JP2017215320A - 油入機器の異常診断における過熱温度推定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油中のH2、CH4、C2H6、C2H4、C3H8、C3H6を油中ガス分析で測定し、その発生量を求め、第1番目がH2、第2番目がCH4であるか第1番目がCH4、第2番目がH2又はC2H6である場合局所過熱温度を300℃と推定し、第1番目がH2第2番目がC2H6であるか第1番目がC2H6、第2番目がH2、C3H8、C3H6である場合局所過熱温度を400℃と推定し、第1番目がC2H4第2番目がC2H6であるか第1番目がC2H6第2番目がC2H4である場合局所過熱温度を500℃と推定し、第1番目がC2H4第2番目がC2H6であるか第1番目がC2H4第2番目がCH4であるかC3H6である場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定する。
【選択図】図1
Description
エステル系絶縁油は、生分解性が高く、自然環境に漏れ出た場合でも環境への負荷が少ないため、ヨーロッパなどで風力発電向けの変圧器などで採用される例が増えている。
エステル系絶縁油の中でも植物油など天然エステルや植物油由来の脂肪酸を原料にした絶縁油は、廃却時に焼却した場合でもカーボンニュートラルによってCO2排出量の削減効果も期待できる。エステル系絶縁油は使用が広がっており、これらを使った変圧器の異常診断技術への要望が高まっている。
また、鉱油が加熱された際に発生するガス組成は、温度によって変化し、鉱油の場合、飽和炭化水素と不飽和炭化水素の分子組成の比率が変わるため、これらの比と温度の関係から過熱温度を推定することができ(非特許文献2参照)、この方法は従来から広く用いられている。
しかし、前記従来の推定方法は、鉱油が加熱された際に発生する分解ガスを調査した結果に基づいた方法である。エステル系絶縁油はエステル基を有しており化学構造が鉱油とは異なっているため、分解生成物やその発生挙動は鉱油で用いられている過熱温度推定方法を適用することができない。
また、油入変圧器に限らず、油入リアクトル、油入コンデンサー、油入ケーブル、冷凍機油などの油入機器においても機器の過熱温度推定方法が求められている。
本発明の目的は、エステル系絶縁油を用いた変圧器などの油入機器の異常診断における過熱温度を推定する技術の提供にある。
(3)本発明において、先に記載の植物油由来脂肪酸エステルとしてパームヤシ脂肪酸エステル絶縁油またはパステルNEO(ライオン株式会社商品名)を用いることができる。
(6)本発明において、先に記載の天然エステル系絶縁油として大豆油またはEnvirotemp FR3(カーギル社商品名)、または菜種油を用いることができる。
(8)本発明において、前記局所過熱温度毎の第1番目のガスと第2番目のガスが、予め合成エステル主体エステル系絶縁油を不活性ガス雰囲気中において300℃、400℃〜500℃、600〜700℃の各温度条件に局所加熱して発生するガスを分析し、局所加熱温度毎のH2ガスとCH4ガスとC2H6ガスとC2H4ガスとC3H8ガスの発生量を求め、各温度条件にて発生量の多いガスから順に特定した第1番目のガスと第2番目のガスであることが好ましい。
(9)本発明において、先に記載の合成エステル系絶縁油としてポリオールエステル絶縁油またはMIDEL7131(M&I Materials社商品名)を用いることができる。
本発明による推定方法では、植物油由来エステル系絶縁油、天然エステル系絶縁油、合成エステル系絶縁油のいずれかの場合に300〜700℃の範囲内のいずれかの温度域に対応する異常過熱がなされたのか推定できる。
以下、本発明に係る過熱温度推定方法の一実施形態について図面に基づき説明する。
「実施の前工程」
本実施形態は、エステル系絶縁油を使った変圧器内部で過熱があったと判断される場合に適用する。実施に先立って以下に示す、油種の特定、絶縁油中ガス分析、異常の有無判断、過熱・放電の判断を行う。
(油種の特定)
エステル系電気絶縁油は油種によって発生するガス挙動が大きく異なるため、まず油種の特定を行う。油種の特定は、事前の情報による他、赤外線分光分析やガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分析など各種分析手段によって特定してもよい。
(絶縁油中ガス分析)
エステル系絶縁油中に含まれるH2ガス、CH4ガス、C2H6ガス、C2H4ガス、C2H2ガス、C3H8ガス、C3H6ガス、C2ガス(油中ガス分析で測定する炭素数2の炭化水素の合計でC2H6+C2H4+C2H2を指す)、C3ガス(油中ガス分析で測定する炭素数3の炭化水素の合計でC3H8+C3H6を指す)のうち少なくとも2種類を分析する。絶縁油中のガスを分析する方法は、限定せず、公知の分析方法を用いる。使用する分析装置もエステル系絶縁油中のガス成分を分析できる装置であればよく、例えばガスクロマトグラフが挙げられる。
前記、絶縁油中ガス分析の結果から、内部異常の有無を判断する。例えば、鉱油を用いた変圧器で行われているように、実器変圧器の分析データを多数収取し、統計学的な処理によって閾値を決定する方法や、定期的なガス分析の実施により、ガス増加量の変化によって判断する方法などが考えられる。
(放電・過熱の判断工程)
内部異常ありと判断された場合、放電の有無を判断し、放電がなければ、過熱であると推定できる。放電特有の分解成分の検出によって放電に有無を判断する方法などが考えられる。エステル系絶縁油においても鉱油同様、放電が発生した場合、C2H2ガスが発生することが知られており、本発明者らの実験によって過熱ではほとんど発生しないことが分かっている。このことからC2H2ガスの分析によって放電の有無を判断できる可能性がある。また、微小放電の場合は絶縁油から水素ガスが出てくることもある。
本発明者らは、エステル系絶縁油中で過熱があった際、どのようなガスが発生するかを調査する目的で局所加熱実験を行った。
図1は油入変圧器の過熱温度を推定するための基礎データを得るために用いる加熱試験装置の一実施形態を示す。この形態の加熱試験装置1は、ステンレス鋼から構成された中空の容器2と、その上部に接続された円筒ガラスからなる収容部3と、その上端部に取り付けられたステンレス鋼製の上蓋5を備えた概略構造を有している。
