図1に示されている、ある例示的なレーザトラッカシステム5は、レーザトラッカ10と、レトロリフレクタターゲット26と、任意選択による補助ユニットプロセッサ50と、任意選択による補助コンピュータ60と、を含む。レーザトラッカ10のある例示的なジンバル式ビームステアリング機構12は、アジマスベース16に取り付けられ、アジマス軸20の周囲で回転するゼニスキャリッジ14を含む。ペイロード15は、ゼニスキャリッジ14に取り付けられて、ゼニス軸18の周囲で回転する。ゼニス軸18とアジマス軸20はトラッカ10の内部の、典型的には距離測定の原点となるジンバル点22において直交する。レーザビーム46は、事実上、ジンバル点22を通過し、ゼニス軸18に垂直に向けられる。換言すれば、レーザビーム46は、ゼニス軸18に略垂直であり、アジマス軸20を通過する平面内にある。射出するレーザビーム46は、ゼニス軸18の周囲でのペイロード15の回転と、アジマス軸20の周囲でのゼニスキャリッジ14の回転によって所望の方向に向けられる。ゼニス角度エンコーダは、トラッカの内部で、ゼニス軸18と一致するゼニス機械軸に取り付けられる。アジマス角度エンコーダは、トラッカの内部で、アジマス軸20と一致するアジマス機械軸に取り付けられる。ゼニスおよびアジマス角度エンコーダは、回転のゼニスおよびアジマス角度を比較的高精度で測定する。射出するレーザビーム46はレトロリフレクタ26へと進み、これは例えば、前述の球状マウントレトロリフレクタ(SMR)であってもよい。ジンバル点22とレトロリフレクタ26との間の半径方向の距離、ゼニス軸18の周囲の回転角度、およびアジマス軸20の周囲の回転角度を測定することによって、レトロリフレクタ26の位置がトラッカの極座標系の中で特定される。
射出するレーザビーム46は、後述のように、1つまたは複数のレーザ波長を含んでいてもよい。明瞭と簡潔を期し、以下の説明においては、図1に示されている種類のステアリング機構を想定している。しかしながら、他の種類のステアリング機構も使用可能である。例えば、レーザビームをアジマスおよびゼニス軸の周囲で回転するミラーで反射させることができる。本明細書に記載されている技術は、ステアリング機構の種類に関係なく適用可能である。
磁気ネスト17が、レーザトラッカを大きさの異なるSMR、例えば1.5、7/8、および1/2インチSMR等の「ホーム」位置にリセットするためにレーザトラッカに含められてもよい。トラッカ搭載レトロリフレクタ19が、トラッカを参照距離にリセットするために使用されてもよい。それに加えて、図1の図では見えないが、トラッカ搭載ミラーをトラッカ搭載レトロリフレクタと共に使用して、自己補償を実行できるようにしてもよく、これについては米国特許第7,327,446号(‘446号特許)に記載されており、その内容を参照によって本願に援用する。
図2は、ある例示的なレーザトラッカシステム7を示しており、これは図1のレーザトラッカシステム5と同様であるが、レトロリフレクタターゲット26が6−DOFプローブ1000に置き換えられている。図1では、他の種類のレトロリフレクタターゲットが使用されてもよい。例えば、キャットアイレトロリフレクタが時々使用され、これは光がガラス構造の反射後面上の小さい光のスポットに合焦されるガラスレトロリフレクタである。
図3は、レーザトラッカの実施形態における光学および電気要素を示すブロック図である。これは、レーザトラッカの中の、2つの光の波長、すなわちADMのための第一の波長と可視ポインタおよびトラッキングのための第二の波長を発する要素を示している。可視ポインタにより、使用者はトラッカにより発せられるレーザビームスポットの位置が見える。2種類の波長は、フリースペースビームスプリッタを使って結合される。電気光学(electrooptic)(EO)システム100は、可視光源110と、アイソレータ115と、任意選択による第一のファイバ入射システム170と、任意選択による干渉計(IFM)120と、ビームエキスパンダ140と、第一のビームスプリッタ145と、位置検出器アセンブリ150と、第二のビームスプリッタ155と、ADM 160と、第二のファイバ入射システム170と、を含む。
可視光源110は、レーザ、スーパールミネッセントダイオード、または他の発光装置であってもよい。アイソレータ115は、ファラデアイソレータ、減衰器、または反射により光源に戻る光を減少させることのできるその他の装置であってもよい。任意選択によるIFMは、様々な方法で構成されてよい。実現可能な実施例のある具体的な例として、IFMはビームスプリッタ122と、レトロリフレクタ126と、4分の1波長板124、130と、位相アナライザ128と、を含む。可視光源110は光を自由空間へと射出してもよく、その後、この光は自由空間内でアイソレータ115および任意選択によるIFM 120を通って進む。あるいは、アイソレータ115は光ファイバケーブルによって可視光源110に連結されてもよい。この場合、アイソレータからの光は、第一の光ファイバ入射システム170を通じて自由空間へと射出されてもよく、このことについては図5を参照しながら以下に説明する。
ビームエキスパンダ140は、様々なレンズ構成を使って組み立てられてもよいが、一般的に使用される2種類の先行技術の構成が図4Aおよび4Bに示されている。図4Aは、負のレンズ141Aと正のレンズ142Aの使用に基づく構成140Aを示す。負のレンズ141Aに入射するコリメート光ビーム220Aは正のレンズ142Aから、より大きいコリメート光ビーム230Aとして射出される。図4Bは、2つの正のレンズ141B、142Bの使用に基づく構成140Bを示す。第一の正のレンズ141Bに入射するコリメート光ビーム220Bは、第二の正のレンズ142Bから、より大きいコリメート光ビーム230Bとして射出する。ビームエキスパンダ140から出た光のうち少量が、トラッカから出る間にビームスプリッタ145、155で反射され、失われる。光のうち、ビームスプリッタ155を透過した部分は、ADM 160からの光と結合されて、複合光ビーム188を形成し、これはそのレーザトラッカから出てレトロリフレクタ90へと進む。
ある実施形態において、ADM 160は、光源162と、ADM電子装置164と、ファイバネットワーク166と、相互接続用電気ケーブル165と、相互接続用光ファイバ168、169、184、186と、を含む。ADM電子装置は、電気変調およびバイアス電圧を光源162に送り、これは、例えば約1550nmの波長で動作する分布帰還形レーザであってもよい。ある実施形態において、ファイバネットワーク166は、図8Aに示される先行技術の光ファイバネットワーク420Aであってもよい。この実施形態において、図3の光源162からの光は、図8Aの光ファイバ432と同等の光ファイバ184に乗って進む。
図8Aのファイバネットワークは、第一のファイバカプラ430と、第二のファイバカプラ436と、低透過率リフレクタ435、440と、を含む。光は第一のファイバカプラ430を通って進み、2つの経路、すなわち光ファイバ433を通って第二のファイバカプラ436に至る第一の経路と光ファイバ422とファイバ長イコライザ423を通る第二の経路に分かれる。ファイバ長イコライザ423は、ADM電子装置164の基準チャネルへと進む図3のファイバ168に接続される。ファイバ長イコライザ423の目的は、基準チャネル内の光が通る光ファイバの長さを測定チャネル内で光が通る光ファイバの長さとマッチさせることである。このようにファイバ長をマッチさせることによって、周囲温度の変化により生じるADMエラーが減少する。このようなエラーは、光ファイバの有効光路長が、光ファイバの平均屈折率にファイバの長さを乗じたものに等しいために起こりうる。光ファイバの屈折率はファイバの温度に依存するため、光ファイバの温度の変化によって測定および基準チャネルの有効光路長が変化する。測定チャネル内の光ファイバの有効光路長が基準チャネル内の光ファイバの有効光路長に関して変化すると、レトロリフレクタターゲット90が静止状態に保たれたとしても、レトロリフレクタターゲット90の位置の見掛けのシフトが起こる。この問題を回避するために、2つのステップが取られる。第一に、基準チャネル内のファイバ長を測定チャネル内のファイバ長とできるだけマッチさせる。第二に、測定用および基準用ファイバを可能なかぎり隣り合わせで配線することにより、2つのチャネル内の光ファイバの温度変化が略同じになるようにする。
光は、第二の光ファイバカプラ436を通って進み、2つの経路、すなわち、低反射率ファイバターミネータ440に至る第一の経路と、光ファイバ438への第二の経路に分かれ、そこから図3の光ファイバ186へと進む。光ファイバ186上の光は第二のファイバ入射システム170へと進む。
ある実施形態において、ファイバ入射システム170が先行技術である図5に示されている。図3の光ファイバ186からの光は、図5のファイバ172へと進む。ファイバ入射システム170は、光ファイバ172と、フェルール(ferrule:継ぎ手)174と、レンズ176と、を含む。光ファイバ172はフェルール174に取り付けられ、これはレーザトラッカ10内の構造体に固定して取り付けられる。希望に応じて、光ファイバの端を斜めに研磨して、反射減衰を低減させてもよい。光250は、ファイバのコアから射出し、これは使用する光の波長と光ファイバの具体的な種類に応じて、直径4〜12マイクロメートルのシングルモード光ファイバであってもよい。光250は斜めに発散し、レンズ176を通り、これが光をコリメートする。ADMシステム内の1本の光ファイバを通る光信号を送信および受信する方法は、‘758号特許の図3に関して説明した。
図3を参照すると、ビームスプリッタ155はダイクロイックビームスプリッタであってもよく、これはそれが反射するものと異なる波長を透過させる。ある実施形態において、ADM 160からの光はダイクロイックビームスプリッタ155で反射され、ダイクロイックビームスプリッタ155を透過した可視レーザ110からの光と結合する。複合光ビーム188は、レーザトラッカからレトロリフレクタ90へと第一のビームとして進み、それがその光の一部を第二のビームとして戻す。第二のビームのうち、ADM波長の部分はダイクロイックビームスプリッタ155で反射され、第二のファイバ入射システム170に戻り、これは光を光ファイバ186へと再び結合させる。
ある実施形態において、光ファイバ186は、図8Aの光ファイバ438に対応する。戻り光は、光ファイバ438から第二のファイバカプラ436を通って進み、2つの経路に分かれる。第一の経路は光ファイバ424につながり、これは、ある実施形態において、光ファイバ169に対応し、これは図3のADM電子装置の測定チャネルへとつながる。第二の経路は光ファイバ433につながり、次に第一のファイバカプラ430につながる。第一のファイバカプラ430を出た光は2つの経路、すなわち光ファイバ432への第一の経路と低反射率ターミネータ435への第二の経路に分かれる。ある実施形態において、光ファイバ432は光ファイバ184に対応し、これは図3の光源162につながる。ほとんどの場合、光源162は一体ファラデアイソレータを含み、これは光ファイバ432から光源に入る光の量を最小化する。過剰な光が反対方向にレーザに供給されると、レーザが不安定となる可能性がある。
ファイバネットワーク166からの光は、光ファイバ168、169を通じてADM電子装置164に入る。先行技術のADM電子装置のある実施形態が図7に示されている。図3の光ファイバ168は図7の光ファイバ3232に対応し、図3の光ファイバ169は図7の光ファイバ3230に対応する。ここで図7を参照すると、ADM電子装置3300は、周波数基準3302と、合成器3304と、測定検出器3306と、基準検出器3308と、測定ミキサ3310と、基準ミキサ3312と、コンディショニング電子装置3314、3316、3318、3320と、N分周プリスケーラ3324と、アナログ−デジタル変換器(ADC)3322と、を含む。周波数基準は、例えば恒温槽付水晶発振器(OCXO)であってもよく、例えば10MHzであってもよい基準周波数fREFを合成器に送り、これが2種類の電気信号、すなわち周波数fRFの1つの信号と周波数fLOの2つの信号を生成する。信号fRFは光源3102に進み、これは図3の光源162に対応する。周波数fLOの2つの信号は測定ミキサ3310と基準ミキサ3312に進む。図3の光ファイバ168、169からの光は、それぞれ図7のファイバ3232、3230に現れ、それぞれ基準および測定チャネルに入る。基準検出器3308と測定検出器3306は、光信号を電気信号に変換する。これらの信号は、それぞれ電気構成要素3316、3314により調整され、それぞれミキサ3312、3310に送られる。ミキサは周波数fIFを生成し、これはfLO−fRFの絶対値と等しい。信号fRFは比較的高い周波数で、例えば2GHzであってもよく、その一方で、信号fIFは比較的低い周波数、例えば10kHzであってもよい。
