JP2018017657A - 細胞分泌物の分析方法、マルチウェルプレート - Google Patents

細胞分泌物の分析方法、マルチウェルプレート Download PDF

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アルノ ジェルモンド
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Abstract

【課題】細胞が分泌した分泌物を細胞が生きている状態で、かつ、高いスループットで分析することができる細胞分泌物の分析方法を得ること。
【解決手段】細胞1から分泌された化学物質3を分析する分析方法であって、ウェル10の閉じ込め領域11に収容された細胞が分泌した化学物質を、前記閉じ込め領域と連続し、かつ、内部に細胞が進入できないように形成された測定領域12において、光学的分析手段によって分析する。
【選択図】 図1

Description

本開示は、細胞からの分泌物を分析する分析方法、および、細胞分泌物の分析に用いられるマルチウェルプレートに関し、特に、細胞から分泌される分泌物を非破壊で、かつ、高スループットで分析することができる細胞分泌物の分析方法と、当該分析に使用可能なマルチウェルプレートに関する。
細胞からの分泌物は、血液、尿、穿刺液などを構成し、これら分泌液に含まれる、酵素、脂質、タンパク質などの化学物質を定量的に分析することによって、病態の診断、治療や経過観察などが行われている。従来は、これら化学物質が、膨大、かつ、さまざまな種類の細胞からの分泌物の集合体として解析されていたが、より検出精度を高める上では、1細胞レベルでの分泌物についての定量分析が必要となる。
一つの細胞からの分泌物を定量的に分析する方法として、一つの細胞のみを収容可能な大きさと形状を備えたウェルが複数個形成されたマルチウェルプレートを用意し、細胞が懸濁された水溶液をこのマルチウェルプレート上に供給して一つのウェル内に一つの細胞が閉じ込められた状態を作り出し、細胞が閉じ込められているウェル内の液体を回収して分析するという方法が提案されている(特許文献1、非特許文献1参照)。
特開2014−233208号公報
H. Fujita, T. Esaki, T. Masujima, A. Hotta, S. H. Kim, H. Noji, and T. M. Watanabe, "Comprehensive chemical secretory measurement of single cells trapped in a micro-droplet array with mass spectrometry," RSC Adv. 5, 16968-16971 (2015).
上記従来の分析方法によれば、細胞を一つだけ含む空間を作り出して当該空間内に分泌された分泌物を個別に回収することで、一つの細胞からの分泌物のみを取得して質量分析法などによってその成分を正確に分析することができる。
しかし、上記従来の分析手法では、細胞が収容されたウェル内の水溶液を金属被覆されたガラスマイクロニードルによってシリンジポンプを用いて回収するため、いわゆる破壊検査に相当し、一つの細胞からの分泌物を一度回収してしまうと、同じ細胞からの分泌液を改めて回収、分析することはできない。また、ウェル内の細胞の位置を確認しながら細胞が存在しない部分の水溶液を回収しなくてはならないために、μmオーダーのウェルを顕微鏡で拡大しながらガラスマイクロニードルの配置位置を決定しなくてはならず、作業の高効率化に限界がある。さらに、例えばESI分析法による質量分析を行う場合には、回収した分泌液を霧状化して計測器に導入する必要があるなど、分泌液を分析するためのさらなる準備工程が必要となる。
そこで本願は、上記した従来の課題を解決して、細胞が分泌した分泌物を細胞が生きている状態で、かつ、高いスループットで分析することができる細胞分泌物の分析方法と、この分析方法に好適に用いることができるマルチウェルプレートを得ることを目的とする。
上記課題を解決するために、本願で開示する細胞分泌物の分析方法は、細胞から分泌された化学物質を分析する分析方法であって、ウェルの閉じ込め領域に収容された細胞が分泌した化学物質を、前記閉じ込め領域と連続し、かつ、内部に細胞が進入できないように形成された測定領域において、光学的分析手段によって分析することを特徴とする。
また、本願で開示するマルチウェルプレートは、少なくとも上面に親水性の部材が配置されたベースプレート上に、疎水性の部材からなるウェル形成層が積層され、前記ウェル形成層に、前記親水性の部材が底面を形成するウェルが複数個形成されたマルチウェルプレートであって、前記ウェルが、測定対象となる分泌液を分泌する細胞を収容可能に形成された閉じ込め領域と、前記閉じ込め領域に連続して形成され、かつ、前記細胞が進入しないように形成された測定領域とを備え、前記測定領域が前記ウェル形成層にマトリクス状に配置されていることを特徴とする。
本願で開示する細胞分泌液の分析方法は、ウェルの細胞が進入できない測定領域内の細胞分泌物を光学的分析手段で分析するため、繰り返し分析が可能な非破壊による分析検査を効率よく行うことができる。
また、本願で開示するマルチウェルプレートは、上面が親水性のベースプレート上に積層された疎水性のウェル形成層に、閉じ込め領域と測定領域とを備えたウェルを形成するため、ウェル内への細胞の収容を容易に行えるとともに隣接するウェル間での細胞からの分泌物の混入を防止でき、正確、かつ、迅速な分析を行うことができる。
本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法の概要を説明するためのイメージ図である。 光学的分析手段としてのラマン散乱分光分析に用いられるラマン散乱顕微鏡の構成を説明するブロック図である。 本実施形態にかかるマルチウェルプレートの形状を説明する図である。図3(a)は、実際に作成したマルチウェルプレートの拡大写真である。図3(b)は、ウェルの形状を説明する平面図である。 本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法における、マルチウェルプレートのウェル内に測定対象となる細胞を収容する工程を説明するイメージ図である。図4(a)は、マルチウェルプレートの外観を示す図である。図4(b)は、マルチウェルプレート上に測定対象の細胞が含まれた水溶液を供給した状態を示す図である。図4(c)は、マルチウェルプレートの上面をオイルで覆って、それぞれのウェル内の水溶液が混合しないように設定された状態を示す図である。 ウェルの閉じ込め領域内に測定対象となるヒト乳がん細胞が閉じ込められている状態を示す顕微鏡写真である。 閉じ込め領域内に測定対象の細胞が収容された状態で、ウェル内の各部分にラマン散乱分光分析のためのレーザー光を照射した状態を示す顕微鏡写真である。 ウェルの測定領域の所定の位置と、比較領域とにおいて、ラマン散乱分光分析を行った際のラマンスペクトルを示す図である。 水溶液の成分を除去することで得られた測定領域の所定位置における細胞分泌物から得られたラマンスペクトルを示す図である。
