本発明の回転機械およびラジアルフォイル軸受について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、回転機械の第1実施形態の概略を示すもので、回転機械をラジアルフォイル軸受のトップフォイルの継ぎ目を通る直径と軸心とに沿う面で切断した断面を示す図である。図2は、回転機械をラジアルフォイル軸受の近傍位置で回転軸の軸心に垂直な面で切断した断面を拡大して示す図である。図3は、図2のラジアルフォイル軸受における軸受ハウジングの周方向の一部を拡大して示す図である。図4は、軸受ハウジングの図3に対応する個所での周壁の断面を示す図である。図5は、軸受ハウジングにバンプフォイル片を係止する係止部の一例を拡大して示す斜視図である。図6は、トップフォイルの概要を示すもので、図6(a)はトップフォイルを平面に展開した状態を示す平面図、図6(b)は側面図である。
なお、本願の明細書および特許請求の範囲において、トップフォイルの継ぎ目とは、円筒状に巻かれた状態のトップフォイルにおいて、矩形状の薄板の長手方向の両端側が互いに接近または接触して配置された周方向部分をいう。
本実施形態の回転機械は、ターボ機械に適用した例を示してある。
ターボ機械は、図1に示すように、回転体としてのインペラ1と、インペラ1に連結された回転軸2と、インペラ1の外周に配置された静止部としてのインペラハウジング3とを備えた構成とされている。更に、ターボ機械は、機械ハウジング4と、機械ハウジング4の内部に設けられて機械ハウジング4の側面4aに開口6を有する軸挿通空間5と、軸挿通空間5に設置されたラジアルフォイル軸受7とを備え、軸挿通空間5に挿通配置された回転軸2が、ラジアルフォイル軸受7により回転自在に支持されている。インペラハウジング3は、開口6の外周側で機械ハウジング4の側面に取り付けられた構成とされている。
軸挿通空間5は、本実施形態では、図1、図2に示すように、機械ハウジング4の側面4aに円形の開口6を備え、この開口6から横方向に延びる円形の孔として機械ハウジング4の内部に形成されている。
軸挿通空間5には、設定された位置に、軸受設置孔8が設けられている。本実施形態では、軸受設置孔8は、軸挿通空間5と同径で同軸心配置の円形の孔とされている。
軸受設置孔8には、ラジアルフォイル軸受7が取り付けられている。なお、図1では省略して軸受設置孔8およびラジアルフォイル軸受7を一個所にしか記載していないが、軸挿通空間5には、間隔を隔てた複数個所に同軸心配置とされた軸受設置孔8を設けて、各軸受設置孔8に取り付けられた複数のラジアルフォイル軸受7で、回転軸2を支持する構成とすることが好ましい。ラジアルフォイル軸受7の具体的な構成については後述する。
インペラハウジング3は、機械ハウジング4の側面4aに、インペラハウジング3の内周部3aの軸心位置O1が、軸受設置孔8の軸心位置O2と一致する配置で取り付けられている。なお、インペラハウジング3の内周部3aとは、インペラ1の外周部と対向して配置されるインペラハウジング3における内周側の部分のことである。
ラジアルフォイル軸受7は、図2に示すように、回転軸2の外周に配置されて軸受面を形成するトップフォイル9と、トップフォイルの径方向外側に配置される中間フォイル10と、中間フォイル10の径方向外側に配置されるバックフォイルとしてのバンプフォイル11と、トップフォイル9、中間フォイル10およびバンプフォイル11の径方向外側に配置される軸受ハウジング12とを備えた構成とされている。
軸受ハウジング12は、ラジアルフォイル軸受7の最外周部を構成する部材であり、外周面12aの軸心位置O3に対し、内周面12bの軸心位置O4が図1、図2に矢印xで示す一方向に、設定された寸法で偏心した略円筒構造を備えている。軸受ハウジング12は、金属製とすることが好ましいが、回転軸2から受ける荷重を軸受設置孔8へ伝えて支持することができる強度を備えていれば、金属以外の材質であってもよい。
軸受ハウジング12の内周面12bには、軸心位置O4からx方向とは逆方向に位置する周方向の一個所に、トップフォイル9を継ぎ目9aの部分で係止するための溝13が、軸心方向に沿って軸受ハウジング12の全長に亘り設けられている。
