現代のセルラーシステムにおいて、無線データレートに対するユーザー需要の高まりのため、限られた帯域幅は隣接するセルに共有されており、それに起因するセル間の干渉はデータ伝送レートとサービス品質を制限する要因となっている。特にセルエッジにあるユーザーが受けるセルからの干渉は深刻である。多くの無線サービスプロバイダーは、セルエッジにおけるユーザーのサービス品質の改善に絶え間なく取り組んでいる。これらの試みの中では、マルチアンテナ技術によるより多くの自由度は、セルエッジにおけるユーザーのサービス性能の低下を緩和することには、最も有望な傾向となる。また、従来の4アンテナ、8アンテナのハイパワー基地局基地局システムは、基地局システム送受信機リンクモジュールの設計難度は高いが、大電力をより大規模なアンテナ、例えば16アンテナ、64アンテナに均等に分配する場合に、アンテナ単体の電力が大幅に低下し、基地局システム送受信機リンクの設計難度は大幅に低下する。従って、大規模なスマートアンテナ通信は発展の趨勢となり、カップリングキャリブレーションネットワークは、大規模なスマートアンテナの重要なパーツの一つとして、その実現は、大規模なスマートアンテナのビームフォーミング効果に直接的な影響を与えるだけでなく、基地局システムのモジュールアーキテクチャ設計に間接的な影響を与えるようになる。
図1に示すように、中国特許CN2755871Yには、N個のアンテナエレメント、N個の結合器及び複数のスプリッタ/コンバイナ(N≧2)を備えるスマートアンテナアレイを直線状に配列したカップリングキャリブレーションネットワーク装置が記載されている。N個のアンテナエレメント(11)は直線状に配列されてリニアアンテナアレイを構成し、結合器はマイクロストリップ方向性結合器であり、2本の小間隔の金属平行マイクロストリップからなり、N個のマイクロストリップ方向性結合器と複数のスプリッタ/コンバイナは、リニアアンテナアレイの放射方向の裏面に設けられた1つのカップリングキャリブレーションネットワーク回路基板(12)に集積され、N個のマイクロストリップ方向性結合器はカップリングキャリブレーションネットワーク回路基板においてN個のアンテナエレメントに一対一対に対応して分布し、1つの金属反射板(13)は、カップリングキャリブレーションネットワーク回路基板の裏面に設けられ、リニアアンテナアレイの指向性カバレッジを実現する。また、該装置は、カップリングキャリブレーションネットワークとアンテナエレメントのRFコネクタ14、8個のアンテナアレイ入力/出力端子15、及び1つのキャリブレーションポート入力/出力端子16を更に備える。該特許において、アンテナアレイ、カップリングキャリブレーションネットワーク、反射板はそれぞれ独立したブロックであり、同一の誘電体基板に集積されていないため、基地局システムの集積化に不利であり、アンテナアレイ入力/出力端子及びキャリブレーションポート入力/出力端子と基地局システムとの接続は、カップリングキャリブレーションネットワークのエッジにおいてRFコネクタを引き出す又は直接にケーブルを溶接して引き出すことにより行われるため、大規模なアンテナアレイの場合は、RFコネクタ又は溶接するケーブルの数を増加させざるを得なくなり、複雑で煩瑣になり、基地局システムの小型化と製造に不利である。
図2に示すように、中国特許CN103746193Aには、スマートアンテナ及びそのキャリブレーション装置が開示されており、反射板(21)、アンテナ素子(22)、エンドカバー(23)、及び反射板(21)とエンドカバー(23)とを接続する取付板(24)を具備し、スマートアンテナは、誘電体基板(25)、複数の端子(26)及びキャリブレーションネットワーク(27)を備えるキャリブレーション装置を更に具備し、キャリブレーションネットワーク(27)は誘電体基板の表面にプリントされ、複数の電力分配器からなる電力分配ネットワーク及び複数の方向性結合器を備え、電力分配器ネットワークのいずれかの1つの分割ポートに1つの方向性結合器が接続され、端子コアは、直接、電力分配ネットワークの合成ポート又は方向性結合器の信号入力ポートに接続され、且つ1つの端子が1つのポートに対応し、キャリブレーション装置は取付板の一側に固定され、取付板(24)には少なくとも1本の折曲げバー(241)が設けられ、折曲げバー(241)がキャリブレーション装置を貫通して反射板(21)に固定される。該特許において、アンテナ素子とキャリブレーションネットワークは、ケーブル(28)の溶接により接続されており、大規模なアンテナアレイの場合に、ケーブル数が多く、製造に不利であり、アンテナ素子とキャリブレーションネットワークとの間が垂直な組立関係であり、組立時、装置の固定に1本の折曲げバー(241)が必要であり、後続の製造に不利であり、システムの集積度が低い。
