JP2018019826A - 検出素子、測定装置、薬剤供給装置および検出素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】広い濃度範囲でも測定対象物質の濃度を高精度に測定可能な検出素子および測定装置、信頼性の高い薬剤供給装置、ならびに、前記検出素子を効率よく製造し得る検出素子の製造方法を提供する。【解決手段】測定対象物質と反応する酵素を含有した第1感知層3201が設けられた第1作用電極3111と、酵素の含有量が第1感知層より多い第2感知層3202が設けられた第2作用電極3112と、対電極312と、を備えることを特徴とする検出素子。また、第2感知層の膜厚は、前記第1感知層の膜厚より厚いことが好ましい。また、第3作用電極3113をさらに備えることが好ましく、第3作用電極には、酵素を含有しない無酵素層がさらに設けられていることが好ましい。【選択図】図6
Description
本発明は、検出素子、測定装置、薬剤供給装置および検出素子の製造方法に関するものである。
近年の健康志向の向上に伴って、特定の個人における血液、間質液、唾液、汗のような体液中における血糖値、乳酸値、抗体量および酵素量等を経時的に測定して、健康管理を実施することが行われている。
例えば糖尿病患者にとって、血糖値の経時的な測定(モニタリング)は特に重要である。
糖尿病患者はその症状によりI型とII型とに分けられるが、ともに膵臓からのインスリン分泌が正常ではないため、体内臓器がブドウ糖(グルコース)を正常に取り込むことが出来なくなり、代謝異常をきたし体重も減少する。さらには、血糖値が高い状態が長期間にわたって保たれていると、「糖尿病性網膜症」、「糖尿病性腎症」「糖尿病性細小血管障害」、「糖尿病性神経障害」等の重篤な合併症が発症してしまうことが知られている。このような重篤な合併症の発症を防止することを目的に、高血糖状態が続く患者はインスリンを注射により投与することで血糖値を正常な範囲内に維持させる治療方法がとられている。
I型糖尿病の患者は、膵臓疾患によりインスリンの分泌が全く無い為に、一日数回(最低食事前と就寝前の4回)の採血による血糖値測定を行い、インスリン投与をしなければならない。投与のタイミングとしては食後血糖値の過度な上昇を抑えるためには食前の血糖値を測定し、食事量のカロリーを計算した上でインスリンの投与量を決定し、食前に注射投与をおこなっている。また、血糖値の上昇として知られているのは「暁現象」と称される症状で、就寝8〜10時間後の明け方に血糖値が上昇する。しかしながら、この生理現象に対処するためには夜明け前に一度起きて、採血による血糖値測定を行い、高血糖であればインスリンを投与しなければならない。このように糖尿病患者(特にI型糖尿病患者)は一日中血糖値を気にしながらの生活を余儀なくされている。
このような患者および患者を補佐する家族の生活上の負担を軽減するため、すなわち患者および患者の家族のQOL(Quality of Life)を向上させるために、人工すい臓、または、それに準ずる装置の開発が求められている。そのために、まずは血糖値をより正確に測定/管理されることが必要となる。
例えば、血糖値センサーを体内(皮下組織)に埋め込み、患者の間質液中におけるグルコース濃度を長期に亘って監視する目的のデバイス、いわゆる、連続式グルコースモニター(CGM)装置の提案がなされている。このようなモニター装置で用いられているグルコースの定量技術には酵素反応が利用されている。
この酵素反応を用いたグルコース定量測定の基本原理は、グルコース(例えば、グルコースオキシダーゼ)と酸素が酵素近傍に存在するときに生成される過酸化水素を利用する。その生成した過酸化水素を電気分解することで発生した電流量を測定することにより、過酸化水素の量を定量化することができるため、これに基づいてグルコース濃度を算出することが可能となる。
例えば、特許文献1には、過酸化水素電極とその上に積層された過酸化水素選択透過膜および酵素膜とを備えたバイオセンサーが開示されている。このバイオセンサーでは、酵素反応によって発生した過酸化水素の量に応じて過酸化水素電極に発生する電流を測定し、その電流値に基づいてグルコースの量を算出している。
ここで、過酸化水素電極は、過酸化水素の他に、尿酸やアスコルビン酸等の妨害物質に対しても応答する。その結果、過酸化水素電極には、妨害物質による電流が発生してしまい、グルコースに由来する電流の測定感度が低下するという問題が発生する。
そこで、特許文献1では、妨害物質による電流を抑制する方法として、過酸化水素のみが優先的に透過する選択透過膜を用いている。
しかしながら、このようなモニター装置では、グルコースの濃度幅が広い場合、その広い濃度幅の全域にわたってグルコース濃度を精度よく測定することが難しいという課題がある。すなわち、グルコース濃度が低い場合には正確な測定が可能であっても、グルコース濃度が高い場合では測定精度が低かったり、あるいはその逆に、グルコース濃度が高い場合には正確な測定が可能であっても、グルコース濃度が低い場合では測定精度が低かったりするという課題を抱えている。
本発明の目的の一つは、広い濃度範囲でも測定対象物質の濃度を高精度に測定可能な検出素子および測定装置、信頼性の高い薬剤供給装置、ならびに、前記検出素子を効率よく製造し得る検出素子の製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の検出素子は、測定対象物質と反応する酵素を含有した第1感知層が設けられた第1作用電極と、
前記酵素の含有量が前記第1感知層より多い第2感知層が設けられた第2作用電極と、
対電極と、
を備えることを特徴とする。
本発明の検出素子は、測定対象物質と反応する酵素を含有した第1感知層が設けられた第1作用電極と、
前記酵素の含有量が前記第1感知層より多い第2感知層が設けられた第2作用電極と、
対電極と、
を備えることを特徴とする。
これにより、広い濃度範囲でも測定対象物質の濃度を高精度に測定可能な検出素子が得られる。
本発明の検出素子では、前記第2感知層の膜厚は、前記第1感知層の膜厚より厚い、ことが好ましい。
これにより、酵素の濃度を大きく変えることなく、酵素の量を異ならせることができ、製造し易さや酵素反応の速度を担保しつつ、より広い測定対象物質の濃度の範囲において、より高い精度で濃度を求めることができる。
本発明の検出素子では、第3作用電極をさらに備える、ことが好ましい。
これにより、第3作用電極において、例えば第1作用電極や第2作用電極で検出される電流値を補正するための情報を得ることができる。
これにより、第3作用電極において、例えば第1作用電極や第2作用電極で検出される電流値を補正するための情報を得ることができる。
本発明の検出素子では、前記第3作用電極には、前記酵素を含有しない無酵素層がさらに設けられている、ことが好ましい。
これにより、測定された電流値から妨害物質等に由来する電流値を除去する補正を行うことができ、測定対象物質に由来する電流をより高い精度で測定することができる。
本発明の検出素子では、参照電極をさらに備える、ことが好ましい。
これにより、測定対象物質の濃度をより精度よく求めることができる。
これにより、測定対象物質の濃度をより精度よく求めることができる。
本発明の測定装置は、本発明の検出素子と、
前記第1作用電極および前記第2作用電極に、それぞれ正電位を印加する電位印加部と、
前記第1作用電極と前記対電極との間の第1電流値、および、前記第2作用電極と前記対電極との間の第2電流値とから、前記測定対象物質の濃度を算出する演算部と、
を備えることを特徴とする。
前記第1作用電極および前記第2作用電極に、それぞれ正電位を印加する電位印加部と、
前記第1作用電極と前記対電極との間の第1電流値、および、前記第2作用電極と前記対電極との間の第2電流値とから、前記測定対象物質の濃度を算出する演算部と、
を備えることを特徴とする。
これにより、広い濃度範囲でも測定対象物質の濃度を高精度に測定可能な測定装置が得られる。
本発明の測定装置では、前記演算部は、前記第1電流値および前記第2電流値の少なくとも一方に係る所定の条件に基づき、前記第1電流値から前記測定対象物質の濃度を算出する第1演算パターンと、前記第2電流値から前記測定対象物質の濃度を算出する第2演算パターンと、を含む演算パターン群の中から1つを選択する、ことが好ましい。
これにより、より広い範囲の測定対象物質の濃度について、真の値により近い濃度を求めることができる。
本発明の測定装置では、前記演算部によって算出された前記測定対象物質の濃度を表示する表示部をさらに備える、ことが好ましい。
これにより、装着者に測定対象物質の濃度が容易にかつ連続的に知らされる。
これにより、装着者に測定対象物質の濃度が容易にかつ連続的に知らされる。
本発明の薬剤供給装置は、本発明の測定装置と、
前記測定装置による測定結果に基づき、薬剤を供給する供給部と、
を備えることを特徴とする。
前記測定装置による測定結果に基づき、薬剤を供給する供給部と、
を備えることを特徴とする。
これにより、演算装置での演算により、測定対象物質の濃度が算出されたとき、それに基づいて、供給部を介して、装着者に薬剤が自動的に投与される。
本発明の検出素子の製造方法は、本発明の検出素子を製造する方法であって、
前記第1感知層および前記第2感知層の少なくとも一方を、インクジェット法を用いて形成することを特徴とする。
前記第1感知層および前記第2感知層の少なくとも一方を、インクジェット法を用いて形成することを特徴とする。
これにより、第1作用電極および第2作用電極に対して選択的に酵素を含む溶液を塗布することができる。このため、溶液が意図しない領域に塗布されてしまったり、異なる溶液同士が混じり合ってしまったりするのを防止して、製造される検出素子の性能低下を抑制することができる。また、例えば、第2感知層を第1感知層よりも厚くすることを容易に行える。このため、検出素子を容易に(効率よく)製造することができる。
以下、本発明の検出素子、測定装置、薬剤供給装置および検出素子の製造方法を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。
まず、第1実施形態について説明する。
本実施形態では、本発明の測定装置を、間質液中におけるグルコース濃度を長期に亘って連続的に監視する連続式グルコースモニター(CGM)装置(グルコース測定装置)に適用した場合を一例に説明する。同様に、本実施形態では、本発明の検出素子を、グルコース測定装置に設けられた検出素子に適用した場合を一例に説明する。
なお、本発明の測定装置および本発明の検出素子は、グルコース濃度を連続的に監視する装置およびそれに設けられた素子に限定されず、体内から取り出した検体を随時測定する装置およびそれに設けられた素子に適用されていてもよい。また、これらの本発明は、間質液以外の液体、例えば唾液、汗のような体液についての測定にも用いられる。さらに、これらの本発明は、グルコース以外の測定対象物質、例えば、マルトース、スクロース、ラクトース、尿素等の測定にも用いられる。
<測定装置>
まず、本発明の検出素子が装着された測定装置(本発明の測定装置)について説明する。
まず、本発明の検出素子が装着された測定装置(本発明の測定装置)について説明する。
図1は、本発明の測定装置の第1実施形態を模式的に示す斜視図であり、測定装置が有する検出素子が備える脱着部を本体部に装着した状態を示し、図2は、本発明の測定装置の第1実施形態を模式的に示す斜視図であり、測定装置が有する検出素子が備える脱着部を本体部から離脱させた状態を示し、図3は、本発明の測定装置の第1実施形態が有する検出素子を皮膚に装着した状態を示す側面図、図4は、図3に示す検出素子が備えるカニューレを拡大して示す断面図、図5は、図3に示す検出素子が備える検出部を示す平面図、図6は、図5に示す検出部のA−A線断面図である。なお、以下の説明では、図3、図4および図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図5中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言う。
