JP2018009834A - 金属材料の電位解析用イメージングデバイス - Google Patents

金属材料の電位解析用イメージングデバイス Download PDF

Info

Publication number
JP2018009834A
JP2018009834A JP2016137503A JP2016137503A JP2018009834A JP 2018009834 A JP2018009834 A JP 2018009834A JP 2016137503 A JP2016137503 A JP 2016137503A JP 2016137503 A JP2016137503 A JP 2016137503A JP 2018009834 A JP2018009834 A JP 2018009834A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
potential
imaging device
metal material
aqueous solution
sensitive substance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2016137503A
Other languages
English (en)
Inventor
洋 柿沼
Hiroshi Kakinuma
洋 柿沼
武藤 泉
Izumi Muto
泉 武藤
優 菅原
Masaru Sugawara
優 菅原
信義 原
Nobuyoshi Hara
信義 原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tohoku University NUC
Original Assignee
Tohoku University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tohoku University NUC filed Critical Tohoku University NUC
Priority to JP2016137503A priority Critical patent/JP2018009834A/ja
Publication of JP2018009834A publication Critical patent/JP2018009834A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Materials By The Use Of Chemical Reactions (AREA)
  • Investigating And Analyzing Materials By Characteristic Methods (AREA)
  • Investigating Or Analysing Materials By Optical Means (AREA)

Abstract

【課題】水溶液中の金属材料の電位分布やその経時変化を画像や動画として計測するための、金属材料の電位解析用イメージングデバイスを提供する。【解決手段】電位に応じて水溶液中で色調変化が生じる電位感応物質として、導電性を有する有機系高分子の固体状マトリックスから成り、この固体状マトリックスが水溶液中において電位を計測する金属に接触しているか、あるいは15μm以下の距離に近接している。電位感応物質である有機系高分子が、π軌道を有する共役系高分子であり、硫酸酸性アニリン水溶液を原料とし、ペルオキソ二硫酸アンモニウムを用いる酸化重合反応によって絶縁性基板の表層面に作製される導電性高分子であることが望ましい。【選択図】図4