基準周波数fREFは、プリスケーラ3324に送られ、それが周波数を整数で分周する。例えば、10MHzの周波数は40で分割されて出力周波数250kHzを得る。この例において、ADC 3322に入る10kHzの信号は250kHzでサンプリングされ、その結果、1サイクルあたり25のサンプルが生成される。ADC 3322からの信号はデータプロセッサ3400に送られ、これは例えば、図3のADM電子装置164の中にある1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ(DSP)であってもよい。
距離の抽出方法は、基準および測定チャネルのためのADC信号の位相の計算に基づく。この方法は、Bridges et al.の米国特許第7,701,559号(‘559号特許)に詳細に説明されており、その内容を参照によって本願に援用する。計算には、‘559号特許の等式(1)−(8)の使用が含まれる。これに加えて、ADMが最初にレトロリフレクタの測定を開始すると、合成器により生成される周波数は何回か(例えば3回)変更され、毎回、ありうるADM距離が計算される。選択された周波数の各々についてありうるADM距離を比較することにより、ADM測定の不明確さが排除される。‘559号特許の等式(1)−(8)を‘559号特許の図5に関して説明されている合成方法および‘559号特許に記載されているカルマンフィルタと組み合わせることによって、ADMは移動するターゲットを測定できることになる。他の実施形態において、例えば位相差ではなくパルス式飛行時間を利用する等、絶対距離測定値を取得する他の方法が使用されてもよい。
ビームスプリッタ155を通過する戻り光ビーム190の一部はビームスプリッタ145に到達し、これはその光の一部をビームエキスパンダ140に、その光の別の部分を位置検出器アセンブリ150に送る。レーザトラッカ10またはEOシステム100から射出した光は第一のビームとして考えてもよく、その光のうち、レトロリフレクタ90または26で反射する部分は第二のビームと考えてもよい。反射ビームの一部は、EOシステム100の異なる機能的要素に送られる。例えば、第一の部分は、図3のADM 160等の距離計に送られてもよい。第二の部分は位置検出器アセンブリ150に送られてもよい。場合により、第三の部分が任意選択による干渉計120等の他の機能的ユニットに送られてもよい。図3の例においては、第二のビームの第一の部分と第二の部分がそれぞれビームスプリッタ155および145で反射された後に距離計と位置検出器に送られているが、光を反射させるのではなく、距離計または位置検出器へと透過させることが可能であったであろう点を理解することが重要である。
先行技術の位置検出器アセンブリの4つの例である150A〜150Dが図6A〜Dに示されている。図6Aは最も単純な実施例を示しており、位置検出器アセンブリは位置センサ151を含み、これは電子装置ボックス350から電源を取り、そこに信号を戻す回路板152の上に取り付けられ、電子装置ボックス350は、レーザトラッカ10、補助ユニット50、または外部コンピュータ60の中の何れの位置における電子処理能力を表していてもよい。図6Bは光学フィルタ154を含み、これは不要な光波長が位置センサ151に到達しないように遮断する。不要な光波長はまた、例えばビームスプリッタ154または位置センサ151の表面を適当な膜で被覆することによって遮断してもよい。図6Cはレンズ153を含み、これは光ビームのサイズを縮小する。図6Dは、光学フィルタ154とレンズ153の両方を含む。
図6Eは、光学調整器149Eを含む新規な位置検出器アセンブリを示す。光学調整器はレンズ153を含み、また、任意選択による波長フィルタ154も含んでいてよい。それに加えて、これは拡散板156および空間フィルタ157の少なくとも一方を含む。前述のように、人気の高い種類のレトロリフレクタはコーナキューブレトロリフレクタである。1つの種類のコーナキューブレトロリフレクタは3つのミラーからなり、各々が他の2つのミラーと直角に接合される。これら3つのミラーが接合する交線は有限厚(finite thickness)を有していてもよく、そこでは光が完全に反射してトラッカに戻るとはかぎらない。有限厚の線は、それらが伝播する際に回折するため、位置検出器に到達した時に位置検出器におけるそれとまったく同じには見えないかもしれない。しかしながら、回折光パターンは一般に、完全な対称からずれる。その結果、位置検出器151に当たる光には、例えば回折線の付近で光学パワー(ホットスポット)の増減がありうる。レトロリフレクタからの光の均一性はレトロリフレクタによって異なるため、また、位置検出器上での光の分布が、リフレクタの回転または傾斜に伴って変化しうるため、拡散板156を含めることによって位置検出器151に当たる光の平滑さを改善することが有利であるかもしれない。理想的な位置検出器は質量中心に応答するはずであり、理想的な拡散板はスポットを対称に広げるはずであるため、位置検出器により得られた、結果としての位置には影響がないはずであるとの議論があるかもしれない。しかしながら、実際には、拡散板は位置検出器アセンブリの性能を改善することが観察されており、これはおそらく、位置検出器151とレンズ153の非線形性(不完全性)の効果であろう。ガラス製のコーナキューブレトロリフレクタもまた、位置検出器151において光の不均一なスポットを生成するかもしれない。位置検出器における光のスポットのばらつきは、6−DOFターゲットの中のコーナキューブからの反射光により特に顕著であるかもしれず、これは本願と共通の出願人によるBrown et al.の米国特許第8,740,396号(‘396号特許)および上述の、本願と共通の出願人によるCramer et al.の米国特許第4,467,072号(‘072号特許)からより明瞭に理解されると思われ、両特許の内容を参照によって本願に援用する。ある実施形態において、拡散板156はホログラフィックディフューザである。ホログラフィックディフューザは、特定の拡散角度にわたり制御された均一な光を提供する。他の実施形態においては、すりガラスまたは「オパール」拡散板等、他の種類の拡散板が使用される。
位置検出器アセンブリ150Eの空間フィルタ157の目的は、例えば光学面での不要な反射の結果でありうるゴーストビームが位置検出器151に当たらないように遮断することである。空間フィルタは、アパーチャを有する板157を含む。空間フィルタ157をレンズから、レンズの焦点距離と略等しい距離を空けて設置することにより、戻り光243Eはそれがその最も狭い部分の付近にある時、すなわちビームのウェストにおいて空間フィルタを通過する。例えば、光学素子の反射の結果として異なる角度で進むビームは、アパーチャから離れた位置で空間フィルタに当たり、位置検出器151に到達しないように遮断される。一例が図6Eに示されており、そこでは不要なゴーストビーム244Eがビームスプリッタ145の表面で反射されて空間フィルタ157へと進み、そこで遮断される。空間フィルタがなければ、ゴーストビーム244Eは位置検出器151を通り、それによって位置検出器151上のビーム243Eの位置の判定が不正確となる。弱いゴーストビームでも、そのゴーストビームが光の主要スポットから比較的長い距離だけ離れていれば、位置検出器151上の質量中心の位置を大きく変化させるかもしれない。
ここに記載されているような種類のレトロリフレクタ、例えばコーナキューブまたはキャットアイレトロリフレクタは、レトロリフレクタに入射する光線を入射光線と平行な方向に反射させる特性を有する。それに加えて、入射および反射光線はレトロリフレクタの対称点の周囲に対称に配置される。例えば、オープンエアコーナキューブレトロリフレクタにおいて、レトロリフレクタの対称点はコーナキューブの頂点である。ガラスコーナキューブレトロリフレクタでは、対称点は同様に頂点であるが、この場合、ガラス−空気界面において光が曲がることを考慮しなければならない。屈折率2.0のキャットアイレトロリフレクタでは、対称点は球の中心である。共通平面上に対称に置かれた2つのガラスの半球からなるキャットアイレトロリフレクタの場合、対称点はその平面上の、各半球の球の中心にある点である。要点は、レーザトラッカに通常使用されるレトロリフレクタの種類については、レトロリフレクタによりトラッカへと戻される光が、入射レーザビームに関して頂点の反対側にシフトすることである。
図3におけるレトロリフレクタ90のこのような挙動が、レーザトラッカによるレトロリフレクタの追跡の基礎となる。位置センサは、その表面上に理想回帰点を持つ。理想回帰点とは、レトロリフレクタの対称点(例えば、SMRにおけるコーナキューブレトロリフレクタの頂点)に送られたレーザビームが戻る点である。通常、回帰点は位置センサの中心付近にある。レーザビームがレトロリフレクタの片側に送られると、それは反射して反対側に戻り、位置センサ上の回帰点から外れて現れる。位置センサ上の戻り光ビームの位置を認識することによって、レーザトラッカ10の制御システムはモータに対し、光ビームがレトロリフレクタの対称点に向けて移動するようにさせることができる。
レトロリフレクタが一定の速度でトラッカへと横方向に移動すると、レトロリフレクタにおける光ビームはレトロリフレクタに(過渡信号が落ち着いた後に)レトロリフレクタの対称点から一定のオフセット距離で当たる。レーザトラッカは、レトロリフレクタにおけるこのオフセット距離について、制御された測定から得られたスケール係数および位置センサ上の光ビームから理想回帰点までの距離に基づいて補正を行う。
前述のように、位置検出器は2つの重要な機能、すなわちトラッキングを可能にする機能と、レトロリフレクタの移動について測定値の補正を行う機能を果たす。位置検出器内の位置センサは、位置測定が可能な何れの種類の装置であってもよい。例えば、位置センサは、位置検出素子または感光体アレイであってもよい。位置検出素子は、例えばラテラル効果検出器または4分割検出器であってもよい。感光体アレイは、例えばCMOSまたはCCDアレイであってもよい。
ある実施形態において、ビームスプリッタ145で反射しない戻り光はビームエキスパンダ140を透過し、それによってより小さくなる。他の実施形態において、位置検出器と距離計の位置は逆転されて、ビームスプリッタ145で反射した光は距離計へと進み、ビームスプリッタを透過した光は位置検出器へと進む。
光は任意選択によるIFMを通り、アイソレータを通り、可視光源110に入る。この段階で、光学パワーは、それが可視光源110を不安定にしないように十分に小さくあるべきである。
ある実施形態において、可視光源110からの光は、図5のビーム入射システム170を通じて入射する。ファイバ入射システムは、光源110の出力またはアイソレータ115の光ファイバ出力に取り付けられてもよい。
ある実施形態において、図3のファイバネットワーク166は図8Bの先行技術のファイバネットワーク420Bである。ここで、図3の光ファイバ184、186、168、169は、図8の光ファイバ443、444、424、422に対応する。図8Bのファイバネットワークは図8Aのファイバネットワークと同様であるが、図8Bのファイバネットワークは2つのファイバカプラの代わりに1つのファイバカプラを有する。図8Bの図8Aに対する利点は単純さであるが、図8Bは不要な光学的後方反射が光ファイバ422および424に入る可能性がより高い。
