JP2017500590A - 乳がんの予後診断方法 - Google Patents

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Abstract

核Ep−ICDポリペプチドの測定を含む乳がんの予後診断のための方法およびキットを提供する。測定は定量的および/または定性的であってもよい。本発明はまた、Ep−ICD細胞内局在係数(ESLI)値を生成するためのシステムを提供し、これは対象における乳がんを予後診断するために使用することができる。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、それぞれ参照により本明細書に組み込んだ2014年9月29日出願の米国特許出願第14/501020号および2013年12月6日出願の米国特許出願第14/099529号のパリ条約に基づく優先権を主張する。本出願はまた、米国特許法第119条の下で2010年5月4日に出願された米国特許出願第61/330966号および2010年5月7日に出願された米国特許仮出願第61/332358号の優先権の利益を主張する2011年5月4日に出願された米国特許出願第13/100949号の一部継続出願である2013年12月6日に出願された米国特許出願第14/099529号の一部継続出願である2014年9月29日に出願された米国特許出願第14/501020号の継続出願である。前記出願はそれぞれ、その全体が記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の記載は一般的に、がんを予後診断する分野に関する。より詳細には、本記載は乳がんを予後診断するための方法およびキットに関する。
乳がんは女性において診断される最もありふれたがんであり、世界中で1年あたり推定138万の症例が、合衆国で2012年に推定226870の症例が新たに診断されている(Siegel et al., CA Cancer J. Clin. 2012, 62(1):10-29; Ferlay et al., Int. J Cancer 2010, 127(12):2893-2917)。初期乳癌患者において、腋窩リンパ節への転移の存在は生存の最も重要な予測因子と考えられる(Fitzgibbons et al., Arch Pathol Lab Med 2000, 124(7):966-978)。リンパ節陽性腫瘍の患者は、リンパ節陰性患者と比較して死亡率が8倍まで増加する(Arriagada et al., Cancer 2006, 106(4):743-750)。マンモグラフィーによる乳がん集団検診は、乳腺腫瘍の早期検出を容易にするために促進され、死亡率を低下させる可能性があるが、患者に有害な影響を及ぼす可能性がない腫瘍(例えば、非進行性腫瘍)の不必要な処置とも関連している(Gotzsche & Jorgensen, Cochrane Database Syst Rev 2013, 6:CD001877)。
乳がんに対する現在の臨床治療は、手術、放射線療法および発がん過程を標的とした薬物療法を含む。療法に対する患者の応答および患者における転移の傾向を予測することは、少なくとも一部には様々な乳がんサブタイプの生物学的特徴の理解が不完全なため困難である。多くの患者は、全生存率を高めるために初期乳がんにおいて過剰に処置されている。疾患再発に対する個々のリスクおよび/または処置に対する個々の感受性を明確にすることによって過剰な処置は抑えることができるだろう。ゲノム検査(Mammaprint、Oncotype Dx、PAM50)および免疫組織化学的検査(IHC4)は、乳がんの予後および化学療法に対する応答を予測するために開発されたが、これらの検査の予測的バリデーションは現在使用できない(Azim et al., Annals of Oncology 2013, 24(3):647-654)。核磁気共鳴法(NMR)および質量分析(MS)をベースにした血清代謝物プロファイリングによって、化学療法に対して応答しない腫瘍の乳がん患者の80%が正確に同定されることが示された(Wei et al., Molecular oncology 2013, 7(3):297-307)。5遺伝子統合サイトカインスコア(five−gene Integrated Cytokine score)(ICS)は、リンパ節状態、補助化学療法使用およびTneg分子サブタイプと独立して、原発性HRneg/Tneg乳腺腫瘍の転移の結果を予測するために提案されたことがある(Yau et al., Breast Cancer Research 2013, 15(5):R103)。
上皮細胞接着分子(EpCAM)は、上皮がん抗原として広く調べられてきた(Munz et al. 2009, Cancer Res 69: 5627-5629)。EpCAMは、グリコシル化された30から40kDaのI型膜タンパク質で、数種のヒト上皮組織において発現し、いくつかのがんならびにいくつかの前駆細胞および幹細胞において過剰発現する(Munz et al. 2009, Mukherjee et al. 2009; Am J Pathol 175: 2277-2287; Carpenter & Red Brewer 2009, Cancer Cell 15: 165-166; Schnell et al. 2013, Biochim Biophys Acta 1828: 1989-2001; Ni et al. 2012, Cancer Metastasis Rev 31: 779-791)。EpCAMは、上皮成長因子(EGF)およびサイログロブリン反復様ドメインを有する細胞外ドメイン(EpEx)、単独膜貫通ドメインならびにEp−ICDと呼ばれるアミノ酸26個の細胞内ドメインから構成される。正常細胞では、完全長EpCAMタンパク質は、タイトジャンクションに隔離されており、したがって抗体は容易に近づくことができない。がん細胞では、EpCAMはがん細胞の表面上に均一に分布している。EpCAMは、治療抗体の表面結合部位として調べられたことがある。
EpCAMは、乳がん、結腸がん、胃がん、頭部および頸部がん、前立腺がん、膵臓がん、卵巣がんおよび肺がんを含むヒト上皮がんの大部分で発現し、その診断上および治療上の可能性について最も広範に研究されたタンパク質の1つである(Spizzo et al. 2004, Brest Cancer Res Treat 86: 207-213; Went et al. 2004, Hum Pathol 35: 122-128; Saadatmand et al. 2013, Br J Surg 100: 252-260; Soysal et al. 2013, Br J Cancer 108: 1480-1487)。EpCAM発現をベースにしたアッセイは、乳がん患者における循環性腫瘍細胞を検出するために広く使用される唯一のFDA承認試験である(Cristofanilli et al. 2004, N Engl J Med 351: 781-791)。
EpCAM分子標的療法は、乳がん、卵巣がん、胃がんおよび肺がんを含む数種のがんについて研究されている(Baeuerle & Gires 2007, Br. J Cancer 96: 417-423; Simon et al. 2013, Expert Opin Drug Deliv 10: 451-468)。EpCAM発現は、乳がん患者において抗EpCAM抗体に対する応答を予測するために使用されたことがある(Baeuerle & Gires 2007, Schmidt et al. 2005, Annals of Oncology 23: 2306-2313; Schmidt et al. 2010, Annals of Oncology 21: 275-282)。EpExドメインを標的とする抗EpCAM抗体の臨床試験では、がん療法における有効性は限定的で、がん患者の生存決定におけるEpCAMによる予後診断の可能性は不確かなままである(Riethmuller et al. 1998, J Clin Oncol 16: 1788-1794; Fields et al. 2009, J Clin Oncol 27: 1941-1947; Gires & Bauerle et al. 2010, J Clin Oncol 28: e239-240; author reply e241-232; Schmoll & Arnold 2009, J Clin Oncol 27: 1926-1929; Maetzel et al. 2009, Nat Cell Biol 11: 162-171)。例えば、EpCAM発現の増加は、結腸がんおよび胃がんにおける予後良好と関連している(Songun et al. 2005, Br J Cancer 92:1767-1772; Went et al. 2006, Br J Cancer 94:128-135; Ensinger et al. 2006, J Immunother 29:569-573; Ralhan et al. 2010, BMC Cancer 10:331)。対照的に、EpCAM発現の増加は、乳がんおよび胆嚢がんにおける予後不良のマーカーであることが示唆された(Gastl et al. 2000, Lancet 356:1981-1982; Varga et al. 2004, Clin Cancer Res 10:3131-3136)。
