以下、本発明に係る実施形態の無菌充填システムについて図1〜図7を参照して説明する。
無菌充填システム1は、飲料等の製品液Mを無菌状態で容器に充填する。無菌充填システム1は、例えばプラスチック容器に飲料を充填して製品を製造する。無菌充填システム1は、製品液Mの種類を切り替える場合や一定の期間ごとに、製品液Mが流れる経路を構成する配管及びタンク等の製造ラインを洗浄して加熱して殺菌している。具体的な殺菌方法としては、殺菌対象となる対象物である配管やタンク等の製造ラインに、蒸気Sや熱水を循環させるSIP(sterilization in place)と称される方法が用いられる。
本実施形態の無菌充填システム1は、図1に示すように、製品液殺菌装置2と、アセプティックタンク3と、充填機4とを備える。製品液殺菌装置2、アセプティックタンク3、及び充填機4は、製品を製造するほかに、製造ラインを加熱殺菌する際の殺菌システムとして機能する。無菌充填システム1は、製品製造時には、製品液殺菌装置2で殺菌された製品液Mを、アセプティックタンク3を介して充填機4に供給する。無菌充填システム1は、加熱殺菌時には、製品液殺菌装置2、アセプティックタンク3、及び充填機4に対して、それぞれ個別又は同時に加熱殺菌を実施する。
製品液殺菌装置2は、飲料等の製品液Mを高熱で加熱して殺菌する。製品液殺菌装置2は、製品液Mや加熱殺菌用の水W等の流体を循環可能とされている。本実施形態の成否根基殺菌装置2は、例えば、UHTを実施する装置である。本実施形態の製品液殺菌装置2は、クッションタンク21と、熱交換器22と、第一UHTライン23と、第二UHTライン24と、第一UHT温度測定部(温度測定部)25と、第二UHT温度測定部(温度測定部)26と、分岐ライン27と、UHT制御装置(制御装置)28と、を有している。
クッションタンク21は、上流側から供給されてくる流体を一時的に蓄える。クッションタンク21は、必要な量の流体を下流側に供給する。本実施形態のクッションタンク21は、製品製造時には上流から製品液Mが供給される。クッションタンク21は、加熱殺菌時には上流から水Wが供給される。なお、特に断りがない限り、本実施形態の上流側及び下流側は、製品液Mの流れる向きに基づくものとする。
熱交換器22は、製品液Mや水Wを熱交換によって加熱したり、冷却したりしている。熱交換器22は、上流側に配置されるUHT加熱部(加熱部)221と、下流側に配置されるUHT冷却部(冷却部)222とを有する。
UHT加熱部221は、供給されてくる流体を加熱して殺菌する。UHT加熱部221は、製品製造時には、供給されてくる製品液Mを蒸気Sと熱交換して加熱する。UHT加熱部221は、加熱殺菌時には、供給されてくる水Wを蒸気と熱交換して加熱する。これにより、UHT加熱部221は、殺菌対象である製造ラインを加熱している。つまり、UHT加熱部221は、加熱した水W(熱水)をUHT加熱部221よりも下流側の配管等の製造ラインの内部に供給することで、製造ラインを間接的に加熱している。UHT加熱部221は、例えば、120℃以上に流体を加熱する。UHT加熱部221は、後述するUHT制御装置28からの指示に基づいて、流体の加熱を開始又は停止する。
UHT冷却部222は、供給されてくる流体を冷却する。UHT冷却部222は、UHT加熱部221の下流側に接続されている。UHT冷却部222は、製品製造時には、UHT加熱部221で加熱された製品液Mを冷媒と熱交換させることで冷却する。UHT冷却部222は、加熱殺菌時には、供給されてくる水Wや熱水を冷媒と熱交換させることで冷却する。これにより、UHT冷却部222は、殺菌対象である製造ラインを冷却している。つまり、UHT冷却部222は、冷却した水W(冷水)をUHT冷却部222よりも下流側の配管等の製造ラインの内部に供給することで、製造ラインを間接的に冷却している。UHT冷却部222は、後述するUHT制御装置28からの指示に基づいて、流体の冷却を開始又は停止する。
第一UHTライン23は、クッションタンク21と熱交換器22とを接続している。本実施形態の第一UHTライン23は、クッションタンク21とUHT加熱部221とを接続する配管である。第一UHTライン23は、その途中にクッションタンク21からUHT加熱部221に向かって流体を圧送する第一ポンプ231が設けられている。
第二UHTライン24は、熱交換器22とクッションタンク21とを接続している。本実施形態の第二UHTライン24は、UHT冷却部222とクッションタンク21とを接続する配管である。第二UHTライン24は、第一UHTライン23とともに熱交換器22及びクッションタンク21に接続されていることで、熱交換器22とクッションタンク21との間で流体を循環させている。第二UHTライン24は、その途中が後述するアセプティックタンク3に接続されている。第二UHTライン24は、流体の経路を切替える第二UHTライン弁241が、アセプティックタンク3に接続されている部分よりも下流側に設けられている。第二UHTライン弁241は、アセプティックタンク3のレベルが設定レベルより高い場合は開放され、設定レベルよりも低い場合は閉塞される。第二UHTライン弁241は、開放されることで第二UHTライン24内に流体を流通させる。第二UHTライン24は、クッションタンク21に流入させるUHTタンク弁242が第二UHTライン弁241よりも下流側に設けられている。UHTタンク弁242は、殺菌工程時以外でクッションタンク21を介して流体を循環させる際に開放される。UHTタンク弁242は、開放されることでクッションタンク21に流体を流入させる。本実施形態の第二UHTライン24は、UHT冷却部222とともに殺菌対象となる製造ラインの一部である。
第一UHT温度測定部25は、第二UHTライン24の温度を測定する。第一UHT温度測定部25は、第二UHTライン24の内部の温度を測定している。第一UHT温度測定部25は、第二UHTライン24中の流体を冷却した際に、第二UHTライン24の中で温度が低下し易い位置に配置されている。したがって、第一UHT温度測定部25は、第二UHTライン24において最も早く温度が低下する位置に配置されていることが好ましい。本実施形態の第一UHT温度測定部25は、第二UHTライン24のアセプティックタンク3に接続されている部分よりも上流側に設けられている。第一UHT温度測定部25は、第二UHTライン24のうちで、殺菌対象となる部分の最も上流側に設けられていることが好ましい。具体的には、第一UHT温度測定部25は、第二UHTライン24の中で、UHT冷却部222に近い位置に設けられていることが好ましい。第一UHT温度測定部25は、測定した温度の情報を第一温度情報としてUHT制御装置28に送る。
