JP2017217765A - 光造形装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】三次元立体形状物を高精度かつ効率的に形成することが可能な光造形装置を簡易な構成で低コストに提供する。【解決手段】光造形装置1を、紫外光(光線)Lを射出する光源10と、液体樹脂11が充填される液槽12と、液槽12内の液体樹脂11中で昇降し硬化層13を支持する昇降テーブル14と、液体樹脂11内に所定深さで配置され、一対の斜面21の間隙に光線Lの走査方向に延びるスリット22が設けられるとともに走査方向と交差する方向に移動可能な筐体20と、昇降テーブル14又は硬化層13との間に、硬化層13一層分の積層間隔dが介在するようにスリット22が位置決めされた状態で、スリット22の間隙22aに現れる液体樹脂11の液面26に光線Lを走査して照射する照射部16とを備えて構成する。【選択図】図2

Description

三次元データ(3D−CADデータ)等に基づいて、三次元形状物(立体造形物)を造形する3Dプリンタが知られている。その中でも、光硬化性液体樹脂材料に光線(紫外線レーザ等)を走査・照射して三次元形状物を造形する光造形法(SLA)やこれを用いた光造形装置が注目されている。
光造形法には、光硬化性液体樹脂材料(以下、単に液体樹脂ということがある)に対して、上面から光線を照射し、液面で樹脂を硬化させる自由液面方式と、液体樹脂を満たした透明容器の下面から光線を照射し、透明容器の底面で樹脂を硬化させる規制液面方式が知られている。
自由液面方式では、容器内の液体樹脂の中で、上面が平坦な昇降テーブルを、重力によって水平となった液体樹脂の液面直下に位置させ、テーブル上の薄い液層に対して、目的とする立体造形物の断面形状を紫外線等の光線で走査・照射して硬化させ、テーブルを降下させながら新しい硬化層を現在の硬化層の上面に順次積層していく。この場合、硬化層の下降や液体樹脂の表面張力等の影響により自由な液面が波打ったり、あるいは気泡が混入して硬化層の形成不良を生じたりして、加工精度に影響することがある。そのため、リコータ等を用いて液面の平坦化や泡の除去を行う技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
規制液面方式では、底面が透明な容器内の液体樹脂中で、下面が平坦な昇降テーブルを容器の底面直上まで降下させ、容器の下側から光線を照射し、容器底面と昇降テーブルとの間で一層ずつ樹脂を硬化させ、テーブルを引き上げながら新しい硬化層を現在の硬化層の下面に順次付け加えていく。この場合、硬化層を形成するたびに容器底面から剥離する必要があるが、容器底面に古い硬化層が残って新しい硬化層の形成不良を生じたり、あるいは気泡の混入により硬化不良を生じたりすることがあり、加工精度に影響する。また、繰り返されるレーザ照射により容器底面が変色して透明度が低下し、液層の硬化が十分に行われないこともある。そこで、硬化層へのダメージを低減すべく、底面に剥離層を設けたり、底面を容器の内側に湾曲させたりすることで、底面からの硬化層の剥離性を高めようとする技術が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、医療分野においては、X線CT、MRI、エコー検査装置等の画像検査装置や画像データ処理の発達によって、臓器等の三次元データを極めて詳細に取得することが可能となっている。これらの三次元データを利用して、3Dプリンタを用いて臓器等の三次元形状物(臓器立体モデル)を作成し、術前評価等に用いることが行われている。そのため、臓器立体モデルは個々の患者ごとに作成され、臓器の外形だけでなく内部構造も精巧な三次元形状物であることが望まれている。
特開2011−218821号公報 特開2009−137049号公報
しかしながら、上記のような従来技術の3Dプリンタでは、樹脂液面の平坦化や硬化層の剥離等のための仕組みが必要で、さらに照射する光線(レーザ)の光路制御のために高価なガルバノメータ等を用いるため、構造が複雑でコストも高くなっていた。したがって、機器管理やコストの面だけでなく、立体造形物の完成度や作業時間、作業の手間の面で改良の余地があった。