EpCAM発現と様々ながんにおける予後の関連の矛盾は、インビトロおよびインビボがんモデルを使用したEpCAMの生物学的特徴の機能的研究(van der Gun et al. 2010, Carcinogenesis 31: 1913-1921)、最近解明されたタンパク質分解によるEpCAM発がんシグナル伝達活性化機序およびより進行性の発がんの引き金となるEp−ICDの可能性(Maetzel et al. Nat. Cell Biol. 2009, 11:162-171)によって説明することができる。EpCAMの膜内タンパク質分解を調節すると、EpExの剥離およびEp−ICDの細胞質への放出、核移行および発がんシグナル伝達の活性化が引き起こされる(Carpenter & Brewer, Cancer Cell, 2009, 15:156-166)。EpCAMのEpExおよびEp−ICD断片の細胞内局在は、EpCAM過剰発現を乳がんの予後に関係づける前記の研究(Gastl et al., 2000)では考慮されなかった。
本発明者らは以前に、乳がんを含む10種の上皮がんにおけるEp−ICDおよびEpExの発現分析ならびに診断マーカーとして使用するための可能性について報告した(米国特許出願公開第2011/0275530号)。乳がんの診断に関しては、核Ep−ICDの存在は、非がん性乳房組織よりもがん性乳房組織のマーカーであることが発見された(米国特許出願公開第2011/0275530号)。
乳がんの予後診断で使用するための方法およびキットが所望される。
第1の態様では、開示した発明は、対象における乳がんを予後診断する方法を提供する。この方法は、(a)対象の生体試料中の核Ep−ICDの量を測定すること、(b)生体試料中で測定された量を対照と比較すること、および核Ep−ICDの測定量と対照との間の比較に基づいて乳がんを予後診断することを含む。
第1の態様の1実施形態では、対照が非進行性乳がん試料中の核Ep−ICDの量であるならば、核Ep−ICDの測定量がより高いことは予後不良であることを示し、核Ep−ICDの測定量が等しいかもしくはより低いことは予後良好であることを示し、または対照が進行性乳がん試料中の核Ep−ICDの量であるならば、核Ep−ICDの測定量が等しいかもしくはより高いことは予後不良であることを示す。
1つの好ましい実施形態では、非進行性乳がん試料は、核Ep−ICD量の測定後少なくとも40カ月間疾患の進行がないことが知られている。1つの好ましい実施形態では、進行性乳がん試料は、核Ep−ICD量の測定後約5年未満疾患が進行することが知られている。1つの好ましい実施形態では、予後不良は、5年未満の無病生存期間を含む。1つの好ましい実施形態では、無病生存期間は、約41カ月以下である。1つの好ましい実施形態では、予後良好は、少なくとも約5年の無病生存期間を含む。
第1の態様の1実施形態では、対象の生体試料は、治療的処置後に得られる。1つの好ましい実施形態では、対象の生体試料は、乳房上皮細胞、乳房組織、乳腺腫瘍組織および病期IもしくはIIの乳がん腫瘍細胞の1つまたは複数を含む。
第1の態様の1実施形態では、予後診断される乳がんは、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、浸潤性粘液性癌、腺管上皮内癌または上皮内小葉癌である。
第1の態様の1実施形態では、核Ep−ICDの測定量は、定量的および定性的量の1つまたは複数である。1つの好ましい実施形態では、定量的量は、生体試料中の核Ep−ICD陽性である細胞の割合(percent)または核Ep−ICDの絶対量である。1つの好ましい実施形態では、定性的量は、核Ep−ICDを示す表示によって放出されるシグナルの強度である。
第1の態様の1実施形態では、方法は、核Ep−ICDおよび細胞質Ep−ICDの定量的および定性的スコアを決定することをさらに含み、定量的および定性的な核および細胞質Ep−ICDスコアの増加は乳がんの予後不良と関連する。
第1の態様の好ましい1実施形態では、定量的および定性的な核Ep−ICDおよび細胞質Ep−ICDスコアの決定は、(i)試料を、Ep−ICDまたはその一部に特異的に結合する結合剤および第1の結合剤のEp−ICDへの結合を検出するための検出可能な標識と接触させることであって、この検出可能な標識は、結合剤がEp−ICDに結合すると検出可能なシグナルを放出すること、(ii)(a)結合剤に結合した核内のEp−ICDを有する細胞の試料中の割合(percent)を含む第1の割合(percent)を測定し、第1のスケールに従って第1の定量的スコアを第1の割合(percent)に割り当てること、および(b)結合剤に結合した細胞質中のEp−ICDを有する細胞の試料中の割合(percent)を含む第2の割合(percent)を測定し、第1のスケールに従って第2の定量的スコアを第2の割合(percent)に割り当てること、(iii)(a)標識によって核内に放出されたシグナルの強度を含む第1の強度を測定し、第2のスケールに従って第1の定性的スコアを第1の強度に割り当てること、および(b)標識によって細胞質内に放出されたシグナルの強度を含む第2の強度を測定し、第2のスケールに従って第2の定性的スコアを第2の強度に割り当てることを含む。
第1の態様の好ましい1実施形態では、方法は、核Ep−ICDおよび細胞質Ep−ICDの全スコアを計算することをさらに含み、計算は、(a)核Ep−ICD全スコアを生成するために第1の定量的および定性的スコアを加算すること、ならびに(b)細胞質Ep−ICD全スコアを生成するために第2の定量的および定性的スコアを加算することを含む。
第1の態様の好ましい1実施形態では、方法は、試料のEp−ICD細胞内局在係数(ESLI)値を計算することであって、ESLI値が核Ep−ICD全スコアおよび細胞質Ep−ICD全スコアの合計を2で除したものであること、計算したESLI値を参考値と比較することであって、参考値は(i)非進行性乳がんを示すESLI値または(ii)進行性乳がんを示すESLI値であること、ならびに試料の計算したESLI値が(i)の参考値を上回るか、または(ii)の参考値を上回るか等しいとき、対象の乳がんは予後不良であることを決定することをさらに含む。
第1の態様の好ましい1実施形態では、結合剤は抗体である。1つの好ましい実施形態では、標識は検出可能な放射性同位元素、発光化合物、蛍光化合物、酵素標識、ビオチニル基および第2のレポーターによって認識可能な予め決定されたポリペプチドエピトープから選択する。
第1の態様の好ましい1実施形態では、定量的量は免疫組織化学的(IHC)分析を使用して得られる。好ましい1実施形態では、定性的量は免疫組織化学的(IHC)分析を使用して得られる。
第1の態様の好ましい1実施形態では、第1のスケールは、以下のスコアを含む:スコア0は10%未満の細胞が陽性のとき割り当てられ、スコア1は細胞の10〜30%が陽性のとき割り当てられ、スコア2は31〜50%の細胞が陽性のとき割り当てられ、スコア3は51〜70%の細胞が陽性のとき割り当てられ、スコア4は細胞の70%超が陽性のとき割り当てられ、第2のスケールは、以下のスコアを含む:スコア0はシグナルが検出されないときに割り当てられ、スコア1は軽度のシグナルが検出されるとき割り当てられ、スコア2は中程度のシグナルが検出されるとき割り当てられ、スコア3は強いシグナルが検出されるときに割り当てられる。1つの好ましい実施形態では、非進行性乳がんを示すESLI値は3未満で、進行性乳がんを示すESLI値は3以上である。
