本発明の一側面の情報取得方法では、撮影条件が異なり血管を含む撮影部位を含む複数の画像データを取得し(第一工程)、複数の画像データから選ばれた異なる画像データ間で差分処理されたデータである差分画像データを生成する(第二工程)。そして、前記差分画像データを含む複数の画像データにおいて、それぞれ、指標データを取得し(第三工程)、前記指標データに基づいて、前記差分画像データを含む複数の画像データから、画像データまたは画像データの関連情報を選択する(第四工程)。第二工程では、撮影部位の一領域における血流変動情報に基づいて選択された画像データを含んで構成される前記異なる画像データ間で差分処理を行う。また、第三工程は、血管に対応する領域の一部である第一の領域と、第一の領域に隣接し、血管に対応する領域以外の領域の一部である第二の領域と、におけるデータを用いて前記指標データを取得する。
例えば、前記撮影部位の一領域は、第一の領域と第二の領域の少なくとも一方であり、第一の領域と第二の領域との組は、複数設定される。各工程の態様には、後述する実施形態及び実施例で説明するように様々なものがある。本発明の他の側面の情報取得装置は、前記第一乃至第四工程の機能をそれぞれ実行する第一部乃至第四部を有する。
以下、本発明の実施形態及び実施例を説明するが、それらは本発明を何ら限定するものではない。本発明の一実施形態の撮影装置は、光源と、検出部と、処理部(前記第一部乃至第四部)を含む情報取得装置とを少なくとも有する。光源からの光を、例えば被験者の体(被検体)の部位に照射し、透過光、反射光、散乱光の少なくとも1つを検出部にて検出し、撮影部位の複数の画像を、異なる撮影条件にて取得する。本実施形態の撮影装置では、注目する血管を異なる条件で撮影したこうした画像を複数用い、処理部にて処理を行い、複数の画像同士の差分処理で血管像ないしその関連情報を抽出する。例えば、通常の透過撮影では散乱光による背景分布の中に淡い血管像(吸収像)が存在する画像でも、前記複数の画像データ同士の差分処理により散乱光成分などを画像から除去することにより、血管像を抽出可能である。
(撮影条件がそれぞれ異なり、血管を含む撮影部位を含む複数の画像データ(元画像)を取得する工程の説明)
まず、本実施形態の装置で記録される、撮影条件の違いによる血管像の差異について述べる。血管像の差異としては、例えば血流量の変化による血管部の透過率変化、光吸収変化などが挙げられる。血流量の変動を生じさせる原因或いは手法には次のものがある。例えば心臓の拍動に起因する、人体で常に生じている血流変動がある。また、撮影する部位の高さと被験者の心臓の高さとの位置関係を変化させても、血流変動を生じうる。或いは、血管の血流を外部から変化させる血流変化部である駆血帯(カフ)などを用いて、撮影部位よりも心臓に近い部位を圧迫する圧力を変化させ、撮影部位の血流を変動させてもよい。
人体に通常存在する血管は大きく分けて動脈、毛細血管、静脈である。動脈は大動脈、動脈、細動脈に分類される。大動脈の内径は凡そ2.5cm、動脈は0.4cm、細動脈は30μmである。毛細血管の内径は5μmである。静脈は大静脈、静脈、細静脈に分類される。大静脈の内径は3cm、静脈の内径は0.5cm、細静脈の内径は20μmである。
一般に、管の中を流れる液体は圧力損失を受ける。このため、或る圧力を印加されて管に流入した液体は、管の径が細いほど、また管の中を伝搬する距離が長くなるほど、かかる圧力が減少する。従って、血管の場合でも、心臓からの圧力やその変動は、太い血管ほど伝わりやすく細い血管ほど伝わりにくいと考えられる。つまり、動脈や静脈などの太い血管では圧力損失が小さく心臓からの血圧やその変動が伝わりやすく、血圧変動による血流量の変化も大きいと考えられる。一方、毛細血管のように非常に細い血管では、血圧やその変動は伝わりにくく、血圧変動による血流量の変化も小さいと考えられる。また、血管の太さだけでなく、血管の構造が違う場合、血管壁の弾力が異なることも血圧やその変動の伝わりやすさに影響を与えると考えられる。よって、血圧の変動による血管の光吸収の変化も、血管の種類や太さによって異なると考えられる。
また、人体に常に存在する血管ではないが、疾患の患部などに新たに発生する血管として新生血管がある。新生血管は、一本一本は細い血管でありながら、それらが密集し稠密な新生血管群を形成している。また病状の進行と共に新生血管群の塊としての大きさが増大したり、新生血管群を構成する各新生血管の太さが増大したりする場合もある。新生血管群が新たに発生した組織では、もともと存在する毛細血管や他の血管に加えて新生血管群が形成されるので、血管及び血液の体積占有率が増大すると考えられる。このため、血液による光吸収や、血流量の変動による光吸収の変動も、新生血管群が存在しない組織と比較して大きくなると考えられる。
本実施形態は上記の如き血管の像を明瞭に抽出するための装置や方法に係わる。特に動脈、静脈、及び新生血管群のうちの少なくとも1つを撮影することを目的とした装置ないし方法である。
例として、関節リウマチに伴う新生血管群を撮影する場合など、関節近傍の血管を撮影する場合、撮影領域に関節部分と動脈又は静脈を含むように設定する。対象が新生血管群の場合は、新生血管群も含むように設定することが好適であるが、新生血管群が見えにくく単純な透過撮影画像などからはその位置が分かりにくい可能性もある。この場合は、後述するように、まずは動脈や静脈を抽出する操作を行う。この操作により新生血管群も見やすくなり、場所が特定できた場合には、さらにこの新生血管群を見やすくする演算処理を施すことにより、新生血管群もより明瞭に抽出することが可能となる。
撮影条件を変えた血管画像の取得方法には、以下の手法がある。例えば撮影時刻を変えて複数枚撮影することが可能である。動画撮影した場合は、動画の各フレームそれぞれが、撮影時刻の異なる画像となる。この場合、血管画像の時間変化を記録することが可能であり、例えば時間と共に血流量やそれに伴う血管による光吸収の強さが変動するときなど、その変動を記録することが可能である。
(複数の画像データにおいて、指標データないし評価値を取得する工程の説明)
次に、異なる撮影条件で撮影された画像、画像中の指標データないし評価値の評価について、透過撮影を例に説明する。画像中の指標データないし評価値の評価については、後述の差分画像データに対しても適用することができる。血管は光を吸収するので、通常の透過撮影では暗く写る。なお、反射撮影でも血管は光を吸収するので暗く写る。脂肪部や骨、筋肉などの組織は光を強く散乱するため、生体内の皮膚下にある動脈又は静脈を透過撮影した場合、動脈又は静脈像は暗い棒状であり且つぼやけた像になる。血管ではない脂肪や筋肉などは、血管と比較して光吸収が弱く、生体内散乱光によって血管像よりも明るく写る。画像の表示方法としては、明暗を反転し、血管による光吸収が生じた部分を明るく、吸収が無い部分を暗く表示させることも可能である。
血管像の強度の評価について説明する。本実施形態では、血管像の強度は、血管像の略中心の最も暗い部分と血管の近傍の明るい部分との信号値の差で評価する。透過光量が大きい部分は、皮膚下の浅い部位に動脈又は静脈が存在せず、脂肪や筋肉などが存在している部位である。本明細書ではこの領域を脂肪部(第一の領域以外の第二の領域を含む)と呼ぶ。これに対して血管部(第一の領域を含む)は血管による光の吸収が強いので、脂肪部よりも透過光量が少なくなる。従って、基本的には血管部の脇にある最も画素値(指標値)が大きい領域が脂肪部であるとみなす。血管が近くに複数存在する場合、脂肪部の画素値を評価する位置としては、或る血管とその血管に最も近接した別の血管との間にあって透過光量が最も大きい点をもって、脂肪部の位置であるとみなすのが良い。
図1は血管像の例の模式図である。撮影領域101には関節102、関節103、血管104、血管107、血管109を含む。図2は、図1中のA点105とB点106を結ぶ線分上の画像の明るさの分布である。このとき、図2の血管像201、注目している血管104の中心202、血管109の中心210、脂肪部203、脂肪部204について画像の明るさを評価する。また、205は図1のA点の位置、206は図1中のB点の位置を示す。血管像の中心202に対応する図1中の位置は点107であり、脂肪部203に対応する位置は画素値が最も明るくなる点108である。そして、血管画素として点107に対応する画素を指定し、脂肪画素として点108に対応する画素を指定する。これらの領域から、それぞれの領域の画素値を得る。そして、図2における血管像の脇の脂肪部の明るさ207を脂肪画素の画素値とし、血管像の明るさ208を血管画素の画素値とし、その差209が血管像の強度であるとして評価する。これは、指標データとなり得るものである。
本実施形態では、血管像の画素値を評価する血管画素の位置と脂肪部の画素値を評価する脂肪画素の位置とが、血管の走行方向に対して略直交方向に離間している例を示す。ただし、血管像の評価方法としてはこの限りではなく、直交方向からずれていてもよい。また、血管像を評価する血管画素と脂肪部を評価する脂肪画素は大きくは離間しない位置に設定することが好ましい。例えば血管の画素値を評価する血管画素と脂肪部の画素値を評価する脂肪画素との間には、別の血管がその間に入らないように設定する。このことで、血管像とその最近接の脂肪部との画素値の差を評価できるため、散乱による背景光強度分布の影響を受けにくく、血管像強度を正確に評価しやすくなる。これは、血管画素と脂肪画素が近接している場合、仮に血管画素の血管が存在しないとするならば、血管画素の画素値と脂肪画素の画素値は近い可能性が高いと考えられるためである。生体は強散乱体であり、血管画素と脂肪画素の間が十分近接していれば、生体を透過してくる光の強度分布は散乱により空間分布が殆ど無くなっていると考えられる。従って、血管画素と脂肪画素との画素値の差異は、基本的には血管の有無による影響のみが現れているとみなせ、血管画素と脂肪画素との画素値の差が、血管像強度と考えてよいことになる。
しかし、血管画素と脂肪画素が離れるにつれて、生体を透過してくる光の強度が、血管の有無にかかわらず血管画素と脂肪画素でそもそも異なる可能性が高くなる。この場合、血管画素にある血管像強度は、血管画素の画素値と脂肪画素の画素値との差から乖離し、血管画素にある血管像強度を評価することが困難になる。
従って、血管画素と脂肪画素は大きく離間させず、血管像の幅よりも離れている状態で、なるべく近いことが好ましい。上記より、脂肪画素を設定する位置は、血管画素を通り血管画素が配置されている血管の走行方向と略直交する方向に伸ばした直線上であって、血管画素が配置されている血管とその隣にある血管の間にあって画素値が極大値を取る位置に設定することが好ましい。これは、明暗反転画像においては血管部が明るく脂肪部が暗くなるため、画素値が極小値を取る位置に脂肪画素を設定することに相当する。
