JP2017219372A - Gpr83の受容体機能を阻害する方法 - Google Patents

Gpr83の受容体機能を阻害する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、GPR83の受容体機能を阻害する方法、および、GPR83の受容体機能を阻害する物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明はGPR83におけるAsn-X-Ser/Thr配列を改変する工程を含む、GPR83の受容体機能を阻害する方法を提供する。本発明はまた被験物質とGPR83とを接触させ、被験物質とGPR83におけるAsn-X-Ser/Thr配列を含む領域との相互作用の有無を確認する工程1と、工程1において相互作用が確認された被験物質をGPR83の受容体機能の阻害物質の候補として選抜する工程2とを含む、GPR83の受容体機能の阻害物質のスクリーニング方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、GPR83の受容体機能を阻害する方法、およびGPR83の受容体機能を阻害する物質をスクリーニングする方法に関する。
SPは11個のアミノ酸からなるペプチドであり、そのアミノ酸配列は
Arg-Pro-Lys-Pro-Gln-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号21)
[式中、C末端のメチオニンのカルボキシル基はアミド化されている。以下同様に表記する]
である。
一方、ペプチドヘモキニン-1(HK-1)は11個のアミノ酸からなるペプチドであり、そのアミノ酸配列は
Arg-Ser-Arg-Thr-Arg-Gln-Phe-Tyr-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号22)
である。
SP及びHK-1は共にタキキニンペプチドに属する。ここで、タキキニンペプチドとは、C末端にFXGLM-NH2(ここで、Xは疎水性アミノ酸である)を有するペプチドを意味する。
オーファン受容体GPR83は、Substance P(SP)受容体(Neurokinin-1受容体;NK1R)と35%の相同性を有する、Gタンパク共役受容体(GPCR)の一種である。かつてGPR83のリガンドは不明であったが、本発明者らは特許文献1においてGPR83のリガンドがSPおよびSPと同族のペプチドヘモキニン-1(HK-1)であることを開示した。
本発明者らは特許文献1において更に、HK-1のGPR83への結合が、生体内において疼痛、炎症及び掻痒の発生に関与していること、並びに、HK-1のGPR83への結合を阻害することにより疼痛、炎症及び掻痒を抑制することができることを開示している。
一方、NK1RとSPとの結合には、NK1Rの2か所のN-グリコシル化部位が関与することが報告されている(非特許文献1)。GPR83では4つのアスパラギン残基がN-グリコシル化部位だと推定されているが(非特許文献2)、タンパク質におけるN-グリコシル化部位は、Asn-X-Ser(Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Serはセリン残基を示す)またはAsn-X-Thr (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Thrはトレオニン残基を示す)で示されるコンセンサス配列に含まれるアスパラギン残基であることが知られており、非特許文献2で示されている。これら4つのアスパラギン残基が、GPR83とリガンドとの結合にどのように関与するかは従来検討されていない。
WO2012/026526
Morris F. T., Charalabos P., Susan E. L. Functional consequences of alteration of N-linked glycosylation sites on the neurokinin 1 receptor. PNAS 104(25), pp. 10691-10696, 2007. Wang D., Herman J. P., Pritchard L. M., Spitzer R. H., Ahlbrand R. L., Kramer G. L., Petty F., Sallee F. R., Richtand N. M., Cloning, Expression, and Regulation of a Glucocorticoid-Induced Receptor in Rat Brain: Effect of Repetitive Amphetamine. J. of Neurosci 21(22):9027-9035, 2001.