Description

本発明は、水溶液中の金属材料表面の電位やその経時変化をイメージングし、画像や動画として計測するための、金属材料の電位解析用イメージングデバイスに関する。
水溶液中における金属材料表面の電位分布は、電気化学の分野において反応を支配する重要なパラメーターである。例えば、代表的な電気化学反応である局部腐食などの金属腐食は、金属材料を高い電位に分極することで不働態を示す環境でも溶解を生じ、腐食速度が増大することがある。また、構造物の機械的性質低下の原因となるすき間腐食が発生する際、金属の電位は急激に低下し、金属材料の表面には電位勾配が生じると考えられている。
従来の水溶液中の金属材料表面の電位分布計測は、試験片の表面を照合電極で走査するものであったが、通常、プローブの走査には時間がかかるため、すき間腐食発生や不働態−活性態遷移などの、おおむね1秒以内に生じる金属材料表面の電位分布やその経時変化を捉えることは困難であった。そのため、電気化学現象を解析するためには、水溶液中における金属材料表面の電位分布と腐食現象の計測を同時に、しかもリアルタイムで計測する方法を開発する必要がある。
ところで、水溶液の酸化還元電位の測定には、酸化還元指示薬等が用いられている。酸化還元指示薬は、一般に酸化状態と還元状態とで異なる吸光度を持つため、酸化還元指示薬を用いて水溶液の電位の変化を分光学的な情報として測定することができる。しかし、溶液の酸化還元電位と金属材料が示す電極電位とは一般に一致しないため、酸化還元指示薬を用いて電気化学反応等に伴う電極電位の変化を測定することはできない。
また、水溶液中における金属の電位に感応する物質として、蛍光試薬が使用されることがある。例えば、電位感応物質としてジクロロトリ(1,10−フェナントロリン)テルニウム(II)ハイドレートを含有する溶液を用いた、ゼータ電位の定量的評価方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、エバネッセント波を用いてゼータ電位を解析しており、光照射部を走査する必要があるため、水溶液中の金属材料表面の迅速な電位分布解析には適さない。また、液体状の蛍光試薬を用いる場合、溶液の液性が変化するだけでなく、励起光を照射する必要があり、励起光の照射による試料の表面状態への影響および装備の簡便性の点で問題があった。
また、水溶液中における金属材料のゼータ電位を測定する方法として、ラテックスを用いた水溶液中の金属材料のゼータ電位測定方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)が、この方法では、水溶液中におけるモニター粒子の移動速度を基にゼータ電位を計測しているため、金属腐食等の電気化学反応により生じる金属材料表面の電位分布の経時変化を迅速に計測することができなかった。このような課題を解決する方法が明らかにされていない理由としては、金属材料の電位に応じて色調を変化させる物質を、透明あるいは半透明の固体状マトリックスとして作製する具体的な方法が開示されていないことが挙げられる。
ところで、水溶液中の電気化学反応に及ぼす電位変化の影響を把握するためには、電位分布の解析と同時に、可視光を光源とした光学顕微鏡観察を行う必要がある。そのためには、固体状マトリックスが可視光に対して透明あるいは半透明であることが好適だが、そのような物質はまだ明らかにされていない。また、材料表面の電位を解析するためには、固体状マトリックスが電位に感応する試薬を含有し、その固体状マトリックスを水溶液中において金属材料表面に接触させることが好ましい。しかし、水溶液中の金属材料表面の電位に感応する固体状マトリックスを作製するために、どのような物質が好適であるかは不明である。
特許第5328799号公報 特開2001−264282号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、水溶液中の金属材料表面の電位分布やその経時変化を画像や動画として計測するための、金属材料の電位解析用イメージングデバイスの提供にある。
本願発明者は、上記課題を解決すべく科学技術の新たな可能性を開拓し、新しい技術の発明に成功した。本発明の主旨は、以下の通りである。
本発明に係る金属材料の電位解析用イメージングデバイスは、電位に応じて水溶液中で色調変化が生じる電位感応物質として、導電性を有する有機系高分子の固体状マトリックスから成り、この固体状マトリックスが水溶液中において電位を計測する金属に接触しているか、あるいは15μm以下の距離に近接していることを特徴とする。
本発明に係る金属材料の電位解析用イメージングデバイスは、前記電位感応物質である有機系高分子が、化学重合法により作製された物質であることが好ましい。特に、前記電位感応物質が、アンモニウム塩を用いる酸化重合法で作製された有機系高分子であることが好ましい。また、前記電位感応物質である有機系高分子が、共役系高分子であり、π軌道を有することが好ましい。
また、本発明に係る金属材料の電位解析用イメージングデバイスは、前記電位感応物質が、導電性を有する有機系高分子であり、ポリアセチレン、ポリイン、ポリピロール、ポリフルオレン、ポリナフタレン、ポリアントラセン、ポリピレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリチアナフテン、ポリオキサジアゾール、ポリチアジル、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアニリン、ポリアセン、ポリフェナントレン、ポリぺリナフタレン、グラフェン、ポリへプタイジン、ポリイソナフトチオフェン、ポリテルロフェン、ポリペリレン、ポリシアノジエン、または、これらのうちのいずれか1つの誘導体であってもよい。
また、本発明に係る金属材料の電位解析用イメージングデバイスは、前記電位感応物質が、導電性を有する有機系高分子であり、ポリアセチレン、ポリイン、ポリピロール、ポリフルオレン、ポリナフタレン、ポリアントラセン、ポリピレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリ(3、4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリチアナフテン、ポリオキサジアゾール、ポリチアジル、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアニリン、ポリアセン、ポリフェナントレン、ポリぺリナフタレン、グラフェン、ポリへプタイジン、ポリイソナフトチオフェン、ポリテルロフェン、ポリペリレン、ポリシアノジエン、および、これらの誘導体のうち二種類以上の混合物であってもよい。
また、本発明に係る金属材料の電位解析用イメージングデバイスは、前記電位感応物質が、共役系高分子であり、硫酸酸性アニリン水溶液を原料とし、ペルオキソ二硫酸アンモニウムを用いる重合反応によって作製された物質であってもよい。また、前記電位感応物質が、絶縁性基板上の表層面であってもよい。
