JP2017212229A - 透過型ターゲットおよび該透過型ターゲットを備える放射線発生管、放射線発生装置、及び、放射線撮影装置 - Google Patents

透過型ターゲットおよび該透過型ターゲットを備える放射線発生管、放射線発生装置、及び、放射線撮影装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 炭素を含有する基材に対するターゲット層の密着性と放熱性とが維持された信頼性の高い放射線発生装置を提供する。
【解決手段】 電子の照射により放射線を発生するターゲット金属を含有するターゲット層と、ターゲット層を支持し、炭素を主成分として含有する基材と、を備える透過型ターゲットであって、ターゲット層は、基材との界面の側における面内方向において、ターゲット金属の炭化物を含む炭化物領域と、ターゲット金属を金属状態として含む非炭化物領域と、を混在するように備え、炭化物領域が面内方向において占める面積密度が20%以上80%以下であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、医療機器及び産業機器分野における診断応用や非破壊X線撮影等に適応できる、透過型ターゲットおよび放射線発生装置に関する。
本発明は、特にターゲット層と、該ターゲット層を支持するダイアモンド基材とを備える透過型X線ターゲットに関する。さらに、本発明は、該透過型X線ターゲットを備える放射線発生管に関し、さらには、該放射線発生管を備えた放射線発生装置に関し、さらには、該放射線発生装置を備えた放射線撮影装置に関する。
医療診断に用いるX線を発生する放射線発生装置において、その耐久性を高め、省メンテナンス化が図られることにより装置の稼働率を向上させ、在宅医療または、災害や事故等の救急医療に適用可能な医療モダリティとすることが求められている。
放射線発生装置の耐久性を決定する主たる要因の一つとして、放射線の発生源となるターゲットの耐熱性が挙げられる。
電子線をターゲットに照射して放射線を発生させる放射線発生装置において、ターゲットにおける「放射線発生効率」は1%未満であるため、ターゲットに投入されたエネルギーのほとんどが熱に変換される。ターゲットで発生した熱の「放熱」が不十分な場合は、熱応力に起因したターゲットの密着性低下の問題が生じ、ターゲットの耐熱性を制限する。
ターゲットの「放射線発生効率」を向上させる方法として、重金属を含有する薄膜形態のターゲット層と、放射線を透過するとともにターゲット層を支持する基材とから構成された透過型ターゲットとすることは公知である。特許文献1には、従来の回転陽極型の反射型ターゲットに対して、「放射線発生効率」を1.5倍以上増大させた回転陽極型の透過型ターゲットが開示されている。
また、ターゲットから外部への「放熱」を促進する方法として、積層型ターゲットのターゲット層を支持する基材に、ダイアモンドを適用することが公知である。特許文献2には、タングステンからなるターゲット層を支持する基材としてダイアモンドを使用することにより、放熱性を高め、微小焦点化を実現することが開示されている。ダイアモンドは、高い耐熱性と、高い熱伝導性を備えているとともに、高い放射線透過性を備えているため、透過型ターゲットの支持基材としては好適な材料である。
一方で、ダイアモンドは、溶融金属との濡れ性が低く、また、固体金属との線膨張係数に不整合があることが知られており、ターゲット金属との親和性が低い。ターゲット層とダイアモンド基材との密着性を確保することが、透過型ターゲットの信頼性を向上するための課題であった。
特許文献2には、透過型ターゲットを備えた放射線発生管において、線膨張係数の不整合に起因するターゲット層とダイアモンド基材との間に熱応力が発生すること、および、かかる熱応力によりターゲット層に剥離・亀裂が発生することが開示されている。特許文献2では、ターゲット層をダイアモンド基材側に反らせる構成をとることにより、放射線発生管の動作時にターゲット層がダイアモンド基材側に押し付けられるようにして、ターゲット層の剥離を抑制させることが開示されている。
特許文献3には、透過型ターゲットを備えた放射線発生管において、ダイアモンド基材とターゲット層との間の熱抵抗に起因して出力変動が発生することが解決すべき課題として開示されている。特許文献3では、ターゲット層とダイアモンド基材との間に、ターゲット層と固溶体を形成する金属の金属炭化物層を有する構成をとることにより、ターゲット層とダイアモンド基材との密着性を向上させて、放射線の出力変動を抑制することが開示されている。
特表2009−545840号公報 特開2002−298772号公報 特開2012−256444号公報
特許文献3に記載された構成のように、ターゲット層とダイアモンド基材との間に金属炭化物層を備えた透過型ターゲットにおいても、ターゲットの密着性を長期間維持することが不十分となり、放射線の出力変動が生じる場合があった。
本発明の目的は、ターゲット層とダイアモンド基材との密着性を長期間にわたって維持することにより、放射線出力強度の変動を抑制し、安定した放射線出力が得られる放射線発生管、放射線発生装置、ならびに、放射線撮影装置を提供することにある。
本発明の透過型ターゲットは、電子の照射により放射線を発生するターゲット金属を含有するターゲット層と、前記ターゲット層を支持し、炭素を主成分として含有する基材と、を備える透過型ターゲットであって、
前記ターゲット層は、前記基材との界面の側における面内方向において、前記ターゲット金属の炭化物を含む炭化物領域と、前記ターゲット金属を金属状態として含む非炭化物領域と、を混在するように備え、前記炭化物領域が前記面内方向において占める面積密度が20%以上80%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、ダイアモンド基材とターゲット層との間の密着性を安定的に維持された信頼性の高い放射線発生装置を提供することが可能となる。ので、ターゲット層の温度上昇に伴う放射線出力強度の変動を抑制することができ、信頼性の高い放射線出力特性を有する放射線ターゲットを提供することができる。
