以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
以下の説明においては、グローバル座標系(XgYgZg座標系)及びローカル座標系(XYZ座標系)を設定して各部の位置関係について説明する。グローバル座標系とは、全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)のような全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)により規定される絶対位置を示す座標系である。ローカル座標系とは、建設機械の基準位置に対する相対位置を示す座標系である。
[建設機械]
図1は、本実施形態に係る建設機械100の一例を示す斜視図である。本実施形態においては、建設機械100が油圧ショベルである例について説明する。以下の説明においては、建設機械100を適宜、油圧ショベル100、と称する。
図1に示すように、油圧ショベル100は、油圧により作動する作業機1と、作業機1を支持する車体である上部旋回体2と、上部旋回体2を支持する走行装置である下部走行体3と、作業機1を操作するための操作装置30と、作業機1を制御する制御装置50とを備える。上部旋回体2は、下部走行体3に支持された状態で旋回軸RXを中心に旋回可能である。
上部旋回体2は、オペレータが搭乗する運転室4と、エンジン及び油圧ポンプが収容される機械室5とを有する。運転室4は、オペレータが着座する運転席4Sを有する。機械室5は、運転室4の後方に配置される。
下部走行体3は、一対の履帯3Cを有する。履帯3Cの回転により、油圧ショベル100が走行する。なお、下部走行体3がタイヤを有してもよい。
作業機1は、上部旋回体2に支持される。作業機1は、ブームピンを介して上部旋回体2に連結されるブーム6と、アームピンを介してブーム6に連結されるアーム7と、バケットピン及びチルトピンを介してアーム7に連結されるバケット8とを有する。バケット8は、刃先9を有する。本実施形態において、バケット8の刃先9は、バケット8に設けられたストレート形状の刃の先端部である。なお、バケット8の刃先9は、バケット8に設けられた凸形状の刃の先端部でもよい。
ブーム6は、回転軸であるブーム軸AX1を中心に上部旋回体2に対して回転可能である。アーム7は、回転軸であるアーム軸AX2を中心にブーム6に対して回転可能である。バケット8は、回転軸であるバケット軸AX3及びバケット軸AX3と直交する回転軸であるチルト軸AX4のそれぞれを中心にアーム7に対して回転可能である。回転軸AX1と回転軸AX2と回転軸AX3とは平行である。回転軸AX1,AX2,AX3と旋回軸RXと平行な軸とは直交する。回転軸AX1,AX2,AX3は、ローカル座標系のY軸と平行である。旋回軸RXは、ローカル座標系のZ軸と平行である。回転軸AX1,AX2,AX3と平行な方向は、上部旋回体2の車幅方向を示す。旋回軸RXと平行な方向は、上部旋回体2の上下方向を示す。回転軸AX1,AX2,AX3及び旋回軸RXの両方と直交する方向は、上部旋回体2の前後方向を示す。運転席4Sに着座したオペレータを基準として作業機1が存在する方向が前方である。
作業機1は、油圧シリンダ10が発生する動力により作動する。油圧シリンダ10は、ブーム6を作動させるブームシリンダ11と、アーム7を作動させるアームシリンダ12と、バケット8を作動させるバケットシリンダ13及びチルトシリンダ14とを含む。
また、作業機1は、ブームシリンダ11の駆動量を示すブームストロークを検出するブームストロークセンサ16と、アームシリンダ12の駆動量を示すアームストロークを検出するアームストロークセンサ17と、バケットシリンダ13の駆動量を示すバケットストロークを検出するバケットストロークセンサ18と、チルトシリンダ14の駆動量を示すチルトストロークを検出するチルトストロークセンサ19とを有する。ブームストロークセンサ16は、ブームシリンダ11に配置される。アームストロークセンサ17は、アームシリンダ12に配置される。バケットストロークセンサ18は、バケットシリンダ13に配置される。チルトストロークセンサ19は、チルトシリンダ14に配置される。
操作装置30は、運転室4に配置される。操作装置30は、油圧ショベル100のオペレータに操作される操作部材を含む。オペレータは、操作装置30を操作して、作業機1を作動させる。本実施形態において、操作装置30は、右作業機操作レバー30Rと、左作業機操作レバー30Lと、チルト操作レバー30Tと、操作ペダル30Fとを含む。
中立位置にある右作業機操作レバー30Rが前方に操作されると、ブーム6が下げ動作し、後方に操作れると、ブーム6が上げ動作する。中立位置にある右作業機操作レバー30Rが右方に操作されると、バケット8がダンプし、左方に操作されると、バケット8が掘削する。
中立位置にある左作業機操作レバー30Lが前方に操作されると、アーム7がダンプし、後方に操作されると、アーム7が掘削する。中立位置にある左作業機操作レバー30Lが右方に操作されると、上部旋回体2が右旋回し、左方に操作されると、上部旋回体2が左旋回する。
なお、右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lの操作方向と、作業機1の動作方向及び上部旋回体2の旋回方向との関係は、上述の関係でなくてもよい。
制御装置50は、コンピュータシステムを含む。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。
[バケット]
次に、本実施形態に係るバケット8について説明する。図2は、本実施形態に係るバケット8の一例を示す側断面図である。図3は、本実施形態に係るバケット8の一例を示す正面図である。本実施形態において、バケット8は、チルト式バケットである。
図2及び図3に示すように、作業機1は、バケット軸AX3及びバケット軸AX3と直交するチルト軸AX4のそれぞれを中心にアーム7に対して回転可能なバケット8を有する。バケット8は、バケットピン8Bを介してアーム7に回転可能に連結される。また、バケット8は、チルトピン8Tを介してアーム7に回転可能に支持される。
バケット8は、接続部材90を介して、アーム7の先端部に接続される。バケットピン8Bは、アーム7と接続部材90とを連結する。チルトピン8Tは、接続部材90とバケット8とを連結する。バケット8は、接続部材90を介して、アーム7に回転可能に接続される。
バケット8は、底板81と、背板82と、上板83と、側板84と、側板85とを含む。バケット8は、上板83の上部に設けられたブラケット87を有する。ブラケット87は、上板83の前後位置に設置される。ブラケット87は、接続部材90及びチルトピン8Tと連結される。
接続部材90は、プレート部材91と、プレート部材91の上面に設けられたブラケット92と、プレート部材91の下面に設けられたブラケット93とを有する。ブラケット92は、アーム7及び第2リンクピン95Pと連結される。ブラケット93はブラケット87の上部に設置され、チルトピン8T及びブラケット87と連結される。
バケットピン8Bは、接続部材90のブラケット92とアーム7の先端部とを連結する。チルトピン8Tは、接続部材90のブラケット93とバケット8のブラケット87とを連結する。接続部材90及びバケット8は、アーム7に対してバケット軸AX3を中心に回転可能である。バケット8は、接続部材90に対してチルト軸AX4を中心に回転可能である。
作業機1は、第1リンクピン94Pを介してアーム7に回転可能に接続される第1リンク部材94と、第2リンクピン95Pを介してブラケット92に回転可能に接続される第2リンク部材95とを有する。第1リンク部材94の基端部が第1リンクピン94Pを介してアーム7に接続される。第2リンク部材95の基端部が第2リンクピン95Pを介してブラケット92に接続される。第1リンク部材94の先端部と第2リンク部材95の先端部とが、バケットシリンダトップピン96を介して連結される。