図1、図2に示す測定装置101は、検出素子100と、検出素子100でグルコース濃度に基づく電流値を得るための回路400、得られた電流値を解析する処理回路200を備えた演算装置210、および演算装置210で演算することで得られた測定値を表示するモニター151を備える表示部155と、検出素子100を表示部155に装着(接続)するコネクター131と、検出素子100とコネクター131とを接続する配線132と、を有する。
検出素子100は、図1〜図4に示すとおり、皮下組織502に挿入されるカニューレ111を備える本体部110と、本体部110に対して着脱可能であり、先端側に針部121を備える着脱部120とを有している。
着脱部120は、基端側に位置する把持部122と、先端側に位置する針部121と、を有しており、針部121を本体部110が備える貫通孔112に挿通させることで本体部110に装着され(図1参照)、さらに、把持部122を把持した状態で針部121を引き抜くことで離脱可能となっている(図2参照)。
針部121(挿入針)は、その先端が鋭利であり、全体形状が半円筒状をなしている。着脱部120を本体部110に装着させた際に、貫通孔112を貫通して本体部110の下面から突出することで、図4に示すとおり、カニューレ111の側面の一部を取り囲み、これにより、カニューレ111と嵌合するよう構成されている。したがって、本体部110を表皮501に装着する際に、針部121が表皮501を突き刺すこととなるが、このとき、針部121に取り囲まれたカニューレ111も針部121とともに表皮501を突き刺し、皮下組織502に挿入される。そして、この皮下組織502へのカニューレ111を伴った針部121の挿入の後に、把持部122を把持して着脱部120を本体部110から離脱させることで、カニューレ111を皮下組織502に挿入(残存)させたまま針部121を皮下組織502から取り除く(引き抜く)ことができる。このように、着脱部120(針部121)は、本体部110を表皮501に装着した際に、本体部110から突出するカニューレ111を、経皮的に、皮下組織502へと配置させるための誘導部材として用いられる。
本体部110は、その全体形状がドーム状をなしており、その下面から突出するカニューレ111を備えている。この本体部110は、下面に粘着層を備えており、この下面を表皮501に当接させることで、装着(固定)される。この際、前述した針部121の誘導により、カニューレ111が皮下組織502に配置される。
カニューレ111は、全体形状が円筒状をなし、その基端から先端に連通する連通孔(貫通孔)で構成される中空部114と、この中空部114をカニューレ111の外側に開放する窓部113とを有する。
また、中空部114には、本体部110が備える検出部300が設けられている。この検出部300に、皮下組織502に血管503から移行することで含まれる間質液が、窓部113を介して接触する。検出部300には、後述するようにグルコースと反応する酵素が固定化されている。そのため、検出部300により、間質液中におけるグルコースが検出される。そして、本体部110を表皮501に装着することで、カニューレ111を皮下組織502に長期に亘って配置させることができるため、この間質液中におけるグルコースの検出を連続的に行うことができる。すなわち、本体部110(検出素子100)は、間質液中におけるグルコース濃度を連続的に観察するCGMS(continuous glucose monitoring system)に用いられる。
なお、前述したように、測定装置101はグルコース濃度を連続的に監視するものでなくてもよい。その場合には、検出部300を皮下組織502に配置しておく必要はなく、別途取り出した体液に検出部300を接触させるようにすればよい。
ここで、検出部300によるグルコースの検出は、以下のような原理を用いて行われる。
すなわち、酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)の存在下でグルコースと酸素とが酵素近傍に存在すると酵素反応により、下記式(1)のようにグルコン酸と過酸化水素とが生成する。そして、その生成した過酸化水素に電圧(例えば600mV)を印加して電気分解することで発生した電流量を、作用電極と対電極との間で測定することにより過酸化水素の量を定量化することができる。そのため、この定量化された過酸化水素の量に基づいて、グルコース濃度を算出することができる。
なお、本実施形態の場合、グルコースと反応する酵素としてグルコースオキシダーゼを例示しているが、例えば測定対象物質がマルトースの場合には酵素としてマルターゼが、測定対象物質がスクロースの場合には酵素としてスクラーゼが、測定対象物質がラクトースの場合には酵素としてb−ガラクトシダーゼが、測定対象物質が尿素の場合には酵素としてウレアーゼが、それぞれ用いられる。
過酸化水素の電気分解の際には、作用電極(アノード)側では、下記式(2)のように、過酸化水素の電気分解によりプロトン、酸素および電子が生成され、対電極(カソード)側では、下記式(3)のように、作用電極から供給された電子と、電極付近に存在する酸素および水とが反応することにより水酸化物イオンが生成される。
酵素反応: グルコース+O2+H2O → グルコン酸+H2O2 ・・・ (1)
作用電極: H2O2 → O2+2H++2e− ・・・ (2)
対電極 : O2+H2O+4e− → 4OH− ・・・ (3)
作用電極: H2O2 → O2+2H++2e− ・・・ (2)
対電極 : O2+H2O+4e− → 4OH− ・・・ (3)
以下、かかる原理を用いてグルコースを検出する検出部300について詳述する。
検出部300は、図5および図6に示すとおり、基板301と、第1作用電極3111と、第2作用電極3112と、第3作用電極3113と、対電極312と、参照電極313と、配線314と、を有している。なお、以下の説明では、第1作用電極3111、第2作用電極3112、第3作用電極3113、対電極312、参照電極313および配線314をまとめて「導電層315」という。
検出部300は、図5および図6に示すとおり、基板301と、第1作用電極3111と、第2作用電極3112と、第3作用電極3113と、対電極312と、参照電極313と、配線314と、を有している。なお、以下の説明では、第1作用電極3111、第2作用電極3112、第3作用電極3113、対電極312、参照電極313および配線314をまとめて「導電層315」という。
基板301は、検出部300を構成する電極や配線等を支持するものである。
基板301の構成材料としては、大気、水および体液に対して化学反応することなく安定したものであれば、特に限定されることなく各種材料を用いることができる。具体的には、ガラス、SUSのような無機材料、非晶ポリアリレート(PAR:Polyarylate)、ポリサルホン(PSF:Polysulfone)、ポリエーテルサルホン(PES:Polyethersulfone)、ポリフェニレンスルファイド(PPS:Polyphenylene sulfide)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:Polyether ether ketone / 別称:芳香族ポリエーテルケトン)、ポリイミド(PI:Polyimide)、ポリエーテルイミド(PEI:Polyetherimide)、フッ素樹脂(Fluorocarbon polymer)や、ナイロン、アミドを含むポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル等の樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
基板301の構成材料としては、大気、水および体液に対して化学反応することなく安定したものであれば、特に限定されることなく各種材料を用いることができる。具体的には、ガラス、SUSのような無機材料、非晶ポリアリレート(PAR:Polyarylate)、ポリサルホン(PSF:Polysulfone)、ポリエーテルサルホン(PES:Polyethersulfone)、ポリフェニレンスルファイド(PPS:Polyphenylene sulfide)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:Polyether ether ketone / 別称:芳香族ポリエーテルケトン)、ポリイミド(PI:Polyimide)、ポリエーテルイミド(PEI:Polyetherimide)、フッ素樹脂(Fluorocarbon polymer)や、ナイロン、アミドを含むポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル等の樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
導電層315は、後述する酵素を含む層で生成した過酸化水素を電気分解することで発生した電子を授受する。
第1作用電極3111、第2作用電極3112、第3作用電極3113、対電極312および参照電極313は、互いに独立して、配線314、配線132およびコネクター131を介して、回路400および処理回路200と電気的に接続されている。これにより、第1作用電極3111と対電極312との間、第2作用電極3112と対電極312との間、および第3作用電極3113と対電極312との間で測定された電流値が、配線314、132を介して回路400および処理回路200に伝達され、処理回路200を備える演算装置210の解析により、間質液中におけるグルコース濃度が測定値として算出される。そして、この測定値(測定対象物質の濃度)がモニター151(表示部155)に表示される。これにより、装着者にグルコース濃度が容易にかつ連続的に知らされる。
また、導電層315の構成材料としては、酵素電極として用いることが可能であれば、特に限定されず、それぞれ、例えば、金、銀、白金またはこれらを含む合金のような金属材料、ITOのような金属酸化物系材料、カーボン(グラファイト)のような炭素系材料等が挙げられる。
なお、導電層315の成膜は、これらの電極を白金、金またはそれらの合金で構成する場合、スパッター法、メッキ法、真空加熱蒸着法等により成膜可能である。また、これらの電極をカーボングラファイトで構成する場合、カーボングラファイトを適当な溶剤に溶かし込んだバインダーに混ぜ込んで塗布することで実現できる。
また、本実施形態に係る第1作用電極3111は、第1感知層3211、中間層322および分析物調整層323が第1作用電極3111側から順に積層された積層体で覆われている。この積層体を「第1センシング層3201」とする。
さらに、本実施形態に係る第2作用電極3112は、第2感知層3212、中間層322および分析物調整層323が第2作用電極3112側から順に積層された積層体で覆われている。この積層体を「第2センシング層3202」とする。
このような第1センシング層3201および第2センシング層3202のうち、第1感知層3211および第2感知層3212は、それぞれ中間層322および分析物調整層323を介して浸透したグルコースから酵素反応により過酸化水素を生成する。そして、生成された過酸化水素は、第1作用電極3111および第2作用電極3112に供給され、電流として検出される。この過酸化水素の量は、グルコースから過酸化水素を生成する酵素反応の頻度に対応しているため、間接的にグルコースの量(濃度)を示す指標となり得る。