従来、GPR83においてリガンドとの結合に関与する部位を特定されていなかった。そのため、GPR83の受容体機能を効果的に阻害することや、GPR83の受容体機能を阻害する物質をスクリーニングすることは容易なことではなかった。
そこで本発明は、GPR83の受容体機能を阻害する方法、および、GPR83の受容体機能を阻害する物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために、GPR83においてリガンドとの結合に関与する部位を特定し、その知見に基づき以下の発明を完成するに至った。
(1) GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-Ser (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Serはセリン残基を示す) またはAsn-X-Thr (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Thrはトレオニン残基を示す)で示される配列のうち少なくとも1つを改変する工程を含む、GPR83の受容体機能を阻害する方法。
(2) 前記改変する工程が、GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-Ser (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Serはセリン残基を示す) またはAsn-X-Thr (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Thrはトレオニン残基を示す)で示される配列に含まれるアスパラギン残基のうち少なくとも1つを改変する工程である、(1)に記載の方法。
(3) 被験物質と、以下の(a)または(b):
(a) GPR83;
(b) GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-Ser (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Serはセリン残基を示す) またはAsn-X-Thr (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Thrはトレオニン残基を示す)で示される配列を含む部分アミノ酸配列からなるポリペプチド
とを接触させ、前記被験物質と前記(a)または(b)のアミノ酸配列におけるAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域のうち少なくとも1つとの相互作用の有無を確認する工程1と、
前記工程1において前記相互作用が確認された被験物質を、GPR83の受容体機能の阻害物質の候補として選抜する工程2と
を含む、GPR83の受容体機能の阻害物質のスクリーニング方法。
上記(1)又は(2)の発明によれば、GPR83の受容体としての機能を効果的に阻害することが可能となる。
上記(3)の発明によれば、GPR83の受容体としての機能を阻害する物質を容易に探索することが可能となる。
上記のAsn-X-Ser またはAsn-X-Thrにおいて、Xは、典型的には、プロリンを除く任意のアミノ酸残基を示すが、プロリン残基であってもよい。
本発明によれば、GPR83の受容体機能を阻害すること、並びに、GPR83の受容体機能を阻害する物質をスクリーニングすることが可能である。
図1Aは、野生型GPR83発現細胞及び野生型NK1R発現細胞に異なる濃度のSubstance P (SP)を投与したときの細胞内カルシウムイオン濃度の変化を、カルシウムイオン蛍光プローブによる蛍光強度の変化により示す図である。 図1Bは、野生型GPR83発現細胞及び野生型NK1R発現細胞に異なる濃度のHemokinin-1 (HK-1)を投与したときの細胞内カルシウムイオン濃度の変化を、カルシウムイオン蛍光プローブによる蛍光強度の変化により示す図である。 図1Cは、野生型GPR83発現細胞及び野生型NK1R発現細胞に濃度10-9MのSubstance P (SP)およびHemokinin-1 (HK-1)を投与したときの細胞内カルシウムイオン濃度の変化を、カルシウムイオン蛍光プローブによる蛍光強度の変化により示す図である。 図2Aは、野生型GPR83、変異型GPR83であるGPR83 N1、GPR83 N2、GPR83 N3、GPR83 N4をそれぞれ発現する細胞に、濃度10-9MのSubstance P (SP)およびHemokinin-1 (HK-1)を投与したときの細胞内カルシウムイオン濃度の変化を、カルシウムイオン蛍光プローブによる蛍光強度の変化により示す図である。図中*は、t検定によるp<0.05の有意差を示す。 図2Bは、野生型NK1R、グリコシル化部位を欠失した変異型NK1RであるNK1R-Aを発現する細胞に、濃度10-9MのSubstance P (SP)およびHemokinin-1 (HK-1)を投与したときの細胞内カルシウムイオン濃度の変化を、カルシウムイオン蛍光プローブによる蛍光強度の変化により示す図である。図中*は、t検定によるp<0.05の有意差を示す。
1. GPR83
本発明で用いるGPR83はHK-1受容体活性又はSP受容体活性を有するポリペプチドであれば特に限定されない。HK-1受容体活性を有するとは、HK-1との結合活性を有し、且つ、GPR83を発現する細胞において細胞外のHK-1と結合して細胞を刺激する活性(例えば、細胞内でCa++を遊離させる活性)を有することを指す。SP受容体活性についても同様である。GPR83の受容体活性は、HK-1受容体活性の方がSP受容体活性よりも優れている。
GPR83の起源は特に限定されず、GPR83を発現する生体、生体試料(臓器、組織等)、細胞等から分離された天然由来のものであってもよいし、遺伝子工学的手法や合成法により人為的に調製されたものであってもよい。
GPR83は、野生型GPR83又はその変異体におけるアミノ酸配列の全体からなり、HK-1受容体活性又はSP受容体活性を有するポリペプチドであってもよいし、野生型GPR83又はその変異体におけるアミノ酸配列の部分配列からなり、HK-1受容体活性又はSP受容体活性を有するポリペプチドであってもよいし、野生型GPR83又はその変異体におけるアミノ酸配列の部分配列を含み、HK-1受容体活性又はSP受容体活性を有するポリペプチドであってもよい。