本発明の透過型ターゲットの基本的な構成例(a)乃至(c)と、動作状態(d)とを示す概略断面図 本発明の透過型ターゲットの他の基本的な構成例(a)乃至(c)と、動作状態(d)とを示す概略断面図 本発明のターゲットが適用される放射線発生管(a)、放射線発生装置(b)、放射線撮影装置(c)の概略構成図 本発明のターゲットの変形例(a)〜(f)を示す横断面図 実施例1のターゲットの製造方法の各工程(a)〜(e)と、実施例1のターゲットを組み込んだ陽極の概略断面図(f) 実施例において放射線発生装置の放射線出力強度を測定した測定系を示す概略構成図
本願発明における解決すべき課題は、放射線発生装置に適用可能な、「透過型ターゲット」の層構成に関するものである。
まず、本発明おけるターゲットの形態である「透過型」について説明する。
本発明において、「透過型ターゲット」は、「電子の照射により放射線を発生するターゲット金属を含有するターゲット層と、該ターゲット層を支持する支持基板」とを備える構成上の態様を端的に表現するものである。
または、「透過型ターゲット」は、「ターゲット層で発生した放射線のうち、該ターゲット層が電子照射を受けた面とは反対側に放出させる」という動作上の態様を端的に表現する意図において、本願明細書中で使用されるものである。
透過型ターゲットは、ターゲット層の層厚方向における放射線の自己減衰を抑制する観点から、当該ターゲットの動作時の電子線の侵入深さ程度の層厚が選択される。一般的にはターゲット層の層厚は、反射型ターゲットにおいては、0.1mm〜10mmの範囲をとるのに対して、透過型ターゲットでは、2μm〜20μmの範囲が選択される。また、透過型ターゲットにおいては、ターゲット層は、薄膜であるので自立形態を取り難く、放射線を透過する基材に支持される。本発明においても、このような積層型の層構成をとる透過型ターゲットの層構成に起因して生ずる問題を、解決すべき課題としている。
本願明細書においては、以降、透過型ターゲットを「ターゲット」と称するが、従来のモダリティに適用される一般的な「反射型ターゲット」とは区別して用いることとする。特許文献3に記載のような、「ターゲット層とダイアモンド基材との間に、金属炭化物層を備える」透過型ターゲットにおいて、ターゲット層上の電流密度を高くした動作時において、その放射線出力の変動が確認された。なお、ターゲット層の電流密度を高くする場合とは、医療診断画像の分解能と像コントラストを確保する目的から、電子線束を微小焦点化し管電流を増大させる場合が含まれる。
かかる放射線出力の変動の原因について、本発明者等が鋭意なる検討を行った結果、以下のような知見が得られた。
特許文献3に記載のように、金属炭化物層は、ダイアモンド基材と親和性が高くアンカリング作用を発現し透過型ターゲットの密着性を向上する効果がある。一方で、本発明者等は、金属炭化物層は、ダイアモンド基材との間で線膨張係数の不整合に起因する熱応力を発生する要因となっている知見を得るに至った。
前述の放射線出力の変動は、金属炭化物層とターゲット基材との間の熱応力により、微視的に密着性が低下したことに伴い、ターゲット層からダイアモンド基材への伝熱が阻害されたことが原因となっていると推定された。本発明は、透過型ターゲットの層構成として特定の構成を採用することにより、金属炭化物層に起因する密着性に関する課題を解決するものである。
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。これらの実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対配置などは、この発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
図3(a)、図3(b)は本発明のターゲットを備えた放射線発生管、および、放射線発生装置のそれぞれの構成例を示した断面図である。
<放射線発生管>
図3(a)には、電子放出源3と電子放出源3に離間して対向するターゲット9とを備えた透過型の放射線発生管102の実施形態が示されている。
本実施形態では、電子放出源3が備える電子放出部2から放出された電子線束5を、ターゲット9のターゲット層42に衝突させることにより放射線束11を発生させる。
なお、電子線束5に含まれる電子は、電子放出源3とターゲット層42との間の加速電界により、放射線を発生させるのに必要な入射エネルギーまで加速される。かかる加速電界は、管電圧Vaを出力する駆動回路103と、前記駆動回路に電気的に接続された陰極と、陽極とにより、放射線発生管102の内部空間13に形成される。即ち、駆動回路103から出力される管電圧Vaは、ターゲット層42と電子放出部2との間に印加される。
本実施形態において、ターゲット9は、図3に示すように、ターゲット層42、及びターゲット層42を支持するダイアモンド基材41とから構成される。ターゲットユニット51は、ターゲット9と陽極部材49とを少なくとも備え、放射線発生管102の陽極として機能する。
なお、ターゲット9およびターゲットユニット51についての詳細な実施形態については後述する。
放射線発生管102の内部空間13は、電子の平均自由行程の確保を目的として、真空雰囲気となっている。放射線発生管102の内部の真空度は、10−8Pa以上10−4Pa以下であることが好ましく、電子放出源3の寿命の観点からは、10−8Pa以上10−6Pa以下であることがより一層好ましい。
放射線発生管102内部の減圧は、不図示の排気管を介して不図示の真空ポンプで真空排気した後、かかる排気管を封止する方法をとることが可能である。また、放射線発生管102の内部には、真空度の維持を目的として、不図示のゲッターを配置しても良い。
放射線発生管102は、陰極電位に規定される電子放出源3と、陽極電位に規定されるターゲット層42との間の電気的絶縁を図る目的において、その胴部に絶縁管110を備えている。絶縁管110は、ガラス材料やセラミクス材料等の絶縁性材料で構成される。本実施形態においては、絶縁管110は、電子放出源3とターゲット層42との間隔を規定する機能を有している。
放射線発生管102は、かかる真空度を維持するための気密性と耐大気圧強度とを備える外囲器から構成されることが好ましい。本実施形態においては、外囲器は、絶縁管110と、電子放出源3を備えた陰極と、ターゲットユニット51を備えた陽極とから構成されており、電子放出部2およびターゲット層42は、それぞれ、前記外囲器の内部空間13または、その内面に配置されている。