なお、本発明に係る金属材料の電位解析用イメージングデバイスの、電位感応物質の特性は、化学重合の反応過程や、その際に用いる化学物質によりもたらされ、反応生成物である導電性を有する有機系高分子の固体状マトリックスの電子状態の微妙な差異が優れた特性をもたらす根源である。しかし、この電子状態の違いは、表面組成あるいは透過や反射スペクトルなどといった通常用いられる電子物性を記述する評価指標によって区別することはできない。また、電位変化に感応する主たる電子の存在状態を、多種多様な組成からなる原料物質について、温度、時間などのさまざまな反応条件ごとに第一原理計算などにより特定することも著しく困難であり、電子状態を特許請求の範囲に表現することは不可能である。したがって、化学重合法、酸化重合法、重合反応により作製されたという構成を用いた。
本発明によれば、水溶液中の金属材料の電位分布やその経時変化を画像や動画として計測するための、金属材料の電位解析用イメージングデバイスを提供することができる。本発明によれば、金属材料の電位分布とその経時変化を画像として計測することが可能である。また、電位分布と共に、材料表面の外観変化も通常の可視光を光源とするカメラや実体顕微鏡、光学顕微鏡などで撮影することが可能である。
本発明の実施の形態の金属材料の電位解析用イメージングデバイスに関し、導電性高分子のR, G, Bの値の電位応答性を示すグラフである。 本発明の実施の形態の金属材料の電位解析用イメージングデバイスに関し、共役系高分子を1 M NaCl水溶液に浸漬し、紫外可視光を照射した直後(0分)および60分経過後の共役系高分子の透過スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施の形態の金属材料の電位解析用イメージングデバイスの色調変化の電位依存性の測定装置を示す正面図である。 本発明の実施の形態の金属材料の電位解析用イメージングデバイスの、0.01 M NaCl(pH 3)水溶液中におけるポリアニリン層の色調変化の電位依存性を示すグラフである。 本発明の実施の形態の金属材料の電位解析用イメージングデバイスによる、水溶液中における金属表面のすき間腐食試験および電位分布撮影を行う装置を示す正面図である。 図5に示す装置で測定された、金属表面のすき間腐食発生後の電位分布図である。 本発明の実施の形態の金属材料の電位解析用イメージングデバイスの、測定精度のpH依存性を示すグラフである。
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
はじめに、電位感応物質について述べる。水溶液中に置かれた金属材料の電位を計測する際に、カメラや光学顕微鏡を使用することは、利便性が高い。このため、本発明の実施の形態の金属材料の電位解析用イメージングデバイスの電位感応物質としては、画像として電位を計測できるため、水溶液中で色調変化が生じる物質とした。
電位感応物質としては、大別して無機化合物と有機化合物の二種類があるが、本発明の実施の形態では、導電性を有する有機系高分子とした。電位に感応する無機化合物は、多くの場合、イオンとして水溶液中に溶解しやすいため、水溶液中に置かれた金属材料の電位を計測する用途には好適ではない。これに対し、有機系高分子は、水溶液に溶出することがなく、長期間安定して電位を計測することができる。有機系高分子のなかでも、導電性を有する有機系高分子は、水溶液中において電位に感応する性質を有している。そこで、電位に応じて水溶液中で色調変化が生じる電位感応物質は、導電性を有する有機系高分子に限定した。
本発明の実施の形態での導電性を有する有機系高分子とは、一般に導電性ポリマーと呼称されるポリアセチレンやポリチオフェンなどのことである。導電性としては、1 S/cm以上1.0 × 105 S/cm以下のものが好適であるが、本発明の実施の形態は、電気伝導率を規定するものではない。図1には、導電性高分子のR, G, Bの値の電位応答性を示した。高い電位になるにつれて、R, G, Bの値が小さくなり、導電性を有する有機系高分子が電位に応じて明確に異なる色調を示すことが分かる。このように導電性を有する有機系高分子を電位感応物質とすることで、金属材料の電位を計測することができる。
導電性を有する有機系高分子は一般に、電解重合法や化学重合法によって作製することができるが、電解重合法によって作製される高分子は、電流を人為的に流して重合するため、化学重合法によって作製される高分子に比べ、多くの電荷が残留したり帯電したりしていると考えられる。このため、電解重合法によって作製されたものは、水溶液中の金属材料表面の電位分布を測定する際に、電位感応物質が金属と水溶液との反応性に影響を与え、電位をきわめて正確に測定することができない。したがって、水溶液中の金属材料表面の電位分布を、おおむね0.01 V以上の分解能で正確に計測する際には、化学重合法を用いて重合した導電性を有する有機系高分子を使用することが望ましい。
高分子の化学重合反応は、均一反応と不均一反応とに分類され、その目的に応じて様々な試薬が選択される。例えば、酸化力の強い酸化剤を選択した化学重合法では、均一反応によって高分子を作製可能である。このとき、高分子は水溶液中に微粒子状に生成され、その反応速度も不均一反応に比べ大きい。ところが、酸化力の弱い酸化剤を使用する酸化重合法等では、不均一反応による高分子の重合が可能であるため、比較的ゆっくりと高分子が重合され、金属表面に接触させる際に好適な、均質で力学的強度の高い高分子を作製することができる。特に、アンモニウム塩による酸化重合法は、高い精度で均質かつ高強度の高分子を重合することができる。このため、デバイスが堅牢で、しかも、より精度の高い電位解析の際には、アンモニウム塩を用いる酸化重合法で作製された有機系高分子であることが好適である。
さらに、電気化学反応等によって生じる電位分布やその経時変化を計測する場合、水溶液中の電位感応物質を長時間光学顕微鏡等の機器を用いて観察することがある。そのため、本発明の実施の形態の金属材料の電位解析用イメージングデバイスに用いる電位感応物質としての高分子は、水溶液や紫外可視光に対して安定であることが望ましい。図2に示すように、高分子の中でも、二重結合と単結合とが交互に連なっている共役系高分子は、π軌道を有し分子間相互作用が高いため、水溶液中や紫外可視光に対して長時間高い耐久性を示すものが多く、長時間にわたる電位解析の際の電位感応物質として好適である。また、共役系高分子は、電気ドーピングや化学ドーピングを施すことで、導電性を付与することができる。導電性を有する有機系高分子は、電位の授受によってその化学的構造を変化させるものが多く、金属材料表面の電位に応じて、鮮明に色調を変化させることが可能である。