第1の態様の好ましい1実施形態では、核Ep−ICDの量の測定は手動または自動である。
本発明のその他の目的、特性および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかし、本発明の精神および範囲内の様々な変化および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すが例示のためのみに挙げられていることを理解されたい。
本発明はここで、図面に関連して説明する。
乳がんにおけるEp−ICDおよびEpEx発現の免疫組織化学的分析を示した図である。図1Aは、(I)主に正常な乳房組織における細胞質Ep−ICD発現、(II)DCIS、(III)IDC、(IV)ILC、(V)IMCおよび(VI)Ep−ICDに対して検出可能な免疫染色を示さないアイソタイプ特異的IgGでインキュベートした陰性対照乳がん組織におけるEp−ICDの核および細胞質蓄積を示す代表的な顕微鏡写真を示す。図1Bは、(I)正常乳房組織、(II)DCIS、(III)IDC、(IV)ILCおよび(V)IMCにおけるEpExの発現を示す。元の倍率×400;N、CおよびMで標識した矢印はそれぞれ核、細胞質および膜染色を示す。 全乳癌患者およびIDC患者それぞれにおける核Ep−ICD発現によって分類した無疾患生存期間(DFS)のカプラン−マイヤー曲線を示した図である。図2Aは、Ep−ICDの核蓄積が乳癌患者の全コホートにおける減少したDFSに有意に関連したことを示す(p<0.001)。図2Bは、Ep−ICDの核蓄積がIDC患者における減少したDFSに有意に関連したしたことを示す(p<0.001)。 乳がん患者およびIDC患者それぞれにおけるEp−ICD細胞内局在係数(ESLI)値および無疾患生存期間を示した図である。
他に規定しなければ、本明細書で使用した技術用語および科学用語は全て、本発明が属する業界の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
定義
本明細書では「EpCAM」という用語は、配列番号1(配列番号1はジェンバンク受け入れ番号NP_002345に対応する)で記載したアミノ酸配列を有する上皮細胞接着分子を意味する。EpCAMは、アミノ酸265個の長さ(配列番号1のアミノ酸1〜265)の本明細書で「EpEx」と称する細胞外ドメイン、アミノ酸23個の長さ(配列番号1のアミノ酸266〜288)の1個の膜貫通ドメインおよびアミノ酸26個の長さ(配列番号1のアミノ酸289〜314)の本明細書で「Ep−ICD」と称する細胞内ドメインを含む。
本明細書では「進行性」という用語は、「非進行性」がんよりも迅速に形成、成長および/または拡散するがんの1種を意味する。例えば、進行性乳がんを有する対象は、非進行性乳がんを有する対象よりも少ない予測無病生存期間(DFS)を有する可能性がある。DFSとは、疾患再発、転移および/または死亡までの期間である。
本明細書では「スコア」という用語は、結果に対して与えられた評点または等級を意味し、この評点または等級は結果の最小および最大の可能性のあるスコアを含むスケールで測定される。
本明細書では「アルゴリズム」および「ESLIアルゴリズム」という用語は、値(すなわち、Ep−ICD細胞内局在係数「ESLI」値)を決定することによってEp−ICD細胞内発現を数値的に特徴付けるための数学式を意味する。アルゴリズムは本明細書でさらに定義する。
本明細書では「予後」とは、疾患の可能性のある経過および/または転帰の予測を意味する。例えば、予後不良とは、予後良好な患者よりも患者におけるDFSが減少していることを予測することができる。例えば、予後不良では約5年未満のDFSが予測され、良好または優良な予後では約5年超のDFSが予測される。
本明細書で説明したように、本発明者らは、予後不良の乳がん患者は予後良好な乳がん患者よりもEp−ICDの量が増加した、特に核Ep−ICDが増加した乳房組織を有することを発見した。Ep−ICDの細胞内局在を検出、測定、採点および評価することの1つまたは複数を含む乳がんを予後診断する方法を以下にさらに論じる。1態様では、本発明は、予後を定量するための数値評点法を提供し、このような評点法は本明細書ではEp−ICD細胞内局在係数(ESLI)と称する。乳がんを予後診断する上でのESLI値の使用を以下にさらに論じる。
乳がんの予後診断方法
本開示は一般的に、対象におけるがん、特に乳がんを予後診断する方法を対象とする。本明細書で患者とも呼ばれる対象は、乳がんに罹患した、乳がんを有することが疑われる、乳がんに罹患しやすいリスクがある、または乳がん検査を受けたほ乳類であってもよい。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
1実施形態では、核および/または細胞質Ep−ICDの量は、対象の生体試料において測定する。生体試料は、乳房上皮細胞を含む。好ましい実施形態では、生体試料は乳房組織を含む。特に好ましい実施形態では、生体試料は、乳がん腫瘍細胞、例えば、病期Iおよび/またはIIの乳がん腫瘍細胞を含む。
Ep−ICDの測定は定量的および/または定性的であってもよい。1実施形態では、測定は、生体試料を第1の結合剤と接触させ、生体試料の1つまたは複数の核および/または細胞質におけるEp−ICDに結合した第1の結合剤の量を測定することによって実現することができる。1実施形態では、膜性EpExの量は、対象の生体試料において測定する。EpExの測定は、生体試料を第2の結合剤と接触させ、生体試料の1つまたは複数の膜におけるEpExに結合した第2の結合剤の量を測定することによって実現することができる。結合剤とは、特定のポリペプチドに特異的に結合する物質を意味する。結合剤は、例えば、抗体、リボソーム、RNA、DNA、ポリペプチドまたはアプタマーであってもよい。例えば、Ep−ICDと特異的に反応する抗体は、生体試料中のEp−ICDを検出するために使用してもよく、Ep−ICDの細胞内局在(すなわち、核または細胞質)を決定するために使用してもよい。試料中の抗原のインビトロ検出のための一般的な技術は、当業界では周知である。好ましい実施形態では、Ep−ICDを検出するためにEp−ICD特異的抗体を使用する。好ましい実施形態では、EpExを検出するためにEpEx特異的抗体を使用する。
Ep−ICDまたはEpExに特異的な結合剤は、検出可能な物質の存在に基づいて生体試料中における同定を容易にする検出可能な物質で標識することができる。検出可能な物質の例としては、限定はしないが、以下の放射性同位元素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、酵素標識、ビオチニル基および第2のレポーターによって認識される予め決定されたポリペプチドエピトープが挙げられる。結合剤はまた、電子顕微鏡によって視覚化が容易な高電子密度物質、例えば、フェリチンまたは金コロイドと結合させることができる。
標的ポリペプチドのエピトープに対して反応する抗体に特異性を備えた第2抗体の導入によって、1次抗原抗体反応を増幅する間接的な方法を採用してもよい。例えば、Ep−ICDポリペプチドに特異性を備えた抗体がウサギIgG抗体であれば、第2抗体は、本明細書で記載したような検出可能な物質で標識したヤギ抗ウサギIgG、Fc断片特異的抗体であってもよい。
前記で論じた抗体を複合体化または標識する方法は、当業者によって容易に遂行することができる。
Ep−ICDおよび/またはEpExの定量的および/または定性的測定は自動であってもよく、または手動で実施してもよい。