なお、本実施形態では、ダイアモンド基材41は、ターゲット層42で発生した放射線を放射線発生管102の外に取り出すための透過窓の役割を担うとともに、外囲器を構成する構造部材としての役割も有している。
なお、電子放出源3は、ターゲット9が備えるターゲット層42に対向して設けられている。電子放出源3としては、例えばタングステンフィラメント、含浸型カソードのような熱陰極や、カーボンナノチューブ等の冷陰極を用いることができる。電子放出源3は、電子線束5のビーム径および電子電流密度、オン・オフタイミング等の制御を目的として、不図示のグリッド電極、静電レンズ電極を備えることが可能である。
<放射線発生装置>
図3(b)には、放射線束11を放射線透過窓121からX線を放出する放射線発生装置101の実施形態が示されている。本実施形態の放射線発生装置101は、放射線透過窓121を有する収納容器120内に、放射線源である放射線発生管102、および、放射線発生管102を駆動するための駆動回路103を有している。
図3(b)に記載の駆動回路103により、ターゲット層42と電子放出部2との間に管電圧Vaが供給される。ターゲット層42の層厚と含有するターゲット金属種と対応して、管電圧Vaを適宜選択することにより、必要な線種を発生する放射線発生装置101とすることができる。
放射線発生管102及び駆動回路103を収納する収納容器120は、容器としての十分な強度を有し、かつ放熱性に優れたものが望ましく、その構成材料としては、例えば真鍮、鉄、ステンレス等の金属材料が用いられる。
本実施形態に記載の放射線発生装置101は、陽極接地された実施形態である。本実施形態においては、収納容器120と、陽極であるターゲットユニット51とが電気的に接続され、収納容器120が接地端子16に接続されている。接地の形態は、これに限らず、陰極接地、中間電位接地としても良い。
本実施形態においては、収納容器120内の内部の放射線発生管102と駆動回路103以外の余空間には、絶縁性液体109が充填されている。絶縁性液体109は、電気絶縁性を有する液体で、収納容器120の内部の電気的絶縁性を維持する役割と、放射線発生管102の冷却媒体としての役割とを有する。絶縁性液体109としては、鉱油、シリコーン油、パーフロオロ系オイル等の電気絶縁油を用いるのが好ましい。
<放射線撮影装置>
次に、図3(c)を用いて、本発明のターゲットを備える放射線撮影装置の構成例について説明する。
システム制御ユニット202は、放射線発生装置101と放射線検出器206とを統合制御する。駆動回路103は、システム制御ユニット202による制御の下に、放射線発生管102に各種の制御信号を出力する。駆動回路103は、放射線発生装置101が備える、本実施形態においては、収納容器120の内部に放射線発生管102とともに収納されているが、収納容器120の外部に配置しても良い。駆動回路103が出力する制御信号により、放射線発生装置101から放出される放射線束11の放出状態が制御される。
放射線発生装置101から放出された放射線束11は、可動絞りを備えた不図示のコリメータユニットによりその照射範囲を調整されて放射線発生装置101の外部に放出され、被検体204を透過して検出器206で検出される。検出器206は、検出した放射線を画像信号に変換して信号処理部205に出力する。
信号処理部205は、システム制御ユニット202による制御の下に、画像信号に所定の信号処理を施し、処理された画像信号をシステム制御ユニット202に出力する。
システム制御ユニット202は、処理された画像信号に基づいて、表示装置203に画像を表示させるための表示信号を表示装置203に出力する。
表示装置203は、表示信号に基づく画像を、被検体204の撮影画像としてスクリーンに表示する。
本発明に関わる放射線の代表例はX線であり、本発明の放射線発生装置101と放射線撮影装置は、X線発生ユニットとX線撮影システムとして利用することができる。X線撮影システムは、工業製品の非破壊検査や、人体や動物の病理診断に用いることができる。
<ターゲット>
次に、本発明の特徴であるターゲットの基本的な実施形態の構造と動作状態とについて、図1(a)〜(c)および、図1(d)を用いて説明する。
なお、図1(a)は、本実施形態のターゲットの層構成を説明する縦断面図である。一方、図1(c)は、図1(a)中の指示線P−P’において仮想的にターゲット9を切り開いた横断面図である。また、図1(b)、(d)は、それぞれ、ターゲット9の動作状態を示す平面図と縦断面図であり、図1(b)は、図1(d)のターゲット9を、ターゲット層42の側から見た平面図である。
図1(a)に示す様に、ターゲット9は、ターゲット金属を含有するターゲット層42と、ターゲット層42を支持する基材41とを少なくとも備えている。基材41は、炭素を主成分として含有する材料から構成される。このような構成をとることにより、基材41には、放射線透過性がもたらされる。また、基材41は、sp3炭素結合を主たる結合骨格として構成される材料からなる。このような構成を取ることにより、基材41には、耐熱性、熱伝導性がもたらされる。図1(d)に示すような透過型ターゲットを構成することが可能となる。
基材41の具体的な構成材料としては、ダイアモンド、ダイアモンドライクカーボン(DLC)が挙げられる。また、基材41の炭素骨格は、sp3結合からなる熱的に安定なピラミッド構造型の結晶性を有することが望ましく、その結晶性は、単結晶、または、多結晶のいずれも適用可能である。なお、基材41は、ダイアモンド、DLCを主成分として含有し、窒素、バナジウム等のガス、金属を微量成分として含有する形態も実施形態として含まれる。
基材41の板厚は、ターゲット層42で発生した放射線の減衰と板厚と直交する方向の熱伝導性を考慮して決定され、100μm〜2mmの範囲を選択することが可能である。
ターゲット層42は、高い原子番号、高融点、高比重の金属元素を、ターゲット金属として含有する。ターゲット金属は、ダイアモンド基材41との親和性の観点からは、炭化物の標準生成自由エネルギーが負を呈するタンタル、モリブデン、タングステンの群から少なくとも1種選択された金属とすることが好ましい。ターゲット金属は、単一組成、合金組成、または、金属間化合物であっても良い。