ある実施形態において、図3のファイバネットワーク166は図8Cのファイバネットワーク420Cである。ここで、図3の光ファイバ184、186、168、169は図8Cの光ファイバ447、455、423、424に対応する。ファイバネットワーク420Cは、第一のファイバカプラ445と第二のファイバカプラ451を含む。第一のファイバカプラ445は、2つの入力ポートと2つの出力ポートを有する2×2カプラである。この種のカプラは通常、2つのファイバコアを近接させ、その後、ファイバを加熱しながら引き伸ばすことによって作られる。このようにして、ファイバ間のエバネッセントカプリングにより、光のうちの所望の部分を隣接するファイバへと分割することができる。第二のファイバカプラ451は、サーキュレータと呼ばれる種類のものである。これは3つのポートを有し、各々が光を透過させ、または受け取る能力を有するが、指定された方向に限定される。例えば、光ファイバ448上の光はポート453に入り、矢印に示されるように、ポート454に向かって運ばれる。ポート454では、光が光ファイバ455へと透過させられてもよい。同様に、ポート455上で進む光はポート454に入り、矢印の方向にポート456へと進んでもよく、ここで一部の光が光ファイバ424へと透過させられてもよい。3つのポートだけでよい場合、サーキュレータ451の光学パワーの損失は2×2カプラの場合より少なくなるかもしれない。他方で、サーキュレータ451は2×2カプラより高価であるかもしれず、また、偏波モード分散が発生するかもしれず、これは状況によって問題となりうる。
図9および10は、前述の‘983号特許の図2および3に描かれている、先行技術のレーザトラッカ2100の、それぞれ分解図と断面図を示す。アジマスアセンブリ2110は支柱筐体2112と、アジマスエンコーダアセンブリ2120と、下側および上側アジマス軸受2114A、2114Bと、アジマスモータアセンブリ2125と、アジマススリップリングアセンブリ2130と、アジマス回路板2135と、を含む。
アジマスエンコーダアセンブリ2120の目的は、支柱筐体2112に関するヨーク2142の回転角度を正確に測定することである。アジマスエンコーダアセンブリ2120は、エンコーダディスク2121と、読取りヘッドアセンブリ2122と、を含む。エンコーダディスク2121はヨーク筐体2142のシャフトに取り付けられ、読取りヘッドアセンブリ2122は支柱アセンブリ2110に取り付けられる。読取りヘッドアセンブリ2122は回路板を含み、その上に1つまたは複数の読取りヘッドが固定される。読取りヘッドから送られたレーザ光は、エンコーダディスク2121上の細かい格子の線で反射される。反射光はエンコーダ読取りヘッド上の検出器によりピックアップされ、処理されて、固定された読取りヘッドに関するエンコーダディスクの回転角度が特定される。
アジマスモータアセンブリ2125は、アジマスモータロータ2126とアジマスモータステータ2127を含む。アジマスモータロータは、ヨーク筐体2142のシャフトに直接取り付けられた永久磁石を含む。アジマスモータステータ2127は、所定の磁界を生成する界磁巻線を含む。この磁界はアジマスモータロータ2126の磁石と相互作用して、所望の回転運動を発生させる。アジマスモータステータ2127は、支柱フレーム2112に取り付けられる。
アジマス回路板2135は、エンコーダやモータ等のアジマス構成要素により必要な電気機能を提供する1つまたは複数の回路板を表す。アジマススリップリングアセンブリ2130は、外側部分2131と内側部分2132を含む。ある実施形態において、結束ワイヤ2138が補助ユニットプロセッサ50から出る。結束ワイヤ2138は、トラッカに電源を供給し、またはトラッカとの信号の送受信を行ってもよい。結束ワイヤ2138の一部は、回路板上のコネクタへと向けられてもよい。図10に示されている例において、ワイヤはアジマス回路板2135、エンコーダ読取りヘッドアセンブリ2122、およびアジマスモータアセンブリ2125へと配線される。他のワイヤは、スリップリングアセンブリ2130の内側部分2132へと配線される。内側部分2132は支柱アセンブリ2110に取り付けられ、その結果、静止したままである。外側部分2131はヨークアセンブリ2140に取り付けられ、その結果、内側部分2132に関して回転する。スリップリングアセンブリ2130は外側部分2131が内側部分2132に関して回転するときに低インピーダンスの電気接触が可能となるように設計される。
セニスアセンブリ2140は、ヨーク筐体2142と、ゼニスエンコーダアセンブリ2150と、左右のゼニス軸受2144A、2144Bと、ゼニスモータアセンブリ2155と、ゼニススリップリングアセンブリ2160と、ゼニス回路板2165と、を含む。
ゼニスエンコーダアセンブリ2150の目的は、ヨーク筐体2142に関するペイロードフレーム2172の回転角度を正確に測定することである。ゼニスエンコーダアセンブリ2150は、ゼニスエンコーダディスク2151と、ゼニス読取りヘッドアセンブリ2152と、を含む。エンコーダディスク2151は、ペイロード筐体2142に取り付けられ、読取りヘッドアセンブリ2152はヨーク筐体2142に取り付けられる。ゼニス読取りヘッドアセンブリ2152は回路板を含み、その上に1つまたは複数の読取りヘッドが固定される。読取りヘッドから送られるレーザ光はエンコーダディスク2151上の細かい格子の線で反射される。反射光はエンコーダ読取りヘッド上の検出器によってピックアップされ、処理されて、固定された読取りヘッドに関するエンコーダディスクの回転角度が特定される。
ゼニスモータアセンブリ2155は、ゼニスモータロータ2156とゼニスモータステータ2157を含む。ゼニスモータロータ2156は、ペイロードフレーム2172のシャフトに直接取り付けられた永久磁石を含む。ゼニスモータステータ2157は、所定の磁界を生成する界磁巻線を含む。この磁界はロータ磁石と相互作用して、所望の回転運動を発生させる。ゼニスモータステータ2157は、ヨークフレーム2142に取り付けられる。
ゼニス回路板2165は、エンコーダやモータ等のゼニス構成要素により必要とされる電気機能を提供する1つまたは複数の回路板を表す。ゼニススリップリングアセンブリ2160は、外側部分2161と内側部分2162を含む。結束ワイヤ2168は、アジマス外側スリップリング2131から出て、電源または信号を運んでもよい。結束ワイヤ2168のワイヤのうちの一部は、回路板上のコネクタにつながってもよい。図10に示される例において、ワイヤはゼニス回路板2165、ゼニスモータアセンブリ2150、およびエンコーダ読取りヘッドアセンブリ2152へと配線される。他のワイヤは、スリップリングアセンブリ2160の内側部分2162へと配線される。内側部分2162はヨークフレーム2142に取り付けられ、その結果、アジマス角度にのみ回転するが、ゼニス角度には回転しない。外側部分2161はペイロードフレーム2162に取り付けられ、その結果、ゼニスおよびアジマス角度の両方に回転する。スリップリングアセンブリ2160は、外側部分2161が内側部分2162に関して回転する時に低インピーダンスの電気接触が可能となるように設計される。ペイロードアセンブリ2170は主要光学アセンブリ2180と第二の光学アセンブリ2190を含む。
図11は、寸法測定電子装置処理システム1500を示すブロック図であり、これはレーザトラッカ電子装置処理システム1510と、周辺素子1582、1584、1586の処理システムと、コンピュータ1590と、ここでは雲(クラウド)として示されているネットワーク接続された他の構成要素1600と、を含む。例示的なレーザトラッカ電子装置処理システム1510は、マスタプロセッサ1520と、ペイロード機能電子装置1530と、アジマスエンコーダ電子装置1540と、ゼニスエンコーダ電子装置1550と、ディスプレイと、ユーザインタフェース(UI)電子装置1560と、リムーバブルストレージハードウェア1565と、RFID(無線識別)電子装置と、アンテナ1572と、を含む。ペイロード機能電子装置1530は、6−DOF電子装置1531、カメラ電子装置1532、ADM電子装置1533、位置検出器(PSD)電子装置1534、およびレベル電子装置1535を含む多数の副機能を含む。副機能のほとんどは少なくとも1つのプロセッサユニットを有し、これは例えばデジタル信号プロセッサ(DSP)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)であってもよい。電子装置ユニット1530、1540、および1550は図のように分離されており、これは、レーザトラッカ内のそれらの位置による。ある実施形態において、ペイロード機能1530は図9および10のペイロード2170の中にあり、その一方で、アジマスエンコーダ電子装置1540はアジマスアセンブリ2110の中にあり、ゼニスエンコーダ電子装置1550はゼニスアセンブリ2140の中にある。
多くの種類の周辺装置が使用可能であるが、ここでは3つのそのような装置、すなわち、温度センサ1582、6−DOFプローブ1584および、例えばスマートフォン等の携帯情報端末1586が示されている。本発明の実施形態により後でより詳しく説明するように、図11に示されていない他の種類の周辺装置は、三角計測スキャナ、特に6−DOF三角計測スキャナ、例えばレーザラインプローブ(LLP)またはエリアストラクチャードライトスキャナである。レーザトラッカは周辺装置と様々な方法で通信してもよく、これにはアンテナ1572での無線通信による方法、カメラ等のビジョンシステムによる方法、および6−DOFプローブ1584または三角計測スキャナ等の協調ターゲットまでのレーザトラッカの距離および角度読取値によって行われる。周辺装置は、プロセッサを含んでいてもよい。一般に、6−DOFアクセサリは6−DOFプロービングシステム、6−DOFスキャナ、6−DOFプロジェクタ、6−DOFセンサ、および6−DOFインディケータを含んでいてもよい。これらの6−DOF装置のプロセッサは、レーザトラッカ内の処理装置のほか、外部コンピュータとクラウド処理資源と共に使用されてもよい。一般に、レーザトラッカプロセッサまたは測定装置プロセッサという用語が使用されるとき、これは使用可能な外部コンピュータとクラウドサポートを含むものとする。
ある実施形態において、別の通信バスがマスタプロセッサ1520から電子装置ユニット1530、1540、1550、1560、1565、および1570の各々につながる。各通信ラインは、例えばデータライン、クロックライン、フレームラインを含む3つのシリアルラインを有していてもよい。フレームラインは、電子装置ユニットがクロックラインに注目すべきが否かを示す。それが、注目するべきであることを示すと、電子装置ユニットは各クロック信号でデータラインの現在の数値を読み取る。クロック信号は、例えばクロックパルスの立ち上がりエッジに対応してもよい。ある実施形態において、情報はデータライン上でパケットの形態で伝送される。ある実施形態において、各パケットはアドレス、数値、データメッセージ、およびチェックサムを含む。アドレスは、電子機器ユニット内のどこにテータメッセージを向けるかを示す。その場所は、例えば電子装置ユニット内のプロセッササブルーチンに対応してもよい。数値は、データメッセージの長さを示す。データメッセージは、電子装置ユニットが実行するデータまたは命令を含む。チェックサムは、通信ライン上でエラーが送信される機会を最小限にするために使用される数値である。
ある実施形態において、マスタプロセッサ1520は情報パケットを、バス1610上でペイロード機能電子装置1530に、バス1611上でアジマスエンコーダ電子装置1540に、バス1612上でゼニスエンコーダ電子装置1550に、バス1613上でディスプレイおよびUI電子装置1560に、バス1614上でリムーバブルストレージハードウェア1565に、バス1616上でRFIDおよび無線電子装置1570に送信する。