また、予め数値計算などにより、人体の組織の散乱係数の典型値を基に光散乱を計算し、ある太さ、ある深さの血管像がどの程度ぼやけた透過像を示すのか見積もっておくことも好適である。例えば、深さ1mmにある血管像のボケは、厚さが1mmの脂肪部等の人体組織に相当する光散乱体の一方の面から点光源光が平行光束で入射し、他方の面から射出する光強度分布の空間的広がり(点像関数の広がり)の半値半幅から算出可能である。そして、このようにして見積もった血管像のボケよりも血管像の中心から離間した部位の画素値を、脂肪部の画素値とみなしてもよい。例えば血管像のボケの半値半幅が2mmと算出されれば、血管像の中心から2mm以上離れた点は脂肪部の位置になる画素であるとみなして脂肪画素を設定する。このようにして見積もった脂肪部の画素値と血管像の中心の画素値から、血管像の強度を評価することが可能である。
なお、実際の撮影画像から図2に相当するグラフを作成すると、グラフにノイズが重畳され、画素値が最大の位置、つまり脂肪部の位置が分かりにくい場合がある。ノイズは空間周波数が高い成分であることが多い。その場合には、例えば図2のグラフ或いは図2のグラフを生成する図1に示すような元の画像データからノイズを除去し、前記画素値が最大の位置を見出し、その位置に脂肪画素を設定し評価することは好適である。ノイズ抑制処理としては、例えばローパスフィルタやその他各種フィルタそして移動平均処理などが可能である。ただし、撮影画像内で観察目標としている健常血管や新生血管群などの大きさに相当する空間周波数成分の信号の減衰が生じないように留意する必要がある。或いは、図2のグラフのノイズ幅を別途評価しておき、血管像の間にある最大の画素値Lにノイズ幅Nを加えたL±Nの画素値を持ついずれかの画素から、脂肪部の位置を選択することも可能である。
ここで、撮影画像内の血管像のコントラスト評価について述べる。撮影領域の内に血管像を含むように注目領域(ROI:Region of Interest)を設定し、ROI内での最小画素値を求めれば、上記血管像のROI内でのコントラストを算出することが可能である。コントラストの評価式は例えば次の(式1)である。
(Ib−If)/(Ib+If) (式1)
(式1)のIbは基本的に血管像の画素値、Ifは血管像脇の脂肪部の部分の画素値であり、前述のようにそれぞれ血管画素、脂肪画素として設定した画素の画素値として取得する。血管像が明るく脂肪部が暗い場合はコントラストが正値、この逆の場合は負値を取るように定義する。但し、本件のコントラスト評価においては単純に画素値そのものを用いるのではなく、ROI内で最小値を取る画素の画素値を取得したうえで、そこからの差として算出する。図2で示せば、Ifは207に相当し、Ibは208に相当し、グラフの画像の明るさ=0の位置がROI内での最小画素値の画素位置に相当する。画像表示においてはROI内の最小値を画素値0として表示することで高コントラストな血管像が表示可能であり、好適である。上記の血管像のコントラスト評価は、血管撮影画像そのものにおいても定義可能であり、さらに後述の差分処理によって生成する血管像に対しても評価可能である。血管像の評価の仕方に依存して、適宜異なるコントラスト定義式を用いてもよい。また、処理の簡便化の為には、上記のようなROIを設定せず、画像全体の最低値を0としてコントラスト評価の処理をすることも可能である。本発明によれば、比較的広い領域における一括の画像処理が可能であるので、こうしたROIを複数設定してそれらを繋ぐと言った画像処理を必ずしも行う必要がない。
上記の血管像の強度やコントラストの評価に関し、被験者の血管の配置や撮影部位によっては、血管像の両側の脂肪部の明るさが異なる場合がある。例えば血管像を含む画像の画素値の分布が図3のような場合である。この場合、血管像301の強度は、例えば血管像の両側の脂肪部302と脂肪部303のうち、画素値が大きい方或いは小さい方を選択し、これと血管像の中心307の画素値304との明るさの差としてもよい。或いは、血管像の両側の脂肪部の画素値の割合で血管像を内分した位置の画素値を305とし、これと血管像の中心の画素値との高さの差306としてもよい。複数の血管像の強度やコントラストを評価する場合には、血管像の強度の算出方法を、前記複数の血管像に対して統一して適用することが好ましい。
さらに、被験者や撮影部位によっては、血管像の両側の脂肪部に該当する画素値の谷(明暗反転した場合)の位置が不明瞭な場合もある。その場合は、前述と同様に予め数値計算などにより、人体の組織の散乱係数の典型値を基に光散乱を計算し、ある太さ、ある深さの血管像がどの程度ぼやけた透過像を示すのか見積もっておくことも好適である。
また本実施形態では、血管像や脂肪部の画素値を評価する画素は1つであるとして説明するが、この限りではない。例えば血管画素や脂肪画素を複数画素で作る領域として血管や脂肪部に設定し、その領域の内の複数画素の画素値の平均をもって血管や脂肪部の画素値とすることも可能である。平均化することで、画像にノイズが含まれる場合にその影響を緩和することが可能であり、好適である。或いは、その領域の内の最大値や最小値を採用して評価することも可能である。
(複数の画像データからの異なる画像データ間で差分処理したデータである差分画像データを生成する工程の説明)
次に血管像の差分処理について説明する。本実施形態では、血管像の撮影条件が異なる複数の元画像同士の差分処理により、血管像の強調、高コントラスト化を目指す。撮影条件が異なる画像は、前述したように、例えば異なる時刻に血管を複数回撮影するなどして生成できる。また、一定時間、同じ血管を動画で撮影するなど、高速な連続撮影も好適である。
まず、元画像同士の差分処理の前に、撮影した元画像同士で血管像の位置合わせ処理を行うことが好ましい。これは、被験者の撮影部位が、撮影時間中に動くことがあるためである。被験者の撮影部位は、試料台に保持されていても、呼吸やその他の運動、或いは不随意な動きが発生する場合がある。例えば時間をあけて複数枚の画像を撮影する場合など、その時間間隔が大きいほど、撮影部位がカメラに対して移動する可能性が高くなり、画像毎に血管像の位置合わせが必要となる。
複数枚の画像内の血管像の位置合わせ方法は特に限定するものではない。例えば血管そのものや、指紋や皺、傷などを画像内の特徴点として用い、これらの特徴点を1つ或いは複数点用いて、画像間の平行移動や回転、倍率調整などを行って位置合わせすることが可能である。また特徴点は上記のように元々被験者に備わる特徴点に限るものではなく、撮影前に被験者の撮影部位の一部にマーカーを付与することも好適である。アフィン変換等による画像位置合わせを想定すると、マーカーは複数点付与することが好ましい。3点以上であって、且つ少なくとも3点が一直線上にはないことが好適である。
元画像同士の差分処理を説明する。例えば、元画像として血管画像が2枚ありこれらの差分処理を行う場合、画像同士の差分は一方の画像に係数kを乗じて差分処理を行うことが可能である。撮影した血管画像が3枚以上の場合は、少なくとも第一の領域又は第二の領域の一方の血流変動情報に基づいて選択した2つの画像データの組み合わせ、上記差分処理の係数k、そして引く順序に対応して差分画像を複数生成する。引く順序とは、画像A-k×画像Bで差分画像を生成するか、画像B-k×画像Aで差分画像を生成するか、である。係数を1にすることは、演算処理を簡便化し高速処理が可能となり好適である。係数を1以外の値に設定することも可能である。また、差分画像内或いは差分画像に対して設定したROI内の血管画素値や脂肪画素値、それに最小画素値に基づいて差分画像の血管像コントラストを算出し、この値が最大となるような係数の値を求めてもよい。なお、上述の工程で作成した複数の差分画像は処理部で保持し続けても構わない。或いは差分画像を作った元画像A、Bの組、引く順序、差分処理倍率の値などの、画像データに関連するデータセット(関連情報)のみを保持しておいて、他の工程で必要に応じて、再度、差分画像を生成してもよい。
また、差分処理は1枚ずつの画像同士で行う処理には限らない。例えば、画像に含まれるランダムノイズを抑制する為に、血管像を位置合わせした10枚の画像を平均化した画像Aを用意し、これとは別の10枚の画像を平均化した画像Bも用意する。そして、処理画像データである画像Aと画像Bの差分処理を行うことも好適である。画像の平均処理枚数は10枚に限るものではない。ノイズ低減効果を増大する為に、画像積算枚数を増加させる必要があることもある。ランダムノイズは積算枚数の平方根にほぼ比例して抑制される為、例えばノイズを1/10に抑制するためには、100枚の画像の平均画像を生成する必要がある。ノイズがショットノイズなどランダムノイズであれば、差分する元画像の両者における平均化処理枚数は等しく設定することも好ましい。平均化処理は撮影時刻が最近接である元画像同士を用いることも好ましい。或いは、連続撮影により生成した元画像である場合には、その連続した画像同士で平均化処理をした画像を複数生成することも好ましい。
上述の平均化処理を施した複数の画像同士で差分処理を行って血管像を抽出する場合、差分処理に用いる平均化処理済みの画像同士で同じ元画像を含まない(共通の画像データを持たない)ことが好ましい。つまり、例えば、元画像1,2,3で平均化処理した画像Aと、元画像4,5,6で平均化処理した元画像Bによる差分処理は好ましい。元画像2,3,4の平均化処理で画像Cを生成した場合、画像Aと画像Cとの差分処理や画像Bと画像Cとの差分処理も可能であるが、それよりも前者(同じ元画像を含まない差分処理)の方が好ましい。
以下では、動画撮影による複数画像撮影を行った場合を例に取って各工程を説明する。動画撮影を行った場合、フレーム毎に撮影時刻が異なるため、人体の状態の変動を反映し、異なるフレーム同士では同じ血管の像のコントラストや強度が異なっている可能性がある。これは、前述したように、被験者の拍動や呼吸、姿勢の変化など様々な原因で生じうる。駆血帯(カフ)などを装着し、外部から人為的に血流変動を生じさせることは好ましい。そして、血管像の強度が異なる2枚の血管画像を選択し、その差分処理を行うことで、高コントラストな血管像の抽出、或いは血管像強度の時間変化の抽出が可能である。上述した様に、2枚の血管画像は血流変動情報に基づいて選択された画像データを含んでいる。
複数の元画像同士の差分処理にて画像を生成する場合における、差分処理後の画像のうち、血管像コントラストが最も高い画像の選択について説明する。また、差分処理後の画像の血管像コントラストを最も高くするような複数の元画像の組及び差分処理倍率の選択方法について説明する。ここでは、撮影領域内にROIとして、関節及び動脈(又は静脈又は新生血管群)を含む領域を設定するものとして説明する。