本開示の細胞分泌物の分析方法は、細胞から分泌された化学物質を分析する分析方法であって、ウェルの閉じ込め領域に収容された細胞が分泌した化学物質を、前記閉じ込め領域と連続し、かつ、内部に細胞が進入できないように形成された測定領域において、光学的分析手段によって分析する。
このようにすることで、細胞が存在せずに細胞から分泌された分泌物が存在する領域が明確となり、光学的分析手段で分析すべき部分を容易に決定することができるので分析のスループットが向上する。また、分泌物を取り去る破壊検査ではなく光学的分析手段を用いた非破壊検査を行うために、所定の時間間隔で分析を繰り返して経時的な変化を分析することができるなど、より多角的な分析を行うことができる。さらに、光学的分析手段による分析であるため、分析のためのさらなる準備工程を経ることなく必要なデータを取得することができる。
本開示にかかる細胞分泌物の分析方法において、前記光学的分析手段が、ラマン散乱分光分析であることが好ましい。被測定物に照射されたレーザー光のラマン散乱のシフト量から、分子の種類やその構成を把握できるラマン散乱分光分析を用いることで、測定領域内の所定の位置にレーザー光を照射することによって、特定の位置における細胞分泌物の状態を所定のタイミングで把握することができる。
また、前記閉じ込め領域、および、前記測定領域のいずれとも接続されていない状態で、かつ、前記細胞が進入できないように形成された比較領域をさらに備え、前記比較領域内の物質を光学的分析手段によって分析した結果を用いて、前記測定領域から得られた測定データの較正を行うことが好ましい。このようにすることで、細胞を含んでいた水溶液に依存するデータを除外した細胞分泌物に固有のデータを容易に取得することかでき、より正確な分析結果を迅速に得ることができる。
さらに、前記閉じ込め領域と前記測定領域とを有する前記ウェルが、ウェルプレートに複数個形成され、前記測定領域が縦横のマトリクス状に配置されていることが好ましい。このようにすることで、光学的分析手段によって複数の細胞それぞれからの分泌物の分析を効率よく統計的に行うことができる。
さらにまた、前記ウェルが、親水性の部材により形成された底面と、前記底面上に配置された疎水性の部材によって形成された側面とで形成されていることが好ましい。このようにすることで、細胞が含まれた水溶液をウェル内に収容することが容易となるとともに、それぞれのウェルを容易に分離でき、細胞分泌物の混入を効果的に防止することができる。
この場合において、前記ウェルの前記側面の上方に疎水性の液体を展開した状態で、前記測定領域内の物質を光学的分析手段によって分析することが好ましい。このようにすることで、ウェルプレートの上面に展開された疎水性の液体によって、隣接するウェルに収容された水溶液の混合を効果的に防止することができる。
さらにまた、一つの細胞が閉じ込められている前記閉じ込め領域に連続する前記測定領域を選択して、当該測定領域内の前記細胞分泌液を分析することが好ましい。このようにすることで、一細胞からの細胞分泌物についての分析を効率よく行うことができる。
さらに、前記測定領域内の前記細胞分泌液を、所定の時間間隔を隔てて複数回測定することができる。また、前記測定領域内の異なる位置に照射光を照射して、それぞれの位置での照射光を用いて前記細胞分泌液を分析することができる。このようにすることで、細胞分泌物についてのより多角的な分析を行うことができる。
本開示のマルチウェルプレートは、少なくとも上面に親水性の部材が配置されたベースプレート上に、疎水性の部材からなるウェル形成層が積層され、前記ウェル形成層に、前記親水性の部材が底面を形成するウェルが複数個形成されたマルチウェルプレートであって、前記ウェルが、測定対象となる分泌液を分泌する細胞を収容可能に形成された閉じ込め領域と、前記閉じ込め領域に連続して形成され、かつ、前記細胞が進入しないように形成された測定領域とを備え、前記測定領域が前記ウェル形成層にマトリクス状に配置されている。
このように構成することで、本開示にかかるマルチウェルプレートは、ウェルの底面が親水性部材から構成されるため、閉じ込め領域内に測定対象となる分泌液を分泌する細胞を収容し、閉じ込め領域と測定領域内とに細胞を含む水溶液を容易に収容できる。また、異なるウェル間で細胞を含む水溶液が混合することを効果的に防止することができる。さらに、測定領域をマトリクス状に配置することで、分析装置上におけるマルチウェルプレートの移動を規格化できるため、多数のウェルに対する分析の高スループット化を実現できる。
本開示にかかるマルチウェルプレートにおいて、前記測定領域が形成されている部分の間隔部分に、前記ウェルと連続せず、かつ、前記細胞が進入できないように形成された比較領域が形成されていることが好ましい。このようにすることで、細胞とその分泌物の影響を受けない状態で、細胞を含んでいた水溶液を分析することができるため、細胞からの分泌物の分析をより正確に行うことができる。
また、前記閉じ込め領域は平面視略円形状であり、前記測定領域が前記閉じ込め領域から一方向に延出して形成された平面視略矩形状であり、前記比較領域が前記測定領域の延在方向に略平行に形成された平面視略矩形状であることが好ましい。このようにすることで、一般に円形など縦横方向に同じ大きさを持つ傾向が強い細胞を、閉じ込め領域に容易に収容可能とすることができる。また、測定領域と比較領域への細胞の進入を防止でき、さらに、細胞からの距離の違いに応じた細胞分泌物の分析が可能となる。さらにまた、閉じ込め領域と測定領域と比較領域とを、高密度で、かつ、分析時の水平移動が少なくなる状態で、マルチウェルプレート上に形成することができる。
(実施の形態)
以下、本開示にかかる細胞分泌物の分析方法とマルチウェルプレートの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の実施形態では、細胞分泌物の分析方法に用いられる光学的分析手段として、ラマン散乱分光分析を用いた場合を例示する。
図1は、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法の概要を説明するためのイメージ図である。
図1では、マルチウェルプレート20に形成されたウェル10内の細胞1から分泌される分泌物3を、ラマン散乱分光を用いて分析している状態を示している。