本発明における「ポリペプチド」という用語は、ポリペプチドの塩も包含し、更には、糖鎖を有さないものや、糖鎖の付加等の化学的な修飾がされたものも包含する。
具体的には、本発明におけるGPR83として、以下のものが挙げられる:
(i) 配列番号1(ヒト, Homo sapiens)、配列番号2(ラット, Rattus norvegicus)、配列番号3(マウス, Mus musculus)、配列番号4(イヌ, Canis lupus familiaris)および配列番号5(ウシ, Bos taurus)のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(ii) 配列番号1〜5のいずれかで表されるアミノ酸配列の部分配列を含み(好ましくは、配列番号1〜5のいずれかで表されるアミノ酸配列の部分配列からなり)、且つHK-1受容体活性又はSP受容体活性を有するポリペプチド;
(iii) 配列番号1〜5のいずれかで表されるアミノ酸配列を含み、且つHK-1受容体活性又はSP受容体活性を有するポリペプチド;
(iv) (i)〜(iii)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列において、1〜10個、好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1個又は2個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つHK-1受容体活性又はSP受容体活性を有するポリペプチド;又は
(v) (i)〜(iii)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み(好ましくは、(i)〜(iii)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり)、且つHK-1受容体活性又はSP受容体活性を有するポリペプチド。
上記(iv)において、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。「保存的アミノ酸置換」とは、電荷、側鎖、極性、芳香族性等の性質の類似するアミノ酸間の置換をいう。性質の類似するアミノ酸は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン)、無極性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン)、分枝鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)等に分類することができる。
上記(v)において、アミノ酸配列の「配列同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの、(i)〜(iii)のいずれかのポリペプチドの全アミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。アミノ酸配列の配列同一性は、BLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて算出することができる(Karlin,S.et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877;Altschul,S.F.et al., 1990, J. Mol. Biol., 215: 403-410;Pearson,W.R.et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448)。
実施例に示すように、本発明者らは、GPR83のアミノ酸配列における特定の配列に含まれるアスパラギン残基が、GPR83のHK-1受容体活性又はSP受容体活性に寄与していることを見出した。本発明において改変する前のGPR83およびスクリーニング方法で用いられるGPR83はいずれも、その特定のアミノ酸配列として、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される部分配列を含む。
配列番号1に示すアミノ酸配列では第37番、第46番、第67番および第134番のアスパラギン残基が、配列番号2に示すアミノ酸配列では第38番、第45番、第66番および第133番のアスパラギン残基が、配列番号3に示すアミノ酸配列では第38番、第46番、第67番および第134番のアスパラギン残基が、配列番号4に示すアミノ酸配列では第37番、第45番、第66番および第133番のアスパラギン残基が、配列番号5に示すアミノ酸配列では第30番、第38番、第59番および第126番のアスパラギン残基が、それぞれAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示されるコンセンサス配列に含まれるアスパラギン残基である。
本発明に使用するGPR83等のポリペプチドは、遺伝子工学的手法、合成法等の種々の方法で調製することができる。遺伝子工学的手法では、目的とするポリペプチドをコードする遺伝子(DNA又はRNA)を、必要に応じて適当なベクターに挿入した組換えベクターの形態で、適当な宿主生物細胞に導入し、該細胞を培養することにより目的とするポリペプチドを製造することができる。宿主生物細胞としては細菌、酵母などを用いることができる。
2. GPR83の受容体機能を阻害する方法
本発明は第一に、GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列のうち少なくとも1つを改変する工程を含む、GPR83の受容体機能を阻害する方法に関する。
本発明において前記「配列を改変」するとは、前記コンセンサス配列を破壊すること、好ましくは前記配列をN結合型糖鎖が側鎖上に結合できないようにN-グリコシル化部位のコンセンサス配列を破壊することを意味する。たとえば、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列に含まれるアスパラギン残基のうち少なくとも1つを改変する(例えば、他のアミノ酸に置換する又は欠失させる)こと、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列のXをプロリン残基に置換する又は欠失させる、好ましくはプロリン残基に置換する、こと、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列のセリン残基またはスレオニン残基を他のアミノ酸残基に置換する又は欠失させる、好ましくは他のアミノ酸に置換する、ことを包含する。