第二UHT温度測定部26は、第一UHT温度測定部25よりも下流側で第二UHTライン24の温度を測定する。第二UHT温度測定部26は、第二UHTライン24の内部の温度を測定している。第二UHT温度測定部26は、第二UHTライン24中の流体を加熱した際に、第二UHTライン24の中で温度が上昇し難い位置に配置されている。したがって、第二UHT温度測定部26は、第二UHTライン24において最も遅く温度が上昇する位置に配置されていることが好ましい。第二UHT温度測定部26は、第二UHTライン24のアセプティックタンク3に接続されている部分よりも下流側に設けられている。第二UHT温度測定部26は、第二UHTライン24の第二UHTライン弁241よりも下流側に設けられている。第二UHT温度測定部26は、第二UHTライン24のうちで、殺菌対象となる部分の最も下流側に設けられていることが好ましい。第二UHT温度測定部26は、測定した温度の情報を第二温度情報としてUHT制御装置28に送る。
分岐ライン27は、第一UHTライン23と第二UHTライン24とを接続している。分岐ライン27は、クッションタンク21を介さずに、第二UHTライン24から第一UHTライン23に流体を流通可能としている。分岐ライン27は、UHTタンク弁242よりも上流側、かつ、第二UHT温度測定部26よりも下流側で第二UHTライン24に接続されている。分岐ライン27は、第一ポンプ231よりも上流側で第一UHTライン23に接続されている。分岐ライン27は、途中に循環ベッセル271が設けられている。分岐ライン27は、循環ベッセル271よりも上流側に分岐ライン弁272が設けられている。分岐ライン弁272は、殺菌工程時に循環ベッセル271を介して流体を循環させる際に開放される。分岐ライン弁272は、開放されることで循環ベッセル271に流体を流入させる。
循環ベッセル271は、加熱殺菌時に上流側から供給されてくる流体を一時的に蓄える。循環ベッセル271は、加熱殺菌時に必要な量の流体を下流側に供給する。循環ベッセル271は、加熱殺菌時のみに使用される。
UHT制御装置28は、殺菌対象となる対象物を加熱して殺菌する殺菌システムの制御装置である。本実施形態のUHT制御装置28は、第二UHTライン24の一部及びUHT冷却部222を加熱して殺菌する際に機能する。UHT制御装置28は、製品の製造を停止して製造ラインを加熱殺菌する際に稼働される。UHT制御装置28は、図2に示すように、UHT温度取得部(温度受付部)281と、UHT時間計測部(時間計測部)282と、UHT完了推定部(完了推定部)283と、UHT加熱終了部(加熱終了部)284と、UHT加熱開始指示部(加熱開始指示部)285とを含む。
UHT温度取得部281は、対象物の温度を受け付けて取得する。本実施形態のUHT温度取得部281は、第一UHT温度測定部25及び第二UHT温度測定部26から第二UHTライン24の内部の温度の情報が入力される。UHT温度取得部281は、第一UHT温度測定部25から入力された第一温度情報をUHT加熱開始指示部285に出力する。UHT温度取得部281は、第二UHT温度測定部26から入力された第二温度情報をUHT時間計測部282及びUHT完了推定部283にそれぞれ出力する。
UHT時間計測部282は、加熱殺菌中の加熱殺菌時間を計測する。加熱殺菌時間は、温度が基準温度Tr以上となっている時間である。UHT時間計測部282は、UHT温度取得部281から第一及び第二温度情報が入力される。本実施形態のUHT時間計測部282は、入力される第二温度情報が基準温度Tr以上となっている場合の時間を加熱殺菌時間として計測する。UHT時間計測部282は、計測した加熱殺菌時間の情報をUHT完了推定部283に出力する。
ここで、基準温度Trとは、加熱殺菌しているとみなせる温度である。基準温度Trは、予め試験等を行うことで設定される。基準温度Trは、例えば、UHT加熱部221で加熱可能な121℃程度に設定される。F値は、所定の温度における目的の微生物の致死率を時間で積算した値である。F値は、以下の式により求められる。
なお、tは時間、Tは任意の殺菌温度(℃)、Trは基準温度(℃)、Zは微生物の加熱致死時間の1/10の変化に対応する加熱温度差であるZ値である。
UHT完了推定部283は、冷却変化率と、受け付けた温度と、計測した加熱殺菌時間とに基づいて、加熱殺菌を終了させる殺菌完了推定時間を推定する。ここで、冷却変化率は、加熱を終了した後の温度の低下率として予め設定される、具体的には、冷却変化率は、事前に試験等を繰り返し行い、種々の温度で加熱を終了してから基準温度Tr以下となるまでの時間を計測することで算出される。
UHT完了推定部283は、UHT温度取得部281から第二温度情報が入力される。UHT完了推定部283は、UHT時間計測部282から加熱殺菌時間の情報が入力される。UHT完了推定部283は、加熱殺菌時間の情報と、この時間に対応する第二温度情報とに基づいて、その温度で加熱を仮に終了した場合に、加熱を終了してから基準温度Tr以下となるまでの時間を冷却変化率から算出する。UHT完了推定部283は、算出した時間の情報と、UHT時間計測部282から実際に入力された加熱殺菌時間の情報とに基づいて、加熱を開始してから基準温度Tr以下になるまでの時間を殺菌完了推定時間として算出する。本実施形態のUHT完了推定部283は、加熱を終了した時間に基づいて、殺菌完了推定時間までの冷却F値を冷却変化率から算出する。UHT完了推定部283は、算出した殺菌完了推定時間及び冷却F値をUHT加熱終了部284に出力する。
UHT加熱終了部284は、殺菌完了推定時間が予め定めた基準値を超えている場合に、UHT加熱部221に指示を送って加熱を終了させる。ここで、基準値は、加熱殺菌が完了したとみなせる時間である。本実施形態のUHT加熱終了部284は、基準値として基準F値を用いる。基準F値は、加熱殺菌が完了したとみなせるF値である。つまり、UHT加熱終了部284は、殺菌完了推定時間における推定F値が予め定めた基準F値を超えているか否かを判定する。なお、推定F値とは、殺菌完了推定時間を算出した時点での加熱殺菌時間におけるF値と、冷却F値との合計値である。UHT加熱終了部284は、推定F値が基準F値を超えている場合にUHT冷却部222に指示を送って冷却を開始させる。
