以下、本発明の一実施形態を、図1〜図29を参照して説明する。
この実施形態は、本発明を、オフィス等で使用される可動間仕切壁Wに適用したものである。
この可動間仕切壁Wは、図1〜図5に示すように、建築物の天井に取り付けられた天井レール1a〜1cと、一方の壁に設けられた前側の壁見切り材2と、前記一方の壁に対向する他方の壁に設けられた後側の壁見切り材3と、前記天井レール1a〜1cに移動可能に懸吊支持された複数枚のパネル4、5とを具備してなり、前記各パネル4、5を他のパネル4、5又は静止部材である壁見切り材2、3に衝合させてそれらのパネルを壁状に隣接配置することができるように構成されたものである。この実施形態では、3枚のスタンダードパネル4と1枚のテレスコープパネル5とを天井に配されたメインの天井レール1aに懸吊支持させた状態でオフィス空間を仕切ることができるようにしたものであるが、スタンダードパネル4の枚数は任意であり、また、スタンダードパネル4の1枚をドア付きのパネルに代える等、種々変更が可能である。この実施形態においては、図1〜図2に示すように、前記メインの天井レール1aの途中に分岐路を形成するための中間の天井レール1bが交差状態で接続されており、この中間の天井レール1bには、前記スタンダードパネル4及び前記テレスコープパネル5を収納しておくための2本の平行な収納用の天井レール1cが交差状態で接続されている。不使用時には、全てのスタンダードパネル4及びテレスコープパネル5が前記収納用の天井レール1cに懸吊支持された状態で厚み方向に隣接させて収納されている。使用時には、図1に示すように、収納されているスタンダードパネル4を順次中間の天井レール1bを通過させてメインの天井レール1aの下に引き出し、先頭のスタンダードパネル4を前記前側の壁見切り材2に衝合させるとともに、その先頭のスタンダードパネル4の後端に次のスタンダードパネル4の前端を衝合させ、同様な手順で、図3に示すように、全てのスタンダードパネル4をメインの天井レール1aの下に配置する。その状態で、テレスコープパネル5を中間の天井レール1bを通してメインの天井レール1aの下に引き出し、図4に示すようにそのテレスコープパネル5を幅方向に拡張し、隣接するパネルとの隙間及び壁見切り材との隙間を埋める。それから、図2及び図5に示すように前記テレスコープパネル5の上下の巾木をそれぞれ天井パネル1a〜1c及び床Fに密接させることにより間仕切操作が終了するようになっている。
前記スタンダードパネル4は、上下の端部にそれぞれ横フレームを有するパネル本体と、このパネル本体の横フレームに支持された上下の巾木と、衝合時の突き合わせ力を利用して前記巾木を前記天井レール及び床に押し付けるワンタッチシール機構とを備えている。このスタンダードパネル4は、巾木をパネル本体に没入させた状態で天井レール1a〜1cに沿って移動させることができる。また、このスタンダードパネル4の内部構造は、本発明と無関係であるため説明を省略する。
次いで、前記テレスコープパネル5の構造を図6〜図29を参照して説明する。
図6は、前記テレスコープパネル5の斜視図である。図7は図6における操作ハンドル19部分を拡大して示す斜視図であり、図8は操作ハンドル19の収納姿勢を示す斜視図である。図9は、外装板23を省略したテレスコープパネル5の斜視図である。図10は、図9におけるA部を示す一部切り欠いた拡大図である。図11は、図9におけるB部を示す拡大図である。図12は、図9におけるC部を示す一部切り欠いた拡大図である。図13は、外装材23を省略したテレスコープパネル5の背面図すなわち操作ハンドル19側からの図である。図14は、図13におけるD−D断面図である。図15は、図14におけるE部を示す拡大図である。図16は、図14におけるF部を示す拡大図である。図17は、図14におけるG部を示す拡大図である。図18は、図13におけるH−H断面図であり、後述する上の巾木12と上の昇降部材99との接続部分を示している。図19は、図13におけるI−I断面図であり、後述する側縁の巾木14と進退部材77との接続部分を示している。図20は、図9におけるC部分を正面側から示す分解斜視図であり、主に巾木作動機構18の第1、第2のリンク部163、166を分解して示している。図21〜図26は、巾木12〜14の作動を説明するための作用説明図である。図27は、図22における第1のリンク部163を拡大して示す作用説明図である。図28は、後述する駆動装置15の出力端121、123における作動領域Rの前半部分R1を示すための作用説明図である。図29は、後述する駆動装置15の出力端121、123における作動領域Rの後半部分R2を示すための作用説明図である。