例えば図4に示すように、複数の元画像、及びそれらの差分処理により生成される差分画像に対し、ROI内に関節405と関節406との少なくとも一方を含ませ、血管像強度を評価する血管404を少なくとも1つ指定する。そして、その血管上に位置する血管画素と、この血管画素の近傍の、前記血管から離間した脂肪画素を設定し、この領域の画素値を取得する。図4の例では、血管画素401、脂肪画素402、ROI403をそれぞれ示す。異なる複数の画像のうち、差分画像を生成する為に用いる2つの画像をここでは第一の画像、第二の画像と呼ぶ。それらは、動画撮影した複数のフレームから血流変動情報に基づいて選択する2枚の画像、或いは血流変動情報に基づいて選択された複数のフレームからなる各組に対して前述の平均化処理などを施して生成した2枚の画像のことを指すものとする。
人体の血流変動が生じると、血管部分の光吸収が変動する。例えば前述のカフのような器具で上腕部の血管を圧迫すると、特にカフよりも心臓から遠い側の手や指などで血流が変化する。従って、血管部の血流変化を抽出する為には、前記血管画素の画素値を、異なる時刻において撮影した画像同士で比較すればよい。異なる時刻の画像は連続写真撮影でも取得可能であり、動画撮影を行えば、その各フレームの画像として取得可能である。例えば、血管像の画素値が最も大きく異なる2枚の画像を選択し(これらの血管画像は血流変動情報に基づいて選択)、これらの2枚を差分処理することで、差分処理後の血管像の強度を最も大きくすることが出来る。また、基本的には脂肪部に相当する脂肪画素の画素値をなるべく引き切り、そして血管像強度がなるべく大きくなるような元画像の組及び後述の差分処理倍率kを選択することで、差分処理後の血管像のコントラストを大きくできる。このとき、差分処理後の画像の脂肪画素の画素値が、差分処理後の画像のROI内の最小画素値と大きく違わないことが、血管像のコントラスト増大に好適である。
しかしながら、本発明者は、血流変動による画素値の変動は血管部のみならず、脂肪部についても生じ得ることを見出した。また、脂肪部の画素値変化も場所毎に異なりばらばらであることも見出した。これは、脂肪部にも、非常に微細な毛細血管が存在し、その結果、僅かながら血液や血流が存在する為であると考えられる。
脂肪部の画素値の変化は、血管像のコントラストに強く影響する。ここで、透過撮影画像を明暗反転するなどの処理を施した画像、或いは適切な元画像の組と差分処理倍率との選択による差分画像においても、血管像が明るくなり脂肪部が暗くなる画像を生成可能である。このような画像では最小画素値が脂肪部にあることが多い。画像内或いはROI内の画素値分布をフルスケールに割り付けて表示することで、画像内或いはROI内の血管像を高コントラストに且つ見易く表示可能である。そのため、この表示の場合の血管像コントラスト値は、血管画素(血管部)の画素値と最小画素値との差、及び前記血管の近傍に設定した脂肪画素(脂肪部)の画素値と最小画素値との差、によって決定される。従って、画像内或いはROI内の最小画素値が血管像コントラストに影響を及ぼすため、前記脂肪部の画素値やその時間変化に依存した最小画素値を考慮して、元の画像やこれらの差分処理で生成される差分画像のコントラスト評価を行うことが重要である。
例えば、差分画像において、最小画素値を考慮せず、血管画素の画素値と脂肪画素の画素値を差分画像における画素値そのものとして算出した場合、(式1)のコントラスト値は算出可能ではある。しかし、最小画素値が負値になっている可能性もある。ここで、通常の画像表示では画素値が負値の場合は画素値=0つまり真っ黒として表示されてしまう為、画像上には何も表示されないことになる。つまり画像情報が欠落してしまう。上記血管画素や脂肪画素の画素値は正値であっても、負値の画素値があることは好ましくない。このような情報の欠落を回避するため、最小画素値が0となるように画像内或いはROI内の全画素に或る値を加えるなどして、画素値が全て0以上になるようにして画像表示を行う。例えば最小画素値を0とした場合、前述のように最小画素値を考慮しなかった場合の血管像コントラストと異なるコントラスト値になるが、情報欠落を避けつつなしうる最大のコントラスト値となる。従って、差分画像や元の撮影画像において、血管像コントラスト評価は、画像内或いはROI内の最小画素値を0とした場合のコントラスト値を用いる必要がある。最小画素値は、前述の脂肪部の画素値に時間変化が生じ、しかもその変化がばらばらであることから推測は困難であり、生成した差分画像毎に逐一把握しておく必要がある。
前述の通り、人体には大動脈、動脈、細動脈、大静脈、静脈、細静脈、毛細血管が存在する。上記のように、脂肪部においても画素値の変化が生じることから、脂肪部に静脈や動脈が見えなくとも、毛細血管による血流が存在していると考えられる。従って、脂肪部であっても、動脈や静脈の血流変動と同様に毛細血管の血流変動が生じうると考えられる。また、静脈や静脈と比較して毛細血管はその太さが非常に細いため、血管を流路とみなすと、その圧力損失が大きいと考えられる。従って、細い血管程、拍動などの内的要因や駆血帯等の使用による外的要因による血圧変動を原因とする血流量の変動が小さいと考えられる。これにより、脂肪部と動脈や静脈とでは血流変動による画素値の変化が大きく異なると考えられる。或いは、太い血管と細い血管では血液等の流体が受ける抵抗の大きさが異なるため、血流変動が生じる際の、血流と時間の関係も血管の太さに依存する可能性がある。例えば、血管の太さに依存した時間的な変動特性の違いを抽出すれば、血管を太さ毎に分けて抽出することも可能である。
ここで、以上の点を踏まえて、図7を用いて差分処理による画像の生成、血管像コントラスト、それに基づく差分画像の選択の例についてまとめて説明する。第一の画像の血管画素の画素値をα1、第二の画像の血管画素の画素値をα2、第一の画像の脂肪画素の画素値をβ1、第二の画像の脂肪画素の画素値をβ2とする。そして第一の画像の最低画素値をd1(不図示)、第二の画像の最低画素値をd2(不図示)とする。なお、第一の画像及び第二の画像(2枚の血管画像は血流変動情報に基づいて選択)は共に血管像が明るく脂肪部が暗く表示されている画像であるものとする。このような、血管が明るく脂肪部が暗くなる画像は、通常の透過撮影結果を明暗反転処理することで生成可能である。上述のように血管像のコントラストを評価した結果、第一の画像或いは第二の画像においてコントラスト値が負値になる場合には、血管像が暗く脂肪部が明るく写っている画像であると認識し、その画像を明暗反転すればよい。明暗反転処理とは、画像内の各画素値を、フルスケールの半分の値に対して反転させる処理である。
以下では、差分画像及びこれを生成する第一の画像及び第二の画像は、全て血管像が明るく、脂肪部が暗く表示されている画像(コントラストが正値を取る)に統一して説明する。
第一の画像701と第二の画像702との差分処理によって差分画像703を生成する。これらの関係を図7に示す。第一の画像の血管像のコントラストは次の(式2−1)で示される。
{(α1−d1)−(β1−d1)}/{(α1−d1)+(β1−d1)}
(式2−1)
同様に第二の画像の血管像のコントラストは次の(式2−2)で示される。
{(α2−d2)−(β2−d2)}/{(α2−d2)+(β2−d2)}
(式2−2)
また、第一の画像と第二の画像の一方に差分処理倍率k(正の定数とする)を乗じて、これらの差分処理により生成される差分画像のコントラスト値は、次の(式2−3)で示される。ここで、前記差分画像における血管画素の画素値をα3、前記差分画像における脂肪画素の画素値をβ3、そして前記差分画像の最低画素値をd3(不図示)、とする。
{(α3−d3)−(β3−d3)}/{(α3−d3)+(β3−d3)}
(式2−3)
上記(式2−3)の差分画像のコントラスト値に基づき、出力画像としてどの差分画像を選択するか決定する。本実施形態を含む本発明の一側面では、撮影した複数の元画像(画像は血流変動情報に基づいて選択)の差分処理によって、血管像を高コントラストに抽出することを目的としている。
少なくとも第一の画像或いは第二の画像(すなわち元画像の中のもの)よりもコントラスト値が高いような差分画像を出力画像として選択することが好ましい。或いは全ての元画像のコントラストよりもコントラスト値が高いような差分画像を選択することも好ましい。この場合、元画像のコントラスト評価は、元画像のうち血管像コントラストが正値のものはそのままコントラストを評価し、コントラストが負値のものは画像を明暗反転処理した後に再度コントラストを評価する。差分画像はコントラストが正値になる画像のコントラストを評価する。さらに、得られた全ての差分画像よりもコントラスト値が上回る元画像がある場合には、元画像を出力画像として選択することもできる。また、上記のコントラスト評価は、第一の画像や第二の画像が、1枚ではなく複数枚の元画像で平均化処理などを行って生成した画像である場合なども同様である。
このとき、倍率kの値の探索は広い数値範囲で行うことも可能である。しかし、倍率kの値が極端に大きい或いは極端に小さい値になる場合、生成される差分画像が実質的に差分処理に用いる一方の元画像に近いものとなる為、血管像のコントラストも元の一方の画像のコントラストと大差ない値になる可能性が高い。本発明者が見出したところによると、人体の撮影条件が異なる画像同士、例えば撮影時刻が異なり血流が異なる画像同士を比較しても、或る部位の画素値の変動は典型的には2倍以内で収まっている。従って、前記kの探索範囲としては0.5〜2.0の間であれば十分であり好適である。また、血管像の画素値は大きく変動するものの脂肪部の画素値は大きく変動しない場合もありうる。例えば撮影時刻が近い2つの画像の比較ではそのようなことが生じうる。脂肪画素値が大きく変動していない元画像同士での差分処理は、前記kの探索範囲は0.9から1.1の間でも、差分画像の血管像コントラストを大きくすることが可能である。
また、第一の画像及び第二の画像、そして差分画像のコントラストを評価し比較する際には、血管像が明るく写り脂肪部が血管像よりも暗く写っている画像に統一することは、血管像の見易さの観点から好ましい。コントラストを比較する際にも、画像同士で血管像の明暗表示を揃えることは好ましい。それは、同じ画像であっても明暗を反転するとコントラストが変化する為である。通常の血管透過撮影では、血管は光吸収体であるため血管像は暗く写り、脂肪部は明るく映し出される。血管像が明るく写り脂肪部が暗く写っている画像は、通常の透過撮影画像を明暗反転すればよい。
また差分画像の場合、差分処理に用いる元の画像の選択や差分処理倍率kの値によって、血管像が白くなり脂肪部が暗くなるか、或いは血管像が暗くなり脂肪部が明るくなるかのどちらの状況もありうる。従って、差分画像の場合も、血管像が明るく脂肪部が暗く写っている画像を選択することは好ましい。
出力画像は、上述のように選択された差分画像を用いる。そして、最小画素値を0にするように全画素に対し同じ値を加え、最大画素値は表示可能な最大値となるように全ての画素に対し同じ倍率を掛けて生成した差分画像とする。このようにすることで、生成する出力画像は、いわゆる白飛び、黒つぶれを抑制でき、高コントラストになる為、好ましい。