容器2の相対向する側壁を貫通するように電極導体6、6が設けられ、容器2の中央側で相対向する電極導体6の先端部にL字型の電極7が取り付けられ、これら電極7、7の間に金属製の短冊状の加熱導体8が水平に支持されている。容器2の側壁を電極導体6が貫通する部分に絶縁部材6aが挿通されて電極導体6が側壁2と絶縁分離されている。
図1では加熱導体8の外形は略されているが、加熱導体8の両端部に着脱用の係止孔が形成され、これらの係止孔を介しボルト等の固定具を電極支持板7に形成されているネジ孔に螺合することで電極7、7の間に加熱導体8を橋渡し状に着脱自在に固定することができる。
容器2の底部側には容器2を水平支持するためのステンレス鋼板製の基台9が取り付けられ、この基台9の中央下部側に攪拌用のマグネチックスターラー本体10が設置され、容器2の底板上面側にマグネチックスターラーの攪拌子11が設置されている。なお、図1では略されているが、容器2の背面側に窒素ガス供給源に接続された窒素ガス注入管が接続され、容器2の内部側に窒素ガスを供給することができる。
また、上蓋5の他の一部分を貫通するように排気管16が上下方向に設けられ、排気管16の上部側に圧力ゲージ17が接続され、排気管16の途中部分に分岐管16aを介し別途外部に配置されている真空ポンプ18が接続されている。この真空ポンプ18の動作によって収容部3内の空間部Sから脱気することができる。なお、空間Sを真空ポンプPで脱気しながら収容した絶縁油Lを攪拌子11で撹拌することで油中の不要ガスを取り除くことができる。
なお、加熱導体8がむき出しの状態では高温加熱に問題を生じるため、加熱導体中央から左右に10mmの範囲をガラステープで保温した。ガラステープは、使用前に加熱処理しテープからガスが発生しないように配慮することが好ましい。
「加熱導体の温度計測と温度調整」
実験する場合の温度調整は、ガラステープで保温してある領域について5点の温度を測定し、この中で最も温度が高い部分を試験温度に調整するという方法を採用する。
大豆油は天然エステルに分類できるので、他に菜種油、サンフラワー油、ひまわり油など不飽和脂肪酸を含むトリグリセリドの油を用いることができる。
ポリオールエステルは合成エステルに分類でき、MIDEL(M&I Materials社商品名)はペンタエリスリトール脂肪酸エステルであるので、他にポリオールエステルは、ネオペンチルグリコールやトリメチロールプロパンなどが考えられ、これらのアルキル基の部分は任意のエステルを用いることができる。
これら各種のエステル系絶縁油について以下に詳述する。
上記脂肪酸は、ヤシ油、パーム核油、大豆油、パーム油などの植物油由来のものである。また、上記脂肪酸は、化学的に安定であることから、飽和脂肪酸である。
脂肪酸と炭素数6〜14の分岐脂肪族1価アルコールとのエステル化物は、これらの脂肪酸とアルコールとのエステル化物であれば、特に限定されるものではないが、カプリル酸イソトリデシル、カプリン酸イソトリデシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸イソトリデシル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソトリデシル、およびこれらの2種以上の混合物等を用いることで、電気絶縁油としての電気特性に優れたものとなる。
脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸、パルミチオル酸、ドコサジエン酸、リグノセリン酸、テトラコセン酸、マルガリン酸、マルガロレン酸、ガドレイン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ペンタデカン酸及びヘプタデカン酸等の幾つかの異なる脂肪酸がある。脂肪酸と、結果として得られる植物油とは、それらの飽和度が異なる場合がある。トリグリセリド分子上の3つの脂肪酸は、全て同じ種類のものであっても、2種又は3種の異なる脂肪酸からなっていてもよい。トリグリセリドの組成は、化学種ごとに変わり、また、さほどではないが個々の化学種の系統ごとに変わるが、1つの系統から誘導される植物油は本質的に同じ脂肪酸組成を有する。
植物油として、前述の油の他に、ヒマワリ油、菜種油(カノーラ油)、綿実油、オリーブ油、ベニバナ油、ホホバ油、レスケレラ油、及びベロニア油なども適用できる。
ここで用いる植物油は、これら天然エステルからなるか、これら天然エステル100質量部に対し5質量部以下の添加剤(酸化防止剤、流動点降下剤、流動帯電防止剤等)を配合した絶縁油として定義できる。
ここで用いる合成エステルを主体とするエステル系絶縁油は、これら合成エステルからなるか、あるいはこれら合成エステル100質量部に対し5質量部以下の添加剤(酸化防止剤、流動点降下剤、流動帯電防止剤等)を配合した絶縁油として定義できる。
合成エステルは、一例として図4に示す一般式で示されるが、図4の一般式において末端の3つのRは同一であっても異なっていても良く、C4〜C22の炭素鎖を有し、0〜3の不飽和度を有することができる。
合成エステルの一例として、ネオペンチルグリコールとトリメチロールプロパン及び/又はペンタエリスリトールとのアルコールと、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸から選定された2種以上のカルボン酸とからなるエステル化物を50質量%以上含有する絶縁油とすることができる。前記混合カルボン酸が、n-ペンタン酸、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸から2種以上を選定できる。
しかし、本発明を適用可能なエステル系絶縁油において、植物油由来脂肪酸エステルとして不飽和脂肪酸を主体とするエステル系絶縁油も例示できる。これは植物油由来の不飽和脂肪酸と炭素数6〜14の分岐及び脂肪族1価アルコールからなるエステルおよびそれに添加剤(酸化防止剤、流動点降下剤、流動帯電防止剤等)を配合した絶縁油であると定義できる。また、より詳しくは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸と炭素数6〜14の分岐及び脂肪族1価アルコールからなるエステルと定義できる。
この不飽和脂肪酸を主体とする植物油由来脂肪酸エステルは、菜種油、トウモロコシ油などの植物油と低級アルコールによるエステル化物を主体とする電気絶縁油である。