前記テレスコープパネル5は、図6、図9、図13及び図14に示すように、天井レール1a〜1cに移動可能に懸吊支持されるパネル本体11と、このパネル本体11の縁部に突没可能、すなわち突出姿勢(T)と没入姿勢(B)との間で移動可能に設けられた巾木12〜14と、前記巾木12〜14を突没させるために入力される操作に応じて出力端を進退させる駆動装置15と、この駆動装置15の出力端に付勢されて軸心方向に進退動作を行う作動ロッド16、17と、前記作動ロッド16、17が軸心方向の引張り力を受けつつ移動する動きを前記巾木の突出動作に変換する巾木作動機構18と、前記パネル本体11に設けられ前記巾木を前記パネル本体11に対して突没動作させるための操作ハンドル19とを備えたものである。すなわち、この実施形態では、前記テレスコープパネル5は、天井レール1a〜1cに移動可能に懸吊支持されるパネル本体11と、前記パネル本体11の上縁部に配された上の巾木12と、前記パネル本体11の下縁部に配された下の巾木13と、前記パネル本体11の側端部に突没可能に設けられた側縁の巾木14と、この側縁の巾木14及び前記上、下の巾木12、13を突没させるために入力される操作に応じて上、下対をなす出力端121、123を相反する方向に進退させるように作動させる共通の駆動装置15と、この駆動装置15の上、下の出力端121、123に基端部16a、17aをそれぞれ支持させた状態で該出力端121、123にそれぞれ付勢されて軸心方向に進退動作を行う上の作動ロッド16及び下の作動ロッド17と、前記両出力端121、123が相寄る方向に作動して前記両作動ロッド16、17が軸心方向の引張り力を受けつつ相寄る方向に移動する動きを前記側縁の巾木14の突出動作及び上、下の巾木12、13の突出動作に変換する巾木作動機構18とを備えたものであり、前記操作ハンドル19は、前記駆動装置15に取り付けられている。
前記パネル本体11は、図6、図9、図10、図12、図13に示すように、一対の懸吊支持部55を介して前記天井レール1a〜1cに支持される枠体21と、この枠体21の両側に装着された外装板23とを備えている。前記枠体21は、図9、図10、図12、図13及び図14に示すように、移動方向前端側及び後端側にそれぞれ配された前、後の竪フレーム25、27と、これら竪フレームの上端部間及び下端部間をそれぞれ連結する上下の前記横フレーム29と、前記両竪フレーム25、27の中間部同士を連結する中間の横フレーム31とを備えている。
前記前の竪フレーム25は角柱パイプ状のもので、外壁33におけるパネル厚み方向中央部分に前方に向かって漸次開口幅が拡大する平面視台形状をなす凹溝33aを有している。
前記後の竪フレーム27は、図19に示すように、内壁35と、両側壁37とを備えた平面視コ字形のものであり、前記両側壁37間に形成される空間内に没入姿勢(B)にある前記側縁の巾木14が収納されるようになっている。
前記横フレーム29は、図13、図14、図15及び図17に示すように、接続用ブラケット51を介して前記前、後の竪フレーム25、27の上下端部間をそれぞれ連結する横フレーム本体39と、この横フレーム本体39の上面に添設された巾木収納部材41とを備えている。前記横フレーム本体39は、巾木収納部材41に添接する外壁43の一部が切り欠かれたチャネル状のものである。前記巾木収納部材41は、前記横フレーム本体39に添設された内壁45と、この内壁45の両側縁から上下方向に延出する側壁47とを備えている。前記側壁47間に形成される空間には、没入姿勢(B)にある前記上の巾木12又は下の巾木13が収納される。前記側壁47の外側端からは互いに離反する方向に鍔部49が延出しており、この鍔部49に前記外装板23の上下の端面が係止又は対面するようになっている。
前記中間の横フレーム31は、図13〜図17に示すように、接続用ブラケット51を介して前記前、後の竪フレーム25、27の中間部同士を連結するものである。
ここで、前記接続用ブラケット51は、図15〜図17に示すように、前記竪フレーム25、27及び前記横フレーム29にビス止めされるもので、前記外装板23を掛け止めするための爪53を備えている。
前記懸吊支持部55は、前記上の横フレーム29に貫通止着された対をなす懸吊杆57と、これらの懸吊杆57にそれぞれ軸部を螺着した図示しない車輪とを備えたもので、前記車輪が前記天井レール1a〜1c内を転動するようになっている。この懸吊杆57に取り付けられる車輪部分は通常のものであるため、詳細な説明は省略する。
