以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、以下で説明する態様は一例であり、説明される機能を実現するように構成された様々な形態の装置、システム、方法、プログラム、媒体等が、本発明の権利範囲に含まれる。
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、例えば、携帯端末、印刷装置(MFP:Multi−Function PrinterまたはMulti−Function Peripheral)、及びアクセスポイント(AP)を含んで構成される。ただし、これに限られず、これ以外の装置が、図示される各装置に加えて又は各装置に代えて、含まれてもよい。
携帯端末200は、例えば持ち運び可能で、無線LAN(WLAN)による通信機能を有する無線通信装置である。なお、ここでは、無線LANによる通信機能によって、例えばIEEE802.11規格シリーズに準拠した無線LANシステムにおける、データ(パケット)通信が行われるものとする。携帯端末200は、無線LANの通信機能を用いて、Wi−Fi Directをベースにした通信、ソフトウェアAPモード、インフラストラクチャモードによる通信などを行うことができる。
なお、携帯端末200は、IEEE802.11規格シリーズに準拠した無線LAN以外による無線通信機能を有していてもよい。例えば、携帯端末200は、IEEE802.11規格シリーズ以外の規格に従う無線LANや、無線LAN以外の通信機能を有しうる。ただし、携帯端末200は、他の装置(アクセスポイント)を介して相手装置と無線通信を行う第1のモードと、他の装置を介さずに相手装置と直接的に無線通信を行う第2のモードとのいずれかで動作することができるものとする。さらに、携帯端末200は、第1のモード及び第2のモードによる無線通信を同時に行うことができるものとする。携帯端末200は、PDA(Personal Digital Assistant)等の個人情報端末、携帯電話、デジタルカメラ等でありうる。
印刷装置(MFP300)は、携帯端末200と無線通信する通信機能を有し、その他、読取機能(スキャナ)やFAX機能、電話機能等をも有しうる。ここで、無線通信機能は、上述の携帯端末200が有する通信機能に対応する機能であるものとする。すなわち、MFP300は、例えば携帯端末200が無線LANによる通信機能を有する場合は同一規格の無線LANによる通信機能を有するものとする。本実施形態では、MFP300は、印刷機能に加え、読取機能を有するものとするが、これに限られず、印刷機能のみを有してもよいし、印刷等の画像処理と関係のない機能を有していてもよい。
アクセスポイント400は、無線LANによる通信機能を有し、自身への接続を許可した無線LANのステーションとして機能する通信装置同士(本実施形態では、携帯端末200とMFP300)の通信を中継する。アクセスポイント400の周囲に存在する通信装置(ステーション)は、アクセスポイント400を介して、インフラストラクチャモードによる通信を行うことができる。なお、携帯端末200が、無線LANでない通信機能によって、他の装置を介して相手装置と通信する場合、アクセスポイント400は、当該他の装置と置き換えられうる。
携帯端末200とMFP300は、各々が有する無線LANによる通信機能を用いて、アクセスポイント400を介したインフラストラクチャモードの無線通信を行うことができる。また、携帯端末200とMFP300は、Wi−Fi Direct等に従ったP2Pモードの無線通信を行うこともできる。なお、携帯端末200とMFP300は、後述するように、無線LANを経由して複数の印刷サービスに対応した処理を実行することができる。
(装置構成)
図2に、携帯端末200の外観の例を示す。本実施形態では、携帯端末200がスマートフォンである場合について説明する。スマートフォンとは、カメラ、ウェブブラウザ、電子メール機能等の様々な機能を搭載した多機能型の携帯電話のことである。ただし、携帯端末200はスマートフォンでなくてもよい。例えば、携帯端末200は、デジタルカメラ、携帯端末、ノートPC、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)、音楽再生デバイス等であってもよい。
携帯端末200は、例えば、表示部202と操作部203とが一体化されたタッチパネルを有し、そのタッチパネルを固定又は保護するベゼル201の部分を含みうる。なお、ベゼル201の裏面には無線LAN等による通信を行うためのアンテナが備えられてもよく、携帯端末200は、このアンテナと無線通信回路等を用いて通信を行うことができる。表示部202及び操作部203は、例えば、LCD方式の表示機構を備えたタッチパネル式のディスプレイでありうる。例えば、表示部202がボタンアイコンやソフトウェアキーボードの表示を行い、ユーザがそれらの箇所に触れることによって、操作部203が操作イベントを検知しうる。電源キー204は、電源のオン及びオフ等の操作を受け付けるためのハードキーである。