図3に示すように、溝13には、軸受ハウジング12の径方向にほぼ沿う配置の面となっている両内側面における内周面12b寄り個所に、溝13の全長に亘って延びる係止凹部14が、それぞれ設けられている。
この係止凹部14は、後述するトップフォイル9および中間フォイル10の長手方向両端側の凸部30a、凸部31aの先を差し込んで係止させるためのものである。
軸受ハウジング12の軸心方向の両端面には、溝13の両端側に連通する係止溝15が、半径方向に沿って設けられている。
なお、軸受ハウジング12に溝13、係止凹部14、係止溝15を形成する場合は、軸受ハウジング12が金属製であれば、ワイヤカット放電加工を用いることが好適である。しかし、他の加工手法を用いてもよいことは勿論である。
溝13および係止溝15には、図4に示すように、固定具16が嵌めて取り付けられている。
固定具16は、溝13に嵌めて収容される四角柱状の基部17と、基部17の長手方向両端側から屈曲して係止溝15に嵌まるように形成された一対の折曲片18と、基部17の長手方向をほぼ三等分する2個所に折曲片18とは反対側に突出するように形成された隔壁片19とを備えた構成とされている。
基部17は、溝13に嵌めたときに、係止凹部14よりも外周面12a寄りに配置されるように、高さ(厚み)が設定されている。これにより、溝13に基部17が嵌められたときに、基部17が係止凹部14を塞ぐことはない。
各折曲片18は、軸受ハウジング12の軸心方向両端側の係止溝15に嵌めて係止されることで、固定具16の溝13の長手方向への変位を防止する係止力を生じるものである。
各隔壁片19は、基部17が溝13に嵌められた状態のときに、各隔壁片19の突出端部が軸受ハウジング12の内周面12bと同じレベルか、内周面12bよりも少し突出するように、高さが設定されている。
これにより、溝13および係止溝15には、固定具16の基部17と折曲片18をそれぞれ嵌めて取り付けることができる。この状態で、溝13および係止凹部14は、固定具16の各隔壁片19により長手方向にほぼ三等分に仕切られる。
なお、固定具16は、ステンレスなどの金属板を材料として、ワイヤ放電加工により形成することが好ましいが、他の材料、加工方法で形成してもよいことは勿論である。
また、軸受ハウジング12の内周面12bには、図2に示すように、バンプフォイル11を係止するための係合突部20が設けられている。本実施形態では、バンプフォイル11が3つのバンプフォイル片26で構成されるため、係合突部20は、図2に示すように、内周面12bを周方向にほぼ三分割する配置となる3個所に設けられている。
各係合突部20は、図5に一例を示すように係止部材23に形成されている。
軸受ハウジング12の内周面12bの周方向における各バンプフォイル片26の配置と対応する3個所には、溝21が、軸受ハウジング12の軸心方向に沿って全長に亘り設けられている。
軸受ハウジング12の軸心方向の両端面には、溝21の両端側に連通する溝状の係合凹部22が、内周面12bの半径方向に沿って設けられている。
溝21および係合凹部22には、係止部材23が取り付けられている。係止部材23は、係合凹部22に係合する一対の係合アーム24と、この係合アーム24同士を連結する棒状の連結部25とを備えた構成とされている。
連結部25は、溝21に収まる高さ(厚み)寸法とされている。各係合アーム24は、連結部25の上下両側に設定された寸法で突出している。このため、係止部材23は、全体でH字状の形状となっている。
これにより、溝21および各係合凹部22には、係止部材23の連結部25および各係合アーム24をそれぞれ嵌めて取り付けることができる。この状態では、各係合アーム24が軸受ハウジング12の軸心方向両端側の係合凹部22に係止されるため、係止部材23は、溝21の長手方向に沿う方向への変位が防止される。また、この状態では、係止部材23の各係合アーム24における連結部25よりも上方へ突出する部分が、内周面12bの内側に突出して配置され、この各突出部分により係合突部20が形成されている。
なお、係止部材23の連結部25や各係合アーム24は、図5では、それぞれ角柱状の形状を有するものとして示したが、円柱状の形状を備えていてもよい。また、係止部材23は、ステンレスなどの金属板を材料として、ワイヤ放電加工により形成することが好ましいが、他の材料、加工方法で形成してもよいことは勿論である。
