JP2018016505A - 配向性セラミックス焼結体の製造方法 - Google Patents

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Morimichi Watanabe
守道 渡邊
浩文 山口
Hirofumi Yamaguchi
浩文 山口
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【課題】磁場配向を用いて、低磁場でも高度に配向した配向性セラミックス焼結体を製造する。【解決手段】板状粒子を含む原料粉末と、グラフェンとを用意する工程と、板状粒子の表面の少なくとも一部をグラフェンで被覆する処理を原料粉末に施して、グラフェン被覆板状粒子を含有する処理粉末を作製する工程と、処理粉末と溶媒とを混合してスラリーを調製する工程と、スラリーに磁場を印加して板状粒子を所定の方向に配向させる工程と、スラリー中の溶媒を除去及び/又は固化させて、板状粒子が所定の方向に配向した成形体を作製する工程と、成形体を焼成して、焼結粒子の少なくとも一部が配向した配向性セラミックス焼結体を作製する工程とを含む、配向性セラミックス焼結体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、配向性セラミックス焼結体の製造方法に関する。
特性を向上させるべく焼結粒子の少なくとも一部を配向させた配向性セラミックス焼結体が知られている。そして、配向性セラミックス焼結体の製造方法の一つとして、磁化率の異方性を有する粉末を磁場で配向させて焼結させる手法が知られている。
例えば、特許文献1(特許第3556886号公報)には、α型アルミナ粒子を含むスラリーに1T以上の磁場を印加してα型アルミナ粒子を磁場の方向に配向させ、乾燥及び焼成に付することを含む、配向性アルミナ焼結体の製造方法が開示されている。また、特許文献2(特開2002−193672号公報)には、等軸晶ではない結晶構造をもつ非強磁性体粉末を溶媒に分散し、そのスラリーを磁場中で固化成形した後に焼結することを含む、配向性セラミックス焼結体の製造方法が開示されている。
しかしながら、従来の技術では、粒子を配向させるために磁束密度が10T程度の高磁場が必要であり、大型かつ高価な磁石を用いる必要があった。例えば、特許文献1にはα型アルミナスラリーをテフロン(登録商標)容器中に流し込み、この状態においてこの容器の外部に配置された超電導磁石から9Tの磁場を印加するとともに乾燥させてα型アルミナ成形体を得ることが開示されているものの、この手法は9Tもの高磁場を印加するために大型かつ高価な超電導磁石が必要であった。
一方、粉末をグラフェンで被覆することで、0.1〜1T程度の低磁場で配向体が得られるとする報告がある。例えば、非特許文献1には棒状のグラフェン複合化Si粒子を用いることで、0.4T(市販Nd磁石)という非常に小さな磁場で、Si針状粒子がc軸配向したセラミックスが得られることが教示されており、他のセラミックス材料への応用も可能であるとされている。
特許第3556886号公報 特開2002−193672号公報
多々見純一、"セラミックスの本質的な性能を発現させる革新的配向技術〜グラフェン複合化粒子を用いた低磁場配向技術〜"、[online]、国立大学法人横浜国立大学、[平成28年6月17日検索]、インターネット<URL:http://www.crd.ynu.ac.jp/crd/wp_public/wp-content/uploads/2015/08/6e7c32a6f122100f5a1be1588bed82cd.pdf>
しかしながら、非特許文献1に開示される棒状粒子をグラフェンで被覆する手法では、低磁場での配向は可能であるものの、その配向度の到達レベルがあまり高くないという問題点がある。
本発明者らは、今般、磁場配向を用いた配向性セラミックス製造方法において、棒状や針状などではなく板状の形状異方性を有する原料粉末を用いることにより、グラフェンで被覆しやすくなり、その結果、低磁場でもセラミックス焼結体の配向度を有意に高められるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、低磁場でも高度に配向した配向性セラミックス焼結体を製造することができる方法を提供することである。
本発明の一態様によれば、板状粒子を含む原料粉末と、グラフェンとを用意する工程と、
前記板状粒子の表面の少なくとも一部を前記グラフェンで被覆する処理を前記原料粉末に施して、グラフェン被覆板状粒子を含有する処理粉末を作製する工程と、