また、下記の(式3)の値を最大にするような、第一の画像と第二の画像を選択する場合、差分画像の血管像強度を最も大きくすることが可能である。
|(α1−k・α2)−(β1−k・β2)| (式3)
式3の血管像強度を最大にするような第一の画像、第二の画像の選択及び差分処理倍率kの選択により、血管像の高コントラスト化も同時に達成される場合もある。差分画像における血管像のコントラスト値は、式3で表される血管像強度が大きいほど高い。この時、最低画素値が上記血管像強度を評価する血管の近傍の脂肪部に対応している場合、上記式3で表される血管像強度が最大になる第一の画像、第二の画像、差分処理倍率kの選択により血管像コントラストも最大になる。ただし、常に差分画像の最低画素値が上述のようにコントラストを評価する血管の近傍の脂肪部に対応しているとは限らない。
また、(式3’)の血管像コントラストCを最大にするような、第一の画像と第二の画像を選択することで、差分画像の血管像コントラストを最も大きくすることが可能である。
C={(α1−k・α2)−(β1−k・β2)}/{(α1−k・α2)+(β1−k・β2)} (式3’)
後述するように、適切な差分処理倍率kを定めることで、差分画像における血管像を高コントラスト化することが可能である。また、或る画素値に注目した場合、カメラノイズや電気的なノイズなど、フレーム毎に値が変動するノイズが画像に重畳される場合がある。従って、血管像強度の評価式の例である(式3)を最大にするフレームの選択の際には、各画素値にノイズが重畳されていることを考慮することも好ましい。例えば、(式3)の値を最大にする第一の画像と第二の画像を選択した場合の(式3)の値をVとする。この際、別途、各画素値に重畳されるノイズを評価しておき、その値をNとする。このとき、値Vには±N程度のノイズによる誤差を含むと考えることが出来るため、(式3)の最大値がVであると算出された場合、実際上は(式3)の値がV−N以上であればほぼ最大値であるとみなすことが可能である。
従って、(式3)を最大とする第一の画像と第二の画像の選択は、(式3)の値をV−N以上とする第一の画像と第二の画像を選択することで可能である。この場合、第一の画像或いは第二の画像の候補が複数ある場合には、それらの画像のうち何れかの画像を第一の画像及び第二の画像として選択してもよいし、或いはそれらの画像を平均化処理等した画像を別途生成してもよい。また、或る画素が持つノイズ値Nの評価方法は、例えば同じ波長で動画撮影する場合には、特定画素の画素値のフレーム毎の変動から読み取ることが可能である。動画撮影を数10fpsから数fps程度の速さで行えば、フレームレートは人体の血圧変動や拍動などと比して十分高速である。従って、或る画素値にフレーム毎に重畳される高速な画素値変動はノイズであるとみなすことが可能である。この画素値変動の標準偏差や振れ幅を評価し、ノイズ値を算出することが可能である。或いは、例えばダークノイズや光ショットノイズ、その他特定のノイズがノイズ信号の主要因である場合には、それらのノイズ値を別途計測しておき、その値をノイズ値として用いてもよい。
或いは、血管画素の画素値や脂肪画素の画素値のフレーム毎の変動を計測し、ローパス処理などを施して時間的な高周波成分を除いて、低周波成分の評価により、上記(式3)あるいは(式3’)の値を最大とする第一の画像及び第二の画像を選択してもよい。血管画素、脂肪画素を近傍の複数画素で構成される領域として、この中で画素値を平均化した値を評価することも好適である。ノイズ値が時間的に或いは空間的にランダムに発生する場合には、画素値を近傍の画素同士で平均すればノイズの影響を緩和することが可能である。その場合、ノイズ幅は、平均化処理に用いた画素数Mの平方根にほぼ逆比例してN/√Mに減少する。
定数kの値は、1とすることで演算処理を簡略化し高速処理を可能とすることも好ましく、また2つの画像の脂肪部の画素値を揃えるようにすることも好ましい。例えば画素値を揃える脂肪部として上述の脂肪画素(β1、β2の画素)を選択する場合、k=β1/β2と設定することが可能である。この設定により、上記の(式3)の最大化により差分画像を生成した場合、差分画素の血管像周囲の脂肪部の画素値を0にできる為、高コントラストな血管像の生成に好適である。しかし最小画素値が負値になっている場合があるので、最小画素値を確認しておくことが好ましい。負値になっている場合は最小画素値が0になるように、全画素の画素値に或る値を加える処理を行うことが好ましい。
また、注目する関節近傍に発生する新生血管群を差分処理により抽出する場合、新生血管群の位置とそのすぐ脇の脂肪部に上述の血管画素、脂肪画素を設定することで最適なフレームを選択することが可能である。血管画素や脂肪画素を設定するのは本装置の使用者であってもよい。ソフトウェアを用いて画像内のどこに動脈や静脈或いは新生血管群があるのかを自動判定し、適宜、血管画素や脂肪画素を自動設定することも好適である。例えば棒状の画像を動脈や静脈とみなす、或いは、一度被験者を撮影した画像を用いたパターンマッチング等の技術により、1回目の撮影画像の血管位置・形状情報を用いて2回目以降の撮影画像に含まれる血管像を認識することも可能である。
また、差分処理などを施す前の単純な撮影画像においては、新生血管群は淡く見えにくい可能性もあり、このような状態の画像では、新生血管群に血管画素を設定しその近傍の脂肪部に脂肪画素を設定することは難しい可能性がある。この場合、まずは注目する関節近傍にある動脈又は静脈に対して血管像の抽出処理を施して画像を生成することが好適である。この抽出画像には、差分処理を行う前のそれぞれの元画像と比較して、新生血管群が見易く抽出されている可能性がある。これは、前記新生血管群と動脈又は静脈が近い部位に存在している場合、血流変動が生じるタイミングも互いに似通っている可能性が高いためである。
次に、手全体や足全体など、複数の関節を含む広い領域を同時に撮影し、複数の関節近傍の血管像または新生血管群の像を取得する場合について説明する。例えば指先の関節と手首の関節など、離れた位置にある部位同士では、或いは同じ指の異なる関節同士でも、血流変動のタイミングを含む時間的な様態が同一ではない或いは類似していない可能性があるが、本実施形態ではこれを類似させている。これにより、或る関節の近傍の血管に着目して、差分処理の結果、血管像の強度が最も大きくなるフレームや差分処理倍率kを選択すれば、他の関節についても最適なフレーム選択や差分処理倍率である可能性が高くなる。これは血管像コントラストについても同様であり、或る血管像のコントラストを最大化するフレームの組や差分処理倍率kと、他の血管像のコントラストを最大化するフレームの組やkが同様になる可能性がある。
従って、差分処理画像において、1つの広い注目領域全体の血管像を、第一の画像と第二の画像と差分処理倍率kの1つの組み合わせで高コントラスト化することは困難であるという課題が克服される。こうして、複数の血管を含む広い領域で、血管像が高コントラストである差分画像を生成することができる。
本発明によれば注目領域ROIは必ずしも設定する必要は無いが、ROIを設定する場合について説明する。注目領域ROIは、使用者が予め設定することも可能であるし、或いはコンピュータで自動設定することも可能である。注目領域を大きく設定するほど、注目領域の内での脂肪部の画素値の時間変動が不均一になり、場所毎にバラバラに変動する可能性が高まる(ただし、これは本発明により解消可能である)。従って、注目領域が大きいほど、差分処理にて注目領域の内の脂肪部を引き切り血管像のみを抽出しにくくなり、注目領域の内の血管像コントラストの低下する可能性が高まる。そこで、予め血管像コントラストの目標値Cdを設定しておく。そして注目血管を含む或る領域を注目領域として設定する。この状態で注目血管のコントラストを最大化する為の、差分処理をする元画像としての第一の画像及び第二の画像、そして差分処理倍率kの組を探し、注目血管のコントラストCを算出する。ここでCがCdよりも大きい場合には、新注目領域を予め設定されていた初期注目領域よりも広く設定し直し、同様に血管像コントラストを最大にする第一の画像、第二の画像、差分処理倍率kの組を算出する。この操作を繰り返すことで、注目血管のコントラスト値が目標値Cdを維持しつつ最大の注目領域を設定可能となり、好適である。この、一連の操作である注目領域設定、血管像コントラスト最大化を実現する画像選択、及び注目血管のコントラスト算出の工程をコンピュータにて実行することは、処理高速化の為に好適である。
また逆に、CがCdよりも下回っている場合には、予め設定していた注目領域よりも狭い注目領域を設定し直し、再度血管像コントラストを算出し直すことも好適である。また、上記の画像の差分処理は1枚の画像同士の差分処理ではなく、各々の画像が例えば複数枚の平均画像であってもよい。この場合、平均処理をする画像の選択は、例えば、1枚同士の差分処理の場合に最も好適であるとして抽出したフレームを含む前後のフレームを用いることは好適である。例えば、最も好適なフレームを含み、それよりも時間的に早い側のフレームを、或いは遅い側のフレームを選択してもよい。或いは好適なフレームを含む前後の時間帯のフレームであってもよい。
平均化処理の枚数は差分画像を見ながら装置使用者が設定することも可能であるし、血管像の強度を信号値とし、ノイズ値をランダムノイズ値としてS/N比を評価し、S/N比が予め設定した値以上になるように処理装置で設定する事も可能である。さらに、血流変動を生じせしめる為に例えばカフなどの器具を用いる場合など、器具の動作時刻と撮影画像の取得時刻を対応付けする機能を有することも好ましい。これは、画像が撮影された時刻を正確に知るためだけでなく、外的な血流変動要因に対して人体の血流が応答するまでに遅延が生じる可能性があり、血管像の抽出に最適なフレーム選択のために有用な情報になるためである。また画素値の変動のデータからは、計測データが含むノイズや人体の応答の再現性の低さなどにより、カフなどの器具の動作時間が推測困難なためでもある。さらに器具の作動から撮影部位の血流が変化するまでの時間も、部位によっても異なる可能性があるので、上記対応付けする機能は最適なフレーム選択に好適な機能である。また、差分処理をする2つの画像の取得時刻が、カフによる血管圧迫などで血流変動を生じさせる時刻と同じ時間関係にあるような撮影を複数回行って結果を比較する場合にも、有益な情報であり、前述の機能は好適である。
次に、複数の部位の血管像を撮影し血管像を抽出する場合について述べる。先ず、本実施形態を含む本発明の特徴点を説明する。本発明者が検討したところ、人体に対し、例えば外的要因で、大きな血流変動を生じさせた場合、異なる部位において脂肪部の血流の時間的変化の様態が類似することが分った。つまり、前記脂肪部の局所的な血流変動の影響を緩和できていると考えられる。例えば、駆血帯(カフ)などを上腕に装着し、圧力を印加あるいは解放することで、腕から手や指において急激で大きな血流変動が生じる。このとき、例えば同じ指の異なる関節において略同時に血流の大きな変動が誘起される。これは、次のことを意味すると考えられる。すなわち、上腕の印加圧力の変動により生じた大きな血流変動は、それより末端の各部位への血液供給血圧を大きく変動させる。そのため、例えば指の各部位の毛細血管の上流にある細動脈にかかる血圧が同時に大きく変動し、これを受けて、各部位の細動脈が更に末端の毛細血管の血流を制御する為と考えられる。