不飽和脂肪酸を主体とする植物油由来脂肪酸エステルとして他に、とうもろこし油、紅花油と低級アルコールによるエステル化物を用いることもできる。低級アルコールとして、アルキルアルコール、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール類、ブチルアルコール類、アミルアルコール類、ペンチルアルコール類、ヘキシルアルコール類、ヘプチルアルコール類、オクチルアルコール類とベンジルアルコール類が挙げられる。
植物油由来脂肪酸エステルとして不飽和脂肪酸を主体とするエステル系絶縁油に対し本発明を適用する場合、不飽和脂肪酸を主体とするエステル系絶縁油は化学構造からみて、植物系天然エステルを主体とするエステル系絶縁油と同等の傾向と示すと思われる。
このため、不飽和脂肪酸を主体とするエステル系絶縁油は、後に説明する植物系天然エステルを主体とするエステル系絶縁油と同等の方法により過熱温度の推定ができる。
前記のいずれかの絶縁油をJIS5種Cのろ紙でろ過しながら容器2と収容部3に注入する。容器2と収容部3の合計容量の80%程度まで絶縁油を注入した後、真空ポンプ18にて空間部Sを脱気し、マグネチックスターラーの攪拌子11で絶縁油を攪拌しながら減圧する。この操作で絶縁油中の不要ガスを窒素で飽和して除去することができる。
減圧終了後、容器2に接続されている窒素ガス供給管から容器内部に窒素ガスをバブリングにより吹き込み、空間部Sを窒素で置換する。また、内部の絶縁油中のガスを窒素で飽和することによって追い出す効果も得ることができる。
加熱試験を開始してから所定時間過後、空間部Sにおける空間ガスと装置内部の絶縁油を採取し、油面上ガスと油中ガスをガスクロマトグラフにより分析し、それらの合計から以下の7種類のガスの比率を求める。
ガスクロマトグラフによるガス分析では、H2ガスと、CH4ガスと、C2H6ガスと、C2H4ガスと、C2H2ガスと、C3H8ガスと、C3H6ガスのそれぞれの量を計測してそれらの発生量を求め、その発生量の多いガスから順に第1番目のガスと第2番目のガスを特定する。
「PFAE」
300℃ 0、6、12、24、48時間
400℃ 0、3、6、9、12時間
500℃ 0、3、6、9、12時間
600℃ 0、1、2、3、6時間
700℃ 0、20、40、60分
「FR3・MIDEL(M&I Materials社商品名)」
300℃ 0、4、8、12、15時間
400℃ 0、3、6、9、12時間
500℃ 0、3、6、9、12時間
600℃ 0、1、2、3、6時間
700℃ 0、20、40、60分
「菜種油」
300℃ 0、4、8、12、15時間
400℃ 0、3、6、9、12時間
500℃ 0、3、6、9、12時間
600℃ 0、1、2、3、6時間
700℃ 0、15、30、45分
また加熱試験において、試験温度が変わる場合は、全ての絶縁油を入れ替え、その都度真空脱気、窒素ガスバブリングを行い、絶縁油中のガスがない状態にしてから試験を行う必要がある。
試験開始からガス発生挙動が安定した時点以降の各プロットにおけるガスの量を求め、その量が多い順に並べた際の順番を把握する。
「PFAE」
300℃ 12、24、48時間の各時点のガスの量
400℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃ 2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃ 40、60分の各時点のガスの量
「FR3・MIDEL」
300℃ 8、12、15時間の各時点のガスの量
400℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃ 2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃ 40、60分の各時点のガスの量
「菜種油」
300℃ 8、12、15時間の各時点のガスの量
400℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃ 2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃ 30、45分の各時点のガスの量
以下の表1において、(1)、(2)などの表記は、分析したガスの量の多いものから並べた場合の順序を示す。
検査対象油が植物油由来脂肪酸エステル絶縁油(パームヤシ脂肪酸エステル絶縁油:パステルNEO:ライオン株式会社商品名)の場合、
300℃に加熱すると、第1番目のガスがH2ガス、第2番目のガスがCH4ガスであるか第1番目のガスがCH4ガス、第2番目のガスがH2またはC2H6ガスであった。
400℃に加熱すると、第1番目のガスがH2ガス、第2番目のガスがC2H6ガスであるか第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがH2ガスまたはC3H8、C3H6ガスであった。
500℃に加熱すると、第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがC2H6ガスであるか、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがC2H4ガスであった。
600〜700℃に加熱すると、第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがC2H6ガスであるか、第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがCH4ガスであるかC3H6ガスであった。
300〜400℃に加熱すると、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがCH4ガスであるかH2ガスであった。
500℃に加熱すると、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがC2H4ガスであった。
600〜700℃に加熱すると、第1番目のガスがC2H4ガスであった。
500℃に加熱すると、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがC2H4ガスであった。
600〜700℃に加熱すると、第1番目のガスがC2H4ガスであった。
300℃に加熱すると、第1番目のガスがH2ガス、第2番目のガスがC2H6ガスか、CH4ガスか、C3H8ガスのいずれかであり、あるいは、第1番目のガスがC2H6ガスであるか、CH4ガスであるか、C3H8ガスであった。
400〜500℃に加熱すると、第1番目のガスがC3H8ガスであった。
