JP2017508768A - サルビノリン組成物およびその使用 - Google Patents

サルビノリン組成物およびその使用 Download PDF

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Abstract

本発明はサルビノリン組成物およびその使用に関する。具体的には、本発明は、サルビノリン組成物を投与して、血管収縮、血管閉塞、または血流および自己調節の破壊と関連する疾患および障害を治療することに関する。例えば、サルビノリン組成物は、心停止、くも膜下出血、脳卒中、脳血管攣縮、脳低酸素/虚血、大脳動脈閉塞、または自己調節障害に関与する任意の病状を有する被験体に投与され得る。別の態様では、本明細書では、サルビノリンAの医薬組成物であって、サルビノリンAおよびシクロデキストリンの水溶液を含む組成物が提供される。【選択図】図42

Description

本発明はサルビノリン組成物およびその使用に関する。具体的には、本発明は、サルビノリン組成物を投与して、血管収縮、血管閉塞、または血流および自己調節の破壊と関連する疾患および障害を治療することに関する。例えば、サルビノリン組成物は、心停止、くも膜下出血、脳卒中、脳血管攣縮、脳低酸素/虚血、大脳動脈閉塞、または自己調節障害に関与する任意の病状を有する被験体に投与され得る。
サルビノリンAは、サルビア・ディビノラム、メキシコ固有のシソ科(ミント)ファミリーの多年生草本の活性成分である。サルビア・ディビノラムは長く、伝統的に、宗教目的のための霊的癒しセッション中に意識の幻が見えている状態を生成させるために使用されてきた。サルビノリンAは最も有効性が高い、天然起源の、非ペプチド、および唯一の非窒素性κオピオイド受容体(KOR)アゴニストであることが示されている。
アヘンの歴史と同様に、自然に豊富な植物としてサルビア・ディビノラムが、数世紀の間娯楽目的のために人間により使用されてきており、サルビノリンAは、臨床診療において使用される、すなわちうつ病または嗜癖などを治療するための可能性のある新しいオピオイド受容体アゴニストとなり得ることが提案されている。他のオピオイドKORアゴニストのいずれも、それらの副作用のために、今までのところ臨床的に使用されていない。これらとしては、著しい不快の誘導、低い選択性、呼吸抑制、および未知の安全性プロファイルが挙げられる。サルビノリンAはKORアゴニストであるにもかかわらずオピオイドに属さず、大抵の国では規制物質ではない。化合物の多くの固有の特性、すなわち迅速な作用発現、短時間作用、容易な血液脳関門通過、および呼吸抑制なし、などにより、とりわけ神経疾患に対する魅力的な可能性のある薬物療法となっている。
心停止(CA)、とりわけ心突然死は、米国では死亡の主因である。毎年、およそ295,000の病院外CAの症例があり、生存率は7%であり、200,000症例の院内CAがあり、生存率は20〜30%である。過半数のCA生存者はその後、脳死を含む様々な程度の永久的神経機能障害に苦しむ。ヒト被験体および異なるCA動物モデルにおける研究により、これらの神経病状は、脳への虚血/再灌流(IR)傷害により誘導されることが証明されている。CAの数秒以内に、脳への血流および酸素送達が止まり、代謝性事象のカスケードが引き起こされ、これにより、脳組織低酸素および壊死(低酸素/虚血傷害)に至ることがある。循環が心肺蘇生(CPR)により回復されると、再灌流からの二次傷害がこの時間中脳傷害をさらに悪化させる可能性がある(再灌流傷害)。
現在、低体温療法が神経傷害のための唯一の有効なCA後治療と考えられる。しかしながら、この治療は適格患者集団に適用可能であるにすぎず、資源不足の施設では危険である可能性があり、よって、とりわけ、死亡、多臓器不全、肺高血圧、および失血の発生率の増加に至る。そのため、CAからの、生存率を改善し、神経細胞傷害の重荷を低減させるための容易に管理可能な薬物療法に対する著しい医学的必要性が存在する。
脳卒中は世界中で死亡の主因である。毎年、約795,000人の人々が米国において新しいまたは再発性脳卒中を経験し;40秒毎に、米国における誰かが脳卒中にかかり;4分毎に、誰かが脳卒中で死亡している。脳卒中は重度の長期身体障害の主因である。全ての脳卒中の87%が虚血性であり、その場合、脳への血液供給が中断され、虚血/再灌流(IR)臓器傷害の典型的な例である。実験動物においてそのような神経細胞傷害を低減させる多くの可能性のある神経保護薬は、臨床試験で失敗している。脳卒中の狭い治療可能時間域のために、可能性のある神経保護薬は、時宜に即して、著しい障害なしで、迅速な作用発現時間で送達できなければならない。
くも膜下出血(SAH)は米国では、毎年、およそ30,000人の患者において起こる。70%までのSAH患者では、脳血管攣縮が推定され、罹患率および死亡率の主な原因である。多数の治療方法が提案され、評価されてきた。それにもかかわらず、1つの治療様式も有効であると証明されていない。
サルビノリンAは非常に疎水性の分子であり、水に不溶性である。サルビノリンAはエタノール、DMSO、およびアセトンのような有機溶媒に可溶性であることが知られている。しかしながら、これらの溶媒は、日常的な臨床使用、とりわけ静脈内(IV)送達に好適ではない。サルビノリンAは、神経障害に対し臨床的に有用であるので、臨床送達のためにサルビノリンAを製剤化するために使用することができる材料、好ましくはFDAにより認可された材料を同定することが必要である。
したがって、様々な疾患および傷害を治療するための臨床薬物療法としての、サルビノリンAの新しい使用および製剤を探索する必要がある。
1つの態様では、本明細書では、心停止を患っている、または患っていた被験体において心停止と関連する神経傷害を治療する方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。別の態様では、本明細書では、心停止を患っている、または患っていた被験体において生存の可能性を増加させる方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
別の態様では、本明細書では、くも膜下出血を有する被験体において脳血管攣縮を治療する方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
別の態様では、本明細書では、大脳動脈閉塞を患っている、または患っていた被験体において大脳動脈閉塞を治療する方法が提供され、方法は下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
別の態様では、本明細書では、脳低酸素/虚血発作を患っている、または患っていた被験体において、梗塞サイズを低減させる方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。さらに別の態様では、本明細書では、脳低酸素/虚血を患っている、または患っていた被験体において、血管漏出を低減させる方法が提供され、方法は下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
別の態様では、本明細書では、サルビノリンAの医薬組成物であって、サルビノリンAおよびシクロデキストリンの水溶液を含む組成物が提供される。
別の態様では、本明細書では、医薬組成物であって、本明細書で記載される方法において使用するためのサルビノリンを含む組成物が提供される。
本発明の他の特徴および利点は下記詳細な説明、実施例および図から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は発明の好ましい実施形態を示しているが、例として与えられるにすぎないことが理解されるべきである。というのも、発明の精神および範囲に含まれる様々な変更および改変はこの詳細な説明から当業者に明らかになるであろうからである。
サルビノリンAは子ブタの軟膜動脈を拡張させた。パネルA:サルビノリンAは、脳軟膜動脈を用量依存的に拡張させた。L−NNA、一酸化窒素シンターゼ阻害剤は、SNPではなく、サルビノリンの拡張効果をブロックする。パネルB:サルビノリンA投与/2分は軟膜動脈拡大を維持することができる。パネルC:7−NINA、nNOS阻害剤は、サルビノリンの拡張効果をブロックしなかった。パネルD:SNP(100pM)は、L−NNAの構成効果を回復させたが、L−NNAによりブロックされたサルビノリンAにより誘導された拡張効果を回復させなかった(n=5)。L−NNA:N(G)−ニトロ−L−アルギニン;SNP:ニトロプルシドナトリウム;7−NINA:7−ニトロインダゾール。 サルビノリンAはCSF中のcGMPを増加させ、L−NNAはサルビノリンにより誘導されたcGMP上昇および血管拡張をブロックした(n=5)。cGMP:環状グアノシン一リン酸;CSF:脳脊髄液;L−NNA;N(G)−ニトロ−L−アルギニン イベリオトキシンではなくグリベンクアミド(Glibencamide)は、サルビノリンAの拡張効果をブロックした。イベリオトキシンと共に任意の順序で与えたグリベンクアミド(Glibencamide)はサルビノリンの拡張効果をブロックした(n=5)。S:サルビノリンA;Glib:グリベンクアミド(Glibencamide);Iberi:イベリオトキシン;:最初に投与された作用物質。 イベリオトキシンではなくグリベンクアミド(Glibencamide)は、クロマカリムおよびCGRPの拡張効果をブロックする。グリベンクアミド(Glibencamide)ではなくイベリオトキシンはNS1619の拡張効果をブロックする。パネルAは、前処理剤ありまたはなしでの10nMのクロマカリム、CGRPおよびNS1619の効果を証明する。パネルBは、1Mのクロマカリム、CGRPおよびNS1619の効果を証明する(n=5)。Glib:グリベンクアミド(Glibencamide);Iberi:イベリオトキシン;CGRP:カルシトニン遺伝子関連ポリペプチド;*:最初に投与された作用物質。 スルピリドではなくナロキソンおよびノルビナルトルフィミンはサルビノリンAの拡張効果をブロックする。パネルA:イソプロテノール(isoprotenol)ではなく、ナロキソンおよびMet−エンカフリン(enkaphlin)はサルビノリンAの拡張効果をブロックする。パネルB:ノルビナルトルフィミンはサルビノリンAの拡張効果をブロックする。パネルC:スルピリドはサルビノリンAの拡張効果をブロックしなかった(n=5)。Met−enk:メチオニンエンケファリン。 サルビノリンA投与は、両方の試験用量に対し、用量依存的様式で、低炭酸症およびエンドセリンにより誘導された狭窄軟膜動脈を拡張させた。パネルA:低炭酸症(n=4);パネルB:エンドセリン(n=5)。 軟膜動脈上へ1μΜのサルビノリンAを添加すると、数秒以内に直ちに血管を拡張させた。これは動脈を約40%拡張させ、血管直径はベースラインに5分以内に戻った。 サルビノリンAの画像である。 ククルビツリルの画像である。 サルビノリン−ククルビツリル複合体の画像である。 サルビノリン−ククルビツリル複合体の画像である。 サルビノリン−ククルビツリル複合体の画像である。 :高炭酸ガス血症に対する軟膜動脈の拡張に関するHI後サルビノリンA投与の効果を示す。DMSOを用いたHIは、高炭酸ガス血症に対する軟膜動脈の拡張を害した。HI開始時および30分後に投与されたSAは、ノルビナルトルフィミン(Norbin)により鈍くされた、中等度および重度の高炭酸ガス血症に対する軟膜動脈の拡張を保存した。各群N=5。パーセンテージ変化=(高炭酸ガス血症後直径−高炭酸ガス血症前直径)/高炭酸ガス血症前直径)×100。SA:サルビノリンA;中等度:50〜60mmHgのPaCOを有する高炭酸ガス血症;重度:70〜80mmHgのPaCOを有する高炭酸ガス血症。 :低血圧に対する軟膜動脈の拡張に関するHI後サルビノリンA投与の効果を示す。DMSOを用いたHIは、低血圧に対する軟膜動脈の拡張にダメージを与えた。HI開始時および30分後に投与されたSAは、ノルビナルトルフィミン(Norbin)の共投与により鈍くされた、中等度および重度低血圧に対し軟膜動脈の拡張を保存した。パーセンテージ変化=(低血圧後直径−低血圧前直径)/低血圧前直径)×100。各群N=5。SA:サルビノリンA。中等度:平均血圧の25%減少。重度:平均血圧の45%減少。 :イソプロテレノールに誘導された動脈拡張は、KORまたはERKシグナル伝達に依存しなかった。HI前の直径(ベースライン)および後の軟膜動脈直径に関するイソプロテレノール(10nM、1μΜ)の効果は、ベースラインに比べ、様々な介入ありまたはなしで、著しくは変化しなかった、p>0.05。各群N=5。パーセンテージ変化=(イソプロテレノール後直径−イソプロテレノール前直径)/イソプロテレノール前直径)100;SA:サルビノリンA;Norbin:ノルビナルトルフィミン サルビノリンA投与は、HI後1時間で観察された上昇したCSF ERK活性をブロックした。対照群における(n=10、DMSOおよびnor−BIN群)HI後1時間でのpERK/ERKの比は、ベースラインと比べて、著しく増加した。全ての群に対するベースラインを統合し(n=20)、DMSOおよびnor−BIN群からのデータを統合し、DMSO+Norbin(n=10)として提示し、統計解析の検出力を増加させた。というのも、いくつかの大きな分散が観察されたからである。上昇したERK活性はHI後直ちに(n=5)または30分(n=5)にサルビノリンAを投与した群では、消失した。Norbin:ノルビナルトルフィミン;SA:サルビノリンA。 軟膜動脈直径に関する低血圧の効果を示す:低酸素/虚血前(ベースライン)、後(H/I;35mmHgのPO2で10分間、続いて全脳虚血20分間)、H/I後、サルビノリンAで前処置(10μg/kg i.v.;H/I+SA)H/I30分前、およびH/I後U0126で前処置(1mg/kg、i.v.;H/I+SA+U0126)、ERKのアンタゴニスト、サルビノリンA30分前、SP600125(1μΜ、局所投与;H/I+SA+SP600125)、JNKのアンタゴニスト、サルビノリンA30分前、SB203580(10μΜ、局所投与;H/I+SA+SB203580)、P38のアンタゴニスト、サルビノリンA30分前。サルビノリンAによる前処置は、U0126による消失する、低血圧に対する軟膜動脈の拡張応答を保存した。SA:サルビノリンA;H/I:低酸素/虚血;中等度:中等度低血圧(MAPの25%減少);重度:重度低血圧(MAPの45%減少)。各群N=5;ベースラインバーは、25の動物全てからのデータを表す。全ての非列挙補正P値>0.405。全ての補正95%信頼区間幅<10.32。 軟膜動脈直径に関する高炭酸ガス血症の効果を示す:低酸素/虚血前(ベースライン)、後(H/I;35mmHgのPO2で10分間、続いて全脳虚血20分間)、H/I後サルビノリンAで前処置(10μg/kg i.v.;H/I+SA)H/I30分前、およびH/I後U0126で前処置(1mg/kg、i.v.;H/I+SA+U0126)、ERKのアンタゴニスト、サルビノリンA30分前、SP600125(1μΜ、局所投与;H/I+SA+SP600125)、JNKのアンタゴニスト、サルビノリンA30分前、SB203580(10μΜ、局所投与;H/I+SA+SB203580)、P38のアンタゴニスト、サルビノリンA30分前。サルビノリンAによる前処置は、U0126により消失する、高炭酸ガス血症に対する軟膜動脈の拡張応答を保存した。SA:サルビノリンA;H/I:低酸素/虚血;中等度:50〜60mmHgのPaCO2を有する中等度高炭酸ガス血症;重度:70〜80mmHgのPaCO2を有する重度高炭酸ガス血症。各群N=5;ベースラインバーは、25の動物全てのからのデータを表す。全ての非列挙補正P値>0.108。全ての補正95%信頼区間幅<10.43。 低酸素/虚血前(ベースライン)および後の軟膜動脈直径に関するイソプロテレノール(10nΜ、1μΜ)の効果は、様々な介入ありまたはなしで著しくは変化しなかった。SA:サルビノリンA;H/I:低酸素/虚血。各群N=5;ベースラインバーは、25の動物全てのからのデータを表す。全ての非列挙補正P値=1。全ての補正95%信頼区間幅<10.13。 サルビノリンAの投与前およびサルビノリンAまたはU0126+サルビノリンAの前処置後30分のpERK/ERKの比を示す。CSF中のpERK/ERKの比はサルビノリンA前処置群において30分で著しく増加し;そのような増加は、ERKアンタゴニスト(U0126)前処置により消失した。SA:サルビノリンA。H/I:低酸素/虚血。全ての非列挙補正P値=1。全ての補正95%信頼区間幅<0.33。 実施例5における異なる群の死亡率を示す。HPおよびSA群の死亡率は、それぞれ、70%および38.5%である。対照群では死亡はなかった。SAとHP群の間の差は、SAが統計学的に死亡率を著しく減少させたことを示した(p=0.014、SA+HP対HP。SA:サルビノリンA;HP:低酸素)。 SAは、実施例5において、出生後第2日および第3日での体重増加を上昇させたことを示す。P1、P2、P3、P7、P14、およびP21での対照、低酸素、およびSA処置群における子の体重を我々の研究において記録した。