1実施形態では、Ep−ICDの定量的および/または定性的測定は、ソフトウェア、例えば、Visiopharm(商標)ソフトウェアなどを使用して自動化することができる。例えば、本発明者らは、NanoZoomerを倍率20倍で使用してIHC処理乳がん組織試料を調べた。読み取った画像はデジタル解析のためにVisiopharm Integrator System(VIS、バージョン4.6.3.857;Visiopharm、Hoersholm、Denmark)に読み込んだ。対象領域(ROI)は、各デジタル画像について手動で画定した。ROI内の領域は、核、細胞質および/または膜の上皮細胞における3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)染色を測定して染色の強度を測定するためにVISによって分析した。次に、この分析の結果を使用して、疾患再発のリスクに基づいて患者を分類した。
スコアを核および細胞質Ep−ICDの定量的および定性的測定に割り当てるEp−ICDの手動による定量的および定性的測定の一例を以下にさらに説明する。
1実施形態では、対象の生体試料中で核Ep−ICDの量を測定したら、測定した量を対照と比較し、比較の結果に基づいて予後の不良または良好を決定する。
1実施形態では、対照は、非進行性がん性生体試料、例えば、非進行性がん性乳房組織または非進行性がん性乳房上皮細胞を含む試料における核Ep−ICDの量である。この場合、生体試料中で検出された核Ep−ICDの量が対照よりも高いことは乳がんが予後不良であることを示し、生体試料中で検出された核Ep−ICDの量が対照と等しいかまたはより低いことは予後良好であることを示す。例えば、1つの好ましい実施形態では、対照は対照量の測定後少なくとも40カ月間乳がんは進行しないことが知られている生体試料中の核Ep−ICDの量である。この実施形態では、生体試料中で検出された核Ep−ICDの量が対照よりも高いことは予後不良であることを示し、生体試料中で検出された核Ep−ICDの量が対照と等しいかより低いことは予後良好であることを示す。
1実施形態では、対照は、進行性がん性生体試料、例えば、進行性乳房腫瘍または進行性がん性乳房上皮細胞を含む試料における核Ep−ICDの量である。この場合、生体試料中の核Ep−ICDの検出量が対照と等しいかまたはより高いことは乳がんが予後不良であることを示す。例えば、1つの好ましい実施形態では、対照は対照量の測定後約5年未満乳がんが進行することが知られている生体試料中の核Ep−ICDの量である。この実施形態では、生体試料中で検出された核Ep−ICDの量が対照と等しいかまたはより高いことは予後不良であること示す。
1実施形態では、本明細書で提供した方法を使用して予後診断される乳がんは、浸潤性乳管癌(IDC)、浸潤性小葉癌(ILC)、浸潤性粘液性癌(IMC)、腺管上皮内癌(DCIS)または上皮内小葉癌(LCIS)である。
1実施形態では、核Ep−ICDおよび細胞質Ep−ICDの量に対応する定量的および定性的スコアを決定することを含む、対象における乳がんを予後診断する方法を提供する。この方法では、対象における乳がんの予後不良を決定するために定量的および定性的な核および細胞質Ep−ICDスコアを計算し対照値と比較する。
実施形態の1態様では、この方法は対象から得られた試料のEp−ICD細胞内局在係数(ESLI)値を計算するステップをさらに含んでいてもよい。以下でさらに論じるように、ESLI値は対象における乳がんを予後診断する特有な定量的手段となる。
本発明者らは、i)健康な乳房および様々な病期の乳がんを有する対象の試料中のEp−ICDの細胞内局在を調べること、ii)乳がん患者におけるEp−ICD細胞内局在とDFS時間との間の関連を決定すること、iii)Ep−ICDの細胞内局在の定量的および定性的測定の両方が有用な予後診断情報を提供したと決定すること、iv)予後診断的に重要な値を計算するために定量的および定性的データを使用するアルゴリズムを作製すること、ならびにv)アルゴリズムで使用するためのスケールおよび式を作製することであって、このスケールは、定量的および定性的データを採点し、定量的および定性的データに互いに重み付けするために適切であることによってESLIアルゴリズムを開発した。特に好ましい実施形態では、乳房組織試料中のEp−ICD細胞内局在に関する定量的および定性的データを収集すること、ESLIアルゴリズムを収集したデータに適用して試料のESLI値を生成すること、試料のESLI値を参考値と比較することを組み合わせると、対象における乳がんの予後診断が容易になる。特に好ましい実施形態では、定量的および定性的データはIHC用に調製した組織試料から収集する。
ESLI乳がん予後診断法およびESLIアルゴリズムの詳細を以下にさらに論じる。
ESLI値を計算するために、定量的および定性的な核Ep−ICDおよび細胞質Ep−ICDスコアを対象から得られた乳房組織試料について決定する。乳房組織試料は細胞(例えば、上皮細胞)を含み、このような細胞はそれぞれ核および細胞質を有する。
1実施形態では、定量的および定性的な核Ep−ICDおよび細胞質Ep−ICDスコアの決定は手動で行い、以下の4つのステップを含む。
(i)試料をEp−ICDまたはその一部に特異的に結合する結合剤と接触させる。検出可能な標識を使用してEp−ICDへの結合剤の結合を検出する。前述したように、検出可能な標識は、例えば、Ep−ICDへの結合剤の結合によって検出可能なシグナルを放出することができる。1態様では、結合剤はEp−ICDに特異的な標識抗体であってもよい。標識は、例えば、検出可能な放射性同位元素、発光化合物、蛍光化合物、酵素標識、ビオチニル基および第2のレポーターによって認識可能な予め決定されたポリペプチドエピトープから選択してもよい。
(ii)Ep−ICDの細胞内局在は定量的に測定し、(a)核および(b)細胞質中のEp−ICDが陽性である細胞の組織試料中の割合に基づいて採点する。核Ep−ICD発現が陽性である細胞の組織試料中の割合を「第1の割合」と称する。次に、割合の範囲と整数値を関連づけるスケールに従って第1の割合にスコアを割り当てる。このようなスコアおよびスケールは、「第1の定量的スコア」および「第1のスケール」と称する。細胞質Ep−ICD発現が陽性である細胞の測定した組織試料中の割合を「第2の割合」と称する。次に、第1のスケールに従って第2の割合に「第2の定量的スコア」を割り当てる。
第1の態様では、第1の割合(すなわち、核Ep−ICD陽性の割合)および第2の割合(すなわち、細胞質Ep−ICD陽性の割合)は、以下の第1のスケールに従って採点する:細胞の10%未満が陽性のとき、スコア0を割り当て、10〜30%の細胞が陽性のとき、スコア1を割り当て、31〜50%の細胞が陽性のとき、スコア2を割り当て、51〜70%の細胞が陽性のとき、スコア3を割り当て、70%超の細胞が陽性のとき、スコア4を割り当てる。このような数値スケールは便宜上のためだけに使用し、一例として提供されることを理解されたい。様々なその他の尺度法も使用することができる。
1実施形態では、第1および第2の割合は、IHC用に調製した組織試料から得られる。免疫組織化学(IHC)は、組織切片における1種または複数の特異的なタンパク質の存在および位置を示すための公知の方法である。簡単に説明すると、IHCは、組織試料の固定および包埋、組織の切片化、組織切片の封入、切片の脱パラフィンおよび再水和、抗原賦活化、免疫組織化学的染色、場合によって対比染色、脱水および封入媒体による安定化、ならびに顕微鏡下での染色した切片の観察を含む。
1実施形態では、第1および第2の割合はIHCを使用して獲得し、核および/または細胞質Ep−ICDが陽性の細胞は免疫陽性の細胞(すなわち、顕微鏡検査で検出可能で、試料のIHCで使用したEp−ICD特異的抗体を示す染色または蛍光を含む細胞)である。
(iii)Ep−ICDの細胞内局在は定性的に測定し、組織試料中の細胞の(a)核および(b)細胞質中のEp−ICD結合剤の検出可能なレベルによって放出されたシグナルの強度に基づいて採点する。組織中の細胞の核内で検出されたシグナルの強度は「第1の強度」と称する。次に、第1の強度に、シグナル強度の分類評価に関連するスケールに従って(例えば、検出可能なシグナルゼロから最大または最大に近い検出シグナルまでの範囲の分類)整数値でスコアを割り当てる。このようなスコアおよびスケールは、「第1の定性的スコア」および「第2のスケール」と称する。組織中の細胞の細胞質中で検出されたシグナルの強度は「第2の強度」と称する。次に、第2の強度に第2のスケールに従って「第2の定性的スコア」を割り当てる。
