抗PCSK9免疫グロブリンG型(IgG)抗体の結晶が、本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、抗PCSK9免疫グロブリンG型(IgG)抗体の結晶は、非経口投与用の結晶製剤での使用に好適である。いくつかの実施形態では、抗PCSK9免疫グロブリンG型(IgG)抗体の結晶は、精製及び原薬保存に好適である。医薬として使用するための結晶製剤を調製するために、このような抗PCSK9免疫グロブリンG型(IgG)抗体の結晶を使用する方法;高濃度の結晶性抗PCSK9抗体を含む製剤、これらの製剤を処置に使用する方法、これらの製剤を、例えば皮下または筋肉内に投与する方法、及びこれらの製剤を含む容器またはキットもまた、本明細書に記載される。
I.製剤中の抗体
いくつかの実施形態では、製剤中の抗PCSK9抗体は、少なくとも約100mg/ml、約101mg/ml、約102mg/ml、約103mg/ml、約104mg/ml、約105mg/ml、約106mg/ml、約107mg/ml、約108mg/ml、約109mg/ml、約110mg/ml、約111mg/ml、約112mg/ml、約113mg/ml、約114mg/ml、約115mg/ml、約116mg/ml、約117mg/ml、約118mg/ml、約119mg/ml、約120mg/ml、約121mg/ml、約122mg/ml、約123mg/ml、約124mg/ml、約125mg/ml、約126mg/ml、約127mg/ml、約128mg/ml、約129mg/ml、約130mg/ml、約131mg/ml、約132mg/ml、約132mg/ml、約133mg/ml、約134mg/ml、約135mg/ml、約136mg/ml、約137mg/ml、約138mg/ml、約139mg/ml、約140mg/ml、約141mg/ml、約142mg/ml、約143mg/ml、約144mg/ml、約145mg/ml、約146mg/ml、約147mg/ml、約148mg/ml、約149mg/ml、約150mg/ml、約151mg/ml、約152mg/ml、約153mg/ml、約154mg/ml、約155mg/ml、約156mg/ml、約157mg/ml、約158mg/ml、約159mg/ml、約160mg/ml、約161mg/ml、約162mg/ml、約163mg/ml、約164mg/ml、約165mg/ml、約166mg/ml、約167mg/ml、約168mg/ml、約169mg/ml、約170mg/ml、約171mg/ml、約172mg/ml、約173mg/ml、約174mg/ml、約175mg/ml、約176mg/ml、約177mg/ml、約178mg/ml、約179mg/ml、約180mg/ml、約181mg/ml、約182mg/ml、約183mg/ml、約184mg/ml、約185mg/ml、約186mg/ml、約187mg/ml、約188mg/ml、約189mg/ml、約190mg/ml、約191mg/ml、約192mg/ml、約193mg/ml、約194mg/ml、約195mg/ml、約196mg/ml、約197mg/ml、約198mg/ml、約199mg/ml、約200mg/ml、約201mg/ml、約202mg/ml、約203mg/ml、約204mg/ml、約205mg/ml、約206mg/ml、約207mg/ml、約208mg/ml、約209mg/ml、約210mg/ml、約211mg/ml、約212mg/ml、約213mg/ml、約214mg/ml、約215mg/ml、約216mg/ml、約217mg/ml、約218mg/ml、約219mg/ml、約220mg/ml、約221mg/ml、約222mg/ml、約223mg/ml、約224mg/ml、約225mg/ml、約226mg/ml、約227mg/ml、約228mg/ml、約229mg/ml、約230mg/ml、約231mg/ml、約232mg/ml、約232mg/ml、約233mg/ml、約234mg/ml、約235mg/ml、約236mg/ml、約237mg/ml、約238mg/ml、約239mg/ml、約240mg/ml、約241mg/ml、約242mg/ml、約243mg/ml、約244mg/ml、約245mg/ml、約246mg/ml、約247mg/ml、約248mg/ml、約249mg/ml、約250mg/mlの濃度(「高タンパク質濃度」)で存在し、最大で、例えば約450mg/ml、約440mg/ml、430mg/ml、420mg/ml、410mg/ml、400mg/ml、約390mg/ml、約380mg/ml、約370mg/ml、約360mg/ml、約350mg/ml、約340mg/ml、約330mg/ml、約320mg/ml、約310mg/ml、約300mg/ml、約290mg/ml、約280mg/ml、約270mg/ml、または約260mg/mlの範囲であってよい。上記端点の組み合わせを特徴とする任意の範囲が企図され、約70mg/ml〜約250mg/ml、約100mg/ml〜約250mg/ml、約150mg/ml〜約250mg/ml、約150mg/ml〜約300mg/ml、約150mg/ml〜約320mg/mlまたは約150mg/ml〜約350mg/mlを含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、抗PCSK9抗体は、抗体21B12である。抗体21B12は、米国特許第US8,030,457号に前述されていて、配列表を含むその開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載される抗PCSK9抗体は、10−6以下、または10−7以下、または10−8以下、または10−9以下のKD(より小さい数値が、より高い結合親和性を意味する)で、配列番号1のPCSK9に結合する。親和性は、Biacore技術によるものを含む、当該技術分野において既知の任意の手段により決定され得る。
「21B12抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、2本の軽鎖及び2本の重鎖で構成されるIgG免疫グロブリンを指し、軽鎖は、配列番号9におけるCDRL1配列の軽鎖相補性領域(CDR)、配列番号9におけるCDRL2配列のCDRL2、及び配列番号9におけるCDRL3配列のCDRL3を含み、重鎖は、配列番号5におけるCDRH1配列の重鎖相補性決定領域(CDR)、配列番号5におけるCDRH2配列のCDRH2、及び配列番号5におけるCDRH3配列のCDRH3を含む。いくつかのその他の実施形態では、抗体は、配列番号11におけるCDRL1配列の軽鎖相補性領域(CDR)、配列番号11におけるCDRL2配列のCDRL2、及び配列番号11におけるCDRL3配列のCDRL3、ならびに配列番号7におけるCDRH1配列の重鎖相補性決定領域(CDR)、配列番号7におけるCDRH2配列のCDRH2、及び配列番号7におけるCDRH3配列のCDRH3を含むIgGである。いくつかの実施形態では、21B12抗体は、配列番号24(21B12 CDRL1)、及び配列番号25(21B12 CDRL2)、及び配列番号26(21B12 CDRL3)ならびに配列番号20または配列番号21(21B12 CDRH1)、及び配列番号22(21B12 CDRH2)、及び配列番号23(21B12 CDRH3)のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、抗PCSK9 IgG抗体は、抗体21B12と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する、抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を含む。したがって、いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むIgGである。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むIgGである。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むIgGである。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むIgGである。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むIgGである。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むIgGである。
いくつかの実施形態では、21B12抗体の軽鎖は、配列番号9または配列番号11(21B12軽鎖可変領域)のアミノ酸配列を含み、21B12抗体の重鎖は、配列番号5または配列番号7(21B12重鎖可変ドメイン)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、21B12抗体の軽鎖は、配列番号9(21B12軽鎖可変領域)のアミノ酸配列を含み、21B12抗体の重鎖は、配列番号5(21B12重鎖可変領域)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、21B12抗体の軽鎖は、配列番号11(21B12軽鎖可変領域)のアミノ酸配列を含み、21B12抗体の重鎖は、配列番号7(21B12重鎖可変領域)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は軽鎖定常領域に融合され、重鎖可変領域はIgG定常領域に融合される。いくつかの実施形態では、21B12抗体は、抗体21B12の重鎖及び/または軽鎖可変領域、すなわちアイソタイプIgG1、2、3もしくは4のヒト重鎖定常領域に融合される配列番号5(21B12重鎖可変領域)(例えば、天然、コンセンサスまたは修飾されていて、結合に影響しないことが知られている多数の修飾が当該技術分野において既知である)、及び/もしくはヒト軽鎖定常領域に融合される配列番号9(21B12軽鎖可変領域)(例えば、天然、コンセンサスまたは修飾されていて、結合に影響しないことが知られている多数の修飾が当該技術分野において既知である)、またはアイソタイプIgG1、2、3もしくは4のヒト重鎖定常領域に融合される配列番号7(21B12重鎖可変領域)、及び/もしくはヒト軽鎖定常領域に融合される配列番号11(21B12軽鎖可変領域)を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体21B12の成熟重鎖及び軽鎖(配列番号16または17の21B12成熟軽鎖及び配列番号18または19の21B12成熟重鎖)を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号16及び配列番号18を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号17及び配列番号19を含む。
いくつかの実施形態では、抗体は、哺乳動物宿主細胞において、抗体21B12の重鎖及び/もしくは軽鎖、またはあるいは重鎖及び/もしくは軽鎖可変領域をコードするcDNAを発現することにより得ることができるアミノ酸配列を含む。「抗体」という用語は、インタクトな免疫グロブリン、例えばIgGの場合、2本の重鎖及び2本の軽鎖で構成される四量体免疫グロブリン(例えば、好ましくは全長重鎖及び/または軽鎖を有し、場合により抗PCSK9結合特性を保持するフレームワークまたは定常領域内に変異を有する、キメラ、ヒト化、またはヒト型)を指す。
「単離」抗体は、その用語が本明細書で定義される場合、その自然環境の成分から同定及び分離された抗体を指す。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断または治療的使用に干渉するであろう材料であり、酵素、ホルモン、及びその他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含む場合がある。ある種の実施形態では、抗体は、(1)95重量%超の抗体、最も好ましくは99重量%超まで、(2)N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルー、もしくは好ましくは銀染色を使用した還元もしくは非還元条件下でのSDS−PAGEによる均一性まで精製されるだろう。単離した天然に存在する抗体は、組換え細胞内でin situの抗体を含み、これは抗体の自然環境の少なくとも1種の成分が存在しないだろうからである。しかしながら、通常、単離抗体は少なくとも1つの精製ステップにより調製されるだろう。
「モノクローナル」抗体は、多様なエピトープと結合する多様な配列の抗体の混合集団を指す「ポリクローナル」抗体と比較して、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、少量で存在する場合もある天然に存在し得る変異を除いては集団に含まれる個々の抗体が同一である。「ヒト化抗体」という語句は、配列をよりヒト様にする修飾を含む非ヒト抗体、典型的にはげっ歯類モノクローナル抗体の配列に由来する抗体を指す。あるいは、ヒト化抗体はキメラ抗体に由来してよい。「ヒト」抗体という語句は、例えば、ファージディスプレイなどの既知の技術によりヒト抗体遺伝子のライブラリーをスクリーニングすることによってヒト配列に由来する抗体、または内因性免疫グロブリン産生を全く有さず、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するように操作されたトランスジェニック動物を使用して産生される抗体を指す。
「免疫グロブリンG」または「天然IgG抗体」は、四量体糖タンパク質である。天然に存在する免疫グロブリンでは、各四量体は2つの同一のポリペプチド鎖対で構成され、各対は1本の「軽」鎖(約25kDa)及び1本の「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識に関与する約100〜110以上のアミノ酸の「可変」(「V」)領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主としてエフェクター機能に関与する定常領域を定義する。免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常ドメインにおけるアミノ酸配列に応じて異なるクラスに割り当てられ得る。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、及びイプシロン(ε)に分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと定義する。これらのいくつかは、さらにサブクラスまたはアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に分けられてよい。異なるアイソタイプは異なるエフェクター機能を有し;例えば、IgG1及びIgG3アイソタイプは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する。ヒト軽鎖は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)軽鎖に分類される。軽鎖及び重鎖内において、可変領域及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域により連結され、重鎖はさらに約10のアミノ酸の「D」領域も含む。一般に、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照のこと。
「超可変」領域という用語は、相補性決定領域すなわちCDRからのアミノ酸残基(すなわち、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)により記載されているような、軽鎖可変ドメインにおける残基24〜34(L1)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメインにおける31〜35(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3))を指す。「フレームワーク」すなわちFR残基は、超可変領域残基以外のそれらの可変領域残基である。