600℃〜700℃に加熱すると、第1番目のガスがC2H4ガスであった。
このため、実際にパームヤシ脂肪酸エステル絶縁油、大豆油、菜種油、合成エステル絶縁油のいずれかが使用されている油入機器に対し、使用中の絶縁油を採取し、使用中の絶縁油の油中ガス分析を行い、第1番目のガスと第2番目のガスの特定を行えば、上述と表1に示す関係から油入機器の過熱温度を推定できる。
即ち、使用中の絶縁油の油中ガスのうち、H2ガスと、CH4ガスと、C2H6ガスと、C2H4ガスと、C2H2ガスと、C3H8ガスと、C3H6ガスの発生量を比較し、第1番目のガスと第2番目のガスの特定を行い、表1に示す関係に当てはめるならば、表1に示す加熱温度を油入機器の過熱温度と推定できる。
パームヤシ脂肪酸エステル絶縁油、大豆油、合成エステル絶縁油などのエステル系絶縁油を使用している油入機器において、このような過熱温度の概略判断ができること自体、有用であり、この概略判断の結果を基に、必要があれば、更に精密な検査を実施するなどの手段を講じることができる。これによって油入機器の安全運転に寄与する。
なお、絶縁油中のガス分析法については、非特許文献1(電協研65巻)の鉱油変圧器の油中ガス分析による保守管理法の中に記載されている。今回の加熱試験に先立ち、電協研法同等の分析法にて検証を行った結果、問題なく分析できることを確認した。それぞれの油種や分析装置によって条件は異なるため、個々の条件で確認は必要であるが、エステル系絶縁油の油中ガス分析についても電協研法と同様な方法が利用できると考えられる。
次に、表1に記載の方法で温度推定を行った上でその温度範囲内でより精度が高いガスの組み合わせを指標とした以下に説明する(1)式を用いる指標を組み合わせることにより、より高精度に過熱温度を推定できる方法について以下に説明する。
第2実施形態では、ガスの発生量比率と過熱温度の関係を式で表すことにより、より詳細に過熱温度の推定を可能とする。鉱油を使った変圧器では、発生する飽和炭化水素と不飽和炭化水素の比と過熱温度の関係式によって過熱温度の推定を行っている。推定に使うガス比率の代表的なものはC2H4/C2H6であり、日本国内で広く用いられている。
これは、飽和炭化水素と不飽和炭化水素の結合エネルギーの差によるもので不飽和の方が生成するのにより多くのエネルギーを必要とするため、分解温度が高くなると不飽和炭化水素の比率が高くなる。
そこで上述した局所加熱実験の結果から様々なガス量(又は複数のガス量の合計)の比と加熱温度の関係を式に表し、エステル系絶縁油の過熱温度推定に適したものを選定した。
1)300℃〜700℃の温度範囲で相関性がある。
横軸に温度、縦軸に指標をとって図示した場合、右肩上がりの関係となり、全ての温度範囲でその関係が逆転しない。
2)関係式の相関係数(r2)が0.8以上である。
3)温度推定精度は±50℃以内である。
実験のばらつきを考慮した場合でも、±50℃以内の精度で温度推定が可能なものとする。実験のばらつきは、測定毎のガス比率のばらつき(標準偏差の2倍=2σ)とする。
ガスA/ガスB=b・ea・t …(1)式
但し(1)式において、ガスA:特定の1種のガス量または複数(例えば2種)のガスの合計量、ガスB:分析したガスのうち残った特定の1種のガス量または複数(例えば2種や3種)のガスの合計量、a:定数、b:定数、t:過熱温度(℃)を示す。
なお、ここで求めた(1)式は、実験式であるため、実験や測定などのばらつきから、ある幅を持っていると考えられる。そこで実験のばらつきの範囲を算出し、関係式がとりうる範囲について検討した。実験のばらつきから各プロットが取りうる範囲を求め、このすべてが入る範囲が関係式の取りうる範囲であると考えた。
前述の(1)式の取りうる範囲の推定は、各プロットの2σの範囲が全て入る直線(2σの10%外側)で囲まれた範囲と考えた。表2にはこの範囲に入る関係式の定数の範囲を併せて記載している。
測定対象の油入機器内のエステル系絶縁油と同種のエステル系絶縁油を用い、先の第1実施形態において用いた加熱試験装置1を用い、温度毎のガス発生量を測定する。図6に示す例では、300℃加熱、400℃加熱、500℃加熱、600℃加熱、700℃加熱の場合のガスA/ガスBの比率を求めている。
図6の例では、ガスAをC2H4ガス+C3H6ガスに設定し、前記ガスBをCH4ガス+C2H6ガスに設定した場合の結果を示している。図6の横軸を分析した際の測定対象エステル系絶縁油の温度(℃)、縦軸にガスAとガスBの比率、ガスA/ガスB=(C2H4ガス+C3H6ガス)/(CH4ガス+C2H6ガス)を示している。
300℃以上、500℃未満の領域の実線はy=0.0645e0.0057x,R2=0.9977の関係式で示され、500℃以上700℃以下の領域の実線はy=0.2128e0.0032x,R2=0.9829の関係式で示される。そして、これらの各プロット位置に実験の誤差(2σ)+10%を加えた範囲を鎖線のように上方と下方に書き込み、これらの鎖線で挟まれる範囲を誤差範囲と推定する。
このため、油入機器に収容されている測定対象のエステル系絶縁油の油中分析を行い、得られた結果のガスAとガスBの比率(図6のケースの場合、ガスAをC2H4ガス+C3H6ガス、ガスBをCH4ガス+C2H6ガスとする)から、油入機器の過熱温度を計算で推定することができる。
ここで用いるガスAとガスBの組み合わせについて、以下の表2にまとめて示す。
また、表2には、後述する実施例において得られた結果に基づき得られた定数aの値、定数bの値とそれらの範囲についても併記している。表2に示す結果は、図1に示す加熱試験装置1に繰り返し異なる種類のエステル系絶縁油を収容して温度毎に加熱試験を繰り返し、ガスAとガスBの組み合わせのそれぞれについて図6に示すグラフを描いて定数aと定数bを求めた結果をまとめて示している。
表2に示す結果は、図6に示すガスAをC2H4ガス+C3H6ガス、ガスBをCH4ガス+C2H6ガスに設定して各温度におけるガスA/ガスBの値と(1)式の定数a、bを算出した場合と同様に、ガスAとガスBを別のガス種の組み合わせに替え、その場合の定数a、bを算出した結果をまとめて示している。
この方法によって先の第1実施形態よりも精度が向上する指標と関係式の組み合わせを選定することができる。
その関係を表2に示している。表2は後述する実施例において実験のばらつきと曲線の取り得る範囲を求め、定数の範囲を求めた結果を記載したものである。
また、表2には、後述する実施例において得られた結果に基づき得られた定数aの値、定数bの値とそれらの範囲についても併記した。