図3に、MFP300の外観の例を示す。図3において、原稿台301は、スキャナ(読取部)で読み取らせる原稿を載せるガラス状の透明な台である。原稿蓋302は、スキャナで読取を行う際に原稿を押さえるため、及び、読取の際に原稿を照射する光源からの光が外部に漏れないようにするための蓋である。印刷用紙挿入口303は、様々なサイズの印刷に用いるための用紙を、MFP300の内部に取り込ませるための挿入口である。印刷用紙挿入口303にセットされた用紙は、一枚ずつ印刷部に搬送され、印刷部で印刷が行われた後に印刷用紙排出口304から排出される。操作表示部305は、文字入力キー、カーソルキー、決定キー、取り消しキー等のキーと、LED(発光ダイオード)やLCD(液晶ディスプレイ)等を含んで構成される。ユーザは、操作表示部305を介して、MFPとしての各種機能の起動や各種設定を行うことができる。操作表示部305は、タッチパネルで構成されてもよい。筐体306は、MFP300を構成する回路や印刷機構等を収納しており、無線LANで通信するためのアンテナ及び無線通信回路も筐体の中に収納されている。なお、本実施形態では、MFP300を用いて説明をするが、プリンタであれば、インクジェットプリンタ、フルカラーレーザービームプリンタ、モノクロプリンタ等であってもよい。また、MFP300の代わりに、複写機やファクシミリ装置、スマートフォン、携帯端末、ノートPC、タブレット端末、PDA、デジタルカメラ、音楽再生デバイス、ストレージ等が用いられても良い。その他、単一の機能を備えるシングルファンクションプリンタ(以後、SFP)が用いられても良い。なお、MFP300は、単に通信装置と呼ぶこともある。
図4(a)〜図4(c)に、MFPの操作表示部305において表示される画面の一例を模式的に示す。図4(a)は、MFPが電源オンとなり、印刷やスキャン等の動作をしていない状態(アイドル状態)を示すホーム画面である。この状態においてユーザからのキー操作やタッチパネル操作を受け付けることにより、コピー、スキャン、又は、インターネット通信を利用したクラウド機能の、メニュー表示、各種設定、又は機能に関する処理の実行に移ることができる。ユーザによるキー操作やタッチパネルの操作受け付けることにより、操作表示部305は、図4(a)のホーム画面から、シームレスに図4(a)とは異なる機能(図4(b))を表示することができる。図4(b)は、その一例であり、プリント若しくはフォト機能の実行、又はLAN設定の変更が実行可能な画面の例を示している。図4(c)は、操作表示部305が図4(b)の画面においてLAN設定の選択を受け付けた場合に、表示される画面の例である。この画面から「無線LAN」が選択されることで、インフラストラクチャモードの有効/無効を設定できる。また、「無線ダイレクト」が選択されることで、Wi−Fi Directモードの有効/無効を設定でき、「有線LAN」を選択することで有線LANの有効/無効を設定できる。すなわち、ユーザは、図4(c)の画面を用いて、各種のLAN設定を変更できる。
図5に、携帯端末200の構成例を示す。携帯端末200は、一例において、装置自身のメインの制御を行うためのメインボード501と、無線LANによる通信のためのWLANユニット517とを有する。
メインボード501において、CPU(中央演算処理部)502は、システム制御部であり、携帯端末200の全体の動作を制御する。以下に示す携帯端末200の処理は、例えば、CPU502の制御によって実行される。なお、携帯端末200は、その少なくとも一部の機能を実現するために、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等を用いてもよい。
ROM503は、CPU502が実行する制御プログラムや組込オペレーティングシステム(OS)のプログラム等を記憶する。本実施形態では、ROM503に記憶されている各制御プログラムが、ROM503に記憶されている組込OSの管理下で、スケジューリングやタスクスイッチ等のソフトウェア制御を行う。RAM504は、SRAM(Static RAM)等によって構成され、プログラム制御変数等のデータを記憶し、また、ユーザが登録した設定値や携帯端末200の管理データ等のデータを記憶する。RAM504には、各種ワーク用バッファ領域が設けられる。画像メモリ505は、DRAM(Dynamic RAM)等のメモリによって構成され、WLANユニット517を介して受信した画像データや、データ蓄積部513から読み出された画像データをCPU502で処理するために一時的に記憶する。不揮発性メモリ512は、フラッシュメモリ(flash memory)等のメモリによって構成され、携帯端末200の電源がオフとなってもデータを記憶し続ける。なお、これらのようなメモリ構成は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば、画像メモリ505とRAM504とが共有されてもよいし、データ蓄積部513においてデータのバックアップ等が行われてもよい。また、画像メモリ505は、DRAMによって構成されると説明したが、ハードディスクや不揮発性メモリ等の他の記憶媒体によって構成されてもよい。