「バリアント」という用語は、抗体に関連して使用される場合、可変領域または可変領域と同等の部分に少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、または挿入を含有する、抗体のポリペプチド配列を指すが、ただし、バリアントが所望の結合親和性または生物活性を保持することを条件とする。加えて、本明細書に記載されるような抗体は、半減期もしくはクリアランス、ADCC及び/またはCDC活性を含む、抗体のエフェクター機能を修飾するアミノ酸修飾を定常領域に有してよい。このような修飾は、例えば、薬物動態を増強する、または癌の処置における抗体の有効性を増強し得る。Shields et al.,J.Biol.Chem.,276(9):6591−6604(2001)(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照のこと。IgG1の場合、定常領域、特にヒンジまたはCH2領域に対する修飾は、ADCC及び/またはCDC活性を含むエフェクター機能を増加または低減させる場合がある。その他の実施形態では、IgG2定常領域は、抗体−抗原凝集体形成を低減させるように修飾される。IgG4の場合、定常領域、特にヒンジ領域に対する修飾は、半抗体の形成を減少させる場合がある。
「修飾」という用語は、本明細書に記載される抗体またはポリペプチドに関連して使用される場合、1つ以上のアミノ酸変化(置換、挿入または欠失を含む);PCSK9結合活性に干渉しない化学修飾;治療剤または診断剤への複合化;標識化(例えば、放射性核種または様々な酵素による);PEG化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)などの共有ポリマー結合及び非天然アミノ酸の化学合成による挿入または置換による共有結合修飾を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の修飾ポリペプチド(抗体を含む)は、本発明の非修飾分子の結合特性を保持するだろう。
「誘導体」という用語は、本発明の抗体またはポリペプチドに関連して使用される場合、治療剤または診断剤への複合化、標識化(例えば、放射性核種または様々な酵素による)、PEG化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)などの共有ポリマー結合及び非天然アミノ酸の化学合成による挿入または置換によって共有結合修飾された抗体またはポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、本発明の誘導体は、本発明の非誘導体化分子の結合特性を保持するだろう。
タンパク質及び非タンパク質薬剤は、当該技術分野において既知の方法によって抗体に複合化されてよい。複合化方法としては、直接連結、共有結合したリンカーによる連結、及び特異的結合対要素(例えば、アビジン−ビオチン)が挙げられる。このような方法としては、例えば、ドキソルビシンの複合化については、Greenfield et al.,Cancer Research 50,6600−6607(1990)により記載されているもの、ならびに白金化合物の複合化については、Arnon et al.,Adv.Exp.Med.Biol.303,79−90(1991)により、及びKiseleva et al.,Mol.Biol.(USSR)25,508−514(1991)により記載されているものが挙げられる。
II.結晶、結晶製剤及び組成物の製造
ポリペプチド結晶は、水溶液から、または有機溶媒もしくは添加剤を含有する水溶液からの制御されたポリペプチド結晶化により成長する。制御されてよい溶液条件としては、例えば、溶媒、有機溶媒または添加剤の蒸発速度、適切な共溶質及び緩衝剤の存在、pH、ならびに温度が挙げられる。タンパク質の結晶化に影響する様々な要因の包括的な概説は、McPherson(1985,Methods Enzymol 114:112−120)により公開されている。加えて、McPherson及びGilliland(1988,J Crystal Growth,90:51−59)は、結晶化したポリペプチド、ならびにそれらが結晶化した条件の包括的な一覧表を編集した。結晶及び結晶化手法の概要、ならびに解析済みのタンパク質構造の座標に関するリポジトリは、ブルックヘブン国立研究所のProtein Data Bank(www.rcsb.org/pdb/;Bernstein et al.,1977,J Mol Biol 112:535−542)により維持されている。しかしながら、上に引用した参考文献の多くで報告されている条件は、ほとんどの場合、いくつかの大きな回折品質の結晶を生じるように最適化されていることに留意すべきである。したがって、これらの条件はタンパク質ごとに変動し、任意の所与のポリペプチド結晶を大規模製造するための高収率プロセスを提供する訳ではないことが、当業者には理解されるだろう。
一般に結晶は、結晶化されるポリペプチド(すなわち、抗体)と、適切な水性溶媒または適切な結晶化剤、例えば塩もしくは有機溶媒もしくは添加剤などを含有する水性溶媒(総じて「結晶化試薬」)とを組み合わせることにより製造される。溶媒はポリペプチドと組み合わされ、結晶化の誘導に適切であって、ポリペプチド活性及び安定性の維持に許容されるように実験的に決定される温度で攪拌を行ってよい。結晶化の実験室規模での方法としては、ハンギングドロップ蒸気拡散、シッティングドロップ蒸気拡散、微量透析、マイクロバッチ、オイル下、ゲル中及びサンドイッチドロップ法が挙げられる。溶媒は、場合により共結晶化添加剤、例えば沈殿剤、脂肪酸、還元剤、グリセロール、スルホベタイン、界面活性剤、ポリオール、二価カチオン、補因子、またはカオトロープ、及びアミノ酸など、ならびにpHを制御するための緩衝剤種を含み得る。
「共結晶化添加剤」は、ポリペプチドの結晶化を促進する化合物及び/またはタンパク質を安定させて変性から保護する化合物を含む。共溶質の例としては、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化カドミウム、硫酸カドミウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化セシウム、塩化コバルト、CH3(CH2)15N(CH3)3 +Br.−(CTAB)、クエン酸二アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二アンモニウム、酒石酸二アンモニウム、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、DL−リンゴ酸、塩化第二鉄、L−プロリン、酢酸リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、n−アセチルL−アルギニンを含むがこれに限定されないn−アシル−アルファアミノ酸、塩化ニッケル、酢酸カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、フッ化カリウム、ギ酸カリウム、硝酸カリウム、リン酸カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、硫酸カリウム、チオシアン酸カリウム、酢酸ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、コハク酸、タクシメート、クエン酸三アンモニウム、クエン酸三リチウム、トリメチルアミンN−オキシド、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、及び共溶質を供給するように機能するその他の化合物が挙げられる。「結晶化」は、ポリペプチドの結晶化を促進するために、溶液のpHを所望の範囲に維持する化合物を含む。例としては、ACES(N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、ビシン(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン)、BIS−TRIS(2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール)、ホウ酸、CAPS(3−[シクロヘキシルアミノ]−1−プロパンスルホン酸)、クエン酸、EPPS(HEPPS、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンスルホン酸)、Gly−Gly(NH2CH2CONHCH2COOH、グリシル−グリシン)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸)、イミダゾール、MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)、MOPS(3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸))、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム)、二塩基性リン酸ナトリウム、TAPS(N−[トリス−(ヒドロキシメチル)メチル]−3−アミノプロパンスルホン酸)、TAPSO(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、トリシン(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン)、Tris−HCl、TRIZMA(2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)、及び溶液を特定のpHにまたはその近傍に維持するように機能するその他の化合物が挙げられる。
沈殿剤の選択は、結晶化に影響する1つの要因である。例として、例えば分子量200〜20,000kDのPEG生成物が使用され得る。PEG3350は、体積排除効果により作用する長鎖ポリマー沈殿剤または脱水剤である。硫酸アンモニウムなどのリオトロピック塩は、カプリル酸などの短鎖脂肪酸と同様に、沈殿プロセスを促進する。ポリイオン種もまた、有用な沈殿剤である。
例えば、皮下注射用製剤で使用するための抗体は、好ましくは生理学的pH範囲で、及び等張オスモル濃度を提供する結晶化試薬中で沈殿する。
添加剤、共溶質、緩衝剤などの必要性、及びそれらの濃度は、結晶化を促進するように実験的に決定される。ポリペプチドの好適な結晶化条件のいくつかの例は、以下の実施例1、2及び3に記載されている。
抗体21B12は、様々な条件下で結晶化される。様々な形態の抗体21B12結晶は、液体製剤中の抗体が、ある体積の既知の結晶化試薬に添加されて密閉容器内で保存されることにより、スケールアップ条件下で成長し得る。抗体21B12結晶は、室温でこれらの条件下において24時間未満で成長し得、約30%〜約99%%の収率をもたらすことが示されている。
工業規模プロセスでは、結晶化をもたらす制御された沈殿は、ポリペプチド、沈殿剤、共溶質及び場合により緩衝剤の単純な組み合わせにより、バッチプロセスで最適に実施され得る。別の選択肢としては、ポリペプチドは、出発材料としてポリペプチド沈殿物を使用すること(「播種」)により結晶化されてよい。この場合、ポリペプチド沈殿物は、結晶化溶液に添加され、結晶が形成されるまでインキュベートされる。代替の実験室結晶化方法、例えば透析または蒸気拡散などもまた採用され得る。上記のMcPherson及び上記のGillilandには、結晶化文献のそれらの概説において、好適な条件の包括的な一覧表を含む。時として、結晶化ポリペプチドが架橋される場合、意図される架橋剤と結晶化媒体との間の不適合により、結晶をより好適な溶媒系に交換することが必要となる場合がある。
いくつかの実施形態によれば、ポリペプチド結晶、結晶製剤及び組成物は、以下のプロセスにより調製される:最初に、ポリペプチドを結晶化する。次に、本明細書に記載されるような賦形剤または成分を、直接母液に添加する。あるいは、母液を除去した後、最短で1時間〜最長で24時間、結晶を賦形剤またはその他の製剤成分の溶液中に懸濁する。賦形剤濃度は、典型的には約0.01〜30%w/wであり、これは、それぞれ99.99〜70%w/wのポリペプチド結晶濃度に相当する。一実施形態では、賦形剤濃度は、約0.1〜10%であり、これは、それぞれ99.9〜90%w/wの結晶濃度に相当する。母液は、濾過、緩衝液交換により、または遠心分離のいずれかにより、結晶スラリーから除去できる。その後、結晶は、任意の注射用等張ビヒクルを、これらのビヒクルが結晶を溶解しない限りこれらを用いて、場合により50〜100%の1種以上の有機溶媒または添加剤、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノールもしくは酢酸エチル、またはポリエチレングリコール(PEG)などの溶液を用いて、室温または−20℃〜25℃のいずれかの温度で洗浄する。加えて、水を使用して結晶を洗浄することができる。結晶は、結晶の上に窒素気流、空気流、または不活性ガス流のいずれかを通過させることにより乾燥させる。最後に、必要であれば結晶の微粉化を実施することができる。ポリペプチド結晶の乾燥は、N2、空気、もしくは不活性ガスによる乾燥;真空オーブン乾燥;凍結乾燥;揮発性有機溶媒による洗浄もしくは添加剤による洗浄に続く溶媒の蒸発;またはヒュームフード内での蒸発を含む手段による、水、有機溶媒もしくは添加剤、または液体ポリマーの除去である。典型的には、乾燥は、結晶が自由流動性粉末となる時に達成される。乾燥は、湿潤結晶の上にガス流を通過させることにより実施してよい。ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、空気またはこれらの組み合わせから成る群から選択されてよい。達成される粒子の直径は、0.1〜100マイクロメートルの範囲内、または0.2〜10マイクロメートルの範囲内、または10〜50マイクロメートルの範囲内、または0.5〜2マイクロメートルの範囲内であり得る。吸入によって投与される製剤について、一実施形態では、ポリペプチド結晶から形成される粒子は、0.5〜1マイクロメートルの範囲内である。
いくつかの実施形態によれば、タンパク質結晶、タンパク質結晶製剤または組成物を調製する場合、結晶化の間に界面活性剤などの促進剤は添加されない。いくつかのその他の実施形態によれば、タンパク質結晶、タンパク質結晶製剤または組成物を調製する場合、結晶化の間に界面活性剤などの促進剤が添加される。賦形剤または成分は、約1〜10%w/wの濃度で、あるいは約0.1〜25%w/wの濃度で、あるいは約0.1〜50%w/wの濃度で結晶化後に母液に添加される。これらの濃度は、それぞれ99〜90%w/w、99.9〜75%w/w及び99.9〜50%w/wの結晶濃度に相当する。賦形剤または成分は、母液中で結晶と共に約0.1〜3時間インキュベートされ、あるいはインキュベーションは、0.1〜12時間実施され、あるいはインキュベーションは、0.1〜24時間実施される。
いくつかのまたは任意の実施形態では、成分または賦形剤は母液以外の溶液に溶解され、タンパク質結晶が母液から取り出されて、賦形剤または成分の溶液中に懸濁される。いくつかの実施形態では、賦形剤または成分の溶液(または再懸濁ビヒクル)は、等張かつ注射用の、賦形剤または成分または界面活性剤の混合物である。いくつかの実施形態では、賦形剤または成分の溶液(または再懸濁ビヒクル)は、等張かつ注射用の、賦形剤または成分または界面活性剤の混合物ではない。成分または賦形剤濃度及びインキュベーション時間は、上記のものと同じである。
ポリペプチド結晶
本明細書で使用する場合、「結晶」または「結晶性」は、物質の固体状態の一形態を指し、第2の形態、すなわち非晶質固体状態とは異なる。結晶は、格子構造、特徴的な形状、ならびに光学特性、例えば屈折率及び複屈折などを含む、特徴的な特性を示す。結晶は、3次元で周期的に繰り返すパターンで配置された原子から成る(C.S.Barrett,Structure of Metals,2nd ed.,McGraw−Hill,New York,1952,p.1)。対照的に、非晶質材料は、物質の非結晶性固体形態であって、非晶質沈殿物と称されることもある。このような沈殿物は、結晶性固体状態に特徴的な分子格子構造を全く有さず、物質の結晶形に典型的な複屈折またはその他の分光学的特徴を示さない。