ある実施形態において、マスタプロセッサ1520はまた、synch(同期)パルスをsynchバス1630上で電子装置ユニットの各々に同時に送信する。synchパルスは、レーザトラッカの測定機能により収集される数値を同期させる方法を提供する。例えば、アジマスエンコーダ電子装置1540とゼニス電子装置1550は、synchパルスを受信するとすぐにそれらのエンコーダの数値をラッチする。同様に、ペイロード機能電子装置1530は、ペイロードの中に含まれる電子装置が収集するデータをラッチする。6−DOF、ADM、および位置検出器はすべて、synchパルスが供給されるとデータをラッチする。ほとんどの場合、カメラおよび傾斜計は、synchパルスより低速でデータを収集するが、synchパルス周期の倍数でデータをラッチしてもよい。
アジマスエンコーダ電子機器1540およびゼニスエンコーダ電子装置1550は典型的に、例えばスリップリングによって相互に、およびペイロード電子装置1530から分離されている。そのために、図11では、バスライン1610、1611、および1612は別々のバスラインとして示されている。
レーザトラッカ電子部品処理システム1510は、外部コンピュータ1590と通信してもよく、またはレーザトラッカ内の計算、表示、およびUI機能を提供してもよい。レーザトラッカは、例えばイーサネットラインまたは無線接続であってもよい通信リンク1606上でコンピュータ1590と通信する。レーザトラッカはまた、雲で表されているその他の要素1600と、イーサネットケーブル等の1本または複数の電気ケーブルおよび1つまたは複数の無線接続を含んでいてもよい通信リンク1602上で通信してもよい。要素1600の一例は、他の3次元試験機器、例えば関節アームCMMであり、これはレーザトラッカによって移動されてもよい。コンピュータ1590と要素1600との間の通信リンク1604は、有線(例えば、イーサネット)でも無線でもよい。リモートコンピュータ1590に向かって座っているオペレータは、雲1600で表されているインターネットに、それ自体はイーサネットまたは無線ラインでマスタプロセッサ1520に接続されているイーサネットまたは無線ラインで接続してもよい。このようにして、使用者はリモートレーザトラッカの動作を制御してもよい。
今日のレーザトラッカは、ADMのために1つの可視波長(通常、赤)と1つの赤外波長を使用する。赤波長は、干渉計での使用および、赤色ポインタビームの提供に使用するのに適した周波数安定ヘリウムネオン(HeNe)レーザにより提供されてもよい。あるいは、赤波長は、ポインタビームのような機能を果たすダイオードレーザにより提供されてもよい。2つの光源を使用した場合の欠点は、追加の光源、ビームスプリッタ、アイソレータ、およびその他の構成要素に必要な追加のスペースとコストの増大である。2つの光源を使用した場合の他の欠点は、ビームが進む経路全体に沿って、2つの光ビームを完全に整合させることが困難であることである。これは様々な問題を引き起こすかもしれず、例えば、異なる波長で動作する異なるサブシステムから良好な性能を同時に得ることができない。1つの光源を使用することによってこれらの問題を排除するシステムが、図12Aの光電気システム500の中に示されている。
図12Aは、可視光源110と、アイソレータ115と、ファイバネットワーク420と、ADM電子装置530と、ファイバ入射システム170と、ビームスプリッタ145と、位置検出器150と、を含む。可視光源110は、例えば赤色または緑色ダイオードレーザまたは垂直共振器面発光レーザ(vertical cavity surface emitting laser)(VCSEL)であってもよい。アイソレータは、ファラデアイソレータ、減衰器、または光源にフィードバックされる光の量を十分に減少させることのできる他のあらゆる装置を含んでいてもよい。アイソレータ115からの光はファイバネットワーク420の中へと進み、これは、ある実施形態において、図8Aのファイバネットワーク420Aである。
図12Bはある実施形態の光電気システム400を示しており、その中では、光の1つの波長だけが使用されるが、変調は、光源の直接変調ではなく、光の電気光学変調によって実行される。光電気システム400は、可視光源110と、アイソレータ115と、電気光学モジュレータ410と、ADM電子装置475と、ファイバネットワーク420と、ファイバ入射システム170と、ビームスプリッタ145と、位置検出器150と、を含む。可視光源110は、例えば赤色または緑色レーザダイオードであってもよい。レーザ光はアイソレータ115を通じて送られ、これは例えばファラデアイソレータまたは減衰器であってもよい。アイソレータ115は、その入力および出力ポートにおいてファイバで連結されていてもよい。アイソレータ115は光を電気光学モジュレータ410に送り、これは光を、最高10GHzか希望に応じてそれより高くてもよい選択された周波数に変調する。ADM電子装置475からの電気信号476は、電気光学モジュレータ410の中の変調を駆動する。電気光学モジュレータ410からの変調された光はファイバネットワーク420へと進み、これは前述のファイバネットワーク420A、420B、420C、または420Dであってもよい。光の一部は光ファイバ422上でADM電子装置475の基準チャネルへと進む。光の別の部分は、トラッカから射出し、レトロリフレクタ90で反射され、トラッカに戻り、ビームスプリッタ145に到達する。光のうちの少量がビームスプリッタで反射され、位置検出器150に進み、これについては図6A〜Fに関して上で説明した。光の一部はビームスプリッタ145を通じてファイバ入射システム170に入り、ファイバネットワーク420を通じて光ファイバ424に、またADM電子装置475の測定チャネルへと入る。一般に、図12Aのシステム500は図12Bのシステム400より安価に製造できるが、電気光学モジュレータ410はより高い変調周波数を達成できるかもしれず、これは状況によって有利となりうる。
図13は、ある実施形態のロケータカメラシステム950と光電気システム900を示しており、その中では方位カメラ910が3Dレーザトラッカの光電気機能と組み合わされて、装置の6自由度を測定する。光電気システム900は、可視光源905と、アイソレータ910と、任意選択による電気光学モジュレータ410と、ADM電子装置715と、ファイバネットワーク420と、ファイバ入射システム170と、ビームスプリッタ145と、位置検出器150と、ビームスプリッタ922と、方位カメラ910と、を含む。可視光源からの光は光ファイバ980内に発せられ、アイソレータ910を通って進み、その入力および出力ポートには光ファイバが連結されていてもよい。光は、ADM電子装置715からの電気信号716により変調される電気光学モジュレータ410を通って進んでもよい。あるいは、ADM電子装置715は、ケーブル717で電気信号を送信し、可視光源905を変調させてもよい。ファイバネットワークに入射する光の一部は、ファイバ長イコライザ423と光ファイバ422を通って進み、ADM電子装置715の基準チャネルに入る。電気信号469は任意選択により、ファイバネットワーク420に印加されて、ファイバネットワーク420内の光ファイバスイッチに切換え信号を供給してもよい。光の一部はファイバネットワークからファイバ入射システム170へと進み、これがその光を光ファイバ上で光ビーム982として自由空間に送る。光のうちの少量がビームスプリッタ145で反射され、失われる。光の一部はビームスプリッタ145を通り、ビームスプリッタ922を通り、レーザトラッカから出て6自由度(DOF)装置4000に至る。6−DOF装置4000は、プローブ、プロジェクタ、センサ、または他の何れの種類の6−DOF装置であってもよい。後でより詳しく説明する本発明の実施形態において、6−DOF装置4000は、例えばレーザラインプローブ(LLP)または構造化光エリアスキャナ等の6−DOF三角計測スキャナを含む。6−DOF三角計測スキャナは、そこに取り付けられたレトロリフレクタを有し、スキャナの6自由度の測定または判定が容易である。
レーザトラッカへのその戻り経路で、6−DOF装置4000からの光は光電気システム900に入射し、ビームスプリッタ922に到達する。光の一部はビームスプリッタ922で反射され、方位カメラ910に入射する。方位カメラ910はレトロリフレクタターゲット上に設けられたいくつかのマークの位置を記録する。これらのマークから、6−DOFプローブ装置の方位角(すなわち、3自由度)が特定される。方位カメラの原理は、本願の中で後述され、また前述の‘758号特許にも記載されている。ビームスプリッタ145では、光の一部がビームスプリッタを通過し、ファイバ入射システム170によって光ファイバへと送られる。光はファイバネットワーク420へと進む。この光の一部は光ファイバ424へと進み、そこからADM電子装置715の測定チャネルに入射する。
ロケータカメラシステム950は、カメラ960と、1つまたは複数の光源970と、を含む。ロケータカメラシステムはまた、図1のレーザトラッカ10に関して示されており、カメラが要素52であり、光源が要素54である。カメラ960はレンズシステム962と、感光体アレイ964と、本体966と、を含む。ロケータカメラシステム950の1つの用途は、作業空間内のレトロリフレクタターゲットの位置を特定することである。これは、光源970を点滅させることによって行われ、これがカメラによって感光体アレイ964上の明るいスポットとしてピックアップされる。ロケータカメラシステム950の第二の用途は、6−DOF装置4000の大まかな方位を、6−DOF装置4000上のリフレクタスポットまたはLEDの観察された位置に基づいて判断することである。2つまたはそれ以上のロケータカメラシステム950をレーザトラッカ10上で使用できる場合、三角測量の原理に基づいて作業空間内の各レトロリフレクタターゲットへの方向を計算できる。1つのロケータカメラがレーザトラッカの光軸に沿って反射される光をピックアップするように位置付けられていれば、各レトロリフレクタターゲットへの方向を特定できる。1つのカメラがレーザトラッカの光軸からずらして配置されていれば、感光体アレイ上の画像からレトロリフレクタターゲットの大まかな方向を即座に得ることができる。この場合、ターゲットへのより正確な方向は、レーザの機械軸を複数の方向に回転させ、感光体アレイ上のスポット位置の変化を観察することによって特定できる。
図14は、レーザトラッカの光電気システム900およびロケータカメラシステム950と共に使用される、ある実施形態の6−DOFプローブ2000を示す。本発明の実施形態において、レーザトラッカは、例えば図1のレーザトラッカ10等、本願で開示され、例示されているレーザトラッカのいずれであっても、または本願で開示されていない他の同様の装置であってもよい。光電気システム900とロケータカメラシステム950は、図13を参照しながら説明した。他の実施形態において、光電気システム900の代わりに、2つまたはそれ以上の波長の光を有する光電気システムが使用される。
6−DOFプローブ(または「ワンド(wand)」)2000は、本発明の実施形態では手持ち式であってもよく、本体2014と、レトロリフレクタ2010と、プローブ伸縮アセンブリ2050と、任意選択による電気ケーブル2046と、任意選択によるバッテリ2044と、インタフェース構成要素2012と、識別要素2049と、アクチュエータボタン2016と、アンテナ2048と、電子装置回路板2042と、を含む。レトロリフレクタ2010は、中空のコアまたはガラスコアを有するコーナキューブレトロリフレクタであってもよい。レトロリフレクタ2010には、光電気システム900内の方位カメラがレーザトラッカから物理的に分離された6−DOFプローブ2000の3方位自由度を判定できるようにマークが付けられていてもよい。このようなマーキングの一例は、前述の‘758号特許に記載されているように、レトロリフレクタ2010の3つの平坦なリフレクタ表面間の交線を暗色化することである。
プローブ伸縮アセンブリ2050は、プローブ伸縮部2052と、プローブチップ2054と、を含む。プローブチップ2054は「ハード」コンタクト型プローブチップであってもよく、これは被験物体と物理的に接触して、プローブチップ2054の3D座標を判定することによって、物体表面の3座標測定を行う。図14の実施形態では、プローブチップ2054がレトロリフレクタ2010の本体2014に接続されてはいるものの、そこからある距離だけ分離され、離して位置付けられているが、6−DOFレーザトラッカはレーザトラッカから6−DOFプローブ2000に送られる光ビーム784の視線から隠れた点におけるプローブチップ2054の3D座標を容易に判定できることが知られている。そのため、6−DOFプローブは、隠蔽点探索プローブ(hidden−point probe)と呼ばれることがある。
