処理する回路が、共通の基板上にシステムオンチップとして実現される。
ただし、既に説明したように、半導体回路部110は、基体71a及びセンサ部72とは別に設けられても良い。この場合には、例えば、パッケージ工程において、1つのパッケージ内に、基体71aとセンサ部72と半導体回路部110とが配置される。
図25(a)〜図25(c)は、第4の実施形態に係る圧力センサの構成を例示する模式図である。
図25(a)は、模式的斜視図であり、図25(b)及び図25(c)は、圧力センサを例示するブロック図である。
図25(a)に表したように、本実施形態に係る圧力センサ361は、基体71a、センサ部72及び半導体回路部110に加え、アンテナ115と、電気配線116と、をさらに含む。アンテナ115は、電気配線116を介して、半導体回路部110と接続される。圧力センサ361のセンサ部72は、例えば、図1及び図2に例示した圧力センサ310におけるセンサ部72と同様の構成を有する。すなわち、例えば、基体71aと、第1センサ部72Aと、が設けられる。第1センサ部72Aは、第1トランスデュース薄膜64Aと、第1固定部67Aと、第1歪検知素子50Aと、を含む。この例では、第1センサ部72Aは、第2歪検知素子50Bをさらに含む。これらの構成については上記の通りである。
図25(b)に表したように、送信回路117が圧力センサ361に設けられる。送信回路117は、歪検知素子50に流れる電気信号に基づくデータを無線で送信する。送信回路117の少なくとも一部は、半導体回路部110に設けることができる。半導体回路部110は、歪検知素子50に流れる電気信号に基づくデータを無線で送信する送信回路117を含むことができる。
図25(c)に表したように、圧力センサ361と組み合わせて用いられる電子機器118dには、受信部118が設けられる。電子機器118dとして、例えば、携帯端末などの電子装置が用いられる。
例えば、送信回路117を含む圧力センサ361と、受信部118を含む電子機器118dと、を組み合わせて用いることで、より便利になる。
この例では、図25(b)に表したように、圧力センサ361には、電子機器118dからの制御信号を受信する受信回路117rが設けられている。例えば、受信回路117rの少なくとも一部は、半導体回路部110に設けることができる。受信回路117rを設けることにより、例えば、電子機器118dを操作することで、圧力センサ361の動作を制御することができる。
図25(b)に表したように、この例では、圧力センサ361には、送信回路117として、例えば、歪検知素子50に接続されたADコンバータ117aと、マンチェスター符号化部117bと、が設けられる。さらに、切替部117cが設けられ、送信と受信を切り替える。タイミングコントローラ117dによりこの切り替えが制御される。そして、受信回路117rとして、データ訂正部117eと、同期部117fと、判定部117gと、が設けられる。さらに、電圧制御発振器117h(VCO)が設けられている。
一方、図25(c)に表したように、電子機器118dには、マンチェスター符号化部117b、切替部117c、タイミングコントローラ117d、データ訂正部117e、同期部117f、判定部117g及び電圧制御発振器117hが設けられ、さらに記憶部118a及び中央演算部118b(CPU)が設けられている。
(第5の実施形態)
本実施形態は、実施形態に係る圧力センサの製造方法に係る。以下では、1つの例として、圧力センサ360の製造方法について説明する。
図26は、第5の実施形態に係る圧力センサの製造方法を例示するフローチャート図である。
図26に表したように、本実施形態に係る圧力センサの製造方法においては、半導体基板111の上にトランジスタ112を形成する(ステップS110)。
本製造方法においては、半導体基板111の上に層間絶縁層114iを形成し、トランジスタ112の上に犠牲層114lを形成する(ステップS120)。
層間絶縁膜114iと犠牲層114lとの上に、トランスデュース薄膜64となる薄膜(例えばトランスデュース膜64fm)を形成する(ステップS121)。なお、場合によっては、以下の第1導電層がトランスデュース薄膜64を兼ねる場合もある。この場合は、ステップS121は省略される。
そして、第1配線層61となる第1導電層(導電層61f)を形成する(ステップS130)。
犠牲層114lの上の第1導電層(導電層61f)の上に、第1磁性層10を含む歪検知素子50を形成する(ステップS140)。
歪検知素子50の上に第2配線層62となる第2導電層(導電層62f)を形成する(ステップS150)。
層間絶縁層の中に、第1導電層(導電層61f)を半導体基板111と電気的に接続する第1配線61cと、第2導電層(導電層62f)を半導体基板111と電気的に接続する第2配線62cと、を形成する(ステップS160)。ステップS160は、例えば、上記のステップS110〜ステップS150の間、及び、ステップS150の後、の少なくともいずれかの工程において、1回、または、複数の処理により実施される。
そして、犠牲層114lを除去する(ステップS170)。
そして、第1歪検知素子50A及び第2歪検知素子50Bの確認テストを実施する(ステップS180)。例えば、図20、図22(a)及び図22(b)に関して説明した処理を行う。
そして、第1歪検知素子50Aまたは第2歪検知素子50Bを選択し固定する(ステップS190)。例えば、図22(a)及び図22(b)に関して説明した処理を行う。
実施形態に係る圧力センサの製造方法によれば、トランスデュース薄膜64の性能にばらつきが生じた場合でも、適用可能な歪検知素子50を採用することでより柔軟に対応することができ、圧力センサの製造効率を向上させることができる。また、高感度の圧力センサの製造方法を提供できる。
上記の犠牲層114lを除去する工程(ステップS170)は、例えば、犠牲層114lの上面(犠牲層114lの半導体基板111とは反対側の面)から犠牲層114lを除去(例えばエッチング)することを含む。
(第6の実施形態)
図27は、第6の実施形態に係るマイクロフォンの構成を例示する模式図である。
図27に表したように、本実施形態に係るマイクロフォン410は、実施形態に係る任意の圧力センサ及びそれの変形の圧力センサを含む。この例では、圧力センサ310が用いられている。マイクロフォン410は、携帯情報端末510の端部に組み込まれている。マイクロフォン410の内部の圧力センサ360におけるトランスデュース薄膜64は、例えば、携帯情報端末510における表示部420が設けられた面に対して実質的に平行である。ただし、実施形態はこれに限らず、トランスデュース薄膜64の配置は任意である。
本実施形態によれば、マイクロフォン410は、例えば小音量から大音量にわたる広いレンジの圧力に対して高感度となる。そのため、広いダイナミックレンジのマイクロフォン410を実現することができる。また、マイクロフォン410は、広域の周波数に対して高感度となる。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、圧力センサ及びマイクロフォンに含まれる基体、センサ部、トランスデュース薄膜、固定部、歪検知素子、磁性層、中間層、及び、処理回路などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した圧力センサ及びマイクロフォンを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての圧力センサ及びマイクロフォンも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。