以下の記載する各実施形態間で共通の部材、または部材の一部は、同じ参照符号で示している。
上述の図面を参照すると、参照符号4は全体として、本発明に係る推進装置8を備えた自転車の全体の概略図を示している。
本発明は、より詳細には、一般的に「EPAC」(電動ペダルアシスト自転車)と呼ばれる、ペダルアシスト自転車に関する。
本発明の目的のために、自転車のフレームのタイプに関係なく、また、フロントおよびリアの両方に2以上のホイールを有する自転車も意味している。
推進装置8は、ステータ14と、モータ軸M−M周りに回転可能なロータ16とを有する電気機械12を備えている。ロータ16は、ペダル20に機械的に接続されたクランク軸X−Xを規定するクランクピン18に動作可能に接続されている。
クランク軸X−Xは、モータ軸M−Mと同軸である。
ロータ16は、ステータ14と同軸であるとともに、ステータ14の外部に位置して径方向でとり囲んでいる。径方向は、クランクの軸X−Xに垂直であるとともに、この軸に付随する方向を意味する。
このように、ロータ16は、ステータ14を径方向でとり囲んでいる。
推進装置8は、少なくとも一対のハウジング24、26を備えている。この一対のハウジング24、26は、電気機械12を収容するとともに、少なくとも部分的にクランク軸X−Xを収容する収容空間28を画定している。
一対のハウジング24、26は、金属などの熱伝導性材料で形成されているのが好ましい。
推進装置8は、電気機械12の機能を操作および制御するための少なくとも1つの電子ユニット32を備えている。このユニット32は、たとえば、対応する支持プレート34上に置かれている。
また、推進装置8は、ロータ16からクランク軸X−Xへの運動の伝達手段36を備えている。この伝達手段36は、全体として非対称の位置に配置されて、クランク軸X−Xから中心が外れており、クランク軸X−Xに垂直な投影面上のロータ16の投影の外側に位置している。
電子ユニット32は、収容空間28の内部に収容され、収容空間28の内部で支持されている。
電子ユニット32は、クランク軸X−Xに垂直な投影面上のロータ16の投影の内側に位置するように配置されているのが好ましい。
一実施形態によれば、電子ユニット32は、全体として、クランク軸X−Xに関して駆動手段36とは反対側に位置している。
たとえば、電子ユニット32は、略C形状であり、クランク軸X−X周りに配置されている。
一実施形態によれば、推進装置8は、固定タイプの中間支持要素40を備えている。この要素は、固定された形で電子ユニット32を支持している。一実施形態によれば、中間支持要素40は、ロータ16を回転可能に支持している。中間支持要素40もまた、収容空間28内に収容されている。
たとえば、ロータ16と電子ユニット32とは、クランク軸X−Xに沿って、中間支持要素40に関して軸方向に両側に位置している。
このように、中間支持要素40は、支持要素を実現するだけでなく、一方の電気機械12のロータ16およびステータ14と他方の電子ユニット32との間の軸方向の分離要素をも実現する。
中間支持要素40は、クランク軸X−X周りに配置され、この軸に関して固定されている。
中間支持要素40は、電気機械12と電子ユニットとの両方によって生成される熱を受け取り、伝達する。略軸方向で中間支持要素40によって受け取られた熱は、中間支持要素40により、径方向において外側で、すなわち、クランク軸X−Xから離れて消散する。
実際には、中間支持要素40は、一対のハウジング24、26の少なくとも1つと接触し、このハウジングを介して、推進装置8から径方向外側に熱を消散させる。
好ましくは、中間支持要素40は、金属などの熱伝導性材料で形成されている。
一実施形態によれば、推進装置8は、中間支持要素40を電子ユニット32に機械的に接続する少なくとも1つの円筒状要素44を備えている。円筒状要素44は、電子ユニット36の熱を中間支持要素40に抽出可能にし、中間支持要素40の熱をハウジング24、26の外部に抽出可能にする熱伝導体である。
一実施形態によれば、少なくとも1つの円筒状要素44は、円筒状要素の主延長軸に対して垂直な断面が長円形状である。
この長円形の断面は、等しい外形寸法に関して、たとえば円形の断面と比較した場合、より高い熱交換能力を確実にするものである。
一実施形態によれば、電子ユニット32には、少なくとも電気ケーブル48と、少なくとも1つの関連する導管52とが設けられている。導管52は、ネジなどの少なくとも1つの取付け手段56によって電子ユニット32に固定されている。
導管52および/または取付け固定手段56は、熱伝導体であり、電子ユニット自体からの熱を消散させる。
前述のように、推進装置8は、ロータ16の運動をクランクピン18に伝達するための伝達手段36を備えている。