電源は任意選択による電気ケーブル2046上で、または任意選択によるバッテリ2044によって供給されてもよい。電源は、電子装置用回路板2042に電力を供給する。電子装置用回路板2042は、レーザトラッカまたは外部コンピュータと通信していてもよいアンテナ2048と、使用者がレーザトラッカまたは外部コンピュータと従来の方法で通信できるようにするアクチュエータボタン2016に電力を供給する。電子装置用回路板2042はまた、LED、材料温度センサ(図示せず)、気温センサ(図示せず)、慣性センサ(図示せず)、または傾斜計(図示せず)にも電力を供給してよい。インタフェース構成要素2012は、例えば光源(LED等)、小型レトロリフレクタ、反射材料領域、または基準マークであってもよい。インタフェース構成要素2012は、レトロリフレクタ2010の大まかな方位を判断するために使用され、これは6−DOFプローブ2000の基準フレームを決定するための6−DOF角度の計算に必要である。識別要素2049は、レーザトラッカに6−DOFプローブ2000に関するパラメータまたは通し番号を提供するために使用される。識別要素は例えば、バーコードまたはRF識別タグであってもよい。
レーザトラッカは、あるいは、光ビーム784をレトロリフレクタ2011に供給してもよい。光ビーム784を複数のレトロリフレクタのうちの何れかに供給することによって、手持ち式の6−DOFプローブ、すなわちワンド2000は、物体の探査中、プローブ伸縮アセンブリ2050を用いて様々な方向に物理的に向き付けることができる。
レーザトラッカにより測定されるプローブ2000の6自由度は、3つの並進自由度と3つの方位自由度を含むと考えてもよい。3つの並進自由度は、レーザトラッカとレトロリフレクタとの間の半径方向距離測定、第一の角度測定、および第二の角度測定が含まれていてもよい。半径方向の距離測定は、レーザトラッカ内のIFMまたはADMで行われてもよい。第一の角度測定は、アジマス角度エンコーダ等のアジマス角度測定装置で行われてもよく、第二の角度測定は、ゼニス角度エンコーダ等のゼニス角度測定装置で行われてもよい。あるいは、第一の角度測定装置がゼニス角度測定装置であってもよく、第二の角度測定装置がアジマス角度測定装置であってもよい。半径方向距離、第一の角度測定、および第二の角度測定は、空間座標系の中の3つの座標を構成し、これをデカルト座標系または他の座標系内の3つの座標に変換できる。
プローブ2000の3つの方位自由度は、前述し、上で引用した‘758号特許に記載されているように、パターン付コーナキューブを使って判定されてもよい。あるいは、プローブ2000の3つの方位自由度を判定するその他の方法が使用されてもよい。例えば、使用可能な方法は、6−DOF触覚プローブ上の光の点の集合を画像化し、それと同時に光ビームを6−DOFプローブ上のレトロリフレクタに送り、レトロリフレクタまでの距離と2つの角度を判定するカメラを有する6−DOFレーザトラッカを提供することである。レーザトラッカ内のカメラ上に画像化される光の点は、3つの方位自由度を提供する。他の例において、使用可能な方法は、その頂点が部分的に移動されて、光がその頂点を通って位置検出器へと透過できるようにされたレトロリフレクタを有する6−DOFレーザトラッカを提供することである。位置検出器上の透過光の位置は、レトロリフレクタのピッチおよびヨーを判定するために使用できる。それに加えて、レトロリフレクタは、6−DOFセンサのロール角を測定するように構成された多軸傾斜計を含む構造体の中に取り付けられてもよい。測定されたロール角と測定されたピッチおよびヨー角の組合せにより、3つの方位自由度が提供される。それに加えて、レトロリフレクタに送られたレーザビームは、レトロリフレクタまでの距離と2つの角度を判定するために使用されてもよく、それによって3つの並進自由度が提供される。
何れの方法が使用されても、3つの並進自由度と3つの方位自由度により、空間内での6−DOFプローブ2000等の6−DOFプローブ(およびそれゆえ、プローブチップ2054)の位置と方位が十分に定義される。これは、ここで検討されているシステムの場合である点に留意することが重要であるが、それは、6−自由度が独立しておらず、6自由度では空間内の装置の位置と方位を十分に定義できないようなシステムもありうるからである。「並進セット」という用語は、レーザトラッカの基準フレーム内の6−DOFアクセサリ(6−DOFプローブ2000等)の並進3自由度の短縮形である。「方位セット」という用語は、レーザトラッカの基準フレーム内の6−DOFアクセサリ(例えば、プローブ2000)の3つの方位自由度の短縮形である。「表面セット」とは、プローブチップ2054により測定されたレーザトラッカの基準フレーム内の物体表面上のある点の三次元座標の短縮形である。
図15は、光電気システム900とロケータカメラシステム950と共に使用される6−DOFスキャナ2500のある実施形態を示す。6−DOFスキャナ2500はまた、「ターゲットスキャナ」と呼ばれてもよい。光電気システム900とロケータカメラシステム950は、図13に関して説明した。他の実施形態において、光電気システム900の代わりに、2つまたはそれ以上の波長の光を使用する光電気システムが使用される。6−DOFスキャナ2500は、本体2514と、1つまたは複数のレトロリフレクタ2510、2511と、スキャナカメラ2530と、スキャナ光プロジェクタ2520と、任意選択による電気ケーブル2546と、任意選択によるバッテリ2544と、インタフェース構成要素2512と、識別要素2549と、アクチュエータボタン2516と、アンテナ2548と、電子装置用回路板2542と、を含む。ある実施形態において、1つまたは複数のレトロリフレクタ2510、2511、スキャナカメラ2530、およびスキャナ光プロジェクタ2520は、本体2514に関して固定される。図15のレトロリフレクタ2510、任意選択による電気ケーブル2546、任意選択によるバッテリ2544、インタフェース構成要素2512、識別要素2549、アクチュエータボタン2516、アンテナ2548、および電子装置用回路板2542は、図14のそれぞれレトロリフレクタ2010、任意選択の電気ケーブル2046、任意選択によるバッテリ2044、インタフェース構成要素2012、識別要素2049、アクチュエータボタン2016、アンテナ2048、および電子装置用回路板2042に対応する。これらの対応する要素に関する説明は、図14に関して説明したものと同じである。スキャナプロジェクタ2520とスキャナカメラ2530は、協働して被加工物2528の三次元座標を測定するために使用される。
カメラ2530は、カメラレンズシステム2532と感光体アレイ2534と、を含む。感光体アレイ2534は、例えばCCDまたはCMOSアレイであってもよい。スキャナプロジェクタ2520は、プロジェクタレンズシステム2523と、光源パターン2524と、を含む。光源パターンは、点状光、線状光、または符号化された、または符号化されていない二次元(2D)構造化光パターンを発してもよく、これについては後でより詳しく説明する。スキャナが線状光を発する場合、スキャナは「レーザラインプローブ」(LLP)と呼ばれてもよい。これに対して、スキャナが2D構造化光パターンを発する場合、スキャナは「構造化光スキャナ」と呼ばれてもよい。構造化光パターンは、例えばProceedings of SPIE、第7932巻で発表されたJason Gengによる雑誌記事、“DLP−Based Structured Light 3D Imaging Technologies and Applications”に記載されているものをはじめとする各種のパターンのうちの1つであってもよく、同文献を参照によって本願に援用する。
一般に、構造化光には2つの種類、すなわち符号化された構造化光と符号化されていない構造化光がある。符号化されていない構造化光の一般的な形態は、1つの次元に沿って周期的に変化する縞状パターンに依存する。これらの種類のパターンは通常、連続的に適用されて、物体までの大まかな距離を提供する。いくつかの符号化されていないパターンの実施形態、例えば正弦波パターンは、比較的高い精度の測定を提供できる。しかしながら、これらの種類の符号化されていないパターンを有効にするためには、通常、スキャナ装置と物体を相互に関して静止した状態に保つ必要がある。スキャナ装置または物体が(他方に関して)移動している場合は、符号化されたパターンを使用してもよい。符号化されたパターンにより、1つの取得された画像を使って画像を分析できる。いくつかの符号化されたパターンを、プロジェクタのパターンの上に特定の方位に(例えば、プロジェクタ平面上のエピポーラ線に垂直に)設置してもよく、それによって1つの画像に基づく三次元表面座標の分析が簡単になる。
プロジェクタ2520からの光は被加工物2528の表面で反射され、反射光はカメラ2530によって受け取られる。理解すべき点として、被加工物表面内の変化または特徴、例えば1つまたは複数の突起は、パターンの画像がカメラ2530によって撮影された時に構造化パターンにおける歪みを生じさせる。パターンが構造化光により形成されるため、いくつかの例において、コントローラは発せられたパターン内の画素と画像化されたパターン内の画素との間の1対1の対応を判断できる。その結果、三角測量の原理を利用して、画像化されたパターン内の各画素の座標を判定できる。被加工物表面の3D座標の集合は、点群と呼ばれることがある。例えばスピンドル等により表面上で6−DOFスキャナ2500を移動させることによって、被加工物2528全体から点群を作ることができる。
スキャナ光源が点状光を発する場合、この点は、例えば移動するミラーによってスキャンされてもよく、それによって線または線の配列が生成される。スキャナ光源が線状光を発する場合、この線は、例えば移動するミラーでスキャンされてもよく、それによって線の配列が生成される。ある実施形態において、光源パターンはLED、レーザ、またはTexas InstrumentsのDLP(digital light projector)等のDMD(digital micromirror device)、LDC(液晶装置)、またはLCOS(liquid crystal on silicon)装置で反射される他の光源であってもよく、あるいは反射モードではなく透過モードで使用される同様の装置であってもよい。光源パターンはまた、スライドパターン、例えばchrome−on−glassスライドであってもよく、これは単独のパターンまたは複数のパターンを有していてもよく、スライドは必要に応じて所定の位置へと移動され、またそこから外される。レトロリフレクタ2511等の追加のレトロリフレクタを第一のレトロリフレクタ2510に追加して、レーザトラッカが様々な方向から6−DOFスキャナを追跡できるようにしてもよく、それによって光を6−DOFプロジェクタ2500により投影できる方向という点での柔軟性が増大する。
6−DOFスキャナ2500は、手で持っても、または例えば三脚、計器スタンド、電動キャリッジ、またはロボットエンドエフェクタに取り付けてもよい。被加工物2528の三次元座標は、スキャナカメラ2530により、三角測量の原理を利用して測定される。三角測量による測定方法には、スキャナ光源2520により発せられる光のパターンおよび感光体アレイ2534の種類に応じていくつかある。例えば、スキャナ光源2520により発せられるパターン光が線状光か、線の形状にスキャンされる点状光であり、感光体アレイ2534が2次元アレイである場合、2次元アレイ2534の一方の次元は被加工物2528の表面上の点2526の方向に対応する。2次元アレイ2534の他方の次元はスキャナ光源2520からの点2526の距離に対応する。したがって、スキャナ光源2520より発せられた線状光に沿った各点2526の、6−DOFスキャナ2500の三次元座標が、局所基準フレームに関してわかる。6−DOFスキャナの6自由度は、‘758号特許に記載されている方法を使って、6DOFレーザトラッカにより把握される。6自由度から、スキャンされた線状光の3次元座標をトラッカの基準フレーム内で特定でき、それは、レーザトラッカが例えば被加工物上の3つの点を測定することにより、被加工物2528の基準フレームに変換されてもよい。