なお、ターゲット層42の層厚は、ターゲット層42に侵入する電子の深さdpとの関係で定められ詳細な態様については後述する。医療用X線診断における放射線発生管の管電圧Vaを考慮すると、ターゲット層42の層厚は、典型的には、1μm以上20μm以下の範囲から選択され、より好ましくは1.5μm以上12μm以下の範囲から選択される。
次に、本発明の特徴である炭化物領域43について、図1、図2、図4の各図を用いて説明する。炭化物領域43は、基材41とターゲット層42との間に局所的に設けられることにより、ターゲットに発生する熱応力を緩和する作用を発現する。
図1(a)〜(d)の各図は、本発明のターゲット9の基本的な実施形態の例を示している。本実施形態のターゲット9は、図1(a)に示すように、基材41とターゲット層42との接合面において、炭化物領域43を介した領域と、炭化物領域43を介さない領域界面とが、交互に存在するような断面を呈する。本発明においては、炭化物領域43を介さずに、ターゲット層42と基材41とが積層されている領域を、ターゲット9の非炭化物領域44と称する。
本実施形態においては、図1(b)に示すように、複数の炭化物領域43が非炭化物領域44を介してマトリクス状に配列されている。本実施形態のように、少なくとも電子照射範囲Fにおいて、複数の方向に互いの境界を有する炭化物領域43と非炭化物領域44とが混在した構成をとることにより、複数の方向に発生する熱応力を緩和させることが可能となる。本発明において、複数の方向とは、互いが平行または反平行ではない複数の方向を意味する。また、本発明において、電子照射範囲Fは、電子線束がターゲット層42上に規定する電子の照射を受ける範囲のことを意味する。
本実施形態においては、炭化物領域43は、不連続な層として基材41とターゲット層42との間に設けられているが、炭化物領域43は、必ずしも、ターゲット層42と平行な層面内方向において、離散的に存在する必要は無い。例えば、図2(c)に示すように、炭化物領域43は1つの連続な領域であって、非炭化物領域44が層面内方向において離散的に配置された構成も、本発明の実施形態として含まれる。
図2の各図に記載の実施形態は、図1の各図に記載の実施形態の炭化物領域43と非炭化物領域44の配置を交換した変形例である。図2(a)〜(d)の各図は、図1(a)〜(d)の各図に対応している。本実施形態においては、炭化物領域43は局所的に非炭化物領域44により分断されその連続性を局所的に失っている。本実施形態においても、局所的に配置された炭化物領域43は、ターゲット9の熱応力を緩和する作用を発現する。
本発明の炭化物領域43と非炭化物領域44とがなす配置の変形例を、図4(a)〜(f)の各図に示す。
図4(a)、(c)、(e)の各図に記載の実施形態は、図1に記載の実施形態の変形例である。図4(a)は、同一サイズの正方形の炭化物領域43をマトリクス状に配置した実施形態を示す図であり、図4(c)は、同一サイズの円形の炭化物領域43をマトリクス状に配置した実施形態を示す図である。図4(e)は、電子線焦点の中心からの距離に応じて、正方形の炭化物領域43の大きさを変えてマトリクス状に配置した図1(a)に記載の実施形態の変形例である。
また、図4(b)に記載の実施形態は、ストライプ状に炭化物領域43と非炭化物領域44とが交互に配列された実施形態である。また、図4(d)は、図1に記載の実施形態と図2に記載の実施形態とが入れ子構造となっている実施形態を示す図である。本実施形態においては、連続な炭化物領域43と不連続な炭化物領域43‘との間に、非炭化物領域44が介在している。
さらに、図4(f)は、螺旋状に炭化物領域43と非炭化物領域44とが配置された実施形態を示す図である。本実施形態においては、炭化物領域43と非炭化物領域44とは、いずれも連続な構造をとるが、全体として複数の方向において、炭化物領域43の連続性が局所的に失われている構造となっている。
以上、(a)〜(f)の各図に示したいずれの実施形態においても、炭化物領域43の局所的な配置により、ターゲット9に生ずる熱応力を緩和する作用を発現される。
また、炭化物領域と非炭化物領域とが、電子線焦点の範囲内において、共存すればよく、両領域のそれぞれの大きさ、形状、配置密度等は一様である必要は無い。例えば、炭化物領域が形状、サイズ、分布状態においてランダムな配置となっている形態も本発明に含まれる。
次に、炭化物領域43を備えた本発明のターゲット9の積層構造について、図1(a)〜(d)の各図を用いて説明する。
まず、炭化物領域43を構成する材料について説明する。図1(a)において、炭化物領域43をターゲット金属の炭化物から構成する事により、炭素を主成分として含有する基材41と、ターゲット金属を有するターゲット層42との間の橋渡しの役割を炭化物領域43が担う。従って、炭化物領域43は、ターゲット層42を構成するターゲット金属の金属炭化物であることが、層間の親和性の観点から好ましい。
ターゲットの耐熱性の要請から、ターゲット金属としては、モリブデン、タンタル、タングステンの高融点金属を用いられる。従って、このような実施形態の場合には、炭化物領域43は、モリブデン、タンタル、タングステンの炭化物から構成される事が好ましい。
炭化物領域43の結晶形および材料組成は、六方晶の炭化二モリブデン(たんかにもりぶでん)、立方晶の炭化一タンタル(たんかいちたんたる)、六方晶の炭化一タングステン(たんかいちたんぐすてん)がそれらの熱的安定性の観点からより好ましい。
なお、線膨張係数において、金属炭化物の多くは、炭化されていない純金属に対して、大きな値をとる。前述のモリブデン、タンタル、タングステンの群から選択された金属の炭化物においても、表1の通り、前述の線膨張係数の関係は当てはまり、これが、線膨張係数が小さい基材41と炭化物領域43との熱応力の駆動力となっている。従って、炭化物領域と、炭化物領域に対して線膨張係数が相対的に小さい非炭化物領域とが混在することにより、ターゲット9に生ずる熱応力を緩和する効果が発現される。
Figure 2017212229
また、熱伝導率において、金属炭化物の多くは、炭化されていない純金属に対して、低い値をとる。前述のモリブデン、タンタル、タングステンの群から選択された金属の炭化物においても、表2の通り、前述の熱伝導率の関係は当てはまり、これが、熱伝導率が高い基材41と熱伝導率が低い炭化物領域43との間の熱抵抗となっている。従って、炭化物領域と、炭化物領域に対して熱伝導率が相対的に高い非炭化物領域とが混在することにより、ターゲット9の板厚方向に生ずる熱抵抗を緩和する効果も発現される。