ポリペプチド結晶は、結晶格子に配置されたポリペプチド分子である。ポリペプチド結晶は、3次元で周期的に繰り返される特定のポリペプチド−ポリペプチド相互作用のパターンを含有する。本発明のポリペプチド結晶は、ポリペプチドの非晶質固体形態または沈殿物、例えばポリペプチド溶液を凍結乾燥することにより得られるものなどとは区別されるべきである。
ポリペプチド結晶では、ポリペプチド分子は、共に配置されて対称単位を形成する非対称単位を形成する。ポリペプチド結晶の対称単位の幾何学的構造は、例えば、立方晶系、六方晶系、単斜晶系、斜方晶系、正方晶系、三斜晶系、または三方晶系であり得る。それら全ての結晶の全体構造は、例えば、両錐体、立方体、針、板、角柱、菱形、棒、もしくは球体、またはこれらの組み合わせの形態であり得る。その他の観察される形態としては、ブロック状、UFO状、フットボール状、葉状、小麦状、シングレット状、羽毛状、ストロー状、菊状、球状またはこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、結晶は、クラスターで観察される。「立方」構造クラスの結晶は、より具体的には十八面体または十二面体結晶形を有し得る。結晶の直径は、マーチン径として定義される。これは、無作為に配向した結晶を2つの等しい投影面積に分ける、視覚スケールに平行な線の長さとして測定される。針または棒などの形態の結晶はまた、本明細書において結晶の長さと称される最大寸法を有するだろう。結晶はまた、X線回折により特徴付けられる。
結晶性ポリペプチドの特性試験
ポリペプチド結晶が形成された後、それらのポリペプチド含有量を確認し、さらにそれらの物理構造を検査するために、その結晶で様々な分析を行うことができる。例えば、必要であれば個々の結晶を結晶化溶液から取り出して、水性もしくは有機溶媒または添加剤で洗浄し、次いで(例えば、空気乾燥により、結晶の上に不活性ガス流を通過させることにより、凍結乾燥により、または真空により)乾燥させることができる。結晶を単離し、結晶成長液滴から取り出して、次いでX線回折のために搭載することができる。
結晶はまた、当該技術分野で記載されている様々な手段により特徴付けられ得る。例えば、タンパク質結晶製造及び製剤化手順、ならびに結晶及びそれらの成分タンパク質を特徴付けるための分析ツールの開示に関して、Basu et al.,Expert Opin.Biol.Thera.4,301−317(2004)(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照のこと。粉末X線回折は、一般的に結晶性材料を同定するために使用されるが、これは非常に大きく完全なタンパク質結晶を必要とし、結晶製剤で典型的に使用されるタンパク質微結晶には一般的に適用されない。電子線回折及び固体核磁気共鳴(ssNMR)が、結晶を特徴付けるために適用され得る。結晶サイズ、形状及び形態(例えば、表面形態)は、例えば、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、及び/または光散乱(例えば、光子相関分光法またはDLS、低角度レーザー光散乱またはLAALS)により検査され得る。結晶の全表面積及び空隙率もまた特徴付けられ得る。質量分析、マイクロ減衰全反射フーリエ変換赤外分光(FTIR)及び/または示差走査熱量測定(DSC)は、タンパク質の一次及び二次構造についての情報を提供し得る。
別の例としては、ポリペプチド結晶を結晶化溶液から取り出して洗浄もしくはすすぐことができる、または結晶化溶液の大部分を結晶から除去して、異なる溶液と置き換えることができる。このように、結晶化手順で使用した特定の塩を、結晶格子内で異なる塩と置き換えることができる。本発明の一実施形態では、結晶化した抗体21B12を結晶化緩衝液から分離して、ナトリウム、カリウム、またはマグネシウムの塩(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、または硫酸マグネシウム)を含有する溶液中に置く。X線回折のために、置換溶液は、結晶化ポリペプチドの原子座標の決定に有用な重原子を含有し得る。
さらなる一実施例では、ポリペプチド結晶を結晶化溶液から取り出して、さらなる試験のために適切な緩衝液、例えばゲル電気泳動による、結晶化されたポリペプチドの分析用のSDS含有緩衝液中などに可溶化することができる。ゲル電気泳動によるタンパク質の分析方法は周知であって、この方法は銀またはクーマシーブルー色素によるゲルの染色、及び結晶化されたポリペプチドの電気泳動と、既知分子量のポリペプチドマーカーの泳動との比較を含む。別の方法では、ポリペプチドは、ポリペプチドに特異的に結合する標識化抗体の使用によってゲル内で可視化される。結晶化されたポリペプチドはまた、エドマン分解によるアミノ酸配列決定のために、質量分析のために、その他の分光学的散乱、屈折、回折、もしくは吸収研究のために、または標識分子とポリペプチドとの結合によるポリペプチドの標識化のために適切な緩衝液中に可溶化することができる。
III.治療的投与のための製剤
本明細書で使用する場合、「組成物」という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも2種の成分を含む混合物を意味する。特に、結晶性抗PCSK9抗体を含む組成物、または結晶性抗PCSK9抗体を使用して調製される組成物が、本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、結晶性抗PCSK9抗体を含む、またはそれを使用して調製される組成物または製剤は、それを必要とする患者への注射及び/または投与に好適であるように調製される。薬学的目的で患者に投与される組成物は、実質的に無菌であり、レシピエントにとって過度に毒性または感染性のある薬剤を一切含有しない。
いくつかの実施形態では、結晶性抗PCSK9抗体、例えば結晶性抗体21B12などは、以下:生理学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤のうち1種以上を用いて製剤化される結晶性抗PCSK9抗体を含む、生理学的に許容される組成物(本明細書においては、医薬組成物または医薬製剤とも称される)の形態で投与される。このような担体、賦形剤、または希釈剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントにとって非毒性である。通常、このような組成物の調製は、結晶性抗PCSK9抗体を、以下:緩衝剤、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸など、低分子量ポリペプチド(10未満のアミノ酸を有するものなど)、タンパク質、アミノ酸、例えばロイシン、プロリン、アラニン、バリン、グリシン、セリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、イソロイシン、トレオニン、システイン、チロシン、ヒスチジン、リジン及びアルギニンなど、炭水化物、例えばグルコース、スクロースまたはデキストリンなど、キレート剤、例えばEDTAなど、グルタチオンならびにその他の安定剤及び賦形剤のうち1種以上と組み合わせることを必要とする。液体製剤では、中性緩衝生理食塩水または非特異的血清アルブミンと混合した生理食塩水は、適切な例示的希釈剤である。適切な業界標準に従って、ベンジルアルコールなどの防腐剤もまた添加されてよい。医薬製剤に用いられてよい成分のさらなる例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1980,ならびにAmerican Pharmaceutical Association及びPharmaceutical Society of Great Britainによって共同出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipientsに提示されている。
一実施形態では、本明細書に記載される製剤はバルク製剤として調製され、したがって医薬組成物の成分は、投与に必要とされるであろう成分よりも多くなるように調節され、投与前に適切に希釈されることが企図される。
本明細書に記載される抗体結晶は、保存及び取り扱いに好適な形態で、ならびに吸入または経肺投与に好適な形態で、例えばエアロゾル製剤の調製用粉末の形態で固体結晶製剤または粉末製剤として製剤化され得る。さらなる一実施形態では、抗体結晶は、このような結晶の溶液で、またはこのような結晶のスラリーで製剤化され得る。別の実施形態では、抗体結晶は、治療的投与のための水性製剤などの液体製剤を調製するために使用される。
A.固体結晶製剤
抗体結晶の固体製剤は、溶液から実質的に単離されていて、または乾燥されていて、例えば粉末形態中の自由結晶として、または粒子として存在する結晶を含む。これに関連して、「粉末」という表現は、本質的に乾燥粒子、すなわち含水率が約10重量%未満、または6重量%未満、または4重量%未満である粒子の群を指す。ポリペプチド結晶または粉末は、場合により担体または界面活性剤と組み合わされ得る。好適な担体剤としては、1)炭水化物、例えば単糖類、例えばフルクトース、ガラクトース、グルコース、ソルボースなど;2)二糖類、例えばラクトース、トレハロースなど;3)多糖類、例えばラフモース(raffmose)、マルトデキストリン、デキストランなど;4)アルジトール、例えばマンニトール、キシリトールなど;5)無機塩、例えば塩化ナトリウムなど;及び6)有機塩、例えばクエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。ある種の実施形態では、担体は、トレハロース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、イノシトール、スクロース、塩化ナトリウム、及びクエン酸ナトリウムから成る群から選択される。界面活性剤は、脂肪酸の塩、胆汁塩、リン脂質またはポリソルベートから成る群から選択され得る。脂肪酸塩としては、C10〜14脂肪酸の塩、例えばカプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、及びミリスチン酸ナトリウムなどが挙げられる。胆汁塩としては、ウルソデオキシコール酸塩、タウロコール酸塩、グリココール酸塩、及びタウロジヒドロフシド酸塩の塩が挙げられる。ポリソルベートとしては、ポリソルベート20及びポリソルベート80が挙げられる。一実施形態では、界面活性剤は、タウロコール酸塩の塩、例えばタウロコール酸ナトリウムなどである。界面活性剤として使用され得るリン脂質としては、リゾホスファチジルコリンが挙げられる。一実施形態では、界面活性剤はポリソルベート20であり、別の実施形態では、界面活性剤はポリソルベート80である。
B.溶液またはスラリー中の結晶
ポリペプチド結晶を、懸濁液中での保存に好適とする方法であって、結晶化緩衝液(母液)を非水性溶媒と置き換えることを含む方法もまた、本明細書に記載される。さらに別の実施形態では、結晶スラリーは、第1溶媒を回転除去し、第2有機溶媒または添加剤を使用して残存する結晶性固体を洗浄して水を除去し、続いて非水性溶媒を蒸発させることにより固体にされ得る。結晶性治療用タンパク質の非水性スラリーは、皮下送達に特に有用である。
このような一実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチド結晶は、ポリペプチド結晶を安定化させることを目的として液体有機添加剤と組み合わされる。このような混合物は、n%の有機添加剤(ここで、nは1〜99である)及びm%の水溶液(ここで、mは100−nである)を含む、水性−有機混合物として特徴付けられ得る。有機添加剤の例としては、フェノール化合物、例えばm−クレゾールもしくはフェノールもしくはこれらの混合物など、及びアセトン、メチルアルコール、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、1−プロパノール、イソプロパノール、2−プロパノール、アセトニトリル、1−ブタノール、2−ブタノール、エチルアルコール、シクロヘキサン、ジオキサン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジクロロエタン、ヘキサン、イソオクタン、塩化メチレン、tert−ブチルアルコール、トルエン、四塩化炭素、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
C.液体製剤
本明細書で提供される別の実施形態は、医薬組成物の安定した長期保存を可能にする水性製剤であり、結晶性抗PCSK9抗体は、医薬組成物の調製に使用される活性成分である。この製剤が有用である理由の1つは、この製剤が再水和などの任意の追加ステップを必要としないことから、患者への使用により便利であるからである。本明細書で使用する場合、「溶液」または「液体製剤」は、好適な溶媒または相互に混和性の溶媒の混合物に溶解される1種以上の化学物質を含有する液体調製物を意味することを意図する。
再構成は、適切な緩衝液または医薬製剤中におけるポリペプチド結晶または結晶製剤または組成物の溶解である。
D.医薬製剤の成分
本医薬組成物は、上記のような結晶性抗PCSK9抗体に加えて、その多くまたは全てが市販業者から入手可能である、以下の段落に列挙された以下の種類の成分または賦形剤のうち1種以上を組み合わせることにより調製される。組成物に含まれる様々な成分の組み合わせは、任意の適切な順序で行われ得、すなわち、緩衝剤が最初に、途中でまたは最後に添加され得、張度調節剤もまた最初に、途中でまたは最後に添加され得ることが、当業者には理解されるだろう。これらの化学物質のいくつかは、ある種の組み合わせにおいて不適合であり得、したがって類似した特性を有するが関連混合物に適合する異なる化学物質と容易に置換されることもまた、当業者には理解されるべきである。例えば、医薬組成物の保存に使用される容器及び/または治療的投与に使用されるデバイス内に存在する賦形剤及びその他の成分または材料の様々な組み合わせの適合性に関する知識が、当該技術分野に存在する(例えば、Akers,2002,J Pharm Sci 91:2283−2300を参照のこと)。