500℃以上の場合、第1番目のケースとしてガスAをC2H4ガスにガスBをC2H6ガスに設定する。また、第2番目のケースとしてガスAをC2H4ガス+C3H6ガスにガスBをC2H6ガスに設定し、第3番目のケースとしてガスAをC2H4ガスにガスBをC3H8ガスガスに設定し、第4番目のケースとしてガスAをC3H6ガスにガスBをC3H8ガスに設定し、第5番目のケースとしてガスAをC2H4ガス+C3H6ガスにガスBをC3H8ガスに設定する。第6番目のケースとしてガスAをC2H4ガスにガスBをCH4ガス+C2H6ガスに設定し、第7番目のケースとしてガスAをC2H4ガスにガスBをC2H6ガス+C3H8ガスに設定し、第8番目のケースとしてガスAをC2H4ガス+C3H6ガスにガスBをC2H6ガス+C3H8ガスに設定し、第9番目のケースとしてガスAをC2H4ガスにガスBをCH4ガス+C3H8ガスに設定し、第10番目のケースとしてガスAをC2H4ガスにガスBをCH4ガス+C3ガスに設定する。
図6を基に先に説明した手順に従い、(1)式の定数aと定数bを求め、それらの誤差範囲(2σ+10%の範囲)を求める。その結果を表2に併記した。表2に示す通り、(1)式の定数a、bと誤差範囲を求めることができる。
この油中分析によりガスA/ガスBの比率を求めることができるので、表2のガスA、ガスBに当てはめ、(1)式を方程式として解を求めることにより、測定対象のパームヤシ脂肪酸エステル油の過熱温度を推定できる。
表2に示す如くそれぞれ定数a、bと誤差範囲を求めることができる。
なお、500℃未満の範囲では第2のケースとして前記ガスAをC3H6ガスガスに前記ガスBをC2H6ガス+C3H8ガスに設定するか、第3のケースとして前記ガスAをC3H6ガスに前記ガスBをCH4ガス+C2H6ガスに設定するかのいずれかを選択することもできる。
合成エステル油(MIDEL7131:M&I Material社製、M&I Material社商品名)では500℃未満ではガスAをC2H4、ガスBをC2H6+C3H8を第1のケースとして用い、500℃以上の範囲では、ガスAをC2H4、ガスBをC3H8に用いた関係式の組み合わせを用いるのが最も精度よく温度推定ができると考えられる。
なお、500℃以上の範囲では第2のケースとして前記ガスAをC2H4ガス+C3H6ガスに前記ガスBをC3H8ガスに設定することができると考えられる。
前記絶縁油をJIS5種Cのろ紙でろ過しながら容器2と収容部3に注入した。容器2と収容部3の内部全容積の80%程度まで絶縁油を注入した後、真空ポンプ18にて空間部Sを脱気し、マグネチックスターラーの攪拌子11で絶縁油を攪拌しながら減圧した。
減圧終了後、容器2に接続されている窒素ガス供給管から容器内部に窒素ガスをバブリングにより1時間吹き込み、空間部Sの内部を窒素で飽和した。
その後、冷却管12に5℃一定にした冷却水を流した後、加熱導体8に通電し、絶縁油を加熱した。加熱温度の制御は熱電対線13による温度測定値を確認しながら電源Pの電圧を制御し、加熱導体8の温度が300℃、400℃、500℃、600℃、700℃のいずれかの温度になるように調整した。
加熱開始後、空間部Sにおけるガスを採取し、ガスクロマトグラフにより分析した。ガスクロマトグラフの分析により、H2ガスとCH4ガスとC2H6ガスとC2H4ガスとC2H2ガスとC3H8ガスとC3H6ガスの発生量を測定した。
試験開始からガス発生挙動が安定した時点以降の各プロットにおけるガス量を求め、最も多いガスの量を1として他のガスの量を規格化したものの平均から図5に示す結果を得ることができた。
平均を求める場合の時間設定は以下の通りとした。
「PFAE」
300℃:12、24、48時間の各時点のガスの量
400℃:6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃:6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃:2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃:40、60分の各時点のガスの量
「FR3・MIDEL」
300℃:8、12、15時間の各時点のガスの量
400℃:6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃:6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃:2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃:40、60分の各時点のガスの量
「菜種油」
300℃:8、12、15時間の各時点のガスの量
400℃:6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃:6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃:2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃:30、45分の各時点のガスの量
加熱温度に応じてその都度測定する絶縁油は全て入れ替え、真空脱気、窒素ガスバブリングによる窒素置換を繰り返し、温度毎の測定初期条件を一致させた。
図5は分析したH2ガスとCH4ガスとC2H6ガスとC2H4ガスとC2H2ガスとC3H8ガスとC3H6ガスのそれぞれの量比において最大のガス量に対する他の各ガスの量比で示したグラフをまとめたものである。
パームヤシ脂肪酸エステル油(パステルNEO)の試験結果において、図5(A)〜(E)に示す5つのパターンが得られた。
図5(A)に示すように加熱温度300℃の場合、第1番目のガスがH2ガス、第2番目のガスがCH4ガスであった。
図5(B)に示すように加熱温度400℃の場合、第1番目のガスがH2ガス、第2番目のガスがC2H6ガスであった。
図5(C)に示すように加熱温度500℃の場合、第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがC2H6ガスであった。ただし実験ばらつきを考慮すると、第1番目のガスがC2H6で第2番目のガスがC2H4である場合も考えられる。
図5(D)に示すように加熱温度600℃の場合、第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがC2H6ガスあるいはCH4ガスであった。