本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法において、細胞1は、水溶液である培養液2に含まれた状態でウェル10に収容されている。ウェル10は、細胞1が収容される閉じ込め領域11と、閉じ込め領域11に連続して形成され、細胞1は進入することができない形状の測定領域12とから構成されている。このように細胞1が閉じ込め領域11内に閉じ込められている状態で、測定領域12にレーザー光4を照射して培養液2内に分泌された分泌物3によって散乱されたラマン散乱の波長特性(ラマンシフト)を調べることで、細胞1からの分泌物3の組成や構造を分析することができる。
図2に、本実施形態の細胞分泌物の分析方法に用いられる、ラマン散乱顕微鏡の概略構成の例を示す。
本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法で用いられるラマン散乱顕微鏡30は、いわゆる自発ラマン散乱顕微鏡であり、レーザー光源31で生成されたレーザー光4は、拡大レンズ系32によって拡大された後、全反射ミラー33、二色性ミラー34で反射され、偏向装置であるガルバノミラー35によって二次元に偏向可能となる。さらに、レーザー光4は、リレーレンズ系36によって顕微鏡筐体に導入され、プリズムミラー37によって顕微鏡の光軸上にガイドされて、対物レンズ38を介して試料39に照射される。
本実施形態では、図1に示したマルチウェルプレート20に形成されたウェル10の測定領域12内でレーザー光4がフォーカスするように照射される。なお、ビーム偏向装置であるガルバノミラー35と試料39の後ろ側焦点面とは光学的に共役となるように設定されていて、レーザー光4をその光軸に対して垂直な方向に、すなわち、マルチウェルプレート20の主面の方向に、二次元に高速度で走査することができ、顕微鏡の視野を観測しながら、ウェル10の測定領域12内の所定の平面位置に、レーザー光4のフォーカス点を移動させることができる。
レーザー光4のフォーカス位置に存在した細胞1からの分泌物3から生じたラマン散乱光5は、対物レンズ38によって平行化され、リレーレンズ系36とガルバノミラー35を経て二色性ミラー34に照射される。二色性ミラー34によって光路が分岐されたラマン散乱光5は、そのまま直進して励起光除去フィルター40、全反射ミラー41を経て、集束レンズ42で集束されて分光器43に導入される。回折格子、プリズムなどの分散型分光光学系、または、フーリエ変換型の分光光学系を備えた分光器43によって分光されたラマン散乱光4を、高感度のCCDカメラ44によって一次元または二次元の画像データとして検出する。
このようにして得られた、被測定物である細胞分泌物によって生じたラマン散乱光のスペクトル特性から、ラマンシフト周波数とラマン散乱強度との関係性を取得することができ、細胞分泌物の組成を分析することができる。
図2に示したラマン散乱顕微鏡30において、レーザー光4を照射するレーザー光源31としては、深紫外領域から、可視光領域、近赤外領域に渡る波長領域(波長200nm〜1100nm)の固体レーザーを用いることができる。なお、スペクトル幅が狭く、高輝度であり、CWレーザー(Continuous wave laser)であることが好ましく、一例として、波長532nmのYAGレーザーをレーザー光源として好適に用いることができる。なお、例えば生体細胞のイメージングなどにラマン散乱顕微鏡を用いる場合には、波長が短いレーザー光を用いると観測対象の細胞を傷つけてしまう畏れがあるが、本実施形態で示す細胞分泌物の分析方法の場合、レーザー光の照射される測定領域には細胞が進入していないため、波長の短い深紫外領域の光を照射するレーザー光源を用いることも可能である。
また、図2に示したように、顕微鏡部分の対物レンズ38は、レーザー光4を照射するとともにラマン散乱光5を受光する部分でもあるため、高い集光効率と検出効率とを得るために、開口数(NA)が0.7以上の高開口数のレンズを用いることが好ましい。
なお、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法に用いられる、図2に示したラマン散乱顕微鏡30の具体的な構成はあくまでも例示に過ぎない。例えば、レーザー光4とラマン散乱光5とを分岐する手段として、図2に示した二色性ミラー34に替えてビームスプリッターを用いるなど、市販のラマン散乱顕微鏡を含めた一般的なラマン散乱顕微鏡の構成を利用することができる。特に、各種のレンズ部材や、ミラー、プリズムなどの光路を変更するための部材の配置は、さまざまな形態で構成することができる。
本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法では、マルチウェルプレート20に形成されたウェル10が、細胞1が収容される閉じ込め領域11と細胞1が進入不可能に形成された測定領域12とから構成されている。
図3に、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法に用いられるマルチウェルプレートの構成を示す。図3(a)は、実際に発明者らが作成したマルチウェルプレートの拡大写真を示す。また、図3(b)は、マルチウェルプレートに形成されたウェルの形状を説明するための平面図である。
図3(a)に示すように、マルチウェルプレート20に形成されたウェル10の閉じ込め領域11は、平面視したときに略円形状に形成され、測定領域12は、閉じ込め領域11の一部から一方向に延出する略矩形状に形成されている。
ウェル10をこのような閉じ込め領域11と測定領域12とが合わさった形状とすることで、一般的に略球形状もしくは略円板状として把握可能な、すなわち、平面視したときには、その縦方向の大きさと横方向の大きさとの差が比較的小さな形状となる細胞1が、測定領域12に進入することを効果的に防止することができ、図1に示すように測定領域12にラマン散乱測定を行うためのレーザー光4を照射することで、細胞1から分泌される分泌物3を、細胞1とは明確に区別した状態で分析することができる。
ウェル10の具体的な大きさは、測定対象となる細胞の大きさに応じて決定することとなるが、例えば直径が25μm程度の略球形状のヒト乳がん細胞(MDA−MB−231)からの分泌物を分析する場合には、閉じ込め領域11の円形部分の径、すなわち図3(b)におけるAとBの値をいずれも40μm、測定領域12の長さ部分である図3(b)のCの値を40μm、測定領域12の幅である図3(b)のDの値を20μmとした。このようにすることで、細胞1一つを閉じ込め領域11内に収容可能とするとともに、測定領域12には細胞1が進入できない状況を作り出すことができる。