バケットシリンダ13の先端部は、バケットシリンダトップピン96を介して、第1リンク部材94の先端部及び第2リンク部材95の先端部と回転可能に接続される。バケットシリンダ13が伸縮するように作動すると、接続部材90はバケット8と一緒にバケット軸AX3を中心に回転する。
チルトシリンダ14は、接続部材90に設けられたブラケット97及びバケット8に設けられたブラケット88のそれぞれに接続される。チルトシリンダ14のロッドがピンを介してブラケット97に接続される。チルトシリンダ14の本体部がピンを介してブラケット88に接続される。チルトシリンダ14が伸縮するように作動すると、バケット8はチルト軸AX4を中心に回転する。なお、本実施形態に係るチルトシリンダ14の接続構造は一例でありこれに限定されない。
このように、バケット8は、バケットシリンダ13の作動により、バケット軸AX3を中心に回転する。バケット8は、チルトシリンダ14の作動により、チルト軸AX4を中心に回転する。バケット8がバケット軸AX3を中心に回転すると、チルトピン8Tはバケット8と一緒に回転する。
[検出システム]
次に、本実施形態に係る油圧ショベル100の検出システム400について説明する。図4は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す側面図である。図5は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す背面図である。図6は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す平面図である。図7は、本実施形態に係るバケット8を模式的に示す側面図である。図8は、本実施形態に係るバケット8を模式的に示す正面図である。
図4、図5、及び図6に示すように、検出システム400は、上部旋回体2の位置を算出する位置演算装置20と、作業機1の角度を算出する作業機角度演算装置24とを有する。
位置演算装置20は、上部旋回体2の位置を検出する車体位置演算器21と、上部旋回体2の姿勢を検出する姿勢演算器22と、上部旋回体2の方位を検出する方位演算器23とを含む。
車体位置演算器21は、GPS受信機を含む。車体位置演算器21は、上部旋回体2に設けられる。車体位置演算器21は、グローバル座標系で規定される上部旋回体2の絶対位置Pgを検出する。上部旋回体2の絶対位置Pgは、Xg軸方向の座標データ、Yg軸方向の座標データ、及びZg軸方向の座標データを含む。
上部旋回体2に複数のGPSアンテナ21Aが設けられる。GPSアンテナ21Aは、GPS衛星から電波を受信して、受信した電波に基づいて生成した信号を車体位置演算器21に出力する。車体位置演算器21は、GPSアンテナ21Aから供給された信号に基づいて、グローバル座標系で規定されるGPSアンテナ21Aが設置されている位置Prを検出する。車体位置演算器21は、GPSアンテナ21Aが設置されている位置Prに基づいて、上部旋回体2の絶対位置Pgを検出する。
GPSアンテナ21Aは、車幅方向に2つ設けられる。車体位置演算器21は、一方のGPSアンテナ21Aが設置されている位置Pra及び他方のGPSアンテナ21Aが設置されている位置Prbのそれぞれを検出する。車体位置演算器21Aは、位置Pra及び位置Prbの少なくとも一方に基づいて演算処理を実施して、上部旋回体2の絶対位置Pgを算出する。本実施形態において、上部旋回体2の絶対位置Pgは、位置Praである。なお、上部旋回体2の絶対位置Pgは、位置Prbでもよいし、位置Praと位置Prbとの間の位置でもよい。
姿勢演算器22は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:IMU)を含む。姿勢演算器22は、上部旋回体2に設けられる。姿勢演算器22は、グローバル座標系で規定される水平面(XgYg平面)に対する上部旋回体2の傾斜角度を算出する。水平面に対する上部旋回体2の傾斜角度は、車幅方向における上部旋回体2の傾斜角度を示すロール角度θ1と、前後方向における上部旋回体2の傾斜角度を示すピッチ角度θ2とを含む。
方位演算器23は、一方のGPSアンテナ21Aが設置されている位置Praと他方のGPSアンテナ21Aが設置されている位置Prbとに基づいて、グローバル座標系で規定される基準方位に対する上部旋回体2の方位を算出する。基準方位は、例えば北である。方位演算器23は、位置Praと位置Prbとに基づいて演算処理を実施して、基準方位に対する上部旋回体2の方位を算出する。方位演算器23は、位置Praと位置Prbとを結ぶ直線を算出し、算出した直線と基準方位とがなす角度に基づいて、基準方位に対する上部旋回体2の方位を算出する。基準方位に対する上部旋回体2の方位は、基準方位と上部旋回体2の方位とがなす角度を示すヨー角度θ3を含む。
図4、図7、及び図8に示すように、作業機角度演算装置24は、ブームストロークセンサ16で検出されたブームストロークに基づいて、ローカル座標系のZ軸に対するブーム6の傾斜角度を示すブーム角度αを算出する。作業機角度演算装置24は、アームストロークセンサ17で検出されたアームストロークに基づいて、ブーム6に対するアーム7の傾斜角度を示すアーム角度βを算出する。作業機角度演算装置24は、バケットストロークセンサ18で検出されたバケットストロークに基づいて、アーム7に対するバケット8の刃先9の傾斜角度を示すバケット角度γを算出する。作業機角度演算装置24は、チルトストロークセンサ19で検出されたチルトストロークに基づいて、XY平面に対するバケット8の傾斜角度を示すチルト角度δを算出する。作業機角度演算装置24は、ブームストロークセンサ16で検出されたブームストローク、アームストロークセンサ17で検出されたアームストローク、及びバケットストロークセンサ18で検出されたチルトストロークに基づいて、XY平面に対するチルト軸AX4の傾斜角度を示すチルト軸角度εを算出する。
なお、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εは、ストロークセンサを用いずに、例えば、作業機10に設けられた角度センサにより検出されてもよい。また、ステレオカメラ又はレーザスキャナで作業機10の角度が光学的に検出され、その検出結果を使って、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εが算出されてもよい。
[油圧システム]
次に、本実施形態に係る油圧ショベル100の油圧システム300の一例について説明する。図9、図10、及び図11は、本実施形態に係る油圧システム300の一例を示す模式図である。ブームシリンダ11、アームシリンダ12、バケットシリンダ13、及びチルトシリンダ14を含む油圧シリンダ10は、油圧システム300により駆動する。油圧システム300は、油圧シリンダ10に作動油を供給して、油圧シリンダ10を駆動する。油圧システム300は、流量制御弁25を有する。流量制御弁25は、油圧シリンダ10に対する作動油の供給量及び作動油が流れる方向を制御する。油圧シリンダ10は、キャップ側油室10A及びロッド側油室10Bを有する。キャップ側油室10Aは、シリンダヘッドカバーとピストンとの間の空間である。ロッド側油室10Bは、ピストンロッドが配置される空間である。油路35Aを介してキャップ側油室10Aに作動油が供給されることにより、油圧シリンダ10が伸びる。油路35Bを介してロッド側油室10Bに作動油が供給されることにより、油圧シリンダ10が縮む。