これらの第1感知層3211および第2感知層3212は、酵素を含んで構成される層であり、前述の通り検出素子100は間質液中におけるグルコース(基質)を検出(感知)するものである。このため、この酵素としては、グルコースオキシダーゼ(GOD)が好ましく用いられる。グルコースオキシダーゼによれば、前記式(1)で表わされる酵素反応を、優れた活性度で進行させることができるため、O2およびH2Oの存在下で、グルコースから過酸化水素を確実に生成させることができる。
また、第1感知層3211および第2感知層3212には、酵素の他に、他成分として、酵素を保持することを目的として樹脂材料が含まれる。
樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、メチルセルロース(MC)、アセチルセルロース(酢酸セルロース)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルアルコール−ポリ酢酸ビニル共重合体(PVA−PVAc)等が好ましく用いられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの樹脂材料を用いることにより、第1感知層3211および第2感知層3212中に酵素を保持し、外部に酵素が移動することを抑制することができる。
さらに、第1感知層3211および第2感知層3212には、結合剤および硬化剤の他、アルブミン、リン酸緩衝材等が含まれていてもよい。
結合剤および硬化剤としては、例えばアルデヒド、イソシアネート等の官能基を分子内に2つ以上有している材料が挙げられる。このような結合剤および硬化剤の少なくとも一方が第1感知層3211および第2感知層3212中に含まれることにより、優れた保持率で酵素を保持することができる。
この結合剤および硬化剤としては、具体的には、例えば、グルタルアルデヒド、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、UV硬化性を利用した結合剤および硬化剤としては、例えば、ポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム化合物(PVA−SbQ)等が挙げられる。
なお、このような結合剤および硬化剤を含む第1感知層3211および第2感知層3212は、結合剤および硬化剤と、これらが備える官能基と結合できる官能基、具体的には水酸基、アミノ基、エポキシ基等を末端に有する樹脂材料と酵素とを混合した樹脂組成物を硬化させることにより得ることができる。
さらに、UV硬化性を利用した結合剤および硬化剤としては、ポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム化合物(PVA−SbQ)を用いる場合には、官能基を末端に有する樹脂材料の添加を省略し、PVA−SbQと酵素とを含有する樹脂組成物を硬化させることにより得られた硬化物によって第1感知層3211および第2感知層3212を構成することもできる。この場合、第1感知層3211および第2感知層3212は、PVA−SbQで構成される多孔体に酵素が保持されるため、中間層322側から浸透してくる間質液を円滑に取り込むことができ、間質液内に含まれるグルコースと酵素との接触機会を増大させることができる。その結果、前記式(1)で表わされる酵素反応を、円滑に進行させることができるため、O2およびH2Oの存在下で、グルコースから過酸化水素を確実に生成させることができる。また、PVA−SbQで構成される多孔体に、酵素を強固に保持することができるため、酵素が中間層322側に移行するのを的確に抑制または防止することができる。
また、アルブミンとしては、人アルブミン、牛アルブミン等が挙げられる。アルブミンが含まれることにより、酵素の保護・安定化を図ることができる。
このような第1感知層3211および第2感知層3212の平均厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上10.0μm以下程度であるのが好ましく、0.3μm以上5.0μm以下程度であるのがより好ましい。これにより、中間層322側から浸透したグルコースと第1感知層3211および第2感知層3212に保持された酵素との酵素反応により過酸化水素を円滑に生成することができるとともに、生成した過酸化水素を円滑に導電層315側に供給することができる。
分析物調整層323は、中間層322を介して第1感知層3211および第2感知層3212の上側に積層されている。この分析物調整層323は、第1感知層3211および第2感知層3212が測定対象(間質液等)と直接接触することを抑制または防止しつつ、グルコース(基質)を透過させる。これにより、中間層322を介して、グルコースを第1感知層3211および第2感知層3212に円滑に浸透させる機能を発揮する。すなわち、第1感知層3211および第2感知層3212への透過を調整する機能を有するものである。さらに、第1感知層3211および第2感知層3212に保持されている酵素が、間質液側に漏出するのを防止するブロッキング層としての機能も発揮する。
また、かかる機能を備える分析物調整層323は、グルコースよりも酸素をより多く透過(浸透)させ得ることが好ましい。これにより、上記式(1)〜(3)を用いたグルコースの検出において、酸素が不足することに起因して、グルコースの測定値が見かけ上、低下してしまうのを的確に抑制または防止することができる。すなわち、グルコース測定値の検出精度の向上が図られる。
このような分析物調整層323としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート化合物等の架橋剤と、末端水酸基を備えるポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等を単体もしくは混合させたものとを用いて、ウレタン結合を生成させて架橋構造を構築したものが特に好ましく用いられる。これにより、上述した分析物調整層323としての機能をより顕著に発揮させることができる。
また、その他、イソシアネートとアミノ基とを用いることで尿素樹脂を形成させた、アミノプロピルポリシロキサン等で構成されるものを用いることができ、さらには、ポリジメチルシロキサンのようなシロキサン樹脂で構成されるものを用いることもできる。
このような分析物調整層323の平均厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上10.0μm以下程度であるのが好ましく、0.3μm以上5.0μm以下程度であるのがより好ましい。これにより、分析物調整層323内にグルコースを円滑に透過させることができるとともに、第1感知層3211および第2感知層3212に保持されていた酵素が、間質液側に漏出するのを的確に抑制または防止することができる。
中間層322は、酵素を含有しない層であり、第1感知層3211および第2感知層3212と分析物調整層323との間に位置して、これらを互いに離間させている。これにより、中間層322は、第1感知層3211および第2感知層3212を被覆して補強する保護層としての機能を発揮する。そのため、第1感知層3211および第2感知層3212に外的な負荷が掛かったとしても、物理的な損傷が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
また、第1感知層3211および第2感知層3212と分析物調整層323との間に中間層322が位置しているため、中間層322は、酵素が分析物調整層323側に移行するのを防止するバリア層としての機能を発揮することもできる。
この中間層322の構成材料としては、特に限定されないが、UV硬化性および生体適合性を示し、かつ、優れた親水性を示し円滑にグルコースを透過させ得るものが好ましく用いられ、具体的には、例えば、ポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム化合物(PVA−SbQ)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA/PAA−HEMA)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリNイソプロピルアクリルアミド化ポリビニルアルコール(PNIPAAm−PVA)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような中間層322は、酵素を含まない層であれば、その構成は特に限定されないが、構成材料として第1感知層3211および第2感知層3212と同一の主成分(すなわち、上述した他成分)を含有することが好ましい。これにより、中間層322と第1感知層3211および第2感知層3212との界面を均一なものとすることができる。そのため、分析物調整層323から浸透してきたグルコースにとって、中間層322と第1感知層3211および第2感知層3212との界面が障壁になり難くなる。これにより、この供給されたグルコースと第1感知層3211および第2感知層3212に保持された酵素との酵素反応により、円滑に過酸化水素を生成させることができる。
なお、このような中間層322と第1感知層3211および第2感知層3212との構成材料の組み合わせとしては、例えば、中間層322と第1感知層3211の構成材料、および、中間層322と第2感知層3212の構成材料として、ともに、ポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム化合物(PVA−SbQ)を主成分として含有する組み合わせが好ましい。すなわち、第1感知層3211および第2感知層3212は、それぞれ酵素とPVA−SbQとを含み、中間層322は、酵素を含まないでPVA−SbQを含んで形成されていることが好ましい。さらに、中間層322は、酵素を含まないPVA−SbQで構成される多孔体で構成され、第1感知層3211および第2感知層3212は、それぞれPVA−SbQで構成される多孔体に酵素が保持された構成となっていることが好ましい。
このように、中間層322および第1感知層3211および第2感知層3212がともに多孔体で構成され、かつ、親水性に優れるPVA−SbQを用いることにより、分析物調整層323から浸透してくる間質液を、中間層322を介して、円滑に第1感知層3211および第2感知層3212内に取り込ませることができる。そのため、間質液内に含まれるグルコースと酵素との接触機会が増大し、前記式(1)で表わされる酵素反応を円滑に進行させることができる。その結果、O2およびH2Oの存在下で、グルコースから過酸化水素を確実に生成させることができる。
また、PVA−SbQで構成される多孔体に、酵素を強固に保持することができるため、酵素が中間層322側に移行するのを的確に抑制または防止することができる。
さらに、中間層322と第1感知層3211および第2感知層3212との界面において、第1感知層3211および第2感知層3212が中間層322と接触することに起因して、酵素が失活するのを的確に抑制または防止することができる。
なお、中間層322には、上述した構成材料の他、アルブミン等が含まれていてもよい。また、アルブミンとしては、人アルブミン、牛アルブミン等が挙げられ、アルブミンが含まれることにより、第1感知層3211および第2感知層3212の上部界面(上面)における、酵素の保護・安定化を図ることができる。
また、中間層322は、第1感知層3211および第2感知層3212と分析物調整層323との間に位置することで、これら同士を離間するスペーサーとしての機能を発揮する。
