JP2017219472A - 高クロム鋼のクリープ寿命診断方法 - Google Patents

高クロム鋼のクリープ寿命診断方法 Download PDF

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恭久 伊藤
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Abstract

【課題】高クロム鋼を含む溶接継手の寿命を精度よく診断することができる診断方法を提供する。
【解決手段】高クロム鋼からなる2つの母材2,3が、溶接金属からなる溶接部4を介して溶接されてなる溶接部材1のクリープ寿命を診断する方法であって、母材2,3と溶接部4との間に介在する熱影響部細粒域6の表面組織の状態を観察し、高温で溶接部材1を使用中に、熱影響部細粒域6の表面に生じるクリープボイドの孔径の分布状態を観察し、該分布状態から、熱影響部細粒域6におけるクリープ損傷の進行度を判定することにより、前記溶接部材1の寿命を診断する高クロム鋼のクリープ寿命診断方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、高クロム鋼のクリープ寿命診断方法に関する。
火力発電所の主蒸気管や高温再熱蒸気管等の大径管(配管)の溶接継手には、欧州を中心に、クロムを多く含むASME(American Society of Mechanical Engineers、アメリカ機械学会)規格のGr92材が広く用いられている。これらの配管は、溶接継手のクリープ損傷が寿命を支配するとされている。そこで、これらの配管の寿命を判定するために、多くのデータが採取されつつある。
しかしながら、これらのデータは標準サイズの試験片を用いて採取されたものであり、実規模の溶接継手に関する特性については、別途、検証が必要であった。また、クリープ損傷の蓄積の途中過程については、ほとんど知見がないため、新たな試験を実施する必要があった。
従来、高クロム鋼(9Cr鋼)の寿命診断法としては、例えば、ボイド個数密度法(単位面積当たりのボイドの個数と損傷量の相関から寿命を求める手法)、ボイド面積率法(単位面積当たりに占めるボイドの面積と損傷量の相関から寿命を求める手法)等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−196935号公報
しかしながら、従来の寿命診断法は、寿命診断の精度に問題があった。例えば、ボイド個数密度法により、高クロム鋼の表面組織におけるボイドの個数変化を観察すると、クリープ損傷が進行しているにもかかわらず、ボイドの個数があまり変化しない期間(クリープ損傷の蓄積時間)がある。この期間には、ボイドの個数が変化しないため、ボイドの個数を測定しただけでは、高クロム鋼の寿命を精度よく診断することができなかった。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、高クロム鋼を含む溶接継手の寿命を精度よく診断することができる高クロム鋼のクリープ寿命診断方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、高クロム鋼を含む溶接継手のクリープ損傷が進行するに伴って、診断対象材料の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径に対する、診断対象材料の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径が増大することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の一態様は、高クロム鋼からなる2つの母材が、溶接金属からなる溶接部を介して溶接されてなる溶接部材のクリープ寿命を診断する方法であって、前記母材と溶接部との間に介在する熱影響部細粒域の表面組織の状態を観察し、高温で前記溶接部材を使用中に、前記熱影響部細粒域の表面に生じるクリープボイドの孔径の分布状態を観察し、該分布状態から、前記熱影響部細粒域におけるクリープ損傷の進行度を判定することにより、前記溶接部材の寿命を診断する高クロム鋼のクリープ寿命診断方法である。
本発明の一態様は、前記クリープ損傷の進行度が75%以上の場合、前記クリープ損傷の進行度が増加するに伴って、前記溶接部材の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm)に対する、前記溶接部材の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)の比が増加することに基づいて、前記クリープ損傷の進行度を判定してもよい。
本発明の一態様は、高クロム鋼のクリープ寿命診断方法において、予めクリープ損傷の進行度が異なる複数段階において、前記溶接部材と組成が等しいクリープ試験片の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm)に対する、前記クリープ試験片の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)の比を測定し、その測定結果と、使用中の前記溶接部材の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm)に対する、前記溶接部材の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)の比とを比較することにより、前記溶接部材の熱影響部細粒域におけるクリープ損傷の進行度を判定してもよい。