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、三次元形状物を高精度かつ効率的に造形することが可能な光造形装置を簡易な構成で低コストに提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本願に係る光造形装置は、光硬化性液体樹脂材料に光線を照射して前記光硬化性液体樹脂材料を一層ずつ硬化させ、得られた硬化層を積層することによって三次元形状物を造形する光造形装置であって、前記光線を射出する光源と、前記光硬化性液体樹脂材料を収容する液槽と、前記液槽内の前記光硬化性液体樹脂材料中で昇降し前記硬化層を支持する支持体と、前記光硬化性液体樹脂材料内に所定深さで配置され、前記光線の走査方向に延びるスリットが設けられるとともに前記走査方向と交差する方向に移動可能な筐体と、前記光硬化性液体樹脂材料内の前記支持体又は前記硬化層との間に、前記硬化層一層分の液体樹脂層が介在するように前記スリットが位置決めされた状態で、前記スリットの間隙に現れる前記光硬化性液体樹脂材料の液面に前記光線を走査して照射する照射部とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、三次元形状物を高精度かつ効率的に造形することが可能な光造形装置を簡易な構成で低コストに提供することができる。
図2に示す光造形装置のX軸方向から見た断面図である。 本発明の実施例1に係る光造形装置の概略構成を示す斜視図である。 本発明の光造形装置による三次元形状物を造形するフロ-チャート図である。 本発明の実施例2に係る光造形装置を説明するための図1と同様な断面図であって、(a)は液面がスリット面より入り込まない状態を示し、(b)は液面がスリット面より筐体内部側に入り込んだ状態を示している。 本発明の実施例3に係る光造形装置の概略構成を示す断面図である。 本発明の実施例4に係る光造形装置の概略構成を示す断面図であって、(a)はY軸方向から見た断面図を示し、(b)は(a)の主要部をX軸方向から見た状態を示している。
(実施例1)
以下、本発明の光造形装置の一実施例を、図面を参照しながら説明する。図1、図2に示すように、実施例1の光造形装置1は、光線Lを射出する光源10と、液体樹脂11を収容する液槽12と、液槽12内の液体樹脂11中で鉛直方向に昇降し、光線Lによって硬化した硬化層13を支持する支持体としての昇降テーブル(プラットホーム)14と、昇降テーブル14を駆動する駆動部15と、光線Lの走査方向に延びるスリット22が設けられた筐体20と、光源10から射出する光線Lをスリット22に沿って走査させる照射部16と、光造形装置1の全体の動作を制御する制御部17とを備えている。筐体20は、液体樹脂11内の所定位置に所定深さで配置される。筐体20の底部は液槽12内に向かって次第に狭幅となるように先尖り状(逆ハ字状)に配置された一対の斜面21から形成され、この一対の斜面21の傾斜の間隙として、スリット22が設けられている。
本明細書では、レーザの走査方向をX軸方向、水平面内においてX軸と直交する方向をY軸方向、X、Y軸に直交する方向であって、光線の照射方向をZ軸方向とする。
光源10は、制御部17に接続され、制御部17によって点灯と消灯が制御される。光源10は、使用する液体樹脂11の特性に応じた光線Lを射出するものを適宜選択することができる。本実施例では、液体樹脂11として紫外線(UV)硬化性液体樹脂材料を用いるため、紫外線を出射する光源10を採用している。このような光源10としては、半導体レーザ(LD)やLED等の固体光源を用いることができるが、これらに限定されることはない。
駆動部15は、制御部17によって制御され、昇降テーブル14を液槽12内で昇降させるものでれば、公知の適宜のものを用いることができる。本実施例では、駆動部15として、液槽12内に液密状態で挿通したピストン15aと、当該ピストン15aをZ軸方向に進退動するエアシリンダや油圧シリンダ、アクチュエータ等の駆動部材とで構成している。液槽12内に配置されたピストン15aの上端に、昇降テーブル14を接続し、ピストン15aをZ軸方向に進退動することによって、液槽12内で昇降テーブル14を昇降させている。