なお、測定領域12は、幅Dの値を細胞1の直径サイズ以下とすることで内部への細胞1の進入を防ぐことができる。この点において、測定領域12の長さCの設計自由度は高いが、本実施形態で示すウェル10を設計するに当たっては、閉じ込め領域11内に収容された細胞1からの分泌物3の拡散度合いをも測定可能とするために、測定領域12の長さCを幅Dよりも大きく設計した。
本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法では、測定領域内の分泌物を光学的分析手段としてのラマン散乱分光によって分析している。ラマン散乱分光分析をはじめとする光学的な分析手段を用いることによって、測定領域を含むウェル内の環境に影響を与えることなく分泌物の成分などの分析を行うことができる。
このことを利用すれば、例えば、分析の開始時点から所定の時間間隔を置いて繰り返して分泌物を分析することができ、細胞から分泌される分泌物の組成の経時的な変化を観測することができる。また、前述したように、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法では、ラマン散乱分光分析を行うラマン散乱顕微鏡が、ビーム偏向手段としてのガルバノミラーを備えているため、レーザー光の照射位置を測定領域内で偏向させて所望の位置に照射することができる。このように、ラマン散乱分光分析を行うためのレーザー光の照射位置を測定領域内で変化させることで、細胞が閉じ込められている閉じ込め領域からの距離の変化に応じた分泌物の組成の変化を観察することが可能である。
図3(a)に示したように、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法に用いられるマルチウェル20では、各ウェル10の測定領域12が、互いに平行に、かつ、その両端位置が一直線状に並ぶように配置されている。また、各ウェル10の測定領域12は、その配列方向と直交する方向にも所定の間隔で並ぶようにマトリクス状に配置されている。
このように、測定領域12を互いに平行に、かつ、横方向の位置を揃えた列状に配置するとともに、所定の間隔で行方向にも配置することで、異なるウェル10の測定領域を順次測定していく場合に、マルチウェルプレート20をラマン散乱顕微鏡の光軸に対して移動させる方向を、縦方向と横方向の2方向に限定することができる。ラマン散乱顕微鏡をはじめとする顕微鏡では、試料を載置したプレートをx方向とy方向とに移動させることができるxyステージを備えていることが一般的である。このため、マルチウェルプレート20上における、測定対象となる測定領域12を上記のようにマトリクス状に配置することで、ラマン散乱顕微鏡に備わったxyステージを利用して、複数個が配置された測定領域を順次ラマン散乱顕微鏡の光軸位置に自動的に制御して移動させることが容易となり、多数の試料に対する分析のスループットを向上させることができる。
なお、図3(a)に示すように、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法に用いられるマルチウェルプレート20では、それぞれの測定領域12の配置位置の中間位置に、測定領域12とほぼ同じ略矩形状の比較領域24を、その長さ方向が測定領域12の長さ方向と平行となるように配置している。
比較領域24は、その幅を測定領域12の幅Dと同じように(図3(a)の場合、20μm)とすることで、各ウェル10から空間的に独立し、かつ、内部に細胞1が進入できない領域として形成することができる。このような比較領域24を備え、ウェル10と同時に細胞1が含まれた培養液2が比較領域24内に収容されるようにすることで、比較領域24では細胞1からの分泌物3の影響を受けていない状態の培養液2が収容された状態とすることができる。
このため、比較領域24内の分泌液2を、測定領域12と同様にラマン散乱顕微鏡を用いてラマン散乱分光分析することによって、測定領域12内における培養液2の分析データを直接的に得ることができる。この得られた、培養液2単独の分析データを、測定領域12での分析データから算術的に引き算することによって、培養液2の成分の影響を除外した状態の細胞分泌物3の分析データを得ることができる。
なお、図3(a)では、本実施形態のマルチウェルプレート20として、比較領域24を全ての測定領域12の間隔部分に配置した例を示した。このようにすることで、必要に応じて、マルチウェルプレートを大きく移動させることなく、適宜比較領域24内の培養液2の分析データを得ることができる。しかし、上述のように比較領域24では、測定領域12内の培養液の状態を判断するための基準となる分析データを得ることが主たる目的となるため、必ずしも測定領域12と同じ個数必要となるものではない。例えば、マルチウェルプレート20の全ての領域において、培養液2の成分に変化が生じていない場合には、比較領域24はマルチウェルプレート20上に一つ形成されていれば足りる。また、マルチウェルプレート20に対する光線などの入射状況や温度分布などの外部環境が異なるために、マルチウェルプレート20の部分によって培養液2のコンディションが異なっていることが想定されている場合でも、複数個、例えば10〜数十個の測定領域12に対して一つの比較領域24を配置することで、比較領域24が果たすべき本来の意義を達成することは可能である。
本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法で用いられるマルチウェルプレート20では、ウェル10の底面13を親水性の部材で、ウェル10の側面14を疎水性の部材で構成している。
細胞1を含む培養液2をウェル10内に導入する際には、ウェル10の底面13が親水性であることが好ましい。一方、ウェル10内に細胞1と培養液2を収容した後には、隣り合うウェル10間で培養液2が混じってしまい、一つの細胞1からの分泌物3の分析が正確にできなくなることを防止することが必要となる。このため、本実施形態の細胞分泌物の分析方法では、図1に示すように、ウェル10の上方とウェル10の周辺に位置するマルチウェルプレート20の上面とを、疎水性のオイル23で覆うようにしている。このとき、ウェル10の側面14、特に側面14の上端部分近傍やウェル10の周囲の上面部分を疎水性の部材で構成しておくことにより、培養液2を排除してウェル10の上面に密着した状態でオイル23を供給することが可能となる。
ここで、マルチウェルプレート20上に細胞1を含んだ培養液2を供給してウェル10の閉じ込め領域内に細胞1を含んだ培養液2を、また、ウェル10の測定領域と上述した比較領域24内に培養液2を供給する工程と、その後に、ウェル10の形成面の上面をオイル23で覆う工程とについて説明する。
図4は、マルチウェルプレートに細胞を含んだ培養液と、その後に上面を覆うオイルを供給する工程とを説明するイメージ図である。