UHT加熱開始指示部285は、加熱を終了させた後に、第二UHTライン24内の温度が殺菌完了推定時間に到達する前に基準温度Trよりも高い第二基準温度以下となった場合に、再び加熱を開始させる。ここで、第二基準温度は、基準温度Trよりもわずかに高い温度である。第二基準温度は、例えば、基準温度Trが121℃程度の場合、基準温度Trよりも1℃〜3℃程度高い温度に設定される。
UHT加熱開始指示部285は、第一UHT温度測定部25から入力される第一温度情報が第二基準温度以下となった場合に、UHT冷却部222に冷却を終了するよう指示を送る。
アセプティックタンク3は、図1に示すように、製品液殺菌装置2から殺菌されて供給されてきた製品液Mを一時的に蓄える。アセプティックタンク3は、必要な量の製品液Mを充填機4に供給する。本実施形態のアセプティックタンク3は、アセプティックタンク本体31と、第一タンクライン32と、第二タンクライン33と、第一タンク温度測定部(温度測定部)34と、第二タンク温度測定部(温度測定部)35と、タンク殺菌ライン36と、タンク制御装置(制御装置)37と、を有する。
アセプティックタンク本体31は、上流側から供給されてきた製品液Mを一時的に蓄える。アセプティックタンク本体31は、必要な量の製品液Mを下流側に供給する。
第一タンクライン32は、アセプティックタンク本体31と製品液殺菌装置2とを接続している。本実施形態の第一タンクライン32は、アセプティックタンク本体31と第二UHTライン24とを接続する配管である。第一タンクライン32は、アセプティックタンク本体31に流入させる第一タンクライン弁321が設けられている。第一タンクライン弁321は、アセプティックタンク3のレベルが設定レベルより低い場合は開放され、設定レベルよりも高い場合は閉塞される。第一タンクライン弁321は、開放されることで第二UHTライン24から第一タンクライン32内に流体を流入させる。
第二タンクライン33は、アセプティックタンク本体31と外部とを接続している。本実施形態の第二タンクライン33は、アセプティックタンク本体31から外部まで延びる配管である。第二タンクライン33は、その途中が後述する充填機4に接続されている。第二タンクライン33は、アセプティックタンク本体31から排出させる第二タンクライン弁331が設けられている。第二タンクライン弁331は、開放されることで第二タンクライン33内の流体を外部に排出させる。本実施形態の第二タンクライン33は、アセプティックタンク本体31及び第一タンクライン32とともに殺菌対象となる製造ラインの一部である。
第一タンク温度測定部34は、アセプティックタンク本体31の温度を測定する。第一タンク温度測定部34は、アセプティックタンク本体31の内部の温度を測定している。第一タンク温度測定部34は、アセプティックタンク本体31中の流体を冷却した際に、アセプティックタンク本体31において温度が低下し易い位置に配置されている。したがって、第一タンク温度測定部34は、アセプティックタンク本体31において最も早く温度が低下する位置に配置されていることが好ましい。また、第一タンク温度測定部34は、アセプティックタンク本体31の内部を流通する流体の主流から離れた位置で温度を測定している。第一タンク温度測定部34は、アセプティックタンク本体31の内部を流通する流体の主流に曝されない位置に配置されていることが好ましい。具体的には、本実施形態の第一タンク温度測定部34は、図3に示すように、アセプティックタンク本体31の流体が流入する流入口からずれた位置に配置されている。第一タンク温度測定部34は、測定した温度の情報を第一タンク温度情報としてタンク制御装置37に送る。
なお、第一タンク温度測定部34は、アセプティックタンク本体31内の温度を測定することに限定するものではない。第一タンク温度測定部34は、例えば、第一タンクライン32に配置されて第一タンクライン32の内部の温度を測定してもよい。この場合、第一タンク温度測定部34は、第一タンクライン32のうちで、殺菌対象となる部分の最も上流側に設けられていることが好ましい。具体的には、第一タンク温度測定部34は、後述するタンク殺菌ライン36との接続に近い位置に設けられていることが好ましい。
第二タンク温度測定部35は、図1に示すように、第二タンクライン33の温度を測定する。第二タンク温度測定部35は、第二タンクライン33の内部の温度を測定している。第二タンク温度測定部35は、第二タンクライン33中の流体を加熱した際に、第二タンクライン33において温度が上昇し難い位置に配置されている。したがって、第二タンク温度測定部35は、第二タンクライン33中の流体を加熱した際に、第二タンクライン33において最も遅く温度が上昇する位置に配置されていることが好ましい。また、第二タンク温度測定部35は、第二タンクライン33のうちで、殺菌対象となる部分の最も下流側に設けられていることが好ましい。具体的には、第二タンク温度測定部35は、第二タンクライン33の充填機4に接続されている部分よりも下流側に設けられている。第二タンク温度測定部35は、第二タンクライン33の第二タンクライン弁331よりも下流側に設けられている。第二タンク温度測定部35は、測定した温度の情報を第二タンク温度情報としてタンク制御装置37に送る。
タンク殺菌ライン36は、第一タンクライン32に加熱用の蒸気Sを供給するとともに、冷却用の空気Aを供給する。本実施形態のタンク殺菌ライン36は、タンク加熱ライン36Aと、タンク冷却ライン36Bとが合流した配管である。タンク殺菌ライン36は、第一タンクライン弁321よりも下流側で第一タンクライン32に接続されている。