本発明の実施の形態での導電性を有する有機系高分子としては、その物質や選択を限定するものではないが、ポリアセチレン、ポリイン、ポリピロール、ポリフルオレン、ポリナフタレン、ポリアントラセン、ポリピレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリチアナフテン、ポリオキサジアゾール、ポリチアジル、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアニリン、ポリアセン、ポリフェナントレン、ポリぺリナフタレン、グラフェン、ポリへプタイジン、ポリイソナフトチオフェン、ポリテルロフェン、ポリペリレン、ポリシアノジエン、または、これらのうちのいずれか1つの誘導体を用いるか、これらの物質およびこれらの誘導体のうち二種類以上の混合物が最も望ましい。二種類以上を混合することで、計測できる電位範囲を広範囲化したり、妨害イオン種の影響を軽減したりすることが可能である。
本発明の実施の形態では、上述した電位感応物質は、液体ではなく、固体状マトリックスである必要がある。電位感応物質を水溶液中に溶解させるのではなく、固体状マトリックスとすることにより、水溶液中の金属材料表面の電位分布、さらにはその経時変化を画像や動画として計測するためのイメージングデバイスとして、金属材料表面に接触した状況をつくることができる。電位感応物質が液体として水溶液中に分散している場合には、計測される電位は水溶液中の電位である。しかし、イメージングデバイスが固体状マトリックスとして金属材料表面に接触していることで、水溶液内の電位ではなく、金属の電位を精度良く計測できる。しかし、イメージングデバイスを金属材料表面に接触させることが不可能な場合には、金属表面に15 μm以下の距離で近接させる必要がある。距離が15 μmを超えると、金属の電位を正確に計測することができなくなる。
このように、本発明の実施の形態では、電位感応物質からなる固体マトリックスは、形状の設計性や柔軟性を有し、かつ金属表面に押し付けた際の荷重に対して耐久性を示す必要がある。硫酸酸性アニリン水溶液とペルオキソ二硫酸アンモニウムとを用いる酸化重合法によって作製される高分子は、その幾何学的形状の自由度や力学的強度が高いだけでなく、金属材料表面の電位変化を鮮明かつ高精度でイメージングするため、金属腐食などの電気化学反応に伴う電位分布やその経時変化を高精度で、かつ腐食現象の観察と同時に測定する必要が有る場合に好適である。
本発明の実施の形態では、電位を計測する金属材料が平板状などの単純な形態の場合には、電位感応物質が、絶縁性基板上の表層面であることが好適である。基板を絶縁物とすることで、高い精度で電位を計測することができるうえ、電位感応物質を金属表面に密着させたり、15 μm以下の距離に近接させたりすることが容易になる。
なお、本明細書中で述べている金属材料の電位とは、金属電極と照合電極とを導線で接続し、それらを共に水溶液中に浸漬した際に、電位差計により計測される電位である。すなわち、本発明の実施の形態の金属材料の電位解析用イメージングデバイスは、例えば、照合電極先端を細線化し、水溶液中の金属材料の表面近傍を走査した際に計測される電位分布を画像として計測できるものである。
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
0.5 M硫酸30 mL、アニリン1 mLを混合し、完全に溶解するまで撹拌し、混合溶液を作製した。ここで、Mは容量モル濃度(mol/L)を示す。裏面を耐酸テープで被覆した導電性ガラス板(寸法:幅8 mm×長さ25 mm)を混合溶液に浸漬し、0.1 Mペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液50 mLを加えて、300 rpm(1分間あたりの回転数)で60分間撹拌した。導電性ガラス上に生成した厚さ約0.05 μmの固体状のポリアニリン層を高純水でよく洗浄し、室温で自然乾燥させた。
図3に示す装置構成で、固体状マトリックスであるポリアニリン層の色調変化の電位依存性を測定した。試験液には、硫酸でpHを調整した0.01 M NaCl水溶液(pH 0.5, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7)を使用した。対極には白金線、照合電極にはAg/AgCl電極(内部液3.33 M KCl水溶液)を使用し、水溶液面にはガラス板を設置した。試料の電位は、ポテンショスタットを用いて0.5 Vから-0.4 Vまで0.1 Vごとに変化させ、CCD(電荷結合素子)カメラを用いて各電位における試料の色調を、光学顕微鏡を通して画像として記録した。
0.01 M NaCl(pH 3)水溶液中におけるポリアニリン層の色調変化の電位依存性を、図4に示す。画像のR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各信号値から、ガラス板上に作製されたポリアニリン層(固体状マトリックス)が、電位に応じて色調が変化する物質であることが分かる。
図5に示す装置構成で、すき間腐食試験を行い、すき間腐食発生に伴う金属表面の電位分布を計測した。試料に使用したステンレス鋼(寸法:幅8 mm×長さ8 mm×高さ25 mm)は、基本組成Fe-18Cr-8Ni-0.8Mnである。これを、ポテンショスタットを用いて0.4 Vに定電位分極し、ガラス板上に作製されたポリアニリン層(固体状マトリックス)はステンレス鋼の表面と接触するように設置した。CCDカメラを用いてポリアニリン層の色調変化を撮影し、R, G, Bの値から金属表面の電位分布を算出した。
図6は、すき間腐食発生後の試料表面(寸法:幅8 mm×長さ8 mm)の電位分布を示す。すき間腐食発生点(図中腐食発生点1、腐食発生点2)周辺の電位は低くなっており、本発明の実施の形態によるイメージングプレートによって、金属表面の電位分布が計測できたことが分かる。
同様に、固体状マトリックスを構成している有機系高分子の種類、およびステンレス鋼との接触状態や距離を変化させて、すき間腐食発生後の電位分布を計測した。その結果を表1に示す。この表において、図6と同様の電位分布が計測されたものを○で、同様の電位分布を計測できなかったものを×で表した。ここで、図6と同様の電位分布とは、すき間腐食発生部の電位が-0.15V以下、すき間腐食は生じていない部分に、電位が0.05V以上の領域が存在する場合を意味している。
表1より、固体状マトリックスが水溶液中において電位を計測する金属に接触しているか、あるいは15 μm以下の距離に近接していることが金属の電位を計測できる要件であることが分かる。さらに、ポリアセチレン、ポリピロールのように、電位に応じて水溶液中で色調変化が生じる電位感応物質として、導電性を有する有機系高分子の固体状マトリックスを用いることで、本発明の実施の形態の金属材料の電位解析用イメージングデバイスを提供できることが分かる。
また、図7に、ポリアニリンを固体状マトリックスとした際の電位測定精度とpHとの関係を示す。いずれのpHにおいても十分な精度で電位を測定できる。なお、本明細書中におけるきわめて精確な測定とは、約0.01 V程度の精度を指す。
本発明に係る金属材料の電位解析用イメージングデバイスは、ステンレス鋼などの金属腐食の初期過程での材料表面の電位分布や、その経時変化を画像や動画として計測するためのイメージングデバイスとして利用可能である。