図5(E)に示すように加熱温度700℃の場合、第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがCH4ガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると第2番目のガスはC2H6またはC3H6の場合も考えられる。
図5(G)に示すように加熱温度300℃の場合、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがH2ガスであった。
図5(H)に示すように加熱温度400℃の場合、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがH2ガスであった。
なお、H2については、前述のとおり発生原因が多種あるため加熱温度を示す特徴的なガスとならない場合が考えられる。したがって表1のFR3の300℃と400℃の第2番目のガスはH2を除いたCH4となるパターンも記載している。
図5(I)に示すように加熱温度500℃の場合、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがC2H4ガスであった。
よって、これらから第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがCH4ガスまたはH2ガスである場合、過熱温度を300〜400℃と推定できる。
ただし、加熱温度300℃及び400℃の場合のC2H6以外のガス発生量は非常に少なく、その差を判断することは困難であるとも考えられる。加熱温度300℃、400℃、500℃の第一番目の発生ガスはいずれもC2H6であるため、第2番目の発生ガス量の比較が明確でないと過熱温度の推定を誤る可能性がある。
加熱温度500℃と400℃以下では、C2H6ガスとC2H4ガスの比率に大きな差があることが図5(I)と図5(G)と図5(H)の対比からわかる。
したがって、C2H4/C2H6が0.5以上であれば500℃と判断し、0.5以下であれば300℃〜400℃と判断することでより正確に推定できる。
図5(K)に示すように加熱温度700℃の場合、第1番目のガスがC2H4ガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると第2番目のガスがCH4又はC2H6又はC3H6である場合も考えられる。
図5(L)に示すように加熱温度300℃の場合、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがC3H8ガスであった。なお、C2H6以外のガスについては発生量が非常に少なかったため、測定のばらつきや各変圧器の部材構成の違いなどによって発生量の差が明確に表れないことも考えられる。第2番目のガスはH2、CH4、C2H4、C3H6のいずれかである場合も考えられる。
図5(M)に示すように加熱温度400℃の場合、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスが、H2であった。
図5(N)に示すように加熱温度500℃の場合、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがC2H4ガスであった。
よって、これらから第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがC3H8ガス、H2ガス、CH4ガス、C2H4ガス、C3H6ガスのいずれかである場合、過熱温度を300〜400℃と推定できる。
加熱温度300℃、400℃、500℃の第一番目の発生ガスはいずれもC2H6であるため、第2番目の発生ガス量の比較が明確でないと過熱温度の推定を誤る可能性がある。
加熱温度500℃と400℃以下では、C2H6ガスとC2H4ガスの比率に大きな差があることが図5(N)と図5(L)と図5(M)の対比からわかる。
したがって、C2H4/C2H6が0.5以上であれば500℃と判断し、0.5以下であれば300℃〜400℃と判断することでより正確に推定できる。
図5(P)に示すように加熱温度700℃の場合、第1番目のガスがC2H4ガスであり、第2番目のガスがC3H6であった。ただし実験のばらつきを考慮すると第2番目のガスがCH4又はC2H6である場合も考えられる。
図5(Q)に示すように加熱温度300℃の場合、第1番目のガスがH2ガス、第2番目のガスがC2H6ガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると第2番目のガスはCH4またはC3H8である場合もあり得る。
図5(R)に示すように加熱温度400℃の場合、第1番目のガスがC3H8ガス、第2番目のガスがC2H6ガスであった。
図5(S)に示すように加熱温度500℃の場合、第1番目のガスがC3H8ガス、第2番目のガスがC3H6又はC2H6ガスであった。
図5(T)に示すように加熱温度600℃の場合、第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがCH4ガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると、第2番目のガスはC2H6であることもありうる。
図5(U)に示すように加熱温度700℃の場合、第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがCH4ガスであった。
このため、第1番目のガスがC2H4、第2番目のガスがCH4またはC2H6の場合過熱温度600〜700℃と推定できる。
図5(V)〜(Z)に示す鉱油の場合の試験結果では、エステル絶縁油の場合と傾向が全く異なることが判明した。このことからも、エステル絶縁油の過熱温度推定には特別な推定方法を実施することが必要であると判る。また、エステル絶縁油でも油種によって特性が異なるため、油種毎の推定方法が必要であることが判る。
表1に示す判定によりそれぞれのエステル系絶縁油に対し、温度毎のおおまかな過熱温度推定ができたとして、そこから更に上述の(1)式を用いて過熱温度を推定する場合、以下に説明する方法を採用することができる。
先に表2を基に説明し、加熱試験装置1を用いて表2に示すように(1)式の定数a、bを求めた方法に従い、表2に示すガスA、ガスBの組み合わせで実験し、(1)式の定数a、bを算出する。