タンク加熱ライン36Aは、不図示の蒸気Sの供給源と接続されている。タンク加熱ライン36Aは、加熱殺菌時にアセプティックタンク本体31を加熱するために使用する蒸気Sが流入する。タンク加熱ライン36Aは、アセプティックタンク本体31に流入させる蒸気Sの流量を調整するタンク加熱弁(加熱部)361が設けられている。タンク加熱弁361は、タンク制御装置37からの指示に基づいて開度を調整する。タンク加熱弁361は、開放されることで第一タンクライン32内に蒸気Sを流入させる。タンク加熱弁361は、蒸気Sをタンク加熱弁361よりも下流側の配管等の製造ラインの内部に供給することで、製造ラインを間接的に加熱している。
タンク冷却ライン36Bは、不図示の冷却用の空気Aの供給源と接続されている。タンク冷却ライン36Bは、加熱殺菌後にアセプティックタンク本体31を冷却するために使用される空気Aが流入する。タンク冷却ライン36Bは、アセプティックタンク本体31に流入させるタンク冷却弁(冷却部)362が設けられている。タンク冷却弁362は、タンク制御装置37からの指示に基づいて開度を調整する。タンク冷却弁362は、開放されることで第一タンクライン32内に空気Aを流入させる。タンク冷却弁362は、冷却された空気Aをタンク冷却弁362よりも下流側の配管等の製造ラインの内部に供給することで、製造ラインを間接的に冷却している。
タンク制御装置37は、殺菌対象となる対象物を加熱して殺菌する殺菌システムの制御装置である。本実施形態のタンク制御装置37は、第一タンクライン32及び第二タンクライン33の一部と、アセプティックタンク本体31とを加熱して殺菌する際に機能する。タンク制御装置37は、UHT制御装置28とは独立して稼動する。タンク制御装置37は、図4に示すように、タンク温度取得部(温度受付部)371と、タンク時間計測部(時間計測部)372と、タンク完了推定部(完了推定部)373と、タンク加熱終了部(加熱時間終了部)374と、タンク加熱開始指示部(加熱完了指示部)375とを含む。
タンク温度取得部371は、対象物の温度を受け付けて取得する。本実施形態のタンク温度取得部371は、第一タンク温度測定部34からアセプティックタンク本体31の内部の温度の情報が入力される。タンク温度取得部371は、第二タンク温度測定部35から第二タンクライン33の内部の温度の情報が入力される。タンク温度取得部371は、第一タンク温度測定部34から入力された第一タンク温度情報をタンク加熱開始指示部375に出力する。タンク温度取得部371は、第二タンク温度測定部35から入力された第二タンク温度情報をタンク時間計測部372及びタンク完了推定部373にそれぞれ出力する。
タンク時間計測部372は、温度が基準温度Tr以上となっている加熱殺菌中の加熱殺菌時間を計測する。タンク時間計測部372は、タンク温度取得部371から第二タンク温度情報が入力される。タンク時間計測部372は、入力された第二タンク温度情報に基づいて計測した加熱殺菌時間の情報をタンク完了推定部373に出力する。
タンク完了推定部373は、冷却変化率と、受け付けた温度と、計測した加熱殺菌時間とに基づいて、加熱殺菌を終了させる殺菌完了推定時間を推定する。タンク完了推定部373は、タンク温度取得部371から第二タンク温度情報が入力される。タンク完了推定部373は、タンク時間計測部372から加熱殺菌時間の情報が入力される。タンク完了推定部373は、加熱殺菌時間の情報と、この時間に対応する第二タンク温度情報とに基づいて、UHT完了推定部283と同様に、加熱を開始してから基準温度Tr以下になるまでの時間を冷却変化率から殺菌完了推定時間として算出する。本実施形態のタンク完了推定部373は、加熱を終了した時間から殺菌完了推定時間までの冷却F値を冷却変化率から算出する。タンク完了推定部373は、算出した殺菌完了推定時間及び冷却F値をタンク加熱終了部374に出力する。
タンク加熱終了部374は、殺菌完了推定時間が予め定めた基準値を超えている場合に、タンク加熱弁361に指示を送って第一タンクライン32への蒸気Sの供給を終了させる。これにより、タンク加熱終了部374は、加熱を終了させる。本実施形態のタンク加熱終了部374は、UHT加熱終了部284と同様に、基準値として基準F値を用いる。つまり、タンク加熱終了部374は、推定F値が基準F値を超えている場合に、タンク加熱弁361に指示を送る。また、タンク加熱終了部374は、推定F値が基準F値を超えている場合に、タンク冷却弁362に指示を送って第一タンクライン32への空気Aの供給を開始させる。
タンク加熱開始指示部375は、加熱を終了させた後に、殺菌完了推定時間に到達する前に基準温度Trよりも高い第二基準温度以下となった場合に、再び加熱を開始させる。タンク加熱開始指示部375は、第一タンク温度測定部34から入力される第一タンク温度情報が第二基準温度以下となった場合に、タンク加熱弁361に第一タンクライン32への蒸気Sの供給を再開するように指示を送る。また、タンク加熱開始指示部375は、加熱を再開する際にタンク冷却弁362に第一タンクライン32への空気Aの供給を終了するよう指示を送る。
充填機4は、図1に示すように、上流側のアセプティックタンク3から殺菌されて供給されてきた製品液Mをプラスチックのペットボトル等の容器に充填する。本実施形態の充填機4は、充填機本体41と、第一充填ライン42と、第二充填ライン43と、第一充填温度測定部(温度測定部)44と、第二充填温度測定部(温度測定部)45と、充填殺菌ライン46と、充填制御装置(制御装置)47と、を有する。
充填機本体41は、上流側から供給されてきた製品液Mを容器に充填して、さらに下流側に配置された不図示の装置に製品液Mの充填された容器を送っている。
第一充填ライン42は、充填機本体41とアセプティックタンク3とを接続している。本実施形態の第一充填ライン42は、充填機本体41と第二タンクライン33とを接続する配管である。第一充填ライン42は、充填機本体41に流入させる第一充填ライン弁421が設けられている。第一充填ライン弁421は、開放されることで第二タンクライン33から第一充填ライン42内に流体を流入させる。
第二充填ライン43は、充填機本体41と外部とを接続している。本実施形態の第二充填ライン43は、充填機本体41ら外部まで延びる配管である。第二充填ライン43は、充填機本体41から排出させる第二充填ライン弁431が設けられている。第二充填ライン弁431は、開放されることで第二充填ライン43内の流体を外部に排出させる。本実施形態の第二充填ライン43は、充填機本体41及び第一充填ライン42とともに殺菌対象となる製造ラインの一部である。