データ変換部506は、種々の形式のデータの解析、及び、色変換又は画像変換等のデータ変換を行う。電話部507は、スピーカ部514を介して入出力される音声データを処理することにより、音声通話用の信号を生成して通信回線へ送出し、または通信回線から受信した信号からの音声データへの復元を行う。操作部508は、図2の操作部203を介して受け付けた操作を表す信号を生成して出力する。GPS(Global Positioning System)509は、携帯端末200の現在の緯度や経度等の位置情報を取得する。表示部510は、図2の表示部202の表示内容を電子的に制御しており、各種入力操作用の画面の表示、MFP300の動作状況の表示、ステータス状況の表示等を行うことができる。
カメラ部511は、レンズを介して入力された画像を電子的に記録して符号化する機能を有している。カメラ部511で撮影された画像に関する画像データは、データ蓄積部513に保存される。データ蓄積部513は、上述のように各種データが蓄積されるストレージ機器でありうる。スピーカ部514は、電話機能のための音声を入力または出力する機能、及び、アラーム通知等のその他の機能を実現する。電源部515は携帯端末200の内部に収納可能な大きさの電池であり、装置内への電力供給制御を行う。携帯端末200は、電池に残量が無い電池切れ状態、電源キー205が押下されていない電源オフ状態、通常起動している起動状態、及び、起動しているが省電力になっている省電力状態のいずれかの電源状態をとりうる。
WLANユニット517は、無線LANの規格に準拠した無線通信を行うための、アンテナ及び通信回路(例えばベースバンド処理機能及びRF処理機能を有する回路)を含んで構成される。携帯端末200は、WLANユニット517を介して、MFP等の他デバイスを相手装置として無線LANによるデータ通信を行う。WLANユニット517は、データをパケットに変換して他デバイスに無線でパケット送信を行うことができ、外部の他デバイスから無線で送信されたパケットを受信して、元のデータに復元してCPU502に対して送信することができる。
メインボード501内の各種構成要素は、CPU502が管理するシステムバス518を介して、相互に接続される。また、WLANユニット517も、バスケーブル516を介してメインボード501内のシステムバス518に接続される。したがって、CPU502の制御下で、メインボード501内の各種構成要素で生成又は記憶されたデータがWLANユニット517を介して送信され、WLANユニット517で受信されたデータがメインボード501内の各種構成要素に受け渡されうる。
なお、携帯端末200は、セルラ通信のための通信機能等、一般的なスマートフォンが有する機能を有しうる。
図6に、MFP300の構成例を示す。MFP300は、一例において、装置自身のメインの制御を行うためのメインボード601と、無線LANによる通信のためのWLANユニット616、有線通信のための有線LANユニット617、及びUSB接続のためのUSBユニット615を有する。
メインボード601において、CPU(中央演算処理部)602は、システム制御部であり、MFP300の全体の動作を制御する。以下に示すMFP300の処理は、例えば、CPU602の制御によって実行される。なお、MFP300は、その少なくとも一部の機能を実現するために、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等を用いてもよい。
ROM603は、CPU602が実行する制御プログラムや組込オペレーティングシステム(OS)のプログラム等を記憶する。本実施形態では、ROM603に記憶されている各制御プログラムが、ROM603に記憶されている組込OSの管理下で、スケジューリングやタスクスイッチ等のソフトウェア制御を行う。RAM604は、SRAM(Static RAM)等によって構成され、プログラム制御変数等のデータを記憶し、また、ユーザが登録した設定値やMFP300の管理データ等のデータを記憶する。RAM604には、各種ワーク用バッファ領域が設けられる。不揮発性メモリ605は、フラッシュメモリ(flash memory)等のメモリによって構成され、MFP300の電源がオフとなってもデータを記憶し続ける。画像メモリ606は、DRAM(Dynamic RAM)等のメモリによって構成され、WLANユニット616を介して受信した画像データや、符復号処理部611において処理された画像データなどを蓄積する。また、携帯端末200のメモリ構成と同様に、MFP300のメモリ構成は上述の構成に限定されるものではない。
読取制御部607は、読取部609(例えば、CISイメージセンサ(密着型イメージセンサ))を制御して、図3の原稿台301に置かれた原稿を光学的に読み取り、これを電気的な画像データに変換した画像信号を生成して出力する。このとき、読取制御部607は、2値化処理や中間調処理等の各種画像処理を施した後の画像データを出力してもよい。データ変換部608は、種々の形式のデータの解析や、画像データから印刷データへの変換等を行う。