本明細書に記載される製剤中に含まれ得る追加の薬剤の非限定的例としては、酸性化剤(酢酸、氷酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、希塩酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、希リン酸、硫酸、酒石酸、及びその他の好適な酸を含むが、これらに限定されない);活性成分(適切な投与量の、注射部位の不快感を減少させる追加の活性成分、及び非ステロイド性抗炎症薬、例えばトロメタミンなどを含むが、これらに限定されない);エアロゾル噴射剤(ブタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、イソブタン、プロパン及びトリクロロモノフルオロメタンを含むが、これらに限定されない);アルコール変性剤(安息香酸デナトニウム、メチルイソブチルケトン、オクタ酢酸スクロースを含むが、これらに限定されない);アルカリ化剤(強アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トロラミンを含むが、これらに限定されない);固化防止剤(ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素及びタルクを含むが、これらに限定されない);消泡剤(ジメチコン及びシメチコンを含むが、これらに限定されない);キレート剤(金属イオン封鎖剤とも呼ばれる)(エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸及び塩ならびにエデト酸を含むが、これらに限定されない);コーティング剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、医薬用釉薬、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸フタル酸ビニル、シェラック、スクロース、二酸化チタン、カルナバワックス、微結晶ワックス及びゼインを含むが、これらに限定されない);着色料(カラメル、エリトロシン(FD&C Red No.3);FD&C Red No.40;FD&C Yellow No.5;FD&C Yellow No.6;FD&C Blue No.1;赤、黄色、黒、青またはブレンド及び酸化第二鉄を含むが、これらに限定されない);錯化剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、エデト酸、ゲンチシン酸エタノールメイド(ethanolmaide)ならびに硫酸オキシキノリンを含むが、これらに限定されない);乾燥剤(塩化カルシウム、硫酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含むが、これらに限定されない);濾過助剤(粉末セルロース及び精製ケイ質土を含むが、これらに限定されない);香味料及び香料(アネトール、アニス油、ベンズアルデヒド、桂皮油、ココア、エチルバニリン、メントール、サリチル酸メチル、グルタミン酸モノナトリウム、オレンジ花油、オレンジ油、ペパーミント、ペパーミント油、ペパーミント精、ローズ油、強ローズ水、チモール、トルーバルサムチンキ、バニラ、バニラチンキ及びバニリンを含むが、これらに限定されない);保湿剤(グリセリン、へキシレングリコール、プロピレングリコール及びソルビトールを含むが、これらに限定されない);軟膏基剤(ラノリン、無水ラノリン、親水軟膏、白色軟膏、黄色軟膏、ポリエチレングリコール軟膏、ワセリン、親水ワセリン、白色ワセリン、ローズ水軟膏及びスクアランを含むが、これらに限定されない);可塑剤(ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、フタル酸ジエチル、グリセリン、モノ及びジアセチル化モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチンならびにクエン酸トリエチルを含むが、これらに限定されない);ポリマー膜(酢酸セルロースを含むが、これに限定されない);溶媒(アセトン、アルコール、希アルコール、アミレン水和物、安息香酸ベンジル、ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロホルム、コーン油、綿実油、酢酸エチル、グリセリン、へキシレングリコール、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、塩化メチレン、メチルイソブチルケトン、鉱油、ピーナッツ油、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、ゴマ油、注射用水、注射用滅菌水、灌注用滅菌水及び精製水を含むが、これらに限定されない);吸着剤(粉末セルロース、木炭、精製ケイ質土;ならびに二酸化炭素吸着剤:水酸化バリウム石灰及びソーダ石灰を含むが、これらに限定されない);硬化剤(硬化ヒマシ油、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステルワックス、硬質脂肪、パラフィン、ポリエチレン賦形剤、ステアリルアルコール、乳化ワックス、白色ワックス及び黄色ワックスを含むが、これらに限定されない);坐剤基剤(ココアバター、硬質脂肪及びポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されない);懸濁化剤及び/または増粘剤(アカシア、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、精製ベントナイト、マグマベントナイト、カルボマー934p、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム12、カラギーナン、微結晶及びカルボキシメチルセルロースナトリウムセルロース、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカントならびにキサンタンガムを含むが、これらに限定されない);甘味剤(アスパルテーム、デキストレート、デキストロース、賦形剤デキストロース、フルクトース、マンニトール、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール、溶液ソルビトール、スクロース、圧縮糖、粉砂糖及びシロップを含むが、これらに限定されない);錠剤結合剤(アカシア、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポビドン、アルファ化デンプン及びシロップを含むが、これらに限定されない);錠剤及び/またはカプセル希釈剤(炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、スクロース、圧縮糖及び粉砂糖を含むが、これらに限定されない);錠剤崩壊剤(アルギン酸、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コースポビドン(corspovidone)、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン及びアルファ化デンプンを含むが、これらに限定されない);錠剤及び/またはカプセル潤滑剤(ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、軽質鉱油、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、精製ステアリン酸、タルク、硬化植物油及びステアリン酸亜鉛を含むが、これらに限定されない);ビヒクル(ehicle)(香味及び/または甘味付けされたもの(芳香エリキシル剤、複合ベンズアルデヒドエリキシル剤、イソアルコールエリキシル剤、ペパーミント水、ソルビトール溶液、シロップ、トルーバルサムシロップ)を含むが、これらに限定されない);油性(アーモンド油、コーン油、綿実油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、軽質鉱油、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、オリーブ油、ピーナッツ油、パーシック油、シーム(seame)油、大豆油、スクアラン);固体担体、例えば糖球など;ならびに滅菌ビヒクル(注射用静菌水、静菌性塩化ナトリウム注射液);ならびに防水剤(シクロメチコン、ジメチコン及びシメチコンを含むが、これらに限定されない)が挙げられる。
不適切または不必要な三元または四元複合体に会合するポリペプチドの傾向を減少させる凝集阻害剤もまた、本明細書に記載される製剤中に含まれ得る。好適な凝集阻害剤としては、アミノ酸L−アルギニン及び/またはL−システインが挙げられ、これらは長期間、例えば2年以上にわたりFcドメインを含有するポリペプチドの凝集を減少させるように作用し得る。製剤中の凝集阻害剤の濃度は、約1mM〜1M、または約10mM〜約200mM、または約10mM〜約100mM、または約15MM〜約75mM、または約150mM〜約250mM、または約25mMであり得る。
酸化防止剤もまた、本明細書に記載される製剤中に含まれてよい。製剤の調製における使用に企図される酸化防止剤としては、アミノ酸、例えばグリシン及びリジンなど、キレート剤、例えばEDTA及びDTPAなど、ならびにフリーラジカルスカベンジャー、例えばソルビトール及びマンニトールなどが挙げられる。追加の酸化防止剤としては、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化スファー(sufur)、トコフェロール、及びトコフェロール賦形剤が挙げられる。窒素または二酸化炭素オーバーレイもまた、酸化の阻害における使用に企図される。窒素または二酸化炭素オーバーレイは、充填プロセス中にバイアルまたはプレフィルドシリンジのヘッドスペースに導入され得る。
医薬製剤のpHを所望の範囲内に維持する緩衝剤もまた、本明細書に記載される製剤中に含まれ得る。医薬組成物のpHが生理学的レベルにまたはその近傍に設定される場合、投与時における患者の快適さが最大化される。特に、ある種の実施形態では、医薬組成物のpHは、約4.0〜8.4のpH範囲内、または約5.0〜8.0のpH範囲内、または約5.8〜7.4、もしくは約6.2〜7.0のpH範囲内である。pHは必要に応じて、特定の製剤中においてポリペプチドの安定性及び溶解度を最大化するように調節され得、したがって、生理学的範囲外であるが患者にとって許容可能なpHが、本発明の範囲内であると理解されるべきである。本発明の医薬組成物での使用に好適な種々の緩衝剤としては、ヒスチジン、アルカリ塩(リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウムまたはそれらの水素塩もしくは二水素塩)、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸、クエン酸カリウム、マレイン酸、酢酸アンモニウム、トリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(トリス)、様々な形態の酢酸塩及びジエタノールアミン、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸、乳酸、リン酸、メタリン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、乳酸ナトリウム溶液、ならびに当該技術分野において既知の、任意のその他の薬学的に許容されるpH緩衝剤が挙げられる。pH調整剤、例えば塩酸、水酸化ナトリウム、またはそれらの塩などもまた、所望のpHを得るために含まれてよい。1つの好適な緩衝剤は、医薬組成物をpH6.2にまたはその近傍に維持するためのリン酸ナトリウムである。別の例では、酢酸塩はpH6よりもpH5においてより効率的な緩衝剤であるため、pH6の場合よりも少ない酢酸塩がpH5の溶液において使用されてよい。製剤中の緩衝剤の濃度は、約1mM〜約1M、または約10mM〜約300mMであり得る。
ポリマー担体もまた、本明細書に記載される製剤中に含まれ得る。ポリマー担体は、生物学的送達を含むポリペプチドの送達のための、ポリペプチド結晶のカプセル化に使用されるポリマーである。このようなポリマーは、生体適合性及び生分解性ポリマーを含む。ポリマー担体は単一ポリマー型であってよい、またはこの担体は、ポリマー型の混合物で構成されてよい。ポリマー担体として有用なポリマーとしては、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、例えばポリ(乳酸)すなわちPLA、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)すなわちPLGA、ポリ(B−ヒドロキシブトリエート(hydroxybutryate))、ポリ(カプロラクトン)及びポリ(ジオキサノン)など;ポリ(エチレングリコール)、ポリ((ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸−アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、天然及び合成ポリペプチド、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリカミノグリカン(glycaminoglycan)、硫酸化多糖類、またはポリペプチド結晶をカプセル化するであろう任意の従来の材料が挙げられる。
防腐剤、例えば抗菌防腐剤などもまた、本明細書に記載される製剤での使用に企図される。好適な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザルコニウム溶液、塩化ベンゼルトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、フェノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、及びチモールが挙げられるが、これらに限定されない。含まれる防腐剤の量は、0%〜2%(w/v)の範囲内または約1%(w/v)であろう。
ポリペプチドの溶解度を増加させる、及び/または溶液中で(または乾燥もしくは凍結形態で)ポリペプチドを安定させる可溶化剤及び安定剤(乳化剤、共溶質、または共溶媒とも称される)もまた、医薬組成物に添加され得る。可溶化剤及び安定化剤の例としては、糖/ポリオール、例えばスクロース、ラクトース、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルトース、イノシトール、トレハロース、グルコースなど;ポリマー、例えば血清アルブミン(ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒトSA(HSA)、または組換えHA)、デキストラン、PVA、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレンイミン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)など;非水性溶媒、例えば多価アルコール(例えば、PEG、エチレングリコール及びグリセロール)、ジメチスルホキシド(dimethysulfoxide)(DMSO)、及びジメチルホルムアミド(DMF)など;アミノ酸、例えばプロリン、L−メチオニン、L−セリン、グルタミン酸ナトリウム、アラニン、グリシン、リジン塩酸塩、サルコシン、及びガンマ−アミノ酪酸など;界面活性剤、例えばTween−80、Tween−20、SDS、ポリソルベート、ポリオキシエチレンコポリマーなど;ならびに多岐にわたる安定化賦形剤、例えばリン酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、トリメチルアミンN−オキシド、ベタイン、金属イオン(例えば、亜鉛、銅、カルシウム、マンガン、及びマグネシウム)、CHAPS、モノラウレート、2−O−ベータ−マンノグリセレートなど;もしくは以下:アカシア、コレステロール、ジエタノールアミン(補助剤)、モノステアリン酸グリセリル、ラノリンアルコール、レシチン、モノ及びジグリセリド、モノエタノールアミン(補助剤)、オレイン酸(補助剤)、オレイルアルコール(安定剤)、ポロキサマー、ポリオキシエチレン50ステアレート、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル40ステアレート、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリソルベート100、Triton X−100、プロピレングリコールジアセテート、モノステアリン酸プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ステアリン酸、トロラミン、乳化ワックスのいずれか;湿潤剤及び/もしくは可溶化剤、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、ドキュセートナトリウム、ノノキシノール9、ノノキシノール10、オクトキシノール9、ポリオキシル50ステアレート、チロキサポールなど;または上記の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。製剤中の可溶化剤/安定剤の濃度は、約0.001〜5重量%、または約0.1〜2重量%であり得る。一実施形態では、安定剤は、ソルビタンモノ−9−オクタデセノエートポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)誘導体から選択され、これはポリソルベート80またはポリソルベート20を含むが、これらに限定されない。本実施形態で使用されるポリソルベート20または80の量は、単回使用において、または複数回用量製剤において、0.001%〜1.0%(w/v)の範囲内、例えば0.005%(w/v)などである。別の実施形態では、0.05mM〜50mMの範囲内の遊離L−メチオニンが製剤中に含まれ、遊離L−メチオニンの量は、単回使用製剤については0.05mM〜5mM、及び複数回用量製剤については1mM〜10mMである。