なお、駆動部15が実施例1の構成に限定されることはなく、昇降テーブル14を液槽12の上方から適宜の吊下部材で吊り下げ、この吊下部材を適宜の駆動部材で駆動することで、昇降テーブル14を昇降させる構成とすることもできる。
筐体20は、図1、図2に示すように、X軸方向(光線Lの走査方向)に長尺に形成され、上述した一対の斜面21と、斜面21の四方に設けられた壁面23a〜23dと、天面24とを有している。一組の斜面21の間隙として設けられたスリット22は、XY平面上にあり、X軸方向に延びる。筐体20は、少なくともスリット22の高さから斜面21の所定高さまで、あるいは斜面21の上辺まで、あるいは壁面23a〜23dの一部まで液槽12内の液体樹脂11に沈められる。
そのため、筐体20は、内部空間25にスリット22以外から液体樹脂11が侵入することがないように、斜面21と壁面23a〜23dとが少なくとも液密状態に接続されている。内部空間25に液体樹脂11が侵入することを抑制できるのであれば、天面24側が厳密に密閉されている必要はなく、例えば、取り外し可能に設けることもできる。さらには天面24を設けずに、筐体20の上面が開口した構成とすることもできる。
スリット22は、上述したように光線Lの走査方向(X軸方向)に沿って、光線Lを最大に走査可能な長さで形成されている。スリット22のY軸方向の幅、すなわち間隙22aの幅は、筐体20を液体樹脂11内に沈めたときに、スリット22の深さにおける液圧と、内部空間25の気圧(天面24が厳密に密閉されていない場合は大気圧と等しい)と、液体樹脂11の持つ表面張力とのバランスにより、液体樹脂11が間隙22aから内部空間25に流入しにくいような寸法で形成されている。
筐体20は、筐体駆動部27によって、液体樹脂11内に沈めるべくZ軸方向へ上下動可能となっている。筐体駆動部27としては、ボールネジ機構やエアシリンダ等の適宜の駆動部材を用いることができる。
筐体20の内部空間25には、上記した光源10と、照射部16とが収容されている。照射部16は、光源10から射出する光線Lをスリット22に沿って走査させる。スリット22の間隙22aに現れる液面26が光線Lの照射対象となる。
そのため、本実施例の照射部16は、光源10をX軸方向へ往復動させる駆動部材として、光源駆動部30を有している。また、照射部16には、光源10から出射される光線Lの集束、リレー、フォーカス等を行うための光学部材を適宜設けることができる。
光源駆動部30は、図1、図2に示すように、リニアシャフト等の軸31と、軸31に沿って往復動するスライダ32と、スライダ32を駆動する電動モータ33等からなる直動機構で構成されている。
軸31は、筐体20のX軸方向に対向して配置された壁面23a,23bに固定されている。スライダ32には、光源10が搭載されている。電動モータ33は、制御部17に接続され、制御部17によって動作が制御されている。制御部17の制御によって、電動モータ33が作動し、軸31に沿ってスライダ32と光源10とをX軸方向に往復動させることで、光源10から射出する光線Lを、スリット22に沿って走査させることができる。光線Lを円形又は楕円形のスポット状に照射することによって、液体樹脂11は光線Lのスポット径とほぼ同じ幅でX軸方向に沿って硬化する。
そして、筐体駆動部27によって筐体20を光線Lにより硬化した樹脂の幅(Y軸方向の幅)分だけY軸方向へ移動させ、移動先で再度光源駆動部30によって光源10をX軸方向へ移動させてスリット22に沿って光線Lを走査させる。この筐体20のY軸方向への移動と、X軸方向への光線Lの走査・照射とを繰り返すことで、XY平面において1層分の硬化層13を造形することができる。
制御部17は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部18等を備えたパーソナルコンピュータ(PC)等で構成することができる。記憶部18は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリ、SDカード、又は外付けハードディスク等の記録媒体等から構成することができる。