Figure 2017212229
炭化物領域43の安定性の観点からは、さらに、ターゲット9の動作時におけるターゲット層42の電子侵入深さdpを考慮して、ターゲット層42と炭化物領域43のそれぞれの層厚を設定することが望ましい。ターゲット層42と炭化物領域43との具体的な望ましい配置関係を以下に図1(d)を用いて説明する。
ターゲット層42は、放射線発生管の管電圧Vaにより規定される電子侵入深さdpを基準として、dpの1.05倍から2倍の層厚とすれば良い。このような構成をとることにより、炭化物領域43への電子散乱損傷または熱損傷の抑制と、ターゲット層で発生した放射線の前方への透過性を両立することが可能となる。電子侵入深さdpの範囲は、ターゲット9の発熱部となるので、このターゲット層42の表面から電子侵入深さdpまでの深さ領域に、炭化物領域43が含有されない配置とすることが、炭化物領域43の耐熱性および組成変動抑制の観点から好ましい。
一般に、電子侵入深さdpは、入射エネルギーEp(eV)すなわち、管電圧Va(V)と、ターゲット層の密度とにより決定される。本願発明においては、10kV〜1000kVの管電圧Va(1×10eVから1×10eVの範囲の入射電子エネルギーEpに相当)で実測と良い一致を示す下記一般式1で電子侵入深さdp(m)を規定する。dp=6.67×10−10×Va1.6/ρ (一般式1)
但し、Vaは、管電圧(V)であり、ρは、前記ターゲット層の密度(kg/m)である。また、ターゲット層の密度ρは、秤量と層厚測長により同定しても良いが、ラザフォード後方散乱分光分析法(RBS法)によって決定する方法が、薄膜の密度を測定する手法として好ましい。
本発明においては、ターゲット層42の層厚は、ターゲット層42の電子入射面から基材41の界面PBTMまでと定義される。図1(d)に示す実施形態おいては、ターゲット層42の層厚は5.5μmとし、炭化物領域43の厚さは100nmとすれば、炭化物領域43は、ターゲット層42への電子侵入に伴う発熱領域から十分離間された位置に配置することが可能となる。
なお、ターゲット層42をタングステンから構成し、管電圧100kVとした動作条件において、ターゲット層42への電子侵入深さdpは3.5μmである。従って、前述のターゲット層42の層厚はdpの1.6倍に相当し、炭化物領域43の厚さは、dpの0.03倍に相当する。
ターゲット層42に関係する形状パラメータである層厚、表面または界面の位置PTOP、BTMがバラツキを有している場合は、それぞれ形状パラメータを電子照射範囲Fの範囲における加法平均することにより、一意に決定することが可能である。
次に、炭化物領域43の膜面方向における好ましい分布形態について説明する。炭化物領域43は、基材41とターゲット層42との間に配置すると、基材41と炭化物領域43とは炭素―炭素間結合が存在するためアンカリング作用が得られ静的な密着性が向上する。しかし、炭化物領域43が、電子照射範囲Fの全体に設けられると、ターゲット層と基材とを界面方向にせん断する熱応力を緩和できない。このため、炭化物領域43が介在する面積は、電子照射範囲Fにおいて、電子照射範囲(電子線焦点)の面積の20%から80%程度の面積密度とすることがより好ましい。
本実施形態においては、X方向配列ピッチApx、X方向炭化物領域平均長さAcx、Y方向配列ピッチApy、Y方向炭化物領域平均長さAcyを用いて、炭化物領域43の面積密度は、(Acx/Apx)×(Acy/Apy)で同定される。即ち、本実施形態においては、炭化物領域43の面積密度は、XY両方向それぞれの線密度の積に相当する。
従って、炭化物領域43が、ターゲット層42と基材41との間において特定の異方性を持たず等方的に分散している場合には、炭化物領域43の面積密度は、炭化物領域43の線密度の2乗として同定することが可能である。炭化物領域43の線密度は、ターゲット9を断面分析し、組成マッピングを取得することにより得られる。
また、本実施形態においては、X方向配列ピッチApx、X方向非炭化物領域平均長さAnx、Y方向配列ピッチApy、Y方向非炭化物領域平均長さAnyを用いて、炭化物領域43の面積密度は、1−(Anx/Apx)×(Any/Apy)で同定される。
従って、非炭化物領域44が、ターゲット層42と基材41との間において特定の異方性を持たず等方的に分散している場合には、炭化物領域43の面積密度は、1から、非炭化物領域44の線密度の2乗を引いた値として同定することが可能である。非炭化物領域44の線密度は、ターゲット9を断面分析し、組成マッピングを取得することにより得られる。
次に、炭化物領域43の好ましい厚さについて図1(a)を用いて説明する。炭化物領域43の厚さが薄すぎる場合には、基材41とターゲット層42とのアンカリング作用が不足しターゲット層42と基材41との密着性が確保できなくなる。したがって、炭化物領域43の厚さは、少なくとも10原子層程度以上、すなわち、1nm以上とすることが好ましく、10nm以上とすることがより一層好ましい。
逆に、炭化物領域43の厚さの上限については、図1(d)に示す通り、ターゲット層42の動作時の電子侵入深さdpより深い位置に、炭化物領域43の厚さ方向の上端が位置する第一に要請に基づいて決定される。第二には、炭化物領域43の厚さの上限は、表2に例示された金属炭化物の熱伝導率を考慮して、ターゲット層42から基材41への熱伝達率の要請から決定される。具体的には、炭化物領域43の厚さは、1μm以下とすることが好ましく、0.1μm以下とすることがより一層好ましい形態である。
ターゲット層、炭化物領域は、いずれも、前述の膜厚および分布状態を有して基材上に形成可能な方法であれば、特定の形成方法に限定されず、様々な成膜方法を適用可能である。例えば、化学的気相成長方法、蒸着法、パルスレーザ堆積法(PLD法)等の気相成膜法、スクリーン印刷法、浸漬法、インクジェット法等の液相成膜法を利用することが可能である。
本発明のターゲットは、炭化物領域と非炭化物領域とが混在した状態で基材とターゲット層との間に形成されるようにすれば、特定の製造方法には限定されず、以下の様な手法で作製可能である。