張度調節剤もまた、本明細書に記載される製剤中に含まれ得る。張度調節剤は、溶液のオスモル濃度に寄与する分子であると理解されている。医薬組成物のオスモル濃度は、活性成分の安定性を最大化し、さらに投与時の患者の不快感を最小限に抑えるために、好ましくは制御される。血清は、1キログラム当たりおよそ300+/−50ミリオスモルである。一般に、医薬組成物が血清と等張である、すなわち同じまたは類似のオスモル濃度を有することが好ましく、これは張度調節剤の添加により達成され、したがって、オスモル濃度は約180〜約420ミリオスモルであろうことが企図されるが、オスモル濃度は、特定の条件に必要な場合により高いまたはより低い濃度のいずれかであり得ることが理解されるべきである。オスモル濃度の調節に好適な張度調節剤の例としては、アミノ酸(例えば、アルギニン、システイン、ヒスチジン及びグリシン)、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム及びクエン酸ナトリウム)及び/または糖類(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、グリセリン、及びマンニトール)が挙げられるが、これらに限定されない。製剤中の張度調節剤の濃度は、約1mM〜1M、または約10mM〜約200mMであり得る。一実施形態では、張度調節剤は、0mM〜200mMの濃度範囲内の塩化ナトリウムである。別の実施形態では、張度調節剤はソルビトールまたはトレハロースであり、塩化ナトリウムは全く存在しない。
ある種の実施形態では、製剤は、以下から選択される化合物、またはこれらの任意の組み合わせを含む:1)アミノ酸、例えばグリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、プロリンなどの塩;2)炭水化物、例えば単糖類、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、リボースなど;3)二糖類、例えばラクトース、トレハロース、マルトース、スクロースなど;4)多糖類、例えばマルトデキストリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲンなど;5)アルジトール、例えばマンニトール、キシリトール、ラクチトール、ソルビトールなど;6)グルクロン酸、ガラクツロン酸;7)シクロデキストリン、例えばメチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンなど;8)無機塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、ナトリウム及びカリウムのリン酸塩、ホウ酸、炭酸アンモニウム及びリン酸アンモニウムなど;9)有機塩、例えば酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩など;10)乳化剤または可溶化剤、例えばアカシア、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリル、レシチン、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、及びその他のソルビタン誘導体、ポリオキシル誘導体、ワックス、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン誘導体など;11)増粘試薬、例えば寒天、アルギン酸及びその塩、グアーガム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、セルロース及びその誘導体、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、チロキサポールなど;ならびに12)特定の成分、例えばスクロース、トレハロース、ラクトース、ソルビトール、ラクチトール、イノシトール、ナトリウム及びポトジウム(potssium)の塩、例えば酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩など、グリシン、アルギニン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど。
E.徐放性形態
いくつかの実施形態では、結晶性抗PCSK9抗体の徐放性形態(「制御放出」形態とも呼ばれる)が使用され、これは結晶性抗体21B12の徐放性形態;結晶性抗体21B12、及び結晶性抗体21B12の物理的放出または生物学的利用能を、所望の期間にわたって延長するための物質を含む徐放性または制御放出形態を含む。
開示される方法での使用に好適な徐放性形態としては、徐放性手段、例えば低速溶解生体適合性ポリマー(例えば、本明細書に記載されるポリマー担体、米国特許第6,036,978号に記載されているアルギン酸塩マイクロ粒子、または米国特許第6,083,534号に記載されているポリエチレン−酢酸ビニル及びポリ(乳酸−グルコール酸(glucolic acid))組成物)などにカプセル化される、このようなポリマーと混合される(局所適用ヒドロゲルを含む)、及び/または生体適合性半透過性インプラント内に封入される結晶性抗体21B12が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のさらなる実施形態としては、追加の徐放性形態、例えばポリマーマイクロ粒子であって、活性成分と徐放性手段、例えばポリマー(例えば、PLGA)などとの混合物が連続相内に分散され、得られた分散物が直接凍結乾燥されて水及び有機溶媒または添加剤を除去し、前記マイクロ粒子を形成する(米国特許第6,020,004号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる));生分解性アニオン性多糖類、例えばアルギン酸エステルなど、ポリペプチド、及び少なくとも1つの結合した多価金属イオンを含む、注射用ゲル組成物(米国特許第6,432,449号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる));逆熱ゲル化特性及び場合によりpH応答性ゲル化/脱ゲル化特性を有する、注射用生分解性ポリマーマトリックス(米国特許第6,541,033号及び第6,451,346号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる));生体適合性ポリオール:油懸濁液、例えば懸濁液が約15重量%〜約30重量%の範囲内でポリオールを含むものなど(米国特許第6,245,740号(その全体が参照によって組み込まれる))などが挙げられる。このような徐放性形態は、デポー剤の形態での投与によるポリペプチドの持続送達に好適であり、デポー剤はインプラントであり得る、または注射用ミクロスフェア、ナノスフェア、もしくはゲルの形態であり得る。上に列挙された米国特許(米国特許第6,036,978号;第6,083,534号;第6,020,004号;第6,432,449号;第6,541,033号;第6,451,346号、及び第6,245,740号)は、それら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。加えて、本発明の結晶性ポリペプチドの徐放性または制御放出形態は、Kim,C.,2000,“Controlled Release Dosage Form Design”,Techonomic Publishing Co.,Lancaster Pa.に記載されているものなどの徐放性手段の種類を含み、これらとしては以下のものが挙げられる:天然ポリマー(ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、アラビアガム、またはキトサン)、半合成ポリマーまたはセルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、またはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、及び合成ポリマー(イオン交換樹脂(メタクリル酸、スルホン化ポリスチレン/ジビニルベンゼン)、ポリアクリル酸(Carbopol)、ポリ(MMA/MAA)、ポリ(MMA/DEAMA)、ポリ(MMA/EA)、ポリ(酢酸フタル酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸/グリコール酸)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリ(ジメチルシリコーン)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリ(エチレン/ビニルアルコール)、ポリブタジエン、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、及びポリ(グルタミン酸))。
本明細書に開示されるさらなる実施形態は、米国特許第6,541,606号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているように、少なくとも1種のポリマー担体内にカプセル化される抗体21B12結晶であって、ポリマー担体のマトリックス内へのカプセル化によりミクロスフェアを形成し、それらの天然及び生物学的に活性な三次構造を維持する結晶を含む。カプセル化される抗体21B12結晶またはその製剤は、有機溶媒または添加剤に溶解したPLGAなどのポリマー担体中に懸濁される。このようなカプセル化抗体21B12結晶は、同等の条件下で保存された場合、溶液中の抗体21B12よりも長期間、抗体21B12の生物活性を維持する。
IV.キット
追加の態様として、本明細書に記載される1種以上の製剤を含むキットであって、対象への投与のためにその使用を容易にする方法でパッケージ化されたキットが、本明細書に記載される。一実施形態では、このようなキットは、本明細書に記載される製剤(例えば、本明細書に記載される抗体のいずれかを含む組成物)を含み、製剤は容器、例えば密閉ボトル、槽、単回使用もしくは複数回使用バイアル、プレフィルドシリンジ、またはプレフィルド注射デバイスなどの中にパッケージ化されて、場合により方法の実施における化合物または組成物の使用について記載し、容器に貼り付けられる、またはパッケージ内に含まれるラベルを有する。一態様では、化合物または組成物は、単位剤形内にパッケージ化される。キットは、特定の投与経路による組成物の投与に好適なデバイスをさらに含んでよい。好ましくはキットは、本明細書に記載される抗体または本明細書に記載される製剤の使用について記載するラベルを含有する。
V.投与量
本明細書に記載される状態を処置する方法に関与する投与レジメンは、薬物の作用を調節する様々な要因、例えば、患者の年齢、状態、体重、性別及び食事、任意の感染の重症度、投与時期ならびにその他の臨床的要因を考慮して、主治医により決定されるだろう。様々な態様では、投与量は、体重1キログラム当たり0.1〜50mgの抗体調製物の範囲内である(化学修飾を含まない、タンパク質単独での質量を計算する)。いくつかの実施形態では、投与量は、約0.5mg/kg〜20mg/kg、または約0.5〜10mg/kgである。いくつかの実施形態では、投与量は、約120mg〜約1200mg、または約280〜約450mgである。
様々な態様では、抗PCSK9抗体、例えば抗体21B12の投与量は、抗PCSK9抗体、例えば抗体21B12の少なくとも約100mg〜約1400mg;または約120mg〜約1200mg;または約120mg〜約1000mg;または約120mg〜約800mg;または約120mg〜約700mg;または約120mg〜約480mg;または約120mg〜最大約480mg;または約100mg〜最大約480mg;または約1200mg〜約480mg;または約140mg〜約480mg;または約145mg〜約480mg;または約150mg〜約480mg;または約160mg〜約480mg;または約170mg〜約480mg;または約180mg〜約480mgまたは約190mg〜約480mgまたは約200mg〜約480mg;または約210mg〜約480mg;または約220mg〜約480mg;または約230mg〜約480mg;または約240mg〜約480mg;または約250mg〜約480mg;または約260mg〜約480mg;または約270mg〜約480mg;または約280mg〜約480mg;または約290mg〜約480mg;または約300mg〜約480mg;または約310mg〜約480mg;または約320mg〜約480mg;または約330mg〜約480mg;または約340mg〜約480mg;または約350mg〜約480mg;または約360mg〜約480mg;または約370mg〜約480mg;または約380mg〜約480mg;または約390mg〜約480mg;または約400mg〜約480mg;または約410mg〜約480mg;または約420mg〜約480mg;または約430mg〜約480mg;または約440mg〜約480mg;または約450mg〜約480mg;または約460mg〜約480mg;または約470mg〜約480mgの範囲であり得る。
ある種の実施形態では、投薬頻度は、使用される製剤中の抗PCSK抗体及び/または任意の追加治療剤の薬物動態パラメータを考慮に入れるだろう。ある種の実施形態では、臨床医は、所望の効果を達成する投与量に到達するまで製剤を投与するだろう。したがって、ある種の実施形態では、製剤は単回用量として、または経時的に2回、3回、4回またはそれを超える用量(同じ量の所望の分子を含有しても、または含有しなくてもよい)として、または埋め込みデバイスもしくはカテーテルによる持続注入として投与され得る。製剤はまた、標準的な針及びシリンジで皮下または静脈内に送達され得る。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達デバイス、ならびに自動注射器送達デバイスは、本発明の医薬製剤の送達に適用性を有する。適切な投与量のさらなる改良は、当業者により日常的に行われ、当業者により日常的に実施される業務の範囲内である。ある種の実施形態では、適切な投与量は、適切な用量反応データの使用により確認され得る。いくつかの実施形態では、投与量及び投与頻度は、得られるべき所望の(血清及び/または総)コレステロールレベルならびに対象の現在のコレステロールレベル、LDLレベル、及び/またはLDLRレベルを考慮に入れることができ、これらの全ては当業者に周知の方法によって得られ得る。
いくつかの実施形態では、抗PCSK9抗体、例えば抗体21B12の少なくとも約100mg;または最大約110mg;または最大約115mg、または最大約120mg;または最大約140mg;または最大約160mg;または最大約200mg;または最大約250mg;または最大280mg;または最大300mg;または最大350mg;または最大400mg;または最大420mgの投与量が、それを必要とする患者に1週間おきに1回(または2週間ごとに)(Q2W)投与される。
ある種のその他の実施形態では、抗PCSK9抗体、例えば抗体21B12の少なくとも約250mg;または最大約280mg;または最大約300mg;または最大約350mg;または最大約400mg;または最大約420mg;または最大約450mg;または最大480mgの投与量が、それを必要とする患者に4週間に1回(または月に1回)投与される。
製剤は一般に、非経口的に、例えば静脈内、皮下、筋肉内、エアロゾル(肺内または吸入投与)により、または長期放出のためのデポー剤により投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、医薬品の治療循環レベルを維持するために最初のボーラスに続いて持続注入により静脈内投与される。その他の実施形態では、製剤は1回用量として投与される。当業者は、適切な医療行為及び個々の患者の臨床状態により決定されるように、有効投与量及び投与レジメンを容易に最適化するだろう。投薬頻度は、薬剤の薬物動態パラメータ及び投与経路に依存するだろう。最適な医薬製剤は、投与経路及び所望の投与量に応じて当業者により決定されるだろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)1435−1712頁を参照(その開示は参照によって本明細書に組み込まれる)のこと。このような製剤は、投与される薬剤の物理的状態、安定性、インビボ放出の速度、及びインビボクリアランスの速度に影響を与える場合がある。投与経路に応じて、好適な用量は、体重、体表面積または臓器サイズにより計算されてよい。上述した製剤の各々に関与する処置のための適切な投与量を決定するのに必要な計算のさらなる精密化は、特に本明細書に開示される投与量情報及びアッセイ、ならびに上述したヒト臨床試験で観察される薬物動態データに照らして、過度な実験をすることなく当業者により日常的に行われる。適切な投与量は、適切な用量反応データと組み合わせて血中レベル投与量を決定するための確立されたアッセイの使用により確認されてよい。最終的な投与レジメンは、薬物の作用を調節する様々な要因、例えば、薬物の比活性、損傷の重症度及び患者の応答性、患者の年齢、状態、体重、性別及び食事、任意の感染の重症度、投与時期ならびにその他の臨床的要因を考慮して、主治医により決定されるだろう。研究が実施されるにつれて、適切な投与量レベルならびに様々な疾患及び状態の処置期間に関するさらなる情報が現れるだろう。