操作表示部610は、図3の操作表示部305を介して受け付けたユーザ操作を表す信号を生成し、また、操作表示部305に表示させる情報の制御を行う。操作表示部610は、例えば、初期状態において図4(a)の画面を表示し、ユーザによる所定の処理を受け付けたことに応じて、図4(b)のような画面を表示し、又は、所定の処理を行うように指示する信号をメインボード内の各処理部へ送信しうる。符復号処理部611は、MFP300において取り扱われる画像データ(JPEG、PNG等)の符号化処理並びに復号処理、及び拡大縮小処理を行う。
給紙部613は、用紙を保持し、印刷制御部614からの制御によって印刷のための用紙の給紙を行う。給紙部613は、複数種類の用紙を1つの装置に保持するために、複数の給紙部を用意することができる。この場合、印刷制御部614により、どの給紙部から給紙を行うかの制御を行うことができる。印刷制御部614は、印刷対象の画像データに対して、スムージング処理、印刷濃度補正処理、色補正等の各種画像処理を施し、処理後の画像データを印刷部612へ出力する。印刷部612は、例えば、インクタンクから供給されるインクをプリントヘッドから吐出させて画像を印刷するインクジェットプリンタとして機能する回路及び機構でありうる。また、印刷制御部614は、印刷部612の情報を定期的に読み出してRAM604に記憶された情報を更新する制御をも行いうる。例えば、印刷制御部614は、インクタンクの残量やプリントヘッドの状態等の、RAM604に記憶されたステータス情報を更新することができる。
USBユニット615は、USBケーブルを介して外部のPC等と接続するためのインタフェース及び回路を含んで構成される。USBユニット615は、USB規格に準拠した通信を実現するように構成されており、USBユニット615により、USBケーブルを介して接続されたPC等の外部機器との間で1対1の通信が可能となる。
NW(ネットワーク)サブシステム620は、CPU(中央演算処理部)602の制御負荷を低減させるための、ネットワーク通信関連の入出力制御を司るサブシステムである。RAM604の一部には、NWサブCPU621によって実行される制御コードが保存され、CPU602のブートシーケンスにおいて、RAM604からNWサブシステム620内のRAM622へと、その制御コードがDMA転送される。制御コードは、NWサブCPU621のリセット解除後に、NWサブCPU621によって実行され、それにより、ネットワーク通信関連の入出力制御が実行される。NWサブシステム内の各モジュール(NWサブCPU621、RAM622、UHOSTモジュール623)は、メインボード601のシステムバス618とは分離されたローカルバス624を介して相互接続される。NWサブシステム620は、ネットワーク通信関連の機能のうち、特にハードウェアレイヤに近い層の機能を担うことにより、メインボード601内の他のモジュールへの影響を最小化したネットワーク制御を行うことを可能とする。
WLANユニット616は、携帯端末200のWLANユニット517と同様であるため、詳細な説明については省略する。WLANユニット616は、例えばUHOSTモジュール623とUSBバス625を介して、NWサブシステム620に接続される。有線LANユニット617は、例えばIEEE802.3規格シリーズに準拠したデータ(パケット)通信を行うための回路及び機構を含んで構成される。例えば有線LANユニット617は、Ethernet(登録商標)インタフェースを含み、そのインタフェースに接続されたケーブルによってLANに接続され、同じくLANに接続されたPC等の外部機器との通信を可能とする。また、有線LANユニット617は、有線LANを通じて、その有線LANに接続しているアクセスポイントに接続している無線通信装置等と通信することもできる。有線LANユニット617は、NWサブシステム620内のバス624を介して、メインボード601と接続される。なお、メインボード601内の各種構成要素は、CPU602が管理するシステムバス618を介して、相互に接続される。
(無線接続方式について)
本実施形態のMFP300は、他の装置を介さずに相手装置と直接通信を行うP2Pモードと、通信装置がアクセスポイント等の他の装置を介して相手装置と間接的に通信を行うインフラストラクチャモードとを、無線LANにおける接続方式として用いうる。なお、インフラストラクチャモードのことを、以下では簡略化して「インフラモード」と呼ぶ。
P2Pモードには、モードA(ソフトウェアAPモード)及びモードB(Wi−Fi Directモード)というさらなるモードが存在する。ソフトウェアAPモードでは、通信装置と相手装置とのうちのいずれか一方が、アクセスポイントの機能をソフトウェアにより実現してソフトウェアAPとして機能し、他方の装置はそのソフトウェアAPに接続するクライアントとして動作する。例えば、携帯端末200が、各種サービスを依頼する役割を果たすクライアントとなり、MFP300がソフトウェアAPとなる。