第1の態様では、第1の強度(すなわち、核Ep−ICD結合剤シグナル放出の分類評価)および第2の強度(すなわち、細胞質Ep−ICD結合剤シグナル放射の分類評価)は、以下の第2のスケールに従って採点する:シグナルがないときはスコア0を割り当て、軽度のシグナルが検出されたときはスコア1を割り当て、中程度のシグナルが検出されたときはスコア2を割り当て、強いシグナルが検出されたときはスコア3を割り当てる。その他の様々な尺度法も使用してもよい。
1実施形態では、第1および第2の強度は、IHC分析を使用して得られる。1つの好ましい実施形態では、抗体−抗原相互作用(すなわち、抗Ep−ICD−Ep−ICD相互作用)は、抗体に結合した酵素が基質を切断してタンパク質の位置で着色した沈殿物を生成する色素原検出を使用して視覚化する。別の好ましい実施形態では、抗体−抗原相互作用は、蛍光色素を抗体に結合させ、蛍光顕微鏡を使用して蛍光色素の位置を視覚化することができる蛍光検出を使用して視覚化する。
(iv)核Ep−ICD全スコアおよび細胞質Ep−ICD全スコアは、核Ep−ICD全スコアを生成するために第1の定量的および定性的スコアを加算すること、および細胞質Ep−ICD全スコアを生成するために第2の定量的および定性的スコアを加算することによって計算する。
1つの好ましい実施形態では、核Ep−ICDおよび細胞質Ep−ICDスコアを決定後、試料のEp−ICD細胞内局在係数(ESLI)値を計算する。1実施例では、ESLI値は核Ep−ICD全スコアおよび細胞質Ep−ICD全スコアの合計である。1つの好ましい実施形態では、ESLI値は、核Ep−ICDスコアおよび細胞質Ep−ICDスコアの合計を2で除したものである(このような演算機能は便宜のためである)。
次に、対象における乳がんの予後を決定するために、計算したESLI値を参考値と比較する。参考値は、予め決定されたカットオフ値で、カットオフ値の片側の値は乳がんの予後不良を示し、カットオフ値のもう一方の側の値は乳がんの予後良好を示す。
1実施形態では、参考値は非進行性がん性乳房組織を示すESLI値である。この実施形態では、試料のESLI計算値が参考値を上回るときに対象における乳がんの予後不良を決定する。この実施形態では、試料のESLI計算値が参考値より低いかまたは等しいときに、乳がんの予後良好を決定する。
1実施形態では、参考値は進行性乳がんを示すESLI値である。例えば、試料は進行性乳房腫瘍組織から得ることができる。この実施形態では、試料のESLI計算値が参考値を上回るかまたは等しいときに、対象における乳がんの予後不良を決定する。
好ましい実施形態では、参考値は複数の乳がん患者の組織試料を遡及的に分析し、DFSの時間に関する患者の臨床データを対応させることによって決定する。
特に好ましい実施形態では、前述の第1および第2のスケール(すなわち、陽性の割合には0〜4、強度には0〜3)に従って生成した核および細胞質Ep−ICD全スコアを使用してESLI値を計算し、3以上のESLI値が認められると進行性乳がんおよび乳がんの予後不良が示される。
1実施形態では、対象から得られた乳房組織試料中のEp−ICDの異常な細胞内局在の検出方法を提供する。1態様では、この方法は、対象の生体試料中の核Ep−ICDの量を測定すること、生体試料中で検出された量と対照とを比較することを含み、乳房組織試料中のEp−ICDの異常な細胞内局在の検出は核Ep−ICDの検出量と対照との間の比較に基づいて行われる。測定は、本明細書で記載したように定量的および/または定性的であってもよい。対照は、本明細書で記載したように非進行性または進行性乳がんであってもよい。乳房組織試料中のEp−ICDの異常な細胞内局在の検出は、Ep−ICDの測定量が非進行性対照を上回るか、または進行性対照の量を上回るかもしくは等しいときに見出される。
別の実施形態では、対象から得られた乳房組織試料中のEp−ICDの異常な細胞内局在の検出方法は、(A)試料の核および細胞質Ep−ICDスコアを測定するステップ、(B)試料のESLI値を計算するステップ、および(C)計算したESLI値を参考値と比較するステップを含む。測定ステップおよび計算ステップは、乳がん予後診断に関して前記で記載したように実施することができる。この実施形態では、乳房組織試料中のEp−ICDの異常な細胞内局在は、試料のESLI計算値が非進行性がん性乳房組織を示すESLI値に対応する参考値を上回るとき、あるいは試料のESLI計算値が進行性乳がんを示すESLI値に対応する参考値を上回るかまたは等しいときに検出される。
前記において、Ep−ICD量の採点は視覚を用いて、すなわち手動の方法で評する。しかし、理解されるように、前述したVisiopharmソフトウェアを使用する方法などの自動化法も使用することができる。
キット
本開示は、本明細書で開示した方法を実施するためのキットを企図する。このようなキットは一般的に乳がん予後診断アッセイを実施するために必要な2つ以上の成分を含む。成分は、限定はしないが、化合物、試薬、容器、装置およびキットを使用するための指示書の1つまたは複数を含む。したがって、本明細書で記載した方法は、本明細書で提供した予め包装された予後診断キットを利用することによって実施することができる。1実施形態では、キットは、結合剤、標準物、染色剤、固定剤および指示書の1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、指示書は対照として使用するための1つまたは複数の参考値を含む。
1実施形態では、キットは、乳がんを予後診断するために本明細書で記載したような1つまたは複数の結合剤を含む。例として、キットはEp−ICDに特異的な抗体、酵素で標識したEp−ICD抗体に対する抗体および酵素の基質を含有してもよい。キットは、EpExに特異的な抗体、酵素で標識したEpEx抗体に対する抗体および酵素の基質をさらに含有してもよい。キットはまた、マイクロタイタープレート、試薬(例えば、標準物、緩衝液)、接着性のプレートカバーおよびキットを使用する方法を実施するための指示書の1つまたは複数を含有してもよい。
1実施形態では、キットは、Ep−ICDのエピトープに特異的に結合する抗体または抗体断片および乳がん細胞に関連したエピトープへの抗体の結合を検出するための手段を含み、試験前にさらに希釈することができる濃縮物(凍結乾燥組成物を含む)として含んでもよい。例えば、乳がんを予後診断するためのキットは、Ep−ICDに特異的に結合する第1の結合剤の公知の量を含有していてもよく、第1の特異的な結合剤は検出可能な物質を含むかまたは検出可能な物質に直接的もしくは間接的に結合する能力を有する。1実施形態では、キットは、EpExのエピトープに特異的に結合する抗体または抗体断片および乳がん細胞に関連したエピトープへのEpEx特異的抗体の結合を検出するための手段をさらに含み、試験前にさらに希釈してもよい濃縮物(凍結乾燥組成物を含む)として含む。
1実施形態では、キットは、結合剤、標準物、染色剤、固定剤および核Ep−ICDを測定し、膜EpExを測定してもよい指示書の1つまたは複数を含む。例えば、このような結合剤、標準物、染色固定剤および指示書を含むキットは、本明細書で開示した方法を実行するために使用することができる。好ましい実施形態では、キットは、IHCを含む本明細書で開示した方法を実行するために使用することができる。
1実施形態では、キットは生体試料(例えば、乳房組織試料)を収集するために有用な器具をさらに含んでいてもよい。
本開示を例示する以下の非限定的な実施例を提供する。
乳がんにおける細胞内Ep−ICD発現および膜性EpEx発現の予後診断上の有用性を調べる。細胞内Ep−ICDおよび膜性EpEx発現と臨床病理学的パラメータおよび乳がん患者の追跡観察の関係も調べる。
方法
臨床病理学部の保管所に保存された乳がん患者組織ブロックおよびそれらの匿名の臨床データを使用したこのバイオマーカーの遡及研究は、カナダ、トロントのマウントサイナイ病院研究倫理委員会によって承認された。
患者および腫瘍標本
患者コホートは2000年から2007年の間にマウントサイナイ病院(MSH)で処置を受けた266人の乳がん患者から構成される。コホートは、乳房切除または腫瘤摘除を受けた患者から構成される。
選択基準:有害な臨床事象の有無にかかわらず最大60カ月追跡した患者の乳がん組織試料;臨床データベースにおいて臨床、病理および処置データが利用可能である。