ここで、分析物調整層323は、特に好ましくはウレタン結合を含む架橋構造を構築したもので構成され、この場合、分析物調整層323にはウレタン結合の形成の際に残存したイソシアネート基が含まれる。このようなイソシアネート基は、反応性に優れるため、仮に、第1感知層3211および第2感知層3212と分析物調整層323とが中間層322を介することなく接触している場合、イソシアネート基が酵素に接触することによって、酵素の活性度の低下ひいては酵素の失活を招き、間質液中におけるグルコースの検出(定量)感度に不具合が生じる。
これに対し、第1感知層3211および第2感知層3212と分析物調整層323との間に中間層322を介在させることにより、イソシアネート基と酵素との接触機会を減少させることができる。これにより、酵素の活性度が低下するのを的確に抑制または防止することができる。その結果、間質液中におけるグルコースの検出(定量)感度に不具合が生じることなく、グルコースを検出することができる。
このような中間層322の平均厚さは、具体的には、0.1μm以上25μm以下程度であるのが好ましく、0.3μm以上12μm以下程度であるのがより好ましい。これにより、酵素の活性度の低下を的確に抑制または防止しつつ、優れた検出感度でグルコースの濃度を検出することができる。
なお、第1センシング層3201および第2センシング層3202のうち、中間層322および分析物調整層323は必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。また、第1センシング層3201および第2センシング層3202には、その他の層が設けられていてもよく、このような層としては、例えば第1感知層3211および第2感知層3212の下側に積層されたノイズ除去層が挙げられる。
このノイズ除去層は、間質液中に含まれる可能性があるアセトアミノフェン、アスコルビン酸、および尿酸等の化合物が第1感知層3211および第2感知層3212に含まれる成分に反応したり、導電層315に到達したりすることに起因した、グルコース測定値の検出感度の低下を阻止する機能を有するものである。
このノイズ除去層の構成材料としては、前記機能を発揮し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、メチルセルロース(MC)、アセチルセルロース(酢酸セルロース)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアルコール−ポリ酢酸ビニル共重合体(PVA−PVAc)、メタクリル酸ヒドロキシエチル、およびポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(HEMA)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、ノイズ除去層を不溶化させるために、イソシアネートを官能基として用い得るように、イソシアネート系化合物をノイズ除去層に添加してもよいし、UV硬化性を利用し得るように、ポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム化合物(PVA−SbQ)等をノイズ除去層に添加してもよい。
さらに、ノイズ除去層にアルブミンを含有させてもよい。これにより、ノイズ除去層上に位置する感知層の下部境界面(下面)を保護することができる。
ここで、本実施形態に係る第1感知層3211および第2感知層3212は、それぞれグルコース(基質)と反応するグルコースオキシダーゼ等の酵素を含んでいる。このうち、第2感知層3212は、第1感知層3211よりも多い量の酵素を含んでいる。このため、酵素の濃度を大きく変えない場合、酵素の量が多い分、第1感知層3211よりも大きな体積(厚さ)を確保する必要がある。その結果、第2感知層3212では、間質液からの酸素の供給が不足し易くなる。酸素の供給が不足した場合、酵素反応が進み難くなり、第2作用電極3112に流れる電流値が微弱になる。このため、ノイズに対する信号の割合(S/N比)が低下し、感度が低下する。
一方、第1感知層3211は、酵素の量が少ない分、第2感知層3212よりも小さな体積(厚さ)で済む。このため、間質液から十分な量の酸素が供給されるため、第1作用電極3111では電流値をより高い確度で測定することが可能になる。しかしながら、グルコース濃度が高い場合には、第1感知層3211が含む酵素の量が相対的に少なくなる。このため、グルコースに対する酵素反応が追い付かない状態が生じる。その結果、グルコース濃度が高い場合には、第1作用電極3111に本来流れるはずの電流値よりも小さい電流値しか流れなくなるという問題が生じる。
このような酵素の量と電流値との関係を図7に示す。
このような酵素の量と電流値との関係を図7に示す。
図7は、グルコース濃度の異なるグルコース溶液に検出部300を浸漬したとき、第1作用電極3111と対電極312との間に流れた電流値とグルコース濃度との関係を表す検量線C1と、第2作用電極3112と対電極312との間に流れた電流値とグルコース濃度との関係を表す検量線C2と、を示すグラフである。
図7のうち、検量線C2では、検量線C1に比べて直線の傾きが小さい。このため、グルコース濃度が低い領域GLでは、グルコースに由来する電流(信号)が、妨害物質に由来する電流(ノイズ)の影響を受け易くなり、信号の測定感度が低下する。
一方、グルコース濃度が高い領域GHでは、信号の絶対値が大きくなるため、ノイズの影響を受け難くなる。加えて、第1感知層3211には相対的に多くの酵素が含まれているため、グルコース濃度が高くなっても酵素反応を継続させることができる。このため、比較的高い感度でグルコースに由来する電流(信号)を測定することができる。
したがって、第2感知層3212は、グルコース濃度が高い領域GHの測定に適しているといえる。
これに対し、検量線C1では、グルコース濃度が低い領域GLにおいて、直線の傾きが検量線C2よりも大きい。このため、グルコース濃度が低い領域GLでは、比較的高い感度でグルコースに由来する電流(信号)を検出することができる。
一方、グルコース濃度が高い領域GHでは、グルコース濃度が高くなるにつれて直線の傾きが徐々に小さくなっている。このため、信号の測定感度が低下する。
したがって、第1感知層3211は、グルコース濃度が低い領域GLの測定に適しているといえる。
以上のことから、第1感知層3211と第2感知層3212は、それぞれ測定に適したグルコース濃度が互いに異なっている。
ところで、本実施形態では、検量線C1と検量線C2とを同時に取得することが可能である。すなわち、検出素子100は、測定対象物質と反応する酵素を含有した第1感知層3211が設けられた第1作用電極3111と、酵素の含有量が第1感知層3211より多い第2感知層3212が設けられた第2作用電極3112と、対電極312と、を備えている。このため、2つの検量線の間で、より信頼性の高いグルコース濃度の領域を分担し合うことができる。したがって、2つの検量線を適宜使い分けることにより、グルコース濃度が小さい領域から大きい領域に至るまで、すなわち、広い濃度範囲であっても、グルコース濃度を高精度に測定することが可能になる。
例えば、間質液中のグルコース濃度が小さい領域(図7では一例としてグルコース濃度が境界GBよりも小さい領域GL)では、第1作用電極3111と対電極312との間に流れた電流値を検量線C1に照らすことにより、グルコース濃度をより正確に求めることができる。
一方、間質液中のグルコース濃度が大きい領域(図7では一例としてグルコース濃度が境界GBよりも大きい領域GH)では、第2作用電極3112と対電極312との間に流れた電流値を検量線C2に照らすことにより、グルコース濃度を求めることができる。この領域GHでは、検量線C2がほぼ直線になっており、グルコース濃度が高くても高精度に求めることができる。
なお、領域GLと領域GHとの境界GBは、適宜設定され、限定されるものではない。一例としては、図7に示す検量線C1が直線から曲線に変化する領域、すなわち検量線C1の直線の上端付近に設定される。このような直線の上端付近は、第1感知層3211が感度よく電流を測定し得る上限に近いと考えられる。このため、検量線C1において境界GBに対応する電流値の境界ABは、適用する検量線を検量線C1と検量線C2との間で切り替える動作を行うための条件(しきい値)の一例となる。
以上のように、第1感知層3211と第2感知層3212との間で含まれる酵素の量を互いに異ならせる(第2感知層3212の方が多い)ことにより、高い精度で測定可能なグルコース濃度の範囲についても第1感知層3211と第2感知層3212との間で互い分担することができる。その結果、広いグルコース濃度の範囲において、より真の値に近いグルコース濃度を求めることができる。
また、第1作用電極3111と対電極312との間を流れる電流値と第2作用電極3112と対電極312との間を流れる電流値の双方を用い、これらに任意の演算を加えて算出された値を用いることにより、さらに真の値に近いグルコース濃度を求めることもできる。例えば、検量線C1を用いて求めたグルコース濃度と検量線C2を用いて求めたグルコース濃度の平均値を算出し、これを求めるべきグルコース濃度として採用するようにしてもよい。
なお、第1感知層3211と第2感知層3212との間で含まれる酵素の量を互いに異ならせる(第2感知層3212の方を多くする)方法としては、例えば、前述したような第1感知層3211と第2感知層3212との間で厚さを互いに異ならせる方法の他、酵素の密度を互いに異ならせる方法等も挙げられる。このうち、互いに厚さを異ならせる方法が好ましく用いられる。すなわち、第2感知層3212の膜厚は、第1感知層3211の膜厚より厚い。この方法によれば、酵素の密度を大きく変えることなく、酵素の量を異ならせることができる。酵素の密度は、製造上の理由(溶液における酵素の溶解度に上限がある)や酵素反応への影響といった観点から、その調整幅が限られるという背景もある。このため、それに代わって厚さを異ならせるようにすれば、製造し易さや酵素反応の速度を担保しつつ、より広いグルコース濃度の範囲において、高い精度でグルコース濃度を求めることができる。
また、互いに厚さを異ならせる方法を採用することにより、第2感知層3212の面積を大きくすることなく酵素の量を多くすることができるという利点もある。このため、検出部300の小型化を図ることができ、例えば皮膚に装着したときの違和感を抑えることができる。
第1感知層3211および第2感知層3212の厚さは、前記範囲内において互いに異ならせればよいが、一例として、第1感知層3211の平均厚さを1としたとき、第2感知層3212の平均厚さを1.01以上30以下とするのが好ましく、1.5以上20以下とするのがより好ましく、2以上15以下とするのがさらに好ましい。これにより、両者間における酵素量の差が最適化され、第1感知層3211と第2感知層3212との間でそれぞれ高い精度で測定可能なグルコース濃度の範囲を互いに十分にずらすことができる。その結果、さらに広いグルコース濃度の範囲においても、より真の値に近いグルコース濃度を求めることができる。
なお、これらの層の平均厚さは、例えば、第1センシング層3201や第2センシング層3202の断面において、第1作用電極3111や第2作用電極3112の表面の法線方向における第1感知層3211や第2感知層3212の長さ、つまり厚さを10か所以上で測定し、それを平均することによって求められる。