図6を基に先に説明した手順に従い、(1)式の定数aと定数bを求めた後、それらの誤差範囲(2σ+10%の範囲)を求める。その結果を表2に併記した。
表2に示す通り、定数a、bと誤差範囲を計算で求めることができる。
この油中分析によりガスA/ガスBの比率を求めることができるので、表2のガスA、ガスBの組み合わせに当てはめ、(1)式を方程式として解を求めることにより、測定対象のパームヤシ脂肪酸エステル油の過熱温度を推定できる。
この油中分析によりガスA/ガスBの比率を求めることができるので、表2のガスA、ガスBの組み合わせに当てはめ、(1)式を方程式として解を求めることにより、測定対象の大豆油あるいは合成エステル油の過熱温度を推定できる。
Claims (14)
- エステル系絶縁油を用いた油入機器の内部異常を診断するにあたり、前記油入機器に収容されている検査対象エステル系絶縁油の油中ガスを分析することにより前記油入機器の過熱温度を推定する方法であって、検査対象エステル系絶縁油が植物油由来の飽和脂肪酸
と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステルを主体とする植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油の場合、
前記油入機器に収容されている検査対象植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油中のH2、CH4、C2H6、C2H4、C3H8、C3H6ガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、
第1番目のガスがH2ガス、第2番目のガスがCH4ガスであるか、第1番目のガスがCH4ガス、第2番目がH2又はC2H6ガスである場合、局所過熱温度を300℃と推定し、
第1番目のガスがH2ガス、第2番目のガスがC2H6ガスであるか、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目がH2ガス又はC3H8ガス又はC3H6ガスである場合、局所過熱温度を400℃と推定し、
第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがC2H6ガスであるか、第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがC2H4ガスである場合、局所過熱温度を500℃と推定し、
第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがC2H6ガスであるか、第1番目のガスがC2H4ガス、第2番目のガスがCH4ガスであるかC3H6ガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。 - 前記局所過熱温度毎の第1番目のガスと第2番目のガスが、
予め植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油を不活性ガス雰囲気中において300℃、400℃、500℃、600〜700℃の各温度条件に局所加熱して発生するガスを分析し、局所加熱温度毎のH2ガスとCH4ガスとC2H6ガスとC2H4ガスとC3H8ガスとC3H6ガスの発生量を求め、各温度条件にて発生量の多いガスから順に特定した第1番目のガスと第2番目のガスであることを特徴とする請求項1に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。 - 請求項1または請求項2に記載の植物油由来脂肪酸エステル絶縁油としてパームヤシ脂肪酸エステル絶縁油またはパステルNEO(ライオン株式会社商品名)を用いることを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
- エステル系絶縁油を用いた油入機器の内部異常を診断するにあたり、前記油入機器に収容されている検査対象エステル系絶縁油の油中ガスを分析することにより前記油入機器の過熱温度を推定する方法であって、検査対象エステル系絶縁油がグリセリンと脂肪酸のエステルでトリグリセリド構造を有し、脂肪酸のうち少なくとも1種は不飽和脂肪酸である植物系天然エステルを主体とする天然エステル系絶縁油の場合、
前記油入機器に収容されている検査対象天然エステル系絶縁油中のH2、CH4、C2H6、C2H4、C2H2、C3H8、C3H6ガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、
第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスが他のいずれかのガスの場合であり、C2H4ガス発生量/C2H6ガス発生量の比率が0.5未満の場合に局所過熱温度を300〜400℃と推定し、
第1番目のガスがC2H6ガス、第2番目のガスがC2H4ガスであり、C2H4ガス発生量/C2H6ガス発生量の比率が0.5以上の場合に、局所過熱温度を500℃と推定し、
第1番目のガスがC2H4ガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。 - 前記局所過熱温度毎の第1番目のガスと第2番目のガスが、
予め天然エステル系絶縁油を不活性ガス雰囲気中において300℃〜400℃、500℃、600〜700℃の各温度条件に局所加熱して発生するガスを分析し、局所加熱温度毎のH2ガスとCH4ガスとC2H6ガスとC2H4ガスとC2H2ガスとC3H8ガスとC3H6ガスの発生量を求め、各温度条件にて発生量の多いガスから順に特定した第1番目のガスと第2番目のガスであることを特徴とする請求項4に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。 - 請求項5に記載の天然エステル系絶縁油として大豆油またはEnvirotemp FR3(カーギル社商品名)、または菜種油を用いることを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
- エステル系絶縁油を用いた油入機器の内部異常を診断するにあたり、前記油入機器に収容されている検査対象エステル系絶縁油の油中ガスを分析することにより前記油入機器の過熱温度を推定する方法であって、検査対象エステル系絶縁油が合成エステルを主体とするエステル系絶縁油の場合、
前記油入機器に収容されている検査対象合成エステル主体エステル系絶縁油中のH2、CH4、C2H6、C2H4、C3H8ガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、