6−DOFスキャナ2500を手で持った場合、スキャナ光源2520により発せられるレーザ光の線を、被加工物2528の表面を「塗る(ペイント)」ように移動させてもよく、それによって表面全体の3次元座標が得られる。また、構造化光パターンを発するスキャナ光源2520を使って、被加工物表面を「塗る」ことも可能である。あるいは、構造化光パターンを発するスキャナ2500を使用する場合、6−DOFスキャナを三脚または計器スタンドに取り付けることによって、より正確な測定を行うことができる。スキャナ光源2520により発せられる構造化光パターンは、例えば、フリンジパターンを含んでいてもよく、各フリンジの照度は被加工物2528の表面上で正弦波状に変化する。ある実施形態において、正弦波は3つまたはそれ以上の位相値だけシフトされる。3つまたはそれ以上の位相値の各々についてカメラ2530の各画素が記録する振幅レベルは、正弦波状の各画素の位置を提供するために使用される。この情報の使用は、各点2526の3次元座標を判定するのに役立つ。他の実施形態において、構造化光は、符号化されたパターンの形態であってもよく、これを評価して、カメラ2530により収集される、複数ではなく1つの画像フレームに基づいて3次元座標を判定できる。符号化されたパターンを使用することにより、6−DOFスキャナ2500を手で妥当な速度で移動させながら、比較的正確な測定を行うことが可能となりうる。
線状光に対して、構造化光パターンを投影することにはいくつかの利点がある。LLP等の手持ち式の6−DOFスキャナ2500から投影された線状光において、点の密度は線に沿って高く、線間ではずっと低くてもよい。構造化光パターンでは、点間の空間は通常、2つの直交する方向の各々において略同じである。それに加えて、いくつかの動作モードにおいて、構造化光パターンで計算された3次元の点は、他の手法より正確であるかもしれない。例えば、6−DOFスキャナ2500を、例えばそれを静止スタンドまたはマウントに取り付けることによって所定の位置に固定することにより、一連の構造化光パターンを発してもよく、それによって1つのパターンが捕捉される他の手法(すなわち、シングルショット方式)で可能なものより正確に計算できる。一連の構造化光パターンの一例は、第一の空間周波数を有するパターンが物体に投影されるものである。ある実施形態において、投影されたパターンは、光学パワーが正弦波状に変化する縞状パターンである。ある実施形態において、正弦波状に変化すパターンの位相がシフトされ、それによって縞が側方にシフトする。例えば、パターンは、前のパターンに関して毎回120度ずつシフトされる3つの位相角度で投影されてもよい。この投影シーケンスにより、背景光に関係なく、パターンの各点の位相を比較的正確に判定するのに十分な情報が提供される。これは、物体表面上の隣接点を考慮せずに、点ごとに行うことができる。
上述の手順は、2つの隣接する線間の位相範囲が0〜360度にわたる場合の各点の位相を判定するが、どの線がどれか、という点については依然として疑問があるかもしれない。線を特定する方法は、上述のように位相シーケンスを繰り返すが、異なる空間周波数(すなわち、異なるフランジピッチ)を持つ正弦波パターンを使用することである。場合により、3つまたは4つの異なるフリンジピッチについて同じ方法を繰り返す必要がある。この方法を使って不明瞭さを排除する方法は、当業界でよく知られており、ここではこれ以上説明しない。
上述の正弦波位相シフト方式等の連続的投影方法を使ってできるだけ高い精度を得るために、6−DOFスキャナの動きを最小限にすることが有利であるかもしれない。6−DOFスキャナの位置と方位は、レーザトラッカにより行われる6−DOF測定からわかり、また手持ち式の6−DOFスキャナの動きに関する補正を行うことは可能であるが、結果として生じるノイズは、スキャナがそれを静止したマウント、スタンド、または固定具に設置することによって静止した状態に保たれる場合より幾分大きくなるであろう。
図15により表されるスキャニング方法は、三角測量の原理に基づいている。三角測量の原理を、図15Aのシステム2560および図15Bのシステム4760を参照しながらより詳しく説明する。まず図15Aを参照すると、システム2560は、プロジェクタ2562と、カメラ2564と、を含む。プロジェクタ2562は、光源平面内にある光源パターン2570と、プロジェクタレンズ2572と、を含む。プロジェクタレンズはいくつかのレンズエレメントを含んでいてもよい。プロジェクタレンズは、レンズ透視投影中心2575とプロジェクタ光軸2576を有する。光線2573は、光源パターン上の点2571からレンズ透視投影中心を通って物体2590へと進み、点2574においてそこに当たる。
カメラ2564は、カメラレンズ2582と、感光体アレイ2580と、を含む。カメラレンズ2582は、レンズ透視投影中心2585と光軸2586を有する。光線2583は、物体上の点2574からカメラ透視投影中心2585を通って感光体アレイ2580に点2581において当たる。
透視投影中心をつなぐ線分は、図15Aにおいてベースライン2588と図15Bのベースライン4788である。ベースラインの長さはベースライン長(2592、4792)と呼ばれる。プロジェクタ光軸とベースラインとの間の角度は、ベースラインプロジェクタ角度(2594、4794)である。カメラ光軸(2586、4786)とベースラインとの間の角度は、ベースラインカメラ角度(2596、4796)である。光源パターン上のある点(2571、4771)が感光体アレイ上のある点(2581、4781)に対応することがわかっている場合、ベースライン長、ベースラインプロジェクタ角度、およびベースラインカメラ角度を使って、点2585、2574、および2575をつなぐ三角形の辺を判定し、したがって、物体2590の表面上の点の、測定システム2560の基準フレームに関する表面座標を判定することが可能となる。これを行うために、図15に関して説明したような三角測量方式が使用される。プロジェクタレンズ2572と光源パターン2570との間の小さい三角形の辺の角度は、レンズ2572と平面2570との間の既知の距離と、点2571と光軸2576が平面2570と交差する点との間の距離を使って特定される。これらの小さい角度は、必要に応じてより大きい角度2596と2594に加算し、またはそこから差し引くことにより、三角形の所望の角度が得られる。当業者にとっては、同等の数学的手法を使って三角形2574−2585−2575の辺の長さを特定できること、または他の関連する三角形を使って、物体2590の表面の所望の座標を得てもよいことは明らかであろう。
まず図15Bを参照すると、システム4760は図15Aのシステム2560と、システム4760がレンズを含まない点以外は同様である。システムは、プロジェクタ4762とカメラ4764を含んでいてもよい。図15Bに示される実施形態において、プロジェクタは光源4778と光モジュレータ4770を含む。光源4778は、レーザ光源であってもよく、これは、そのような光源が図15Bの形状を使用すれば長距離にわたって焦点の合った状態に保たれるからである。光源4778からの光線4773は、光モジュレータ4770に点4771において当たる。光源4778からの他の光線は、光モジュレータに、モジュレータ表面上の他の位置において当たる。ある実施形態において、光モジュレータ4770は発せられる光のパワーを変化させ、これはほとんどの場合、光パワーをある程度減衰させることによって行われる。この場合、光モジュレータは、光学パターンを光に付与し、これはここでは光源パターンと呼ばれ、それは光学モジュレータ4770の表面上にある。光モジュレータ4770は例えばDLPまたはLCOS装置であってもよい。いくつかの実施形態において、モジュレータ4770は反射型ではなく透過型である。光モジュレータ4770から発せられた光は、仮想光透視投影中心4775から発せられるように見える。光線は、仮想光透視投影中心4775から発せられ、点4771を通り、物体4790の表面の点4774へと進む。
ベースラインは、カメラレンズ透視投影中心4785から仮想光透視投影中心4775まで延びる線分である。一般に、三角測量の方法には、三角形、例えば頂点4774、4785、および4775を有する三角形の辺の長さを特定することが含まれる。これを行うための1つの方法は、ベースライン長と、ベースラインとカメラ光軸4786との間の角度、およびベースラインとプロジェクタ基準軸4776との間の角度を特定することである。所望の角度を特定するために、追加の、より小さい角度が特定される。例えば、カメラ光軸4786と光線4783との間の小さい角度は、カメラレンズ4782と感光体アレイ4780との間の小さい三角形の角度を、レンズから感光体アレイまでの距離とカメラ光軸から画素までの距離に基づいて解くことにより特定できる。すると、小さい三角形の角度がベースラインとカメラ光軸との間の角度に加算されて、所望の角度が特定される。プロジェクタについても同様に、プロジェクタ基準軸4776と光線4773との間の角度は、これら2つの線間の小さい三角形の角度を、光源4777と光モジュレータの表面との既知の距離と、基準軸4776が光モジュレータ4770の表面と交差する点から4771におけるプロジェクタ画素の距離に基づいて解くことによって特定される。この角度をベースラインとプロジェクタ基準軸との間の角度から差し引くことにより、所望の角度が得られる。
カメラ4764は、カメラレンズ4782と感光体アレイ4780を含む。カメラレンズ4782は、カメラレンズ透視投影中心4785とカメラ光軸4786を有する。カメラ光軸は、カメラ基準軸の例である。数学的観点から、カメラレンズ透視投影中心を通過する軸はすべて、三角測量の計算においては同等に容易に使用できるが、レンズの対称軸であるカメラ光軸が慣例的に選択される。光線4783は、物体上の点4774からカメラ透視投影中心4785を通り、感光体アレイ4780に点4781で当たる。他の同等の数学的手法を使って、三角形4774−4785−4775の辺の長さを解いてもよく、これは当業者にとって明白であろう。
ここで説明する三角測量法はよく知られているが、完全を期すために、以下に追加の技術的情報を提供する。各レンズシステムは入射瞳と射出瞳を有する。入射瞳は、一次光学系の観点から考えたときに、そこから光が現れるように見える点である。射出瞳は、光がレンズシステムから感光体アレイへと進む際に現れるように見える点である。マルチエレメントレンズシステムに関して、入射瞳と射出瞳は必ずしも一致するとはかぎらず、入射瞳と射出瞳に関する光線の角度は必ずしも同じとはかぎらない。しかしながら、モデルは、透視投影中心をレンズの入射瞳と考え、その後、レンズから光源または結像面までの距離を調整して、光線が引き続き直線に沿って進み、光源または結像面に入射するようにすることにより、単純化できる。このようにして、図15Aに示されるような、単純で広く使用されるモデルが得られる。理解すべき点として、この説明は光の挙動の良好な一次近似を提供するが、図15Aのモデルを使って計算された位置に関して光線を若干変位させる可能性のあるレンズ収差について、さらに細かい補正を行うことができる。ベースライン長、ベースラインプロジェクタ角度、およびベースラインカメラ角度が一般的に使用されているが、理解すべき点として、これらの数量が必要であると述べても、他の同様であるが若干異なる公式を適用できる可能性が排除されるわけではなく、その場合も、本明細書に記載されている説明における一般性は損なわれない。