第一充填温度測定部44は、第一充填ライン42の温度を測定する。第一充填温度測定部44は、第一充填ライン42の内部の温度を測定している。第一充填温度測定部44は、第一充填ライン42中の流体を冷却した際に、第一充填ライン42において温度が低下し易い位置に配置されている。したがって、第一充填温度測定部44は、第一充填ライン42において最も早く温度が低下する位置に配置されていることが好ましい。また、第一充填温度測定部44は、第一充填ライン42の内部を流通する流体の主流から離れた位置で温度を測定している。したがって、第一充填温度測定部44は、第一充填ライン42の内部を流通する流体の主流に曝されない位置に配置されていることが好ましい。また、第一充填温度測定部44は、第一充填ライン42のうちで、殺菌対象となる部分の最も上流側に設けられていることが好ましい。具体的には、本実施形態の第一充填温度測定部44は、第一充填ライン42の中で7後述する充填殺菌ライン46との接続位置に近い位置に設けられている。第一充填温度測定部44は、測定した温度の情報を第一充填温度情報として充填制御装置47に送る。
第二充填温度測定部45は、第二充填ライン43の温度を測定する。第二充填温度測定部45は、第二充填ライン43の内部の温度を測定している。第二充填温度測定部45は、第二充填ライン43中の流体を加熱した際に、第二充填ライン43において温度が上昇し難い位置に配置されている。したがって、第二充填温度測定部45は、第二充填ライン43中の流体を加熱した際に、第二充填ライン43において最も遅く温度が上昇する位置に配置されていることが好ましい。また、第二充填温度測定部45は、第二充填ライン43のうちで、殺菌対象となる部分の最も下流側に設けられていることが好ましい。具体的には、本実施形態の第二充填温度測定部45は、第二充填ライン43の充填機本体41に接続されている部分よりも下流側に設けられている。第二充填温度測定部45は、第二充填ライン43の第二充填ライン弁431よりも下流側に設けられている。第二充填温度測定部45は、測定した温度の情報を第二充填温度情報として充填制御装置47に送る。
充填殺菌ライン46は、第一充填ライン42に加熱用の蒸気Sを供給するとともに、冷却用の空気Aを供給する。本実施形態の充填殺菌ライン46は、充填加熱ライン46Aと、充填冷却ライン46Bとが合流した配管である。充填殺菌ライン46は、第一充填ライン弁421よりも下流側、かつ、第一充填温度測定部44よりも上流側で第一充填ライン42に接続されている。
充填加熱ライン46Aは、不図示の蒸気Sの供給源と接続されている。充填加熱ライン46Aは、加熱殺菌時に充填機本体41を加熱するために使用する蒸気Sが流入する。充填加熱ライン46Aは、充填機本体41に流入させる蒸気Sの流量を調整する充填加熱弁(加熱部)461が設けられている。充填加熱弁461は、充填制御装置47からの指示に基づいて開度を調整する。充填加熱弁461は、開放されることで第一充填ライン42内に蒸気Sを流入させる。充填加熱弁461は、蒸気Sを充填加熱弁461よりも下流側の配管等の製造ラインの内部に供給することで、製造ラインを間接的に加熱している。
充填冷却ライン46Bは、不図示の冷却用の空気Aの供給源と接続されている。充填冷却ライン46Bは、加熱殺菌後に充填機本体41を冷却するために使用される空気Aが流入する。充填冷却ライン46Bは、充填機本体41に流入させる充填冷却弁(冷却部)462が設けられている。充填冷却弁462は、充填制御装置47からの指示に基づいて開度を調整する。充填冷却弁462は、開放されることで第一充填ライン42内に空気Aを流入させる。充填冷却弁462は、冷却された空気Aを充填冷却弁462よりも下流側の配管等の製造ラインの内部に供給することで、製造ラインを間接的に冷却している。
充填制御装置47は、殺菌対象となる対象物を加熱して殺菌する殺菌システムの制御装置である。本実施形態の充填制御装置47は、第一充填ライン42及び第二充填ライン43の一部と、充填機本体41とを加熱して殺菌する際に機能する。充填制御装置47は、UHT制御装置28とは独立して稼動する。充填制御装置47は、図5に示すように、充填温度取得部(温度受付部)471と、充填時間計測部(時間計測部)472と、充填完了推定部(完了推定部)473と、充填加熱終了部(加熱時間終了部)474と、充填加熱開始指示部(加熱完了指示部)475とを含む。
充填温度取得部471は、対象物の温度を受け付けて取得する。本実施形態の充填温度取得部471は、第一充填温度測定部44から第一充填ライン42の内部の温度の情報が入力される。充填温度取得部471は、第二充填温度測定部45から第二充填ライン43の内部の温度の情報が入力される。充填温度取得部471は、第一充填温度測定部44から入力された第一充填温度情報を充填加熱開始指示部475に出力する。充填温度取得部471は、第二充填温度測定部45から入力された第二充填温度情報を充填時間計測部472及び充填完了推定部473にそれぞれ出力する。
充填時間計測部472は、温度が基準温度Tr以上となっている加熱殺菌中の加熱殺菌時間を計測する。充填時間計測部472は、充填温度取得部471から第二充填温度情報が入力される。充填時間計測部472は、入力された第二充填温度情報に基づいて計測した加熱殺菌時間の情報を充填完了推定部473に出力する。
充填完了推定部473は、冷却変化率と、受け付けた温度と、計測した加熱殺菌時間とに基づいて、加熱殺菌を終了させる殺菌完了推定時間を推定する。充填完了推定部473は、充填温度取得部471から第二充填温度情報が入力される。充填完了推定部473は、充填時間計測部472から加熱殺菌時間の情報が入力される。充填完了推定部473は、加熱殺菌時間の情報と、この時間に対応する第二充填温度情報とに基づいて、UHT完了推定部283と同様に、加熱を開始してから基準温度Tr以下になるまでの時間を冷却変化率から殺菌完了推定時間として算出する。本実施形態の充填完了推定部473は、加熱を終了した時間から殺菌完了推定時間までの冷却F値を冷却変化率から算出する。充填完了推定部473は、算出した殺菌完了推定時間及び冷却F値を充填加熱終了部474に出力する。