SA処置は、第1日に比べP2(p=0.0318)およびP3(p=0.0221)に、体重増加を上昇させた。しかしながら、P3、P7、P14およびP21では、異なる群間で有意の差は観察されなかった(データ示さず)(p<0.05 SA+HP対HP。P:出生後;SA:サルビノリンA;HP:低酸素)。 SAは、実施例5においていくらかの発達神経学的転帰を改善したことを示す。低酸素は前肢掴み(A)、断崖回避(B)、正向反射(C)、および開眼(D)において著しい遅延を誘導した。SAは、そのような低酸素により誘導された神経学的転帰を著しく救済した(p<0.05 HP対対照;p<0.05 SA+HP対HP。SA:サルビノリンA;HP:低酸素)。 SAは実施例5において発達パラメータのいくつかに関して統計学的改善を示さなかった。歩行(A)、腹這い(B)、走ること(C)、頭を向けるおよび嗅ぐこと(D)、座ること(E)、補助ありの立ち上がり(F)、負の走地性試験(G)および踏み直り反射(H)などの発達パラメータのいくつかに関し統計学的有意性はないが、低酸素の子はまた、対照およびSA群に比べて出現の遅れを示した。低酸素の子は19.86±0.29日で、対照群における18.18±0.4435日に比べ、補助なしでの立ち上がりの出現の遅れを示した。SAで処置した低酸素の子は、低酸素の子よりも18.69±0.3843日で良好な成績を示し(I)、これは、対照群と同様である(p<0.05HP対対照;p<0.05SA+HP対HP。SA:サルビノリンA;HP:低酸素)。 SAは、実施例5において、オープンフィールドテストの結果を著しくは改善しなかった。(A)左の図はオープンフィールドテストのスケッチを示す。マウスを個々に、41cm(L)×41cm(W)×30cm(H)プラスチック箱に入れた。「エリアの中心部分」を、箱の中心における20.5cm×20.5cmの正方形として規定した。エリアの残りを、「エリアの周辺部分」として規定した。各マウスがエリアの中心部分および周辺部分を探索するのに費やした時間および立ち上がり行動の数を、それぞれ、最初の5分および30分で記録した。(B)中心フィールドにいる秒数をオープンフィールドテストにおいてP21で記録し、これにより、HPは、対照に比べ、秒数を著しく減少させ、SA投与は低酸素後、中心フィールドにいる秒数を増加させたことが示されたが、差は、統計的に有意ではなかった(p<0.05HP対対照.P:出生後;SA:サルビノリンA;HP:低酸素)。 SAは、実施例5において、立ち上がり活動をP21に著しく改善したことを示す。P21での最初の5分および30分における立ち上がりテストは低酸素により害され、そのような障害はSA投与では観察されず、これは対照群と同様であり、SAは低酸素により誘導される長期神経障害のいくらかを改善することができることが示された(p<0.05 HP対対照;p<0.05 SA+HP対HP。P:出生後;SA:サルビノリンA;HP:低酸素)。 SAは、実施例5において、長期不安レベルおよび空間記憶を改善しなかったことを示す。不安レベルおよび自発運動活性を検出するための高架式ゼロ迷路に関しては、SA投与と低酸素単独群との間で、迷路のオープンアーム(A)およびオープン/クローズド移行(B)において費やされる時間のパーセンテージにおいて有意の差はなかった。バーンズ迷路タスクを使用して、空間参照記憶を評価した。我々の研究では、標的までの時間(C)および標的領域内での時間(D)の群間での有意の差はなかった。対照とHP群の間でも差はなかった(SA:サルビノリンA;HP:低酸素)。 SAは、実施例5において、長期記憶欠損を変化させなかったことを示す。全ての群が同様の速度で学習し、恐怖条件付けテストの長期行動において有意の差はなかった。対照群はHP群に比べ、訓練試行(A)、合図試行(B)、短期(C)および長期(D)文脈すくみ行動において、障害を示さなかった(p>0.05)。SAによる前処置は、HPおよび対照マウスに比べ恐怖記憶を変化させなかった(p>0.05.SA:サルビノリンA;HP:低酸素)。 実施例6のマウス研究において使用されるプロトコルを示す。 鼻腔内サルビノリンA投与は握力スコアにより測定される運動機能において用量依存的改善を示したことを示す。しかしながら、そのような保護効果は、250μg/kgの用量を超えると減少する。 鼻腔内サルビノリンA投与は神経行動において用量依存的改善を示したことを示す。 鼻腔内サルビノリンA投与は、脳のTTC染色における白色梗塞面積の低減により見てわかるように、梗塞サイズの用量依存的低減を示したことを示す。図30において示される結果と同様に、保護効果は、250μg/kgの用量を超えると減少する。 投与された鼻腔内サルビノリンAの用量の関数としての梗塞面積を示す。 エバンスブルー血管外漏出は、脳の虚血および再灌流後の血液脳関門破壊および血管漏出を示した。鼻腔内サルビノリンA投与は破壊および漏出を低減させたが、κ受容体アンタゴニストノルビナルトルフィミン(norbin)の投与は、サルビノリンAの保護効果を阻害した。 鼻腔内サルビノリンAは全運動機能を改善することを示す。サルビノリンAが投与されなかったマウス(地面上のマウス)は正常に歩くことができない。というのも、左側は120分の中大脳動脈閉塞(MCAO)後24時間麻痺したからである。傷害後に(紐上のマウス)鼻腔内サルビノリンAが投与されたマウスは吊り紐をゆっくり動くことができる。 μおよびκオピオイド受容体が過剰発現されたHEK細胞におけるへルキノリンに対する親和性決定を示す。図36Aは、DAMGO、強力なμアゴニストと比べた、へルキノリンのμ受容体との結合親和性を証明する。KはDAMGOに対しては2.5nMであり、へルキノリンに対しては45nMである。図36Bで示されるモデルにより、へルキノリン(結合ポケットにおいて赤色球形リガンド上Hとして標識される)は、β−フナルトレキサミン(結合ポケットにおいて水色球形リガンド上βとして標識される)、結晶構造で見出される選択的μオピオイド受容体リガンドに対するものと同じ結合部位に結合することが示唆される。 κオピオイド受容体が過剰発現されたHEK細胞におけるへルキノリンに対する親和性決定および結合部位の位置を示す。図37Aは、U69593、強力なκアゴニストと比べた、へルキノリンのκ受容体との結合親和性を証明する。KはU69593に対しては0.8nMであり、へルキノリンに対しては184nMである。図37Bで示されたモデルにより、へルキノリン(結合ポケットにおいて赤色球形リガンド上Hとして標識される)は、JDTic(結合ポケットにおいて緑色球形リガンド上Jとして標識される)、結晶構造で見出される選択的κオピオイド受容体リガンドに対するものと同じ結合部位に結合することが示唆される。 へルキノリンの脳血管拡張効果は、κオピオイド受容体により媒介される。図38は、軟膜動脈に関するへルキノリン(herkinoin)(Herk)の拡大効果がκ受容体アンタゴニストノルビナルトルフィミン(NTP)によりブロックされる(図38A);が、μ受容体アンタゴニストβ−フナルトレキサミンによりブロックされない(β−FNA、図38B)ことを証明する。へルキノリン(herkinoin)の拡大効果は、イソプロテレノール(ISO)、強力なβアドレナリン作動薬に等しい(図38A)(Ps>0.05)。NTPまたはβ−FNA単独の投与は、拡大効果を有さない(一元配置ANOVA、続いてダネット多重比較検定)。各群n=5。はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.005(t検定)、#はp<0.05(ANOVAテスト)。 へルキノリンの脳血管拡張効果はcAMPシグナル伝達により媒介される。図39Aは、CSF中のcAMPのレベルはへルキノリン投与で上昇し、これはκアンタゴニストNTPの投与で消失したことを証明する。図39Bは、へルキノリンの脳血管拡張効果は10μΜ Rp−cAMPS、cAMPアンタゴニストの投与により消失したことを証明する(n=5)Sp:Sp−cAMPS、Rp:Rp−8−Br−cAMPs。はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.005 シャム、くも膜下出血(SAH)およびサルビノリン(Salvanorin)A(SA)処置群に対する24時間後の全脳画像(腹側)。 シャム、SAHおよびSA処置群の脳底動脈のH&E染色を示す。 SAH後に与えられたサルビノリンAは、SAH後24時間に著しく、(A)直径を増加させ、(B)脳底動脈の壁の厚さを減少させた。(C)SAH後に与えられたサルビノリンAは神経スコアに対し有意の効果を有さないp<0.05対シャム、p<0.05対SAH メタノール−アセトン(4:1)中のサルビノリンAに対する検量線を示す。
本発明はサルビノリン組成物およびその使用に関する。具体的には、本発明はサルビノリンを投与し、その被験体における心停止または脳卒中後の被験体の生存を増加させることに関する。発明はさらに、脳血管攣縮、くも膜下出血、脳低酸素/虚血、大脳動脈閉塞、または自己調節障害に関与する任意の病状を有する被験体を治療することに関する。
1つの態様では、本明細書では、心停止を患っている、または患っていた被験体において心停止と関連する神経傷害を治療する方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。別の態様では、本明細書では、心停止を患っている、または患っていた被験体において生存の可能性を増加させる方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
別の態様では、本明細書では、くも膜下出血を有する被験体において脳血管攣縮を治療する方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
別の態様では、本明細書では、大脳動脈閉塞を患っている、または患っていた被験体において大脳動脈閉塞を治療する方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
別の態様では、本明細書では、脳低酸素/虚血を患っている、または患っていた被験体において梗塞サイズを低減させる方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。さらに別の態様では、本明細書では、脳低酸素/虚血を患っている、または患っていた被験体において血管漏出を低減させる方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
別の態様では、本明細書では、医薬組成物であって、本明細書で記載される方法において使用するためのサルビノリンを含む組成物が提供される。
別の態様では、本明細書では、必要のある被験体において脳血管拡張を生成させるための方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。別の態様では、本明細書では、被験体において脳血管攣縮、低酸素、および/または虚血と関連する疾患を治療するための方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
別の態様では、本明細書では、被験体において、血管収縮、血管閉塞、または血流および自己調節の破壊と関連する疾患を治療するための方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。別の態様では、本明細書では、必要のある被験体において鎮静または麻酔効果を生成させるための方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
別の態様では、本明細書では、医薬組成物であって、治療的有効量のサルビノリンを含む組成物が提供され、ここで、前記サルビノリンは、必要のある被験体において脳血管拡張を生成させるのに有効な量で存在する。別の態様では、本明細書では、医薬組成物であって、治療的有効量のサルビノリンを含む組成物が提供され、ここで、前記サルビノリンは、被験体において脳血管攣縮、低酸素、および/または虚血と関連する疾患を治療するのに有効な量で存在する。別の態様では、本明細書では、医薬組成物であって、くも膜下出血を有する被験体において脳血管攣縮を治療するための、治療的有効量のサルビノリンを含む組成物が提供される。
別の態様では、本明細書では、医薬組成物であって、治療的有効量のサルビノリンを含む組成物が提供され、ここで、前記サルビノリンは、被験体において低酸素/虚血からの臓器保護を提供するのに有効な量で存在する。別の態様では、本明細書では、医薬組成物であって、治療的有効量のサルビノリンを含む組成物が提供され、ここで、前記サルビノリンは、被験体において血管収縮、血管閉塞、または血流および自己調節の破壊と関連する疾患を治療するのに有効な量で存在する。
別の態様では、本明細書では、医薬組成物であって、治療的有効量のサルビノリンを含む組成物が提供され、ここで、前記サルビノリンは、必要のある被験体において鎮静または抗侵害受容性効果を生成させるのに有効な量で存在する。
別の態様では、本明細書では、サルビノリンAの医薬組成物であって、サルビノリンAおよびシクロデキストリンの水溶液を含む組成物が提供される。好ましくは、シクロデキストリンは2−ヒドロキシプロピル−シクロデキストリン、例えば2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)または2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(HPGCD)である。より好ましくは、シクロデキストリンは2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)である。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内投与のために適合される。いくつかの実施形態では、サルビノリンA濃度は少なくとも25μg/mLである。好ましくは、サルビノリンA濃度は少なくとも50μg/mLである。
いくつかの実施形態では、サルビノリンA水溶液中のシクロデキストリン(例えば、HPBCD)濃度は少なくとも1%(w/v)、少なくとも2.5%(w/v)、少なくとも5%(w/v)、少なくとも7.5%(w/v)、少なくとも10%(w/v)、少なくとも12.5%(w/v)、少なくとも15%(w/v)、少なくとも17.5%(w/v)、少なくとも20%(w/v)、少なくとも22.5%(w/v)、または少なくとも25%(w/v)である。いくつかの実施形態では、サルビノリンA水溶液中のシクロデキストリン(例えば、HPBCD)濃度は、50%(w/v)未満、45%(w/v)未満、40%(w/v)未満、35%(w/v)未満、30%(w/v)未満、25%(w/v)未満、22.5%(w/v)未満、20%(w/v)未満、17.5%(w/v)未満、15%(w/v)未満である。好ましくは、シクロデキストリンは、約少なくとも20%(w/v)のサルビノリンA水溶液中の濃度を有するHPBCDである。
本出願の発明者は驚いたことに、かつ予想外に、サルビノリンは、速効作用発現および消失で、かつ血行動態を変化させずに、脳血管を劇的に拡張させることを見出した。脳動脈の直径は、図7に示されるように、1マイクロモルのサルビノリンで40%まで拡張した。血管はサルビノリンの適用直後に拡張し、拡張効果は3〜5分未満続いた。この所見は、サルビノリンは、脳卒中、脳傷害、または、くも膜下出血および頭部外傷後を含む、脳血管攣縮と関連する他の関連する臨床的状況における脳血管攣縮を治療するために使用することができることを証明する。さらに、サルビノリンは、脊髄虚血および他の神経虚血に対して治療するために使用され得る。
サルビノリンAおよびその類似体は公知の化合物である。サルビノリンA、サルビア・ディビノラムの活性成分は、ほぼ100万人の人々により娯楽目的のために、毎年米国で使用されており、唯一の公知の非窒素性選択的κオピオイド受容体(KOR)アゴニストである。
ジテルペンサルビノリンAは、高親和性の選択的κオピオイド受容体アゴニストであることが示されている。Roth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:11934 (2002);およびButelmanet al., Psychopharmacology 172:220 (2004)を参照されたい。
サルビノリンおよびそれらの誘導体は当技術分野で知られている。例えば、サルビノリン、それらの誘導体、およびそれらを合成するための方法は米国2006/0052439号、米国2007/0213394号、WO2005/089745号、およびWO2008/119097号(その各々がその全体として参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