図4(a)は、本実施形態にかかるマルチウェルプレート20の構成を説明するために、マルチウェルプレート20を斜め上方から見た状態を示している。
図1に断面構成を示したように、本実施形態にかかるマルチウェルプレート20は、親水性のガラスからなるベースプレート21上に、フッ素樹脂などの疎水性の樹脂素材からなるウェル形成層22を積層して構成されている。なお、各ウェル10と比較領域24とは、ウェル形成層22に対して所望する開口形状を描いたパターンマスクを用いたフォトリソグラフィー法などによって、ウェル形成層22に容易に形成することができる。
フォトリソグラフィー法によって、ウェル形成層22の厚み分を正確にエッチングすることによって、ベースプレート21の上面21aが露出して、親水性部材で形成されたウェル10の底面13を構成することができる。また、ウェル形成層22は、疎水性の樹脂部材で形成されているため、ウェル10のパターンがエッチングされた側面22aとウェル10の形成部分以外の上面22bとは疎水性であり、疎水性の部材で形成されたウェル10の側面14を構成することができる。
なお、上記では、マルチウェルプレート20を構成するベースプレート21として、親水性部材であるガラスで形成されたものを用いた例を示したが、ベースプレート21は、少なくともその上面21aが親水性であれば良く、例えば、疎水性のガラスプレートの上面のみを親水性を有するように加工しても良い。
図3(a)、および、図3(b)に示したように、本実施形態にかかるマルチウェルプレート20では、円形状の閉じ込め領域11の直径を40μm、測定領域12の幅を20μm、長さを40μmとした。また、隣り合うウェル10同士の間隔は、閉じ込め領域11の間の間隔を40μm、すなわち、ウェル10の配置ピッチを80μmとした。さらに、隣り合うウェル10の間隔部分に、測定領域12と平行に幅20μmの比較領域24(長さは60μm)を配置して、一列分のウェル10を構成した。ウェル10の列と隣に位置するウェル10の列との間隔は、閉じ込め領域11と隣り合う列の測定領域12との間隔が30μmとなるように、すなわち、行方向のウェル10の配置ピッチが110μmとなるようにしている。なお、これらマルチウェルプレート20上のウェル10の大きさや形状、その配列ピッチは、前述のように測定対象となる分泌液を分泌する細胞の大きさと形状に基づいて適宜最適に設計されるべきものである。
また、図示は省略するが、マルチウェルプレート20自体の形状と大きさとしては、直径が0.5cm〜2.5cm程度の円形、または、一辺が0.5cm〜2.5cmの正方形とすることができる。なお、このマルチウェルプレート20の外形と形状とは、測定領域12内の分泌物3を分析する光学的手段に使用可能な範囲で定められる。本実施形態の場合は、ラマン散乱顕微鏡30に用いられるxyステージ上に載置可能な大きさの中で、形成されるウェル10の数とその配置間隔とを考慮して適宜定められている。
図4に戻って、図4(b)に示すように、マルチウェルプレート20の上面に、細胞1を含んだ懸濁液2が供給される。なお、図4での図示は省略するが、マルチウェルプレート20の外形部分である周辺部には、マルチウェルプレート20の表面から上方に向かって形成された周囲壁部が形成されている。このため、図4(b)に示すように、マルチウェルプレート20の上面が所定の厚さの懸濁液2で覆われるように、懸濁液2を供給することができる。そして、懸濁液2内で、細胞1がウェル形成層22の表面や、ウェル10の閉じ込め領域11内に沈降するまで、しばらくの間放置する。
このとき、図4(b)に示すように、細胞1の一部がウェル10の閉じ込め領域11内に入る。一方で、残りの細胞1はウェル形成層22の上面に留まった状態となる。閉じ込め領域11内に一定の割合以上で細胞1が入るように、培養液2内での細胞1の数密度を調整する。
ウェル10と比較領域24内に培養液2が、また、所定の割合の閉じ込め領域11に細胞1が収容された状態で、ウェル形成層22の上面に残っている培養液2やこれに含まれる細胞1を除去するために、ウェル形成層22の上面に、疎水性の液体としてのオイル23を供給する。
前述のように、ウェル形成層22が疎水性の部材で形成されているため、ウェル形成層22の平面視した際の端部近傍からオイル23をゆっくりと供給することで、ウェル形成層22と濡れ性の高いオイル23は、培養液2を押しのけるように広がって、ウェル形成層22の上面22b(図1参照)上を覆うこととなる。
ウェル10と比較領域24内に入っている培養液2は、ウェル10の底面11と比較領域24の底面とがいずれも親水性部材で形成されているため、ウェル10および比較領域24内に残ることができる。このようにして、図4(c)に示すように、それぞれのウェル10と比較領域24とが、いずれも他の部分とは独立して配置された状態、すなわち、互いの間で培養液2が混じらない状態となり、細胞1が入っているウェル10では、その細胞1からの分泌物3について、測定領域12で正確な分析を行うことができる。
図5に、細胞が収容された状態のウェルを撮影した顕微鏡写真を示す。
細胞1がウェル10の閉じ込め領域11内に収容され、閉じ込め領域11と測定領域12とが培養液2で満たされていることが確認できる。
この状態で、測定領域12にラマン散乱顕微鏡30のレーザー光4を照射して、測定領域12内の分泌物の分析を行う。
なお、前述のように、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法では、マルチウェルプレート20上に細胞1を含んだ培養液2を供給して、細胞1がウェル10の閉じ込め領域11内に自然に沈降するようにしている。このため、例えば、半分程度の閉じ込め領域11内には、細胞1が入っていない状態となることが考えられる。また、閉じ込め領域11は、一つの細胞1が収容されるようにその形状と大きさとを設計しているが、まれに、2つ(極まれにはそれ以上)の細胞が閉じ込め領域に入ってしまう場合もある。
そこで、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法では、このような一つの細胞が閉じ込め領域11に収容されていないウェル10の測定領域12については、ラマン散乱測定を行なわないようにして、一つのマルチウェルプレート20を対象とする測定のスループットを向上している。
なお、ウェルの閉じ込め領域内に細胞が入っていない状態であるか、または、2つの細胞が入ってしまっている状態であるかは、必要に応じて低倍率の顕微鏡で拡大するなどして、視認により判断することができる。また、所定のプログラムを用いて、一定の倍率でマルチウェルプレートの表面を撮像したものについて画像認識処理を行って、測定対象となる測定領域を絞り込み、xyステージの制御と連動することで、自動的に必要な測定量域のみについてラマン散乱測定によるデータ収集を行うようにすることができる。