バンプフォイル11は、図2に示すように、軸受ハウジング12の内周面12bに沿って周方向に配置された3つのバンプフォイル片26によって構成されている。
各バンプフォイル片26は、薄板が波板状に成形され、更に、バンプフォイル片26全体の側面形状が、略円弧状になるよう成形されたものである。3つのバンプフォイル片26は、全て同じ形状・寸法に形成されている。これらのバンプフォイル片26は、軸受ハウジング12の内周面12bの周方向における溝13を設けた部分を除く領域に、互いの端部同士が接近する状態で、周方向に並べて配置されている。これにより、3つのバンプフォイル片26を備えたバンプフォイル11は、全体で、内周面12bに沿って配置された略円筒形状のものとなっている。
各バンプフォイル片26は、図5に示すように、略円弧形状の径方向内向きに突出する山部27と、径方向外向きに突出する谷部28とが交互配列で形成されることで波板状とされている。更に、各バンプフォイル片26は、内周面12bの周方向に沿って配置される方向の中央部が谷部28とされ、この谷部28の両側縁部には、矩形状の係合切欠29が形成されている。この係合切欠29の形状は、前述した係合突部20の断面形状に対応する形状とされている。
各バンプフォイル片26は、それぞれ内周面12bに沿って配置するときに、係合切欠29を、内周面12bの周方向の3個所の係合突部20に嵌めて係止させる。これにより、内周面12bに沿って配置された各バンプフォイル片26は、係合切欠29が対応する係合突部20に係止されることで、周方向への変位が防止されている。
なお、係合切欠29は、材料となる薄板に対し、エッチング加工や放電加工で形成することが好ましいが、その他のいかなる手法で形成してもよいことは勿論である。
また、本実施形態では、バックフォイルの例として、3つのバンプフォイル片26を備えたバンプフォイル11を示したが、2つまたは4つ以上のバンプフォイル片を備えたバンプフォイル11や、内周面12bに沿って周方向に延びる単一のバンプフォイル11を用いるようにしてもよい。更には、スプリングフォイルなど、ラジアルフォイル軸受のバックフォイルとして用いられているものであれば、バンプフォイル11以外のいかなる形式のバックフォイルを使用してもよいことは勿論である。
トップフォイル9は、図6(a)(b)に平面に展開した状態を示すように、矩形状の薄板としてあり、長手方向一端側には、長手方向と直交する方向(以下、幅方向という)の中央部に配置された1つの凸部30aと、その幅方向両側の2つの凹部30bとによる凹凸形状が形成されている。トップフォイル9の長手方向他端側には、幅方向の中央部に配置された1つの凹部31bと、その幅方向両側の2つの凸部31aとによる凹凸形状が形成されている。
なお、これらの凹凸形状は、材料となる薄板に対し、エッチング加工や放電加工で形成することが好ましいが、その他のいかなる手法で形成してもよいことは勿論である。
凸部30aの幅方向寸法は、固定具16の2つの隔壁片19(図4参照)の間に挿入可能となるように設定されている。また、凹部31bの幅方向寸法、すなわち、2つの凸部31a同士の間隔は、内側に固定具16の2つの隔壁片19を挿入可能となるように設定されている。
以上の構成としてあるトップフォイル9は、凸部30aを凹部31bに差し込むことにより、図2に示すように円筒状に曲げられ、この状態で、バンプフォイル11の内側に配置されている。これにより、トップフォイル9は、伸展しようとする方向の復元力により、各バンプフォイル片26の各山部27の頂部の内側で、軸受ハウジング12の周方向に沿って延びるように配置されている。
この状態で、トップフォイル9は、凸部30aの先端側と凸部31aの先端側が、軸受ハウジング12の溝13における固定具16の隔壁片19で仕切られた部分にそれぞれ差し込まれて、係止凹部14に先端部がそれぞれ係止されている。このように、凸部30aと凸部31aが溝13の係止凹部14に係止されることで、トップフォイル9は、周方向への移動が規制され、その移動量が僅かとなるように配設されている。