制御部17は、記憶部18に予め記憶されている光造形プログラムにしたがって、例えば記憶部18の一部をワークメモリとして用いて、光造形装置1全体の作動制御を行うことができる。
制御部17は、三次元CADシステムを搭載するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置40に接続されている。三次元CADシステムは、X線CT、MRI、エコー検査装置等の画像検査装置で測定した画像データ等に基づいて、造形目的の三次元形状物の三次元データ(3D−CADデータ)を生成し、制御部17に出力する。
なお、本実施例では、制御部17と三次元CADシステムを搭載する情報処理装置40とを別個に設けているが、本発明がこれに限定されることはなく、情報処理装置40内に制御部17を設けることもでき、1つの情報処理装置40で三次元データの生成から三次元形状物の造形までを制御することができる。
三次元CADシステムからの三次元データは、記憶部18に記憶される。制御部17は、記憶部18の三次元データに基づいて、造形目的の三次元形状物を目標とする精度の積層間隔dで鉛直方向(Z軸方向)にスライスし、スライスデータ(XY平面データ)を算出する。算出されたスライスデータに基づいて、制御部17は駆動部15、光源10、電動モータ33等を駆動して、液体樹脂11を一層ずつ硬化させ、得られた硬化層13を順次積層していくことで、三次元形状物を造形する。
以上のような構成の実施例1の光造形装置1を用いた光造形方法を、図3のフローチャートに従って説明する。光造形装置1では、三次元形状物を造形する際に、まず、液槽12中の液体樹脂11内の所定位置に、筐体20を所定深さで沈める(ステップS1)。本実施例では、図1に示すように、先尖り状に傾斜する一対の斜面21が液体樹脂11内に浸かり、スリット22が液槽12における自由液面11aよりも下に位置するよう筐体20を配置する。これにより、筐体20をY軸方向へ移動させても、液体樹脂11の液面の波立ちや液面に浮いた気泡による影響を抑制することができる。このステップS1の処理は、制御部17の制御により、筐体20の駆動部材を駆動して自動で行うこともできるし、手動で行うこともできる。
次に、制御部17は、駆動部15を駆動して、昇降テーブル14を鉛直方向(Z軸方向)に積層間隔dだけ移動し、昇降テーブル14とスリット22との間に一層分の硬化層13を形成するための液体樹脂層19を設ける(ステップS2)。これにより、昇降テーブル14に対するスリット22の相対的な位置決めが行われる。
次に、制御部17は、スライスデータに基づいて、筐体20をY軸方向へ移動させ、露光の開始位置に配置する(ステップS3)。そして、制御部17は、光源駆動部30を駆動して、光源10をX軸方向へ移動させる。この移動により、スリット22に沿って光線Lを走査させ、スリット22の間隙22a内に現れる液面26に、光線Lを照射する(ステップS4)。この光線Lの走査・照射の際に、制御部17は、スライスデータに基づいて、光源10を点灯及び消灯制御する。これにより、光線Lが照射された領域の液体樹脂11のみを線状に硬化させることができる。
一層分の走査・照射がまだ終了していない(ステップS5の判定がNo)間は、上記ステップS3とステップS4の処理を繰り返す。つまり、筐体20をY軸方向へ硬化した樹脂の幅分だけ移動させ、次の露光位置に配置する(ステップS3)。先の露光によって、液体樹脂11は、狭い間隙の液面26の範囲で硬化しているので、硬化した樹脂が筐体20に付着するのを抑制することができる。また、硬化した樹脂が筐体20に付着した場合であっても、容易に筐体20から剥離することができ、硬化層13へのダメージを抑制することができる。特に、筐体20の底部側を、一対の斜面21により下に向かって先尖り状に形成していることから、筐体20と硬化層13との接触面積をより少なくすることができ、硬化した樹脂が筐体20へ付着するのをより効果的に抑制することができる。