6−DOFスキャナを使用する際、数種類のスキャンパターンを使用してもよく、異なる種類を組み合わせて、最短時間で最良の性能を得ることができれば有利であるかもしれない。例えば、ある実施形態において、高速測定方法は2次元の符号化されたパターンを使用してもよく、この場合、3次元座標データはシングルショットで得られる。符号化されたパターンの使用方法において、例えば異なる文字、異なる形状、異なる厚さもしくは大きさ、または異なる色を使って、異なる要素を提供してもよく、これは符号化された要素または符号化された特徴とも呼ばれる。このような特徴は、点2571を点2581にマッチさせることができるようにするために使用されてもよい。光源パターン2570上の符号化された特徴は、感光体アレイ2580上で識別されてもよい。
符号化された特徴のマッチングを単純化するために使用可能な方式は、エピポーラ線の使用である。エピポーラ線は数学的な線であり、エピポーラ面と光源面2570または結像面2580との交差により形成される。エピポーラ面は、プロジェクタの透視投影中心とカメラの透視投影中心を通るあらゆる面である。光源面と結像面の上のエピポーラ線はある特殊な場合においては平行であってもよいが、一般には平行でない。エピポーラ線のある態様は、プロジェクタ面上のあるエピポーラ線が結像面上に対応するエピポーラ線を有する、というものである。したがって、プロジェクタ面内のエピポーラ線に関する何れの特定の既知のパターンでも、結像面内で直ちに観察され、評価されてもよい。例えば、符号化されたパターンがプロジェクタ面内のエピポーラ線に沿って配置されている場合、結像面内の符号化された要素間の間隔は、感光体アレイ2580の画素により読み取られる数値を使って判定されてもよく、この情報は、物体上の点2574の3次元座標を判定するために使用されてもよい。また、符号化されたパターンをエピポーラ線に関して既知の角度で傾けて、物体表面座標を効率的に抽出することもできる。
符号化されたパターンを使用する利点は、物体表面上の点に関する3次元座標を素早く取得できることである。しかしながら、ほとんどの場合、前述のような正弦波位相シフト方式等の連続構造化光方式のほうが、より正確な結果を生む。したがって、使用者は、有利な点として、所望の精度に応じた異なる投影方法を使って特定の物体または特定の物体領域もしくは特徴を測定するように選択できる。プログラム可能な光源パターンを使用することにより、このような選択を容易に行うことができる。
本発明のある実施形態によれば、図15の6−DOF三角計測スキャナ2500はまた、拡張現実(AR)カメラ2508を含む。ARカメラ2508は、「全視野」画像を撮影できるものと考えてよい。ARカメラ2508は、カメラレンズ2502と感光体アレイ2504を含む。感光体アレイ2504は、例えばCCDまたはCMOSアレイであってもよい。それゆえ、ARカメラ2508は性格上、デジタルであってもよく、静止画像またはビデオ画像を撮影してもよい。
図15に示されるように、ARカメラ2508は6−DOF三角計測スキャナ2500の本体2514に破線2506で接続されている。しかしながら、これは例示を目的としているにすぎない。ARカメラ2508は、スキャナ本体2014の一体部分であってもよい。本明細書で使用されるかぎり、「一体」という用語は、ARカメラ2508がスキャナ本体2014に永久的または一時的に取り付けられて、ARカメラ2508がスキャナ本体2014に関して固定された空間関係にあることを意味する。いずれの方法でも、スキャナ2500の6自由度が前述のようにわかっているため、ARカメラ2508の6自由度(すなわち、「姿勢」)は、ARカメラ2508により撮影された各画像に関してわかる。そのため、レーザトラッカ、6−DOFスキャナ2500、およびARカメラ2508はすべて、共通の基準フレーム内に設置されてもよい。ある実施形態において、ARカメラは、三角測量においても使用されるカメラでもある。換言すれば、ある実施形態において、ARカメラは図15のカメラ2530である。
レンズ2502(複数のレンズエレメントを含むレンズシステムであってもよい)は、レンズの透視投影中心である。レンズ2502を通過する光線は、透視投影中心を通過してから感光体アレイ2504に到達すると考えられてもよい。慎重に行われる分析において、レンズ2502は、感光体アレイ2504上での光線の交差位置が若干ずれる原因となるレンズ収差を生じさせることを特徴とするかもしれない。しかしながら、一般性を損なうことなく、光線は透視投影中心を通過し、画像の収差補正は画像処理の別のステップ内で提供される、ということができる。
調査対象物体の表面は、レンズ2502によって感光体アレイ2504上に結像され、感光体アレイ2504の一部である画素集合の上に画像が形成される。各画素に当たる光は、カメラのインテグレーション期間中に、電荷からデジタル信号に変換される。感光体アレイ2504の中にある(CMOSアレイの場合)またはアレイの外にある(CCDアレイの場合)アナログ−デジタル変換器は、アナログからデジタル信号への変換を実行する。各画素のための信号は典型的に、8〜12ビットの間のバイナリ表現で提供される。これらのビットの1と0はパラレルチャネルで運ばれ、バスライン上で伝送するために、シリアライザ/デシリアライザの機能を使ってシリアル形態に変換されてもよい。
前述のように、6−DOF三角計測スキャナ2500は、本発明の実施形態においては手持ち式である。しかしながら、他の実施形態では、スキャナ2500は、それを静止したマウント、スタンド、または固定具、例えば三脚に設置することによって静止状態に保持してもよい。さらに、6−DOF三角計測スキャナ2500の位置と方位は前述のようにレーザトラッカによる6−DOF測定からわかり、手に持たれた6−DOFスキャナ2500の動きについての補正を行うことができるものの、結果として生じるノイズは、スキャナ2500が静止状態に保たれた場合より幾分大きくなるかもしれない。6−DOF三角計測スキャナ2500をロボットまたは機械ツールに取り付けることも可能である。
本発明の実施形態において、6−DOF三角計測スキャナ2500(それ自体はレーザトラッカと共に使用される)の一部である拡張現実カメラ2508により撮影された複数の2次元(2D)カメラ画像は、以下に説明する方法に従って相互に結合または「位置合わせ」されて、例えば、ある物体の表面等の各種の実世界の特徴または何れかの実世界の光景(例えばビルの内部、車両事故の現場、または犯罪現場)の3次元(3D)画像表現を得る。この方法は、一体のARカメラ2508を有するスキャナ2500の姿勢または6自由度がARカメラ2508により撮影された各々の2D写真または画像についてわかるため、ARカメラ2508により撮影された複数の2D写真画像を相互に結合して、3D画像を形成してもよいという事実に基づいている。
3D画像または複合3D画像という用語は、本明細書で使用されるかぎり、記録された光景の、様々な観点からの2次元で表示可能な表現を意味するものと解釈され、表示された2D画像は観点によって変化し、その光景の3D表現が観察者のために再形成される。それに加えて、3D画像内で観察される点に関する3D座標の数値が抽出されてもよい。
ここで、この実施形態による方法を、図16の方法1600を参照しながら説明する。ステップ1605で、6−DOF三角計測スキャナ2500と座標測定装置が提供される。6−DOFスキャナ2500はまた、図15に関して上で説明したように、レトロリフレクタ2510と、一体のARカメラ2508と、も含む。座標測定装置は、前述のレーザトラッカ5等のレーザトラッカを含んでいてもよく、装置基準フレームを有し、6−DOF三角計測スキャナ2500から分離されている。座標測定装置は、方位センサと、第一および第二のモータと、第一および第二の角度測定装置と、距離計と、位置検出器と、制御システムと、プロセッサと、を含む。レーザトラッカとARカメラ付の6−DOFスキャナは、上で説明し、例示したものと同じか同様であってもよい。
ステップ1610は、第一の場合において、装置を使ってレトロリフレクタの2つの回転角度とそこまでの距離および6−DOF三角計測スキャナ2500の3つの方位自由度を測定するステップである。このステップでは、2D画像もARカメラ2508上に形成される。6−DOFスキャナ2500内の電子装置用回路板2542は、ARカメラ2508からの位置および方位情報を処理および/または送信してもよい。電子装置用回路板2542はまた、カメラレンズ2502を通じて感光体アレイ2504に送られる2D画像を表現する第一のデジタル信号も受信してよい。
ステップ1615で、6−DOF三角計測スキャナ2500は新たな位置に移動され、装置は6−DOFスキャナ2500の2つの角度とそこまでの距離および6−DOFスキャナ2500の方位を測定する。これはまた、新しい位置において2D画像を形成する。電子装置用回路板2542は、この第二の位置と方位におけるARカメラ2508からの位置および方位情報を処理し、および/またはレーザトラッカに送信してもよい。電子装置回路板2542はまた、カメラレンズ2502を通じて感光体アレイ2504へと送られる2D画像を表現する第二のデジタル信号も受信してよい。
ステップ1620で、第一の画像と第二に画像に共通の主要点が特定される。「主要点」という用語は、典型的には、画像中で特定され、画像を相互に接続し、または位置合わせするために使用できる点を指すために使用される。また、これらの点は、典型的には、誰かがその位置に意図的に設置したものではない。ステップは、第一および第二の場合において、感光体アレイ上の主要点の対応する位置を判定するステップを含む。第一の場合における主要点の位置を第一の位置と呼び、第二の場合における主要点の位置を第二の位置と呼ぶ。このような主要点を判定するために使用可能な多くの技術がさかんに開発されており、一般的には画像処理または特徴検出等と呼ばれる方法が用いられる。主要点を特定するための、通常使用されるが一般的なカテゴリは、関心点検出と呼ばれ、検出される点は関心点と呼ばれる。通常の定義によれば、関心点は、数学的に十分な根拠に基づく定義、十分に定義された空間内の位置、関心点の周囲の局所的情報の内容が豊富な画像構造、および時間がたっても比較的安定な照明レベルの変動を有する。関心点の具体的な例はコーナ点であり、これは例えば3つの平面の交点に対応する点であってもよい。使用可能な信号処理の他の例は、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)であり、これは当業界でよく知られた方法で、Lowerの米国特許第6,711,293号に記載されている。ステップ1620で、プロセッサは第一および第二の画像に共通のこれらの主要点を特定し、少なくとも1つの主要点(ただし、通常は主要点の大きな集合)を得る。主要点を特定するためのその他の一般的な特徴検出方法には、エッジ検出、ブロブ検出、およびリッジ検出が含まれる。
ステップ1625は、第一の基準フレーム内の第一および第二の2D画像の中の対応する主要点の3D座標を判定するステップである。この判定は、まず、三角測量を使って6−DOFスキャナ2500の基準フレーム内の第一および第二の画像内の主要点の3D座標を判定し、次に、座標変換を使って、装置基準フレームであってもよい第一の基準フレーム内の主要点を得ることによって行われてもよい。これらの座標変換は、少なくとも一部に、装置により提供される2つの角度測定、1つの距離測定、および方位角測定に基づく。当然のことながら、この計算において、6−DOFスキャナ2500内の2Dカメラ2508の位置と方位は、例えば工場での測定に基づいてわかっている。測定値に基づき、ベースライン距離を有するベースラインが第一の例(第一の2D画像に対応する)と第二の例(第二の2D画像に対応する)のカメラの透視投影中心間に引かれてもよい。ベースライン距離は、トラッカによる6−DOF測定からわかっているため、各主要点は第一の基準フレーム内の3D空間内で判定される。一般に、第一の画像の主要点の3D座標と第二の画像の中の対応する主要点の3D座標は正確にはマッチしないであろう。しかしながら、3D座標の平均化または同様の方法を使って、第一および第二の2D画像内の対応する主要点に関する第一の基準フレーム内の代表的な3D画像を判定してもよい。この方法が使用された場合、3D座標は適正に拡大縮小され、すなわち、3D座標は第一の基準フレーム内で正しい長さ単位を有する。これは、2つの異なる位置に保持されたカメラで2つの画像を取得し、それに関して各々の場合でカメラ透視投影中心の位置と方位がわからない方法と対照的である。この方法では、3D画像を(長さ単位において)適正に拡大縮小するのに十分な情報が提供されない。