除外基準:患者の追跡データが臨床データベースで利用可能でないならば、乳がん組織はこの研究に用いないこととした。
正常な乳房組織は、乳房縮小手術、良性病変に隣接した正常組織および予防的乳房切除術から選択した。隣接するがんの正常な乳房組織はこの研究には含めなかった。患者コホートは、浸潤性乳管癌(IDC)(n=180)、浸潤性小葉癌(ILC)(n=15)、浸潤性粘液性癌(IMC)(n=9)、腺管上皮内癌(DCIS)(n=61)、上皮内小葉癌(LCIS)(n=1)および正常な乳房組織を有する45人の個体から構成された。乳がん診断は、患者組織標本の組織病理学的分析に基づいた。研究中のIDC症例を含む全患者の追跡時間は60カ月であった。記録された臨床病理学的パラメータは、手術時の年齢、腫瘍の組織型、腫瘍サイズ、AJCC pTNM病期、リンパ節状態、腫瘍悪性度、疾患の再発、ER/PR状態、ホルモン処置、放射線療法および/または化学療法を含む。本研究に含めた全患者のホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックは、MSH腫瘍バンクから取得し、病理学者が再調査し、以下に記載するようにEp−ICDおよびEpEx特異的抗体による免疫組織化学的染色のための組織切片を切断するために使用した。
免疫組織化学(IHC)
乳癌のホルマリン固定パラフィン包埋切片(厚さ4μm)を以前に記載したようにEp−ICDおよびEpEx免疫染色のために使用した(Ralhan et al., BMC Cancer 2010, 10(1):331)。簡単に説明すると、脱パラフィン化および再水和後のEpExについては、抗原賦活化をクエン酸緩衝液0.01M、pH3.0中でマイクロウェーブオーブンを使用して実施し、組織切片を過酸化水素(0.3%、v/v)中で20分間インキュベートすることによって内在性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。Ep−ICDについては、組織切片を垂直方向に62℃で1時間加熱することによって脱パラフィンし、キシレンおよび段階的アルコール系列で処理し、非特異的結合は正常ウマまたはヤギ血清でブロックした。Epitomics Inc.(Burlingame、CA)製のウサギ抗ヒトEp−ICDモノクローナル抗体をこの研究に使用した。α−Ep−ICD抗体1144は、ヒトEpCAMの細胞質ドメインを認識し、甲状腺癌およびその他の上皮がんにおけるEp−ICD発現の以前の研究で使用したことがある(Ralhan et al., BMC Cancer 2010)。抗EpCAMモノクローナル抗体EpEx(MOC−31、AbD Serotec、Oxford、UK)は、アミノ末端領域における細胞外成分(EGF1ドメイン−aa27〜59)を認識する(Chaudry et al., Br J Cancer 2007, 96(7):1013-1019)。切片をα−Ep−ICDウサギモノクローナル抗体1144(1:1500に希釈)またはマウスモノクローナル抗体MOC−31(1:200に希釈)のいずれかで60分間インキュベートし、その後ビオチニル化した第2抗体(ヤギ抗ウサギまたはヤギ抗マウス)で20分間インキュベートした。切片を最後にVECTASTAIN Elite ABC試薬(Vector Laboratories、Burlington、ON、Canada)でインキュベートし、ジアミノベンジジンを色素原として使用した。次に、組織切片をヘマトキシリンで対比染色した。陰性対照は、1次抗体の代わりにアイソタイプ特異的IgGでインキュベートした乳房組織切片からなり、陽性対照(Ep−ICDを発現することが知られている結腸がん組織切片)は、Ep−ICDおよびEpExの両方のための各染色バッチそれぞれでインキュベートした。
IHCの評価および採点
免疫陽性染色は、最終転帰について知らされていない2人の研究者が組織切片の病理学的に最も進行した5つの領域において手動で評価し、これら5つのスコアの平均は以前に記載されたように計算した(Ralhan et al., BMC Cancer 2010)。切片は免疫陽性細胞の割合および染色の強度の両方に基づいて採点した。
陽性の割合については、以下のスケール:0、免疫反応性を示す細胞<10%細胞、;1、10〜30%細胞;2、31〜50%細胞;3、51〜70%細胞;4、>70%細胞、に基づいて細胞にスコアを割り当てた。
切片はまた、以下の0、無し;1、軽度;2、中程度;3、強度のように染色の強度に基づいて定性的に採点した。
各組織切片の全スコア(0から7の範囲)は、乳がん組織切片それぞれについて陽性の割合と強度のスコアを加算することによって得られた。5つの領域の全スコア平均をさらなる統計解析のために使用した。各組織切片は、前述の陽性割合および強度のスケールに従って細胞質および核Ep−ICDならびに膜EpExについて採点した。
IHCデータの統計学的解析
IHCデータはSPSS 21.0ソフトウェア(SPSS、Chicago、IL)およびGraphPad Prism 6.02ソフトウェア(GraphPad Software、La Jolla、CA)を用いて以前に記載されたように統計学的解析を行った(Ralhan et al., Mol Cell Proteomics 2008, 7(6):1162-1173)。両側検定p値を全解析において取得し、p値<0.05を統計学的に有意と見なした。カイ二乗分析を使用してEp−ICDおよびEpEx発現と臨床病理学的パラメータとの間の関係を決定した。無病生存期間(DFS)は、カプランマイヤー法および多変数Cox回帰によって分析した。ハザード比(HR)、95%信頼区間(95%CI)およびp値は、ログランク検定を使用して推定した。無病生存期間または有害な臨床事象(臨床的再発、遠位転移および/または死亡として定義される)は、研究の評価項目であると考えられた。IHC統計学的解析のカットオフは、以前に記載したような受信者動作曲線から得られた最適感度および特異性に基づいた(Ralhan et al., PLoS One 2010, 5(11):e14130)。核Ep−ICDについては、IHCスコア≧2は、分析した組織全てについて免疫陽性であると見なした。細胞質Ep−ICDについては、IHCスコア≧4は、分析した組織全てについて免疫陽性であると見なした。膜EpExについては、IHCスコア≧3は、分析した組織全てについて免疫陽性であると見なした。
Ep−ICD細胞内局在係数(ESLI)の採点
IHCデータを評価および採点した後、ESLIの計算を行った。ESLIは、以下の式ESLI=1/2×(核Ep−ICDの%陽性スコア+核Ep−ICDの強度スコア+細胞質Ep−ICDの%陽性スコア+細胞質Ep−ICDの強度スコア)に従って計算した。前記で示したように、%陽性スコアはスケール0から4のスコアを含み、強度スコアはスケール0から3のスコアを含む。ESLIカットオフ値3は、予後良好患者および予後不良患者の試料を区別するために有用であることが見出された。例えば、ESLI値≧3は、「陽性」結果と見なされ、乳がんの予後不良を示し、ESLI値<3は「陰性結果」と見なされ、乳がんの予後良好を示した。
結果
IDC180症例および正常対照45人を含む266人の乳癌の臨床病理学的パラメータおよび処置の詳細を表1にまとめて示す。患者の年齢中央値は59.9歳であった30.6〜89.8歳の範囲)。AJCCpTNM病期I(35.3%)およびII(32.7%)は、このコホートの腫瘍の大部分を占めた。腫瘍悪性度分布は、悪性度I−21.1%;II−39.8%およびIII−32.0%であった。IDC症例の中でも、大部分はまたAJCCpTNM病期I(62.8%)およびII(32.2%)であった。IDC症例は、悪性度I−23.3%;悪性度II−36.7%および悪性度III−36.1%腫瘍から構成された。

乳がん組織におけるEp−ICDおよびEpExの発現
