JP2017226624A - 炭化水素の製造方法 - Google Patents

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【課題】常温の大気から二酸化炭素の回収及び隔離が可能であり、かつ低エネルギーで炭化水素を製造することができる炭化水素の製造方法を提供する。【解決手段】炭化水素の製造方法は、常温の大気中に放置した状態で大気中の水分及び二酸化炭素を吸収する触媒を大気中に所定時間暴露する第1工程と、第1工程において水分及び二酸化炭素を吸収した触媒を加熱して炭化水素を生成する第2工程とを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は炭化水素の製造方法に関するものである。
特許文献1は従来の炭化水素の製造方法を開示している。この炭化水素の製造方法は、先ず、水を入れた容器にマグネシウム又はマグネシウム化合物の粒子体を入れる。次に、容器内の水に二酸化炭素を注入して、バブリングを行う。そして、容器に蓋をして密封して静置する。すると、水に接触したマグネシウム又はマグネシウム化合物は、表面に吸着した水と反応して酸化される途中で、表面に水素が付いた遷移状態になる。そして、水中の二酸化炭素を遷移状態のマグネシウム又はマグネシウム化合物が吸着することで、二酸化炭素が水素と反応して還元され、メタンが生成される。そして、生成されたメタンがマグネシウム又はマグネシウム化合物から脱離すると考えられる。この炭化水素の製造方法は常温常圧の雰囲気で反応が行われる。このため、この炭化水素の製造方法は、外部から加熱又は冷却、及び加圧又は減圧をしなくても、所定量の炭化水素を得ることができるため、反応設備を単純且つ低コストにすることができる。
再公表特許WO2013/108833号公報
しかし、特許文献1の炭化水素の製造方法は、水にマグネシウム又はマグネシウム化合物を入れるとともに、マグネシウム又はマグネシウム化合物を入れた水に二酸化炭素を注入してバブリングする必要がある。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、常温の大気から二酸化炭素の回収及び隔離が可能であり、かつ低エネルギーで炭化水素を製造することができる炭化水素の製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
本発明の炭化水素の製造方法は、常温の大気中に放置した状態で大気中の水分及び二酸化炭素を吸収する触媒を大気中に所定時間暴露する第1工程と、
前記第1工程において水分及び二酸化炭素を吸収した触媒を加熱して炭化水素を生成する第2工程と、
を備えていることを特徴とする。
この炭化水素の製造方法は、第1工程において、常温の大気中から水分と二酸化炭素とを回収及び隔離することができる。そして、この炭化水素の製造方法は、第1工程及び第2工程によって、低エネルギーで炭化水素を生成することができる。
また、この炭化水素の製造方法において、第2工程を実行し、炭化水素を生成した触媒を再度、大気中に放置すれば、大気中の水分及び二酸化炭素を吸収する。このように、この炭化水素の製造方法は同じ触媒を何度も繰り返して炭化水素の生成に利用することができる。
第1工程及び第2工程における反応を示すモデル図である。 試料1〜3の外観を示す斜視図である。 (a)は試料1の表面を撮影したSEM像であり、(b)は試料2の表面を撮影したSEM像である。 試料3の表面を撮影したSEM像である。 大気中に暴露した暴露時間に対する試料1及び試料2の重量変化を示すグラフである。 大気中に暴露した暴露時間に対する試料3の重量変化を示すグラフである。 加熱分析装置を示す概略図である。 (A)は試料1の昇温脱離ガス分析スペクトルを示し、(B)はCHのみを示すグラフである。 (A)は試料2の昇温脱離ガス分析スペクトルを示し、(B)はCHのみを示すグラフである。 (A)は試料1を523Kまで加熱した時に得られたガスクロマトグラフィーのスペクトルを示し、(B)は試料1を773Kまで加熱した時に得られたガスクロマトグラフィーのスペクトルを示すグラフである。 試料2を523Kまで加熱した時に得られたガスクロマトグラフィーのスペクトルを示すグラフである。 (A)は試料3の昇温脱離ガス分析スペクトルを示し、(B)はCHのみを示すグラフである。 試料3を773Kまで加熱した時に得られたガスクロマトグラフィーのスペクトルを示すグラフである。