本実施形態では、MFP300は、P2PのモードA(ソフトウェアAPモード)において、無線経由でLANの設定変更を受け付けるものとする。このモードでは、Wi−Fi Directをサポートしていない携帯端末もMFP300に接続可能であり、また、特段の認証・暗号処理も行われないため、どのような携帯端末も容易に接続できる。以下では、このソフトウェアAPモードでLANに関する設定を受け付ける専用のモードのことを、ケーブルレスセットアップモードと呼ぶ。なお、MFP300は、このモードで動作する場合、LAN設定変更のみの通信が可能であり、プリンタの印刷サービス等を実行する事はできないものとする。ここで、ケーブルレスセットアップモードの動作手順について説明する。ユーザは、MFP300の操作表示部305を操作してケーブルレスセットアップモードを有効化する。この操作により、MFP300は、ケーブルレスセットアップモード用のソフトウェアAPを起動する。上述した通り、ケーブルレスセットアップにより起動されたソフトウェアAPには特段の認証・暗号処理が不要であるため、携帯端末はMFP300のソフトウェアAPと接続できる。ユーザは、携帯端末にインストールされているLAN設定専用のアプリケーションを用いてMFP300へのLAN設定を行う。このユーザの操作により設定された内容が、携帯端末からMFP300へ送信されることで、ユーザが所望とするLAN設定をMFP300に設定できる。なお、ケーブルレスセットアップのための無線接続として特段の認証・暗号処理も行われないと上述したが、別の方法が用いられてもよい。例えば、ユーザは、ケーブルレスセットアップモード用のSSIDやパスワードが埋め込まれたLAN設定専用のアプリケーションを、携帯端末にインストールする。そして、LAN設定専用のアプリケーションが上述したSSIDやパスワードを使ってMFP300のソフトウェアAPと接続する処理を行うことで、ユーザが特段の操作を行うことなく、携帯端末がMFP300のソフトウェアAPと無線接続してもよい。
また、本実施形態に係るMFP300は、P2PのモードAとモードBとで動作可能であるが、ケーブルレスセットアップモードを除いてモードAで動作する事はないように構成されているものとする。したがって、携帯端末200がMFP300の印刷サービスを利用するためにP2PでMFP300に接続する際には、モードBのWi−Fi Directで接続することとなる。
Wi−Fi Directモードでは、通信装置と相手装置との間で、いずれがP2P GroupOwner(GO)として動作し、いずれがP2P Client(CL)となるかを決定する。すなわち、通信装置と相手装置の両者の間でネゴシエーション処理が実行される。なお、Wi−Fi DirectモードにおけるP2P GroupOwner(GO)として動作する装置は、APのような動作を行い、CLは、APに接続するステーション(STA)のような動作を行う。一般的に、GOとして動作する装置は、CLとして動作する装置から送信された機器探索リクエストコマンドに応じて機器探索応答コマンドを送信する。また、GOとして動作する装置は、GroupOwnerNegotiationで得られたCLのチャネル情報と、自身が使用できるチャネルとを照らし合わせて、Wi−Fi Directモードにおいて使用するチャネルを決定する。そして、通信装置と相手装置は、GOとCLとの役割を決定した後にパラメータ交換フェーズに移行して、Wi−Fi Directによる通信を行うためのパラメータを交換する。そして、通信装置と相手装置は、交換したパラメータに基づいて、残りの無線接続の処理、例えばIP接続の処理を行う。なお、パラメータ交換フェーズでは、例えばWi−Fi Protected Setupを用いて、自動的に無線LANのセキュリティに係るパラメータが交換される。以上のように、Wi−Fi Directモードは、通信端末利用者にとっては、接続のためのパスワードや暗号化方式の設定が不要でありながらセキュリティを確保できる利便性の高いモードと言える。
インフラストラクチャモードでは、携帯端末200とMFP300とのそれぞれが、ネットワークを統括するアクセスポイント400と接続して、アクセスポイント400を介して通信する。したがって、MFP300を入手する以前からアクセスポイントに携帯端末200を接続して利用しているユーザや、携帯端末200を介してインターネット接続することを望むユーザにとって有用な接続モードと言える。
(インタフェースの切り替え)
MFP300は、図4(C)に示す本体操作画面を介して、またはケーブルレスセットアップを介して、使用するIFの有効/無効を設定可能となるように構成されている。本実施形態では、有線LANの使用と無線LANの使用は排他的な関係にあり、有線LANを有効にした状態で、同時に無線LANを有効にする事はできないものとする。また、逆に無線LANが有効な状態で、同時に有線LANを有効にする事もできないものとする。ただし、有線LANと無線LANとを同時に無効に設定する事はできる。USB IFはユーザによる設定で無効にはできないが、起動時に常に有効化されるものとし、有線LAN又は無線LANと同時に使用することができるように構成されているものとする。