本発明のターゲットは、基材上にターゲット層またはターゲット層の前駆体となる層を成膜する工程の後に、かかる成膜工程で得られた積層体をベークする工程を行う事により、前駆体中に基材由来の炭素を拡散させて形成することも可能である。加熱による炭化物領域の形成は、減圧雰囲気中または不活性ガス雰囲気中において行われる。なお、ターゲット層および基材の材料、密度等に応じて、加熱時間、加熱温度等の加熱条件を適宜調整することに、炭化物領域と非炭化物領域とが混在した構造を形成することが可能である。
例えば、炭化タングステンからなる炭化物領域とタングステンからなる非炭化物領域とが混在した構造を得る場合には、920℃〜1000℃の温度範囲で、5分〜60分の加熱時間で加熱することにより形成可能である。
また、炭化物領域は、基材上に金属領域を離散的に堆積させる工程の後に、炭素含有ガス雰囲気において加熱処理、プラズマ処理等を行い、金属領域中に気相から炭素を導入して形成することも可能である。
次に、本願発明のターゲットを備える放射線発生装置を、以下に示す手順で作製し、かかる放射線発生装置を動作させ、出力安定性を評価した。
(実施例1)
本実施例で作製したターゲット9の概略図を図5(d)に示す。また、本実施例で作製したターゲット9の作製手順を図5(a)乃至図5(e)に示す。さらに、本実施例のターゲット9を組み込んだ放射線発生管102の概略構成を図3(a)に示し、放射線発生管102を組み込んだ放射線発生装置101を図3(b)に示す。また、本実施例の放射線発生装置101の放射線出力の安定性を評価した評価系を図6に示す。
まず、図5(a)に示すように、直径2.54mmの厚さ1mmのディスク状の単結晶ダイアモンドからなる基材41を準備した。次に、基材41を、UVオゾンアッシャ装置にて、その表面の残留有機物を洗浄処理した。
次に、図5(b)に示すように、基材41の対向する2面のうちの一方の面に対して、炭化一タングステン(WC)からなる炭化物領域43を100nmの厚さとなるようにスパッタ法で堆積させた。スパッタ堆積においては、基材41上にメタルマスクを配置し、図5(c)のように格子状のパターンとして炭化物領域43を形成した。得られた炭化物領域43のパターンの面積密度は75%であった。
なお、パターニングされた炭化物領域43の面積密度は、ターゲットの動作時の電子線焦点に重なる領域Aにおいて同定し、基材41の周縁部は参酌されていない。領域Aは、1.7mm×1.7mmの正方形の範囲であり、図5(c)においては、破線で囲まれた範囲に一致する。
スパッタ法による炭化物領域43の形成は、アルゴンをキャリアガスとして、炭化一タングステン(WC)のターゲットソースを用い、基材41を260℃となるように加熱しながら行った。
次に、図5(d)に示すように、基材41の炭化物領域43を形成した側の面に対して、アルゴンをキャリアガスとして、スパッタにより、タングステンからなるターゲット層42を層厚5.5μmとなるように形成した。ターゲット層42の成膜時の基材温度は、前工程と同じ260℃とした。
以上のようにして、図5(d)、(e)に示すような格子状パターンの炭化物領域43を備えたターゲット9を作製した。作製したターゲット9のターゲット層42の表面をレーザ干渉計を用いて高さ分布を観察したところ、ターゲット層42の表面の高さ分布は15nmであり、炭化物領域43の厚さより十分小さくレベリングされている事が判った。
なお、炭化物領域43およびターゲット層42のそれぞれの厚さは、それぞれの堆積工程の前に、予め、各々を成膜した層厚と成膜時間とで得られた検量線データと、それぞれの堆積工程の堆積時間の制御により所定の厚さに制御した。検量線データを取得するための層厚の測定は、株式会社堀場製作者所製の分光エリプソメータUVISEL ERを用いた。
作製したターゲット9に対して、ターゲット層42、炭化物領域43および、基材41の界面を含むような断面検体S1を作製した。断面検体S1の作製にあたっては、ダイシング加工とFIB加工処理とを組合せて行った。
断面検体S1に対して、透過型電子顕微鏡(TEM)と電子線回折(ED)を組合せて、断面検体S1の、ターゲット層42と基材41との界面付近の組成と結晶構造とのマッピングを行った。得られた組成マッピングから、炭化一タングステン(WC)からなる領域と、タングステンからなる領域とが交互に180μm幅で配列していることが確認された。炭化一タングステンが観測された領域の厚さを測定した結果100nmであった。
次に、本実施例で作製したターゲット9を備えた放射線発生管102を以下のような手順で作製した。
まず、タングステンから構成された管状の陽極部材47を用意した。さらに、図5(f)に示すように、ターゲット9を、陽極部材49の開口の内側に対して、ろう材を用いて固定した。ターゲット層42と陽極部材とはオーミックコンタクトしている事が確認された。以上のようにして、ターゲット9を備えた陽極を作製した。
次に、硼化ランタン(LaB6)からなる電子放出部2を有する含侵型電子銃からなる電子放出源3を、不図示のコバールからなる陰極部材と溶接し陰極とした。
さらに、アルミナからなる絶縁管110の両開口のそれぞれに、陰極と陽極とをそれぞれろう付けし外囲器を形成した。次に、外囲器の内部13を不図示の排気装置を用いて、1×10−6Paの真空度となるまで真空排気した。以上のようにして、図3(a)に示す放射線発生管102を作製した。
さらに、放射線管102の陰極と陽極とに対して駆動回路103を電気的に接続し、さらに、収納容器120の内部43に、放射線発生管102と駆動回路103とを収納して、図3(b)に示す放射線発生装置101を作製した。
次に、放射線発生装置101の駆動安定性を評価するために、図6に示す評価系70を準備した。評価系70は、図3(c)に記載の放射線撮影装置60をベースとして、安定性を評価する検出系を組み込んだものである。評価系70は、放射線発生装置101の放射線放出窓111の1m前方の位置に線量計26が配置されている。線量計26は、測定制御装置207を介して駆動回路103に接続されることにより、放射線発生装置101の放射出力強度を測定可能となっている。
駆動安定性の評価における駆動条件は、放射線発生管102の管電圧を+100kVとし、ターゲット層42に照射される電子線の電流密度を5mA/mm、電子照射期間を2秒、非照射期間を98秒とを交互に繰り返すパルス駆動とした。検出した放射線出力強度は、電子照射時間内の中央1秒間の平均値を採用した。