前記側縁の巾木14は、図19に示すように、外方すなわちパネル後方に向けて開口するチャネル状のものであり、その上下両端部に後述するコーナーキャップ59の一端部が上下方向にスライド可能に嵌挿されている。この側縁の巾木14は、内壁61と、この内壁61の両側縁からパネル後方に向けて延出する側壁63とを備えたもので、前記側壁63の先端部に後の壁見切り材3に密接可能な密接ゴム65を取り付けてある。また、前記側壁の基端部には、後の竪フレーム27の側壁37に摺接するタイトシールゴム67を取り付けてあり、前記巾木14が移動しても、常時このタイトシールゴム67が前記竪フレーム27に摺接するようになっている。なお、前記コーナーキャップ59の一端部外面には上下方向に伸びる溝59aが形成されており、この溝59aが前記側縁の巾木14の側壁63内面に突設された上下方向に述べる突条63aにスライド可能に嵌合させてある。
前記側縁の巾木14は、図10、図12、図19及び図20に示すように、上下対をなす水平支持杆69の先端部に取り付けられており、これらの水平支持杆69とともに突没動作を行うようになっている。各水平支持杆69は、先端部で前記側縁の巾木14を支持した状態で竪フレーム27に設けられたスライド軸受27aに貫挿されており、その基端側はパネル本体11内に位置させてある。詳述すれば、前記水平支持杆69は、基端に係止鍔73を有し、先端側を前記側縁の巾木14の内壁に止着した芯材71と、この芯材71の先端側に外嵌させたスリーブ75とを備えたものであり、前記芯材71の基端側に進退部材77がスライド可能に外嵌させてあるとともに、この進退部材77と前記スリーブ75の内側端面との間にコイルばね79が前記芯材71に巻装した状態で介在させてある。
前記上の巾木12及び下の巾木13は、図15、図17及び図18に示すように、横フレーム本体39に向けて開口するチャネル状のものであり、前端部をキャップ81により閉塞している。前記上の巾木12及び下の巾木13の後側の端部には、後述するコーナーキャップ59の他端部が前後方向にスライド可能に嵌挿されている。これら上の巾木12及び下の巾木13は、外壁83と、この外壁83の両側縁から横フレーム本体39に向けて延出する側壁85とを備えたもので、前記外壁83に天井レール1a又は床Fに密接可能な密接ゴム87を取り付けてある。また、前記側壁85の基端部には、横フレーム29の巾木収納部材41の側壁47に摺接するタイトシールゴム89を取り付けてあり、前記巾木12、13が移動しても、常時このタイトシールゴム89が前記巾木収納部材41の側壁47に摺接するようになっている。
前記上の巾木12及び下の巾木13は、図10、図12、図18及び図20に示すように、いずれも対をなす鉛直支持杆91の先端部に取り付けられており、これらの鉛直支持杆91とともに突没動作を行うようになっている。各鉛直支持杆91は、先端部で前記上の巾木12又は下の巾木13を支持した状態で横フレーム本体39に設けられたスライド軸受39aに貫挿されており、その基端側はパネル本体11内に位置させてある。詳述すれば、前記鉛直支持杆91は、基端に係止ナット95を有し、先端側を前記上又は下の巾木12、13の外壁に止着した芯材93と、この芯材93の先端側に外嵌させたスリーブ97とを備えたものであり、前記芯材93の基端側に昇降部材99がスライド可能に外嵌させてあるとともに、この昇降部材99と前記スリーブ97の内側端面との間にコイルばね101が前記芯材93に巻装した状態で介在させてある。具体的に説明すれば、上、下の巾木12、13はそれぞれ2本の鉛直支持杆91により支持されている。以下、上の昇降部材99の構成について説明する。前記上の昇降部材99は上の巾木12を支持する2本の鉛直支持杆91の芯材にそれぞれスライド可能に装着されたもので、横フレーム29と平行な形態をなしており、2本の鉛直支持杆91の軸心間距離を2等分する位置に前記巾木作動機構18の作動力が伝達される中央接続部103を備えている。すなわち、この上の昇降部材99は、外装板23と平行な起立壁105と、この起立壁105の上縁からパネル厚み方向に突設され延出端部が下方に屈曲した外壁107と、前記起立壁の下縁からパネル厚み方向に突設され延出端部が上方に屈曲した内壁109とを備えたものであり、上、下の巾木12、13と平行な姿勢を保って昇降する横長な前記内壁109の屈曲部分に前記中央接続部103を設けている。また、下の昇降部材99は、前記上の昇降部材99と上下を逆にした形状をなし、前記上の昇降部材99に準じる構成を有するので、対応する各部位には同一の名称及び符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、前記上、下の昇降部材99の内壁107及び外壁109には、後述する第2のリンク部165を収容するための切欠部111がそれぞれ形成されている。また、前記スリーブ97及び前記コイルばね101は、前記内壁107と前記外壁109との間に配されている。