無線LANには、上述のように、P2Pモード(Wi−Fi Directモード)とインフラストラクチャモードとを用いることができ、これらは個別に有効/無効の設定を行うことができる。また、Wi−Fi Directモードとインフラストラクチャモードとが同時に(並行して)有効化される事ができる。この有効化により、MFP300は、Wi−Fi Directによる接続とインフラストラクチャモードによる接続とを同時に行う事ができる。すなわち、MFP300は、無線ルータ等の外部装置(アクセスポイント)を介した相手装置との接続(インフラ接続)と、外部装置を介さない相手装置との直接的な接続(P2P接続、Wi−Fi Directモード)とを並行して確立することができる。なお、このように、インフラ接続とP2P接続とを並行して確立する動作を、以下では同時動作と呼ぶ。設定された有効/無効の状態は、例えば、不揮発性メモリ605に保存される。これにより、MFP300は、電源がオフとされた後に次に起動された時に、この不揮発性メモリ605を参照して、保存された情報に基づいて各IFの有効化を行う。
本体のLAN設定項目を初期化すると、Wi−Fi Directモードおよびインフラストラクチャモードは共に無効となる。また、初期化時には、有線LANも無効となり、有線LANと無線LANとが共に使用されない状態となる。ユーザは、LAN設定を初期化すると、所望のIFを個別に有効化する設定を行うこととなる。
初期化状態でLANの各IFが無効となるのは、LAN設定を初期化してまで設定変更をする事を望むユーザに対して、ユーザの意図しない設定項目が有効になっていると、かえって設定の混乱を招くためである。
(着荷)
MFP300は、本体を購入したユーザが初めて電源を投入した際に、通常とは異なる着荷専用の処理シーケンス(初期設定シーケンスとも呼ぶ)を起動するように構成されている。これは、例えば、MFP300の工場からの出荷時は、印刷部612にインクタンクやプリントヘッド等が装着されない状態で出荷されているからである。すなわち、着荷での起動というユーザによる初めての操作の直後に、同梱されたインクタンクやプリントヘッド等を装着する処理をユーザに促すなど、MFP300を使用可能とするための準備のための特殊な処理シーケンスが起動される。MFP300は、自身が着荷状態であるか否かを、不揮発性メモリ605に保存されるフラグ(初期設定情報とも呼ぶ)によって知ることができる。このフラグは、MFP300の使用準備が完了したことに応じて状態が変わり、MFP300は、使用準備の完了以降は、着荷専用の処理シーケンスを起動しない。
(処理の流れ)
続いて、本実施形態に係るMFP300の着荷時のIF設定処理の流れについて、図7及び図8を用いて説明する。なお、着荷時にはIF設定以外の着荷シーケンスも実行されるが、本実施形態に直接関係しない処理についてはここでは説明しない。
まず、MFP300は、電源が投入されると、不揮発性メモリ605に保存されている着荷フラグを確認し、現在、着荷状態であるか否かを判定する(S801)。この着荷フラグは、MFP300の工場出荷時に特定の値にあらかじめセットされている。MFP300は、着荷状態ではないと判定した場合(S801でNO)は、不揮発性メモリに保存されたIFの有効/無効設定に従ってIFの有効化を行う(S812)。そして、MFP300は、図4(a)に示したような通常の起動時待機画面を表示してユーザの操作を待ち受ける(S813)。S812およびS813は、ユーザの通常使用時の起動処理に相当する。
MFP300は、着荷状態であると判定した場合(S801でYES)は、図7に示すような、使用するIFをユーザに選択させる画面を表示する(S802)。MFP300は、この画面が表示された状態において、ユーザによる画面に表示された項目からの使用予定のIFの選択を受け付ける。そして、MFP300は、ユーザ操作により無線LANが選択されたか否かの判定(S803)、有線LANが選択されたか否かの判定(S810)を行う。なお、図8においては、無線LANが選択されたか否かの判定(S803)において、選択されていないと判定された場合(S803でNO)に、有線LANが選択されたか否かの判定(S810)を行うように図解しているが、これに限られない。例えば、これらの判定は一括して行われてもよく、この場合、例えばS803において、無線LANが選択された場合、処理はS804へ進み、有線LANが選択された場合、処理はS811へ進み、いずれも選択されなかった場合、処理はS809に進む。なお、いずれも選択されなかった場合とは、USB接続が選択された場合である。S809では、MFP300は、USBを有効化して着荷時のIF設定処理を終える。
図8に戻り、無線LANが選択されず(S803でNO)、有線LANが選択された場合(S810でYES)、MFP300は、有線LANを有効化する処理を行う(S811)。また、MFP300は、有線LANが有効に設定されたことに応じて、不揮発性メモリ605にその設定を保存し、その後の通常起動時には、その保存された設定を有効化するIFとして参照するようにする。