図9は、アームシリンダ12を作動する油圧システム300の一例を示す模式図である。油圧システム300は、作動油を供給する可変容量型のメイン油圧ポンプ31と、パイロット油を供給するパイロット圧ポンプ32と、パイロット油が流れる油路33A,33Bと、油路33A,33Bに配置された圧力センサ34A,34Bと、流量制御弁25に作用するパイロット圧を調整する制御弁37A,37Bと、流量制御弁25に対するパイロット圧を調整する右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lを含む操作装置30と、制御装置50とを備える。操作装置30の右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lは、パイロット油圧方式の操作装置である。
メイン油圧ポンプ31から供給された作動油は、方向制御弁25を介して、アームシリンダ12に供給される。流量制御弁25は、ロッド状のスプールを軸方向に移動して作動油が流れる方向を切り替えるスライドスプール方式の流量制御弁である。スプールが軸方向に移動することにより、アームシリンダ12のキャップ側油室10Aに対する作動油の供給と、ロッド側油室10Bに対する作動油の供給とが切り替わる。また、スプールが軸方向に移動することにより、アームシリンダ12に対する単位時間当たりの作動油の供給量が調整される。アームシリンダ12に対する作動油の供給量が調整されることにより、シリンダ速度が調整される。
流量制御弁25は、操作装置30によって操作される。パイロット圧ポンプ32から送出されたパイロット油が操作装置30に供給される。なお、メイン油圧ポンプ31から送出され、減圧弁によって減圧されたパイロット油が操作装置30に供給されてもよい。操作装置30は、パイロット圧調整弁を含む。操作装置30の操作量に基づいて制御弁37A,37Bが作動され、流量制御弁25のスプールに作用するパイロット圧が調整される。パイロット圧によって、流量制御弁25が駆動される。操作装置30によりパイロット圧が調整されることによって、軸方向におけるスプールの移動量、移動速度、及び移動方向が調整される。
流量制御弁25は、第1受圧室及び第2受圧室を有する。左作業機操作レバー30Lが中立位置より一方側に傾動するように操作され、油路33Aのパイロット圧によってスプールが移動すると、メイン油圧ポンプ31からの作動油が第1受圧室に供給され、油路35Aを介してキャップ側油室10Aに作動油が供給される。左作業機操作レバー30Lが中立位置より他方側に傾動するように操作され、油路33Bのパイロット圧によってスプールが移動すると、メイン油圧ポンプ31からの作動油が第2受圧室に供給され、油路35Bを介してロッド側油室10Bに作動油が供給される。
圧力センサ34Aは、油路33Aのパイロット圧を検出する。圧力センサ34Bは、油路33Bのパイロット圧を検出する。圧力センサ33A,33Bの検出信号は、制御装置50に出力される。制御装置50は、制御弁37A,37Bに制御信号を出力して、パイロット圧を調整する。
アームシリンダ12のキャップ側油室10Aに作動油が供給されると、アームシリンダ12が伸び、アーム7が掘削動作する。アームシリンダ12のロッド側油室10Bに作動油が供給されると、アームシリンダ12が縮み、アーム7がダンプ動作する。
バケットシリンダ13を作動させる油圧システム300は、アームシリンダ12を作動させる油圧システム300と同様の構成である。バケットシリンダ13のキャップ側油室10Aに作動油が供給されると、バケットシリンダ13が伸び、バケット8が掘削動作する。バケットシリンダ13のロッド側油室10Bに作動油が供給されると、バケットシリンダ13が縮み、バケット8がダンプ動作する。
なお、操作装置30の右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lは、パイロット油圧方式でなくてもよい。右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lは、右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lの操作量(傾動角)に基づいて電気信号を制御装置50に出力して、制御装置50の制御信号に基づいて流量制御弁25を直接的に制御する電子レバー方式でもよい。
図10は、ブームシリンダ11を作動する油圧システム300の一例を模式的に示す図である。油圧システム300は、ブームシリンダ11に対する作動油の供給量を調整する流量制御弁25と、パイロット油が流れる油路33A,33B,33Cと、油路33A,33B,33Cに配置された制御弁39A,39B,39Cと、油路33A,33Bに配置された圧力センサ34A,34Bと、制御弁39A,39B,39Cを制御する制御装置50とを備える。
制御弁39A,39B,39Cは、電磁比例制御弁である。制御弁39A,39B,39Cは、制御装置50からの制御信号に基づいて、パイロット圧を調整する。制御弁39Aは、油路33Aのパイロット圧を調整する。制御弁39Bは、油路33Bのパイロット圧を調整する。制御弁39Cは、油路33Cのパイロット圧を調整する。
制御装置50は、制御弁39Bを制御して、流量制御弁25の第1受圧室に作用するパイロット圧を減圧調整可能である。制御装置50は、制御弁39Aを制御して、流量制御弁25の第2受圧室に作用するパイロット圧を減圧調整可能である。制御装置50は、圧力センサ34Aの検出信号に基づいて、制御弁39Aを制御する。制御装置50は、圧力センサ34Bの検出信号に基づいて、制御弁39Bを制御する。制御装置50は、制御弁39A,39Bに制御信号を出力して、パイロット圧を調整する。パイロット圧が調整されることにより、ブームシリンダ11が制御される。
本実施形態においては、制御弁39Cは、整地アシスト制御のために制御装置50から出力された制御信号に基づいて作動する。制御弁39Cが設けられた油路33Cに、パイロット圧ポンプ32から送出されたパイロット油が流れる。油路33C及び油路33Aは、シャトル弁40と接続される。シャトル弁40は、油路33A及び油路33Cのうち、パイロット圧が高い方の油路のパイロット油を、流量制御弁25に供給する。
ブームシリンダ11のキャップ側油室10Aに作動油が供給されると、ブームシリンダ11が伸び、ブーム6が上げ動作する。ブームシリンダ12のロッド側油室10Bに作動油が供給されると、ブームシリンダ11が縮み、ブーム6が下げ動作する。
整地アシスト制御が実行されないとき、左作業機操作レバー30Lの操作によって調整されたパイロット圧に基づいて流量制御弁25が駆動される。整地アシスト制御を実行するとき、制御装置50は、制御弁39Cによって調整されたパイロット圧に基づいて流量制御弁25が駆動されるように、制御弁39A,39B,39Cを制御する。
図11は、チルトシリンダ14を作動する油圧システム300の一例を模式的に示す図である。油圧システム300は、チルトシリンダ14に対する作動油の供給量を調整する流量制御弁25と、流量制御弁25に作用するパイロット圧を調整する制御弁37A,37Bと、パイロット圧ポンプ32と操作ペダル30Fとの間に配置される制御弁39と、操作装置30のチルト操作レバー30T及び操作ペダル30Fと、制御装置50とを備える。本実施形態において、操作装置30の操作ペダル30Fは、パイロット油圧方式の操作装置である。操作装置30のチルト操作レバー30Tは、電子レバー方式の操作装置である。チルト操作レバー30Tは、右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lに設けられた操作ボタンを含む。