このようにして、測定対象となる測定領域を把握した後に、収容されている分泌液に対してラマン散乱分光分析を行う。
図2に示したラマン散乱顕微鏡を用いて、測定領域12の所定の位置にレーザー光4を集光させて、このとき生じるラマン散乱光5を分光器43で分光し、カメラ44によって画像データとして記録してスペクトル解析を行う。
なお、レーザー光4の照射位置(焦点位置)が測定領域12の側壁部分に近い場合には、ウェル形成層22を構成する樹脂の有機分子のラマン散乱が励起され、測定データのノイズとなる。このため、ガルバノミラー35を調整することによって、測定領域12の側壁部分から、一例として3μm以上、より好ましくは5μm程度離れた位置にレーザー光4を集光させるようにする。
同様に、測定領域12の底面13を構成するガラスの成分や、測定領域12の上面を覆っているオイル23の成分によるラマン散乱を測定することを回避するために、測定領域12の厚さ(深さ)方向におけるレーザー光4の焦点位置も、測定領域の上下の境界から、一例として3μm以上、より好ましくは5μm程度離すことが好ましいと考えられる。
図6は、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法に用いられるラマン散乱顕微鏡において、ウェル内の所定の位置にレーザー光を照射した状態について撮影した顕微鏡写真である。
図6の左上に、レーザー光4の照射位置を示したモデルを示す。モデルにおいて、ウェル10内に記載した数字が、図6の右側に並べた写真におけるレーザー光4の照射位置を示している。本実施形態の細胞分泌物の分析方法で用いられるラマン散乱顕微鏡30は、上述のようにガルバノミラー35による偏向装置を備えているため、ウェル10内の所望する位置に正確にレーザー光4を照射することができる。
なお、図6において、「3」として示した写真などから、細胞1は閉じ込め領域11のほぼ中央に位置していることが分かる。この状態を、図6の左上の図面に、細胞1の存在箇所を点線で表示している。細胞1が、円形の閉じ込め領域の略中央部分に存在しているため、図6において測定箇所が「1」および「2」として示した写真では、ウェル10内の細胞1にレーザー光4が照射されていると考えられる。したがって、細胞1からの分泌物について分析する上では、この「1」と「2」に示した照射位置は好ましいとは言えない。
一方で、細胞からの分泌物とともに細胞自体に対する分析を行う場合には、図6の「1」および「2」として示した写真のように、閉じ込め領域内にレーザー光を照射すればよい。このように、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法によれば、細胞が収容されているウェル内でのレーザー光の照射位置を適宜調整することで、細胞からの分泌物のみならず、細胞自体の分析も同時に行えることがわかる。
なお、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法は、細胞からの分泌物が収容されている測定領域にレーザー光を照射してラマン散乱分光分析を用いてその成分を求めるものである。ラマン散乱分光による分析は、レーザー光を照射して生じるラマン散乱光をデータ解析することにより行われるため、例えば、従来技術として説明した分析方法で用いられていたような質量分析とは異なり、分析を行うための特別な前処理を行う必要がない。このため、ラマン散乱顕微鏡において、xyステージなどを用いてマルチウェルプレートにおける測定領域を、ラマン散乱顕微鏡において照射光が照射される位置に配置するだけで、それぞれの測定領域内の細胞分泌物をすぐに分析することができる。結果として、本実施形態にかかる細胞分泌物の分析方法によれば、多数の測定領域が形成されたマルチウェルプレートに対して、次々に所望する測定領域のデータ分析を行うことができ、例えば統計的なデータ解析を行う必要がある場合などでは特に、高いスループットでの測定を行うことができる。
また、光学的な分析方法は、従来技術で行っていたような培養液を収集して行うよういわゆる破壊検査ではない非破壊での分析方法であり、同じ測定対象に対して繰り返しての測定を行うことができる。
このため、一つの細胞をウェル内に閉じ込めた後に、一定の時間毎に測定を繰り返すことによって、細胞から分泌される分泌物の経時的な変化を測定することができる。
また、測定領域の中で、分析を行うためにレーザー光を照射する位置を適宜移動させて、かつ、繰り返して測定を行うことができるため、拡散の速度や分泌物の拡散方向などを把握することができ、例えば細胞からの距離に応じた分泌物の拡散マップを作成するなど、二次元的な広がりを持った多角的な測定を行うことができる。
図7、および、図8に、一つの細胞からの分泌物について、ラマン散乱顕微鏡30を用いて実際に行った測定結果のスペクトルを示す。測定対象の細胞としては、上述したヒト乳がん細胞(MDA−MB−231)を用いた。
図7は、測定領域内の3箇所と、比較領域内の1箇所にレーザー光を照射して得られたスペクトルを示す。
また、図8は、測定領域の3箇所におけるラマン散乱スペクトルそれぞれに対して、比較領域内の培養液に対して行ったラマン散乱スペクトルを引き算したデータを示している。
図7において、符号51として太い実線で示すスペクトルが、比較領域24での培養液についてのラマン散乱スペクトルである。また、符号52が、図6におけるレーザー光の照射位置モデル図の「3」の位置におけるラマン散乱スペクトルを、符号53が、図6における照射位置モデル図の「4」の位置にレーザー光4を照射した際のラマン散乱スペクトルを、符号54が図6の照射位置モデル図の符号「5」の位置にレーザー光4を照射した際のラマン散乱スペクトルを示している。
図7に示すように、測定領域のデータである符号52、53、54で示すスペクトルの特性と、比較領域24の測定データである符号51で示すスペクトルの特性とは、明らかに傾向が異なっていることが理解できる。また、図7に示すスペクトルデータでは、いずれの測定データにおいても、波長(cm-1)が1200から1400の部分に比較的強い出力のピークが存在している。このピークは、マルチウェルプレート20の上面を覆っているオイル23の成分に基づくラマン散乱スペクトルの影響が現れているものと考えられる。
これに対し、レーザー光4のそれぞれの照射位置におけるラマン散乱スペクトルから、比較領域24の分析データを引き算して得られたラマン散乱スペクトルを図8に示す。図8において、符号55が、図6におけるレーザー光の照射位置モデル図の「3」の位置におけるラマン散乱スペクトル、すなわち図7の符号52のデータから符号51のデータを引き算したスペクトルを示している。同様に、図8における符号56が、図6における照射位置モデル図の「4」の位置にレーザー光4を照射した際のラマン散乱スペクトル(図7の符号53から符号51を引いたもの)を、符号57が図6の照射位置モデル図の符号「5」の位置にレーザー光4を照射した際のラマン散乱スペクトル(図7の符号54から符号51を引いたもの)を示している。