Claims (8)

  1. 電位に応じて水溶液中で色調変化が生じる電位感応物質として、導電性を有する有機系高分子の固体状マトリックスから成り、この固体状マトリックスが水溶液中において電位を計測する金属に接触しているか、あるいは15μm以下の距離に近接していることを特徴とする金属材料の電位解析用イメージングデバイス。
  2. 前記電位感応物質である有機系高分子が、化学重合法により作製された物質であることを特徴とする請求項1記載の金属材料の電位解析用イメージングデバイス。
  3. 前記電位感応物質が、アンモニウム塩を用いる酸化重合法で作製された有機系高分子であることを特徴とする請求項1あるいは2記載の金属材料の電位解析用イメージングデバイス。
  4. 前記電位感応物質である有機系高分子が、共役系高分子であり、π軌道を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属材料の電位解析用イメージングデバイス。
  5. 前記電位感応物質が、導電性を有する有機系高分子であり、ポリアセチレン、ポリイン、ポリピロール、ポリフルオレン、ポリナフタレン、ポリアントラセン、ポリピレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリチアナフテン、ポリオキサジアゾール、ポリチアジル、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアニリン、ポリアセン、ポリフェナントレン、ポリぺリナフタレン、グラフェン、ポリへプタイジン、ポリイソナフトチオフェン、ポリテルロフェン、ポリペリレン、ポリシアノジエン、または、これらのうちのいずれか1つの誘導体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金属材料の電位解析用イメージングデバイス。
  6. 前記電位感応物質が、導電性を有する有機系高分子であり、ポリアセチレン、ポリイン、ポリピロール、ポリフルオレン、ポリナフタレン、ポリアントラセン、ポリピレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリ(3、4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリチアナフテン、ポリオキサジアゾール、ポリチアジル、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアニリン、ポリアセン、ポリフェナントレン、ポリぺリナフタレン、グラフェン、ポリへプタイジン、ポリイソナフトチオフェン、ポリテルロフェン、ポリペリレン、ポリシアノジエン、および、これらの誘導体のうち二種類以上の混合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の金属材料の電位解析用イメージングデバイス。
  7. 前記電位感応物質が、共役系高分子であり、硫酸酸性アニリン水溶液を原料とし、ペルオキソ二硫酸アンモニウムを用いる重合反応によって作製された物質であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の金属材料の電位解析用イメージングデバイス。
  8. 前記電位感応物質が、絶縁性基板上の表層面であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の金属材料の電位解析用イメージングデバイス。
JP2016137503A 2016-07-12 2016-07-12 金属材料の電位解析用イメージングデバイス Pending JP2018009834A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016137503A JP2018009834A (ja) 2016-07-12 2016-07-12 金属材料の電位解析用イメージングデバイス