本発明の一態様は、高クロム鋼のクリープ寿命診断方法において、前記表面組織をレプリカ法により採取してもよい。
上記した高クロム鋼のクリープ寿命診断方法によれば、高クロム鋼を含む溶接継手の寿命を精度よく診断することができる高クロム鋼のクリープ寿命診断方法を提供する。
溶接部材の溶接部を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る高クロム鋼のクリープ寿命診断方法で用いられるクリープ試験片の一例の外観を示す光学写真である。 クリープ破断試験による破断材の外観を示す光学写真である。 クリープ破断試験による破断材の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを観察した走査型電子顕微鏡像である。 クリープ途中止め試験の途中止め時間が7000時間の時に、クリープ試験片の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを観察した走査型電子顕微鏡像である。 クリープ途中止め試験の途中止め時間が8000時間の時に、クリープ試験片の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを観察した走査型電子顕微鏡像である。 クリープ途中止め試験の途中止め時間が8500時間の時に、クリープ試験片の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを観察した走査型電子顕微鏡像である。 クリープ途中止め試験の途中止め時間が9000時間の時に、クリープ試験片の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを観察した走査型電子顕微鏡像である。 クリープ途中止め試験において、(診断対象材料の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm))/(診断対象材料の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm))と、クリープ損傷の進行度(%)との比の経時変化を示すグラフである。
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
[高クロム鋼のクリープ寿命診断方法]
図1は、溶接部材の溶接部を示す概略断面図である。
図1に示すように、溶接部材1は、2つの母材2,3(第1母材2、第2母材3)と、溶接部4と、を有する。溶接部材1では、第1母材2と第2母材3が、溶接金属からなる溶接部4を介して溶接されている。
第1母材2における溶接部4の近傍部分、および、第2母材3における溶接部4の近傍部分には、溶接による熱の影響を受けた熱影響部(Heat Affected Zone:HAZ)5が存在している。熱影響部5の中でも、溶接による熱の影響を強く受けていない第1母材2および第2母材3寄りの部分は、これら2つの母材2,3を構成する結晶粒の大きさが比較的小さい細粒域(熱影響部細粒域、Fine Grain Heat Affected Zone:FGHAZ)6となっている。
2つの母材2,3には、クロムを9質量%〜12質量%程含有する高クロム鋼が用いられている。高クロム鋼としては、例えば、表1に示す組成のものが用いられる。
このような高クロム鋼は、高温強度(耐熱性)に優れる。
このような溶接部材1は、例えば、火力発電所の主蒸気管や高温再熱蒸気管等の大径管(配管)の溶接継手や、ボイラ、加熱炉、石油化学プラント等の高温環境で用いられる配管等の溶接継手として用いられる。
溶接部材1が、長期間にわたって高温で使用されることによって、熱影響部5にクリープボイドが発生する。このクリープボイドは、時間の経過に伴ってその個数が増加する。クリープボイドの個数が増加すると、隣接するクリープボイド同士が連結して微小な亀裂が発生する。この亀裂は徐々に成長し、最終的に第1母材2や第2母材3(熱影響部5)を、その厚み方向に貫通する。すると、この亀裂の部分で第1母材2や第2母材3が破断する。第1母材2や第2母材3が破断した時点が、溶接部材1の寿命と言える。特に、熱影響部5のうち熱影響部細粒域6にて、第1母材2や第2母材3の厚み方向に生じる亀裂を、タイプIV型損傷と言う。
火力発電所、ボイラ、加熱炉、石油化学プラント等の運用においては、安全性や信頼性を確保するために、配管等の溶接継手として用いられる溶接部材1の寿命診断を的確に行う必要がある。
そこで、本発明では、高クロム鋼を含む溶接継手の寿命を精度よく診断することができる高クロム鋼のクリープ寿命診断方法を提供する。
本発明の一実施形態に係る高クロム鋼のクリープ寿命診断方法は、先ず、例えば、実験室において、溶接部4を含む溶接部材1と同様なクリープ試験片を用意して、このクリープ試験片に対してクリープ試験を行う。
クリープ試験片としては、例えば、図2に示すようなものが用いられる。このクリープ試験片の断面の外形形状を、平行部に溶接部の断面が概ね含まれるような矩形とし、その大きさを、厚み方向(紙面の上下方向)が40mm、幅方向(紙面と垂直な方向)が24mmとなるようにした。