本発明は、アンテナの寸法を小さくし、基地局システムの集積化及び小型化性能を向上させることができ、量産が容易になるスマートアンテナ装置を提供する。
スマートアンテナ装置であって、誘電体基板、カップリングキャリブレーションネットワーク、アンテナアレイ、第1RFコネクタ、及び第2RFコネクタを備え、前記カップリングキャリブレーションネットワークは、前記誘電体基板の一方の面に設けられ、前記アンテナアレイは、前記誘電体基板の他方の面に設けられ、前記誘電体基板にはビアが設けられ、前記アンテナアレイと前記カップリングキャリブレーションネットワークがビアを介して接続され、前記第1RFコネクタと第2RFコネクタは、前記誘電体基板の前記カップリングキャリブレーションネットワークを設けた面に配列され、それぞれ前記カップリングキャリブレーションネットワークに接続される。
選択的に、前記カップリングキャリブレーションネットワークは、スプリッタ/コンバイナ及びM個のマイクロストリップ方向性結合器を備え、前記アンテナアレイはM個のアンテナエレメントを備え、前記第1RFコネクタはM個であり、前記第2RFコネクタは1つであり、Mが2以上の整数であり、各々の前記アンテナエレメントは、並列給電された後、ビアを介して前記カップリングキャリブレーションネットワークにおける対応するマイクロストリップ方向性結合器に接続され、各々の前記第1RFコネクタは、1つの前記マイクロストリップ方向性結合器に接続され、前記スプリッタ/コンバイナの合成ポートが前記第2RFコネクタに接続される。
選択的に、前記M個の第1RFコネクタと前記第2RFコネクタは、前記誘電体基板の内部に配列される。
選択的に、各々の前記マイクロストリップ方向性結合器は、2つのマイクロストリップを備え、一方のマイクロストリップは、一端がビアを介して対応するアンテナエレメントに接続され、他端が前記第1RFコネクタに接続される。
選択的に、前記M個のアンテナエレメントは、直線状配列、環状配列、又は他の不規則形状配列である。
選択的に、前記M個のアンテナエレメントは、等間隔配列又は不等間隔配列である。
選択的に、前記M個のアンテナエレメントは、指向性方式、単一偏波方式、又は二重偏波方式である。
選択的に、前記アンテナアレイにおいて、2つ毎の隣接するアンテナエレメント列の間に1本の縦金属仕切り板が設けられ、及び/又は、前記アンテナアレイの2つ毎の隣接するアンテナエレメント列の間に1本の横金属仕切り板が設けられ、及び/又は、前記アンテナアレイの周辺に金属側板が設けられる。
選択的に、前記スプリッタ/コンバイナの数は、分割数及びアンテナエレメント数に応じて決められる。
選択的に、前記誘電体基板の中間層は、接地層及び金属反射板として兼用される。
選択的に、前記誘電体基板は、プリント回路基板PCBである。
本発明の実施例によれば、アンテナアレイ、カップリングキャリブレーションネットワーク、及び金属反射板がいずれも同一の誘電体基板に集積されており、且つアンテナエレメントとカップリングキャリブレーションネットワークがビアを介して接続されることにより、信頼性を向上させ、RFケーブルの大量使用を回避し、アンテナの寸法を小さくし、基地局システムの集積化及び小型化性能を向上させ、大規模なスマートアンテナアレイカップリングキャリブレーションネットワーク装置の実現に寄与し、製造やデバッグ、量産に便利であり、無線通信システムの普及及び発展により一層適する。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、矛盾しない限り、本願の実施例及び実施例の特徴は互いに組み合わせることができる。
図3は、本発明の実施例に係るM=16エレメントのアンテナアレイカップリングキャリブレーションネットワークの側面斜視図であり、該アンテナアレイカップリングキャリブレーションネットワークは、誘電体基板31、カップリングキャリブレーションネットワーク32、アンテナアレイ、16個の第1RFコネクタ36及び1つの第2RFコネクタ37を備え、アンテナアレイとカップリングキャリブレーションネットワーク32はそれぞれ誘電体基板31の表裏両面に設けられ、誘電体基板31の中間層は接地層及び金属反射板34として兼用され、誘電体基板31にはビア38が設けられ、アンテナアレイがビア38を介してカップリングキャリブレーションネットワーク32に接続される。
実際の使用時、誘電体基板31はプリント回路基板(PCB、Printed Circuit Board)であり、一方の面にアンテナアレイが設けられ、他方の面にカップリングキャリブレーションネットワーク32がプリントされ、前記誘電体基板31の中間層は、カップリングキャリブレーションネットワーク32とアンテナアレイの接地層として機能するとともに、アンテナアレイの金属反射板34として機能し、それによりアンテナアレイの指向性放射を強化する。