当業者に知られているサルビノリンまたはその誘導体は、本明細書で記載される方法および組成物において使用され得る。サルビノリンの例としては、サルビノリンA、B、C、D、E、またはFが挙げられるが、それらに限定されない。1つの実施形態では、サルビノリンはサルビノリンAである。別の実施形態では、サルビノリンはサルビノリンBである。別の実施形態では、サルビノリンはサルビノリンCである。別の実施形態では、サルビノリンはサルビノリンDである。別の実施形態では、サルビノリンはサルビノリンEである。別の実施形態では、サルビノリンはサルビノリンFである。別の実施形態では、サルビノリンはサルビノリンのエステルである。別の実施形態では、サルビノリンはサルビノリンベンゾエートである。別の実施形態では、サルビノリンはサルビノリンの代謝産物である。別の実施形態では、サルビノリンはサルビノリンAの類似体である。例えば、へルキノリンは、サルビノリンAの類似体である(Ji F, et al., Brain Res. 2013, 1490:95−100(これによりその全体が参照により組み込まれる))。本明細書で記載される方法および組成物において使用され得る他のサルビノリン類似体は2−O−エトキシメチルサルビノリンBおよび2−O−メトキシメチルサルビノリンBである。
1つの実施形態によれば、治療的有効量のサルビノリンを投与することは、必要のある被験体において血管拡張を生成させる。
発明はさらに、必要のある哺乳類に治療的有効量のサルビノリンを投与することを含む、疾患または病状を治療する方法を提供する。
1つの実施形態では、被験体において、血管収縮、血管閉塞、または血流および自己調節の破壊と関連する疾患を治療するための方法が提供され、方法は、下記を含む:前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与すること。
本明細書で記載される医薬組成物は「治療的有効量」を含み得る。「治療的有効量」は、所望の治療結果を達成するのに必要とされる投与および期間で有効な量を示す。分子の治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに分子の、個体において所望の応答を誘発する能力などの因子によって変動し得る。治療的有効量はまた、分子の毒性または有害効果を、治療的に有益な効果が上回るものである。
本明細書では、「治療する」および「治療」という用語は、予防または防止手段を含む治療処置を示し、ここで、目的は、疾患または病状と関連する望ましくない生理的変化を防止または減速させる(減らす)ことである。例えば、心停止と関連する神経傷害を治療することは、心停止を患っている、または患っていた被験体において神経傷害を防止することを含むが、これに限定されない。有益なまたは所望の臨床結果としては、症状の軽減、疾患または病状の程度の減少、疾患または病状の安定化(すなわち、疾患または病状が悪化しない場合)、疾患または病状の進行の遅延または減速、疾患または病状の寛解または緩和、および疾患または病状の緩解(部分的か全体かに関係なく)が挙げられるが、それらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けなかった場合に予想される生存と比べて延長された生存を意味することができる。治療の必要なものとしては、疾患または病状をすでに有しているもの、ならびに疾患または病状を有する傾向があるものまたは疾患または病状が防止されるべきものが挙げられる。
血管収縮、血管閉塞、または血流および自己調節の破壊により引き起こされる、またはこれらと別様に関連する疾患または障害の例としては、脳血管攣縮、くも膜下出血、脳卒中、脳外傷または傷害、虚血再灌流障害、低灌流状態、および低酸素が挙げられるが、それらに限定されない。
本明細書で記載されるサルビノリンおよびその医薬組成物は、当技術分野で知られている方法により、例えば非経口的に、癌化細胞の近くに(paracancerally)、経粘膜的に、経皮的に、筋肉内に、静脈内に、皮内に、皮下に、腹腔内に、脳室内に、頭蓋内に、腟内にまたは腫瘍内に、くも膜下腔内に、および吸入により被験体に投与することができる。好ましい実施形態では、それらは経粘膜的に投与される。より好ましい実施形態では、それらは鼻腔内に投与される。
本明細書で記載される方法および組成物の別の実施形態では、医薬組成物は経口的に投与され、よって、経口投与に好適な形態で、すなわち固体または液体調製物として製剤化される。好適な固体経口製剤としては、錠剤、カプセル、丸薬、顆粒、ペレットなどが挙げられる。好適な液体経口製剤としては、溶液、懸濁液、分散物、エマルジョン、油などが挙げられる。本発明の別の実施形態では、活性材料成分はカプセル中で製剤化される。この実施形態によれば、本発明の組成物は、活性化合物および不活性担体または希釈剤に加えて、ハードゼラチンカプセルを含む。
別の実施形態では、医薬組成物は液体調製物の静脈内、動脈内、または筋肉内注射により投与される。好適な液体製剤としては、溶液、懸濁液、分散物、エマルジョン、油などが挙げられる。別の実施形態では、医薬組成物は静脈内投与され、よって、静脈内投与に好適な形態で製剤化される。別の実施形態では、医薬組成物は動脈内投与され、よって、動脈内投与に好適な形態で製剤化される。別の実施形態では、医薬組成物は筋肉内投与され、よって、筋肉内投与に好適な形態で製剤化される。
別の実施形態では、医薬組成物は鼻腔内投与され、よって、鼻腔内投与に好適な形態で製剤化される。
別の実施形態では、医薬組成物は局所的に身体表面に投与され、よって、局所投与に好適な形態で製剤化される。局所製剤としては、ジェル、軟膏剤、クリーム、ローション、液滴などが挙げられる。
別の実施形態では、医薬組成物は、坐薬、例えば、直腸坐薬または尿道坐薬として投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、ペレットの皮下埋め込みにより投与される。別の実施形態では、ペレットは、ある期間にわたって活性剤の制御放出を提供する。
別の実施形態では、活性化合物は、小胞、例えばリポソーム内で送達される。
他の実施形態では、本発明の方法において使用される担体または希釈剤としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:ガム、デンプン(例えば、コーンスターチ、アルファ化でんぷん)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース材料(例えば、微結晶セルロース)、アクリレート(例えば、ポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、またはそれらの混合物。
他の実施形態では、液体製剤のための薬学的に許容される担体は水溶液または非水溶液、懸濁液、エマルジョンまたは油である。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝媒質が含まれる。油の例は、動物、野菜、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、ひまわり油、魚−肝油、別の魚油、または乳もしくは卵由来の脂質である。
別の実施形態では、非経口ビヒクル(皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内注射用)としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲルおよび固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体および栄養分補充薬、電解質補充薬、例えばリンゲルデキストロースに基づくもの、などが挙げられる。例は、界面活性剤および他の薬学的に許容されるアジュバントの添加ありまたはなしの、無菌液、例えば水および油である。一般に、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連糖溶液、およびグリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、特に注射用溶液に対し好ましい液体担体である。油の例は、動物、野菜、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、ひまわり油、魚−肝油、別の魚油、または乳もしくは卵由来の脂質である。
他の実施形態では、組成物はさらに、バインダ(例えば、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、デンプングリコール酸ナトリウム)、様々なpHおよびイオン強度の緩衝剤(例えば、Tris−HCI、酢酸塩、リン酸塩)、表面への吸収を防止するための添加物、例えばアルブミンまたはゼラチン、洗浄剤(例えば、Tween20、Tween80、プルロニックF68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透増強剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増稠剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味料(例えば、アスパルテーム、クエン酸)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマコーティング(例えば、ポロクサマーまたはポロキサミン)、コーティングおよびフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)および/またはアジュバントを含む。
別の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、制御放出組成物、すなわち、活性化合物が投与後ある期間にわたって放出される組成物である。制御放出または徐放組成物は親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)形態の製剤を含む。別の実施形態では、組成物は、即時放出組成物、すなわち活性化合物が投与直後に放出される組成物である。
別の実施形態では、医薬組成物は、制御放出系で送達される。例えば、作用物質は、静脈内注入、埋め込み型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式を用いて投与され得る。1つの実施形態では、ポンプが使用され得る(Langer、上記;Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987); Buchwald et al., Surgery 88:507 (1980); Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321:574 (1989)を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマ材料が、例えばミクロスフェアまたはインプラント内で使用される。さらに別の実施形態では、制御放出系が、標的細胞に近接して配置され、よって、全身用量のほんの一部だけが必要とされる(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release,上記, vol. 2, pp. 115−138 (1984);およびLanger R, Science 249: 1527−1533 (1990)を参照されたい。
組成物はまた、別の実施形態では、ポリマ化合物、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル、などの微粒子調製物中または上への、またはリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層または多重膜小胞、赤血球ゴースト、またはスフェロプラスト上への活性材料の組み入れを含む。そのような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を与えるであろう。
ポリマ(例えば、ポロクサマーまたはポロキサミン)でコートされた微粒子組成物および組織特異的受容体、リガンドまたは抗原に対する抗体に結合された、または組織特異的受容体のリガンドに結合された化合物もまた、本発明に含まれる。
水溶性ポリマ、例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマ、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、ククルビツリル、ポリビニルピロリドンまたはポリプロリンの共有結合により修飾された化合物もまた、発明により含まれる。修飾された化合物は、静脈内注射後、血液中で、対応する非修飾化合物よりも、実質的により長い半減期を示すことが知られている(Abuchowski et al., 1981; Newmark et al., 1982;およびKatre et al., 1987)。そのような修飾はまた、水溶液中での化合物の溶解度を増加させ、凝集を排除し、化合物の物理的および化学的安定性を増強させ、化合物の免疫原性および反応性を著しく低減させ得る。その結果、所望のインビボ生物活性が、非修飾化合物よりも少ない頻度で、またはより低い用量での、ポリマ−化合物付加物の投与により達成され得る。
1つの実施形態では、方法は活性化合物を唯一の活性材料成分として投与することを含む。しかしながら、活性化合物を1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて投与することを含む、疾患および傷害を治療するための方法もまた、本発明の範囲内に包含される。これらの追加の作用物質は、当技術分野で知られているように、治療される疾患または障害に適切である。
他の治療的に有効な作用物質はサルビノリンにコンジュゲートされ、サルビノリンと同じ組成物中に組み入れられ、または別の組成物として投与され得る。他の治療的作用物質または治療は、サルビノリンの投与前、中および/または後に投与され得る。
サルビノリンの他の作用物質および/または治療との投与は同時に、または別々に、同じかもしくは異なる経路を介して、同時にもしくは異なる時に起こり得る。投与レジメンは最適な所望の応答(例えば、治療または予防的応答)を提供するように調整され得る。
本明細書で記載される病状または疾患の治療のための本明細書で記載される組成物の有効用量は、多くの異なる因子、例えば、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトか動物か、投与される他の薬物療法、および治療が予防的か治療的かによって変動する。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳類を含む非ヒト哺乳類もまた、治療することができる。治療投与量は、安全性および効力を最適化するために、当業者に公知のルーチン方法を使用して用量設定され得る。
1つの実施例では、単一ボーラスが、投与され得る。別の例では、いくつかに分けられた用量が、時間と共に投与され得る。さらに別の実施例では、用量は、治療状況の緊急事態により示されるように、比例的に低減または増加され得る。用量単位形態は、本明細書では、哺乳類被験体を治療するための単位投与量として適合された物理的に別々の単位を示す。各単位は、所望の治療効果を生成させるように計算されたあらかじめ決められた量の活性化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、用量単位形態は、活性化合物の特有の特性および達成されるべき特定の治療的または予防的効果により指示され、これに直接依存する。
組成物は、一回だけ投与され得、または、複数回または持続注入で投与され得る。複数回投与では、組成物は、例えば、1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、週2回、毎週、2週間に1回、または毎月投与され得る。
投与量値は軽減されるべき病状の型および重症度と共に変動し得る。任意の特定の被験体に対し、特定の投与レジメンは時間と共に、個別の必要性および組成物を投与する、またはその投与を監督する人物の専門的判断に従い調整することができ、本明細書で明記される投与量範囲は例示であり、方法の範囲または実施を制限することは意図されないことが、さらに理解される。
被験体への「投与」は、任意の特定の送達系に制限されず、非経口(皮下、静脈内、髄内、関節内、筋肉内、または腹腔内注射を含む)、直腸、局所、経皮または経口(例えば、カプセル、懸濁液または錠剤)、くも膜下腔内、鼻腔内および吸入を含み得るが、限定はされない。被験体への投与は、単回投与または繰り返し投与または持続注入で、様々な生理的に許容される塩形態のいずれかで、および/または、医薬組成物の一部としての許容される医薬担体および/または添加物と共に起こり得る。改めて、生理的に許容される塩形態および標準医薬製剤技術は当業者に知られている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.を参照されたい)。