本発明において配列を改変する工程として好ましいのは、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列に含まれるアスパラギン残基のうち少なくとも1つを改変すること、例えばAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列に含まれるアスパラギン残基のうちいずれか1つをアスパラギン残基以外のアミノ酸残基、好ましくはセリン又はシステイン残基に置換することである。
本発明者らは、GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列に含まれるアスパラギン残基のうちいずれか1つをセリン残基に改変(置換)した変異型GPR83では、HK-1受容体活性が阻害されていることを実施例において確認している。
上記のように配列を改変することにより、GPR83のHK-1受容体活性又はSP受容体活性を阻害することができる。なお本発明において「阻害」とはGPR83のHK-1受容体活性又はSP受容体活性を完全に喪失させることのみを意味するわけではなく、改変前と比較して、改変後のGPR83の受容体機能、具体的にはHK-1受容体活性又はSP受容体活性、を低減させることを指す。
ここで、改変前又は改変後のGPR83の受容体機能は以下の手段で評価することができる。まず、改変前又は改変後のGPR83のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、必要に応じてプラスミドベクター等の適切なベクターに組み込み、トランスフェクション(リポフェクション、リン酸カルシウム共沈法、DEAE-デキストラン処理法、エレクトロポレーション法等を用いて行うことができる)や形質転換により生物細胞、たとえばチャイニーズハムスター卵巣由来細胞(CHO細胞)、に導入する。続いて、前記細胞に改変前又は改変後のGPR83を発現させた状態で、GPR83のリガンド(例えばHK-1)を付与し、そのときの細胞内カルシウムイオン濃度の変化を指標として改変前又は改変後のGPR83の受容体機能を評価することができる。細胞内カルシウムイオン濃度の変化は、Calcium Kit II - Fluo 4(同仁化学)等の、カルシウム蛍光プローブを含む市販の細胞内カルシウムイオン測定用キットを用いて測定することができる。
GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列の少なくとも1つを改変する工程は、部位特異的な変異導入法により行うことができる。ポリペプチドに部位特異的にアミノ酸の変異を導入する技術は当業者に周知の技術である。例えば、GPR83をコードするポリヌクレオチド(DNA又はRNA)において、アミノ酸に所望の改変が生じるような塩基配列上の改変を部位特異的に行って変異型GPR83をコードするポリヌクレオチドを作製し、次いで、変異型GPR83をコードするポリヌクレオチドを適当な生物細胞に導入し、所望の改変がなされた変異型GPR83ポリペプチドを前記生物細胞に発現させ生産することができる。
GPR83のアミノ酸配列にAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列が複数個(N個とする)含まれる場合は、そのうちの1つ以上、より好ましくは2以上、より好ましくはNにより近い個数、最も好ましくはN個を改変することが好ましい。野生型GPR83のアミノ酸配列には、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列が4つ存在することが一般的であるが、その場合はそのうちの1つ以上、より好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、より好ましくは4つを改変する。
本発明による、GPR83の受容体機能を阻害する方法は典型的には生体外で行われ、特にGPR83がヒトのGPR83である場合には、ヒトの生体外で行われる。
本発明はまた、GPR83のアミノ酸配列において、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列の少なくとも1つが改変され受容体機能が阻害された変異型GPR83ポリペプチドを提供する。前記配列の改変の好ましい態様は既述の通りである。
本発明はまた、GPR83のアミノ酸配列において、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列の少なくとも1つが改変され受容体機能が阻害された変異型GPR83ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入された、前記変異型GPR83ポリペプチドを発現する細胞を提供する。前記配列の改変の好ましい態様は既述の通りである。前記ポリヌクレオチドを細胞に導入する手法、及び、宿主となる細胞の好ましい態様は既述の通りである。
3. GPR83の受容体機能の阻害物質のスクリーニング方法
本発明は第二に、被験物質と、以下の(a) または(b):
(a) GPR83;
(b) GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む部分アミノ酸配列からなるポリペプチド
とを接触させ、前記被験物質と前記(a)または(b)のアミノ酸配列におけるAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域のうち少なくとも1つとの相互作用の有無を確認する工程1と、
前記工程1において、前記相互作用が確認された被験物質を、GPR83の受容体機能の阻害物質の候補として選抜する工程2と
を含む、GPR83の受容体機能の阻害物質のスクリーニング方法に関する。