そして、クリープ試験の進行中に、所定の時間毎に、クリープ試験片のうち、熱影響部細粒域6の表面組織の状態を観察する。
熱影響部細粒域6の表面組織の状態を観察するためには、例えば、レプリカ法により、熱影響部細粒域6の表面組織を採取する。
レプリカ法により、熱影響部細粒域6の表面組織を採取するには、熱影響部細粒域6の表面にレプリカ膜を形成し、そのレプリカ膜に熱影響部細粒域6の表面組織を転写する。
また、レプリカ膜を形成する前に、熱影響部細粒域6の表面を研磨してエッチングする前処理を行うことが好ましい。前処理を行うことにより、熱影響部細粒域6の表面の酸化物膜や塵等を取り除いて、熱影響部細粒域6の表面に結晶粒界を露出させ、レプリカ膜にその結晶粒界をより鮮明に転写することができる。
本実施形態では、レプリカ膜に転写された結晶粒界を含む熱影響部細粒域6の表面組織を、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)により観察する。
図2に示すクリープ試験片を用いた高クロム鋼のクリープ寿命診断方法を説明する。
縦型電気炉を用いた大型クリープ試験機にクリープ試験片をセットし、クリープ破断試験およびクリープ途中止め試験を実施した。
表2に、クリープ試験の条件を示す。
なお、クリープ途中止め試験における応力が、上記の溶接部材が、火力発電所の主蒸気管や高温再熱蒸気管等の大径管(配管)の溶接継手や、ボイラ、加熱炉、石油化学プラント等の高温環境で用いられる配管等の溶接継手として用いられた場合に想定される応力である。
クリープ試験を途中止めした時(クリープ途中止め試験を実施した時)には、レプリカ法により、クリープ試験片の熱影響部細粒域にレプリカ膜を形成し、熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを採取した。
得られたレプリカを、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡により観察して、熱影響部細粒域の表面に生じるクリープボイドの孔径(μm)の分布状態を観察した。
顕微鏡観察によって観察されたクリープボイドの孔径の分布状態から、熱影響部細粒域におけるクリープ損傷の進行度を判定することにより、クリープ試験片の寿命を診断した。
表3に、クリープ破断試験の破断時間およびクリープ途中止め試験の途中止め時間を示す。
クリープ破断試験の破断時間は、経済産業省令の寿命評価式に準じて計算した値(約2200時間)を約3割上回った。
また、クリープ途中止め試験は、予想破断時間(10000時間)に対して、6000時間、7000時間、8000時間、8500時間、9000時間および9500時間で実施した。
図3に、クリープ破断試験による破断材の外観を示す。図4に、クリープ破断試験による破断材の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを観察した走査型電子顕微鏡像を示す。
図3に示すように、クリープ試験片は溶接部に沿って破断していた。また、クリープ試験片の破面の酸化度合いから、破面は母材の開先のルート側から発生、進展したものと考えられる。
また、図4に示すように、熱影響部細粒域には、多数のクリープボイドが存在することが確認された。すなわち、この多数のクリープボイドにより、クリープ試験片の熱影響部細粒域にて、タイプIV型損傷が発生したと考えられる。クリープボイドの孔径は、数μmの微小な大きさから、15μm程度の結晶粒の粒径に相当する大きさであり、比較的広範囲に分布していた。なお、熱影響細粒域における平均的な結晶粒の粒径は15μmである。微小なクリープボイドは、結晶粒界に生じ、一部の結晶粒に集中的に存在していた。また、微小なクリープボイドのなかには、成長して互いに近接し、連結する過程にあると考えられるものも観察された。
図5に、クリープ途中止め試験の途中止め時間が7000時間の時に、クリープ試験片の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを観察した走査型電子顕微鏡像を示す。
図5に示すように、上述の破断材と同様に、熱影響部細粒域において、微小なクリープボイドが、一部の結晶粒に集中的に存在していた。
なお、クリープ途中止め試験の途中止め時間が6000時間の時にも、微小なクリープボイドが確認された。しかしながら、この時、熱影響部細粒域において、微小なクリープボイドが、一部の結晶粒に集中的に存在していなかった。
図6に、クリープ途中止め試験の途中止め時間が8000時間の時に、クリープ試験片の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを観察した走査型電子顕微鏡像を示す。図7に、クリープ途中止め試験の途中止め時間が8500時間の時に、クリープ試験片の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを観察した走査型電子顕微鏡像を示す。図8に、クリープ途中止め試験の途中止め時間が9000時間の時に、クリープ試験片の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを観察した走査型電子顕微鏡像を示す。
図5と図6を比較すると、クリープ途中止め試験の途中止め時間が8000時間の時には、7000時間の時よりもクリープボイドの個数が顕著に増加していることが確認された。