操作装置30の操作ペダル30Fは、パイロット圧ポンプ32に接続される。また、操作ペダル30Fは、制御弁37Aから送出されるパイロット油が流れる油路38Aにシャトル弁36Aを介して接続される。また、操作ペダル30Fは、制御弁37Bから送出されるパイロット油が流れる油路38Bにシャトル弁36Bを介して接続される。操作ペダル30Fが操作されることにより、操作ペダル30Fとシャトル弁36Aとの間の油路33Aの圧力、及び操作ペダル30Fとシャトル弁36Bとの間の油路33Bの圧力が調整される。
チルト操作レバー30Tが操作されることにより、チルト操作レバー30Tの操作により生成された操作信号が制御装置50に出力される。制御装置50は、チルト操作レバー30Tから出力された操作信号に基づいて制御信号を生成し、制御弁37A,37Bを制御する。制御弁37A,37Bは、電磁比例制御弁である。制御弁37Aは、制御信号に基づいて、油路38Aを開閉する。制御弁37Bは、制御信号に基づいて、油路38Bを開閉する。
チルト制御を実施しないとき、操作装置30の操作量に基づいて、パイロット圧が調整される。チルト制御を実施するとき、制御装置50は、制御弁37A,37Bに制御信号を出力して、パイロット圧を調整する。
[制御システム]
次に、本実施形態に係る油圧ショベル100の制御システム200について説明する。図12は、本実施形態に係る制御システム200の一例を示す機能ブロック図である。
図12に示すように、制御システム200は、作業機1を制御する制御装置50と、位置演算装置20と、作業機角度演算装置24と、制御弁37(37A,37B)と、制御弁39(39A,39B,39C)と、目標施工データ生成装置70とを備える。
位置演算装置20は、上部旋回体2の絶対位置Pg、ロール角度θ1及びピッチ角度θ2を含む上部旋回体2の姿勢、及びヨー角度θ3を含む上部旋回体2の方位を検出する。
位置演算装置20は、車体位置演算器21と、姿勢演算器22と、方位演算器23とを有する。位置演算装置20は、上部旋回体2の絶対位置Pg、ロール角度θ1及びピッチ角度θ2を含む上部旋回体2の姿勢、及びヨー角度θ3を含む上部旋回体2の方位を検出する。
作業機角度演算装置24は、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εを含む作業機1の角度を検出する。
制御弁37(37A,37B)は、チルトシリンダ14に対する作動油の供給量を調整する。制御弁37は、制御装置50からの制御信号に基づいて作動する。
制御弁39(39A,39B,39C)は、ブームシリンダ11に対する作動油の供給量を調整する。制御弁39は、制御装置50からの制御信号に基づいて作動する。
目標施工データ生成装置70は、コンピュータシステムを含む。目標施工データ生成装置70は、施工エリアの目標形状である目標地形を示す目標施工データを生成する。目標施工データは、作業機1による施工後に得られる3次元の目標形状を示す。
目標施工データ生成装置70は、油圧ショベル100の遠隔地に設けられる。目標施工データ生成装置70は、例えば施工管理会社の設備に設置される。目標施工データ生成装置70と制御装置50とは無線通信可能である。目標施工データ生成装置70で生成された目標施工データは、無線で制御装置50に送信される。
なお、目標施工データ生成装置70と制御装置50とが有線で接続され、目標施工データ生成装置70から制御装置50に目標施工データが送信されてもよい。なお、目標施工データ生成装置70が目標施工データを記憶した記録媒体を含み、制御装置50が、記録媒体から目標施工データを読み込み可能な装置を有してもよい。
なお、目標施工データ生成装置70は、油圧ショベル100に設けられてもよい。施工を管理する外部の管理装置から目標施工データが有線又は無線で油圧ショベル100の目標施工データ生成装置70に供給され、目標施工データ生成装置70が供給された目標施工データを記憶してもよい。
制御装置50は、車体位置データ取得部51と、作業機角度データ取得部52と、規定点位置データ算出部53Aと、候補規定点データ算出部53Bと、目標施工地形生成部54と、作業機動作平面算出部55と、チルト動作平面算出部56と、チルト目標地形算出部57と、作業機目標速度決定部58と、チルト目標速度決定部59と、作業機制御指令決定部60と、チルト制御指令決定部61と、記憶部62と、入出力部63とを有する。
車体位置データ取得部51、作業機角度データ取得部52、規定点位置データ算出部53A、候補規定点データ算出部53B、目標施工地形生成部54、作業機動作平面算出部55、チルト動作平面算出部56、チルト目標地形算出部57、作業機目標速度決定部58、チルト目標速度決定部59、作業機制御指令決定部60、及びチルト制御指令決定部61のそれぞれの機能は、制御装置50のプロセッサによって発揮される。記憶部62の機能は、制御装置50の記憶装置によって発揮される。入出力部63の機能は、制御装置50の入出力インターフェース装置によって発揮される。入出力部63は、位置演算装置20、作業機角度演算装置24、制御弁37、制御弁39、及び目標施工データ生成装置70と接続され、車体位置データ取得部51、作業機角度データ取得部52、規定点位置データ算出部53A、候補規定点データ算出部53B、目標施工地形生成部54、作業機動作平面算出部55、チルト動作平面算出部56、チルト目標地形算出部57、作業機目標速度決定部58、チルト目標速度決定部59、作業機制御指令決定部60、チルト制御指令決定部61、及び記憶部62との間でデータ通信する。
記憶部62は、作業機データを含む油圧ショベル100の諸元データを記憶する。
車体位置データ取得部51は、位置演算装置20から入出力部63を介して車体位置データを取得する。車体位置データは、グローバル座標系で規定される上部旋回体2の絶対位置Pg、ロール角度θ1及びピッチ角度θ2を含む上部旋回体2の姿勢、及びヨー角度θ3を含む上部旋回体2の方位を含む。
作業機角度データ取得部52は、作業機角度演算装置24から入出力部63を介して作業機角度データを取得する。作業機角度データは、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εを含む作業機1の角度を検出する。
規定点位置データ算出部53Aは、目標施工地形とバケット8の幅データとバケット8の外面データとに基づいて、バケット8に設定される規定点RPの位置データを算出する。規定点位置データ算出部53は、車体位置データ取得部51で取得された車体位置データと、作業機角度データ取得部52で取得された作業機角度データと、記憶部59に記憶されている作業機データとに基づいて、バケット8に設定される規定点RPの位置データを算出する。
図4に示すように、作業機データは、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、チルト長さL4、及びバケット幅L5を含む。ブーム長さL1は、ブーム軸AX1とアーム軸AX2との距離である。アーム長さL2は、アーム軸AX2とバケット軸AX3との距離である。バケット長さL3は、バケット軸AX3とバケット8の刃先9との距離である。チルト長さL4は、バケット軸AX3とチルト軸AX4との距離である。バケット幅L5は、側板84と側板85との距離である。
図13は、本実施形態に係るバケット8に設定される規定点RPの一例を模式的に示す図である。図13に示すように、バケット8には、チルト制御に使用される規定点RPの候補となる候補規定点RPcが複数設定される。候補規定点RPcは、バケット8の刃先9及びバケット8の外面に設定される。候補規定点RPcは、刃先9においてバケット幅方向に複数設定される。また、候補規定点RPcは、バケット8の外面において複数設定される。
また、作業機データは、バケット8の形状及び寸法を示すバケット外形データを含む。バケット外形データは、バケット幅L5を示すバケット8の幅データを含む。また、バケット外形データは、バケット8の外面の輪郭データを含むバケット8の外面データを含む。また、バケット外形データは、バケット8の刃先9を基準としたバケット8の複数の候補規定点RPcの座標データを含む。