「約」または「およそ」という用語は、当業者により決定される特定の値に対する許容誤差範囲内を意味し、これは、一部には、その値がどのように測定され、または決定されたか、すなわち、測定系の限界に依存するであろう。例えば、「約」は、当技術分野における実施につき、1以上の標準偏差以内を意味することができる。あるいは、測定可能な値、例えば量、時間、濃度、などに言及する場合、特定の値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにいっそう好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を包含してもよく、というのも、そのよう変動は開示された方法を実施するのに適切であるからである。
本明細書で記載される治療方法は、好適な哺乳類、例えば、サルおよびヒト、ウマ、雌ウシ、ネコ、イヌ、ウサギなどの霊長類、ならびにラットおよびマウスなどの齧歯類を治療するために使用することができる。好ましくは、治療される哺乳類はヒトである。
本明細書で引用される特許、特許出願、または特定の刊行物を含むいずれの参考文献も、それらの全体が参照により組み込まれる。
下記実施例は、発明の好ましい実施形態をより詳しく説明するために提示される。しかしながら、それらは、決して、発明の広い範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
実施例1
サルビノリンAは一酸化窒素シンターゼ、κ受容体およびアデノシン三リン酸感受性カリウムチャネルの活性化により、脳血管拡張を生成させる
この実施例では、我々は、サルビノリンAは、低炭酸症またはエンドセリンにより誘導した安静緊張および亢進緊張状態下で、一酸化窒素シンターゼ、アデノシン三リン酸感受性カリウム(KATP)チャネルおよびκ受容体の活性化により軟膜動脈を拡張させることを証明した。
材料および方法
サルビノリンA(純度≧98%)、ニトロプルシドナトリウム(SNP)、N(G)−ニトロ−L−アルギニン(L−NNA)、グリベンクラミド、イベリオトキシン、クロマカリム、カルシトニン遺伝子関連ポリペプチド(CGRP)、NS1619、ナロキソン、メチオニンエンケファリン、ノルビナルトルフィミン、7−ニトロインダゾール(7−NINA)、スルピリドおよびイソプロテレノールをSigma−Aldrich(セントルイス、MO、USA)から入手する。他の化学薬品も全て、Sigmaから入手し、これらは試薬グレードであった。
動物および外科手術
両方の性別の新生ブタ(1〜6日齢、体重1.3〜1.8kg)をこの研究のために使用した。プロトコルはペンシルバニア大学の施設内実験動物委員会により認可された。動物を、イソフルラン(1〜2最小肺胞気濃度)で誘導し、その後、α−クロラロース(80〜100mg/kg、5mg/kg/hで補充、IV)で維持した。両方の大腿動脈をカテーテル処置し、血圧および血液ガスをモニタした。カテーテルを薬物療法投与のために右大腿静脈に挿入した。動物を気管カニューレ挿入後室内空気で換気させた。直腸温度を37〜39℃で、加熱パッドにより維持した。閉鎖頭蓋窓を直接軟膜動脈可視化および直径測定のために配置した。閉鎖頭蓋窓は3つの部分から構成された:ステンレス鋼リング、円形ガラス製カバーガラス、およびステンレス鋼リング内の3つのプレカット穴に取り付けられた17ゲージ皮下針から構成される3つのポート。皮質周囲くも膜脳脊髄液(CSF)を環状グアノシン一リン酸(cGMP)決定のために、頭蓋窓ポートを介して収集した。窓を配置する前に、頭皮を反映させ、開口を頭蓋内頭頂葉皮質上方に作製した。その後、硬膜を切断し、骨縁上で退縮させた。頭蓋窓を頭蓋開口上に配置し、定位置に歯科用アクリルで固定した。窓下の空間を、下記組成を有する(mMで表される)人工CSFで充填した:1リットルあたり、3.0KCl、1.5MgCl、1.5CaCl、132NaCl、6.6尿素、3.7デキストロース、および24.6NaHCO、pH7.33、PCO46mmHgおよびPO43mmHg。人工CSFを37〜38℃まで温め、その後、脳皮質表面に適用した。軟膜動脈を、解剖顕微鏡上に載置されたテレビカメラを用いて観察した。血管直径を、ビデオマイクロスケーラを備えるビデオモニタが接続されたカメラから測定した(モデルVPA550、For−A−Corp.、ロサンゼルス、CA)。
実験プロトコル
軟膜動脈直径(小動脈直径120〜160マイクロメートル;細動脈直径50〜70マイクロメートル)を30秒毎に、調査薬物ありまたはなしでの人工CSFの注射後10分間モニタし、記録した。一般に、窓を30秒にわたり1〜2mlのCSFを用いて、窓の側面中に接続されたポートを介してフラッシングした。CSF試料をcGMP分析のために、薬物療法投与前および後10分に収集した。我々は脳皮質周囲くも膜CSFを、CSFを窓の1つのポートに徐々に注入し、CSFを反対のポート上の採集管中に自由に滴下させることにより収集した。
サルビノリンA(10nΜ、1μΜ、アルコールにより溶解)およびSNP(10nM、1μΜ)に対する応答をN(G)−ニトロ−L−アルギニン(L−NNA、1μΜ)、一酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤および7−ニトロインダゾール(100nM)、神経型NOSのアンタゴニストありまたはなしで取得した。
サルビノリンAに対する拡張応答における一酸化窒素の直接または許容役割を識別するために、軟膜動脈直径変化をSNP(100pM)、閾値以下の血管濃度の一酸化窒素ドナー、L−NNAおよびサルビノリンAと一緒の投与後に記録した。スルピリド(100nM)、ドパミン受容体D2アンタゴニスト:グリベンクラミド(100nM)、KATPチャネルアンタゴニスト;イベリオトキシン(100nM、Sigma−Aldrich)、Kcチャネルアンタゴニストの、サルビノリンA、クロマカリム(1μM)およびカルシトニン遺伝子関連ポリペプチド(10nM、1μΜ)、KATPアゴニスト、およびNS1619(10nΜ、1μΜ)、KCaチャネルアゴニストに対する軟膜動脈応答に関する影響、もまた、決定した。最後に、ナロキソン(1mg/kg IV)およびノルビナルトルフィミン(1μΜ局所投与、κオピオイド受容体アンタゴニストの、サルビノリンA、メチオニンエンケファリン(10nM、1μΜ)およびイソプロテレノール(10nM、1μΜ)、βアドレナリン受容体アゴニストに対する応答に関する効果を調べた。試験した薬物溶液は全て、使用日に新たに作製した。2分毎に投与したサルビノリンAに対する軟膜動脈応答を30分間記録し、持続性の血管拡大が達成されたかどうかを決定した。
cGMP決定
サルビノリンの脳脈管構造に関する効果に対する一酸化窒素経路の役割を決定するために、CSF試料をL−NNAおよびノルビナルトルフィミン前処置ありおよびなしでの、サルビノリンA投与前後に、cGMP決定のために回収した。市販のELISAキット(Enzo Life Sciences International、Inc.プリマスミーティング、PA)を使用してcGMP濃度を定量した。
狭窄血管に対するサルビノリンA
脳血管緊張が上昇している間でのサルビノリンの脳血管効果を試験するために、我々は低炭酸症(PaCOを10分間20〜30%だけ低減させた)およびエンドセリン(0.1pM)により血管収縮を誘導した。軟膜動脈直径をベースラインで、低炭酸症またはエンドセリンの投与後、およびサルビノリンA(10nM、1μΜ)投与後にモニタした(低炭酸症ではn=4、エンドセリンではn=5)。
統計解析
全てのデータ(直径およびcGMP)を、反復測定を有するANOVA、続いて、10.0のStatistical Package for the Social Sciences(SPSS)を用いたボンフェローニポストホックテスト(両側)を使用して解析した。p<0.05のレベルを統計的に有意と考えた。値は絶対値の平均±SEM;またはベースライン値からのパーセンテージ変化として表される。全ての値の分布をヒストグラムにより評価した。
結果
拡張効果および一酸化窒素経路の役割
サルビノリンA投与は、図1Aに示されるように、依存的に(10nM、1μΜ)子ブタの軟膜動脈を拡張させた。拡張効果はサルビノリン投与直後に観察され、拡張期間は両方の用量に対し5分未満続いた。サルビノリンAが2分毎に投与された場合、図1Bに示されるように、持続性の拡張効果が観察された。拡張応答は、L−NNA、NOS阻害剤により消失したが、7−ニトロインダゾール(100nM)、神経型NOS(nNOS)のアンタゴニストでは消失しなかった(図1A、C)。SNPに対する拡張応答はL−NNAにより影響されなかった(図1A)。SNP(100pM)は、軟膜動脈に対し効果を有さなかったが、これはL−NNAに誘導された狭窄を回復させた。しかしながら、これはL−NNAによりブロックされたサルビノリンAの拡張応答を回復させなかった(図1D)。サルビノリンAに応答する拡張はCSF中の上昇したcGMPと関連し、L−NNAはcGMPの上昇をブロックした(図2)。サルビノリン投与中、有意の血圧変化は起こらなかった。
KCaチャネルではなくKATPチャネルが拡大効果に関与した
イベリオトキシン(100nM)、Ca2+活性化K+(KCa)チャネル阻害剤ではなく、グリベンクラミド(100nM)、KATPチャネル阻害剤がサルビノリンAの拡張効果をブロックした。任意の順序のグリベンクラミドとイベリオトキシンもまた、サルビノリンAにより誘導された拡張をブロックした(図3)。イベリオトキシン(100nM)ではなく、グリベンクラミド(100nM)がクロマカリム(KATPチャネルのアゴニスト、10nMおよび1μΜ)およびカルシトニン遺伝子関連ポリペプチド(別のKATPチャネルアゴニスト、10nMおよび1μΜ)に応答する拡張をブロックし;グリベンクラミド(100nM)ではなくイベリオトキシン(100nM)が、NS1619(KCaチャネルアゴニスト、10nMおよび1μΜ)の拡張効果をブロックした(図4)。
ドパミン受容体D2アンタゴニストではなくオピオイド受容体アンタゴニストがサルビノリンの拡張効果をブロックする
ノルビナルトルフィミン、κオピオイド受容体選択的アンタゴニスト、およびナロキソンは、サルビノリンAおよびメチオニンエンケファリンに対する効果拡張をブロックした。イソプロテレノールに対する応答は影響されなかった(図5A、B)。スルピリド、ドパミン受容体(D2)アンタゴニストは、サルビノリンAに対する拡張応答に対し効果を有さなかった(図5C)。ノルビナルトルフィミンは、サルビノリンA投与からのCSF中のcGMPの上昇をブロックした。ノルビナルトルフィミン前処置ありでのサルビノリンA(10nMおよび1μΜ)投与前後のcGMPのレベル間では差はなかった(p=1)。
サルビノリンは上昇した脳血管緊張状態において軟膜動脈を拡張させる
低炭酸症およびエンドセリンは、軟膜動脈の直径を著しく減少させた(図6)。サルビノリンは、炭酸正常(安静緊張)状態で観察されるものと同様の亢進緊張状態下で軟膜動脈を拡張させた(図6)。上記実験のいずれにおいても、小動脈と細動脈の応答間で有意の差は観察されず、よって、小動脈の差のみを提示した。
論考
この実施例では、サルビノリンAは、子ブタにおける正常状態およびエンドセリンおよび低炭酸症により誘導される血管狭窄状態において強力な軟膜動脈拡張薬であることが証明される。拡大効果が両方の試験用量に対して、サルビノリン投与直後に観察され、5分未満続き、用量依存的であった。サルビノリンAの持続性の拡張効果が連続投与により観察された。オピオイド受容体、NOSおよびKATPチャネルの活性化がそのような拡張効果のシグナル経路に関与した。
U50488、外因性KORアゴニスト、およびダイノルフィン、内在性KORアゴニストが軟膜動脈を拡張させたことが証明されている。U50488は用量依存的に、ラットにおける単離大動脈を弛緩させたこともまた、証明されている。他のKORアゴニストとは異なり、サルビノリンの拡大効果は非常に短命であり、5分未満である。これは、κアゴニストの中では今のところ、最短時間作用物質であり、それは、周術期設定および救命医療における管理および用量設定の容易さのために、多くの臨床薬物療法に対する重要な薬理学的特徴である。より長い効果を達成するためには、注入が、臨床麻酔において使用される最も一般的な技術である。この実施例では、我々は、持続的な血管拡大は連続投与により達成することができることを見出した。
タキフィラキシーではなく、サルビノリンAの特有の構造がその短時間作用特徴に寄与する。というのも、連続投与により、持続性の拡張効果という結果になるからである。その構造中のエステル結合は、血液および組織中でエステラーゼにより容易に代謝させることができる。1つのグループが、カルボキシルエステラーゼが主に、ラット血漿中でのサルビノリンA加水分解に関与し、分解産物はサルビノリンBおよびサルビノリンAのラクトン環開環形態を含み、そのどちらも薬理学的に活性であることを証明した。
他のKORアゴニストと同様に、NOS、KATPチャネルおよびオピオイド受容体の活性化はサルビノリンAの拡張効果を媒介した。別のグループが、選択的KORアゴニストBRL52537は、虚血脳を、虚血性線条体における一酸化窒素生成を減弱させることにより保護したことを証明した。BRL52537の神経保護がnNOSヌルマウスにおいて失われたことが証明された。そのため、KORアゴニストBRL52537はnNOS活性および虚血誘発一酸化窒素生成を減弱させた。しかしながら、この実施例では、サルビノリンAに対する軟膜動脈拡張は、L−NNA、非特異的NOS阻害剤により消失し、7−ニトロインダゾール、選択的nNOSアンタゴニストではそうでなく、nNOSは、サルビノリンAの拡張効果に関与しないことが示される。閾値以下の量の一酸化窒素ドナー、SNPは、拡張応答を回復させることができなかったので、CSF中のcGMPの上昇は、一酸化窒素生成の阻害ではなく刺激、許容イネーブラとしてではなく、内皮NOS上でのサルビノリンの直接活性化のためである可能性がある。
ATPチャネル活性化により血管平滑筋細胞の膜の過分極が得られ得る。膜電位変化はその後、電位依存性Ca2+チャネルを介するCa2+流入の変化により筋弛緩を調節するであろう。この実施例は、サルビノリンAはKATPチャネルを直接的または間接的に活性化することを証明する。KATPチャネルを活性化することができる多くの他の作用物質とは異なり、サルビノリンAは容易に血液脳関門を透過することができる。KATPチャネルは、低酸素、虚血または代謝阻害からの脳傷害に対し重大な保護役割を果たすので、サルビノリンAは臨床用途のための神経保護薬となり得る。
サルビノリンAはドパミンD2受容体に対し高親和性を有することが証明されているが、スルピリド、ドパミンD2受容体選択的アンタゴニストは、サルビノリンAの拡張効果に、何の効果も有さない。それどころか、ナロキソンおよびノルビナルトルフィミン、κオピオイド受容体選択的アンタゴニストは、サルビノリンAの血管拡張効果を消失させ、ドパミンD2受容体ではなく、κ受容体の重要な役割が示唆される。
正常脳血管ならびに低炭酸症およびエンドセリンの両方による狭窄脳血管において観察される血管拡張効果は、エンドセリンの増加が重要な役割を果たすくも膜下出血後の片頭痛および脳血管攣縮を含む多くの臨床的状況において脳血管攣縮を治療するためのその臨床適用を可能にする。他の短時間作用物質のように、持続注入を使用して、用量設定し、投与量を調整することにより持続効果を達成することができるであろう。
この実施例では、新生子ブタを研究被験体として使用した。ブタの皺脳は、ヒトと同様であり、また、成熟度が同様である、傷害に選択的に脆弱である灰白質よりも多くの白質を有する。新生子ブタはまた、容易な頭蓋窓配置および血管可視化のために十分大きいので、使用した。新生仔の脳血管応答は、多くの臨床的状況においてヒト被験体に類似する。
結論として、サルビノリンAは、子ブタにおける正常状態およびエンドセリンまたは低炭酸症により誘導される血管狭窄状態において迅速で短時間作用する強力な軟膜動脈拡張薬である。メカニズムはNOS、KATPチャネルおよびκ受容体の活性化を含む。これらの所見は脳血管拡張を要求する状況におけるサルビノリンAの臨床値を示す。
実施例2
全脳低酸素/虚血後のサルビノリンA投与は、子ブタにおいてκオピオイド受容体を介する脳血管自己調節を保存する
低酸素/虚血(HI)により誘導された脳傷害により引き起こされる神経細胞死および行動機能障害は周産期中ではまれではない。世界中で、全ての新生児死亡の23%は、仮死と関連し、その出生に中等度低酸素−虚血性脳症(HIE)が関与した子供の30%は、精神遅滞、学習障害、および他の能力障害を発症し得る。不運なことに、この壊滅的な状況を管理するために使用可能な薬物療法はない。
KORアゴニストは、脳自己調節を維持し、虚血からの脳傷害を低減させるのに要求される重要な特徴である、脳血管の拡張を引き起こす。虚血後、脳自己調節は害され、脳血流の減少および神経細胞死となる。我々は、子ブタモデルにおいて、全HI前のサルビノリンAの投与は、脳動脈の自己調節、神経細胞完全性の保存のための重要なメカニズムを保存したことを証明した。この実施例では、我々は、HI後のサルビノリンAの投与がKORおよびERK経路を介して脳自己調節を保存することができるかどうかを仮定し、試験した。
材料および方法
サルビノリンA(純度≧98%)を、ChromaDex, Inc.(Irvine、CA、USA)から取得した。イソプロテレノール(ISO)、ノルビナルトルフィミン(Nor−BIN)を、Sigma−Aldrich(MO、セントルイス、MO、USA)から取得した。全ての他の化学薬品(試薬グレード)を、同様に、Sigmaから取得した。