前記処理粉末と溶媒とを混合してスラリーを調製する工程と、
前記スラリーに磁場を印加して前記グラフェン被覆板状粒子を所定の方向に配向させる工程と、
前記スラリー中の前記溶媒を除去及び/又は固化させて、前記板状粒子が所定の方向に配向した成形体を作製する工程と、
前記成形体を焼成して、焼結粒子の少なくとも一部が配向した配向性セラミックス焼結体を作製する工程と、
を含む、配向性セラミックス焼結体の製造方法が提供される。
板状粒子の粒径を説明するための模式図である。 板状粒子の厚さを説明するための模式図である。
配向性セラミックス焼結体の製造方法
本発明による配向性セラミックス焼結体の製造方法は、原料準備工程、グラフェン被覆工程、スラリー調製工程、磁場配向工程、成形工程、及び焼成工程を含む。そして、このグラフェン被覆工程において、板状粒子の表面の少なくとも一部をグラフェンで被覆する処理を原料粉末に施して、グラフェン被覆板状粒子を含有する処理粉末を作製する。次いで、スラリー調製工程において、上記処理粉末と溶媒とを混合してスラリーを調製する。このように、グラフェン被覆板状粒子を含むスラリーを用いることで、配向性セラミックス焼結体の配向度を有意に高めることができる。特に、板状粒子を用いることにより、高いグラフェン被覆率が実現され、その結果、低磁場でも配向性セラミックス焼結体の配向度を有意に高めることが可能となる。この点、非特許文献1にはグラフェン複合化Si粒子のSEM観察結果が示されているが、ここにおいてSi粒子は板状ではない棒状であり、そのグラフェン被覆率も非常に低いものとなっている。また、この文献にはグラフェン複合化粒子を用いたSi低磁場配向セラミックスのX線回折結果が示されているが、ここにおいてc軸配向を示すとされる(002)回折ピークより(101)回折ピークの方が高強度であり、このセラミックスの配向度はそれほど高いものではないと推察される。
(1)原料準備工程
まず、板状粒子を含む原料粉末と、グラフェンとを用意する。板状粒子の材質は磁化率の異方性があるものであれば特に限定されないが、Al(アルミナ)、AlN、及びZnOが好ましく例示される。板状粒子がAlからなることが特に好ましい。なお、本明細書において「板状粒子」なる用語は、グラフェンで被覆される前の板状粒子又はグラフェン被覆板状粒子のうちグラフェン以外の板状粒子そのものについて言及するものであり、「グラフェン被覆板状粒子」なる用語と区別されるものである。
板状粒子のアスペクト比が2以上であるのが好ましく、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは10以上である。アスペクト比の上限は特に限定されないが、典型的には100以下であり、より典型的には50以下である。アスペクト比は、平均粒径の平均厚さに対する比として定義される。ここで、板状粒子の平均粒径は、図1に示されるような板状粒子板面の長軸長の平均値であり、板状粒子の平均厚さは、図2に示されるような板状粒子の厚さ(短軸長)の平均値である。これらの値は、走査型電子顕微鏡(SEM)で板状粒子からなる粉末中の任意の粒子100個を観察して決定すればよい。
板状粒子の平均粒径は、高配向化の観点からは大きい方が好ましい。例えば、板状粒子の平均粒径は好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上、最も好ましくは10μm以上である。一方、板状粒子の平均粒径は、焼結体の緻密性の観点からは小さい方が好ましく、例えば30μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下である。高配向と緻密化の両立をより良く実現するためには、板状粒子の平均粒径が0.5μm〜30μmであるのが好ましく、より好ましくは1μm〜20μmである。
原料準備工程においては原料粉末とともにグラフェンが用意される。炭素の同素体の一種であるグラフェンは炭素原子1個分の厚さしかない平面状の物質であり、炭素原子のsp結合によって形成された蜂の巣状の六角形状格子構造をとっている。グラフェンは磁化率の異方性が大きく、板状粒子をグラフェンで被覆することで、低磁場でも板状粒子が一方向に配向することが可能となる。
(2)グラフェン被覆工程