本発明において「相互作用」とは、被験物質と前記(a)または(b)のアミノ酸配列におけるAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域とが、水素結合、イオン結合、疏水結合、共有結合、配位結合等の各種結合により相互に結合することを指す。
ここで「前記被験物質と前記(a)または(b)のアミノ酸配列におけるAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域のうち少なくとも1つとの相互作用」とは、典型的には、前記被験物質と、前記(a)または(b)のアミノ酸配列におけるAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列に含まれるアスパラギン残基のうち少なくとも1つとの相互作用であるが、これには限らず、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列に含まれる他のアミノ酸残基や、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域(例えばAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む連続した10以下、好ましくは6以下のアミノ酸残基からなる領域)に含まれる1以上のアミノ酸残基と、前記被験物質との相互作用であってもよい。
斯様な相互作用により、GPR83タンパク質の翻訳後修飾に変化が生じる、具体的にはAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列がN-グリコシル化部位としての機能を失い、リガンド(HK-1またはSP)との結合に変化が生じる、あるいはリガンドと受容体の結合により生じる受容体の細胞表面からの移動(trafficking)に変化が生じると推測されるためである。
3.1. 工程1
前記(a)のGPR83については「1. GPR83」で説明した通りである。
前記(b)のポリペプチドは、GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む部分アミノ酸配列からなるポリペプチドであれば特に限定されないが、好ましくは、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む合計アミノ酸残基数が5以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、上限は特に限定されないが例えば50以下、好ましくは30以下、より好ましくは15以下のGPR83の部分アミノ酸配列からなるポリペプチドである。
このとき、前記(a)または(b)はポリペプチド単独で使用される必要はなく、前記(a)または(b)を発現した細胞の形態であってもよいし、前記(a)または(b)を含む細胞膜の形態であってもよい。さらにまた、前記(a)または(b)は、固定化用支持担体などに固定化された形態や、標識試薬等で標識化された形態であってもよい。
工程1において用いられる被験物質は有機低分子化合物、比較的低分子量(例えばアミノ酸残基数20以下)のポリペプチド、抗体、抗体のFab領域を含む断片等であることができる。候補物質もまた、固定化用支持担体などに固定化された形態や、標識試薬等で標識化された形態であってもよい。
工程1において、被験物質と、前記(a)または(b)のアミノ酸配列におけるAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域のうち少なくとも1つとの相互作用の有無を確認する手段は特に限定されず適切な手段を用いることができる。
前記手段としては例えば、
(i)前記(a)または(b) のポリペプチドと被験物質とを接触させ、結合の有無を確認し、結合により複合体が形成された場合はその量を定量する。
(ii)前記(a)または(b)のポリペプチドの、それぞれアミノ酸配列においてAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列のうち少なくとも1つを改変した変異体と被験物質とを接触させ、結合の有無を確認し、結合により複合体が形成された場合はその量を定量する。
(iii)両者を比較し、結合の有無又は複合体の量に差異がある場合に、被験物質と、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域(例えば該配列のアスパラギン残基)とが相互作用していると結論付けることができる。
あるいは、前記(a)または(b) のポリペプチドと被験物質とを接触させ、接触させた後の(a)または(b) のポリペプチドの構造解析を行い、被験物質と、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域(例えば該配列のアスパラギン残基)との結合状態を確認する手段でもよい。
他の手段として、
(i)前記(a)または(b)のポリペプチドの、それぞれアミノ酸配列においてAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列のうち少なくとも1つを改変した変異体を発現する細胞を用いて、任意の濃度に調製されたリガンドを添加し、このリガンドとの結合に伴う細胞内カルシウムイオン濃度を測定する。
(ii)前記(a)または(b) のポリペプチドを発現する細胞と被験物質を接触させ、(i)と同濃度に調製されたリガンドを添加し、このリガンドとの結合に伴う細胞内カルシウムイオン濃度を測定する。
(iii)両者を比較し、測定された細胞内カルシウムイオン濃度に差異がない又は小さい場合(例えば、有意な差が無い場合)に、被験物質と、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域(例えば該配列のアスパラギン残基)とが相互作用していると結論付けることもできる。
3.2. 工程2
工程2では、前記(a)または(b)のアミノ酸配列におけるAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域のうち少なくとも1つとの相互作用が確認された被験物質をGPR83の受容体機能の阻害物質の候補として選抜する。
選抜された被験物質は、GPR83の受容体機能の阻害物質の候補として有用であるだけでなく、リガンドのGPR83への結合が関与する疼痛、炎症または掻痒の治療剤、予防剤または抑制剤の候補としても有用である。