そこで、指全体等の広い領域で差分画像における血管像を明瞭化する為には、前述の様に大きな血流変動を生じさせ、広い領域の脂肪部の血流変動の様態を類似させ、差分処理にてどの位置の脂肪部も同様に引き切りやすいフレームを作れば良いことが分かる。脂肪部の時間的変化様態が異なる位置で類似していれば、例えばどの位置の脂肪部もフレームAとフレームBでの画素値の比が1.05倍である、といった状況が生じるからである。このようなフレームを生じさせる時間が、上述の大きな血流変動が生じているときである。
大きな血流変動は必ずしも外的な要因によるものに限らない。結果的に手などの撮影部位全体の血圧が同時に大きく変動することが生じれば良い。例えば、撮影部位が左手である場合にこれと反対側の右手を軽く上げ下げさせるなどして、被験者に軽度の負荷を与える。この負荷により、前記右手を動かしたときに心拍数や血圧が大きく増大する可能性があり、これは、結果的に撮影部位である左手全体に供給される動脈血の血圧を大きく変動させることに繋がる。大きな血流変動は、血管やその近くの脂肪層(撮影部位の一領域)の透過率の急激な透過率変化、透過光量変化として検知することが可能である。つまり透過率変化、透過光量変化、あるいは前述の駆血帯による血流変動の生成タイミングの情報等を用いて、血流変動情報を得ることが可能である。
しかし、この大きな血流変動は限られた時間内でしか持続しないことも、本発明者の検討により明らかになった。つまり、異なる部位の脂肪層の血流変動の様態が類似しているのも、或る限られた時間内である。例えば手指の場合、この時間は1分程度以内である。この持続時間の要因は下記のように考えられる。指に血液を供給する太い血管は、粗い近似では、指の中を指の根元から先端に向けて走行している。今、簡単化のために指の太い血管は1本であると考えて、この1本の血管から供給される血液が指の毛細血管内を伝搬し指全体に行き渡る時間を考える。指の血管は指の長手方向(指の根元⇒指先)に通っているので、指の毛細血管への血液の供給あるいは指の毛細血管内に血液が行き渡る伝搬方向は、指の太さ方向に近似できる。
毛細血管内の血流速度は凡そ0.3mm/秒から1.0mm/秒であることが知られている。一方で手指の太さは凡そ20mm程度であるから、指の毛細血管内の血流が指の太さ方向に伝搬する時間は凡そ20秒から60秒(1分)である。このことより、毛細血管内の血流伝搬速度と撮影部位の大きさの関係が、血圧変動に伴う血流変動の指内での持続時間を決めていると考えられる。つまり、或る部位での大きな血流変動の持続時間は、その部位の差し渡しの距離を毛細血管の血流速度で割った値の時間程度となる。また太い血管が複数本存在する場合には、その血管間の距離を毛細血管の血流速度で割った値程度の時間になると考えられる。したがって、指全体などの広い部位、領域における血管像のコントラストが高い画像を得る為には、差分画像を作るフレームは、前述のような大きな血流変動の継続時間内に撮影された画像、フレームを用いることが必要である。
なお、大きな血流変動の継続時間では脂肪部の透過光量の時間変化も大きい為、透過観察における画素値変化(時間微分値)が大きい時間として判定することも可能である。したがって、血流変化が大きい時間のフレームとして透過観察の画素値変化が急激で大きいフレームを採択することも可能である。或いは、所定の透過光量変動値の閾値を設定し、これを超える透過光量変動を大きな透過光量変動であるとして、血流変動が大きな時間を検知することも可能である。人体の呼吸は成人で20回/分程度であるから、3秒以内に急速に透過光量が大きく変動する場合は急激な血流変動であるとみなせる。3秒程度であっても平常時の透過光量変動よりも有意に大きな透過光量変動を示せば、そのときが大きな血流変動の生じている時間であるとみなせる。
以上のように、血流変動が大きな時間のフレームでは、撮影領域内では広い領域で血流変動が略同時に生じているため、脂肪部の局所的な血流変動が少なく、広い領域における脂肪部の画素値の2つのフレーム間での比が空間的に略均一になることが期待できる。そして、このような血流変動を生じさせた上で、差分画像のフレームの組み合わせと差分処理倍率kの値を決定する。
これらの決定法としては、例えば以下の方法がある。差分画像内の広い単一の注目領域内に複数の注目血管を設定し、これら複数の注目血管の差分画像におけるコントラストをそれぞれc1、c2、…、ciとする。上記血流変動の継続時間内のフレームを用いた差分画像において、これらの注目血管のコントラストを算出し、それらの平均コントラストを最大化するフレームの組と差分処理倍率kを選択して、決定することが可能である。あるいは、最低コントラストの血管像コントラストを最大化するようなフレームの組と差分処理倍率kを採用することも可能である。
第一の画像と第二の画像(フレームの組)の選択、倍率kの設定は、上述のような各血管像のコントラストの平均値や最低コントラストの血管像によって決める手法に限るものではない。例えば各血管像のうち何れかのコントラストが極端に低下することが無いように、各血管像のコントラスト値のバラつきを標準偏差などの値を用いて評価することも可能である。例えば目標とする基準コントラスト値Ciを予め設定し、各血管像のコントラストの、前記Ciからのバラつきを標準偏差で表し、その標準偏差を最小化にするようにフレームの組の選択、倍率kの設定を行う。このように複数の血管像を同一条件で高コントラストに抽出する条件を設定することで、撮影対象のなかの広い部位の血管像を高コントラストで描写することが可能となる。
上記の画像の差分処理は1枚の画像同士の差分処理ではなく、各々の画像が複数枚の画像の平均画像であってもよい。この場合、平均処理をする画像の選択は、例えば、1枚同士の差分処理の場合に最も好適であるとして抽出したフレームを含む前後のフレームを用いることは好適である。例えば、最も好適なフレームを含みそれよりも時間的に早い側のフレームを、或いは遅い側のフレームを選択しても良い。或いは好適なフレームを含む前後の時間帯のフレームであってもよい。平均化処理の枚数は差分画像を見ながら使用者が設定することも可能であるし、血管像の強度を信号値としノイズ値をランダムノイズ値としてS/N比を評価し、S/N比が予め設定した値以上になるように処理装置で設定することも可能である。
また、血流変動を生じせしめる為にカフなどの器具を用いる場合などは、器具の動作時刻と撮影画像の取得時刻を対応付けする機能を有することが好ましい。これは、画像が撮影された時刻を正確に知るためだけでなく、外的な血流変動要因に対して人体の血流が応答するまでに遅延が生じる為、血管像の抽出に最適なフレーム選択の為に有用な情報となるためである。また画素値の変動のデータからは、計測データが含むノイズや人体の応答の再現性の低さなどから、カフなどの器具の動作時間が推測困難となる場合があるためでもある。さらに器具の作動から撮影部位の血流が変化するまでの時間も、部位によって異なる可能性があるので、最適なフレーム選択に好適な機能である。また、差分処理をする2つの画像の取得時刻が、カフによる血管圧迫などで血流変動を生じさせる時刻と同じ時間関係にあるような撮影を複数回行って結果を比較する場合にも、有益な情報であり、前述の機能は好適である。
例えば、カフによる圧迫の開始とカフによる圧迫の解放に応じて、画像の一領域の輝度値が変化していることが確認できる場合は、その情報を用いる。通常、カフ圧迫開始のタイミングで輝度値が増加(光の吸収が減少)し、カフ解放のタイミングで輝度値が減少(光の吸収が増加)する。カフによる輝度値の変化態様は、注目する位置の画素が血管部位かバックグランド部位かに依らず、ほぼ同じように変化することもある。カフによる血流の変化は、血管の吸収コントラスト変化として現れるが、バックグランドの吸収コントラストにも影響が及ぶことがある。輝度値の時間微分値が所定の閾値より大きい変化範囲のフレームを差分処理のために選択することが考えられる。
次に、血管像コントラストを評価する血管像の位置について更に述べる。先述のとおり、近くに存在する動脈又は静脈と新生血管群はその血流の時間変化の様態が類似していると考えられる。よって、或る位置にある動脈又は静脈の血流の差が大きい第一の画像、第二の画像、倍率kを選択すれば、その近くの新生血管群の血流の差も大きいことが予測される。つまり、或る関節近傍の新生血管群の抽出のためには、関節近傍の動脈又は静脈の血管像コントラストを評価し、その血管のコントラストが高い差分画像を選択することが好ましい。また、そのような差分画像を生成する第一の画像及び第二の画像、倍率kを選択することは好ましい。
また、関節近傍の動脈又は静脈の場合、そのすぐ近くに新生血管群が存在するか、或いは新生血管群が撮影光学系の光軸方向に重なって存在する場合も考えられる。このような場合、動脈又は静脈像の強度を評価する際に動脈又は静脈脇の脂肪部であるとみなしている部分に新生血管群が存在している可能性がある。その場合、前記複数の画像における動脈又は静脈像の強度変化量は、新生血管群の画素値の変化分が差し引かれた小さな変化量しか検出できない可能性もある。従って、或る関節に新生血管群が存在する可能性が高いと考えられる場合、その新生血管像の抽出に最適な画像の選択および評価をするためには、その関節の近傍には無い動脈や静脈の血管像コントラストを評価することも好適である。また新生血管群のコントラストを向上させる為には、関節近傍にない動脈又は静脈においてそのコントラストが高くなるような第一の画像及び第二の画像、倍率kを選択することも好ましい。
新生血管について更に説明する。新生血管群は吸収が弱く淡い為、差分処理前の画像では見いだせない可能性もある。この場合、まず一度、動脈又は静脈に関して差分画像の血管像強度が最も大きい差分処理画像を生成する。この操作により、新生血管群像も抽出され見易くなっている可能性がある。そこで、新生血管群が見出されたならば、新生血管群の像強度を評価できるように再度、画素値を評価する点を新生血管群の上と新生血管群の周辺の脂肪部に設定し直すことが可能である。そして動脈又は静脈の場合と同様に、新生血管群の抽出に最も好適な差分画像、或いは元画像の組や差分処理倍率kを選択することも好適である。