次に、板状粒子の表面の少なくとも一部をグラフェンで被覆する処理を原料粉末に施して、グラフェン被覆板状粒子を含有する処理粉末を作製する。板状粒子の表面をグラフェンで被覆する手法としては特に限定されるものではないが、水あるいは有機溶媒を媒体とし、原料粉末とグラフェンをアルミナなどの玉石とともに容器に入れて回転させる、いわゆる湿式ボールミルによる処理を挙げることができる。あるいは、媒体を加えない乾式ボールミルによる処理であってもよい。その他、ビーズミルやメカノケミカル処理を用いることができ、中でもメカノケミカル処理が好適である。メカノケミカル処理は、高エネルギーの機械的処理を施すことにより固体を活性化させ、化学反応を促進させる手法であり、原料粉末及びグラフェンをメカノケミカル処理に付することにより、効率的にグラフェン被覆処理を行うことができる。すなわち、板状粒子の板面とグラフェンの板面が付着する形態でもって被覆することが実現できる。
グラフェン被覆処理に先立ち、原料粉末に熱処理又はプラズマ処理を行ってもよい。熱処理又はプラズマ処理を行うことにより、原料粉末に含まれる板状粒子が活性化され、グラフェンが被覆されやすくなる。熱処理は100〜800℃の温度で行うのが好ましい。
グラフェン被覆板状粒子のグラフェン被覆率は10%以上であることが好ましく、さらに好ましくは20%以上、特に好ましくは30%以上である。被覆率を10%以上とすることにより、グラフェン被覆による配向度向上の効果を十分なものとすることができる。被覆率の上限は特に限定されるものではないが、典型的には100%である。ここで、グラフェン被覆率は、走査型電子顕微鏡(SEM)で板状粒子からなる粉末中の任意の粒子10個を観察してグラフェン被覆板状粒子の表面におけるグラフェンで被覆された部分の面積比率にて決定される。
また、処理粉末が遊離グラフェンを更に含んでいてもよい。遊離グラフェンは板状粒子に被覆されず、遊離状態にあるグラフェンのことである。遊離グラフェンは、磁場印加の際に板状粒子の配向をアシストする作用があるため、処理粉末が遊離グラフェンを含むことで、配向性セラミックス焼結体の配向度をより向上させることが可能となる。遊離グラフェンの存在はグラフェン被覆処理した粉末を、水あるいは有機溶媒中に分散させ、上澄みを採取しこれを乾燥後、残存する固形分の成分を分析することによって確認することができる。
(3)スラリー調製工程
さらに、処理粉末と溶媒とを混合してスラリーを調製する。スラリーに用いられる溶媒は特に限定されず、水であってもよいし、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶媒であってもよい。あるいは、溶媒として、硬化性樹脂等、後述する成形工程で固化可能な成分を含むものを用いてもよい。
スラリーには原料粉末を均一に分散させるために分散剤を添加するのが好ましい。分散剤の例としては、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリカルボン酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムが挙げられる。分散剤は、所定量を予め溶媒中に配合させておくのが好ましい。
板状粒子がAl(アルミナ)からなるとともに、スラリーがMgOを更に含むのが好ましい。MgOの含有量はAlに対して好ましくは50〜1000ppm、より好ましくは100〜600ppmである。MgO含有量を50ppm以上とすることにより、グラフェン被覆促進効果を高めることができる一方、1000ppm以下とすることにより、より緻密な焼結体を得ることが可能となる。
MgOの添加時機は限定されるものではないが、処理粉末の作製に先立ち原料粉末にMgOを添加するのが好ましい。これによりグラフェン被覆率をさらに改善させ、配向性セラミックス焼結体の配向度をより向上させることが可能となる。
スラリーは、板状粒子のみならず、板状粒子よりも平均粒径が小さい微細粒子を更に含むのが好ましい。微細粒子は典型的には非板状粒子であり、より典型的には球状粒子である。ここでいう球状とは、真球のみならず、鋭利な角を有しない多角形状のものを含む広い概念を指す。ここで、微細粒子の平均粒径は、微細粒子の最長辺の平均値であり、この値は、走査型電子顕微鏡(SEM)で板状粒子からなる粉末中の任意の粒子100個を観察して決定すればよい。板状粒子と微細粒子とを含む混合粉末を分散させたスラリーを用いることで、配向度及び緻密度の両方が高いセラミックス焼結体を望ましく得ることができる。すなわち、板状粒子と微細粒子とを含む混合粉末をスラリーの原料粉末として用いる場合、成形時に板状粒子が配向しやすくなる。また、焼成時に、板状粒子が種結晶たるテンプレートとして機能し、微細粒子がマトリックスとして機能し、それにより、テンプレートがマトリックスを取り込みながらホモエピタキシャル成長する。こうした製法は、TGG(Templated Grain Growth)法と呼ばれる。このような方法を用いることで、配向度が更に高まり、密度の高い焼結体を得ることができる。