当該露光位置で光源10をX軸方向へ移動させて、液面26に光線Lを照射する(ステップS4)。スライスデータにしたがって、ステップS3、S4の処理を繰り返すことで、一層分の硬化層13を昇降テーブル14上に形成することができる。
一層目の硬化層13を造形したら、ステップS2に戻り、昇降テーブル14を鉛直方向(Z軸方向)に積層間隔dだけ移動し、一層目の硬化層13とスリット22との間に、二層目の硬化層13を形成するための液体樹脂層19を設ける。そして、二層目に対応するスライスデータにしたがって、上記ステップS3、S4の処理を繰り返すことで、二層目の硬化層13を造形し、一層目の硬化層13に積層する。
従来は、一層前の硬化層上に一層分の薄い液体樹脂層を形成していたので、液面の波立ちや気泡の混入等が問題となり、リコータ等で硬化層上の液面を安定させる必要があった。しかし、本実施例では、昇降テーブル14や硬化層13が液体樹脂11内に完全に沈められており、光線Lを照射する対象は、スリット22の間隙22aに現れる液面26である。そのため、スリット22によって緩やかに規制された液面26では波立ちや気泡混入等を抑制することができ、硬化層13を高精度に造形することができる。
そして、積層すべき層がある(ステップS6の判定がNo)間は、ステップS2〜S5の処理を繰り返す。すべての硬化層13を造形して積層することで(ステップS6の判定がYes)、三次元形状物が造形される。
以上、実施例1の光造形装置1では、昇降テーブル14や硬化層13を完全に液体樹脂11内に沈め、光線Lを出射させるスリット22も液体樹脂11内に配置し、液体樹脂11の自由液面11aから離れた液体樹脂11中で、スリット22の間隙22aの液面26と、昇降テーブル14又は一つ前の硬化層13との間で液体樹脂11を硬化させる。ここで液面26は、間隙22aで作用する液体樹脂11の表面張力と筐体20内の気圧とスリット22の深さにおける液圧のような、硬い構造物に依らない柔軟な外力によって固定される。これにより、自由液面方式に見られるような液体樹脂11の自由液面11aの波打ちを抑え、三次元形状物を高精度に造形することができる。
また、スリット22を設けた筐体20を液体樹脂11中へ沈めることで、自由液面11aに浮いた気泡が筐体20の壁面23a〜23dや斜面21の外側面に付着し、光線Lを照射するスリット22の間隙22aの液面26までは入り込みにくい。これにより、硬化層13への気泡の混入を抑え、気泡を通過した光線Lの散乱による造形不良や、気泡の混入を抑制し、三次元形状物の造形精度や強度の向上を図ることができる。
また、筐体20の一対の斜面21を逆ハ字状とし、一対の斜面21の下端にスリット22を設けたことで、筐体20のY軸方向への移動に伴う硬化層13との接触を最小限に抑えることができる。これにより、規制液面方式の剥離操作のような外力が作用しないため、三次元形状物を高精度に造形することができる。
また、スリット22の間隙22aで固定された液面26に対して、光線Lを直接入射することができるため、レーザ光等の光線Lの光路制御を、簡易な構成で実現することができる。また、ガルバノメータ等の高価な光学部材を使用しないため、コストを大幅に削減できる。さらに、簡易な構成のため、調整が容易で扱いも容易である。
(実施例2)
次に、実施例2について図4を参照して説明する。図4に示す実施例2の光造形装置1Aは、筐体20の内部空間25に、空気等の気体を供給するポンプ34、給気管35等の気体供給部を設けたこと以外は、実施例1の光造形装置1と同様の基本構成を備えている。そのため、同一の部材には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。以降の実施例でも同様である。ポンプ34等の動作は、制御部17によって制御される。
図4(b)は、ポンプ34等などの加圧手段(気体供給部)がない場合を示し、光造形装置1の設置環境での気圧や、スリット22の深さでの液圧の変化、スリット22の間隙22aと液体樹脂11の粘度等の関係で、液面26がスリット22から内部空間25に張り出すように膨らむ場合がある。