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
本発明の触媒は、LiZrO又はLiSiOを主成分として含有した焼結多孔質体であり得る。この焼結多孔質体は嵩密度が低い方が好ましい。また、本発明の触媒はこの焼結多孔質体を粉砕した粉末であってもよい。
本発明の第1工程において触媒を大気中に暴露する時間は200時間以上、好ましくは750時間以上である。
第2工程において触媒を加熱する温度は、触媒がLiZrOを主成分として含有した焼結多孔質体である場合、350K(ケルビン)以上であり、触媒がLiSiOを主成分として含有した焼結多孔質体である場合、350K(ケルビン)以上である。
第1工程及び第2工程における反応についての詳細は判明していないが、例えば、LiZrOを主成分として含有した焼結多孔質体を触媒としてメタン(CH)を製造する際について、図1に示すような反応が推測される。
つまり、LiZrOで形成された触媒の表面及びバルク内で、Li原子の移動による電気的中性を保つためにO空孔が形成される。そして、この触媒を大気中に暴露すると、大気中に含有するHO及びCOが触媒表面に形成されたO空孔及びLi原子と反応して、H、LiOH及びLiCOが生成される。生成されたHはバルク内を拡散してO空孔に捕獲される。もしくはLiOH及びLiCOと再結合してHO及びLiCHが生成される。そして、この状態の触媒を加熱すると、O空孔から脱離したH同士の再結合によってHが生成され、HとLiOHとの再結合によってHOが生成され、HO(もしくはH)とLiCHとの再結合によってCHが生成されて放出されると考えられる。
<実施例>
次に、本発明の炭化水素の製造方法について、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
実施例として、3種類の試料を作成して反応を行い、その反応後のガス成分について分析を行った。
各試料Xは、図2に示すように、直径8mm、厚さ1mmの円盤形状に形成した。試料1は、LiZrOを主成分として含有した焼結多孔質体であり、嵩密度が2.53g/cmである。試料2は、LiZrOを主成分として含有した焼結多孔質体であり、嵩密度が3.78g/cmである。図3(a)は試料1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したSEM像であり,図3(b)は試料2の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したSEM像である。試料3は、LiSiOを主成分として含有した焼結多孔質体であり、嵩密度が1.57g/cmである。図4は試料3の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したSEM像である。
先ず、各試料Xを大気中に暴露する第1工程を実施した。この際の暴露時間に対する試料1及び試料2の重量変化を図5に示し、暴露時間に対する試料3の重量変化を図6に示す。試料1は、大気中に約2,000時間暴露すると約25.0wt%まで重量が増加し、それよりも長く大気中に暴露しても重量は増加しなかった。また、試料2は大気中に約200時間暴露すると約1.1wt%まで重量が増加し、それよりも長く大気中に暴露しても重量は増加しなかった。この結果から、触媒を形成する焼結多孔質体は嵩密度が低いほど大気中の水分及び二酸化炭素を多く吸収(回収及び隔離)することがわかる。
また、試料3は大気中に約750時間暴露すると約1.2wt%まで重量が増加し、それよりも長く大気中に暴露しても重量は増加しなかった。この結果から、LiZrOを主成分として含有した焼結多孔質体のほうが、LiSiOを主成分として含有した焼結多孔質体に比べて、大気中の水分及び二酸化炭素を多く吸収(回収及び隔離)することがわかる。