前記駆動装置15は、図11及び図16に示すように、ウォーム115とウォームホイール117とを備えたウォームギア113を主体として構成されたもので、入力端すなわち入力軸119に接続した操作ハンドル19を回動操作することにより上下対をなす第1、第2の出力端121、123が相反する方向に動作するように構成されたものである。すなわち、図11及び図16に示すように、前記駆動装置15は、パネル本体11内に設けられたベース125と、このベース125に取り付けられ内部に入力軸119とともに回転する前記ウォーム115及び出力軸129とともに回転する前記ウォームホイール117を備え、前記入力軸127の回転動作を前記出力軸129の回転動作に変換するギアボックス131と、このギアボックス131の出力軸129の回転を出力端121、123の相反する進退動作に変換する動作変換機構133とを備えたもので、前記入力軸119に前記操作ハンドル19が接続されている。動作変換機構133は、出力軸129の一端に一体回転可能に接続された第1のねじ棒135と、前記出力軸129の他端の一体回転可能に接続され前記第1のねじ棒135と逆方向のねじ溝が刻設された第2のねじ棒137と、基端に設けられたナット部143、145を前記第1,第2のねじ棒にそれぞれ螺着してなる第1,第2のスリーブ139、141とを備えたもので、前記第1,第2のスリーブ139、141の先端部をそれぞれ前記第1、第2の出力端121、123としている。これらスリーブ139、141の出力端121、123には、作動ロッド16、17の基端部が接続されている。
前記操作ハンドル19は、常時前記パネル本体11に取り付けられたもので、前記巾木12〜14を突没動作させるための正規姿勢と、前記パネル本体11を天井レール1a〜1cに沿って移動させる際に邪魔にならない収納姿勢とを選択的に採り得るように構成されている。
この操作ハンドル19は、図7、図8及び図11に示すように、前記パネル本体11に設けられた前記駆動装置15の入力端たる入力軸119にビス149を用いて取り付けられたハンドルボス147と、このハンドルボス147に基端部を支持させたレバー151と、このレバー151の先端部に設けられた回動操作用のグリップ153とを備えたもので、前記正規姿勢では、前記グリップ153と前記レバー151を共に外部に露出させた状態となり、前記収納姿勢では、前記グリップ153が前記パネル本体11の表面に設けられた凹陥部158に嵌入した状態で前記レバー151が前記パネル本体11の外面に添接するように構成されている。なお、前記凹陥部158はブラケット215を介して前記パネル本体11に取り付けられたグリップ収納部材213の内部に形成されたものである。
前記上の作動ロッド16は、例えば角柱パイプ状のもので、図11、図13及び図16に示すように、基端部16aが前記第1のスリーブ139の先端部139aに内接状態で挿入されている。そして、前記第1のスリーブ139の先端部139aと前記作動ロッド16の基端部とに接続ピン155を貫装してこれらスリーブ139と作動ロッド16とを接続している。なお、この作動ロッド16の基端部16aにおける接続ピン155の貫通孔16xは、上下方向に延びる長孔形状をなしており、スリーブ139の上方への作動が若干遅れて作動ロッド16に伝達されるようにしてある。
前記下の作動ロッド17は、図12、図13及び図16に示すように、例えば角柱パイプ状のもので、基端部17aが前記第2のスリーブ141の先端部141aに内接状態で挿入されている。そして、前記第2のスリーブ141の先端部141aと前記作動ロッド17の基端部17aとに接続ピン157を貫装してこれらスリーブ141と作動ロッド17とを接続している。なお、この作動ロッド17の基端部17aにおける接続ピン157の貫通孔17xは、該接続ピン157に密接する丸孔形状をなしており、スリーブ141の下方への作動がただちに作動ロッド17に伝達されるようにしてある。
以上説明した上下の作動ロッド17の進退動作を前記巾木作動機構18により前記側縁の巾木14及び前記上、下の巾木12、13に伝達するようにしてある。この巾木作動機構18は、図28に示すように前記駆動装置15の前記出力端121、123における作動領域Rの前半部分R1を用いて前記側縁の巾木14を突出させるとともに、図29に示すように前記作動領域Rの後半部分R2を用いて前記上、下の巾木12、13を突出させるもので、前記出力端121、123の作動領域Rにおける前半部分R1の動きを吸収して前記上、下の巾木12、13に伝達されないようにする前半用の動作吸収手段159と、前記作動領域Rにおける後半部分R2の動きを吸収して前記側縁の巾木14に伝達されないようにする後半用の動作吸収手段161とを備えたものである。