動物および閉鎖頭蓋窓のための外科手術
両方の性別の新生ブタ(1〜5日齢、1.2〜1.5kg)をこの研究で使用した。動物実験プロトコルは、ペンシルバニア大学の施設内実験動物委員会により認可された。前に記載されるように、イソフルラン(1〜2最小肺胞気濃度)を麻酔導入のために最初に使用し、続いて、麻酔の維持のために、α−クロラロース(30〜50mg/kg、5mg/kg/hrで補充、静脈内)を使用した。気管切開後、動物を最初に室内空気で換気させ、直腸温度を37〜39℃で維持するように加熱パッドで温め続けた。両側大腿動脈をカテーテル処置し、血圧、血液ガス圧力およびpHをモニタした。大腿静脈を薬物療法投与のためにカテーテル処置した。ガラス製カバーガラスを有する鋼リングから構成され、3つのポートに接続する閉鎖頭蓋窓を、直接軟膜動脈可視化および直径測定のために配置した。小軟膜動脈(120〜160μm)および細動脈(50〜70μm)を顕微鏡下で同定し、顕微鏡に接続されたモニタ上で可視化し、ビデオマイクロスケーラ(モデルVPA550、For−A−Corp.、ロサンゼルス、CA)により測定した。頭蓋窓リングに取り付けられたポートは、CSFサンプリング、洗い流し、および薬物投与のための17ゲージ皮下針に適合する。皮質周囲くも膜CSFをベースラインおよびHI後60分でERK活性分析のために収集した。
HI誘導
低酸素を10分間、換気のための室内空気をN2に切り換えることにより誘導し、続いて換気を室内空気に回復させた。全脳虚血をその後、中空ボルトを介して頭蓋内に生理食塩水を注入し、頭蓋内圧を平均血圧より高く20分間維持することにより誘導した。全脳虚血を、軟膜動脈中の血流が、頭蓋窓上方の顕微鏡に接続されたモニタ上で、止まったことが見えた時に確認した。クッシング応答(高い頭蓋内圧のために、動脈圧が劇的に上昇する)を回避するために、必要とあれば、平均動脈圧を100mmHg未満に維持するために、血液を取り除いた。血液を虚血の終わりに大腿静脈を介して戻した。
薬物処置
4つの群のi.v.薬物投与をHI(各群n=5)後に実施した:(1)DMSO群:DMSO(サルビノリンAのビヒクル)1μl/kgをHI直後に投与;(2)SA0分群:サルビノリンA(1μg/μlを含むDMSO)10μg/kgをHI直後;(3)SA30分群:サルビノリンA(1μg/μlを含むDMSO)10μg/kgをHI後30分;(4)SA+Norbin群:サルビノリンA(10μg/kg)およびnor−BIN(1μΜ、頭蓋窓の1つのポートを通して局所的に注射)をHI直後。
軟膜動脈応答
高炭酸ガス血症、低血圧およびイソプロテレノール(10nM、1μΜ)に対する軟膜動脈応答を、HI前およびHI後60分に、前に記載されるように取得した。イソプロテレノールを陽性対照として使用した。というのも、これは短時間作用物質であり、そのようなモデルにおけるその血管拡大効果は我々の研究室でよく確立されているからである。2つのレベルの高炭酸ガス血症(低レベルでは50〜60mmHgのPaCO、高レベルでは70〜80mmHg)を高濃度CO混合ガス(10%CO;21%0;69%N)の吸入により生成させた。2つのレベルの低血圧を、5〜8または10〜15ml/Kgのいずれかの血液の大腿動脈からの迅速引き出しにより生成させ、中等度および重度低血圧を誘導した(中等度として平均血圧の25%減少および重度として45%減少)。そのような血圧の減少を一定に10分間、追加の血液の引き出しまたは再注入により維持した。
ERK活性測定
ERK活性をその後、以上で記載される凍結CSF試料から決定した。pERKおよびERKのレベルをELISAキットにより測定した(Enzo Life Sciences International, Inc.,プリマスミーティング,PA)。
統計解析
軟膜動脈直径のデータを反復測定ANOVA、続いてポストホックテストとしてのボンフェローニ方法により分析した。一元配置ANOVAを使用して、各群においてHI前およびHI後60分に、ならびに、サルビノリンA投与ありまたはなしの群においてERK活性変化(ERKに対するpERKの比として定量)を比較した。ベースラインデータを反復測定分析(Graph Pad Prismバージョン5.02)において排除した。P<0.05のαレベルを全ての統計検定において有意と考えた。値は平均±標準誤差として表される。
結果
サルビノリンAは全脳HI後高炭酸ガス血症に対する軟膜動脈自己調節を保存する
図13に示されるように、小軟膜動脈は、HI前2つのレベルの高炭酸ガス血症に応じて拡張した(ベースラインとして示される)。高炭酸ガス血症に対する拡大応答は、HI後、DMSOをHIの終わりに直ちに投与した場合鈍くなった(ps<0.01、HI前のベースラインと比べて)。HI後直ちにまたは30分でのサルビノリンAの投与(10μg/kg)は、高炭酸ガス血症に対する軟膜動脈の拡張応答を保存した。そのような応答は、サルビノリンAおよびノルビナルトルフィミン(nor−BIN)をHI後30分に共投与した場合、完全に消失した(ps<0.01、HI前のベースラインと比べて)。同様の観察が軟膜細動脈において得られた(データ示さず)。
サルビノリンAは全脳HI後低血圧に対する軟膜動脈自己調節を保存する
低血圧の結果と同様に、小軟膜動脈は、HI前、HI高炭酸ガス血症前(ベースラインとして示される、図14)、2つのレベルの低血圧に応じて拡張した。拡大応答は、HI後、DMSOをHIの終わりに直ちに投与した場合鈍くなった(ps<0.01、HI前のベースラインと比べて)。HI後直ちに、または30分に投与したサルビノリンA(10μg/kg)は低血圧に対する軟膜動脈の拡張応答を保存した。低血圧に対するそのような応答は、サルビノリンAおよびnor−BINをHI後30分に共投与した場合、消失した(ps<0.01、ベースラインと比べて)。同様の観察が軟膜細動脈において得られた。
イソプロテレノールに対する軟膜動脈応答は実験の全ての組において不変のままである
陽性対照として、イソプロテレノールに対する軟膜動脈応答(図15)を測定し、全ての群の間で、HI前後に変化が観察されなかった。
ERKシグナル伝達が、サルビノリンAの保存効果に関与する
ERK活性は、CSF中のpERK/ERKレベルの比として定量される。サルビノリン効果なしの群内のERK活性データ(DMSO群およびSA+Norbin群;DMSO+Nornin群と改名)を合わせる。図16に示されるように、サルビノリンなしの群内のERK活性はHI後60分に著しく増加した(p<0.05、HI前ベースラインと比べて)。サルビノリンA投与群のERK活性は、ベースラインレベルまで低減した。
論考
この実施例から3つの新しい所見がある。第1に、HI後直ちにまたは30分でのサルビノリンAの投与は、高炭酸ガス血症および低血圧に対する軟膜動脈拡張応答を保存する。第2に、サルビノリンAの保存効果はKORアンタゴニスト、nor−BINにより鈍くなった。第3に、サルビノリンAはHI後のCSF ERK活性の増加をブロックした。
脳HIの問題およびKORアゴニストの可能性のある役割
出生仮死および小児虚血性脳卒中のどちらも出生の一般的な合併症である。周産期HIは、これらの合併症の両方で起こり、重度および永久的神経心理学的欠損、例えば認知的および行動的発達の遅延、精神遅滞、脳性麻痺、およびてんかんを誘導する可能性があり、それは患者、家族および社会にとって壊滅的である。不運なことに、有効な周産期HI管理に対し使用することができる薬物療法はない。低体温が負の合併症を低減させるためのHIEに対する唯一の治療である。しかし、それは臨床診療において広く認められおらず、または、薬理学的作用物質と組み合わせることが推奨される。組換え組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)、急性虚血性脳卒中に対しFDAにより認可された治療は、誘導脳卒中および障害脳血行動態に供せられたマウスにおいて脳卒中梗塞体積の増加を含む有害作用を示した。
KORアゴニストの神経保護効果は、他の虚血動物モデルにおいて証明されている。例えば、KORアゴニストBRL52537およびCI−977は、発作前30分または発作後6時間までに投与されると、異なるレベルの虚血に応答する、皮質ダメージ、例えば脳腫脹および梗塞体積を低減させる。これらの所見により、KORアゴニストは、臨床設定においてHI治療に対する有用な代替薬物療法となり得ることが示唆される。
新規薬物療法としてのサルビノリンA
KORアゴニストはおびただしい治療価値を示すが、ほとんどのKORアゴニストは、オピオイドとしてのそれらの内因特性のために、臨床設定で使用されていない(低い選択性および/または許容される安全性プロファイルの欠如)。他のオピオイドKORアゴニストとは異なり、サルビノリンAは、自然源に由来することが知られている、最も強力で、高選択的な、唯一の非オピオイド性KORアゴニストである。サルビノリンAはサルビア・ディビノラム、数世紀の間、娯楽および宗教的な目的のためにヒトによって消費されてきた自然に豊富な多年生草本の活性成分である。この化合物の多くの内因特性のために、様々な神経病状のための可能性のある治療的薬物療法となっている。それらの特性としては、豊富な植物から抽出および精製される、または合成により生成されるその能力、迅速な作用発現、脂質溶解度、血液脳関門を容易に通過すること、鎮静および抗侵害受容性効果(重病患者に特に適切な特徴)、高い用量または長期曝露での重要臓器における陰性病理学的所見(無毒性)、呼吸抑制なしおよび露骨な幻覚または不快効果なしが挙げられる。サルビノリンAはうつ病に対する可能性のある薬物療法として評価されてきた。HI発作前でのサルビノリンA投与の保護効果を証明する我々の所見に加えて、我々は今や、HI発作後のサルビノリンA投与(30分まで)は、軟膜動脈の自己調節を保存したことを証明した。この保護効果は、KORアンタゴニスト、nor−BINの添加により消失し、これにより、サルビノリンAの保護効果はKORにより媒介されることが示される。様々な研究が、自己調節、脳の重要保護メカニズムは、脳HI後に悪化する傾向があることを証明している。脳血管緊張の自己調節は、脳の重要保護メカニズムである。そして、低血圧中の代償性脳血管拡張の障害は、虚血性脳卒中の設定における悪化した転帰に寄与する。
ERKシグナル伝達の役割
脳虚血/再灌流により刺激されたERKシグナル伝達は、HI傷害に対する重大な経路である。我々は、ERK活性はHI後に増加し、増加はHIの神経細胞障害と関連し、そのような増加の阻害は虚血に対する神経保護応答と関連し、これはアポトーシスの低減と関連し得ることを証明した。この実施例では、HIにより誘導されたCSF ERK活性における増加はサルビノリンAによりブロックされ、これは発作後の脳自己調節の保護を促進した。HIにおけるERKシグナル伝達の役割は、HI発作前後で異なり得ることは注目に値する。ERKシグナル伝達の活性化は、プレコンディショニングの保護効果と関連し得る。プレコンディショニングにより誘導されるERKシグナル伝達の上方制御は、脳卒中における神経細胞アポトーシスを低減させ、致死下の虚血後の海馬におけるERKシグナル伝達の活性化は、プレコンディショニングにより誘導された神経保護と相関する。これらの結果は、サルビノリンAの傷害前投与は、発作後の脳自己調節の障害を保護することを証明する我々の研究と一致する。結論として、HI後0および30分でのサルビノリンA投与は、子ブタモデルにおいてKORおよびERK経路を介する高炭酸ガス血症および低血圧に対する軟膜動脈の自己調節を保存する。
実施例3
サルビノリンA前処置は、子ブタにおいてERK/MAPKを介する脳低酸素/虚血傷害後の脳血管自己調節を保存する
先天性心臓手術のための超低体温循環停止(DHCA)外科手術による心肺バイパス術中の脳血流の中断のための脳低酸素/虚血は重大な臨床的問題である。DHCAによる心肺バイパス術を受けた複合先天性心疾患を有する子供の50パーセントは、発達欠損、例えば学童期の言語障害および注意欠陥障害を有する。DHCA中に起きる脳低酸素/虚血は予想可能であり、よって、虚血により誘導される脳傷害を、薬理アプローチを用いて最小に抑えることが可能である。不運なことに、証明された臨床的有益性を有する薬理作用物質はまだ、同定されていない。
脳血管自己調節の損失は脳低酸素/虚血の重要な特徴の1つである。低血圧に対する自己調節の損失により圧力受動的脳循環となる可能性があり、これは、脳血流を減少させ、脳虚血をさらに悪化させる可能性がある。高炭酸ガス血症に対する脳血管調節の損失もまた、圧力受動的循環および脳室周囲白質軟化症の発症の一因となる。よって、虚血からの脳血管自己調節の保存は、虚血からの脳傷害を低減させるために非常に重要である。我々は、サルビノリンA、サルビア・ディビノラムの活性成分かつ非オピオイド性κオピオイド受容体(KOR)アゴニストは正常状態および病態において強力な脳血管拡張薬となることを証明した。よって、サルビノリンAは脳脈管構造を虚血から保護することができる。他のKORアゴニストとは異なり、サルビノリンAは、長く、異なる民族により様々な目的、例えば霊的体験および病気を「治療すること」のために使用されてきており、臨床的に許容される薬物療法としてのその高い可能が示される。
KORアゴニストの全身投与は脳虚血の動物モデルにおいて神経保護効果を有することが証明されている。KORアゴニストはマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)を活性化することができる。MAPKは重要な細胞内シグナル伝達系であり、これは細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、c−Jun−N末端キナーゼ(JNK)およびp38を含む。ERKカスケードの長期の持続的な活性化は脳虚血性プレコンディショニングの重要な寄与メカニズムであることが証明された。この経路はまた、多くの他の形態の薬理学的プレコンディショニング、例えばイソフルランおよびセボフルランに関与する。よって、サルビノリンAはこの経路を介する脳保護効果を生成し得る。上記証拠に基づき、我々は、サルビノリンA前処置は、MAPKの活性化を介して低酸素/虚血からの低血圧および高炭酸ガス血症に対する軟膜血管の自己調節を保存することができると仮定した。
方法
サルビノリンA(純度≧98)は、ChromaDex,Inc.(Irvine、CA、USA)製である。イソプロテレノール、U0126、sp600125およびsb203580を、Sigma−Aldrich(MO、セントルイス、MO、USA)から入手する。他の化学薬品も全て、Sigmaから入手し、これらは試薬グレードであった。
動物および外科手術
1〜5日齢子ブタを使用した。プロトコルはペンシルバニア大学(フィラデルフィア)の施設内実験動物委員会により認可された。イソフルラン(1〜2最小肺胞気濃度)を最初に誘導のために使用し、続いてα−クロラロースを麻酔の維持のために使用した(30〜100mg/kg、20〜30分毎に5〜30mg/kgで補充、IV)。気管切開後、子ブタを機械的に室内空気で換気させ、加熱パッドで温め続け、直腸温度を37〜39℃で維持した。大腿動脈を、連続血圧モニタリングまたは間欠的血液ガスモニタリングのためにカニューレ処置し、大腿静脈を薬物療法投与のためにカテーテル処置した。前に記載されるように(21)、閉鎖頭蓋窓を直接軟膜動脈可視化および直径測定のために配置した(21)。小軟膜動脈(120〜160μm)および細動脈(50〜70μm)を顕微鏡下で同定し、顕微鏡に接続されたモニタ上で可視化し、ビデオマイクロスケーラ(モデルVPA550、For−A−Corp.、ロサンゼルス、CA)により測定した。頭蓋窓は、ガラス製カバーガラスを有する鋼リングであり、脳脊髄液(CSF)サンプリング、洗い流しおよび医薬投与のための3つのポートに接続されている。皮質周囲くも膜CSFを、上記ポートの1つを通して、ベースラインおよびサルビノリンAまたはU0126+サルビノリンAの投与後30分に、ERK/MAPK分析のために収集した。
プロトコル
低酸素を10分間、換気のための室内空気をN2に切り換えることにより誘導し、続いて換気を室内空気に回復させ;その後、全脳虚血を中空ボルトを介して頭蓋内に生理食塩水を注入し、頭蓋内圧を平均血圧より高く20分間維持することにより誘導した。全虚血を、軟膜動脈中の血流が、頭蓋窓上方の顕微鏡に接続されたモニタ上で、止まったことが見えた時に確認する。クッシング応答(高い頭蓋内圧のために、動脈圧が劇的に上昇する)を回避するために、必要とあれば、平均動脈圧を100mmHg以下に維持するために、血液を取り除いた。血液を虚血の終わりに大腿静脈を介して戻した。
5組の実験を実施した(実験の各組においてn=5):(1)低酸素/虚血、サルビノリンAのビヒクル、DMSO、1μl/kgを低酸素/虚血前30分に投与;(2)低酸素/虚血、サルビノリンA、1μ/μlを含むDMSO、10μg/kg i.v.;(3)低酸素/虚血、サルビノリンA(10μg/kg i.v.)およびU0126(1mg/kg、i.v.)、ERKの上流のプロテインキナーゼのための阻害剤、(4)低酸素/虚血、サルビノリンAおよびsp600125(1μΜ、頭蓋窓の1つのポートを通して局所的に注射)、JNKの阻害剤、(5)低酸素/虚血、サルビノリンAおよびsb203580(10μΜ、頭蓋窓の1つのポートを通して局所的に注射)、P38の阻害剤。U0126、sp600125およびsb203580をサルビノリンA30分前に投与する。Sp600125およびsb203580を血管作動性刺激と共に共投与し、傷害後、脳皮質表面の曝露を続けさせた。