このような液面26の張り出しによって、スリット22の内側で液体樹脂11が硬化し、筐体20がY軸方向に移動する際に硬化層13と干渉する恐れがある。これを防ぐために、実施例2の光造形装置1Aでは、ポンプ34等の気体供給部を用いて、筐体20の内部空間25の気圧を上げることで、スリット22の間隙22aより外側に向かって液体樹脂11を凹ませることができる。これにより、図4(a)のように液体樹脂11がスリット22のエッジ部分よりも下方で硬化するので、硬化層13とスリット22との貼り付きや、筐体20がY軸方向へ動くときの硬化層13との干渉を回避することができる。
このことにより、実施例2の光造形装置1Aでは、以下のような効果を奏する。すなわち、実施例1と同様に、波打たない液面26を形成することができ、三次元形状物への泡の混入を回避することができる。また、硬化層13への外力の負荷を抑制することができる。また、液面26にレーザを直接到達させることができる。そのため、三次元形状物を高精度かつ効率的に造形することができる。さらには、ガルバノメータ等の複雑で高価な装置、機構を必要とせず、光造形装置1Aを簡易な構成で低コストに製造することができる。
(実施例3)
次に、図5を用いて液面固定のために内部空間25の気圧を制御する水封加圧方式を採用した実施例3の光造形装置1Bを説明する。図5に示す実施例3の光造形装置1Bは、上記実施例2の光造形装置1Aと同様の構成に加えて、内部空間25の気体を排気する排気管としてのU字管36を接続し、このU字管36に水封部37を設けている。そして、筐体20を加圧室として、内部空間25にU字管36の一端を接続し、他端は大気に開放する。U字管36を封じるように液体を満たして内部空間25を水封状態とし、その箇所を水封部37とする。加圧室である内部空間25には、ポンプ34によって少量の気体を供給し続ける。
この構成により、内部空間25の気圧は、U字管36の左右の液柱の落差(図5のC)を発生させる。内部空間25の気圧が上昇してU字管36の内部空間25側の液柱の高さが下がりゼロになると、U字管36の底を通って他端側から気体が大気中に放出されるため、内部空間25の気圧上昇が止まり、最大液柱落差(図5のC’)に保つことができる。そのため、電気式の計測器やコンピュータ制御等を用いることなく、U字管36を設けただけの簡易な構成で、スリット22の間隙22aより外側に向かって液体樹脂11を凹ませる作用を、より効果的に行うことができる。
なお、液柱の落差Cは大気と内部空間25との圧力差を反映するが、例えば、最大液柱落差C’が0.5cmになるようにU字管36に充填する液体の量を調整すると、0.5g/cm2という極めて小さな圧差を簡単に制御することができる。U字管36以外の気体漏れがなければ、ポンプ34からの気体の供給量は少量で済み、精密な制御を必要とすることなく、応答性に優れた機構を構築できる。U字管36に充填する液体の量を調整することで内部空間25の気圧を自在に変更することができる。任意の時点の圧力差は、液柱落差を読み取ることで、容易に判別することができる。
以上より、実施例3の光造形装置1Bでは、簡易な構成で、低コストに内部空間25の圧力制御を実施して、液面26の内部空間25への上昇を抑制することができる。したがって、内部空間25内での液体樹脂11の硬化や不必要な剥離等を抑制し、三次元形状物をより高精度に造形することができる。また、電子式の計測及びコンピュータ制御等を必要としないで、気圧や温度の変動に対して自動フィードバックがかかり、常に所望の加圧制御ができる。そのため、光造形装置1Bを簡易な構成で低コストに製造することができる。
(実施例4)
次に、実施例4について図6を参照して説明する。上記実施例1〜実施例3では、筐体20内で光源駆動部30によって光源10をX軸方向に往復移動している。これに対して、図6に示す実施例4の光造形装置1Cでは、光源10は筐体20の壁面23aあるいは壁面23bに固定し、光線LはX軸と平行に光源10から射出され、X軸方向を往復移動する反射ミラー38によってスリット22方向へ反射している。図6(a)は光造形装置1CをY軸方向から見た断面図であり、光源10が筐体20の壁面23bに固定され、筐体20のスリット22が液体樹脂11内に浸っている状態を示している。図6(b)は図6(a)の主要部をX軸方向から見た状態を示している。