詳述すれば、この巾木作動機構18は、図9、図10、図12、図13、図15、図17、図28及び図29に示すように、前記作動ロッド16、17の上下方向の動きを前記側縁の巾木14の突没動作に変換する第1のリンク部163と、前記作動ロッド16、17の上下方向の動きを前記上、下の巾木12、13の突没動作に変換する第2のリンク部165とを備えている。
前記第1のリンク部163は、図9、図10、図12、図13、図15、図17、図27、図28及び図29に示すように、2種類の浮動リンクメンバすなわち巾木側浮動リンクメンバ167及び作動ロッド側浮動リンクメンバ169を用いて作動ロッド16、17の作動領域Rの前半部分R1における上下方向の進退動作を側縁の巾木14の突没動作に変換するようにしたものである。なお、この明細書中における「作動領域R」とは、上、下の作動ロッド16、17が最も離間した位置から最も接近した位置まで作動する領域を意味しており、「前半部分R1」とは、上、下の作動ロッド16、17が最も離間した位置と中間位置との間で作動する部分を意味しており、「後半部分R2」とは、中間位置と上、下の作動ロッド16、17が最も接近した位置との間で作動する部分を意味している。具体的に説明すれば、この第1のリンク部163は、前記進退部材77を案内用のスリットである水平案内孔173に挿通させたピン179を介して水平方向に進退可能に保持するベース171と、このベース171に遊動可能に保持され一端部を前記進退部材77に枢着した前記巾木側浮動リンクメンバ167と、この巾木側浮動リンクメンバ167の他端部に枢着ピン175を介して一端部を枢着し他端部を前記作動ロッド16、17にピン177を介して枢着した前記作動ロッド側浮動リンクメンバ169とを具備してなる。前記ベース171は、前記パネル本体11に固定されたもので、前記進退部材77に装着されたピン179を案内する水平案内孔173と、前記巾木側浮動リンクメンバ167の中間に装着された中間ピン181が係わり合う中間ピン係合部分183と、前記枢着ピン175が係わり合う枢着ピン係合部分185とを備えている。前記中間ピン係合部分183は、前記作動領域Rの前半部分R1において前記中間ピン181を上下方向に強制的に案内する中間ピン用案内孔187と、前記作動領域Rの後半部分R2において前記中間ピン181の遊動を許容する中間ピン用ルーズ孔189とを連続して設けたものである。前記枢着ピン係合部分185は、前記作動領域Rの前半部分R1において前記枢着ピン175を上下方向に強制的に案内する枢着ピン用案内孔191と、前記作動領域Rの後半部分R2において前記枢着ピン175の遊動を許容する枢着ピン用ルーズ孔193とを連続して設けたものである。前記中間ピン用ルーズ孔189と前記枢着ピン用ルーズ孔193は、前記側縁の巾木14が突出姿勢(T)にまで移動した状態で前記巾木側浮動リンクメンバ167が進退部材77に装着されたピン179を中心にして当該巾木側浮動リンクメンバ167が回動するのを許容するように部分円弧状に形成されている。
前記第2のリンク部165は、図9、図10、図12、図13、図15、図17、図28及び図29に示すように、動作反転用リンクメンバ195を用いて作動ロッド16、17の作動領域Rの後半部分R2における上下方向の進退動作を上、下の巾木12、13の突没動作に変換するようにしたものである。具体的には、この第2のリンク部163は、ベース197と、前記作動ロッド16、17の昇降動作を上下反転させ上、下の昇降部材99を介して上の巾木12及び下の巾木13にそれぞれ伝達する上、下対をなす前記動作反転用リンクメンバ195とを具備してなる。前記ベース197は、前記パネル本体11に固定されたもので、前記動作反転用リンクメンバ195の中間部分を軸支する支持ピン199が装着される支持ピン保持部201と、前記動作反転用リンクメンバ195及び前記作動ロッド16、17を接続する接続ピン203を案内する鉛直案内孔205とを備えている。前記動作反転用リンクメンバ195は、中間部を前記パネル本体11に枢支させた天秤状のもので、一方の回動端部195aを前記昇降部材99の中央接続部103に支持ピン204を介して接続するとともに、他方の回動端部195bを前記作動ロッド16、17の先端部に前記接続ピン203を介して接続したものである。すなわち、この動作反転用リンクメンバ195は、中間部を前記パネル本体11に枢支させ、一端部を前記昇降部材99の中央接続部103に前記支持ピン204を介して接続した天秤状のリンクメンバ本体207と、このリンクメンバ本体207の他端部から屈曲した状態で延出する屈曲延出部209とを備えたもので、前記屈曲延出部209に前記リンクメンバ本体207に対して傾斜した長孔状のルーズ孔211が形成されている。前記作動ロッド16、17の先端に設けられた前記接続ピン203は前記ルーズ孔211と前記ベース197の鉛直案内孔205に貫通させてある。このルーズ孔211は、前記動作変換用リンクメンバ195が上、下の巾木12、13を没入させている状態で前記ベース197の鉛直案内孔205と合致するように鉛直方向を向き、上、下の巾木12、13を突出させた状態で前記鉛直案内孔205に対して傾斜するようになっている。