高炭酸ガス血症(低レベルでは50〜60mmHgのPaCO、高レベルでは70〜80mmHg)を、高濃度CO混合ガスの吸入により生成させた(10%CO;21%0;69%N)。低血圧を、血液を大腿動脈から取り出すことにより生成させた(中等度として平均血圧の25%減少および重度として45%)。低血圧、高炭酸ガス血症、およびイソプロテレノール(10nM、1μΜ)に対する軟膜動脈応答を、前に記載されるように、低酸素/虚血前、傷害後60分に取得した。
ERKおよびpERK測定
脳低酸素/虚血に関するサルビノリンAの観察された効果に対するERKの役割を試験するために、CSF試料をMAPKのために回収した。MAPKアイソフォームを、市販のELISAキットにより測定した(Enzo Life Sciences International、Inc.、プリマスミーティング、PA)。
統計解析
軟膜動脈直径に関する高炭酸ガス血症、低血圧、およびイソプロテレノールに対する軟膜動脈応答への脳低酸素/虚血の効果の調査のために取得したデータを、Greenhouse Geisser補正を有する反復測定ANOVAにより解析した。ボンフェローニ補正を、全てのポストホック解析のために使用した(各刺激に対して10の比較)。5つの異なる処置(DMSO、SA、SB203580、U0126、およびSP600125)を群間の比較のための因子とし、低酸素/虚血前後の3つの刺激に対する4回の測定を反復測定因子として使用した(5×4×3×2)。ベースラインは反復測定解析に含めなかった。同じ統計学的方法をpERK/ERKデータに対して使用し、サルビノリンAの投与前後の比変化、群間因子として3つの異なる処置(DMSO、SAおよびSA+U0126)、反復測定因子として時間(SA前、および後30分)を比較した。P<0.05のαレベルを全ての統計検定において有意と考えた。全ての値は平均±標準誤差として表される。この実施例で報告された全てのP値は、多重比較の効果に対して補正された。サンプルサイズはこの実施例ではかなり小さいが、相互作用の欠如、分散の均質性、および正規分布の仮定の見かけの侵害はなかった。
結果
サルビノリンAは低酸素/虚血後の低血圧に対する軟膜動脈自己調節を保存した
図17に示されるように、小軟膜動脈は、低酸素/虚血前のベースラインで、2つのレベルの低血圧に対し拡張したが、拡大応答は低酸素/虚血後著しく減少した(p<0.001、低酸素/虚血前に比べて)。サルビノリンAによる前処置(10μg/kg、iv.)は、低血圧に対する軟膜動脈の拡張応答を保存した。これはU0126、ERKのアンタゴニストにより消失する(p<0.001、SA群と比較して)。しかしながら、SP600125(JNKのアンタゴニスト、p>0.05、SA群と比較して)およびSB203580(P38のアンタゴニスト、p>0.05、SA群と比較して)の処置後(サルビノリンAの投与前30分に投与された)、有意の変化はなかった。同様の観察が軟膜細動脈において得られた(データ示さず)。
サルビノリンAは低酸素/虚血後の高炭酸ガス血症に対する軟膜動脈自己調節を保存した
低血圧に対する応答と同様に、小軟膜動脈は、低酸素/虚血前のベースラインで、2つのレベルの高炭酸ガス血症に対し拡張した(図18)。拡大応答は低酸素/虚血後鈍くなった。サルビノリンAによる前処置(10μg/kg、iv.)は、高炭酸ガス血症に対する軟膜動脈の拡張応答を保存した。これは、U0126、ERKのアンタゴニストにより消失する。サルビノリンAの投与前30分に投与されたSP600125およびSB203580からは保存効果において有意の変化は観察されなかった(P>0.05)。同様の観察が軟膜細動脈において得られた(データ示さず)。
イソプロテレノールに対する軟膜動脈応答は実験の全ての組において不変であった
陽性対照として、図19に示されるように、イソプロテレノールに対する軟膜動脈応答は全ての群において、低酸素/虚血前後で、上記介入ありまたはなしで、不変であった。
ERKはサルビノリンAの保存効果に関与した
CSF中のpERK/ERKの比はサルビノリンA前処置後30分に著しく増加した(図20)。しかしながら、U0126、ERKのアンタゴニストがサルビノリン投与前30分に投与された場合、pERK/ERKの比はサルビノリンA前処置後30分に不変であった(図20)。
論考
この実施例では、2つの主要な新しい所見がある。第1に、サルビノリンAの前処置は低酸素/虚血後に脳血管自己調節能力を保存した。第2に、ERK/MAPKは、サルビノリンAの自己調節を保存する能力に関与する。この実施例はまた、新生子ブタにおける全低酸素/虚血は、低血圧および高炭酸ガス血症に対する脳血管応答の自己調節能力を鈍らせるという初期の所見を確認した。
乳幼児における脳低酸素/虚血に対する病態生理学的応答は完全に解明されていないが、脳血管機能不全は、低酸素/虚血後神経発作において非常に重要な役割を果たす。脳傷害に続発する低血圧および高炭酸ガス血症に対する脳血管自己調節応答を防止または保存する最適薬理学的介入はない。脳卒中のために食品医薬品局により認可された唯一の薬物療法は、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)である。しかしながら、その凝固した血管を再開させるのに有益な役割にもかかわらず、tPAはマウスにおいて脳卒中梗塞体積を増加させ、それは低酸素/虚血により誘導される自己調節の障害を増強する。L−NNA、一酸化窒素合成の阻害剤は、虚血後に投与されると脳血管自己調節を回復させることができることが証明されたが、しかしながら、その安全性プロファイルは臨床用途のためには不明である。
この実施例では、我々は、サルビノリンA前処置は子ブタモデルにおいて、低酸素/虚血後の低血圧および高炭酸ガス血症への自己調節応答を保存したことを証明し、これは、とりわけ、乳幼児におけるDHCA中に予測される脳虚血に対して、脳低酸素/虚血を減弱させるためのその臨床適用を開く。低酸素/虚血からの神経細胞傷害を減弱させることができるかどうかを証明するための直接的証拠を提供するために、さらなる研究が必要とされる。
証明された臨床的価値を有さない他のKOR受容体とは異なり、サルビノリンAは、豊富な天然植物、サルビア・ディビノラムから抽出される。アヘンの歴史と非常に類似して、自然に豊富な植物としてのサルビア・ディビノラムは人間により様々な目的のために、何世紀にもわたり使用されてきた。サルビノリンA、サルビア・ディビノラムの活性成分は、臨床診療において使用される可能性のある新しいκアゴニストとなるであろうことが提案されてきた。
サルビノリンAは、我々が証明したように、正常および狭窄状態において強力な脳血管拡張薬である。しかしながら、この拡大効果は連続投与がない限り一時的なものであり;よって、自己調節の保存は拡大効果から誘導されるものとは異なり、というのも、サルビノリンは低酸素/虚血前30分に投与されたからである。MAPKは細胞表面から核へのシグナル伝達において重要であることが証明されている。虚血前のERK/MAPKの上昇は虚血後の神経生存と関連する(15)。致死下の虚血後の海馬CA1領域におけるERK/MAPKの活性化は、プレコンディショニングにより誘導された神経保護と相関する。運動プレコンディショニングは、ERK/MAPKを上方制御することにより、脳卒中における神経細胞アポトーシスを低減させる。この実施例では、CSF中のpERK/ERKは、サルビノリンAの投与後30分に著しく増加し、ERKの活性化が示され、また、サルビノリンAは脳虚血前に投与されると血管または神経保護となり得ることが示唆される。しかしながら、他の研究は、傷害直後再灌流期間でのERK/MAPKの上昇が、子ブタにおける、低酸素/虚血後の脳血管拡張薬への応答の障害ならびに病理組織診断と関連することを観察した(32)。ERK/MAPK機能の観察された二様性に対する理由は不確かであるが、起始細胞部位、シグナル結合、または放出の時間的パターンに関連し得る。
この実施例で使用した新生子ブタは実質的な白質を含む皺脳の特有の利点を提供し、これは、齧歯類脳よりも、虚血性ダメージに対しより感受性であり、よりヒトに類似する。結論として、サルビノリンA前処置は子ブタモデルにおいて、ERK/MAPKによる脳低酸素/虚血後の低血圧および高炭酸ガス血症に対する脳血管自己調節を保存した。
実施例4
困難な気道管理のための補助的薬物療法としてのサルビノリン
困難な気道が問題となっているが、部分鎮静が患者の快適性および手順の実施を促進する場合、我々はしばしば覚醒(無麻酔)状態で患者の気道を管理しなければならない。理想的な鎮静は下記基準を満たさなければならない:(1)鎮静である;(2)迅速な作用発現を有する;(3)短時間作用である;(4)咳嗽を阻害する;(5)最小呼吸阻害を有する;(6)最小血行動態効果を有する、ならびに(7)静脈内送達が容易である。サルビノリンAは、少なくとも文献で入手可能なデータに基づき、これらの基準を満たす。それは、鎮静および解離効果を有し、咳を阻害し、少なくとも従来のμ受容体アゴニスト(モルヒネ)と比べて最小呼吸抑制効果を有する、κオピオイド受容体アゴニストである。それは迅速な作用発現および消失を有し、最小血行動態変化を伴う。よって、サルビノリンは覚醒時挿管中有用なものとなり得る。しかしながら、サルビノリンは水に溶解しにくい。1つの選択肢は、水溶性を増加させるためにその塩形態を使用するものであり、他の選択肢は、脂質エマルジョンを使用するものである。どちらの技術も、容易に使用可能であり、周術期設定において、他の麻酔薬物のためにうまく使用されてきた。ククルビツリル(図11)は担体として使用することができた。図12〜13に示されるように、サルビノリンおよびククルビツリルの複合体が使用され得る。
この薬物療法に関連する別の懸念はその不快効果であり、これはミダゾラムのような短時間作用ベンゾジアゼピンで対処することができる。
実施例5
サルビノリンAは新生仔マウス低酸素モデルにおいて、死亡率を減少させ、神経学的転帰を改善する
新生仔低酸素−虚血(HI)傷害は高い死亡率および生涯の破局的神経学的および神経発達欠損(てんかん、学習障害、および行動障害を含む)を誘導する可能性がある。不運なことに、HI関連神経障害を管理するために使用可能な有効な薬物はない。支持的治療と一緒の低体温療法が唯一の有効なアプローチであると考えられる。しかしながら、よく制御された低体温は確立された施設における厳選された患者集団に適用可能であるにすぎず、仮死乳幼児においてたった約30%の転帰改善しか生成され得ない。大規模な訓練および集学的協力が要求される。資源不足の施設では、低体温療法は危険となる可能性があり、死亡率、多臓器不全、心突然死、肺高血圧、および失血の発生率の増加に至る。よって、周産期における脳HIからの神経細胞傷害を低減させるための新規薬物療法および/または容易に管理可能な治療戦略を開発することが著しく医学的に要求される。
サルビノリンA(SA)は、サルビア・ディビノラム、ヒトにより数世紀の間消費されてきた植物から抽出される、非オピオイド性の、高選択的で強力なκオピオイド受容体(KOR)アゴニストである。子ブタモデルを使用して、脳HI前または後でのSA投与は、脳をHIから保護することが以前に証明されており(Su D, et al.,Anesth Analg. 2012; 114:200−204; Su D, et al., Anesthesiology. 2011;114:374−379;およびWang Z, et al., PLoS One. 2012;7:e41724;各々がこれによりその全体が参照により組み込まれる)、SAは、新生児のための脳保護のための可能性のある薬物療法となり得ることが示される。他のオピオイドKORアゴニストとは異なり、SAは言語障害を生成させず、その内因特性により、様々な神経病状に対する理想的な治療薬候補となっている。これらの特性としては下記が挙げられる:迅速な作用発現、中枢神経系への容易な通過、抗侵害受容性および鎮静効果、長期または高用量曝露後の臓器における負の病理学的変化なし、および呼吸抑制効果なし。化合物は幻覚発現活性を有することが報告されているが、そのような効果は一時的であり、血圧および心拍数変化または認知障害を生成させない。最近のヒト研究では、SAに関連する持続性の有害作用は観察されなかった。
この実施例では、我々は、SA投与は新生仔マウス低酸素モデルにおける転帰を改善することができると仮定した。マウスモデルを、確立したモデルの利用能、神経行動テスト戦略ならびに短期および長期神経学的転帰の両方を調査する能力のために選択した。
被験体および方法
サルビノリンA(純度≧98%)を、Apple Pharms(Asheville NC、USA)から取得した。全ての他の化学薬品(試薬グレード)を、Sigma−Aldrich(MO、セントルイス、MO、USA)から取得した。
実験プロトコル
プロトコルはペンシルバニア大学の施設内実験動物委員会(IACUC)により認可され、動物の使用のための国立衛生研究所ガイドラインにしたがい実施した。C57BL/6Jマウスを、The Jackson Laboratory(バーハーバー、ME)から購入し、同系交配子をその後の実験のために使用した。子を、研究を通して、出生後12時間明/暗サイクル下で、食物および水を自由に与えて収容した。異なる同腹仔からの子を3つの群に無作為に分けた。対照群中の子(n=11)は、低酸素発作なしで、17%ジメチルスルホキシド(DMSO)のi.p.注射を受けた;低酸素群(n=46)は17%DMSOのi.p.注射および低酸素発作を受けた;SA群(n=26)は0.5mg/kg SAを含む17%DMSOのi.p.注射および低酸素発作を受けた。低体重(<1.2g)の子を研究から排除した。
低酸素発作
低酸素発作を出生後第1日に誘導した。i.p.注射後、子を水浴中のガラスチャンバに入れ、そこでは、温度は、37℃で維持された。チャンバを密閉し、8%酸素および残り窒素で充填した。120分の低酸素ガス曝露後、チャンバを開き、子を空気に曝露させた。胸部圧迫および四肢ストレッチを20分までの間実施し、自発呼吸を回復させた。自発呼吸をうまく回復した子をその後、30分間の回復の後、それらの母親に戻した。
死亡率決定
新生仔マウスは、無酸素性発作の直後20分蘇生の間自発呼吸を回復させることができない場合、生存していないと考えられる。死亡率は、下記として計算されるであろう:生存率=(群内のマウスの数−非生存の数)/群内のマウスの数。
短期発達運動行動観察
出生後第2日から出生後第21日まで、子を体重測定し、運動行動観察を毎日実施した。子を個々にプラスチック試験箱内で観察した。下記行動の各々を3分間記録した:腹這い、歩行、走ること、頭を向けることおよび嗅ぐこと、座ること、立ち上がりならびに開眼。観察後、踏み直り反射、断崖回避、負の走地性、正向反射および前肢掴みテストを実施した。2日連続で続いた行動または反射の最初の出現を記録した。
SAの長期神経行動効果
マウスが若齢と考えられる出生後第21日での自発運動活性を計測するために、オープンフィールドテストを実施した。マウスを個々に、41cm(L)×41cm(W)×30cm(H)プラスチック箱に入れた。「中心エリア」を、箱の中心の20.5cm×20.5cmの正方形として規定した。残りのエリアを、「周辺エリア」として規定した(図25Aを参照されたい)。各マウスが中心および周辺部分を探索するのに費やした時間および各個々のエリアでの立ち上がり行動の数を最初の5分および30分間記録した。
10〜11週齢で、全てのマウスを、下記の順で、いくつかの行動タスクを試験した:ゼロ迷路、バーンズ迷路および恐怖条件づけ。マウスの基礎不安レベル、自然な自発運動活性、運動学習、空間学習および連合記憶を調査するために、これらのタスクを実施した。マウスには各行動テスト間の休息のために5日を与えた。
ゼロ迷路(不安様行動):「オープンにいる時間」は、それらのオープン空間を回避する傾向によるマウス不安を測定する。不安をオープン対エンクローズド空間で費やした時間を記録することにより測定した。不安増加はオープン内にいる時間の減少と相関する。オープン/クローズド移行は全体の活性を測定する。移行増加は、より大きな活性と同等である。
バーンズ迷路(空間学習):視覚的合図を用いて学習する能力を測定する。標的までの時間は19の他の穴およびいくつかの視覚的合図を有するアリーナにおいて標的穴を見つけるのにかかる時間を測定する。バーンズ迷路は設定がより用意で、おそらく、ストレスがより少なく、空間記憶を研究するための水迷路の有効な代案となる。バーンズ迷路タスクの利点の1つは、他の同様のタスクほど、ストレスにより影響されず、強い嫌悪刺激または剥奪が使用されなかったことであった。
恐怖条件づけ(記憶):低酸素傷害後の記憶欠損を調査し、評価するために、訓練試行すくみ、短期文脈すくみ、長期文脈すくみおよび合図試行すくみを記録した。