乳がん組織型におけるEp−ICDおよびEpExの発現パターンを決定するために、DCIS、IDC、ILCおよびIMCの組織をIHCによって分析し、正常(すなわち、非がん性)乳房組織と比較した。核Ep−ICD、細胞質Ep−ICDおよび膜性EpExの陽性割合および膜性EpExの損失の概要を表2に示す。乳がんサブタイプにおけるEp−ICDおよびEpEx発現の代表的な顕微鏡写真を図1(AおよびB)に示す。調べた266例の乳癌のうち、121例(46%)は核Ep−ICDについて陽性で、185例(70%)は膜性EpExについて陽性であったが、一方81例では膜性EpEx発現の損失が示された。これを、45例中11例(24%)が核Ep−ICDに免疫応答し、45例中19例(52%)が膜性EpExについて陽性である正常乳房組織と比較する。特に、ILCの15例中12例(80%)では膜性EpExの損失が示され、DCISの61例中14例(23%)、IDCの180例中52例(29%)およびIMCの9例中3例(33%)と対照的であった。細胞質Ep−ICDは、調べた全組織学的サブタイプおよび正常組織において頻繁に存在した(正常組織87%、DCIS79%、IDC81%、ILC80%およびIMC100%)。核Ep−ICDは、正常組織(45例中11例、24%)と比較して乳癌(266例中121例、46%)ではより頻繁に陽性であった。個々のサブタイプの評価によって、核Ep−ICD蓄積はILC(15腫瘍中10例、67%)、DCIS61例中30例(49%)、IDC180例中75例(42%)およびIMC9例中5例(56%)で頻繁に検出された。
Ep−ICDとIDC患者の臨床病理学的特性の関係
IDC患者における核および細胞質Ep−ICD発現と臨床病理学的特性との関連を表3に示す。核Ep−ICD蓄積は、臨床的に再発したIDC患者全てにおいて有意に関連して認められた(25人の患者のうち25人、100%;p<0.001、オッズ比(OR)=1.50、95%信頼区間(CI)=1.28〜1.76)。核Ep−ICD過剰発現は、初期腫瘍悪性度(悪性度IおよびII)(108人の患者のうち53人、49%;p=0.018、OR=0.46、95%CI=0.24〜0.89)および手術時のリンパ節転移無し(123人の患者のうち58人、47%;p=0.028、OR=0.48、95%CI=0.24〜0.98)と有意に関連した。細胞質Ep−ICD蓄積はまた、臨床的に再発した患者1人以外の全患者において認められた(25人の患者中24人、96%;p=0.035、OR=6.75、95%CI=0.88〜51.67)。核または細胞質Ep−ICDとER/PR状態、AJCCpTNM病期、T期、腫瘍サイズまたは診断時の患者の年齢の間には関連は認められなかった(表3)。膜性EpExまたは膜性EpExの損失は、乳がん患者のこのコホートにおける臨床病理学的パラメータのいずれとも有意な相関を示さなかった(データは示さず)。

全乳癌患者における有害な臨床事象(再発、遠位転移および/または死亡)の発生は患者121人中42人で認められた(34.7%)。核Ep−ICDが陽性のIDC患者のみの小集団分析では、有害な臨床事象は患者75人中25人で示された(33.3%)。乳癌患者のコホート全体では、核Ep−ICD蓄積が陽性の患者のみが有害な臨床事象を有した。有害な臨床事象または再発を経験した患者全ての評価によって、これらの患者42人のうち37人(88.1%)が初期腫瘍(AJCCpTNM病期IまたはII)を有し、5人(11.9%)がIIIまたはIV期の腫瘍であることが示された。有害な臨床事象を有するIDC患者25人のうち、25人中21人(84%)が初期腫瘍(AJCCpTNM病期IおよびII)を有し、25人中4人(16%)がAJCCpTNM病期IIIおよびIV症例であった。
無病生存期間のためのEp−ICD発現の予後診断上の使用
核Ep−ICD蓄積、臨床病理学的パラメータと無病生存期間との間の関連を評価した(表4)。有意な関連は、核Ep−ICD発現と無病生存期間の間で認められ(p<0.001)、第3四分位生存期間は40.9カ月に減少した(図2A)。対照的に、核Ep−ICD陽性を示さない患者は全て、処置後5年経ても生存し、発病しなかった。Cox多変数回帰分析によって、有害な臨床事象のための最も重要な予後マーカーとして核Ep−ICDが同定された(p=0.008、ハザード比(HR)=70.47、95%C.I.=3.00〜1656.24;表4)。IDC患者の小集団分析によってまた、核Ep−ICD発現と無病生存期間の間で有意な関連が示され(p<0.001)、第3四分位生存期間は39.5カ月に減少した(図2B)。対照的に、核Ep−ICD陽性を有さない患者は全て、手術後5年の時点で生存しており発病していなかった。IDC症例の中で、Cox多変数回帰分析によって、核Ep−ICDが有害な臨床事象のための最も重要な予後マーカーとなることが示された(p=0.011、HR=80.18、95%C.I.=2.73〜2352.2)。核Ep−ICD陽性IDC患者75人中50人は5年の追跡期間中再発しなかった。
核Ep−ICDは、正常組織と比較して乳がんでより頻繁に発現した。腺管上皮内癌(DCIS)および浸潤性乳管癌(IDC)の患者における核Ep−ICD発現増加と無病生存期間減少の間には有意な関連が認められた(p<0.001)。核Ep−ICDは、無病生存期間が減少したDCIS患者13人およびIDC患者25人全てにおいて陽性で、一方核Ep−ICD陰性のDCISまたはIDC患者では追跡期間中誰も再発しなかった。特に、再発したIDC患者の大部分は初期病期腫瘍を有していた。多変数Cox回帰分析によって、IDC患者における無病生存期間減少の最も有意な予測因子として核Ep−ICDが同定された(p=0.011、ハザード比=80.18)。
ESLI結果
乳がん患者全てにおいてESLI値≧3と無病生存期間減少の間に有意な関連が認められ(p<0.001;図3A);ESLI陽性症例(すなわち、ESLI値≧3)の生存中央値は139.3カ月で、ESLI陰性症例(すなわち、ESLI値≦3)では115.5カ月であった。浸潤性乳管癌(IDC)患者においてESLI値≧3と無病生存期間減少の間に有意な関連が認められ(p<0.001;図3B);ESLI陽性症例の生存中央値は141.3カ月で、ESLI陰性症例では115.5カ月であった(p<0.001)。
考察
前述したように、本発明者らは以前に乳がんを含む10種の様々な上皮がんにおける核および細胞質Ep−ICD発現を報告した(Ralhan et al., BMC Cancer 2010;米国特許出願公開第2011/0275530号)。しかし、以前の報告では、乳がんを含む10種の上皮がんにおける核Ep−ICD発現と臨床パラメータの相関またはその予後診断上の有用性については調べなかった。本研究では、乳がんの予後を予測するためのマーカーとしてのEp−ICDの適切性を評価した。完全長EpCAMタンパク質の発現はヒト悪性腫瘍において広く調べられたことがあるが、細胞内ドメイン、Ep−ICDの発現および細胞内局在は臨床標本で十分に特徴付けられたことはなかった。本発明のデータによって、悪性乳房組織に対して正常乳房組織において、および進行性乳がんに対して非進行性乳がんにおいて、Ep−ICD発現に有意な差があることが示される。
本研究では、治療的処置後に核Ep−ICD陽性のIDC患者において疾患再発、遠位転移および/または死亡の高い発生率が認められた。対照的に、治療的処置後5年間の追跡期間中に、核Ep−ICD陰性患者において再発、遠位転移または死亡は全く認められなかった。疾患が再発した患者の大部分(42人中37人、88.1%)は、通常では将来再発するリスクが低いと考えられる初期乳癌(AJCCpTNM病期IおよびII)を有していた。核Ep−ICD陰性患者では疾患再発は生じなかった。これらの観察は、核Ep−ICDの存在および蓄積は、初期乳腺腫瘍であっても、進行性乳がんを予測するために使用することができるという発見を支持する。
腫瘍病期またはその他のいかなる臨床変化にも関係なく、核Ep−ICDの存在は治療的処置後5年以内の疾患再発の高いリスクを予測した。多変数Cox回帰分析によって、IDC患者における再発予測ための最も重要な予測因子として核Ep−ICD蓄積が同定された。
結論
治療的処置後に核Ep−ICD陽性の乳房組織を有する患者は、核Ep−ICDを欠如した乳房組織を有する患者よりも予後不良であった。核Ep−ICD陽性患者、特に初期腫瘍病期の患者における疾患の高い再発は、初期進行性乳がんを含む進行性乳がんを同定するために核Ep−ICDの存在および蓄積を使用することができることを示唆しており、これらのがんはより厳密な術後調査および/または処置によっておそらく恩恵を受けるだろう。本発明者らによって開発されたESLIアルゴリズムは、乳がんの予後診断において使用するための特有の手段となる。