VI.製剤の治療的使用
当業者には理解されるように、多様なコレステロール、LDL、LDLR、PCSK9、VLDL−C、アポタンパク質B(「ApoB」)、リポタンパク質A(「Lp(a)」)、トリグリセリド、HDL−C、非HDL−C、及び総コレステロールレベルに関連し、それらに関与し、またはそれらによって影響され得る障害は、本発明の医薬製剤によって対処され得る。一態様では、抗PCS9抗体製剤は、血清コレステロールレベルの上昇に関連する、または血清コレステロールレベルの上昇が関連する障害を処置及び/もしくは予防する、ならびに/またはその障害のリスクを減少させる方法に使用され得る。一態様では、抗PCS9抗体製剤は、PCSK9値の上昇に関連する、またはPCSK9値の上昇が関連する障害を処置及び/もしくは予防する、ならびに/またはその障害のリスクを減少させる方法に使用され得る。一態様では、抗PCS9抗体製剤は、総コレステロールレベルの上昇に関連する、または総コレステロールレベルの上昇が関連する障害を処置及び/もしくは予防する、ならびに/またはその障害のリスクを減少させる方法に使用され得る。一態様では、抗PCS9抗体製剤は、非HDLコレステロールレベルの上昇に関連する、または非HDLコレステロールレベルの上昇が関連する障害を処置及び/もしくは予防する、ならびに/またはその障害のリスクを減少させる方法に使用され得る。一態様では、抗PCS9抗体製剤は、ApoBレベルの上昇に関連する、またはApoBレベルの上昇が関連する障害を処置及び/もしくは予防する、ならびに/またはその障害のリスクを減少させる方法に使用され得る。一態様では、抗PCS9抗体製剤は、Lp(a)レベルの上昇に関連する、またはLp(a)レベルの上昇が関連する障害を処置及び/もしくは予防する、ならびに/またはその障害のリスクを減少させる方法に使用され得る。一態様では、抗PCS9抗体製剤は、トリグリセリドレベルの上昇に関連する、またはトリグリセリドレベルの上昇が関連する障害を処置及び/もしくは予防する、ならびに/またはその障害のリスクを減少させる方法に使用され得る。一態様では、抗PCS9抗体製剤は、VLDL−Cレベルの上昇に関連する、またはVLDL−Cレベルの上昇が関連する障害を処置及び/もしくは予防する、ならびに/またはその障害のリスクを減少させる方法に使用され得る。
当業者には理解されるように、本発明の抗PCS9抗体製剤は、コレステロール関連障害を処置及び/または予防するのに治療的に有用であり得る。本発明の医薬製剤の投与により処置または予防され得る、例示的で非限定的な疾患及び障害としては、家族性高コレステロール血症、非家族性高コレステロール血症、高脂血症、心疾患、メタボリックシンドローム、糖尿病、冠動脈性心疾患、脳卒中、心血管疾患、アルツハイマー病及び一般的な脂質異常症が挙げられ、これらは例えば、血清総コレステロールの上昇、LDLの上昇、トリグリセリドの上昇、VLDLの上昇、及び/または低HDLによって示され得る。本明細書に記載される製剤を、単独でまたは1種以上のその他の薬剤と組み合わせたいずれかで使用して処置され得る、原発性及び続発性脂質異常症のいくつかの非限定的例としては、メタボリックシンドローム、真性糖尿病、家族性複合型高脂血症、家族性高トリグリセリド血症、ヘテロ接合型高コレステロール血症、ホモ接合型高コレステロール血症、家族性欠陥アポプリポタンパク質(apoplipoprotein)B−100;多遺伝子性高コレステロール血症を含む、家族性高コレステロール血症;レムナント除去病、肝性リパーゼ欠損症;以下:食傷、甲状腺機能低下症、エストロゲン及びプロゲスチン療法を含む薬物、ベータ遮断薬、及びチアジド利尿薬のうちいずれかに続発する脂質異常症;ネフローゼ症候群、慢性腎不全、クッシング症候群、原発性胆汁性肝硬変、糖原病、ヘパトーマ、胆汁鬱滞、先端巨大症、インスリノーマ、成長ホルモン単独欠損症、ならびにアルコール誘発性高トリグリセリド血症が挙げられる。本発明の製剤は、アテローム性動脈硬化疾患、例えば、心血管死亡、非心血管死亡または全死因死亡、冠動脈性心疾患、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、脳卒中(虚血性及び出血性)、狭心症、または脳血管疾患及び急性冠症候群、心筋梗塞ならびに不安定狭心症などの予防または処置にも有用であり得る。いくつかの実施形態では、製剤は、致死性及び非致死性心臓発作、致死性及び非致死性脳卒中、ある特定の種類の心臓手術、心不全のための入院、心疾患に罹患している患者の胸痛、ならびに/または既存の心疾患、例えば以前の心臓発作、以前の心臓手術などによる心血管イベント、ならびに/または閉塞動脈の徴候を有する胸痛ならびに/または移植関連血管疾患のリスクを減少させるのに有用である。いくつかの実施形態では、製剤は、CRPまたはhsCRPの上昇による心血管リスクを予防する、または減少させるのに有用である。いくつかの実施形態では、製剤及び方法は、再発性心血管イベントのリスクを減少させるために使用され得る。
当業者には理解されるように、スタチンの使用により一般に対処可能な(処置可能または予防可能ないずれかの)疾患または障害は、本発明の製剤の適用からも恩恵を受け得る。加えて、当業者には理解されるように、本発明の製剤の使用は、糖尿病の処置に特に有用であり得る。
いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、真性糖尿病、腹部大動脈瘤、アテローム性動脈硬化症及び/または末梢血管疾患を有する患者に、その患者の血清コレステロールレベルをより安全な範囲まで低減させるために投与される。いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、本明細書に記載される障害のいずれかを発症するリスクがある患者に投与される。いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、喫煙している、または以前に喫煙していた(すなわち、喫煙経験者)、高血圧である、または若年心臓発作の家族歴を有する対象に投与される。
製剤は、障害を持つ対象を治癒する必要はない。製剤は、全体的もしくは部分的にコレステロール関連障害もしくはその症状を改善するために、または全体的もしくは部分的にコレステロール関連障害もしくはその症状のさらなる進行から保護するために治療的に使用されてよい。実際に、本発明の材料及び方法は、血清LDLコレステロールの低下及びある期間にわたる血清LDLコレステロールの減少の維持に特に有用である。
本明細書に記載される製剤の1回以上の投与は、例えば約2週間〜約12か月(例えば、約1か月、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、または約11か月)の治療期間にわたって実施されてよい。いくつかの実施形態では、対象は、血清LDLコレステロールを低下させるために製剤の1回以上の用量を投与される。「血清LDLコレステロールの減少を維持する」という用語は、本明細書で使用する場合、製剤の初期用量から得られる血清LDLコレステロールの減少が、約2週間、約1か月、約2か月、約3か月、約6か月、約9か月、約1年、約18か月、約2年にわたって、または患者の生涯にわたって)約1%〜約5%を超えて降下しないことを意味する。
加えて、特定の対象のために選択された治療レジメンに応じて、複数回用量の製剤を投与すること、または用量の投与間隔を空けることが有利である場合がある。製剤は、1年以下の期間(例えば、9か月以下、6か月以下、または3か月以下)にわたって周期的に投与され得る。この点に関して、製剤は、約7日、または2週間、または3週間、または1か月、または5週間、または6週間、または7週間、または2か月、または9週間、または10週間、または11週間、または3か月、または13週間、または14週間、または15週間、または4か月、または17週間、または18週間、または19週間、または5か月、または21週間、または22週間、または23週間、または6か月、または12か月に1回ヒトに投与され得る。
VII.併用療法
同じ病原体または生化学的経路を標的とする2種以上の薬剤を組み合わせることによる病状の処置は、各薬剤単独の治療に関連する用量の使用と比較して、より高い有効性及び副作用の減少をもたらすことがある。いくつかの場合には、混合薬の有効性は相加的(混合の有効性が各薬剤単独での効果の和にほぼ等しい)であるが、その他の場合には、効果は相乗的(混合の有効性が所与の各薬剤単独での効果の和よりも高い)であり得る。本明細書で使用する場合、「併用療法」という用語は、2種類の化合物が同時に、例えば並行して送達され得る、または化合物のうちの1種が最初に投与されて、続いて第2薬剤が投与されるような、例えば連続して送達され得ることを意味する。望ましい結果は、投与のレシピエントにおける1つ以上の症状の主観的な軽減または客観的に特定可能な改善のいずれかであり得る。
いくつかの実施形態では、製剤は、低減した骨ミネラル密度の処置のための標準治療薬の前に、それと同時に、またはそれの後に投与される。本明細書で使用する場合、「標準治療」という用語は、ある種の病気と診断されたある種類の患者に対する、臨床医によって一般に認められている処置を指す。いくつかの実施形態では、標準治療薬は、少なくとも1種のその他のコレステロール低下(血清及び/または全身コレステロール)剤である。例示的な薬剤としては、スタチン(アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)、ニコチン酸(ナイアシン)(NIACOR、NIASPAN(徐放性ナイアシン)、SLO−NIACIN(徐放性ナイアシン)、CORDAPTIVE(ラロピプラント))、フィブリン酸(LOPID(ゲムフィブロジル)、TRICOR(フェノフィブラート)、胆汁酸捕捉剤(QUESTRAN(コレスチラミン)、コレセベラム(WELCHOL)、COLESTID(コレスチポール))、コレステロール吸収阻害剤(ZETIA(エゼチミブ))、ニコチン酸とスタチンとの組み合わせ(ADVICOR(LOVASTATIN及びNIASPAN)、スタチンと吸収阻害剤との組み合わせ(VYTORIN(ZOCOR及びZETIA)及び/または脂質修飾剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、製剤は、PPARガンマアゴニスト、PPARアルファ/ガンマアゴニスト、スクアレンシンターゼ阻害剤、CETP阻害剤、降圧剤、抗糖尿病剤(スルホニル尿素、インスリン、GLP−1類似体、DDPIV阻害剤、例えばメタホルミンなど)、ApoBモジュレーター、例えばミポメルサン(mipomersan)など、MTP阻害剤及び/または閉塞性動脈硬化症処置と組み合わされる。いくつかの実施形態では、製剤は、対象においてLDLRタンパク質のレベルを増加させる薬剤、例えばスタチン、オンコスタチンMのようなある種のサイトカイン、エストロゲン、及び/またはベルベリンなどのある種の薬草成分などと組み合わされる。いくつかの実施形態では、製剤は、対象において血清コレステロールレベルを増加させる薬剤(ある種の抗精神病剤、ある種のHIVプロテアーゼ阻害剤、食事要因、例えば高フルクトース、スクロース、コレステロールまたはある種の脂肪酸など、ならびにRXR、RAR、LXR、FXRに対するある種の核内受容体アゴニスト及びアンタゴニストなど)と組み合わされる。いくつかの実施形態では、製剤は、対象においてPCSK9のレベルを増加させる薬剤、例えばスタチン及び/またはインスリンなどと組み合わされる。2種の組み合わせは、その他の薬剤の望ましくない副作用が製剤によって軽減されることを可能にし得る。
いくつかの実施形態では、製剤は、本明細書に記載される標準治療薬の処置が禁忌である場合に対象に投与される。
実施例1−抗体21B12の結晶化
2本の成熟重鎖(配列番号19)及び2本の成熟軽鎖(配列番号17)の各々をコードするDNAによって組換え産生された、これらの鎖から成る、pH5.2の10mMの酢酸ナトリウム、9%スクロース中における抗体21B12を、様々な条件下で結晶化した。
抗体21B12の結晶化は、「ハンギングドロップ」蒸気拡散として知られる高分子の結晶化方法を用いる、18の異なる結晶化スクリーン(Hampton Research、アリソビエホ、カリフォルニア州及びRigaku Reagents、ベインブリッジアイランド、ワシントン州)を使用して達成した。タンパク質と結晶化試薬(「結晶化緩衝液」または「母液」または「結晶成長溶液」または「リザーバー溶液」)との混合物で構成される液滴を、シアラン処理したカバーガラスの下面に滴下し、次いでカバーガラス上の液滴をグリースで封止して、典型的にはシーラント付きの24ウェルVDXトレイ(Hampton Research、アリソビエホ、カリフォルニア州(HR3−170))上に置き、試薬の液体リザーバーとの蒸気平衡を生じさせる。平衡を達成するために、液滴とトレイのウェル内における1mlのリザーバー溶液との間で水蒸気が交換される。液滴から水がなくなるにつれて、タンパク質の相対濃度が増加し、これは最終的に過飽和をもたらす場合がある。結晶化が生じるのに必要なのは、タンパク質の過飽和である。典型的には液滴は、リザーバーよりも低い濃度の試薬を含有し、典型的には等体積の試料及び試薬を混合して液滴を形成したため、液滴はリザーバー内試薬の半分の濃度を含有した(このことは、全ての結晶化条件についての場合であったが、タンパク質が4ul、緩衝液が2ul、沈殿剤が5ulであった、全液滴体積が11ulのLISS(Low Ionic Strength Screen)を除く)。
これらの実験において、液滴中の初期タンパク質濃度は、1mg/ml〜約140mg/mlであった。
結晶化スクリーンのいくつかを、シーラント付きの24ウェルVDXトレイに設置した。VDXトレイにおける各位置は、1mLの試薬リザーバーを含有したが、数々の異なる結晶化緩衝液条件を確立するために、各ウェルにおける試薬リザーバーは、その他のウェルにおける試薬リザーバーとは組成が異なっていた。1〜10μLのタンパク質を1〜10μlのリザーバー溶液に添加して、液滴を形成した。トレイを周囲室温でインキュベートした。
いくつかのハンギングドロップ蒸気拡散結晶トレイもまた、Mosquito Crystal(TTP LabTech、Melbourn Science Park、メルボルン、ハートフォードシャーSG8 6EE、英国)を使用し、透明な平底ポリスチレン96ウェルマイクロプレート(カタログ番号9017−Corning Incorporated、ワンリバーフロントプラザ、コーニング、ニューヨーク州14831、米国)を使用して、ウェル溶液として100ul、液滴中のタンパク質対ウェル溶液の比を1:1にして設置した。最終的な液滴体積は600nlであった。300nlのタンパク質を、各96ウェルプレートシール(TTP Labtechカタログ番号4150−05100)(これを96ウェル基板/ホルダー上に置いた)の中央に置き、続いて300nlのウェル溶液を置いた。96ウェル基板を反転して、96ウェルプレートの上部で封止し、周囲室温で保存した。
結晶トレイを、ソフトウェアAxiovison4.0を装備したCarl Zeiss Axiocam MRc顕微鏡(www.zeiss.com)を使用して1週間毎日スキャンし、次いで1週間に1回スキャンした。結晶ヒットを記録し、独自の結晶スコアリングシステム及び形態説明を使用して特徴付けた(表1.1を参照のこと)。結晶ヒットを、接触試験、Izit crystal dye(Hampton Research HR4−710)試験により、ならびに結晶化スクリーン用の水及び緩衝液の対照トレイを設定することにより、タンパク質結晶について試験した。