候補規定点データ算出部53Bは、規定点RPの候補となる複数の候補規定点RPcの位置データを算出する。候補規定点データ算出部53Bは、上部旋回体2の基準位置P0に対する複数の候補規定点RPcそれぞれの相対位置を算出する。また、規定点位置データ算出部53は、複数の候補規定点RPcそれぞれの絶対位置を算出する。
候補規定点データ算出部53Bは、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、チルト長さL4、及びバケット外形データを含む作業機データと、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εを含む作業機角度データに基づいて、上部旋回体2の基準位置P0に対するバケット8の複数の候補規定点RPcそれぞれの相対位置を算出することができる。図4に示すように、上部旋回体2の基準位置P0は、上部旋回体2の旋回軸RXに設定される。なお、上部旋回体2の基準位置P0は、ブーム軸AX1に設定されてもよい。
また、候補規定点データ算出部53Bは、位置演算装置20で検出された上部旋回体2の絶対位置Pgと、上部旋回体2の基準位置P0とバケット8との相対位置とに基づいて、バケット8の絶対位置Paを算出可能である。絶対位置Pgと基準位置P0との相対位置は、油圧ショベル100の諸元データから導出される既知データである。候補規定点データ算出部53Bは、上部旋回体2の絶対位置Pgを含む車体位置データと、上部旋回体2の基準位置P0とバケット8との相対位置と、作業機データと、作業機角度データとに基づいて、バケット8の複数の候補規定点RPcそれぞれの絶対位置を算出することができる。
なお、候補規定点RPcは、バケット8の幅データとバケット8の外面データとを含めば、点に限定されない。
目標施工地形生成部54は、目標施工データ生成装置70から供給され記憶部62に記憶された目標施工データに基づいて、掘削対象の目標形状を示す目標施工地形CSを生成する。目標施工データ生成装置70は、目標施工データとして、3次元目標地形データを目標施工地形生成部54に供給してもよいし、目標形状の一部を示す複数のラインデータ又は複数のポイントデータを目標施工地形生成部54に供給してもよい。本実施形態においては、目標施工データ生成装置70は、目標施工データとして、目標形状の一部を示すラインデータを目標施工地形生成部54に供給することとする。
図14は、本実施形態に係る目標施工データCDの一例を示す模式図である。図14に示すように、目標施工データCDは、施工エリアの目標地形を示す。目標地形は、三角形ポリゴンによってそれぞれ表現される複数の目標施工地形CSを含む。複数の目標施工地形CSのそれぞれは、作業機1による掘削対象の目標形状を示す。目標施工データCDにおいて、目標施工地形CSのうちバケット8との垂直距離が最も近い点APが規定される。また、目標施工データCDにおいて、点AP及びバケット8を通りバケット軸AX3と直交する作業機動作平面WPが規定される。作業機動作平面WPは、ブームシリンダ11、アームシリンダ12、及びバケットシリンダ13の少なくとも一つの作動によりバケット8の刃先9が移動する動作平面であり、XZ平面と平行である。規定点位置データ算出部53Aは、目標施工地形CS及びバケット8の外形データに基づいて、目標施工地形CSの点APに対して垂直距離が最も近くに規定される規定点RPの位置データを算出する。
目標施工地形生成部54は、作業機動作平面WPと目標施工地形CSとの交線であるラインLXを取得する。また、目標施工地形生成部54は、点APを通り目標施工地形CSにおいてラインLXと交差するラインLYを取得する。ラインLYは、横動作平面と目標施工地形CSとの交線を示す。横動作平面とは、作業機動作平面WPと直交し、点APを通過する面である。ラインLYは、目標施工地形CSにおいてバケット8の側方方向に延在する。
図15は、本実施形態に係る目標施工地形CSの一例を示す模式図である。目標施工地形生成部54は、ラインLX及びラインLYを取得して、ラインLX及びLYに基づいて、掘削対象の目標形状を示す目標施工地形CSを生成する。目標施工地形CSをバケット8で掘削する場合、制御装置50は、バケット8を通る作業機動作平面WPと目標施工地形CSとの交線であるラインLXに沿ってバケット8を移動させる。
作業機動作平面算出部55は、車体位置データ及び作業機角度データに基づいて、図14及び図15を参照して説明したような、バケット8を通り、ブーム軸AX1、アーム軸AX2、及びバケットAX3の少なくとも一つと直交する作業機動作平面WPを算出する。
チルト動作平面算出部56は、バケット8を通りチルト軸AX4と直交するチルト動作平面TPを算出する。
図16は、本実施形態に係るチルト動作平面TPの一例を示す模式図である。図16は、チルト軸AX4が目標施工地形CSと非平行であるときのチルト動作平面TPを示す。
図16に示すように、チルト動作平面TPとは、バケット8に設定された規定点RPを通りチルト軸AX4と直交する動作平面をいう。図16は、刃先9に設定された規定点RPを通るチルト動作平面TPを示す。チルト動作平面TPは、チルトシリンダ14の作動によりバケット8の規定点RP(刃先9)が移動する動作平面である。ブームシリンダ11、アームシリンダ12、及びバケットシリンダ13の少なくとも一つが作動し、チルト軸AX4の向きを示すチルト軸角度εが変化すると、チルト動作平面TPの傾きも変化する。
上述のように、作業機角度演算装置24は、XY平面に対するチルト軸AX4の傾斜角度を示すチルト軸角度εを算出可能である。チルト軸角度εは、作業機角度データ取得部52に取得される。また、規定点RPの位置データは、規定点位置データ算出部53Aによって算出される。チルト動作平面算出部56は、作業機角度データ取得部52で取得されたチルト軸AX4のチルト軸角度εと、規定点位置データ算出部53Aによって算出された規定点RPの位置とに基づいて、チルト動作平面TPを算出することができる。
チルト動作平面TPが算出されることにより、バケット8の規定点RPとチルト目標地形STとの距離を示す動作距離Daが算出される。詳細は後述する。
チルト目標地形算出部57は、目標施工地形CSとチルト動作平面TPとが交差するチルト目標地形STを算出する。図16に示すように、チルト目標地形STは、目標施工地形CSとチルト動作平面Tとの交線によって表される。チルト軸AX4の向きであるチルト軸角度εが変化すると、チルト目標地形STの位置が変化する。
作業機目標速度決定部58は、バケット8と目標施工地形CSとの距離に基づいて、整地アシスト制御するときのブーム6の目標速度Vbを決定する。本実施形態において、作業機目標速度決定部58は、ラインLXの法線方向におけるバケット8とラインLXとの最短距離である垂直距離Dbに基づいて、作業機動作平面WP(YZ平面)におけるブーム6の目標速度Vbを決定する。
図17は、本実施形態に係る整地アシスト制御及びチルト制御の一例であるチルト停止制御を説明するための模式図である。図17の説明においては整地アシストに関して規定点RPbに基づく制御を行い、チルト停止制御を行う場合の規定点を規定点RPaとして便宜上区別しているが、規定点RPbと規定点RPaは同じ規定点RPとして扱ってよい。最初に、整地アシスト制御について説明を行う。図17に示すように、ラインLXが規定されるとともに、速度制限介入ラインILbが規定される。速度制限ラインILbは、ラインLXと平行であり、ラインLXからライン距離Hbだけ離れた位置に規定される。ライン距離Hbは、オペレータの操作感が損なわれないように設定されることが望ましい。