また、本実施形態は、前述したように、第1作用電極3111および第2作用電極3112とは別の電極として、第3作用電極3113をさらに備えている。そして、第3作用電極3113は、無酵素層33、中間層322および分析物調整層323が第3作用電極3113側から順に積層された積層体で覆われている。この積層体を「第3センシング層3203」とする。このような第3作用電極3113を設けることにより、例えば後述する無酵素層33のように、第1作用電極3111や第2作用電極3112で検出される電流値を補正するための情報を得ることができる。その結果、グルコース濃度の測定精度をより高めることができる。
このような第3センシング層3203のうち、無酵素層33は、酵素を含まない層である。すなわち、第3作用電極3113には、酵素を含有しない無酵素層33がさらに設けられている。このような無酵素層33を設けることにより、測定装置101において求められるグルコース濃度の値を、さらに真の値に近づけることができる。
すなわち、無酵素層33は、酵素を含まないため、第3作用電極3113と対電極312との間にはグルコースに対する酵素反応に由来する電流がほとんど流れない。その一方、間質液中に、グルコース濃度の測定に影響を及ぼすような妨害物質(例えば、尿酸、アスコルビン酸等)が含まれている場合、この妨害物質は無酵素層33に含まれる物質や第3作用電極3113と反応し、第3作用電極3113と対電極312との間に電流を流す。したがって、第3作用電極3113と対電極312との間には、グルコースに由来する電流はほとんど流れない一方、妨害物質に由来する電流は流れることになる。
加えて、間質液の温度やpH等の環境因子も、電流値に影響を及ぼす。このため、第3作用電極3113と対電極312との間に流れる電流には、このような環境因子の影響も加味されることとなる。
ところで、このような妨害物質に由来する電流や環境因子に伴う電流(以下、まとめて「妨害物質等に由来する電流」という。)は、第1作用電極3111と対電極312との間や第2作用電極3112と対電極312との間にも流れているはずである。その一方、妨害物質等に由来する電流は、グルコースに由来する電流(信号)にとってノイズとなるため、本来は除去されるべき電流である。特に、グルコースに由来する電流値が小さい場合には、妨害物質等に由来する電流値が相対的に大きくなるため、その影響が顕在化することとなる。
そこで、演算装置210では、第1作用電極3111と対電極312との間を流れる電流値、または、第2作用電極3112と対電極312との間を流れる電流値から、第3作用電極3113と対電極312との間を流れる電流値を差し引く演算を加えるのが好ましい。このような演算を加えることにより、測定された電流値から妨害物質等に由来する電流値(ベースライン)を除去する補正を行うことができ、グルコースに由来する電流をより高い精度で測定することができる。その結果、グルコース濃度をより高い精度で求めることができる。
また、このような第3センシング層3203が有する機能は、前述したノイズ除去層が有する機能の少なくとも一部を代替することができる。例えば、ノイズ除去層は、前述したように、間質液中に含まれる可能性があるアセトアミノフェン、アスコルビン酸、尿酸等の化合物(妨害物質)が第1感知層3211および第2感知層3212に含まれる成分に反応したり、導電層315に到達したりすることを阻止する機能を有するが、第3センシング層3203を設けることによって可能となる電流値の補正は、この機能を代替し得るものとなる。よって、第3センシング層3203を設けることにより、ノイズ除去層を設けなくてもノイズ除去層が有する機能を実現することができる。そして、ノイズ除去層が有する機能を確保しつつ、ノイズ除去層を設けることによる弊害、例えばグルコースの透過性が低下したり、検出部300の構成が複雑になったりする弊害を避けることができる。
このような無酵素層33の平均厚さは、特に限定されないが、例えば第1感知層3211の平均厚さの0.1倍以上10倍以下であるのが好ましく、0.5倍以上5倍以下であるのがより好ましく、第1感知層3211の平均厚さと第2感知層3212の平均厚さとの間にあるのがさらに好ましい。これにより、第3作用電極3113と対電極312との間において、第1作用電極3111と対電極312との間や第2作用電極3112と対電極312との間に流れる妨害物質等に由来する電流値により近い値の電流が流れることになる。その結果、このような第3作用電極3113と対電極312との間に流れる電流値(ベースライン)を差し引く演算を行うことにより、グルコースに由来する電流をさらに高い精度で測定することができ、グルコース濃度をさらに高い精度で求めることができる。
また、無酵素層33は、酵素を含まない以外は構成材料として第1感知層3211や第2感知層3212と同一の主成分を含有することが好ましい。これにより、第3作用電極3113と対電極312との間に流れる妨害物質等に由来する電流値を、第1作用電極3111と対電極312との間や第2作用電極3112と対電極312との間に流れる妨害物質等に由来する電流値により近づけることができる。
なお、無酵素層33が酵素を含まないとは、意図的に酵素を含ませないようにして無酵素層33が形成されていることを指す。したがって、製造過程で意図せず混入した酵素や不純物として混入した酵素、測定しようとする基質(本実施形態ではグルコース)に反応し得る酵素以外の酵素については、無酵素層33に含有することが許容される。なお、意図せず混入する場合、その酵素の量は、質量比で、第1感知層3211における酵素の量の10分の1以下であるのが好ましく、100分の1以下であるのがより好ましい。
また、無酵素層33上に成膜される中間層322および分析物調整層323については、前述したものと同様である。
さらに、中間層322と無酵素層33との関係についても、前述した中間層322と第1感知層3211および第2感知層3212との関係と同様である。
なお、図6では、検出部300において、第1センシング層3201に含まれた中間層322および分析物調整層323、第2センシング層3202に含まれた中間層322および分析物調整層323、ならびに、第3センシング層3203に含まれた中間層322および分析物調整層323が互いに繋がっているが、本発明はかかる構成に限定されず、これらが互いに離間していてもよい。
また、回路400では、検出部300を駆動するため、配線314、132を介して、第1作用電極3111と参照電極313との間、第2作用電極3112と参照電極313との間、および、第3作用電極3113と参照電極313との間に、それぞれ電圧を印加する。このとき、例えば、第1作用電極3111、第2作用電極3112および第3作用電極3113の電位がそれぞれ600mVの正電位になるように維持される。したがって、回路400は、第1作用電極3111および第2作用電極3112にそれぞれ正電位を印加する電位印加部として機能する。これにより、第1センシング層3201および第2センシング層3202に含まれる過酸化水素が電気分解され、電子が生成される。この電子を、第1作用電極3111と対電極312との間で、グルコースに由来する電流値(第1電流値)として測定する。同様に、第2作用電極3112と対電極312との間で、グルコースに由来する電流値(第2電流値)として測定する。また、第3作用電極3113と対電極312との間では、妨害物質に由来する電流値(第3電流値)として測定する。これらの測定結果に対し、必要な演算、例えばあらかじめ取得しておいた検量線への適用を行うことにより、グルコース濃度を算出し、これがモニター151により表示される。すなわち、回路400は、第1電流値、第2電流値および第3電流値からグルコース濃度を算出する演算部として機能する。
換言すれば、測定装置101は、検出素子100と、電位印加部と、第1作用電極3111と対電極312との間の第1電流値および第2作用電極3112と対電極312との間の第2電流値とから、測定対象物質の濃度を算出する演算部と、を備えている。これにより、広い濃度範囲でも測定対象物質の濃度を高精度に測定可能な測定装置が得られる。
なお、回路400では、必要に応じて、電流を測定する回路を切り替えられるようになっていてもよい。具体的には、第1電流値を測定するときには、第2電流値および第3電流値を取得しないようになっていてもよい。同様に、第2電流値を測定するときには、第1電流値および第3電流値を、第3電流値を測定するときには、第1電流値および第2電流値を取得しないようになっていてもよい。すなわち、電流の測定動作は、第1電流値、第2電流値および第3電流値の間で互いに排他的に行われるようになっていてもよい。
さらに、回路400では、必要に応じて、第1作用電極3111と参照電極313との間に電圧を印加するときには、第2作用電極3112と参照電極313との間、および、第3作用電極3113と参照電極313との間に電圧を印加しないようになっていてもよい。同様に、第2作用電極3112と参照電極313との間に電圧を印加するときには、第1作用電極3111と参照電極313との間、および、第3作用電極3113と参照電極313との間に電圧を印加しないようになっており、第3作用電極3113と参照電極313との間に電圧を印加するときには、第1作用電極3111と参照電極313との間、および、第2作用電極3112と参照電極313との間に電圧を印加しないようになっていてもよい。すなわち、電圧の印加動作は、互いに排他的に行われるようになっていてもよい。
なお、参照電極313は必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。一方、参照電極313をさらに備えることにより、グルコース濃度をより精度よく求めることができるという効果が得られる。
また、検出素子100は、対電極312を複数備えていてもよい。例えば、検出素子100が第1作用電極3111、第2作用電極3112および第3作用電極3113の3つを備えている場合、対電極312についても同数以上備えていてもよい。これにより、第1電流値、第2電流値および第3電流値を同時に測定することができるので、グルコース濃度をより連続的に監視し続けることができる。
<測定方法>
また、上記の測定装置101を用いた、間質液中におけるグルコース濃度の測定は、例えば、以下のようにして行われる。
また、上記の測定装置101を用いた、間質液中におけるグルコース濃度の測定は、例えば、以下のようにして行われる。
図8は、本発明の測定装置を用いて、グルコース値を測定する方法を示すフローチャートである。
[1]まず、カニューレ111を皮下組織502に挿入して、検出部300を間質液に接触させ、安定化させる(S1)。なお、本工程は必要に応じて行えばよく、省略されてもよい。
[2]次に、第1作用電極3111と参照電極313との間、第2作用電極3112と参照電極313との間、および第3作用電極3113と参照電極313との間に、それぞれ定電圧を所定の長さで印加する。このとき、第1作用電極3111、第2作用電極3112および第3作用電極3113が、参照電極313に対して正電位になるように印加する。これにより、第1作用電極3111近傍、第2作用電極3112近傍および第3作用電極3113近傍をそれぞれ初期設定する(S2)。
なお、本工程は必要に応じて行えばよく、省略されてもよい。
なお、本工程は必要に応じて行えばよく、省略されてもよい。
[3]次に、一定時間の間隔をあけた後に、第1作用電極3111と参照電極313との間、第2作用電極3112と参照電極313との間および第3作用電極3113と参照電極313との間に、再び定電圧を所定の長さで印加する。これにより、第1作用電極3111近傍および第2作用電極3112近傍に生じた過酸化水素が前述した式(2)のように電気分解される。そして、それにより生じた電子を、第1作用電極3111と対電極312との間に流れた電流値(第1電流値)および第2作用電極3112と対電極312との間に流れた電流値(第2電流値)として測定する。