充填加熱終了部474は、殺菌完了推定時間が予め定めた基準値を超えている場合に、充填加熱弁461に指示を送って第一充填ライン42への蒸気Sの供給を終了させる。これにより、充填加熱終了部474は、加熱を終了させる。本実施形態の充填加熱終了部474は、UHT加熱終了部284と同様に、基準値として基準F値を用いる。つまり、充填加熱終了部474は、推定F値が基準F値を超えている場合に、充填加熱弁461に指示を送る。また、充填加熱終了部474は、推定F値が基準F値を超えている場合に、充填冷却弁462に指示を送って第一充填ライン42への空気Aの供給を開始させる。
充填加熱開始指示部475は、加熱を終了させた後に、殺菌完了推定時間に到達する前に基準温度Trよりも高い第二基準温度以下となった場合に、再び加熱を開始させる。充填加熱開始指示部475は、第一充填温度測定部44から入力される第一充填温度情報が第二基準温度以下となった場合に、充填加熱弁461に第一充填ライン42への蒸気Sの供給を再開するように指示を送る。また、充填加熱開始指示部475は、加熱を再開する際に充填冷却弁462に第一充填ライン42への空気Aの供給を終了するよう指示を送る。
上記のような無菌充填システム1では、製品製造時には、図1に示す製品液殺菌装置2で加熱して殺菌された後に冷却された製品液Mがアセプティックタンク3に送られる。アセプティックタンク3で一時的に貯留された製品液Mは、充填機4に送られて容器に充填される。
具体的には、製品製造時の製品液殺菌装置2では、アセプティックタンク3のレベルが設定レベルより低い場合は第二UHTライン弁241及び分岐ライン弁272が閉塞され、UHTタンク弁242が開放されている。アセプティックタンク3では、アセプティックタンク3のレベルが設定レベルより低い場合は第一タンクライン弁321が開放され、タンク加熱弁361、タンク冷却弁362、及び第二タンクライン弁331が閉塞されている。充填機4は、第一充填ライン弁421が開放され、充填加熱弁461、充填冷却弁462、及び第二充填ライン弁431が閉塞されている。
その結果、クッションタンク21に蓄えられた製品液Mは、第一ポンプ231によって第一UHTライン23内を圧送される。第一UHTライン23内を圧送された製品液Mは、UHT加熱部221及びUHT冷却部222に送られる。これにより、UHT加熱部221によって製品液M自体が加熱されて加熱殺菌され、UHT冷却部222で冷却される。冷却された製品液Mは、第二UHTライン24内から第一タンクライン弁321を介して第一タンクライン32内へ流入する。第一タンクライン32内に流入した製品液Mはアセプティックタンク本体31に送られて一時的に貯留される。アセプティックタンク本体31に貯留された製品液Mは、第二タンクライン33内から第一充填ライン弁421を介して第一充填ライン42内へ流入する。第一充填ライン42内に流入した製品液Mは充填機本体41に送られて容器に充填される。
次に、上記のような無菌充填システム1を加熱殺菌する際に殺菌方法S1について、製品液殺菌装置2、アセプティックタンク3、及び充填機4の場合を図1、図6、及び図7を参照してそれぞれ説明する。本実施形態の殺菌方法S1は、超高温加熱処理法(Ultra high temperture heating method、UHT法)によって、それぞれの対象物を加熱して殺菌することが多い。
製品液殺菌装置2の製造ラインを対象として殺菌する場合、製品製造を停止して殺菌方法S1が実施される。加熱殺菌時の製品液殺菌装置2は、製品液Mの供給が停止された状態で、図1に示す第二UHTライン弁241及び分岐ライン弁272が開放され、UHTタンク弁242が閉塞される。加えて、アセプティックタンク3では第一タンクライン弁321が閉塞される。これにより、第一タンクライン32への流体の流入が止められる。その後、UHT加熱部221を稼動させたまま、冷却部222を停止させる。この状態で、製品液殺菌装置2では、上流から製品液Mの代わりに水Wが供給される。供給された水Wは、UHT加熱部221で加熱されて冷却部222、第二UHTライン24の順に流れる。その結果、UHT加熱部221で加熱された熱水によって、冷却部222及び第二UHTライン24が加熱される(図6に示す加熱開始工程S2)。第二UHTライン24内を流れた熱水は、分岐ライン27に設けられた循環ベッセル271を介して第一UHTライン23内に送られ、再びUHT加熱部221に供給されるように循環し始める。
熱水が循環している間、第一UHT温度測定部25が測定している第二UHTライン24内の温度が、第一温度情報としてUHT温度取得部281に入力される。また、第二UHT温度測定部26が測定している温度が、第二温度情報としてUHT温度取得部281に入力される。これらにより、UHT温度取得部281は、第二UHTライン24の温度の情報を取得する(図6に示す温度取得工程S3)。
UHT加熱部221で加熱された熱水が循環し続けることで、冷却部222及び第二UHTライン24の温度が上昇し続ける。その結果、図7に示すように、第二UHT温度測定部26の測定する温度は、時間t1で基準温度Trを超える。第二温度情報が基準温度Trを超えることで、UHT時間計測部282は時間の計測を開始する、これにより、UHT時間計測部282は、温度が基準温度Tr以上となっている時間を加熱殺菌中の加熱殺菌時間として計測する(図6に示す時間計測工程S4)。
UHT時間計測部282が加熱殺菌時間を計測し始めることで、UHT完了推定部283は、冷却変化率と、第二温度情報と、加熱殺菌時間とに基づいて、加熱殺菌を終了させる殺菌完了推定時間及び冷却F値算出して推定し始める(図6に示す完了推定工程S5)。UHT完了推定部283で算出された殺菌完了推定時間及び冷却F値はUHT加熱終了部284に入力される。
UHT加熱終了部284は、入力された殺菌完了推定時間における推定F値が基準F値を超えているか否かを判定する。UHT加熱終了部284は、殺菌完了推定時間を算出した時点での加熱殺菌時間におけるF値と、冷却F値との合計値が基準F値を超えた時点で加熱を終了させる(図6に示す加熱終了工程S6)。本実施形態のUHT加熱終了部284は、推定F値が基準F値を超えている場合に、UHT加熱部221に指示を送って加熱を終了させるとともに、UHT冷却部222に指示を送って冷却を開始させる。