作業機目標速度決定部58は、目標施工地形CSの法線方向におけるバケット8とラインLXとの最短距離である垂直距離Dbを取得する。図17に示す例では、バケット8の外面の規定点RPbとラインLXとの間において垂直距離Dbが規定される。また、作業機目標速度決定部58は、垂直距離Dbに応じたバケット8の規定点RPbにおけるバケット8が出すべき作業機1の速度を作業機目標速度Vtとして取得する。
図18は、本実施形態に係る垂直距離Dbとバケット8の規定点RPbの作業機目標速度Vtとの関係の一例を示す図である。図18に示すように、作業機目標速度Vtは、垂直距離Dbに応じて画一的に決められている速度である。作業機目標速度Vtは、垂直距離Dbがライン距離Hbよりも大きいときには設定されず、垂直距離Dbがライン距離Hb以下のときに設定される。垂直距離Dbが小さくなるほど、作業機目標速度Vtは小さくなり、垂直距離Dbが零になると、作業機目標速度Vtも零になる。バケット8が目標施工地形CSを侵食していないときの垂直距離Dbは、正の値である。バケット8が目標施工地形CSを侵食しているときの垂直距離Dbは、負の値である。バケット8が目標施工地形CSを侵食していない非侵食状態とは、バケット8が目標施工地形CSの上側に存在する状態、換言すれば、目標施工地形CSを超えない位置に存在する状態をいう。バケット8が目標施工地形CSを侵食している侵食状態とは、バケット8が目標施工地形CSの下側に存在する状態、換言すれば、目標施工地形CSを超える位置に存在する状態をいう。非侵食状態においては、バケット8は目標施工地形CSから浮き上がっている状態であり、侵食状態においては、バケット8は目標施工地形CSを掘り込んでいる状態である。バケット8の規定点RPbが目標施工地形CSに一致するときの垂直距離Dbは、零である。
本実施形態においては、バケット8が目標施工地形CSの下側から上側に向かうときの速度を正の値とし、バケット8が目標施工地形CSの上側から下側に向かうときの速度を負の値とする。すなわち、バケット8が目標施工地形CSの上方に向かうときの速度を正の値とし、バケット8が目標施工地形CSの下方に向かうときの速度を負の値とする。
作業機目標速度決定部58は、バケット8の規定点RPbが目標施工地形CSを侵食しないように、バケット8の作業機目標速度Vtの正負を決定する。また、作業機目標速度決定部58は、垂直距離Dbが大きいほどバケット8の作業機目標速度Vtの絶対値が大きくなり、垂直距離Dbが小さいほどバケット8の作業機目標速度Vtの絶対値が小さくなるように、バケット8の作業機目標速度Vtを決定する。
作業機目標速度決定部58は、操作装置30の操作量に基づいて、バケット8の規定点RPbの移動速度Vaを算出する。本実施形態においては、操作装置30が操作された場合、圧力センサ34A,34Bの検出値に基づいて、操作装置30の操作に基づくバケット8の移動速度Vaが算出される。図9を参照して説明したように、操作装置30が操作されると、左作業機操作レバー30Lの操作量に応じて油路33A,33Bのパイロット圧が変化する。記憶部62には、レバー操作に対応するパイロット圧とスプール・シリンダの移動量を示す相関データが記憶されている。相関データは、テーブルや関係式で定義される既知データである。作業機目標速度決定部58は、レバー操作に対するアームシリンダの速度も同様の手法で算出する。アームシリンダ12のシリンダ速度及びバケットシリンダ13のシリンダ速度が算出された後、作業機目標速度決定部58は、アームシリンダ12のシリンダ速度及びバケットシリンダ13のシリンダ速度を、規定点RPにおける移動速度Vaに変換する。
作業機目標速度決定部58は、算出したバケット8の規定点RPbの移動速度Vaから、規定点RPbの目標施工地形CSに対する相対速度Vsを算出する。相対速度Vsは、目標施工地形CSの法線方向におけるバケット8と目標施工地形CSとの相対速度である。換言すれば、相対速度Vsは、規定点RPbが目標施工地形CSに向かって移動するときの移動速度である。
作業機目標速度決定部58は、作業機操作レバー30Lの操作量に応じて変化するパイロット圧から算出した相対速度Vsと、垂直距離Dbに基づいて決定されたバケット8の作業機目標速度Vtとに基づいて、目標施工地形CSに対するバケット8の実際の相対速度が作業機目標速度Vtになるように、作業機動作平面WPにおけるブーム6の回動による規定点Rbの目標速度Vbを決定する。すなわち、作業機操作レバー30Lの操作によりアームシリンダ12及びバケットシリンダ13の少なくとも一方が作動された場合において、アームシリンダ12及びバケットシリンダ13の少なくとも一方の作動に基づくバケット8の相対速度Vsがブーム6の移動により相殺され、バケット8が作業機目標速度Vtで移動するように、ブーム6の目標速度Vbを決定する。本実施形態においては、ブーム6の目標速度Vbを変更する実施形態で説明しているが、アーム7等の他の作業機の目標速度を変更する実施形態でもよい。
作業機制御指令決定部60は、バケット8と目標施工地形CSとの距離と、アーム7及びバケット8の少なくとも一方の動作状態とに基づいて、ブーム軸AX1、アーム軸AX2、及びバケット軸AX3と直交する作業機動作平面WPにおいて作業機1を駆動するための指令を出力する。作業機制御指令決定部60は、作業機目標速度決定部58で決定された、作業機動作平面WPにおけるブーム6の目標速度Vbに基づいて、作業機動作平面WPにおいてブーム6を駆動するための指令を出力する。すなわち、作業機制御指令決定部60は、作業機目標速度決定部58で決定されたブーム6の目標速度Vbに基づいて、作業機動作平面WPにおいてブーム6を駆動するブームシリンダ11を駆動する指令を出力する。本実施形態においては、図10を参照して説明したように、作業機制御指令決定部60は、制御弁39Cに制御信号を出力する。制御弁39Cが制御され、油路33Cのパイロット圧が制御されることにより、流量制御弁25のスプールの移動が調整される。スプールの移動が調整されることにより、ブーム6を駆動するブームシリンダ11のシリンダ速度が調整される。ブーム11のシリンダ速度が調整されることにより、ブーム6の移動速度が調整される。作業機制御指令決定部60は、ブーム6の移動速度が目標速度Vbになるように、制御弁39Cに制御信号を出力する。
次にチルト停止制御について説明する。チルト目標速度決定部59は、バケット8と目標施工地形CSとの距離に基づいて、チルト停止制御するときのバケット8の目標とするチルト速度をチルト目標速度(チルト制限速度)Uとして決定する。本実施形態において、チルト目標速度決定部59は、バケット8とチルト目標地形STとの距離である動作距離Daに基づいて、チルト動作平面TPにおけるバケット8の目標速度Uを決定する。本実施形態においては動作距離Daに基づく制御として説明するが、垂直距離Dbに基づく制御としてもよい。
チルト目標速度決定部59は、動作距離Daに基づいて、バケット8のチルト回転速度についての目標速度Uを決定する。チルト目標速度決定部59は、動作距離Daが閾値であるライン距離Ha以下のときに、チルト回転速度を制限する。以下の説明においては、バケット8のチルト回転速度についての目標速度Uを適宜、制限速度U、と称する。
図17は、本実施形態に係るチルト停止制御を説明するための模式図である。図17に示すように、チルト目標地形STが規定されるとともに、速度制限介入ラインILaが規定される。速度制限ラインILaは、チルト目標地形STと平行であり、チルト目標地形STからライン距離Haだけ離れた位置に規定される。ライン距離Haは、オペレータの操作感が損なわれないように設定されることが望ましい。チルト制御指令決定部61は、チルト回転するバケット8の少なくとも一部が速度制限介入ラインILaを超え、動作距離Daがライン距離Ha以下になったとき、バケット8のチルト回転速度を制限する。チルト目標速度決定部59は、速度制限介入ラインILaを超えたバケット8のチルト回転速度についての制限速度Uを決定する。図17に示す例では、バケット8の一部が速度制限介入ラインILaを超え、動作距離Daがライン距離Haよりも小さいため、チルト回転速度が制限される。