更に、凸部30aと凸部31aは、固定具16の隔壁片19により、軸受ハウジング12の軸心方向への移動が規制されている。
なお、凸部30aと凸部31aは、先端部が係止凹部14の内面に強く突き当てられることなく、係止凹部14の内面に接する程度となるように配設されている。このため、ラジアルフォイル軸受7が定常運転されているインペラ1の回転軸2を支持している状態では、凸部30a、凸部31aは係止凹部14から大きな反力を受けないため、トップフォイル9は歪みを生じないようになっている。
一方、外乱により回転軸2に軸ぶれが生じた場合には、凸部30a、凸部31aが係止凹部14の内面に強く係止される。このため、トップフォイル9は、外乱の作用時に凸部30a、凸部31aが係止凹部14から外れたり、更には、溝13から外れるといった状態になることが防止されている。また、トップフォイル9が外乱の作用時に回転してしまうといった現象も防止されている。
また、トップフォイル9は、図6(b)に示すように、長手方向一端側と他端側に、これらの間の長手方向中間部に比べて厚みが小さい薄肉部32が形成された構成を備えることが好ましい。この構成によれば、トップフォイル9の長手方向両端側が弾性変形しやすくなるため、この長手方向両端側において局所的に回転軸2を締め付ける力(プリロード)が生じることを抑制することができる。
中間フォイル10は、トップフォイル9より厚みが小さい薄板としてあり、図示してないが、平面に展開したときの平面形状が、図6(a)に示したトップフォイル9の平面形状と同様とされている。
この中間フォイル10は、前記したトップフォイル9が円筒状に曲げられた状態でバンプフォイル11の内側に配置されるときに、トップフォイル9の外周側に重ねた状態で、トップフォイル9と一緒にバンプフォイル11の内側に配置される。これにより、中間フォイル10は、その長手方向両端側が、トップフォイル9と共に、軸受ハウジング12の溝13の係止凹部14に係止されている。
したがって、ラジアルフォイル軸受7は、軸受ハウジング12の外周面12aの軸心位置O3に対して内周面12bの軸心位置O4が偏心する矢印x方向が、トップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向個所に対して反対側となる構成を備えている。
なお、本実施形態におけるトップフォイル9、中間フォイル10およびバンプフォイル11の材質は、たとえば、SUS等の金属製であることが好ましい。
以上の構成としてある本実施形態のラジアルフォイル軸受7によれば、回転軸2が回転すると、くさび効果によって回転軸2とトップフォイル9との間に、空気が引き込まれて圧力が高まり、空気膜が流体潤滑膜となることで、回転軸2は、トップフォイル9に非接触な状態で支持される。
以上の構成としてあるラジアルフォイル軸受7は、図1、図2に示すように、機械ハウジング4の軸受設置孔8に、軸受ハウジング12の外周面が接する状態で取り付けられている。インペラ1の回転軸2は、この軸受設置孔8に取り付けられたラジアルフォイル軸受7のトップフォイル9の内側に挿通配置された状態で、ラジアルフォイル軸受7により回転自在に支持されている。
なお、図1における符号33は回転軸2に設けられたスラストカラー、34はスラストカラー33を回転自在に支持するスラスト軸受である。
以上の構成としてあるターボ機械は、回転軸2およびインペラ1を回転させると、ラジアルフォイル軸受7では、くさび効果によって回転軸2とトップフォイル9との間に、空気が引き込まれて圧力が高まり、空気膜が流体潤滑膜となることで、回転軸2は、トップフォイル9に非接触な状態で支持される。
この際、図2に示すように、ラジアルフォイル軸受7は、軸受ハウジング12の外周面12aの軸心位置O3が、軸受設置孔8の軸心位置O2と一致した配置となっている。この軸受設置孔8の軸心位置O2は、インペラハウジング3の内周部3aの軸心位置O1と一致している。
これに対し、軸受ハウジング12の内周面12bの軸心位置O4は、外周面12aの軸心位置O3および軸受設置孔8の軸心位置O2に対し、トップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向個所とは反対側へ偏心した配置となっている。