一方、無線LANが選択された場合(S803でYES)、MFP300は、ケーブルレスセットアップモードを起動する(S804)。無線LANが選択された場合、MFP300は、PCや携帯端末を用いてケーブルレスセットアップにて設定情報を送信するように促すメッセージを表示する。なお、本フローチャートの処理として、MFP300が、ケーブルレスセットアップモードにおいて、無線LANのインフラモード接続に必要な設定を受け付けた場合について説明する。例えば、ユーザの使用する携帯端末200上で動作するLAN設定専用のアプリケーションによって、アクセスポイントの特定に必要な情報や、接続のためのセキュリティ情報がMFP300に送信され、MFP300は、これらの情報を受け付ける。なお、アクセスポイントの特定に必要な情報は、携帯端末200が接続しているアクセスポイントのSSIDである。また、接続のためのセキュリティ情報は、携帯端末200が接続しているアクセスポイントのパスワードである。この専用アプリケーションは、LANに関する知識のあまりないユーザでも、容易にMFP300に接続し、設定内容の詳細を知ることなく必要な設定が可能なように構成されうる。ここで、図9を用いてLAN設定用アプリケーションによって表示される画面の一例を説明する。ボタン903は、MFP300の通信モードをインフラストラクチャモードに設定し、無線ルーター等の外部アクセスポイントを介してMFP300と携帯端末200を接続させる(インフラ接続させる)ためのボタンである。ボタン904は、MFP300のWi−Fi Direct機能を有効化し、無線ルーター等の外部アクセスポイントを介さずMFP300と携帯端末200とを接続させる(P2P接続させる)ためのボタンである。ボタン902は、インフラ接続とP2P接続とのうち、携帯端末200自身の接続状態に応じて、携帯端末200により自動で決定される接続形態でMFP300と携帯端末200とを接続させるためのボタンである。例えば、携帯端末200は、ボタン902への入力を受け付けた際に、携帯端末200自身が外部アクセスポイントと接続している場合、インフラ接続によってMFP300と携帯端末200とを接続させることを決定する。また、携帯端末200は、ボタン902への入力を受け付けた際に、携帯端末200自身が外部アクセスポイントと接続していない場合、P2P接続によってMFP300と携帯端末200とを接続させることを決定する。なお、図9の画面には、上述した設定以外の設定の指示を受け付けるためのボタンが表示されていてもよい。携帯端末200は、上述のような画面を介してユーザから入力されたLAN設定変更の内容を、あらかじめ定められた通信プロトコルおよびLAN設定用に規定されたコマンド(LAN設定コマンド)を用いてMFP300に送信する。MFP300は、上述のS805において、このコマンドを受信する。MFP300は、受信されたコマンドに基づいて、LAN設定を変更する。例えば、MFP300と携帯端末200とをインフラ接続させる場合、MFP300に送信されるLAN設定コマンドには、MFP300をインフラモードに移行させるための指定コマンド、携帯端末200が接続しているアクセスポイントのSSID、パスワードが含まれる。MFP300をP2Pモードに移行させるための設定コマンドには、例えば、MFP300のWi−Fi Direct機能を有効化するための設定コマンドが含まれる。
MFP300は、設定を受信すると、ケーブルレスセットアップモードを終了する(S806)。そして、MFP300は、S805で受信した設定値に従って、インフラストラクチャモードによる通信を起動し(S807)、アクセスポイントへの接続処理を行う。具体的には、S805にて携帯端末200が接続しているアクセスポイントのSSIDとパスワードがMFP300に通知される。MFP300は、これらの情報を使ってアクセスポイントと接続する。そして、MFP300は、インフラストラクチャモードが有効に設定されたことに応じて、不揮発性メモリ605にその設定(アクセスポイントへの接続に使用したSSID、パスワードも含む)を保存する。
続いて、MFP300は、Wi−Fi Directモードを有効化する処理を行う(S808)。そして、MFP300は、Wi−Fi Directモードが有効に設定されたことに応じて、不揮発性メモリ605にその設定を保存する。ここで、Wi−Fi Directモードを有効化して設定を保存する処理は、S805においてWi−Fi Directモードを有効化する設定を受信しているか否かによらずに行われる。
その後、MFP300は、有線LANが選択された場合と無線LANが選択された場合とのどちらの場合も、USB IFを有効化して(S809)、着荷時のIF設定処理を終える。なお、図示していないが、MFP300は、IF選択を含む着荷処理シーケンスのすべてを終えると、不揮発性メモリ605に保存されている着荷フラグの値を変更し、それ以降は着荷処理シーケンスが起動しないようにする。