また、新生血管群は、大動脈、動脈、細動脈、大静脈、静脈、細静脈、毛細血管などの、常に人体に存在する血管とは構造が異なる。このためこれらの血管と同じように圧力が印加されても、その際に生じる血流変動の大きさや速さなどは異なる可能性がある。例えば動脈や静脈の血流変動から少し遅れて新生血管群の血流変動が生じる場合などが考えられる。また、見掛け上近くに存在する動脈や静脈と新生血管群とであっても、それぞれの心臓或いはカフなどの血流変化手段からの距離が異なる可能性も高い。このため、むしろ新生血管群の血流変化の方が早く生じる場合もありうる。従って、動画撮影などにより血管像を時間的に多数枚取得している場合には、差分処理により動脈又は静脈を抽出し最も見易くするフレームの組の近傍のフレームから、その前後で新生血管群抽出に好適なフレームの組を探索することも好適である。
適宜時点で処理を終了してもよいことについて説明する。撮影作業が進行し画像データが取得されるのに伴い、逐次取得画像を処理し、取得画像から選択される複数の画像に対し前述の(式2−1)、(式2−2)、(式2−3)に従ってコントラストを評価する場合もある。この場合、評価した値が或る値以上に到達した時点(つまり所定の条件が満足された時点)で撮影を終了することも好適である。或いは撮影終了を通知する機能を有することも好ましい。この機能により必要最小限の撮影時間で被験者の撮影を終了できる可能性があり、本装置の使用者や被験者の負荷の増大を回避可能であり好適である。
また、(式2−1)に基づいて血管像の強度を評価し、或る値以上になった時点で撮影を終了する機能を有していてもよい。差分画像における血管像のS/N比を大きく保つには、差分画像の血管像強度が大きな値であることが好ましいため、予めノイズ値Nを計測しておくことで、所望の血管像強度或いはS/N比に到達した時点で計測を終了する機能を有していてもよい。これは、コントラストを評価する血管像が1つの場合だけでなく複数の血管像を評価する場合でも同様である。複数の血管像のコントラストの平均値や最低コントラストの血管像のコントラスト値などが、或る値以上になった時点で計測を終了する機能を有していることも好適である。
カフを用いた撮影フローとして「平常時の撮影⇒カフ締め付け状態での撮影⇒カフ締め付け解放状態に戻して撮影」というステップが想定される。その過程で、時間が経過するにつれて撮影フレーム数が増大していく。撮影フレーム群から差分画像を生成する際、全てのフレームを撮影し終わった後で差分画像を生成する、という方法がある。また一方で、撮影フレームが増えていく過程でリアルタイムに差分画像を生成していく方法もある。上記適宜時点で処理を終了する方法は、次の如き意図で行われる。即ち、撮影が進行する過程で、逐次“その時点で既に取得している撮影フレーム”同士の組み合わせで作れる差分画像を生成する。そして、これらの差分画像の中で所望のコントラストを達成している画像があれば、その時点で撮影フローを終了するのでも良い、ということである。
以上の処理を経た後の最終的な出力データの生成方法には、取得した複数の画像データから単一の画像同士を選択して処理して生成する方法がある。この他に、前記選択した単一の画像と撮影条件が近い他の画像に対して、平均化処理等を施した処理画像を別途生成し、これらの処理画像同士を演算して最終画像を生成することも可能である。近い撮影条件とは例えば撮影時刻が近い、或いは撮影波長が近いことなどが挙げられる。さらに、撮影した複数の画像データに対して予めノイズ除去処理や画像同士での平均化などを行った処理画像群を作成しておくことも可能である。そしてこれらの処理画像群の中から複数の画像を血流変動情報に基づいて選択し前記第一の画像及び第二の画像とし、これらの画像及び倍率kを用いて最終的な差分画像を生成し血管像を抽出することも好適である。
本実施形態により、血管形状や位置などの把握が容易な、生体内散乱光を抑制した血管画像を生成することが可能となる。ただし、本装置での出力は画像に限るものではなく、画像データから或る情報を抽出した結果や疾患の判定値などでも良い。例えば、画像データ内のある線分上の画素値やその分布をグラフ化したデータなどであってもよい。
或いは、特異的なデータや特定の特徴を持つデータの有無などの検出結果であっても良い。例えば、関節などのある領域を撮影し、関節を含む領域の画素値の平均を関節ごとに算出し他の関節と比較することが可能である。そして、他の関節と比較して画素値の平均値が特に低いまたは高いなどの疾患や怪我等が疑われる特異的な部位の存在を、撮影データから検出することが可能である。検出した場合には装置からの出力として、特異的な部位を検出したことを知らせるメッセージや判定結果の表示などの処理も可能である。このような処理は、撮影データを画像化する処理を経ることなく、撮影データを直接処理し算出するため、高速な演算が可能である。
上記処理を行う為の情報取得装置や撮影装置の各部の例について詳細に説明する。
《光源》
撮影部位に光を照射する光源はLEDやレーザーを用いることが可能である。照射光の波長領域は可視から赤外ないし近赤外帯域が生体撮影には好ましく、特に波長1400nm以下の近赤外光が、生体への深達度が高く好適である。照射光により撮影領域を一括で照射できるように大面積な光源が好適であり、これは、例えばLEDをアレイ状に配列した面光源を形成することで実現できる。或いは、太い平行光束で照射する構成をとることも好適である。LEDであれば1つのLEDを略平行光束にコリメートすることで実現できる。レーザーであれば、光束径を拡大し平行光束にすることで実現可能である。
照明光源と撮影部位との間に拡散板を挿入する構成は、LEDアレイ等の光源の光量分布を均一化して撮影物体に照射することが可能であり好適である。レーザーを照明光源として用いる場合、光束径を拡大せず、点光源のまま、ガルバノミラー等のスキャン光学系を用いて照射位置を変化させながら撮影する構成も可能である。点照射とスキャン光学系の使用の利点は、所望の照射位置に的確に照射可能であること、照射位置の掃引速度或いは滞在時間、光源自体の光量変調を用いて、精密な光量分布を実現可能であることが挙げられる。光束径が小さく遮光も容易であることから漏れ光や迷光抑制が容易である点も好適である。
さらに光源のスキャン系と同期させた受光位置のスキャンを行うことは、生体などの散乱体内を伝搬する光から直進成分に近い成分だけを抽出することを可能として好適である。スキャン系としては、ガルバノミラーや高速に位置走査可能なアイリスやスリットなどを用いてもよい。
LEDのように無偏光光源の場合、光源と撮影部位の間に第一の偏光子を挿入し、偏光照明とすることも可能である。この場合、撮影部位と受光器の間に第二の偏光子を挿入することで、撮影部位を透過する光の偏光成分を検知することが可能である。また、発光波長が異なるLEDをアレイ状に配置して、複数波長で発光する光源を構成してもよい。或いは時間と共に発光波長が変化する光源を用いてもよい。このような光源にすることで、異なる波長で撮影した血管画像を取得可能である。
なお撮影の前に、被撮影者毎あるいは被撮影部位毎に最適な撮影波長を見出しても良い。人体の血液の酸素飽和度は場所毎に異なると考えられ、結果的に血液の吸収スペクトルも場所毎に異なると予測される。したがって、通常の撮影において血管が光をどの程度吸収しどの程度暗く写るのか、は撮影波長に依存する。さらに、撮影した画像同士で差分処理し血管画像を生成する場合も、血管像のコントラストは同様に撮影波長に依存すると考えられる。また、被撮影者ごとに、皮膚の日焼けの色の濃さや、脂肪層による光散乱の強さが異なることも考えられる。従って、差分画像における血管像コントラストは上記と同様に撮影波長依存性があると考えられる。
差分処理によって生成する血管像のコントラストが最も高くなる波長を見出す手法としては、例えば実際に撮影波長を変えて、複数回の撮影を行い、血管像を各波長の画像同士での差分処理により生成し、そのコントラストを比較することが可能である。しかしこの手法では、最適な撮影波長を探索するために、撮影を試みる波長の数と同じ回数だけ実際の撮影作業が必要となるため、撮影に時間が掛かることが課題となり得る。また波長によって画像を取得する時刻が大きく異なる場合、各波長での撮影作業が進行する間に被撮影部の血流の状態が変化してしまう可能性がある。各波長での撮影画像の血管像コントラストの変化が、撮影波長が異なることに起因するのか、撮影時刻が異なるため血流量が違い血管像の濃さが変化して見えるのか、の弁別が難しいことが課題となり得る。
一方で、異なる波長での撮影を同時刻に行うためには、多波長で同時発光が可能な光源で被撮影部を照射し、カメラとしては例えばハイパースペクトルカメラのような、各位置での分光情報を得られるカメラを用いることが可能である。或いは、検出カメラ側の光路を、ダイクロイックミラー等の分光素子で異なる波長毎に分割し、波長毎の光路に対してそれぞれ通常の撮影カメラを配置する構成も可能である。但し、ハイパースペクトルや複数台のカメラを用いる構成は高価であったり、或いは光学系が複雑で大型になる可能性がある。
そこで本説明にあるような、通常の撮影カメラと、単一の撮影光学系と、光源とを組み合わせた構成を用いて、撮影する全ての波長において血流状態が近い状態で撮影を行える手法を以下に提示する。
まず装置構成を説明する。照射する光源は、時間と共に発光波長を変化させることが可能な光源を用いる。このような光源の例としては、例えば、図11に示すような、複数波長のLEDがマトリックス状に配置されている光源801において、点灯するLEDを順次切り替えることで、時間と共に発光波長が変化するLED光源が挙げられる。光源801は、中心波長λ1のLED802と、中心波長λ2のLED803、中心波長λ3のLED804で構成される。ある時刻にはLED802だけが点灯し、別の時刻にはLED803だけが点灯、更に別の時刻にはLED804だけが点灯する。なお、光源はこの構成に限るものではなく、波長掃引レーザーなどであっても良い。そして、光検出器としては撮影波長に感度がある撮影カメラを使用する。
次に、撮影方法を説明する。本説明における最適撮影波長探索法においては、本撮影と同様に、カフ等を用いて人為的な血流変動を生じさせる。本発明の知見から、カフ等を用いて人為的な血流変動を生じさせる場合、被撮影部位における血流変動が大きい時間は、カフの操作時刻からある一定の時間内であることが分かった。それは、被撮影部の差し渡しの距離を、毛細血管の血流が伝搬するのに要する時間と同程度である。典型的には、人体の手指であれば、差し渡しの距離が20mm程度、毛細血管の血流が0.3/mm程度であることから1.0/mmとするとおよそ1分以内である。この血流変動が大きい時刻を避けて撮影することにより、血流変動が比較的小さい時刻で撮影可能である。したがって、血流変動が小さい時刻の例としては、(1)カフ締め付け動作前の平常状態(何も締め付けていない状態)、(2)カフ締め付け後1分以上経った時刻、(3)カフ締め付け状態から解放して1分以上経った時刻、の3つの時間帯が挙げられる。
これらの中から少なくとも二つの時間帯において、光源波長を変えて撮影し、得られた同一波長の画像同士で差分処理する。例えば(1)、(2)、(3)の3つの時間帯それぞれにおいて、異なる3波長で撮影する場合の手順は、(1)の時間で3つの波長のLEDを順次点灯させ、それぞれの波長で血管像を撮影し、これを(2)の時間、(3)の時間でも同様に行うものである。