一実施形態によれば、伝達手段36は、ロータ16と回転が一体であるとともにロータ16と同軸である第1の入力ギア64と、回転軸X−Xに対して平行であるとともに、回転軸X−Xに対してオフセットしている第1の軸Y−Y周りに回転可能である第1の出力ギア68とを有する第1の伝達段60を備えている。第1の入力ギア64と第1の出力ギア68とは相互に噛み合っている。
一実施形態によれば、第1の入力ギア64は、中間支持要素によって回転可能に支持されている。
たとえば、中間支持要素40は、ベアリング72を収容する穴70を備え、この穴70の境界を定めている。ベアリング72は、穴70の境界を画定する中間支持要素40の壁に固定されて取り付けられている第1のリング73と、第1の入力ギア64の一部と回転移動可能でありかつ回転が一体化されている第2のリング74とを備えている。このように、ベアリング72の介在により、中間支持要素40が中間支持要素40を回転可能に支持している。さらに、一実施形態によれば、カップ要素76により、第1の入力ギア64は、ロータ16と回転が一体になっている。たとえば、カップ要素76は、ベアリング72の第2のリング74と接触した状態で埋め込まれているリングを備えている。
推進装置8は、第1の出力ギア68と回転が一体でありかつ第1の出力ギア68と同軸である第2の入力ギア84と、第2の入力ギア84とかみ合って第2のシャフト92と一体に回転可能である第2の出力ギア88とを有する第2の伝達段80を備えている。第2のシャフト92は、回転軸X−Xおよび第1の軸Y−Yからオフセットしかつ平行である第2の軸すなわち基準軸W−Wを規定している。
たとえば、第2の入力ギア84は、溝付きのプロファイルを用いて、第1の伝達段60の第1の出力ギア68に同軸的に接続されている。
たとえば、一対のハウジング24、26は、第2のシャフト92用の支持ベアリング100を収容するシート98を画定している(図3)。
推進装置8は、第2の出力ギア88と回転が一体でありかつ第2の出力ギア88と同軸である第3の入力ギア106と、第3の入力ギア106とかみ合い回転軸X−Xに動力を伝達してペダルアシストを実現している第3の出力ギア108とを有する第3の伝達段104を備えている。
推進装置8は、第3の出力ギア108とクランクピン18との間に、クランク軸X−Xに対して同軸に取り付けられた第1のフリーホイール112を備え、クランクが逆回転している(移動方向に対して反対に押す推力)か、車両が前方とは反対の方向に移動している場合に、推進装置8のドラッギングを防止する。
このように、反推力と、反対方向における自転車の手動動作フェイズとの両方において、推進装置8のドラッギングに起因する抵抗にユーザが直面することを回避する。
好ましくは、推進装置8は、第2のシャフト92と第2の出力ギア88との間に取り付けられた第2のフリーホイール116を備え、推進装置8がペダルアシストを提供しない場合に、第2の出力ギア88へのトルクの伝達を解放して、ユーザによる推進装置8の回転機構のドラッギングを防止する。
たとえば、第2のフリーホイール116は、第3の伝達段104の回転速度が第2のシャフト92の回転速度以上である場合、第2の出力ギア88を第2のシャフト92と一体化するように構成されている。
たとえば、第2のフリーホイール116は、第2のシャフト92の回転速度が第2の出力ギア88の回転速度より大きい場合、シリンダの係合解除の結果、第2のフリーホイール116により、進行することを可能にするように構成されており、こうして、ライダが推進装置をも回転させなければならなくなることを防止している。
このように、本発明の推進装置8は、自転車4に取り付けられている。クランクピン18は、たとえばチェーントランスミッションを通して、自転車4の駆動ホイール120に、運動を伝達するように接続されている。
さらに、自転車4の進行方向Fが規定されており、推進装置8は、電子ユニット32が、少なくとも進行方向Fのサイドに部分的に位置するように、自転車のフレームに関連付けられ、自転車のフレームに対して方向付けられている。
このように、電子ユニットをとり囲む一対のハウジング24、26の部分が、移動時の車両にぶつかる正面空気流によって直接かつ完全に包囲され、電子ユニット32、ひいては推進装置8の冷却を最適にする。
ここで、本発明の自転車用の推進装置の動作について説明する。
具体的には、電子ユニット32は、提供されたロジックに基づいて境界条件を検出し、電気機械12を作動させて、乗り手によって生成された動力に付加される補助動力を提供する。ペダルアシストを管理する制御ロジックは、詳細は省略するが、EPACに配置された特定のセンサによって時間毎に検出された動作変数(たとえば、傾斜、速度、必要なトルクなど)と、車両のカテゴリに適用される規制上の制約(通常、これらの変数は、電動モータによる最大速度および最大の補助動力に関し、最大速度を超えると、補助は停止しなければならない)とに基づいている。