チルト目標速度決定部59は、チルト動作平面TPと平行な方向における規定点RPとチルト目標地形STとの動作距離Daを取得する。また、チルト目標速度決定部59は、動作距離Daに応じた制限速度Uを取得する。チルト制御指令決定部61は、動作距離Daがライン距離Ha以下であると判定された場合、チルト回転速度を制限する。本実施形態において、動作距離Daは、刃先9とチルト目標地形STとの距離である。
図19は、本実施形態に係る動作距離Daと制限速度Uとの関係の一例を示す図である。図19に示すように、制限速度Uは、動作距離Daに応じて画一的に決められている速度である。制限速度Uは、動作距離Daがライン距離Haよりも大きいときには設定されず、動作距離Daがライン距離Ha以下のときに設定される。動作距離Daが小さくなるほど、制限速度Uは小さくなり、動作距離Daが零になると、制限速度Uも零になる。なお、図19では、目標施工地形CSに近付く方向を負の方向として表している。
図20は、本実施形態に係るバケット8の動作の一例を示す模式図である。チルト目標速度決定部59は、操作装置30のチルト操作レバー30Tの操作量に基づいて、規定点RPaである刃先9がチルト回転に伴って目標施工地形CS(チルト目標地形ST)に向かって移動する方向の移動速度Vrを算出する。移動速度Vrは、チルト動作平面TPと平行な面内における規定点RPaの移動速度である。移動速度Vrは、チルト目標地形STの垂直方向の速度成分である。移動速度Vrは、刃先9(規定点RPa)を含む複数の規定点RPのそれぞれについて算出される。
本実施形態においては、チルト操作レバー30Tが操作された場合、チルト操作レバー30Tから出力された電圧等の信号に基づいて、移動速度Vrが算出される。チルト操作レバー30Tが操作されると、チルト操作レバー30Tの操作量に応じた電圧等の信号がチルト操作レバー30Tから出力される。チルトシリンダ14のシリンダ速度が算出された後、チルト目標速度決定部59は、操作レバーの操作量に対応するバケット8の規定点RPaの移動速度Vrに変換する。
チルト制御指令決定部61は、バケット8と目標施工地形CSとの距離と、バケット8のチルト回転状態とに基づいて、チルト軸AX4を中心にバケット8をチルト制御するための指令を出力する。チルト制御指令決定部61は、動作距離Daがライン距離Ha以下であると判定された場合、目標施工地形CSに対する規定点RPの移動速度Vrを制限速度Uに制限する速度制限を実施する。チルト制御指令決定部61は、バケット8の刃先9の移動速度Vrを抑えるために、制御弁37に制御信号を出力する。チルト制御指令決定部61は、バケット8の刃先9の移動速度Vrが動作距離Daに応じた制限速度Uになるように、制御弁37に制御信号を出力する。これにより、チルト回転するバケット8の刃先9の移動速度は、刃先9が目標施工地形CS(チルト目標地形ST)に近付くほど遅くなり、刃先9が目標施工地形CSに到達したときに零になる。
[制御方法]
次に、本実施形態に係る油圧ショベル100の制御方法の一例について説明する。図21は、本実施形態に係る油圧ショベル100の制御方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態においては、傾斜した目標施工地形CSをチルト回転可能なバケット8を用いて施工する例について説明する。
目標施工地形生成部54は、目標施工データ生成装置70から供給され記憶部62に記憶されている目標施工データであるラインLX及びラインLYに基づいて、目標施工地形CSを生成する(ステップS10)。
規定点位置データ算出部53Aは、作業機角度データ取得部52で取得された作業機角度データと、記憶部62に記憶されている作業機データと目標施工地形CSとに基づいて、バケット8に設定された規定点RPそれぞれの位置データを算出する(ステップS20)。
作業機動作平面算出部55は、ブームシリンダ11、アームシリンダ12、及びバケットシリンダ13の少なくとも一つの作動によりバケット13が移動する動作平面である作業機動作平面WPを算出する(ステップS30)。
作業機目標速度決定部58は、規定点RP(RPb)と目標施工地形CSとの垂直距離Dbを算出する(ステップS40)。
垂直距離Dbに基づいて目標速度Vbが決定される。垂直距離Dbがライン距離Hb以下である場合、作業機目標速度決定部58は、バケット8の移動速度を作業機目標速度Vtにするためのブーム6の目標速度Vbを決定する(ステップS50)。
作業機制御指令決定部60は、ブーム6を目標速度Vbで作動させるために、制御弁39Cに制御信号を出力して、ブームシリンダ11のシリンダ速度を制御する(ステップS60)。これにより、整地アシスト制御が実施される。
チルト動作平面算出部56は、規定点RPaである刃先9を通りチルト軸AX4と直交するチルト動作平面TPを算出する(ステップS70)。
チルト目標地形算出部57は、目標施工地形CSとチルト動作平面TPとが交差するチルト目標地形STを算出する(ステップS80)。
チルト目標速度決定部59は、刃先9とチルト目標地形STとの動作距離Daを算出する(ステップS90)。
動作距離Daに基づいて制限速度Uが決定される。動作距離Daがライン距離Ha以下である場合、チルト目標速度決定部59は、動作距離Daに応じた制限速度Uを決定する(ステップS100)。
チルト制御指令決定部61は、チルト操作レバー30Tの操作量から算出されるバケット8の刃先9の移動速度Vrと、チルト目標速度決定部59により決定された制限速度Uとに基づいて、制御弁37に対する制御信号を算出する。チルト制御指令決定部61は、移動速度Vrを制限速度Uにするための制御信号を算出し、制御弁37に出力する。制御弁37は、チルト制御指令決定部61から出力された制御信号に基づいて、パイロット圧を制御する。これにより、バケット8の刃先9の移動速度Vrが制限される(ステップS110)。
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、ブーム軸AX1、アーム軸AX2、及びバケット軸AX3の少なくとも一つと直交する作業機動作平面WPにおいて作業機1を駆動するための指令が出力されることによって実施される整地アシスト制御と、チルト軸AX4を中心にバケット8をチルト回転させるための指令が出力されることによって実施されるチルト停止制御とが併用して行われる。オペレータがチルト停止制御と整地アシストを用いて傾斜面を施工した場合で図22を参照して説明する。
オペレータはチルト回転させバケット掘削面を目標施工地形CSに押し付けるようにチルト回転操作を行いながら、アーム、バケットを掘削操作しながら下記の手順で作業を行う。図22(A)に示すように、バケット8が目標施工地形CSに近づくと、アーム7及びバケット8の操作に基づいて整地アシスト制御に基づくブーム6の介入制御が行われ、また図22(B)に示すようにバケット8の操作に基づくチルト停止制御が緩やかに始まる。
チルト操作とアーム7及びバケット8の各操作が続けられることにより、図22(C)に示すように、バケット8は目標施工地形CSに到達する。バケット8の掘削時に目標施工地形CSに接するバケット8の刃先9(線分)や、バケット8の背面等の掘削領域が、目標施工地形CS(チルト停止制御ではチルト目標地形ST)に略平行な状態となった時点でチルト速度が零になる。これ以降、チルト停止制御により目標施工地形CSと掘削領域の平行な状態が維持される。このとき、整地アシスト制御ではチルト操作を考慮しないブーム介入制御が行われ、目標施工地形CS(整地アシスト制御ではラインLX)に沿った掘削を行うことができる。