回転軸2は、トップフォイル9、中間フォイル10、バンプフォイル11を介して軸受ハウジング12の内周面12bに受けられることで、ラジアルフォイル軸受7に支持されているので、回転軸2の軸心位置O5は、軸受ハウジング12の内周面12bの軸心位置O4に一致した配置となっている。この回転軸2の軸心位置O5は、回転軸2が連結されているインペラ1の軸心位置O6と同一である。
したがって、ターボ機械では、図2に示すように、二点鎖線で示すインペラハウジング3の内周部3aに対し、一点鎖線で示すインペラ1が、ラジアルフォイル軸受7のトップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向個所とは反対側(矢印x方向)へ偏心した配置とされている。なお、図2では、図示する便宜上、インペラ1の径、および、インペラハウジング3の内周部3aの径は、ラジアルフォイル軸受7の外径寸法に対する比が図1よりも縮小して記載してある。
よって、インペラ1の外周部と、その外周に位置するインペラハウジング3の内周部3aとの隙間Gは、ラジアルフォイル軸受7のトップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向個所の方向を、その他の方向に比して広くすることができる。
外乱の作用時に、インペラ1は、ラジアルフォイル軸受7に支持された回転軸2と一緒にトップフォイル9の継ぎ目9aが配置されている方向に最も大きく変位すると想定されるが、この方向については、予めインペラハウジング3の内周部3aとの隙間Gが他の方向に比して広くとられている。
したがって、インペラ1がラジアルフォイル軸受7のトップフォイル9の継ぎ目9aが配置されている方向に変位してインペラハウジング3の内周部3aに接触する虞は、より確実に抑制することができる。
このため、本実施形態によれば、ラジアルフォイル軸受7に回転軸2が支持されている回転体であるインペラ1と、インペラ1の外周に配置された静止部であるインペラハウジング3とを備えた構成について、ラジアルフォイル軸受7の構造を要因とするインペラ1とインペラハウジング3との接触のしやすさの異方性に着目して、その対策を図ることができる。
しかも、ラジアルフォイル軸受7のトップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向個所の方向を除く他の方向については、インペラ1がより変位しにくい。よって、本実施形態では、インペラ1とインペラハウジング3の内周部3aとの隙間Gは、トップフォイル9の継ぎ目9aが配置される方向以外の方向については、より狭く設定することが可能になる。このため、インペラ1とインペラハウジング3の内周部との間に設ける隙間Gは、軸心方向に垂直な面での断面積を従来に比して削減することが可能になる。
なお、機械ハウジング4にて、軸挿通空間5に軸受設置孔8を設けるときに、軸受設置孔8の軸心位置O2をインペラハウジング3の内周部3aの軸心位置O1と一致させるという構成自体は、従来の一般のターボ機械と同様である。
しかし、本実施形態におけるラジアルフォイル軸受7は、軸受ハウジング12に、外周面12aの軸心位置O3に対し、内周面12bの軸心位置O4が、トップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向個所とは反対側へ偏心しているという構成を備えている。
よって、従来のターボ機械と同様に機械ハウジング4に設けられた軸受設置孔8に、本実施形態におけるラジアルフォイル軸受7を取り付けて回転軸2を支持させることにより、インペラ1の外周部と、インペラハウジング3の内周部3aとの隙間Gを、ラジアルフォイル軸受7のトップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向個所の方向で、その他の方向に比して広くするという構成を容易に実現することができる。
なお、ラジアルフォイル軸受7の軸受ハウジング12における外周面12aの軸心位置O3に対する内周面12bの軸心位置O4の偏心量は、ターボ機械に作用する外乱の種類や大きさ、ラジアルフォイル軸受7におけるバンプフォイル11がトップフォイル9を外周側から支持する支持剛性(支持力)が、トップフォイル9の継ぎ目9aの配置と対応する周方向の一部分で、周方向の他の部分に比して低くなっている割合などに応じて適宜設定すればよい。