放射線出力強度の安定性評価は、放射線出力開始から100時間経過後の放射線出力強度を、初期の放射線出力強度で規格化した保持率で評価した。
なお、放射線出力強度の安定性評価に際し、ターゲット層42から接地電極66に流れる管電流を計測して、不図示の負帰還回路により、ターゲット層42に照射される電子電流密度を1%以内の変動値とするように定電流制御した。さらに、放射線発生装置101の安定性駆動評価中に、放電せずに安定的に駆動していることを、放電カウンタ67によって確認した。
本実施例の放射線発生装置101の放射線出力の保持率は、0.98であった。本実施例のターゲット9を備えた放射線発生装置101は、長時間の駆動履歴を経た場合においても、顕著な放射線出力変動も認められず、安定した放射線出力強度が得られることが確認された。
なお、本実施例のターゲット層42の密度を、RBS法にて測定したところ、19.2×10(kg/m)であった。この結果、100keVの運動エネルギーを有する入射電子に対するターゲット層42の電子侵入深さdpは、3.5×10−6(m)と同定された。従って、100kVの管電圧で動作する放射線発生管において、少なくともターゲット層42の表面から電子侵入深さdpの範囲は、炭化一タングステン(たんかいちたんぐすてん)からなる炭化物領域43と重なっていないことが確認された。
(実施例2)
本実施例においては、炭化物領域をスパッタで形成する工程の代わりに、「ターゲット層を基材上に成膜し積層体を形成した後に、積層体を加熱する事」以外は、実施例1と同様な方法により、放射線発生装置101を作製し、その放射線出力の安定性を評価した。
本実施例の製造方法により得られた炭化物領域は、界面と平行な面内において互いに大きさの異なる島状の領域が分散している特徴を有していた。
以下に、本実施例のターゲットの作製手順を説明する。まず、実施例1と同様にして、直径2.54mmの厚さ1mmのディスク状の単結晶ダイアモンドからなる基材を準備した。次に、基材を、UVオゾンアッシャ装置にて、その表面の残留有機物を洗浄処理した。
次に、基材の対向する2面のうちの一方の面に対して、アルゴンをキャリアガスとして、スパッタにより、タングステンからなるターゲット層42を層厚5.5μmとなるように形成した。ターゲット層42の成膜時の基材温度は、260℃とした。本工程により、基材41とターゲット層42とからなる不図示の積層体を形成した。
次に、積層体を、不図示の真空減圧チャンバ内に配置し、チャンバの内部を1×10−5Pa以下の真空度を維持しながら、積層体を940℃の温度で20分間加熱するベーク処理を行った。このようにして、本実施例のターゲットを作製した。
ベーク処理を経たターゲットに対して、ターゲット層と基材との界面を含むサイズに加工した断面検体S2を準備した。また、基材とターゲット層との界面と平行な断面となるような断面検体S3を準備した。断面検体S2、S3の加工にあたっては、実施例1と同様にしてダイシング加工とFIB加工処理を行った。
断面検体S2、S3のそれぞれに対して、TEMとEDとを組合せて、ターゲット層と基材との界面付近の組成分布と結晶構造分布をマッピングした。この結果、タングステンとダイアモンドとが界面を形成している非炭化物領域の間に、炭化一タングステン(WC)とダイアモンドとが界面を形成している炭化物領域が分散している分布状態が確認された。
また、観察された炭化一タングステン(WC)からなる炭化物領域の大きさは、30nm〜260nm、炭化物領域の間隔は、150〜800nmで、島状に分散された分布状態が確認された。本実施例のターゲットの炭化物領域の面積密度は、32%であった。
次に、本実施例で作製したターゲットを用いて、実施例1と同様にして、放射線発生管102、および、放射線発生装置101を作製した。かかる放射線発生装置101を、図7に示す駆動安定性を測定する評価系70に組みこんだ。
本実施例の放射線発生装置101の放射線出力の保持率は、0.98であった。本実施例のターゲット9を備えた放射線発生装置101は、長時間の駆動履歴を経た場合においても、顕著な放射線出力変動も認められず、安定した放射線出力強度が得られることが確認された。
なお、本実施例のターゲット層の密度を、RBS法にて測定したところ、19.0×10(kg/m)であった。この結果、100keVの運動エネルギーを有する入射電子に対するターゲット層の電子侵入深さdpは、3.5×10−6(m)と同定された。従って、100kVの管電圧で動作する放射線発生管101において、本実施例のターゲット層の表面からの電子侵入深さdpの範囲は、炭化物領域とは重なっていないことが確認された。
(実施例3)
本実施例においては、炭化物領域を形成する為の積層体の加熱時間を50分間とした事以外は、実施例2と同様な方法により、放射線発生装置101を作製し、その放射線出力の安定性を評価した。
本実施例で作製したターゲットに対して、ターゲット層と基材との界面を含むサイズに加工した断面検体S4を準備した。また、基材とターゲット層との界面と平行な断面となるように準備した断面検体S5を準備した。断面検体S4、S5の加工にあたっては、実施例1と同様にしてダイシング加工とFIB加工処理とを行った。
断面検体S4、S5のそれぞれに対して、TEMとEDとを組合せて、ターゲット層と基材との界面付近の組成分布と結晶構造分布をマッピングした。この結果、炭化一タングステン(WC)とダイアモンドとが界面を形成している炭化物領域の間に、タングステンとダイアモンドとが界面を形成している非炭化物領域が分散している分布状態が確認された。
また、観察された非炭化物領域は、その大きさが60nm〜290nm、非炭化物領域同士の間隔が、170nm〜600nmで、島状に分散された分布状態が確認された。本実施例のターゲットの炭化物領域の面積密度は、74%であった。
本実施例の放射線発生装置101の放射線出力の保持率は、0.95であった。本実施例のターゲット9を備えた放射線発生装置101は、長時間の駆動履歴を経た場合においても、顕著な放射線出力変動も認められず、安定した放射線出力強度が得られることが確認された。
なお、本実施例のターゲット層を、RBS法にて密度測定したところ、18.9×10(kg/m)であった。この結果、100keVの運動エネルギーを有する入射電子に対するターゲット層の電子侵入深さdpは、3.5×10−6(m)と同定された。従って、100kVの管電圧で動作する放射線発生管101において、本実施例のターゲット層の表面からの電子侵入深さdpの範囲は、炭化物領域とは重なっていないことが確認された。