これより、目標施工地形CSと掘削領域との平行を維持しながらバケット掘削領域が目標施工地形CSにから浮き上がりを起こさない。
オペレータが操作装置30を操作してバケット8をチルト回転させながらバケット8の掘削領域で目標施工地形CSを押し付ける動作を含む掘削作業を実施する場合、目標施工地形CSを侵食しないようにだけではなく掘削漏れをなくすことが要望される。単に、バケット8の一部分がラインLXに沿って移動するだけでは、目標施工地形CSに対するバケット8のチルト角度の最適値を決定することができず、刃先の一部のみが目標施工地形CSに接する状況もしくは目標施工地形CSより浮き上がった状況となり、掘削漏れ(掘り残し)が発生してしまう。
本実施形態によれば、ブームシリンダ11を制御する整地アシスト制御をチルト式のバケット8に単に適用しただけでなく、バケット8とチルト目標地形STとの距離に基づいてチルトシリンダ14を制御するチルト停止制御が整地アシスト制御と併用される。これにより、チルト式のバケット8のチルト角度を最適値にして、バケット8の刃先9と目標施工地形CSとを平行にすることができ、目標設計地形CS(チルト目標地形ST)がバケット8で侵食されることなく、バケット8の刃先9を目標施工地形CS(ラインLX)に沿って移動させることできる。
図23は、本実施形態に係るバケット8の作用を説明するための模式図である。図23は、整地アシスト制御が実施され、チルト停止制御は実施されない例を示す。チルト停止制御が実施されない場合、制限速度Uは算出されない。オペレータによるチルト操作レバー30Tの操作に基づくバケット8の移動速度がVrであり、目標施工地形CSの法線方向の移動速度Vrの速度成分をVraとした場合、目標施工地形CSに対するバケット8の相対速度は、オペレータによる作業機操作レバー30Lの操作に基づくバケット8の移動速度Vsと、オペレータによるチルト操作レバー30Tの操作に基づくバケット8の移動速度Vraとの和となる。その結果、作業機目標速度決定部58は、移動速度Vsと移動速度Vraとの和が相殺されるようにブーム6の目標速度Vbを算出することとなる。すなわち、バケット8がチルト回転しても、チルトシリンダ14は制御されずに、ブームシリンダ11のみが制御されることとなり、ブーム6が過度に上げ動作することとなる。その結果、バケット8の刃先9を傾斜する目標施工地形CSに沿って移動させることが困難となる。
本実施形態によれば、チルト回転するバケット8の移動速度Vrに基づいて、チルトシリンダ14が制御される。したがって、ブーム6が過度に上げ動作することが抑制され、目標施工地形CSが精度良く施工される。
また、本実施形態においては、チルト動作平面TP及びチルト目標地形STが規定され、チルト目標速度決定部59は、バケット8とチルト目標地形STとの動作距離Daに基づいて、チルト動作平面STにおけるバケット8の目標速度Uを決定する。チルト制御指令決定部61は、チルト目標速度決定部59で決定された目標速度Uに基づいて、チルトシリンダ14を制御する。したがって、チルト回転するバケット8の刃先9を目標施工地形CSに精度良く沿わせながら施工することができる。
また、本実施形態においては、作業機動作平面WPにおける作業機1の移動を制御する整地アシスト制御と、チルト動作平面TPにおけるバケット3のチルト回転を制御するチルト停止制御とは、独立して実施される。すなわち、整地アシスト制御では、作業機動作平面WPにおける垂直距離Dbに基づいて、作業機動作平面WPにおけるブーム6の目標速度Vbが決定され、ブーム6が目標速度Vbで移動するようにブームシリンダ11が制御される。すなわち、バケット8のチルト回転に基づくバケット8と目標施工地形CSとの相対速度は、整地アシスト制御には反映されない。一方、チルト停止制御では、チルト動作平面TPにおける動作距離Daに基づいて、チルト動作平面TPにおけるバケット8の目標速度Uが決定され、バケット8が目標速度Uでチルト回転するようにチルトシリンダ14が制御される。すなわち、ブーム6の移動に基づくバケット8と目標施工地形CSとの相対速度は、チルト停止制御には反映されない。これにより、チルト回転するバケット8の刃先9を目標施工地形CSに精度良く沿わせながら施工することができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。図24は、本実施形態に係る油圧ショベル100の制御方法の一例を示す模式図である。上述の実施形態と同様、チルト目標速度決定部59は、チルト動作平面TPにおけるバケット8の目標速度Uを算出する。
本実施形態においては、チルト目標速度決定部59は、算出した目標速度Uから、ラインLXの法線方向におけるバケット8の目標速度Uaを算出する。すなわち、チルト目標速度決定部59は、ラインLXの法線方向における目標速度Uの速度成分Uaを算出する。
作業機制御指令決定部60は、チルト目標速度決定部59で算出された、ラインLXの法線方向におけるバケット8の目標速度Uaと、作業機目標速度決定部58で算出された、ラインLXの法線方向におけるバケット8の目標速度Vsとに基づいて、指令を出力する。本実施形態においては、目標速度Uaと目標速度Vsとの和が相殺されるように、すなわち、[Vs+Va=Vt+Vb]となるように、ブーム6の目標速度Vbが算出され、その目標速度Vbでブーム6が移動するように、作業機制御指令決定部60は、制御弁39Cに制御信号を出力して、ブームシリンダ11のシリンダ速度を制御する。
本実施形態によれば、バケット8のチルト回転についての目標速度Uaが整地アシスト制御に反映される。チルト回転に基づいてバケット8が目標施工地形CSに接近する速度が整地アシスト制御に全く反映されない場合、バケット8が目標施工地形CSを僅かに掘り込んでしまう可能性がある。本実施形態によれば、より高精度にバケット8の刃先9を目標施工地形CSに沿わせながら移動させることができる。
なお、上述の実施形態においては、整地アシスト制御において、ブームシリンダ11が制御されることとした。整地アシスト制御においては、作業機動作平面WPで作業機1を動作させるアームシリンダ12が制御されてもよいし、ブームシリンダ13が制御されてもよい。
なお、上述の実施形態においては、バケット8をチルト回転させるチルトシリンダ14の制御が、動作距離Daに基づいて実施されることとした。バケット8をチルト回転させるチルトシリンダ14の制御が、垂直距離Dbに基づいて実施されてもよい。
なお、上述の実施形態においては、バケット8のチルト回転を目標施工地形CSで停止させるバケット停止制御が実施されることとした。ブームシリンダ11による整地アシスト制御と同様、バケット8の刃先9が目標施工地形CSに追従するようにチルトバケット14が制御されるチルト整地アシスト制御が実施されてもよい。
なお、上述の実施形態においては、チルト回転するバケット8がチルト目標地形STで停止することとした。チルト目標地形STに対して規定の位置関係にある、チルト目標地形STとは異なる規定位置でバケット8のチルト回転が停止するように、チルト停止制御が実施されてもよい。
なお、上述の実施形態においては、建設機械100が油圧ショベルであることとした。上述の実施形態で説明した構成要素は、油圧ショベルとは別の、作業機を有する建設機械に適用可能である。
なお、上述の実施形態において、バケット軸AX3及びチルト軸AX4に加えて、バケット8を回転可能に支持する回転軸が作業機1に設けられてもよい。
なお、上述の実施形態において、上部旋回体2は、油圧により旋回してもよいし、電動アクチュエータが発生する動力により旋回してもよい。また、作業機1は、油圧シリンダ10ではなく、電動アクチュエータが発生する動力により作動してもよい。