介在条件に達した場合、この場合においても詳細は省略するが、適切なロジックに従って、所定の電流がステータ巻き線14を通って流れ、電気機械が作動する。
ステータ14に電流が流れると、ロータ16が回転し始め、ペダル補助を提供する(すなわち、クランクピン18にトルクを印加し、動力を提供する)。システム全体を作動させるのに必要な電力は、車両に搭載されたバッテリパックに化学エネルギの形で含まれている。
機械的作動をより詳細に説明すると、その動作において、ロータ16は、第1の出力ギア68とともに、ロータ16にかみ合わされた第1の入力ギア64を回転させ、第1の伝達段60の一対のギアを構成する。
第2の入力ギア84(たとえば、溝付きのプロファイルにより、第1の出力ギア68に同軸的に接続されている)は、動作を第2の出力ギア88に伝達する。
第2の入力ギア84および第1の出力ギアホイールは、回転軸X−Xまたはクランク軸に対して平行であるとともに、軸方向にオフセットしている第1の軸Y−Y周りに一体に回転する。
第2の出力ギア88は、第2のシャフト92にかみ合わされており、その結果、第2のシャフト92が回転する。
第2のシャフト92は、第3の伝達段104の第3の入力ギア106を回転させる。第3の入力ギア106は、第3の出力ギア108とともに、一対の第3の伝達段104を形成する。
第3の出力ギア108は、最終的に、クランク軸X−Xの動力を伝達し、ペダルアシストを実現する。
推進装置8には、2つのフリーホイール112、116が存在している。
第1のフリーホイール112は、第3の出力ギア108とクランクピン18との間に、クランク軸X−Xに対して同軸に取り付けられており、クランク(すなわちペダル20)が逆回転しているか、あるいは、車両が前方とは反対の方向に移動している場合に、推進装置8のドラッギングを防止する。
このように、反推力と、反対方向における自転車の手動動作フェイズとの両方において、推進装置8のドラッギングに起因する抵抗にユーザが直面することを回避する。
フリーホイールの機能は、様々な技術的解決策、たとえば、ラッチの使用を通して得ることができ、好ましくは、クランク軸X−Xと同軸に取り付けられている。ラッチの動作に起因して、クランクピン18は、係合解除されたままの第3の出力ギア108を追い越す(outstrip)場合がある。このため、反推力または自転車の逆向きの動きが生じている場合には、推進装置8のドラッギングが防止される。
さらに、推進装置8は、第2のシャフト92と第2の出力ギア88との間に取り付けられた第2のフリーホイール116を備え、推進装置8がペダルアシストを提供していない場合に、第2の出力ギア88へのトルクの伝達を解放して、ユーザによる推進装置8の回転機構のドラッギングを防止する。
たとえば、第2のフリーホイール116は、第3の伝達段104の回転速度が第2のシャフト92の回転速度以上である場合、第2の出力ギア88を第2のシャフト92に一体化するように構成されている。
たとえば、第2のシャフト92の回転速度が第2の出力ギア88の回転速度よりも大きい場合、シリンダの係合解除により、第2のフリーホイール116が前進可能になり、乗り手が推進装置をも回転させなければならなくなることを防止している。
このように、ユーザの前方移動の動作が、推進装置8により与えられる回転速度よりも高いペダルの回転速度を確実にする場合、第2の自動フリーホイール116は、推進装置8を係合解除させる。推進装置8は、そうでなければ、ユーザによって与えられた駆動動作に対するブレーキとして機能する。代わりに、ユーザによってペダル20に与えられた動作が、推進装置8により与えられる回転速度よりも低いペダルの回転速度を生じさせる場合、第2のフリーホイール116が、推進装置8からペダルへのトルクの伝達を可能にする。この場合、推進装置8によって生成されるものより低いトルク/動力を供給するのはユーザである。いずれの場合でも、ユーザによってペダル20に与えられるトルクは、解放されることはないが、常にクランクピン18に、そして、たとえばチェーントランスミッション122により、駆動ホイールに伝達される。換言すると、ユーザによって与えられたトルクの動作が、クランクピン18で、推進装置によって供給されたトルク動作に付加されて、ユーザの動作に対する補助要素として機能する。
チェーントランスミッション122は、クランクピン18およびピニオン126と一体に回転するクラウン124を備え得る。クラウン124とピニオン126とは、それぞれ歯が設けられ、チェーントランスミッション122のチェーンリンクと適切にかみ合わされている。
明らかに、前述の動作は、複数の動作パラメータに基づき、電子ユニット32によって実装される電気機械12の動作/介在ロジックの影響を受けている。