該アンテナアレイは、信号を送受信する16個のアンテナエレメント33を配列してなり、前記16個のアンテナエレメント33は、直線状配列、環状配列又は他の不規則形状配列であってもよく、及び/又は、16個のアンテナエレメント33は、等間隔配列又は不等間隔配列であってもよく、及び/又は、16個のアンテナエレメント33は、指向性方式、単一偏波方式又は二重偏波方式であってもよく、及び/又は、16個のアンテナエレメント33の指向性方式は、30°、60°などのような任意の角度であってもよく、及び/又は、16個のアンテナエレメント33の二重偏波方式は、水平垂直偏波又は±45°偏波であってもよい。
カップリングキャリブレーションネットワーク32は、マイクロストリップ方向性結合器及びスプリッタ/コンバイナを備え、マイクロストリップ方向性結合器の個数は、アンテナエレメントの個数と同様で、且つ一対一対に対応し、各々のアンテナエレメント33は、マイクロストリップライン35などを介して並列給電された後、カップリングキャリブレーションネットワーク32における対応するマイクロストリップ方向性結合器にビア38を介して接続され、それにより、アンテナアレイとカップリングキャリブレーションネットワークが同一の誘電体基板に設けられることが可能になるだけでなく、製造に不利なケーブル溶接方式を回避することができる。
上記装置のダウンリンクキャリブレーション動作リンクのプロセスについては、基地局システムの送信チャネルの16チャネルのRF信号はそれぞれ16個の第1RFコネクタ36により入力され、カップリングキャリブレーションネットワーク32により結合されて、「等しい損失差、等しい位相シフト」の方式で1チャネルのキャリブレーション信号を合成した後、第2RFコネクタ37により基地局システムのキャリブレーションリンクに出力し、キャリブレーションを行う。
上記装置のアップリンクキャリブレーション動作リンクのプロセスについては、基地局システムのキャリブレーションリンクからのキャリブレーション信号は前記第2RFコネクタ37により入力され、カップリングキャリブレーションネットワーク32によって「等しい損失差、等しい位相シフト」の方式で16チャネルの信号に分割されて結合作用された後、それぞれ前記16個の第1RFコネクタ36を介して基地局システムの受信チャネルに出力される。
前記16個の第1RFコネクタ36と、第2RFコネクタ37は、誘電体基板31のエッジ延伸領域ではなく、その内部に配列される(又は誘電体基板に取り付けられる)ことにより、構造の小型化及び集積化に寄与し、他の任意の類似機能を有する信頼性の高い接続方式を用いてもよく、ここでは繰り返して説明しない。第1RFコネクタ36は、RF信号の入力又は出力に用いられ、第2RFコネクタ37は、キャリブレーション信号の入力又は出力に用いられ、それぞれブラインドメイト、径方向・軸方向フローティング特性を有するRFコネクタを用いてもよく、基地局システムとの接続に便利である。
図4は、アンテナアレイの一例の配列模式図であり、M=16二重偏波エレメントのアンテナアレイの上面模式図であり、4つのアンテナエレメント列41、42、43、44のそれぞれは、4つの二重偏波アンテナ素子からなるアンテナエレメント33を備え、各々のアンテナエレメント列において、各々のアンテナエレメント33が垂直方向又は水平方向に対して+45°と−45°偏波方向をなし、信号の送受信に用いられ、各々のアンテナエレメント列において、上下に隣接するアンテナエレメント33が2つごとにマイクロストリップライン35などの構造により並列給電され、ビア38を介してマイクロストリップ方向性結合器に接続される。各々のアンテナエレメントは、平行にして等間隔に配列されてもよく、交差して不等間隔に配列されてもよく、又はこれらの方式の異なる組合せで配列されてもよい。アンテナエレメント33は、金属アンテナ素子であってもよく、マイクロストリップ構造又は表面実装構造であってもよく、アンテナエレメント33は、二重偏波方式であってもよく、単一偏波方式であってもよい。
性能を最適化することを目的として、エレメント同士の絶縁を強化するために、図5に示すように、隣接する2つのアンテナエレメント列41と42、42と43、及び43と44の間にそれぞれ縦金属仕切り板51、52、53が垂直に設けられ、金属仕切り板51、52、53と金属反射板34との間は導電的に接続される、又は容量結合的に接続される。性能を最適化するために、アンテナエレメントを単位として周囲に仕切り板が設けられてもよく、即ち金属仕切り板51、52、53に垂直に交差する金属仕切り板54、55、56を増加させることができ、同時に、アンテナエレメントの周囲に金属側板57、58、59、60が設けられてもよく、金属仕切り板及び周囲の側板の設置方式は、図5に示される方式に限定されず、前記金属仕切り板は別々に設計されてもよく、レドーム構造に集積されてもよく、それによりレドームの強度を向上させ、アンテナシステムの安全安定性を高める。アンテナエレメントの上方に小カバープレートが追加されるなどの他の手法を採用してもよく、それにより、アンテナエレメントのそれぞれに独立した空間を与え、ここでは繰り返して説明しない。