3.3. 更なる工程
本発明のスクリーニング方法では、更に、工程2で選抜された被験物質がGPR83の受容体機能を阻害することを確認する工程3をさらに含むことが好ましい。
工程3としては例えば以下が例示できる。すなわち、GPR83をコードするポリヌクレオチドを、必要に応じてプラスミドベクター等の適切なベクターに組み込んだ状態で、トランスフェクション(リポフェクション、リン酸カルシウム共沈法、DEAE-デキストラン処理法、エレクトロポレーション法等を用いて行うことができる)や形質転換により生物細胞、たとえばチャイニーズハムスター卵巣由来細胞(CHO細胞)、に導入する。前記細胞にGPR83を発現させた状態で被験物質とGPR83のリガンド(例えばHK-1)を付与し、細胞内カルシウムイオン濃度の変化を測定する。対照実験として、前記細胞にGPR83を発現させた状態で被験物質を付与せずGPR83のリガンドを付与したときの細胞内カルシウムイオン濃度の変化を測定する。前記細胞にGPR83を発現させた状態で被験物質とGPR83のリガンドとを付与した実験での細胞内カルシウムイオン濃度の変化が、対照実験での細胞内カルシウムイオン濃度の変化よりも有意に小さい場合に、被験物質がGPR83の受容体機能を阻害することができると結論付ける。細胞内カルシウムイオン濃度の変化は、Calcium Kit II - Fluo 4(同仁化学)等の、カルシウム蛍光プローブを含む市販の細胞内カルシウムイオン測定用キットを用いて測定することができる。
1. 受容体発現細胞の調製
1.1.プラスミドの作製
1.1.1. プラスミドGPR83/pcDNA3.1およびNK1R/pcDNA3.1の作製
SDラット(胎生18日目)の脳組織より得られたtotalRNAからcDNAを作製し、このcDNAをテンプレートとし、プライマーセットとして下記のGPR83用プライマーセットまたはNK1R用プライマーセットを用い、市販のPCR用酵素であるKOD-Plus-Neo (東洋紡)を用いて指定されたプロトコールに従ってPCR反応液を調製し、PCRを行い、ラットGPR83 (配列番号2)をコードするDNA塩基配列(配列番号23)を含む増幅産物及びラットNK1R (配列番号6) をコードするDNA塩基配列(配列番号24)を含む増幅産物を得た。得られた各増幅産物を、制限酵素処理したプラスミド発現ベクターpcDNA3.1(invitrogen社)に挿入して、GPR83/pcDNA3.1及びNK1R/pcDNA3.1を得た。
GPR83用プライマーセット
GPR83 sense; TCGAGTCCAGGTTCCCTCTGTG (配列番号7)
GPR83 reverse; TTCCGACACCTTGAGTCTGGTC (配列番号8)
NK1R用プライマーセット
NK1R sense; TGCAACAAGGTCCTGCGGCAAG (配列番号9)
NK1R reverse; AGCAACACAAGATGGGCTAGAGGC (配列番号10)
1.1.2. 部位特異的変異導入プラスミドの作製
上記で得られたプラスミドGPR83/pcDNA3.1およびNK1R/pcDNA3.1のアミノ酸を一部置換したプラスミドをそれぞれ作製した。
ラットGPR83の4か所の特定のコンセンサス配列におけるアスパラギン(N38、N45、N66、N133)のうち1つをセリン(S)に置換した変異GPR83をコードする塩基配列を含むプラスミドは次の手順で作製した。N38をSに置換した変異体をGPR83 N1、N45をSに置換した変異体をGPR83 N2、N66をSに置換した変異体をGPR83 N3、N133をSに置換した変異体をGPR83 N4とそれぞれ称する。GPR83/pcDNA3.1 100 ngをテンプレートして用い、KOD-Plus-Neo (東洋紡)を用いて指定されたプロトコールに従ってPCR反応液を調製し、サーマルサイクラーを用いて(94℃ 2分、98℃ 10秒、60℃ 1分、68℃4分)×18回、68℃8分の条件にてPCRを行った。PCRにおいて各変異を導入するためにプライマーセットとして以下を用いた。
GPR83 N1 (N38S) 用プライマーセット
GPR83 N1 Sense: CTGACCGGAGCCAGTGCCTCGCATTTC (配列番号11)
GPR83 N1 Reverse: GAAATGCGAGGCACTGGCTCCGGTCAG (配列番号12)
GPR83 N2 (N45S) 用プライマーセット
GPR83 N2 Sense: CATTTCTGGGCCAGCTACACTTTCTC (配列番号13)
GPR83 N2 Reverse: GAGAAAGTGTAGCTGGCCCAGAAATG (配列番号14)
GPR83 N3 (N66S) 用プライマーセット
GPR83 N3 Sense: GCTGAGTCCCAGAGCCCCACAGTGAAA (配列番号15)
GPR83 N3 Reverse: TTTCACTGTGGGGCTCTGGGACTCAGC (配列番号16)
GPR83 N4 (N133S) 用プライマーセット
GPR83 N3 Sense: GTCCGCTTTGTGAGCAGCACATGGGTG (配列番号17)
GPR83 N3 Reverse: CACCCATGTGCTGCTCACAAAGCGGAC (配列番号18)
また、NK1Rの2か所のグリコシル化部位のアスパラギン(N14、N18)を同時にS(セリン)に置換した変異NK1Rをコードする塩基配列を含むプラスミドは次の手順で作製した。N14およびN18をともにSに置換した変異体をNK1R-Aと称する。テンプレートとしてNK1R/pcDNA3.1を用い、プライマーセットとして以下を用いた以外は、上記のGPR83 N1/pcDNA3.1〜GPR83 N4/pcDNA3.1の作製時と同様の手順でPCRを行った。
NK1R-A (N14,18S)用プライマーセット
NK1R-A Sense: CTCTTCCCCAGCATCTCCACCAACATCTCCACCAGCACCTCTGAGTCT (配列番号19)
NK1R-A Reverse: AGACTCAGAGGTGCTGGTGGAGATGTTGGTGGAGATGCTGGGGAAGAG (配列番号20)