図6と図7を比較すると、クリープ途中止め試験の途中止め時間が8500時間の時には、8000時間の時に対してクリープボイドの個数には大差がないが、クリープボイドの孔径が結晶粒の粒径と同等であることが確認された。同様に、図6と図8を比較すると、クリープ途中止め試験の途中止め時間が9000時間の時には、8000時間の時に対してクリープボイドの個数には大差がないが、クリープボイドの孔径が結晶粒の粒径と同等であることが確認された。
また、図7と図8を比較すると、クリープ途中止め試験の途中止め時間が9000時間の時には、8500時間の時には存在しなかった微小なクリープボイドが新たに発生していることが確認された。
以上の結果から、以下のようなことが考察される。
クリープ破断試験の破断時間は、上述の通り、寿命評価式に準じて計算した値を上回った。一般に、クリープ試験片が大型化すると、クリープ試験片の熱影響部に作用する応力の多軸度が高まって、クリープ試験片の熱影響部細粒域にて、タイプIV型損傷が発生し易くなると言われている。本試験においても、同様の結果が得られた。
クリープ破断試験における破断材およびクリープ途中止め試験におけるクリープ試験片は、熱影響部細粒域にて、クリープボイドが発生し、タイプIV型損傷が発生していることが確認された。クリープボイドは、従来から確認されている、孔径が結晶粒の粒径と同等のものに加えて、図4にて符号Aで示すように、孔径が数μm(1μm以上10μm未満)程度のものが確認された。孔径が数μm程度のクリープボイドは、熱影響部細粒域の表面全面に存在するのではなく、一部の結晶粒に偏在していた。
また、図5にて符号Bで示すように、微小なクリープボイドが成長して互いに近接し、連結する過程にあると考えられるものも観察された。
さらに、図4にて符号Cで示すように、1つの結晶粒の周囲に、複数のクリープボイドが発生すると、それらのクリープボイドが互いに連結する。これにより、結晶粒界が著しく損傷し、多くの結晶粒が剥離すると考えられる。したがって、図4に符号Dで示す部位、図6および図7に示すように、孔径が結晶粒の粒径と同等(孔径15μm程度)のクリープボイドが存在する場合、熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを作製する際に、結晶粒界が著しく損傷した結晶粒が脱落すると考えられる。
このように、高クロム鋼からなる溶接部材におけるクリープ損傷の発生や進展の過程は、ベイナイト組織を呈する低合金鋼における損傷過程と類似し、結晶粒界における微小なクリープボイドの発生、微小なクリープボイドの成長・連結、結晶粒界の剥離、レプリカ作製時における結晶粒の脱落等の過程を経ると考えられる。
クリープ途中止め試験の途中止め時間が8000時間と8500時間の間では、クリープボイドの個数が増加することよりも、クリープボイドの孔径が大きくなることが顕著であった。これは、クリープボイドが発生すると、そのクリープボイドの周囲に応力が集中して、クリープ損傷が著しく進行することを示していると考えられる。なお、クリープ途中止め試験の途中止め時間が8500時間と9000時間の間では、クリープボイドの個数とクリープボイドの孔径について、明確な違いが確認されなかった。
クリープ途中止め試験の途中止め時間が9000時間の時には、8500時間の時には存在しなかった微小なクリープボイドが新たに発生していることが確認された。このことは、熱影響部細粒域の表面において、クリープボイドが占める面積の割合(面積率)が増加し、全体的に熱影響部細粒域の応力が高くなったことが影響していると考えられる。
クリープ途中止め試験を継続した結果、クリープ試験片は9609時間で破断した。この破断時間(9609時間)がクリープ損傷の進行度が100%の時点となる。従って、途中止め時間6000時間ではクリープ損傷の進行度が62%、途中止め時間7000時間ではクリープ損傷の進行度が73%、途中止め時間8000時間ではクリープ損傷の進行度が83%、途中止め時間8500時間ではクリープ損傷の進行度が88%、途中止め時間9000時間ではクリープ損傷の進行度が94%、途中止め時間9500時間ではクリープ損傷の進行度が98.9%であると言える。
クリープ試験片(溶接部材)の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm)に対する、クリープ途中止め試験の各途中止め時間において測定した、クリープ試験片(溶接部材)の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)の比(以下、比Aと言う。)と、クリープ損傷の進行度(%)との関係を図9に示す。なお、図9において、上記の比Aを、診断対象材料の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm)に対する、診断対象材料の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)の比(以下、比Bと言う。)と表示する。ここで、診断対象材料とは、クリープ試験片(溶接部材)のことである。
以上の観察結果から、次のようなことが分かった。