第1番目のガスがH2ガス、第2番目のガスがC2H6ガスか、CH4ガスか、C3H8ガスのいずれかであり、あるいは、第1番目のガスがC2H6ガスであるか、CH4ガスであるか、C3H8ガスである場合、局所過熱温度を300℃と推定し、
第1番目のガスがC3H8ガスである場合、局所過熱温度を300〜500℃と推定し、
第1番目のガスがC2H4ガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。 - 前記局所過熱温度毎の第1番目のガスと第2番目のガスが、
予め合成エステル主体エステル系絶縁油を不活性ガス雰囲気中において300℃、400℃〜500℃、600〜700℃の各温度条件に局所加熱して発生するガスを分析し、局所加熱温度毎のH2ガスとCH4ガスとC2H6ガスとC2H4ガスとC3H8ガスの発生量を求め、各温度条件にて発生量の多いガスから順に特定した第1番目のガスと第2番目のガスであることを特徴とする請求項7に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。 - 請求項7または請求項8に記載の合成エステルを主体とするエステル系絶縁油としてポリオールエステル油またはMIDEL7131(M&I Materials社商品名)を用いることを特徴とする加熱温度推定方法。
- 請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の過熱温度推定方法において、
予めエステル系絶縁油を不活性ガス雰囲気中で局所加熱して温度に応じて発生するガスを求め、測定温度毎に検出した複数のガスの内、ガスAとガスBの発生量比に着目し、ガスA/ガスB=b・ea・t…(1)の関係式(但し、(1)式において、ガスAはCH4ガスとC2H6ガスとC2H4ガスとC3H6ガスとC3H8ガスとC2ガス(油中ガス分析で測定する炭素数2の炭化水素の合計量でC2H6+C2H4+C2H2を指す)とC3ガス(油中ガス分析で測定する炭素数3の炭化水素の合計量でC3H8+C3H6を指す)の量の内、1つの特定ガスの量または2つの特定のガスの合計量、ガスBは他の1つの特定ガスの量または複数の特定のガスの合計量、aは定数、bは定数、tは過熱温度(℃)を示す。)を策定し、前記局所加熱した温度を前記(1)式の過熱温度と仮定して予め定数a、bを計算により求めておき、
検査対象油入機器から採取したエステル系絶縁油の油中ガス分析により前記ガスA/ガスBの値を求め、この値を前記(1)式に代入して検査対象油入機器の過熱温度を算出することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。 - 前記定数a、bを定める場合、ガスA/ガスBの値の増減の変曲点を境界として境界値未満の場合と境界値以上の場合で場合分けを行い、場合分けに応じた定数aと定数bの値を選択することを特徴とする請求項10に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
- 請求項10または請求項11に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法において、検査対象エステル系絶縁油が植物油由来の飽和脂肪酸と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステルを主体とする植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油の場合であって、
推定過熱温度が500℃未満であった場合、前記ガスAをC2H4、ガスBをCH4ガスと設定し、
推定過熱温度が500℃以上であった場合、第1のケースとして前記ガスAをC2H4ガス量に前記ガスBをC3H8ガス量に設定するか、第2のケースとして前記ガスAをC2H4ガス量+C3H6ガス量に前記ガスBをC3H8ガス量に設定するか、第3のケースとして前記ガスAをC2H4ガス量に前記ガスBをC2H6ガス量+C3H8ガス量に設定するかのいずれかを選択することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。 - 請求項10または請求項11に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法において、検査対象エステル系絶縁油がグリセリンと脂肪酸のエステルでトリグリセリド構造を有し、脂肪酸のうち少なくとも1種は不飽和脂肪酸である植物系天然エステルを主体とする天然エステル系絶縁油の場合であって、
推定過熱温度が500℃未満であった場合、第1のケースとして前記ガスAをC3H6ガス量に前記ガスBをC2H6ガス量に設定するか、第2のケースとして前記ガスAをC3H6ガス量に前記ガスBをC2H6ガス量+C3H8ガス量に設定するか、第3のケースとして前記ガスAをC3H6ガス量に前記ガスBをCH4ガス量+C2H6ガス量に設定するかのいずれかを選択し、
推定過熱温度が500℃以上であった場合、前記ガスAをC2H4ガス量に前記ガスBをC2H6ガス量+C3H8ガス量に設定することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。 - 請求項10または請求項11に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法において、検査対象エステル系絶縁油がネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの少なくとも1種以上からなるポリオールエステルと、直鎖及び分岐の飽和脂肪酸との合成エステルを主体とする合成エステル系絶縁油の場合であって、
推定過熱温度が500℃未満であった場合、前記ガスAをC2H4ガス量に前記ガスBをC2H6ガス量+C3H8ガス量に設定し、
推定過熱温度が500℃以上であった場合、第1のケースとして前記ガスAをC2H4ガス量に前記ガスBをC3H8ガス量に設定するか、第2のケースとして前記ガスAをC2H4ガス量+C3H6ガス量に前記ガスBをC3H8ガス量に設定することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
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