本実施形態のラジアルフォイル軸受7は、トップフォイル9とバンプフォイル11との間に中間フォイル10を備えている。このため、回転軸2が外乱により変位するときには、回転軸2の変位に伴って変形するトップフォイル9およびバンプフォイル11に対して中間フォイル10が摺動することにより減衰効果を得ることができる。したがって、この減衰効果により、回転軸2やインペラ1に生じる振動は速やかに収束させることができる。
[第1実施形態の変形例1]
図7は、図5に示した軸受ハウジングにバンプフォイル片を係止する係止部の他の例を示す斜視図である。
図7において、図5に示したものと同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
軸受ハウジング12の内周面12bには、第1実施形態と同様に、溝21が、軸受ハウジング12の軸心方向に沿って全長に亘り設けられている。このため、溝21の長手方向は、軸受ハウジング12の軸心方向となっている。溝21には、長手方向の中央部に、溝21に連通する係合凹部22aが形成されている。係合凹部22aは、軸受ハウジング12の内周面12bから外周面12aまで、内周面12bの半径方向に沿って貫通する貫通孔により形成されている。係合凹部22aは、開口形状が円形または長円形とされている。この係合凹部22aは、軸受ハウジング12の外周面12aから内周面12bに向けてドリル等で孔空け加工(機械加工)することで形成することができる。なお、係合凹部22aは、他の加工方法で形成してもよいことは勿論であり、その場合は、係合凹部22aの開口形状は円形または長円形でなくてもよい。
係合凹部22aに連通する溝21には、係止部材35が嵌めて設置される。係止部材35は、溝21に収容される薄板状(四角柱状)の棒状部36と、棒状部36における軸受ハウジング12に対向する面に形成された係合突部37と、棒状部36におけるバンプフォイル11に対向する面に形成された一対の係合突部38とを備えた構成とされている。
棒状部36は、図5に示されている棒状の連結部25と同様に、溝21に収まる高さ(厚み)寸法とされている。これにより、棒状部36が溝21に収容された状態では、一対の係合突部38を除き内周面12bの内側に突出する部分は生じない。
係合突部37は、軸受ハウジング12の係合凹部22aの位置に対応させて棒状部36の長手方向の中央部に形成されている。また、係合突部37は、軸受ハウジング12の軸心方向に沿う方向の幅が、係合凹部22aの溝21の長手方向に沿う方向の内径に略等しく形成されている。これにより、係合突部37は、係合凹部22aに挿通された状態では、溝21の長手方向への変位がほとんど防止される。したがって、係止部材35は、軸受ハウジング12の軸心方向への変位が防止される。
なお、係合凹部22aは、軸受ハウジング12の軸心方向の中心に配置されることなく、中心から一方あるいは他方に偏った位置に配置されていてもよい。その場合、係止部材35の係合突部37も、係合凹部22aの配置に対応させて棒状部36の長手方向の中心から偏った位置に形成すればよい。
係合突部38は、棒状部36の長手方向の両端部に、係合突部37が突出する側とは反対側に突出して形成されている。
以上の構成を有する係止部材35は、係合突部37を軸受ハウジング12の係合凹部22aに挿入し、棒状部36を溝21に嵌めることで、軸受ハウジング12の内周面12bに取り付けられている。この状態では、一対の係合突部38が、溝21の両端部において、軸受ハウジング12の内周面12bの内側に突出して配置される。
なお、係止部材35は、図5に示されている係止部材23と同様に、ステンレスなどの金属板を材料として、ワイヤ放電加工により形成してもよいが、棒状部36に係合突部37や係合突部38を有する形状をエッチング加工により形成してもよい。
各バンプフォイル片26の谷部28の両側縁部には、第1実施形態と同様に、矩形状の係合切欠29が形成されている。本変形例では、係合切欠29の形状は、係合突部38の断面形状に対応した形状とされている。