統計解析
異なる群における子の死亡率を2×2分割表を使用して比較した。P値をフィッシャー直接検定を用いて計算した。運動行動観察では、各パラメータに対する最初の出現日を一元配置ANOVA、続いてテューキーの検定を用いて比較した。統計解析をGraph−Pad Prism(バージョン5.0)を用いて実施した。データを平均±SEMとして示した。p<0.05の値は、統計的に有意であると考えた。
結果
SAは死亡率を著しく減少させた
低酸素群における46の子のうちの14およびSA群における26の子のうちの16が、HI傷害後生存した。SAは、死亡率を70%から38.5%まで著しく減少させた(p=0.014)(図21)。
SAは出生後第2日および第3日の体重を増加させた
SA投与は、低酸素群に比べて、出生後第2日(P2)(p=0.0318)および3日(P3)(p=0.0221)に体重を増加させた。しかしながら、P7、P14およびP21では、群間で有意の差は観察されなかった(図22)。
SAは発達転帰を改善した
低酸素群の子は、前肢掴み、断崖回避、正向反射および開眼の出現の遅れを示した。SA投与は、これらの遅延を防止した(図23)。
低酸素の子は、対照群における18.18±0.44日に比べ、19.86±0.29日に補助なしでの立ち上がりの出現の遅れ(図24I)を示した(p=0.0034)。SA投与を有する低酸素の子は、低酸素の子よりも、18.69±0.38で著しく改善された成績を提示し(p=0.0252)、これは、対照群と同様である。しかしながら、他の発達パラメータ、例えば腹這い(図24A)、歩行(図24B)、走ること(図24C)、頭を向けるおよび嗅ぐこと(図24D)、座ること(図24E)、補助ありの立ち上がり(図24F)、負の走地性試験(図24G)ならびに踏み直り反射(図24H)については、統計学的有意性はなかったが、低酸素の子はまた、対照およびSA群の両方に比べ、出現の遅れを示した。
長期神経行動転帰
SAマウスは、オープンフィールドテスト中、P21に、中心エリアでより多くの時間を費やしたが、この差は、統計的に有意ではなかった(図25)。一方、P21での、最初の5分および30分における立ち上がりテストは、低酸素後害された。この障害は、SA投与では観察されず、対照群と同様であり、SAは低酸素により誘導される神経学的転帰を改善することができることが示唆される(それぞれ、p=0.0167およびp=0.0203)(図26)。
HI後の抗不安特性に関するSAの効果を、高架式ゼロ迷路を使用して試験した。SAと低酸素群の間で、迷路のオープンアームおよびオープン/クローズド移行において費やした時間のパーセンテージの有意の差はなかった(図27A、B)。バーンズ迷路タスクを使用して、空間記憶欠損を評価した。しかしながら、群間で有意の差はなかった(図27CおよびD)。また、恐怖条件づけのテストは、全ての群は同様の速度で学習し、いずれの群間でも有意の差は観察されなかったことを示した(図28)。
論考
この実施例では、我々は、低酸素前のSA投与は死亡率を低減させ、いくつかの神経発達パラメータを改善することを見出した。しかしながら、21日を超えると神経学的転帰に対して有意の差は群間で観察されなかった。この実施例における所見は、SAはHIにより誘導される傷害を低減させることができることを明らかにした、子ブタにおける研究と一致する。
SAおよび低酸素発作後の死亡率
死亡率の低減はこの研究において最も印象的な所見の1つである。これは、SAの神経保護効果によるものであるが、SAは心臓のような他の重要臓器において、低酸素発作中に保護効果を提供できることが可能である。KORアゴニストは心臓を虚血から保護することが証明されている。さらに、SAを可能性のある治療薬として使用する明確な標的研究が将来の研究のために必要とされる。このモデルに対する対照群における死亡率は非常に高く(70%)、これは改変Rice−Vannucciモデルを用いて報告されたものよりも高い。可能性のある説明は、Rice−Vannucciモデルにおいて使用された出生後第10日の代わりに、我々の研究では出生後第1日の子を使用したことと関連し得る。高い死亡率のために、我々は研究の設計を、用量応答研究および治療時間窓調査またはメカニズム研究なしで、神経転帰観察のために比較的簡単なままとした。
短期発達転帰
神経発達行動および反射(正向、踏み直り、負の走地性および断崖回避)の欠損により示されるように、神経発達は低酸素発作により害された。SAは発達行動(前肢掴み、開眼および補助なしでの立ち上がり)のいくつかおよび反射(正向および断崖回避)のいくつかを改善した。いくつかの著しい改善が観察されたが、我々は、SAは脳の様々な領域に関連する発達パラメータの全ての観点に対しては神経保護を提供しなかったことを見出した。全ての観察が行動のわずかな変化を検出するには十分高感度であるわけではない可能性があり、その場合は、かなり大きなサンプルサイズが必要とされ得る。
長期神経転帰
10〜11週(成体年齢)での長期の、脳機能およびSAの情動性行動への影響を計測するために、我々は不安レベルを測定するためにゼロ迷路、空間および視覚学習を測定するためにバーンズ迷路、および連合記憶を測定するために恐怖条件づけを選択した。不運なことに、群間で有意の差はなかった。最も重要なことには、対照と低酸素群間で長期神経転帰の差は見出されず、このモデルは長期神経転帰研究には好適ではない可能性があることが示される。他の報告により、SAは、短期記憶に影響を与えずに、長期記憶を害することが示されているが、この研究ではSA投与後に、記憶または学習障害は観察されていない。
結論
この実施例では、SAの投与は低酸素傷害後の、いくつかの態様における神経学的転帰の改善および低減した死亡率と関連し、SAは、新生児低酸素のための治療戦略として機能することができることが示唆される。
実施例6
鼻腔内サルビノリンAは、マウス脳卒中モデルにおいて、梗塞サイズを低減させ、神経学的転帰を改善する
サルビノリンA(SA)は、ヒトにより何世紀にもわたって消費されてきた、公知の安全性プロファイルを有する、唯一の公知の天然起源の非オピオイド性KORアゴニストである。これは、粘膜または吸入のいずれかにより送達されると、迅速な作用発現(数分以内)を有する。SA鼻腔内は、静脈内(IV)アクセスが使用できない(病院外心停止イベントに対して非常に一般的である)急性状況で迅速に実施することができる。虚血性脳卒中のための有効な療法に対する主な障壁はどれだけ迅速に薬物療法を患者に送達させることができるかである。IV投与は迅速な作用発現を確保するが、病院外状況では、IVアクセスは一般に使用できない。経口投与は一般に、薬理学的効果が達成されるのに30分超を必要とする。よって、迅速鼻腔内治療薬送達により、SAは、脳低酸素/虚血性イベントを治療するための非常に実用的で好都合な薬物療法となるであろう。
この実施例は、SAの鼻腔内投与は、マウス脳卒中モデルにおいて、梗塞サイズを低減させ、神経転帰を改善したことを証明する。図29は使用したプロトコルを示す。簡単に言うと、中大脳動脈閉塞(MCAO)をマウスにおいて誘導し、示された用量のサルビノリンAを含むDMSOを鼻腔内に投与した。マウスを24時間の間再灌流させ、その後、マウスを安楽死させ、梗塞サイズおよび血管漏出を測定した。サルビノリンA投与は、握力スコアにより測定される運動機能(図30)および神経行動(図31)において用量依存的改善を示した。サルビノリンAの鼻腔内投与により、脳のTTC染色における白色梗塞面積の低減により見てわかるように、梗塞サイズの用量依存的低減も得られた(保護効果が250μg/kgの用量で減少したことを除く)(図32および33)。エバンスブルー血管外漏出は脳の虚血および再灌流後の血液脳関門破壊および血管漏出を示した。鼻腔内サルビノリンA投与は破壊および漏出を低減させたが、κ受容体アンタゴニストノルビナルトルフィミン(norbin)の投与は、サルビノリンAの保護効果を阻害した(図34)。鼻腔内サルビノリンAは図35に示されるように全運動機能を改善する。サルビノリンAが投与されなかったマウス(地面上のマウス)は正常に歩くことができず、というのも、左側はMCAO後24時間麻痺したからであり;鼻腔内サルビノリンAが投与されたマウス(紐上のマウス)は吊り紐をゆっくり動くことができる。
サルビノリンAの鼻腔内投与は、迅速薬物送達のための静脈内アクセスの必要性を回避し、薬物療法を患者に送達する時間を低減させ、脳をうまく保護する可能性を増加させる。というのも、虚血性脳傷害のための治療可能時間域は非常に狭いからである。
実施例7
へルキノリンは子ブタモデルにおいてκオピオイド受容体および環状アデノシン一リン酸(cAMP)を介して脳血管を拡張する
へルキノリンは、構造的に関連する化合物サルビノリンAから誘導された、第1の非オピオイド性μアゴニストである。κオピオイド受容体活性化は軟膜動脈拡張を誘発し、サルビノリンAは一酸化窒素シンターゼ、κ受容体、およびアデノシン三リン酸−感受性カリウムチャネルを活性化する強力な脳脈管構造拡張薬であるので、へルキノリンもまた、脳血管拡張を誘発する可能性がある。へルキノリンは、競合結合アッセイにおいて、κ受容体よりもμに対しおよそ8倍の選択性およびδ受容体よりもμに対しおよそ98倍の選択性を有する。よって、そのμアゴニズムが、非オピオイド性受容体アゴニストとしてのそれらの可能性のある臨床的意味のために、このカテゴリ由来の化合物の脳脈管構造効果において何らかの役割を果たすかどうかを解明することが重要である。
cAMPはオピオイド受容体の下流の重要なモジュレーターであり(LiuおよびAnand、2001)およびcAMPシグナル伝達の活性化は、血管平滑筋弛緩を誘発し、ブタ脳における脳血管拡張が得られる。加えて、オピオイド受容体アンタゴニストの投与はcAMP類似体誘導軟膜を減弱させ、cAMP媒介とオピオイド媒介血管拡張の間の可能性のある関連が示唆される。へルキノリンは、cAMP経路を介して脳血管拡張を誘導できるということはあり得る。
ここで、我々は、へルキノリン、サルビノリンAから誘導された第1の非オピオイド性μアゴニストは、μおよびκオピオイド受容体およびcAMP経路を介して、脳脈管構造を拡張することができると仮定した。この仮説は、サルビノリンAと関連する我々の以前の研究と区別される。というのも、その、高選択的κオピオイド受容体アゴニストサルビノリンAとの構造類似性にも関わらず、へルキノリンはμ受容体アゴニストとして分類されるからである。
実験手順
へルキノリン(純度≧99%)を、Ascent Scientific LLC(ケンブリッジ、MA、USA)から取得した。イソプロテレノール、NTP、β−FNA、Rp−cAMPSおよびSp−8−Br−2’−O−Me−cAMPS(Sp−cAMPS)を、Sigma−Aldrich(セントルイス、MO、USA)から購入した。全ての他の化学薬品は試薬グレードであり、同様に、Sigmaから取得した。
インビトロ親和性決定
クローン化ラットκ受容体およびクローン化ヒトμ受容体でトランスフェクトされた細胞株を前に記載されるように、親和性決定のために使用した。[3H]U69593、強力なκ受容体アゴニスト、および[3H]DAMGO、μ受容体アゴニストを試験化合物の競合者として使用した。へルキノリンを、DMSO中の1mg/mlストックとして調製した。サルビノリンAの同様のストック(陽性対照)もまた、調製した。Ki決定を、国立精神保健研究所の向精神薬スクリーニングプログラムで実施した(契約番号HHSN−271−2008−00025−C、NIMH PDSP;http://pdsp.med.unc.edu/)。
コンピューターによるドッキングを用いた結合部位位置決め
ドッキング計算を、前に記載されるようにDockingServerを使用して実施し(http://www.dockingserver.com)、リガンド結合部位を位置決めした。へルキノリン座標をPubChemサーバからダウンロードした(http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/)。マウスμオピオイド受容体(PDBコード:4DKLおよびκオピオイド受容体(PDBコード:4DJH)の高分解能構造の座標を、タンパク質データバンク(PDB)サーバからダウンロードした。我々はGasteiger部分電荷を、へルキノリン原子にサーバを介して付加した。30×30×30Åグリッド点および0.375Å空間の親和性(グリッド)マップをこの研究で使用した。ドッキング結果のトップタンクのポーズ(top tanked pose)を使用して、各受容体に対するリガンドの重なりを比較した。我々はPyMOL(http://www.pymol.org/, Version 1.3, Schrodinger, LLC)を使用し、グラフィカルレンダリングを作製した。
動物および外科手術
両方の性別の新生ブタ(6日までの齢、1.1〜2.0kg)をこの研究のために使用した。プロトコルはペンシルバニア大学(フィラデルフィア)の施設内実験動物委員会により認可された。新生子ブタモデルを使用した。というのも、その脳は皺脳であり、灰白質よりも多くの白質を含み、これはヒトと同様であるからである。さらに、頭部は、頭蓋窓の挿入および血管可視化のために十分大きい。動物を、イソフルラン(1〜2最小肺胞気濃度)で誘導し、α−クロラロースで維持した(80〜100mg/kg、5mg/kg・hで補充、IV)。どちらの大腿動脈もカテーテル処置し、血圧および血液ガスをモニタし、一定の二酸化炭素およびpHを維持した。カテーテルを、薬物療法投与のために右大腿静脈中に挿入した。動物を気管挿管後室内空気で換気させた。加熱パッドを使用して、動物の直腸温度を37〜39℃で維持した。子ブタの頭部の上部の閉鎖頭蓋窓を直接軟膜動脈可視化および直径測定のために配置した。閉鎖頭蓋窓は3つの部分から構成された:ステンレス鋼リング、円形ガラス製カバーガラス、およびステンレス鋼リング内の3つのプレカット穴に取り付けられた17ゲージ皮下針から構成される3つのポート。CSFを、いくつかの動物におけるcAMP測定のために、頭蓋窓ポートを通して収集した。窓下の空間を下記組成を有する(mMで表される)人工CSFで充填した:3.0KCl;1.5MgCl;1.5塩化カルシウム;132NaCl;6.6尿素;3.7デキストロース;24.6NaHCO;pH7.33;PaCO、46mmHg;およびPO43mmHg。人工CSFを37〜38℃まで温め、その後、脳皮質表面に適用した。軟膜動脈を、解剖顕微鏡上に載置されたビデオカメラを用いて観察した。血管直径をビデオマイクロスケーラを有するカメラに接続されたビデオモニタから(VPA550;For−A−Corp.、ロサンゼルス、CA)、薬物療法を投与した研究者によって測定した。
プロトコル
2つの型の軟膜血管、小動脈(安静直径120〜160μm)および細動脈(安静直径50〜70μm)を、調査薬物ありまたはなしの人工CSFの注射後、30秒毎にモニタし記録した。典型的には、窓を1〜2mlのCSFでポートを通して30秒にフラッシングした。へルキノリン(0.1nMおよび10nΜ、DMSOで溶解)およびイソプロテレノール(10nMおよび1μΜ)に対する応答を、β−FNA、NTP、Sp−cAMPSおよびRp−cAMPSありまたはなしで取得した。試験した薬物溶液は全て使用日に新たに作製した。
cAMPアッセイ
脳皮質周囲くも膜CSF試料をへルキノリンおよびNTPの投与前および後10分に収集し、cAMPレベルを測定した。人工CSFを徐々に、窓の1つのポートに注入し、CSFを反対のポート上の採集管中に自由に滴下させた。市販のELISAキット(Assay Designs、アナーバー、MI)を使用してcAMP濃度を定量した。
統計解析
全てのデータを一元配置ANOVA(両側)、続いてボンフェローニポストホックテストまたはダネット多重比較検定を用いて解析した(Windows(登録商標)に対してSPSS11.0)。P<0.05のαレベルを全ての統計検定において有意と考えた。全ての値は平均±標準誤差として表される。論文で報告される全てのP値は多重比較の効果に対して補正した。この研究におけるサンプルサイズはかなり小さかったが、相互作用の欠如、分散の均質性、および正規分布の仮定の見かけの侵害はなかった。
結果
μおよびκ受容体とのへルキノリン結合
図36Aに示されるように、へルキノリンは、DAMGO(K=2.5nM)に比べると、μ受容体と比較的弱い結合親和性を有する(K=45nM)。へルキノリンの結合部位は、β−FNA、図36Bに示される結晶構造の選択的μオピオイド受容体リガンドのそれと重なる。同様に、へルキノリンは、U69593(K=0.8nM、図37A)と比べると、κ受容体と比較的弱い親和性を有し(Ki=184nM)、結合部位はJDTic、図37Bで示される結晶構造の選択的κ受容体リガンドと重なる。μ受容体に対するへルキノリンの結合親和性は、κ受容体に対してよりも、およそ4倍強い。
へルキノリンは投与されるとκ受容体依存性血管拡張を誘導した