具体的には、図7に示すように、時間t2の時点での推定F値が基準F値を超えていると判定した場合、UHT加熱終了部284では、時間t3の情報が殺菌完了推定時間としてUHT完了推定部283から送られている。さらに、UHT加熱終了部284では、時間t2から時間t3までのF値が冷却F値としてUHT完了推定部283から送られている。そのため、UHT加熱終了部284では、実際に加熱殺菌時間として計測していた時間t1から時間t2までのF値と、時間t2から時間t3までF値として定められている冷却F値とを合計した推定F値が基準F値を超えているか否かを判定している。その結果、UHT加熱終了部284で推定F値が基準F値を超えていると判定された場合には、時間t2における温度TxでUHT加熱部221による加熱が終了し、UHT冷却部222による冷却が開始される。
冷却が開始されると、図1に示す製品液殺菌装置2では、まず分岐ライン弁272が閉塞されるとともにUHTタンク弁242が開放される。循環していた熱水は、UHT冷却部222で冷却されて殺菌された冷水となる。この状態で、製品液殺菌装置2では、この冷水がクッションタンク21を介して循環し始める。
冷水が循環している間に、仮に殺菌完了推定時間よりも前に第一温度情報が第二基準温度以下になってしまった場合には、UHT加熱開始指示部285によって加熱が殺菌完了推定時間まで再開される(図6に示す加熱再開工程S7)。
なお、加熱を再開した場合、本実施形態のように殺菌完了推定時間まで加熱を続けることに限定されるものではない。例えば、UHT完了推定部283で再び殺菌完了推定時間を算出して、推定F値に基づいて殺菌完了推定時間の前に加熱を終了させてもよい。
冷水がクッションタンク21を介して十分に循環した後、冷水を外部に外出するともに、水Wに代わって製品液Mがクッションタンク21に供給される。その結果、第一UHTライン23や第二UHTライン24を循環する流体が水Wから製品液Mに置換される。循環する流体がほとんど製品液Mに置換された状態で、第二UHTライン弁241が閉塞され、第一タンクライン弁321が開放される。これにより、製品液殺菌装置2では、製品製造が開始される。
アセプティックタンク3の製造ラインを対象として殺菌する場合も製品製造を停止して、製品液殺菌装置2と同様の手順で殺菌方法S1が実施される。具体的には、加熱殺菌時のアセプティックタンク3では、第一タンクライン弁321が閉塞され、第二タンクライン弁331及びタンク加熱弁361が開放される。第一タンクライン弁321が閉塞されることで、アセプティックタンク3では、製品液殺菌装置2からの流体の流入が止められる。タンク加熱弁361が開放されることで、第一タンクライン32に高温の蒸気Sが流入する。加えて、充填機4では、第一充填ライン弁421が閉塞される。第一充填ライン弁421が閉塞されることで、第一充填ライン42への流体の流入が止められる。
その結果、蒸気Sが第一タンクライン32、アセプティックタンク本体31、第二タンクライン33の順に流通して外部に排出される。蒸気Sが流通することで、第一タンクライン32、アセプティックタンク本体31、及び第二タンクライン33がそれぞれ加熱される(加熱開始工程S2)。
蒸気Sが流通していている間、第一タンク温度測定部34が測定しているアセプティックタンク本体31内の温度が、第一タンク温度情報として入力される。また、第二タンク温度測定部35が測定している第二タンクライン33内の温度が、第二タンク温度情報としてタンク温度取得部371に入力される。これらにより、タンク温度取得部371は、アセプティックタンク本体31及び第二タンクライン33の温度の情報を取得する(温度取得工程S3)。
蒸気Sが供給され続けることで、第一タンクライン32、アセプティックタンク本体31、及び第二タンクライン33の温度が上昇し続ける。その結果、第二タンク温度測定部35の測定する温度は、基準温度Trを超える。第二タンク温度情報が基準温度Trを超えることで、タンク時間計測部372は時間の計測を開始する、これにより、タンク時間計測部372は、温度が基準温度Tr以上となっている時間を加熱殺菌中の加熱殺菌時間として計測する(時間計測工程S4)。
タンク時間計測部372が加熱殺菌時間を計測し始めることで、タンク完了推定部373は、冷却変化率と、第二タンク温度情報と、加熱殺菌時間とに基づいて、加熱殺菌を終了させる殺菌完了推定時間及び冷却F値算出して推定し始める(完了推定工程S5)。タンク完了推定部373で算出された殺菌完了推定時間及び冷却F値はタンク加熱終了部374に入力される。
タンク加熱終了部374は、入力された殺菌完了推定時間における推定F値が基準F値を超えているか否かを判定する。タンク加熱終了部374は、殺菌完了推定時間を算出した時点での加熱殺菌時間におけるF値と、冷却F値との合計値が基準F値を超えた時点で加熱を終了させる(加熱終了工程S6)。本実施形態のタンク加熱終了部374は、タンク加熱弁361を閉塞させるとともに、タンク冷却弁362を開放させる指示を送る。
タンク冷却弁362から空気Aが第一タンクライン32に流入して冷却が開始されると、蒸気Sは第二タンクライン33から外部に排出される。アセプティックタンク3では、製品製造することが可能な温度まで冷却が完了することで、第二タンクライン弁331及びタンク冷却弁362が閉塞され、第一タンクライン弁321が開放される。また、充填機4では、第一充填ライン弁421が開放される。これにより、アセプティックタンク3では、製品製造が開始される。
また、仮に殺菌完了推定時間よりも前に、第一タンク温度情報が第二基準温度以下になってしまった場合には、タンク加熱開始指示部375によって加熱が殺菌完了推定時間まで再開される。
充填機4の製造ラインを対象として殺菌する場合も、製品製造を停止してアセプティックタンク3と同様の手順で殺菌方法S1が実施される。加熱殺菌時の充填機4では、第一充填ライン弁421が閉塞され、第二充填ライン弁431及び充填機4加熱弁が開放される。これにより、第一充填ライン弁421が閉塞されることで、充填機4では、アセプティックタンク3からの流体の流入が止められる。充填機4加熱弁が開放されることで、第一充填ライン42に高温の蒸気Sが流入する。その結果、蒸気Sが第一充填ライン42、充填機本体41、第二充填ライン43の順に流通して外部に排出される。蒸気Sが流通することで、第一充填ライン42、充填機本体41、及び第二充填ライン43がそれぞれ加熱される(加熱開始工程S2)。