各(1)、(2)、(3)の時間帯の撮影において、各波長での撮影画像の枚数は1枚に限るものではない。複数枚でも良い。複数枚撮影すれば、それらの画像を平均化処理することでランダムノイズの低減を行うことが出来る。但し、例えば各波長で血管画像を5枚撮影する場合、各波長での撮影作業は波長に対して交互に行うことが好ましい。つまり「波長1の1枚目⇒波長1の2枚目⇒…⇒波長1の5枚目⇒波長2の1枚目⇒波長2の2枚目⇒…⇒波長2の5枚目⇒波長3の1枚目⇒…」という撮影順序よりも次の撮影順序が好ましい。即ち、「波長1の1枚目⇒波長2の1枚目⇒波長3の1枚目⇒波長1の2枚目⇒波長2の2枚目⇒波長3の2枚目⇒…」という撮影順序が好ましい(図12)。
最適な撮影波長を探索する場合、各波長の撮影時刻が異なることにより、その間に血流状態が変化してしまい、波長の違いによる血管像のコントラスト変動と血流変動によるコントラスト変動が弁別できなくなることを回避したい。このため、各波長での撮影時刻をなるべく近接させることが好ましい。各波長で複数枚撮影する場合には前述の撮影順序にすることで、各波長の撮影時刻の平均の時刻をなるべく近接させることが可能であるため好ましい。また撮影波長を振って複数の画像を撮影する場合、カメラの持つ感度の波長依存性や、生体が有する透過率の波長依存性などがあるため、どの撮影波長においても画像1枚あたりの露出時間が略同じになるように、照射光量を調整しておくことが好ましい。露出時間がどの波長の撮影でも揃っていることで、画像1枚の撮影に必要な露出時間をΔt〔秒〕とするとする。このとき、例えばカメラを動画撮影モードにしておいてフレームレートを1/Δt〔fps〕に設定することが可能であり、波長を変えた血管撮影を高速に簡易に行うことができ、好ましい。
二つの時間帯の選び方には以下の3通りがあるが、特に(1)と(2)の時間帯あるいは(2)と(3)の時間帯の画像を用いることは好適である。まず(1)と(2)の画像で差分処理する場合、(3)の時刻まで撮影を継続する必要が無い為、撮影作業を早く終われるという利点がある。さらに、(1)はカフを締め付けていない為に血流が大きい時間帯、(2)はカフ締め付けにより血流が小さい時間帯であるため、(1)の時間帯の画像と(2)の時間帯の画像は血管像の濃さが大きく異なっている可能性がある。このような画像を差分処理することで血管像を抽出すれば、コントラストが高い血管像を生成出来る可能性が高い。
また(2)と(3)の画像で差分処理する場合、(1)と(2)の場合と同様に、(2)と(3)は互いに大きく血流が異なる時間帯であるため、(2)の時間帯の画像と(3)の時間帯の画像は血管像の濃さが大きく異なっている可能性がある。このような画像を差分処理することで血管像を抽出すれば、コントラストが高い血管像を生成出来る可能性が高い。
また、(2)、(3)の両方ともカフによる人為的な血流変動が強く生じている時間帯であるため、人体自身の制御による血流変動の影響が生じにくく好適である。
上記撮影の結果、複数の波長それぞれにおいて差分画像を生成し、血管像のコントラストを比較する。そして血管像コントラストが最大である波長を最適な撮影波長と判定する。例えば各波長で(1)、(2)、(3)それぞれの時刻で5枚の画像を撮影した場合、(1)、(2)、(3)の時間の各波長の画像同士で位置合わせを行い、(1)、(2)、(3)それぞれの時間内で平均化処理した画像を生成する。これを各波長について行い、(1)、(2)、(3)の各時間について各波長の画像を1枚ずつ生成する。その後、各波長の画像においてROIの設定や血管画素、脂肪画素を設定し、同一波長の画像同士で差分処理を行う。この際、先述の本撮影と同様にROI内の血管像のコントラストを最大にする差分処理倍率を探索しコントラストを求める。
なお、上記の最適撮影波長の判定においては、差分画像を生成するために用いるフレームの選び方は「最大コントラストを得るフレーム」ではない。「撮影時刻が波長毎に僅かに異なるものの、各波長の撮影時に血流変化は殆ど生じない時間帯のフレーム」を選ぶことに主眼がある。また、上記の最適波長探索においては、仮定として、各波長に対して同じ血流状態で画像を撮影した場合、これらの画像から生成した各波長ごとの差分画像の血管像コントラストを最大とする波長は、他の血流状態において、次のようであるとしている。即ち、差分画像生成に用いるフレームをROI内の注目血管のコントラストが最大化するように選択しても、差分画像の血管像コントラストを最も高くする波長である、としている。
上記の最適波長探索においては、下記も好適である。光源の波長として、例えばヘモグロビンと酸化ヘモグロビンの吸収が略等しくなる波長800nm近傍の波長の場合、動脈と静脈が共に撮影可能であり好適である。また、波長800nmの前後の波長の組なども好ましい。これは、動脈が強調される波長と静脈が強調される波長での撮影となり、動脈と静脈の区別をしやすくなるためである。
血流変化が少ない時間帯の判定方法として、上記のようにカフ操作後ある一定時間の後、とする方法に加え、さらにその中から画素値の変動が小さい時間帯を選ぶのも良い。画素値の変動が小さいフレーム群の判定方法としては例えば下記がある。カフ操作による急激な血流変動に起因する画素値変動は手指の場合で典型的には10%程度である。そうであるので、これよりも十分に小さい血流変動値、例えば画素値の変動幅がその時の画素値の1%以下の変動に収まっている時間帯を、血流変動が小さい時間帯であると判定することが可能である。
《保持台》
被験者の撮影部位を保持する機能を有する保持台を設けてもよい。単純な平面状であってもよいし、或いは撮影部位の形状に合わせた曲面形状でもよい。例えば撮影部位が手の場合、撮影光学系の光路を垂直にするか水平にするかでも、撮影部位の保持の仕方が異なるため、保持台形状は撮影光学系の光路に合わせて適宜好適な形状とすることが好ましい。
照射光が保持台と撮影部位を透過する構成の場合、保持台は照射光に対して透過率が高い部材で構成されていることが望ましい。保持台の一部が光透過部材、或いは空気などの透明部材で構成され、残りの部分が遮光部材で構成され、照明光が撮影部位の所望の位置だけを照射する構成も好適である。また保持台は、被験者の体格や心臓の高さなどに応じて、その撮影部位の保持高さが可変である構成が好ましい。撮影する画像毎に保持高さを変化させる機能を有することも好ましい。このような構成にすることで、撮影画像毎に心臓と撮影部位の高さ関係が変化し、撮影部位の血圧もこれに対応して変化することで、撮影画像毎に血流量が異なり、血管による光吸収の強さが異なる画像を取得できる。
保持台の温度が可変である構成でもよい。保持台が体温よりも少し温かい温度の場合、被験者の撮影部位も温まる為、撮影部位の血流量を増加させることが可能である。このことにより血管像がより濃く写る可能性がある。逆に保持台が体温よりも低温である場合、撮影部位の温度も低下するため、撮影部位の血流量が減少する可能性がある。このように、保持台の温度を可変とする機能を有することで、撮影画像毎に血流量が異なり、血管による光吸収の強さが異なる画像を取得できる。
《カメラ(検出部)》
光検出器は、撮影波長に感度を有するカメラ、フォトディテクタなどを用いる。光検出器として、画像を取得可能なカメラを使用することが可能である。例えばデジタルデータを出力可能なカメラであれば、その出力は最終的に処理装置にデジタル画像データとして取りこむことが可能である。生体内部の血管像は、脂肪や筋肉、骨などの散乱体に囲まれているため、生体内散乱光が重畳し、淡い像となる。従って、生体内血管の撮影にカメラを用いる場合、階調が豊かで、僅かな光量の分布を確実に検知できる性能を有することが好ましい。前記カメラが有するノイズも小さいことが好ましい。
また、カメラは静止画を撮影する機能を有する物のほかに、動画撮影を行う機能がある物でもよい。光検出器をフォトディテクタとし、受光位置をスキャンする光学系や光学素子と組み合わせて、受光位置信号と光量信号から取得画像を計算機内で再構成してもよい。フォトディテクタからの電圧信号はアナログ出力である為、これをAD変換してコンピュータ等の演算装置に取り込む場合には、ビット数が高いAD変換をしておくことが好ましい。フォトディテクタは単一素子である為、高速性、低ノイズ性に優れ、好適である。
《処理装置》
処理装置では、カメラなどの光検出器からの信号を基に、血管像を抽出した画像を生成する。処理装置は例えばコンピュータなどであってもよい。必要に応じて光検出器からの信号を取り込む取り込みボードを有してもよい。撮影画像や各種演算処理で算出した最終画像を表示する為のディスプレイも有していることも好ましい。なお画像をディスプレイに表示する構成に限るものではなく、別の表示機器で画像などの情報を表示させてもよい。
処理装置は、画像に対する各種演算処理を可能とするプログラムやアプリケーションを内蔵している。これらのプログラムを回路として実装したボード等を有していてもよい。処理装置は同時に、光源制御機能(光量変動のモニタ、抑制、光量調整、波長選択など)や保持台の制御機能も有していてもよい。
(実施例1)
以下、図5を参照して、本発明の実施例1による情報取得装置を含む撮影装置について説明する。図5は本実施例による装置を示す概略図である。撮影装置には、光源501と、保持台502と、撮影カメラ503、光源駆動電源504と、制御処理PC505と、モニタ506と、が設けられている。また、撮影対象となる検査物体は指507を示す。また指507と心臓の間にある不図示の上腕部には駆血帯を装着しており、制御処理PCからの信号により印加圧力を制御する。
光源501は、指507に対して波長810nmの光を照射し、撮影カメラ503は手を透過した光を検出し、検出した光に基づいて画像信号を生成する。ここで、光源501は波長810nmのLEDをアレイ状に並べたものである。撮影カメラ503は波長810nmの光に感度を有しているカメラでありデジタル信号を出力する。また撮影カメラでは毎秒10フレームの動画撮影を160秒間行い、各フレームを画像データとして取得する。
また、撮影開始時には駆血帯での印加圧力は0mmHgである。次に撮影開始直後から30秒経過した時点で5秒間で駆血帯に160mmHgまで圧力を印加する。そして圧力印加後60秒経過した時点から5秒間で印加圧力を0mmHgに戻す。その後更に60秒間撮影し、撮影を終了する。この時の駆血帯の動作状態による印加圧力と時間の関係を図6に示す。駆血帯での印加圧力の制御は制御処理PC505から行う。
制御処理PC505は、撮影カメラ503で生成した画像信号を取り込む。制御処理PC505は、取り込んだ画像信号に基づいて画像データを生成し、生成した動画あるいは各フレームの画像をモニタ506に表示する。これにより、術者はモニタ506に表示される指507の撮影対象となる、注目する関節の血管の撮影結果を確認することができる。