実施例4では、X軸方向の直動機構を支持するガイドレールからなる軸31’に、往復運動ができるスライダ32が架け渡されており、スライダ32は車輪や摺動部品、あるいはボールネジ等で、任意の位置決め制御に従って、軸31’に沿って移動ができるようになっている。スライダ32’には、光線Lの反射鏡である反射ミラー38が下向き45°に設置されている。実施例4の照射部16は主にスライダ32’と反射ミラー38から構成されている。
このような構成の照射部16では、光源10からX軸方向に光線Lを射出することで、レーザが反射ミラー38によってZ軸方向、すなわち下向きに反射され、スリット22の間隙22aの液面26を露光することができる。スライダ32’をX軸方向へ移動しながら、それに合わせて光線Lを点灯及び消灯させると、希望するX座標位置を露光して、その箇所の液体樹脂を硬化させることができる。X軸方向全長を露光した後に、筐体20をY軸方向へ光線Lにより硬化した樹脂の幅分だけ移動させて、再びX軸方向の露光を行うことで、希望するXY座標位置を露光して、XY平面の一層分の硬化を行う。そして、昇降テーブル14を鉛直方向(Z軸方向)に積層間隔dだけ移動し、次の液体樹脂層19の露光及び硬化処理を行い、希望するXYZ座標位置を硬化させて三次元形状物の造形を行う。
本実施例では、照射部16を主にスライダ32’と反射ミラー38とで構成しており、重量物である光源10は照射部16とは別に筐体20に固定している。これにより、照射部16を大幅に軽量化し、X軸方向への移動に伴う慣性力を下げることが可能となるため、照射部16の往復移動に要する駆動力を下げ、移動速度を上げることができる。その結果、三次元形状物の造形時間を短縮することができ、機器の騒音や振動を低減することができる。
さらに、光線Lの光路制御のために、精密で高価なガルバノメータ等の光学部材を使う必要がなく、コストを低減することができる。特に、コンシューマ向けの製品としては、ユーザが入手し易い低コストの光造形装置1Cを提供することができる。
また、実施例4の光造形装置1Cにおいても、実施例2と同様に筐体20にポンプ34、給気管35等の気体供給部を設けることもできる。さらには、実施例3と同様に、U字管36や水封部37を設けることもできる。この構成により、光造形装置1Cでも、内部空間25の圧力を制御して、液面26の内部空間25への上昇を抑制し、より高精度な三次元形状物の造形を可能とし、しかも低コストに実施することが可能となる。
以上、本実施例1〜4によれば、三次元形状物を高精度かつ効率的に形成することが可能な光造形装置1〜1Cを簡易な構成で低コストに提供することができる。特に、医療分野での実施に好適であり、臓器の外形だけでなく複雑に入り組んだ内部構造に対しても、精巧な三次元形状物を造形することができる。
また、上記実施例1〜4では、光線Lを下向きに照射し、液面26で液体樹脂11を硬化させているが、本願がこれに限定されることはない。液槽12からの樹脂液11の漏れを防止する対策は必要であるが、機器の上下を反転して光路を上向きとすることで、規制液面方式の光造形装置に適用することも可能である。
また、上記実施例4の光源10と、スライダ32’及び反射ミラー38を有する照射部16とからなる構成を単独で実施することもできる。重量のある光源10をX軸方向へは移動させず、軽量な反射ミラー38をX軸方向へ移動させて光源10からの光線Lを液体樹脂11に対して直角に入射させることで、X軸方向への光線Lの走査の高速化と樹脂の硬化の高精度化が可能となる。その結果、三次元形状物を高速かつ高精度に造形することが可能となる。また、光源10及び照射部16を液槽12の下側に配置すれば光路が上向きとなり、光源10及び照射部16を規制液面方式のための光路制御にも利用することができる。
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記各実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記各実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。また、前記構成部材の数、位置、形状等は各実施例に限定されることはなく、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