また、第3作用電極3113と対電極312との間に流れた電流値(第3電流値)をベースラインとして取得する(S3)。
[4]次に、演算装置210により、あらかじめ設定しておいた第1電流値および第2電流値の少なくとも一方に係る所定の条件と比較する(S4)。この所定の条件としては、例えば、あらかじめ設定された、しきい値となる電流値に対して、第1電流値または第2電流値が上回っているか否か等が挙げられる(図8参照)。なお、この「しきい値」としては、例えば、前述したように第1電流値とグルコース濃度とが良好な比例関係を維持し得るグルコース濃度範囲のうちの上限近傍に設定された電流値が挙げられる。したがって、この「しきい値」よりも電流値が小さいということは、第1電流値とグルコース濃度とが良好な比例関係を維持していることを利用して、第1電流値からグルコース濃度を高い精度で算出し得ることを意味する。これを踏まえると、測定された第1電流値または第2電流値と、この「しきい値」とに基づいて、以下のような演算パターンを採用することができる。すなわち、本工程では、上述した所定の条件に基づき、いくつかの演算パターン(例えば後述する第1演算パターンと第2演算パターン)の中から1つの演算パターンを選択するという演算を行う。
例えば、第1電流値がしきい値より小さい場合には、すなわち測定された第1電流値が図7の境界ABよりも小さい電流値ALに該当するときには、測定に供された間質液中のグルコース濃度が比較的低いと推察される。したがって、この場合には、演算装置210において、グルコース濃度の算出用に第1電流値を選択する(第1演算パターン)(図8のS51)。
一方、第1電流値がしきい値以上である場合には、すなわち測定された第1電流値が図7の境界ABよりも大きい電流値AHに該当するときには、測定に供された間質液中のグルコース濃度が比較的高いと推察される。したがって、この場合には、演算装置210において、グルコース濃度の算出用に第2電流値を選択する(第2演算パターン)(図8のS52)。
このように、演算装置210において、第1演算パターンと第2演算パターンとを含む演算パターン群の中から1つを選択して演算することにより、より広い範囲のグルコース濃度について、真の値により近いグルコース濃度を求めることができる。
なお、図8には一例としてこれら2つの演算パターンを図示しているが、本工程における演算パターンはこれに限定されず、演算装置210では、さらに別の演算パターンが追加された3つ以上の演算パターンを含む演算パターン群の中から1つを選択し得るようになっていてもよい。
別の演算パターンとしては、例えば、しきい値が一定の幅を持っている場合が挙げられる。この場合、仮に、測定された第1電流値がそのしきい値の電流範囲内に含まれているときには、第1電流値および第2電流値の双方を用いてグルコース濃度を算出するパターンが挙げられる。このときの演算の一例としては、第1電流値から算出されたグルコース濃度と第2電流値から算出されたグルコース濃度の平均をとる演算が挙げられる。
[5]次に、電流値のベースラインである第3電流値を用いて、[4]で選択した電流値を補正する(S6)。この補正としては、例えば、[4]で選択した電流値から第3電流値を差し引くことが挙げられる。このような補正は、測定された第1電流値や第2電流値から、グルコース以外の成分(例えば妨害物質)等に由来する影響(ベースライン)を除去することを意味する。したがって、補正後の電流値は、実質的に、グルコース由来の電流のみを含むものになる。その結果、グルコース濃度の算出結果が妨害物質や環境因子等に影響を受けて真の値からずれてしまうのを抑制し、後述する工程においてより真の値に近いグルコース濃度を求めることができる。
なお、補正の内容はこれに限定されない。また、本工程は必要に応じて行えばよく、省略されてもよい。
[6]次に、演算装置210により、補正した電流値を検量線C1または検量線C2に照らしてグルコース濃度を算出する(S7)。
以上のようにすれば、グルコース濃度が低くても高くても、最適な演算パターンを選択することによって、真の値により近いグルコース濃度を求めることができる。
なお、上記検量線C1および検量線C2は、例えば既知の濃度でグルコースが含まれたリン酸緩衝液(標準液)を用いてあらかじめ作成される。例えば、グルコース濃度が異なる複数の標準液に検出部300を浸漬し、作用電極と対電極との間に流れた電流値とグルコース濃度とをプロットエリアにプロットしたとき、得られた近似線が検量線C1および検量線C2となる。
したがって、第1電流値からグルコース濃度を算出する場合には、検出部300を標準液に接触させたとき、第1作用電極3111と対電極312との間に流れた電流値を用いて作成された検量線C1(図7参照)に照らして算出される。
同様に、第2電流値からグルコース濃度を算出する場合には、検出部300を標準液に接触させたとき、第2作用電極3112と対電極312との間に流れた電流値を用いて作成された検量線C2(図7参照)に照らして算出される。
また、この工程[3]から工程[6]までは、少なくとも1回行えばよいが、複数回繰り返して行い、その間に測定されたグルコース濃度の平均値を求めるようにしてもよい。これにより、グルコース濃度をより優れた信頼度で求めることができる。
さらに、以上のような工程[1]〜工程[6]を、所定の間隔を空けて繰り返し行うことにより、間質液中におけるグルコース濃度を連続的に測定することができる。
<検出素子の製造方法>
次に、本発明の検出素子の製造方法の実施形態について説明する。
次に、本発明の検出素子の製造方法の実施形態について説明する。
図9は、本発明の検出素子の製造方法の実施形態を示す工程図であり、図10〜図13は、それぞれ本発明の検出素子の製造方法の実施形態を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図10〜図13中の上側を「上」、下側を「下」という。
本実施形態に係る検出素子の製造方法は、図9に示すように、導電層315に対し、酵素を含む溶液61をインクジェット法により塗布した後、得られた液状被膜を固化または硬化させて、第1感知層3211および第2感知層3212を得る工程(感知層形成工程)と、中間層322の構成材料を含む溶液をインクジェット法により塗布した後、得られた液状被膜を固化または硬化させて、中間層322を得る工程(中間層形成工程)と、分析物調整層323の構成材料を含む溶液をインクジェット法により塗布した後、得られた液状被膜を固化または硬化させて、分析物調整層323を得る工程(分析物調整層形成工程)と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]感知層形成工程(Sa)
まず、図10に示すように、導電層315のうち、第1作用電極3111および第2作用電極3112に対し、酵素を含む溶液61をインクジェット法により塗布する。具体的には、インクジェットヘッド62から酵素を含む溶液61の液滴を吐出する。これにより、酵素を含む溶液61からなる液状被膜を得る。このとき、溶液61における酵素の濃度は、特に限定されないが、0.01質量%以上1.0質量%以下であるのが好ましい。酵素の濃度を前記範囲内に設定することにより、酵素とグルコースとの接触頻度が最適化される。これにより、広い濃度幅においてグルコース濃度を精度よく測定することができる。
まず、図10に示すように、導電層315のうち、第1作用電極3111および第2作用電極3112に対し、酵素を含む溶液61をインクジェット法により塗布する。具体的には、インクジェットヘッド62から酵素を含む溶液61の液滴を吐出する。これにより、酵素を含む溶液61からなる液状被膜を得る。このとき、溶液61における酵素の濃度は、特に限定されないが、0.01質量%以上1.0質量%以下であるのが好ましい。酵素の濃度を前記範囲内に設定することにより、酵素とグルコースとの接触頻度が最適化される。これにより、広い濃度幅においてグルコース濃度を精度よく測定することができる。
また、導電層315のうち、第3作用電極3113に対し、無酵素層33の構成材料を含む溶液61’をインクジェット法により塗布する。これにより、液状被膜を得る。
続いて、得られた液状被膜を固化または硬化させる。これにより、第1感知層3211、第2感知層3212および無酵素層33を得る(図11参照)。
なお、液状被膜を固化または硬化させるタイミングは任意であり、各液状被膜の形成と固化(硬化)とを個別に行うようにしてもよい。
[2]中間層形成工程(Sb)
次に、第1感知層3211、第2感知層3212および無酵素層33に対し、中間層322の構成材料を含む溶液をインクジェット法により塗布する。これにより、液状被膜を得る。
次に、第1感知層3211、第2感知層3212および無酵素層33に対し、中間層322の構成材料を含む溶液をインクジェット法により塗布する。これにより、液状被膜を得る。
続いて、得られた液状被膜を固化または硬化させて、中間層322を得る(図12参照)。
[3]分析物調整層形成工程(Sc)
次に、中間層322に対し、分析物調整層323の構成材料を含む溶液をインクジェット法により塗布する。これにより、液状被膜を得る。
次に、中間層322に対し、分析物調整層323の構成材料を含む溶液をインクジェット法により塗布する。これにより、液状被膜を得る。
続いて、得られた液状被膜を固化または硬化させて、分析物調整層323を得る(図13参照)。以上のようにして検出部300が得られる。そして、この検出部300とその他の部品とを組み立てることにより、検出素子100が得られる(図1、図2参照)。
なお、感知層形成工程では、第1感知層3211および第2感知層3212の少なくとも一方(本実施形態では双方)を、インクジェット法を用いて形成する。感知層形成工程においてインクジェット法を用いることにより、酵素を含む溶液を、導電層315のうち目的とする領域に対して効率よく正確に塗布することができる。具体的には、導電層315のうち、第1作用電極3111および第2作用電極3112に対して選択的に溶液を塗布することができる。このため、溶液が意図しない領域に塗布されてしまったり、異なる溶液同士が混じり合ってしまったりするのを防止して、製造される検出素子100の性能低下を抑制することができる。
同様に、中間層形成工程および分析物調整層形成工程においてもインクジェット法を用いることにより、各溶液を目的とする領域に対して効率よく正確に塗布することができる。これにより、製造される検出素子100の性能低下を抑制することができる。
また、インクジェット法によれば、例えば、第2作用電極3112上に塗布される第2感知層3212を、図11に示すように、第1作用電極3111上に塗布される第1感知層3211よりも厚くすることを容易に行える。このため、このような構造を含む検出素子100を容易に(効率よく)製造することができる。
さらに、インクジェット法によれば、インクジェットヘッドに複数の吐出ノズルを併設することができるので、設備の切り替え作業を伴うことなく、異なる溶液を次々に塗布することができる。このため、第1作用電極3111や第2作用電極3112の面積が非常に小さい場合であっても、それぞれの電極に必要な厚さの層を効率よく形成することができる。その結果、検出素子100が非常に小型である場合でも、不良品を多数発生させることなく効率よく製造することができる。
なお、検出素子100の製造方法は、上記のものに限定されない。例えば、各溶液の塗布方法は、インクジェット法に限定されず、例えばスピンコート法、ディスペンサー法、印刷法、転写法等であってもよい。また、各工程における塗布方法は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
また、各溶液は、溶媒によって希釈されてもよい。溶媒としては、例えば、水、食塩水の他、各種有機溶剤等が挙げられる。