図8に示すスペクトルデータからは、波長1000近傍のベンゼン環を示すと見られる出力ピーク、波長1600近傍におけるC=C結合を示している出力ピーク、さらに、波長1750近傍のC=O結合を示す出力のピークが現れていることが分かる。
なお、図7に現れているオイルを示すと考えられる波長部分は、データがマイナスとなるなどのエラーが生じている。図7において、オイルの影響が強く出たこと、また、図8において、マイナスのデータが現れたことは、図7、および、図8に示す今回のデータの測定に用いたウェルの深さが比較的浅かったため、ラマン散乱顕微鏡からの照射光の焦点位置が、ウェルの上面に位置するオイルから十分な距離離れていなかったためと考えられている。本来測定すべき細胞からの分泌物に、オイル由来のスペクトルが生じた位置にピークを有する成分が含まれている場合には、オイルから十分に離れた位置にレーザー光の焦点位置を設定することでより正確な分析ができる。また、必要に応じて、異なる組成のオイルを使用して、オイル由来のピークが生じたとしても、測定対象となる成分の波長のピークが現れる領域に、オイル由来のピークが生じないようにすることができる。
なお、図3(a)に示したような、ウェルが縦方向および横方向にマトリクス状に配置されたマルチウェルプレートを用いることで、複数個の細胞について、それぞれの細胞から分泌される分泌物についての統計的な分析を行うことができる。
この場合には、一例として、まず、xyステージを用いて最初のウェルをラマン散乱顕微鏡の視野中心に配置する。このとき、ウェルの中心や閉じ込め領域と測定領域との境界部分など、各ウェルにおける詳細位置を二次元のxy座標を用いて予め特定しておくことが有効である。
なお、必要に応じて、実際の顕微鏡の視野を確認しながら、マルチウェルプレートの位置を微調整することも可能である。この微調整は、画像認識手段を用いて自動的に行うことができる。
次に、ウェルの閉じ込め領域を観察して、内部に一つの細胞が収容されているかを確認する。細胞が収容されていない場合、または、2つ(以上)の細胞が収容されている場合には、当該ウェルの分析は行わず、次のウェルの分析のために、マルチウェルプレートの位置を変更する。一つの細胞が収容されている場合には、測定領域の所定位置にレーザー光を照射し、得られるラマン散乱のスペクトルデータを測定、記録する。
同じタイミングで、測定領域内の別の位置での分泌液の状態を分析する場合には、偏向手段によってビーム照射位置を移動させて、改めてビームを照射し、生じるラマン散乱光のスペクトルデータを測定、記録する。
このとき、xyステージを動作させて、隣接する比較領域に対してもレーザー光の照射を行い、培養液の分析データを取得する。この比較データの測定は、測定領域での測定の都度行う必要はない場合が多く、複数回の測定、または、所定時間が経過するタイミングで、適宜比較データを得るようにすることができる。
このような計測を、例えばコンピュータ制御によって、複数形成されたウェルに対して行うことで、多数の細胞に対しての分泌物の統計的な分析を行うことができる。
なお、経時的な分泌物の測定を行う場合には、所定の時間が経過するたびに、上記の測定を繰り返せばよい。
得られたラマン散乱スペクトルは、比較データを用いてノイズを取り去った後に、データ解析に回すことができる。例えば、ラマン散乱光のピーク位置やその強度に基づいて、細胞分泌物の組成を分析することができる。この場合には、多数のデータを元にした統計的な分析を行うことで、より正確な分泌物の分析を行うことができる。
また、分泌物の経時測定を行った場合や、分泌物の平面的な広がりなどの二次元解析を行った場合には、得られたデータに基づいて、例えば所定の物質を特定の色を付して表すなどすることで、解析結果をより容易に理解することが可能な画像イメージとして表すこともできる。
以上、本願で開示する細胞分泌物の分析方法、この分析方法に好適に用いられるマルチウェルプレートの実施形態について、図面を参照して説明した。
本実施形態に示す細胞分泌物の分析方法によれば、一つの細胞から分泌される分泌物について、非破壊の分析方法である光学的分析手段としてのラマン散乱分光分析法によってその組成分析を行うことができる。このとき、細胞が閉じ込められた閉じ込め領域と、データ解析を行う測定領域とを分けることで、精度の高いデータを高いスループットで得ることができる。また、非破壊検査である光学的分析手段を用いているため、一つの試料に対する繰り返しの分析を可能としている。
本願で開示するマルチウェルプレートは、細胞を閉じ込める閉じ込め領域と測定領域とを区別して構成し、さらに、ウェルの底面を親水性部材で、ウェルの側面を疎水性の部材で形成しているため、培養液に含まれる細胞を閉じ込め領域に閉じ込める工程、および、閉じ込め領域に閉じ込められた細胞からの分泌物を測定する工程を、簡易に、かつ、確実に行うことができる。
なお、上記の実施形態において、細胞分泌物の光学的分析手段として、自発ラマン散乱を利用して分光分析する方法を説明した。しかし、本願で開示する細胞分泌物の分析方法に用いられる光学的な分析の方法は、自発ラマン散乱を利用する方法には限られない。ラマン散乱を利用する場合でも、測定対象によっては、2色の光パルスを用いるコヒーレント反ストークスラマン散乱(coherent anti-Stokes Raman scattering, CARS)顕微鏡を用いたCARS分光分析によって細胞分泌物の分析を行うことがより有利な場合がある。また、誘導ラマン散乱(stimulated Raman scattering、SRS)顕微鏡を用いて解析することが可能である場合も想定される。
さらに、ラマン散乱分光分析には限られず、たとえば、蛍光マーカーを用いたタンパク質の蛍光観察や、抗体染色を用いた成分解析方法など、非破壊の成分分析方法である各種の光学的分析方法を用いて、測定領域内の細胞分泌物の分析を行うことができる。
また、上記実施形態では、円形状の閉じ込め領域と、略矩形状の測定領域とが連続して形成されたウェルを用いて細胞の閉じ込めと測定領域の確保とを行う例について説明した。しかし、閉じ込め領域と測定領域との形状は、上記例示したものに限られず、閉じ込め領域、および/または、測定領域を上記の例と異なる形状で構成することができることは言うまでもない。また、閉じ込め領域と測定領域との間に、幅や深さが他の部分とは異なる障壁を構成して、測定領域に細胞が進入しないようにすること、また、測定領域の深さを閉じ込め領域と比較して浅く形成することによって、測定領域内への細胞の進入を防ぐ構成とすることができる。このように、細胞を収容できる閉じ込め領域と、細胞が進入不可に構成された測定領域については、さまざまな形態で構成することができる。