蒸気Sが流通していている間、第一充填温度測定部44が測定した第一充填ライン42内の温度が、第一充填温度情報として入力される。また、第二充填温度測定部45が測定した第二充填ライン43内の温度が、第二充填温度情報として充填温度取得部471に入力される。これらにより、充填温度取得部471は、第一充填ライン42及び第二充填ライン43の温度の情報を取得する(温度取得工程S3)。
蒸気Sが供給され続けることで、第一充填ライン42、充填機本体41、及び第二充填ライン43の温度が上昇し続ける。その結果、第一充填温度測定部44の測定する温度は、基準温度Trを超える。第二充填温度情報が基準温度Trを超えることで、充填時間計測部472は時間の計測を開始する、これにより、充填時間計測部472は、温度が基準温度Tr以上となっている時間を加熱殺菌中の加熱殺菌時間として計測する(時間計測工程S4)。
充填時間計測部472が加熱殺菌時間を計測し始めることで、充填完了推定部473は、冷却変化率と、第二充填温度情報と、加熱殺菌時間とに基づいて、加熱殺菌を終了させる殺菌完了推定時間及び冷却F値算出して推定し始める(完了推定工程S5)。充填完了推定部473で算出された殺菌完了推定時間及び冷却F値は充填加熱終了部474に入力される。
充填加熱終了部474は、入力された殺菌完了推定時間における推定F値が基準F値を超えているか否かを判定する。充填加熱終了部474は、殺菌完了推定時間を算出した時点での加熱殺菌時間におけるF値と、冷却F値との合計値が基準F値を超えた時点で加熱を終了させる(加熱終了工程S6)。本実施形態の充填加熱終了部474は、充填加熱弁461を閉塞させるとともに、充填冷却弁462を開放させる指示を送る。
充填冷却弁462から空気Aが第一充填ライン42に流入して冷却が開始されると、蒸気Sは第二充填ライン43から外部に排出される。充填機4では、製品製造することが可能な温度まで冷却が完了することで、第二充填ライン弁431及び充填冷却弁462が閉塞される。また、充填機4では、第一充填ライン弁421が開放される。これにより、充填機4では、製品製造が開始される。
また、仮に殺菌完了推定時間よりも前に第一充填温度情報が第二基準温度以下になってしまった場合には、充填加熱開始指示部475によって加熱が殺菌完了推定時間まで再開される。
上記のようなUHT制御装置28、タンク制御装置37、及び充填制御装置47を備えた無菌充填システム1によれば、加熱を終了させた後の基準温度Trを下回るまでの時間に基づく冷却F値を考慮して算出された推定F値が、加熱殺菌を終了させる基準F値を超えているか否かを判定している。そのため、加熱を終了して冷却を行っている時間も加熱殺菌を実施している時間として利用することができる。つまり、加熱殺菌が完全に完了する前に加熱を終了させ、加熱殺菌中に冷却することができる。これにより、加熱殺菌を開始してから、製品の製造を再開可能な温度に低下させるまでの時間を短縮することができる。したがって、短時間で殺菌を完了させて製品の製造を再開させることができる。
また、殺菌完了推定時間から算出された推定F値と、基準F値とに基づいて加熱が終了される。そのため、時間だけで判定する場合に比べて、F値に基づいて殺菌効果を管理することで高い精度で加熱を終了させるタイミングを把握することができる。これにより、加熱殺菌に必要な時間自体を短縮することができる。
また、UHT加熱開始指示部285、タンク加熱開始指示部375、及び充填加熱開始指示部475によって、加熱を終了した後に、外気等の外的要因によって温度が想定よりも早く低下してしまった場合であっても、温度が殺菌完了推定時間よりも前に基準温度Tr以下になってしまうことを防ぐことができる。これにより、高い精度で基準温度Tr以上に製造ラインの温度を保つことができ、加熱殺菌を確実に実施することができる。
また、第一UHT温度測定部25及び第一充填温度測定部44が冷却用の流体が供給される場所に近い位置に配置されている。そのため、温度が下がり始める部分に近い位置の温度を測定することができる。そのため、殺菌対象となる製造ラインのうち、温度が初めに下がる部分で温度を測定することができる。これにより、殺菌対象となる製造ラインの一部が基準温度Trを下回って十分に加熱殺菌できずに、加熱殺菌が終了してしまうことを防ぐことができる。
また、第一タンク温度測定部34がアセプティックタンク本体31の流体が流入する流入口からずれた位置に配置されている。そのため、第一タンク温度測定部34がアセプティックタンク本体31に流入する流体に直接曝されることを防ぐことができる。これにより、流体の影響をうけて第一タンク温度測定部34が測定している温度が、実際のアセプティックタンク本体31の温度よりも低くなってしまうことを抑えることができる。その結果、殺菌対象となる製造ラインの温度を高い精度で把握することができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
なお、殺菌システムは、本実施形態のように無菌充填システム1の各構成対して一体に設けられていることに限定されるものではなく、殺菌対象となる対象物を加熱して殺菌するものであればよい。例えば、殺菌システムは、製品液殺菌装置2、アセプティックタンク3、及び充填機4とは別に設けられていてもよい。
また、製品液殺菌装置2の熱交換器22は、本実施形態のように一つのみを有することに限定されるものではなく、複数有していてもよい。つまり、加熱部221や冷却部222が複数設けられていてもよい。
また、アセプティックタンク3や充填機4において、加熱部221として、タンク加熱弁361や充填加熱弁461のように弁の開度を制御することに限定されるものではない。例えば、アセプティックタンク3や充填機4がそれぞれ個別に製品液殺菌装置2のように加熱部221を有しており、この加熱部221を直接制御してもよい。同様に、アセプティックタンク3や充填機4において、冷却部222も、タンク冷却弁362や充填冷却弁462のように弁の開度を制御することに限定されるものではない。
また、製品液殺菌装置2、アセプティックタンク3、及び充填機4において、温度測定部は本実施形態のように二つ設けられていることに限定されるものではない。例えば、温度測定部は、一つのみ設けられていてもよく、三つ以上の複数設けられていてもよい。