さらに、各溶剤には、各種添加剤等が含まれていてもよい。
さらに、各溶剤には、各種添加剤等が含まれていてもよい。
<インスリン供給装置>
また、本発明の検出素子は、上記のように測定装置に装着される他、例えば、インスリン供給装置(本発明の薬剤供給装置)に装着される。
また、本発明の検出素子は、上記のように測定装置に装着される他、例えば、インスリン供給装置(本発明の薬剤供給装置)に装着される。
図14は、本発明の検出素子をインスリン供給装置に装着した状態を模式的に示す斜視図である。
図14に示すインスリン供給装置171は、検出素子100を接続して使用されるものであり、検出素子100と、検出素子100で得られた電流値を解析する処理回路200を備えた演算装置210、および演算装置210で演算することで得られたグルコース濃度に基づいて皮下組織502に薬剤の一種であるインスリンを供給(投与)する針部172を備える供給部175と、検出素子100を供給部175に装着(接続)するコネクター131と、処理回路200とコネクター131とを接続する配線132と、を有する。このようなインスリン供給装置171では、演算装置210での演算により、間質液中のグルコース濃度が算出されたとき、それに基づいて、すなわち算出されたグルコース濃度が設定された濃度よりも高い場合に、針部172を介して、装着者にインスリンが自動的に投与される。
なお、供給されるのはインスリンに限定されず、それ以外の薬剤等であってもよい。
なお、供給されるのはインスリンに限定されず、それ以外の薬剤等であってもよい。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
次に、第2実施形態について説明する。
図15は、本発明の測定装置の第2実施形態が有する検出素子が備える検出部を示す平面図である。なお、以下の説明では、図15中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言う。
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。また、図において前述した第1実施形態と同様の事項については、同一符号を付している。
本実施形態に係る測定装置および検出素子は、図15に示すように、第3作用電極3113および第3センシング層3203が省略されている以外、第1実施形態と同様である。このような本実施形態では、ベースライン(第3電流値)を用いた第1電流値および第2電流値の補正は行えないものの、依然として、広いグルコース濃度の範囲において、高い精度でグルコース濃度が求められるという効果を奏する。
なお、それ以外においても、本実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏する。
なお、それ以外においても、本実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏する。
以上、本発明の検出素子、測定装置、薬剤供給装置および検出素子の製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の検出素子、測定装置および薬剤供給装置における各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記測定装置および薬剤供給装置のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、本発明の検出素子の製造方法は、前記実施形態に任意の工程が付加されたものであってもよい。
また、カニューレを皮下組織に挿入する他、皮内に挿入するようにしてもよい。
また、カニューレを皮下組織に挿入する他、皮内に挿入するようにしてもよい。
さらに、測定装置および薬剤供給装置において、検出素子で測定された電流値は、配線を介することなく、処理回路に伝達するようにしてもよい。例えば、通信手段を介して無線で、電流値を処理回路に伝達するようにしてもよい。
また、測定装置において、検出素子と表示部とは配線を介して接続されているものに限らず、これらが一体的に形成されているものであってもよいし、無線通信を介して接続されているものであってもよい。また、薬剤供給装置において、検出素子と供給部とは配線を介して接続されているものに限らず、これらが一体的に形成されているものであってもよいし、無線通信を介して接続されているものであってもよい。
また、本発明の検出素子は、さらに、第1感知層および第2感知層と酵素の量が異なる別の感知層と、その感知層を支持する別の作用電極と、を1組または2組以上備えていてもよい。これにより、測定対象物質の濃度領域をさらに細かく細分化して、各感知層に分担させることにより、さらに高精度の測定が可能になる。
また、第1感知層と第2感知層とで酵素の種類が同じであっても、異なっていてもよい。ただし、測定感度等の観点からは同じであるのが好ましい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.検出素子の製造
(実施例1)
<1> まず、ポリイミドフィルムを基板301として用意した。
<2> 次いで、ポリイミドフィルム上に、マスクスパッター法により平均厚さ200nmのパターニングされた白金膜を、第1作用電極、第2作用電極、第3作用電極、対電極、参照電極および配線を含む導電層として形成した。
1.検出素子の製造
(実施例1)
<1> まず、ポリイミドフィルムを基板301として用意した。
<2> 次いで、ポリイミドフィルム上に、マスクスパッター法により平均厚さ200nmのパターニングされた白金膜を、第1作用電極、第2作用電極、第3作用電極、対電極、参照電極および配線を含む導電層として形成した。
<3> 次いで、白金膜が積層された基板をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理およびアルゴンプラズマ処理を施した。これらのプラズマ処理は、それぞれ、基板を70〜90℃に加温した状態で、プラズマパワー100W、ガス流量20sccm、処理時間5秒で行った。
<4> 次いで、参照電極に対応する白金電極上に、銀−塩化銀粒子を含んだインクをインクジェット方式により乾燥後膜厚が3μmになる量を充填し、120℃のオーブンで乾燥させることで、銀−塩化銀膜を形成した。これにより、参照電極を得た。
<5> 次いで、GOD(グルコースオキシダーゼ 活性度 150U/mg)5mgを超純水6.1gに溶解させてGOD溶液とし、さらに得られたGOD溶液を1.22g秤量し、PVA−SbQ(13.3%水溶液)1.0gと混合させることで、感知層形成用材料を調製した。
そして、この感知層形成用材料を、第1作用電極および第2作用電極の全面にインクジェット法を用いて塗布することにより、液状被膜を形成した後、50℃で5分間乾燥させて薄膜を得た。その後、波長365nmの紫外線を5分間照射して不溶化膜(硬化膜)を形成した。これにより、第1感知層および第2感知層を得た。
なお、第1感知層の平均厚さは、0.4μm、第2感知層の平均厚さは、0.8μmであった。
<6> 次いで、PVA−SbQ(13.3%水溶液)1.0gと超純水1.22gとを混合することで、無酵素層形成用材料を調製した。
そして、この無酵素層形成用材料を、第3作用電極の全面にインクジェット法を用いて塗布することにより、液状被膜を形成した後、自然乾燥させて被膜を得た。その後、波長365nmの紫外線を5分間照射して不溶化膜(硬化膜)を形成した。これにより、無酵素層を得た。
なお、無酵素層の平均厚さは、0.4μmであった。
なお、無酵素層の平均厚さは、0.4μmであった。
<7> 次いで、PVA−SbQ(13.3%水溶液)1.0gと超純水1.22gとを混合することで、中間層形成用材料を調製した。
そして、この中間層形成用材料を、第1感知層、第2感知層および無酵素層に対してスピンコート法を用いて塗布することにより、液状被膜を形成した後、5分間自然乾燥させて薄膜を得た。その後、波長365nmの紫外線を5分間照射して不溶化膜(硬化膜)を形成した。これにより、中間層を得た。
なお、中間層の平均厚さは、0.8μmであった。
なお、中間層の平均厚さは、0.8μmであった。
<8> 次いで、PPG(ポリプロピレングリコール)トリオール型(300)0.45g、トルエン0.5g、イソホロンジイソシアネート0.5g、およびジアザビシクロウンデセン(DBU)1滴を撹拌させながら混合することで、分析物調整層形成用材料を調製した。
そして、この分析物調整層形成用材料を、中間層に対してスピンコート法を用いて塗布することにより、液状被膜を形成した後、24時間放置してウレタンを生成させることで、ウレタン結合を含む架橋構造を備え、ウレタン結合の形成の際に残存したイソシアネート基を有する構成をなす分析物調整層を得た。
なお、分析物調整層の平均厚さは、0.8μmであった。
以上の工程により、図6の構成をなす検出部を作製した。
なお、分析物調整層の平均厚さは、0.8μmであった。
以上の工程により、図6の構成をなす検出部を作製した。
(実施例2)
第3作用電極、ならびに、第3作用電極上に成膜した無酵素層、中間層および分析物調整層を省略した以外は、実施例1と同様にして検出部を作製した。すなわち、本実施例の検出部は、第1作用電極、第2作用電極、対電極、参照電極、および、これらの電極上に成膜した各層を有するものとなる。
第3作用電極、ならびに、第3作用電極上に成膜した無酵素層、中間層および分析物調整層を省略した以外は、実施例1と同様にして検出部を作製した。すなわち、本実施例の検出部は、第1作用電極、第2作用電極、対電極、参照電極、および、これらの電極上に成膜した各層を有するものとなる。
(比較例1)
第2作用電極、ならびに、第2作用電極上に成膜した第2感知層、中間層および分析物調整層を省略した以外は、実施例2と同様にして検出部を作製した。すなわち、本比較例1の検出部は、第1作用電極、対電極、参照電極、および、これらの電極上に成膜した各層を有するものとなる。
第2作用電極、ならびに、第2作用電極上に成膜した第2感知層、中間層および分析物調整層を省略した以外は、実施例2と同様にして検出部を作製した。すなわち、本比較例1の検出部は、第1作用電極、対電極、参照電極、および、これらの電極上に成膜した各層を有するものとなる。
(比較例2)
第1作用電極、ならびに、第1作用電極上に成膜した第1感知層、中間層および分析物調整層を省略した以外は、実施例2と同様にして検出部を作製した。すなわち、本比較例2の検出部は、第2作用電極、対電極、参照電極、および、これらの電極上に成膜した各層を有するものとなる。
第1作用電極、ならびに、第1作用電極上に成膜した第1感知層、中間層および分析物調整層を省略した以外は、実施例2と同様にして検出部を作製した。すなわち、本比較例2の検出部は、第2作用電極、対電極、参照電極、および、これらの電極上に成膜した各層を有するものとなる。
(参考例1)
第2作用電極、ならびに、第2作用電極上に成膜した第2感知層、中間層および分析物調整層を省略した以外は、実施例1と同様にして検出部を作製した。すなわち、本参考例1の検出部は、第1作用電極、第3作用電極、対電極、参照電極、および、これらの電極上に成膜した各層を有するものとなる。
第2作用電極、ならびに、第2作用電極上に成膜した第2感知層、中間層および分析物調整層を省略した以外は、実施例1と同様にして検出部を作製した。すなわち、本参考例1の検出部は、第1作用電極、第3作用電極、対電極、参照電極、および、これらの電極上に成膜した各層を有するものとなる。
(参考例2)
第1作用電極、ならびに、第1作用電極上に成膜した第1感知層、中間層および分析物調整層を省略した以外は、実施例1と同様にして検出部を作製した。すなわち、本参考例2の検出部は、第2作用電極、第3作用電極、対電極、参照電極、および、これらの電極上に成膜した各層を有するものとなる。