しかして、前記巾木作動機構18は、図28及び図29に示すように、前記出力端の作動領域Rにおける前半部分R1の動きを吸収して前記上、下の巾木12、13に伝達されないようにする前半用の動作吸収手段159と、前記作動領域Rにおける後半部分R2の動きを吸収して前記側縁の巾木14に伝達されないようにする後半用の動作吸収手段161とを備えている。前記前半用の動作吸収手段159は、前記動作反転用リンクメンバ195の前記屈曲延出部209のルーズ孔211と、このルーズ孔211に案内される範囲内で遊動する接続ピン203とを備えたものである。前記後半用の動作吸収手段161は、前記中間ピン用ルーズ孔189と、前記枢着ピン用ルーズ孔193と、これらのルーズ孔189、193に案内される範囲内で遊動する中間ピン181及び枢着ピン175とを備えたものである。
以下、テレスコープパネル5の作動を説明する。
このテレスコープパネル5は、天井レール1a〜1cに沿って移動させる際には、側縁の巾木14及び上、下の巾木12、13が没入姿勢(B)に維持されている。以下、この状態を「解除状態(1PT)」と称する。
全てのスタンダードパネル4が設置された後、格納位置から設置位置に引き出された解除状態(1PT)にあるテレスコープパネル5の周囲には、隙間が形成されている。この状態から前記操作ハンドル19を所定方向に回動操作すると、まず側縁の巾木14が没入姿勢(B)から突出姿勢(T)にまで移動し、このテレスコープパネル5の前端が隣接するスタンダードパネル4に押し付けられるとともに、前記側縁の巾木14が後側の壁見切り材3に押し付けられる。以下、この状態を「幅方向完了(4PT)」と称する。この状態からさらに操作ハンドル19を同一方向に回転操作し続けると、上、下の巾木12、13が没入姿勢(B)から突出姿勢(T)にまで移動し、天井レール1a〜1c及び床Fに押し付けられ、設置が完了する。以下、この状態を「天地も完了(6PT)」と称する。
詳述すれば、解除状態(1PT)から「幅方向完了(4PT)」に至る作動は、図28に示すように、作動ロッド16、17が最も離間した位置から最も接近した位置に向かって移動する作動領域Rの前半部分R1において営まれるものである。すなわち、解除状態(1PT)においては、下側の第1のリンク部163における枢着ピン175及び中間ピン181は、それぞれ前記枢着ピン用案内孔187及び前記中間ピン用案内孔191の下端に保持されており、作動ロッド側浮動リンクメンバ169及び巾木側浮動リンクメンバ167は、いずれも起立した状態を維持しており、巾木側浮動リンクメンバ167の先端に接続された進退部材77は水平案内孔173の内方端に保持されている。すなわち、側縁の巾木14は没入姿勢(B)に保持されている。一方、下側の第2のリンク部165における接続ピン203は前記鉛直案内孔205の下端に保持されているとともに、前記動作変換用リンクメンバ195のルーズ孔211の下端に係わり合っている。この状態では、前記動作変換用リンクメンバ195の屈曲延出部209が起立して前記鉛直案内孔205と前記ルーズ孔211とが合致しており、前記天秤状のリンクメンバ本体207に接続された下の巾木13が没入姿勢(B)に保持されている。この状態(1PT)から下の作動ロッド17が上昇すると、第1のリンク部163の枢着ピン175は、鉛直な前記枢着ピン用案内孔191に案内されて真上に移動するが、前記中間ピン181は傾斜した前記中間ピン用案内孔187に案内されて上方に向かって移動するに従って外方に移動する。その結果、前記巾木側浮動リンクメンバ167の先端に連結された進退部材77が前記水平案内孔173に案内されて外方に移動する。進退部材77が外方に移動すると、その動きがコイルばね79及びスリーブ75を介して側縁の巾木14に伝達され、当該側縁の巾木14が没入姿勢(B)から突出姿勢(T)に向かって移動することになる。すなわち、この作動ロッド17の作動領域Rの前半部分R1において、側縁の巾木14が突出することになる。その際、下の巾木13は、前半用の動作吸収手段159の働きにより、没入姿勢(B)を維持する。すなわち、第2のリンク部の接続ピン203は、作動ロッド17の上昇に伴って上方に移動するが、この接続ピン203の動きは前記動作変換用リンクメンバ195のルーズ孔211に沿って移動するだけで、前記動作変換用リンクメンバ195には伝達されない。そのため、下の巾木13は没入姿勢(B)を維持することになる。なお、図28による説明は、下側のリンク部163、165の作動についてのものであるが、上側のリンク部163、165もこれに準じた動きを営む。