軟膜動脈直径はへルキノリン投与後、著しい全身血圧変動なしで増加した。0.1nMへルキノリンの適用は、10.6%直径拡張を誘導し、一方、10nMへルキノリンは平均して17.8%直径拡張を誘導した。拡張効果は全体として、ノルビナルトルフィミン(NTP)、κ受容体アンタゴニストにより消失した(図38A、Ps<0.05、へルキノリン投与群と比較して)が、β−FNAにより影響されなかった(図38B)。イソプロテレノールに誘導された軟膜動脈拡張はNTPまたはβ−FNAによって不変であった。β−FNAはそれ自体、最小軟膜動脈拡張を誘発した(P<0.05、ダネット多重比較検定)。これらの結果により、へルキノリンに誘導された血管拡張は、μオピオイド受容体ではなく、κオピオイド受容体により媒介されることが示される。
へルキノリンによる軟膜動脈拡張はcAMPシグナル伝達により媒介された
へルキノリンの投与はCSF中のcAMPレベルを著しく増加させた。上昇したcAMPレベルはNTPによりブロックされたが、β−FNA投与後では影響されなかった(図39A)。さらに、PKAアンタゴニストRp−cAMPSはへルキノリン媒介軟膜動脈拡張を鈍くした。10μΜRp−cAMPSの0.1nMまたは10nMへルキノリンとの共投与は軟膜動脈直径の変化を減弱させた(図39B)。cAMP類似体Sp−cAMPSにより誘導された動脈拡張は、イソプロテレノールと同様である(Ps>0.05)。これらのデータにより、cAMP/PKA経路はへルキノリン媒介脳血管拡張を調節することが示唆される。
この実施例では少なくとも3つの所見が存在する。第1に、へルキノリンは、非オピオイド性μ受容体アゴニストとしてのその分類にも関わらず、強力な軟膜動脈拡張薬である。第2に、へルキノリンに誘導された軟膜動脈拡張効果はκオピオイド受容体を介して調節される。μオピオイド受容体の有意の関与は観察されない。第3に、cAMPは、前にκアゴニストにより誘導された脳血管拡大に関与することが証明される。この研究はまた、へルキノリンはμおよびκオピオイド受容体の両方と相互作用し、この相互作用のための結合部位は、他の伝統的なオピオイド受容体リガンドのものと重なるという以前の所見を確認する。
論考
非窒素性オピオイド受容体アゴニストとしてのへルキノリン
へルキノリンはオピオイド受容体アゴニストであるが、窒素、伝統的な窒素性オピオイドリガンドのための必須元素を含まない。よって、へルキノリンは第1の非オピオイド性μオピオイド受容体リガンドである。へルキノリンは2005年、天然産物サルビノリンAの様々な類似体が、ネオクレロダンジテルペンの構造および機能を研究するために合成された時に発見された。サルビノリンAは有意のμオピオイド受容体親和性を有さない、選択的κオピオイドアゴニストであるが、へルキノリンはμおよびκ受容体の両方に作用する。μ受容体に対するその親和性は、ここでおよび他の研究において証明されるように、κ受容体に対してよりもずっと強い。よって、サルビノリンAとは異なり、へルキノリンはμオピオイド受容体リガンドとして分類される。その結合部位は、ドッキング実験で証明されるように、他の受容体リガンドのための部位とよく重なる。
興味深いことに、へルキノリンはβ−アレスチン動員を誘導せず、受容体インターナリゼーションを促進しないという事実により、へルキノリンは伝統的なオピオイドのような著しい耐性または依存を誘導し得ないことが示唆される。最近の研究では、へルキノリンはラット疼痛モデルにおいて用量依存的抗侵害受容性効果を生成させることができることが示されており、へルキノリンは依存または耐性の著しいリスクのない新規鎮痛薬を開発するための有望な開始点となり得ることが示唆される。
脳血管に対する効果および受容体の役割
この実施例では、へルキノリンは、我々が前に証明したように、脳脈管構のために、サルビノリンAと同様の薬理学的特徴を示す。へルキノリンは、サルビノリンAよりも強力な動脈拡張薬であると考えられる。というのも、軟膜動脈を効果的に拡張する(ベースラインと比較して10%〜16%の変化)のに必要とされる濃度は、サルビノリンA(10nM)に比べ、へルキノリン(0.1nM)ではずっと低いからである。へルキノリンの脳血管拡張効果は、β−FNAではなく、NTPによりブロックされた。我々の前の研究と同様に、NTPもβ−FNAもどちらも軟膜直径に対し、それだけでは効果を示さない。よって、へルキノリンの脳血管拡大効果はμ受容体ではなく、むしろκオピオイド受容体を介して媒介される。
cAMPの役割
脳血管拡張は、cGMP、cAMP、およびK+チャネルを含むいくつかのメカニズムを介して媒介される。イソプロテレノールおよびcAMPは、脳血管筋肉においてカルシウム依存性カリウムチャネルの活性を増加させ、これは血管拡張を誘導すると考えられる。この研究では、我々は、脳血管拡張は、へルキノリンの投与後の、CSF中のcAMPレベルの上昇と関連することを観察した。その上、へルキノリン投与により誘導された脳血管拡張はcAMPアンタゴニストRp−cAMPにより消失する。この観察は、cAMP類似体Sp−cAMPSの投与は血管拡張を誘発し、これはRp−cAMPSにより鈍くされ得るという報告と一致する。まとめると、これらの所見により、cAMPは、へルキノリンに誘導される脳血管拡大において重要な役割を果たすことが示される。以前に、サルビノリンA媒介血管拡大におけるcGMPの関与が証明されている。cGMPもまた、へルキノリンの拡大効果に関与する可能性が高い。
可能性のある意味
サルビノリンAは、子ブタモデルにおいて、脳脈管構造を拡張し、脳低酸素/虚血傷害からの脳自己調節を保存することができるので、その脳血管拡張効果がサルビノリンAと同様に調節されるとすると、へルキノリンは同様の特性を有する可能性が高い。よって、脳血管攣縮または虚血のリスクがある患者に対する周術期中に使用される代わりの非オピオイド性薬物療法となり得る。
実施例8
サルビノリンAはくも膜下出血を治療する
この実施例では、3つの群、すなわち、シャム(対照)、くも膜下出血(SAH)およびサルビノリン(Salvanorin)A(SA)処置群を使用した。全脳画像(腹側)を、図40に示されるように、SAH後24時間に、3つの群に対して取得した。各群において直径および血管壁の厚さを決定するために、脳底動脈を有する脳幹切片をH&Eで各群において、SAH後24時間に染色した(図41)。顕微鏡下で画像を取得した後、血管の直径および血管壁の厚さを、Image Jを使用して測定した。神経テストを、SAH後24時間に、盲検様式で実施し、評価した。図42に示されるように、SAH後24時間に与えられたサルビノリンAは著しく(A)直径を増加させ、(B)SAH後24時間に、脳底動脈の壁の厚さを著しく減少させたが、一方、(C)与えられたサルビノリンAは神経スコアに対し有意の効果を有さなかった。
実施例9
サルビノリンAの溶解度
サルビノリンAは非常に疎水性の分子であり、水に不溶である。サルビノリンAは、エタノール、DMSO、およびアセトンのような有機溶媒には可溶であることが知られている。しかしながら、これらの溶媒は、日常的な臨床使用、とりわけ静脈内(IV)送達には好適ではない。サルビノリンAは神経障害に対しては臨床的に有用であるので、臨床送達のためにサルビノリンAを製剤化するために使用することができる材料、好ましくはFDAにより認可された材料を同定する必要がある。サルビノリンの物理的および化学的特性は下記表1において提示される。
イオン化できる官能基が欠如しており、サルビノリンAは可溶性塩を形成することができない。サルビノリンAは8つの水素結合受容部位、全て酸素原子を有し、水素結合供与基を有さない。よって、その結晶格子は隣接する分子間で弱い非結合相互作用を含むにすぎず、低融点に反映される、結果として得られる減少した格子エネルギーを有する可能性があると考えられるであろう。実際は、サルビノリンAは238〜240℃と報告されているかなり高い融点を有する。SAのX線結晶構造により水性有機溶媒(アセトン、メタノール)からの結晶化により、3分子のサルビノリンAにつき1分子の水を有する化学量論水和物としてSAが得られることが明らかになった。不運なことに、X線構造は水の水素原子の位置を分解せず、そのため、結晶格子中にサルビノリンA分子を水素結合により連結している詳細な描写は不明確なままである。高融点結晶水和物としてのサルビノリンAの存在は、有機および水性溶媒中でのその溶解挙動に影響を与えることが予測され得る。不十分な溶解度はおそらく、薬物の臨床的に適用可能な医薬への転換のために利用できる製剤化アプローチを制限するであろう。
方法
異なる型のシクロデキストリンを含む様々な溶液中でのサルビノリンAの溶解度を試験した。シクロデキストリン(Ashland)および水(陰性対照として)の下記変形を使用した。
1.100% 水;
2.20% 2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD);
3.20% 2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(HPGCD);
4.20% α−シクロデキストリン硫酸化ナトリウム塩;および
5.20% β−シクロデキストリン硫酸化ナトリウム塩。
各化合物に対し、20gのその化合物を100mLの水に溶解した。その後、0.3mgのサルビノリンAを各溶液中に混入させた。溶液を一晩撹拌した。3つの二組の各試料を使用した。試料を0.2μm PTFEフィルタを通して濾過し(Waterman)、その後濃度決定した。サルビノリンAの溶解度はまた、様々な他の化合物中で試験した。
メタノール−アセトン(4:1)中のサルビノリンAを用いた検量線を、クロマトグラフィーにより、C−18HPLCカラムを使用し、1mL/分の水/アセトニトリルの溶離速度を使用して決定した(図43)。
結果
サルビノリンAはごくわずかにしか、水およびα−シクロデキストリン硫酸化ナトリウム塩またはβ−シクロデキストリン硫酸化ナトリウム塩のいずれかに溶解しない。試験したシクロデキストリンのうち(表2)、HPBCDは、100μg/mL超の最大濃度を有するサルビノリンAの溶解度を証明した。よって、HPBCDは、50μg/mLのサルビノリンAを製剤化するために使用することができ、それは、フェンタニルのための臨床用量に等しい。興味深いことに、表2に示されるように、HPBCDとHPGCDの間には著しい溶解度差が存在し、すなわち、20%HPBCD中では122.5±0.6μg/mL対20%HPGCD中では52.6±0.9μg/mL。他の溶媒中でのサルビノリンA溶解度を表3に提示する。

結論
臨床用途のために認可されたいくつかのFDA材料を含む、サルビノリンAのための複数の許容される溶媒を発見した。20%HPBCDは臨床診療におけるIV薬物送達のためのFDAにより認可された材料である。例えば、ボリコナゾール(VFEND(登録商標)、Pfizer)はスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンをIV送達のために使用する。
発明のある一定の特徴を本明細書で説明し、記載してきたが、多くの改変、置換、変更、および等価物は、今や、当業者であれば思いつくであろう。そのため、添付の特許請求の範囲は、発明の真の範囲内に含まれるそのような改変および変更を全て含むことが意図されることが理解されるべきである。

Claims (40)

  1. 心停止を患っている、または患っていた被験体において心停止と関連する神経傷害を治療する、または生存の可能性を増加させる方法であって、前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与することを含む、方法。
  2. 前記サルビノリンはサルビノリンAである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記サルビノリンはサルビノリンのエステル、サルビノリンベンゾエート、または還元型サルビノリンである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記投与は鼻腔内投与である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記サルビノリンは前記心停止中に投与される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記サルビノリンは心肺蘇生(CPR)が実施されている間に投与される、請求項1に記載の方法。
  7. 前記サルビノリンは心肺蘇生(CPR)が実施された後に投与される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記サルビノリンは冠動脈バイパス手術を受ける被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記被験体は新生児被験体である、請求項1に記載の方法。
  10. 前記被験体はヒトである、請求項1に記載の方法。
  11. 脳卒中を患っている、または患っていた被験体において脳卒中を治療する方法であって、前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を鼻腔内投与することを含む、方法。
  12. 前記サルビノリンはサルビノリンAである、請求項11に記載の方法。
  13. 前記サルビノリンはサルビノリンのエステル、サルビノリンベンゾエート、還元型サルビノリン、またはサルビノリンの類似体である、請求項11に記載の方法。
  14. 前記サルビノリンは前記脳卒中中または後に投与される、請求項11に記載の方法。
  15. 前記被験体は新生児被験体である、請求項11に記載の方法。
  16. 前記被験体はヒトである、請求項11に記載の方法。
  17. 大脳動脈閉塞または脳低酸素/虚血を患っている、または患っていた被験体において大脳動脈閉塞を治療する方法であって、前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与することを含む、方法。
  18. 前記サルビノリンはサルビノリンAである、請求項17に記載の方法。
  19. 前記投与は鼻腔内投与である、請求項18に記載の方法。
  20. 前記サルビノリンは前記被験体が、脳低酸素/虚血または大脳動脈閉塞を患っている間、または前記被験体が脳低酸素/虚血または大脳動脈閉塞を患っていた後に投与される、請求項18に記載の方法。
  21. 前記被験体は新生児被験体である、請求項18に記載の方法。
  22. 前記被験体はヒトである、請求項18に記載の方法。
  23. くも膜下出血を有する被験体において脳血管攣縮を治療する方法であって、前記被験体に治療的有効量のサルビノリンまたはその医薬組成物を投与することを含む、方法。
  24. 前記サルビノリンはサルビノリンAである、請求項23に記載の方法。
  25. 前記投与は静脈内投与である、請求項24に記載の方法。
  26. 前記投与は鼻腔内投与である、請求項24に記載の方法。
  27. 前記被験体は新生児被験体である、請求項24に記載の方法。
  28. 前記被験体はヒトである、請求項24に記載の方法。
  29. サルビノリンAおよびシクロデキストリンの水溶液を含む、サルビノリンAの医薬組成物。
  30. 前記シクロデキストリンは2−ヒドロキシプロピル−シクロデキストリンである、請求項29に記載の組成物。
  31. 前記シクロデキストリンは2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)である、請求項30に記載の組成物。
  32. 前記シクロデキストリン濃度は1%(w/v)〜50%(w/v)の間である、請求項29に記載の組成物。
  33. 前記シクロデキストリン濃度は約20%である、請求項32に記載の組成物。
  34. 前記サルビノリンA濃度は少なくとも50μg/mLである、請求項29に記載の組成物。
  35. 被験体において脳血管拡張と関連する疾患を治療するための方法であって、前記被験体に、治療的有効量の、請求項29〜34のいずれか一項に記載のサルビノリンA組成物を投与することを含む、方法。
  36. 被験体において脳血管拡張を生成させるための方法であって、前記被験体に、治療的有効量の、請求項29〜34のいずれか一項に記載のサルビノリンA組成物を投与することを含む、方法。
  37. 心停止を患っている、または患っていた被験体において心停止と関連する神経傷害を治療する、または生存の可能性を増加させる方法であって、前記被験体に、治療的有効量の、請求項29〜34のいずれか一項に記載のサルビノリンA組成物を投与することを含む、方法。
  38. 脳卒中を患っている、または患っていた被験体において脳卒中を治療する方法であって、前記被験体に、治療的有効量の、請求項29〜34のいずれか一項に記載のサルビノリンA組成物を鼻腔内投与することを含む、方法。
  39. 大脳動脈閉塞または脳低酸素/虚血を患っている、または患っていた被験体において大脳動脈閉塞を治療する方法であって、前記被験体に、治療的有効量の、請求項29〜34のいずれか一項に記載のサルビノリンA組成物を投与することを含む、方法。
  40. くも膜下出血を有する被験体において脳血管攣縮を治療する方法であって、前記被験体に、治療的有効量の、請求項29〜34のいずれか一項に記載のサルビノリンA組成物を投与することを含む、方法。
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