微細粒子の材質は、焼結後に所望の生成物をもたらすものであれば特に限定されず、板状粒子と同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。例えば、配向アルミナ焼結体を得る場合、アルミナ板状粒子とアルミナ微細粒子を混合したスラリーを用いてもよいし、アルミナ板状粒子と遷移アルミナ微細粒子(例えばγ−アルミナ微細粒子)を混合したスラリーを用いてもよい。また、微細粒子の平均粒径は板状粒子の平均粒径よりも小さければ特に限定されないが、緻密化及び高配向化の観点では、微細粒子の最長辺が小さいほうが好ましい。一方、平均粒径が小さい粒子を用いると溶媒への分散性が低下する。このため、スラリーの作製しやすさの観点では粒径が大きい方が好ましい。このため、これらを両立するには、例えば、微細粒子の平均粒径は0.6μm未満が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmである。
スラリーが板状粒子と微細粒子の両方を含む態様において、スラリーに含まれる板状粒子及び微細粒子の合計重量を100重量部とした場合(すなわち板状粒子の重量をT重量部、微細粒子の重量を(100−T)重量部とした場合)に、スラリーに含まれる板状粒子の量Tが0.001〜50重量部の範囲内であるのが好ましい。スラリーに含まれる板状粒子の量Tが0.001重量部以上であると、セラミックス焼結体の配向度を高くしやすい一方、その量が50重量部以下であると焼結が進行しやすくなる。配向度の観点では、スラリーに含まれる板状粒子の量Tは0.1重量部以上が好ましく、より好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは1.5重量部以上である。一方、焼結性の観点ではスラリーに含まれる板状粒子の量Tは15重量部以下が好ましく、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下、特に好ましくは2.5重量部以下である。配向度と焼結性を両立する観点では、スラリーに含まれる板状粒子の量Tは0.001〜15重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部、より特に好ましくは1.5〜5重量部、最も好ましくは1.5〜2.5重量部である。これらの好ましい数値範囲は板状粒子及び微細粒子がアルミナで構成される場合に特に当てはまる。TGG法では、板状粒子(例えばアルミナ板状粉末)と微細粒子(例えばアルミナ微細粒子)の粒径や混合比を変えることによって、得られるセラミックス焼結体(例えばアルミナ焼結体)の微細構造を制御することができ、それ故、板状粒子と微細粒子の混合粉末は、板状粒子単体と比べて焼成によって緻密化しやすく、配向度も向上しやすい。
ところで、本発明に用いられる原料粉末及び本発明により得られる配向セラミックス焼結体は、Al(アルミナ)、AlN、ZnO及びこれらに類する材料に限定されるものではなく、磁性材料、強誘電体材料、圧電材料、光学材料等の他の材料であってもよい。
(4)磁場配向工程
次に、スラリーに磁場を印加してグラフェン被覆板状粒子を所定の方向に配向させる。スラリーに磁場が印加される限り、この工程の手法は限定されるものではないが、例えば、スラリーを容器内に流し込み、その後に容器内のスラリーに磁場を印加することによって行ってもよい。あるいは、ドクターブレード法などにより、スラリーをPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの支持基体上に塗布し、その後に支持基体上のスラリーに磁場を印加することによって行ってもよい。グラフェン被覆板状粒子を用いた本発明の方法によれば、低磁場でも高い配向度を得ることができる。また、磁場印加により配向状態を得た後は、スラリー粘度が低い場合であっても、磁場印加なしで配向状態を長時間維持することが可能になる。したがって、本発明の製造方法を用いることで、このように生産性の向上といった利点も享受することができる。このようにグラフェン被覆板状粒子を用いることにより配向度が高まる理由として以下のことが考えられる。すなわち、板状粒子は特定結晶面が板面を構成しており、これとグラフェンの板面との親和性が高く、スラリー中で配向した状態を維持しやすいためと考えられる。また、板状粒子とグラフェンの接触がいわば面同士の接触となるため、安定性が高まることによるとも考えられる。