結晶化スクリーン:抗体21B12を、18の異なる結晶化スクリーンを使用して、合計でおよそ2000の条件でスクリーニングし、(Wizard IV #13及びWizard JCSGは同じ条件であるため)16の結晶ヒットをもたらした。以下に別段の具体的な注記がない限り、結晶化スクリーンは、シーラント付きの24ウェルVDXトレイに設置した。
抗体21B12を、LISS(Low Ionic Strength Screen)(Hampton Research HR3−170)でスクリーニングした。Low Ionic Strength Screen(LISS)は、特に抗体及び抗体断片スクリーニングのために設計された、2〜12のpH範囲における18の緩衝液、6つの異なるパーセンテージの沈殿剤PEG3350及び脱水剤として24%PEG3350を用いる3パートの結晶化スクリーンである。合計で108の条件をスクリーニングし、抗体21B12は、pH5.5の0.05Mのクエン酸、12%PEG3350中において1日目に10mg/mlで結晶化した。結晶形態は、葉に似ていた。
抗体21B12を、Indexスクリーン(Hampton Research HR2−144)でスクリーニングした。Indexスクリーンは、グリッドスクリーン、スパースマトリックス及び不完全階乗の戦略を、古典的、現代的及び新規の結晶化試薬系と組み合わせる。Indexスクリーンは、ゾーン:古典的な塩対pH、中和有機酸、高塩及び低ポリマー、高ポリマー及び低塩、低イオン強度対pH、PEG及び塩対pH、PEG及び塩で編成される。合計で96の条件をスクリーニングし、抗体21B12は、Index #31(0.8Mの酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、pH8.5の0.1MのTris、0.5%w/vのポリエチレングリコールモノメチルエーテル5000)中において1日目に六角形ブロックの結晶形態で結晶化した。
抗体21B12を、Wizard I(Emerald Bio EB−W1−T)、Wizard II(Emerald Bio EB−W2−T)、Wizard III(Emerald Bio EB−W3−T)及びWizard IV(Emerald Bio EB−W4−T)でスクリーニングした。主なスクリーン変数は、pH4.5〜pH10.5で広範囲な結晶化領域を網羅する緩衝液、塩である。合計で192の条件をスクリーニングし、抗体21B12は、Wizard I #13(1.26Mの(NH4)2SO4、pH6.5の0.1Mのカコジル酸塩)及びWizard 1 #32(10%(w/v)のPEG3000、pH6.2のリン酸Na/K)中においてそれぞれ3日目及び2日目に六角形ブロックの結晶形態で結晶化した。抗体21B12は、Wizard II #15(1.26Mの(NH4)2SO4、pH7.5のHEPES)、及びWizard II #45(1.26Mの(NH4)2SO4、pH6.0のMES)中においてそれぞれ3日目及び3日目に六角形ブロックの結晶形態で結晶化した。抗体21B12は、Wizard IV #13(pH7.0の800mMのコハク酸)、及びWizard IV #31(20%(w/v)のポリアクリル酸5100、pH7.0の0.1MのHEPES、20mMの塩化マグネシウム)中において両方とも1日目に棒の結晶形態で結晶化した。
抗体21B12を、Crystal Screen HT(Hampton Research HR2−130)でスクリーニングした。主なスクリーン変数は、塩、pH及び沈殿剤(塩、ポリマー、揮発性有機物及び非揮発性有機物)である。合計で96の条件をMosquito Crystalを使用してスクリーニングし、抗体21B12は、Crystal screen HT #48(pH8.5の0.1MのTris HCl、2.0Mの一塩基性リン酸アンモニウム)中において4日目に六角形ブロックの結晶形態で結晶化した。
抗体21B12を、PEG/ION HT(Hampton Research HR2−139でスクリーニングした。主なスクリーン変数は、PEG、イオン型、イオン強度及びpHである。スクリ−ンは、高純度ポリエチレングリコール3350と、アニオン(硫酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、塩化物、ヨウ化物、チオシアン酸塩、ギ酸塩、クエン酸塩、リン酸塩及びフッ化物)及びカチオン(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、リチウム、マグネシウム及びカルシウム)の両方を含む48の異なる高純度塩とを0.2Mの相対的濃度で組み合わせ、pH4〜9のpHスクリーンとしても作用する。合計で96の条件をMosquito crystalを使用してスクリーニングし、抗体21B12は、Peg/Ion HT #73(pH7.0の0.1Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%(w/v)のポリエチレングリコール3350)中において4日目に棒としての結晶形態で結晶化した。
抗体21B12を、Wizard Precipitant Synergy I(Emerald Bio EB−PS−B)及びWizard Precipitant Synergy II(Emerald Bio EB−PS−B)でスクリーニングした。Wizard Precipitantスクリーンは、少なくとも2種の異なる沈殿試薬の選択された組み合わせから成り、5つの異なる側面:8つの異なる塩、4つの異なる有機溶媒、4つの異なるポリエチレングリコール、9つの異なる添加剤、4.5〜8.5のpH範囲における結晶化要因の評価を可能にする。64の基本配合物の各々は、タンパク質の沈殿点に到達する、またはそれを超えるために、沈殿剤をそれらの最大溶解度に近い高濃度で含有する。67%、及び33%の沈殿剤濃度であるが、同じ緩衝液濃度に配合物が対応することにより、結晶化領域のより微細なグリッド範囲及び系統的な結晶化が保証される。合計で192の条件をMosquito crystalを使用してスクリーニングし、抗体21B12は、Wizard Precipitant Synergy I #54(0.66Mの硫酸リチウム、0.66%(v/v)のPEG400、pH8.5の0.1MのTris HCl)中において0日目に六角形ブロックの結晶形態で結晶化し;Wizard Precipitant Synergy I #2(1.34Mの硫酸アンモニウム、1.34%(v/v)のPEG400、pH5.5の0.1Mの酢酸ナトリウム/酢酸)中において3日目に六角形ブロックの結晶形態で結晶化し;Wizard Precipitant Synergy I #42(1.65%(v/v)のPEG400、pH7.5の0.66Mのクエン酸アンモニウム/クエン酸)中において3日目に六角形ブロックの結晶形態で結晶化した。抗体21B12は、Wizard Precipitant Synergy II #83(0.34%(w/v)のPEG4000、pH7.5の0.67Mの二塩基性リン酸カリウム、/一塩基性リン酸ナトリウム)及びWizard Precipitant Synergy II #88(2%(w/v)のPEG8000、pH8.5の0.5Mのクエン酸アンモニウム/水酸化アンモニウム)中において両方とも3日目に棒の結晶形態で結晶化した。
抗体21B12を、Wizard JCSG(Emerald Bio EB−JCSG−B)でスクリーニングした。主なスクリーン変数は、緩衝液、塩、沈殿剤(揮発性試薬、高分子量ポリマー及び塩を含む)及びpHである。合計で96の条件をMosquito crystalを使用してスクリーニングし、抗体21B12は、Wizard JCSG #67(pH7.0の800mMのコハク酸)及びWizard JCSG #71(pH7.0の1000mMのコハク酸、pH7.0の100mMのHEPES遊離酸/水酸化ナトリウム、1%(w/v)のPEG2000MME)中において両方とも3日目に六角形ブロックの結晶形態で結晶化した。Wizard JCSG #67は、pH7.0の800mMのコハク酸というWizard IV #13の条件と同じである。
抗体21B12を、Wizard pH Buffer Screen(Emerald Bio EB−PH−B)、すなわち結晶成長のpH及び緩衝液組成の効果を同時に調査するための結晶ヒット条件を最適化するように設計されたスクリーンでスクリーニングした。Wizard pH buffer screenは、0.4pH単位で漸増的に変動した8つのpH点における12の緩衝系から成る。抗体21B12を、12%PEG3350及び16%PEG3350と共にWizard pH buffer screenでスクリーニングした。12%PEG3350では、結晶ヒットを観察することは一切なかった。16%PEG3350では、2日目に2つの結晶ヒットを観察した。抗体21B12は、8.2の1Mのリン酸塩(二)/(一)リン酸ナトリウム及び8.6の1Mのリン酸塩(二)/(一)リン酸ナトリウム中において16%PEG3350を用いたWizard pH Buffer Screenで結晶化した。
様々な形態の抗体21B12結晶は、液体製剤中の抗体が、ある体積の既知の結晶化試薬に添加されて密閉容器内で保存されることにより、スケールアップ条件下で成長し得る。抗体21B12結晶は、これらの条件下において24時間未満で成長し得る。
上記実施例は、抗体21B12が様々な結晶化条件下で結晶化可能であったが、結晶は試験した全ての条件下で形成した訳ではなかったことを実証している。およそ2000の結晶化条件を、多数の異なる市販の(すなわち、Hampton Research、Rigaku Reagents)及び独自のスクリーンで試験した。
実施例2−抗体21B12結晶ヒットの最適化及び拡張
実施例1に記載されるように抗体21B12結晶の生成に成功することを証明した一定の条件を、以下の通りに最適化及び拡張した:
4mg/mlでのLow Ionic Strength Screen #7(pH5.5の0.05Mのクエン酸、12%PEG3350):
抗体21B12を、LISS #7(pH5.5の0.05Mのクエン酸、4%PEG3350)中において72mg/mlでスクリーニングした。pH5.5で1日目に、及びpH5.0で4日目に抗体21B12結晶を観察した。結晶形態はブロックであった。抗体21B12を、LISS #7(pH5.5の0.05Mのクエン酸、8%PEG3350)中において72mg/mlでスクリーニングした。pH5.5で1日目に抗体21B12結晶を観察した。結晶形態はブロックであった。抗体21B12を、LISS #7(pH5.5の0.05Mのクエン酸、12%PEG3350)中において72mg/mlでスクリーニングした。pH5.5で4日目に抗体21B12結晶を観察した。結晶形態は棒であった。抗体21B12を、LISS #7(pH5.5の0.05Mのクエン酸、16%PEG3350)中において72mg/mlでスクリーニングした。結晶ヒットを観察することは一切なかった。
抗体21B12はまた、pH2.2〜6.5で0.1pH単位ずつ増加させて44の条件となったCitric Acid Stock Options(Hampton Research カタログ番号HR2−104)を使用してスクリーニングした。pH4.0〜5.4、pH5.6、pH5.7、pH5.9、pH6.3及びpH6.4で1日目に抗体21B12結晶を観察した。2日目には、pH4.0〜pH6.5で結晶を観察した。3日目に、pH3.8で抗体21B12結晶を観察したが、4日目にはpH3.9で抗体21B12結晶を観察した。全体として、Citric Acid Stock Options Kitにおける抗体21B12は、0.1pH単位ずつ増加させたpH3.8〜pH6.5で結晶化した。
Indexスクリーン#31(0.8Mの酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、pH8.5の0.1MのTris、0.5%(w/v)のPEG MME 5000):
Indexスクリーン#31を、0.2M〜1.2Mの酒石酸ナトリウムカリウム四水和物濃度を0.2Mずつ増加させてスクリーニングすることにより拡張した。0.8Mの酒石酸ナトリウムカリウム四水和物で1日目に、六角形ブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
Indexスクリーン#31を、0%〜1.5%のPEG MME 5000濃度を0.5%ずつ増加させてスクリーニングすることにより拡張した。全てのPEG MME 5000濃度で1日目に、六角形ブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
Indexスクリーン#31を、7.0〜9.0のpH範囲で0.1pH単位ずつ増加させたTris stock options buffer kitを使用して拡張した。以下のpHで1日目に、六角形ブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した:0.1pH単位ずつ増加させたpH8.0〜pH8.5。
Indexスクリーン#31を、様々な分子量のPEG(550〜10,000)をスクリーニングすることにより拡張した。分子量にかかわらず、試みた全てのPEGで1日目にブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
Indexスクリーン#31を、1%〜6%のPEG5000をスクリーニングすることにより拡張した。1%〜5%のPEG5000濃度で、1日目または2日目に抗体21B12結晶を観察した。結晶形態はブロックであった。
Indexスクリーン#31を、pH8.1〜pH8.5のTrisならびに0.6M、0.65M、0.7M、0.75M、0.8M及び0.9Mの酒石酸塩をスクリーニングすることにより拡張した。pH8.1〜8.4及び0.6M〜0.9Mの酒石酸塩濃度で、抗体21B12結晶を観察した。結晶形態は主としてブロックであり;結晶はpH8.1で成長し、低酒石酸塩濃度では棒及びブロック形態の混合物であった。
Indexスクリーン#31を、様々なタンパク質濃度:3mg/ml、6mg/ml、9mg/ml、12mg/ml、15mg/ml、18mg/ml、21mg/ml、24mg/ml、27mg/ml、30mg/ml、33mg/ml、36mg/ml、39mg/ml、42mg/ml、45mg/ml、48mg/ml、51mg/ml、54mg/ml、57mg/ml、60mg/ml、63mg/ml、66mg/ml、69mg/ml及び72mg/mlをスクリーニングすることにより拡張した。抗体21B12結晶を、以下の濃度で小さな結晶として観察した:12mg/ml、15mg/ml、60mg/ml、63mg/ml、66mg/ml、69mg/ml及び72mg/ml。残りの濃度では、抗体21B12結晶を六角形ブロックとして観察した。オストワルド熟成(より大きな結晶を形成する、より小さな結晶の溶解)もまた、以下の濃度で観察した:18mg/ml、30mg/ml及び33mg/ml。より小さな結晶が溶解してより大きな結晶を形成する場合に、オストワルド熟成を観察する。
Wizard I #13(1.26Mの硫酸アンモニウム、pH6.5の0.1Mのカコジル酸塩):
Wizard I #13を、pH範囲5.1〜7.4のカコジル酸塩を0.1pH単位ずつ増加させてスクリーニングすることにより拡張した。pH6.7、pH6.9、pH7.0、pH7.2〜pH7.4で、1日目に抗体21B12結晶を観察した。pH5.1で4日目に抗体21B12結晶を観察した。7日目には、pH5.6及びpH6.0で六角形ブロックの結晶形態として抗体21B12結晶を観察した。
Wizard I #13を、硫酸アンモニウムの塩濃度範囲をスクリーニングすることにより拡張した。幅広い塩濃度範囲をスクリーニングし、1.25M及び1.5Mの最終硫酸アンモニウム濃度において、葉に似ている結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
Wizard I #32(10%(w/v)のPEG3000、pH6.2の0.1Mのリン酸ナトリウム/カリウム):