上記の各PCR反応液から、目的とするGPR83 N1/pcDNA3.1〜GPR83 N4/pcDNA3.1およびNK1R-A/pcDNA3.1を以下の手順でそれぞれ取得した。すなわち。上記の各PCR反応液に制限酵素(Dpn I)を添加し37℃で一昼夜静置して変異を含まない鋳型プラスミドを分解して、目的とする変異が導入されたプラスミドを含む溶液を得た。次いで、この溶液により、大腸菌コンピテントセルを形質転換させた。形質転換した大腸菌を含む溶液をLB プレート培地に播き37℃で一昼夜静置した。その後、Macherey-Nagel社のキット(Plasmid DNA purification)を使用して、形質転換した大腸菌からプラスミドDNAをアルカリリシスによるプラスミドミニプレップ法(ミニプレップ法)で回収および精製し、シークエンス解析にて目的のプラスミドの有無を確認した。目的のプラスミドが確認された形質転換大腸菌のコロニーを抗生物質が添加された200 ml のLB液体培地に添加し37℃で一昼夜撹拌してから、ペレッティングにより形質転換大腸菌を回収し、上記と同様にMacherey-Nagel社のキット(Plasmid DNA purification)を使用してプラスミドDNAを回収した。
1.2 一過性GPR83あるいはNK1R発現細胞の調製
上記1.1.1.で得た2種類のプラスミドGPR83/pcDNA3.1およびNK1R/pcDNA3.1をそれぞれ4μg(1μg/μl)ずつ10cmディッシュに培養したチャイニーズハムスター卵巣由来細胞(CHO細胞)に投与した。トランスフェクション試薬としてlipofectamine 2000 (sigma) を8μl用いた。この方法によって、GPR83あるいはNK1RのDNAがCHO細胞に導入され、一過性のGPR83およびNK1Rの発現細胞が得られる。細胞をCO2インキュベーターにて一昼夜培養した。プラスミド投与1日後、3×10-5個/mlとなるように細胞数を調整し、96ウェルプレートに入れ(100μl/ウェル)、プラスミド投与2日後に細胞内Ca++変化を測定した。なお、CHO細胞は、10%のウシ胎児血清(SAFC Biosciences社)、および10% Penicillin Streptomicin(life technologies社)を含むMEM Alpha(1×) (life technologies社)を培地として使用した。さらに、37 ℃ 5% CO2インキュベータにて培養した。
1.3 GPR83またはNK1R安定発現細胞の調製
GPR83またはNK1R安定発現細胞は、上記1.1.1.で得たプラスミドを直鎖状にしたDNA鎖をCHO細胞に投与することで作製した。具体的には、制限酵素にて各プラスミドを切断して得られる直鎖状のプラスミド4μgを、10cmディッシュにて培養したCHO細胞に投与した。トランスフェクション試薬としてlipofectamine 2000 (sigma)を8μl用いた。投与1週間後、Hygromin B(Invitrogen)を培地に添加し、Hygromin B耐性細胞、すなわちGPR83またはNK1Rを発現する細胞、を選抜した。こうしてGPR83またはNK1Rの安定発現細胞を得た。得られた細胞を3×10-5個/ mlとなるように細胞数を調整し、96ウェルプレートに入れ(100μl/ウェル)、リガンドの添加による細胞内Ca++変化の解析に用いた。
2. 細胞内Ca ++ の変化の測定方法
リガンドの添加に伴う細胞内のCa++の変化は、蛍光プローブを用いて蛍光強度の値により定量化できる。
具体的には、カルシウム蛍光プローブキットCalcium Kit II - Fluo 4(同仁化学)を用いてキットに含まれるrecording mediumに5% Pluronic F-127 80μl、250 nmol/l Procenecid 50 μlをそれぞれ加え、更に、Fluo-4 AMをDMSO 45μlに溶解させた溶液を加えることで10ml loading bufferを調製した。次に培地を除いた細胞にloading bufferを添加し(100 μl/ well)、CO2インキュベータで1時間静置した。1時間後、キットに含まれるrecording mediumに250 nmol/l Procenecid を50 μl加えて10 ml recording bufferとし、このrecording bufferを細胞に添加した(100 μl/ well)。
なお、細胞内Ca++の変化の測定としてマイクロプレート蛍光分光光度計(FLEX Station 3 (Molecular Device社))中で37℃、10分インキュベートした。カルシウムフラックスアッセイモードにて蛍光波長(励起波長495 nm, 蛍光波長 518 nm)にて各ウェルについてリガンド添加後140秒間、蛍光強度を測定した。
3. リガンドの調製
実験に使用したペプチドは、以下のようなアミノ酸配列のペプチドである。
Substance P (SP): RPKPQQFFGLM-NH2(配列番号21)
Hemokinin-1 (HK-1): RSRTRQFYGLM-NH2(配列番号22)
これらの各リガンドペプチドの10-2M濃度の溶液を、滅菌蒸留水を用いて調製し、それぞれ10μlに分注して-30℃にて保存した。
また、細胞内Ca++の測定時には、それぞれ10-15Mから10-5Mの濃度に滅菌蒸留水にて希釈し、96 well プレートにそれぞれの濃度のペプチド溶液を8 well ごとに入れ(100 μl/ウェル)、37℃で30分加温した。
4. リガンドと受容体の結合に関する評価
4.1 GPR83およびNK1R安定発現細胞による細胞内Ca ++ の変化
GPR83およびNK1Rの安定発現細胞に、10-15M〜10-5Mに滅菌蒸留水にて希釈したSPおよびHK-1を細胞に添加し、添加に伴う細胞内Ca++濃度の変化を測定した。
その結果、HK-1添加に伴う細胞内Ca++の変化は、HK-1濃度10-15Mから10-5Mにおいて、いずれの受容体発現細胞でも濃度曲線に大きな違いは認められなかったが、GPR83発現細胞試験区のほうがNK1R発現細胞試験区より全てのHK-1濃度において蛍光強度が高くなっていた(図1B)。一方、SPを用いた実験でも同様に二つの曲線の間に差が見られなかったが、NK1R発現細胞試験区のほうが全てのSP濃度において蛍光強度が高いことが示された(図1A)。このことから、GPR83のリガンドはHK-1がSPよりも優位であると考えられた。