ステップ1630は、少なくとも一部に第一および第二の2D画像と第一の基準フレーム内の主要点の3D座標に基づいて、複合3D画像を形成するステップである。ほとんどの場合、第一および第二の2D画像は多くの主要点を共有しており、これらの各々について、3D座標を得ることができる。これらの主要点は3D表現のための枠組みを形成し、その上で、他の画像要素で2つの2D画像間または(より一般的なケースにおける)複数の2D画像間に補間してもよい。3D座標情報を提供するほかに、複合3D画像はまた、主要点からだけでなく、主要点間の可視領域から同じく補間法を使って取得されたテクスチャおよび色情報も提供できる。ステップ1625および1630で得られた3D座標は、第一および第二の画像の中の対応する主要点について同じであるが、複合3D画像は例えば主要点間の補間によって、また色およびテクスチャ情報を追加することによって、また別の3D情報を含んでいるかもしれない。
ステップ1635は、複合3D画像を保存するステップである。
ある実施形態において、トラッカ内部のプロセッサは、複合3D画像を構築し、保存して、それを測定された3D座標と組み合わせるために使用される。このようなプロセッサは、マスタプロセッサ1520、6−DOFプロセッサ1531、およびカメラプロセッサ1532のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。それに加えて、コンピュータ1590はまた、複合3D画像を構築、保存し、それをマスタプロセッサから得られた3D座標と組み合わせるためにさらに使用されても、またはそのためだけに使用されてもよい。他の実施形態において、クラウドプロセッサは、生データをコンピュータネットワーク、おそらくはリモートコンピュータネットワークに送信して、複合3D画像を形成するために使用されてもよい。他の実施形態において、プロセッサの異なる組合せが使用されてもよい。このようなプロセッサの組合せをプロセッサシステムと呼んでもよい。
図16の手順1600に含まれていないが、上述の方法は任意選択による多数の感光体アレイ画像にも拡張できることは明らかであり、それによって主要点の集合を複数の画像から得てもよい。この場合、各主要点は、ARカメラ2508を異なる姿勢にして感光体アレイ2504で得られる画像のいくつかにおける主要点に対応してもよい。ある主要点に関して、感光体アレイ2504からカメラレンズ2502の透視投影中心を通じて投影される複数の線の交点は、当業界でよく知られている最適化方法による最良適合方式を使って、例えば最小二乗最小化方式を使って判定されてもよい。複数の画像の位置合わせは、希望に応じて、被験物体上に、またはその付近にターゲットを設けることによってさらに最適化されてもよい。追加のターゲットは、例えば反射性ターゲットでも、発光ダイオードでもよい。
ARカメラ2508がカラーカメラである場合、再構成された3D表面がカラーで表現されてもよく、または他のテクスチャ属性が引き出されてもよい。他の実施形態においては、この方法1600により、3D表面プロファイルに加えて、光パターンの各種の特徴が提供されてもよい。例えば、ある物体の表面上にマーキングされた「X」が、「X」の位置に対応する一般的座標のほかに引き出されてもよい。
場合により、写真撮影されている表面の特定部分が比較的平滑であることが事前にわかっているかもしれない。換言すれば、これらの部分は画然とした不連続部または細かい特徴を持たない。このような場合、確立された主要点を使ってその表面の測定されていない部分を3次元で構成することが可能であるかもしれない。例えば、主要点は表面の一部にわたり円筒形に平滑に適合されてもよく、したがって、ソフトウェアで自動的に円筒形の形状を提供してもよい。
表面の一部の全体的な形状がわかっている場合、撮影された画像をその表面に投影することが可能であるかもしれない。例えば、表面にカラーのパターンがあり、それを、ある特定のケースにおいては平坦な表面であってもよい想定された表面に投影できるとする。この場合、このパターンは、異なる姿勢(「姿勢」は、3自由度の位置と3自由度の向きの組合せである)のARカメラ2508に関して取得された画像の各々から、想定された表面上に投影されてもよい。この例において、画像は表面上に重なると予想されるであろう。これに当てはまらなければ、想定された形状が正しくないことを意味しており、形状を変更するべきである。この例において、異なる姿勢のARカメラ2508により撮影された画像に基づいて、追加の主要点を得ることが良好な慣行であるかもしれない。すると、これらの追加の主要点を使って、表面プロファイルをより正確に判定できる。
ARカメラ2508は、例えば、比較的遠くの背景物体の背景画像を、比較的大きい視野で撮影するために使用されてもよく、これはまた、前景画像を撮影するために使用されてもよく、これは例えば、6−DOF三角計測スキャナ2500によりスキャンされる物体の画像であってもよい。
図16に示されている上述の「ダイナミック三角計測」方法1600からわかるように、様々なカメラ位置と方位のARカメラ2508により撮影された画像は、一部に、レーザトラッカにより提供される6自由度の知識に基づいて相互に位置合わせされる。そのため、ARカメラ2508からの2D画像を、適正な寸法拡大縮小と、別の方法で可能な場合よりも少ないカメラ画像で位置合わせすることができる。
3D画像が本発明の実施形態により作られると、これらの画像の上に、データが重ねられ、または重畳されてもよい。例えば、3D画像が構築中または既に構築された物体のそれである場合、3D画像の上に重畳されたデータはその物体のCAD設計データを含んでいてもよい。CADデータは、レーザトラッカ5(図1)に関連するメモリの中に保存されてもよい。その他の種類のデータがカメラ画像の上に重畳されてもよく、これは例えば、各種の組立動作(穴明け、取付、等)をどこに行う予定であるかを示すためのマークである。
6−DOF三角計測スキャナ2500の中のARカメラ2508は、スキャナ2500で測定される部品の代わりに(または、それに加えて)周囲を測定するために使用されてもよい。例えば、ARカメラ2508は比較的長い焦点距離を有していてもよく、それによって、三角計測カメラ2530より詳細にその周囲を捕捉する、より高解像度の画像を提供することが可能となる。他の実施形態において、ARカメラ2508は比較的短い焦点距離を有し、それによって三角計測カメラ2530より広い視野を見ることが可能となる。上述の再構成方法は、周囲の3D表現をARカメラ画像に基づいて得るために使用されてもよい。例えば、スキャナ2500により数マイクロメートルから数十マイクロメートルの精度で測定される1つまたは複数の部品を、ARカメラ画像に基づいて数ミリメートルの精度で測定された周囲の中に置かれてもよい。
物体と周囲を異なる視点と異なる距離から観察するために、ソフトウェアが使用されてもよく、物体と周囲との間の視差が適正に表現される。場合により、背景情報が重要であるかもしれない。例えば、あるプロジェクトは、ARカメラ2508で得られる3D画像を有する3Dの周囲の中に適切な空間があることを確認しながら、構造体を測定対象物体に取り付けるステップを含んでいてもよい。このような構造体は、CADモデルとして、部品またはアセンブリのスキャン画像として、または複数のカメラ画像を使用することより得られた拡大縮小された3D表現として入手可能であってもよい。
場合により、ARカメラ2508は通常、見えない領域の表現を得るために使用されてもよい。例えば、ARカメラは、物体のすべての面を見て、スキャナ2500では容易に測定されない領域の3D画像を得るために使用されてもよい。このような全方向からの全面カバーは、画像が例えばプレゼンテーション、ウェブサイト、またはパンフレットで表示される時に有益である。ARカメラ2508からの色(テクスチャ)の追加もこの例では価値がある。ARカメラ2508から得られる3D表現は、他の3D表現により補足されてもよい。部品、アセンブリ、家具、その他のモデルは、場合により、ファイルやウェブサイトからダウンロードされて、複合3D表現に取り込まれてもよい。
ARカメラ2030および6−DOF三角計測スキャナ2500の別の重要な用途は、周囲を適正に拡大縮小することである。例えば、壁は左面、右面、上面、および下面を有していてもよい。上述の主要点をマッチングさせる方法は拡大縮小された3D画像を提供するが、寸法精度は、3D座標が6−DOFスキャナ2500で測定され場合の方が、カメラ画像だけの場合よりはるかによい。2D ARカメラ画像から得られた複合3D画像を6−DOF三角計測スキャナ2500によるいくつかの測定と組み合わせることによって、複合3D画像の拡大縮小精度は、多くの場合において、大幅に改善できる。例えば、スキャナ2500により左、右、上、および下面の各々の1つまたは複数の位置を測定することによって、ビルの拡大縮小を改善させることができる。
ARカメラ2508は、周囲のみ、物体のみ、または周囲と物体の両方を測定するために使用されてもよい。ここで使用される用語として、「物体」という単語は、正確な寸法情報が望まれる品目を意味する。物体は典型的には、数十マイクロメートルのオーダの精度を有する6−DOF三角計測スキャナ2500により測定される。ARカメラ2508による測定は、画像を図面(例えば、CAD)に重畳することを可能にする。それに加えて、複数の方向から物体の2D画像を得ることによって、ある物体へのオーバレイをあらゆる方向から提供することが可能となる。
ある物体はその周囲内に置かれてもよく、その3D座標はARカメラ2508の使用を通じて得られる。ARカメラと6−DOF三角計測スキャナ2500により提供される情報により、物体を周囲に関して様々な視点から見ることと、また、物体またはその周囲をあらゆる方向から見ることが可能となる。
ある実施形態において、純粋にグラフィックによる要素(これは、例えば写真要素、描画要素、またはレンダリングされた要素とすることができる)が複合画像内に設置される。このようなグラフィック要素の第一の例は、工場フロアでの機械ツールへの追加である。このような追加は、CADモデルの上に重畳されてもよく、そこに複合カラー画像が重ねられる。追加は、新しく機械加工された部品であってもよい。このような追加の集合を工場環境に関して設置し、確実にすべての要素が適正にフィットするようにしてもよい。このようなグラフィック要素の第二の例は、同じ工場環境に置かれた機械または備品の新しい品目である。問題は、このような要素が新計画に適合するか否か、であってもよい。場合により、サービスプロバイダを通じてインターネット上で通常見つけられるネットワークのクラウドからこのような3D画像をダウンロードできるようにするウェブサイトが利用されてもよい。いくつかのユーザインタフェースにより、このような3D構成要素をコンピュータのマウスで適正な位置に移動させ、その後、異なる位置と方位から見てもよい。
本発明を例示的な実施形態に関して説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加え、またその要素を均等物に置き換えてもよいことがわかるであろう。それに加えて、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、その基本的な範囲から逸脱することなく、多くの改良を加えることができる。したがって、本発明は、本発明を実行するために企図される最善のモードとして開示されている特定の実施形態には限定されず、本発明は付属の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。さらに、第一の、第二の、等の用語の使用は、いかなる順序または重要度も示しておらず、むしろ、第一の、第二の、等の用語は、1つの要素を他の要素から区別するために使用される。さらに、冠詞(a、an等)の使用は数量の限定ではなく、言及された品目が少なくとも1つ存在することを示す。