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016137503A JP2018009834A (ja) 2016-07-12 2016-07-12 金属材料の電位解析用イメージングデバイス

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018009834A true JP2018009834A (ja) 2018-01-18

Family

ID=60995320

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016137503A Pending JP2018009834A (ja) 2016-07-12 2016-07-12 金属材料の電位解析用イメージングデバイス

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018009834A (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02185589A (ja) * 1989-01-11 1990-07-19 Nitto Denko Corp エレクトロクロミック素子
JPH08261969A (ja) * 1995-02-27 1996-10-11 He Holdings Inc Dba Hughes Electron 一時的放出物センサ
JP2001210334A (ja) * 2000-01-31 2001-08-03 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 燃料電池用セパレータ
JP2009506327A (ja) * 2005-08-26 2009-02-12 ローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティ,エルエルシー 腐食を検出するための塗料、並びに、腐食、化学侵襲、及び放射性侵襲の警告方法
JP2010540889A (ja) * 2007-08-29 2010-12-24 コーニング インコーポレイテッド 電気化学表面電位の2次元制御
WO2015011743A1 (ja) * 2013-07-22 2015-01-29 株式会社日立製作所 液中電位計測技術を用いた金属の耐食性評価方法及び評価装置
JP2015225051A (ja) * 2014-05-30 2015-12-14 国立大学法人東北大学 材料表面の液性解析用蛍光イメージングデバイス