図6は、本発明の実施例に係るM=16エレメントのカップリングキャリブレーションネットワークの上面模式図であり、カップリングキャリブレーションネットワークは、全く同じ16個のマイクロストリップ指向性結合回路61、15個の1:2電力スプリッタ/コンバイナ62、16個の第1RFコネクタ36、及びキャリブレーション信号の入出力に用いられる1つの第2RFコネクタ37を備える。2つ毎の隣接するマイクロストリップ指向性結合回路61は、1つの1:2電力スプリッタ/コンバイナ62により接続され、マイクロストリップ指向性結合回路61のそれぞれは、一端が1つの第1RFコネクタ36に接続され、他端が1つの1:2電力スプリッタ/コンバイナ62を介して、隣接するマイクロストリップ指向性結合回路に接続され、各1:2電力スプリッタ/コンバイナ62の2つの分割ポートがそれぞれ2つのマイクロストリップ指向性結合回路61に接続され、15個の1:2電力スプリッタ/コンバイナの合成ポートが互いに接続されて第2RFコネクタ37に接続される。
16個のマイクロストリップ方向性結合器の個数は、アンテナエレメントの個数と一致しており、2本の小間隔の金属平行マイクロストリップラインを用いるため、製品性能の整合性に優れる。16個のマイクロストリップ指向性結合回路61は、カップリングキャリブレーションネットワークの回路基板に16個のアンテナエレメントと一対一対に対応して分布し、マイクロストリップ方向性結合器のそれぞれが1つの第1RFコネクタに接続されることにより、基地局システムのRF送受信機との通信に便利である。前記16個のマイクロストリップ方向性結合器は、全く同じであることにより、製造及びデバッグに便利である。前記16個のマイクロストリップ方向性結合器と対応するアンテナエレメントとの間の電気的接続がビアを介して行われることにより、性能の面において、マイクロストリップ方向性結合器からアンテナ素子への信号の振幅と位相の整合性をよりよく確保できるとともに、構造の面において簡潔に集積され、信頼性が高く、製造に便利である。
電力スプリッタ/コンバイナ62の個数は、分割/合成数に制限され、図6に示される実施例は、1:2電力スプリッタ/コンバイナを用いるため、16チャネルの信号の分割/合成には15個の電力スプリッタ/コンバイナ62が必要であり、最終的に1チャネルの信号を合成して第2RFコネクタ37に送信する。1:4電力スプリッタ/コンバイナを用いる場合に、16個のアンテナエレメント及び16個のマイクロストリップ方向性結合器が設けられた後、5個の1:4電力スプリッタ/コンバイナだけで16チャネルの信号の分割/合成が可能になる。
図7は、本発明の実施例に係るカップリングキャリブレーションネットワークのいずれかの結合ユニットの模式図であり、1つの結合ユニットは、2つのマイクロストリップ方向性結合器61及び1つの1:2電力スプリッタ/コンバイナを備え、マイクロストリップ方向性結合器61のそれぞれは2本のマイクロストリップを備え、一方のマイクロストリップ71は、一端がビア38を介して1つのアンテナエレメント33に対応して接続され、他端が基地局システムの対応するRF送受信機のRF入力端子に接続され、即ち第1RFコネクタ36に接続され、他方のマイクロストリップ72は、一端が50Ω整合負荷74に接続され(接地されてもよい)、他端が1:2電力スプリッタ/コンバイナ62の分割ポートに接続される。図7において、73は電力スプリッタ/コンバイナ62の絶縁抵抗器である。
上記実施例は、16エレメントのアンテナアレイカップリングキャリブレーションネットワーク装置であり、同じ原理に従って、32、64、128などのより大規模なアンテナアレイカップリングキャリブレーションネットワーク装置を設計することもできる。本発明の実施例は特に大規模なアンテナアレイに適用する。
本発明の実施例に記載の様々なユニット、モジュールは、その機能に応じて分割された例だけであり、理解できるように、システム/装置/機器が同様な機能を実現することを前提に、当業者は、1種又は複数の他の機能分割方式を与えることができ、応用時、任意の1つ又は複数の機能モジュールを1つの機能エンティティ装置又はユニットによって実現でき、勿論、上記変更方式はすべて本願の保護範囲に属する。