以上のように、MFP300は、着荷時(初期設定時)に受け付けたユーザ操作によって無線LANが選択され、設定処理が実行された場合、インフラストラクチャモードによる通信とWi−Fi Directによる通信とが、同時に(並行して)有効化される。すなわち、MFP300は、同時動作が可能な状態で動作する。これによれば、無線LANの使用を望むユーザに対して、着荷時の処理によって、自動的にインフラストラクチャモードとWi−Fi Directモードとが有効化される。この結果、ユーザの無線LAN設定に関する知識が不十分であっても、利便性の高い、インフラストラクチャモードとWi−Fi Directモードとによる同時動作を行う事が可能となる。また、インフラストラクチャモードによる設定が専用のアプリケーションを用いて行われることにより、ユーザのLAN設定に関する知識があまり必要とならない。したがって、初めて機器を使用する、設定に習熟していないユーザの利便性を高める事ができる。一方、LAN設定を初期化した際には各IFの設定が無効化されるため、LAN設定に関する知識を有するユーザにとっては、所望の設定のみを有効化すればよいため、設定が分かりやすくなる。以上より、LAN設定に関する知識が少ないユーザとそのような知識を十分に有しているユーザとの両者にとって、LAN設定に関する利便性を向上させることができる。
一方、着荷処理シーケンス後の処理(S801でNOと判定された場合の処理)においては、インフラストラクチャモードによる通信とWi−Fi Directによる通信とは、ユーザの指示に従って独立して有効化される。すなわち、インフラ接続を行いたいユーザは、図4(c)の「無線LAN」を選択してインフラストラクチャモードを有効化する。この段階では、Wi−Fi Directモードが有効化されていない。そして、インフラストラクチャモードが有効化された後、ユーザが、図4(c)の「無線ダイレクト」を選択してWi−Fi Directモードを有効化する。この操作により、MFP300は、同時動作が可能となる。なお、ユーザの操作順序は、上記に限らず、「無線ダイレクト」→「無線LAN」の順序で設定しても、同時動作は実行される。
また、図8のフローチャートでは、S805においてインフラモード接続に必要な設定を受け付けた場合について説明したが、S805においてWi−Fi Directモードのみを有効化することを示す設定コマンドを受信することもある。この場合、MFP300は、以下の2つの処理のいずれかを実行する。1つ目の処理について説明する。MFP300は、S807の処理をスキップし、S808の処理を行う。すなわち、MFP300は、インフラモードは無効のままでWi−Fi Directモードのみ有効化する。2つ目の処理について説明する。MFP300は、S807およびS808の処理を行う。すなわち、MFP300は、インフラモードおよびWi−Fi Directモードの両者を有効化する。
なお、MFP300は、例えば長期間電源を入れなかったこと等によって設定情報がクリアされた場合(設定が行われていない状態となった場合)に、図8のような処理を実行するように構成されてもよい。すなわち、初期設定から所定時間経過した後に再設定される場合に図8の処理が実行されてもよい。また、MFP300は、一度も無線LANの設定がされたことがない状態で、ユーザが初めて無線LANの接続を選択した場合に、図8のS804以降の処理を実行するようにしてもよい。すなわち、MFP300は、ユーザが自ら無線LANの設定をクリアした場合を除いて、図8のS804以降の処理を実行するようにしてもよい。
なお、上述の説明では、MFP300と携帯端末200とがインフラストラクチャモードとWi−Fi Directモードとの2つのモードによる並行通信が可能である場合について説明したが、これに限られない。すなわち、MFP300及び携帯端末200は、任意の複数のモードのうちの所定の2つ以上のモードによる並行通信が可能であってもよい。この場合も、MFP300が着荷した時の状態である場合等には、MFP300は、図8の処理のようにして、無線LANによる接続が選択されたことに応じて、その2つ以上のモードを有効化するようにすることができる。
なお、上述の説明では、MFP300における処理について具体的に説明したが、この処理は、携帯端末200が実行してもよい。例えばMFP300が事前に購入されて初期設定等が完了している状態において、携帯端末200を新規に購入した場合に、上述の処理が実行されうる。これにより、携帯端末200は、インフラストラクチャモードとWi−Fi DirectモードでMFP300に接続することができるようになる。なお、携帯端末200についても、着荷/出荷時の状態において無線LANの設定を行う場合のみならず、例えば、初めて無線LANの設定を行う場合や、ユーザ操作によらずに設定がクリアされた場合に、上述の処理が実行されてもよい。なお、これらの場合、例えば携帯端末200にプリインストールされた、又は例えばセルラ通信等の何らかの媒体を介して携帯端末200に取り込まれたアプリケーションにより、上述の処理が実行されうる。
<<その他の実施形態>>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。