各バンプフォイル片26は、それぞれ軸受ハウジング12の内周面12bに沿って配置するときに、係合切欠29を、内周面12bの周方向の3個所で、溝21の両端部で内周面12bより内側に突出している係合突部38に嵌めて係止させる。これにより、各バンプフォイル片26は、軸受ハウジング12の内周面12bに係止された状態で、周方向への変位が防止される。
[第1実施形態の変形例2]
図8は、図7に示した軸受ハウジングにバンプフォイル片を係止する係止部の更に他の例を示す斜視図である。
図8において、図7に示したものと同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
バンプフォイル片26の谷部28には、両側縁部に形成されている係合切欠29のほかに、谷部28の長手方向の中央部に、係合孔39が貫通して形成されている。係合孔39は、軸受ハウジング12の溝21に形成されている係合凹部22aの位置に対応させて形成されている。これにより、バンプフォイル片26が軸受ハウジング12の内周面12bに沿って配置されたときに、係合孔39は、係合凹部22aに重なるように配置されて係合凹部22aに連通するようになっている。
本変形例では、各バンプフォイル片26を軸受ハウジング12の内周面12bに係止させるときに、各バンプフォイル片26よりも軸受ハウジング12の中心寄りに配置する係止部材40を用いる。
そのため、係止部材40は、薄板状(四角柱状)の棒状部41と、この棒状部41におけるバンプフォイル11に対向する面に形成された係合突部42および一対の係合突部43とを備えた構成とされている。したがって、係止部材40は、棒状部41が軸受ハウジング12の内周面12bの溝21に収容されるのではなく、棒状部41と軸受ハウジング12の内周面12bとの間にバンプフォイル片26の谷部28を挟む配置で使用される。
係合突部42は、図7に示した係止部材35の係合突部37に比べて、溝21の深さとバンプフォイル片26の厚さに相当する分、長く延びる寸法で形成されている。これにより、係合突部42は、バンプフォイル片26の係合孔39に挿通させた状態で、軸受ハウジング12の係合凹部22aに挿入することができる。
棒状部41の両端部の係合突部43は、係合突部42と同じ側に延びて形成されている。各係合突部43は、バンプフォイル片26の厚さよりも長く形成されると共に、バンプフォイル片26の厚さと溝21の深さを足した寸法よりも短く形成されている。
以上のように構成されている係止部材40は、各バンプフォイル片26を軸受ハウジング12の内周面12bに沿って配置した状態で、各バンプフォイル片26の係合切欠29と係合孔39を備えた谷部28に沿わせて配置する。
次いで、係止部材40は、係合突部42が、バンプフォイル片26の係合孔39を通して係合凹部22aに挿入されると共に、係合突部43が、バンプフォイル片26の係合切欠29に係合させられてから溝21に差し込まれる。これにより、各バンプフォイル片26は、係合突部42と43を介して軸受ハウジング12の内周面12bに係止され、この状態で、図7の場合と同様に、各バンプフォイル片26は、周方向への変位が防止される。
[第2実施形態]
図9は、回転機械の第2実施形態の概略を示すもので、回転機械をラジアルフォイル軸受のトップフォイルの継ぎ目を通る直径と軸心とに沿う面で切断した断面を示す図である。図10は、回転機械をラジアルフォイル軸受の近傍位置で回転軸の軸心に垂直な面で切断した断面を拡大して示す図である。
なお、図9、図10において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の回転機械は、図1と同様の構成において、ラジアルフォイル軸受7の軸受ハウジング12と、機械ハウジング4に設ける軸受設置孔8について変更を加えたものである。
ラジアルフォイル軸受7は、外周面12aの軸心位置O3と内周面12bの軸心位置O4が同一となる円筒構造の軸受ハウジング12xを有する構成とされている。
ラジアルフォイル軸受7におけるその他の構成は、第1実施形態と同様である。