また、「幅方向完了(4PT)」から「天地も完了(6PT)」に至る作動は、図29に示すように、作動ロッド16、17が最も離間した位置から最も接近した位置に向かって移動する作動領域Rの後半部分R2において営まれるものである。詳述すれば、「幅方向完了(4PT)」においては、下側の第1のリンク部163における枢着ピン175及び中間ピン181は、それぞれ前記枢着ピン用案内孔191と前記ルーズ孔193との境界、及び前記中間ピン用案内孔187と前記ルーズ孔189との境界に位置しており、進退部材77に装着されたピン179は前記水平案内孔173の外方端に保持されて、側縁の巾木14は突出姿勢(T)に保持されている。この状態から下側の作動ロッド17がさらに上昇すると、前記枢着ピン175が前記作動ロッド側浮動リンクメンバ169を介して上方に付勢され、巾木側駆動リンクメンバ167が進退部材77に装着されたピン179を中心にして回動する。すなわち、前記ピン179は、それ以上外方に移動できないためその位置を維持するが、前記中間ピン181及び前記枢着ピン175は、前記ルーズ孔189、193の存在により遊動が可能であり、前記巾木側浮動リンクメンバ167の全体的な回転移動を許容することになる。換言すれば、作動ロッド17が作動領域Rの後半部分R2において上昇しても、前記後半用の動作吸収手段161の働きにより、突出姿勢(T)に保持されている側縁の巾木14には影響が及ばない。一方、下の巾木13は、没入姿勢(B)から突出姿勢(T)に向けて移動する。すなわち、作動ロッドの作動領域Rにおける後半部分R2における動きが加わったとき、作動ロッド17に設けられた接続ピン203が前記ルーズ孔211の上端に達した状態から上昇するため、前記動作変換用リンクメンバ195は図中反時計回り方向に回動し、前記昇降部材99が下方に押し下げられる。その結果、昇降部材99の下方への動きがコイルばね101及びスリーブ97を介して下の巾木13に伝達され、下の巾木13が突出して床Fに押し付けられることになる。なお、図29による説明は、下側のリンク部163、165の作動についてのものであるが、上側のリンク部163、165もこれに準じた動きを営む。
なお、図21は、前述した解除状態(1PT)における巾木作動機構18を反操作ハンドル19側及び操作ハンドル19側から示した図であり、図24は、前述した「幅方向完了(4PT)」における巾木作動機構18を反操作ハンドル19側及び操作ハンドル19側から示した図であり、図26は、前述した「天地も完了(6PT)」における巾木作動機構18を反操作ハンドル19側及び操作ハンドル19側から示した図である。そして、図23は、前記解除状態(1PT)から前記「幅方向完了(4PT)」に至る中間状態すなわち「幅方向途中(3PT)」を示す図であり、図25は、前記「幅方向完了(4PT)」から前記「天地も完了(6PT)」に至る中間状態すなわち「天地作動初め(5PT)」を示す図である。
また、図22は、前記解除状態(1PT)と前記「幅方向途中(3PT)」との間に現れる特殊な状態を示すもので、その詳細を図27に基づいて説明する。前記解除状態(1PT)から操作ハンドル19を若干操作して駆動装置15の上下の出力端121、123を相寄る方向に若干作動させると、下の出力端123の動きは直ちに下の作動ロッド17に伝達されるが、上の出力端121の動きは前記作動ロッド16の基端部における長孔状の貫通孔16xの存在により若干遅れて上の作動ロッド16に伝達されるようになっている。この対策は、巾木14に作用する重力の影響が上の水平支持杆69よりも下の水平支持杆69に対して大きく作用するため、下の水平支持杆69を突出させるために要する力が上の水平支持杆69を突出させるために要する力よりも大きくなることを考慮して講じられたものである。すなわち、以上の構成によれば、上の水平支持杆69はコイルばね79の予圧の範囲内で押し出す一方で、下の水平支持杆69はコイルばね79を若干圧縮し付勢力を強化した状態で押し出すことができる。このとき、下の水平支持杆69の係止鍔73と進退部材77との間には隙間Sが生じる。そのため、前述した重力の影響を抑制して円滑に側縁の巾木14を突出方向に作動させることができるものである。