(実施例4)
本実施例においては、実施例1に記載の放射線発生装置101を用いて、図3(c)に記載の放射線撮影装置60を作製した。
本実施例の放射線撮影装置60においては、放射線出力の変動が抑制された放射線発生装置101を備えることにより、SN比の高いX線撮影画像を取得することができた。
なお、本実施例1〜3においては、電子線回折法(ED法)により、炭素含有領域の分布と炭素含有領域の組成および結晶形を同定したが、炭素を同定可能な他の分析法を適用することが可能である。他の分析法としては、電子エネルギー損失分光法、X線光電子分光法、ラマンスペクトル法等が含まれる。
9 ターゲット
41 基材
42 ターゲット層
43 炭化物領域
44 非炭化物領域

Claims (19)

  1. 電子の照射により放射線を発生するターゲット金属を含有するターゲット層と、前記ターゲット層を支持し、炭素を主成分として含有する基材と、を備える透過型ターゲットであって、
    前記ターゲット層は、前記基材との界面の側における面内方向において、前記ターゲット金属の炭化物を含む炭化物領域と、前記ターゲット金属を金属状態として含む非炭化物領域と、を混在するように備え、前記炭化物領域が前記面内方向において占める面積密度が20%以上80%以下であることを特徴とする透過型ターゲット。
  2. 前記炭化物領域は、前記非炭化物領域により、不連続となっていることを特徴とする請求項1に記載の透過型ターゲット。
  3. 前記非炭化物領域は、複数の方向において、不連続となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の透過型ターゲット。
  4. 前記炭化物領域は、前記界面において島状の分布をなしていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の透過型ターゲット。
  5. 前記非炭化物領域は、前記界面において島状の分布をなしていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の透過型ターゲット。
  6. 前記基材は、ダイアモンドまたはダイアモンドライクカーボンを主成分として含有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の透過型ターゲット。
  7. 前記炭化物領域は1nm以上1μm以下の厚さを有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の透過型ターゲット。
  8. 前記炭化物領域を介して前記基材が前記ターゲット層を支持する領域と、前記炭化物領域を介さずに前記基材が前記ターゲット層を支持する領域とが、交互に存在するような断面を呈することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の透過型ターゲット。
  9. 前記ターゲット金属は、炭化物の標準生成自由エネルギーが負を呈する金属であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の透過型ターゲット。
  10. 前記ターゲット金属は、タンタル、モリブデン、タングステンの群から少なくとも1種選択された金属あることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の透過型ターゲット。
  11. 前記炭化物は、六方晶の炭化二モリブデン、立方晶の炭化一タンタル、六方晶の炭化一タングステンの群から少なくとも1種選択された金属であることを特徴とする請求項10に記載の透過型ターゲット。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の透過型ターゲットと、
    前記ターゲット層と対向し、前記ターゲット層に電子線束を照射する電子放出部を備える電子放出源と、
    前記電子放出部と前記ターゲット層とを、その内部空間またはその内面に収納する外囲器と、を備えることを特徴とする放射線発生管。
  13. 前記炭化物領域は、前記電子線束により前記ターゲット層に形成される電子照射範囲において、前記非炭化物領域により局所的に不連続となっていることを特徴とする請求項12に記載の放射線発生管。
  14. 請求項12または13に記載の放射線発生管と、
    前記ターゲット層と前記電子放出部とのそれぞれに電気的に接続され、前記ターゲット層と前記電子放出部との間に印加される管電圧を出力する駆動回路と、前記放射線発生管を収納する収納容器と、を備えることを特徴とする放射線発生装置。
  15. 前記炭化物領域は、前記ターゲット層の電子侵入深さより深い前記基材側に位置していることを特徴とする請求項14に記載の放射線発生装置。
  16. 前記管電圧Va(V)が10kV以上1000kV以下であり、前記ターゲット層の密度がρ(kg/m)であるとき、
    前記電子侵入深さdp(m)は、以下の一般式により導かれたものであることを特徴とする請求項15に記載の放射線発生装置。
    dp=6.67×10−10×Va1.67/ρ (式1)
  17. 前記電子線束が前記ターゲット層に照射される部分に対応する面内方向において、前記炭化物領域の前記面積密度が20%以上80%以下であることを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
  18. 前記放射線発生管は、前記透過型ターゲットを保持する陽極部材をさらに有し、
    前記放射線発生管は、前記陽極部材を介して、前記収納容器に陽極接地されていることを特徴とする請求項17に記載の放射線発生装置。
  19. 請求項14乃至18のいずれか1項に記載の放射線発生装置と、前記放射線発生装置から放出され被検体を透過した放射線を検出する放射線検出器と、を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
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