1,1A,1B,1C 光造形装置
10 光源
11 光硬化性液体樹脂材料、液体樹脂
12 液槽
13 硬化層
14 昇降テーブル(支持部)
15 駆動部
16 照射部
17 制御部
18 記憶部
19 液体樹脂層
20 筐体
21 斜面
22 スリット
22a 間隙
23a〜23d 壁面
24 天面
25 内部空間
26 液面
27 筐体駆動部
30 光源駆動部(駆動部材)
31 軸
32 スライダ
33 電動モータ
34 ポンプ(気体供給部)
35 給気管(気体供給部)
36 U字管(排気管)
37 水封部
38 反射ミラー
40 情報処理装置
L 光線
d 積層間隔(間隔)

Claims (7)

  1. 光硬化性液体樹脂材料に光線を照射して前記光硬化性液体樹脂材料を一層ずつ硬化させ、得られた硬化層を積層することによって三次元形状物を造形する光造形装置であって、
    前記光線を射出する光源と、
    前記光硬化性液体樹脂材料を収容する液槽と、
    前記液槽内の前記光硬化性液体樹脂材料中で昇降し前記硬化層を支持する支持体と、
    前記光硬化性液体樹脂材料内に所定深さで配置され、前記光線の走査方向に延びるスリットが設けられるとともに前記走査方向と交差する方向に移動可能な筐体と、
    前記光硬化性液体樹脂材料内の前記支持体又は前記硬化層との間に、前記硬化層一層分の液体樹脂層が介在するように前記スリットが位置決めされた状態で、前記スリットの間隙に現れる前記光硬化性液体樹脂材料の液面に前記光線を走査して照射する照射部とを備えたことを特徴とする光造形装置。
  2. 前記筐体は、前記液槽内に向かって次第に狭幅となるように先尖り状に配置された一対の斜面を有し、前記一対の斜面の傾斜の間隙を、前記スリットとしたことを特徴とする請求項1に記載の光造形装置。
  3. 前記筐体の内部空間に、気体を供給する気体供給部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の光造形装置。
  4. 前記気体供給部は、前記筐体に前記気体を供給し続けるように構成され、前記筐体に、前記内部空間の前記気体を排気する排気管を設け、前記排気管に水封部を設けたことを特徴とする請求項3に記載の光造形装置。
  5. 前記照射部は、前記筐体内で前記光源を前記スリットに沿って往復動させる駆動部材を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光造形装置。
  6. 前記照射部は、前記筐体内で前記光源から射出する光を前記スリットの間隙の液面に向けて反射する反射部材と、前記反射部材を前記スリットに沿って往復動させる駆動部材とを有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光造形装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光造形装置により行われる光造形方法であって、
    光硬化性液体樹脂材料内で、支持体又は直前に硬化させた硬化層との間に、硬化層一層分の液体樹脂層が介在するように、前記スリットの位置決めを行う工程と、
    前記スリットを有する筐体を、前記スリットと交差方向に移動し、その移動位置で前記スリットの間隙に現れる前記光硬化性液体樹脂材料の液面に光線を走査させ、照射し、硬化させることを繰り返すことで一層分の硬化層を形成する工程と、を有し、
    上記工程を繰り返すことにより三次元形状物を造形することを特徴とする光造形方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110356000A (zh) * 2019-06-29 2019-10-22 浙江大学 一种生物3d打印机

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