本願明細書の記載から理解できるように、本発明の推進装置により、従来技術に存在する欠点を克服することが可能になる。
具体的には、駆動力(パワートレインユニット)をペダルアシスト自転車(EPAC)に提供することを実現した本発明は、中心ハブまたはクランク軸に実装されているので、極めてコンパクトである。
実際には、径方向における高いコンパクト性を得るために、ユニットは、ペダル軸と同軸のトルク出力軸を有するように設計した。
コンパクト性の目的は、推進装置によってクランク軸に働くトルクをもたらすように、最小可能数の基準を提供することにより達成しようとした。実際には、常にすべての方向において可能であるもっともコンパクトな解決策を得る観点から、ギアのレイアウト(歯車の軸によって形成される三角形)を最適化した。
さらに、前述の一対のギアを使用することにより、モータからクランクピン18への運動の伝達のためのコンパクト性の目的を依然として達成しつつ、高価な遊星アセンブリの採用を避けることが可能である。
加えて、モータユニットのハウジング内に電子ユニットが挿入された前述の構造は、さらなるコンパクト性を可能にし、さらに、ユニット自体を安全で保護された位置に置くことを可能にする。
このコンパクト性は、クランク軸周りでかつトランスミッションとは反対側のユニットのC構造のおかげで、さらに得られる。この場合、一方では、クランクの軸に垂直な投影面上のロータの投影内にある単一のコンパクトな構成要素に電子ユニットを収容することが可能であり、他方では、依然としてクランク軸の近くに配置されたトランスミッションを有することが可能である。さらに、移動中に前方から自転車をおおう空気流に起因して、電子ユニットをより効果的に冷却できる。他方では、伝達手段は、リアホイール側に直接配置されている。
有利なことに、電子ユニットは、クランクの軸に垂直な投影面でロータの投影に挿入できる。これにより、推進装置の顕著なコンパクト性が達成される。
加えて、伝達手段の後方で高くなった配置は、以下のことに寄与する。
自転車の重心を中心に集め、動的挙動および安定性を向上させること。
いわゆる車両の地上高を大きくさせて、スピードバンプなどの障害物を乗り越えることをより容易にすること。
クランク軸とモータ軸との間の同軸性により、電気機械のロータ要素およびステータ要素のレイアウトを最適化することが可能になる。
この場合、外部のロータと内部のステータとを有する解決策を選択した。ロータにより生成される電動力がアームを増大させるので、ステータの外部のロータを使用することにより、等しい外形寸法に関して、推進装置によって発揮されるトルクの最適化が可能になる。
このため、ステータの外部のロータにより、等しい外形寸法で駆動トルクを最適化する目的も達成される。
さらに、自転車の進行方向が規定されていると、推進装置は、好ましくは、電子ユニットが、少なくとも進行方向の側に部分的に位置するように、自転車のフレームに関連付けられかつ方向付けられている。この場合、前進運動の間、電子ユニット自体を収容するハウジングに当たる空気に起因する冷却から利益を得ることが可能である。
本発明の推進装置は、また、より効率的な熱の消散のための技術を採用している。この要求は、一方では、ハウジング内の電子ユニットの配置が推進装置のコンパクト性を向上させること、他方では、囲まれた位置にありかつ外気と直接熱交換しないことから、電子ユニットがオーバーヒートするリスクを増大させることに起因する。さらに、推進装置の過度のコンパクト性は、ロータ/ステータユニットの熱の消散をより重要にすることに寄与する。
この理由から、本発明は、電子ユニットの冷却だけでなく、モータの冷却をも最適化するために、位相幾何学レベルと、機械的締結のレベルとの両方における技術を提供する。
実際には、位相幾何学レベルでは、ユニットの優先的な配置は、ユニットが移動方向に向けられ、自転車の前方の空気に起因する冷却の利益を得ることを要求する。
さらに、ロータは、ロータを覆うハウジングの対応する部分が自転車の移動中に多くの冷却空気流に当たるように、ステータに対して径方向外側にある。
さらに、円筒状要素と関連する導管とは、電子ユニットによって生成された熱を放出するために、熱交換を促すように設計されている。
加えて、固定されている中間要素は、モータから来る熱流を受領し、ハウジングを通してユニットの外部に熱を導くことが可能である。
換言すると、中間要素は、電子ユニットおよびエンジンから来る熱を受領し、外部に熱を伝達して、熱を消散する要素である。
一実施形態によれば、中間要素は、両側、すなわち、電子ユニット側およびモータ側からそれぞれ来る熱を軸方向で受領し、ハウジングを介して径方向外側に送る。
当業者であれば、偶然的および特定の要請を満たすために、前述の推進装置に対する複数の変更および変形を行う場合がある。しかし、これらはすべて、添付の特許請求の範囲によって規定される発明の範囲に含まれる。