第1作用電極、ならびに、第1作用電極上に成膜した第1感知層、中間層および分析物調整層を省略した以外は、実施例1と同様にして検出部を作製した。すなわち、本参考例2の検出部は、第2作用電極、第3作用電極、対電極、参照電極、および、これらの電極上に成膜した各層を有するものとなる。
2.評価
2−1.標準液における応答電流の測定および検量線の作成
まず、リン酸緩衝液とグルコースとを混合し、グルコース濃度が0、50、100、200、300、400、500mg/dLになるようにそれぞれ調製したものを標準液として準備した。
そして、この標準液を35℃で一定になるように加温した。
2−1.標準液における応答電流の測定および検量線の作成
まず、リン酸緩衝液とグルコースとを混合し、グルコース濃度が0、50、100、200、300、400、500mg/dLになるようにそれぞれ調製したものを標準液として準備した。
そして、この標準液を35℃で一定になるように加温した。
次いで、加温された各標準液に、各実施例および各比較例の検出部を浸漬することで、各電極に対応する位置におけるセンシング層に標準液を含浸させた。
次いで、標準液が含浸された検出部において、作用電極と参照電極との間に0.6Vの電圧を印加し、そのときに作用電極と対電極との間に流れる電流値を測定した。
そして、各標準液のグルコース濃度とその標準液に検出部を浸漬したときに測定された電流値から検量線を作成した。
なお、各実施例では、第1作用電極と対電極との間を流れる第1電流値と、第2作用電極と対電極との間を流れる第2電流値の双方から、個別に検量線を作成した。そして、第1作用電極の電流値から得られた検量線を「第1検量線」とし、第2作用電極の電流値から得られた検量線を「第2検量線」とした。
2−2.グルコース感知精度の評価
まず、リン酸緩衝液と尿酸とアスコルビン酸とグルコースとを混合した。そして、グルコース濃度が100mg/dLになるように調製したものを「低濃度評価溶液」とし、グルコース濃度が500mg/dLになるように調製したものを「高濃度評価溶液」として、各評価溶液を準備した。
そして、この評価溶液を35℃で一定になるように加温した。
まず、リン酸緩衝液と尿酸とアスコルビン酸とグルコースとを混合した。そして、グルコース濃度が100mg/dLになるように調製したものを「低濃度評価溶液」とし、グルコース濃度が500mg/dLになるように調製したものを「高濃度評価溶液」として、各評価溶液を準備した。
そして、この評価溶液を35℃で一定になるように加温した。
次いで、加温された各評価溶液に、各実施例、参考例および比較例の検出部を浸漬することで、各電極に対応する位置におけるセンシング層に評価溶液を含浸させた。
次いで、評価溶液が含浸された検出部において、作用電極と参照電極との間に0.6Vの電圧を印加し、そのときに作用電極と対電極との間に流れる電流値を測定した。
そして、あらかじめ取得しておいた検量線に基づいて、各評価溶液のグルコース濃度を算出した。
なお、各実施例の検出部を用いてグルコース濃度を算出する際には、低濃度評価溶液と高濃度評価溶液とで、使用する作用電極を異ならせるようにした。すなわち、低濃度評価溶液のグルコース濃度を算出するときには、第1電流値を採用し、高濃度評価溶液のグルコース濃度を算出するときには、第2電流値を採用するようにした。
次いで、各評価溶液について測定された電流値(グルコース由来の応答電流値)について、検量線からのずれ量を評価した。
まず、検量線から、グルコース濃度が100mg/dLのときの電流値を求めた。次いで、この電流値を「低濃度時検量線電流値」としたとき、低濃度評価溶液について測定された第1電流値と低濃度時検量線電流値とのずれが、低濃度時検量線電流値に対してどの程度の割合であるかを算出した。そして、このずれの割合を、低濃度における評価指標とし、以下の評価基準に照らして評価した。評価結果を表1に示す。
また、検量線から、グルコース濃度が500mg/dLのときの電流値を求めた。次いで、この電流値を「高濃度時検量線電流値」としたとき、高濃度評価溶液について測定された第2電流値と高濃度時検量線電流値とのずれが、高濃度時検量線電流値に対してどの程度の割合であるかを算出した。そして、このずれの割合を、高濃度における評価指標とし、以下の評価基準に照らして評価した。評価結果を表1に示す。
一方、各実施例および各参考例のうち、検出部が第3作用電極を有している場合には、低濃度評価溶液について測定された第1電流値から、第3作用電極と対電極との間に流れる第3電流値を差し引く補正を行った。
そして、上記と同様、低濃度評価溶液について、補正後の電流値と低濃度時検量線電流値とのずれが、低濃度時検量線電流値に対してどの程度の割合であるかを算出した。そして、このずれの割合を、低濃度における評価指標とし、以下の評価基準に照らして評価した。評価結果を表1に示す。
同様に、各実施例および参考例のうち、検出部が第3作用電極を有している場合には、高濃度評価溶液について測定された第2電流値から、第3作用電極と対電極との間に流れる第3電流値を差し引く補正を行った。
そして、上記と同様、高濃度評価溶液について、補正後の電流値と高濃度時検量線電流値とのずれが、高濃度時検量線電流値に対してどの程度の割合であるかを算出した。そして、このずれの割合を、高濃度における評価指標とし、以下の評価基準に照らして評価した。評価結果を表1に示す。
<ずれの割合の評価基準>
◎:ずれの割合が50%未満である
○:ずれの割合が50%以上100%未満である
△:ずれの割合が100%以上150%未満である
×:ずれの割合が150%以上である
◎:ずれの割合が50%未満である
○:ずれの割合が50%以上100%未満である
△:ずれの割合が100%以上150%未満である
×:ずれの割合が150%以上である
表1に示したように、各実施例の検出部では、評価指標(ずれの程度)が相対的に小さいため、評価溶液のグルコース濃度を比較的高い精度で求められることが明らかとなった。このような結果となった理由の1つは、各実施例の検出部が第1作用電極と第2作用電極の2つを有し、低濃度評価溶液については第1作用電極から得られた第1電流値を用いてグルコース濃度を求め、高濃度評価溶液については第2作用電極から得られた第2電流値を用いてグルコース濃度を求めるようにしたことにあると推察される。すなわち、2つの作用電極のそれぞれが得意としているグルコース濃度の測定を担うように、評価溶液の濃度に応じて作用電極を使い分けることにより、幅広いグルコース濃度を高い精度で測定することが可能になると言える。
なお、上記のことを裏付けるために、作用電極の選択を上記とは逆にしてグルコース濃度を算出する参考試験を行った。その結果、上記の場合よりも評価指標が悪化した。このことから、2つの作用電極を、評価溶液のグルコース濃度に応じて使い分けることは、幅広いグルコース濃度を高い精度で測定するにあたって有効であることが裏付けられた。
また、第3電流値を用いて第1電流値や第2電流値の補正を行った場合、補正を行わなかった場合よりも評価指標が改善した。このことから、第3電流値を利用した補正は、例えば尿酸やアスコルビン酸といった成分が含まれる溶液についてグルコース濃度を測定するとき、測定値を真の値に近づけるために有効であると認められる。
33…無酵素層、61…溶液、61’…溶液、62…インクジェットヘッド、100…検出素子、101…測定装置、110…本体部、111…カニューレ、112…貫通孔、113…窓部、114…中空部、120…着脱部、121…針部、122…把持部、131…コネクター、132…配線、151…モニター、155…表示部、171…インスリン供給装置、172…針部、175…供給部、200…処理回路、210…演算装置、300…検出部、301…基板、312…対電極、313…参照電極、314…配線、315…導電層、322…中間層、323…分析物調整層、400…回路、501…表皮、502…皮下組織、503…血管、3111…第1作用電極、3112…第2作用電極、3113…第3作用電極、3201…第1センシング層、3202…第2センシング層、3203…第3センシング層、3211…第1感知層、3212…第2感知層、AB…境界、AH…電流値、AL…電流値、C1…検量線、C2…検量線、GB…境界、GH…領域、GL…領域
Claims (10)
- 測定対象物質と反応する酵素を含有した第1感知層が設けられた第1作用電極と、
前記酵素の含有量が前記第1感知層より多い第2感知層が設けられた第2作用電極と、
対電極と、
を備えることを特徴とする検出素子。 - 前記第2感知層の膜厚は、前記第1感知層の膜厚より厚い、請求項1に記載の検出素子。
- 第3作用電極をさらに備える、請求項1または2に記載の検出素子。
- 前記第3作用電極には、前記酵素を含有しない無酵素層がさらに設けられている請求項3に記載の検出素子。
- 参照電極をさらに備える、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の検出素子。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の検出素子と、
前記第1作用電極および前記第2作用電極に、それぞれ正電位を印加する電位印加部と、
前記第1作用電極と前記対電極との間の第1電流値、および、前記第2作用電極と前記対電極との間の第2電流値とから、前記測定対象物質の濃度を算出する演算部と、
を備えることを特徴とする測定装置。 - 前記演算部は、前記第1電流値および前記第2電流値の少なくとも一方に係る所定の条件に基づき、前記第1電流値から前記測定対象物質の濃度を算出する第1演算パターンと、前記第2電流値から前記測定対象物質の濃度を算出する第2演算パターンと、を含む演算パターン群の中から1つを選択する、請求項6に記載の測定装置。
- 前記測定装置は、前記演算部によって算出された前記測定対象物質の濃度を表示する表示部をさらに備える、請求項6または7に記載の測定装置。
- 請求項6ないし8のいずれか1項に記載の測定装置と、
前記測定装置による測定結果に基づき、薬剤を供給する供給部と、
を備えることを特徴とする薬剤供給装置。 - 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の検出素子を製造する方法であって、
前記第1感知層および前記第2感知層の少なくとも一方を、インクジェット法を用いて形成することを特徴とする検出素子の製造方法。
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KR102679692B1 (ko) | 2022-04-18 | 2024-07-01 | 서울과학기술대학교 산학협력단 | 효소 기반 자가전력 인공 포도당 조절기 및 이를 이용한 포도당 조절 방법 |
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2016
- 2016-08-02 JP JP2016151886A patent/JP2018019826A/ja active Pending
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WO2021024132A1 (en) * | 2019-08-02 | 2021-02-11 | Bionime Corporation | Implantable micro-biosensor and method for operating the same |
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