クリープ途中止め試験の途中止め時間が7000時間(クリープ損傷の進行度が73%)以下では、熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)は連続的に変化しない。なぜならば、1つの結晶粒の周囲に、複数の微小なクリープボイドが発生し、それらのクリープボイドが互いに連結して、孔径が結晶粒の粒径と同等のクリープボイドが発生することがあるからである。
一方、クリープ途中止め試験におけるクリープ損傷の進行度が73%を超えた場合、図9に示すように、クリープ損傷の進行度が増加するに伴って、熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)は連続的に変化する。
図9に示すように、クリープ損傷の進行度が62%(途中止め時間6000時間)のとき、比Bは0.1であった。また、クリープ損傷の進行度が73%(途中止め時間7000時間)のとき、比Bは1であった。また、クリープ損傷の進行度が83%(途中止め時間8000時間)のとき、比Bは1.6であった。また、クリープ損傷の進行度が88%(途中止め時間8500時間)のとき、比Bは2.1であった。また、クリープ損傷の進行度が94%(途中止め時間9000時間)のとき、比Bは2.3であった。また、クリープ損傷の進行度が98.9%(途中止め時間9500時間)のとき、比Bは2.5であった。このように、クリープ損傷の進行度が増加するに伴って、比B(比A)が増加することが分かった。
従って、クリープ損傷の進行度が75%以上の場合、クリープ損傷の進行度が増加するに伴って、比B(比A)が増加することに基づいて、クリープ損傷の進行度を判定することができる。一方、クリープ試験片の熱影響部細粒域の表面組織のレプリカを走査型電子顕微鏡像等で観察した際、1つの結晶粒の周囲に、複数の微小なクリープボイドが発生している場合には、クリープ損傷の進行度が75%未満であると判定する。
また、本実施形態の高クロム鋼のクリープ寿命診断方法では、予めクリープ損傷の進行度が異なる複数段階において、溶接部材と組成が等しいクリープ試験片の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm)に対する、そのクリープ試験片の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)の比を測定し、その測定結果と、使用中の溶接部材の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm)に対する、その溶接部材の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)の比とを比較することにより、使用中の溶接部材の熱影響部細粒域におけるクリープ損傷の進行度を判定することもできる。
以上説明した通り、本実施形態の高クロム鋼のクリープ寿命診断方法によれば、高クロム鋼を含む溶接継手の寿命を精度よく診断することができる。
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
1 溶接部材
2 第1母材(母材)
3 第2母材(母材)
4 溶接部
5 熱影響部
6 熱影響部細粒域

Claims (4)

  1. 高クロム鋼からなる2つの母材が、溶接金属からなる溶接部を介して溶接されてなる溶接部材のクリープ寿命を診断する方法であって、
    前記母材と溶接部との間に介在する熱影響部細粒域の表面組織の状態を観察し、
    高温で前記溶接部材を使用中に、前記熱影響部細粒域の表面に生じるクリープボイドの孔径の分布状態を観察し、該分布状態から、前記熱影響部細粒域におけるクリープ損傷の進行度を判定することにより、前記溶接部材の寿命を診断することを特徴とする高クロム鋼のクリープ寿命診断方法。
  2. 前記クリープ損傷の進行度が75%以上の場合、前記クリープ損傷の進行度が増加するに伴って、前記溶接部材の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm)に対する、前記溶接部材の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)の比が増加することに基づいて、前記クリープ損傷の進行度を判定することを特徴とする請求項1に記載の高クロム鋼のクリープ寿命診断方法。
  3. 予めクリープ損傷の進行度が異なる複数段階において、前記溶接部材と組成が等しいクリープ試験片の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm)に対する、前記クリープ試験片の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)の比を測定し、その測定結果と、使用中の前記溶接部材の熱影響部細粒域における平均的な結晶粒の粒径(15μm)に対する、前記溶接部材の熱影響部細粒域におけるクリープボイドの最大径(μm)の比とを比較することにより、前記溶接部材の熱影響部細粒域におけるクリープ損傷の進行度を判定することを特徴とする請求項2に記載の高クロム鋼のクリープ寿命診断方法。
  4. 前記表面組織をレプリカ法により採取することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高クロム鋼のクリープ寿命診断方法。
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