以上に述べたように、本実施形態によれば、共通の駆動装置15の前記出力端121、123における作動領域Rの前半部分R1を用いて前記側縁の巾木14を突出させるとともに、前記作動領域Rの後半部分R2を用いて前記上、下の巾木12、13を突出させるようにしているので、側縁の巾木14を突没させるための第1の駆動装置及び上、下の巾木12、13を突没させるための第2の駆動装置を設ける態様と比較して、部品点数の削減及び軽量化を図ることができるとともに、操作ハンドル19に対する一連の操作により前記側縁の巾木14を突出させる操作及び前記上、下の巾木12、13を突出させる操作をこの順序で続けて行うことができるので、簡単な操作により確実にテレスコープパネル5の位置決めを行うことができる。さらに、入力端が前記入力軸119の1つのみであるので、前記第1及び第2の駆動装置を設ける場合に生じうる、テレスコープパネル5と隣接するパネルとの間に隙間を残したまま誤って上、下の巾木12、13を突出させて天井レール1a〜1c及び床Fに押し付けることによりテレスコープパネル5が誤った位置に位置決めされてしまう不具合の発生を抑えることもできる。
また、前記出力端121、123の作動領域Rにおける前半部分R1の動きを吸収して前記上、下の巾木12、13に伝達されないようにする前記前半用の動作吸収手段159と、前記出力端121、123の前記作動領域Rにおける後半部分R2の動きを吸収して前記側縁の巾木14に伝達されないようにする前記後半用の動作吸収手段161とを設けているので、これら前半用及び後半用の動作吸収手段159、161を順次作動させることにより上述したような動作を行う巾木作動機構18を実現できる。
さらに、前記巾木作動機構18が、リンクメンバを主体に構成されたリンク方式のものであり、前記前半用の動作吸収手段159が、前記動作変換用リンクメンバ195のルーズ孔211と、このルーズ孔211に案内される範囲内で遊動する接続ピン203とを備えており、前記後半用の動作吸収手段161が、前記第1のリンク部163のベース171に設けられた前記ルーズ孔189、193と、これらルーズ孔189、193に案内される範囲内で遊動する前記中間ピン181及び前記枢着ピン175とを備えているので、これら動作吸収手段159、161を無理なく実現することができる。
前記駆動装置15が、上、下対をなす出力端121、123を有し、没入姿勢(B)にある前記巾木12〜14を突出させるための操作入力を受けた場合に、前記上、下の出力端121、123を相互に離間した位置から相互に接近する方向に作動させるものであり、これら上、下の出力端121、123の動きが上、下の作動ロッド16、17を介して前記巾木作動機構18に伝達されるように構成されているので、前記上、下の巾木12、13を天井レール1a〜1c及び床Fにそれぞれ押し付けたときに上、下の作動ロッド16、17が強い圧縮力を受けることがなく、これら作動ロッド16、17のたわみの発生を防ぐことができる。
なお、本発明は以上に述べた実施の形態に限らない。
例えば、上述した実施形態では、前記巾木作動機構が、前記駆動装置の出力端の作動領域における前半部分の動きを吸収して前記上、下の巾木に伝達されないようにする前半用の動作吸収手段と、前記作動領域における後半部分の動きを吸収して前記側縁の巾木に伝達されないようにする後半用の動作吸収手段とを備えるようにしているが、駆動装置の出力端の作動領域における動きを吸収する以外の方法でその前半部分の動きを前記上、下の巾木に伝達されないように、あるいはその後半部分の動きを前記側縁の巾木に伝達されないようにしてもかまわない。
また、上述した実施形態では、没入姿勢にある前記巾木を突出させるための操作入力を受けた場合に、駆動装置が前記上、下の出力端を相互に離間した位置から相互に接近する方向に作動させ、上、下の作動ロッドを介して前記上、下の出力端の動きを前記巾木作動機構に伝達されるようしているが、駆動装置の作動の態様及び駆動装置の出力端の動きを巾木作動機構に伝達する態様は、任意のものを採用してよい。駆動装置の作動の態様及び駆動装置の出力端の動きを巾木に伝達する態様の他の一例として、例えば、駆動装置の上下の出力端にそれぞれ接続した作動ロッドと側縁の巾木との間に上述した実施形態における第1のリンク部を天地逆転させた構造のものを介在させた上で、没入姿勢にある前記巾木を突出させるための操作入力を受けた場合に、駆動装置の上下の出力端を相互に接近する位置から相互に離間する方向に作動させるとともに、この出力端の動きを直接上、下の巾木に伝達して上、下の巾木を突出させるように構成するもの、すなわち、駆動装置の上下の出力端にそれぞれ接続した作動ロッドの動きを、その向きを変換することなく上、下の巾木に伝達する構成のものが考えられる。このようなものであっても、前記作動ロッドと上、下の巾木との接続箇所を例えば長孔とピンとを利用したものとし、作動領域の前半領域においては長孔内をピンが遊動する構成を採用すれば、本発明の最も主要な効果を得ることはできる。
そして、作動ロッドの動きを巾木の突没動作に変換するための巾木作動機構も、任意の構成のものを採用してよい。
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。