また、図1A,Bの結果より、10-9MのSPおよびHK-1添加による蛍光強度の結果を棒グラフとして示すと、10-9M SPではNK1R発現細胞試験区の方がGPR83発現細胞試験区より蛍光強度が高く、10-9M HK-1ではGPR83発現細胞試験区の方がNK1R発現細胞試験区より蛍光強度が高いことが認められた(図1C)。この結果から、GPR83のリガンドはHK-1の方がSPより優位であることが示唆された。
4.2 GPR83 N1〜GPR83 N4またはNK1R-Aの発現細胞を用いたHK-1またはSP添加に伴う細胞内Ca ++ 変化の検討
GPR83およびNK1Rの安定発現細胞を用いた実験より、GPR83のリガンドはHK-1がSPよりも優位であることが示された。
さらに、GPR83のどの部位がリガンドとの結合に重要であるかを明らかにするために、上記1.1.2.で得られたアスパラギン(Asn; N)を変異させたプラスミドDNAである、GPR83 N1/pcDNA3.1〜GPR83 N4/pcDNA3.1およびNK1R-A/pcDNA3.1を、上記1.2.と同様の手順でCHO細胞に導入して、GPR83 N1〜GPR83 N4またはNK1R-Aの一過性発現細胞を作製した。当該細胞を用いてリガンドとGPR83 N1〜GPR83 N4またはNK1R-Aとの結合を検討した。
図1で示す結果を基に10-9M のペプチド添加に伴う細胞内Ca++の変化を検討した。10-9Mという濃度は、EC50に近位する値である。
上記1.2で作製されたGPR83(野生型)一過性発現細胞に10-9MのSPおよびHK-1を添加し、安定発現細胞での実験と同様の手順で蛍光強度を測定した(図2A GPR83)。次に、GPR83 N1、GPR83 N2、GPR83 N3、GPR83 N4の一過性発現細胞に10-9M SPおよびHK-1を添加したときの蛍光強度の増加は、野生型GPR83一過性発現細胞を用いた場合と比較して小さい値を示した(図2A GPR83 N1, GPR83 N2, GPR83 N3 およびGPR83 N4)。このことは、GPR83における4か所の特定部位がそれぞれリガンドであるSPおよびHK-1とGPR83との結合に重要な役割を果たしていることを示唆する。
また、野生型NK1Rおよび2か所のグリコシル化部位を同時に欠損させた変異型NK1R-Aを発現した細胞に対する10-9M SPおよびHK-1添加に伴うCa++の変化を検討すると、変異型NK1R-A発現細胞に10-9M SPを添加した時の蛍光強度の変化(増加)は、野生型NK1R発現細胞に10-9M SPを添加した時の蛍光強度の変化(増加)よりも有意に小さいことが確認された。一方、10-9M HK-1を添加した場合には、このような有意差は認められなかった(図2B NK1R-A)。このことから、NK1Rの2か所のグリコシル化部位はSPとの結合に関与することが示唆された。
以上の結果より、GPR83の特定部位のアスパラギン残基が、リガンドとの結合において重要な機能担う部位であることが認められる。GPR83の特定部位のアスパラギン残基と相互作用する物質が、GPR83の受容体機能の阻害物質として有用であると推定できる。
本発明は、生化学用試薬、医薬等の分野において利用することができる。

Claims (5)

  1. GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-Ser (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Serはセリン残基を示す) またはAsn-X-Thr (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Thrはトレオニン残基を示す)で示される配列のうち少なくとも1つを改変する工程を含む、GPR83の受容体機能を阻害する方法。
  2. 前記改変する工程が、GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-Ser (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Serはセリン残基を示す) またはAsn-X-Thr (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Thrはトレオニン残基を示す)で示される配列に含まれるアスパラギン残基のうち少なくとも1つを改変する工程である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列のXがプロリンを除く任意のアミノ酸残基を示すものである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 被験物質と、以下の(a)または(b):
    (a) GPR83;
    (b) GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-Ser (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Serはセリン残基を示す) またはAsn-X-Thr (Asnはアスパラギン残基を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示し、Thrはトレオニン残基を示す)で示される配列を含む部分アミノ酸配列からなるポリペプチド
    とを接触させ、前記被験物質と前記(a)または(b)のアミノ酸配列におけるAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を含む領域のうち少なくとも1つとの相互作用の有無を確認する工程1と、
    前記工程1において、前記相互作用が確認された被験物質を、GPR83の受容体機能の阻害物質の候補として選抜する工程2と
    を含む、GPR83の受容体機能の阻害物質のスクリーニング方法。
  5. 前記GPR83のアミノ酸配列における、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列のXがプロリンを除く任意のアミノ酸残基を示すものである、請求項4に記載の方法。
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