スラリーに印加する磁場は、その磁束密度が高い方が配向させやすく、高配向を得る観点では高い方が好ましい。好ましくは0.01T以上、より好ましくは0.1T以上である。一方、磁束密度の高い状態を得るには大型の超電導磁石装置を用いることが必要となり、製造コストが高くなる。このため、製造コストの観点では磁束密度は低い方が好ましい。このため、磁束密度は好ましくは2T以下、より好ましくは1T以下である。高配向と製造コスト低減の両立をより良く実現するためには、磁束密度が0.01〜2Tであるのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1Tである。このような磁束密度を有する磁場は、ネオジム磁石などの安価な磁石によって発生させることができるため、大型かつ高価な超電導磁石を用いる必要はない。
好ましくは、磁場の印加が、回転磁場を印加する又は複数の方向から磁場を印加することにより行われる。このような回転磁場を印加する又は複数の方向から磁場を印加することにより、より高次の配向性を付与することが可能となる。すなわち、板状粒子の材質によっては、一軸方向に磁場を印加するのみでは、結晶軸の1軸方向のみに粒子の配向性が付与され、他の2軸方向には粒子がランダム配向することがあるが、回転磁場を印加する又は複数の方向から磁場を印加することにより、1軸のみならず全ての結晶軸方向に配向性が付与させるため、板状粒子の配向性を固定化することが可能となる。
(3)成形工程
続けて、溶媒を除去及び/又は固化させて、グラフェン被覆板状粒子が所定方向に配向した成形体を作製する。配向したグラフェン被覆板状粒子からなる成形体を作製できるかぎり、成形手法は特に限定されない。例えば、スラリーを所定の容器中で乾燥させる(すなわち溶媒を蒸発等により除去する)ことで成形体を得ることができる。この場合、好ましい乾燥温度は20〜150℃である。あるいは、スラリーの溶媒に硬化性樹脂等を用い、硬化性樹脂等を硬化させることで成形体を得てもよい。
(4)焼結工程
最後に、成形体を焼成して、焼結粒子の少なくとも一部が所定方向に配向した配向性セラミックス焼結体を作製する。配向性セラミックス焼結体は、焼結粒子の大半が配向しているのが好ましく、概ね全部がそのように配向しているのがより好ましい。成形体の焼成方法や焼成温度は特に限定されないが、板状粒子と微細粒子を混合したスラリーを用いる場合(TGG法)においては、テンプレートがマトリックスを取り込みながらホモエピタキシャル成長するTGGが生じる温度以上で焼成するのが好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、熱間静水圧プレス(HIP)やホットプレス等の加圧焼結により焼結を進行させる。焼結体中の炭素成分残留を抑制するには加圧焼結前に酸化性雰囲気で仮焼するのが好ましい。また、HIPで焼結させる場合はカプセルHIPを用いても良いし、HIP前に常圧焼結を行っても良い。常圧焼結は酸化性雰囲気、N、Arなどの不活性雰囲気、或いは真空下で行っても良い。成形体を酸化性雰囲気下で焼成した後、熱間静水圧プレス(HIP)により更に焼結を進行させる態様はTGG法を用いた焼結に特に適する。例えば、配向アルミナ焼結体を得る場合、酸化性雰囲気下での焼成は、好ましくは1100〜1600℃、より好ましくは1300〜1600℃の温度で、1〜10時間行うのが好ましい。酸化性雰囲気は特に限定されず、酸素雰囲気や大気雰囲気を用いればよい。一方、HIPは、一般的な条件に従って行えばよく、その条件は特に限定されないが、Arガスを用いて、好ましくは150〜200MPaの圧力にて、好ましくは1500〜2050℃、より好ましくは1600〜2000℃の温度で、2〜6時間行うのが好ましい。
焼結工程の際、炭素原子から構成されるグラフェンは成形体から除去される。しかしながら、グラフェンの除去をより確実にするために、焼結工程に先立ち、成形体中のグラフェンを除去する工程を別途設けてもよい。このようなグラフェン除去工程を設けることにより、焼結体中の残留炭素量を減らすことができ、特性向上を図ることが可能となる。グラフェン除去工程は限定されるものではないが、例えば、成形体を好ましくは300〜1000℃、さらに好ましくは400〜800℃の温度にて熱処理することにより行うことができる。