また、制御処理PC505は、撮影した各フレームの血管の画像に対して、1フレーム目の血管像に対して2フレーム目以降の画像の血管像の位置合わせ演算処理を行う。ただし、血管像の位置合わせの基準とするフレームは1フレーム目に限るものではない。これにより、各フレームの画像は撮影中に生じた被験者の手の動きによる血管像の位置ずれが補正され、血管像が同じ位置に記録された画像となる。さらに、位置合わせ画像を10枚ずつ平均化した、平均化位置合わせ画像を生成する。撮影した1600枚の画像に対し、1から10枚目までの画像を平均化した平均化位置合わせ画像、2から11枚目までの平均化位置合わせ画像…、1591から1600枚目までの平均化位置合わせ画像を生成する。
さらに、制御処理PC505は、撮影した血管像508の強度を評価し記憶する。まず、前記平均化位置合わせ画像内に、使用者がROI509を設定する。ROI509の設定は省くことも出来る。そして、この中にある各血管のコントラストを評価する為、各血管像上の第一の領域の画素520、522、524、526、528と、その近傍の各脂肪部の第二の領域の画素521、523、525、527、529を指定する。
次に、制御処理PC505は、各フレームでの画素520、522、524、526、528と画素521、523、525、527、529の値を読み取り、記憶する。さらに、ROI509内の最低画素値も抽出し記憶する。そして、カフ操作後60秒以内(動作後1分以内)のフレームを含む平均化位置合わせ画像を両方の画像として選択する。カフ操作後とは、カフによる圧迫または圧迫解放の動作後ないし動作直後を意味する。各組み合わせについて、前記差分処理倍率kの値を0.5から2.0まで0.01刻みで変化させ、その全ての組み合わせについて、各差分画像データを生成する。各差分画像において第一の領域の画素と第二の領域の画素の複数の組のコントラストのうち最低の血管像のコントラストが0.3以上のフレームの組と差分倍率kを選択する。その中でさらに複数組のコントラストの平均コントラストが最も高い平均化位置合わせ画像の組と差分倍率kを選択する。そしてこれらの画像同士の差分画像を生成し、画面に表示する。なお、処理高速化の為には上記平均化位置合わせ画像の生成、平均化位置合わせ画像によるコントラスト評価ではなく、1枚の画像同士での差分処理による差分画像の血管像コントラストを評価しても良い。
平均化位置合わせ画像は、1つでもカフ操作後60秒以内のフレームを含んでいれば良い。つまり他のものが、カフ操作後60秒以外のフレームであっても良い。カフ操作後60秒以内のフレームを全く含まないのは採用できないが、少しでも含んでいれば、血管像は一定程度明瞭になる。但し、カフ操作後60秒以内のフレームが多い方が、少ない場合よりも血管像が明瞭になる可能性は高い。
コントラスト評価により最適な画像Aと画像B及び差分処理倍率kを選択する。その上で、上記工程の際に選択した画像Aについて、画像Aに加え、画像Aより前の撮影時刻の連続する画像4枚と、後ろの時刻の連続する画像5枚とを合わせ10枚の画像で平均化した画像A’を生成する。画像Bも同様に処理し平均化した画像B’を生成する。そして画像A’と画像B’の差分画像を生成する。これについても、前述と同様にコントラストを算出してもよい。
制御処理PC505は、光源駆動電源504を用いて光源501の光量を制御することができる。また、制御処理PC505は、撮影カメラ503の感度や露出時間等の各種撮影条件を適切に調節することができる。これらの操作により、注目する関節の血管を高コントラストに撮影することが可能である。
画像内或いはROI内に動脈又は静脈以外に新生血管群と考えられる像が見いだされた場合には、更に解析処理を継続する。使用者あるいは制御処理PCにより、新生血管群内の画素(不図示)と、新生血管群外で且つ動脈および静脈でもない画素(不図示)を指定し、各画像における前者の画素の画素値と後者の画素の画素値を抽出する。そして両画素で表わされる血管像のコントラストが最大となる画像Cと画像D及び差分処理倍率kを見出し、画像Aと画像Bと同様に10枚の画像で平均化し、画像C’及び画像D’とする。そして画像C’と画像D’との差分画像を生成する。この操作により、新生血管群の画像ないし関連情報を抽出することができる。
上記実施例の変形例の動作について図8から図10のフローチャートを参照して説明する。まず、図8のフローチャートに沿って説明する。
(ステップ1)
上記の如く、複数の元画像を異なる撮影条件で撮影する。
(ステップ2)
上記の如く、何れも血流変動情報に基づいて選択した画像データを含んだ平均化元画像を複数生成する。これらは、次のステップ3の処理で用いられる。
(ステップ3)
平均化画像の差分処理画像を生成する。生成する差分画像は、係数をkとして、次の2つの演算により生成される画像である。差分画像は元画像のうちの2つを用いて、一方と他方の係数倍の差として定義される。
差分画像=平均化画像1−k×平均化画像11
差分画像=平均化画像11−k×平均化画像1
さらに、これらの画像は、kの値を0.5から2.0の間で0.01刻みで変化させて生成されるものである。そして、同様の操作を、異なる平均化画像同士に対して行い、差分画像を生成する。これらの差分画像は、前記制御処理PCの記憶部に保持される。
このようにして、様々な元画像の組で、差分処理倍率も変えて多くの差分画像を生成し処理部に保持される。差分画像のデータそのものではなく、その関連情報(上記データセット)のみを保持し、必要時にそれに基づいて差分画像データを作成するようにしてもよい。
(ステップ4)
さらに、制御処理PC505は、生成した差分画像の中の血管像コントラストを評価する。図5に示すように、まず、差分画像内にある各血管のコントラストを評価する為、各血管像上の画素と、その近傍の各脂肪部の画素を指定する。ここでは、上記各点は、指の関節近傍に配置する。各画素は単一の画素で指定する。前記血管画素は各血管の太さ方向の中央部に設定し、脂肪部の画素は、血管像の散乱によるボケを1mm程度と予測し、前記血管画素から血管の走行方向と略直交する方向に1mm離れた点に設定する。そして画素の画素値を取得する。さらに、最小画素値(不図示)も取得する。これらの取得した画素値に基づいて、血管のコントラストを算出し、評価する。
(ステップ5)
血管像コントラストの平均が最大となる差分画像を選出する。このようにして、差分画像の血管コントラストに基づき、複数の差分画像から、出力画像を生成する為の差分画像を選択して対応づける。
(ステップ6)
次に、出力画像を生成する。出力画像は、次のように生成する。対応付けられた差分画像の最小画素値を0にするように全ての画素の画素値に同じ値を加える。更に、最大画素値を表示可能な最大値にするように全画素値に対し同じ倍率を乗じる。本実施例ではデータ処理を8bitで行い、画素値の表示可能な最大値も256である。従って、最大の画素値が画素値256になるような倍率を全画素に乗ずる。このようにして、対応付けられた差分画像を用いて、出力画像を生成する。
上記過程において、制御処理PC505は、光源駆動電源504を用いて光源501の光量を制御することができる。また、制御処理PC505は、撮影カメラ503の感度や露出時間等の各種撮影条件を適切に調節することができる。これらの操作により、注目する関節の血管を高コントラストに撮影することが可能である。
さらに、動脈又は静脈以外に新生血管群と考えられる像が見いだされた場合には、更に解析処理を継続することができる。使用者或いは制御処理PCにより、新生血管群内の画素(不図示)と、新生血管群外で且つ動脈および静脈でもない画素(不図示)を指定し、最小画素値も把握して、新生血管群のコントラストを通常血管と同様に算出する。そして新生血管群コントラストが最も高い差分画像を選択し、これを最終的な出力画像とする。
即ち、図10のフローチャートのステップ7で示すように、ステップ6で生成した前記血管画像(血管像を見易くした画像)で、前記血管画素と前記脂肪画素の少なくとも一方を、それとは異なる位置に設定し直し、もう一度ステップ4からやり直すことができる。本実施例の情報取得装置を用いることで血管像508を抽出した画像を得ることができる。
図8と同様な図9のフローチャートを参照して他の例を説明する。
(ステップ1)
上記実施例と同様に行われる。
(ステップ9)
次に、制御処理PC505は、撮影した各フレームの血管の画像に対して、血管像を互いに位置合わせ処理をした位置合わせ画像を生成する。撮影した1600枚の画像に対し、第1フレームから第1600フレームまで、血管像を互いに位置合わせし、第1フレームから第1600フレームまでの位置合わせ画像をそれぞれ生成する。
(ステップ3)
上記と同様に行われる。
(ステップ14)
さらに、制御処理PC505は、生成した差分画像、及びその差分画像を生成する為に用いた位置合わせ済み画像の中の血管像コントラストを評価する。まず、前記差分画像及び位置合わせ済み画像内にある各血管のコントラストを評価する為、各血管像上の画素と、その近傍の各脂肪部の画素を指定する。ここでも、上記各点は、指の関節近傍に配置する。各画素は単一の画素で指定する。前記血管画素は各血管の太さ方向の中央部に設定し、脂肪部の画素は、血管像の散乱によるボケを1mm程度と予測し、前記血管画素から血管の走行方向と略直交する方向に1mm離れた点に設定する。そして画素の画素値を取得する。さらに、最小画素値(不図示)も取得する。
これらの取得した画素値から、血管のコントラストを評価する。そして、血管像コントラストの平均値が最大となる差分画像を選出する。さらに、前記差分画像が、撮影した1600枚の位置合わせ済み画像よりもコントラストが高いことを確認する。撮影した1600枚の画像の血管像コントラストの評価においては、コントラストが負値になった場合、その画像の明暗を反転処理した画像を生成する。そして、その画像に対して、血管画素、脂肪画素の設定や最小画素の画素値の評価を行って血管像コントラストを再算出する。
(ステップ15)
次に、出力画像を生成する。出力画像としては、血管像コントラストの平均値が最大である差分画像の血管像コントラストと、撮影した1600枚の画像の血管像コントラストとを比較し、最も大きい血管像コントラストを有する画像として、対応づける。
(ステップ16)
この画像の最小画素値を0にするように全ての画素の画素値に同じ値を加える。更に、最大画素値を表示可能な最大値にするように全画素値に対し同じ倍率を乗じて生成する。本例でもデータ処理を8bitで行い、画素値の表示可能な最大値も256である。従って、最大の画素値が画素値256になるような倍率を全画素に乗ずる。
なお、図8の例と同様に、次のようにしてもよい。即ち、図10のフローチャートのステップ7で示すように、ステップ16で生成した前記血管画像(血管像を見易くした画像)で、前記血管画素と前記脂肪画素の少なくとも一方を、それとは異なる位置に設定し直し、もう一度ステップ14からやり直す。