本発明はある種の特定の実施形態を参考にして記載したが、それらの様々な改変は当業者には理解されるだろう。本明細書で挙げたいかなる実施例も本発明を例示するためだけに含まれており、決して本発明を限定するものではない。本明細書で挙げた図面は、本発明の様々な態様を例示するためだけのものであり、決して規模を画定したり本発明を限定したりするものではない。添付した特許請求の範囲は、前記の記載で記述した好ましい実施形態によって限定されるべきではないが、本明細書全体と矛盾しない最も広い解釈を提供するべきである。本明細書で引用した先行技術全ての開示は、その全体を参照により本明細書に組み込む。

Claims (24)

  1. 対象における乳がんを予後診断する方法であって、
    (a)対象の生体試料中の核Ep−ICDの量を測定すること、
    (b)生体試料中で測定された量を対照と比較すること、および
    (c)核Ep−ICDの測定量と対照との間の比較に基づいて乳がんを予後診断することを含む方法。
  2. 対照が、
    非進行性乳がん試料中の核Ep−ICDの量であるならば、核Ep−ICDの測定量がより高いことは予後不良であることを示し、核Ep−ICDの測定量が等しいかもしくはより低いことは予後良好であることを示し、または
    進行性乳がん試料中の核Ep−ICDの量であるならば、核Ep−ICDの測定量が等しいかもしくはより高いことは予後不良であることを示す、請求項1に記載の方法。
  3. 非進行性乳がん試料が、核Ep−ICD量の測定後少なくとも40カ月間疾患の進行がないことが知られている、請求項2に記載の方法。
  4. 進行性乳がん試料が、核Ep−ICD量の測定後約5年未満疾患が進行することが知られている、請求項2または3に記載の方法。
  5. 予後不良が、5年未満の無病生存期間を含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 無病生存期間が、約41カ月以下である、請求項5に記載の方法。
  7. 予後良好が、少なくとも約5年の無病生存期間を含む、請求項2から6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 対象の生体試料が、治療的処置後に得られる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 対象の生体試料が、乳房上皮細胞、乳房組織、乳腺腫瘍組織および病期IもしくはIIの乳がん腫瘍細胞の1つまたは複数を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 予後診断される乳がんが、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、浸潤性粘液性癌、腺管上皮内癌または上皮内小葉癌である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 核Ep−ICDの測定量が、定量的および定性的量の1つまたは複数である、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 定量的量が、生体試料中の核Ep−ICD陽性である細胞の割合または核Ep−ICDの絶対量である、請求項11に記載の方法。
  13. 定性的量が、核Ep−ICDを示す標識によって放出されるシグナルの強度である、請求項11または12に記載の方法。
  14. 核Ep−ICDおよび細胞質Ep−ICDの定量的および定性的スコアを決定することをさらに含み、定量的および定性的な核および細胞質Ep−ICDスコアの増加は乳がんの予後不良と関連する、請求項13に記載の方法。
  15. 定量的および定性的な核Ep−ICDおよび細胞質Ep−ICDスコアの決定が、
    (i)試料を、Ep−ICDまたはその一部に特異的に結合する結合剤および第1の結合剤のEp−ICDへの結合を検出するための検出可能な標識と接触させることであって、検出可能な標識は、結合剤がEp−ICDに結合すると検出可能なシグナルを放出すること、
    (ii)(a)結合剤に結合した核内のEp−ICDを有する細胞の試料中の割合を含む第1の割合を測定し、第1のスケールに従って第1の定量的スコアを第1の割合に割り当てること、
    (b)結合剤に結合した細胞質中のEp−ICDを有する細胞の試料中の割合を含む第2の割合を測定し、第1のスケールに従って第2の定量的スコアを第2の割合に割り当てること、
    (iii)(a)標識によって核内に放出されたシグナルの強度を含む第1の強度を測定し、第2のスケールに従って第1の定性的スコアを第1の強度に割り当てること、
    (b)標識によって細胞質内に放出されたシグナルの強度を含む第2の強度を測定し、第2のスケールに従って第2の定性的スコアを第2の強度に割り当てること
    を含む、請求項14に記載の方法。
  16. 核Ep−ICDおよび細胞質Ep−ICDの全スコアを計算することをさらに含み、計算が、
    (a)核Ep−ICD全スコアを生成するために第1の定量的および定性的スコアを加算すること、
    (b)細胞質Ep−ICD全スコアを生成するために第2の定量的および定性的スコアを加算すること
    を含む、請求項15に記載の方法。
  17. 試料のEp−ICD細胞内局在係数(ESLI)値を計算することであって、ESLI値が、核Ep−ICD全スコアおよび細胞質Ep−ICD全スコアの合計を2で除したものであること、
    計算したESLI値を参考値と比較することであって、参考値が、
    (i)非進行性乳がんを示すESLI値、または
    (ii)進行性乳がんを示すESLI値であること、ならびに
    試料の計算したESLI値が(i)の参考値を上回るか、または(ii)の参考値を上回るか等しいとき、対象の乳がんは予後不良であることを決定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
  18. 前記結合剤が抗体である、請求項15から17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 標識が、検出可能な放射性同位元素、発光化合物、蛍光化合物、酵素標識、ビオチニル基および第2のレポーターによって認識可能な予め決定されたポリペプチドエピトープから選択する、請求項15から18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 定量的量が、免疫組織化学的(IHC)分析を使用して得られる、請求項11から19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 定性的量が、免疫組織化学的(IHC)分析を使用して得られる、請求項11から20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 第1のスケールが、以下のスコアを含み、
    スコア0は10%未満の細胞が陽性のとき割り当てられ、
    スコア1は10〜30%の細胞が陽性のとき割り当てられ、
    スコア2は31〜50%の細胞が陽性のとき割り当てられ、
    スコア3は51〜70%の細胞が陽性のとき割り当てられ、
    スコア4は70%超の細胞が陽性のとき割り当てられ、
    第2のスケールが、以下のスコアを含み、
    スコア0はシグナルが検出されないときに割り当てられ、
    スコア1は軽度のシグナルが検出されるとき割り当てられ、
    スコア2は中程度のシグナルが検出さるたとき割り当てられ、
    スコア3は強いシグナルが検出されるときに割り当てられる、請求項15から21のいずれか1項に記載の方法。
  23. 非進行性乳がんを示すESLI値は3未満で、進行性乳がんを示すESLI値は3以上である、請求項17から22のいずれか1項に記載の方法。
  24. 核Ep−ICDの量の測定が、手動または自動である、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
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