Wizard I #32での抗体21B12結晶ヒットを、pH5.0〜pH8.2で0.2pH単位ずつ増加させたStock Option Phosphate kit(HR2−251)を使用してスクリーニングすることによりさらに拡張した。抗体21B12は、pH5.6で2日目に葉に似ている結晶形態で結晶化した。Wizard I #32での抗体21B12結晶ヒットを、結晶ヒットを一切生じなかった5%〜30%の沈殿剤PEG3000の濃度及びpH6.2における0.05M〜0.2Mのリン酸Na/Kの塩濃度をスクリーニングすることによりさらに拡張した。
Wizard II #15(1.26Mの硫酸アンモニウム、pH7.5の0.1MのHEPES):
Wizard II #15を、pH6.8〜pH8.2で0.1pH単位ずつ増加させたStock Option HEPES kit(HR2−102)を使用してスクリーニングすることにより拡張した。pH7.5及びpH8.1で1日目に抗体21B12結晶を観察した。2日目には、全てのその他のpH単位である6.9〜pH7.4、pH7.6〜pH8.2において、六角形ブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
Wizard II #15を、0.5M〜1.75Mの塩である硫酸アンモニウムの濃度を0.25Mずつ増加させてスクリーニングすることにより拡張した。抗体21B12は、1.25M及び1.5Mの塩濃度で1日目に六角形ブロックの結晶形態で結晶化した。
Wizard II #45(1.26Mの硫酸アンモニウム、pH6.0の0.1MのMES):
Wizard II #45を、pH5.2〜pH7.1で0.1pH単位ずつ増加させたStock Option MES kit(HR2−243)を使用してスクリーニングすることにより拡張した。pH6.3で1日目に抗体21B12結晶を観察した。以下のpH単位で4日目に抗体21B12結晶を観察した:pH5.3、pH5.9〜pH6.2、pH6.4〜pH7.1。以下のpH単位で6日目に抗体21B12結晶を観察した:pH5.2〜pH5.8。全てのpH単位であるpH5.2〜pH7.1で0.1pH単位ずつ増加させたHEPES stock options kitにおいて、六角形ブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
Wizard II #45を、pH3.6〜5.6で0.1pH単位ずつ増加させたStock Open Sodium Acetate kit(HR2−233)を使用して拡張した。pH4.6〜5.6で1日目に、六角形ブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。硫酸アンモニウム濃度もまた、同じpHスクリーンを使用して1.0M〜3.4Mに拡張し、1.0〜1.2Mの硫酸アンモニウムにおいて1日目の後に六角形ブロックを観察した。
Wizard II #45を、0.1M〜1.1Mの塩である硫酸アンモニウム濃度範囲を0.2Mずつ増加させてスクリーニングすることにより拡張した。塩濃度スクリーニングでは、結晶を観察することは一切なかった。
Wizard IV #13及びJCSG #67(pH7.0の800mMのコハク酸):
Wizard IV #13及びJCSG #67を、pH4.3〜pH6.6で0.1pH単位ずつ増加させたStock Option Succinic acid kit(HR2−249)を使用してスクリーニングすることにより拡張した。pH6.3〜pH6.6で1日目に抗体21B12結晶を観察した。pH6.2で7日目に抗体21B12結晶を観察した。pH単位6.2〜pH6.6で0.1pH単位ずつ増加させたSuccinic acid stock options kitsにおいて、六角形ブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
Wizard IV #13を、0.1M〜1.1Mのコハク酸濃度範囲を0.2Mずつ増加させて調査することによりスクリーニングした。0.7Mのコハク酸で3日目に、六角形ブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
Wizard IV #31(20%(w/v)のポリアクリル酸5100、pH7.0のHEPES、20mMの塩化マグネシウム):
Wizard IV #31を、pH6.8〜pH8.2で0.1pH単位ずつ増加させたStock Options kit Na−HEPES(HR2−231)を使用してスクリーニングすることにより拡張した。10日目に次の0.1pH単位ずつ増加させたpH6.8〜pH7.4で、0.1pH単位ずつ増加させたpH7.6〜pH8で、及びpH8.2において、六角形ブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
Wizard IV #31を、5%ずつ増加させた5%〜30%の、及び1%ずつ増加させた15%〜20%のポリアクリル酸5100の濃度範囲をスクリーニングすることにより拡張した。1日目に15%のポリアクリル酸5100で抗体21B12結晶を観察し、10日目に19%及び20%において六角形ブロックの結晶形態で観察した。
PegIon HT #73(pH7.0の0.1Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%(w/v)のPEG3350):
PegIon HT #73を、4%〜24%のPEG3350濃度を4%ずつ増加させてスクリーニングすることにより拡張した。8%PEG3350で1日目に抗体21B12結晶を観察した。結晶形態は葉であった。
PegIon HT #73を、0.1M〜1.35Mの酢酸ナトリウム三水和物濃度を0.25Mずつ増加させてスクリーニングすることにより拡張した。結晶を観察することは一切なかった。
Wizard Precipitant Synergy I #42(1.65%(w/v)のPEG400、pH7.5の0.66Mのクエン酸アンモニウム/クエン酸):
Wizard Precipitant Synergy I #42を、クエン酸アンモニウム/クエン酸のpH範囲(pH4.5、5.5、7.5及び8.5)及び0.1M〜1.1Mのクエン酸アンモニウム/クエン酸濃度範囲を0.2Mずつ増加させてスクリーニングすることにより拡張した。いずれの拡張でも、結晶を観察することは一切なかった。
Wizard Precipitant Synergy I #54(0.66Mの硫酸リチウム、0.66%(v/v)のPEG400、pH8.5の0.1MのTris HCl):
Wizard Precipitant Synergy I #54を、0.1M〜1.25Mの硫酸リチウム濃度を0.15ずつ増加させてスクリーニングすることにより拡張した。0.55M、0.65M及び0.7Mでそれぞれ1日目及び3日目に、六角形ブロックの結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
Wizard precipitant Synergy I #54を、pH7.0〜pH9.0で0.1pHずつ増加させたTris Stock Options Kit(HR2−100)でスクリーニングすることにより拡張した。次のpH単位:0.1pH単位ずつ増加させたpH8.0〜8.6、pH8.8及びpH8.9で1日目に、六角形ブロックまたは棒の結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。次のpH単位:pH7.0、7.1、7.8及び9.0で6日目に、六角形ブロックまたは棒の結晶形態で抗体21B12結晶を観察した。
実施例3−バッチ結晶化及び%収率
A.pH5.2の10mMの酢酸ナトリウム、9%スクロース中における抗体21B12(70mg/ml)を、1.5mlの遠心管内において100ulの最終体積でバッチ結晶化した。抗体21B12は、2本の成熟重鎖(配列番号19)及び2本の成熟軽鎖(配列番号17)の各々をコードするDNAによって組換え産生された、これらの鎖から成っていた。等量の抗体21B12を、表3.1に記載されているような結晶成長条件で1.5mlの遠心管に添加し、ボルテックスして室温で保存した。抗体21B12は、以下の結晶ヒットで1日目にバッチ結晶化した:LISS7(pH5.5の0.05Mのクエン酸、8%PEG3350)、LISS7(pH5.5の0.05Mのクエン酸、12%PEG3350)、Wizard I #32(20%(w/v)のポリアクリル酸5100、pH7.0のHEPES、20mMの塩化マグネシウム)、PEGIon HT #73(pH7.0の0.1Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%(w/v)のPEG3350)。抗体21B12結晶形態は、全てのバッチ結晶化実験において葉に似ていた。
「−」という記号は「透明」を意味し、「+」という記号は「結晶」を意味する。
B.pH5.2の10mMの酢酸ナトリウム、9%スクロース中における抗体21B12(70mg/ml)を、小型攪拌棒付きガラスバイアル内において室温で、手動式攪拌プレート上にて250〜450rpmの攪拌速度で、ならびに550〜800rpmの速度に至り得る最高速度で1mlの最終体積までバッチ結晶化した(表3.2に記載されているような条件)。攪拌しなかった前のバッチ結晶化と比較した場合、攪拌した抗体21B12では、より多くのバッチ結晶化ヒットを観察した。この技術により生成した結晶スラリーは均質であって、結晶サイズは顕微鏡による目視検査により<50umであったが、沈降を一晩はっきりと観察した。抗体21B12は、2本の成熟重鎖(配列番号19)及び2本の成熟軽鎖(配列番号17)の各々をコードするDNAによって組換え産生された、これらの鎖から成っていた。
抗体21B12は、以下の結晶ヒットで1日目にバッチ結晶化した:LISS7(pH5.5の0.05Mのクエン酸、12%PEG3350);Wizard I #32(20%(w/v)のポリアクリル酸5100、pH7.0のHEPES、20mMの塩化マグネシウム);Wizard II #15(1.26Mの(NH4)2So4、pH7.5の0.1MのHEPES;Wizard IV #13及びWizard JCSG #67(pH7.0の800mMのコハク酸);Crystal Screen HT #48(pH8.5の0.1MのTris HCl、2Mの一塩基性リン酸アンモニウム);PEG Ion HT #73(pH7.0の0.01Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%(w/v)のPEG3350);Wizard Precipitant synergy I #42(1.65%(v/v)のPEG400、pH7.5の0.66Mのクエン酸アンモニウム/クエン酸);Wizard Precipitant Synergy II #83(0.34%(w/v)のPEG4000、0.67の二塩基性リン酸カリウム、/リン酸ナトリウム);Wizard Precipitant Synergy II #88(2%(w/v)のPEG8000、pH8.5の0.5Mのクエン酸アンモニウム/水酸化アンモニウム);及びPEGIon HT #73(pH7.0の0.1Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%(w/v)のPEG3350)。
C.pH5.0の10mMの酢酸ナトリウム、220mMのプロリン、0.010%ポリソルベート80中における抗体21B12(120mg/ml)を、小型攪拌棒付きガラスバイアル内において室温で、手動式攪拌プレート上にて250〜450rpmの攪拌速度で、ならびに550〜800rpmの速度に至り得る最高速度で1mlの最終体積までバッチ結晶化した。抗体21B12は、2本の成熟重鎖(配列番号19)及び2本の成熟軽鎖(配列番号17)の各々をコードするDNAによって組換え産生された、これらの鎖から成っていた。
pH5.0の10mMの酢酸ナトリウム、220mMのプロリン、0.010%ポリソルベート80中における抗体21B12は、PEGIon HT(pH7.0の0.1Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%(w/v)のポリエチレングリコール3350)を使用して1日目にバッチ結晶化した。
D.pH5.2の200mMのn−アセチルL−アルギニン、10mMのグルタミン酸塩中における抗体21B12(190mg/ml)を、小型攪拌棒付きガラスバイアル内において室温で、手動式攪拌プレート上にて250〜450rpmの攪拌速度で、ならびに550〜800rpmの速度に至り得る最高速度で1mlの最終体積までバッチ結晶化した。抗体21B12は、2本の成熟重鎖(配列番号19)及び2本の成熟軽鎖(配列番号17)の各々をコードするDNAによって組換え産生された、これらの鎖から成っていた。
抗体21B12は、修飾PEGIon HT(pH7.0の0.05Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%(w/v)のポリエチレングリコール3350)を使用して1日目にバッチ結晶化した。
実施例4−等張な注射用条件の生成
上記の実施例3に記載されているようなPEGIon HT #73条件の成分は、ヒトに注射可能であるが、この条件のオスモル濃度は、TA instrumentsによるAdvanced Instrumentsモデル3900を使用して測定すると457mOsm/kgと高張である。等張な注射用薬物の許容されるオスモル濃度範囲が約250〜350mOsm/kgであるため、条件を調査し、適切なオスモル濃度範囲の条件を同定した。抗体21B12を、小型攪拌棒付きガラスバイアル内において室温で、250〜450rpmの攪拌速度で表4.1に記載されているような条件を使用して、1mlの最終体積までバッチ結晶化した。オスモル濃度を測定するために使用した試料体積は、250ulであった。オスモル濃度範囲は、250〜350mOsm/kgである。
11%〜13%PEG3350と共に、pH7.0の0.05Mの酢酸ナトリウム三水和物が、等張かつ注射可能である。pH7.0の0.6M及び0.07Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%PEG3350もまた、等張かつ注射可能である。pH7.0の0.05Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%PEG3350の収率は、79%であった。抗体21B12を、室温でタンパク質:結晶成長溶液の比が1:1のベンチスケールにおいて1ml〜50mlの条件でスケールアップした。
11%〜13%PEG3350と共に、pH7.0の0.05Mの酢酸ナトリウム三水和物が、等張かつ注射可能であって、pH7.0の0.6M及び0.07Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%PEG3350も同様であった。pH7.0の0.05Mの酢酸ナトリウム三水和物、12%PEG3350の収率は、79%であった。抗体21B12を、室温でタンパク質:結晶成長溶液の比が1:1のベンチスケールにおいて1ml〜50mlの条件でスケールアップした。
実施例5−抗体21B12結晶のタンパク質含有量のアッセイ
塩は多くの場合、試料または逆溶媒中に存在し、これらの塩は結晶化を試みる間に結晶を形成する場合がある。塩結晶の成長を関心対象の標的結晶から区別する1つの一般的な方法は、染色色素、例えばカリフォルニア州ラグナニゲルのHampton Researchにより製造されているIZIT(商標)などへの曝露によるものである。IZIT(商標)色素は、タンパク質結晶を青色に染色するが、塩結晶は染色しない。
本発明の実施における多数の修正及び変化形態は、本発明の現在好ましい実施形態を考慮の上、当業者であれば想到すると予想される。結果として、本発明の範囲に適用されるべき限定は、添付の特許請求の範囲に表されるもののみである。
本明細書で参照される、及び/または出願データシートに列挙される米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許刊行物は全て、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
前述のことから、本発明の特定の実施形態が例示を目的として本明細書に記載されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修正が行われてよいことが理解されるだろう。