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02185589A (ja) * 1989-01-11 1990-07-19 Nitto Denko Corp エレクトロクロミック素子
JPH08261969A (ja) * 1995-02-27 1996-10-11 He Holdings Inc Dba Hughes Electron 一時的放出物センサ
JP2001210334A (ja) * 2000-01-31 2001-08-03 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 燃料電池用セパレータ
JP2009506327A (ja) * 2005-08-26 2009-02-12 ローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティ,エルエルシー 腐食を検出するための塗料、並びに、腐食、化学侵襲、及び放射性侵襲の警告方法
JP2010540889A (ja) * 2007-08-29 2010-12-24 コーニング インコーポレイテッド 電気化学表面電位の2次元制御
WO2015011743A1 (ja) * 2013-07-22 2015-01-29 株式会社日立製作所 液中電位計測技術を用いた金属の耐食性評価方法及び評価装置
JP2015225051A (ja) * 2014-05-30 2015-12-14 国立大学法人東北大学 材料表面の液性解析用蛍光イメージングデバイス

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
"液性と電位可視化による鋼のすき間腐食潜伏期間の素過程解明と新高耐食化原理の導出", 科学研究費助成事業研究成果報告書 基盤研究(B), vol. 課題番号:25289257, JPN7019003682, 10 June 2016 (2016-06-10), ISSN: 0004155012 *

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Afkhami et al. New nano-composite potentiometric sensor composed of graphene nanosheets/thionine/molecular wire for nanomolar detection of silver ion in various real samples
Oztekin et al. Electrochemical modification of glassy carbon electrode by poly-4-nitroaniline and its application for determination of copper (II)
Oyama et al. Electrochemically polymerized N, N-dimethylaniline film with ion-exchange properties as an electrode modifier
Somerset et al. Development and application of a poly (2, 2′-dithiodianiline)(PDTDA)-coated screen-printed carbon electrode in inorganic mercury determination
Chu et al. Molecularly imprinted polyaniline nanowire-based electrochemical biosensor for chloramphenicol detection: a kinetic study of aniline electropolymerization
Li et al. Rapid and sensitive detection of methyl-parathion pesticide with an electropolymerized, molecularly imprinted polymer capacitive sensor
Ratautaite et al. An application of conducting polymer polypyrrole for the design of electrochromic pH and CO2 sensors
Torma et al. Nafion®/2, 2′-bipyridyl-modified bismuth film electrode for anodic stripping voltammetry
Zanganeh et al. A potentiometric and voltammetric sensor based on polypyrrole film with electrochemically induced recognition sites for detection of silver ion
Li et al. Anodic stripping voltammetric measurement of trace cadmium at tin-coated carbon paste electrode
Saha et al. Interference‐free electrochemical detection of nanomolar dopamine using doped polypyrrole and silver nanoparticles
Zanganeh et al. Polypyrrole-modified electrodes with induced recognition sites for potentiometric and voltammetric detection of copper (II) ion
Abramova et al. Solid contact ion sensor with conducting polymer layer copolymerized with the ion-selective membrane for determination of calcium in blood serum
Yuan et al. A critical review of fundamentals and applications of electrochemical development and imaging of latent fingerprints
Guo et al. Vertically ordered silica mesochannel modified bipolar electrode for electrochemiluminescence imaging analysis
Huang et al. A novel all-solid-state ammonium electrode with polyaniline and copolymer of aniline/2, 5-dimethoxyaniline as transducers
Kiliç et al. Simultaneous analysis of Pb 2+ and Cd 2+ at graphene/bismuth nanocomposite film-modified pencil graphite electrode using square wave anodic stripping voltammetry
Bernalte et al. Characterisation of screen-printed gold and gold nanoparticle-modified carbon sensors by electrochemical impedance spectroscopy
Oztekin et al. Surface modification and characterization of phenanthroline nanofilms on carbon substrate
Jiang et al. A solid-contact Pb2+-selective electrode based on a hydrophobic polyaniline microfiber film as the ion-to-electron transducer
Ganjali et al. Bio-mimetic cadmium ion imprinted polymer based potentiometric nano-composite sensor
Xu et al. Simultaneous determination of hydroquinone, catechol and resorcinol at poly (3-thiophenemalonic acid) modified glassy carbon electrode
Yang et al. High sensitivity and reproducibility of a bismuth/poly (bromocresol purple) film modified glassy carbon electrode for determination of trace amount of cadmium by differential pulse anodic stripping voltammetry
Prissanaroon-Ouajai et al. A novel pH sensor based on hydroquinone monosulfonate-doped conducting polypyrrole
Slim et al. Polyaniline films based ultramicroelectrodes sensitive to pH

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20160713

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190130

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20190131

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20191023

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20191119

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20200602