配向性セラミックス焼結体の主成分は、Al(アルミナ)、AlN及びZnOから選択される少なくとも1種であるのが好ましく、特に好ましくはAlである。配向性セラミックス焼結体の主成分とは、例えば配向性セラミックス焼結体の典型的には50重量%以上、より典型的には70重量%以上、さらに典型的には80重量%以上、特に典型的には90重量%以上、最も典型的には95重量%以上を構成する成分を意味する。
得られた配向セラミックス焼結体を、この焼結体を構成する焼結粒子の配向性を考慮しながら所望の形状に加工するのが好ましい。その後、表面研磨等の任意の後処理を施し、所望の形態の配向性セラミックス焼結体を得ることができる。なお、成形体を得る際に用いる容器の大きさ及び形状を適宜選択することで、形状加工等を施さずに、表面研磨等の後処理のみを施して、所望の配向性セラミックス焼結体を得ることもできる。
本発明の方法により作製された配向性セラミックス焼結体は、高い配向度を有する。例えば、配向アルミナ焼結体の場合、後述する実施例において説明されるロットゲーリング法により測定した場合に、c面配向度が好ましくは30%以上であり、より好ましくは60%以上である。c面配向度の上限は特に限定されず、理想的には100%であるが、典型的には95%である。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例1
(1)配向アルミナ焼結体の作製
板状アルミナ粉末(キンセイマテック株式会社製、グレード00610、平均粒径0.6μm、アスペクト比10)を用い、これに対してナノグラフェンパウダー(イーエムジャパン(株)製、G−13)を体積比で97:3となるように加え、水を媒体とし湿式ボールミル混合処理を行い、乾燥し、グラフェン被覆アルミナ粉末(処理粉末)を作製した。グラフェンの被覆率は10%であった。このグラフェン被覆粉末に、板状アルミナ粉末に対してMgO粉末を500ppmになるように添加し、これを、ポリアクリル酸アンモニウム分散剤を0.6wt%含有した純水と混合して、粉末含有量が40体積%となるアルミナスラリーを得た。次いで、このアルミナスラリーを直径30mmのテフロン(登録商標)製容器中に5mL流し込み、この状態において前記テフロン(登録商標)製容器の外部に配置されたネオジム磁石から0.5Tの回転磁場を印加するとともに、60℃で乾燥させ、アルミナ成形体を得た。その後、アルミナ成形体を大気中で800℃、4時間の条件で処理し、グラフェンや有機物を消失せしめ、さらに、大気中で1550℃、4時間焼成し、その後、蓋付きのアルミナ製の坩堝に入れ、HIP焼成をArガス、圧力185MPa、1600℃で2時間の条件で行い、アルミナ焼結体を得た。
(2)c面配向度の評価
得られたアルミナ焼結体を磁場の印加面に対し平行に切り出し、切断面を研磨加工した後、その研磨面に対してX線を照射しc面配向度を測定した。具体的には、XRD装置(リガク製、RINT−TTR III)を用い、2θ=20〜70°の範囲でXRDプロファイルを測定した。具体的には、CuKα線を用いて電圧50kV、電流300mAという条件で測定した。c面配向度は、ロットゲーリング法によって以下の式を用いて算出した。c面とはアルミナの(006)面である。下記式中、pは作製したアルミナ焼結体のXRDから得られた値であり、pは標準α−アルミナ(JCPDSカードNo.46−1212)から算出された値である。例1のアルミナ焼結体のc面配向度は75%であった。
Figure 2018016505
(3)嵩密度の評価
得られた焼結体の嵩密度を、JIS R 1634:1998に準拠した方法を用いて計測した。得られた焼結体の嵩密度は3.96g/cmであった。
例2
グラフェン被覆処理として、メカノケミカル処理を用いた以外は例1と同様の方法で焼結体を作製した。メカノケミカル処理はホソカワミクロン(株)製ノビルタ(登録商標)を用い15分の処理することにより行った。グラフェン被覆粉末の被覆率は20%であった。また、得られた焼結体のc面配向度は90%、嵩密度は3.96g/cmであった。
例3
MgOの添加を被覆処理前に行い、他の条件は例2と同様の方法で焼結体を作製した。グラフェン被覆粉末の被覆率は30%であった。また、得られた焼結体のc面配向度は95%、嵩密度は3.96g/cmであった。
例4(比較)
アルミナ粉末として、通常(非板状)のアルミナ粉末(住友化学製、AA07、平均粒径0.7μm)を用いた以外は、例1と同様の方法で焼結体を作製した。グラフェンの被覆率は10%、c面配向度は10%、嵩密度は3.96g/cmであった。
例5(参考)
(1)配向アルミナ焼結体の作製