また、両端に円形の閉じ込め領域を備え、2つの閉じ込め領域を細い矩形状の測定領域で接続したような、平面視がダンベルに似た形状のウェルを用い、2箇所の閉じ込め領域に同一の、または、異なる種類の細胞を閉じ込めて、2つの細胞間の相互作用による分泌物の組成や、広がり状態、経時変化を測定することも考えられる。このように、マルチウェルプレートに形成されるウェルの形状を工夫することで、さらに多様な細胞分泌物の分析を行うことができる。
上記実施形態では、閉じ込め領域に閉じ込められた一つの細胞からの分泌物を分析する例について説明したが、閉じ込め領域の形状、大きさを工夫して、2つまたはそれ以上の所定の数の細胞、または、細胞塊を閉じ込め領域に収容可能とすることで、このような複数個の細胞や細胞塊からの分泌物を分析することも可能である。
また、上記実施形態では、それぞれのウェル内に細胞を含んだ培養液を収容した後、隣接するウェル同士の培養液の混合を防止するために、マルチウェルプレートの上面を疎水性の液体であるオイルで覆うことを説明した。上記したように、マルチウェルプレートを構成する部材の種類を工夫することで、簡単な操作で、隣接するウェル内の培養液が混合する問題を解消することができる一方で、特に、ラマン散乱分光分析を行う場合には、オイルの成分が分析結果に悪影響を及ぼす畏れがあることも分かっている。
このため、マルチウェルプレートの上面の培養液を確実に除去する方法として、例えば、風圧によってマルチウェルプレート上の培養液を除去する方法、または、表面を疎水性の部材でコーティングしたブレードを用いてマルチウェルプレート上の培養液を掻き取ることによって除去する方法など、他の方法を利用してマルチウェルプレートの表面に培養液が残らないようにして、それぞれのウェル内でのより正確な分泌物の分析を行うことができる可能性がある。
なお、細胞とともにウェル内に収容される水溶液としては、それぞれの細胞に好適な培養液を用いることができる。また、バッファー溶液を用いることも可能である。ただし、ラマン散乱分光によって分泌物の分析を行う場合には、フェノールレッドなどの発色性のある培養液を用いると、可視光領域でラマン散乱光よりも強い発光を生じるため、培養液として好ましくない。
また、測定領域内の分泌物をラマン散乱分光で分析する場合に、ウェルの底面に金属のナノ粒子を埋め込むことによって表面プラズモンを生じさせ、より感度の高いラマン散乱分光分析を行う、いわゆる表面増強ラマン散乱(SERS)と呼ばれる手法を用いることも可能である。
本願で開示する細胞分泌物の分析方法は、細胞からの分泌物を非破壊の方法で、高スループット、かつ、高精度での分析を実現するものである。また、本願で開示するマルチウェルプレートは、細胞分泌物の分析に用いて有益である。このため、本願で開示する細胞分泌物の分析方法、また、マルチウェルプレートは、生命科学分野をはじめとする各種分野での研究への貢献が期待できる。
1 細胞
2 培養液(水溶液)
3 分泌物(化学物質)
4 レーザー光
5 ラマン散乱光
10 ウェル
11 閉じ込め領域
12 測定領域
20 マルチウェルプレート
21 ベースプレート
22 ウェル形成層

Claims (12)

  1. 細胞から分泌された化学物質を分析する分析方法であって、
    ウェルの閉じ込め領域に収容された細胞が分泌した化学物質を、前記閉じ込め領域と連続し、かつ、内部に細胞が進入できないように形成された測定領域において、光学的分析手段によって分析することを特徴とする細胞分泌物の分析方法。
  2. 前記光学的分析手段が、ラマン散乱分光分析である請求項1に記載の細胞分泌液の分析方法。
  3. 前記閉じ込め領域、および、前記測定領域のいずれとも接続されていない状態で、かつ、前記細胞が進入できないように形成された比較領域をさらに備え、
    前記比較領域内の物質を光学的分析手段によって分析した結果を用いて、前記測定領域から得られた測定データの較正を行う、請求項1または2に記載の細胞分泌液の分析方法。
  4. 前記閉じ込め領域と前記測定領域とを有する前記ウェルが、ウェルプレートに複数個形成され、前記測定領域が縦横のマトリクス状に配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞分泌液の分析方法。
  5. 前記ウェルが、親水性の部材により形成された底面と、前記底面上に配置された疎水性の部材によって形成された側面とで形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の細胞分泌液の分析方法。
  6. 前記ウェルの前記側面の上方に疎水性の液体を展開した状態で、前記測定領域内の物質を光学的分析手段によって分析する、請求項5に記載の細胞分泌液の分析方法。
  7. 一つの細胞が閉じ込められている前記閉じ込め領域に連続する前記測定領域を選択して、当該測定領域内の前記細胞分泌液を分析する、請求項1〜6のいずれかに記載の細胞分泌液の分析方法。
  8. 前記測定領域内の前記細胞分泌液を、所定の時間間隔を隔てて複数回測定する、請求項1〜7のいずれかに記載の細胞分泌液の分析方法。
  9. 前記測定領域内の異なる位置に照射光を照射して、それぞれの位置での照射光を用いて前記細胞分泌液を分析する、請求項2〜8のいずれかに記載の細胞分泌液の分析方法。
  10. 少なくとも上面に親水性の部材が配置されたベースプレート上に、疎水性の部材からなるウェル形成層が積層され、前記ウェル形成層に、前記親水性の部材が底面を形成するウェルが複数個形成されたマルチウェルプレートであって、
    前記ウェルが、測定対象となる分泌液を分泌する細胞を収容可能に形成された閉じ込め領域と、前記閉じ込め領域に連続して形成され、かつ、前記細胞が進入しないように形成された測定領域とを備え、
    前記測定領域が前記ウェル形成層にマトリクス状に配置されていることを特徴とするマルチウェルプレート。
  11. 前記測定領域が形成されている部分の間隔部分に、前記ウェルと連続せず、かつ、前記細胞が進入できないように形成された比較領域が形成されている、請求項10に記載のマルチウェルプレート。
  12. 前記閉じ込め領域は平面視略円形状であり、前記測定領域が前記閉じ込め領域から一方向に延出して形成された平面視略矩形状であり、前記比較領域が前記測定領域の延在方向に略平行に形成された平面視略矩形状である、請求項11に記載のマルチウェルプレート。
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