機械ハウジング4には、軸挿通空間5に、インペラハウジング3の内周部3aの軸心位置O1に対して、図1、図2に矢印xで示す方向に設定された寸法で偏心した軸心位置O2を有する軸受設置孔8が設けられている。
本実施形態では、軸受設置孔8にラジアルフォイル軸受7を取り付けるときには、トップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向位置が予め決められており、軸心位置O2は、軸心位置O1に対して、トップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向個所に対して反対側に偏心された構成とされている。
なお、本実施形態では、軸挿通空間5は、軸受設置孔8と同径で同軸心配置の円形の孔とされている。
機械ハウジング4の軸受設置孔8には、前記のようにトップフォイル9の継ぎ目9aの周方向位置が予め決められた姿勢のラジアルフォイル軸受7が、軸受設置孔8の内側に軸受ハウジング12xの外周面12aが接する状態で取り付けられている。
本実施形態のターボ機械では、図10に示すように、ラジアルフォイル軸受7の外周面12aの軸心位置O3、内周面12bの軸心位置O4は、軸受設置孔8の軸心位置O2と一致した配置となっている。したがって、回転軸2の軸心位置O5およびインペラ1の軸心位置O6も、軸受設置孔8の軸心位置O2と一致している。
この際、軸受設置孔8の軸心位置O2は、インペラハウジング3の内周部3aの軸心位置O1に対し、ラジアルフォイル軸受7のトップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向個所とは反対側へ偏心した配置となっている。
したがって、ターボ機械では、図10に示すように、二点鎖線で示すインペラハウジング3の内周部3aに対し、一点鎖線で示すインペラ1が、ラジアルフォイル軸受7のトップフォイル9の継ぎ目9aが配置される周方向個所とは反対側(矢印x方向)へ偏心した配置となる。なお、図10では、図示する便宜上、インペラ1の径、および、インペラハウジング3の内周部3aの径は、ラジアルフォイル軸受7の外径寸法に対する比が図9よりも縮小して記載してある。
よって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様に使用して同様の効果を得ることができる。
なお、本発明は、前記各実施形態にのみ限定されるものではなく、ラジアルフォイル軸受7は、中間フォイル10を備えることが好ましいが、中間フォイルを省略して、バンプフォイル11の内周側にトップフォイルが直接配置される構成としてもよい。
トップフォイル9は、継ぎ目9aの部分で軸受ハウジング12,12xに支持されて回転が防止されるようにしてあれば、トップフォイル9の継ぎ目9aの部分を軸受ハウジング12,12xに支持させる手段や構造は、図示した以外の任意の手段や構造を採用してもよい。たとえば、トップフォイル9は、長手方向の一方の端部側のみが支持されていてもよい。トップフォイル9は、長手方向の一端側と他端側が単に接近した配置とされていてもよい。トップフォイル9は、継ぎ目9aの部分で軸受ハウジング12,12xに固定されていてもよい。
ラジアルフォイル軸受7は、軸受ハウジング12,12xの内側に、空気以外の気体や液体が充填された構成を備えていてもよい。
更に、ラジアルフォイル軸受7は、軸受ハウジング12,12xの内周面12bの内側に、バックフォイルと、周方向の一個所に継ぎ目9aを有するトップフォイル9とを備えて、動圧流体軸受としての機能を備えていれば、図示した以外の任意の構成を採用してもよい。
機械ハウジング4の軸挿通空間5は、回転軸2を挿通配置するときに干渉するものがなければ、軸受設置孔8以外の部分は任意の形状としてあってもよい。
本発明の回転機械として、ターボ機械を例示したが、ラジアルフォイル軸受7に回転軸2が支持された回転体と、回転体の外周に配置された静止部とを備えていれば、任意の回転機械に本発明を適用してもよい。
この場合、回転体の外周に配置された静止部は、回転体に接近して配置される最内周部が周方向に連続する形状のものでもよいが、最内周部が周方向に断続するものであってもよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。