次に、図7に示す加熱分析装置を利用して、第2工程を実施し、その際に放出されるガス種を判別した。この加熱分析装置は、反応管10、電気炉20、真空排気装置30、キャリアガスボンベ40、ガスクロマトグラフィー装置50、昇温脱離ガス分析装置60、及び連通管70を備えている。連通管70は、本管71と、本管71の一端から2本に分岐した分岐管72,72とから構成されている。反応管10は石英管である。この反応管10は上端が開閉自在に蓋部材11により封鎖されている。この反応管10は下部を電気炉20内に挿入している。この反応管10は蓋部材11及び第1開閉弁V1を介して本管71に連通している。真空排気装置30は第2開閉弁V2を介して本管71の他端に連通している。キャリアガスボンベ40は反応管10が本管71に連通している部分よりも真空排気装置30側で第3開閉弁V3を介して本管71に連通している。ガスクロマトグラフィー装置50及び昇温脱離ガス分析装置60は分岐管71,71の先端に第4開閉弁V4又は第5開閉弁V5を介して連通している。
大気中に4,000時間暴露した試料1を加熱分析装置の反応管10内に収納し、電気炉20で加熱した際の昇温脱離ガス分析スペクトルを図8(A),(B)に示す(図8(B)は図8(A)からCHのみを取り出したものである。)。また、大気中に4,000時間暴露した試料2を加熱分析装置の反応管10内に収納し、真空中で加熱した際の昇温脱離ガス分析スペクトルを図9(A),(B)に示す(図9(B)は図9(A)からCHのみを取り出したものである。)。これらの結果から、試料1及び試料2からCHが生成(放出)される開始温度は350Kであることがわかる。また、試料1の方が試料2に比べてCHが生成量(放出量)多い。つまり、触媒を形成する焼結多孔質体は嵩密度が低いほど大気中の水分及び二酸化炭素を多く吸収(回収及び隔離)し、多くのCHを生成(放出)することがわかる。
また、大気中に4,000時間暴露した試料1を真空中で523Kまで加熱した時と、773Kまで加熱した時に得られたガスクロマトグラフィーのスペクトルを図10(A),(B)に示す。また、大気中に4,000時間暴露した試料2を真空中で523Kまで加熱した時に得られたガスクロマトグラフィーのスペクトルを図11に示す。これらの結果から、試料1及び試料2からCHが生成(放出)されていることがわかる。また、触媒の加熱温度を高くすれば、CHの生成量(放出量)が多くなることがわかる。
次に、大気中に1,000時間暴露した試料3を加熱分析装置の反応管10内に収納し、電気炉20で加熱した際の昇温脱離ガス分析スペクトルを図12(A),(B)に示す(図12(B)は図12(A)からCHのみを取り出したものである。)。また、大気中に1,000時間暴露した試料3を真空中で773Kまで加熱した時に得られたガスクロマトグラフィーのスペクトルを図13に示す。これらの結果から、試料1及び試料2に比べてCHの生成量(放出量)は少ないが、試料3からもCHが生成(放出)されていることがわかる。
このように、加熱分析装置を利用して、第2工程を実行し、CHを生成(放出)した試料1〜3を再度、大気中に放置すれば、大気中の水分及び二酸化炭素を吸収する。このように、この炭化水素の製造方法は同じ触媒を何度も繰り返して炭化水素の生成に利用することができる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では円盤形状の焼結多孔質体を試料(触媒)としたが、触媒は焼結多孔質体を粉砕した粉末であってもよい。
(2)実施例では触媒がLiZrO又はLiSiOを主成分として含有した焼結多孔質体であったが、常温の大気中に放置した状態で大気中の水分及び二酸化炭素を吸収する触媒であればよい。
(3)実施例では試料(触媒)を真空中で加熱したが、第2工程において触媒を真空中で加熱しなくてもよい。
(4)実施例ではCHを生成したが、他の炭化水素も生成し得る。

Claims (2)

  1. 常温の大気中に放置した状態で大気中の水分及び二酸化炭素を吸収する触媒を大気中に所定時間暴露する第1工程と、
    前記第1工程において水分及び二酸化炭素を吸収した触媒を加熱して炭化水素を生成する第2工程と、
    を備えていることを特徴とする炭化水素の製造方法。
  2. 前記触媒はLiZrO又はLiSiOを主成分として含有した焼結多孔質体であることを特徴とする請求項1記載の炭化水素の製造方法。
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