原料として、板状アルミナ粉末(キンセイマテック株式会社製、グレード00610、平均粒径0.6μm、アスペクト比10)、及び微細アルミナ粉末(大明化学社製、TMDAR、平均粒径0.1μm)を用意した。上記板状アルミナ粉末5重量部と、上記微細アルミナ粉末95重量部とを混合して、混合アルミナ粉末を得た。この混合アルミナ粉末の所定量を、ポリアクリル酸アンモニウム分散剤を0.6wt%含有した純水と混合して、粉末含有量が40体積%のアルミナスラリーを得た。このアルミナスラリーを直径30mmのテフロン(登録商標)製容器中に5mL流し込み、テフロン(登録商標)製容器の外部に配置された超電導磁石から5Tの磁場を印加するとともに、60℃でスラリーを乾燥させてアルミナ成形体を得た。得られたアルミナ成形体を大気中にて1550℃で4時間焼成した後、蓋付きのアルミナ製の坩堝に入れ、HIPを、Arガスを用いて185MPaの圧力及び1600℃の温度で2時間行い、アルミナ焼結体を得た。
(2)c面配向度の評価
アルミナ焼結体を磁場の印加方向と垂直に切り出した以外は例1と同様にしてc面配向度を測定した。例5のアルミナ焼結体のc面配向度は85.7%であった。
(3)嵩密度の評価
得られた焼結体の嵩密度を例1と同様にして評価したところ、嵩密度は3.96g/cmであった。

Claims (12)

  1. 板状粒子を含む原料粉末と、グラフェンとを用意する工程と、
    前記板状粒子の表面の少なくとも一部を前記グラフェンで被覆する処理を前記原料粉末に施して、グラフェン被覆板状粒子を含有する処理粉末を作製する工程と、
    前記処理粉末と溶媒とを混合してスラリーを調製する工程と、
    前記スラリーに磁場を印加して前記グラフェン被覆板状粒子を所定の方向に配向させる工程と、
    前記スラリー中の前記溶媒を除去及び/又は固化させて、前記板状粒子が所定の方向に配向した成形体を作製する工程と、
    前記成形体を焼成して、焼結粒子の少なくとも一部が配向した配向性セラミックス焼結体を作製する工程と、
    を含む、配向性セラミックス焼結体の製造方法。
  2. 前記処理粉末中における前記グラフェン被覆板状粒子のグラフェン被覆率が10%以上である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記板状粒子がAlからなる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記スラリーがMgOを更に含み、前記MgOの含有量が前記Alに対して50〜1000ppmである、請求項3に記載の方法。
  5. 前記処理粉末の作製に先立ち、前記原料粉末に前記MgOを添加する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記処理粉末が遊離グラフェンを更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記磁場の磁束密度が1T以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記磁場の印加が、回転磁場を印加する又は複数の方向から磁場を印加することにより行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記板状粒子のアスペクト比が2以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記板状粒子の平均粒径が0.5μm以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記スラリーが、前記板状粒子よりも平均粒径が小さい微細粒子を更に含み、前記スラリー中に含まれる前記板状粒子及び前記微細粒子の合計質量を100質量部とした場合に、前記スラリー中に含まれる前記板状粒子の量が0.001〜50重量部の範囲内である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記処理粉末の作製が、前記原料粉末及び前記グラフェンをメカノケミカル処理に付することにより行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113307618A (zh) * 2021-06-15 2021-08-27 中国科学院上海硅酸盐研究所 仿贝壳结构织构生物陶瓷及制备方法和其在成骨方面的应用

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